説明

吐水装置または吐水装置を備えた水栓装置

【課題】
被検知体の動きに応じた最適なタイミングで吐水を開始することができる吐水装置を提供する。
【解決手段】
吐水部と、
放射した電波の反射波によって被検知体の移動に関する情報を取得するセンサ部と、
前記センサ部からの検知信号に基づいて前記吐水部からの吐水を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記被検知体が前記吐水部に到達する前に前記吐水を開始させるために、前記被検知体の前記吐水部への接近動作における速度が所定時間略一定であった後、速度変化を検知して、前記吐水を開始することを特徴とする吐水装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐水装置に関し、より具体的には、手洗い場やトイレ、キッチンなどに設け
られ、マイクロ波などの電波センサを用いて被検知体を検知して吐水を開始する吐水装置またはその吐水装置を備えた水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体を検知して自動的に吐水を開始する吐水装置としては、被検知体である人体が到達
点に達したことを検知したら、吐水を開始するものがあった。また、他の物体を誤検知しないために、人の手のみを検知できる領域に、センサの検知可能範囲を限定し、人の手が吐水口付近の到達点に達したら、吐水を開始するものがあった。
【0003】
また、マイクロ波などの送信波が被検知体に当たると発生する反射波あるいは透過波を受信することにより、そのドップラー周波数信号のパワースペクトルを求め、そのピーク値と所定の閾値とを比較することにより、人体を検知する人体検知装置が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−80150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、人の手が吐水口付近に到達したことを検知してから吐水を開始するのでは、使用者が欲する吐水のタイミングよりも実際に吐水される吐水のタイミングが遅くなりやすいという問題があった。また、ドップラー周波数信号のパワースペクトルは、センサまでの距離と反射体の面積や形状に依存するため、吐水タイミングの遅れを解決する為に、吐水装置に接近する人体を予備的に検知しようとした場合、パワースペクトルの閾値のみによる人体検知方法では、個人差でパワースペクトルの値が変動する為、人体のおよその位置関係しか分からず、人体が到達点を通過した場合に、その吐水装置を使う意図の有無に関わらず吐水を開始してしまう恐れがあった。また、手のみを検知する場合においても、吐水口の下に挿入された手の掌の向きなどによっては十分な強度の反射波が得られず、挿入された手を確実に検知できない場合もあった。
【0005】
かかる課題を鑑み、本発明は、被検知体から得られる検知信号の時系列変化と速度情報をセンシングすることにより、人の手が吐水口の下に達する直前など、被検知体の動きに応じた最適なタイミングで吐水を開始することができる吐水装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、吐水部と、
放射した電波の反射波によって被検知体の移動に関する情報を取得するセンサ部と、
前記センサ部からの検知信号に基づいて前記吐水部からの吐水を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記被検知体が前記吐水部に到達する前に前記吐水を開始させるために、前記被検知体の前記吐水部への接近動作における速度が所定時間略一定であった後、速度変化を検知して、前記吐水を開始することを特徴とする吐水装置が提供される。
【0007】
また、本発明の一態様によれば、前記制御部は、前記速度変化の内、前記被検知体が減速することを検知して前記吐水を開始することを特徴とする請求項1記載の吐水装置が提供できる。
【0008】
また、本発明の一態様によれば、前記吐水部からの吐水を受ける受水部をさらに備え、前記センサ部は、前記受水部の内部または、前記受水部の外部近傍が検知エリアとなるように設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の水栓装置が提供できる。
【0009】
また、本発明の一態様によれば、前記センサ部は、前記被検知体の水栓装置への接近を検知するために前記受水部の外部近傍に設けられた第1の検知エリアと、前記被検知体の前記吐水部への接近を検知するために、前記受水部の内部に設けられた第2の検知エリアにて前記検知検知エリアを構成しており、前記制御部は、前記第1または第2の検知エリアの情報に基づいて前記吐水を開始することを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の水栓装置が提供できる。
【0010】
また、本発明の一態様によれば、前記制御部は、前記第1の検知エリアにおいて、前記被検知体の速度が所定時間略一定であった事を判定した後に、前記第2の検知エリアにおいて、前記被検知体の前記吐水部への接近動作における速度が所定時間略一定であった後、前記被検知体が減速することを検知して、前記吐水を開始することを特徴とする請求項4記載の水栓装置が提供できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被検知体が吐水装置に所定時間等速で接近した後に速度が変化したことを検知したら吐水を開始するため、被検知体の動きに応じた最適なタイミングで吐水を開始することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる吐水装置の構成を表す図であり、(a)は斜視図、(b)は側断面図である。この吐水装置は、センサ部100および制御部200を備えており、給水ホース10、吐水口(スパウト)30、受水部40等とともに水栓装置を構成している。なお、以降の各図面については、既出の図面に関して説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0013】
図2及び図3にセンサ部100と制御部200の具体的ブロック図を示す。センサ部100はアンテナ112、送信部114、受信部116及び差分検出部118からなる。アンテナ112は、送信部114で生成された高周波、マイクロ波、ミリ波などの10kHz〜100GHzの周波数帯の電波が放射される。具体的には、日本においては、人体を検知する目的には10.50〜10.55GHzの範囲、または24.05〜24.25GHzの範囲の周波数が使用できるため、アンテナ112からは、例えば10.525GHzの周波数を有する送信波T1が放射される。人体などの被検知体からの反射波または透過波T2は、アンテナ112を介して受信部116に入力される。ここでアンテナは図2のように送信部と受信部とを共通としてもよく、図3のように送信部と受信部用に異なるアンテナ112a、112bを設けても良い。差分検出部118から出力された検出信号は、制御部200に出力される。制御部200には、第1の判定手段300としてフィルタ210、周波数検出部220、判定部230、記憶手段240、バルブ250が設けられており、第1の判定手段300において、センサ部より出力された検出信号により吐水を開始するか否かを判定する。差分検出部118から出力された検出信号は、まずフィルタ210において高周波数成分が取り除かれる。吐水装置を使用する使用者の身体や手の接近や離遠の速度は、ドップラー周波数にして100Hz以下である場合が多いので、フィルタ210のカットオフ周波数を100Hz程度にすれば、外乱を除去して精度よく検知できる。
【0014】
図4は、被検知体の動作を説明する図である。図4(a)は、使用者の人体を被検知体aとして、被検知体aが吐水装置に向かい接近して吐水装置を使用する動作を説明する図である。。図5(a)に、図4(a)の被検知体aが水栓装置に接近する際の「速度の時間変化」の一例を示す。図5(b)は、その時被検知体aから得られる検知信号(フィルタ210からの出力信号)の「周波数の時間変化」を示す図である。図5(a)および図5(b)から、被検知体の速度に対応して検知信号の周波数が変化すると言うことが判る。従って、検知信号の周波数から被検知体の速度を検知できる。図5(c)はその時被検知体aから得られる検知信号の振幅(電圧値)を示す図である。図4(a)において被検知体aは、まず吐水装置に向かい接近する。このとき、被検知体aの速度は所定時間t0からt1の間略等速となる。略等速とは、周波数検出部220における検出分解能の範囲内の速度であることを指す。例えば周波数検出部220はバンドパスフィルターであり、0Hzから100Hzまで10Hz毎にフィルターを有するとき、略等速とは例えば10Hzから19Hzまでの範囲を指す。また、このときの振幅は、被検知体が吐水装置に近づくため増加し続ける。その後、自動水栓を使用したい位置、例えば吐水部30の真下まで近づくと減速して停止する。従来の自動水栓では、被検知体が自動水栓を使用したい位置に到達した時間t2で判定を行う。しかし、使用者が自動水栓を使用したい位置に到達してから吐水が行われるまでには、センサの判定に要する時間や判定後バルブ250を開いてから吐水口より水が吐出されるまでに要する時間等が必然的にかかるため、使用者が欲する吐水のタイミングより遅れてしまう。一方で上述したように、吐水装置を利用する前には、必ず被検知体aが停止する前に所定時間吐水装置への等速接近を伴う。本発明における吐水装置は、この等速接近を検知して吐水装置を吐水準備状態にすることにより、被検知体aが減速を始めた瞬間t1でバルブ250を開き、使用者の手が吐水装置を使用したい位置に到達する前に吐水を開始することで、使用者の欲する吐水のタイミングに後れることなく吐水を開始することが可能となる。
【0015】
次に、図4(b)は、使用者の人体を被検知体aとして、被検知体aが吐水装置に向かい接近して吐水装置を使用する動作を説明する図である。この場合においても図4(a)の手と同様、被検知体aはまず所定時間t0からt1の間略等速で吐水装置に向かって接近してくる。やがて水を使いたい位置、例えば吐水素内の手前に到達すると、減速して停止する。このように人体の吐水装置への接近時においても、図5に示したような速度の時間変化を示す。従って、人体を被検知体とした場合、人体が等速で所定時間略等速で接近したことを検知して吐水準備状態に移行し、人体が減速し始めた時間t1で判定を行い、使用者が吐水装置を使いたい位置に到達した時に吐水を開始することが出来る。使用者が手を差し出す前に吐水を行うことによって、例えば吐水部30の形状が斬新で、使用者が吐水部30から吐出される水の軌跡を予測できない場合などに、水の軌跡をあらかじめ使用者に示すことが出来、使用者が安心して手を差し出すことが出来る。
【0016】
さらに図4(c)は、人体が水栓装置に接近している最中に人の手、あるいはその手に持たれた歯ブラシやコップなどの被洗浄体を被検知体aが吐水部30に差し出される場合を表す。図6は、人体及び被洗浄体が水栓装置もしくは吐水部30に接近する時に得られる検知信号の周波数の変化を示す図である。この場合においては、使用者の人体が所定時間t0からt1の間略等速で吐水装置に向かって接近してくる。一方で所定時間t0からt1の間の時間t1‘に手を吐水部に向かって差し出し始める。その際の手の差し出し速度は、動いている人体より差し出されるため、人体の移動速度より早くなる。その後、人体の水栓装置への到達、及び被洗浄体の吐水部30への到達に際して、双方の速度が低下し、やがて停止に至る。このような場合、図4(a)及び(b)の場合と同様に、手もしくは人体が所定時間の間略等速で接近したことを検知して吐水準備状態に移行し、その後手もしくは人体が減速し始める時間t1でバルブ250を開いても良いが、手の差し出しにより人体の周波数よりも速い周波数が検出されるタイミングt1’でバルブ250を開くことにより、より速いタイミングで使用者に吐水を提供することが可能となる。
【0017】
図7は、本実施例における水栓装置とセンサ部100が検知信号を取得可能な範囲(以下、検知エリア)Aの位置関係を示す図である。図のように、検知エリアAは、受水部40の内側と、外部の一部空間に渡って設けられている。従来の自動水栓のように受信電圧もしくは電力値のみによる検出方法の場合、受水部外部に検知エリアAを設けると、被検知体が水栓を使用するか否かに関わらず水栓装置付近にいるだけもしくは通過するだけで吐水を開始してしまう。そのため、検知エリアを吐水部の真下付近に限定する必要があった。本発明では、検知信号の時系列変化に加え上述したような速度もセンシングするため、使用者が水栓装置を使用しようとする予備動作を確実に捉え、水栓装置の前を横切ったり、離遠すると言った水栓装置を利用しない行為に対する誤吐水を防止することが可能となり、被検知体が到達地点に達したときに、遅れることなく、確実に吐水を開始させる事が可能となる。
【0018】
センサ110は被検知体の速度情報の内、電波の発信源と被検知体を結ぶ直線上の速度情報のみを取得する。そのため、センサ110の設置位置としては、図5及び図7のように被検知体の接近が予測される方向の略延長線上に設置すると、被検知体の接近時の周波数を簡便に精度良く検出出来るため好ましい。逆に被検知体の接近方向に対して略垂直にセンサ110を設置した場合、実際の被検知体の移動速度をvとすると、センサが検出する速度vdは、

vd=vcosθ 式(2)
但し、vd:センサが取得する被検知体の速度
v :被検知体の真の速度
θ :センサと被検知体を結ぶ直線と、被検知体の移動方向がなす角度

のように表され、被検知体の位置によりθが変化する為、たとえ被検知体が等速であったとしても、センサが取得する被検知体の速度vdは変化してしまう。
従って、被検知体の速度を正確に取得するためは、上記影響を考慮した補正手段が必要となる。例えば上記センサに加えて被検知体の距離情報を検知できる距離センサを付与する事により、被検知体の位置に応じた補正をかけ、精度良く被検知体の速度を算出することが可能となる。また、空間上のある点に被検知体が来たことを検出する近接センサを付与することにより、その点を通過する等速動作時におけるvdの速度変化を記憶手段に保存しておき、被検知体がその点を通過した際の速度情報から真の速度を算出し、以降は保存した等速運動時の速度変化を基に被検知体の検知波形を解析して真の速度を算出しても良い。上述した方法は、図5の(a)、(b)および(c)の場合においても、被検知体の接近方向が若干ずれた場合に、より精度良く真の速度を算出することが可能になる。
【0019】
図8は、本発明の第1の実施の形態における制御部200による吐水開始手順を説明するフローチャートである。
制御部200は、センサ部100から検知信号を取得し(ステップS1)、この検知信号から被検知体の周波数を求める(ステップS2)。この場合、例えば、検知信号の全周波数帯域(0〜100Hz)の内で最大の振幅を有する周波数を、その被検知体の周波数として求める。
【0020】
一方で、検知信号の振幅を求め、振幅が時間変化とともに増加しているか否かを判定する(ステップS3)。増加しているか否かを判定する方法としては、例えば、制御部200の検知信号サンプリング時間をもとに、ある時間にサンプリングした検知信号と、その次のタイミングにサンプリングした検知信号の振幅を比較し、その差が制御部200の振幅分解能の範囲を超えた場合に増加と判定してもよい。この場合の振幅分解能とは、例えばA/Dコンバータの分解能を指す。また、外乱やセンサ部のノイズによる誤検知を防止するため、上記の条件が複数回連続した場合に増加と判定してもよいし、ある時間とその次にサンプリングした検知信号の差が一定閾値以上ある場合にのみ増加と判定してもよい。
【0021】
ステップS3の条件が成立した場合(ステップS3でYes)、その時間における検知信号の周波数帯を記憶手段240に記憶する(ステップS4)。振幅が途中で減少した場合(ステップS3でNo)には、ステップS1に戻る。
【0022】
その後所定時間の間振幅が増加し続け、且つ周波数が略一定であるか否かを判定し、その条件を満たした場合(ステップS5でYes)には被検知体が水栓装置を使用する可能性があると判断し、吐水準備段階に移行する(ステップS6)。この際、音や光などで使用者に報知することにより、使用者が水栓装置の状態を把握することが出来、迷うことなく安心して水栓装置を使用することが可能となる。一方で、上記条件を満たさなかった場合(ステップS5でNo)には、ステップS1に戻る。
【0023】
吐水準備段階に移行した後も振幅が増加し続け且つ周波数が変化したかを判定し、その条件を満たした場合(ステップS7でYes)、吐水を開始する(ステップS8)。またその条件を満たさなかった場合(ステップS7でNo)、吐水準備段階をキャンセルし(ステップS9)、ステップS1に戻る。条件を満たさない場合としては、例えば水栓装置の前を人体が通過する場合が考えられる。この場合、接近時には振幅が増加し、且つ周波数が略一定であるため、吐水準備段階に移行するが、その後は周波数が一定であるが水栓装置から遠ざかるに従い振幅が減少するため、条件を満たさない。
【0024】
以上説明した第1の実施の形態によれば、被検知体が吐水装置に接近する際の速度が略一定であり、その後速度が変化したことを検知したら吐水を開始させることにより、被検知体が目標とする到達地点に達すると同時に吐水がなされ、快適に使用できる。
【0025】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図7は、本実施例における水栓装置とセンサ部100が検知信号を取得可能な範囲(以下、検知エリア)Aの位置関係を示す図である。第2の実施の形態では図9に示すようにセンサ部100は受水部40の外部近傍に設けられた検知エリアAのほかに、受水部40内部に設けられた検知エリアBを有する。、夫々の検知エリアからの検知信号を識別することによって、使用者が水栓装置を使用しようとする予備動作をより確実に識別することが出来、より使用者の欲するタイミングに適した吐水を行うことが可能となる。例えば図4(c)のように人体の接近と手の接近が同時に生じる場合、受水部外部にある人体の検知信号と、受水部内部に到達する手の検知信号を識別することが可能となる。それにより、例えば家庭の洗面所のように受水部40の外部で人体が様々な動作を行うことが予測されるような場所においても、使用者が水栓装置を使用しようとする行為のみを確実に識別することが可能となる。
【0026】
検知エリアを識別する手段としては、例えば、アンテナ112を電波を複数方向に切り替えることが出来るアンテナとし、被検知体の動作に対して十分速い速度で放射方向を切り替えることにより、検知信号の周波数や振幅の検知性能を低下させることなく、複数方向の検知信号を識別できる。電波を複数方向に切り替えられるアンテナ112の構成例を図10に示す。
前記アンテナは、前記基板の表面上に配設された高周波信号が給電される給電素子と、前記給電素子から所定の素子間スペースだけ離れて配設された複数の無給電素子と、 前記無給電素子と接地電極とを電気的に短絡させるか、もしくは開放させるかを切り替えて電波の放射方向を切替えるスイッチを有することを特徴とする。スイッチの構成としては高周波の位相を切り替えることが出来るものであれば良く、例えば、図示したようなFETでも良い。
【0027】
図11は、本発明の第2の実施の形態においての制御部200による吐水開始手順を説明するフローチャートである。制御部200は、センサ部100から検知信号を取得し(ステップS1)、この検知信号から被検知体の周波数を求める(ステップS2)。この場合、例えば、検知信号の全周波数帯域(0〜100Hz)の内で最大の振幅を有する周波数を、その被検知体の周波数として求める。
【0028】
一方で、検知信号の振幅を求め、所定時間の間、振幅が時間変化とともに増加しており、且つ周波数が略一定か否かを判定する(ステップS3)。増加しているか否かを判定する方法としては、例えば、制御部200の検知信号サンプリング時間をもとに、ある時間にサンプリングした検知信号と、その次のタイミングにサンプリングした検知信号の振幅を比較し、その差が制御部200の振幅分解能の範囲を超えた場合に増加と判定してもよい。この場合の振幅分解能とは、例えばA/Dコンバータの分解能を指す。また、外乱やセンサ部のノイズによる誤検知を防止するため、上記の条件が複数回連続した場合に増加と判定してもよいし、ある時間とその次にサンプリングした検知信号の差が一定閾値以上ある場合にのみ増加と判定してもよい。
【0029】
ステップS3の条件が成立した場合(ステップS3でYes)、被検知体が水栓装置を使用する可能性があると判断し、吐水準備段階に移行する(ステップS4)。この際、音や光などで使用者に報知することにより、使用者が水栓装置の状態を把握することが出来、迷うことなく安心して水栓装置を使用することが可能となる。振幅が途中で減少した場合や周波数が変化した場合(ステップS3でNo)には、ステップS1に戻る。
【0030】
吐水準備段階に移行した後、振幅が増加し続け且つ周波数が低下したかを判定し、その条件を満たした場合(ステップS5でYes)、第2の検知エリアBからの検知信号を見る(ステップS6)。そして、その検知信号の周波数を求め(ステップS7)、所定時間の間、振幅が時間変化とともに増加しており、且つ周波数が略一定か否かを判定する(ステップS8)。上記条件を満たした場合(ステップS8でYes)、人体に続き、手等の被洗浄体が吐水口30に向けて差し出されたと判断する。上記条件を満たさなかったとき(StepS8でNo)、吐水準備段階をキャンセルし(ステップS11)、ステップS1に戻る。
【0031】
その後、検知エリアBにて振幅が増加し続け、且つ周波数が低下したか否かを判定し(ステップS9)、条件を満たした場合(ステップS9でYes)、被検知体が水栓装置を利用しようとしていると判別し、吐水を開始する(ステップS10)。一方上記条件を満たさなかったとき(ステップS9でNo)、吐水準備段階をキャンセルし(ステップS11)、ステップS1に戻る。
【0032】
ステップS5の判断とステップS8の判断は、使用者の状況に応じて前後する場合が生じる。図11のように、使用者が水栓装置に接近して減速もしくは停止後に手等の被洗浄体を吐水口に向けて差し出す場合には上述したステップで処理を行うことにより判断が出来る。一方で、図4(d)のように、人体が接近しつつ且つ手を差し出すような場合においては、ステップS5の判断の前にステップS8の判断を行う場合が生じる。従って、この様な場合には、ステップS5で一度Noの判定を受けた後も、S6からS8の処理を行う(ステップS6B、ステップS7B、ステップS8B)。その後第1の検知エリアAで振幅が増加し続け、且つ周波数が低下したか否かを判定し(ステップS5B)、条件を満たした場合(ステップS5BでYes)、ステップS9の処理に移行する。
【0033】
上記の判定を行うことによって、人体の動きと手などの被洗浄体の動きを識別し、より詳細に動作の判別ができるため、使用者にとってより最適なタイミングで吐水を制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる吐水装置の構成を表す図である。
【図2】センサ部100と制御部200の具体例のブロック図である。
【図3】センサ部100と制御部200の具体例のブロック図である。
【図4】第1の実施の形態においての被検知体の動作を説明する図である。
【図5】第1の実施の形態においてのセンサ部100から出力される上記検知信号の特性を説明する図である。
【図6】第1の実施の形態においての被検知体の目標とする到達地点からの距離に対する検知信号の周波数の変化の例を示す図である。
【図7】第1の実施の形態における水栓装置と検知エリアの位置関係を説明する側面図である。
【図8】第1の実施の形態においての制御部200による吐水開始手順を説明するフローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施の形態における水栓装置と検知エリアの位置関係を説明する側面図である。
【図10】第2の実施の形態においての検知エリアを複数方向に有する為のアンテナ構成の例を示す図である。
【図11】第2の実施の形態においての制御部200による吐水開始手順を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0035】
10 給水ホース、 30 吐水口、 40 受水部、100 センサ部、101 基板、112、112a、112b アンテナ、114 送信部、116 受信部、118 差分検出部、121、22,123,124 無給電素子、129 給電素子、151,152、153,154 スイッチ 200 制御部、210 フィルタ、220 周波数検出部、230 判定部、240 記憶手段、250 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水部と、
放射した電波の反射波によって被検知体の移動に関する情報を取得するセンサ部と、
前記センサ部からの検知信号に基づいて前記吐水部からの吐水を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記被検知体が前記吐水部に到達する前に前記吐水を開始させるために、前記被検知体の前記吐水部への接近動作における速度が所定時間略一定であった後、速度変化を検知して、前記吐水を開始することを特徴とする吐水装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記速度変化の内、前記被検知体が減速することを検知して前記吐水を開始することを特徴とする請求項1記載の吐水装置。
【請求項3】
前記吐水部からの吐水を受ける受水部をさらに備え、前記センサ部は、前記受水部の内部または、前記受水部の外部近傍が検知エリアとなるように設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の水栓装置。
【請求項4】
前記センサ部は、前記被検知体の水栓装置への接近を検知するために前記受水部の外部近傍に設けられた第1の検知エリアと、前記被検知体の前記吐水部への接近を検知するために、前記受水部の内部に設けられた第2の検知エリアにて前記検知検知エリアを構成しており、前記制御部は、前記第1または第2の検知エリアの情報に基づいて前記吐水を開始することを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の水栓装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1の検知エリアにおいて、前記被検知体の速度が所定時間略一定であった事を判定した後に、前記第2の検知エリアにおいて、前記被検知体の前記吐水部への接近動作における速度が所定時間略一定であった後、前記被検知体が減速することを検知して、前記吐水を開始することを特徴とする請求項4記載の水栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−144473(P2010−144473A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325499(P2008−325499)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】