説明

吐出器付きの容器

【課題】 受け皿を備えた吐出器付きの容器において、受け皿に貯留した内容物のすくい取り性を向上すること。
【解決手段】 吐出口33の周辺に吐出された内容物を貯留するための受け皿32を備えた吐出器付きの容器10であって、吐出器30が、吐出口33に内容物が吐出する方向を変える障壁部34Aを設け、該障壁部34Aが吐出時においては受け皿32の表面より上方に前進し、吐出後にあっては受け皿32の表面と同じ位置若しくは表面より陥没した位置に後退するもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は泡、クリーム、ジェル、液体等を吐出する吐出器付きの容器に関する。
【背景技術】
【0002】
容器として、特許文献1に記載の如く、シリンダ部材とピストン部材を備えたポンプ装置を容器口部に取着し、ポンプ装置の注出筒に受け皿を取着し、注出筒の頂壁下部に設けた横向き吐出口の周辺に吐出される内容液を受け皿に貯留し、この内容液をスポンジ等の塗布用具によりすくい取って用に供するものがある。
【特許文献1】特開平11-240557
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の容器では、受け皿の表面の上方に、注出筒の頂壁が常時突出している。このため、受け皿に貯留した内容液をスポンジ等ですくい取ろうとするとき、スポンジ等が注出筒の頂壁に引っかかり、使い勝手が悪い。
【0004】
本発明の課題は、受け皿を備えた吐出器付きの容器において、受け皿に貯留した内容物のすくい取り性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、吐出口の周辺に吐出された内容物を貯留するための受け皿を備えた吐出器付きの容器であって、吐出器が、吐出口に内容物が吐出する方向を変える障壁部を設け、該障壁部が吐出時においては受け皿表面より上方に前進し、吐出後にあっては受け皿表面と同じ位置若しくは表面より陥没した位置に後退するようにしたものである。
【0006】
尚、本明細書において「貯留」とは、時間の長短によらず、内容物をある場所に保持することをいい、吐出後直ちに内容物を使用する場合若しくは時間を経てから使用する場合のいずれをも含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(実施例1)(図1〜図3)
(a)図1のエアゾール容器10は、内容物を封入した容器本体11にエアゾールバルブ20を設ける。エアゾールバルブ20は、容器本体11の上端開口部にシール部材を介してマウンティングカップ21を取付け、マウティングカップ21の内部に噴射バルブ(不図示)を設ける。噴射バルブは、ハウジング(不図示)と、ハウジングに設けられて連通孔を備えるステム22と、ステム22を外方へ付勢するスプリング(不図示)と、ステム22の外周に嵌装されてスプリングによりマウンティングカップ21に押圧されるステムラバー(不図示)とから構成される。エアゾールバルブ20は、ステム21が原位置から押下されるとき、ステム22の連通孔からフォーム状(泡状)の内容物を噴出する。内容物の処方を表1に示す。内容物の処方に応じて噴出されるときの状態を変えることができ、例えば液状、ジェル状などにもすることができる。
【0008】
【表1】

【0009】
エアゾール容器10は、吐出器30を有する。吐出器30は、図2、図3に示す如く、エアゾールバルブ20のステム22に取着される結合部31と、結合部31に取着される受け皿32と、受け皿32の吐出口33に設けられる弁34と、マウンティングカップ21の外周に取着される受け皿カバー35を有する。
【0010】
結合部31は、エアゾールバルブ20のステム22に嵌合して取着される小径嵌合部31Aを下端に備えるとともに、受け皿32の弁箱32Aが嵌合して取着される大径嵌合部31Bを上端に備え、ステム22の連通孔に連通する中空部に流路31Cを備える。
【0011】
受け皿32は、外周縁が高い、上方に向けて凹状をなし、下端である中央に吐出口33を開口している。受け皿32は、吐出口33を囲む裏面に筒状の弁箱32Aを突設し、この弁箱32Aを結合部31の大径嵌合部31Bに嵌合して取着する。受け皿32は、弁箱32Aに対する外周側の裏面に筒状のスカート部32Bを突設し、このスカート32Bを受け皿カバー35の内周に嵌合して上下に摺動ガイドされる。受け皿32は、使用者の片手がその表面を下方へ押すと、受け皿カバー35によりスカート部32Bがガイドされて原位置から下方向移動し、結合部31を介してステム22を押下するものになる。
【0012】
弁34は、受け皿32の弁箱32Aに内蔵され、受け皿32の吐出口33を開閉する障壁部34Aと、障壁部34Aの下部に連結されて結合部31の流路31Cの開口周辺に接離するばね受34Bを備える。ばね受34Bの外周の複数位置に切欠流路34Cを備える。受け皿32の弁箱32A内で、受け皿32の裏面とばね受34Bの間に、ばね36が介装される。ばね36によりばね受34Bが結合部31の流路31Cの開口周辺に着座されるとき、障壁部34Aは受け皿32の吐出口33を閉鎖する。受け皿32が使用者により下方へ押され、ステム22が前述の如くに押下され、ステム22から結合部31の流路31Cを経て噴出する内容物がばね36に抗して弁34のばね受34Bを押上げるとき、障壁部34Aは受け皿32の吐出口33から突出して該吐出口33を開き、該吐出口33から泡状となった内容物を吐出する。
【0013】
即ち、弁34の障壁部34Aは吐出口33に設けられて内容物が吐出する勢いを押さえ、方向を変える機能を備える。障壁部34Aは、内容物の吐出時には受け皿32の表面より上方に前進(突出)し(図3)、吐出後にあっては受け皿32の表面と同じ位置(若しくは表面より陥没した位置)に後退する(図2)。障壁部34Aは内容物の非吐出時には吐出口33をふさぎ、吐出時には吐出口33を開く弁34を構成する。
【0014】
従って、エアゾール容器10は以下の如くに使用される。
(1)使用者の片手でエアゾールバルブ20のスプリング力に抗して、受け皿32の表面を下方へ押す。受け皿32は、スカート部32Bが受け皿カバー35にガイドされ原位置から下方向移動し、結合部31を介してステム22を原位置から押下する。
【0015】
(2)ステム22から結合部31の流路31Cを経て噴出する内容物がばね36を抗して弁34のばね受34Bを押上げるとともに、障壁部34Aを受け皿32の表面から上方に前進させて吐出口33を開く。これにより、内容物の泡が吐出口33の全周から障壁部34Aの下面にガイドされる、受け皿32の表面に沿う横方向に向けて放射状に吐出され、吐出口33の全周の周辺に渡る受け皿32の表面の広い範囲に分配される。
【0016】
(3)片手を受け皿32の表面から離すと、エアゾールバルブ20のスプリング力によりステム22が原位置に戻り、受け皿32も原位置に戻る。同時に、弁34のばね受34Bがばね36により押下げられ、障壁部34Aが受け皿32の表面と同じ位置に後退して吐出口33を閉鎖する。使用者は、受け皿32の表面の広い範囲に分配されている内容物の泡を、手ですくい取る。尚、手の他に、スポンジ、コットン、パフ、ティッシュ等ですくい取ることもできる。
【0017】
本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)吐出器30が、吐出口33に内容物が吐出する勢いを押さえ、方向を変える障壁部34Aを設けたから、内容物が吐出の勢いで上方等に噴出するのを防止でき、貯留部全体に広げることができる。
【0018】
(b)障壁部34Aは内容物の吐出後に、受け皿32の表面と同じ位置(若しくは表面より陥没した位置)に後退する。従って、受け皿32に貯留した内容物を手又は塗布用具等ですくい取ろうとするとき、手又は塗布用具等が障壁部34Aと干渉せず、全ての内容物をすくい取ることができ、使い勝手が良い。
【0019】
(c)障壁部34Aが非吐出時には吐出口33をふさぎ、吐出時には吐出口33を開く弁34を構成する。従って、非吐出時に、吐出口33への異物の侵入を防止できるし、吐出口33の内部に残存する内容物が外気に触れることによる乾燥固化等を防止できる。
【0020】
(d)吐出口33が受け皿32の下端である中央に設けられるから、内容物を受け皿32の中央から広い範囲に貯留できる。
【0021】
(e)吐出口33より泡状となった内容物を吐出する。従って、使用者は受け皿32に貯留させた内容物の泡を視認し、楽しみながら利用できる。
【0022】
(f)内容物を収容する容器本体11がエアゾール容器10であるようにしたから、エアゾール容器10のステム22に吐出器30を設け、ステム22を押動することにより噴射剤(液化プロパンガス)の圧力で内容物を吐出口33から吐出できる。
【0023】
(g)片手で受け皿32を下方に押すことで吐出される内容物を受け皿32に貯留でき、この片手で受け皿32上の内容物をすくい取りできる。
【0024】
(実施例2)(図4、図5)
実施例2のエアゾール容器10Aが実施例1のエアゾール容器10と異なる点は、吐出器30に代わる吐出器40を用いたことにある。
【0025】
吐出器40は、図4、図5に示す如く、エアゾールバルブ20のステム22に取着される結合部41と、結合部41に取着される受け皿42と、受け皿42の吐出口43に設けられる弁44と、マウンティングカップ21の外周に取着される受け皿カバー45を有する。
【0026】
結合部41は、エアゾールバルブ20のステム22に嵌合して取着される小径嵌合部41Aを下端に備えるとともに、受け皿42の弁箱42Aが嵌合して取着される大径嵌合部41Bを上端に備え、ステム22の連通孔に連通する中空部に設けられる流路41Cを備える。
【0027】
受け皿42は、外周縁が高い、上方に向けて凹状をなし、下端である中央に吐出口43を開口している。受け皿42は、吐出口43を囲む裏面に筒状の弁箱42Aを突設し、この弁箱42Aを結合部41の大径嵌合部41Bに嵌合して取着する。受け皿42は、弁箱42Aに対する外周側の裏面に筒状のスカート部42Bを突設し、このスカート42Bを受け皿カバー45の内周に嵌合して上下に摺動ガイドされる。受け皿42は、使用者の片手がその表面を下方へ押すと、受け皿カバー45によりスカート部42Bがガイドされて原位置から下方向移動し、結合部41を介してステム22を押下するものになる。
【0028】
弁44は、結合部41の上端部に取着されて受け皿42の弁箱42Aに内蔵され、ゴム板等の弾性材料からなる障壁部44Aにより受け皿42の吐出口43を開閉する。弁44の障壁部44Aは、自由状態で、その自己閉鎖習性により、受け皿42の吐出口43を閉鎖する。受け皿42が使用者により下方へ押され、ステム22が前述の如くに押下され、ステム22から結合部41の流路41Cを経て噴出する内容物が結合部41の流路41Dから弁箱42Aに流出すると、この内容物の圧力により障壁部44Aの外周側縁部が受け皿42の吐出口43から外方に開いて該吐出口43を開き、該吐出口43から泡状となった内容物を吐出する。
【0029】
即ち、弁44の障壁部44Aは吐出口43に設けられて内容物が吐出する勢いを押さえ、泡を受け皿全体に広げる。障壁部44Aは、内容物の吐出時には受け皿42の表面より上方に前進(突出)し(図5)、吐出後にあっては受け皿42の表面と同じ位置(若しくは表面より陥没した位置)に後退する(図4)。障壁部44Aは内容物の非吐出時には吐出口43をふさぎ、吐出時には吐出口43を開く弁44を構成する。
【0030】
従って、エアゾール容器10Aは以下の如くに使用される。
(1)使用者の片手でエアゾールバルブ20のスプリング力に抗して、受け皿42の表面を下方へ押す。受け皿42は、スカート部42Bが受け皿カバー45にガイドされ原位置から下方向移動し、結合部41を介してステム22を原位置から押下する。
【0031】
(2)ステム22から結合部41の流路41Cを経て噴出する内容物が障壁部44Aを受け皿42の表面から上方に前進させて吐出口43を開く。これにより、内容物の泡が吐出口43の全周から障壁部44Aの下面にガイドされる、受け皿42の表面に沿う横方向に向けて放射状に吐出され、吐出口43の全周の周辺に渡る受け皿42の表面の広い範囲に分配される。
【0032】
(3)片手を受け皿42の表面から離すと、エアゾールバルブ20のスプリング力によりステム22が原位置に戻り、受け皿42も原位置に戻る。同時に、障壁部44Aがその自己閉鎖習性により受け皿42の表面と同じ位置に後退して吐出口43を閉鎖する。使用者は、受け皿42の表面の広い範囲に分配されている内容物の泡を、手ですくい取る。尚、手の他に、スポンジ、コットン、パフ、ティッシュ等ですくい取ることもできる。
【0033】
本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)吐出器40が、吐出口43に内容物が吐出する勢いを押さえ、方向を変える障壁部44Aを設けたから、内容物が吐出の勢いで上方等に噴出するのを防止でき、受け皿42の表面の広い範囲に分配される。
【0034】
(b)障壁部44Aは内容物の吐出後に、受け皿42の表面と同じ位置(若しくは表面より陥没した位置)に後退する。従って、受け皿42に貯留した内容物を手又は塗布用具等ですくい取ろうとするとき、手又は塗布用具等が障壁部44Aと干渉せず、全ての内容物をすくい取ることができ、使い勝手が良い。
【0035】
(c)障壁部44Aが、非吐出時には吐出口43をふさぎ吐出時には吐出口43を開く弁44を構成する。従って、非吐出時に、吐出口43への異物の侵入を防止できるし、吐出口43の内部に残存する内容物が外気に触れることによる乾燥固化等を防止できる。
【0036】
(d)吐出口43が受け皿42の下端である中央に設けられるから、内容物を受け皿42の中央から広い範囲に貯留できる。
【0037】
(e)吐出口43より泡状となった内容物を吐出する。従って、使用者は受け皿42に貯留させた内容物の泡を視認し、楽しみながら利用できる。
【0038】
(f)内容物を収容する容器本体11がエアゾール容器10Aであるようにしたから、エアゾール容器10Aのステム22に吐出器40を設け、ステム22を押動することにより噴射剤(液化プロパンガス、炭酸ガス、DME等)の圧力で内容物を吐出口43から吐出できる。
【0039】
(g)片手で受け皿42を下方に押すことで吐出される内容物を受け皿42に貯留でき、この片手で受け皿42上の内容物をすくい取りできる。
【0040】
(実施例3)(図6、図7)
シリンダ部材51とピストン部材52からなる内容物吐出機構(ポンプ)を備えたポンプ装置50を容器口部61に取着し、ポンプ装置50の注出筒53に吐出器30を備える容器60に本発明を適用したものを図6、図7に示す。吐出器30の流路には、泡生成用メッシュ71A、71Bを備えた泡生成機構70を設けてある。受け皿32を押すとポンプ装置50が動作し、弁34に圧力が加わり、内容物の泡が吐出口33から吐出される(図6)。受け皿32に加えていた押圧を解除すると、弁34が閉じるとともに、泡が乗った状態の受け皿32が上昇する(図7)。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は実施例1の容器を示す模式斜視図である。
【図2】図2は容器の非吐出状態を示す模式断面図である。
【図3】図3は容器の吐出状態を示す模式断面図である。
【図4】図4は実施例2の容器の非吐出状態を示す模式断面図である。
【図5】図5は容器の吐出状態を示す模式断面図である。
【図6】図6は実施例3の容器の吐出状態を示す模式断面図である。
【図7】図7は容器の非吐出状態を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0042】
10、10A エアゾール容器
11 容器本体
30、40 吐出器
31、41 結合部
31C、41C 流路
32、42 受け皿
33、43 吐出口
34、44 弁
34A、44A 障壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出口の周辺に吐出された内容物を貯留するための受け皿を備えた吐出器付きの容器であって、
吐出器が、吐出口に内容物が吐出する方向を変える障壁部を設け、該障壁部が吐出時においては受け皿表面より上方に前進し、吐出後にあっては受け皿表面と同じ位置若しくは表面より陥没した位置に後退する吐出器付きの容器。
【請求項2】
前記障壁部が非吐出時には吐出口をふさぎ、吐出時には吐出口を開く弁を構成する請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記吐出口が受け皿の下端である中央に設けてある請求項1又は2に記載の容器。
【請求項4】
泡生成機構を備え、前記吐出口より内容物の泡を吐出する請求項1〜3のいずれかに記載の容器。
【請求項5】
内容物を収容する容器本体がエアゾール容器である、請求項1〜3のいずれかに記載の容器。
【請求項6】
内容物吐出機構としてポンプを備える請求項1〜4のいずれかに記載の容器。
【請求項7】
前記受け皿を下方に押すことで内容物が吐出される請求項1〜6のいずれかに記載の容器。
【請求項8】
吐出口の周辺に吐出された内容物を貯留するための受け皿を備えた吐出器であって、
吐出口に内容物が吐出する方向を変える障壁部を設け、該障壁部が吐出時においては受け皿表面より上方に前進し、吐出後にあっては受け皿表面と同じ位置若しくは表面より陥没した位置に後退する吐出器。
【請求項9】
前記障壁部が非吐出時には吐出口をふさぎ、吐出時には吐出口を開く弁を構成する請求項8に記載の吐出器。
【請求項10】
前記吐出口が受け皿の下端である中央に設けてある請求項8又は9に記載の吐出器。
【請求項11】
泡生成機構を備え、前記吐出口より内容物の泡を吐出する請求項8〜10のいずれかに記載の吐出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−120443(P2008−120443A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−309597(P2006−309597)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】