説明

向流形プレートフィン式熱交換器およびコンテナ用空気サイクル冷凍システム

【課題】 高温側から低温側への構造材を通した熱伝導を低減することができ熱交換効率の向上が図れる向流形プレートフィン式熱交換器を提供し、熱交換効率の向上により、冷凍能力の向上を図ることができるコンテナ用空気サイクル冷凍システムを提供する。
【解決手段】 向流形プレートフィン式熱交換器としての放熱用熱交換器または熱回収用熱交換器において、プレート20および伝熱フィン19を通じた、流路流れ方向の熱伝導を遮断する断熱材21を、熱交換器本体における流路流れ方向の複数箇所に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、向流形プレートフィン式熱交換器およびコンテナ用空気サイクル冷凍システムに関し、冷凍能力の向上を図った技術に関する。
【背景技術】
【0002】
空気サイクル冷凍冷却システムは、冷媒として空気を用いるため、フロンやアンモニアガス等を用いる場合に比べてエネルギー効率が不足するが、環境保護の面では好ましい。また、冷凍倉庫等のように、冷媒空気を直接に吹き込むことができる施設では、庫内ファンの省略等によってトータルコストを引き下げられる可能性があり、このような用途で空気サイクル冷凍冷却システムが提案されている(例えば、特許文献1)。
また、−30℃〜−60℃のディープ・コール領域では、空気冷却の理論効率は、フロンやアンモニアガスと同等以上になることが知られている。ただし、上記空気冷却の理論効率を得ることは、最適に設計された周辺装置があって、初めて成り立つとも述べられている。周辺装置は、圧縮機や膨張タービン等である。
【0003】
圧縮機、膨張タービンとしては、コンプレッサ翼車および膨張タービン翼車を共通の主軸に取り付けたタービンユニットが用いられている。空気サイクル冷凍システムには冷凍庫から圧縮機に流入する戻り空気と膨張タービン入口前の空気を熱交換する熱回収熱交換器と、圧縮機で高温になった空気を外部冷却媒体との熱交換で冷却する放熱用熱交換器とを備える。空気サイクル冷凍システムをコンテナ用に用いる場合には、冷凍能力に大きく寄与する熱交換器の温度効率を向上させることと同時に小型化も求められる。
【特許文献1】特許第2623202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記熱回収熱交換器は、空気対空気の熱交換器である。放熱用熱交換器は、圧縮機で高温になった空気を外部冷却媒体との熱交換で冷却するもので、大型冷凍倉庫の場合には冷却媒体としてチラー冷却水が用いられる場合が多いが、コンテナ用冷凍機はチラーを持たないため空気を用いざるを得ない。前記チラーは、圧縮機、凝縮器および蒸発器等を備えた、コンパクト化された装置である。
【0005】
空気対空気の熱交換が高効率で行え、かつ低損失を実現できる熱交換器としては、図10に示す向流形プレートフィン式熱交換器がある。この向流形プレートフィン式熱交換器は、プレートPtと伝熱フィンfを多段に重ねた構造で、高温流体HRが流れるA段と低温流体LRが流れるB段とが規定され、かつA段とB段とが互い違いに積層されて成る。また、A段を流れる高温流体HRの流れ方向と、B段を流れる低温流体LRの流れ方向とが互いに逆向きとなっている。よって、A段を流れる高温流体HRと、B段を流れる低温流体LRとを熱交換する。
【0006】
上記フィンfおよびプレートPtとしては、熱伝導率が良く、軽量でロウ付け構造が容易にできるアルミニウム材が用いられることが多い。一方、フィンfおよびプレートPtとしてアルミニウム材を用いると、これらフィンfおよびプレートPtの流体流れ方向に沿った熱伝導も高くなる。このため、前記流れ方向に沿った、高温側から低温側に流れる熱量が大きくなり、これによって熱交換効率が低下するという欠点があった。特に、小型化を狙ってプレートPt、フィンf段数を増やし流れ方向の断面積を大きく、流路の長さを短くした場合には、熱伝導の影響が顕著になる。
【0007】
この発明の目的は、高温側から低温側への構造材を通した熱伝導を低減することができ熱交換効率の向上が図れる向流形プレートフィン式熱交換器を提供することである。
この発明の他の目的は、熱交換効率の向上により、冷凍能力の向上を図ることができるコンテナ用空気サイクル冷凍システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の向流形プレートフィン式熱交換器は、プレートと波板状の伝熱フィンとが交互に複数段に積層されて各層のプレート間に流体流路が構成された熱交換器本体を有し、前記各層の流体流路は、高温流体が流れる高温流体流路と、低温流体が流れる低温流体流路とに交互に分けられ、かつ高温流体流路と低温流体流路の流れ方向が互いに向かい合う向流形プレートフィン式熱交換器において、前記熱交換器本体の流路流れ方向の複数箇所または1か所に、前記プレートおよび伝熱フィンを通じた流路流れ方向の熱伝導を遮断する断熱材を介在させたことを特徴とする。
【0009】
この構成によると、熱交換器本体において、構造材であるプレートおよび伝熱フィンの流体の流路流れ方向に沿った熱伝導が、断熱材で遮断されて低減する。よって、プレートおよび伝熱フィンとして熱伝導率の良い材料を用いた場合、高温側から低温側へのプレートおよび伝熱フィンを通した熱伝導による熱交換効率の低下を招くことなく、前記高温および低温の流体流路を流れる流体間の熱交換を効率良く行うことができる。
したがって、高温側から低温側への熱伝導に熱交換効率の低下を伴うことなく、従来のものより、プレート、伝熱フィン段数を増やし流体流れ方向の断面積を大きくし、かつ流路の長さを短くして、熱交換器自体の小型化を図ることができる。
【0010】
前記断熱材は、各層のプレートを流路流れ方向に分断した分断部にそれぞれ介在する複数のプレート間介在桟部と、これら複数のプレート間介在桟部を両端で繋ぐ連結桟部とでなる格子状であっても良い。このように断熱材を格子状として流路部分を開口させることで、流体を断熱材自体で遮ることなく円滑に流すことが可能となる。
【0011】
前記プレートおよび伝熱フィンがアルミニウム合金製であっても良い。この場合、熱交換器の軽量化を図り、ロウ付け構造を容易に行うことができる。また、流体対流体の熱交換を高効率で行える。したがって、熱交換器本体の部品材料および部品点数の低減を図ることができ、熱交換器の製作コストを低減することが可能となる。
【0012】
前記断熱材がオーステナイト系ステンレス材からなるものであっても良い。例えば、JISで規定されるSUS304等のステンレス鋼板を断熱材として適用することができる。この場合、熱交換器の軽量化を図り、流体対流体の熱交換を高効率で行える。
前記断熱材がセラミックス材からなるものであっても良い。この場合、断熱材が金属材料からなるものに比べて、高温側から低温側への構造材を通した熱伝導を低減する効果を高めることができる。
前記断熱材が樹脂材からなるものであっても良い。この場合、金型等により断熱材の量産化が容易となり、製作コストの低減を図ることができる。
【0013】
前記断熱材とプレートとの間、または断熱材と伝熱フィンとの間に、熱応力を緩和させる熱応力緩和材を挟み込んだものであっても良い。熱応力緩和材として、ニッケル等の軟質金属を適用し得る。断熱材と、プレートや伝熱フィンとの接合面には、線膨張係数の違いに起因して熱応力が集中し、接合状態に不具合を生じるおそれがある。前記熱応力緩和材を設けた場合、接合面に熱応力が集中することを緩和し、この接合面の接合状態を好適に維持することができる。
【0014】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の向流形プレートフィン式熱交換器を用いたコンテナ用空気サイクル冷凍システムとしても良い。
コンテナ用空気サイクル冷凍システムとしては、コンプレッサ翼車およびタービン翼車が共通の主軸に取り付けられ、上記主軸が転がり軸受および磁気軸受並びに主軸回転駆動用のモータを有するモータ一体型磁気軸受装置で支持されたコンプレッサ・タービンユニットと、これらコンプレッサ・タービンユニットのコンプレッサおよび膨張タービンを通る冷媒経路に介在した複数または一つの熱交換器を備え、空気を冷媒とし、空調または冷凍する空気サイクル冷凍システムを適用し得る。この場合、膨張タービン入口等の空気温度をより低温にできるため、冷凍能力の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明の向流形プレートフィン式熱交換器は、プレートと波板状の伝熱フィンとが交互に複数段に積層されて各層のプレート間に流体流路が構成された熱交換器本体を有し、前記各層の流体流路は、高温流体が流れる高温流体流路と、低温流体が流れる低温流体流路とに交互に分けられ、かつ高温流体流路と低温流体流路の流れ方向が互いに向かい合う向流形プレートフィン式熱交換器において、前記熱交換器本体の流路流れ方向の複数箇所または1か所に、前記プレートおよび伝熱フィンを通じた流路流れ方向の熱伝導を遮断する断熱材を介在させたため、高温側から低温側へのプレートや伝熱フィンを通した熱伝導を低減することができ、熱交換効率の向上が図れる。
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の向流形プレートフィン式熱交換器を用いたコンテナ用空気サイクル冷凍システムとした場合、熱交換効率の向上により、冷凍能力の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明の一実施形態を図1ないし図7と共に説明する。
この発明の実施形態に係るコンテナ用空気サイクル冷凍システムは、コンテナ用冷凍庫の被冷却部の空気を直接に冷媒として冷却する装置であり、コンテナの一部にシステム全体が格納されている。先ず、空気サイクル冷凍システムの全体構成について説明し、次に、本願特有の熱交換器、その要部構成について順次説明する。
【0017】
図1に示すように、この空気サイクル冷凍システムは、被冷却部Rにそれぞれ開口した空気の庫内吸込み口Naから庫内噴出口Nbに至る冷媒経路10を有している。この冷媒経路10に、例えば、コンプレッサ・タービンユニット11のコンプレッサ11a、放熱用熱交換器12、再生熱交換器13、コンプレッサ・タービンユニット11の膨張タービン11bが順に設けられている。
【0018】
前記被冷却部Rの出口から冷媒経路10の取入口10aに空気が流入する。取入口10aに流入した空気は、再生熱交換器13により、冷媒経路10中の空気の冷却に使用され、昇温する。この空気はコンプレッサ・タービンユニット11のコンプレッサ11aにより圧縮され、この圧縮により昇温した状態で、放熱用熱交換器12により冷却される。この冷却された空気は、コンプレッサ・タービンユニット11のモータM1(図2)の冷却に供された後、熱回収熱交換器13で冷却される。その後、コンプレッサ・タービンユニット11の膨張タービン11bにより断熱膨張され、冷却されて庫内噴出口Nbから被冷却部Rの入口に噴出される。
さらに、空気サイクル冷凍システムは、モータ冷却用の油経路2、油循環用ポンプ3、油冷却用の熱交換器4、およびファン5を備えている。油冷却用の熱交換器4は、油循環用ポンプ3から吐出された油を冷却し、モータM1の冷却に供するものである。モータ冷却後の油は油流路2を介して油タンクOTに戻され、この戻り油は油循環用ポンプ3により循環する。
【0019】
図1、図2に示すように、コンプレッサ・タービンユニット11は、モータ一体型磁気軸受装置を備え、このモータ一体型磁気軸受装置では、モータ冷却用の油流路MRを備えている。図2に示すように、前記モータ一体型磁気軸受装置は、主軸SHをラジアル方向に対し複数の転がり軸受B1,B2で支持し、主軸SHにかかるアキシアル負荷と軸受予圧のどちらか一方または両方を、それぞれ磁気軸受となる電磁石DMと永久磁石PMとにより支持すると共に、主軸SHを回転駆動するモータM1を設けたものである。
【0020】
図2に示すように、このコンプレッサ・タービンユニット11は、例えば、コンプレッサ11aおよび膨張タービン11b内の空気により主軸SHに作用するアキシアル負荷を検出するセンサS1と、このセンサS1の出力に応じて電磁石DMによる支承力を制御するコントローラ17とを有する。このコントローラ17に設けられる磁気軸受用コントローラ17Bにより、センサS1の出力に応じて電磁石DMによる支承力が制御される。ただし、コントローラ17の制御対象は、この電磁石DMによる支承力だけに必ずしも限定されるものではない。例えば、前記モータM1の回転数をコントローラ17のモータコントローラ17Mにより制御することが可能である。
【0021】
主軸SHを支承する軸受B1,B2は、転がり軸受であって、アキシアル方向位置の規制機能を有するものであり、例えば深溝玉軸受が用いられる。深溝玉軸受の場合、両方向のスラスト支持機能を有し、内外輪のアキシアル方向位置を中立位置に戻す作用を持つ。これら2個の軸受B1,B2は、それぞれスピンドルハウジングHSにおけるコンプレッサ翼車11aaおよびタービン翼車11baの近傍に配置されている。軸受B2は、スピンドルハウジングHS内に嵌合した軸受ハウジング内に嵌合している。
【0022】
主軸SHは、中央部の大径部SHbと、両端部の小径部SHcとを有する段付き軸とされている。両側の軸受B1,B2は、その内輪が小径部SHcに圧入状態に嵌合し、片方の幅面が大径部SHbと小径部SHc間の段差面に係合する。
スピンドルハウジングHSにおける両側の軸受B1,B2よりも各翼車11aa,11ba側の部分は、内径面が主軸SHに近接する径に形成され、この内径面に非接触シールSL1,SL2が形成されている。非接触シールSL1,SL2は、スピンドルハウジングHSの内径面に複数の円周溝を軸方向に並べて形成したラビリンスシールとされている。
【0023】
熱交換器の要部構成について説明する。
本実施形態では、図3、図4に示すように、冷媒経路10における熱交換器のうち、放熱用熱交換器12および熱回収熱交換器13を、本願特有の向流形プレートフィン式熱交換器としている。以下の例では、前記放熱用熱交換器12を図3ないし図7と共に詳細に説明し、熱回収熱交換器13の構成部品については、放熱用熱交換器12の構成部品と同一の符号を付してその詳細説明を省略する。なお、これら放熱用熱交換器12および熱回収熱交換器13のいずれか一方を、本願特有の向流形プレートフィン式熱交換器としても良い。この場合であっても、本実施形態と略同様の効果を奏する。
【0024】
図3〜図5に示すように、放熱用熱交換器12は、冷媒経路10の冷媒を、別の冷媒つまり空気によって冷却するものである。この放熱用熱交換器12は、熱交換器本体12Aと、この熱交換器本体12Aの両端に設けられた導入ダクト12B,12Bとを有する。
一方の導入ダクト12Bの入口12Baから熱交換器本体12Aの一端に導入された空気である高温流体は、矢符D1にて示す方向に進み熱交換され、この熱交換器本体12Aの出口12Aaから排出された後、コンプレッサ・タービンユニット11のモータM1の冷却に供される。
他方の導入ダクト12Bの入口12Baから熱交換器本体12Aの他端に導入されたブロワ18(図1)入力による低温流体は、矢符D2にして示す方向に進み、この熱交換器本体12Aの別の出口12Abから大気開放される。
【0025】
前記熱交換器本体12Aは、伝熱フィン19と、プレート20と、断熱材21とを有する。この熱交換器本体12Aは、伝熱フィン19とプレート20とが多段に積層され、高温流体が流れるA段(図5)と低温流体が流れるB段(図5)とが規定され、かつA段とB段とが互い違いに積層されている。また、A段を流れる高温流体の流れ方向と、B段を流れる低温流体の流れ方向とが互いに逆向きとなっている。一方の導入ダクト12B内において高温流体が各A段に流入するように図示外の整流板等によって整流されている。他方の導入ダクト12B内においても低温流体が各B段に流入するように図示外の整流板等によって整流されている。
図4に示すように、各プレート20は、アルミニウム合金製で平面視略矩形の薄板状に形成されている。図4、図6に示すように、このプレート20の表面部20aに、伝熱フィン19が固着されている。すなわち伝熱フィン19は、アルミニウム合金製で薄肉の波板形状に形成され、波板部分のうちの、プレート20の表面部20aに当接する当接部19aが前記表面部20aにロウ付けされて成る。
【0026】
断熱材21は、プレート20および伝熱フィン19を通じた、流路流れ方向の熱伝導を遮断するものである。図4に示すように、断熱材21は、流路部分21aが複数のスリット状に開口した格子状で、この材料として例えばオーステナイト系ステンレス材が適用される。具体的には、日本工業規格(Japanese Industrial Standards;略称JIS)に規定される、例えばSUS304等のステンレス鋼板を断熱材材として適用し得る。ただし、断熱材材はSUS304に限定されるものではない。
【0027】
断熱材21は、熱交換器本体12Aの長手方向一定間隔おきに複数設けられる。すなわち各断熱材21は、熱交換器本体12Aにおける流体の流路流れ方向の途中箇所に設けられている。断熱材21は、各層のプレート20を流路流れ方向に分断した分断部22にそれぞれ介在する複数のプレート間介在桟部23と、これら複数のプレート間介在桟部23を両端で繋ぐ連結桟部23aとでなる格子状である。これらプレート間介在桟部23が一定間隔おきにプレート20に平行に配設され、プレート間介在桟部23とプレート間介在桟部23との間に、流体を通過させるスリット状の流路部分21aが形成されている。
【0028】
これらプレート間介在桟部23、連結桟部23aの端面部が、プレート20の一側縁部20bにロウ付けにより突合せ状に接合される。この場合において、前記プレート20等はアルミニウム合金製であり、このプレート20等と、オーステナイト系ステンレス材から成る断熱材21とを直接ロウ付けすることができない。このため、プレート20および断熱材21のいずれか一方または両方に、ロウ付け性を向上させる表面処理SF1を施している。この表面処理SF1としてニッケル−ボロン(Ni-B)系被膜を少なくともいずれか一方の接合面(図7では断熱材21側の接合面のみ)に施しておき、プレート間介在桟部23、連結桟部23aの端面部をこのNi-B系被膜を介してプレート20の一側縁部にロウ付けしている。このロウ材24として、アルミ−珪素(Al-Si)系ロウ材等を適用することができる。なお、被膜の表面処理方法としては、無電解めっき法、電解めっき法、蒸着法等種々な処理方法を適用し得る。
前記熱回収熱交換器13についても、上記説明した放熱用熱交換器12と同様の構成となっている。
【0029】
本実施形態の空気サイクル冷凍システムの作用について説明する。
なお、以下に示す温度および気圧の数値は、一応の目安となる一例である。図1に示すように、被冷却部Rの出口から冷媒経路10の取入口10aに0℃〜−60℃程度で1気圧の空気が流入する。取入口10aに流入した空気は、再生熱交換器13により、冷媒経路10中の空気の冷却に使用され、40℃まで昇温する。再生熱交換器13を経た40℃,1気圧の空気が、コンプレッサ・タービンユニット11のコンプレッサ11aにより、1.6〜2.2気圧まで圧縮され、この圧縮により110℃程度に昇温した状態で、放熱用熱交換器12のブロワ入力による空気によって40℃に冷却される。この40℃の空気は、モータM1(図2)の冷却に一部利用されて45℃程度に昇温した状態で、再生熱交換器13により−25℃まで冷却される。気圧はコンプレッサ11aから排出された1.6〜2.2気圧が維持される。再生熱交換器13で−25℃まで冷却された空気は、コンプレッサ・タービンユニット11の膨張タービン11bにより断熱膨張され、−55℃まで冷却されて庫内噴出口Nbから被冷却部Rに排出される。
【0030】
前記放熱用熱交換器12および熱回収熱交換器13において、構造材であるプレート20および伝熱フィン19の流体の流路流れ方向に沿った熱伝導が、断熱材21で遮断されて低減する。この断熱材21は流路部分21aをスリット状に開口させることで、流体を遮ることなく円滑に流すことが可能となる。よって、プレート20および伝熱フィン19として本実施形態のように熱伝導率の良いアルミニウム合金を用いた場合、高温側から低温側へのプレートおよび伝熱フィンを通した熱伝導による熱交換効率の低下を招くことなく、前記高温および低温の流体流路を流れる流体間の熱交換を効率良く行うことができる。
したがって、高温側から低温側への熱伝導に熱交換効率の低下を伴うことなく、従来のものより、プレート20、伝熱フィン19段数を増やし流体流れ方向の断面積を大きくし、かつ流路の長さを短くして、熱交換器自体の小型化を図ることができる。
【0031】
断熱材21は、各層のプレート20を流路流れ方向に分断した分断部22にそれぞれ介在する複数のプレート間介在桟部23と、これら複数のプレート間介在桟部23を両端で繋ぐ連結桟部23aとでなる格子状である。このように断熱材21を格子状として流路部分21aを開口させることで、流体を断熱材自体で遮ることなく円滑に流すことが可能となる。
前記プレート20および伝熱フィン19がアルミニウム合金製であるため、熱交換器の軽量化を図り、ロウ付け構造を容易に行うことができる。また、流体対流体の熱交換を高効率で行える。したがって、熱交換器本体12Aの部品材料および部品点数の低減を図ることができ、熱交換器の製作コストの低減を図ることが可能となる。
前述のように、前記断熱材21がオーステナイト系ステンレス材からなり、プレート20はアルミニウム合金製であるため、両者を直接ロウ付けすることができない。つまりステンレス鋼から成る断熱材21の母材表面は、不導態酸化被膜で覆われているため、Al-Si系ロウ材が濡れ難く、気密性を確保することができず流体が漏れる要因となる。
これに対して、本実施形態では、プレート20および断熱材21のいずれか一方または両方の接合面に、Ni-B系被膜等の表面処理SF1を施しているため、次のような効果を奏する。Ni-B系被膜中のボロン元素の液相拡散により、Al-Si系ロウ材の流動性が高まり、かつステンレス鋼とボロンとの反応によって、より密着性の高い接合体が得られる。よって、プレート20と断熱材21との接合面から、流体が不所望に漏れることを防止することができる。したがって、熱交換器本体12Aの熱交換を効率良く行うことが可能となる。
【0032】
次に、この発明の他の実施形態について説明する。
以下の説明においては、前述の実施形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0033】
この発明の他の実施形態に係る向流形プレートフィン式熱交換器として、図8に示すように、断熱材21はセラミックス材からなるものであっても良い。この場合、断熱材21の接合面を、例えば塩酸等からなる溶液によりエッチング処理SF2することで粗面化する。その後、前記断熱材21の接合面と、プレート20の接合面とをロウ付けにより接合している。これにより、断熱材21の接合面の表面積を増加させて同接合面とロウ材24との接触面積を増大させることができる。これと共に、接合面の粗面化した凹凸によるアンカー効果を発揮させることができ、断熱材21とロウ材24との密着強度を高めて、セラミックス材からなる断熱材21と、アルミニウム合金からなるプレート20等との接合強度を高くすることが可能となる。その他図1〜図6に示す実施形態と同様の作用、効果を奏する。
【0034】
この発明のさらに他の実施形態に係る向流形プレートフィン式熱交換器として、断熱材21は樹脂材からなるものであっても良い。この場合、断熱材21の接合面にニッケルめっきを施すことにより、断熱材21とロウ材24との密着強度を高め、断熱材21とプレート20等との接合強度を高くすることが可能となる。また、金型等により断熱材21の量産化が容易となり、製作コストの低減を図ることができる。その他図1〜図6に示す実施形態と同様の作用、効果を奏する。
【0035】
この発明のさらに他の実施形態に係る向流形プレートフィン式熱交換器として、図9に示すように、断熱材21とプレート20との間、または断熱材21と伝熱フィン19との間に、熱応力を緩和させる熱応力緩和材25を挟み込んだものであっても良い。熱応力緩和材25として、例えばニッケル等の軟質金属を適用し得る。ただし、ニッケルだけに限定されるものではない。断熱材21と、プレート20や伝熱フィン19との接合面には、線膨張係数の違いに起因して熱応力が集中し、接合状態に不具合を生じるおそれがある。前記熱応力緩和材25を設けた場合、接合面に熱応力が集中することを緩和し、この接合面の接合状態を好適に維持することができる。
【0036】
本実施形態では、向流形プレートフィン式熱交換器を、コンテナ用空気サイクル冷凍システムに用いているが、他の用途に用いても良い。例えば、冷凍倉庫や零度以下の低温室や空調等に、本願特有の前記向流形プレートフィン式熱交換器を適用しても良い。この場合においても、本実施形態と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の一実施形態に係るコンテナ用空気サイクル冷凍システムの系統図である。
【図2】同空気サイクル冷凍システムのコンプレッサ・タービンユニットの断面図である。
【図3】同空気サイクル冷凍システムの向流形プレートフィン式熱交換器を概略示す図である。
【図4】同空気サイクル冷凍システムの向流形プレートフィン式熱交換器の分解斜視図である。
【図5】同熱交換器の要部の断面図である。
【図6】同熱交換器の要部を拡大して示す拡大断面図である。
【図7】同熱交換器のプレートと断熱材との接合面を拡大して示す拡大断面図である。
【図8】この発明の他の実施形態に係る熱交換器のプレートと断熱材との接合面を拡大して示す拡大断面図である。
【図9】この発明のさらに他の実施形態に係る熱交換器のプレート等と断熱材との接合面を拡大して示す拡大断面図である。
【図10】従来例の熱交換器の斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
12…放熱用熱交換器
12A…熱交換器本体
13…熱回収用熱交換器
19…伝熱フィン
20…プレート
21…断熱材
23…プレート間介在桟部
23a…連結桟部
25…熱応力緩和材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレートと波板状の伝熱フィンとが交互に複数段に積層されて各層のプレート間に流体流路が構成された熱交換器本体を有し、前記各層の流体流路は、高温流体が流れる高温流体流路と、低温流体が流れる低温流体流路とに交互に分けられ、かつ高温流体流路と低温流体流路の流れ方向が互いに向かい合う向流形プレートフィン式熱交換器において、
前記熱交換器本体の流路流れ方向の複数箇所または1か所に、前記プレートおよび伝熱フィンを通じた流路流れ方向の熱伝導を遮断する断熱材を介在させたことを特徴とする向流形プレートフィン式熱交換器。
【請求項2】
請求項1において、前記断熱材は、各層のプレートを流路流れ方向に分断した分断部にそれぞれ介在する複数のプレート間介在桟部と、これら複数のプレート間介在桟部を両端で繋ぐ連結桟部とでなる格子状である向流形プレートフィン式熱交換器。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記プレートおよび伝熱フィンがアルミニウム合金製である向流形プレートフィン式熱交換器。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記断熱材がオーステナイト系ステンレス材からなる向流形プレートフィン式熱交換器。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記断熱材がセラミックス材からなる向流形プレートフィン式熱交換器。
【請求項6】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記断熱材が樹脂材からなる向流形プレートフィン式熱交換器。
【請求項7】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記断熱材とプレートとの間、または断熱材と伝熱フィンとの間に、熱応力を緩和させる熱応力緩和材を挟み込んだ向流形プレートフィン式熱交換器。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の向流形プレートフィン式熱交換器を用いたコンテナ用空気サイクル冷凍システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−270761(P2009−270761A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121229(P2008−121229)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】