説明

含銅か焼物の選択的還元

銅/ニッケル含有硫化物系材料から得たか焼物を選択的に還元する方法は、該か焼物を、比較的高い温度で穏和な還元雰囲気にさらすことを包含する。CuOがCuOに選択的に転化され、このCuOを、浸出により、該材料中に存在することがある他の金属から容易に分離することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本開示は、銅と緊密に混合された金属を含む硫化物材料から銅を回収する方法に関する。本方法は、含銅マットまたはそのようなマットの画分を処理するのに特に有用である。
【発明の背景】
【0002】
銅およびニッケルは、溶解熱力学的に近い親類であり、鉱石およびマットを処理する際に、ニッケルを銅から効率的に分離するのは困難である。米国特許第4,168,217号(「第217号特許」)は、銅を、金属の鉄、ニッケルおよびコバルトの少なくとも一種を含む硫化物系材料、例えば含銅マットまたはマット画分(例えばベッセマーマット)、から回収する方法であって、該材料を少なくとも約750℃の温度で完全焙焼し、実質的に硫黄を含まないか焼物を形成し、該か焼物を冷却した後、硫酸水溶液中、少なくとも約50℃の温度で浸出させ、該材料中に最初に存在していた銅の大部分が溶解している濃厚浸出液を、該材料中に最初に存在していた鉄、ニッケルおよびコバルトすべての大部分を含む浸出残留物から分離する方法を記載している。第217号特許の方法では、得られるか焼物が、大量のCuOを、容易に浸出しないNiOとの固溶体中に含む。
【0003】
米国特許第4,135,918号は、銅に加えて、鉄、ニッケルおよびコバルトの群から少なくとも一種の他の金属を含む粒子状の硫化物含有材料から銅を回収する方法であって、該材料を少なくとも約750℃の温度で、実質的に硫黄を含まないか焼物を形成するのに十分な時間焙焼すること、該か焼物と、水との、またはその場で形成される硫酸を補足し、他の金属の硫酸塩を形成するための化学量論的量を満足させるのに、少なくとも十分な量の硫酸とのスラリーを形成すること、該スラリーを、加圧下で、還元性ガスの存在下で少なくとも110℃に加熱し、他の金属を硫酸塩化し、銅を元素状の形態に還元すること、および加圧熱処理の生成物を、他の金属および元素状銅を含む固体残留物を含む液に分離することにより、行う方法を記載している。上記のように、か焼物は大量のCuOを、容易に浸出しないNiOまたはフェライトとの固溶体中に含む。
【0004】
銅を硫化物系材料から回収する方法は、米国特許第4,120,697号にも記載されており、そこでは硫化物系材料を焙焼してか焼物を形成し、該か焼物を粒子状の炭素質還元剤と、および該か焼物中に含まれる貴重な銅をハロゲン化するための少量の、少なくとも一種の、偏析焙焼温度で気体状ハロゲンまたはハロゲン化水素に熱変換され得るハロゲン化物塩と混合し、該混合物を、約650℃〜約700℃の偏析焙焼温度に加熱し、その温度で、該か焼物中の貴重な銅を反応させ、ハロゲン化銅を形成し、このハロゲン化銅が粒子状炭素質還元剤に運ばれ、そこでハロゲン化銅から金属銅が炭素質還元剤上に析出し、該析出した金属銅を回収する。この製法では、か焼後に銅を金属形態に還元するための塩の形成が関与しているが、この塩は、さらに処理し、浮選または他の物理的な分離により分離する必要がある。
【0005】
このように、製造の時間およびコストを増加させる様々な、さらなる処理工程を行わずに、混合物中に存在する銅と、他の金属、例えばニッケル、コバルトおよび鉄、との間の、望ましい程度の選択性を達成することは困難であった。銅および他の金属を混合物から精製するための、より効率的な方法を提供することが依然として求められている。
【発明の概要】
【0006】
銅に加えて、鉄、ニッケルおよびコバルトからなる群から選択された少なくとも一種の他の金属を含む硫化物含有材料から銅を回収する方法であって、該硫化物含有材料を、硫黄を実質的に含まないか焼物を形成するのに十分な時間焙焼すること、該か焼物を、該か焼物中のCuOをCuOに選択的に還元し、還元されたか焼物を形成するのに十分な熱および還元性雰囲気にさらすこと、該還元されたか焼物を酸化性浸出に付すること、および該銅を回収することを包含する方法を提供する。該還元工程により、CuOがNiOに不溶であるために、銅が酸化ニッケルマトリックスから分離される。
【0007】
銅に加えて、鉄、ニッケルおよびコバルトからなる群から選択された少なくとも一種の他の金属を含むか焼物中のCuOをCuOに選択的に還元する方法であって、該材料を、硫黄を実質的に含まないか焼物を形成するのに十分な時間焙焼すること、該か焼物を、該か焼物中のCuOをCuOに選択的に還元し、還元されたか焼物を形成するのに十分な熱および還元性雰囲気にさらすことを包含する方法を提供する。
【好ましい実施態様の説明】
【0008】
本発明では、浸出の前に、か焼物中で、好適な還元雰囲気および十分に高い温度下で、CuO(テノーライト)をCuO(キュプライト)に選択的に還元し、ニッケル、鉄、コバルトおよび/または存在する場合がある他の金属の混合物から銅を驚く程効果的に分離する。還元工程は、酸化銅を浸出に利用できるようにすることに加えて、NiOを耐火性にもする。例えば、ある代表的な実験で、総合焙焼した、Cu/Ni比が1.0であるベッセマーマットを本明細書に記載する技術に付することにより、約97.8%の銅を抽出し、ニッケル抽出は約0.3%に過ぎなかった。
【0009】
本明細書で開示する方法は、広範囲な銅含有材料に応用することができ、銅以外の金属の量が比較的低い材料の処理にも有用である。例えば、本方法は、銅含有量が他の金属の総含有量をはるかに大きく超えている材料に好適である。これは通常、本明細書に記載する技術でも処理することができる鉱石または濃縮物には当てはまらないが、マットならびに、例えば酸浸出製法またはニッケルカルボニル化製法から得られる各種の冶金学的残留物にも当てはまるであろう。
【0010】
一態様で、銅および少なくとも一種の他の金属を含み、実質的に硫黄を含まない、すべてのか焼物を本発明で使用できる。そのようなか焼物を得る様々な技術は、当業者には良く知られている。実際、硫化物を含む材料を処理し、硫黄の大部分を除去するのに、どのような技術でも使用できる。例えば、焙焼を行う温度は、得られるか焼物の望ましい良好な浸出特性を達成するのに重要であると通常考えられている。良く知られている技術(例えば米国特許第4,168,217号参照)では、約750℃の最低温度が推奨されており、約800℃が好ましく、約950℃を超えるべきではない。本発明では、焙焼温度は、以前に使用されている温度よりも高くてよい。しかし、焙焼温度が高過ぎると、か焼物の有害な融解が起こるので、通常、温度は約1050℃を超えるべきではない。したがって、本発明により、温度が高いが、か焼物の融点未満である時に、焙焼をより高い速度で進行させることができる。温度を最大にすると、反応速度は増加する。好ましい実施態様では、硫黄のほとんど100%を確実に除去するために、硫化物材料の焙焼を、過剰の酸素を含む雰囲気中で行う。そのような温度では、約0.5時間〜約3時間の保持時間が、原料の硫黄含有量を約0.5%以下に下げるのに十分であることが分かった。他に指示がない限り、本明細書に記載する百分率はすべて重量百分率である。ここで使用する「実質的に」は、ほとんど、または正確に、を意味する。
【0011】
マットまたはマット画分の場合、先行技術と対照的に、処理するマットまたはマット画分の組成は、銅抽出および達成できる選択性にもあまり関係しない。実際、本方法は、ほとんどすべての範囲の銅、鉄およびニッケル比で効果的であるので、各成分の相対的濃度は重要ではない。
【0012】
焙焼は、様々な公知の形態の装置のどれでも行うことができ、自溶的(autogenously)に進行することができる。流動床焙焼装置を使用するのが好ましいが、これは、そのような焙焼装置で高い処理量が可能であり、排ガス中の二酸化硫黄濃度が比較的高いためである。流動床焙焼の目的には、原料は、好ましくは直径が約100〜約600ミクロンの粒子形態にあるのが好ましい。初期原料が微粉である場合、ペレット化が必要になる場合がある。しかし、原料が予め溶融したマットに由来する場合、高温マットの水造粒により、所望の粒子を製造することができる。後者の手法は、流動床焙焼操作の際の粉塵発生が少ないので、好ましい。
【0013】
例えば完全焙焼により製造された含銅か焼物は、Niとの固溶体中に大量のCuOを含むことができる。ついで、そのか焼物を、比較的高い温度および適度に穏和な還元雰囲気を使用して選択的還元にかけ、これによって、NiOの外にCuOを形成し、酸化ニッケルマトリックスからCuOを効果的に除去すると考えられる。好ましい実施態様では、選択的還元を確保し、ニッケル金属の形成が確実に回避されるように、還元体が多過ぎないように、還元性ガス混合物を選択する。効果的な還元を達成するのに必要なpO(酸素分圧)および温度の範囲は、状態図に例示されており、良く知られている技術を使用して決定することができる。図1は、銅およびニッケルの優位性グラフであり、その中で、グレー領域は、下流の浸出効率を損なう恐れがあるニッケル金属を形成せずに、CuOからCuOへの還元を行うことができる領域を示している。最小pOは、ニッケル金属が安定している領域(破線)に示される。矢印は、温度を増加し、低pOで操作することにより、最大限の速度および回収を達成できることを示している。黒の菱形は、潜在的な還元目標条件を示す。最大pOは、CuOがCuOに還元されるところである。好ましくは、CuOへの転化は、ニッケル金属を形成しない、できるだけ低いpOで、できるだけ高い温度で行う。銅金属は、形成されても、酸化性浸出により効果的に浸出される。
【0014】
pOは、良く知られている技術により、好適なガスを適量に混合することにより、調整することができる。例えば、CO、CO、HおよびHO混合物は、還元性雰囲気を造り出すのに良く知られている。図2は、COおよびCOガスを適切な比で混合することにより、pOを調整できることを示している。特に、図2は、酸素分圧(気圧)と、温度および総圧1気圧におけるCO/CO比との関係を表す曲線を示すグラフである。破線で示す曲線の下にある影の区域は、準安定状態を示す。H/HO混合物に類似の表が存在する。HとCOを混合し、CO、CO、HおよびHOの混合物を形成することができる。10−6未満のpOを使用することができ、約10−10が好ましい。混合物の一例は、約3〜5%(体積%)のHを含み、残りがCOである、HとCOのガス混合物であり、約1000℃で約10−10〜10−12のpOを生じる。別の混合物は、約1000℃で約1000(約10−11のpO)のCO/COを包含することができる。一態様では、当業者に一般的に行われているように、燃料の部分的燃焼により、pOを制御することができる。ガス中のCOおよびCO濃度を測定することにより、酸素濃度(pO)を間接的に測定することができ、燃料/空気比を変え、適切なCO/CO比、すなわちpO、を維持す
る。CO/COガス発生は、Boudouard反応により固体炭素から得ることもできる。
【0015】
ここで使用できる比較的高い温度は、還元条件を強化するのに好適な温度である。当業者は、還元の速度を最大限にするのに適切な温度を容易に決定することができる。例えば図1および2参照。実際的な問題として、酸化銅は約1050℃で融解し始め、これが上側範囲を効果的に制限する。したがって、好ましい温度範囲は約750℃〜約1050℃であり、約1000℃がさらに好ましい。本明細書で記載する還元用の容器として、どのような好適なオーブンまたは炉でも使用できるが、高度に混合される反応器、例えば動的流動床装置、が、高い速度を達成するのに好ましい。
【0016】
本明細書で記載する還元により製造された、還元されたか焼物は、冷却し、必要であれば、粉砕した後、酸化性浸出にかける、例えば、銅の電解採取操作から得られる使用済み電解質を都合良く含んでなることができる硫酸水溶液でスラリー化し、CuOを選択的に溶解させることができる。浸出剤は、遊離硫酸に加えて、ある程度の溶解した銅を含むことができる。実用的な浸出速度を達成するには、典型的には少なくとも約50℃の浸出温度が必要であるが、約80℃以上の温度は、ニッケルおよび鉄の溶解を増加させる好ましくない効果を有することがある。好ましい実施態様では、約60〜70℃の浸出温度と共に約2〜3時間の保持時間が良好な結果を与えることが分かっている。固体−液体を分離した後、その液体は、高純度銅製品の電解採取に使用することができ、一方、残留物を処理し、ニッケルおよびコバルト、ならびに原料中に存在することがある貴金属もすべて回収することができる。
【実施例】
【0017】
下記の例は、本発明の特定の態様を例示するためである。したがって、これらの例は、本発明のいかなる態様も制限するものではない。本発明の方法の幾つかの例を、添付の図面を参照しながら説明する。
【0018】
例1
ベッセマーマット(Cu(40.7%)、Ni(39.7%)、Co(0.54%)、Fe(0.91%)およびS(18%))を12インチ(30.4cm)流動床中で焙焼した。そのか焼物を、還元試験用の原料として使用した。
【0019】
か焼物の500グラム試料を、直径2インチ(5.1cm)のミニプラント流動床に入れ、1000℃に加熱した。CO/CO比を1000に調整し、pOを約10−8にした(図2参照)。流動化ガス流量は、10L/分N2、25L/分COおよび0.025L/分COであった。これらの条件を1時間維持し、炉のヒーターを切った。ガスを流して材料を急速に冷却した。第二の還元試験を行い、還元中の、滞留時間をより長くした場合の影響を確認した。この試験は、同じ条件下で、ただし2時間行った。
【0020】
幾つかのベンチスケール浸出試験を2種類の還元試料に行った。か焼物試料25グラムを、硫酸180g/Lを含む溶液250mLに入れて使用した。第一の試験では、濃度30%のHを加えて銅をCuOに酸化し、浸出させた。試験結果を下記の表1に示す。追加試験は、酸素および空気散布を使用し、銅を酸化した。下記の表2参照。溶液を80℃で2時間浸出させた。これらの試料を濾過し、溶液および残留物を分析に送った。
【0021】
別の浸出試験は、か焼物を、Bluelerミル中、15秒間粉砕し、空気を散布して酸化させた。純粋な硫酸溶液の代わりに、銅の電解採取設備から得た使用済み銅電解質流を使用する試験も行った。ほとんどの試験は、500mLビーカーおよび磁気攪拌機を使用した。最後の試験は、部分的攪拌を改良し、ガス分散液を増加するために、湿式精錬浸出装置を使用した。試験#1の位相確認マイクロプローブ分析の結果を下記の表3に示す。
【0022】
還元されたか焼物は、光学顕微鏡下で観察した時に、多孔質構造を有していた。還元下で、焙焼したベッセマーマット中のNiOとの固溶体中にあるCuOがCuOとして放出され、観察された多孔質構造を形成したと思われる。還元の際にNiOマトリックスからCuOが除去されることにより、銅が浸出に利用される。その上、CuOが固溶体から除去された後、NiOは、より耐火性になる。焙焼したベッセマーマットに基線試験を行い、溶液中にあるニッケルは9.4%であり、銅の溶解は73%しかないことが分かり、したがって、NiOは、CuOとの固溶体にある時は耐火性ではないことが立証される。1時間還元−浸出試験から得たSEM/EDX(半定量的)分析(表3)は、CuOが、NiOとの固溶体中で約30%から6.6%(±4.2)に還元されたことを示している。これは、残留物検定4.4%CuOに相当する。2時間還元で観察された、改良された浸出結果は、さらに多くのCuOが放出された(残留物中にCuO2.3%)ことを示している。
【0023】
酸化にHを使用して行った実験では、浸出の前に粗いか焼物を粉砕しなかった。得られた浸出残留物は、非常に細かく、酸化銅の除去により、残留NiO粒子が解放されることを示している。
【0024】
空気を使用し、粉砕せずに行った浸出試験では、銅の回収は65%に過ぎなかった(表2)。浸出の前に還元されたか焼物を粉砕することにより、過酸化物を使用して行った試験に匹敵する結果が得られた。試験#7(表2、粉砕したか焼物、空気散布)における銅の回収95%は、銅回収が95%の試験#1および#2(表1、粉砕せず、過酸化物)と同等である。溶液へのNi、FeおよびCo損失は、試料の粉砕により、僅かに増加した。
【0025】
浸出試験#12は、攪拌を強化して行った。試料は粉砕せず、銅回収90%を達成したのに対し、空気散布および磁気回転棒を使用した場合(試験#6)は銅回収65%であった。この試験は、攪拌の強化により、銅の溶解が改善されることを立証している。
【0026】
したがって、粉砕の最適化、攪拌の強化、および/または銅の回収に酸素を使用することにより、過酸化水素の使用と同等の結果を達成することができる。
【0027】
表1 酸化に過酸化水素を使用する選択された試験の解析

試料を粉砕しなかった 検定 分布
Ni Cu Co Fe Ni Cu Co Fe
試験#1 残留物% 74.2 3.5 1.1 2.0 99.8 4.7 99.8 99.3
(1時間 液 gpL 0.11 42.89 0.001 0.017 0.2 95.3 0.2 0.7
還元)
試験#2 残留物% 74.1 3.5 1.0 2.0 99.8 4.5 99.8 98.6
(1時間 液 gpL 0.092 38.1 0.001 0.008 0.2 95.5 0.2 1.4
還元)
試験#5 残留物% 75.7 1.8 1.1 2.0 99.7 2.2 99.6 99.0
(2時間 液 gpL 0.177 49.91 0.003 0.015 0.3 97.8 0.4 1.0
還元)
【0028】
表2 浸出酸化体として空気を使用する選択された試験の解析

試験は1時間還元で 検定 分布
行った
Ni Cu Co Fe Ni Cu Co Fe
試験#6 残留物% 57.4 22.5 0.8 1.7 99.3 34.8 99.3 97.6
(1粉砕 液 gpL 0.448 41.4 0.007 0.046 0.7 65.2 0.7 2.4
なし)
試験#7 残留物% 70.9 4.08 0.981 1.8 99.1 5.0 99.1 96.9
(粉砕) 液 gpL 0.512 52.3 0.007 0.051 0.9 95.0 0.9 3.1

試験#12 残留物% 70.2 7.3 1.0 1.9 99.7 9.6 99.4 98.4
(粉砕なし 液 gpL 0.132 33.5 0.03 0.017 0.3 90.4 0.6 1.6
攪拌)
【0029】
表3 浸出残留物のSEM/EDXマイクロプローブ分析

相 平均 2S.D. 最大 最小
FeO 2.34 1.65 4.39 6.47
CeO 1.77 1.17 3.7 0.71
NiO 89.34 4.8 94.91 85.15
CuO 6.55 4.16 10.82 3.91
【0030】
例2
Cu−Ni−Fe系における鉄の影響を評価した。3種類の試料、すなわち1)フラッシュ炉マット(Cu−23%、Ni−22.6%、Co−0.664%、Fe−25.2%、S−26.7%)、2)合成マット(Cu−14.9%、Ni−16%、Co−0.435%、Fe−39.2%、S−29.4%)、および3)バルクCu−Ni濃縮物(Cu−12.1%、Ni−9.25%、Co−0.278%、Fe−37.5%、S−32.3%)を試験した。それぞれの場合に良好な銅の分離が達成された。この試験結果を表4に示す。各試料に対して、下記の手順を使用した。
【0031】
試料を融解させ、水で造粒した。造粒した試料約2kgを耐火性パンに入れ、周囲の空気雰囲気中、約900℃に約24時間加熱し、材料を焙焼した。焙焼した材料1kgを直径2インチ(5.1cm)の流動床中に入れ、流動に空気を約45slpmで使用し、1000℃に加熱(外部電気素子)することにより、流動床還元を行った。この材料を1000℃で10分間「再焙焼」し、次いで空気雰囲気をガス混合物(20slpmN、25slpmCO、0.025slpmCO)で置き換えた。次いで、材料を100℃で2時間還元させ、この時点で炉の電力を切り(ガス混合物は残して)、約30分間冷却させた。酸化性浸出を行うために、500mLビーカー中で硫酸25グラムを蒸留水250mLと混合し、加熱し、ホットプレートおよび攪拌機構を使用して攪拌しながら80°に維持した。浸出させる材料25グラムをビーカーに加えた。過酸化水素30mLを時間=0で徐々に加え、時間=1時間で再度徐々に加えた。試験を2時間で停止し、試料を濾過した。それぞれの重量および体積を記録した。
【0032】
表4 高鉄分マットの焙焼−選択的還元−浸出の結果

試料は粉砕しなかった 検定 分布

Ni Cu Co Fe Ni Cu Co Fe
フラッシュ 残留物% 40.7 3.1 1.0 32.5 96.4 13.3 89.8 70.8
炉マット 液 gpL 0.891 21.77 0.069 8.22 3.6 93.3 10.2 29.2

合成高鉄分 残留物% 25.3 3.0 0.6 44.8 95.2 13.3 93.6 78.0
マット 液 gpL 0.836 12.41 0.031 9.35 4.8 86.7 6.4 22.0

バルク 残留物% 18.3 5.5 0.5 50.3 92.4 21.7 90.2 71.7
Cu−Ni 液 gpL 0.925 10.863 0.036 13.108 7.6 78.3 9.8 28.3
濃縮物
合成高鉄分マットは、フラッシュ炉マットを硫化鉄と混合することにより、製造した。この混合物を融解させ、水で造粒した。
【0033】
この例は、焙焼−還元−浸出過程に関して、原料中の鉄レベルが減少するにつれて、銅の抽出が増加することを示している。銅フェライトは、キュプライトに変換され得る。遊離のキュプライトは、容易に浸出される。もう一つの重要な観察点は、溶液へのニッケル抽出が、原料中の鉄が増加するにつれて高くなることである。ニッケル抽出3.6〜7.6%が観察されたのに対し、低鉄分(1%Fe)のベッセマーマットか焼物ではニッケルが0.3%しか抽出されなかった。
【0034】
法律の規定に基づき、本発明の具体的な実施態様を例示し、説明した。請求項に規定される本発明の範囲および精神から離れることなく、本明細書で記載する例および実施態様に様々な集積を加えることができる。当業者には明らかなように、請求項により包含される本発明の形態内で、変形を行うことができ、本発明の特定の特徴を、他の特徴を対応して使用せずに、有利に使用できる場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】銅およびニッケルの優位性グラフである。
【図2】酸素圧(気圧)と、温度および総圧1気圧におけるCO/CO比との関係を表す曲線を示すグラフである。破線で横切る曲線の下にある影の区域は、準安定状態を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅に加えて、鉄、ニッケルおよびコバルトからなる群から選択された少なくとも一種の他の金属を含む硫化物含有材料から銅を回収する方法であって、前記材料を、硫黄を実質的に含まないか焼物を形成するのに十分な時間焙焼すること、前記か焼物を、前記か焼物中のCuOをCuOに選択的に還元し、還元されたか焼物を形成するのに十分な熱および還元性雰囲気にさらすこと、前記還元されたか焼物を酸化性浸出に付すること、および前記銅を回収することを含んでなる、方法。
【請求項2】
前記還元性雰囲気の酸素分圧が、CuOをCuOに還元するのに十分に低いが、NiOを金属Niに還元する程低くはない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記還元性雰囲気のpOが約10−10である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記十分な熱が約750℃〜約1050℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記硫化物含有材料が、ベッセマーマットである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記酸化性浸出が硫酸中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記還元性雰囲気が、CO/CO、H/HOおよびそれらの組合せからなる群から選択された混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記か焼物が、流動床装置を使用する調整された雰囲気中で還元される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記酸化性浸出から出る浸出液を電解採取に付し、該浸出液から銅を回収し、前記電解採取操作から出る使用済み電解質を循環使用し、還元されたか焼物材料のさらなる供給分を浸出するための硫酸水溶液を構成する、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記ベッセマーマットを完全焙焼し、硫黄をすべて除去する、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記温度が約1000℃である、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
銅に加えて、鉄、ニッケルおよびコバルトからなる群から選択された少なくとも一種の他の金属を含むか焼物中のCuOをCuOに選択的に還元する方法であって、前記材料を、硫黄を実質的に含まないか焼物を形成するのに十分な時間焙焼すること、前記か焼物を、前記か焼物中のCuOをCuOに選択的に還元し、還元されたか焼物を形成するのに十分な熱および還元性雰囲気にさらすことを含んでなる、方法。
【請求項13】
前記還元性雰囲気の酸素分圧が、CuOをCuOに還元するのに十分に低いが、NiOを金属Niに還元する程低くはない、請求項12に記載のか焼物中のCuOをCuOに選択的に還元する方法。
【請求項14】
前記還元性雰囲気のpOが約10−10である、請求項13に記載のか焼物中のCuOをCuOに選択的に還元する方法。
【請求項15】
前記十分な熱が約750℃〜約1050℃である、請求項12に記載のか焼物中のCuOをCuOに選択的に還元する方法。
【請求項16】
前記温度が約1000℃である、請求項12に記載のか焼物中のCuOをCuOに選択的に還元する方法。
【請求項17】
前記硫化物含有材料が、ベッセマーマットである、請求項12に記載のか焼物中のCuOをCuOに選択的に還元する方法。
【請求項18】
前記ベッセマーマットを完全焙焼し、硫黄をすべて除去する、請求項17に記載のか焼物中のCuOをCuOに選択的に還元する方法。
【請求項19】
前記か焼物が、流動床装置を使用する調整された雰囲気中で還元される、請求項12に記載のか焼物中のCuOをCuOに選択的に還元する方法。
【請求項20】
前記還元されたか焼物を酸化性浸出に付すること、および銅を回収することをさらに含んでなる、請求項12に記載のか焼物中のCuOをCuOに選択的に還元する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−526397(P2007−526397A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501075(P2007−501075)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【国際出願番号】PCT/CA2004/001930
【国際公開番号】WO2005/085484
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(591017261)シーブイアールディ、インコ、リミテッド (17)
【氏名又は名称原語表記】CVRD Inco Limited
【Fターム(参考)】