説明

同軸ケーブルと回路基板の接続構造

【課題】同軸ケーブルと回路基板の接続構造を簡易で強固なものとする。
【解決手段】同軸ケーブル10に、その外導体16に接するように接続金具22を巻き付ける。回路基板12には、この基板の縁に開口を有する段付き形状のスリット26を形成する。スリットの開口端に隣接して幅狭部28を設け、続いて幅の広い幅広部30を設ける。幅広部に接続金具22が収まるようにし、また接続金具の端面34が、スリットの幅広部と幅狭部の境界の段差面32に対向し、当接するようにする。幅広部30のスリット側面に導体パターン40を形成し、この導体パターン40と、接続金具22とをはんだ付けにより接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸ケーブルと回路基板との接続部分の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
同軸ケーブルの用途として、アンテナの信号線が知られている。この同軸ケーブルは、送受信回路等が設けられた回路基板に接続されている。下記特許文献1には、回路基板にスリットを設け、このスリットに合わせて、回路基板上に同軸ケーブルを載せるようにした状態で接続する構造が示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−168499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同軸ケーブルと回路基板が確実に接続される必要がある。上記特許文献1においては、はんだ付けでは強度が不足する場合、回路基板にねじ止め等により固定される金具により、同軸ケーブルを回路基板との間に挟み込み、同軸ケーブルを固定する方法が示されている。この場合、ねじ等の金具を基板に固定するための部品、構造を必要とする。
【0005】
本願は、簡易な構成で、確実に同軸ケーブルを基板に接続することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の同軸ケーブルと回路基板の接続構造においては、回路基板に、この回路基板の縁に開口し、開口側の幅が狭い段付きのスリットを設け、一方、同軸ケーブルには、外導体に接続するようにケーブルに巻き付けられる接続金具を設ける。同軸ケーブルをスリット内に収め、スリットの段付き部分と接続金具の端面とを係合させる。
【0007】
また、スリットの側面にも回路基板の導体パターンの一部を形成し、このパターンと接続金具をはんだ付けして接合する。
【0008】
また、スリットは、その先端に、更に同軸ケーブルの内導体に対応する部分を有するようにできる。この部分にも、スリットの側面に導体パターンの一部を形成し、これと内導体をはんだ付けにより接続するようにできる。
【0009】
また、スリット内において、同軸ケーブルの中心線は、基板の厚みの範囲内に位置するようにできる。
【発明の効果】
【0010】
スリットの段付き部と同軸ケーブルの接続金具の端面が係合することで、同軸ケーブルの軸線方向の引き抜きに対する強度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面に従って説明する。図1は同軸ケーブル10と回路基板12の分解斜視図、図2は同軸ケーブル接続前の状態を示す斜視図、図3は接続後の状態を示す斜視図である。同軸ケーブル10は、アンテナ線等として用いられる一般的なケーブルである。
【0012】
同軸ケーブル10は、銅線の内導体14と、内導体14と同心状に配置され、細い銅線を編んだ網状の外導体16を含む。内導体14と外導体16の間には、これらを絶縁する絶縁体18が、また外導体16の外側には、これを覆う被覆20が設けられている。同軸ケーブル10の端(図中右端)において、絶縁体18が除去されて、内導体14が露出している。また、外導体16の端はめくられて、被覆20の上に折り返され、ここで、外部に露出している。この外導体16の露出した部分の周囲に、接続金具22が巻き付けるようにかしめられている。これにより、外導体16と接続金具22は電気的に接続される。また、図2および3に示すように接続金具22は、かしめて同軸ケーブル10に固定された状態で、その外形は略円形となる。しかし、外形はこれに限らず方形等であってもよい。
【0013】
回路基板12は、各図において、導体パターンが形成されている面の裏側の面が見える状態で描かれている。回路基板12には、その縁に開口を有するスリット26が設けられている。スリット26は、図示するように、部分ごとに幅が異なる段付き形状となっている。スリット26の開口端に最も近い幅狭部28の幅は、同軸ケーブル10の外径、すなわち被覆20の外径をほぼ同じか、または若干の余裕をもって収まる寸法となっている。この幅狭部28に続く幅広部30は、かしめられた接続金具22の外径とほぼ同じ寸法となっている。したがって、接続金具22がかしめられた同軸ケーブル10を、接続金具22を幅広部30の位置に合わせてスリット26内に収めたとき、幅狭部28と幅広部30の境界に形成される段差面32は、接続金具22の端面34と対向する。
【0014】
スリット26の、内導体14に対応する位置には、内導体の直径とほぼ同じ幅を有する先端部36が設けられている。幅広部30と先端部36の間には、中間部38が設けられている。この中間部38の幅は、幅広部30より狭く、先端部36より広い。より好ましくは、絶縁体18の直径とほぼ同じか、絶縁体18が若干の余裕をもって収まる程度の寸法とすることができる。
【0015】
スリット26の幅広部30と先端部36のそれぞれの側面には、導体パターン40,42が形成されている。前述したように、回路基板12の大部分の導体パターンは、図において下側に向いた面に設けられ、そのパターンの一部が、スリットの側面を通って、図に示される面にまで達している。つまり、いわゆるスルーホールと同様の構造となっている。幅広部30の導体パターン40は、接続金具22とはんだ接合されて、導体パターン40と同軸ケーブルの外導体16が電気的に接続される。また、先端部36の導体パターン42は、同軸ケーブルの内導体14とはんだ接合されて、これらが電気的に接続される。
【0016】
図2は、接続金具22を同軸ケーブル10に巻き付け、かしめて固定した状態を示している。接続金具22が巻き付けられた同軸ケーブル10を、回路基板12の面に交差する方向より段付きのスリット26に挿入する。この状態が図3に示されている。接続金具22が幅広部30に位置あわせされ、内導体14が先端部36に位置あわせされている。そして、接続金具22と導体パターン40が、また内導体14と導体パターン42がはんだにより接合される。幅広部30と幅狭部28の境界の段差面32と、接続金具22の端面34が対向する。これにより、同軸ケーブル10が回路基板12に接続された状態で、同軸ケーブル10に、これをケーブルの軸線に沿って引き抜く方向の力が作用しても、接続金具の端面34が段差面32と係合しており、引き抜き力に対抗する。
【0017】
図4は、幅広部30における同軸ケーブル10に直交する断面を示す図である。回路基板12の表面には、メッキ等により導体パターン40が形成され、スリットの側面30aにも導体パターン40の一部が形成されている。同軸ケーブル10は、その中心線が回路基板12の厚さの範囲内、好ましくは厚さの中心に一致するように配置される。接続金具22は、スリットの側面30aに形成された導体パターン40と接し、これらの隙間の部分をはんだ44が埋めている。スリットの側面30aと導体パターン40の間は、はんだ44が流れない程度の隙間が許容される。
【0018】
図5は、先端部36における同軸ケーブル10に直交する断面を示す図である。回路基板の表面には、メッキ等により導体パターン42が形成され、当該先端部のスリット側面36aにも導体パターン42の一部が形成されている。この断面においても、同軸ケーブル10の中心線は、回路基板12の厚さの範囲内、好ましくは厚さの中心に一致して配置されている。内導体14は、スリットの側面36aに形成された導体パターン42と接するか、または若干の隙間をあけて配置され、この先端部36を埋めるようにしてはんだ46が位置している。
【0019】
上記のように、スリット側面にも導体パターンが形成されることにより、はんだの接触面積が増加し、結合力が大きくなる。また、スリット26に同軸ケーブル10の一部が収まるようにすることで、回路基板と同軸ケーブルを合わせた厚さ方向の寸法が短縮される。
【0020】
この実施形態によれば、同軸ケーブルを回路基板に固定するための複雑な形状の金具を用いる必要がなく、また金具を止めるビス等の部品の使用も抑制することができる。また、同軸ケーブルを回路基板に強固に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態の同軸ケーブル10と回路基板12の要部を示す分解斜視図である。
【図2】同軸ケーブル10と回路基板12の接続前の状態を示す斜視図である。
【図3】同軸ケーブル10と回路基板12を接続した状態を示す斜視図である。
【図4】スリットの幅広部における同軸ケーブルに直交する断面を示す図である。
【図5】スリットの先端部における同軸ケーブルに直交する断面を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
10 同軸ケーブル、12 回路基板、14 内導体、16 外導体、22 接続金具、26 スリット、28 幅狭部、30 幅広部、32 段差面、34 接続金具の端面、36 先端部、40,42 導体パターン、44,46 はんだ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸ケーブルと回路基板の接続構造であって、
同軸ケーブルの外導体と接触して、当該同軸ケーブル周囲に巻き付けられた接続金具と、
回路基板の縁に開口端を有するように形成され、同軸ケーブルが収められる接続スリットと、
を含み、
接続スリットは、開口端から幅の狭い幅狭部が延び、これに続いて幅の広い幅広部が延びて形成されて、幅狭部と幅広部の境界に段差が形成され、さらに幅広部のスリット側面には、回路基板の導体パターンの一部が形成され、
前記接続金具が、幅広部のスリット側面の導体パターンとはんだにより接合され、当該接続金具の端面が、幅狭部と幅広部の境界の段差と係合している、
接続構造。
【請求項2】
請求項1に記載の同軸ケーブルと回路基板の接続構造であって、
接続スリットは、先端に、同軸ケーブルの内導体と接続される回路基板の導体パターンの一部が側面に形成された先端部を有し、
同軸ケーブルの内導体と、前記先端部のスリット側面に形成された導体パターンとがはんだ付けされる、
接続構造。
【請求項3】
請求項2に記載の同軸ケーブルと回路基板の接続構造であって、
接続スリット内において、同軸ケーブルの中心線は、基板の厚みの範囲内に位置する、
接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−105008(P2009−105008A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277989(P2007−277989)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【Fターム(参考)】