説明

含硫プロアントシアニジンオリゴマー組成物及びその製造方法

植物中のプロアントシアニジン類を生体の腸管を通じた吸収が容易な程度に低分子量化した含硫プロアントシアニジンオリゴマーの製造方法を提供し、得られた含硫プロアントシアニジンオリゴマーを有効成分とする活性酸素種の生成等が原因となる各種生活習慣病、脳疾病の治療・予防、老化の予防に有用な健康食品組成物及び医薬品組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は含硫プロアントシアニジンオリゴマー及びその組成物、それらの製造方法及び用途に関する。さらに詳しく言えば、植物中のプロアントシアニジン類を生体の腸管を通じた吸収が容易な程度に低分子量化する含硫プロアントシアニジンオリゴマーの製造方法、その方法で得られる含硫プロアントシアニジンオリゴマーを有効成分とする、活性酸素種の生成等が原因となる各種生活習慣病、脳疾病の治療・予防に有用な健康食品組成物及び医薬品組成物を提供するものである。
【背景技術】
食生活の変化による脂肪摂取の過多や、環境の変化、オゾン層破壊等による紫外線への暴露量の増加、環境汚染物質の増加等により、高脂血症、高コレステロール血症、高血圧、糖尿病、癌等のいわゆる生活習慣病が増加し、さらにアレルギー、痴呆症などの脳疾患の患者も増加しつつある。今後、高齢化社会の進展と共に痴呆、アルツハイマー症候群等の患者の増加も危惧されるが、これらの要因に生体内で生成する活性酸素種の関与が指摘されている(Bioorganic & Medicinal Chemistry,10(2002),2497−2509)。しかし活性酸素種の完全な生成抑制ないし制御技術は開発されていないため、現状では生活習慣病や脳疾患等に有効・確実な予防・治療技術は十分に確立されていない。
植物に存在して生理活性を示す天然物質、特にポリフェノール類の化合物に近年関心が集中している。ポリフェノール類は一般に茶、野菜、果実、ハーブ類等に含まれ、食品あるいは嗜好品として長期間の摂取経験のある、副作用のない治療・予防剤として期待できるものである。
ポリフェノール化合物は植物の二次代謝産物で、植物界に普遍的、かつ多量に存在し、多彩な生理活性を示すことが知られ、古くは薬学、植物化学等の分野で、近年も健康食品分野で注目を集めている。例えば、茶のポリフェノール、特にカテキン類は、抗菌、抗ウイルス、抗突然変異、抗酸化、血圧上昇抑制、血中コレステロール低下、抗う蝕、抗アレルギー、腸内フローラ改善、消臭など、広範囲の生理活性を有することが知られている。
ポリフェノールの中でもプロアントシアニジン類は幅広い植物に含まれるポリフェノールである。プロアントシアニジン類が、前述のような多彩な生理活性を示すには、プロアントシアニジン化合物が腸管を通じて生体内に吸収される必要がある。しかしプロアントシアニジン類の分子量は一般に数千乃至数万のオーダーと言われている。このような分子の大きな物質は腸管を通じての吸収は困難で、摂取しても生体に吸収されずに利用されない事が多い。
本発明者らも、ソバ種子から抽出したポリフェノールが脂質代謝改善、脳機能改善等の作用を有することを見出して特許出願しているが(特開平10−218786号公報)、その有効成分はプロアントシアニジンのポリマーであり、生体への吸収の面では必ずしも十分とは言えなかった。
【発明の開示】
本発明は、腸管を通じて生体に吸収され難いプロアントシアニジン化合物を吸収され易い形に変え、プロアントシアニジン化合物の示す多彩な生理活性効果を十分に発揮させることで生体の抗酸化活性を向上させ、活性酸素種が原因とされる生活習慣病や脳疾病の治療・予防に有用な医薬品、健康食品等を提供することにある。
本発明者らは、プロアントシアニジン類を含む植物またはその抽出物とSH基含有化合物の反応で得られる低分子の含硫プロアントシアニジンオリゴマーは、容易に腸管を通じて生体に吸収され、経口摂取により各種の生理活性を示すことを知見して本発明を完成した。
すなわち、本発明は医薬品や健康食品組成物として有用な以下の含硫プロアントシアニジンオリゴマーとその組成物、それらの製造方法に関する。
1.プロアントシアニジン類を含む植物またはその抽出物をSH基含有化合物と反応させた反応液を濃縮、乾燥して得られる含硫プロアントシアニジンオリゴマーを主要成分として含有する組成物。
2.オリゴマーがプロアントシアニジンの2〜5量体である前記1記載の含硫プロアントシアニジンオリゴマー組成物。
3.プロアントシアニジン類を含む植物が、果菜類、茶類、ハーブ・スパイス類、木材・樹皮類の一種以上から選ばれる前記1に記載の含硫プロアントシアニジンオリゴマー組成物。
4.SH基含有化合物が、システイン、シスチン、グルタチオン、SH基含有ペプチドおよびこれらの塩類の少なくとも1種から選択される前記1記載の含硫プロアントシアニジンオリゴマー組成物。
5.生活習慣病の治療及び/または予防用の医薬組成物である前記1乃至4のいずれかに記載の組成物。
6.老化の予防用の医薬組成物である前記1乃至4のいずれかに記載の組成物。
7.生活習慣病の改善及び/または予防用の健康食品組成物である前記1乃至4のいずれかに記載の組成物。
8.老化の予防用の健康食品組成物である前記1乃至4のいずれかに記載の組成物。
9.プロアントシアニジン類を含む植物またはその抽出物をSH基含有化合物と反応させて得られる含硫プロアントシアニジンオリゴマーを含む成分を分画して得られる含硫プロアントシアニジンオリゴマー。
10.オリゴマーがプロアントシアニジンの2〜5量体である前記9記載の含硫プロアントシアニジンオリゴマー。
11.プロアントシアニジン類を含む植物またはその抽出物をSH基含有化合物と酸性条件下で反応させ、反応液を濃縮、乾燥することを特徴とする含硫プロアントシアニジンオリゴマー組成物の製造方法。
12.プロアントシアニジン類を含む植物またはその抽出物をSH基含有化合物と酸性条件下で反応させ、反応液を濃縮し、分画処理することを特徴とする含硫プロアントシアニジンオリゴマーの製造方法。
13.プロアントシアニジン類を含む植物が、果菜類、茶類、ハーブ・スパイス類、木材・樹皮類の一種以上から選ばれる前記11または12記載の製造方法。
14.SH基含有化合物が、システイン、シスチン、グルタチオン、SH基含有ペプチドおよびこれらの塩類の少なくとも1種から選択される前記11または12記載の製造方法。
15.無機酸、有機酸またはこれらの両者を用いて酸性条件とする前記11または12記載の製造方法。
16.塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、クエン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸から選ばれる少なくとも1種を使用する前記15記載の製造方法。
17.式(4)

で示されるプロアントシアニジン化合物。
18.式(5)

で示されるプロアントシアニジン化合物。
19.式(6)

で示されるプロアントシアニジン化合物。
20.式(7)

で示されるプロアントシアニジン化合物。
21.式(8)

で示されるプロアントシアニジン化合物。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明の実施例1による含硫プロアントシアニジンオリゴマー組成物(分画前の粉末;物質1)及びその原料(ブドウ種子ポリフェノール抽出物:比較物質1)を投与したマウスの血清中LPO濃度を示すグラフであり、(A)は低用量投与群、(B)は高用量投与群についての結果を示す。
図2は本発明の実施例1による含硫プロアントシアニジンオリゴマー組成物(物質1)及びその原料(比較物質1)を投与したマウスの肝臓(A)、腎臓(B)及び脳(C)中のLPO濃度を示すグラフである。
図3(A)はLPO濃度初期値正常者、(B)はLPO濃度初期値異常者について、各々実施例1の本発明組成物(物質1)及び実施例1の原料(比較物質1)を投与したヒトの血清中のLPO濃度を示す。
図4(A)はSOD濃度初期値正常者、(B)はSOD濃度初期値異常者について、各々実施例1の本発明組成物(物質1)及び実施例1の原料(比較物質1)を投与したヒトの血清中のSOD活性濃度を示す。
図5は実施例1における本発明物質1及び比較物質1のベータアミロイドによるPC−12細胞死に対する抑制効果を示すグラフである。
図6(A)及び(B)は、実施例1における本発明物質1及び比較物質1のベータアミロイドによるミトコンドリア膜電位の低下に対する抑制効果を示す写真及びグラフである。
図7(A)及び(B)は、本発明物質1及び比較物質1のベータアミロイドによるPC−12細胞内への活性酸素種蓄積に対する減少効果を示す写真及びグラフである。
図8は本発明物質1及び比較物質1の細胞内抗酸化活性効果を示すグラフである。
図9は本発明物質1及び比較物質1のベータアミロイドによる細胞膜過酸化抑制効果を示すグラフである。
図10は本発明物質1及び比較物質1のSTZ誘発糖尿病マウスに対する空腹時血糖値の低減効果を示すグラフである。
図11は本発明物質1及び比較物質1のSTZ誘発糖尿病マウスに対する尿糖値の低減効果を示すグラフである。
図12は本発明物質1及び比較物質1のSTZ誘発糖尿病マウスに対する尿タンパク値の低減効果を示すグラフである。
図13は本発明物質1及び比較物質1のSTZ誘発糖尿病マウスに対する血中PLO値の低減効果を示すグラフである。
図14は本発明物質1及び比較物質1のSTZ誘発糖尿病マウスに対する血中TEAC値(抗酸化能)の上昇効果を示すグラフである。
図15は本発明物質1の臭素酸カリウム誘発ラット急性腎障害モデルに対する血中ポリフェノール濃度の上昇効果を示すグラフである。
図16は本発明物質1の臭素酸カリウム誘発ラット急性腎障害モデルに対する血中抗酸化能(TEAC)の上昇効果を示すグラフである。
図17は本発明物質1の臭素酸カリウム誘発ラット急性腎障害モデルに対する血中過酸化脂質濃度の上昇抑制効果を示すグラフである。
図18は本発明物質1の臭素酸カリウム誘発ラット急性腎障害モデルに対する血中尿素窒素濃度の上昇抑制効果を示すグラフである。
図19は本発明物質1の臭素酸カリウム誘発ラット急性腎障害モデルに対する血中クレアチニン濃度の上昇抑制効果を示すグラフである。
発明の詳細な説明
本発明の含硫オリゴマーは通常、プロアントシアニジンの2量体から5量体程度であり、分子量は通常1500以下である。
プロアントシアニジン類を含む植物またはその抽出物とSH基含有化合物との反応は酸性条件下で行うのが好ましい。酸としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸類、あるいは酢酸、クエン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸等の有機酸類から選ばれる適宜の酸が0.1N〜1.0N程度、好ましくは0.5Nの濃度で用いられる。
なお、本明細書において、プロアントシアニジンとはカテキン重合体を指し、具体的には、カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、ガロカテキン、ガロカテキンガレートまたはこれらを構成単位とするものが含まれる。
プロアントシアニジン類を含む植物には、カキ、ナシ、ブドウ、イチゴ、バナナ、アボカド、コケモモ、レンコン、ソバ等の果菜類、緑茶、紅茶、ウーロン茶等の茶類一般、ハーブ・スパイス類、木材・マツ樹皮等広範・多種に亘る植物が含まれる。これらのプロアントシアニジン類を含む植物やその抽出物(搾汁、果汁、野菜汁を含む)が好適に用いられる。
本発明で用いられるSH基含有化合物としては、システイン、シスチン、グルタチオン、SH含有ペプチドまたはこれらの塩類等が挙げられるが、その他にイオウを含むネギ、ニンニク等の天然物も挙げられる。メルカプタン類も使用可能ではあるが、本発明の含硫プロアントシアニジンオリゴマーが食品、医薬品組成物に利用される点を考慮すると、SH基含有化合物としては食品、医薬品に使用が許されている物質が好ましい。
プロアントシアニジン類を含む植物またはその抽出物とSH基含有化合物との反応は、室温〜80℃、好ましくは40〜60℃で数時間乃至1週間、好ましくは24〜48時間行われる。
反応溶媒には、水、メタノール、エタノール等の1種類または2種以上の混合物が用いられるが、食品、医薬品等の用途を考慮すれば、水、エタノールが好ましい。
反応後は残渣をろ別して、ろ液を濃縮した後、常法により精製する。
すなわち、濃縮液の精製は抽出エキスを膜処理(限外ろ過、逆浸透等)、吸着剤で処理することにより行なうことができる。吸着剤としては、スチレン−ジビニルベンゼン系吸着剤、メタクリル酸系吸着剤、親水性ビニルポリマー、修飾デキストランゲル、ポリアクリルアミドゲル、逆相系シリカゲル、イオン交換樹脂等が用いられる。これらの吸着剤を用いる場合には、これに吸着する画分(以下、吸着画分という。)にSH基含有化合物と反応し低分子量化したポリフェノール化合物(含硫プロアントシアニジンオリゴマー)が含まれている。この吸着画分を含水アルコール、アルコール、アセトン等で溶出させることにより種々の分子量の成分を得ることができる。
このようにして得られる含硫プロアントシアニジンオリゴマーは、順相HPLC及びNMR測定値から、下記一般式(9)に示されるプロアントシアニジンの2量体から5量体であることが確認されている。

式中、nは0または1〜3の整数であり、Rは水素原子または下記式

で示されるガロイル基を表し、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子または水酸基を表し、Rはシステイン、シスチン、グルタチオンまたはSH基含有ペプチド残基を表す。
含硫プロアントシアニジンオリゴマーは分子量1500以下の低分子のため腸管を通じて生体に容易に吸収され、後述の試験例で示されるように、強いDPPHラジカル消去作用、SOD様活性増加作用、P450系脂質過酸化抑制作用、FNT酸化ストレスに対する保護作用、ベータアミロイドに誘導される酸化的細胞死に対する神経細胞保護作用、Streptozotocin(STZ)誘発糖尿病に対する予防作用等を示し、他のポリフェノール素材と比較して高い抗酸化能を有する。またヒトに対する抗酸化指標のモニター試験で、抗酸化効果に基くと判断されるデータも得られている。
従って、本発明の含硫プロアントシアニジンオリゴマーを有効成分とする組成物は、生体の過酸化脂質生成抑制作用を有するだけでなく、活性酸素により起こる酸化障害に起因する疾病に効果を有するので、過酸化脂質あるいは活性酸素生成に起因する各種臓器の障害、老化の防止効果を有し、それにより生ずる各種疾病の治療及び防止に有効である。また脳の老化が原因と考えられる痴呆等の脳機能障害の抑制・防止・治療にも有効と考えられる。同時に脳機能の改善により、学習機能の向上、イライラ感の減少、不眠症解消、落着き回復等の効果も期待出来る。このため、本発明の含硫プロアントシアニジンオリゴマーを有効成分とする組成物は、医薬組成物ならびに健康食品組成物として利用することが出来る。
本発明の含硫プロアントシアニジンオリゴマーを有効成分とする組成物には毒性は全く認められず、十分安全に使用できる。これら組成物は経口または非経口で用いられるが、経口的に使用される場合の投与量は、年齢、体重、症状、目的とする治療効果、投与方法等により異なるが、通常、成人一人当り、一回につき、100から2000mgの範囲である。本発明組成物を経口投与する際には、経口投与として一般に錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤等、非経口投与として注射剤、塗布剤等として用いられる。造粒、錠剤化あるいはシロップ剤とする際には、必要により適宜の補助資材(澱粉類、デキストリン、甘味剤類、色素、香料等)を使用することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に本発明の含硫プロアントシアニジンオリゴマー組成物の実施例、試験例を挙げて、発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの範囲内に限定されるものではない。
実施例1:ブドウ種子由来含硫プロアントシアニジンオリゴマーの製造
(1)ブドウ種子ポリフェノールの抽出
乾燥ブドウ種子8kgを80%メタノール(30L)で3日間室温で抽出し、残渣をろ過してろ液を減圧濃縮して得た濃縮液を下記条件により精製に供した。
[精製条件]
全量をDIAION HP−20(三菱化学)200mmφ×30cm(約25L)にチャージし、水100Lで洗浄した。メタノール50Lで溶出させたものを減圧濃縮し、凍結乾燥して456gの粉末状組成物を回収した。
(2)システインとの低分子化反応
上記(1)の方法で得たブドウ種子ポリフェノール400g、L−システイン(和光純薬工業(株)製)400g、アスコルビン酸(純正化学(株)製)4g、クエン酸(和光純薬工業(株)製)0.8kg、水4Lを混合し、40℃で48時間反応させた。反応液を直径200mm、高さ800mmのDIAION HP−20(三菱化学(株)製)を担体として充填したカラム(容量約25L)にチャージし、非吸着画分を水100Lで洗浄した後、40%エタノール50Lで溶出する画分を回収し、減圧濃縮し、凍結乾燥して、水、メタノール、エタノールに易溶の赤褐色粉末(収量408g)を得た。この粉末をSephadex LH−20(ファルマシア(株)製)を担体として充填したカラム(直径50mm、高さ500mm、容積約1L)により、エタノール−水混合液で分画し、分画物のオリゴマー組成を野中らの方法(Chem.Pharm.Bull.,34(2),633−642(1986))により分析した結果、組成は次のとおりであった。
システイン結合エピカテキン単量体画分 19%
システイン結合エピカテキン2量体画分 21%
システイン結合エピカテキン3量体画分 11%
システイン結合エピカテキン4〜6量体画分 16%
(3)システイン結合エピカテキン単量体
得られたシステイン結合エピカテキン単量体画分をニンヒドリン−酢酸試液の噴霧加熱によって桃褐色に呈色するスポットを対象としてSephadex LH−20ゲルを用いたカラムクロマトグラフィー(水−メタノール−アセトン)によって精製して、下記(1)〜(3)式で示される化合物(以下化合物1〜3と略記することがある)を単離した。

式(1)の化合物(化合物1)はHR−FAB−MS(High Resolution Fast Atom Bombardment Mass Spectroscopy:高分解能高速原子衝撃法質量スペクトル)の測定で分子イオンピーク[M+H](m/z)410.0925を示し、分子式C1820NSに相当する計算値410.0910と3.6ppm(10ppm以内)の誤差で一致した。したがって、化合物1は分子式C1819NSを有すると推定され、カテキンまたはエピカテキンにL−システインのイオウ原子が結合した化学構造が考えられる。また、化合物1のH−NMR(水素核磁気共鳴スペクトル、表1参照)測定において、カテキンまたはエピカテキンに共通する芳香環上の5個のプロトンシグナルの他に、酸素原子またはイオウ原子を付け根に有するシグナル群がδ5.09(br.s)、δ4.07(m)およびδ3.86(d,J=2Hz)に各々プロトン1個分として認められた。前者はエピカテキンの立体配置を有することを示唆している。δ3.86(d,J=2Hz)のプロトンシグナルは4α配置に帰属され、イオウ原子が4βに配置するチオリシス生成物のシグナルに相当する。その他、δ4.13(1H,dd,J=9,4Hz)ならびにδ2.95(1H,dd,J=15,9Hz)およびδ3.43(1H,dd,J=15,4Hz)にABX型のシグナル群が認められ、システインのメチン基にメチレン基が隣接する部分構造を示唆している。これらの情報に基づき、化合物1の化学構造を式(1)に示す4β−(S−L−cysteinyl)−(−)−epicatechinと推定した。化合物1の13C−NMR(炭素−13核磁気共鳴スペクトル、表2参照)(DEPT法)において認められた各炭素級数を含めて18個の炭素シグナルもこの構造を支持した。
式(2)の化合物(化合物2)のH−NMR(表1参照)において酸素原子またはイオウ原子を付け根に有するシグナル群がδ4.86(1H,d,J=9,6Hz)、δ4.22(1H,dd,J=9.6,4.3Hz)およびδ4.23(1H,d,J=4.3Hz)に各々プロトン1個分として認められた。前2者は各々カテキンの2β、3β配置、δ4.23(1H,d,J=4.3Hz)は4α配置に帰属され、イオウ原子が4βに配置するチオリシス生成物のシグナルに相当する。したがって、化合物1と化合物2は3位の立体配置のみが異なると考えられ、化合物2の化学構造を式(2)に示す4β−(S−L−cysteinyl)−(+)−catechinと推定した。
式(3)の化合物(化合物3)はHR−FAB−MSの測定で分子イオンピーク[M+H](m/z)426.0844を示し、化合物1よりも酸素原子が1個多い分子式C1820NSに相当する計算値426.0859と3.5ppmの誤差で一致した。またH−NMR(表1参照)の測定で、芳香環領域のδ6.57(2H,s)に2′および6′位の水素が等価シグナルとして認められた他は、化合物1と対応、類似していた。表2に示す13C−NMRのシグナル帰属と考え併せ、化合物3の構造を式(3)に示す4β−(S−L−cysteinyl)−(−)−epigallocatechinと推定した。


(4)システイン結合エピカテキン2量体
システイン結合エピカテキン2量体画分粉末を同様に精製して下記式(4)で示される化合物(以下、化合物4と略記することがある。)を単離した。

化合物4はFAB−MSの測定で、分子イオンピーク[M+H](m/z)698を示し、化合物1よりもカテキンユニットが1個多い構造が考えられた。TLCおよびHPLCにおいて各々単一挙動を示したにも拘わらず、化合物4のH−NMRはブロードなシグナル群にシャープなシグナルが混在したスペクトルを示した。この特徴的なH−NMRシグナル分布から、縮合の結合位置は、4→6または4→8のうち、強く回転障害を生じる後者が考えられた。4→8結合に直結する各ベンゾピラン由来シグナル群はブロードに変形して認められた。すなわち、δ4.22、δ4.54、δ4.96(each 1H,br.m,C−3,−4,−2,respectively)は上端ユニットに、よりシャープなδ3.83、δ3.90(each 1H,s,C−4′,−3′,respectively)、5.20(1H,br.m,C−2′)はイオウ原子と結合しているユニット(下端)に各々帰属された。分子模型による考察からも、下端ユニットは上端に比較して回転障害を免れていることが伺えた。δ5.92の芳香環領域にはC−6、−8、−6′に帰属されるプロトン3個分のシグナルがenvelopeとして認められた。δ6.60からδ7.09にかけて両ユニットB環上のプロトン群が認められ、その中の結合定数8.3Hzのシャープなdoubletシグナルは回転障害を免れている下端ユニットの5位に帰属されると考えられた。残されたシグナルδ2.95、δ3.44(each 1H,br.m,cys−C−3)、δ4.14(1H,dd,J=9,4Hz,cys−C−2)は各々システイン残基由来と推定された。化合物4の13C−NMR(表3参照)は化合物1に相当するシグナル群が認められ、式(4)に示される化合物4の構造を支持している。したがって、化合物4の構造を4β(S−L−cysteinyl)−(−)−epicatechin−(4β→8)−(−)−epicatechinと推定した。

(5)システイン結合エピカテキン3量体
システイン結合エピカテキン単量体画分粉末を同様に精製して下記式(5)で示される化合物(以下、化合物5と略記することがある。)を単離した。

化合物5はHR−ESI−MSの測定で、分子イオンピークを[M−H](m/z)984.1956に示し、分子式C484220NSに相当する計算値984.2011と5.5ppmの誤差で一致した。したがって、化合物5は分子式C484320NSを有すると推定され、カテキンまたはエピカテキンから構成される3分子縮合体にL−システインが結合した化学構造が考えられた。また、化合物5のH−NMRシグナルは全体としてブロードであり、3ユニットはいずれも4→8結合に直鎖状に縮合、L−システインが下端ユニットに結合していることが示唆された。芳香環上のシグナルとしてδ5.98に認められたシングレットからA環−6−H、−8−H、A′環6−H、A″環−6−Hと帰属される。より低磁場に認められるシグナル群(δ6.04,s;δ6.91,7.01,s;δ7.11,s)は、高さ比が約3:2:1:3であり、B環−、B′環−、B″環上の2−H由来シグナルに帰属され、δ6.91およびδ7.01(2:1)のシグナルは中間に位置するB′−2−Hが最も回転障害を受けているために分裂して現れたと考えられた。これらの情報に基づいて、化合物5の平面構造を暫定的に式(5)と推定した。
実施例2:ブドウ種子由来含硫プロアントシアニジンオリゴマーの製造
実施例1と同じ原料、条件でブドウ種子ポリフェノールを抽出し、実施例1と同じ条件で精製した。この精製物を以下の条件でグルタチオンと反応させ、低分子化した。
すなわち、得たブドウ種子ポリフェノール1.0g、グルタチオン(和光純薬工業(株)製)3.0g、アスコルビン酸(純正化学(株)製)0.5g、1N塩酸50.0mLを混合し、40℃で48時間反応させた。この反応液をDIAION HP−20(三菱化学(株)製)、MCIgel CHP−20(三菱化学(株)製)、Sephadex LH−20(ファルマシア(株)製)等により精製し、減圧濃縮し、凍結乾燥して赤褐色粉末を得た(収量120mg)。
1)グルタチオン結合モノマー
得られた赤褐色粉末をポリスチレンゲル、Sephadex LH−20ゲル、およびODS系シリカゲルを担体に、水とメタノールの混合液を移動相としたカラムクロマトグラフィーを繰り返して精製し式(6)で示される化合物(化合物6)を得た。

化合物6はHR−ESI−MS(High Resolution Electro−Spray Ionization Mass Spectroscopy:高分解能エレクトロスプレー・イオン化質量スペクトル)の測定で、分子イオンピーク[M+H](m/z)596.1550を示し、分子式C253012Sに相当する計算値596.1551と0.17ppmの誤差で一致した。したがって、化合物6はカテキンまたはエピカテキンにグルタチオンのL−システイン由来イオウ原子が結合した化学構造が考えられた。化合物6のH−NMRにおいて、カテキンまたはエピカテキンに共通する芳香環上の5個のプロトンシグナル群(δ5.84,5.96,6.91(each 1H,8−,6−,2′−H,respectivery);δ6.73−6.78(2H,m,5′−,6′−H))の他に、酸素原子またはイオウ原子を付け根に有するシグナル群がδ3.90,3.91,5.15(each 1H,3−,4−,5−H,respectively)に認められ、化合物1と同様にエピカテキンの4位にイオウ原子が4βに配置する構造が類推された。その他、システイン部分(δ3.63(1H,br.t,J=9,4Hz,cys−2−H),3.72,3.80(each 1H,d,J=17.6Hz,cys−3−H))、グルタミン酸部分(δ1.72(2H,m,glu−4−H),1.78(2H,m,glu−3−H),3.05(1H,br.d,J=5.4Hz,glu−2−H))およびグリシン部分(δ3.20(2H,s,gly−2−H))に相当するシグナル群が認められた。この構造は化合物6の13C−NMR(表4参照)の測定における25個の炭素シグナルが観測からも支持された。
したがって、化合物6の構造を、グルタチオン分子のシステイン部分に由来するイオウ原子がエピカテキンの4βに結合した式(6)で示される4β−(glutathionyl)−(−)−epicatechinと推定した。

実施例3:松樹由来含硫プロアントシアニジンオリゴマーの製造
(1)パインバークポリフェノールの抽出
トドマツ樹皮400gを80%メタノール1.5Lにより室温で3日間抽出し、残渣をろ過した後、ろ液を減圧濃縮して得た濃縮液を下記条件により精製に供した。
[精製条件]
濃縮液の全量をDIAION HP−20(三菱化学(株)製)50mmφ×30cm(約600mL)にチャージし、2500mLの水で洗浄した。メタノール1200mL溶出させたものを減圧濃縮し、凍結乾燥して18.4gの粉末状組成物を回収した。
(2)システインとの低分子化反応
上記(1)の方法で得たパインバーグポリフェノール1.0g、L−システイン(和光純薬(株)製)1.7g、アスコルビン酸(純正化学(株)製)0.25g、1N塩酸20.0mLを混合し、40℃で48時間反応させ、反応液を直径25mm、高さ150mmのDIAION HP−20(三菱化学(株)製)を担体として充填したカラム(容積約100mL)にチャージし、非吸着画分を水400mLで洗浄した後、メタノール400mLで溶出する画分を回収し、減圧濃縮し、凍結乾燥して、赤褐色粉末(収量0.95g)を得た。
プロアントシアニジンは試験管内(in vitro)では強い抗酸化活性を示すが、経口的摂取では必ずしも生体内(in vivo)で十分な効果を発揮しない。その理由は、高分子のプロアントシアニジンは腸管で吸収され難いためと考えられる。これに対し、本発明のSH基含有物質により低分子化した含硫プロアントシアニジンオリゴマーは、インビトロ(in vitro)では高分子のプロアントシアニジンと同等の抗酸化活性を示し、インビボ(in vivo)でも高分子のプロアントシアニジンより優れた抗酸化活性を示す。
実施例4:ヤマモモ由来含硫プロアントシアニジンオリゴマーの製造
(1)ヤマモモポリフェノールの抽出
ヤマモモ樹皮(揚梅皮)400gを80%メタノールの1.5Lにより室温で3日間抽出し、残渣をろ過した後、ろ液を減圧濃縮して得た濃縮液を下記条件により精製に供した。
[精製条件]
濃縮液の全量をDIAION HP−20(三菱化学(株)製)50mmφ×30cm(約600mL)にチャージし、2500mLの水で非吸着画分を洗浄した後、メタノール1200mLで溶出させたものを回収し、減圧濃縮し、凍結乾燥して38.0gの粉末状組成物を回収した。
(2)システインとの低分子化反応
上記(1)の方法で得たヤマモモポリフェノール1.0g、L−システイン(和光純薬(株)製)1.7g、アスコルビン酸(純正化学(株)製)0.25g、1N塩酸20.0mLを混合し、40℃で48時間反応させ、反応液をDIAION HP−20(三菱化学(株)製)25mmφ×150mm(約100mL)にチャージし、400mLの水で非吸着画分を洗浄した後、メタノール400mLで溶出させたものを回収し、減圧濃縮し、凍結乾燥して赤褐色粉末0.95gを得た。
(3)楊梅皮ポリフェノールとL−システインの結合体について
1)L−システイン結合エピガロカテキンガレート・モノマー
前記(2)で得られた赤褐色粉末をポリスチレンゲル、Sephadex LH−20ゲル、およびODS系シリカゲルを担体に、水、メタノール、アセトンの任意の混合液を移動相としたカラムクロマトグラフィーを繰り返して精製し、エピカテキンガレート(epigallocatechin gallate)、エピガロカテキンガレート(epigallocatechin gallate)(4β→8)エピガロカテキンガレート(epigallocatechin gallate)および前記化合物3の他、以下の式(7)および(8)に示す化合物(化合物7および化合物8)を単離した。


化合物7は、ESI−MSの測定で、分子イオンピーク[M−H](m/z)575を示した。また、H−NMR(表5参照)の測定結果は化合物1および化合物3と類似していたが、約1.3ppm低磁場シフトした3−βH(1H,5.29,s)、ならびに芳香環領域のA環上6、8位の他、6.68と6.96に各プロトン2個分の鋭い2組の鋭い等価なシングレット・シグナル(1,3,4,5置換ベンゼン上の2と6位水素由来)が認められた。これらのシグナルはエピガロカテキンのガレートであることを示唆している。
これらの情報と表6に示す13C−NMRシグナル群の帰属とを併せて、化合物7の構造を式(7)で示される4β−(S−L−cysteinyl)−(−)−epicatechin gallateと推定した。
2)L−システイン結合エピガロカテキンガレート・ダイマー
化合物8はHR−ESI−MSの測定で分子イオンピーク[M−H](M/Z)1032.1517を示し、分子式C253012Sに相当する計算値1032.1503と1.4ppmの誤差で一致した。したがって、化合物7よりもエピカテキンガレート・ユニットが1個多い構造が考えられた。化合物8のH−NMRは化合物4と同様ブロードなシグナル群にシャープなシグナルが混在したスペクトルを示し、4→8縮合型であると考えられた。HおよびC−NMRのシグナル群は化合物4と同様に帰属され(各々表5および6)、化合物8の構造を式(8)に示される4β(S−L−cysteinyl)−(−)−epicatechin gallate−(4β→8)−(−)−epicatechin gallateと推定した。


試験例1:DPPHラジカル消去作用
実施例1の分画前の粉末(物質1)、物質1を分画して得た単量体画分(物質2)、物質1を分画して得た2量体及び3量体画分(物質3)、物質1を分画して得た4〜6量体画分(物質4)、実施例1の原料(ブドウ種子ポリフェノール抽出物)(比較物質1)及び市販カテキン(和光純薬(株)製)(比較物質2)について、1,1−diphenyl−2−picrylhydrazyl(DPPH)ラジカルの消去作用を次の方法で測定した。
96穴のマイクロプレートに100μLのDPPH溶液(60μMエタノール溶液)を入れ、試験試料のエタノール溶液100μL、またはコントロールとしてのエタノール100μLをそれぞれ加え、静かに混合して室温で30分間放置した後、520nmの吸光度を測定し、DPPHラジカル消去能を下記の式で算出した。段階的に希釈した試験試料のDPPHラジカル消去能と濃度から50%有効濃度(EC50)を算出した。
DPPHラジカル消去能(%)=[(1−試験試料の吸光度)/コントロールの吸光度]
×100
各試料の段階的な濃度のDPPHラジカル消去能から50%有効濃度(EC50)を算出した。結果を表7に示す。
DPPHラジカル消去能は、低濃度では物質4が比較的高かった。それ以外の試料は同様な活性を示し、高濃度では各試料とも高い活性を示した。

試験例2:活性酸素除去酵素(SOD)様活性
試験例1と同じ物質1〜4、比較物質1〜2について、血中SOD活性測定キット(SODテストワコー:和光純薬(株)製)を用いてSOD様活性を測定した。下式でSOD様活性を算出し、試験試料の濃度との関係から50%有効濃度(EC50)を算出した。
SOD様活性(%)
=[(1−試験試料の吸光度)/コントロールの吸光度]×100
各試料の段階的な濃度におけるSOD様活性からEC50を算出して、結果を表8に示した。物質2〜4の各分画物は、比較物質1〜2に比べ高いSOD様活性を示した。

試験例3:亜急性FeNTA誘導多臓器障害モデルに対する効果
生体に投与すると大量の活性酸素を発生し、多臓器障害を誘発するインビボ(in vivo)酸化モデルとして知られるFeNTA(硝酸鉄(Fe(NO)とニトリロ三酢酸ナトリウム(NTANa)の混合物)を用いて試験した。
すなわち、硝酸鉄九水和物(関東化学(株)製)240mgを40mLの冷水に溶解したものと、ニトリロ三酢酸ナトリウム一水和物390mgを40mLの冷水に溶解したものを氷冷下で混合し、1N塩酸によりpHを7.5に調整して100mLに定溶したものをFeNTA溶液とする。調製後10分以内にFeとして体重kg当り22.5mgのFeNTA溶液を、雄性ddY系マウス7週齢(平均体重30g)に1日おきに腹腔内投与した。物質1及び比較物質1をそれぞれ体重Kg当り25mg(低用量投与群)、または50mg(高用量投与群)を毎日強制経口投与した。対照群には水道水を摂取させ、FeNTA投与しない陰性対照群と、FeNTA投与する陽性対照群を設けた。飲料水、食餌は自由摂取とした。投与開始から7、14、21、28日目に採血し、血清中の過酸化脂質(LPO)濃度を測定した。投与開始から28日目に解剖し、肝臓、腎臓、脳を摘出して各臓器のホモジナイズのLPO濃度を測定した。
[試験結果]
(1)血清中のLPO濃度を図1(A)及び(B)に示す。低用量投与群では物質1は21日目で血清中LPO濃度は、比較物質1及び陽性対照群に対して有意に低下した(図1(A))。高用量投与群でも物質1は、投与開始から21日目以降に有意に低下した(図1(B))。比較物質1も21日目に低値を示したが、本発明の物質の方が高い効果を示した。
(2)各臓器中のLPO濃度
肝臓、腎臓及び脳中のLPO濃度を図2(A)〜(C)に示す。
肝臓ではFeNTA投与によるLPO濃度の有意な上昇は認められず、各投与群でも変化は認められなかった。腎臓と脳では、FeNTA投与によりホモジナイズ中のLPO濃度は上昇した。物質1及び比較物質1の投与で、LPO濃度は低下した。腎臓、脳ともに物質1高用量投与群で、最も低い値を示した。特に脳では、比較物質1投与でも低値を示したが、物質1高用量投与群では他の群に比べ有意に低い値を示した。
[結果のまとめ]
FeNTAの投与は、血清中のLPO濃度を上昇させた。物質1は比較物質1に比べ、低用量、短期間に効果を発揮した。このことから、低分子化されたことにより、物質1は経口的摂取で腸管から吸収され易く、そのため低用量、短期間で効果を発揮したと考えられる。特に、物質1は腎臓及び脳で強い抗酸化活性を示すことが明らかとなった。
試験例4:ヒトに対するモニター試験
[試験方法]
健康な男女34名(平均年齢41.2歳、男性21名、女性13名)を表9に示すように2群に分け、物質1及び比較物質1を1日当り500mgをそれぞれ28日間投与した。投与開始前、投与28日後に採血し、血清中のLPO濃度、SOD様活性を測定した。

[結果]
投与前後のLPO濃度及びSOD様活性を図3及び図4に示す。図3(A)は初期値が正常者についてLPO濃度、図3(B)は初期値異常者についてLPO濃度を示し、図4(A)は初期値正常者についてSOD様活性、図4(B)は初期値異常者についてSOD様活性についての結果を示す。
比較物質1及び物質1の28日間の投与でLPO濃度は低下し、SOD様活性は上昇の傾向が認められた。被験者中の初期値異常者でLPO濃度の初期値が比較的高かった者(LPO濃度8.0以上)及びSOD様活性が比較的低かった者(SOD様活性が12.0以下)について見ると、物質1を投与した群で統計的に有意なLPO濃度の低下が見られた(図3(B))。同様に、SOD様活性も物質1を投与した群で統計的に有意な上昇が認められた(図4(B))。このことから、物質1は同量の比較物質1よりも、生体の酸化状態の改善に有効であることが確認された。
試験例5:ベータアミロイドに誘導される酸化的細胞死に対する神経細胞保護効果
神経の再生異常による病気であるアルツハイマー病はベータアミロイドを蓄積した老人斑を形成することを特徴とする。ベータアミロイドは活性酸素種を生成し、神経細胞への細胞毒性によりアルツハイマー病の発症と進行において重要な役割を担っている物質である。神経細胞毒性の実験に広く用いられるPC−12細胞に対するアポトーシス誘導による細胞傷害活性における低分子化ポリフェノール(以下、GSMと略記することがある。)の神経細胞保護効果を調べた。
[試験方法]
PC−12細胞は10%熱不活化馬血清及び5%牛胎児血清を含むDMEM培地で10%二酸化炭素雰囲気下にて培養した。4×10細胞/300μLに細胞密度を調整して24時間予備培養したのち、血清不含のN−2培地中にGSMあるいはブドウ種子ポリフェノール(以下、GSPと略記することがある。)を1、1.5、5、10μg/mLの濃度で加え、48穴のプレートに培養した。
(1)細胞生存度試験:
処理後、細胞は終濃度1mg/mLのMTT溶液で処理し、深青色のホルマザン産物を緩衝液に溶解して540〜595nmの吸光度により測定した。結果は無処理の対照細胞の吸光度との比率(%)で示した。
[結果]
GSMは濃度依存的にベータアミロイドによるPC−12細胞死を抑制することが、MTT試験により明らかとなった。その効果は特に1及び1.5μg/mLの低濃度域においてGSPよりも高かった(図5)。
(2)ミトコンドリア膜電位測定試験:
ミトコンドリア膜電位の測定には脂溶性陽イオン探索子であるTMREを使用した。GSMまたはGSP存在下あるいは非存在下でPC−12細胞(1×10cell/mL)を25μMのベータアミロイド処理したのち、リン酸緩衝生理食塩水で洗浄し37℃で30分間TMRE(150nM)処理した。ミトコンドリアの膜電位に依存してミトコンドリア内に蓄積したTMREを、励起波長488nm、発光波長590nmの蛍光で検出した。
[結果]
ミトコンドリアは細胞死の徴候に先んじて膜の完全性に変調を来す。この変化はミトコンドリアの内膜および外膜の両方で起こり、最終的にチトクロームCのような可溶性膜間タンパクを放出する膜貫通電位の放散と膜透過性の変化を導く。PC−12細胞はベータアミロイドに曝露されるとミトコンドリア膜貫通電位を急速に低下させ、それは電位依存型色素であるTMREを用いた赤色の蛍光で現わされる(図6(A))。ベータアミロイドによる膜貫通電位の低下はGSMによる前処理で有意に抑制され、その効果はGSPよりも高かった(図6(A)及び(B))。
(3)細胞内への活性酸素種の蓄積の測定:
活性酸素種の細胞内への蓄積量を観察するために蛍光探索子DCF−DA(2’,7’−ジクロロジヒドロフルオレセイン−ジアセテート)を用いた。GSMまたはGSP存在下あるいは非存在下でPC−12細胞(1×10cell/3mL)を25μMのベータアミロイド処理したのち、クレブス・リンゲル液で洗浄し、10μMのDCF−DAを加えた。37℃で15分間培養したのちアルゴンレーザーによる共焦点レーザー顕微鏡を用いて励起波長488nm、発光波長530nmで観察した。
[結果]
ベータアミロイドによるPC−12細胞の細胞死における酸化ストレスを解明するために、細胞内での活性酸素種の蓄積を、細胞膜を透過できるDCF−DAにより測定した。細胞内ではDCF−DAは細胞のエステラーゼ活性によりDCFに加水分解され過酸化物と反応して蛍光物質を生成する。ベータアミロイド処理されたPC−12細胞はDCF色素により染色されて表示される(図7(A))。ベータアミロイドによる細胞内への活性酸素種蓄積はGSMにより減少し、その効果はGSPよりも高かった(図7(A)及び(B))。
(4)細胞内グルタチオン濃度:
細胞内グルタチオン濃度は市販のキット(BIOXYTECH GSH−400:OXIS Research社製、米国)を使用して測定した。GSMまたはGSPの存在下/非存在下で培養したベータアミロイド処理されたPC−12細胞を回収してメタリン酸溶液中でホモジナイズし、遠心分離した上清に色素原塩酸溶液を加え、撹拌後30%水酸化ナトリウム溶液を加え25℃で10分間培養した。さらに遠心分離し澄明な上清の400nmにおける吸光度を測定した。BCAタンパク質測定キットによりタンパク質含有量を測定しタンパク質の単位重量当たりのグルタチオン濃度を無処理の対照と比較した。
[結果]
ベータアミロイドによる細胞死には酸化ダメージが関与している。ベータアミロイド処理された細胞では細胞内グルタチオン濃度が低下する。GSP処理された細胞では正常レベルまで細胞内グルタチオン濃度が回復していたが、GSMでは正常レベルを上回る細胞内グルタチオン濃度を示し、細胞内で高い抗酸化活性を示した(図8)。
(5)過酸化脂質濃度:
過酸化脂質濃度は市販のキット(BIOXYTECH LPO−586:OXIS Research社製、米国)を使用して測定した。GSMまたはGSPの存在下/非存在下で培養したベータアミロイド処理されたPC−12細胞を回収して0.5mMのブチル化ヒドロキシトルエンを含む20mMトリス塩酸緩衝液中でホモジナイズし、遠心分離した上清に10.3mMのN−メチル−2−フェニルインドールのアセトニトリル溶液に希釈し混合する。37%塩酸を加えて45℃で60分培養した。冷却後、遠心分離し、澄明な上清の590nmの吸光度を測定した。BCAタンパク質測定キットによりタンパク質含有量を測定しタンパク質の単位重量当たりの過酸化脂質濃度を無処理の対照と比較した。
[結果]
ベータアミロイド処理によって生じる細胞膜の過酸化は過酸化脂質から生じるマロンジアルデヒド(MDA)によって示される。GSMまたはGSPの前処理によってベータアミロイドによる脂質の過酸化を抑制し、その効果はGSMで高く、無処理対照レベル以下に過酸化脂質を抑えていた(図9)。
[結果のまとめ]
GSMは神経細胞のモデル細胞株であるPC−12細胞において、神経細胞内への活性酸素種の蓄積を減少させることで、ベータアミロイド毒性による神経細胞死を抑制した。その効果はGSPよりも高かった。ベータアミロイド毒性による神経細胞死は細胞に対する酸化ダメージが関与しているが、GSMは細胞に対する酸化ダメージを抑え、その効果はGSPよりも高かった。
GSMがアルツハイマー病の発症、進行に深く関与するベータアミロイドによる神経細胞死をその抗酸化作用により抑制したことは、GSMによりアルツハイマー病の発症、進行を抑えることができることを示している。
試験例6:Streptozotocin(STZ)誘発糖尿病に対する予防効果
物質1のSTZ誘発糖尿病マウスに対する予防効果を検討するため、STZを低用量頻回(multiple low dose:MLD)投与することにより誘発される糖尿病の初期に相当する病態モデルを用いた。
[方法]
Jla:ddyマウス(雄性、7週齢)の体重、血糖値及び血中LPO値を測定し、各群が均等になるように以下の通り群分けした。
(1)陰性対照群:STZ(−)(n=5、1ケージ)、
(2)陽性対照群:STZ(+)(n=15、3ケージ)、
(3)物質1群 :STZ(+)+物質1(n=10、2ケージ)、
(4)比較物質1群:STZ(+)+比較物質1(n=10、2ケージ)。
20mg/kg用量のSTZを4日間連続腹腔内投与(これを2クール)後、40mg/kg用量のSTZを4日間連続腹腔内投与した。物質1または比較物質1を各0.06%粉末食餌に混ぜ自由摂取させた(1日あたりの食餌摂取量から、1日の物質1または比較物質1の摂取量は約100mg/kgとなる)。また、投与期間は、STZ投与開始日の5日前から65日目までとした。
投与期間中血液及び尿を採取し、血糖、尿糖、尿タンパク、血中尿素窒素(BUN)、血中LPO/TEAC(Trolox equivalent antioxidant capacity)を測定した。これらの測定結果を図10〜14に示す。
[結果のまとめ]
(1)空腹時血糖値
糖尿病では、図10に示すように空腹時において血糖値が高値を示すが、STZ投与後35日、49日及び66日目において、陽性対照群は陰性対照群に比べ有意に血糖値が高く、STZを低用量頻回投与することにより、軽度糖尿病モデルが作成されたことが確認された。物質1群、比較物質1群において血糖値は陽性対照群に比べ有意に低い値を示し、血糖値低減効果は物質1の方が比較物質1に比べ強い傾向を示した。
(2)尿糖値
糖尿病においては、尿中への糖排泄量が増加する。STZ処理により尿中への糖の排泄量が大幅に増加し、マウスが糖尿病を誘発していることが捕捉できる。図11に示すように、物質1群及び比較物質1群には、STZにより増加する尿糖値の改善効果が観察され、49日目においては陽性対照群との間にそれぞれ有意差が確認された。また、物質1の方が比較物質1に比較して若干低い値を示した。
(3)尿タンパク値
糖尿病では尿中へのタンパク質の排泄量が増加する。図12に示すように、物質1及び比較物質1は、STZによる尿中へのタンパク質の漏出を抑制することができ、STZ投与後49日目においては両物質共に陽性対照群に比べ有意にタンパク量を低減した。また、物質1の方が比較物質1に比べ、本病態モデルの早期から効果が発現することが予測される。
(4)抗酸化指標
(4−1)血中LPO値
図13に示すように、物質1群では陽性対照群及び比較物質1群に対して低値傾向が認められた。
(4−2)血中TEAC値
TEAC(Trolox equivalent antioxidant capacity)法は、ある化合物が有する抗酸化活性をアルファ−トコフェロール(α−Tocopherol)誘導体であるトロロックス(Trolox)の抗酸化能に換算して抗酸化強度を相対評価する方法で、抗酸化指標として一般的に広く使用されている。図14に示すように、血中の抗酸化活性は、49日目及び66日目共に比較物質1と陽性対照は、ほぼ同程度の抗酸化能であったのに対し、物質1投与群では高値を示し、抗酸化能が最も高かった。
[まとめ]
STZの低用量頻回投与モデルは、マウスに軽度糖尿病を誘発することができ、高用量単回投与モデルと比較して血糖値における個体間の差も少ないため、糖尿病の予防効果を検討するには利便性の高いモデルであると考えられる。物質1は本糖尿病モデルにおいて、病態進行に伴う血糖値や尿糖値の上昇を抑制することができ、糖尿病予防効果を有することが示された。
STZによる糖尿病では、膵臓β細胞内に特異的にラジカルを発生させ、このラジカルによりβ細胞が傷害を受け死に至ることにより、糖尿病が誘導される。物質1及び比較物質1をSTZ投与5日前から与えることにより、体内の抗酸化活性をあらかじめ高めることができ、STZによるβ細胞に対する傷害を軽減することができたと推察される。
血中LPOおよびTEACの結果から物質1は血中の抗酸化能を有意に上昇させることが明らかとなった。一酸化窒素や活性酸素等のラジカルがインスリン依存性糖尿病における膵ランゲルハンス島の破壊に関与することは周知の事実であり、これらフリーラジカルの細胞傷害を抑制すると糖尿病が改善されることが、ヒト介入試験により判明されつつある。したがって、物質1は糖尿病予備軍といわれる健常人に対する予防効果、更には初期糖尿病患者に対する病態進展抑制効果を有することが示された。
試験例7:臭素酸カリウム誘発ラット急性腎障害モデルにおける比較試験
物質1が他の抗酸化ポリフェノール素材と比較してどの程度の抗酸化能を有しているかを明らかにするために、臭素酸カリウム誘発ラット急性腎障害モデルにおける比較試験を行った。
[方法]
Wistarラット(雄性、12週齢)を以下のように群分けした。
陰性対照群:臭素酸カリウム(−)(n=5)、
陽性対照群:臭素酸カリウム(+)(n=5)、
物質1群(ブドウ種子由来):臭素酸カリウム(+)+物質1(n=5)、
物質5群(松樹皮由来):臭素酸カリウム(+)+物質5(n=5)、
比較物質2群(カテキン):臭素酸カリウム(+)+比較物質2(n=5)、
比較物質3群(イチョウ葉抽出物):臭素酸カリウム(+)+比較物質3(n=5)、
比較物質4群(松樹皮抽出物):臭素酸カリウム(+)+比較物質4(n=5)、
比較物質5群(ココア抽出物):臭素酸カリウム(+)+比較物質5(n=5)。
臭素酸カリウムは65mg/kg体重を腹腔内に単回投与した。物質1、物質5及び各比較物質は臭素酸カリウム投与開始日(0日目)の一週間前(−7日目)から翌日まで10mg/kg体重の用量で毎日一回経口投与した。臭素酸カリウム投与日は臭素酸カリウム投与の前後30分に投与を行った。−7日目、0日目及び2日目に頸静脈より採血を行い、血中のポリフェノール濃度、過酸化脂質濃度、TEAC、尿素窒素及びクレアチニン濃度を測定した。
[結果]
物質1及び各比較物質の臭素酸カリウム誘発急性腎障害に対する効果は抗酸化作用によるものであることから、抗酸化の指標として血中ポリフェノール濃度、血中抗酸化能(TEAC)、血中過酸化脂質濃度を、腎障害の病態の指標として血中尿素窒素濃度、血中クレアチニン濃度を調べた。これらの測定結果を図15〜19に示す。
(1)抗酸化指標
(1−1)血中ポリフェノール濃度
図15に示すように、臭素酸カリウム投与前の血中のポリフェノール濃度の初期値は各群とも一定であったが、物質1及び各比較物質を7日間投与した後の臭素酸カリウム投与0日目では物質1群で最も高値を示し、ついで比較物質2群であった。物質1の投与が血中のポリフェノール濃度を上昇させ、その上昇率は各比較物質に比べて有意に高いことが確認された。
(1−2)血中抗酸化能(TEAC)
図16に示すように、物質1及び各比較物質の一週間の前投与により血中の抗酸化能は上昇傾向を示し、物質1の投与による抗酸化能の上昇は各比較物質投与群に対して有意であった。
(1−3)血中過酸化脂質濃度
物質1及び各比較物質の一週間の前投与は臭素酸カリウム投与による血中過酸化脂質濃度の上昇を抑制した。図17に示すように、その効果は物質1群で最も高く、各比較物質に対して有意に低い値を示した。
(2)病態指標
(2−1)血中尿素窒素濃度
図18に示すように、臭素酸カリウムの投与により血中の尿素窒素濃度は無処理に比べ有意に上昇した。物質1及び各比較物質の投与は臭素酸カリウム投与による血中の尿素窒素濃度の上昇を抑制し、物質1の投与による血中尿素窒素濃度の上昇抑制は各比較物質投与群に対して有意であった。
(2−2)血中クレアチニン濃度
図19に示すように、臭素酸カリウムの投与により血中のクレアチニン濃度は無処理に比べ有意に上昇した。物質1及び各比較物質の投与は臭素酸カリウム投与による血中のクレアチニン濃度の上昇を抑制し、物質1の投与による血中クレアチニン濃度の上昇抑制は各比較物質投与群に対して有意であった。
[まとめ]
比較物質3、比較物質4及び比較物質5はプロアントシアニジンのポリマー(高分子)が豊富な素材であり、試験管内では高い抗酸化活性を示すが、生体内に摂取された際の抗酸化活性は低分子化された物質1の方が高かった。比較物質2は単量体(カテキン)であるが、やはり物質1の方が活性は高く、血中のポリフェノール量からみても物質1は低分子化されているため生体への吸収に優れ、生体内における抗酸化活性も高いことが示された。物質1の前投与は血中の抗酸化能を高め、抗酸化活性を発揮する。その結果、臭素酸カリウムの投与による血中の過酸化脂質濃度の上昇を抑制し、腎障害を抑制し、血中への尿素窒素、クレアチニンの漏出を抑制した。その効果は各比較物質に比べ有意に高く、これまでに知られている高分子ポリフェノール主体のポリフェノール素材及び単量体(カテキン)よりも生体に摂取された際の抗酸化性に優れることが明らかとなった。
[本発明の物質の安全性]
単回投与毒性試験により、安全性を評価した。すなわち、物質1を体重kg当り2.5、5.0、7.5、10.0gの投与量で、それぞれ8、7、3、18匹のddY系マウス(9週齢、雄性)に強制経口投与した。投与後の行動変化、死亡例を観察してLC50を算出した。その結果、物質1の50%致死濃度(LC50)は5.0g/kg体重であった(95%信頼限界3.5〜6.4g/kg体重)。また、投与後の行動の異常や、試験終了時の解剖所見の異常は認められなかった。従って、物質1は食品として極めて安全性の高い物質であることが確認された。
前述の試験例4(ヒトに対するモニター試験)で、アンケート方式で被験者のコメントを収集した。そのうち、睡眠に関するものを表10に、疲労感、頭の冴え、胃の調子について5段階評価による結果を表11に示す。


【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロアントシアニジン類を含む植物またはその抽出物をSH基含有化合物と反応させた反応液を濃縮、乾燥して得られる含硫プロアントシアニジンオリゴマーを主要成分として含有する組成物。
【請求項2】
オリゴマーがプロアントシアニジンの2〜5量体である請求の範囲1記載の含硫プロアントシアニジンオリゴマー組成物。
【請求項3】
プロアントシアニジン類を含む植物が、果菜類、茶類、ハーブ・スパイス類、木材・樹皮類の一種以上から選ばれる請求の範囲1に記載の含硫プロアントシアニジンオリゴマー組成物。
【請求項4】
SH基含有化合物が、システイン、シスチン、グルタチオン、SH基含有ペプチドおよびこれらの塩類の少なくとも1種から選択される請求の範囲1記載の含硫プロアントシアニジンオリゴマー組成物。
【請求項5】
生活習慣病の治療及び/または予防用の医薬組成物である請求の範囲1乃至4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
老化の予防用の医薬組成物である請求の範囲1乃至4のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
生活習慣病の改善及び/または予防用の健康食品組成物である請求の範囲1乃至4のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
老化の予防用の健康食品組成物である請求の範囲1乃至4のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
請求の範囲1に記載のプロアントシアニジン類を含む植物またはその抽出物をSH基含有化合物と反応させて得られる含硫プロアントシアニジンオリゴマーを含む成分を分画して得られる含硫プロアントシアニジンオリゴマー。
【請求項10】
オリゴマーがプロアントシアニジンの2〜5量体である請求の範囲9記載の含硫プロアントシアニジンオリゴマー。
【請求項11】
プロアントシアニジン類を含む植物またはその抽出物をSH基含有化合物と酸性条件下で反応させ、反応液を濃縮、乾燥することを特徴とする含硫プロアントシアニジンオリゴマー組成物の製造方法。
【請求項12】
プロアントシアニジン類を含む植物またはその抽出物をSH基含有化合物と酸性条件下で反応させ、反応液を濃縮し、分画処理することを特徴とする含硫プロアントシアニジンオリゴマーの製造方法。
【請求項13】
プロアントシアニジン類を含む植物が、果菜類、茶類、ハーブ・スパイス類、木材・樹皮類の一種以上から選ばれる請求の範囲11または12記載の製造方法。
【請求項14】
SH基含有化合物が、システイン、シスチン、グルタチオン、SH基含有ペプチドおよびこれらの塩類の少なくとも1種から選択される請求の範囲11または12記載の製造方法。
【請求項15】
無機酸、有機酸またはこれらの両者を用いて酸性条件とする請求の範囲11または12記載の製造方法。
【請求項16】
塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、クエン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸から選ばれる少なくとも1種を使用する請求の範囲15記載の製造方法。
【請求項17】
式(4)

で示されるプロアントシアニジン化合物。
【請求項18】
式(5)

で示されるプロアントシアニジン化合物。
【請求項19】
式(6)

で示されるプロアントシアニジン化合物。
【請求項20】
式(7)

で示されるプロアントシアニジン化合物。
【請求項21】
式(8)

で示されるプロアントシアニジン化合物。

【国際公開番号】WO2004/103988
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【発行日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506438(P2005−506438)
【国際出願番号】PCT/JP2004/007448
【国際出願日】平成16年5月25日(2004.5.25)
【出願人】(592196156)株式会社アミノアップ化学 (7)
【出願人】(300068568)ウサイエン製薬株式会社 (4)
【Fターム(参考)】