説明

含フッ素ウレタン化合物およびその組成物

一般式:
[Rf−A−(X(OH))−(Y−OC(=O)NH−]I[−NHC(=O)O−Y[−NHC(=O)O−((ClCH−)XO)−R
(1)
[式中、Iはポリイソシアナート化合物からイソシアナート基を除いた基であり、Rfは炭素数2〜21パーフルオロアルキル基であり、Aは直接結合または炭素数1〜21の2価の有機基であり、XおよびXは3価の炭素数2〜5の直鎖状または分岐状の脂肪族基であり、Yは、0〜5個の炭素原子および0〜2個の窒素原子(但し、少なくとも1個の炭素原子または窒素原子が存在する。)ならびに少なくとも1個の水素原子を有する2価の有機基であり、Yは水酸基を有していてもよい1価の有機基であり、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基である。]で示される含フッ素ウレタン化合物は、高い撥水撥油性を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、新規な含フッ素ウレタン化合物、それを含む組成物および処理剤に関する。本発明の含フッ素ウレタン化合物は、種々の基材、例えば繊維製品を処理する(特に、表面処理する)のに適している。
【背景技術】
従来、種々の含フッ素化合物が提案されている。含フッ素化合物には、耐熱性、耐酸化性、耐候性などの特性に優れているという利点がある。含フッ素化合物の自由エネルギーが低い、すなわち、付着し難いという特性を利用して、含フッ素化合物は、例えば、撥水撥油剤および防汚剤として使用されている。
撥水撥油剤として使用できる含フッ素化合物が、例えば、特公昭63−60021号公報、特公平2−60702号公報、特公平2−60702号公報、特公昭63−45665号公報に開示されている。含フッ素化合物の例は、例えば、USP5414111、USP5565564、EP−A−383365、特表平7−505190号公報(WO93/17165)、WO97/25308、USP3547894、特表2001−525010(WO98/51727)、特表2001−525871号公報(WO98/51723)、特表2001−525872号公報(WO98/51726)、特表2001−525874号公報(WO98/51724)、特表2002−504938号公報(WO98/51725)にも開示されている。
これら含フッ素化合物は、充分な撥水撥油性を与えるものではなかった。
【発明の開示】
本発明の目的は、高い撥水撥油性を与える新規な含フッ素化合物を提供することにある。
本発明の新規な含フッ素化合物は、一般式:
[Rf−A−(X(OH))−(Y−OC(=O)NH−]I[−NHC(=O)O−Y[−NHC(=O)O−((ClCH−)XO)−R
(1)
[式中、Iはポリイソシアナート化合物からイソシアナート基を除いた基であり、
Rfは炭素数2〜21のパーフルオロアルキル基であり、
は直接結合または炭素数1〜21の2価の有機基であり、
およびXは3価の炭素数2〜5の直鎖状または分岐状の脂肪族基であり、
は、0〜5個の炭素原子および0〜2個の窒素原子(但し、少なくとも1個の炭素原子または窒素原子が存在する。)ならびに少なくとも1個の水素原子を有する2価の有機基であり、
は水酸基を有していてもよい1価の有機基であり、
は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であり、
aは0または1の数であり、
bは1〜20の数であり、
mは1〜15の数であり、
nおよびkは0〜14の数であり、
mとnとkの合計は2〜15の数である。]
で示される含フッ素ウレタン化合物である。
本発明は、一般式:
[Rf−A−(X(OD))−(Y−OC(=O)NH−]I[−NHC(=O)O−Y[−NHC(=O)O−((ClCH−)XO)−R
(2)
[式中、Iはポリイソシアナート化合物からイソシアナート基を除いた基であり、
Rfは炭素数2〜21のパーフルオロアルキル基であり、
は直接結合または炭素数1〜21の2価の有機基であり、
およびXは3価の炭素数2〜5の直鎖状または分岐状の脂肪族基であり、
は、活性水素反応性化合物が、水酸基の活性水素と反応して得られる残基であり、
は、0〜5個の炭素原子および0〜2個の窒素原子(但し、少なくとも1個の炭素原子または窒素原子が存在する。)ならびに少なくとも1個の水素原子を有する2価の有機基であり、
は水酸基を有していてもよい1価の有機基であり、
は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であり、
aは0または1の数であり、
bは1〜20の数であり、
mは1〜15の数であり、
nおよびkは0〜14の数であり、
mとnとkの合計は2〜15の数である。]
で示される含フッ素ウレタン化合物をも提供する。
本発明の含フッ素ウレタン化合物は、上記式(1)および(2)で示される化合物である。
以下、含フッ素ウレタン化合物(1)について説明する。
式(1)において、Iはポリイソシアナート化合物からイソシアナート基を除いた基である。ポリイソシアナート化合物は、少なくとも2個のイソシアナート基を有する化合物である。ポリイソシアナート化合物は、脂肪族系ポリイソシアナート、芳香族系ポリイソシアナート、これらポリイソシアナートの誘導体であってよい。
脂肪族系ポリイソシアナート、特に脂肪族系ジイソシアナートの例は、ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、水素化キシリレンジイソシアナート、水素化ジシクロヘキシルメタンジイソシアナートである。芳香族系ポリイソシアナート、特に芳香族系ジイソシアナートの例は、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)、トリジンジイソシアナート、ナフタレンジイソシアナートである。
ポリイソシアナート化合物は、ジイソシアナート、ポリメリックMDI(ジフェニルメタンジイソシアナート)、変性イソシアナート(特に、ジイソシアナートの3量体、または多価アルコールとジイソシアナートのアダクト体)であることが好ましい。
変性イソシアナートの例は、ウレタン変性ジイソシアナート、アロファネート変性ジイソシアナート、ビウレット変性ジイソシアナート、イソシアヌレート変性ジイソシアナート、カルボジイミド変性ジイソシアナート、ウレトニミン変性ジイソシアナート、アシル尿素ジイソシアナートである。
Rfは炭素数2〜21パーフルオロアルキル基である。Rfの炭素数は、例えば3〜12、特に4〜8であってよい。
は直接結合または炭素数1〜21の2価の有機基である。A基の例は、
式:
−(CH
−CONR11−R12
−CHC(OH)HCH
−CHC(OCOR13)HCH−または
−O−Ar−CH
[式中、R11は水素または炭素数1〜10のアルキル基であり、
12は炭素数1〜10のアルキレン基であり、
13は水素またはメチル基であり、
Arは置換基を有することもあるアリーレン基(炭素数例えば6〜20)であり、
pは1〜10の整数である。]
である。Aは、特に、炭素数1〜5のアルキレン基であってよい。
およびXは3価の炭素数2〜5の直鎖状または分岐状の脂肪族基である。
−(X(OH))−および−(X(OH))−の例は、−CHCH(OH)−、−CH(OH)CH−、−CHCHCH(OH)−、−CHCH(OH)CH−、−CH(OH)CH−CH−、−CH(OH)−である。
は、0〜5個の炭素原子および0〜2個の窒素原子(但し、少なくとも1個の炭素原子または窒素原子が存在する。)ならびに少なくとも1個の水素原子を有する2価の有機基である。一般に、Yはスペーサー化合物から活性原子(例えば、水素原子およびハロゲン原子(特に、塩素原子および臭素原子))を除いた後に残る2価の有機基である。Yは、例えば、式:
−(NH)−(CH−(NH)
[pおよびrは0または1であり、qは、0〜5、例えば1〜5の数である。]
で示される。Yの例は、−CH−、−(CH−、−(CH−、−NH−(CH−NH−、−NH−(CH−NH−である。
は水酸基を有していてもよい1価の有機基である。Yは、例えば、式:
H−(O)−(CH
[sは0または1、tは1〜5の数である。]
で示される。Yの例は、CH−、H(CH−、H(CH−、HO−CH−、HO−(CH−、HO−(CH−である。
は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基である。アルキル基であるRの例は、メチル、エチル、プロピルである。
bは1〜20の数である。bは、例えば2〜15、特に2〜10であってよい。
mは1〜15の数である。mは、例えば2〜10、特に2〜3であってよい。
nおよびkは0〜14の数である。nおよびkは、例えば0〜10、特に1〜8であってよい。
mとnとkの合計は2〜15の数である。mとnとkの合計は、例えば2〜10、特に2〜3であってよい。
本発明の含フッ素ウレタン化合物(1)の具体例は、以下のとおりである。


[式中、Rf、Yおよびbは上記と同意義である。]
本発明の含フッ素ウレタン化合物(1)は、例えば、ポリイソシアナート化合物を、
式:
Rf−A−(X(OH))−(Y−OH (i)
で示されるジオールを、場合により存在する、式:
HO−Y (ii)
で示されるアルコール、および式:
HO−((ClCH−)XO)−R (iii)
で示される含塩素エーテルアルコールと、反応させることによって得ることができる。
[式中、Rf、A、X、X、Y、Y、R、aおよびbは上記と同意義である。]
この反応において、ポリイソシアナート化合物のイソシアナート基1モルに対して、ジオール(i)とアルコール(ii)と含塩素エーテルアルコール(iii)との合計モル数を0.5〜2.0、特に0.8〜1.5モルとすることが好ましい。アルコール(ii)と含塩素エーテルアルコール(iii)は、用いても用いなくてもどちらでもよい成分である。この反応は、溶媒の存在下、0〜150℃の温度で、0.1〜10時間行うことが好ましい。溶媒は、イソシアネートに対して不活性である有機溶媒である。溶媒の例は、炭化水素、ケトン、ハロゲン化炭化水素(例えば、含塩素炭化水素)である。溶媒の量は、反応体100重量部に対して、20〜500重量部、例えば100〜300重量部であってよい。
反応の際には、触媒を用いることが好ましい。触媒の例は、アミン(例えば、モノアミン、ジアミン、トリアミン、アルコールアミン、エーテルアミン)、有機金属(例えば、有機酸の金属塩(例示すれば、ジ−n−ブチルスズジラウレート))である。触媒の量は、反応体100重量部に対して、0.001〜0.5重量部、例えば0.01〜0.3重量部であってよい。
ジオール(i)は、例えば、式:

[式中、Rf、AおよびXは上記と同意義である。]
で示される含フッ素環状エーテル化合物を加水分解した後に、必要によりスペーサー化合物を反応させることによって得ることができる。
含フッ素環状エーテル化合物は、例えば、オキシラン化合物またはオキセタン化合物である。
スペーサー化合物は、活性原子(例えば、水素原子、塩素原子または臭素原子)を有する化合物である。スペーサー化合物の例は、ジアミン、ハロゲン化炭化水素などである。スペーサー化合物の具体例は、アルキルジアミン(例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン)、両方の末端にハロゲン原子を有する直鎖状炭化水素である。
アルコール(ii)は、一価のアルコールであってもよいし、多価(例えば、2〜5価)アルコールであってよい。アルコール(ii)の例は、脂肪族アルコール、芳香族アルコールである。アルコール(ii)の具体例は、エタノール、プロパノール、ジトリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、フェノール、ヒドロキシトルエンである。
含塩素エーテルアルコール(iii)は、例えば、式:

[式中、Xは上記と同意義である。]
で示される含塩素環状エーテル化合物を重合することによって得られる。含塩素環状エーテル化合物の例は、エピクロルヒドリンである。
以下、含フッ素ウレタン化合物(2)について説明する。
式(2)において、Dは、活性水素反応性化合物が、水酸基の活性水素と反応して得られる残基である。活性水素反応性化合物は、例えば、イソシアネート化合物(特に、R−NCOで示されるモノイソシアネート[Rは有機基(例えば、炭化水素基)である。])、エポキシ化合物、カルボン酸化合物である。
本発明の含フッ素ウレタン化合物(2)の具体例は、以下のとおりである。

[式中、Rfは炭素数2〜21パーフルオロアルキル基、Rはイソシアナート化合物から1つのイソシアナート基を除いた基である。]
本発明の含フッ素ウレタン化合物(2)は、ジオール(i)に代えて、式:
Rf−A−(X(OD))−(Y−OH (i’)
で示されるジオールを用いること以外は、含フッ素ウレタン化合物(1)と同様の手順で製造できる。
[式中、Rf、A、X、D、Y、Yおよびaは上記と同意義である。]
ジオール(i’)は、ジオール(i)の2級水酸基を修飾(例えば、アセチル化、ウレタン化することによって製造できる。修飾剤の例は、カルボン酸、イソシアナート(R−NCO)[Rは有機基(例えば、炭化水素基)である。]である。
本発明の含フッ素ウレタンは、組成物の中に含まれていてよい。組成物は、溶液またはエマルションの形態であってよい。溶液型の組成物は、含フッ素ウレタン化合物および溶媒を含んでなる。溶液型組成物における溶媒(特に、有機溶媒)の例は、炭化水素、ケトン、ハロゲン化炭化水素(例えば、含塩素炭化水素)である。エマルション型の組成物は、含フッ素ウレタン化合物、乳化剤および水を含んでなる。エマルション型の組成物は、さらに、有機溶媒、特に、含フッ素ウレタン化合物を溶解する有機溶媒を含んでよい。乳化剤は、ノニオン性、イオン性(例えば、カチオン性、アニオン性、両性)のいずれであってもよい。
組成物において、含フッ素ウレタン化合物の量は、0.1〜70重量%、例えば5〜30重量%であってよい。エマルション型の組成物において、含フッ素ウレタン化合物100重量部に対して、乳化剤の量は、0.1〜30重量部、例えば2〜10重量部、水の量は、30〜99.9重量部、例えば70〜95重量部、有機溶媒の量は、10〜200重量部、例えば50〜100重量部であってよい。
本発明の含フッ素ウレタン化合物は、種々の物品の表面を処理する表面処理剤として使用でき、物品の表面を改質し、例えば、撥水撥油性を与える。
本発明の含フッ素ウレタン化合物は優れた撥水撥油性を有し、しかも分子安定性に富み、高い耐久性を有する。そのため、含フッ素ウレタン化合物を用いて処理を行った場合、処理物は長期にわたり優れた性質を維持できる。
処理を行うに当たっては表面処理剤の形態に応じた任意方法が採られる。例えば水性乳濁液や溶剤溶液型の表面処理剤を用いた場合は浸漬塗布等の方法により被処理物の少なくとも表面に処理液を付着させ、乾燥する方法がとられる。乳濁液型のものでは、乾燥後、処理剤微粒子の連続化及び被処理剤への溶着、浸透等の目的の為にキュアリングを行うことが望ましい。これによって、大きな撥水撥油効果を期待できる。溶剤型のものでは乾燥によって被処理物上に被膜が形成されるためにキュアリングや洗浄を行わなくとも充分に大きな撥水撥油性を期待できる利点がある。必要ならばさらにキュアリングを行ってもよい。乾燥温度は任意に選ばれるが乳濁液型の場合常温でもよく、50〜120℃の熱風で乾燥させるのが効率的である。また、溶剤型の場合は50〜150℃程度の温度で乾燥させることが適当である。
本発明の表面処理剤で処理される被処理物としては、種々の物が挙げられる。被処理物の例は、繊維製品、ガラス、紙、木、皮革、毛皮、石綿、レンガ、セメント、金属および酸化物、窯業製品、プラスチック、塗面およびプラスターなどである。
本発明において、処理される物品は、繊維製品、例えばカーペットであることが好ましい。繊維製品としては種々の例を挙げることができる。例えば、綿、麻、羊毛、絹などの動植物性天然繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンなどの合成繊維、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維などの無機繊維、あるいはこれらの混合繊維が挙げられる。
繊維製品は、繊維、糸、布等の形態のいずれであってもよい。本発明の方法に従ってカーペットを処理する場合に、繊維または糸を処理した後にカーペットを形成してもよいし、あるいは形成されたカーペットを処理してもよい。表面処理剤は、含フッ素ウレタン化合物を0.02〜30重量%、好ましくは0.02〜10重量%に希釈した状態で含有することが可能である。
以下、本発明を具体的に説明する。
合成例1
含フッ素ジオールの合成
2L四ツ口フラスコに、

の含フッ素エポキシ750g(1.57mol)、酢酸179ml(3.14mol)およびトリエチルアミン12ml(0.09mol)を仕込み、撹拌下、内温95〜100℃で10時間反応しアセチル化体とした。GC分析で転化率99%、純度94.5%であることを確認した。
室温まで冷却後メタノール450mlに溶解させた水酸化カリウム135g(1.92mol)を加え2時間、室温で攪拌した。GC分析で転化率94%、純度89%であることを確認した。
その後反応液に2.3Lの水を加え析出する固体をろ過し、さらに同量の水で同じ操作を行った。析出した固体を乾燥後、300mlのエタノールに溶解後、活性炭0.75gを加え、その後活性炭をろ過後、濾液を2.3Lのジクロロメタンに注ぎ析出した結晶をろ過し目的生成物(含フッ素ジオール):

を得た(収量609g 収率89%)。
純度はGC分析で純度99%であることを確認した。構造はH NMRおよび19F NMRによって確認した。
製造例1
フッ素含有ウレタン(1)の製造
合成例1で得た含フッ素ジオール20.1g(40.6mmol)、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.80gおよびブチルイソブチルケトン35gをスターラー、温度計、窒素導入管、冷却管および滴下ロートを装着した200ml四ツ口フラスコに入れ、撹拌を行った。その後、イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアナート:

(住化バイエルウレタン株式会社製スミジュールN−3300、イソシアナート含量は21.8%)7.79g(40.6mmol)をメチルイソブチルケトン10gに溶解したものを滴下ロートを用いて30分かけて、滴下した。滴下終了後、1時間反応させ、赤外分光光度計により、イソシアナート基が残存していないことを確認した。反応は、75℃に制御し、窒素気流下で行った。反応終了後、有機溶媒をエバポレートし、白色結晶状の生成物:

を得た(収量25.3g,収率91%)。得られた生成物の構造はH NMRおよび19F NMRによって確認した。
製造例2
フッ素含有ウレタン(2)の製造
合成例1で得た含フッ素ジオール20.1g(40.6mmol)、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.80gおよびブチルイソブチルケトン35gをスターラー、温度計、窒素導入管、冷却管および滴下ロートを装着した200ml四ツ口フラスコに入れ、撹拌を行った。その後、ビュレット変性ヘキサメチレンジイソシアナート:
OCN(CHN[CONH(CHNCO](住化バイエルウレタン株式会社製スミジュールN−3200、イソシアナート含量は23%)7.43g(40.6mmol)をメチルイソブチルケトン10gに溶解したものを滴下ロートを用いて30分かけて、滴下した。滴下終了後、1時間反応させ、赤外分光光度計により、イソシアナート基が残存していないことを確認した。反応は、75℃に制御し、窒素気流下で行った。反応終了後、有機溶媒をエバポレートし、白色結晶状の生成物:

を得た(収量24.6g,収率89%)。得られた生成物の構造はH NMRおよび19F NMRによって確認した。
比較製造例1
フッ素含有ウレタン(3)の製造
製造例1で使用したのと同様のイソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアナート(住化バイエルウレタン株式会社製、スミジュールN−3300)20.75g(107.7mmol)、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.15gおよびブチルイソブチルケトン57gをスターラー、温度計、窒素導入管、冷却管および滴下ロートを装着した200ml四ツ口フラスコに入れ、撹拌を行った。その後、含フッ素アルコール(C17CHCHOH)50g(107.8mmol)をメチルイソブチルケトン50gに溶解したものを滴下ロートを用いて30分かけて、滴下した。滴下終了後、4時間反応させ、赤外分光光度計により、イソシアナート基が残存していないことを確認した。反応は、75℃に制御し、窒素気流下で行った。反応終了後、有機溶媒をエバポレートし、白色結晶状の生成物を得た(収量68g,収率97%)。得られた生成物の構造はH NMRおよび19F NMRによって、

であることを確認した。
比較製造例2
フッ素含有ウレタン(4)の製造
製造例2で使用したのと同様のビュレット変性ヘキサメチレンジイソシアナート(住化バイエルウレタン株式会社製スミジュールN−3200)19.67g(107.7mmol)、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.15gおよびブチルイソブチルケトン54gをスターラー、温度計、窒素導入管、冷却管および滴下ロートを装着した200ml四ツ口フラスコに入れ、撹拌を行った。その後、含フッ素アルコール(C17CHCHOH)50g(107.8mmol)をメチルイソブチルケトン50gに溶解したものを滴下ロートを用いて30分かけて、滴下した。滴下終了後、3時間反応させ、赤外分光光度計により、イソシアナート基が残存していないことを確認した。反応は、75℃に制御し、窒素気流下で行った。反応終了後、有機溶媒をエバポレートし、白色結晶状の生成物:

を得た(収量68g,収率98%)。得られた生成物の構造はH NMRおよび19F NMRによって確認した。
撥水性試験
撥剤処理済カーペットを温度21℃、湿度65%の恒温恒湿機に4時間以上保管する。試験液(イソプロピルアルコール(IPA)、水、及びその混合液、表1に示す)も温度21℃で保存したものを使用する。試験は温度21℃、湿度65%の恒温恒湿室で行う。試験液をカーペット上にマイクロピペッターで50μl静かに滴下し、10秒間放置後、液滴がカーペット上に4滴または5滴残っていれば、その試験液をパスしたものとする。撥水性は、パスした試験液のイソプロピルアルコール(IPA)含量(体積%)の最大なものをその点数とし、撥水性不良なものから良好なレベルまでFail、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10の12段階で評価する。

撥油性試験
撥剤処理済カーペットを温度21℃、湿度65%の恒温恒湿機に4時間以上保管する。試験液(表2に示す)も温度21℃で保存したものを使用する。試験は温度21℃、湿度65%の恒温恒湿室で行う。試験液をカーペット上にマイクロピペッターで5滴(50μl)静かに滴下し、30秒間放置後、液滴がカーペット上に4滴または5滴残っていれば、その試験液をパスしたものとする。撥油性は、パスした試験液の最高点数とし、撥油性不良なものから良好なレベルまでFail、1、2、3、4、5、6、7、及び8の9段階で評価する。

防汚性試験
AATCC Test Method 123−1989に準じて行った。
防汚性の評価は、変退色用グレースケールを用いて防汚性試験前のカーペット試料と比較し、変退色の著しいものから全く変退色のないレベルまで1、1−2、2、2−3、3、3−4、4、4−5及び5の9段階で評価する。
【実施例1】
製造例1で合成した含フッ素ウレタン化合物(1)5gとメチルイソブチルケトン(MIBK)5gを混合し、75℃〜80℃で10分間加温した。別容器に純水14.4g、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(ノニオン性乳化剤)0.5g及びα−オレフィンスルホン酸ナトリウム(アニオン性乳化剤)0.1gを混合し、75℃〜80℃で10分間加温する。この二つの液を混合し、超音波乳化機で乳化した。
この乳化液2.5gに水97.5gを加えて全量100gとし、処理液とした。この処理液をカーペット(20cm×20cm、ナイロン6、カットパイル(密度32oz/yd))にWPU(wet pick up、カーペット100gに対して20gの液がのっている場合にWPU20%)量が20%となるようスプレー処理した。次に熱キュアを120℃で10分間行った。
次に撥水性試験、撥油性試験、防汚性試験を実施した。結果を表3に示す。
【実施例2】
実施例1に準じて、製造例2で合成した含フッ素ウレタン化合物(2)を乳化した。この乳化液2.5gに水97.5gを加えて全量100gとし、処理液とした。実施例1に準じてカーペットに撥剤を処理した。
次に撥水性試験、撥油性試験、防汚性試験を実施した。結果を表3に示す。
比較例1
実施例1に準じて、比較製造例1で合成した含フッ素ウレタン化合物(3)を乳化した。この乳化液2.5gに水97.5gを加えて全量100gとし、処理液とした。実施例1に準じてカーペットに撥剤を処理した。
次に撥水性試験、撥油性試験、防汚性試験を実施した。結果を表3に示す。
比較例2
実施例1に準じて、比較製造例2で合成した含フッ素ウレタン化合物(4)を乳化した。この乳化液2.5gに水97.5gを加えて全量100gとし、処理液とした。実施例1に準じてカーペットに撥剤を処理した。
次に撥水性試験、撥油性試験、防汚性試験を実施した。結果を表3に示す。

【発明の効果】
本発明の含フッ素ウレタン化合物は、表面処理剤の成分として、種々の優れた性質を比処理物に与える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:
[Rf−A−(X(OH))−(Y−OC(=O)NH−]I[−NHC(=O)O−Y[−NHC(=O)O−((ClCH−)XO)−R
(1)
[式中、Iはポリイソシアナート化合物からイソシアナート基を除いた基であり、
Rfは炭素数2〜21のパーフルオロアルキル基であり、
は直接結合または炭素数1〜21の2価の有機基であり、
およびXは3価の炭素数2〜5の直鎖状または分岐状の脂肪族基であり、
は、0〜5個の炭素原子および0〜2個の窒素原子(但し、少なくとも1個の炭素原子または窒素原子が存在する。)ならびに少なくとも1個の水素原子を有する2価の有機基であり、
は水酸基を有していてもよい1価の有機基であり、
は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であり、
aは0または1の数であり、
bは1〜20の数であり、
mは1〜15の数であり、
nおよびkは0〜14の数であり、
mとnとkの合計は2〜15の数である。]
で示される含フッ素ウレタン化合物。
【請求項2】
I基を構成するポリイソシアナート化合物が、脂肪族系ポリイソシアナート、芳香族系ポリイソシアナート、これらポリイソシアナートの誘導体である請求項1に記載の含フッ素ウレタン化合物。
【請求項3】
I基を構成するポリイソシアナート化合物が、ジイソシアナート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアナート、変性イソシアナートである請求項1に記載の含フッ素ウレタン化合物。
【請求項4】
基が、式:
−(CH
−CONR11−R12
−CHC(OH)HCH
−CHC(OCOR13)HCH−または
−O−Ar−CH
[式中、R11は水素または炭素数1〜10のアルキル基であり、
12は炭素数1〜10のアルキレン基であり、
13は水素またはメチル基であり、
Arは置換基を有することもあるアリーレン基(炭素数例えば6〜20)であり、
pは1〜10の整数である。]
である請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
一般式:
[Rf−A−(X(OD))−(Y−OC(=O)NH−]I[−NHC(=O)O−Y[−NHC(=O)O−((ClCH−)XO)−R
(2)
[式中、Iはポリイソシアナート化合物からイソシアナート基を除いた基であり、
Rfは炭素数2〜21のパーフルオロアルキル基であり、
は直接結合または炭素数1〜21の2価の有機基であり、
およびXは3価の炭素数2〜5の直鎖状または分岐状の脂肪族基であり、
は、活性水素反応性化合物が、水酸基の活性水素と反応して得られる残基であり、
は、0〜5個の炭素原子および0〜2個の窒素原子(但し、少なくとも1個の炭素原子または窒素原子が存在する。)ならびに少なくとも1個の水素原子を有する2価の有機基であり、
は水酸基を有していてもよい1価の有機基であり、
水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であり、
aは0または1の数であり、
bは1〜20の数であり、
mは1〜15の数であり、
nおよびkは0〜14の数であり、
mとnとkの合計は2〜15の数である。]
で示される含フッ素ウレタン化合物。
【請求項6】
請求項1または請求項5に記載の含フッ素ウレタン化合物、乳化剤および水を含んでなる組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の組成物を含んでなる処理剤。
【請求項8】
請求項7に記載の処理剤で繊維製品を処理する方法。

【国際公開番号】WO2004/013089
【国際公開日】平成16年2月12日(2004.2.12)
【発行日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−525834(P2004−525834)
【国際出願番号】PCT/JP2003/009903
【国際出願日】平成15年8月5日(2003.8.5)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】