説明

向上された薬物濃度を与える医薬組成物

【課題】薬物及び、濃度向上(enhancing)ポリマーを含まない対照組成物に対して、使用環境における薬物の濃度を向上させる濃度向上ポリマーの組み合わせを含む組成物の提供。
【解決手段】(a)結晶質の高度に溶解性の塩の形態、高エネルギー結晶質の形態、及び非晶質からなる群から選択されるものであるジプラシドン;と(b)酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である濃度向上(enhancing)ポリマー;との物理的混合物を含み、当該濃度向上ポリマーとジプラシドンが、0.01〜5の薬物対ポリマー重量比で存在水に対する溶解度の少なくとも1.25倍の水に対する溶解度を有する、医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
本発明は、薬物及び、濃度向上(enhancing)ポリマーを含まない対照組成物に対して、使用環境における薬物の濃度を向上させる濃度向上ポリマーの組み合わせを含む組成物に関する。
【0002】
低溶解度薬物は、しばしば良好でない生体利用率又は不規則な吸収を示し、不規則性の程度は、投与量の水準、患者の給餌の状態、及び薬物の形態のような因子によって影響される。低溶解度薬物の生体利用率を増加させることは、多くの探求の目的であった。生体利用率を増加することは、溶液中の薬物の濃度を改良して、吸収を改良することを条件とする。
【0003】
多くの低溶解度薬物が、in vitro試験において、水溶液に溶解するものである薬物の最大濃度を増加させるように処方されることは知られている。溶解度改良型のこのような薬物が、最初、胃液のような使用の環境中に溶解された場合、薬物の溶解度改良型は、最初、使用の環境中において、薬物の他の形態と比較して、そして薬物の平衡濃度に対して、溶解した薬物のより高い濃度を与える。更に、このような形態がin vivoで試験された場合、これらは、恐らくは胃腸(GI)管中に存在する溶解された薬物の濃度を、少なくとも一時的に向上することによって、薬物の相対的生体利用率を向上することができることが示されている。然しながら、以下で検討されるように、得られたより高い濃度は、溶解性を改良された薬物の形態が使用環境に放出された後、低溶解度の形態に急速に転換されることによって、しばしば一時的のみである。
【0004】
例えば、ある種の低溶解度の薬物は、薬物の他の塩の形態と比較して、使用環境における薬物の濃度の一時的な改良を与える高度に可溶性の塩の形態で処方することができることが知られている。このような薬物の例は、セルトラリン(sertraline)であり、これは、乳酸塩の形態で、pH3においてHCl塩の形態より高い水に対する溶解度を有する。然しながら、乳酸セルトラリンのような高溶解性塩の形態を、高濃度の塩化物並びにpHを調節するための緩衝液の両方の存在を有する水溶液(in vitro又はin vivoのいずれでも)中に投与した場合、乳酸セルトラリンの向上された溶解度は、セルトラリンが、乳酸セルトラリンより低い溶解度を有する結晶質又は非晶質のHCl若しくは遊離塩基の形態に急速に転換されるために、短時間か又は全く達成されないかのいずれかである。
【0005】
低溶解度薬物の溶液中で、少なくとも一時的に増加された濃度を与えることが知られているもう一つの薬物の形態は、薬物の水和物又は溶媒和物の結晶の形態の薬物からなる。このような形態は、しばしば最低の溶解度の結晶の形態と比較してより高い水に対する溶解度を有し、そして従って、薬物のより高い濃度を与える。
【0006】
ある種の薬物は、同一の化学組成を有するにもかかわらず、一つ以上の結晶構造を形成することが可能であることが知られている。(これは、異なった化学組成を有する塩の形態、溶媒和物、又は水和物と対照的である。)これらの各種の結晶構造は、しばしば多形体と呼ばれる。多形体は、溶液中の増加した濃度を一時的に与えるもう一つの薬物の形態を含む。更に本明細書中で“高エネルギー結晶質の形態”と呼ばれるある種の多形体は、より高い水に対する溶解度を有し、そして従って、他の結晶の形態と比較して、そして平衡濃度と比較して、薬物の向上された水中の濃度を与えることができる。
【0007】
結晶質又は非晶質の形態のいずれかで存在することが可能な低溶解度薬物の、非晶質の形態は、更に使用環境における薬物の平衡濃度に対して、より大きい水に対する濃度を一時的に与えることは更に公知である。薬物の非晶質の形態が、結晶質の形態より更に迅速に溶解し、しばしば溶液から薬物が沈殿することができるより早く溶解すると信じられている。結果として、非晶質の形態は、薬物の平衡より一時的に大きい濃度を与えることができる。
【0008】
平衡より大きい薬物濃度を一時的に与えることができるもう一つの方法は、薬物の形態に可溶化剤を含めることである。このような可溶化剤は、薬物の水に対する溶解性を促進する。可溶化剤を薬物と共に使用して、水に対する溶解度を増加する例は、セルトラリンと可溶化剤の使用である。現在米国特許第 号である、本発明と同一譲渡人の出願になる、国際特許出願PCT99/01120中に開示されているように、セルトラリンが水溶液に可溶化剤、例えばクエン酸と共に同時溶解された場合、セルトラリンの溶解度は、劇的に増加する。先に記載したように、セルトラリンHClが、クエン酸と共に塩化物含有緩衝溶液又はGI管に投与された場合、達成される最大のセルトラリン濃度は、セルトラリンHClの溶解度を超える。この濃度の向上は、一部はクエン酸の存在による使用環境中の局部的により低いpHのために、そして、一部はクエン酸セルトラリンがセルトラリン塩化物より可溶性であるために、クエン酸の対イオンが存在することによると考えられる。然しながら、向上された濃度は、セルトラリンが、使用環境にもよるが、固体結晶質又は非晶質のHCl塩及び/又は結晶質又は非晶質の遊離塩基であることができる低溶解度の形態に急速に転換されるために、典型的には短命である。
【0009】
使用環境における薬物の平衡より大きい濃度を一時的に達成するためのなおもうひとつの技術は、薬物を水性又は有機性の溶液として処方することである。例えば、薬物を、ポリエチレングリコール(PEG)又はPEGの水溶液中に溶解することができ、これに酸又は塩基を加えることができ、或いは薬物を、酸又は塩基の水溶液中に溶解することができる。別の方法として、薬物を、グリセリン、モノ−、ジ−、又はトリ−グリセリド、脂肪又は油のような医薬的に受容可能な有機液体に溶解することができる。
【0010】
これらの溶解度改良薬物の形態は、最初に使用環境において向上された薬物の濃度を示すが、然しながら改良された濃度はしばしば短命である。典型的には、最初に向上された薬物の濃度は一時的のみであり、そして急速により低い平衡濃度に戻る。例えば、塩基性薬物の特定の塩の形態は、最初は改良された水に対する濃度を示すことができるが、薬物は、しばしば胃液中で、はるかに低い平衡濃度を有するもう一つの塩の形態(典型的にはHCl塩の形態)に急速に転換される。他の場合において、薬物は、低いpHの胃液中で受容可能な溶解性を維持するが、しかしpHの高い、典型的には4.4ないし7.5のpHの小腸に進んだ時に、典型的には薬物の遊離塩基の形態で沈殿する。薬物の吸収は主として腸で起こるために、腸溶液中の高い薬物の濃度を継続できないこのような薬物の投与形態は、典型的には生体利用率に僅かな改良しか得られない。同様に、酸性薬物の高溶解度塩の形態は、はるかに低い平衡濃度を有するもう一つの塩の形態に急速に転換される。同様な効果は、双性イオン性薬物の高溶解度塩の形態においてさえ観察される。同様に、薬物の高エネルギー結晶質の形態(例えば多形体)を溶解した場合、薬物は、これが、低溶解度を持つ低エネルギーの結晶質の形態又は非晶質の形態に変化するに伴なって、しばしば溶液から急速に沈殿又は結晶化し、これは、溶解した薬物の濃度をより低い平衡濃度に近づけさせる。
【0011】
低溶解度薬物の生体利用率を増加させる一つの方法は、薬物の非晶質分散物をポリマーと共に形成することを含む。薬物のポリマーとの分散物を形成することによって薬物濃度を増加させる試みの例は、Lahr等の米国特許第5,368,864号、Kanikanti等の米国特許第5,707,655号、及びNakamichi等の米国特許第5,456,923号を含む。
【0012】
然しながら、薬物及びポリマー(類)の非晶質分散物を製造することは、いくつかの欠点を間違いなく有する。分散物を製造する過程中に、薬物が変化する危険性があるものである。例えば、ある種の薬物は、ある種の分散物を形成するために使用される高温で分解することができる。ある方法は、有機溶媒を使用し、これは薬物の分解を回避するために完全に除去されなければならない。薬物及びポリマーの両方を溶解する溶媒が選択されなければならない。このような分散物を形成する方法は更に時間がかかり、そして不経済である。更に、分散物は、ある場合には不安定であり、そして中程度の温度及び湿度水準で時間をかけて化学的に分解されることができるか、又は薬物が低エネルギーの、そして低溶解度の非晶質又は結晶質の形態に転換されることができるかのいずれかである。
【0013】
薬物及びポリマーの組み合わせを使用することによって薬物の溶解性を増加することは、更に説明されている。例えば、Martin等、米国特許第4,344,934号は、良好でなく溶解する薬物をヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)のようなポリマーと混合し、そして薬物−ポリマー混合物に界面活性剤の水溶液を加えた。これは改良された溶解が得られるが、平衡濃度に対して薬物濃度の僅かな向上があるのみである。Piergiorgio等、米国特許第4,880,623号は、溶媒加工を使用して、ニフェジピンをPEGと同時沈殿させ、そしてこれをHPMCのようなポリマー上に、又は他の賦形剤上に吸着させた。増加した薬物の生体利用率が観察されたが、異なった薬物形態間の比較はなされなかった。Uedo等、米国特許第5,093,372号は、難溶性の薬物エキシホン(exifone)を、HPMCのようなポリマーと混合して、生体利用率を増加させた。然しながら、これは、薬物の大きな結晶質の形態に対する、薬物/ポリマー混合物のいかなる向上された薬物濃度も得られなかった。
【0014】
更に、薬物を可溶化ポリマーと組み合わせることは、全ての低溶解度薬物に対して生体利用率を改良するために普遍的に利用可能ではない。薬物の可溶化は、通常、特定の薬物の化学構造及び物理的特性、及び従って薬物毎に変化する薬物を可溶化することを証明することができる特定のポリマーが存在する場合、それに高度に依存する。改良された可溶化を達成するポリマーを選択することは、薬物−ポリマーの相互作用が不充分にしか理解されていないため、しばしば困難であり、そして時間のかかることである。ポリマーの添加は、しばしば向上した濃度を与えることとは反対に、単純に薬物の溶解を早める。
【0015】
Usui等、Inhibitory Effects of Water−Soluble Polymers on Precipitation of RS−8359,Int’l J.of Pharmaceutics 154(1997)59−66は、低溶解度の薬物RS−8359の沈殿を阻害する3種類のポリマー、即ちヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びポリビニルピロリドンの使用を開示している。薬物及びポリマーを0.5NのHCl及びメタノールの混合物中に溶解し、そして次いでリン酸緩衝溶液中に加えた。Usui等は、特定のポリマーが薬物の結晶化を阻害したことを観察した。
【0016】
従って、なお必要とされるものは、薬物の平衡濃度に対して、水溶液中の薬物の向上された濃度を提供し、このような溶液中の薬物の濃度を長時間維持するか、又は向上された濃度から平衡濃度に薬物濃度が減少する速度を少なくとも減少し、薬物を変化又は分解するものではない方法を使用して調製することができ、溶媒加工に依存することなく調製することができ、典型的な保存条件下で安定であり、容易に、そして安価に調製することができ、そして良好でない可溶性の薬物の生態利用率を最終的に向上する薬物、を含む組成物である。これらの必要性及び当業者にとって明白となるものである他の必要性は、以下の詳細中に要約され、そして記載される本発明によって合致される。
【0017】
発明の簡単な概要
本発明は、(1)溶解度改良型の薬物及び(2)濃度向上ポリマーを含む組成物を提供することによって、従来の技術の欠点を克服する。
【0018】
本発明の第1の側面において、濃度向上ポリマーは、組成物が、使用環境において、ポリマーが存在しない使用環境における薬物の平衡濃度の少なくとも1.25倍である薬物の最大濃度を与えるように、充分な量で薬物の形態と組み合わされる。組成物は、更に平衡濃度を超える使用環境における薬物の濃度を、等量の薬物を溶解度改良型で含み、濃度向上ポリマーを含まない対照組成物が与えるより長時間与える。
【0019】
本発明の第2の側面において、濃度向上ポリマーは、組成物が、使用環境に導入された直後の1200分間中の少なくとも90分間の期間、先に記載した同じ対照組成物によって与えられる対応する曲線下の面積の少なくとも1.25倍である濃度−対−時間曲線下の溶解面積(AUC)を与えるように、充分な量で存在する。
【0020】
本発明の第3の側面において、濃度向上ポリマーは、組成物が、少なくとも1.25である相対的生体利用率を与えるように充分な量で存在する。
本発明の第4の側面において、薬物を必要とする患者に、(1)溶解度改良型の薬物及び(2)濃度向上ポリマーを、共同投与することを含む方法が提供される。濃度向上ポリマーは、組成物が、患者の使用環境において、ポリマーが存在しない患者の使用環境における薬物の平衡濃度の少なくとも1.25倍である薬物の最大濃度を与えるように充分な量で共同投与される。この方法は、更に患者の使用環境における平衡濃度を超える薬物の濃度を、先に記載した対照組成物が与えるより長時間与える。
【0021】
本発明の第5の側面において、薬物を必要とする患者に、(1)溶解度改良型の薬物及び(2)濃度向上ポリマーを、共同投与することを含む方法が提供される。濃度向上ポリマーは、組成物が、患者の使用環境に導入された直後の1200分間中の少なくとも90分間の期間、先に記載した同じ対照組成物によって与えられる対応する曲線下の面積の少なくとも1.25倍である患者の使用環境における濃度−対−時間曲線(AUC)下の溶解面積を与えるように、充分な量で共同投与される。
【0022】
本発明の第6の側面において、薬物を必要とする患者に、(1)溶解度改良型の薬物及び(2)濃度向上ポリマーを、共同投与することを含む方法が提供される。濃度向上ポリマーは、組成物が、少なくとも1.25倍の相対的生体利用率を与えるように充分な量で共同投与される。
【0023】
本明細書中で使用される“溶解度改良型”の用語は、既知の薬物の最も低い可溶性の形態に対して増加した溶解度を有する薬物の形態を指す。従って、この用語は、薬物のより少ない可溶性の形態が存在し、そして既知であるか又はそのように決定された、即ち例えば科学的若しくは特許文献から既知であるか、或いは研究者によって決定され又は他の方法で既知となったもののいずれかを含む。“溶解度改良型”は、薬物単独の高度に可溶性の形態からなることができ、薬物の高度に可溶性の形態及び不活性賦形剤を含む組成物であることができ、或いは良好でなく又は高度に可溶性の形態の薬物、及び溶解度が増加される時間の長さに関係なく薬物の溶解度を増加させる効果を有する、1種類又はそれ以上の賦形剤を含む組成物であることができる。“溶解度改良型”の例は、限定されるものではないが:(1)塩のような薬物の結晶質の高度に可溶性の形態;(2)薬物の高エネルギー結晶質の形態;(3)薬物の水和物又は溶媒和物の結晶質の形態;(4)薬物の非晶質の形態(非晶質又は結晶質のいずれかとして存在できる薬物に対して);(5)薬物(非晶質又は結晶質)及び可溶化剤の混合物;或いは(6)水性又は有機液体に溶解された薬物の溶液を含む。
【0024】
別の方法として、“溶解度改良型”の用語は、in vivoの使用環境(例えば哺乳動物の胃腸管のような)又は生理的に関係するin vitro溶液(リン酸緩衝生理食塩水又は以下に記載するModel Fasted Duodenal溶液のような)中に放出された場合、少なくとも一時的に使用環境における薬物の平衡濃度の少なくとも1.25倍の薬物の濃度を与える又は与えることが可能な、単独又は先に記載したような組成物中の薬物の形態を指す。(本明細書で使用される“平衡濃度”の用語は、以下で定義される。)
薬物の溶解度改良型は、上記の定義の少なくとも一つに合致するものである。
【0025】
塩基性薬物の結晶質の遊離塩基及び結晶質の塩酸塩の形態は、一般的に他の薬物の形態に対して相対的に低い溶解度を有するために、そして溶解された薬物が一般的に動物のGI管の使用環境からこれらの結晶質の形態の一つとして(又はこれらの非晶質の相対物)沈殿するために、塩基性薬物の好ましい溶解度改良型は、更に可溶性の結晶質塩酸塩及び結晶質の遊離塩基薬物の形態の溶解度の、少なくとも2倍の水に対する溶解度を有する薬物の形態である。
【0026】
本発明の好ましい態様において、濃度向上ポリマーは疎水性部分及び親水性部分を有する。最も好ましい態様において、濃度向上ポリマーは、イオン化可能なポリマーであり、これは生理的に関係するpHにおいて有意にイオン化された場合、使用環境において可溶性である。
【0027】
本発明の固体組成物は、一般的に溶解度改良型及び濃度向上ポリマーを含む組み合わせ物である。本明細書中で使用される“組み合わせ”は、溶解度改良型及び濃度向上ポリマーが、お互いに物理的に接触しているか、又は極めて接近しているが、しかし物理的に混合されている必要は無いことができることを意味する。例えば、固体組成物は、一つ又はそれ以上の層が溶解度改良型を含み、そして一つ又はそれ以上の異なった層が濃度向上ポリマーを含む、当技術において既知の多層錠剤の形態であることができる。なおもう一つの例は、薬物の溶解度改良型又は濃度向上ポリマーのいずれか或いは両方が錠剤の核中に存在することができ、そして被覆が溶解度改良型又は濃度向上ポリマー或いは両方を含む、被覆された錠剤を構成することができる。別の方法として、組み合わせ物は、単純に乾燥した物理的な混合物であることができ、ここにおいて溶解度改良型及び濃度向上ポリマーの両方は粒子状の形態で混合され、そしてそれぞれの粒子は、大きさに関係なく、これらが個体として示す同じ個々の物理的特性を保持する。薬物及びポリマーを分子分散に実質上転換するものではない、物理的混合及び乾式又は湿式粒状化のような、ポリマー及び薬物をいっしょに混合するために使用されるいかなる慣用的な方法も使用することができる。
【0028】
別の方法として、薬物及び濃度向上ポリマーを、薬物を必要とする患者に共同投与することができる。薬物及び濃度向上ポリマーは、別個に又は同じ投与剤形中で投与することができ、そして更に本質的に同時に又は異なった時間に投与することができる。
【0029】
然しながら、上記で検討された技術において開示されているような、分散が使用環境に放出される以前に形成された薬物及びポリマーの分散物、特に分子分散物を含む組成物は、本発明の一部を形成せず、そして本発明から除外される。一般的に、薬物及びポリマーの分子分散物は、融点又はガラス転移温度のような混合物の物理的特性が、個体(即ち分散されていない)ポリマー及び薬物のこれらの特徴から転換されたものである。上記で開示したように本発明の組成物において、薬物及びポリマーは、それぞれ融点及び/又はガラス転移温度のような個々の対応する物理的特性を保持する。従って、溶媒中に薬物及び濃度向上ポリマーを溶解し、続いて溶媒から乾燥することによって、又は同時粉砕によって、又は加熱を伴なう押出によって、又はポリマーの溶液及び薬物の溶液を混合することによりポリマー及び薬物の分散物が沈殿するような沈殿によって、或いは薬物及び濃度向上ポリマーの分子分散物が形成されるような他の方法によって製造された固体組成物は、本発明の一部を形成しない。
【0030】
更に本発明の一部ではないものは、高い胃(pH1ないし2)中の溶解度及び低い腸中の溶解度(pH6ないし8)を持つ塩基性薬物が、その最低の溶解度の形態で濃度向上ポリマーと投与される特別な場合である。このような場合、薬物の溶解度改良型を使用した結果としてではなく、胃の天然に存在する酸性の環境の影響の結果として高い薬物濃度が達成される。本発明の基本となる進歩性のある要素は、溶解度改良型薬物を濃度向上ポリマーと組み合わせることであるため、高い薬物の溶解性が胃の天然の環境単独の結果として達成される場合は、本発明の一部を構成しない。
【0031】
本発明の各種の側面は、以下の利益の一つ又はそれ以上を有する。
薬物の溶解度改良型は、使用環境で溶解された場合、薬物の平衡濃度を越える薬物の初期濃度を与え、一方濃度向上ポリマーは、初期の向上された薬物濃度が平衡濃度に落ちる速度を遅延する。結果は、本発明の組成物が、薬物単独によって与えられるものより大きい、改良された曲線下の溶解面積(“AUC”)を与えることである。本発明の範囲に入る必要はないことであるが、ある側面において、溶解度改良型は、薬物単独によって達成される最大薬物濃度を超える最大薬物濃度を与える。それにもかかわらず、本発明の利益は、向上された薬物濃度が平衡濃度に降下する速度を単に遅延することによって、薬物単独に対する最大薬物濃度の増加がなくとも得ることができる。
【0032】
いかなる場合においても、AUCを改良することは、本発明の組成物が、更に薬物の濃度を増加することによって、使用環境中に、特にGI管中に溶解したまま残っている薬物の向上された生体利用率を与えることを意味する。溶液中の薬物の濃度を改良することは、達成されるべきより高い血中濃度を可能にし、ある場合には到達すべき有効濃度を可能にし、又は他の場合には到達すべき有効血中濃度をより低い薬物投与量で可能にし、これは今度は投与すべき薬物の量を減少し、血中濃度の変動を減少し、そして更に必要とするポリマーの量によるが、投与剤形の大きさを減少する。従って、本発明の組成物は、さもなければ有効であるために充分に高い生体利用率を有しない、水に対する低い溶解度を有する薬物の有効な使用を可能にし、そして更に生体利用率を向上して、必要な投与量を減少する。
【0033】
更に、本発明の組成物が、使用環境においてより高い濃度を与えるため、そして一旦高い薬物濃度が達成された後、濃度が、薬物の沈殿又は結晶化が阻害されるために高いままである傾向があるために、これらは、使用環境に存在する塩化物又は水素イオン或いは薬物の吸収による不安定な塩のような化学種の不都合な影響を減少する。従って、使用環境がGI管である場合、本発明の組成物は、ヒト又は動物の給餌/絶食状態に対して、より少ない変動を示すものである。
【0034】
更に、薬物が結晶質の状態で存在する形態において、薬物は、その物理的又は化学的状態が、例えば各種の分解反応によって変化させられる傾向がより少なく、そして同様にその医薬的特性が、投与形態の調製中に又は、例えば保存中に分解又は結晶化を受けることができる薬物の固体の非晶質分散物と比較して、保存中に変化させられる傾向が少ない。更に、結晶質の薬物を含む組成物は、単純に物理的な混合物(分散物と反対に)であるため、組成物は、多くの分散物の保存安定性の問題に煩わされない。固体混合物、又は単純な溶液の特質である組成物は、更に慣用的な混合技術を使用して容易に調製される。
【0035】
上記の並びに本発明の他の目的、特徴、及び利益は、以下の本発明の詳細な説明を考慮することによって、更に容易に了解されるものである。
好ましい態様の詳細な説明
本発明は、溶解度改良型の薬物及び濃度向上ポリマーを含む組成物を提供する。溶解度改良型は、薬物の結晶質の高度に可溶性の塩の形態、薬物の高エネルギー結晶質の形態(例えば、高溶解度多形体)、薬物の水和物又は溶媒和物の結晶質の形態、薬物の非晶質の形態、薬物の可溶化剤との混合物、或いは薬物の水性又は有機液体中の溶液であることができる。適当な薬物(類)及び適当な濃度向上ポリマー(類)は、以下で詳細に検討される。
【0036】
溶解度改良型の固体薬物及び濃度向上ポリマーは、これらが、組み合わせられ、そして乾燥成分がいっしょに物理的に撹拌されるか、又は乾式又は湿式のように慣用的な混合技術を使用して混合される場合、“単純な物理的混合物”と名付けられる。従って、薬物及びポリマーの単純な物理的混合物は、混合物中において、薬物が結晶質薬物の場合、薬物単独のこれらの特性に合致する融点を、又は非晶質薬物の場合、ガラス転移温度のような特性を有することを意味する。これは、薬物の融点が観察されず、そしてポリマー及び薬物単独とは異なり、そして分散物中の薬物/ポリマーの質量比の関数として変化するガラス転移温度が観察される薬物/ポリマーの分子分散物と対照的である。
【0037】
溶解度改良型の薬物及び濃度向上ポリマーは、更に使用環境に対する二つの成分の共同投与によって組み合わせることができる。共同投与によって、溶解度改良型薬物は、濃度改良ポリマーと別個に、しかし一般的に同一時間枠内に投与されることを意味する。例えば、溶解度改良型薬物は、その選択されたそれ自体の投与剤形で、別個の投与剤形中の濃度向上ポリマーと概略同時に投与することができる。溶解度改良型の薬物及び濃度向上ポリマーの投与間の時間差は、使用環境においてこれらが物理的に接触するようなものである。これらが同時に共同投与されない場合、溶解度改良型の薬物の投与に先立って、濃度向上ポリマーを投与することが一般的に好ましい。
【0038】
多くの薬物が、いくつかの形態で存在することが可能であり、そして溶解度改良型に処方されて、薬物の最低の溶解性の形態の平衡濃度に対して、初期の改良された水に対する濃度を与えることは知られている。然しながら、濃度向上ポリマーが存在しない場合、初期の向上された薬物の濃度は、薬物が溶液から沈殿又は結晶化するため、しばしば薬物の概略平衡濃度に急速に減少する。これは各種の機構によって起こることができる。例えば、高度に可溶性の塩の形態は、使用環境における他のイオンの存在のために、より低い平衡濃度を有するもう一つの塩の形態に転換される。溶解した薬物は、更にそのイオン状態を、例えばプロトン化又は脱プロトン化によって変化させられ、溶液からより低い溶解度の形態として沈殿又は結晶化することができる。別の場合、高エネルギーの結晶性の形態が溶解された場合、より低い溶解度を有する低エネルギー結晶質の形態に急速に転換することができる。同様に、薬物は、可溶化剤と混合することができる。例えば、特に薬物が塩基である場合、薬物は低いpHにおいて高い水に対する溶解度を有することができる。このような薬物は、無機又は有機酸のような可溶化剤と混合することができる。酸は、投与剤形中、並びに投与剤形の近辺の使用環境のpHを低下し、このようにして薬物の局所的な溶解度を増加することによって可溶化剤として働くことができる。然しながら、薬物が投与剤形から離れて拡散するために、使用環境のpHは、可溶化剤の酸のより低い濃度のために増加することができ、従って薬物の溶解度が低下し、そして薬物の沈殿が起こる。このような溶解度改良型薬物は、それ自体で、生体利用率の所望する増加を生じることにおいて、一般的に制約された成功しか有しない。ある場合には、低溶解度の形態としての沈殿又は結晶化は、溶解度改良型の最大溶解度にさえ達しないほど急速である。
【0039】
本発明の基本は、溶解度改良型の薬物によって与えられる溶液中の薬物の初期の向上された濃度を、濃度向上ポリマーの使用によって、沈殿、結晶化又は薬物の低溶解度の形態への転換を遅延することによって維持し、そしてある場合には向上することができることに対する本発明者達による認識であった。従って、作用のいかなる特定の機構を暗示することなく、本発明の濃度向上ポリマーが、結晶化又は沈殿阻害剤として作用するとみなすことができることは信じられる。驚くべきことに、これは、薬物及びポリマーの分散物を形成する場合と対照的に、濃度向上ポリマーを、薬物が固体の形態であるときに薬物と組み合わせることによって達成することができる。別の方法として、ポリマーは、薬物含有錠剤又はビーズ上に被覆するか、或いは別個に、しかし溶解度改良型薬物と同じ使用環境に投与し、そしてなお実質的な時間の間、平衡より大きい薬物濃度、同様により高い生体利用率を維持するために機能することができる。更に、薬物が液体中の溶液の形態である場合、ポリマーを液体中に薬物と共に同時溶解し、液体中に懸濁するか、或いは液体を含むカプセルの壁又は被覆を構成することさえできる。
【0040】
薬物がしばしば多くの固体結晶質又は非晶質の形態のいずれもとして存在することができるために、そしてこれらの形態間の相互転換がしばしば予想不可能であるために、水溶液中に溶解した薬物濃度がその平衡値に達するために、非常に短い時間から非常に長い時間までを必要とすることができる。いかなる場合も、濃度向上ポリマーの存在は、薬物濃度が平衡に降下するまでに必要な時間を増加する。事実、本発明の組成物が、溶解された薬物がGI体液から吸収されるGI管のような使用環境に投与された場合、薬物の大部分又はすべては、薬物がその最低の溶解度の形態に実質的に転換される前に吸収されることができる。平衡薬物濃度を超える溶解された薬物の濃度の典型的な向上は、1.25倍ないし20倍の範囲であり、そしてある場合には20倍ないし100倍である。例えば、対照が1mg/mLの平衡濃度を与え、そして組成物が1.25mg/mLの最大薬物濃度を与える場合、組成物は、1.25倍の向上を与える。
【0041】
特定の理論によって束縛されることを望むものではないが、本発明の濃度向上ポリマー(類)は、一般的に不溶性薬物を大幅に可溶化(即ち、遊離の薬物の平衡溶解度の増加)する能力を有しないと信じられている。その代わり、濃度向上ポリマーが、薬物が最初に溶解された後、薬物の沈殿又は結晶化の速度を遅延することに対して主として作用すると信じられている。従って濃度向上ポリマー(類)の存在は、薬物の溶解度改良型によって与えられた初期の増加した又は向上した濃度を、少なくとも部分的に少なくとも数分、そしてある場合には、何時間も維持することを可能にする。更に、薬物の溶解度改良型の溶解が遅く、そして濃度向上ポリマーが存在せず、低溶解度形態の薬物の沈殿が早い場合、濃度向上ポリマーの存在は、ポリマーが存在しない場合に観察されるものより実質的に高い、観察される薬物の最大濃度を与えることができる。
【0042】
薬物濃度の改良に対する一つの可能性のある機構は、“ポリマー/薬物アセンブリー”を形成する濃度向上ポリマー及び溶解された薬物の会合を含む。このようなアセンブリーは、高分子ミセル、数ナノメートルないし1000ナノメートルの範囲の大きさの高エネルギーポリマー−薬物集合体、ポリマー−安定化薬物コロイド又はポリマー/薬物複合体を含む各種の形態を構成することができる。別の観点は、溶解した薬物が、溶液から沈殿又は結晶化し始める(例えば、核化が始まる)とき、ポリマーがこれらの薬物集合体又は核に吸着し、核化又は結晶成長の過程を防止又は少なくとも遅延することである。いかなる場合も、ポリマーの存在は、溶解された又は少なくとも吸収に利用可能な薬物の量の向上に対して働く。先に記載した各種の薬物/ポリマーアセンブリー中に存在する薬物は、明らかにかなり不安定であり、そして薬物吸収過程に寄与することができる。
【0043】
本発明の濃度向上ポリマーは、溶解試験にかけられた場合、等量の溶解度改良型の薬物を含む対照組成物よりも長時間の期間に対して、平衡濃度を超える使用環境における薬物の向上された濃度を与える。即ち、対照組成物は平衡濃度を超える使用環境における薬物の向上された濃度を与えることができるが、対照は、濃度向上ポリマーを含む本発明の組成物より短い時間の間、このようになることができるだけである。好ましくは、本発明の化合物は、対照化合物によって与えられる平衡濃度を超える向上された薬物濃度を、濃度向上ポリマーを含まない対照組成物によって与えられる薬物濃度によって与えられるより、少なくとも15分の間、好ましくは少なくとも60分の間、そして更に好ましくは少なくとも90分の間長く与える。
【0044】
本明細書中で使用される溶液中又は使用環境中の“薬物の濃度”の用語は、溶媒和物化された単量体分子の形態で溶解することができる薬物、いわゆる“遊離薬物”或いはいかなる他の薬物含有のミクロン以下の構造、アセンブリー、集合体、コロイド、又はミセルをも指す。本明細書中で使用される“使用環境”は、哺乳動物及び特にヒトのような動物のGI管、皮下の隙、膣管、動脈及び静脈血管、肺管、又は筋肉内組織のin vivo環境、或いはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)又はModel Fasted Duodenal(MFD)溶液のような試験溶液のin vitro環境のいずれかであることができる。適当なPBS溶液は、pH6.5に調節された、20mMのリン酸ナトリウム、47mMのリン酸カリウム、87mMのNaCl及び0.2mMのKClを含む水溶液である。適当なMFD溶液は、7.3mMのタウロコール酸ナトリウム及び1.4mMの1−パルミトイル−2−オレイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンが更に存在する同じPBSである。
【0045】
ある場合には、本発明の組成物が使用環境に溶解された場合、ポリマー/薬物集合体の形態の薬物の存在に対する強力な証拠が見出された。特に、使用環境に溶解度改良型の薬物が、濃度向上ポリマーと共に、その平衡溶解度値を超える濃度で溶解された場合、溶液によって散乱された光に大きな増加があることが見出された。動的光散乱の測定は、ポリマー(HMPCAS又はCAPのような)のみが溶解された場合、10nmないし20nmの平均の大きさの範囲の少数のポリマー集合体を示す。薬物がこのような溶液中に加えられた場合、一般的に薬物の全濃度が、薬物の平衡溶解度を超えるまでは、光散乱信号に僅かな変化しかない。これらのより高い薬物濃度において、光散乱信号は、劇的に増加し、そして動的光散乱分析は、溶液中の粒子の平均の大きさが、はるかに大きい、典型的には50nmないし1,000nm、そしてある場合には10のように小さい場合ないし2,000nmまでの大きさを有することを示す。
【0046】
このような溶液(本発明の組成物によって形成された)のNMR分析、並びに溶解されなかった沈殿物の化学分析は、この光散乱信号を与える粒子が、ポリマー及び薬物から構成されていることを示す。これらのポリマー/薬物集合体の組成は、薬物及び濃度向上ポリマーの特定の正体、並びにこれらの量にによって変化するが、ポリマー/薬物集合体は、一般的に約5重量%ないし約90重量%のポリマーを含み、残部は非結晶質薬物を含む。更に、ポリマー/薬物集合体は、更に実質的な量の水を含む。適当な条件が存在する場合、ポリマー/薬物集合体が、一般的に急速に、数分内で形成され、そして非常に安定であり、しばしば生理的に関係する時間枠である1ないし20時間にわたって、量及び大きさにおいてたった20%ないし50%又はそれより小さく変化する。
【0047】
更に、本発明の組成物の溶解によって使用環境に形成されるような溶液のNMR分析は、結晶質薬物の溶解度を1.5倍ないし10倍又はそれ以上超える、そして非晶質薬物の溶解度さえ超える“遊離薬物”濃度を示した。このような“過飽和”薬物濃度は、1時間ないし20時間まで又はそれより長く、薬物吸収速度及びGI管から吸収される薬物の全体の量の増加を得るために充分な時間以上維持することができる。
【0048】
本発明の組成物は、in vivoで、更に都合よくは、in vitroで、これが本発明の範囲に入るものかどうかを確認するために試験することができる。組成物は、これをPBS又はMFD溶液中に加え、そして撹拌して、溶解を促進することによって溶解試験をすることができる。PBS又はMFDのいずれかにおける濃度の基準の少なくとも一つ又はそれ以上に合致するか、或いは特にヒトのような哺乳動物を含む動物のGI管に経口的に投与された場合、濃度又は生体利用率の基準の一つ又はそれ以上に合致する組成物又は薬物の投与の方法は、本発明の組成物又は方法である。
【0049】
一つの側面において、溶解度改良型の薬物を濃度向上ポリマーと組み合わせで含む本発明の組成物は、ポリマーが存在しない対照組成物によって与えられる使用環境における薬物の平衡濃度の、少なくとも1.25倍である使用環境中の薬物の最大濃度を与える。更に、組成物によって与えられる薬物濃度は、慣用的な対照組成物によって与えられる薬物濃度によって得られるより長時間の間平衡濃度を超える。慣用的な又は対照組成物は、溶解度改良型単独の、又は進歩性のある組成物中の濃度向上ポリマーの重量と等しい重量の不活性希釈剤と組み合わせた薬物である。好ましくは、本発明の組成物で達成される薬物の最大濃度は、対照によって与えられる平衡濃度の少なくとも2倍、そして更に好ましくは3倍である。
【0050】
科学的用語において、薬物の平衡濃度は、溶液中の薬物の濃度が時間と共に変化しない場合に得られる。この時点において、薬物は、その特定の環境から近づきやすい、その最低エネルギーの形態に転換される。この形態は、典型的には薬物の最低の溶解度の結晶質の形態である。ある場合には、薬物の最低のエネルギーの最低の溶解度の形態の、in vitro又はin vivoの溶液からの形成の速度は極めて遅く、数日又は数ヶ月を要することができる。経口的に投与された薬物のGI管内における滞留時間は、典型的には概略24時間のみであり、本発明の目的に対して、薬物の平衡濃度は、使用環境に放出後20時間の薬物濃度と規定することができる。従って、本明細書及び特許請求の範囲中で使用される“平衡濃度”は、in vitro溶解実験(PBS又はMFD溶液のような)における対照組成物によって与えられる20時間後の薬物濃度、或いはin vivo実験を使用して20時間後に測定された対照組成物によって与えられる薬物濃度を意味し、ここにおいて充分な量の薬物が対照中にあり、従って対照によって与えられる最大理論薬物濃度は、薬物の溶解度より大きい。ある場合には、薬物濃度は、20時間後なお変化していることができるが、然しながら、使用環境において20時間後に測定された対照組成物によって与えられる“平衡濃度”に対する、本発明の組成物の性能の比較は、組成物が本発明の範囲内であるかどうかの決定を可能にする。
【0051】
別の方法として、本発明の組成物は、使用環境に導入された直後の1200分間中の少なくとも90分間の期間、等量の溶解度改良型の薬物を含むが、しかし濃度向上ポリマーを含まない対照組成物によって与えられる溶解AUCの1.25倍である溶解AUCを与える。溶解AUCは、薬物濃度対時間のプロットの規定された時間の期間にわたる積算である。組成物又は方法が本発明の一部であるかどうかを決定する目的に対して、溶解AUCは、短くとも90分の時間ないし長くとも1200分の時間にわたって計算される。時間は使用環境に導入した時(時間=0)ないし使用環境への導入後1200分の間のいかなる時間をも選択することができる。従って、受容可能な時間は、例えば(1)使用環境への導入時から使用環境への導入後90分まで;(2)使用環境への導入時から使用環境への導入後180分まで;(3)使用環境への導入後90分から使用環境への導入後180分まで;(4)使用環境への導入後300分から使用環境への導入後1200分まで;を含む。組成物又は方法は、これが少なくとも一つの受容可能な時間に対する溶解AUCの基準に合致する場合は、本発明の一部である。AUCのin vitroにおける決定は、薬物の組成物を、例えばPBS又はMFD溶液中に溶解した後の、薬物濃度対時間をプロットすることによって行うことができる。使用環境が、例えばGI管である場合のin vivoのAUCの測定は、更に複雑である。これは、時間の関数としてのGI体液の試料採取が必要であり、そして従ってin vitro溶解試験又はin vivo相対的生体利用率試験より好ましくない。
【0052】
好ましい態様において、混合物を含む組成物は、薬物の向上された相対的生体利用率を与える。一般的に、in vitro試験法の一つを使用して評価され、そして本発明の一部であるとして見出された組成物又は方法は、in vivoでも同様に良好に機能するものである。本発明の組成物又は方法中の薬物の生体利用率は、このような測定を行う慣用的な方法を使用して、哺乳動物及びヒトのような動物においてin vivoで試験することができる。in vivoの生体利用率の都合のよい方法は、本発明の組成物又は方法に対して測定された、血漿又は血清の薬物濃度対時間のプロットから測定される血漿又は血清のAUCと、濃度向上ポリマーを含まない対照組成物又は方法の血漿又は血清のAUCの比として定義される“相対的生体利用率”である。
【0053】
本発明の組成物は、少なくとも1.25である相対的生体利用率を達成する。好ましくは、本発明の組成物によって与えられる相対的生体利用率は、少なくとも1.5、更に好ましくは少なくとも2、そしてなお更に好ましくは少なくとも3である。
【0054】
本発明の組成物又は方法は、一つ又はそれ以上のin vitro溶解試験又はin vivoの相対的生体利用率試験のいずれか、或いはin vitro及びin vivo試験の両方に合格する。
【0055】
溶解試験における溶解された薬物の濃度は、典型的には試験媒体を試料採取し、そして溶解された薬物の濃度に対して分析することによって測定される。誤った測定を与えるものである比較的大きい薬物の粒子を避けるために、試験溶液は、濾過又は遠心のいずれかをされる。“溶解された薬物”は、典型的には0.45μmのシリンジフィルターを通過するか、又は別の方法として遠心後の上清中に残存する物質のいずれかの物質として得られる。濾過は、TITAN(登録商標)の商標でScientic Resourcesから販売されている13mmの0.45μmのポリビニリデンジフルオライドシリンジフィルターを使用して行うことができる。遠心は、典型的にはポリプロピレン微量遠心試験管中で約13,000Gで約60秒間遠心することによって行われる。他の同様な濾過又は遠心法を使用することができ、そして有用な結果が得られる。例えば、他の種類のマイクロフィルターを使用することは、上記で規定したフィルターによって得られるより多少高い又は低い(±10−40%)値を得ることができるが、しかしなお好ましい組成物の同定を可能にするものである。この“溶解された薬物”の定義は、単量体の溶媒和物化された薬物分子だけではなく更に広範囲の薬物集合体、ポリマー及び薬物の混合物の集合体、ミセル、高分子ミセル、コロイド状粒子又はナノ結晶、ポリマー/薬物複合体、及び規定した溶解試験における濾液又は上清中に存在する、他のこのような薬物含有種のようなミクロン以下の寸法を有するポリマー薬物アセンブリーのような種を包含することは、当業者は認識するものであろう。
【0056】
薬物
本発明は、溶解度改良型中に処方することが可能な、いかなる薬物に対しても有用である。“薬物”の用語は、慣用的な、動物、特にヒトに投与された場合、有益な予防的及び/又は治療的特性を有する化合物を示す。薬物は、難溶性な薬物が、本発明において使用するための好ましい群を代表するが、本発明から利益を得るために難溶性である必要はない。それにもかかわらず所望する使用環境で相当な溶解度を示す薬物は、濃度向上ポリマーの添加が、治療の効力に必要な投与量の大きさを減少することができる場合、或いは薬物の効果の迅速な開始が所望される場合に薬物の吸収速度を増加させる場合、本発明によって可能にされる増加された溶解度/生体利用率からの利益を得ることができる。
【0057】
本発明は、薬物が、薬物が生理的に関係するpH(例えば、pH1−8)における0.01mg/mLより低い最低の水に対する溶解度を有することを意味する“実質的に水に対して不溶性”のもの、“水に対して難溶性”即ち、約1ないし2mg/mLまでの水に対する溶解度を有するもの、或いは約1mg/mLないし高くとも約20ないし40mg/mLの水に対する溶解度を有する、低ないし中程度の水に対する溶解度のもの、のいずれかであることを意味する“低溶解度薬物”である場合に特別な用途を見出す。一般的に、薬物の溶解度が、USPの擬似胃及び腸緩衝液を含む、いかなる生理的に関係する水溶液(例えば、1ないし8間のpH値におけるもの)中で観察された最低値である場合、薬物が10mLより大きい、そして更に典型的には100mLより大きい、投与量と、水に対する溶解度の比を有すると言うことができる。
【0058】
薬物の好ましい群は、限定されるものではないが、抗高血圧剤、抗不安剤、抗凝血剤、抗痙攣剤、血糖低化剤、充血除去剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、抗腫瘍剤、ベータ遮断剤、抗炎症剤、抗精神病剤、認識力向上剤、コレステロール減少剤、抗肥満剤、自己免疫疾患剤、抗性交不能症剤、抗細菌及び抗真菌剤、睡眠剤、抗パーキンソン病剤、抗アルツハイマー病剤、抗生物質、抗鬱病剤、並びに抗ウイルス剤を含む。
【0059】
上記の特定の例及び他の薬物の群並びに本発明によって誘導可能な治療剤は、単に例として以下に記載する。それぞれの名前を挙げた薬物は、薬物の天然の形態、医薬的に受容可能な塩、並びにプロドラッグを含むことは、了解されるべきである。抗高血圧剤の特定の例は、プラゾシン、ニフェジピン、トリマゾシン(trimazosin)及びドキサゾシン(doxazosin)を含む;抗不安剤の特定の例は、ヒドロキシジンである;血糖低下剤の特定の例は、グリピジドである;抗性交不能剤の特定の例は、クエン酸シルデナフィル(sildenafil)である;抗腫瘍剤の特定の例は、クロラムブシル、ロムスチン及びエキノマイシン(echinomycin)を含む;イミダゾール型抗腫瘍剤の特定の例は、ツブラゾール(tubulazole)である;抗炎症剤の特定の例は、ベタメタソン、プレドニゾロン、アスピリン、フルルビプロフェン及び(+)−N−{4−[3−(4−フルオロフェノキシ)フェノキシ]−2−シクロペンテン−1−イル}−N−ヒドロキシ尿素を含む;バルビツール酸塩の特定の例は、フェノバルビタールである;抗ウイルス剤の特定の例は、アシクロビル、ネルフィナビル(nelfinavir)、及びビラゾール(virazole)を含む;ビタミン/栄養剤の例は、レチノール及びビタミンEを含む;ベータ遮断剤の特定の例は、チモロール及びナドロールを含む;吐剤の特定の例は、アポモルフィネである;利尿剤の特定の例は、クロルタリドン及びスピロノラクトンを含む;抗凝集剤の特定の例は、ジクマロール(dicumarol)である;強心剤の特定の例は、ジゴキシン及びジギトキシンを含む;アンドロゲンの特定の例は、17−メチルテストステロン及びテストステロンを含む;ミネラルコルチコイドの特定の例は、デスオキシコルチコステロンである;ステロイド系睡眠剤/麻酔剤の特定の例は、アルファキサロン(alfaxalone)である;同化作用剤の特定の例は、フルオキサメステロン及びメタンステノロン(methanstenolone)を含む;抗鬱病剤の特定の例は、スルピリド、[3,6−ジメチル−2−(2,4,6−トリメチル−フェノキシ)−ピリジン−4−イル]−(1−エチルプロピル)−アミン、3,5−ジメチル−4−(3’−ペントキシ)−2−(2’,4’,6’−トリメチルフェノキシ)ピリジン、ピロキシジン(pyroxidine)、フルオキセチン(fluoxetine)、パロキセチン(paroxetine)、ベンラファキシン(venlafaxine)及びセルトラリン(sertraline)を含む;抗生物質の特定の例は、アンピシリン及びペニシリンGを含む;抗感染症剤の特定の例は、塩化ベンザルコニウム及びクロルヘキシジンを含む;冠拡張剤の特定の例は、ニトログリセリン及びミオフラジン(mioflazine)を含む;睡眠薬の特定に例は、エトミデートである;カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤の特定の例は、アセタゾラミド及びクロルゾラミド(chlorzolamide)を含む;抗真菌剤の特定の例は、エコナゾール(econazole)、テルコナゾール(terconazole)、フルコナゾール(fluconazole)、ボリコナゾール(voriconazole)、及びグリセオフルビンを含む;抗原虫剤の特定の例は、メトロニダゾールである;駆虫薬の特定の例は、チアベンダゾール及びオキシフェンダゾール(oxfendazole)並びにモランテル(morantel)を含む;抗ヒスタミン剤の特定の例は、アステミゾール(astemizole)、レボカバスチン(levocabastine)、セチリジン(cetirizine)、及びシンナリジンを含む;抗精神病剤の特定の例は、ジプラシドン(ziprasidone)、フルスピリレン(fluspirilene)、リスペリドン(risperidone)及びペンフルリドール(penfluridole)を含む;胃腸薬の特定の例は、ロペラミド及びシサプリド(cisapride)を含む;セロトニンアンタゴニストの特定の例は、ケタンセリン(ketanserin)及びミアンセリンを含む;麻酔剤の特定の例は、リドカインである;血糖降下剤の特定の例は、アセトヘキサミドである;制吐剤の特定の例は、ジメンヒドリナートである;抗細菌剤の特定の例は、コトリモキサゾール(cotrimoxazole)である;ドーパミン作用剤の特定の例は、L−DOPAである;抗アルツハイマー病剤の特定の例は、THA及びドネペジル(donepezil)である;抗潰瘍剤/H2アンタゴニストの特定の例は、ファモチジン(famotidine)である;鎮静剤/睡眠薬の特定の例は、クロルジアゼポキシド(chlordiazepoxide)及びトリアゾラムを含む;血管拡張剤の特定の例は、アルプロスタジルである;血小板阻害剤の特定の例は、プロスタサイクリンである;ACE阻害剤/抗高血圧剤の特定の例は、エナラプリル(enalaprilic)酸及びリシノプリル(lisinopril)である;テトラサイクリン系抗生物質の特定の例は、オキシテトラサイクリン及びミノサイクリンを含む;マクロライド系抗生物質の特定の例は、エリスロマイシン、アジスロマイシン(azithromycin)、クラリスロマイシン(clarithromycin)、及びスピラマイシンを含む;グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤の特定の例は、[R−(R**)]−5−クロロ−N−[2−ヒドロキシ−3−{メトキシメチルアミノ}−3−オキソ−1−(フェニルメチル)プロピル−1H−インドール−2−カルボキシアミド及び5−クロロ−1H−インドール−2−カルボン酸[(1S)−ベンジル−(2R)−ヒドロキシ−3−((3R,4S)−ジヒドロキシ−ピロリジン−1−イル)−3−オキシプロピル]アミドを含む。
【0060】
本発明によって誘導可能な薬物の更なる例は、糖低下剤のクロルプロパミド、抗真菌剤のフルコナゾール、抗高コレステロール血症剤のアトルバスタチン(atorvastatin)カルシウム、抗精神病剤の塩酸チオチキセン、抗不安剤の塩酸ヒドロキシジン及び塩酸ドキセピン、抗高血圧剤のアムロジピンベシラート(amlodipine besylate)、抗炎症剤のピロキシカム(piroxicam)、バルジコキシブ(valdicoxib)、カルプロフェン(carprofen)、及びセリコキシブ(celicoxib)、並びに抗生物質のカルベニシリン(carbenicillin)インダニルナトリウム、塩酸バカンピシリン(bacampicillin)、トロレアンドマイシン、及びドキシサイクリンヒクラート(hyclate)である。
【0061】
薬物は、発明の概要において先に定義したように溶解度改良型である。然しながら、他の試験媒体を、薬物が溶解度改良型であるかどうかを決定するために使用することができ、適当な媒体はそれぞれの薬物に対して異なる。一般的に言って、溶解度改良型薬物は、試験媒体中で、同一試験媒体中で薬物のより低い溶解度の形態によって与えられる平衡濃度より大きい最大濃度を与えるものである。更に、試験媒体中で薬物によって与えられる最大濃度が、同一試験媒体中で同一薬物によって与えられる平衡濃度より常に大きいか又は等しいために、試験媒体中において薬物によって与えられる最大濃度が、薬物のより低い溶解度の形態によって与えられる最大濃度より大きい場合、薬物は、溶解度改良型であると考えられる。
【0062】
薬物が、溶解度改良型であるかどうかを決定するための実験を行う場合、先に検討したように、溶解度改良薬物がその最低エネルギーの状態(例えば、より低い溶解度の形態)に転換する速度は、薬物毎に、そして媒体毎に大きく変化するものであるために、注意しなければならない。先に検討したように、薬物の溶解度改良型がその最低エネルギーの状態に転換する速度は、薬物毎に大きく変化するものであり、そして薬物の形態が評価される使用環境に高度に依存するものである。従って、使用環境を注意深く制御することができるin vitro試験において特定の薬物の形態の溶解度の改良を評価することが好ましい。溶解度改良型の薬物は、生理的に関係するpH(例えば、1ないし8)において、より低い溶解度の形態の薬物によって与えられる平衡濃度より大きい、蒸留水、或いはPBS又はMFD溶液のようなin vitroの試験媒体中に溶解された薬物の濃度を、少なくとも一時的に与えるものである。37℃の蒸留水が、薬物の形態の溶解度改良が、薬物の形態が溶解度改良型であるかどうかを決定する試験に対して都合のよい使用環境であることが見出された。
【0063】
本発明の一つの側面において、薬物の溶解度改良型は、結晶質であり、そして薬物の高度に可溶性の塩の形態である。本明細書中で使用される“高度に可溶性の塩の形態”は、薬物が、少なくとも一つのin vitro試験媒体において、薬物の最低の溶解度の形態によって与えられる平衡濃度より大きい薬物の最大濃度を与える塩の形態であることを意味する。薬物は、この基準に合致する塩基性、酸性、又は双イオン性薬物のいかなる医薬的に受容可能な塩の形態でもあることができる。塩基性の薬物に対する塩の形態の例は、塩酸塩、臭化水素酸塩、塩化物、臭化物、酢酸塩、ヨウ化物、メシラート、リン酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、乳酸塩等を含む。酸性の薬物に対する塩の形態の例は、ナトリウム、カルシウム、カリウム、亜鉛、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、メグルミン、ジエタノールアミン、ベンザチン(benzathine)、コリン、及びプロカインの塩等を含む。これらの塩は、更に双性イオンの薬物に対しても使用することができる。
【0064】
本質的に特定の塩基性薬物のいかなる塩の形態も、使用環境において既知のより低い溶解度の塩の形態に比較して、より高い薬物濃度を与えることができるが、塩基性薬物の遊離塩基又は塩酸塩の形態が、同一薬物の他の塩の形態に対して低い水に対する溶解度を有することは一般的に真実である。更に、哺乳動物のGI管の使用環境において、塩基性薬物の遊離塩基及び塩酸塩の形態は、通常これによって溶解された薬物が平衡化するものである薬物の形態である。従って、薬物の溶解度改良型が、塩基性薬物のみからなる場合、溶解度改良型は使用環境において、薬物の遊離塩基及び塩酸塩の形態に対して、改良された薬物の濃度を与えなければならない。好ましい高度に可溶性の塩の形態は、より可溶性の結晶質の遊離塩基及び結晶質の塩酸塩の形態の水に対する溶解度の少なくとも1.25倍、好ましくは少なくとも2倍、そして更に好ましくは少なくとも5倍の水に対する溶解度を有する塩の形態である。然しながら、以下に記載するように、溶解度改良型が、可溶化剤と組み合わされた薬物からなる場合、薬物の低溶解度の塩の形態又は遊離塩基の形態でさえ使用することができる。
【0065】
低溶解度の塩基性薬物に関して、これらが、典型的には胃の低いpHの胃の環境において、典型的には約6ないし8のpHを有する小腸又は大腸における溶解度に対して高い溶解度を有することは更に注意するべきである。従って、このような薬物の最低の溶解度の既知の薬物の形態を胃の環境に投与することは、溶解された薬物の高い濃度を作り出すが、このような組成物及び方法は、本発明の一部を構成しない。
【0066】
好ましくは、薬物の溶解度改良型が塩基性薬物の結晶質の塩の形態のみからなる場合、薬物の溶解度改良型は、胃液又は擬似胃液中において、同じ体液中で薬物の遊離塩基又は塩酸塩の形態によって与えられる薬物の最大濃度より大きい薬物濃度を与える。更に、薬物の溶解度改良型が胃液の存在中で可溶化される結晶質塩基性薬物のみからなる場合(即ち、腸の体液中より胃液中で可溶性)、塩基性薬物の溶解度改良型及び濃度向上ポリマーを含む組成物は、好ましくは等量の低溶解度の形態(塩酸塩の形態のような)である以外は同一の薬物及び等量の濃度向上ポリマーを含む対照と比較して、改良された相対的生体利用率を与える。
【0067】
結晶質の高度に可溶性の塩の形態を有する塩基性薬物の例は、セルトラリンである。pH3において、乳酸セルトラリンは、256mg/mLの蒸留水中の溶解度(遊離塩基として表示)を有し、これに対してHCl塩の形態は、遊離塩基として表示される3mg/mLのみの溶解度を有する。擬似又は実際の胃液に対する乳酸セルトラリンの経口的な放出後、薬物は、乳酸対イオンを胃液中に存在する塩化物イオンと交換し、そして塩化物塩及び/又は遊離塩基として平衡濃度に達するまで沈殿又は結晶化する。平衡濃度は、乳酸セルトラリンによって与えられる最大濃度より低い。薬物の溶解度は、pH7で、塩化物塩の溶解度より低い0.2mg/mLの溶解度を有する、遊離塩基の形態への薬物の転換が増加するために、周囲の体液のpHが増加するに従って更に減少する。従って、結晶質の乳酸セルトラリンは、セルトラリンの結晶質塩酸塩及び結晶質遊離塩基の形態に対して溶解度改良型である。
【0068】
蒸留水は、薬物が溶解度改良型であるかどうかを評価するための試験媒体として使用することができるが、そのpH及び塩化物含有率が、典型的なin vivoの使用の環境中に存在するものを反映していないために、in vitroの使用の環境として使用することは一般的に好ましくないことは注意すべきである。従って、溶解度改良型は、好ましくは予想されるin vivoの使用環境のそれに近い塩化物含有率及び約6ないし8間のpHを有するin vitroの使用環境中の平衡濃度に対して向上された薬物濃度を与える。
【0069】
別に、本発明のもう一つの別個の側面において、薬物は、低エネルギー結晶質の形態に対して改良された溶解度を有する、高エネルギー結晶質の形態で存在する。ある薬物が、いくつかの異なった結晶型の一つに結晶化することができることは知られている。このような結晶型は、しばしば“多形体”と呼ばれる。本明細書中で使用される“高エネルギー結晶質の形態”は、薬物がin vitro試験媒体中で、少なくとも、もう一つの低エネルギー結晶質の形態によって与えられる薬物の平衡濃度より大きい、薬物の最大濃度を与える結晶型であることを意味する。
【0070】
このような薬物の例は、5−クロロ−1H−インドール−2−カルボン酸[(1S)−ベンジル−3−((3R,4S)−ジヒドロキシピロリジン−1−イル)−(2R)−ヒドロキシ−3−オキシプロピル]アミドの“A1”型であり、これはPBS中の約480μg/mLの溶解度を有し、一方“A2”型は、87μg/mLのみのPBS中の溶解度を有する。
【0071】
本発明のなおもう一つの別個の側面において、薬物は、非晶質又は結晶質のいずれかで存在することが可能であることができるが、組成物中ではこれが非晶質である。その非晶質の形態である薬物は、in vitroの試験媒体中で、少なくとも、結晶質の形態の薬物によって与えられる薬物の平衡濃度より大きい薬物の最大濃度を与える。このような薬物の例は、5−クロロ−1H−インドール−2−カルボン酸[(1S)−ベンジル−3−((3R,4S)−ジヒドロキシピロリジン−1−イル−)−(2R)−ヒドロキシ−3−オキシプロピル]アミドであり、これの非晶質の形態のCmaxは、270μg/mLであり、一方これの結晶質の形態のCmaxは、160μg/mLのみであり、両方ともpH6.5のMFD溶液中で測定されている。
【0072】
本発明のなおもう一つの別個の側面において、薬物の溶解度改良型は、薬物の可溶化剤との混合物である。薬物/可溶化剤の混合物は、in vitroの試験媒体中で、少なくとも一時的に、可溶化剤を含まない薬物によって与えられる薬物の平衡濃度より大きい薬物の最大濃度を与える。このような薬物/可溶化剤の混合物の例は、クエン酸と混合された塩酸セルトラリンであり、これの平衡溶解度は、塩酸セルトラリンの3mg/mLと比較して28mg/mLであり、両方ともpH3で測定されている。可溶化剤の例は、界面活性剤;緩衝液、有機酸、有機酸の塩、有機及び無機塩基、並びに有機及び無機塩基の塩のようなpH制御剤;グリセリド;部分グリセリド;グリセリド誘導体;ポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレンエーテル並びにこれらのコポリマー;ソルビタンエステル;ポリオキシエチレンソルビタンエステル;炭酸塩;スルホン酸アルキル;並びにシクロデキストリンを含む。この側面において、薬物及び可溶化剤は、両方とも好ましくは固体である。
【0073】
薬物に対する適当な可溶化剤を選択する場合、考慮すべき各種の要素がある。可溶化剤は薬物と不都合に相互作用してはならない。更に、可溶化剤は高い効率であって、改良された溶解度を得るために少量を必要とするものでなければならない。可溶化剤が、使用環境において高い溶解度を有することが更に好ましい。酸性、塩基性、及び双イオン性薬物に対して、有機酸及び有機酸の塩、有機及び無機塩基、並びに有機及び無機塩基の塩が、有用な可溶化剤であることが知られている。これらの化合物がグラム当たりの酸又は塩基の高い等量数を有することが一般的に好ましい。更に、酸又は塩基の可溶化剤が、薬物のイオンの形態及び可溶化剤の対応する共役酸又は塩基によって形成された塩が、高い溶解度を有するように選択されることが一般的に好ましい。従って可溶化剤の選択は、薬物の特性に高度に依存する。
【0074】
本発明のなおもう一つの別個の側面において、薬物の溶解度改良型は、使用環境中における薬物の平衡濃度の少なくとも10倍の濃度まで液体中に実質的に溶解又は懸濁した薬物の溶液又は懸濁液である。薬物のこの溶解度改良型に適した液体の例は、ベニバナ油、ゴマ油、トウモロコシ油、ひまし油、ヤシ油、綿実油、大豆油、オリーブ油、等のような植物油の水非混和性のトリグリセリド;鉱油、カプリル/カプリン酸のトリグリセリド及びカプリル/カプリン/リノール酸のトリグリセリド、トリオレインのような長鎖のトリグリセリド油、室温で液体である他の混合鎖のトリグリセリド、モノグリセリド、ジグリセリド、並びにモノ−、ジ−、及びトリグリセリドの混合物を含む、MIGLYOL(登録商標)として知られるトリグリセリド;脂肪酸及びエステル;水非混和性のアルコール、グリセリン及びプロピレングリコール;並びに使用環境の温度(典型的には35ないし40℃である)において液体である、PEG−400のような水非混和性のポリエチレングリコール(PEG);のような水非混和性の精製油並びに合成及び半合成油を含む。商業的に入手可能であるこのような物質の例は、トウモロコシ油、プロピレングリコール、CREMOPHOR RH−40(ポリオキシル−40水素化ひまし油)、LABRAFIL M2125(リノレオイルポリオキシル−6グリセリド)、及び1944(オレオイルポリオキシル−6グリセリド)、エタノール、PEG400、Polysorbate 80、グリセリン、ハッカ油、大豆油(長鎖トリグリセリド)、ゴマ油(長鎖トリグリセリド)、炭酸プロピレン、及びトコフェロイルTPGSを含む。他の重要な商業的な物質は、MIGLYOL 812(カプリル/カプリン酸トリグリセリド)、オレイン酸、オリーブ油(長鎖トリグリセリド)、CAPMUL MCM(中鎖モノグリセリド)、CAPMUL PG−8(プロピレングリコールカプリリルモノ及びジグリセリド)、CREMOPHOR EL(ポリオキシル35ひまし油)、LABRASOL(カプリロカプロイルポリオキシル−8グリセリド)、トリアセチン(アセチルトリグリセリド)、MAISINE 35−1(モノリノレイン酸グリセリル)、OLICINE(モノオレイン酸/リノレイン酸グリセリル)、PECEOL(モノオレイン酸グリセリル)、TRANSCUTOL P(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、PLUROL Oleique CC(ジオレイン酸ポリグリセリル−6)、LAUROGLYCOL 90(モノラウリン酸プロピレングリコール)、CAPRYOL 90(モノカプリル酸プロピレングリコール)、MYVACETS(アセチル化モノグリセリド)、ARLACELS(ソルビタン脂肪酸エステル)、PLURONICS(プロピレン及びエチレンオキシドのコポリマー)、BRIJ 30(ポリオキシルエチレン 4 ラウリルエーテル)、GELUCIRE 44/14(ラウロイルポリオキシル−32グリセリド)、及びGELUCIRE 33/01(脂肪酸のグリセリンエステル)を含む。これらの及び他の関係する物質の混合物は、典型的には約35ないし40℃である使用環境の温度において液体である限り受容可能である。
【0075】
濃度向上ポリマー
本発明の各種の側面において使用するために適した濃度向上ポリマーは、これらが不都合な方法で薬物と化学的に反応しないと言う意味において、不活性でなければならず、そして生理的に関係するpH(例えば1−8)における水溶液中で少なくともある程度の溶解度を有しなければならない。1−8のpHの範囲の少なくとも一部において、少なくとも0.1mg/mLを超える水に対する溶解度を有する、殆んどのいかなる中性又はイオン化可能なポリマーは適当であることができる。
【0076】
濃度向上ポリマーの好ましい群は、イオン化可能な及びイオン化不可能なセルロース系ポリマー(エーテル又はエステル或いはエステル及びエーテル置換基の混合物を伴なうもの並びにこれらのコポリマーを含み、いわゆる“腸溶性”及び“非腸溶性”ポリマーの両方を含む);並びにヒドロキシル、アルキルアシルオキシ、及び環状アミドの置換基を有するビニルポリマー及びコポリマーを含む。濃度向上ポリマーが、特質としてポリマーが疎水性及び親水性の部分を有することを意味する“両親媒性”であることも更に好ましい。
【0077】
両親媒性及び/又はイオン化可能なポリマーが、このようなポリマーが、薬物と比較的強い相互作用を有する傾向があり、そして先に記載した各種の種類のポリマー/薬物のアセンブリーの形成を促進することができると信じられているために好ましい。更に、このようなポリマーのイオン化された基の同じ電荷の反発は、ポリマー/薬物のアセンブリーの大きさを、ナノメートル又はミクロン以下の大きさに制約するために働くことができる。例えば、特定の理論によって束縛されることを望むものではないが、このようなポリマー/薬物のアセンブリーは、ポリマーの疎水領域が薬物に向かって内側に回転し、そしてポリマーの親水領域が水性の環境に向かって外側に回転することによって、濃度向上ポリマーによって包囲された疎水性の薬物のクラスターを含むことができる。別の考え方として、薬物の特定の化学的特質にもよるが、ポリマーのイオン化された官能基が、例えばイオン対又は水素結合によって、薬物のイオン性又は極性の基と会合することができる。イオン化可能なポリマーの場合、ポリマーの疎水領域は、イオン化された官能基を含むものである。溶液中のこのような薬物/濃度向上ポリマーのアセンブリーは、荷電された高分子ミセル様の構造によく似ていることができる。作用の機構に関係なく、いかなる場合も、このような両親媒性ポリマー、特に以下に記載するようなイオン化可能なセルロース系ポリマーが、薬物との相互作用することを示して、その結晶化を阻害することが観察された。
【0078】
両親媒性セルロースは、セルロースを、それぞれの糖の繰り返し単位に存在する3個のヒドロキシル置換基のいずれか又は全てを、少なくとも一つの比較的疎水性の置換基で置換することによって調製することができる。疎水性の置換基は、本質的に、充分に高い置換の水準又は程度に置換された場合、セルロース系ポリマーを本質的に水に対して不溶にすることができるいかなる置換基でもあることができる。ポリマーの親水性の領域は、置換されていないヒドロキシルがそれ自体相対的に親水性であるために、相体的に置換されていない部分、又は親水性の置換基で置換された領域のいずれかであることができる。疎水性の置換基の例は、エーテル結合されたメチル、エチル、プロピル、ブチル、等のようなアルキル基;又は酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステルのようなエステル結合のアルキル基;並びにフェニル、安息香酸エステル、又は石炭酸エステルのようなエーテル及び/又はエステル結合のアリール基を含む。親水性基は、ヒドロキシアルキル置換基、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピルのようなエーテル及び/又はエステル結合のイオン化不可能な基、或いはエトキシエトキシ又はメトキシエトキシのようなアルキルエーテル基を含む。特に好ましい親水性の置換基は、セルロースにエーテル又はエステル結合し、そして置換後、カルボン酸、チオカルボン酸、置換されたフェノキシ基、アミン、リン酸又はスルホン酸のようなイオン化可能な基を有するものである。特定の置換基は、コハク酸、クエン酸、フタル酸、トリメリト酸、ヒドロキシフェノキシ、アミノエトキシ、チオコハク酸、ジエチルアミノエトキシ、トリエチルアミノエトキシ、スルホン酸エトキシ、及びリン酸エトキシを含む。
【0079】
“酢酸フタル酸セルロース”(CAP)のようなポリマーの名称は、セルロース系ポリマーのヒドロキシル基の有意な部分に、エステル結合を経由して結合した酢酸及びフタル酸基を有するセルロース系ポリマーの群のいずれをも指す。一般的に、それぞれの置換基の置換の程度は、ポリマーの他の基準が合致している限りは、0.1ないし2.9の範囲であることができる。“置換の程度”は、セルロース鎖の糖の繰り返し単位当たりの3個のヒドロキシルの、置換された平均の数を指す。例えば、セルロース鎖の全てのヒドロキシルがフタル酸置換された場合、フタル酸の置換の程度は3である。更にそれぞれのポリマーの群の種類に含まれるものは、ポリマーの性能を実質的に変化させない比較的少量加えられた付加的な置換基を有するセルロース系ポリマーである。
【0080】
本明細書中のポリマーの名称において、エーテル結合置換基は、分子がエーテル基に結合しているように“セルロース”の前(訳注、約文中では後)に記載されることは更に注意すべきであり;例えば、“セルロースエチル安息香酸”は、エトキシ安息香酸置換基を有する。類似的に、エステル結合置換基は、カルボン酸エステルのように“セルロース”の後(訳注、訳文中では前)に記載され;例えば“フタル酸セルロース”は、ポリマーにエステル結合したそれぞれのフタル酸分子の一つのカルボン酸を有し、そして他のカルボン酸は反応していない。
【0081】
親水性及び疎水性領域を有する、両親媒性の定義に合致するセルロース系ポリマーの特定の例は、一つ又はそれ以上の酢酸置換基を有するセルロースの繰り返し単位が、酢酸置換基を有しない或いは一つ又はそれ以上のイオン化されたフタル酸又はトリメリト酸置換基を有するものに対して疎水性である、CAP及び酢酸トリメリト酸セルロース(CAT)のようなポリマー;並びに置換されていないヒドロキシル又はヒドロキシプロピル置換基に対して、比較的高い数のメトキシ又は酢酸置換基を有するセルロースの繰り返し単位が、ポリマー中の他の繰り返し単位に対して疎水性領域を構成するヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)又は酢酸ヒドロキシプロピルセルロース(HPCA)のようなポリマーを含む。
【0082】
この両親媒性の定義に合致する非セルロース系ポリマーは、相対的に親水性な及び相対的に疎水性なモノマーのコポリマーである。例は、アクリル酸及びメタクリル酸コポリマーを含む。このようなコポリマーの商用銘柄は、Rohm Tech Inc.,of Malden,Massachusettsによって製造されるメタクリル酸及びアクリル酸のコポリマーであるEUDRAGITSを含む。
【0083】
濃度向上ポリマーとして使用することができる、生理的に関係するpHにおいて少なくとも部分的にイオン化されるイオン化可能な例示的なポリマーは:酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシエチルメチルセルロース、酢酸フタル酸ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース及びカルボン酸官能化ポリメタクリレートを含む。
【0084】
濃度向上ポリマーとして使用することができるイオン化不可能なポリマーの例示は:酢酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、酢酸ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、少なくともその繰り返し単位の一部が非加水分解(酢酸ビニル)の形態を有するポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールポリ酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールコポリマー、ポリビニルピロリドン、及びポリエチレンポリビニルアルコールコポリマー並びにキタン(chitan)を含む。
【0085】
本発明の要求に合致するポリマーの一つの群は、エステル又はエーテル結合の芳香族置換基を伴なうセルロース系ポリマーを含み、ここにおいてポリマーは、少なくとも0.1の置換の程度を有する。例示的な芳香族置換体は、安息香酸、フェノキシ及びエトキシフェニルを含む。要求される水に対する溶解度を更に有するこのような芳香族置換ポリマーにおいて、ヒドロキシプロピル又はカルボン酸官能基のような充分に親水性な基が、ポリマーに結合していることが更に好ましい。このようなカルボン酸基は、カルボキシエチル基の場合のように、ポリマーにエーテル結合することができ、或いはこれらは、コハク酸基のようにエステル結合を経由して結合することができる。カルボン酸及び芳香族基は、例えばフタル酸、トリメリト酸、ピリジンジカルボン酸の各種の異性体、テレフタル酸、イソフタル酸、及びこれらの基のアルキル置換誘導体を含む、エステル結合を経由して結合することができるカルボン酸置換芳香族基の場合のように、単一の置換基に組み合わせることができる。エーテル結合を経由して結合することができる例示的なカルボン酸置換芳香族基は、サリチル酸、エポキシ安息香酸又はプロポキシ安息香酸のようなアルコキシ安息香酸、エトキシフタル酸及びエトキシイソフタル酸のようなアルコキシフタル酸の各種の異性体、並びにエトキシニコチン酸、及びエトキシピコリン酸のようなアルコキシニコチン酸の各種の異性体を含む。
【0086】
セルロース系イオン化可能ポリマーの特に好ましい下部群は、カルボン酸官能化芳香族置換基及びアルキル化物置換基の両方を保有するものである。例示的なポリマーは、酢酸フタル酸セルロース、酢酸フタル酸メチルセルロース、酢酸フタル酸エチルセルロース、酢酸フタル酸ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸コハク酸ヒドロキシプロピルセルロース、プロピオン酸フタル酸セルロース、酪酸フタル酸ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸トリメリト酸セルロース、酢酸トリメリト酸メチルセルロース、酢酸トリメリト酸エチルセルロース、酢酸トリメリト酸ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸トリメリト酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸トリメリト酸コハク酸ヒドロキシプロピルセルロース、プロピオン酸トリメリト酸セルロース、酪酸トリメリト酸セルロース、酢酸テレフタル酸セルロース、酢酸イソフタル酸セルロース、酢酸ピリジンジカルボン酸セルロース、酢酸セルロースサリチル酸、酢酸セルロースヒドロキシプロピルサリチル酸、酢酸セルロースエチル安息香酸、酢酸セルロースヒドロキシプロピルエチル安息香酸、酢酸セルロースエチルフタル酸、酢酸セルロースエチルニコチン酸、及び酢酸セルロースエチルピコリン酸を含む。
【0087】
セルロース系イオン化可能ポリマーのもう一つの特に好ましい下部群は、カルボン酸非芳香族置換基を保有するものである。例示的なポリマーは、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシエチルメチルセルロース、コハク酸ヒドロキシエチルメチルセルロース、及び酢酸コハク酸ヒドロキシエチルセルロースを含む。
【0088】
なお更に好ましいポリマーは、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプリポルメチルセルロース、酢酸フタル酸メチルセルロース、酢酸フタル酸ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸トリメリト酸セルロース、酢酸テレフタル酸セルロース及び酢酸イソフタル酸セルロースである。最も好ましいポリマーは、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、及び酢酸トリメリト酸セルロースである。
【0089】
本発明の混合物中に使用するために適しているものとして、特定のポリマーが検討されてきたが、このようなポリマーの混合物も更に適している。従って、“濃度向上ポリマー”の用語は、ポリマーの単一種に加えて、ポリマーの混合物を含むことを意図している。
【0090】
組成物の調製
本発明の組成物は、薬物又は薬物の混合物を濃度向上ポリマーと乾式又は湿式混合して、組成物を形成することによって調製することができる。混合方法は、物理的な方法、並びに湿式粒状化及び被覆法を含む。薬物及びポリマーを分子分散物に実質的に転換しない、いかなる慣用的な混合方法も、使用することができる。
【0091】
例えば、混合方法は、対流混合、剪断混合、又は拡散混合を含む。対流混合は、比較的大量の物質を、粉末床の一部からもう一つに羽根又は櫂、回転スクリュー或いは粉末床の反転によって移動する事を含む。剪断混合は、混合される物質中に滑り面が形成される場合に起こる。拡散混合は、単一の粒子による位置の交換を含む。これらの混合方法は、バッチ又は連続方式の機器を使用して行うことができる。タンブルミキサー(例えば双胴式)は、バッチ法において通常使用される機器である。連続式混合は、組成物の均一性を改良するために使用することができる。
【0092】
微粉砕も更に本発明の組成物を調製するために使用することができる。微粉砕は、固体の粒子の大きさを減少する機械的な方法である(粉砕)。ある場合には、微粉砕は、結晶構造の変化を起こし、そしてある種の物質の化学変化を起こすことができるため、微粉砕の条件は、一般的に薬物及びポリマーが分子水準で混合されて、ポリマー及び薬物の分散物を形成しないという意味において、薬物の物理的形態を変化しないように選択される。微粉砕用機器の最も普通の種類は、ロータリーカッター、ハンマー、ローラー及び流体エネルギーミルである。機器の選択は、薬物の形態中の成分の特徴(例えば、軟らかい、硬い又は脆い)に依存する。湿式又は乾式微粉砕技術は、更に成分の特徴(例えば溶媒中の薬物の安定性)に依存するが、これらの方法のいくつかから選択することができる。微粉砕工程は、原料物質が不均質である場合、同時に混合工程として役立つことができる。本発明の使用に対して適している慣用的な混合及び微粉砕法は、Lachman,et al.,The Theory and Practice of Industrial Pharmacy(3d Ed.1986)において更に詳細に検討されている。本発明の組成物の成分は、更に粒状化の条件が薬物の実質的な部分が、ポリマー及び薬物の分子分散物に転換されないように選択される限り、乾式又は湿式粒状化法によって組み合わせることができる。
【0093】
先に記載した物理的な混合物に加えて、本発明の組成物は、溶解度改良型の薬物及び濃度向上ポリマーの両方を使用環境に放出する目的を達成する、いかなる手段又は手段の集合をも構成することができる。従って、哺乳動物に対する経口投与の場合、投与剤形は、一つ又はそれ以上の層が薬物の溶解度改良型を含み、そして一つ又はそれ以上の他の層が濃度向上ポリマーを含む、層状の錠剤に構成することができる。別の方法として、投与剤形は、錠剤の核が溶解度改良型薬物を含み、そして被覆が濃度向上ポリマーを含む、被覆された錠剤であることができる。更に、溶解度改良型薬物及び濃度向上ポリマーは、錠剤又はビーズのような異なった投与剤形中にさえ存在することができ、そして溶解度改良型薬物及び濃度向上ポリマーの両方が、薬物及びポリマーが使用環境において接触することができるような方法で投与される限りは、同時に又は別個に投与することができる。溶解度改良型薬物及び濃度向上ポリマーが別個に投与される場合、ポリマーを薬物の前に放出することが一般的に好ましい。
【0094】
本発明の混合物中に存在する薬物の量に対する濃度向上ポリマーの量は、薬物及び濃度向上ポリマーに依存し、そして0.01ないし5の薬物とポリマーの重量比で広く変化することができる。然しながら、ほとんどの場合、薬物とポリマーの比が、0.05より大きく、そして2.5より小さいことが好ましく、そしてしばしば薬物濃度又は相対的生体利用率の向上が、1より小さい、或いはある種の薬物に対しては、0.2より小さい薬物とポリマーの比においてさえ観察される。満足すべき結果を得る最低の薬物:ポリマーの比は、薬物毎に変化し、そしてin vitro及び/又はin vivoの溶解試験において測定することが最良である。
【0095】
一般的に、薬物の濃度又は薬物の相対的生態利用率を最大にするために、より低い薬物とポリマーの比が好ましい。低い薬物とポリマーの比において、溶液中に利用可能な充分な濃度向上ポリマーがあって、溶液からの薬物の沈殿又は結晶化を阻害し、そして従って薬物の平均濃度がはるかに高くなることを確実にする。高い薬物/ポリマー比においては、溶液中に充分な濃度向上ポリマーが存在することができず、そして薬物の沈殿又は結晶化は更に容易に起こることができる。然しながら、投与剤形中に使用することができる濃度向上ポリマーの量は、投与剤形の全体の質量の要求によってしばしば制約される。例えば、ヒトに対する経口投与が所望される場合、低い薬物/ポリマー比において、単一の錠剤又はカプセル中の所望する投与量の放出に対して、薬物及びポリマーの合計の質量は受容不可能なほど大きくなることができる。従って、使用環境に容易に放出するために充分に小さい投与剤形中の充分な薬物の投与量を与えるために、特定の投与剤形中の最適値より少ない、薬物/ポリマー比を使用することがしばしば必要である。
【0096】
賦形剤及び投与剤形
本発明の組成物中に存在する基本的な成分は、単純にその溶解度改良型で放出される薬物及び濃度向上ポリマー(類)であるが、組成物中に他の賦形剤を含めることは有用であることができる。これらの賦形剤は、混合物を錠剤、カプセル、懸濁液、懸濁液用の散薬、クリーム剤、経皮貼布、貯留物、等に調剤するために、薬物/ポリマー混合物と共に使用することができる。薬物及び濃度向上ポリマーは、薬物を実質的に変化しない、本質的にいかなる方法ででも他の投与剤形の成分に加えることができる。更に、先に記載したように、その溶解度改良型の薬物及び濃度向上ポリマーは、別個に賦形剤と混合して、異なったビーズ、或いは層又は被覆、或いは核又は別個の投与剤形でさえ形成することができる。
【0097】
賦形剤の一つの非常に有用な群は、界面活性剤である。適当な界面活性剤は、脂肪酸及びスルホン化アルキル;塩化ベンゼタニウム(benzethanium)(HYAMINE(登録商標)1622、Lonza,Inc.,Fairlawn,N.J.から入手可能);DOCUSATE SODIUM(Mallinckrodt Spec.Chem.,St.Louis,MOから入手可能);脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタンエステル(TWEEN(登録商標)、ICI Americans Inc.,Wilmington,DEから入手可能);LIPOSORB(登録商標)P−20(Lipochem Inc.,Patterson NJから入手可能);CAPMUL(登録商標)POE−0(Abitec Corp.,Janesville,WIから入手可能)のような商業的界面活性剤、並びにタウロコール酸ナトリウム、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、レシチン、及び他のリン脂質のような天然の界面活性剤並びにモノ及びジグリセリドを含む。このような物質は、湿潤化を促進し、これによって最大溶解濃度を増加し、そして更に複合体化、包接複合体の形成、ミセルの形成或いは固体薬物、結晶質又は非晶質の表面への吸着のような機構によって溶解された薬物と相互作用することによって薬物の結晶化又は沈殿を阻害することによって、溶解速度を増加するために都合よく使用することができる。これらの界面活性剤は、組成物の5重量%まで含むことができる。
【0098】
酸、塩基、又は緩衝液のようなpH調節剤の添加は、更に利益があることであり、組成物の溶解を遅延し(例えばポリマーがアニオン性である場合、クエン酸又はコハク酸のような酸)、又は別の場合組成物の溶解を促進(ポリマーがアニオン性である場合、酢酸ナトリウム又はアミンのような塩基)する。
【0099】
慣用的なマトリックス物質、複合化剤、可溶化剤、充填剤、崩壊薬剤(崩壊剤)、又は結合剤は、更に組成物自体の一部として加えることができ、或いは湿式若しくは機械的粒状化又は他の手段によって加えることができる。
【0100】
マトリックス物質、充填剤、又は希釈剤の例は、ラクトース、マンニトール、キシリトール、微結晶セルロース、二塩基性二リン酸カルシウム、及びデンプンを含む。
【0101】
崩壊剤の例は、グリコール酸デンプンナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、及びクロスカルメロース(croscarmellose)ナトリウムを含む。
【0102】
結合剤の例は、メチルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、及びグアールガム、及びトラガカントゴムのようなゴムを含む。
滑剤の例は、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸カルシウムを含む。
【0103】
他の慣用的な形態の賦形剤は、当技術において公知の賦形剤を含んで、本発明の組成物中に使用することができる。一般的に、顔料、滑剤、芳香剤、等のような賦形剤は、習慣的な目的に対して、そして組成物の特性に不都合に影響しない典型的な量で使用することができる。これらの賦形剤は、組成物を錠剤、カプセル、懸濁液、懸濁液用の散薬、クリーム剤、経皮貼布、等に調剤するために使用することができる。
【0104】
本発明の組成物は、薬物の投与に対して、広い範囲の投与剤形中に使用することができる。例示的な投与剤形は、乾燥状態か又は水の添加によって再構成されて、ペースト、スラリー、懸濁液若しくは液体を形成するかのいずれかで経口的に摂取することができる散薬又は粒剤;錠剤;カプセル;多粒剤;及び丸薬である。各種の添加剤を、本発明の組成物と混合、粉砕、又は粒状化して、上記の投与剤形に適した物質を形成することができる。
【0105】
ある場合には、全体の投与剤形又は投与剤形を構成する粒子、顆粒若しくはビーズは、腸溶性ポリマーで被覆して、投与剤形が胃を出るまで溶解を防止又は遅延した場合、よりすぐれた性能を有することができる。例示的な腸溶性被覆物質は、HPMCAS、HPMCP、CAP、CAT、カルボン酸官能化ポリメタクリレート、及びカルボン酸官能化ポリアクリレートを含む。
【0106】
本発明の組成物は、制御放出投与剤形で投与することができる。一つのこのような投与剤形において、溶解度改良型の薬物及び濃度向上ポリマーの組成物は、侵食可能な高分子マトリックス手段中に組み込むことができる。侵食可能なマトリックスは、純水、或いは高分子マトリックスが侵食又は溶解を起こすために充分にイオン化するために、酸又は塩基の存在を必要とする中で、侵食可能又は膨潤可能又は溶解可能のいずれかであることの意味において、水によって侵食可能又は水で膨潤可能又は水に対して溶解可能であることを意味する。使用の水性環境に接触した場合、高分子マトリックスは水を吸収し、そして溶解度改良薬物及び濃度向上ポリマーの混合物を捕獲する、水で膨潤されたゲル又は“マトリックス”を形成する。水で膨潤されたマトリックスは、使用環境において、徐々に侵食、膨潤、崩壊又は溶解し、これによって使用環境に対する薬物混合物の放出を制御する。
【0107】
別の方法として、本発明の組成物は、侵食不可能なマトリックス剤形によって又はそれと組み合わせて投与することができる。
別の方法として、本発明の薬物混合物は、被覆された浸透性制御放出投与剤形を使用して放出することができる。この投与剤形は、二つの成分:(a)浸透剤並びに混合されているか又は核の別個の領域にあるかのいずれかの溶解度改良型の薬物及び濃度向上ポリマーを含む核;並びに(b)核を取り囲む非溶解性及び非侵食性の被覆;を有し、被覆は、使用の水性環境から核への水の流入を制御して、核の一部又は全てを使用環境に押し出すことによって薬物を放出させる。この手段の核中に含まれる浸透剤は、水で膨潤される親水性ポリマー、浸透作用剤、又は浸透化剤であることができる。被覆は、好ましくは高分子の水透過性であり、そして少なくとも一つの放出口を有する。
【0108】
別の方法として、本発明の薬物混合物は、三つの成分:(a)溶解度改良型の薬物を含む組成物、(b)薬物含有組成物及び水で膨潤可能な組成物で形成される、水で膨潤可能な組成物が、核の別個の領域にある水で膨潤可能な組成物、並びに(c)水透過性で水に不溶性であり、そしてこれを通して少なくとも一つの放出口を有する核の周囲の被覆;を有する被覆されたヒドロゲル制御放出投与剤形によって放出することができる。使用にあたって、核は被覆を通して水を吸収し、水で膨潤可能な組成物を膨潤し、そして核内の圧力を増加し、そして薬物含有組成物を流動化する。被覆がそのまま残るために、薬物含有組成物は、放出口から使用環境に押し出される。濃度向上ポリマーは、別個の投与剤形中で放出することができ、薬物含有組成物中に含めることができ、又は投与剤形に適用される被覆の全部又は一部を構成することができる。
【0109】
溶解度改良型薬物が、薬物の水若しくは有機液体中の溶液又は懸濁液である場合、組成物は、当技術において既知であり、そして充分に理解されている、軟質ゼラチン又は硬質ゼラチンのカプセルによって放出することができる。これらの投与剤形は、その中に薬物を溶解及び/又は懸濁したベヒクルをカプセル化した、水溶性の軟質又は硬質ゼラチンの外部殻を含む。この目的のために使用されるベヒクルの例は、上記で検討されている。ここにおいて、濃度向上ポリマーは、水又は有機液体中に溶解又は懸濁することができる。別の方法として、軟質又は硬質ゼラチンの外部殻を、濃度向上ポリマーで被覆するか、又はそれから製造することができる。
【0110】
別の方法として、本発明の組成物は、共同投与することができ、これはその溶解度改良型の薬物が、濃度向上ポリマーと一般的に、別個に、しかし同一の時間枠内で投与することができることを意味する。従って、溶解度改良型の薬物は、例えば別個の投与剤形中の濃度向上ポリマーと概略同時に摂取されるそれ自体の投与剤形で投与することができる。別個に投与される場合、その溶解度改良型の薬物及び濃度向上ポリマーの両方が、二つが使用環境にいっしょに存在するように、お互いに60分以内に投与されることが一般的に好ましい。同時に投与されない場合、濃度向上ポリマーが、好ましくは薬物の溶解度向上型に先立って投与される。
【0111】
上記の添加剤及び賦形剤に加えて、本発明の組成物を使用した、適当な投与剤形の調製に対する、当業者にとって既知のいかなる慣用的な物質及び方法も潜在的に有用である。
【0112】
本発明の他の特徴及び態様は、本発明の意図する範囲を制約するものではなく、例示として示される以下の実施例から明白となるものである。
実施例1−3
これらの実施例は、非晶質の薬物及び濃度向上ポリマーの混合物を含む組成物、並びに“微量遠心”法として知られるin vitro溶解試験を説明する。この方法を使用して、MF級の酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS−MF、23.4%のメトキシ、7.2%のヒドロキシプロピル、9.4%のアセチル、11.0%のスクシノイルを含む;10,000ないし20,000の平均分子量、Shin Etsuにより製造)及び非晶質の5−クロロ−1H−インドール−2−カルボン酸[(1S)−ベンジル−3−((3R,4S)−ジヒドロキシピロリジン−1−イル−)−(2R)−ヒドロキシ−3−オキシプロピル]アミド(グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤)(薬物1)の混合物の溶解を試験した。pH6.5のMFD溶液中の非晶質の形態に対する薬物1の最大濃度、Cmaxは、270μg/mLであり、一方結晶質の形態のCmaxは、わずか160μg/mLである。
【0113】
非晶質の薬物(この場合溶解度改良型)を、10gの薬物1を118gのアセトン及び6.2gの水に加えることによって調製した。溶媒を噴霧乾燥によってこの溶液から急速に除去した。噴霧乾燥中、薬物の溶液を圧力容器中に入れ、これは、薬物溶液を商業的噴霧乾燥器(Mobile Minor Hi−Tec for Non−Aqueous Feed Spray Dryer、Niro A/S,Soburg,Denmarkにより製造)に制御された速度で放出した。Niro噴霧乾燥器は、乾燥容器の頂部に設置された二流体ノズル噴霧器からなる。窒素の噴霧ガスをノズルに2.7バールで放出し、そして薬物溶液を197g/分の流量で放出した。乾燥ガス(197℃に加熱された窒素)を二流体ノズルを取り囲む入り口ダクトを経由して乾燥容器に放出した。噴霧乾燥された物質は、容器を乾燥ガスと共に輸送ダクトを経由して出て、そしてサイクロンに進んだ。サイクロンの頂部で、排気放出口が窒素及び蒸発した溶媒が放散することを可能にした。噴霧乾燥された物質は、容器に収集された。物質は、乾燥した白色の実質的に非晶質の粉末であった。非晶質の薬物の収率は、43%であった。
【0114】
37℃に温度制御された箱の中で、3.6mgの非晶質の薬物1を、8本の空の微量遠心試験管(ポリエチレン、Sorenson Bioscience,Inc.)に正確に秤量した。溶液中の化合物の最大過飽和濃度は、2000μg/mLであった(薬物3.6mg[1000μg/mg]/1.8mL=2000μg/mL)。(理論的Cmaxと略記される理論的最大過飽和濃度は、全ての化合物が溶解した場合の濃度を示す。)試験は、二重に行われた。
【0115】
対照1は、試験管1及び2中で、非晶質の薬物1のみからなっていた。実施例1として、1.2mgのHPMCAS−MFを試験管3及び4に加えた。実施例2として、3.6mgのHPMCAS−MFを試験管5及び6に加えた。実施例3として、10.8mgのHPMCAS−MFを試験管7及び8に加えた。これらの四つの群の試料は、非晶質薬物1の対照1並びにそれぞれ3:1、1:1、及び1:3の薬物:ポリマー比を有する、組成物1、2及び3を表す。
【0116】
時間0において、1.8mLの37℃のPBS溶液(8.2mMのNaCl、1.1mMのNa2HPO4、4.7mMのKH2PO4、pH6.5、290mOsm/kg)をそれぞれの試験管に加えた。遠心試験管を密封し、そして計時を開始した。次いで試験管をFisher Voltex Genie 2混合機の最高速度で60秒間連続して混合した。次いで試験管を遠心機(Marathon,Model Micro A)に移し、そして次いで13,000Gで60秒間遠心した。4分の時点で、50μLの試料を、遠心試験管の固体を含まない上清からピペットで取り出した。遠心試験管中の固体を、試料を渦混合機で30秒間連続して混合することによって再懸濁した。遠心試験管を遠心機に戻し、そして次回の試料を採取するまで静置させた。それぞれの試料を、先に記載したように、遠心し、試料採取し、そして再懸濁した。それぞれの試料を、50μLの上清を250μLのメタノールに加えることによって希釈し、そして化合物の濃度を、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)(Hewlett Packard 1100,Zorbax SB C18カラム、35%アセトニトリル(ACN)/65%H2O、吸光度は297nmでダイオードアレイ分光光度計で測定)によって測定した。
【0117】
試料を、4、10、20、40、90、180、及び1200分後に先に記載したように採取し、分析し、そして化合物濃度を計算した。データを表1.1に要約する。実施例1−3のそれぞれは、溶液中の薬物の濃度を、対照1によって与えられた平衡濃度より上に、20時間(1200分間)以上にわたって継続した。
【0118】
【表1】

【0119】
薬物が到達した最大濃度(Cmax)、薬物1の濃度対0ないし90分の時間のプロットの曲線下の溶解面積(AUC90)、及び20時間又は1200分後の濃度(C1200)を計算し、そして理論的Cmaxと共に表1.2に報告してある。理論的Cmaxは、全ての薬物1が溶解した場合に得られるものである薬物濃度である。即ち、試験溶液に投与された活性薬物の全質量のμgを、試験溶液の全体積のmLで割ったものである。明らかなように、実施例1、2及び3に対するCmaxは、非晶質薬物単独(対照1)のそれの、1.28倍、1.6倍及び2.4倍であり、一方実施例1、2及び3のAUC90は、非晶質薬物単独(対照1)のそれの2.7、3.0及び4.2倍であった。
【0120】
【表2】

【0121】
実施例4
この実施例は、非晶質の薬物1及び濃度向上ポリマーのもう一つの組成物を説明する。非晶質の薬物1を、実施例1に記載したように調製し、そして溶解を、懸濁液を構成する経口散薬(OPC)に対して、“胃緩衝液からPBSへの移動試験”として知られるin vitro試験において測定した。この試験は、OPC投与剤形の経口投与を、少量の酸性流体(胃緩衝液)に30分間さらし、続いてPBS溶液(腸緩衝液)にさらすことによって模倣する。
【0122】
これらの試験において、40mLの胃緩衝液(0.084MのHCl、0.058MのNaCl、7.0atm、pH1.2)を500mLのジソエット(dissoette)フラスコに37℃で加えた。対照2は、0.6gの非晶質の薬物1からなっていた。実施例4は、0.6gの非晶質の薬物1及び1.8gのHPMCAS−MFからなっていた。対照2及び実施例4の成分を、それぞれのOPCのビンに秤量し、そして15mLの2重量%のTween80を、それぞれのビンに加えた。それぞれの溶液を、2分間混合した。それぞれのOPCのビンに脱イオン水(105mL)を加え、それぞれのビンを2回反転し、そして内容物を対応するジソエットフラスコに加えた。それぞれのOPCのビンを、それぞれの回に60mLの脱イオン水を使用して2回洗浄して、それぞれのジソエットフラスコに入れた。それぞれのジソエットフラスコを100rpmで30分間撹拌し;それぞれから25分後に試料を採取した。30分の撹拌後、0.55mLの10%NaOH及び200mLの2.5×PBS(標準緩衝液の塩の濃度の2.5倍のPBS溶液)を、それぞれのジソエットフラスコに加えた。それぞれのフラスコ中の溶液のpHを、10%NaOHで6.5に調節した。
【0123】
pHを6.5に調節した後、試料を、4、10、20、40、90、180、及び1200分に採取した。これは、それぞれのジソエットフラスコから4滴を取り出し、そしてこの液滴を対応する微量遠心試験管に入れることによって行った。試料を、1分間13,000Gで遠心した。上清(50μL)を取り出し、そしてHPLCバイアル中の250μLのメタノールに加えた。薬物濃度をHPLCを使用して測定した。結果を表2.1に示す。
【0124】
【表3】

【0125】
max、AUC180(0ないし180分に対して計算されたAUC)、C1200及び理論的Cmaxを、表2.2に示す。
【0126】
【表4】

【0127】
データが示すように、非晶質の薬物とHPMCAS−MFポリマーからなる実施例4のCmaxは、非晶質の薬物単独からなる対照2のそれの1.28倍であり、一方実施例4のAUC180は、対照2のAUC180に対して3倍であった。
【0128】
実施例5−9
これらの実施例は、比を変化させた濃度向上ポリマーと混合された非晶質の薬物1の組成物を説明する。非晶質の薬物1(15mg)を、1.5mLのPBS溶液及び濃度を変化させたHPMCAS−MFを含む微量遠心試験管に加えた。溶解特性を、実施例1に記載した微量遠心法を使用して37℃で測定した。薬物濃度を、それぞれのポリマー濃度に対して1.5時間及び20時間において測定した。結果を表3に示す。
【0129】
【表5】

【0130】
表3のデータは、低いポリマー濃度においてさえも、ある程度の濃度向上が観察されることを示している。然しながら、効果は、薬物:ポリマーの重量比が減少するに伴なって増加する。これは、濃度向上を最大化するために、充分な量のポリマーが組成物中に存在しなければならないことを示している。
【0131】
実施例10−11
これらの実施例は、高度に可溶性の塩の形態(溶解度改良型)の薬物及び濃度向上ポリマーの組成物を説明する。溶解度改良薬物を記載した項目において検討したように、乳酸セルトラリン(薬物2)は、抗鬱病薬剤セルトラリンの可溶性の塩の形態である。乳酸セルトラリンの溶解度は、256mg/mLであり(306g/molである遊離塩基の分子量を使用して計算)、一方塩酸塩の溶解度は、僅か3mg/mL(遊離塩基の分子量を使用して計算)であり、両方ともpH3で測定された。
【0132】
これらの試験において、1.8mgの乳酸セルトラリンを、それぞれ6本の微量遠心試験管中の0.9mLのHPLC用水に加えた。対照4に対して、pH8.0に調節された0.9mLの2×PBS(標準緩衝液の塩濃度の2倍のPBS溶液)を、試験管1及び2に加えた。実施例10に対して、3.6mgのHPMCAS−MFを含む0.9mLの2×PBS(pH8.0)を、試験管3及び4に加えた。実施例11に対して、3.6mgのCATを含む0.9mLの2×PBS(pH8.0)を、試験管5および6に加えた。対照4は、濃度向上ポリマーを含んでいなかった。
【0133】
溶解性能を、実施例1に記載した微量遠心法を使用して、37℃で測定した。試料を、実施例1に記載したように、4、10、20、40、90、及び180分後に採取した。試料を35%H2O/65%ACN(容量/容量)で希釈し、そしてHPLCによって分析した。移動相は、ACN中の、HPLC用水中の0.05Mの酢酸を伴なう、35容量%の0.025Mのトリエチルアミンであった。使用された分析用カラムは、Phenomenex ODS 20であり、そして薬物濃度は、ダイオードアレイ検出を使用して230nmで測定された。微量遠心試験の結果を表4.1に示す。
【0134】
【表6】

【0135】
これらのデータは、濃度向上ポリマーを含む組成物において、薬物2の最大濃度が、対照4のそれの4.5倍ないし6.1倍であったことを示す。
【0136】
【表7】

【0137】
表4.2は、HPMCAS−MFを含む組成物のAUC180が、対照4のそれの6.0倍であり、そしてCATを含む組成物のAUC180が、対照4のそれの4.4倍であったことを示す。
【0138】
実施例12−14
これらの実施例は、高度に可溶性の塩の形態(この場合溶解度改良型)の薬物及び濃度向上ポリマーを含む組成物を説明する。ジプラシドン(ziprasidone)メシラート(薬物3)は、抗精神病薬ジプラシドンの可溶性の塩の形態である。これらの試験において、0.5mgの薬物を、8本の微量遠心試験管のそれぞれに加えた。対照5に対して、試験管1及び2に、濃度向上ポリマーを加えなかった。実施例12に対して、1.0mgの1.0mgのCATを試験管3及び4に加えた。実施例13に対して、1.0mgのCAP(NF級、Eastman Fine Chemical of Kingsport,tennesseeから入手)を試験管5及び6に加えた。実施例14に対して、1.0mgのHPMCP(NF級、Eastman Chemical Companyから入手)を試験管7及び8に加えた。
【0139】
溶解性能を、実施例1に記載した微量遠心法を使用して、37℃で測定した。それぞれの試験において、0.616mgの薬物3を微量遠心試験管に加えた。時間0において、1.8mLのPBSを、それぞれの試験管に加えた。薬物濃度を、ACN中のpH3.0の60容量%の0.02MのK2PO4の移動相、及び254nmのダイオードアレイ検出で、HPLCを使用して測定した。溶解試験の結果を表5.1に示す。
【0140】
【表8】

【0141】
表5.2は、Cmax、AUC180及び理論的Cmaxを報告する。実施例12−14のCmaxは、対照5のそれの2.0倍ないし2.3倍であり、一方実施例12−13のAUC180は、対照5のそれの1.6倍ないし4.0倍であった。
【0142】
【表9】

【0143】
実施例15−16
これらの実施例は、高エネルギー結晶質状態(この場合溶解度改良型)の薬物及び濃度向上ポリマーの組成物を説明する。上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤(EGFR−TK阻害剤)[6,7−ビス(2−メトキシ−エトキシ)−キナゾリン−4−イル]−(3−エチニル−フェニル)アミンのメシラート塩(薬物3)を、異なった溶解度を有する各種の多形体として単離した。例えば、“A”型は102μgA/mLの水中の溶解度を有し、一方“C”型は、28μgA/mLの溶解度を有する。これらの多形体は、準安定な形態であって、これらは、更に安定な形態に急速に相互転換されて、使用環境でより低い平衡濃度に到達することができる。これらの実施例において“A”多形体が研究された。
【0144】
これらの試験において、2.5mgの薬物4の多形体“A”を、6本の微量遠心試験管のそれぞれに加えた。対照6に対して、試験管1及び2には濃度向上ポリマーを加えなかった。実施例15に対して、1.2mgのHPMCAS−MFを、試験管3及び4に加えた。実施例6に対して、1.2mgのHPMCPを、試験管5および6に加えた。
【0145】
溶解性能を、微量遠心法を使用して、37℃で測定した。時間0において、1.8mLのPBSを、試験管1ないし6に加えた。薬物濃度をHPLCを使用して測定した。移動層は、HPLC用水中の水酸化アンモニウムでpH3.0に調節された、0.2重量%のトリフルオロ酢酸及び85/15(容積/容積)のアセトニトリル/イソプロピルアルコールの、55/45(容量/容量)混合物であった。使用した分析用カラムは、Inertsil C8であり、そして薬物濃度をダイオードアレイ検出を使用して252nmで測定した。溶解試験の結果を表6.1に示す。
【0146】
【表10】

【0147】
表6.2は、HPMCAS−MFを含む組成物(実施例15)のCmaxが、対照6のそれの13.7倍であり、一方AUC90は、対照6のそれの3.2倍であったことを示す。HPMCPを含む組成物(実施例16)のCmaxは、対照6のそれの7.8倍であり、一方AUC90は、対照6の2.9倍であった。
【0148】
【表11】

【0149】
実施例17
この実施例は、薬物の溶解度改良型として、薬物と混合された可溶化剤を説明する。セルトラリンHCl(薬物5)の37℃の溶解度を、pH3.1の水(酢酸でpH3.1に調節)中及び同じpHの飽和クエン酸中で測定した。表7.1に示すように、薬物5の溶解度は、クエン酸の存在中で劇的に増加し、9.3の溶解度改良係数を与えた。従って、クエン酸は、薬物5に対する優れた可溶化剤である。
【0150】
【表12】

【0151】
実施例17に対して、1,000μg/mLの薬物5、500μg/mLのクエン酸、及び1,000μg/mLのHPMCAS−MFを、リン酸緩衝液(pH7.9)中に含む溶液を調製した。対照7に対して、濃度向上ポリマーを含まない溶液を調製した。
【0152】
溶解性能を、実施例1に記載した微量遠心法を使用して、37℃で測定した。試料を、実施例1に記載したように15、30、60、120、及び240分に採取し、そして実施例10に記載した同様な方法を使用して、薬物5に対して分析した。これらの試験の結果を表7.2に示し、各種の計算値を表7.3に報告する。
【0153】
【表13】

【0154】
【表14】

【0155】
これらのデータは、濃度向上ポリマーHPMCASの添加により、対照7のそれの1.7倍である実施例17のCmaxが得られたことを示している。更に、AUC120は、対照7のそれより1.3倍であった。
【0156】
実施例18
この実施例は、本発明のin vivoの使用を説明する。可溶性薬物の形態及び濃度向上ポリマーの水溶液をイヌに投与した。溶解度改良型薬物は、薬物、ヘミフマル酸4−[3−[4−(2−メチルイミダゾール−1−イル)フェニルチオ]フェニル]−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−ピラン−4−カルボキシアミドのメシラート塩(薬物6)であった。このイヌに対して、塩酸塩の溶解度は、pH4で0.37mgA/mLであり、一方メシラート塩(薬物の溶解度改良型)の溶解度は、pH4で3.7mgA/mLである。これらの両方の薬物の形態の溶解度は、pHが上昇すると減少する。pH7において、塩酸塩の溶解度は、0.0009mgA/mLであり、そしてメシラート塩の溶解度は、0.0042mgA/mLである。理想的には、溶解度改良型薬物のより高い溶解度が胃液中で維持され、そして更に腸内の溶液中で、pHが増加しても薬物濃度が維持されることが有用であるものである。
【0157】
実施例18を、15mgAの薬物6を、1:10(重量/重量)の薬物6/HPMCAS−LFの物理的混合物中に含む懸濁液として調製した。対照8は、HPMCASを含んでいなかった。実施例18及び対照8の懸濁液の組成を表8.1に示す。
【0158】
【表15】

【0159】
イヌを一晩絶食させた後、20mLの懸濁液を、外科的に作った処置用開口部から上行結腸に直接投与し、直後に10ccの空気で置換した。血液(5mL)を、経静脈から投与前及び投与後の、0.25、0.5、1、2、4、6、8、12及び24時間に採取した。
【0160】
標準、対照及び研究試料中の薬物6の血漿濃度をLC/MS分析によって測定した。試料、標準及び対照からの100μLの血漿のアリコートを、96ウェルプレートの適当なウェルに加え、続いて5μLの内部標準(IS)、4−[5−フルオロ−3−[4−(2−メチルイミダゾール−1−イル)ベンジルオキシ]フェニル]−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−ピラン−4−カルボキシアミド(50/50のアセトニトリル/水中の10μg/mL)をそれぞれのウェルに加え;続いて100μLのアセトニトリルをそれぞれのウェルに加えた。撹拌及び遠心(1730Gで5分間)後、それぞれのウェルの上清を96ウェルプレートの新しいウェルに移し、そして20μLをLC/MS系に注入した。逆相HPLC系は、Waters C18 Symmertry(登録商標)分析用カラム(2.1mm×150mm)からなっていた。移動相溶媒は:溶媒A=移動相のリットル当たり1%のイソプロピルアルコールを伴なう5mMの酢酸アンモニウム、及び溶媒B=移動相のリットル当たり1%のイソプロピルアルコールを伴なうアセトニトリルであった。勾配は、0.5mL/分の流速で、0−3.0分で100%Aから0%Aへ、3.1分に100%Aに切り替えて戻すものであった。薬物6及びISの保持時間は、両方とも約2.6分であった。検出は、Turbo IonSprayインターフェースを備えたSCIEX PE API−150質量分析計によって達成された。陽イオンを薬物6(m/z 394.1)及びIS(m/z 410.3)をそれぞれの定量のためにモニターした。内部標準に対する薬物6の反応のピーク面積の比を、最小二乗直線回帰を1/x2の加重で使用して標準曲線を構成するために使用した。血漿分析の定量の下限(LLOQ)及び定量の上限(ULOQ)は、それぞれ0.01及び5μg/mLであった。分析の性能は、イヌの血漿中で調製された定量制御試料を含めることによってモニターした。
【0161】
薬物動力学的なデータを表8.2に示し、表中、Cmaxは、それぞれの形態を投与されたイヌの数に対して平均された、観察された最大血漿薬物6の濃度である。AUC1200は、0ないし24時間(1200分)の血漿薬物6濃度対時間曲線下の平均面積である。
【0162】
【表16】

【0163】
これらのデータは、HPMCAS及び薬物6の物理的混合物が、ビーグル犬に腸内的に投与された場合、薬物6単独の投与によって得られるものより高い、全身性の薬物6の暴露が与えられることを証明する。HPMCASの形態のCmax及びAUC1200は、対照のそれらのそれぞれ5.0倍及び3.1倍であった。これらのデータは、化合物の腸への放出における本発明の有用性を証明する。
【0164】
実施例19
実施例19は、実施例18で使用されたものと同一の組成物を説明し、これは次のようにin vitroで更に試験された。実施例19を、先ず20mLの脱イオン水を小さいガラスフラスコに加え、そして10MのHClでpH1ないし2間にpHを調節することによって調製した。次に、100mgの薬物6をこの溶液中に5分間撹拌することによって溶解した。この時間の間pHは1−2の範囲に止まり、5mg/mLの最終薬物6の濃度を得た。
【0165】
次いでこの薬物6の混合物を、それぞれ磁気撹拌棒を含む2個の小さいガラスビーカーに等量で分割した。10mgのHPMCAS−LFの試料を一つのビーカーに加え(実施例19)、そして第2のビーカーには濃度向上ポリマーを加えなかった(対照9)。従って、この試験の薬物/ポリマー比は、1:4(重量:重量)であった。次いで両方のpHを、0.1M及び0.01MのNaOHを使用してpH6.8に調節した。ビーカーに蓋をし、そして混合物を撹拌した。
【0166】
試料(約1mL)を、ガラスのパスツールピペットを使用して60、120、180、240及び1440分に採取した。それぞれの試料を、Gelman Acrodisc 1.2μmシリンジフィルターを取り付けた1.0mLのプラスチックシリンジに移した。次いで試料をガラスのHPLC注入用バイアルにフィルターを通して放出し、蓋をし、直ちにHPLCで分析し、そして化合物濃度を計算した。試料は、Zorbax C8 逆相、5μm、4.6×150mmカラムを使用して、264nmで検出して分析した。
【0167】
これらの試験の結果を、表9.1及び9.2に示す。これらは、実施例19のCmaxが、対照9のそれの2.5倍であったことを示す。更に、実施例19のAUC180は、対照9のそれの3.7倍であった。これらのデータは、実施例18に記載したin vivoの試験と良く一致する。
【0168】
【表17】

【0169】
【表18】

【0170】
実施例20
溶液中のポリマー/薬物の集合体の形成を、動的光分散分析を使用して証明する。量を変化させた非晶質の薬物1及びHPMCAS−MFをPBSに加え、そして光分散をPSS−NICOMP 380 Submicron Particle Sizerを使用して測定した。これらの実験に対して、0.1、1.0、10.0、25.0、又は50.0mgの固体非晶質の薬物1を、200mgのHPMCAS−MFと共に乳鉢に加え、そしてスパチュラを使用して混合した。次いでそれぞれの薬物/ポリマーの混合物を、50mLのPBSに加え、37℃で2時間平衡させた。表10に溶液中に存在するポリマー及び薬物の最終濃度を示す。2時間後、1mLの溶液を取り出し、そして13,000rpmで5分間遠心した。それぞれの遠心された溶液の上清の動的光分散(粒子の拡散による)を測定し、そして溶液中のいかなる薬物及びポリマー粒子の大きさをも計算した。溶液中の薬物及びポリマーの濃度、並びに溶液中の全体の粒子に対する平均の粒子の大きさを、表10に示す。溶液5番及び6番に対して、報告された値は平均であり、粒子の体積の約85%が、この平均の大きさの30%以内であったことは注意すべきである。
【0171】
【表19】

【0172】
薬物が存在しない場合(溶液1番)、約10ないし20nmの大きさの小さい粒子が、ポリマー(HPMCAS−MF)の、恐らくはその両親媒性の結果として凝集するために存在する。非晶質薬物1の低い濃度(0.002ないし0.2mg/mL)において、光分散は、溶液中にポリマー単独において存在したような小さい粒子(約10ないし20nmの大きさ)のみを示す。非晶質薬物1の溶解度(約0.2ないし0.4mg/mL)より高い、非晶質薬物1の高い濃度(≧0.5mg/mL)において、粒子は約80ないし85nmの平均の大きさで存在する。これは溶液中のポリマー/薬物集合体の形成を証明し、そして集合体の形成に必要な薬物の量が、非晶質の薬物の溶解度に概略等しいか又はそれより大きいことを示している。
【0173】
これらのポリマー/薬物集合体によって与えられる濃度の向上は、表10に示したものより高い薬物1の濃度(非晶質薬物の溶解度よりはるかに大きい)に対して証明された。実施例9に記載した溶解試験に対して、10.0mg/mLの非晶質の薬物1をPBSに37℃で、20mg/mLのHPMCAS−MFと共に加えた。実施例9に対する対照は、非晶質薬物単独であった。1.5時間に測定した薬物1の濃度は、非晶質薬物単独に対して224μg/mLを示し、そして実施例9に対して8,099μg/mLを示した。実施例9の薬物とポリマーの比は、上記溶液6番(表10)で使用した比に対応する。溶液中の薬物/ポリマー集合体の形成は、薬物1が、その非晶質の溶解度をはるかに超えた濃度で、溶液中に残存することを可能にする。
【0174】
薬物/ポリマー集合体の組成を決定するために、上記の溶液4番、5番、及び6番(表10)を再度製造し、そしてHPLC及びNMRを使用して分析した。薬物及びポリマーをPBSに37℃で加えた。薬物及びポリマーの添加の2時間後、試料を遠心(13,000rpmで5分間)した。上清中の遊離薬物及びポリマー濃度をNMRによって測定した。“遊離”(溶媒和した)薬物及びポリマー/薬物集合体中の薬物からなる、遠心後の上清中に溶解した薬物の合計の量を測定するために、HPLCを使用した。遠心された沈殿物をDMSOに溶解し、そしてNMRによって分析して、薬物及びポリマーの濃度を得た。薬物/ポリマー集合体中に含まれた薬物の量は、溶解された薬物の合計から、上清中の遊離薬物の濃度を差し引くことによって見出された。薬物/ポリマー集合体に含まれるポリマーの量は、投与されたポリマーの合計から、遊離ポリマー及び沈殿物中のポリマーを差し引くことによって見出された。結果を以下の表11に示す。
【0175】
【表20】

【0176】
表11のデータは、溶解限度を超える薬物濃度(溶液5番及び6番)において、全可溶性薬物の大きいパーセントが薬物/ポリマー集合体中に含まれていることを示す。更に、溶液6番に対する遊離薬物の濃度は、結晶質薬物1の溶解度(80μg/mL)の約3.8倍であり、そして非晶質薬物1の溶解度(200μg/mL)の約1.5倍である。
【0177】
上記の明細書中において使用されてきた用語及び表現は、説明するための用語としてここで使用されたものであり、そして制約するものではなく、そしてこのような用語及び表現を使用して示し、そして記載した特徴又はその一部の均等物を除外する意図はなく、本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ定義され、そして制約されることは認識されるものである。
【0178】
以下に、原出願の出願時の特許請求の範囲の記載を示す。
[請求項1]
組成物であって:
(a)医薬的に受容可能な溶解度改良型の薬物;及び
(b)前記組成物が、使用環境に導入された後、前記使用環境における前記薬物の平衡濃度の、少なくとも1.25倍である前記使用環境における前記薬物の最大濃度を与えるように、前記溶解度改良型と充分な量で組み合わされる濃度向上(enhancing)ポリマー;
を含み、そして前記平衡濃度を超える前記使用環境における前記薬物の濃度が、対照組成物によって与えられる前記使用環境における前記薬物の濃度より長期間前記平衡濃度を超え、ここにおいて前記対照組成物は、前記濃度向上ポリマーを含まず、そして等量の前記薬物を前記溶解度改良型で含む、前記組成物。
[請求項2]
前記溶解度改良型中の前記薬物が、前記薬物の結晶質の高度に溶解性の塩の形態である、請求項1に記載の組成物。
[請求項3]
前記溶解度改良型中の前記薬物が、前記薬物の高エネルギー結晶質の形態である、請求項1に記載の組成物。
[請求項4]
前記溶解度改良型中の前記薬物が、非晶質である、請求項1に記載の組成物。
[請求項5]
前記溶解度改良型中の前記薬物が、前記薬物及び可溶化剤の混合物を含む組成物である、請求項1に記載の組成物。
[請求項6]
前記溶解度改良型中の前記薬物が、前記使用環境における前記薬物の前記平衡濃度の、少なくとも10倍の濃度で液体中に実質的に溶解した薬物の溶液である、請求項1に記載の組成物。
[請求項7]
前記濃度向上ポリマーが、疎水性部分及び親水性部分を有する、請求項1に記載の組成物。
[請求項8]
前記濃度向上ポリマーが、前記使用環境ににおいてイオン化された場合に可溶性である、セルロース系のイオン化可能なポリマーである、請求項1に記載の組成物。
[請求項9]
前記ポリマーが、酢酸フタル酸セルロース、酢酸フタル酸メチルセルロース、酢酸フタル酸エチルセルロース、酢酸フタル酸ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸コハク酸ヒドロキシプロピルセルロース、プロピオン酸フタル酸セルロース、酪酸フタル酸ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸トリメリト酸セルロース、酢酸トリメリト酸メチルセルロース、酢酸トリメリト酸エチルセルロース、酢酸トリメリト酸ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸トリメリト酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸トリメリト酸コハク酸ヒドロキシプロピルセルロース、プロピオン酸トリメリト酸セルロース、酪酸トリメリト酸セルロース、酢酸テレフタル酸セルロース、酢酸イソフタル酸セルロース、酢酸ピリジンジカルボン酸セルロース、酢酸セルロースサリチル酸、酢酸セルロースヒドロキシプロピルサリチル酸、酢酸セルロースエチル安息香酸、酢酸セルロースヒドロキシプロピルエチル安息香酸、酢酸セルロースエチルフタル酸、酢酸セルロースエチルニコチン酸、及び酢酸セルロースエチルピコリン酸からなる群から選択される、請求項8に記載の組成物。
[請求項10]
前記ポリマーが、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、及び酢酸トリメリト酸セルロースからなる群から選択される、請求項8に記載の組成物。
[請求項11]
前記ポリマーが、イオン化不可能なセルロース系ポリマーである、請求項1に記載の組成物。
[請求項12]
前記ポリマーが、酢酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、酢酸ヒドロキシエチルセルロース、及びヒドロキシエチルエチルセルロースからなる群から選択される、請求項11に記載の組成物。
[請求項13]
前記ポリマーが、イオン化可能な非セルロース系ポリマーである、請求項1に記載の組成物。
[請求項14]
前記ポリマーが、イオン化不可能な非セルロース系ポリマーである、請求項1に記載の組成物。
[請求項15]
前記組成物が、前記使用環境に導入した直後の1200分間中の少なくとも90分間の期間に対して、前記対照組成物によって与えられる対応する曲線下の面積の、少なくとも1.25倍である使用環境における時間に対する濃度曲線下の溶解面積を与える、請求項1に記載の組成物。
[請求項16]
組成物であって:
(a)医薬的に受容可能な溶解度改良型の薬物;及び
(b)前記組成物が、使用環境に導入された後、前記使用環境に導入した直後の1200分間中の少なくとも90分間の期間に対して、対照組成物によって与えられる対応する曲線下の面積の、少なくとも1.25倍である使用環境における時間に対する濃度曲線下の溶解面積を与えるように前記薬物と充分な量で組み合わされた、濃度向上用ポリマー;
を含み、ここにおいて前記対照組成物は、前記濃度向上用ポリマーを含まず、そして等量の前記薬物を前記溶解度改良型で含む、前記組成物。
[請求項17]
組成物であって:
(a)医薬的に受容可能な溶解度改良型の薬物;及び
(b)前記組成物が、使用環境に導入された後、少なくとも1.25倍の相対的な生体利用率を与えるように、充分な量の前記薬物と組み合わされた濃度向上ポリマー;
を含む、前記組成物。
[請求項18]
薬物を投与する方法であって、前記薬物を必要とする患者に:
(a)溶解度改良型の薬物;及び
(b)濃度向上ポリマー;
を共同投与することを含み、ここにおいて前記濃度向上ポリマーが、使用環境に導入された後、対照組成物によって与えられる前記使用環境における前記薬物の平衡濃度の、少なくとも1.25倍である前記使用環境における前記薬物の最大濃度を与えるように、前記溶解度改良型と充分な量で共同投与され;
そしてここにおいて前記使用環境における前記平衡濃度を超える前記薬物の濃度が、前記対照組成物によって与えられる、前記使用環境における前記薬物の前記平衡濃度を超える濃度より長時間与えられ;
そしてここにおいて前記対照組成物は濃度向上ポリマーを含まず、そして等量の前記薬物を前記溶解度改良型で含む、前記方法。
[請求項19]
前記薬物が、前記濃度向上ポリマーと別個に投与される、請求項18に記載の方法。
[請求項20]
前記薬物及び前記濃度向上ポリマーが、本質的に同時に投与される、請求項19に記載の方法。
[請求項21]
前記薬物が、更に前記濃度向上ポリマーを含む組成物中で投与される、請求項18に記載の方法。
[請求項22]
薬物を投与する方法であって、前記薬物を必要とする患者に:
(a)溶解度改良型の薬物;及び
(b)濃度向上ポリマー;
を共同投与することを含み、ここにおいて前記濃度向上ポリマーが、使用環境に導入された後、前記使用環境に導入した直後の1200分間中の少なくとも90分間の期間に対して、対照組成物によって与えられる対応する曲線下の面積の、少なくとも1.25倍である使用環境における時間に対する濃度曲線下の溶解面積を与えるように、前記薬物と充分な量で共同投与され;
そしてここにおいて前記対照組成物は、前記濃度向上用ポリマーを含まず、そして等量の前記薬物を前記溶解度改良型で含む、前記方法。
[請求項23]
薬物を投与する方法であって、前記薬物を必要とする患者に:
(a)溶解度改良型の薬物;及び
(b)濃度向上ポリマー;
を共同投与することを含み、ここにおいて前記濃度向上ポリマーが、使用環境に導入された後、前記使用環境に導入された後、対照組成物のそれの少なくとも1.25倍の相対的な生体利用率が与えられるように、前記薬物と充分な量で共同投与され、ここにおいて前記対照組成物は、前記濃度向上用ポリマーを含まず、そして等量の前記薬物を前記溶解度改良型で含む、前記方法。
[請求項24]
溶解度改良型の固体の薬物及び濃度向上ポリマーの使用環境への投与によって形成される水溶液であって:
(a)それぞれの前記薬物及び前記濃度向上ポリマーが、前記溶液中に少なくとも一部分溶解し;
(b)前記溶解された薬物の少なくとも一部分が、複数の薬物及びポリマーのアセンブリー中の前記ポリマーの少なくとも一部分に伴なわれ、前記アセンブリーは、約10ないし1000ナノメートルの大きさを有し;そして
(c)前記溶液が、前記使用環境における前記薬物の平衡濃度の、少なくとも1.25倍である前記薬物の最大濃度、及び前記平衡濃度を超える前記薬物の濃度を、対照組成物によって与えられる前記使用環境における前記薬物の平衡濃度を超える濃度より長時間有し、ここにおいて前記対照組成物は、前記濃度向上用ポリマーを含まず、そして等量の前記薬物を前記溶解度改良型で含むこと;
を含む、前記溶液。
[請求項25]
前記溶解度改良型中の前記薬物が、前記薬物の結晶質の高度に溶解性の塩の形態である、請求項24に記載の溶液。
[請求項26]
前記溶解度改良型中の前記薬物が、前記薬物の高エネルギー結晶質の形態である、請求項24に記載の溶液。
[請求項27]
前記溶解度改良型中の前記薬物が、非晶質である、請求項24に記載の溶液。
[請求項28]
前記溶解度改良型中の前記薬物が、前記薬物及び固体可溶化剤の混合物を含む組成物である、請求項24に記載の溶液。
[請求項29]
前記使用環境が、in vivoである、請求項24に記載の溶液。
[請求項30]
前記使用環境が、動物の胃腸管、皮下隙、膣管、肺管、動脈及び静脈血管、並びに筋肉内組織からなる群から選択される、請求項29に記載の溶液。
[請求項31]
前記使用環境が、in vitroである、請求項24に記載の溶液。
[請求項32]
前記濃度向上ポリマーが、疎水性部分及び親水性部分を有する、請求項24に記載の溶液。
[請求項33]
溶解度改良型の薬物及び濃度向上ポリマーの使用環境への投与によって形成される水溶液であって:
(a)それぞれの前記薬物及び前記濃度向上ポリマーが、前記溶液中に少なくとも一部分溶解し;
(b)前記溶解された薬物の少なくとも一部分が、複数の薬物及びポリマーのアセンブリー中の前記ポリマーの少なくとも一部分に伴なわれ、前記アセンブリーは、約10ないし1000ナノメートルの大きさを有し;
(c)前記ポリマーが、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸メチルセルロース、酢酸フタル酸ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸トリメト酸セルロース、酢酸テレフタル酸セルロース及び酢酸イソフタル酸セルロースからなる群から選択され;そして
(d)前記溶液が、前記使用環境における前記薬物の平衡濃度の、少なくとも1.25倍である前記薬物の最大濃度、及び前記平衡濃度を超える前記薬物の濃度を、対照組成物によって与えられる前記使用環境における前記薬物の平衡濃度を超える濃度より長時間有し、ここにおいて前記対照組成物は、前記濃度向上用ポリマーを含まず、そして等量の前記薬物を前記溶解度改良型で含むこと;
を含む、前記溶液。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)医薬的に受容可能な溶解度改良型のジプラシドンであって、ジプラシドンの当該溶解度改良型が、結晶質の高度に溶解性の塩の形態、高エネルギー結晶質の形態、及び非晶質からなる群から選択されるものであるジプラシドン;と
(b)酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である濃度向上(enhancing)ポリマー;
との物理的混合物を含み、当該濃度向上ポリマーとジプラシドンが、0.01〜5の薬物対ポリマー重量比で存在し、
当該結晶質の高度に溶解性の塩の形態及び当該高エネルギー結晶質の形態の各々は、リン酸緩衝生理食塩水又はModel Fasted Duodenal溶液中に放出された場合、少なくとも一時的に当該溶液におけるジプラシドンの平衡濃度の少なくとも1.25倍のジプラシドンの濃度を与え、そして
当該高度に溶解性の塩の形態は、より可溶性の結晶質の遊離塩基及び結晶質の塩酸塩の形態の水に対する溶解度の少なくとも1.25倍の水に対する溶解度を有する、医薬組成物。
【請求項2】
前記濃度向上ポリマーとジプラシドンが、0.05〜2.5の薬物対ポリマー重量比で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(a)医薬的に受容可能な溶解度改良型のジプラシドンであって、ジプラシドンの当該溶解度改良型が、結晶質の高度に溶解性の塩の形態、高エネルギー結晶質の形態及び非晶質からなる群から選択されるものであるジプラシドン;及び
(b)酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である濃度向上ポリマー;
を含む組合せ物であって、当該濃度向上ポリマーとジプラシドンが、0.01〜5の薬物対ポリマー重量比で組み合わされ、
当該結晶質の高度に溶解性の塩の形態及び当該高エネルギー結晶質の形態の各々は、リン酸緩衝生理食塩水又はModel Fasted Duodenal溶液中に放出された場合、少なくとも一時的に当該溶液におけるジプラシドンの平衡濃度の少なくとも1.25倍のジプラシドンの濃度を与え、そして
当該高度に溶解性の塩の形態は、より可溶性の結晶質の遊離塩基及び結晶質の塩酸塩の形態の水に対する溶解度の少なくとも1.25倍の水に対する溶解度を有する、組合せ物。
【請求項4】
当該濃度向上ポリマーとジプラシドンが、0.05〜2.5の薬物対ポリマー重量比で組合わされる、請求項3に記載の組合せ物。
【請求項5】
ジプラシドンと前記濃度向上ポリマーとを別個に投与するための、請求項3又は4に記載の組合せ物。
【請求項6】
ジプラシドンと前記濃度向上ポリマーとを同時に投与するための、請求項3又は4に記載の組合せ物。
【請求項7】
ジプラシドンと前記濃度向上ポリマーとの物理的混合物を含む組成物である、請求項3又は4に記載の組合せ物。
【請求項8】
溶解度改良型の固体のジプラシドンであって、ジプラシドンの当該溶解度改良型が、結晶質の高度に溶解性の塩の形態、高エネルギー結晶質の形態及び非晶質からなる群から選択されるものであるジプラシドンと、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である濃度向上ポリマーとを、0.01〜5の薬物対ポリマー重量比で、ヒトを除く動物のin vivo環境又はin vitro環境である使用環境へ投与することによって形成される水溶液であって:
(a)それぞれのジプラシドン及び前記濃度向上ポリマーが、前記溶液中に少なくとも一部分溶解し;そして
(b)前記溶解されたジプラシドンの少なくとも一部分が、複数のジプラシドン及びポリマーのアセンブリー中の前記ポリマーの少なくとも一部分に伴なわれ、前記アセンブリーは、10ないし1000ナノメートルの大きさを有し、
当該結晶質の高度に溶解性の塩の形態及び当該高エネルギー結晶質の形態の各々は、リン酸緩衝生理食塩水又はModel Fasted Duodenal溶液中に放出された場合、少なくとも一時的に当該溶液におけるジプラシドンの平衡濃度の少なくとも1.25倍のジプラシドンの濃度を与え、そして
当該高度に溶解性の塩の形態は、より可溶性の結晶質の遊離塩基及び結晶質の塩酸塩の形態の水に対する溶解度の少なくとも1.25倍の水に対する溶解度を有する、水溶液。
【請求項9】
当該濃度向上ポリマーとジプラシドンを0.05〜2.5の薬物対ポリマー重量比で投与することによって形成される、請求項8に記載の水溶液。
【請求項10】
前記使用環境が、in vivoである、請求項8又は9のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項11】
前記使用環境が、動物の胃腸管、皮下隙、膣管、肺管、動脈及び静脈血管、並びに筋肉内組織からなる群から選択される、請求項10に記載の溶液。
【請求項12】
前記使用環境が、in vitroである、請求項8又は9に記載の溶液。

【公開番号】特開2008−101004(P2008−101004A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285190(P2007−285190)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【分割の表示】特願2001−548090(P2001−548090)の分割
【原出願日】平成12年12月1日(2000.12.1)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】