吐水装置
【課題】人の手が吐水口の下に達する直前など、被検知体の動きに応じた最適なタイミングで吐水を開始することができる吐水装置を提供する。
【解決手段】吐水部と、放射した電波の反射波によって被検知体の移動に関する情報を取得するセンサ部と、前記センサ部からの検知信号に基づいて前記吐水部からの吐水を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、被検知体が減速して第1の所定速度以下になったことを検知したら、前記吐水を開始させることを特徴とする吐水装置が提供される。
【解決手段】吐水部と、放射した電波の反射波によって被検知体の移動に関する情報を取得するセンサ部と、前記センサ部からの検知信号に基づいて前記吐水部からの吐水を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、被検知体が減速して第1の所定速度以下になったことを検知したら、前記吐水を開始させることを特徴とする吐水装置が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐水装置に関し、より具体的には、手洗い場やトイレ、キッチンなどに設けられ、マイクロ波などの電波センサを用いて被検知体を検知して吐水を開始する吐水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体を検知して自動的に吐水を開始する吐水装置としては、被検知体である人体が到達点に達したことを検知したら、吐水を開始するものがあった。
また、他の物体を誤検知しないために、人の手のみを検知できる領域に、センサの検知可能範囲を限定し、人の手が吐水口付近の到達点に達したら、吐水を開始するものがあった。
【0003】
マイクロ波などの送信波が被検知体に当たると反射波あるいは透過波を生じる。この反射波あるいは透過波を受信することにより、人体を検知することができ、水栓装置などに使用される。
放射したマイクロ波の人体からの反射波を受信して、そのドップラー周波数信号のパワースペクトルを求め、そのピーク値と所定の閾値とを比較することにより、人体を検知する人体検知装置が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−80150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、身体や人の手などの被検知体が到達点に達したことを検知してから吐水を開始するのでは、吐水のタイミングが遅くなりやすいという問題があった。
また、ドップラー周波数信号のパワースペクトルは、センサまでの距離と反射体の面積とに依存する。吐水口の下に挿入された手の掌の向きなどによっては十分な強度の反射波が得られず、挿入された手を確実に検知できない場合もあった。
【0005】
本発明は、人の手が吐水口の下に達する直前など、被検知体の動きに応じた最適なタイミングで吐水を開始することができる吐水装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、吐水部と、放射した電波の反射波によって被検知体の移動に関する情報を取得するセンサ部と、前記センサ部からの検知信号に基づいて前記吐水部からの吐水を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、被検知体が減速して第1の所定速度以下になったことを検知したら、前記吐水を開始させることを特徴とする吐水装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被検知体が減速して所定速度以下になったことを検知したら吐水を開始することにより、被検知体の動きに応じた最適なタイミングで吐水を開始することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる吐水装置の構成を表す図であり、(a)は斜視図、(b)は側断面図である。この吐水装置は、センサ部100および制御部200を備えており、給水ホース10、吐水口(スパウト)30、陶器製の受水部40等とともに水栓装置を構成している。
なお、以降の各図面については、既出の図面に関して説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0009】
センサ部100は、マイクロ波あるいはミリ波などの高周波の電波を放射(送信)し、放射した電波の被検知体からの反射波を受信して、検知可能範囲A内において被検知体の有無を検知し、その検知信号を出力する高周波センサである。
図2及び図3は、センサ部100と制御部200の2つの具体例のブロック図である。
【0010】
センサ部100には、アンテナ112、送信部114、受信部116、差分検出部118が設けられている。送信部114に接続されたアンテナ112からは、高周波、マイクロ波あるいはミリ波などの10kHz〜100GHzの周波数帯の電波が放射される。具体的には、アンテナ112からは、例えば10.525GHzの周波数を有する送信波T1が放射される。身体などの被検知体からの反射波または透過波T2は、アンテナ112を経由して受信部116に入力される。ここで、アンテナは、図2に表したように送信側と受信側とを共通としてもよく、または、図3に表したように、送信部114にはアンテナ112aを接続し、受信部116にはアンテナ112bを接続してもよい。
送信波の一部と受信波とは、差分検出部118にそれぞれ入力されて合成され、ドップラー効果が反映された出力信号が出力される。差分検出部118から出力された検出信号は、制御部200に出力される。制御部200には、フィルタ210、周波数検出部220、判定部230、記憶手段240、バルブ250が設けられている。差分検出部118から出力された検出信号は、まずフィルタ210において高周波数成分が取り除かれる。この際のフィルタリング周波数は、例えば100Hzとすることができる。自動水栓(吐水装置)を使用する使用者の身体や手の接近や離遠の速度は、100Hz以下である場合が多いので、このようにすれば、外乱を除去して精度よく検知できる。
差分検出部118から出力された検出信号は、周波数の低いベースラインに周波数の高い信号が重畳した波形を有する。高周波数成分には、ドップラー効果に関する情報が含まれる。すなわち、身体などの被検知体が移動すると、ドップラー効果によって反射波の波長がシフトする。ドップラー周波数ΔF(Hz)は、下記の式(1)により表すことができる。
ΔF=Fs−Fb=2×Fs×v/c 式(1)
但し、Fs:送信周波数(Hz)
Fb:反射周波数(Hz)
v:物体の移動速度(m/s)
c:光速(=300×106m/s)
センサ部100に対して被検知体が相対的に移動すると、式(1)で表されるように、その速度vに比例した周波数ΔFを含む出力信号を得ることができる。出力信号は周波数スペクトラムを有し、スペクトラムのピークに対応するピーク周波数と移動体の速度vとの間には相関関係がある。従って、ドップラー周波数ΔFを測定することにより速度vを求めることができる。なお、日本においては、人体を検知する目的には10.50〜1055GHzの範囲、または24.05〜24.25GHzの範囲の周波数が使用できる。
【0011】
図4は、フィルタ210から出力される検知信号の特性を説明する図である。
図4(a)は、被検知体としての人体の速度の時間特性の例であり、時間経過とともに減速している。使用者が水栓装置に接近してきて使用位置で止まる場合の使用者の人体速度や、使用位置で止まっている使用者が吐水口下に手を挿入して止める場合の手の速度は、目標とする到達地点に穏やかに到達しようとするため、到達地点に近づくにつれて減速する特性を示す。
逆に、被検知体が上記の到達地点から離遠する動作をする場合には、到達地点から離れるに従って加速し、その速度を上げる特性を示すことになる。
【0012】
図4(b)は、使用者の人体などの被検知体のセンサ部100からの距離に対する検知信号(フィルタ210からの出力信号)の振幅(電圧値)を示す図である。検知信号の振幅は、被検知体がセンサ部100に接近して、その被検知体からの反射波が大きくなるに従って大きくなる。
従って、被検知体がセンサ部100から離遠していく場合には、検知信号の振幅は、徐々に小さくなる。
【0013】
図4(c)は、被検知体の速度が図4(a)に表したように減速したときの検知信号の周波数の変化を示す図である。図4(a)および図4(c)から、被検知体の速度に応じて検知信号の周波数が変化し、被検知体が減速すると検知信号の周波数は減少することが判る。
従って、検知信号の周波数から被検知体の速度を検知できるとともに、検知信号の周波数の減少により、被検知体の減速を検知でき、逆に検知信号の周波数の増加により、被検知体の加速を検知できることとなる。本実施形態においては、例えば、判定部220(図2、図3)においてこの判断をすることができる。
【0014】
図5は、被検知体の動作を説明する図である。図5(a)および図5(b)は、人の手、あるいはその手に持たれた歯ブラシやコップなどの被洗浄体を被検知体aとして、被検知体aが減速して所定速度以下になったことを検知する場合を表し、図5(a)はセンサ部100の検知可能範囲A内に使用者の人体が位置している状態、図5(b)はセンサ部100の検知可能範囲A内に使用者の人体が位置していない状態を表す。使用者は、通常は、自動水栓から離れた位置から自動水栓に接近し、使用可能な位置まで近づくと減速して自動水栓の前に立ち止まる。つまり、図5(a)及び(b)のいずれの場合についても、これらの状態になる前に使用者の身体が自動水栓に対して接近し、減速する。
また、図5(c)は、使用者の人体を被検知体aとして、接近して来た被検知体aの減速を検知する場合を表す。この場合にも、使用者の身体は自動水栓に接近すると減速し、自動水栓を使用可能な位置まで近づくと停止する。
本実施形態においては、このように使用者の身体や手が自動水栓に接近する際に減速することを検知して吐水を制御する。つまり、被検知体の吐水部への接近、すなわち、受水部40や吐水口30の下や吐水流の軌跡上や吐水口30からの吐水の受水部40への着水地点などの到達地点へ被検知体が接近する際に減速することを検知して吐水を制御する。
【0015】
図6は、被検知体(検知対象物)が目標とする到達地点までの距離に対する検知信号の周波数の変化を例示するグラフ図である。
図6に表したように、被検知体(人の手、被洗浄体、身体)が動いて、目標とする到達地点に達する場合には、被検知体の速度は到達地点に近づくにつれて遅くなり、それに従って検知信号の周波数は低くなる。そして、やがて到達地点の直前に達すると、検知信号の周波数は、所定の閾値周波数f1以下となる。なお、ここでの目標とする到達地点は、人の手や被洗浄体の場合には、例えば吐水口30の近傍であり、身体の場合には、例えば水栓装置の前である。
【0016】
このような特性は、被検知体が、人の手または被洗浄体(図5(a)または図5(b))、あるいは身体(図5(c))のいずれであっても、使用者がセンサ部100の検知可能範囲A内においては、到達地点に近づくと減速することになる。
【0017】
図6に表した具体例においては、被検知体が動いてセンサ部100の検知可能範囲内に入り、到達地点からの距離がe1のときに、センサ部100から制御部200に出力される検知信号の被検知体についての周波数が閾値f1となる(図6のポイントp1)。そして、このタイミングで、判定部230は、バルブ250を開いて吐水を開始させる。
やがて、被検知体は、さらに減速して到達地点に達するが、その直前に達したとき(e1)にバルブ250を開いて吐水を開始させるように判定部230が吐水開始タイミングを制御しているので、被検知体が到達地点に達したときに、遅れることなく、吐水が開始される。
【0018】
このように、本発明の実施の形態1では、被検知体が減速して所定速度(v1とする)以下になったことを検知したら、被検知体が目標とする到達地点の直前に達したものとして、吐水を開始させる。
これにより、被検知体が到達地点に達すると同時に吐水が開始されるので、快適に使用できる。
【0019】
図7は、本発明の第1の実施の形態においての被検知体の具体例を説明する側面図である。
図7(a)に表した具体例においては、人の手を被検知体aとし、手が減速して速度v1以下になったことを検知したら、手が到達地点(吐水口30の下や吐水流の軌跡上)の直前に達したものとして、吐水を開始する。
【0020】
図7(b)に表した具体例においては、歯ブラシやコップなどの被洗浄体を持った手を被検知体aとしている。手に持つ歯ブラシやコップなどの被洗浄体には、センサ部100によって検知しにくいものもあるが、これら被洗浄体の動きや速度は、それを持っている人の手と同じである。
そこで、上記の検知しにくい被洗浄体の洗浄のための吐水開始タイミングについては、それを持っている手が減速して速度v1以下になったことを検知したら、被洗浄体が到達地点(吐水口30の下や吐水流の軌跡上)の直前に達したものとして、吐水を開始する。
【0021】
図7(c)に表した具体例においては、歯ブラシやコップなどの被洗浄体そのものを被検知体aとしている。手に持つ歯ブラシやコップなどの被洗浄体には、センサ部100によって検知できる(検知しやすい)ものもある。
そこで、上記の検知できる被洗浄体については、これらの被洗浄体を被検知体aとして、これら被洗浄体の洗浄のための吐水開始タイミングについて、被洗浄体が減速して速度v1以下になったことを検知したら、被洗浄体が吐水口30の下や吐水流の軌跡上の直前に達したものとして、吐水を開始する。
【0022】
図7(d)に表した具体例においては、吐水口30が受水部40に突出していない場合に、身体を被検知体aとしている。図7(d)に示すように吐水口30が受水部40に突出していない場合など、吐水口30が使用者に判りにくい場合には、使用者は水がどのように出るか判らないため、手を出しにくい。
そこで、このような場合には、身体を被検知体aとして、身体が減速をして速度v1以下になったことを検知したら、バルブ250を開いて吐水を開始させ、あらかじめ瞬間的または連続的に吐水をする。
これにより、使用者は吐水流の軌跡が判り、ためらわずに手を出すことができる。
【0023】
図7(e)に表した具体例においては、使用者が車椅子に乗った方である場合に、身体を被検知体aとしている。図7(e)に示すように使用者が車椅子に乗った方である場合など、使用者が受水部40の奥まで手を出すことが困難な場合にも、上記と同様に、身体を被検知体aとして、身体が減速して速度v1以下になったことを検知したら、バルブ250を開き、あらかじめ瞬間的または連続的に吐水をする。
車椅子などの使用者は、あらかじめ吐水された場所に手やコップなどを出せばよいので、受水部40の奥まで手を延ばさなければ、検知されずに吐水が開始されないことがなくなり、楽な姿勢で使用できる。
【0024】
図8は、本発明の第1の実施の形態においての制御部200による吐水開始手順を説明するフローチャートである。
制御部200は、センサ部100から検知信号を取得し(ステップS1)、この検知信号から被検知体の周波数を求めて記憶する(ステップS2)。
【0025】
この場合、例えば、検知信号の全周波数帯域(0〜100Hz)の内で最大の振幅を有する周波数を、その被検知体の周波数として求める。
【0026】
次に、制御部200は、求めた被検知体の周波数をもとに、被検知体が減速して所定速度v1以下になったか否かを判定する(ステップS3)。
この被検知体の減速判定は、今回求めた被検知体の周波数を、前回以前にすでに求めてある被検知体の周波数や、およびあらかじめ設定されている閾値f1と比較することによって判定される。
【0027】
この場合の減速判定の手順としては、例えば、前回および前々回求めた被検知体の周波数が閾値f1を超えており、かつ今回求めた被検知体の周波数が閾値f1以下(従って前回の検知信号の周波数よりも低くなっている)であれば、被検知体が減速して速度v1以下になったと判定し、そうでなければ、被検知体の速度は速度v1を超えていることとなるので、被検知体は減速して速度v1以下にはなっていないと判定する。なお、前回および前々回に求めた被検知体の周波数は、記憶手段240(図2、図3参照)に記憶させ、読み出すことができる。
【0028】
その結果、被検知体が減速して速度v1以下になっていないと判定した場合には(ステップS3でNO)、上記ステップS1に戻って、再び検知信号を取得する。
また、被検知体が減速して速度v1以下になったと判定した場合には(ステップS3でYES)、バルブ250を開いて吐水を開始させる(ステップS4)。
【0029】
以上説明した第1の実施の形態によれば、被検知体が減速して所定速度以下になったことを検知したら、吐水を開始させることにより、被検知体が目標とする到達地点に達すると同時に吐水がなされ、快適に使用できる。
【0030】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
使用者が歩いてきて水栓装置に接近し、手やコップなどを差し出して使用する場合のように、身体の接近と、手やコップなどの挿入と、の2回の動きがある場合には、身体の減速と手の減速の2度の減速が検知される。
そこで、本発明の第2の実施の形態では、1回目の減速を検知しても、それは身体の減速であるとして吐水を開始せず、続けて2度目の減速を検知したら、それは手や被洗浄体の減速であるものとして、吐水を開始させる。
【0031】
つまり、第1の被検知体を身体、第2の被検知体を手やコップなどとして、第1の被検知体が減速して第1の所定速度(v2とする)以下になったこと(第1回目の減速)を検知したあと、第2の被検知体が減速して第2の所定速度(v3とする)以下になったことを検知したら、判定部230は、第2の被検知体が目標とする到達地点の直前に達したものとして、吐水を開始させる。
これにより、身体の接近と、手やコップなどの挿入と、を識別でき、身体の接近のみによって吐水を開始することはなく、手や被洗浄体が到達地点(例えば吐水口下や吐水流の軌跡上))に達すると同時に吐水がなされ、無駄な吐水を抑制して快適に使用できる。
【0032】
図9は、本発明の第2の実施の形態における被検知体の動作を説明するための上面図である。使用者は、水栓装置に接近して、その手あるいは手に持った被洗浄体(歯ブラシ)やコップなどを出す一連の動作をする。
まず、図9(a)に示すように、第1の被検知体(身体)b1である使用者は、歩いて水栓装置に接近し、水栓装置に接近するにつれて減速し、水栓装置前の到達地点に達する。次に、図9(b)に示すように、使用者が第2の被検知体b2である手または被洗浄体を動かし、この手または被洗浄体は、吐水部への接近、すなわち受水部40や吐水口30の下や吐水流の軌跡上や吐水口30からの吐水の受水部40への着水地点などの到達地点に接近するにつれて減速する。
【0033】
図10は、被検知体(検知対象物)の目標とする到達地点からの距離に対する検知信号の周波数の変化の例を示す図である。この具体例では、到達地点は、第2の被検知体(使用者の手など)の到達地点である吐水口30の下や吐水流の軌跡上であるものとする。
【0034】
図10に示すように、使用者が動いて水栓装置に接近するにつれて、第1の被検知体(使用者の身体)の速度は遅くなり、それに従って検知信号の周波数は低くなり、やがて水栓装置の直前まで達すると、使用者は減速してその速度が第1の所定速度v2以下になり、検知信号の周波数は低くなって閾値周波数f2以下となる(図10のポイントp2)。使用者の速度がv2で、検知信号の周波数がf2のとき、第2の被検知体の上記到達地点からの使用者の距離はe2である。
【0035】
次に、使用者が手を動かすと、第2の被検知体(使用者の手など)の速度は、上記使用者の身体の場合と同様に、上記到達地点に近づくにつれて遅くなり、やがて到達地点の直前まで達すると、使用者の手などは減速してその速度が第2の所定速度v3以下になり、検知信号の周波数は低くなって閾値周波数f3以下となる。第2の被検知体(使用者の手、被洗浄体)の速度がv3で、検知信号の周波数がf3のとき、上記到達地点からの第2の被検知体の距離はe3(<e2)である。なお、所定速度v2とv3の大小関係や、閾値周波数f2とf3との大小関係については、図10に例示したものには限定されず、略同一でもあってもよく、あるいは図10に表した具体例とは逆の大小関係であってもよい。
【0036】
第2の実施の形態においては、第2の被検知体が減速して速度v3になったタイミングでバルブ250を開く。これにより、第2の被検知体(使用者の手、被洗浄体)が到達地点(吐水口30の下や吐水流の軌跡上)に達したときに、吐水を開始できる。
【0037】
図11は、第2の実施の形態においての制御部200による吐水開始手順を説明するフローチャートである。
制御部200は、センサ部100から検知信号を取得し(ステップS1)、この検知信号から第1の被検知体の周波数を求めて記憶手段240に記憶する(ステップS2)。
【0038】
この場合、例えば、検知信号の周波数帯域(0〜100Hz)の内、振幅のピーク値を有する周波数を、その第1の被検知体の周波数とする。
【0039】
次に、判定部230は、求めた第1の被検知体の周波数をもとに、第1の被検知体(身体)が減速して所定速度v2以下になったか否かを判定する(ステップS3)。
この第1の被検知体の減速判定は、今回求めた第1の被検知体の周波数を、前回以前にすでに求めてある第1の被検知体の周波数や、およびあらかじめ設定されている閾値f2と比較することによって判定される。なお、前回以前にすでに求めた第1の被検知体の周波数や、あらかじめ設定されている閾値f2などは、記憶手段240(図2、図3)に格納しておくことができる。
【0040】
この場合の減速判定の手順としては、例えば、前回および前々回求めた第1の被検知体の周波数が閾値f2を超えており、かつ今回求めた第1の被検知体の周波数が閾値f2以下(従って前回の周波数よりも低くなっている)であれば、第1の被検知体が減速して速度v2以下になった(第1回目の減速検知をした)と判定し、そうでなければ、第1の被検知体は減速して速度v2以下にはなっていない(第1回目の減速検知をしていない)と判定する。
【0041】
その結果、第1の被検知体(身体)が減速して速度v2以下になっておらず、第1回目の減速検知が未だなされていないと判定した場合には(ステップS3でNO)、上記ステップS1に戻って再び検知信号を取得する。
一方、第1の被検知体が減速して速度v2以下になり、第1回目の減速検知をしたと判定した場合には(ステップS3でYES)、制御部200は、例えば第1回目の減速検知をしたことを記憶した上で、ステップS10に進む。
【0042】
制御部200は、ステップS10で再び検知信号を取得し、この取得した検知信号から、今度は第2の被検知体(使用者の手やその手に持ったコップなど)の周波数を求める(ステップS11)。
【0043】
この場合、第1回目の減速検知をしたあとに、判定の対象とする周波数を第1の被検知体のものから第2の被検知体のものに切り換えることが必要となる。そこで、第1の被検知体の周波数はすでに第1の閾値f2以下になっていると考えられるので、第1回目の減速検知をしたあと、最初に第2の被検知体の周波数を求めるときには、例えば、検知信号のf2を超える周波数帯域の内で最大の振幅を有する周波数を、第2の被検知体の周波数として検知を続ける。
【0044】
次に、判定部230は、第2の被検知体(手や被洗浄体)が減速して所定速度v3以下になったか否かを判定する(ステップS12)。
この第2の被検知体の減速判定は、例えば、今回検知した第2の被検知体の周波数を、前回以前に検知した第2の被検知体の周波数や、あるいはあらかじめ設定されている閾値f3と比較することによって判定することができる。
【0045】
そして、第1の被検知体(手やコップなど)が減速して速度v3以下になったか否かを、第1回目の身体の減速検知判定と同様の手順で判定する(ステップS12)。ただし、周波数の閾値としてはf3を用いる。
【0046】
この第2回目の減速検知の判定手順としては、例えば、前回および前々回検知した第2の被検知体の周波数が閾値f3を超えており、かつ今回検知した第2の被検知体の周波数が閾値f3以下(従って前回の周波数よりも低くなっている)であれば、第2の被検知体が減速して速度v3以下になった(第2回目の減速検知をした)と判定し、そうでなければ、第2の被検知体は減速して速度v3以下にはなっていない(第2回目の減速検知をしていない)と判定する。
【0047】
その結果、第2の被検知体(手や被洗浄体)が減速して速度v3以下になっておらず、第2回目の減速検知が未だなされていないと判定した場合には(ステップS12でNO)、上記ステップS10に戻って再び検知信号を取得する。
一方、第2の被検知体が減速して速度v3以下になり、第2回目の減速検知をしたと判定した場合には(ステップS12でYES)、制御部200は、バルブ250を開いて吐水を開始させる(ステップS4)。
【0048】
第2の実施の形態によれば、第1の被検知体(使用者の身体)と第2の被検知体(使用者の手やその手に持った被洗浄体)についての2度の減速検知を検知したら、吐水を開始させることにより、身体と手や洗浄体とを区別して、手や洗浄体が目標とする到達地点に達すると同時に吐水がなされ、無駄な吐水を抑制しつつ快適に使用できる。
次に、検知信号の振幅を周波数帯毎に観察することにより第1の被検知体と第2の被検知体とをそれぞれ判別する方法について説明する。
図12は、図10に表した具体例について、周波数帯毎に検知信号を観察する方法を説明するための模式図である。
第1の被検知体と第2の被検知体のそれぞれの検知信号は、図12に表したように周波数が時間とともに変化する。これは、換言すると、時間とともに異なる周波数帯において検知信号の振幅が順次表れることに対応する。例えば、図12に表したように、高い周波数帯と、中程度の周波数帯と、低い周波数帯と、のそれぞれにおいて検知信号の振幅を観察することができる。これは具体的には、検知信号にそれぞれの周波数帯に対応するデジタル・フィルタを介してフィルタリングすることにより実行できる。
図13は、図12に表した具体例に対応する検知信号の振幅の時間変化の実測値を例示するグラフ図である。ここでは、高い周波数帯として60〜70Hz、中程度の周波数帯として30〜40Hz、低い周波数帯として10〜20Hzのそれぞれにおける検知信号の振幅の時間変化を表した。
図12に表したように、第1の被検知体と第2の被検知体の検知信号がそれぞれの周波数帯を通過するポイントをA〜Fとする。これらポイントは、図13において、各周波数帯の検知信号の振幅の増加として明瞭に観察できる。つまり、このように周波数帯毎に検知信号の振幅を観察することにより、第1の被検知体及び第2の被検知体の加速や減速をそれぞれ判別することができる。
またさらに、このように周波数帯毎に振幅を観察すると、例えば、使用者の身体と手とがほぼ同時に接近するような場合でも判別が可能となる。
図14は、被検知体(検知対象物)の目標とする到達地点からの距離に対する検知信号の周波数の変化の第2の具体例を表す模式図である。
本具体例においては、自動水栓の吐水部に向かって使用者の身体(第1の被検知体)が接近するとともに、使用者が手やコップなど(第2の被検知体)を比較的ゆっくりと差し出している。このような場合、図14に表したように、第1の被検知体の減速と、第2の被検知体の減速と、が時間的に接近することがある。
図15は、図14に表した具体例について、周波数帯毎に分割して観察することを表す模式図である。すなわち、この場合にも、高い周波数帯と、中程度の周波数帯と、低い周波数帯と、のそれぞれについて、検知信号の振幅を観察することができる。
図16は、図14に表した具体例について、各周波数帯における検知信号の振幅の時間変化の実測値を表すグラフ図である。
吐水部から離れたポイントA(図15参照)においては、第1の被検知体(身体)と第2の被検知体(手やコップなど)の速度は互いに近い値をとり、つまり使用者はまだ手などを差し出す動作を開始していない。これに対応して、50〜60Hzにおいて、第1の被検知体による振幅と第2の被検知体による振幅とは、重なって観察される。
そして、吐水部に接近すると、使用者は身体を減速させつつ、手やコップなどを吐水部に向けて差し出す動作を開始する。この時、第1の被検知体の周波数は相対的に急速に低下し、これに対して第2の被検知体の周波数の低下は手などを差し出すことにより相対的に遅れる。これは、30〜40Hzの周波数帯において、ポイントBの振幅と、ポイントDの振幅と、に分離して観察される。
使用者がさらに吐水部に接近すると、身体の速度は大幅に低下しやがて停止する。これに続いて、手やコップなどの速度も低下し、やがて停止する。これらの動作は、10〜20Hzの周波数帯においてポイントCの振幅と、ポイントEの振幅として、明瞭に分離して観察される。また、この際に、使用者の手やコップなどは、身体と比較して、吐水部(すなわち、センサ部100)に近い位置にあるため、第2被検知体の検知信号の振幅が相対的に大きくなっている。
このように、複数の周波数帯において検知信号の振幅の時間変化をそれぞれ観察することにより、第1の被検知体と第2の被検知体の減速のタイミングが近接しているような場合でも、分離して観察することが可能となる。また、この観察の際に、振幅の大きさも考慮することにより、第1の被検知体と第2の被検知体とをより明瞭に分離することが可能となる。
【0049】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施形態では、1つの被検知体が減速して所定速度以下になったこと、または2つ被検知体について減速して所定速度以下になったことを続けて検知し、かつ被検知体が接近していることを検知したら、吐水を開始する。
つまり、被検知体が接近しているか、離遠しているかは、検知信号の振幅の増減で判るので、接近していることを吐水開始の判定要素として追加して、さらに高精度な検知を実現する。
【0050】
図17は、被検知体(検知対象物)が到達地点に接近している場合の到達地点(水栓装置)からの距離に対する検知信号の振幅の変化の例を表す図である。図17に示すように、被検知体が接近している場合には、検知信号の振幅は時間変化において増加する。このため、極大値の近似線や包絡線の傾きは正の値なり、極小値の近似線や包絡線の傾きは負の値となる。逆に、被検知体が離遠している場合には、検知信号の振幅は時間変化において減少するので、極大点の近似線や包絡線の傾きは負の値なり、極小点のそれは正の値となる。
【0051】
図18は、本発明の実施の形態3においての制御部200による吐水開始制御の手順を表すフローチャートである。
なお、図18に表した具体例は、第3の実施の形態を上記第1の実施の形態(図8参照)に適用したものであるが、第3の実施の形態を上記第2の実施の形態(図11参照)においての第1の被検知体の減速検知や第2の被検知体の減速検知に適用することも可能である。
【0052】
図18に表した具体例においては、制御部200は、取得した検知信号から被検知体の周波数を求めて記憶することに加え(ステップS2)、取得した検知信号の振幅を求めて記憶しておく(ステップS20)。
【0053】
そして、被検知体が減速して所定速度以下(速度v1以下)になったと判定したら(ステップS3)、検知信号の振幅をもとに、被検知体が接近しているか否かを判定する(ステップS21)。
【0054】
その結果、被検知体が接近していない(離遠している)と判定した場合には、ステップS1の検知信号の取得に戻り(ステップS21でNO)、被検知体が接近していると判定した場合には(ステップS21でYES)、バルブ250を開いて吐水を開始させる(ステップS4)。
【0055】
この場合、被検知体の接近の判定は、例えば以下の手順による。
まず、ステップS20で、今回、取得した検知信号から被検知体についての振幅の極大値を求めて記憶する。前回以前に取得した1つまたは複数の検知信号から求めた被検知体についての振幅の極大値も制御部200に記憶されている。そして、ステップS21で、これらの極大値についての近似直線(例えば図10の直線L1)または包絡線の傾きを求め、その傾きが、所定の閾値(0または正の値)を超えていれば、接近と判定し、この閾値以下であれば接近でない判定する。
【0056】
または、ステップS21で、上記の極大値が、所定の回数連続して増加していれば、接近と判定し、そうでなければ、接近でないと判定する。
または、ステップS21で、上記の極大値が、所定の閾値(例えば図17のVg1)以上になったら、接近と判定し、そうでなければ、接近でないと判定する。
【0057】
あるいは、ステップS20で、検知信号から被検知体についての振幅の極大値と極小値を求めて記憶しておき、ステップS21で、極大値が第1の閾値(例えば図17のVg1)以上になり、かつ極小値が第2の閾値(例えば図17のVg2)以下となっていれば、接近と判定し、そうでなければ、接近でないと判定する。
【0058】
あるいは、ステップS20で、被検知体の極大値と極小値の差分値を求めて記憶しておき、ステップS21で、これらの差分値が所定の回数連続して増加していれば、接近と判定し、そうでなければ、接近でないと判定する。
【0059】
第3の実施の形態によれば、検知信号の振幅を考慮することによる被検知体の接近の検知を、吐水を開始させる判定要素として追加することにより、さらに高精度な検知ができる。このようにすれば、例えば、自動水栓の前を人が通り過ぎるような場合に、これを検知して無駄な吐水をすることを防止できる。つまり、自動水栓の前を人が通り過ぎるような場合は、検知信号の周波数にはある程度の変化が生ずるものの、振幅が所定値を超えるほど大きくはならない。従って、振幅の変化を考慮することにより、自動水栓に対して使用者が接近しているのか、それとも、単に自動水栓の前を通り過ぎるだけであるのか、を判別することが可能となる。
【0060】
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。本実施形態では、第1の被検知体(身体)と第2の被検知体の2つの減速を検知する場合において、第1の被検知体の加速を検知したら、減速検知回数をリセットして、次の使用者の動きによる減速検知を、他の第1の被検知体(身体)の接近による第1回目の減速検知であるものとする。これにより、最初の使用者が離れ、次の使用者が使用する際の減速が第1回目の減速検知であると判別でき、高精度が検知ができる。
【0061】
図19は、第1の被検知体である身体(使用者)が到達地点(水栓装置の前)から離遠する様子を表す上面図である。
また、図20は、第1の被検知体(検知対象物)が到達地点から離遠している場合の到達地点(水栓装置)からの距離に対する検知信号の周波数の変化の例を表すグラフ図である。
【0062】
図19に表したように、第1の被検知体(身体)b1が水栓装置前のセンサ部100の検知範囲A内から離遠していく場合には、第1の被検知体b1は加速する動きをするので、図20に表したように、検知信号の周波数は増加する。このようにして、被検知体の吐水部からの離遠、すなわち受水部40や吐水口30の下や吐水流の軌跡上や吐水口30からの吐水の受水部40への着水地点などからの被検知体の離遠を検知し、吐水を停止することができる。
【0063】
図21は、第4の実施の形態においての制御部200による減速検知回数のリセット手順を表すフローチャートである。
第2の実施の形態では、制御部200は、第1の被検知体(身体)の減速を検知したら、例えば第1回目の減速検知をしたことを記憶しておき、第2の被検知体(手や被洗浄体)の動きによる第2回目の減速を検知する手順(図11のステップS10〜S12)を含め、第2の被検知体の動きを検知して、吐水の開始および終了の制御をする。
しかし、例えば、最初の使用者が離れ、次の使用者が使用する際の減速が何回目の減速か判らなくなることが考えられる。
図21に表した手順は、上記第2回目の減速検知手順の間に、使用者(第1の被検知体)が入れ替わっても、次の使用者の減速を第2回目の減速として吐水を開始することを解消するものである。
【0064】
図21において、制御部200は、第1の被検知体の減速検知手順(図11のステップS1〜S3)によって、第1の被検知体の減速を検知すると、第1回目の減速検知をしたことをメモリー等に記憶する(ステップS30)。
【0065】
次に、制御部200は、センサ部100から検知信号を取得し(ステップS10)、この検知信号から第1の被検知体についての周波数を求めて記憶する(ステップS31)。
【0066】
この場合、制御部200は、第1の被検知体(身体)が水栓装置の前に位置していることにつき、取得した検知信号の振幅をもとに認識でき、この振幅をもとに、取得した検知信号から第1の被検知体についての周波数を求めることができる。
【0067】
そして、制御部200は、求めた第1の被検知体の周波数をもとに、第1の被検知体の加速を検知したか否かを判定する(ステップS33)。
【0068】
この場合、第1の被検知体の加速の判定は、例えば以下の手順による。
第1の被検知体の周波数が所定の回数連続して増加したら、加速を検知したと判定し、そうでなければ、加速を検知していないと判定する。
あるいは、第1の被検知体の周波数が増加して所定の閾値周波数(例えば図20のf4)を超えたら、加速を検知したと判定し、そうでなければ、加速を検知していないと判定する。
【0069】
その結果、第1の被検知体の加速を検知しなかったと判定した場合は(ステップS33でNO)、上記ステップS10に戻り、第1の被検知体の加速を検知したと判定した場合は(ステップS33でYES)、制御部200は、メモリに記憶してある減速検知の回数をリセットする(ステップS34)。つまり、第1回目の減速検知をしたことをリセットして、第1の被検知体の減速検知手順(図11のステップS1〜S3)に戻る。
【0070】
第4の実施の形態によれば、第1の被検知体の加速の検知により使用者が水栓装置を離れたことを検知したら、減速検知回数をリセットすることにより、使用者が入れ替わっても、使用者の手の動きに応じた最適なタイミングで吐水を開始することができる。
【0071】
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。本実施形態では、第1の被検知体の加速を検知し、かつ第1の被検知体の離遠を検知したら、減速検知回数をリセットして、次の使用者の動きによる減速検知を、他の第1の被検知体(身体)の接近による第1回目の減速検知であるものとする。
被検知体が到達地点から離遠していることは、検知信号の電圧の振幅値の減少で判るので、離遠の検知を、減速検知回数のリセットの判定要素として追加することにより、さらに精度よく検知できる。
【0072】
図22は、被検知体(検知対象物)が到達地点から離遠している場合の水栓装置からの距離に対する検知信号の振幅の変化の例を表す図である。
図22に示すように、被検知体が離遠している場合には、検知信号の振幅は時間変化において減少する。このため、極大値の近似線や包絡線の傾きは負の値なり、極小値の近似線や包絡線の傾きは正の値となる。
【0073】
図23は、第5の実施の形態における制御部200による減速検知回数のリセット手順を表すフローチャートである。
【0074】
図23に表した具体例において、制御部200は、第1の被検知体の減速検知手順(図11のステップS1〜S3)によって、第1の被検知体の減速を検知して、第1回目の減速検知をしたことをメモリー等に記憶したあと(ステップS30)、センサ部100から検知信号を取得して(ステップS10)、この検知信号から、第1の被検知体についての周波数を求めて記憶するとともに(ステップS31)、第1の被検知体についての振幅を求めて記憶する(ステップS40)。
【0075】
そして、制御部200は、第1の被検知体の加速を検知したと判定したら(ステップS32でYES)、第1の被検知体の振幅をもとに、第1の被検知体が、到達地点から離遠しているか否かを判定する(ステップS41)。
【0076】
その結果、第1の被検知体が離遠していないと判定した場合には、ステップS10の検知信号の取得に戻り(ステップS41でNO)、第1の被検知体が離遠していると判定した場合には(ステップS41でYES)、メモリに記憶してある減速検知の回数(第1回目の減速検知をしたこと)をリセットする(ステップS34)。
【0077】
この場合、第1の被検知体の離遠の判定は、例えば以下の手順による。
まず、ステップS40で、今回、取得した検知信号から第1の被検知体についての振幅の極大値を求めて記憶する。前回以前に取得した1つまたは複数の検知信号から求めた第1の被検知体についての振幅の極大値も制御部200に記憶されている。そして、ステップS41で、これらの極大値についての近似直線(例えば図22の直線L2)または包絡線の傾きを求め、その傾きが、所定の閾値(0または負の値)に満たなければ、離遠と判定し、この閾値以上であれば離遠でない判定する。
【0078】
または、ステップS41で、上記の極大値が、所定の回数連続して減少していれば、離遠と判定し、そうでなければ、接近でないと判定する。
または、ステップS41で、上記の極大値が、所定の閾値(例えば図22のVk1)以下になったら、離遠と判定し、そうでなければ、離遠でないと判定する。
【0079】
あるいは、ステップS40で、検知信号から第1の被検知体についての極大値と極小値を求めて記憶しておき、ステップS41で、極大値が第1の閾値(例えば図22のVk1)以下になり、かつ極小値が第2の閾値(例えば図22のVk2)以上となっていれば、離遠と判定し、そうでなければ、離遠でないと判定する。
【0080】
あるいは、ステップS40で、第1の被検知体の極大値と極小値の差分値を求めて記憶しておき、ステップS41で、これらの差分値が所定の回数連続して減少していれば、離遠と判定し、そうでなければ、離遠でないと判定する。
【0081】
第5の実施の形態によれば、第1の被検知体の離遠の検知を、減速検知回数リセットの判定要素として追加することにより、使用者が水栓装置から離れたことについて、さらに高精度な検知ができる。
【0082】
次に、本発明の第6の実施の形態について説明する。本実施形態においては、第1の被検知体(身体)と第2の被検知体(人の手や被洗浄体)の2つの減速を検知する場合において、検知信号から被検知体を所定時間以上確認できなければ、使用者が離遠してすでにいないものとして、減速検知回数をリセットし、次の使用者の動きによる減速検知を、他の第1の被検知体(身体)の接近による第1回目の減速検知であるものとする。
これにより、最初の使用者が離れ、次の使用者が使用する際の減速が何回目の減速か判らなくなることをなくして、高精度な検知ができる。
【0083】
図24は、使用者がいない場合などの検知信号の例を表すタイムチャートである。
また、図25は、本発明の実施の形態6においての制御部200による減速検知回数のリセット手順を表すフローチャートである。
【0084】
図25に表した具体例において、制御部200は、第1の被検知体の減速検知手順(図11のステップS1〜S3)によって、第1の被検知体の減速を検知し、第1回目の減速検知をしたことをメモリー等に記憶したあと(ステップS30)、センサ部100から検知信号を取得して(ステップS10)、この検知信号の振幅を求めて記憶する(ステップS50)。
【0085】
この場合、検知信号の振幅は、例えば、検知信号の全周波数帯域(0〜100Hz)においての最大振幅とする。
【0086】
そして、制御部200は、今回取得した検知信号の振幅が所定の閾値(例えば図24のVt)以下であるか否かを判定する(ステップS51)。
【0087】
その結果、今回、取得した検知信号の振幅が所定の閾値以下であると判定した場合には(ステップS51でYES)、検知信号から被検知体を確認できなかったものとして、検知信号の振幅が上記の閾値以下である時間が所定時間(例えば図24のT1)以上であるか否かを判定する(ステップS52)。
ここで、制御部200は、上記の時間をタイマー等によって計測している。なお、検知信号の振幅が所定の閾値を超えると判定した場合には(ステップS51でNO)、上記のタイマーをリセットした上で、ステップS10の検知信号の取得に戻る。
【0088】
そして、制御部200は、検知信号の振幅が上記の閾値以下である時間が、所定時間に満たなければ(ステップS52でNO)、上記のタイマーをリセットせずに、ステップS10の検知信号の取得に戻り、検知信号の振幅が上記の閾値以下である時間が、所定時間以上であれば(ステップS52でYES)、メモリに記憶してある減速検知の回数(第1回目の減速検知をしたこと)をリセットする(ステップS33)。
【0089】
第6の実施の形態によれば、検知信号が所定時間以上確認できなかったら、減速検知回数をリセットすることにより、使用者が入れ替わっても、使用者の手の動きに応じた最適なタイミングで吐水を開始することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる吐水装置の構成を表す図である。
【図2】センサ部100と制御部200の具体例のブロック図である。
【図3】センサ部100と制御部200の具体例のブロック図である。
【図4】第1の実施の形態においてのセンサ部100から出力される上記検知信号の特性を説明する図である。
【図5】第1の実施の形態においての被検知体の動作を説明する図である。
【図6】第1の実施の形態においての被検知体の目標とする到達地点からの距離に対する検知信号の周波数の変化の例を示す図である。
【図7】第1の実施の形態においての被検知体の具体例を説明する側面図である。
【図8】第1の実施の形態においての制御部200による吐水開始手順を説明するフローチャートである。
【図9】第2の実施の形態においての被検知体の動作を説明する上面図である。
【図10】第2の実施の形態においての被検知体(検知対象物)の目標とする到達地点からの距離に対する検知信号の周波数の変化の例を示す図である。
【図11】第2の実施の形態においての制御部200による吐水開始手順を説明するフローチャートである。
【図12】図10に表した具体例について、周波数帯毎に検知信号を観察する方法を説明するための模式図である。
【図13】図12に表した具体例に対応する検知信号の振幅の時間変化の実測値を例示するグラフ図である。
【図14】被検知体(検知対象物)の目標とする到達地点からの距離に対する検知信号の周波数の変化の第2の具体例を表す模式図である。
【図15】図14に表した具体例について、周波数帯毎に分割して観察することを表す模式図である。
【図16】図14に表した具体例について、各周波数帯における検知信号の振幅の時間変化の実測値を表すグラフ図である。
【図17】第3の実施の形態においての被検知体(検知対象物)が到達地点に接近している場合の到達地点(水栓装置)からの距離に対する検知信号の振幅の変化の例を表す図である。
【図18】第3の実施の形態においての制御部200による吐水開始制御の手順を表すフローチャートである。
【図19】第4の実施の形態においての第1の被検知体である身体(使用者)が到達地点(水栓装置の前)から離遠する様子を表す上面図である。
【図20】第4の実施の形態においての第1の被検知体(検知対象物)が到達地点から離遠している場合の到達地点(水栓装置)からの距離に対する検知信号の周波数の変化の例を表す図である。
【図21】第4の実施の形態においての制御部200による減速検知回数のリセット手順を表すフローチャートである。
【図22】第5の実施の形態においての被検知体(検知対象物)が到達地点から離遠している場合の到達地点(水栓装置)からの距離に対する検知信号の振幅の変化の例を表す図である。
【図23】第5の実施の形態においての制御部200による減速検知回数のリセット手順を表すフローチャートである。
【図24】第6の実施の形態においての使用者がいない場合などの検知信号の例を表すタイムチャートである。
【図25】第6の実施の形態においての制御部200による減速検知回数のリセット手順を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0091】
10 給水ホース、 30 吐水口、 40 受水部、100 センサ部、112、112a、112b アンテナ、114 送信部、116 受信部、118 差分検出部、200 制御部、210 フィルタ、220 周波数検出部、230 判定部、250 バルブ
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐水装置に関し、より具体的には、手洗い場やトイレ、キッチンなどに設けられ、マイクロ波などの電波センサを用いて被検知体を検知して吐水を開始する吐水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体を検知して自動的に吐水を開始する吐水装置としては、被検知体である人体が到達点に達したことを検知したら、吐水を開始するものがあった。
また、他の物体を誤検知しないために、人の手のみを検知できる領域に、センサの検知可能範囲を限定し、人の手が吐水口付近の到達点に達したら、吐水を開始するものがあった。
【0003】
マイクロ波などの送信波が被検知体に当たると反射波あるいは透過波を生じる。この反射波あるいは透過波を受信することにより、人体を検知することができ、水栓装置などに使用される。
放射したマイクロ波の人体からの反射波を受信して、そのドップラー周波数信号のパワースペクトルを求め、そのピーク値と所定の閾値とを比較することにより、人体を検知する人体検知装置が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−80150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、身体や人の手などの被検知体が到達点に達したことを検知してから吐水を開始するのでは、吐水のタイミングが遅くなりやすいという問題があった。
また、ドップラー周波数信号のパワースペクトルは、センサまでの距離と反射体の面積とに依存する。吐水口の下に挿入された手の掌の向きなどによっては十分な強度の反射波が得られず、挿入された手を確実に検知できない場合もあった。
【0005】
本発明は、人の手が吐水口の下に達する直前など、被検知体の動きに応じた最適なタイミングで吐水を開始することができる吐水装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、吐水部と、放射した電波の反射波によって被検知体の移動に関する情報を取得するセンサ部と、前記センサ部からの検知信号に基づいて前記吐水部からの吐水を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、被検知体が減速して第1の所定速度以下になったことを検知したら、前記吐水を開始させることを特徴とする吐水装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被検知体が減速して所定速度以下になったことを検知したら吐水を開始することにより、被検知体の動きに応じた最適なタイミングで吐水を開始することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる吐水装置の構成を表す図であり、(a)は斜視図、(b)は側断面図である。この吐水装置は、センサ部100および制御部200を備えており、給水ホース10、吐水口(スパウト)30、陶器製の受水部40等とともに水栓装置を構成している。
なお、以降の各図面については、既出の図面に関して説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0009】
センサ部100は、マイクロ波あるいはミリ波などの高周波の電波を放射(送信)し、放射した電波の被検知体からの反射波を受信して、検知可能範囲A内において被検知体の有無を検知し、その検知信号を出力する高周波センサである。
図2及び図3は、センサ部100と制御部200の2つの具体例のブロック図である。
【0010】
センサ部100には、アンテナ112、送信部114、受信部116、差分検出部118が設けられている。送信部114に接続されたアンテナ112からは、高周波、マイクロ波あるいはミリ波などの10kHz〜100GHzの周波数帯の電波が放射される。具体的には、アンテナ112からは、例えば10.525GHzの周波数を有する送信波T1が放射される。身体などの被検知体からの反射波または透過波T2は、アンテナ112を経由して受信部116に入力される。ここで、アンテナは、図2に表したように送信側と受信側とを共通としてもよく、または、図3に表したように、送信部114にはアンテナ112aを接続し、受信部116にはアンテナ112bを接続してもよい。
送信波の一部と受信波とは、差分検出部118にそれぞれ入力されて合成され、ドップラー効果が反映された出力信号が出力される。差分検出部118から出力された検出信号は、制御部200に出力される。制御部200には、フィルタ210、周波数検出部220、判定部230、記憶手段240、バルブ250が設けられている。差分検出部118から出力された検出信号は、まずフィルタ210において高周波数成分が取り除かれる。この際のフィルタリング周波数は、例えば100Hzとすることができる。自動水栓(吐水装置)を使用する使用者の身体や手の接近や離遠の速度は、100Hz以下である場合が多いので、このようにすれば、外乱を除去して精度よく検知できる。
差分検出部118から出力された検出信号は、周波数の低いベースラインに周波数の高い信号が重畳した波形を有する。高周波数成分には、ドップラー効果に関する情報が含まれる。すなわち、身体などの被検知体が移動すると、ドップラー効果によって反射波の波長がシフトする。ドップラー周波数ΔF(Hz)は、下記の式(1)により表すことができる。
ΔF=Fs−Fb=2×Fs×v/c 式(1)
但し、Fs:送信周波数(Hz)
Fb:反射周波数(Hz)
v:物体の移動速度(m/s)
c:光速(=300×106m/s)
センサ部100に対して被検知体が相対的に移動すると、式(1)で表されるように、その速度vに比例した周波数ΔFを含む出力信号を得ることができる。出力信号は周波数スペクトラムを有し、スペクトラムのピークに対応するピーク周波数と移動体の速度vとの間には相関関係がある。従って、ドップラー周波数ΔFを測定することにより速度vを求めることができる。なお、日本においては、人体を検知する目的には10.50〜1055GHzの範囲、または24.05〜24.25GHzの範囲の周波数が使用できる。
【0011】
図4は、フィルタ210から出力される検知信号の特性を説明する図である。
図4(a)は、被検知体としての人体の速度の時間特性の例であり、時間経過とともに減速している。使用者が水栓装置に接近してきて使用位置で止まる場合の使用者の人体速度や、使用位置で止まっている使用者が吐水口下に手を挿入して止める場合の手の速度は、目標とする到達地点に穏やかに到達しようとするため、到達地点に近づくにつれて減速する特性を示す。
逆に、被検知体が上記の到達地点から離遠する動作をする場合には、到達地点から離れるに従って加速し、その速度を上げる特性を示すことになる。
【0012】
図4(b)は、使用者の人体などの被検知体のセンサ部100からの距離に対する検知信号(フィルタ210からの出力信号)の振幅(電圧値)を示す図である。検知信号の振幅は、被検知体がセンサ部100に接近して、その被検知体からの反射波が大きくなるに従って大きくなる。
従って、被検知体がセンサ部100から離遠していく場合には、検知信号の振幅は、徐々に小さくなる。
【0013】
図4(c)は、被検知体の速度が図4(a)に表したように減速したときの検知信号の周波数の変化を示す図である。図4(a)および図4(c)から、被検知体の速度に応じて検知信号の周波数が変化し、被検知体が減速すると検知信号の周波数は減少することが判る。
従って、検知信号の周波数から被検知体の速度を検知できるとともに、検知信号の周波数の減少により、被検知体の減速を検知でき、逆に検知信号の周波数の増加により、被検知体の加速を検知できることとなる。本実施形態においては、例えば、判定部220(図2、図3)においてこの判断をすることができる。
【0014】
図5は、被検知体の動作を説明する図である。図5(a)および図5(b)は、人の手、あるいはその手に持たれた歯ブラシやコップなどの被洗浄体を被検知体aとして、被検知体aが減速して所定速度以下になったことを検知する場合を表し、図5(a)はセンサ部100の検知可能範囲A内に使用者の人体が位置している状態、図5(b)はセンサ部100の検知可能範囲A内に使用者の人体が位置していない状態を表す。使用者は、通常は、自動水栓から離れた位置から自動水栓に接近し、使用可能な位置まで近づくと減速して自動水栓の前に立ち止まる。つまり、図5(a)及び(b)のいずれの場合についても、これらの状態になる前に使用者の身体が自動水栓に対して接近し、減速する。
また、図5(c)は、使用者の人体を被検知体aとして、接近して来た被検知体aの減速を検知する場合を表す。この場合にも、使用者の身体は自動水栓に接近すると減速し、自動水栓を使用可能な位置まで近づくと停止する。
本実施形態においては、このように使用者の身体や手が自動水栓に接近する際に減速することを検知して吐水を制御する。つまり、被検知体の吐水部への接近、すなわち、受水部40や吐水口30の下や吐水流の軌跡上や吐水口30からの吐水の受水部40への着水地点などの到達地点へ被検知体が接近する際に減速することを検知して吐水を制御する。
【0015】
図6は、被検知体(検知対象物)が目標とする到達地点までの距離に対する検知信号の周波数の変化を例示するグラフ図である。
図6に表したように、被検知体(人の手、被洗浄体、身体)が動いて、目標とする到達地点に達する場合には、被検知体の速度は到達地点に近づくにつれて遅くなり、それに従って検知信号の周波数は低くなる。そして、やがて到達地点の直前に達すると、検知信号の周波数は、所定の閾値周波数f1以下となる。なお、ここでの目標とする到達地点は、人の手や被洗浄体の場合には、例えば吐水口30の近傍であり、身体の場合には、例えば水栓装置の前である。
【0016】
このような特性は、被検知体が、人の手または被洗浄体(図5(a)または図5(b))、あるいは身体(図5(c))のいずれであっても、使用者がセンサ部100の検知可能範囲A内においては、到達地点に近づくと減速することになる。
【0017】
図6に表した具体例においては、被検知体が動いてセンサ部100の検知可能範囲内に入り、到達地点からの距離がe1のときに、センサ部100から制御部200に出力される検知信号の被検知体についての周波数が閾値f1となる(図6のポイントp1)。そして、このタイミングで、判定部230は、バルブ250を開いて吐水を開始させる。
やがて、被検知体は、さらに減速して到達地点に達するが、その直前に達したとき(e1)にバルブ250を開いて吐水を開始させるように判定部230が吐水開始タイミングを制御しているので、被検知体が到達地点に達したときに、遅れることなく、吐水が開始される。
【0018】
このように、本発明の実施の形態1では、被検知体が減速して所定速度(v1とする)以下になったことを検知したら、被検知体が目標とする到達地点の直前に達したものとして、吐水を開始させる。
これにより、被検知体が到達地点に達すると同時に吐水が開始されるので、快適に使用できる。
【0019】
図7は、本発明の第1の実施の形態においての被検知体の具体例を説明する側面図である。
図7(a)に表した具体例においては、人の手を被検知体aとし、手が減速して速度v1以下になったことを検知したら、手が到達地点(吐水口30の下や吐水流の軌跡上)の直前に達したものとして、吐水を開始する。
【0020】
図7(b)に表した具体例においては、歯ブラシやコップなどの被洗浄体を持った手を被検知体aとしている。手に持つ歯ブラシやコップなどの被洗浄体には、センサ部100によって検知しにくいものもあるが、これら被洗浄体の動きや速度は、それを持っている人の手と同じである。
そこで、上記の検知しにくい被洗浄体の洗浄のための吐水開始タイミングについては、それを持っている手が減速して速度v1以下になったことを検知したら、被洗浄体が到達地点(吐水口30の下や吐水流の軌跡上)の直前に達したものとして、吐水を開始する。
【0021】
図7(c)に表した具体例においては、歯ブラシやコップなどの被洗浄体そのものを被検知体aとしている。手に持つ歯ブラシやコップなどの被洗浄体には、センサ部100によって検知できる(検知しやすい)ものもある。
そこで、上記の検知できる被洗浄体については、これらの被洗浄体を被検知体aとして、これら被洗浄体の洗浄のための吐水開始タイミングについて、被洗浄体が減速して速度v1以下になったことを検知したら、被洗浄体が吐水口30の下や吐水流の軌跡上の直前に達したものとして、吐水を開始する。
【0022】
図7(d)に表した具体例においては、吐水口30が受水部40に突出していない場合に、身体を被検知体aとしている。図7(d)に示すように吐水口30が受水部40に突出していない場合など、吐水口30が使用者に判りにくい場合には、使用者は水がどのように出るか判らないため、手を出しにくい。
そこで、このような場合には、身体を被検知体aとして、身体が減速をして速度v1以下になったことを検知したら、バルブ250を開いて吐水を開始させ、あらかじめ瞬間的または連続的に吐水をする。
これにより、使用者は吐水流の軌跡が判り、ためらわずに手を出すことができる。
【0023】
図7(e)に表した具体例においては、使用者が車椅子に乗った方である場合に、身体を被検知体aとしている。図7(e)に示すように使用者が車椅子に乗った方である場合など、使用者が受水部40の奥まで手を出すことが困難な場合にも、上記と同様に、身体を被検知体aとして、身体が減速して速度v1以下になったことを検知したら、バルブ250を開き、あらかじめ瞬間的または連続的に吐水をする。
車椅子などの使用者は、あらかじめ吐水された場所に手やコップなどを出せばよいので、受水部40の奥まで手を延ばさなければ、検知されずに吐水が開始されないことがなくなり、楽な姿勢で使用できる。
【0024】
図8は、本発明の第1の実施の形態においての制御部200による吐水開始手順を説明するフローチャートである。
制御部200は、センサ部100から検知信号を取得し(ステップS1)、この検知信号から被検知体の周波数を求めて記憶する(ステップS2)。
【0025】
この場合、例えば、検知信号の全周波数帯域(0〜100Hz)の内で最大の振幅を有する周波数を、その被検知体の周波数として求める。
【0026】
次に、制御部200は、求めた被検知体の周波数をもとに、被検知体が減速して所定速度v1以下になったか否かを判定する(ステップS3)。
この被検知体の減速判定は、今回求めた被検知体の周波数を、前回以前にすでに求めてある被検知体の周波数や、およびあらかじめ設定されている閾値f1と比較することによって判定される。
【0027】
この場合の減速判定の手順としては、例えば、前回および前々回求めた被検知体の周波数が閾値f1を超えており、かつ今回求めた被検知体の周波数が閾値f1以下(従って前回の検知信号の周波数よりも低くなっている)であれば、被検知体が減速して速度v1以下になったと判定し、そうでなければ、被検知体の速度は速度v1を超えていることとなるので、被検知体は減速して速度v1以下にはなっていないと判定する。なお、前回および前々回に求めた被検知体の周波数は、記憶手段240(図2、図3参照)に記憶させ、読み出すことができる。
【0028】
その結果、被検知体が減速して速度v1以下になっていないと判定した場合には(ステップS3でNO)、上記ステップS1に戻って、再び検知信号を取得する。
また、被検知体が減速して速度v1以下になったと判定した場合には(ステップS3でYES)、バルブ250を開いて吐水を開始させる(ステップS4)。
【0029】
以上説明した第1の実施の形態によれば、被検知体が減速して所定速度以下になったことを検知したら、吐水を開始させることにより、被検知体が目標とする到達地点に達すると同時に吐水がなされ、快適に使用できる。
【0030】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
使用者が歩いてきて水栓装置に接近し、手やコップなどを差し出して使用する場合のように、身体の接近と、手やコップなどの挿入と、の2回の動きがある場合には、身体の減速と手の減速の2度の減速が検知される。
そこで、本発明の第2の実施の形態では、1回目の減速を検知しても、それは身体の減速であるとして吐水を開始せず、続けて2度目の減速を検知したら、それは手や被洗浄体の減速であるものとして、吐水を開始させる。
【0031】
つまり、第1の被検知体を身体、第2の被検知体を手やコップなどとして、第1の被検知体が減速して第1の所定速度(v2とする)以下になったこと(第1回目の減速)を検知したあと、第2の被検知体が減速して第2の所定速度(v3とする)以下になったことを検知したら、判定部230は、第2の被検知体が目標とする到達地点の直前に達したものとして、吐水を開始させる。
これにより、身体の接近と、手やコップなどの挿入と、を識別でき、身体の接近のみによって吐水を開始することはなく、手や被洗浄体が到達地点(例えば吐水口下や吐水流の軌跡上))に達すると同時に吐水がなされ、無駄な吐水を抑制して快適に使用できる。
【0032】
図9は、本発明の第2の実施の形態における被検知体の動作を説明するための上面図である。使用者は、水栓装置に接近して、その手あるいは手に持った被洗浄体(歯ブラシ)やコップなどを出す一連の動作をする。
まず、図9(a)に示すように、第1の被検知体(身体)b1である使用者は、歩いて水栓装置に接近し、水栓装置に接近するにつれて減速し、水栓装置前の到達地点に達する。次に、図9(b)に示すように、使用者が第2の被検知体b2である手または被洗浄体を動かし、この手または被洗浄体は、吐水部への接近、すなわち受水部40や吐水口30の下や吐水流の軌跡上や吐水口30からの吐水の受水部40への着水地点などの到達地点に接近するにつれて減速する。
【0033】
図10は、被検知体(検知対象物)の目標とする到達地点からの距離に対する検知信号の周波数の変化の例を示す図である。この具体例では、到達地点は、第2の被検知体(使用者の手など)の到達地点である吐水口30の下や吐水流の軌跡上であるものとする。
【0034】
図10に示すように、使用者が動いて水栓装置に接近するにつれて、第1の被検知体(使用者の身体)の速度は遅くなり、それに従って検知信号の周波数は低くなり、やがて水栓装置の直前まで達すると、使用者は減速してその速度が第1の所定速度v2以下になり、検知信号の周波数は低くなって閾値周波数f2以下となる(図10のポイントp2)。使用者の速度がv2で、検知信号の周波数がf2のとき、第2の被検知体の上記到達地点からの使用者の距離はe2である。
【0035】
次に、使用者が手を動かすと、第2の被検知体(使用者の手など)の速度は、上記使用者の身体の場合と同様に、上記到達地点に近づくにつれて遅くなり、やがて到達地点の直前まで達すると、使用者の手などは減速してその速度が第2の所定速度v3以下になり、検知信号の周波数は低くなって閾値周波数f3以下となる。第2の被検知体(使用者の手、被洗浄体)の速度がv3で、検知信号の周波数がf3のとき、上記到達地点からの第2の被検知体の距離はe3(<e2)である。なお、所定速度v2とv3の大小関係や、閾値周波数f2とf3との大小関係については、図10に例示したものには限定されず、略同一でもあってもよく、あるいは図10に表した具体例とは逆の大小関係であってもよい。
【0036】
第2の実施の形態においては、第2の被検知体が減速して速度v3になったタイミングでバルブ250を開く。これにより、第2の被検知体(使用者の手、被洗浄体)が到達地点(吐水口30の下や吐水流の軌跡上)に達したときに、吐水を開始できる。
【0037】
図11は、第2の実施の形態においての制御部200による吐水開始手順を説明するフローチャートである。
制御部200は、センサ部100から検知信号を取得し(ステップS1)、この検知信号から第1の被検知体の周波数を求めて記憶手段240に記憶する(ステップS2)。
【0038】
この場合、例えば、検知信号の周波数帯域(0〜100Hz)の内、振幅のピーク値を有する周波数を、その第1の被検知体の周波数とする。
【0039】
次に、判定部230は、求めた第1の被検知体の周波数をもとに、第1の被検知体(身体)が減速して所定速度v2以下になったか否かを判定する(ステップS3)。
この第1の被検知体の減速判定は、今回求めた第1の被検知体の周波数を、前回以前にすでに求めてある第1の被検知体の周波数や、およびあらかじめ設定されている閾値f2と比較することによって判定される。なお、前回以前にすでに求めた第1の被検知体の周波数や、あらかじめ設定されている閾値f2などは、記憶手段240(図2、図3)に格納しておくことができる。
【0040】
この場合の減速判定の手順としては、例えば、前回および前々回求めた第1の被検知体の周波数が閾値f2を超えており、かつ今回求めた第1の被検知体の周波数が閾値f2以下(従って前回の周波数よりも低くなっている)であれば、第1の被検知体が減速して速度v2以下になった(第1回目の減速検知をした)と判定し、そうでなければ、第1の被検知体は減速して速度v2以下にはなっていない(第1回目の減速検知をしていない)と判定する。
【0041】
その結果、第1の被検知体(身体)が減速して速度v2以下になっておらず、第1回目の減速検知が未だなされていないと判定した場合には(ステップS3でNO)、上記ステップS1に戻って再び検知信号を取得する。
一方、第1の被検知体が減速して速度v2以下になり、第1回目の減速検知をしたと判定した場合には(ステップS3でYES)、制御部200は、例えば第1回目の減速検知をしたことを記憶した上で、ステップS10に進む。
【0042】
制御部200は、ステップS10で再び検知信号を取得し、この取得した検知信号から、今度は第2の被検知体(使用者の手やその手に持ったコップなど)の周波数を求める(ステップS11)。
【0043】
この場合、第1回目の減速検知をしたあとに、判定の対象とする周波数を第1の被検知体のものから第2の被検知体のものに切り換えることが必要となる。そこで、第1の被検知体の周波数はすでに第1の閾値f2以下になっていると考えられるので、第1回目の減速検知をしたあと、最初に第2の被検知体の周波数を求めるときには、例えば、検知信号のf2を超える周波数帯域の内で最大の振幅を有する周波数を、第2の被検知体の周波数として検知を続ける。
【0044】
次に、判定部230は、第2の被検知体(手や被洗浄体)が減速して所定速度v3以下になったか否かを判定する(ステップS12)。
この第2の被検知体の減速判定は、例えば、今回検知した第2の被検知体の周波数を、前回以前に検知した第2の被検知体の周波数や、あるいはあらかじめ設定されている閾値f3と比較することによって判定することができる。
【0045】
そして、第1の被検知体(手やコップなど)が減速して速度v3以下になったか否かを、第1回目の身体の減速検知判定と同様の手順で判定する(ステップS12)。ただし、周波数の閾値としてはf3を用いる。
【0046】
この第2回目の減速検知の判定手順としては、例えば、前回および前々回検知した第2の被検知体の周波数が閾値f3を超えており、かつ今回検知した第2の被検知体の周波数が閾値f3以下(従って前回の周波数よりも低くなっている)であれば、第2の被検知体が減速して速度v3以下になった(第2回目の減速検知をした)と判定し、そうでなければ、第2の被検知体は減速して速度v3以下にはなっていない(第2回目の減速検知をしていない)と判定する。
【0047】
その結果、第2の被検知体(手や被洗浄体)が減速して速度v3以下になっておらず、第2回目の減速検知が未だなされていないと判定した場合には(ステップS12でNO)、上記ステップS10に戻って再び検知信号を取得する。
一方、第2の被検知体が減速して速度v3以下になり、第2回目の減速検知をしたと判定した場合には(ステップS12でYES)、制御部200は、バルブ250を開いて吐水を開始させる(ステップS4)。
【0048】
第2の実施の形態によれば、第1の被検知体(使用者の身体)と第2の被検知体(使用者の手やその手に持った被洗浄体)についての2度の減速検知を検知したら、吐水を開始させることにより、身体と手や洗浄体とを区別して、手や洗浄体が目標とする到達地点に達すると同時に吐水がなされ、無駄な吐水を抑制しつつ快適に使用できる。
次に、検知信号の振幅を周波数帯毎に観察することにより第1の被検知体と第2の被検知体とをそれぞれ判別する方法について説明する。
図12は、図10に表した具体例について、周波数帯毎に検知信号を観察する方法を説明するための模式図である。
第1の被検知体と第2の被検知体のそれぞれの検知信号は、図12に表したように周波数が時間とともに変化する。これは、換言すると、時間とともに異なる周波数帯において検知信号の振幅が順次表れることに対応する。例えば、図12に表したように、高い周波数帯と、中程度の周波数帯と、低い周波数帯と、のそれぞれにおいて検知信号の振幅を観察することができる。これは具体的には、検知信号にそれぞれの周波数帯に対応するデジタル・フィルタを介してフィルタリングすることにより実行できる。
図13は、図12に表した具体例に対応する検知信号の振幅の時間変化の実測値を例示するグラフ図である。ここでは、高い周波数帯として60〜70Hz、中程度の周波数帯として30〜40Hz、低い周波数帯として10〜20Hzのそれぞれにおける検知信号の振幅の時間変化を表した。
図12に表したように、第1の被検知体と第2の被検知体の検知信号がそれぞれの周波数帯を通過するポイントをA〜Fとする。これらポイントは、図13において、各周波数帯の検知信号の振幅の増加として明瞭に観察できる。つまり、このように周波数帯毎に検知信号の振幅を観察することにより、第1の被検知体及び第2の被検知体の加速や減速をそれぞれ判別することができる。
またさらに、このように周波数帯毎に振幅を観察すると、例えば、使用者の身体と手とがほぼ同時に接近するような場合でも判別が可能となる。
図14は、被検知体(検知対象物)の目標とする到達地点からの距離に対する検知信号の周波数の変化の第2の具体例を表す模式図である。
本具体例においては、自動水栓の吐水部に向かって使用者の身体(第1の被検知体)が接近するとともに、使用者が手やコップなど(第2の被検知体)を比較的ゆっくりと差し出している。このような場合、図14に表したように、第1の被検知体の減速と、第2の被検知体の減速と、が時間的に接近することがある。
図15は、図14に表した具体例について、周波数帯毎に分割して観察することを表す模式図である。すなわち、この場合にも、高い周波数帯と、中程度の周波数帯と、低い周波数帯と、のそれぞれについて、検知信号の振幅を観察することができる。
図16は、図14に表した具体例について、各周波数帯における検知信号の振幅の時間変化の実測値を表すグラフ図である。
吐水部から離れたポイントA(図15参照)においては、第1の被検知体(身体)と第2の被検知体(手やコップなど)の速度は互いに近い値をとり、つまり使用者はまだ手などを差し出す動作を開始していない。これに対応して、50〜60Hzにおいて、第1の被検知体による振幅と第2の被検知体による振幅とは、重なって観察される。
そして、吐水部に接近すると、使用者は身体を減速させつつ、手やコップなどを吐水部に向けて差し出す動作を開始する。この時、第1の被検知体の周波数は相対的に急速に低下し、これに対して第2の被検知体の周波数の低下は手などを差し出すことにより相対的に遅れる。これは、30〜40Hzの周波数帯において、ポイントBの振幅と、ポイントDの振幅と、に分離して観察される。
使用者がさらに吐水部に接近すると、身体の速度は大幅に低下しやがて停止する。これに続いて、手やコップなどの速度も低下し、やがて停止する。これらの動作は、10〜20Hzの周波数帯においてポイントCの振幅と、ポイントEの振幅として、明瞭に分離して観察される。また、この際に、使用者の手やコップなどは、身体と比較して、吐水部(すなわち、センサ部100)に近い位置にあるため、第2被検知体の検知信号の振幅が相対的に大きくなっている。
このように、複数の周波数帯において検知信号の振幅の時間変化をそれぞれ観察することにより、第1の被検知体と第2の被検知体の減速のタイミングが近接しているような場合でも、分離して観察することが可能となる。また、この観察の際に、振幅の大きさも考慮することにより、第1の被検知体と第2の被検知体とをより明瞭に分離することが可能となる。
【0049】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施形態では、1つの被検知体が減速して所定速度以下になったこと、または2つ被検知体について減速して所定速度以下になったことを続けて検知し、かつ被検知体が接近していることを検知したら、吐水を開始する。
つまり、被検知体が接近しているか、離遠しているかは、検知信号の振幅の増減で判るので、接近していることを吐水開始の判定要素として追加して、さらに高精度な検知を実現する。
【0050】
図17は、被検知体(検知対象物)が到達地点に接近している場合の到達地点(水栓装置)からの距離に対する検知信号の振幅の変化の例を表す図である。図17に示すように、被検知体が接近している場合には、検知信号の振幅は時間変化において増加する。このため、極大値の近似線や包絡線の傾きは正の値なり、極小値の近似線や包絡線の傾きは負の値となる。逆に、被検知体が離遠している場合には、検知信号の振幅は時間変化において減少するので、極大点の近似線や包絡線の傾きは負の値なり、極小点のそれは正の値となる。
【0051】
図18は、本発明の実施の形態3においての制御部200による吐水開始制御の手順を表すフローチャートである。
なお、図18に表した具体例は、第3の実施の形態を上記第1の実施の形態(図8参照)に適用したものであるが、第3の実施の形態を上記第2の実施の形態(図11参照)においての第1の被検知体の減速検知や第2の被検知体の減速検知に適用することも可能である。
【0052】
図18に表した具体例においては、制御部200は、取得した検知信号から被検知体の周波数を求めて記憶することに加え(ステップS2)、取得した検知信号の振幅を求めて記憶しておく(ステップS20)。
【0053】
そして、被検知体が減速して所定速度以下(速度v1以下)になったと判定したら(ステップS3)、検知信号の振幅をもとに、被検知体が接近しているか否かを判定する(ステップS21)。
【0054】
その結果、被検知体が接近していない(離遠している)と判定した場合には、ステップS1の検知信号の取得に戻り(ステップS21でNO)、被検知体が接近していると判定した場合には(ステップS21でYES)、バルブ250を開いて吐水を開始させる(ステップS4)。
【0055】
この場合、被検知体の接近の判定は、例えば以下の手順による。
まず、ステップS20で、今回、取得した検知信号から被検知体についての振幅の極大値を求めて記憶する。前回以前に取得した1つまたは複数の検知信号から求めた被検知体についての振幅の極大値も制御部200に記憶されている。そして、ステップS21で、これらの極大値についての近似直線(例えば図10の直線L1)または包絡線の傾きを求め、その傾きが、所定の閾値(0または正の値)を超えていれば、接近と判定し、この閾値以下であれば接近でない判定する。
【0056】
または、ステップS21で、上記の極大値が、所定の回数連続して増加していれば、接近と判定し、そうでなければ、接近でないと判定する。
または、ステップS21で、上記の極大値が、所定の閾値(例えば図17のVg1)以上になったら、接近と判定し、そうでなければ、接近でないと判定する。
【0057】
あるいは、ステップS20で、検知信号から被検知体についての振幅の極大値と極小値を求めて記憶しておき、ステップS21で、極大値が第1の閾値(例えば図17のVg1)以上になり、かつ極小値が第2の閾値(例えば図17のVg2)以下となっていれば、接近と判定し、そうでなければ、接近でないと判定する。
【0058】
あるいは、ステップS20で、被検知体の極大値と極小値の差分値を求めて記憶しておき、ステップS21で、これらの差分値が所定の回数連続して増加していれば、接近と判定し、そうでなければ、接近でないと判定する。
【0059】
第3の実施の形態によれば、検知信号の振幅を考慮することによる被検知体の接近の検知を、吐水を開始させる判定要素として追加することにより、さらに高精度な検知ができる。このようにすれば、例えば、自動水栓の前を人が通り過ぎるような場合に、これを検知して無駄な吐水をすることを防止できる。つまり、自動水栓の前を人が通り過ぎるような場合は、検知信号の周波数にはある程度の変化が生ずるものの、振幅が所定値を超えるほど大きくはならない。従って、振幅の変化を考慮することにより、自動水栓に対して使用者が接近しているのか、それとも、単に自動水栓の前を通り過ぎるだけであるのか、を判別することが可能となる。
【0060】
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。本実施形態では、第1の被検知体(身体)と第2の被検知体の2つの減速を検知する場合において、第1の被検知体の加速を検知したら、減速検知回数をリセットして、次の使用者の動きによる減速検知を、他の第1の被検知体(身体)の接近による第1回目の減速検知であるものとする。これにより、最初の使用者が離れ、次の使用者が使用する際の減速が第1回目の減速検知であると判別でき、高精度が検知ができる。
【0061】
図19は、第1の被検知体である身体(使用者)が到達地点(水栓装置の前)から離遠する様子を表す上面図である。
また、図20は、第1の被検知体(検知対象物)が到達地点から離遠している場合の到達地点(水栓装置)からの距離に対する検知信号の周波数の変化の例を表すグラフ図である。
【0062】
図19に表したように、第1の被検知体(身体)b1が水栓装置前のセンサ部100の検知範囲A内から離遠していく場合には、第1の被検知体b1は加速する動きをするので、図20に表したように、検知信号の周波数は増加する。このようにして、被検知体の吐水部からの離遠、すなわち受水部40や吐水口30の下や吐水流の軌跡上や吐水口30からの吐水の受水部40への着水地点などからの被検知体の離遠を検知し、吐水を停止することができる。
【0063】
図21は、第4の実施の形態においての制御部200による減速検知回数のリセット手順を表すフローチャートである。
第2の実施の形態では、制御部200は、第1の被検知体(身体)の減速を検知したら、例えば第1回目の減速検知をしたことを記憶しておき、第2の被検知体(手や被洗浄体)の動きによる第2回目の減速を検知する手順(図11のステップS10〜S12)を含め、第2の被検知体の動きを検知して、吐水の開始および終了の制御をする。
しかし、例えば、最初の使用者が離れ、次の使用者が使用する際の減速が何回目の減速か判らなくなることが考えられる。
図21に表した手順は、上記第2回目の減速検知手順の間に、使用者(第1の被検知体)が入れ替わっても、次の使用者の減速を第2回目の減速として吐水を開始することを解消するものである。
【0064】
図21において、制御部200は、第1の被検知体の減速検知手順(図11のステップS1〜S3)によって、第1の被検知体の減速を検知すると、第1回目の減速検知をしたことをメモリー等に記憶する(ステップS30)。
【0065】
次に、制御部200は、センサ部100から検知信号を取得し(ステップS10)、この検知信号から第1の被検知体についての周波数を求めて記憶する(ステップS31)。
【0066】
この場合、制御部200は、第1の被検知体(身体)が水栓装置の前に位置していることにつき、取得した検知信号の振幅をもとに認識でき、この振幅をもとに、取得した検知信号から第1の被検知体についての周波数を求めることができる。
【0067】
そして、制御部200は、求めた第1の被検知体の周波数をもとに、第1の被検知体の加速を検知したか否かを判定する(ステップS33)。
【0068】
この場合、第1の被検知体の加速の判定は、例えば以下の手順による。
第1の被検知体の周波数が所定の回数連続して増加したら、加速を検知したと判定し、そうでなければ、加速を検知していないと判定する。
あるいは、第1の被検知体の周波数が増加して所定の閾値周波数(例えば図20のf4)を超えたら、加速を検知したと判定し、そうでなければ、加速を検知していないと判定する。
【0069】
その結果、第1の被検知体の加速を検知しなかったと判定した場合は(ステップS33でNO)、上記ステップS10に戻り、第1の被検知体の加速を検知したと判定した場合は(ステップS33でYES)、制御部200は、メモリに記憶してある減速検知の回数をリセットする(ステップS34)。つまり、第1回目の減速検知をしたことをリセットして、第1の被検知体の減速検知手順(図11のステップS1〜S3)に戻る。
【0070】
第4の実施の形態によれば、第1の被検知体の加速の検知により使用者が水栓装置を離れたことを検知したら、減速検知回数をリセットすることにより、使用者が入れ替わっても、使用者の手の動きに応じた最適なタイミングで吐水を開始することができる。
【0071】
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。本実施形態では、第1の被検知体の加速を検知し、かつ第1の被検知体の離遠を検知したら、減速検知回数をリセットして、次の使用者の動きによる減速検知を、他の第1の被検知体(身体)の接近による第1回目の減速検知であるものとする。
被検知体が到達地点から離遠していることは、検知信号の電圧の振幅値の減少で判るので、離遠の検知を、減速検知回数のリセットの判定要素として追加することにより、さらに精度よく検知できる。
【0072】
図22は、被検知体(検知対象物)が到達地点から離遠している場合の水栓装置からの距離に対する検知信号の振幅の変化の例を表す図である。
図22に示すように、被検知体が離遠している場合には、検知信号の振幅は時間変化において減少する。このため、極大値の近似線や包絡線の傾きは負の値なり、極小値の近似線や包絡線の傾きは正の値となる。
【0073】
図23は、第5の実施の形態における制御部200による減速検知回数のリセット手順を表すフローチャートである。
【0074】
図23に表した具体例において、制御部200は、第1の被検知体の減速検知手順(図11のステップS1〜S3)によって、第1の被検知体の減速を検知して、第1回目の減速検知をしたことをメモリー等に記憶したあと(ステップS30)、センサ部100から検知信号を取得して(ステップS10)、この検知信号から、第1の被検知体についての周波数を求めて記憶するとともに(ステップS31)、第1の被検知体についての振幅を求めて記憶する(ステップS40)。
【0075】
そして、制御部200は、第1の被検知体の加速を検知したと判定したら(ステップS32でYES)、第1の被検知体の振幅をもとに、第1の被検知体が、到達地点から離遠しているか否かを判定する(ステップS41)。
【0076】
その結果、第1の被検知体が離遠していないと判定した場合には、ステップS10の検知信号の取得に戻り(ステップS41でNO)、第1の被検知体が離遠していると判定した場合には(ステップS41でYES)、メモリに記憶してある減速検知の回数(第1回目の減速検知をしたこと)をリセットする(ステップS34)。
【0077】
この場合、第1の被検知体の離遠の判定は、例えば以下の手順による。
まず、ステップS40で、今回、取得した検知信号から第1の被検知体についての振幅の極大値を求めて記憶する。前回以前に取得した1つまたは複数の検知信号から求めた第1の被検知体についての振幅の極大値も制御部200に記憶されている。そして、ステップS41で、これらの極大値についての近似直線(例えば図22の直線L2)または包絡線の傾きを求め、その傾きが、所定の閾値(0または負の値)に満たなければ、離遠と判定し、この閾値以上であれば離遠でない判定する。
【0078】
または、ステップS41で、上記の極大値が、所定の回数連続して減少していれば、離遠と判定し、そうでなければ、接近でないと判定する。
または、ステップS41で、上記の極大値が、所定の閾値(例えば図22のVk1)以下になったら、離遠と判定し、そうでなければ、離遠でないと判定する。
【0079】
あるいは、ステップS40で、検知信号から第1の被検知体についての極大値と極小値を求めて記憶しておき、ステップS41で、極大値が第1の閾値(例えば図22のVk1)以下になり、かつ極小値が第2の閾値(例えば図22のVk2)以上となっていれば、離遠と判定し、そうでなければ、離遠でないと判定する。
【0080】
あるいは、ステップS40で、第1の被検知体の極大値と極小値の差分値を求めて記憶しておき、ステップS41で、これらの差分値が所定の回数連続して減少していれば、離遠と判定し、そうでなければ、離遠でないと判定する。
【0081】
第5の実施の形態によれば、第1の被検知体の離遠の検知を、減速検知回数リセットの判定要素として追加することにより、使用者が水栓装置から離れたことについて、さらに高精度な検知ができる。
【0082】
次に、本発明の第6の実施の形態について説明する。本実施形態においては、第1の被検知体(身体)と第2の被検知体(人の手や被洗浄体)の2つの減速を検知する場合において、検知信号から被検知体を所定時間以上確認できなければ、使用者が離遠してすでにいないものとして、減速検知回数をリセットし、次の使用者の動きによる減速検知を、他の第1の被検知体(身体)の接近による第1回目の減速検知であるものとする。
これにより、最初の使用者が離れ、次の使用者が使用する際の減速が何回目の減速か判らなくなることをなくして、高精度な検知ができる。
【0083】
図24は、使用者がいない場合などの検知信号の例を表すタイムチャートである。
また、図25は、本発明の実施の形態6においての制御部200による減速検知回数のリセット手順を表すフローチャートである。
【0084】
図25に表した具体例において、制御部200は、第1の被検知体の減速検知手順(図11のステップS1〜S3)によって、第1の被検知体の減速を検知し、第1回目の減速検知をしたことをメモリー等に記憶したあと(ステップS30)、センサ部100から検知信号を取得して(ステップS10)、この検知信号の振幅を求めて記憶する(ステップS50)。
【0085】
この場合、検知信号の振幅は、例えば、検知信号の全周波数帯域(0〜100Hz)においての最大振幅とする。
【0086】
そして、制御部200は、今回取得した検知信号の振幅が所定の閾値(例えば図24のVt)以下であるか否かを判定する(ステップS51)。
【0087】
その結果、今回、取得した検知信号の振幅が所定の閾値以下であると判定した場合には(ステップS51でYES)、検知信号から被検知体を確認できなかったものとして、検知信号の振幅が上記の閾値以下である時間が所定時間(例えば図24のT1)以上であるか否かを判定する(ステップS52)。
ここで、制御部200は、上記の時間をタイマー等によって計測している。なお、検知信号の振幅が所定の閾値を超えると判定した場合には(ステップS51でNO)、上記のタイマーをリセットした上で、ステップS10の検知信号の取得に戻る。
【0088】
そして、制御部200は、検知信号の振幅が上記の閾値以下である時間が、所定時間に満たなければ(ステップS52でNO)、上記のタイマーをリセットせずに、ステップS10の検知信号の取得に戻り、検知信号の振幅が上記の閾値以下である時間が、所定時間以上であれば(ステップS52でYES)、メモリに記憶してある減速検知の回数(第1回目の減速検知をしたこと)をリセットする(ステップS33)。
【0089】
第6の実施の形態によれば、検知信号が所定時間以上確認できなかったら、減速検知回数をリセットすることにより、使用者が入れ替わっても、使用者の手の動きに応じた最適なタイミングで吐水を開始することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる吐水装置の構成を表す図である。
【図2】センサ部100と制御部200の具体例のブロック図である。
【図3】センサ部100と制御部200の具体例のブロック図である。
【図4】第1の実施の形態においてのセンサ部100から出力される上記検知信号の特性を説明する図である。
【図5】第1の実施の形態においての被検知体の動作を説明する図である。
【図6】第1の実施の形態においての被検知体の目標とする到達地点からの距離に対する検知信号の周波数の変化の例を示す図である。
【図7】第1の実施の形態においての被検知体の具体例を説明する側面図である。
【図8】第1の実施の形態においての制御部200による吐水開始手順を説明するフローチャートである。
【図9】第2の実施の形態においての被検知体の動作を説明する上面図である。
【図10】第2の実施の形態においての被検知体(検知対象物)の目標とする到達地点からの距離に対する検知信号の周波数の変化の例を示す図である。
【図11】第2の実施の形態においての制御部200による吐水開始手順を説明するフローチャートである。
【図12】図10に表した具体例について、周波数帯毎に検知信号を観察する方法を説明するための模式図である。
【図13】図12に表した具体例に対応する検知信号の振幅の時間変化の実測値を例示するグラフ図である。
【図14】被検知体(検知対象物)の目標とする到達地点からの距離に対する検知信号の周波数の変化の第2の具体例を表す模式図である。
【図15】図14に表した具体例について、周波数帯毎に分割して観察することを表す模式図である。
【図16】図14に表した具体例について、各周波数帯における検知信号の振幅の時間変化の実測値を表すグラフ図である。
【図17】第3の実施の形態においての被検知体(検知対象物)が到達地点に接近している場合の到達地点(水栓装置)からの距離に対する検知信号の振幅の変化の例を表す図である。
【図18】第3の実施の形態においての制御部200による吐水開始制御の手順を表すフローチャートである。
【図19】第4の実施の形態においての第1の被検知体である身体(使用者)が到達地点(水栓装置の前)から離遠する様子を表す上面図である。
【図20】第4の実施の形態においての第1の被検知体(検知対象物)が到達地点から離遠している場合の到達地点(水栓装置)からの距離に対する検知信号の周波数の変化の例を表す図である。
【図21】第4の実施の形態においての制御部200による減速検知回数のリセット手順を表すフローチャートである。
【図22】第5の実施の形態においての被検知体(検知対象物)が到達地点から離遠している場合の到達地点(水栓装置)からの距離に対する検知信号の振幅の変化の例を表す図である。
【図23】第5の実施の形態においての制御部200による減速検知回数のリセット手順を表すフローチャートである。
【図24】第6の実施の形態においての使用者がいない場合などの検知信号の例を表すタイムチャートである。
【図25】第6の実施の形態においての制御部200による減速検知回数のリセット手順を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0091】
10 給水ホース、 30 吐水口、 40 受水部、100 センサ部、112、112a、112b アンテナ、114 送信部、116 受信部、118 差分検出部、200 制御部、210 フィルタ、220 周波数検出部、230 判定部、250 バルブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水部と、
放射した電波の反射波によって被検知体の移動に関する情報を取得するセンサ部と、
前記センサ部からの検知信号に基づいて前記吐水部からの吐水を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、被検知体が減速して第1の所定速度以下になったことを検知したら、前記吐水を開始させることを特徴とする吐水装置。
【請求項2】
前記制御部は、被検知体の第1の減速を検知したあと、被検知体の第2の減速を検知し、その速度が前記第1の所定速度以下になったことを検知したら、前記吐水を開始させることを特徴とする請求項1記載の吐水装置。
【請求項3】
前記制御部は、被検知体が減速して前記第1の所定速度以下になり、かつ被検知体の前記吐水部への接近を検知したら、前記吐水を開始させることを特徴とする請求項1または2に記載の吐水装置。
【請求項4】
前記制御部は、被検知体の前記吐水部からの離遠を検知したら、前記減速の検知の回数をリセットすることを特徴とする請求項2記載の吐水装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記検知信号の振幅が、所定の時間、所定の閾値以下であったら、前記減速の検知の回数をリセットすることを特徴とする請求項2記載の吐水装置。
【請求項1】
吐水部と、
放射した電波の反射波によって被検知体の移動に関する情報を取得するセンサ部と、
前記センサ部からの検知信号に基づいて前記吐水部からの吐水を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、被検知体が減速して第1の所定速度以下になったことを検知したら、前記吐水を開始させることを特徴とする吐水装置。
【請求項2】
前記制御部は、被検知体の第1の減速を検知したあと、被検知体の第2の減速を検知し、その速度が前記第1の所定速度以下になったことを検知したら、前記吐水を開始させることを特徴とする請求項1記載の吐水装置。
【請求項3】
前記制御部は、被検知体が減速して前記第1の所定速度以下になり、かつ被検知体の前記吐水部への接近を検知したら、前記吐水を開始させることを特徴とする請求項1または2に記載の吐水装置。
【請求項4】
前記制御部は、被検知体の前記吐水部からの離遠を検知したら、前記減速の検知の回数をリセットすることを特徴とする請求項2記載の吐水装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記検知信号の振幅が、所定の時間、所定の閾値以下であったら、前記減速の検知の回数をリセットすることを特徴とする請求項2記載の吐水装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2009−35874(P2009−35874A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199060(P2007−199060)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【特許番号】特許第4207090号(P4207090)
【特許公報発行日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【特許番号】特許第4207090号(P4207090)
【特許公報発行日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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