説明

含窒素有機化合物、ポジ型化学増幅レジスト材料及びパターン形成方法

【解決手段】一般式(1)で示される含窒素有機化合物。


(R1は水素原子、アルキル基、又はアリール基を示す。R2とR3はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、又はアリール基を示し、R2とR3は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。R4はアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基を示す。)
【効果】本発明の含窒素有機化合物を配合したポジ型化学増幅レジスト材料において、高エネルギー線の露光により発生した酸との反応によりカーバメートの脱保護反応が進行し、露光前後の塩基性度が変化することにより、解像性の高い、特にパターンの矩形性に優れ、ダーク・ブライト差の小さい良好なパターン形状を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な含窒素有機化合物、これを用いた微細加工技術に適した新規なポジ型化学増幅レジスト材料、及びこれを用いたパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が求められている中、次世代の微細加工技術として遠紫外線リソグラフィー及び真空紫外線リソグラフィーが有望視されている。中でもArFエキシマレーザー光を光源としたフォトリソグラフィーは0.13μm以下の超微細加工に不可欠な技術である。
【0003】
ArFリソグラフィーは130nmノードのデバイス製作から部分的に使われ始め、90nmノードデバイスからはメインのリソグラフィー技術となった。次の45nmノードのリソグラフィー技術として、当初F2レーザーを用いた157nmリソグラフィーが有望視されたが、諸問題による開発遅延が指摘されたため、投影レンズとウエハーの間に水、エチレングリコール、グリセリン等の空気より屈折率の高い液体を挿入することによって、投影レンズの開口数(NA)を1.0以上に設計でき、高解像度を達成することができるArF液浸リソグラフィーが急浮上し(例えば、非特許文献1:Journal of photopolymer Science and Technology Vol.17, No.4, p587(2004)参照)、実用段階にある。この液浸リソグラフィーの為には水に溶出しにくいレジスト材料が求められる。
【0004】
ArFリソグラフィーでは、精密かつ高価な光学系材料の劣化を防ぐために、少ない露光量で十分な解像性を発揮できる感度の高いレジスト材料が求められており、実現する方策としては、その各成分として波長193nmにおいて高透明なものを選択するのが最も一般的である。例えばベース樹脂については、ポリアクリル酸及びその誘導体、ノルボルネン−無水マレイン酸交互重合体、ポリノルボルネン及び開環メタセシス重合体、開環メタセシス重合体水素添加物等が提案されており、樹脂単体の透明性を上げるという点ではある程度の成果を得ている。
【0005】
また、光酸発生剤も種々の検討がなされてきた。ArF化学増幅型レジスト材料の光酸発生剤としては、レジスト中での安定性に優れるトリフェニルスルホニウム塩が一般的に使われている(特許文献1:特開2007−145797号公報)。しかしながら、ArF露光波長(193nm)での吸収が大きく、レジスト膜での透過率を下げてしまい、解像性が低く、特にパターン形状の矩形性に劣る場合があるという欠点がある。そこで、高感度、高解像性を目的として4−アルコキシナフチル−1−テトラヒドロチオフェニウムカチオン等が開発されており(特許文献2:特許第3632410号公報)、複数の酸不安定基を有する樹脂等の組み合わせのレジスト組成物(特許文献3:特許第3995575号公報)も提案されているが、このナフチル−1−テトラヒドロチオフェニウムは求核置換反応等を受け易いアルキルスルホニウム塩構造に起因するレジスト溶液中での安定性の低さや、密集パターンと孤立パターンにおける線幅、パターン形状差(以下、総称してダーク・ブライト差と呼ぶ)が問題となっている。特にダークエリア、ブライトエリアでのパターン形状差が問題となっている。ダークエリアとは、例えば10本のラインアンドスペースパターンの両側がバルクパターンの遮光エリア(ポジ型レジストの場合)であり、ブライトエリアとは、例えば10本のラインアンドスペースパターンの両側が広大なスペース部の透過エリア(ポジ型レジストの場合)である。ラインアンドスペースパターン10本中の中央部の光学条件はダークエリア、ブライトエリア共に同等ながら、ダークエリアとブライトエリアのパターン差があり、問題となっている。
【0006】
本発明者らの検討では、アルキルスルホニウム塩の保存安定性の低さを改善するため1級又は2級アミンをt−ブトキシカルボニルカーバメートへ導き、求核性を下げた含窒素有機化合物を用いることで、レジスト材料中での保存安定性を高めることができたが、ダーク・ブライト差を改善できるまでには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−145797号公報
【特許文献2】特許第3632410号公報
【特許文献3】特許第3995575号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Journal of photopolymer Science and Technology Vol.17, No.4, p587(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、ArFエキシマレーザー光、EUV等の高エネルギー線を光源としたフォトリソグラフィーにおいて、解像性、特にパターン形状の矩形性に優れ、ダーク・ブライト差の小さい良好なパターンを与え、かつアルキルスルホニウム塩の保存安定性を改善し得る含窒素有機化合物、この含窒素有機化合物をクエンチャーとして含有するレジスト材料及びそのレジスト材料を用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、下記一般式(1)で示される含窒素有機化合物をクエンチャーとして用いたポジ型化学増幅レジスト材料が、パターンの解像性、形状及びアルキルスルホニウム塩の保存安定性改善などの点で優れ、レジスト材料として精密な微細加工に極めて有効であることを知見し、本発明をなすに至った。
【0011】
即ち、本発明は、下記の含窒素有機化合物、ポジ型化学増幅レジスト材料及びパターン形成方法を提供する。
請求項1:
下記一般式(1)で示される含窒素有機化合物。
【化1】


(式中、R1は水素原子、炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜15のアリール基を示す。R2とR3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜15のアリール基を示し、R2とR3は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。R4は炭素数6〜15のアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基を示す。)
請求項2:
請求項1記載の含窒素有機化合物の1種又は2種以上をクエンチャーとして含有することを特徴とするポジ型化学増幅レジスト材料。
請求項3:
(A)クエンチャーとして請求項1記載の含窒素有機化合物、(B)有機溶剤、(C)酸の作用によりアルカリ現像液への溶解性が変化するベース樹脂、及び(D)光酸発生剤を含有することを特徴とする請求項2記載のポジ型化学増幅レジスト材料。
請求項4:
(D)成分が、下記一般式(2)で表されるスルホニウム塩化合物であることを特徴とする請求項3記載のポジ型化学増幅レジスト材料。
【化2】


(式中、R5、R6、R7はそれぞれ独立に、フッ素原子、水酸基又はエーテル結合を有してもよい炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルケニル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示すか、あるいはR5、R6及びR7のうちいずれか2つ以上がそれぞれ結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。R8は水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。R9はヘテロ原子を含んでもよい炭素数6〜30の直鎖状、分岐状又は環状の1価の炭化水素基を示す。)
請求項5:
(1)請求項2乃至4のいずれか1項に記載のポジ型化学増幅レジスト材料を基板上に塗布する工程と、(2)加熱処理後、フォトマスクを介して高エネルギー線で露光する工程と、(3)必要に応じて加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
請求項6:
(1)請求項2乃至4のいずれか1項に記載のポジ型化学増幅レジスト材料を基板上に塗布する工程と、(2)加熱処理後、フォトレジスト膜の上に保護膜層を形成する工程と、(3)投影レンズとウエハーの間に水を挿入させ、フォトマスクを介して高エネルギー線で露光する工程と、(4)必要に応じて加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の含窒素有機化合物は、イミダゾール塩基のカーバメート、特にアラルキルカーバメートであり、本発明の含窒素有機化合物を配合したポジ型化学増幅レジスト材料において、高エネルギー線の露光により発生した酸との反応によりカーバメートの脱保護反応が進行し、露光前後の塩基性度が変化することにより、解像性の高い、特にパターンの矩形性に優れ、ダーク・ブライト差の小さい良好なパターン形状を得ることができ、更には、アルキルスルホニウム塩の保存安定性の改善が可能であり、ポジ型化学増幅レジスト材料のクエンチャーとして非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明者らは、ポジ型化学増幅レジスト材料への配合により、高い解像性と良好なパターン形状を与える未知の化合物について鋭意検討を重ねた。その結果、下記一般式(1)で示される含窒素有機化合物が、後述する方法により高収率かつ簡便に得られ、更に、この含窒素有機化合物を配合して用いれば、高い解像性、特にパターンの矩形性に優れ、ダーク・ブライト差の小さい良好なパターン形状を与え、更には、アルキルスルホニウム塩の保存安定性の改善をもたらすポジ型化学増幅フォトレジスト材料が得られることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0014】
【化3】


(式中、R1は水素原子、炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜15のアリール基を示す。R2とR3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜15のアリール基を示し、R2とR3は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。R4は炭素数6〜15のアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基を示す。)
【0015】
1の炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基として、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ウンデカニル基、フェニル基等を例示できるが、これに限定されるものではない。
【0016】
2とR3の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基として、具体的にはメチル基、フェニル基等を例示できるが、これに限定されるものではない。
【0017】
2とR3が互いに結合して環を形成したものとして、具体的には下記一般式(3)に示される構造を例示できるが、これに限定されるものではない。
【化4】


(式中、R1、R4は上記と同様である。R10、R11はそれぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
【0018】
4の炭素数6〜15のアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基として、具体的にはフェニル基、4−メトキシフェニル基などを例示できるが、これに限定されるものではない。
【0019】
上記一般式(1)で示される化合物として、具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
【化5】

【0020】
【化6】


(式中、Meはメチル基を示す。)
【0021】
上記一般式(1)で示される含窒素有機化合物は、例えば、下記反応式に示す方法により得ることができるが、これに限定されるものではない。
【化7】


[式中、R1〜R4は上記と同様である。R12はハロゲン原子又は−OR13を示す。R13は下記式(6)
【化8】

(ここで、破線は結合手を表す。R4は上記と同様である。)を示す。]
【0022】
上記反応式で示されるイミダゾール誘導体(4)とアリールメトキシカルボニル化剤(5)を用いたカーバメート形成反応は、基本的には一般式(1)で示されるすべての化合物の合成へ適用可能である。
【0023】
上記アリールメトキシカルボニル化剤(5)としては、ハロ炭酸エステル{式(5)においてR12がハロゲン原子の場合}又は二炭酸ジエステル{式(5)においてR12が−OR13の場合}が好ましい。ハロ炭酸エステルを用いる場合は、無溶媒あるいは塩化メチレン、アセトニトリル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ヘキサン等の溶媒中、イミダゾール誘導体(4)、クロロ炭酸ベンジル、クロロ炭酸4−メトキシベンジル等の対応するハロ炭酸エステル、トリエチルアミン、ピリジン、2,6−ルチジン、N,N−ジメチルアニリン等の塩基を順次又は同時に加え、必要に応じ冷却あるいは加熱するなどして行うのがよい。二炭酸ジエステルを用いる場合は、塩化メチレン、アセトニトリル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ヘキサン等の溶媒中、イミダゾール誘導体(4)、二炭酸ジベンジル、二炭酸ジ−(4−メトキシベンジル)等の対応する二炭酸ジエステル、トリエチルアミン、ピリジン、2,6−ルチジン、N,N−ジメチルアニリン等の塩基を順次又は同時に加え、必要に応じ冷却あるいは加熱するなどして行うのがよい。アリールメトキシカルボニル化剤(5)の使用量は、条件により種々異なるが、例えば、原料のイミダゾール誘導体(4)1モルに対して、1.0〜5.0モル、特に1.0〜2.0モルとすることが望ましい。塩基の使用量は条件により種々異なるが、例えば、原料のイミダゾール誘導体(4)1モルに対して、0〜5.0モル、特に0〜2.0モルとすることが望ましい。反応時間はガスクロマトグラフィー(GC)やシリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)で反応を追跡して反応を完結させることが収率の点で望ましいが、通常0.5〜24時間程度である。反応混合物から通常の水系処理(aqueous work−up)により目的の含窒素有機化合物(1)を得ることができ、必要があれば蒸留、クロマトグラフィー、再結晶などの常法に従って精製することができる。あるいは水系後処理(aqueous work−up)を行わず、反応で生じた塩を濾別後又は反応液を直接精製にかけることが可能な場合もある。
【0024】
上記式(1)の含窒素有機化合物は、上述したようにポジ型化学増幅レジスト材料に配合されるクエンチャー(塩基性化合物)成分として有効である。本発明のポジ型化学増幅レジスト材料は、
(A)上記一般式(1)の含窒素有機化合物、
(B)有機溶剤、
(C)酸の作用によりアルカリ現像液への溶解性が変化するベース樹脂、及び
(D)光酸発生剤、
必要により
(E)界面活性剤、
更に必要により
(F)上記含窒素有機化合物以外の含窒素有機化合物、
更に必要により
(G)有機酸誘導体及び/又はフッ素置換アルコール、
更に必要により
(H)重量平均分子量3,000以下の溶解阻止剤
を含有する組成とすることができる。
【0025】
本発明の(A)成分の含窒素有機化合物は上述の通りであるが、その配合量は、レジスト材料中のベース樹脂100部(質量部、以下同じ)に対し0.001〜12部、特に0.01〜8部が好ましい。
【0026】
本発明で使用される(B)成分の有機溶剤、(C)酸の作用によりアルカリ現像液への溶解性が変化するベース樹脂、(D)光酸発生剤、(E)界面活性剤、(F)上記含窒素有機化合物以外の含窒素有機化合物、(G)有機酸誘導体及び/又はフッ素置換アルコール、(H)重量平均分子量3,000以下の溶解阻止剤などの詳細については特開2009−269953号公報等に詳述されている。
【0027】
本発明のレジスト材料に用いる(B)有機溶剤は、ベース樹脂、光酸発生剤、その他の添加剤等が溶解可能な有機溶剤であればいずれでもよい。具体例としては、特開2009−269953号公報に記載されている。有機溶剤は単独でも2種以上を混合して使用することもできる。
【0028】
(B)成分の有機溶剤の中でもレジスト成分中の酸発生剤の溶解性が最も優れているジエチレングリコールジメチルエーテル、1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、4−ブチロラクトン及びその混合溶剤が好ましく使用される。
【0029】
有機溶剤の使用量は、レジスト材料中のベース樹脂(C)100部に対して200〜3,000部、特に400〜2,500部が好適である。
【0030】
(C)成分のベース樹脂は、上記特開2009−269953号公報記載のものを用いることができる。酸不安定基としては上記公報記載の酸不安定基定義の(L3)又は(L4)を用いることが好ましい。樹脂としてはポリメタクリレートを用いることが好ましく、ベース樹脂は1種に限らず2種以上を添加することができる。複数種を用いることにより、レジスト材料の性能を調整することができる。
【0031】
更に述べると、本発明で使用される(C)成分のベース樹脂は、KrFエキシマレーザーレジスト材料用としては、ポリヒドロキシスチレン(PHS)及びPHSとスチレン、(メタ)アクリル酸エステル、その他重合性オレフィン化合物などとの共重合体、ArFエキシマレーザーレジスト材料用としては、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系、シクロオレフィンと無水マレイン酸との交互共重合系及び更にビニルエーテル類又は(メタ)アクリル酸エステルを含む共重合系、ポリノルボルネン系、シクロオレフィン開環メタセシス重合系、シクロオレフィン開環メタセシス重合体水素添加物等が挙げられ、F2エキシマレーザーレジスト材料用として上記KrF、ArF用ポリマーのフッ素置換体等が挙げられるが、これらの重合系ポリマーに限定されることはない。ベース樹脂は単独で又は2種以上混合して用いることができる。ポジ型レジスト材料の場合、フェノールあるいはカルボキシル基、あるいはフッ素化アルキルアルコールの水酸基を酸不安定基で置換することによって、未露光部の溶解速度を下げる場合が一般的である。
【0032】
この場合、本発明で使用される(C)成分は、下記一般式(C1)で示される酸不安定基を含有する繰り返し単位以外に下記一般式(C2)〜(C4)で示される繰り返し単位のいずれか1種以上を含有することが好ましい。
【0033】
【化9】


(式中、RC01は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。RC02及びRC03はそれぞれ独立に水素原子又は水酸基を示す。XAは酸不安定基を示す。YLはラクトン構造を有する置換基を示す。ZAは水素原子、炭素数1〜15のフルオロアルキル基、又は炭素数1〜15のフルオロアルコール含有置換基を示す。)
【0034】
上記一般式(C1)で示される繰り返し単位を含有する重合体は、酸の作用で分解してカルボン酸を発生し、アルカリ可溶性となる重合体を与える。酸不安定基XAとしては種々用いることができるが、具体的には下記一般式(L1)〜(L4)で示される基、炭素数4〜20、好ましくは4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基等を挙げることができる。
【0035】
【化10】

【0036】
ここで、破線は結合手を示す(以下、同様)。
また、式(L1)において、RL01、RL02は水素原子、又は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。RL03は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい1価の炭化水素基を示し、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたものを挙げることができる。RL01とRL02、RL01とRL03、RL02とRL03とは互いに結合してこれらが結合する炭素原子や酸素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合にはRL01、RL02、RL03のうち環形成に関与する基はそれぞれ炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。
【0037】
式(L2)において、RL04は炭素数4〜20、好ましくは4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基又は上記一般式(L1)で示される基を示す。yは0〜6の整数である。
【0038】
式(L3)において、RL05は炭素数1〜8の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示す。mは0又は1、nは0、1、2、3のいずれかであり、2m+n=2又は3を満足する数である。
【0039】
式(L4)において、RL06は炭素数1〜8の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示す。RL07〜RL16はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15の1価の炭化水素基を示す。RL07〜RL16はそれらの2個が互いに結合してそれらが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよく(例えば、RL07とRL08、RL07とRL09、RL08とRL10、RL09とRL10、RL11とRL12、RL13とRL14等)、その場合にはその結合に関与するものは炭素数1〜15の2価の炭化水素基を示し、具体的には上記1価の炭化水素基で例示したものから水素原子を1個除いたもの等が例示できる。また、RL07〜RL16は隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、二重結合を形成してもよい(例えば、RL07とRL09、RL09とRL15、RL13とRL15等)。
【0040】
ベース樹脂の重量平均分子量(Mw)が小さすぎると水への溶解が起こり易くなるが、重量平均分子量が大きすぎるとアルカリ溶解性の低下やスピンコート時の塗布欠陥の原因になる可能性が高い。その観点から、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量において1,000〜500,000、特に2,000〜30,000であることが望ましい。
【0041】
(D)光酸発生剤としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでも構わないが、好適な光酸発生剤としては特開2009−269953号公報記載のスルホニウム塩及び同公報中に記載されている(F)定義の光酸発生剤、並びに特許第3995575号公報記載の光酸発生剤が挙げられ、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤のいずれでもよい。
【0042】
本発明では、特に下記一般式(2)で示されるスルホニウム塩が好適に用いられる。
【化11】


(式中、R5、R6、R7はそれぞれ独立に、フッ素原子、水酸基又はエーテル結合を有してもよい炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルケニル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示すか、あるいはR5、R6及びR7のうちいずれか2つ以上がそれぞれ結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。R8は水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。R9はヘテロ原子を含んでもよい炭素数6〜30の直鎖状、分岐状又は環状の1価の炭化水素基を示す。)
【0043】
上記一般式(2)のスルホニウムカチオンとして、具体的には下記のものを例示できるが、これに限定されるものではない。
【化12】

【0044】
上記一般式(2)のスルホネートアニオン上の置換基R8は水素原子又はトリフルオロメチル基を示すが、スルホニウム塩の溶解性や、解像性の点からトリフルオロメチル基が好ましく用いられる。
【0045】
上記一般式(2)のスルホネートアニオン上の置換基R9として、具体的には下記のものを例示できるが、これに限定されるものではない。
【化13】

【0046】
上記スルホニウムカチオンとスルホネートアニオンは、レジスト材料中でのスルホニウムカチオンの安定性や、露光波長での酸発生効率、又は発生酸の拡散性などを考慮して好適な組み合わせを適宜選択することが可能である。好ましくは下記スルホニウム塩が挙げられる。
【化14】

【0047】
上記アルキルスルホニウム塩を本発明の含窒素有機化合物と共にレジスト材料に用いた場合には、保存中の感度変動を起こすことなく解像性の高いパターン形状を得ることができる。
【0048】
ここで、下記一般式(1a)又は(1b)で示されるスルホニウム塩は新規物質である。
【化15】


(式中、Rはヘテロ原子を含んでもよい炭素数7〜30の直鎖状、分岐状又は環状の1価の炭化水素基を示し、n’は1〜4の整数を示し、好ましくは2,3又は4である。)
【0049】
この場合、Rのヘテロ原子を含んでもよい炭素数7〜30の直鎖状、分岐状又は環状の1価の炭化水素基として、具体的には以下のものが例示できる。
【化16】

【0050】
上記一般式(1a)のスルホニウムカチオンの合成方法は公知であり、メタノール中で1−ナフトールとテトラメチレンスルホキシドの塩化水素ガスによる反応で合成することができる。一般式(1b)のスルホニウムカチオンも公知の方法で合成できる。n’=1の場合、具体的には2−メトキシエチルクロリドと1−ナフトールを塩基性条件下反応させ、1−(2−メトキシエトキシ)ナフタレンを合成する。次いでこれとテトラメチレンスルホキシドを五酸化二燐/メタンスルホン酸溶液中でスルホニウムカチオンを合成する。n’が2〜4の場合にも対応する置換アルキルハライド等を用いることで合成できる。
一般式(1a)又は(1b)で示されるスルホニウム塩のアニオンは、特開2007−145797号公報や特開2008−299069号公報を参考に合成できる。
上記カチオンとアニオンのイオン交換反応はジクロロメタン、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、アセトニトリル等の有機溶剤単独又は水を併用することで行うことができる。
【0051】
本発明の化学増幅レジスト材料における光酸発生剤の添加量はいずれでもよいが、レジスト材料中のベース樹脂100部中0.1〜40部、好ましくは0.1〜25部である。光酸発生剤の添加量が多すぎる場合には解像性の劣化や、現像/レジスト剥離時の異物の問題が起きる可能性がある。上記光酸発生剤は単独でも2種以上混合して用いることができる。更に露光波長における透過率が低い光酸発生剤を用い、その添加量でレジスト膜中の透過率を制御することもできる。
【0052】
本発明のレジスト材料には、上記成分以外の任意成分として、塗布性を向上させるために慣用されている(E)界面活性剤を添加することができ、これも特開2009−269953号公報記載の(E)定義成分を参照することができる。また、特開2008−122932号公報、特開2010−134012号公報、特開2010−107695号公報、特開2009−191151号公報、特開2009−98638号公報も参照でき、通常の界面活性剤並びにアルカリ可溶型界面活性剤を用いることができる。
【0053】
高分子型の界面活性剤の添加量は、ベース樹脂100部に対して0.001〜20部、好ましくは0.01〜10部の範囲である。これらは特開2007−297590号公報に詳述されている。
【0054】
更に、本発明のレジスト材料には、任意成分として、従来から用いられている(F)上記含窒素有機化合物以外の含窒素有機化合物を1種あるいは2種以上併用することもできる。その具体例としては、上記特開2009−269953号公報に記載されている。
【0055】
(F)成分として添加する含窒素有機化合物の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲であればいずれでもよいが、ベース樹脂100部に対して0〜12部、好ましくは0.001〜12部、特に0.01〜8部が好ましい。(F)成分の含窒素有機化合物の添加量が多すぎる場合には、解像性の劣化や、ダークエリアとブライトエリアでのパターン差の問題が生じる可能性がある。
【0056】
(G)成分である有機酸誘導体及び/又はフッ素置換アルコール、(H)成分である重量平均分子量3,000以下の溶解阻止剤の添加についても任意であるが、上記成分と同様に特開2009−269953号公報記載の化合物を参照できる。
【0057】
以下、本発明のレジスト材料を使用したパターン形成方法について説明する。本発明におけるパターン形成方法では、公知のリソグラフィー技術を採用して行うことができ、例えば、集積回路製造用の基板(Si,SiO2,SiN,SiON,TiN,WSi,BPSG,SOG,有機反射防止膜等)、あるいはマスク回路製造用の基板(Cr,CrO,CrON,MoSi等)にスピンコーティング等の手法で膜厚が0.05〜2.0μmとなるように塗布し、これをホットプレート上で60〜150℃、1〜10分間、好ましくは80〜140℃、1〜5分間プリベークする。次いで目的のパターンを形成するためのマスクを上記のレジスト膜上にかざし、遠紫外線、エキシマレーザー、X線等の高エネルギー線又は電子線を露光量1〜200mJ/cm2、好ましくは10〜100mJ/cm2となるように照射する。あるいは、パターン形成のためのマスクを介さずに電子線を直接描画する。露光は通常の露光法の他、場合によってはマスクとレジスト膜の間を液浸するImmersion法を用いることも可能である。その場合には水に不溶な保護膜を用いることも可能である。次いで、ホットプレート上で、60〜150℃、1〜5分間、好ましくは80〜140℃、1〜3分間ポストエクスポージャーベーク(PEB)する。更に、0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像して、基板上に目的のパターンが形成される。なお、本発明のレジスト材料は、特に高エネルギー線の中でも250〜190nmの遠紫外線又はエキシマレーザー、X線及び電子線による微細パターニングに最適である。また、上記範囲が上限又は下限から外れる場合は、目的のパターンを得ることができない場合がある。
【0058】
上述した水に不溶な保護膜はレジスト膜からの溶出物を防ぎ、膜表面の滑水性を上げるために用いられ、大きく分けて2種類ある。1種類はレジスト膜を溶解しない有機溶剤によってアルカリ現像前に剥離が必要な有機溶剤剥離型と、もう1種はアルカリ現像液に可溶でレジスト膜可溶部の除去と共に保護膜を除去するアルカリ可溶型である。
後者は特に水に不溶でアルカリ現像液に溶解する1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物をベースとし、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、及びこれらの混合溶媒に溶解させた材料が好ましい。
上述した水に不溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤を炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶媒に溶解させた材料とすることもできる。
また、パターン形成方法の手段として、フォトレジスト膜形成後に、純水リンス(ポストソーク)を行うことによって膜表面からの酸発生剤などの抽出、あるいはパーティクルの洗い流しを行ってもよいし、露光後に膜上に残った水を取り除くためのリンス(ポストソーク)を行ってもよい。
【実施例】
【0059】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、下記例中Meはメチル基を示す。
【0060】
[合成例1]
本発明の含窒素有機化合物を以下に示す方法で合成した。
[合成例1−1]1−ベンジルオキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール(amine−1)の合成
【化17】


窒素雰囲気下、2−フェニルベンズイミダゾール97g、2,6−ルチジン107g、テトラヒドロフラン700gの混合溶液にクロロ炭酸ベンジル107gを滴下後、50℃で20時間加熱撹拌した。通常の水系後処理の後、不溶物を濾別除去した後、濾液を濃縮して得られた固体をヘキサンで洗浄、乾燥し、1−ベンジルオキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール118gを得た(収率72%)。
IR(D−ATR):ν=3086、3066、3056、3043、1746、1709、1602、1534、1497、1488、1470、1453、1445、1388、1353、1338、1314、1294、1263、1213、1199、1144、1081、1062、1028、1018、990、957、937、908、879、856、840、793、765、758、750、742、712、697、687、635、615cm-1
1H−NMR(600MHz in DMSO−d6):δ=5.36(2H、s)、7.20−7.27(2H、m)、7.30−7.35(3H、m)、7.37−7.45(4H、m)、7.48(1H、m)、7.65−7.73(2H、m)、7.76(1H、m)、7.97(1H、m)ppm。
【0061】
[合成例1−2]1−ベンジルオキシカルボニル−2−メチルベンズイミダゾール(amine−2)の合成
【化18】


2−フェニルベンズイミダゾールの代わりに2−メチルベンズイミダゾールを使用した以外は、上記[合成例1−1]と同様の方法により1−ベンジルオキシカルボニル−2−メチルベンズイミダゾールを得た(収率70%)。
IR(D−ATR):ν=3288、3030、1739、1679、1605、1548、1498、1471、1454、1385、1330、1287、1258、1211、1188、1120、1087、1059、1015、965、943、908、877、791、751、697、679cm-1
1H−NMR(600MHz in DMSO−d6):δ=2.70(3H、s)、5.51(2H、s)、7.28−7.30(2H、m)、7.39(1H、m)、7.43−7.45(2H、m)、7.56−7.57(2H、m)、7.60(1H、m)、7.85(1H、m)ppm。
【0062】
[合成例1−3−1]2−シクロヘキシルベンズイミダゾールの合成
【化19】


o−フェニレンジアミン7g、シクロヘキサンカルボン酸12.5gを混合し、130℃〜150℃に加熱、溶融させ、8時間撹拌を行った。反応後の固体を1質量%苛性ソーダ水130g中へ移して懸濁させた後、濾過、熱湯にて洗浄を行った。得られた粗結晶にメタノール/水系の再結晶を行い、濾過、乾燥し、2−シクロヘキシルイミダゾール8.9gを得た(収率69%)。
【0063】
[合成例1−3−2]1−ベンジルオキシカルボニル−2−シクロヘキシルベンズイミダゾール(amine−6)の合成
【化20】


上記[合成例1−3−1]で合成した2−シクロヘキシルイミダゾールを用いて、上記[合成例1−1]と同様の方法により1−ベンジルオキシカルボニル−2−シクロヘキシルベンズイミダゾールを得た(収率83%)。
IR(D−ATR):ν=3065、3037、2930、2856、1742、1536、1499、1473、1454、1433、1390、1350、1334、1315、1295、1267、1249、1229、1217、1191、1120、1086、1019、967、910、894、872、846、794、765、752、739、697、648、637、580cm-1
1H−NMR(300MHz in DMSO−d6):δ=1.29−2.09(10H、m)、3.51(1H、m)、5.50(2H、s)、7.22−7.33(2H、m)、7.39−7.53(5H、m)、7.70(1H、m)、7.88(1H、m)ppm。
【0064】
[合成例2]
本発明のレジスト材料に用いる高分子化合物を以下に示す処方で合成した。なお、下記例中における“GPC”はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーのことであり、得られた高分子化合物の重量平均分子量(Mw)はGPCによりポリスチレン換算値として測定した。
[合成例2−1]polymer−1の合成
窒素雰囲気としたフラスコに50.6gのメタクリル酸1−(1−メチルエチル)シクロペンチル、23.1gのメタクリル酸2−オキソ−4−オキサヘキサヒドロ−3,5−メタノ−2H−シクロペンタ[b]フラン−6−イル、26.3gのメタクリル酸2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル、1.19gのV−601(和光純薬工業(株)製)、1.51gの2−メルカプトエタノール、175gのPMA(プロピレングリコールメチルエーテルアセテート)をとり、単量体−重合開始剤溶液を調製した。窒素雰囲気とした別のフラスコに58.3gのPMA(プロピレングリコールメチルエーテルアセテート)をとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記単量体−重合開始剤溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合液の温度を80℃に保ったまま2時間撹拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を、激しく撹拌した1.6kgのメタノールに滴下し、析出した共重合体を濾別した。共重合体をメタノール0.6kgで2回洗浄した後、50℃で20時間真空乾燥して83.3gの白色粉末状の共重合体を得た。共重合体を13C−NMRで分析したところ、共重合組成比は上記の単量体順で46.4/22.2/31.4モル%であった。GPCにて分析したところ、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は6,100であった。
【化21】

【0065】
[合成例2−2、2−3]polymer−2、polymer−3の合成
各単量体の種類、配合比を変えた以外は、上記[合成例2−1]と同様の手順により、下記に示した高分子化合物を製造した。
【化22】

【0066】
[参考合成例1]4−ヒドロキシナフチル−1−テトラヒドロチオフェニウムクロリドの合成
1−ナフトール10g(0.069モル)、テトラメチレンスルホキシド7.2g(0.069モル)をメタノール50gに溶解させ、−16℃に冷却した。20℃を超えない温度で塩化水素の過剰量をフィードした。窒素をバブリングして過剰量の塩化水素ガスを追い出した後に反応液を濃縮し、水及びジイソプロピルエーテルを加えて水層を分取した。4−ヒドロキシナフチル−1−テトラヒドロチオフェニウムクロリド水溶液を得た。これは、これ以上の単離操作をせず、水溶液のまま次の反応に用いた。
【0067】
[参考合成例2]4−ヒドロキシナフチル−1−テトラヒドロチオフェニウム2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネート(PAG−1)の合成
特開2007−145797号公報に記載の処方に準じて合成した1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)プロパンスルホン酸ナトリウム水溶液(0.021モル相当)と参考合成例1にて調製した4−ヒドロキシナフチル−1−テトラヒドロチオフェニウムクロリド水溶液(0.023モル相当)を混合し、ジクロロメタン100gとメチルイソブチルケトン50gを用いて抽出を行った。有機層を水洗し、溶剤を減圧留去した後にイソプロピルエーテルを加えて結晶化させ濾過、乾燥して目的物を得た(白色結晶6.2g、収率43%)。
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル、メチルイソブチルケトン)が観測されている。また19F−NMRにおいて微量の不純物が観測されているが、特開2007−145797号公報に記載の通り目的物のアニオンからフッ化水素が脱離したものである。
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1
3133、2933、2908、2855、1755、1572、1370、1352、1269、1213、1184、1168、1103、1088、1075、990、760、641
【0068】
[参考合成例3]1−(2−メトキシエトキシ)−ナフタレンの合成
1−ナフトール50.0g(0.347モル)、2−メトキシエチルクロリド34.4g(0.364モル)、水酸化ナトリウム14.6g(0.365モル)、ヨウ化ナトリウム2.6g(0.017モル)をエタノール100gに溶解させ、80℃で8時間加熱撹拌を行った。冷却後に水100gとトルエン200gを加えて有機層を分取し、5質量%水酸化ナトリウム水溶液100gで5回洗浄した。次いで水100gで4回洗浄した後に有機層を濃縮し、油状物45gを得た。これを減圧蒸留し(110℃/13Pa)、目的物を41g得た(収率58%)。
【0069】
[参考合成例4]4−(2−メトキシエトキシ)ナフタレン−1−テトラヒドロチオフェニウム2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネート(PAG−2)の合成
参考合成例3の1−(2−メトキシエトキシ)−ナフタレン5.0g(0.024モル)をアルドリッチ社製Eaton’s試薬(五酸化二燐−メタンスルホン酸溶液)10gに分散させ、テトラメチレンスルホキシド5.1g(0.049モル)を滴下混合した。室温で一晩熟成を行い、水30gとジイソプロピルエーテル30gを加えて水層を分取した。水層を再度ジイソプロピルエーテル30gで洗浄し、この水溶液に特開2007−145797号公報に記載の処方に準じて合成した1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)プロパンスルホン酸ナトリウム水溶液(0.007モル相当)を加え、ジクロロメタン50gを用いて2回抽出を行った。有機層を水洗し、溶剤を減圧留去した後にイソプロピルエーテルを加えて結晶化させ、濾過、乾燥して目的物を得た(白色結晶7.9g、収率94%)。
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル)が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1
1744、1452、1375、1337、1314、1263、1212、1199、1062、961、942、767、742、692
【0070】
[実施例1〜11、比較例1〜6]
上記合成例で示した含窒素有機化合物と高分子化合物を使用し、光酸発生剤を下記表1に示す組成で下記界面活性剤A(オムノバ社製)0.01質量%を含む溶剤中に溶解してレジスト材料を調合し、更にレジスト材料を0.2μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過することにより、レジスト溶液をそれぞれ調製した。
【0071】
なお、表1において、上記合成例で示した含窒素有機化合物と高分子化合物と共にレジスト材料として使用した光酸発生剤、溶剤、アルカリ可溶型界面活性剤(SF−1)及び比較例で用いたクエンチャーは下記の通りである。
P−1:polymer−1
P−2:polymer−2
P−3:polymer−3
光酸発生剤:PAG−1、PAG−2及びPAG−3(下記式)
【化23】


クエンチャー:amine−3、amine−4及びamine−5(下記式)
【化24】


PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
GBL:γ−ブチロラクトン
アルカリ可溶型界面活性剤(SF−1):下記式(特開2008−122932号公報記載の化合物)
ポリ(メタクリル酸3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−1,1−ジメチル−2−トリフルオロメチルプロピル・メタクリル酸1,1,1−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−6−メチル−2−トリフルオロメチルヘプタ−4−イル)
【化25】


界面活性剤A:3−メチル−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシメチル)オキセタン・テトラヒドロフラン・2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール共重合物(オムノバ社製)(下記式)
【化26】

【0072】
【表1】

【0073】
レジスト材料のダーク・ブライト差及びレジスト保存安定性の評価:ArF露光
シリコン基板上に反射防止膜溶液(日産化学工業(株)製、ARC−29A)を塗布し、200℃で60秒間ベークして作製した反射防止膜(100nm膜厚)基板上にレジスト溶液をスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、120nm膜厚のレジスト膜を作製した。これをArFエキシマレーザースキャナー((株)ニコン製、NSR−S610C、NA=1.30、二重極、Crマスク)を用いて液浸露光し、80℃で60秒間ベーク(PEB)を施し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で60秒間現像を行った。
【0074】
レジストの評価は、40nmのグループのラインアンドスペースを1:1で解像する露光量を最適露光量(Eop、mJ/cm2)とした。この評価に用いたのはダークエリアのラインアンドスペースパターンである(10本のラインアンドスペースパターンの両側がバルクパターンで遮光されている)。上記最適露光量におけるダークエリア並びにブライトエリア(10本のラインアンドスペースパターンの両側が広大なスペース部の透過エリアである。)におけるパターン形状を電子顕微鏡にて観察し、評価した。
ダークエリアパターン形状の評価基準は、以下のものとした。
矩形:ライン側壁が垂直であり、ボトム(基板付近)からトップまで寸法変化が少なく良好。
Tトップ:ライントップ付近で寸法が大きくなり、不適。
トップラウンディング:ライントップ付近が丸みを帯び寸法が小さくなり、不適。
また、上記Eopにおけるブライトエリアのラインアンドスペースパターンの線幅を測定しダーク・ブライト差とした。数値が小さいほどダークエリア、ブライトエリアでの寸法差が小さく良好なことを示す。
【0075】
レジスト溶液の保存安定性評価は、レジスト調製後20℃で1ヶ月経過後のEop値と初期Eop値とを比較することにより調べた。
下記式より感度変動値を求めた。
【数1】


負の値はレジストが高感度化したことを示す。絶対値が小さいほどレジスト中の組成物に経時変化が起こらず、保存安定性が高いことを示す。
各レジスト材料の評価結果を表2に示す。
【0076】
【表2】

【0077】
表2の実施例と比較例の結果より、本発明の含窒素有機化合物をクエンチャーとして用いたレジスト材料では、ダークエリアのパターン形状が良好で、かつダークエリアとブライトエリアの寸法差が小さいことが確認された。更に、例えば、実施例1と比較例3、比較例5などの結果の比較から分かるように、本発明の含窒素有機化合物をクエンチャーとして用いた場合、保存中に感度変動を起こすことなく、アルキルスルホニウム塩光酸発生剤の活性を損なわないことが示唆された。
以上のように、本発明の含窒素有機化合物をクエンチャーとして用いたレジスト材料は解像性、特にパターン形状の矩形性に優れ、ダーク・ブライト差の小さい良好なパターンを与え、かつアルキルスルホニウム光酸発生剤の保存安定性の低さを改善可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される含窒素有機化合物。
【化1】


(式中、R1は水素原子、炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜15のアリール基を示す。R2とR3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜15のアリール基を示し、R2とR3は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。R4は炭素数6〜15のアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基を示す。)
【請求項2】
請求項1記載の含窒素有機化合物の1種又は2種以上をクエンチャーとして含有することを特徴とするポジ型化学増幅レジスト材料。
【請求項3】
(A)クエンチャーとして請求項1記載の含窒素有機化合物、(B)有機溶剤、(C)酸の作用によりアルカリ現像液への溶解性が変化するベース樹脂、及び(D)光酸発生剤を含有することを特徴とする請求項2記載のポジ型化学増幅レジスト材料。
【請求項4】
(D)成分が、下記一般式(2)で表されるスルホニウム塩化合物であることを特徴とする請求項3記載のポジ型化学増幅レジスト材料。
【化2】


(式中、R5、R6、R7はそれぞれ独立に、フッ素原子、水酸基又はエーテル結合を有してもよい炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルケニル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示すか、あるいはR5、R6及びR7のうちいずれか2つ以上がそれぞれ結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。R8は水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。R9はヘテロ原子を含んでもよい炭素数6〜30の直鎖状、分岐状又は環状の1価の炭化水素基を示す。)
【請求項5】
(1)請求項2乃至4のいずれか1項に記載のポジ型化学増幅レジスト材料を基板上に塗布する工程と、(2)加熱処理後、フォトマスクを介して高エネルギー線で露光する工程と、(3)必要に応じて加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項6】
(1)請求項2乃至4のいずれか1項に記載のポジ型化学増幅レジスト材料を基板上に塗布する工程と、(2)加熱処理後、フォトレジスト膜の上に保護膜層を形成する工程と、(3)投影レンズとウエハーの間に水を挿入させ、フォトマスクを介して高エネルギー線で露光する工程と、(4)必要に応じて加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。

【公開番号】特開2012−67080(P2012−67080A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172514(P2011−172514)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】