説明

同軸ケーブル用雷防護装置

【課題】アース端子が設置されていない場合でも同軸ケーブルの雷対策を可能にすること。
【解決手段】通信機器の同軸ポート端に接続される同軸ケーブルの中心導体線に第1のコンデンサ13aを挿入し、その同軸ケーブルの外部導体線に第2のコンデンサ13bを挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸ケーブルに流入した雷サージから通信機器を防護する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
同軸ケーブルに流入した過大な電圧電流により破壊の可能性が高いことから、突発的に発生する雷サージから通信機器を防護する技術が求められている。
【0003】
このような雷防護装置として、同軸ケーブルの中心導体や外部導体を避雷管を経由させてアースに接続する雷サージ防止装置や、その中心導体や外部導体とアース間にギャップを設けて大きな雷電流を電圧降下させる同軸ケーブル用避雷器がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−50494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アース接続を前提とし、日本国内においてアース端子を備えた住宅は極めて少ないことから、前述した雷防護装置を利用することは困難であった。また、アースに接続可能であっても、避雷管の動作電圧に到達するまでに流入した電圧電流によって通信機器の同軸ポートや通信機器自体が故障する課題もあった。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、アース端子が設置されていない場合でも同軸ケーブルの雷対策を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の同軸ケーブル用雷防護装置は、通信機器の同軸ポート端に接続される同軸ケーブルの中心導体線に挿入された第1のコンデンサと、前記同軸ケーブルの外部導体線に挿入された第2のコンデンサと、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、通信機器の同軸ポート端に接続される同軸ケーブルの中心導体線に第1のコンデンサを挿入し、その同軸ケーブルの外部導体線に第2のコンデンサを挿入したため、信号源側と同軸ポート側との間である程度の絶縁状態を保つことができる。これにより、信号源から流入した雷サージが通信装置に流入することを防止し、雷サージから通信機器を防護可能となる。また、アースを利用していないので、アース端子が設置されていない住宅でも同軸ケーブルの雷対策が可能になる。
【0009】
請求項2記載の同軸ケーブル用雷防護装置は、請求項1記載の同軸ケーブル用雷防護装置において、前記中心導体線と前記外部導体線との間に接続された避雷器を更に有することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、中心導体線と外部導体線との間に避雷器を接続するため、雷サージによって発生した中心導体線と外部導体線との間の電位差の高電圧電流を外部導体線に逃がすことができる。
【0011】
請求項3記載の同軸ケーブル用雷防護装置は、請求項1又は2記載の同軸ケーブル用雷防護装置において、前記外部導体線をアースに接続するアース端子を更に有することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、外部導体線をアースに接続するため、避雷器を介して中心導体線から外部導体線に逃がされた雷サージによる高電圧電流や、信号源から外部導体線に直接流入した高電圧電流を、アースに逃がすことができる。
【0013】
請求項4記載の同軸ケーブル用雷防護装置は、請求項3記載の同軸ケーブル用雷防護装置において、前記通信機器の通信ポート端に接続された通信ケーブル上の通信ケーブル用雷防護装置のアース端子に前記同軸ケーブル用雷防護装置のアース端子を電気的に接続することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、通信機器の通信ポート端に接続された通信ケーブル上の通信ケーブル用雷防護装置のアース端子に同軸ケーブル用雷防護装置のアース端子を電気的に接続するため、信号源から流入した雷サージを通信ケーブル用雷防護装置やその装置のAC電源側に逃がすことができる。
【0015】
請求項5記載の同軸ケーブル用雷防護装置は、請求項1乃至4のいずれかに記載の同軸ケーブル用雷防護装置において、前記第1のコンデンサに並列接続された第1の抵抗器と、前記第2のコンデンサに並列接続された第2の抵抗器と、を更に有することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、第1のコンデンサに第1の抵抗器を並列接続し、第2のコンデンサに第2の抵抗器を並列接続したため、第1のコンデンサや第2のコンデンサにチャージされた電圧を下げることが可能となり、雷サージからの安全対策を向上することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、アース端子が設置されていない場合でも同軸ケーブルの雷対策を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施の形態に係る同軸ケーブル用雷防護装置の構成を概念的に示す図である。
【図2】第2の実施の形態に係る同軸ケーブル用雷防護装置の構成を概念的に示す図である。
【図3】第3の実施の形態に係る同軸ケーブル用雷防護装置の構成を概念的に示す図である。
【図4】第4の実施の形態に係る同軸ケーブル用雷防護システムの構成を概念的に示す図である。
【図5】第5の実施の形態に係る同軸ケーブル用雷防護装置の構成を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施する一実施の形態について図面を用いて説明する。但し、本発明は多くの異なる様態で実施することが可能であり、本実施の形態の記載内容に限定して解釈すべきではない。
【0020】
〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態に係る同軸ケーブル用雷防護装置の構成を概念的に示す図である。この同軸ケーブル用雷防護装置1は、デジタルテレビやパソコン等の通信機器の同軸ポート端に接続された第1の同軸ケーブル2aと、アンテナ等の信号源に接続された第2の同軸ケーブル2bとの間に接続される。
【0021】
具体的には、第1の同軸ケーブル2aの中心導体線(芯線)に接続される第1の中心導体線11aと、第2の同軸ケーブル2bの中心導体線に接続される第2の中心導体線11bと、第1の同軸ケーブル2aの外部導体線に接続される第1の外部導体線12aと、第2の同軸ケーブル2bの外部導体線に接続される第2の外部導体線12bと、一端が第1の中心導体線11aに接続され、他端が第2の中心導体線11bに接続された第1のコンデンサ13aと、一端が第1の外部導体線12aに接続され、他端が第2の外部導体線12bに接続された第2のコンデンサ13bとで主に構成される。
【0022】
第1の中心導体線11aと第2の中心導体線11bは、第1の同軸ケーブル2aや第2の同軸ケーブル2bの各中心導体線と同様に、例えば、銅線等の導体により構成され、信号源からの信号を同軸ポート側に伝達する。
【0023】
第1の外部導体線12aと第2の外部導体線12bは、第1の同軸ケーブル2aや第2の同軸ケーブル2bの各外部導体線と同様に、例えば、網組み銅線等の導体により構成され、外界からの電磁波を遮断することにより、伝達される信号強度の減衰やノイズの影響を抑制する。
【0024】
第1のコンデンサ13aは、信号源からの各種信号(例えば、映像信号や通信信号)を通過可能な、例えば、50pFから200pFの容量からなるコンデンサにより構成され、信号源側に対して同軸ポート側の絶縁性を高める作用を有する。
【0025】
前述したように、第1のコンデンサ13aの各端が第1の中心導体線11aと第2の中心導体線11bにそれぞれ接続されていることから、本実施の形態に係る同軸ケーブル用雷防護装置1は、通信機器の同軸ポート端に接続される同軸ケーブルの中心導体に第1のコンデンサ13aを挿入することを特徴としている。
【0026】
第2のコンデンサ13bは、例えば、300pFから450pFの容量からなるコンデンサにより構成され、第1のコンデンサ13aと同様に、信号源側に対して同軸ポート側の絶縁性を高める作用を有する。
【0027】
前述したように、第2のコンデンサ13bの各端が第1の外部導体線12aと第2の外部導体線12bにそれぞれ接続されていることから、本実施の形態に係る同軸ケーブル用雷防護装置1は、通信機器の同軸ポート端に接続される同軸ケーブルの外部導体に第2のコンデンサ13bを挿入することを特徴としている。
【0028】
なお、図1において不図示であるが、第1の中心導体線11aと第2の中心導体線11bと第1のコンデンサ13aは、ポリエチレン等の誘電体により覆われ、同軸ケーブル用雷防護装置1は、第1の同軸ケーブル2aと第2の同軸ケーブル2bの両接続端を除いてビニル等の保護被覆により覆われている。
【0029】
以上より、本実施の形態によれば、通信機器の同軸ポート端に接続される同軸ケーブルの中心導体線に第1のコンデンサ13aを挿入し、その同軸ケーブルの外部導体線に第2のコンデンサ13bを挿入しているので、信号源側と同軸ポート側との間である程度の絶縁状態を保つことができる。
【0030】
これにより、信号源から流入した雷サージが通信装置に流入することを防止し、雷サージから通信機器を防護可能となる。また、アースを利用していないので、アース端子が設置されていない住宅でも同軸ケーブルの雷対策が可能になる。
【0031】
なお、本実施の形態では、同軸ケーブル用雷防護装置1を第1の同軸ケーブル2aと第2の同軸ケーブル2bとの間に接続した場合について説明したが、同軸ケーブル用雷防護装置1の一方の接続端を第1の同軸ケーブル2aに接続するのに代えて、通信機器の同軸ポート端に直接接続するようにしても同様の効果を得ることができる。
【0032】
また、本実施の形態は、同軸ケーブルの中心導体線と外部導体線に第1のコンデンサ13aと第2のコンデンサ13bをそれぞれ挿入したことが特徴であり、「アース端子が設置されていない場合でも同軸ケーブルの雷対策を可能にすること」の効果を得るには「コンデンサの挿入」であれば足りることから、上述した第1のコンデンサ13aと第2のコンデンサ13bの具体的な容量の値は一例にすぎず、特許請求の範囲に記載されたコンデンサの技術的範囲をそれら数値に限定して解釈すべきではない。
【0033】
〔第2の実施の形態〕
図2は、第2の実施の形態に係る同軸ケーブル用雷防護装置の構成を概念的に示す図である。この同軸ケーブル用雷防護装置1は、第1の実施の形態で説明した同軸ケーブル用雷防護装置の構成に対して、第2の中心導体線11bと第2の外部導体線12bとの間に接続された避雷器14を更に備えている。
【0034】
避雷器14は、例えば、避雷素子や避雷管により構成され、第2の中心導体線11bと第2の外部導体線12bとの間の電位差の電圧電流を第2の外部導体線12bに逃がす作用を有する。
【0035】
以上より、本実施の形態によれば、第2の中心導体線11bと第2の外部導体線12bとの間に避雷器14を接続しているので、雷サージによって発生した第2の中心導体線11bと第2の外部導体線12bとの間の電位差の高電圧電流を第2の外部導体線12bに逃がすことができる。
【0036】
〔第3の実施の形態〕
図3は、第3の実施の形態に係る同軸ケーブル用雷防護装置の構成を概念的に示す図である。この同軸ケーブル用雷防護装置1は、第2の実施の形態で説明した同軸ケーブル用雷防護装置の構成に対して、第2の外部導体線12bをアースに接続するアース端子15を更に備えている。
【0037】
アース端子15は、第2の外部導体線12bに流入した電圧電流をアース3に逃がす作用を有する。
【0038】
以上より、本実施の形態によれば、第2の外部導体線12bをアースに接続しているので、避雷器14を介して第2の中心導体線11bから第2の外部導体線12bに逃がされた雷サージによる高電圧電流や、信号源から第2の外部導体線12bに直接流入した高電圧電流を、アース3に逃がすことができる。
【0039】
〔第4の実施の形態〕
本実施の形態では、第3の実施の形態で説明した同軸ケーブル用雷防護装置に、既存の通信ケーブル用雷防護装置4を組み合わせることにより、雷防護の効果を高めることを目的とする。
【0040】
図4は、第4の実施の形態に係る同軸ケーブル用雷防護システムの構成を概念的に示す図である。この同軸ケーブル用雷防護システムは、第3の実施の形態で説明した同軸ケーブル用雷防護装置1と、雷サージからの防護目的で通信線上に具備される汎用的な既存の通信ケーブル用雷防護装置4とで主に構成される。
【0041】
通信ケーブル用雷防護装置4は、通信機器5の通信ポート(例えば、LANポートやTELポート)端51に接続された通信ケーブル6上に接続して使用され、通信ケーブル6に直接流入した雷サージや、第1の同軸ケーブル2aや第2の同軸ケーブル2bから通信機器5を迂回して通信ケーブル6に流入した雷サージが他の通信機器に伝播するのを防止する。
【0042】
このような通信ケーブル用雷防護装置4は、例えば、通信ケーブル6に接続される第1の通信ポート端41と、他の通信機器に接続された通信ケーブルに接続される第2の通信ポート端(図4において不図示)と、アースに接続されるアース端子42と、AC100Vの電源に接続される第1の電源接続端43aと第2の電源接続端43bを備えている。
【0043】
第1の通信ポート端41は、図示しない第2の通信ポート端に接続され、図4に示すように、第1の避雷器44aを介してアース端子42に接続されると共に、第2の避雷器44bを更に介して第1のバリスタ45aと第2のバリスタ45bに並列的に接続されている。
【0044】
また、第1のバリスタ45aは、第1の電源接続端43aに接続され、第2のバリスタ45bは、第2の電源接続端43bに接続されている。更に、第1の電源接続端43aと第2の電源接続端43bは、第3のバリスタ45cにより接続されている。
【0045】
本実施の形態では、このような通信ケーブル用雷防護装置4のアース端子42に、同軸ケーブル用雷防護装置1のアース端子15を接続させることを特徴としている。これにより、アース端子15がアース端子42を介してAC電源に電気的に接続されることから、通信ケーブル用雷防護装置4は、信号源から流入した雷サージを通信ケーブル用雷防護装置4やAC電源側に逃がす作用を有している。
【0046】
なお、本構成下で通信機器5の過電圧耐力を実験した結果、信号源から流入した雷サージをAC電源側へ逃がせることを確認している。
【0047】
以上より、本実施の形態によれば、通信ケーブル用雷防護装置4のアース端子42に同軸ケーブル用雷防護装置1のアース端子15を電気的に接続しているので、信号源から流入した雷サージを通信ケーブル用雷防護装置4やその装置4のAC電源側に逃がすことができる。
【0048】
なお、図4に示した通信ケーブル用雷防護装置4の構成は一例であり、アース端子を具備する通信ケーブル用雷防護装置や、そのアース端子をAC電源に電気的に接続している通信ケーブル用雷防護装置であれば、同様の効果を得ることができる。
【0049】
〔第5の実施の形態〕
図5は、第5の実施の形態に係る同軸ケーブル用雷防護装置の構成を概念的に示す図である。この同軸ケーブル用雷防護装置1は、第1の実施の形態で説明した同軸ケーブル用雷防護装置の構成に対して、第1のコンデンサ13aに並列に接続された第1の抵抗器16aと、第2のコンデンサ13bに並列に接続された第2の抵抗器16bとを更に備えている。
【0050】
第1の抵抗器16aは、所定の高抵抗を有する抵抗素子により構成され、第1のコンデンサ13aにチャージされた電圧を下げる作用を有している。
【0051】
第2の抵抗器16bは、第1の抵抗器16aと同様に、所定の高抵抗を有する抵抗素子により構成され、第2のコンデンサ13bにチャージされた電圧を下げる作用を有している。
【0052】
以上より、本実施の形態によれば、第1のコンデンサ13aに第1の抵抗器16aを並列接続し、第2のコンデンサ13bに第2の抵抗器16bを並列接続しているので、第1のコンデンサ13aや第2のコンデンサ13bにチャージされた電圧を下げることが可能となり、雷サージからの安全対策を向上することができる。
【0053】
なお、本実施の形態で説明した特徴を、第2乃至第4の実施の形態で説明した各同軸ケーブル用雷防護装置1に適用してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…同軸ケーブル用雷防護装置
11a…第1の中心導体線
11b…第2の中心導体線
12a…第1の外部導体線
12b…第2の外部導体線
13a…第1のコンデンサ
13b…第2のコンデンサ
14…避雷器
15…アース端子
16a…第1の抵抗器
16b…第2の抵抗器
2a…第1の同軸ケーブル
2b…第2の同軸ケーブル
3…アース
4…通信ケーブル用雷防護装置
41…第1の通信ポート端
42…アース端子
43a…第1の電源接続端
43b…第2の電源接続端
44a…第1の避雷器
44b…第2の避雷器
45a…第1のバリスタ
45b…第2のバリスタ
45c…第3のバリスタ
5…通信機器
51…通信ポート端
6…通信ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信機器の同軸ポート端に接続される同軸ケーブルの中心導体線に挿入された第1のコンデンサと、
前記同軸ケーブルの外部導体線に挿入された第2のコンデンサと、
を有することを特徴とする同軸ケーブル用雷防護装置。
【請求項2】
前記中心導体線と前記外部導体線との間に接続された避雷器を更に有することを特徴とする請求項1記載の同軸ケーブル用雷防護装置。
【請求項3】
前記外部導体線をアースに接続するアース端子を更に有することを特徴とする請求項1又は2記載の同軸ケーブル用雷防護装置。
【請求項4】
前記通信機器の通信ポート端に接続された通信ケーブル上の通信ケーブル用雷防護装置のアース端子に前記同軸ケーブル用雷防護装置のアース端子を電気的に接続することを特徴とする請求項3記載の同軸ケーブル用雷防護装置。
【請求項5】
前記第1のコンデンサに並列接続された第1の抵抗器と、
前記第2のコンデンサに並列接続された第2の抵抗器と、
を更に有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の同軸ケーブル用雷防護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−116022(P2013−116022A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263230(P2011−263230)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】