吸収体及びその製造方法
【課題】柔軟で吸収性能に優れ、液の拡散を制御して液漏れを効率よく防止することができ、製造も容易な吸収体、及びそのような吸収体を効率よく製造可能な吸収体の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の吸収体は、長繊維と合成又は半合成繊維である短繊維とを含む繊維集合体を含んでなる。本発明の吸収体は、親水性を有する長繊維のウエブ12とその中に含まれる塊状の吸収性ポリマー13とを有し、吸収体10の平面方向又は厚み方向の一部に吸収性ポリマー13が偏在しており、ウエブ12の平面方向における、吸収性ポリマーが分布する範囲Mには、長繊維が切断されて多数の短繊維122が生じている。吸収体の製造方法は、長繊維のウエブ12に塊状の吸収性ポリマー13を散布し、該ウエブ12の一部における長繊維を吸収性ポリマー13に押し当てて切断させる。
【解決手段】本発明の吸収体は、長繊維と合成又は半合成繊維である短繊維とを含む繊維集合体を含んでなる。本発明の吸収体は、親水性を有する長繊維のウエブ12とその中に含まれる塊状の吸収性ポリマー13とを有し、吸収体10の平面方向又は厚み方向の一部に吸収性ポリマー13が偏在しており、ウエブ12の平面方向における、吸収性ポリマーが分布する範囲Mには、長繊維が切断されて多数の短繊維122が生じている。吸収体の製造方法は、長繊維のウエブ12に塊状の吸収性ポリマー13を散布し、該ウエブ12の一部における長繊維を吸収性ポリマー13に押し当てて切断させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品に好ましく用いられる吸収体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続フィラメントの開繊トウを用いた吸収性物品の吸収体が知られている。例えば、捲縮性アセテート繊維のトウ層と、この層の片面に積層した粉砕パルプ層とからなる吸収体であって、該吸収体の厚さ方向に両層をプレスで一体化したものが知られている(特許文献1参照)。この吸収体によれば、体液の拡散性が向上するとされている。しかし、アセテート繊維はパルプよりも吸水能力が劣るので、この吸収体の吸収容量を高めるためには、多量の粉砕パルプを使用しなければならない。その結果、吸収体が厚くなり、柔軟性が低下し吸収性物品の着用感が低下してしまう。
【0003】
ところで、使い捨ておむつにおける横漏れを防止する技術として、例えば、吸収体の両側部に着用者の肌側に向かって突出する凸条部を形成することが知られている。しかし、凸条部を形成するために、製造工程が複雑化したり、製造コストが上昇したりする。
【0004】
これらの技術とは別に、本出願人は先に、パルプ繊維、高吸水性ポリマー、及び該パルプ繊維より繊維長の長い親水性繊維よりなる多数の小塊より形成された吸収体を有する吸収性物品を提案している(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開昭57−160457号公報
【特許文献2】特開平07−024003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、柔軟で吸収性能に優れ、液の拡散を制御して液漏れを効率よく防止することができ、製造も容易な吸収体、及びそのような吸収体を効率よく製造可能な吸収体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、長繊維と合成又は半合成繊維である短繊維とを含む繊維集合体を含んでなる吸収体を提供することにより、前記目的を達成したものである。
【0008】
本発明は、長繊維のウエブと該ウエブ中に含まれる塊状の粒子とを有する吸収体であって、前記ウエブの平面方向における前記粒子が分布する範囲の少なくとも一部に、前記長繊維が切断されて多数の短繊維が生じている吸収体を提供することにより、前記目的を達成したものである。
【0009】
本発明は、長繊維のウエブと該ウエブ中に含まれる塊状の粒子とを有し、該ウエブの一部に、前記長繊維が切断されて多数の短繊維が生じている吸収体の製造方法であって、親水性を有する長繊維のウエブの塊状の粒子を散布した後、該粒子を散布した範囲の少なくとも一部を厚み方向に加圧し、該一部における前記長繊維を前記粒子に押し当てて切断させる、吸収体の製造方法を提供することにより、前記目的を達成したものである。
【0010】
本発明は、請求項1〜12の何れかに記載の吸収体を具備する吸収性物品であって、着用時に着用者の排泄部に対向配置される部位に、前記短繊維が存在する吸収性物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の吸収体は、柔軟で吸収性能に優れ、液の拡散を制御して液漏れを効率よく防止することができ、製造も容易である。
本発明の吸収体の製造方法によれば、そのような吸収体を効率よく製造可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明する。
第1実施形態の吸収体10は、図1及び図2に示すように、親水性を有する長繊維のウエブ12と該ウエブ12中に含まれる塊状の吸収性ポリマー13(塊状の粒子)からなる吸収性コア11と、該吸収性コア11を被覆するラップシート14とからなる。
吸収体10は、平面視して長方形状であり、吸収性物品に組み込まれた状態においては、該吸収体の長手方向と、着用時における着用者の前後方向とが一致する。
【0013】
長繊維のウエブ12は、元々はその全体が長繊維からなるものであったが、吸収体10として完成した状態においては、ウエブ12の一部における長繊維は、切断されて短繊維となっている。本発明においては、長繊維からなる部分と同一の長繊維が切断されて生じた短繊維からなる部分も、長繊維のウエブの一部とする。
本実施形態の吸収体10においては、長繊維が切断されて生じた短繊維を含む長繊維のウエブ12が、長繊維と合成又は半合成繊維である短繊維を含む繊維集合体である。
【0014】
吸収体10における吸収性ポリマー13は、吸収体10の平面方向の一部に偏在している。具体的には、図1及び図2に示すように、長繊維のウエブ12の平面方向における、吸収体10の幅方向中央の所定幅の領域M(以下、中央領域Mともいう)に位置する部分に偏在している。吸収性ポリマー13は、前記中央領域Mに位置する部分に、略一様に分布している一方、該中央領域Mの両外方の側部領域S,Sに位置する部分には実質的に存在していない。
【0015】
そして、ウエブ12の平面方向における、吸収性ポリマー13が分布する範囲、即ち前記中央領域Mに位置する部分には、側部領域S,Sに位置する部分を構成する長繊維121と同一の長繊維が切断されて生じた多数の短繊維122が存在している。他方、ウエブ12における、側部領域S,Sに位置する部分を構成する長繊維121は、長繊維の形態を維持している。側部領域S,Sに位置する部分の長繊維121は、ウエブ12の長手方向に配向している。
【0016】
長繊維のウエブ12は、長繊維として、捲縮した長繊維を含むことが好ましい。長繊維の捲縮率(JIS L0208)は好ましくは10〜90%であり、より好ましくは10〜60%であり、更に好ましくは10〜50%である。長繊維が捲縮していることで、吸収体10が全体的に柔軟に変形しやすいものとなり、吸収性物品に組み込まれたときの、着用者に対するフィット性や、凹形状に変形させて防漏性を向上させる場合の凹形状への変形性を高めることができる。
長繊維のウエブ12は、長繊維が切断されて生じた短繊維122(以下、長繊維由来の短繊維ともいう)として、捲縮した短繊維を含むことが好ましい。捲縮した短繊維は、上述した捲縮した長繊維と同程度の捲縮率を有していることが好ましい。短繊維が捲縮していることによって、ウエブ中に吸収性ポリマーがより安定に保持され、吸収性ポリマーが該ウエブ内を移動したり、該ウエブから脱落したりすることが抑制される。
【0017】
長繊維及び短繊維の前記捲縮は、二次元的でも三次元的でもよい。また、長繊維の捲縮率は、長繊維を引き伸ばしたときの長さAと、元の長繊維の長さBとの差の、伸ばしたときの長さAに対する百分率で定義され、以下の式から算出される。
捲縮率=((A−B)/A) × 100 (%)
【0018】
元の長繊維の長さとは、長繊維が自然状態において、長繊維の両端部を直線で結んだ長さをいう。自然状態とは、長繊維の一方の端部を水平な板に固定し、繊維の自重で下方に垂らした状態をいう。長繊維を引き伸ばした時の長さとは、長繊維の捲縮がなくなるまで伸ばした時の最小荷重時の長さをいう。長繊維の捲縮率は前述の通りであり、捲縮数は1cm当たり2〜25個、特に4〜20個、とりわけ10〜20個であることが好ましい。短繊維の捲縮率も同様にして測定される。ただし、捲縮率の測定は、長さ10mm以上の繊維で行う。
【0019】
親水性の長繊維(長繊維由来の短繊維も同様)には、本来的に親水性を有する繊維、及び本来的には親水性を有さないが、親水化処理が施されることによって親水性が付与された繊維の双方が包含される。好ましくは本来的に親水性を有する繊維であり、より好ましくはアセテートやレーヨンからなる繊維であり、とりわけアセテートはウエブが湿潤しても嵩高性が保持されるので好ましい。アセテートとしては、セルローストリアセテート及び/又はセルロースジアセテートを用いることが好ましい。
ウエブを構成する長繊維(長繊維由来の短繊維も同様)として、ナイロンやアクリル繊維等を用いることもできる。
【0020】
親水性の長繊維(長繊維由来の短繊維も同様)は、その水分率が10%未満、特に1〜8%であることが、通液性を確保する観点、即ち吸水しても可塑化されないために柔軟化せず、あるいは繊維が膨潤しないために目詰まりを起こさない観点から好ましい。また、水分率が高い繊維は繊維が吸湿して、あるいは繊維自体の親水性が強いために、繊維−繊維間や同一繊維の異なる部位間において水素結合によって、特に吸収性物品の製造工程において厚みを制御するために圧縮する際、あるいはまた、パック内などにおいて吸収性物品が長期圧縮された状態に置かれたときになどに、製品が硬くなり装着感の低下やこすれ等による身体トラブルを起こす可能性がある。
水分率は、特許文献2の段落〔0025〕に記載の方法で測定する。
【0021】
本発明において長繊維とは、繊維長をJIS L1015の平均繊維長測定方法(C法)で測定した場合、好ましくは70mm以上、更に好ましくは80mm以上、一層好ましくは100mm以上である繊維のことをいう。ただし、測定対象とするウエブの全長L(図1参照)が100mm未満である場合には、当該ウエブ中の繊維の好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上、一層好ましくは80%以上がウエブ全長にわたって延びている場合に、当該ウエブの繊維は長繊維であるとする。本発明で用いられる長繊維は一般に連続フィラメントと呼ばれるものである。また、連続フィラメントの束は一般にトウと呼ばれている。従って、本発明における長繊維とは、連続フィラメントを含む概念のものである。
また、本発明において短繊維とは、長繊維と同様の測定方法によりに測定した繊維長が70mm未満、より好ましくは5〜70mm、更に好ましくは10〜50mmである繊維のことをいう。
また、本発明の吸収体には、JIS L1015の測定法で測定するのが困難と思われる、あるいは大きな誤差を含みうるような、非常に短い繊維(長さ5mm未満)や粉状に近いものが含まれることがある。
【0022】
本発明における長繊維は、吸収体の製造時に、長繊維のウエブの一部を、塊状の粒子(塊状の吸収性ポリマー等)の存在下に加圧圧縮して切断する観点から、繊維強度が、3g/d以下であることが好ましく、0.5〜2.5g/dであることが好ましい。
繊維強度は、以下のようにして測定する。
〔繊維強度の測定方法〕
JIS L1015化学繊維ステープル試験法引張り強さの項に準拠して行った。すなわち、コピー用紙に、繊維1本を、該繊維の固定されていない部分の長さ(空間距離)が20mm(繊維が短い場合は10mm)となるように貼り付けた。具体的には、貼り付けテープ間の距離が20mm(繊維が短い場合は10mm)となるように、繊維の両端部それぞれを幅18mmの貼り付けテープ〔ニチバン株式会社のスコッチテープ(商品名)〕を用いてコピー用紙に固定した。
この試料を、引張り試験機のチャックに取り付け、上下の貼り付けテープ部近傍で紙を切断し、引張り試験に供した。
装置は、ORIENTEC RTC−1150A型テンシロン引張り試験機を用いた。フルスケール5kgのロードセルを用いて適宜測定レンジを切り替えて行った。引張り速度は、300mm/minであった。測定は10点行い、その平均値を測定値とした。平均値に対して20%以上値が振れた測定値は除き、測定を追加した。
尚、長繊維の繊度は 1.0〜10dtex、特に1.5〜8dtexであることが好ましい。
【0023】
本発明における長繊維は、吸収体の製造時に、長繊維のウエブの一部を、塊状の粒子(塊状の吸収性ポリマー等)の存在下に加圧圧縮して切断する観点から、繊維強度が、3g/d以下であることが好ましく、0.5〜2.5g/dであることが好ましい。
【0024】
長繊維を塊状の粒子で切断して得られた短繊維は、通常、該繊維の末端の断面形状と繊維中央部の断面形状が異なる。
末端の断面形状と繊維中央部の断面形状が異なるか否かは以下のようにして判断することができる。
(断面形状の異同の判断方法)
繊維端部および繊維中央部の断面形状を、電子顕微鏡を用いて観察する。
倍率は500倍以上で観察し、無作為に抽出した短繊維10本の観察結果を持って判断する。繊維端部の断面形状は、試料台に繊維を垂直に貼り付けて繊維長軸方向の断面方向から観察する。断面形状は電子顕微鏡の焦点深度内の輪郭を採用するものとし、末端断面の投影図ではない。そして、両端部のどちらか一方の断面形状を、該繊維の末端の断面形状とする。繊維中央部は、繊維の見かけの長さの中央部を、樹脂の尾引きが起こらないようにカミソリで切断し、同様に観察する。繊維の見かけの長さは、繊維が伸張しないように最低限の荷重で厚紙等の上に両端を固定する形で貼り付けたときの両端間の距離である。
【0025】
そして、端部断面の映像と繊維中央部断面の映像とを比較し、両者の形状がほぼ同じであり且つ面積もほぼ同じである場合には、「繊維の末端の断面形状と繊維中央部の断面形状とが同じ」と判断し、それ以外の場合は、「繊維の末端の断面形状と繊維中央部の断面形状とが同じ」ではないと判断する。
ここで、断面積がほぼ同じとは、図21(a)に示すように、端部断面の映像と繊維中央部断面の映像とを重ね合わせたときに、一方の映像と他方の映像とが重なっていない部分aの合計面積S1が、両映像が重なっている部分bの面積S2の3割以下〔(S1/S2)が0.3以下〕である場合をいう。
尚、端部断面の映像と繊維中央部断面の映像とを重ね合わせる際には、一方又は両方の映像をその中心点の回りに回転させたり、中心点を移動させたりして、できるだけ両映像が重なる部分bの面積S2が大きくなるようにする。
図21(a)は、端部断面と繊維中央部断面とが、形状が「ほぼ同じ」であり且つ断面積も「ほぼ同じ」である場合を示し、図21(b)は、端部断面と繊維中央部断面とが、形状が「ほぼ同じ」に該当せず、また、断面積も「ほぼ同じ」に該当しない場合を示している。
【0026】
長繊維由来の短繊維は、良好なスポット吸収性を得る観点から、個々の短繊維の長手方向両端(切断端部)の位置が、吸収体の長手方向においてランダムに位置していることが好ましい。
【0027】
本発明においては、塊状の粒子を用いることが好ましい。塊状の粒子としては、塊状の吸収性ポリマーが好ましい。塊状の吸収性ポリマーとは、水溶液重合法により重合した吸収性ポリマー含水ゲルを板状にキャストし乾燥後に粉砕したものや、逆相けん濁重合法で界面活性剤の種類や攪拌力を制御することにより不定形粒子が凝集してできたものである。これに対して、球状や複数の球状の凝集体や繊維状、鱗片状のものがある。
塊状の吸収性ポリマーの平均粒径は、150〜600μm、特に200〜500μmであることが好ましい。
【0028】
吸収性ポリマーの材料としては、使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収体に従来使用されている各種公知のポリマー材料を用いることができ、例えば、ポリアクリル酸ソーダ、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、ポリアクリル酸ソーダ架橋体、(デンプン−アクリル酸)グラフト重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物、ポリアクリル酸カリウム、並びにポリアクリル酸セシウム等が挙げられる。
吸収性ポリマーは、自重の20倍以上の水又は生理食塩水を吸収し保持し得る性能を有するものが好ましい。
【0029】
塊状の粒子としては、塊状の吸収性ポリマーの他に、例えば、セルロースパウダーや活性炭、シリカ、アルミナ各種粘土鉱物(ゼオライト、セピオライト、ベントナイト、カンクリナイト等)等の有機、無機粒子(消臭剤や抗菌剤)を用いることができる。これらは一種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。無機粒子は一部金属サイトを置換したものを用いることができる。これらは凝集体として用いても良いし、別の担体と複合化して用いてもよい。これら塊状の粒子は、2種以上を併用することもできる。活性炭やシリカゲルなどの多孔質粒子の平均粒径は、20〜300μm、特に50〜150μmであることが好ましい。凝集体あるいは担体との複合体の平均径は、150〜600μm、特に200〜500μmであることが好ましい。これら成分の働きは、吸収体に吸収された排泄物のにおいや素材由来のにおいを抑制することである。
【0030】
吸収性ポリマーとして、塊状のポリマーと非塊状のポリマーとを併用することができる。また、塊状の粒子を用いずに長繊維を切断する場合、非塊状のポリマーのみを用いることもできる。
非塊状のポリマーとしては、モノマーと重合開始剤、架橋剤等を混合したものと噴霧乾燥する方法、逆相けん濁重合法で溶媒の種類や界面活性剤の種類を調整する方法(おおむね、ポリマーと溶媒のsp値の差を小さくすることにより、表面のでこぼこがない球状のポリマーを得ることができる)等によって得られた球状の粒子等を用いることができる。
【0031】
本発明の吸収体は、ロール等によって吸収性ポリマーを圧縮し、長繊維の一部を切断する場合、吸収性ポリマーの一部が破砕され、粒径が細かくなる可能性を含む。粒径の細かい吸収性ポリマーは、粒径が大きい吸収性ポリマーに比べて最密充填されやすいため、ゲルブロッキングや吸収体への液の取り込み速度の低下を起こす可能性がある。また、表面架橋を施した吸収性ポリマーを用いた場合、粉砕によって内部の架橋の弱い部分が露出することになり、同様にゲルブロッキングの危険性をはらむ。ゲルブロッキングは表面の液残りや液戻りにつながる。よって、このような万一の状態に備えて、本発明の吸収体では吸収体に排泄物が吸収された場合に緩衝系が成り立つように、各種緩衝剤を含ませることができる。すなわち、各種有機、無機緩衝剤、即ち、酢酸、リン酸、クエン酸、コハク酸、アジピン酸、リンゴ酸、乳酸又はこれらの塩を単独あるいは組み合わせて用いたり、各種アミノ酸を用いることができる。また、各種有機、無機緩衝剤は、排泄物、例えば尿の分解による発生するアンモニアを中和し、おむつを中性〜弱酸性に保つ効果があり、それによって、万一おむつから肌への排泄物の液戻りがあっても、肌への影響を少なくすることができる。更に、各種有機、無機緩衝剤は、アンモニア等のアルカリを中和する働きがあるので、ウエブ12を構成する長繊維としてアセテート繊維のような分子構造内にエステル結合を有する繊維を用いた場合には、アルカリによるエステル結合の分解に起因する繊維の損傷が防止される効果も期待できる。
【0032】
また、本発明の効果であるスポット吸収性を高めるため、また、液保持性と吸収速度の向上、ドライの向上を目的に、親水性の微粉又は短繊維をウエブ中に共存させることができる。親水性の微粉又は短繊維としては、フィブリル化されているか又はフィブリル化されていないセルロースパウダー、カルボキシメチルセルロース及びその金属塩、カルボキシエチルセルロース及びその金属塩、ヒドロキシエチルセルロース及びその誘導体、シルクパウダー、ナイロンパウダー、レーヨン、コットン、羊毛などの短繊維が挙げられる。これらのうち、セルロースパウダーを用いると、前記の効果を最大限向上させ得るので好ましい。親水性の微粉又は短繊維は、吸収性ポリマーの散布前にウエブに散布してもよく、或いは吸収性ポリマーと混合しておき、両者を同時にウエブに散布してもよい。
【0033】
また、本発明の切断された短繊維の繊維長が短くなった場合は、ウエブの形態保持性を向上させて、ウエブの圧縮回復性を高め、またウエブのよれを起こりにくくし、更にウエブの搬送性を良好にすることを目的として、ウエブを構成する長繊維どうしを接合することが好ましい。長繊維どうしの接合には、例えばポリ酢酸ビニル、アクリルエマルジョンのような水溶性接着剤を用いることができる。
【0034】
長繊維がアセテートからなる場合には、アセテートを溶解・可塑化し得る剤、例えばトリアセチンを、吸収性ポリマー散布後のウエブに散布してアセテートを溶解・可塑化させ、長繊維どうしを接合させることができる。
【0035】
長繊維どうしの接合の他の方法には、熱可塑性樹脂の合成パルプをウエブ中に分散させ、次いで加熱して合成パルプを溶融させる方法が挙げられる。合成パルプは、吸収性ポリマーの散布と同時に又はその前後にウエブに散布することができる。散布に際しては、ウエブにおける散布面と反対側の面から吸引を行い、合成パルプ及び吸収性ポリマーがウエブ中に十分に行き渡るようにすることが好ましい。長繊維が熱可塑性樹脂からなる場合には、該熱可塑性樹脂の融点よりも低い融点を有する熱可塑性樹脂からなる合成パルプを用いることが好ましい。
【0036】
上記吸収体にエンボス加工を施した場合、エンボス加工によってウエブが圧密化した部分が多数形成される。その結果、ウエブ中に繊維密度の高い部分と低い部分とが存在するようになる。従って、繊維密度の高い部分と低い部分とで毛管力に差が生じ、吸収体1は液の引き込み性がより高くなる。
【0037】
さらに液のスポット吸収性を高めるために、さらにまた、ウエブの形態保持性を向上させるために、ウエブの上及び/又は下に、或いはこれに加えて又はこれに代えて、ウエブの側部に、紙や不織布などのシート材料を一枚又は複数枚重ね合わせるか又は覆い、ウエブとシート材料とを該シートに塗られた接着剤によって接合するか、又は熱融着する方法が挙げられる。この方法によれば、一対のシート材料間にウエブが挟持固定されてなるシート状の吸収体が得られる。そのようなシート状の吸収体は、シート材料との接合及びシート材料そのものの剛性に起因して剛性が高くなり、それによってハンドリング性が良好になるので、それ単独で容易に搬送させることができる。また、このシート状の吸収体は、所望の形状に容易に裁断あるいはくり抜くことができるので、吸収性物品の形状に応じた吸収体を容易に製造できる。
【0038】
前記のシート材料とウエブとを接着剤によって接合して、ウエブの保形性を高める場合には、ウエブの透水性、柔らかさ、通気性を損なわないように接着剤を塗布することが好ましい。そのためには、接着剤をできるだけ細い繊維状にして且つ断続的に(例えばスパイラル状、線状、連続したΩ形状に)塗布することが有利である。それによってウエブの特性を損なわずに繊維どうしを多数の接合点で接合することが可能になるからである。例えばホットメルト塗布装置の一種であるUFDファイバー(商品名)を用いることで、これを達成することができる。接着剤の種類に特に制限はなく、親水性接着剤及び疎水性接着剤の何れも用いることができる。特に好ましいものは親水性の接着剤である。親水性の接着剤としては例えば親水性ホットメルト粘着剤であるcycloflex(米国デラウエア州、ナショナル・スターチ・アンド・ケミカル社の登録商標)が挙げられる。
なお、シート材料とウエブの接着は主に互いの表面同士が接着されるが、一部の接着剤はウエブ中にもぐりこみ、ウエブの厚み方向内部の繊維同士を接着する場合を含む。
【0039】
前記のシート材料をウエブの上及び/又は下に重ねることは、吸収体の吸収性能を高める点からも有利である。吸収体の吸収性能を高めるためには、該シート材料として、各種繊維シートや繊維ウエブを用いることが好ましい。その例としては、エアスルー不織布、エアレイド不織布、乾式パルプ不織布、架橋パルプおよび架橋パルプを含む紙、及びそれらの複合体などが挙げられる。これらのシート材料は、1枚で用いてもよく、或いは複数枚を重ねて用いてもよい。これらのシート材料を構成する繊維は、その繊維径が1.7〜12dtex、特に2.2〜7.8dtex、とりわけ3.3〜5.6dtexであることが好ましい。坪量は15〜200g/m2 、特に20〜150g/m2 、とりわけ25〜120g/m2 であることが好ましい。特に、液の取り込み速度を向上させたい場合、液戻りを防止したい場合、シート材料中での液拡散を促進させたい場合には、坪量を15〜100g/m2 、特に20〜80g/m2 、とりわけ25〜50g/m2 とすることが好ましい。一方、吸収体のクッション性を高めたい場合、吸収体のヨレを起こりにくくしたい場合、吸収体に圧縮回復性を付与したい場合、吸収体からの水蒸気の蒸散を抑制したい場合には、坪量を25〜200g/m2 、特に30〜150g/m2 、とりわけ40〜120g/m2 とすることが好ましい。
【0040】
本実施形態の吸収体10によれば、図3に示すように、短繊維が生じている中央領域Mが、着用者の液排泄部に対向する部位Pに位置するようにして、使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品に組み込んで使用することにより、液排泄部から排泄された液(尿や経血等)が、短繊維による優れたスポット吸収性により、吸収体10の狭い範囲から吸収体10内にスムーズに吸収される。そして、吸収体10に吸収された液は、その部位に偏在する吸収性ポリマー13により吸収され、吸収体10内に安定に保持される。
吸収体10上に短時間に多量の液が供給されたり、長時間の使用等により多量の液が吸収体10に吸収されたりした場合には、液が、側部領域S,Sまで拡散することがある。しかし、側部領域S,Sそれぞれには長繊維がその形態を維持したまま存在し、それらは吸収体の長手方向に配向しているため、側部領域S,Sに達した液は、吸収体10の長手方向(着用者の前後方向)に良好に拡散し、側部領域S,Sを横切る方向への拡散は抑制される。これにより、吸収体10の両側縁からの液の漏れ出しが効果的に防止されると共に、吸収体の広い範囲が有効に活用される
【0041】
本実施形態の吸収体10における吸収性ポリマー13及び長繊維由来の短繊維122は、何れも、吸収体10の前記中央領域Mに存在しており、吸収性ポリマー(粒子)13が分布する範囲と短繊維122が生じている範囲とが一致している。
吸収性物品に組み込まれて使用されるときの側部漏れを防止する観点から、吸収体10の幅方向における、短繊維13が生じている範囲の幅(中央領域Mの幅に同じ)W1(図1参照)は、吸収体10の全幅W(図1参照)の20〜95%、特に50〜85%であることが好ましく、短繊維が実質的に存在しない範囲の幅(側部領域Sの幅に同じ)W2(図1参照)は、吸収体10の全幅Wの5〜80%、特に15〜50%であることが好ましい。
【0042】
尚、ラップシート14としては、ティッシュペーパー等のパルプシートや透水性の不織布等の透水性のシート材が好ましく用いられる。ただし、吸収性ポリマー13および短繊維122が実質的に含まれていないW2の部分はラップシートで覆われていなくても良い。
【0043】
本発明の好ましい実施形態で用いられる吸収性ポリマーは、その遠心脱水法による生理食塩水の吸水量が30g/g以上、特に30〜50g/gであることが、ポリマーの使用量の点や、液吸収後のゲル感が低下することを防止する点から好ましい。吸収性ポリマーの遠心脱水法による吸収量の測定は以下のようにして行う。すなわち、吸収性ポリマー1gを生理食塩水150mlで30分間膨潤させた後、250メッシュのナイロンメッシュ袋に入れ、遠心分離機にて143G(800rpm)で10分間脱水し、脱水後の全体重量を測定する。ついで、以下の式に従って遠心脱水法による吸水量(g/g)を算出する。
遠心脱水法による吸水量=(脱水後の全体重量−ナイロンメッシュ袋重量−乾燥時吸収性ポリマー重量−ナイロンメッシュ袋液残り重量)/乾燥時吸収性ポリマー重量
【0044】
さらに、吸収性ポリマーは、以下の方法で測定される液通過時間が20秒以下、特に2〜15秒、とりわけ4〜10秒であることがゲルブロッキングの発生及びそれに起因する吸収性能の低下を防止し、また、吸収が間に合わないことに起因する液の素抜けによるもれの防止の点から好ましい。液通過時間の測定は以下の通りである。即ち、断面積4.91cm2(内径25mmφ)で底部に開閉自在のコック(内径4mmφ)が設けられた円筒管内に、該コックを閉鎖した状態で、該吸収性ポリマー0.5gを生理食塩水とともに充填し、該生理食塩水により該吸収性ポリマーを飽和状態に達するまで膨潤させる。膨潤した該吸収性ポリマーが、沈降した後、該コックを開き、生理食塩水50mlを通過させる。該生理食塩水50mlが通過するのに要した時間を測定し、この時間を液通過時間とする。液通過時間は、吸収性ポリマーのゲル強度を反映する指標のひとつである。液通過時間が短いものほどゲル強度は強くなる。
【0045】
上記吸収性ポリマーとしては、加重下での通液性の高い吸収性ポリマーを用いることがさらに好ましい。吸収性ポリマーのゲルブロッキングを効果的に防止する観点から、吸収性ポリマーは、その通液速度の値が好ましくは30〜300ml/min、より好ましくは32〜200ml/min、更に好ましくは35〜100ml/minである。通液速度の値が30ml/min未満である場合、吸液によって飽和膨潤した吸収性ポリマーどうしが荷重下に付着し合って、液の通過を妨げてしまいゲルブロッキング発生が起こりやすくなる。通液速度の値は大きければ大きいほどゲルブロッキングの発生を防止する観点から好ましい。尤も、通液速度の値が40ml/min程度に高ければ、ゲルブロッキングの発生はほぼ確実に防止される。通液速度が300ml/minを超える場合は、吸収体中の液の流れ性が高すぎて、特に一度にたくさんの排泄物が排泄されたときや、月齢の高い乳幼児、あるいは大人の例に見られるように排泄速度が速い場合、さらに吸収体の薄型化を図った場合に液の固定が十分でなく、もれを生じる可能性がある。また、一般に、通液速度を高めることは吸収性ポリマーの架橋度を高くすることになり、吸収性ポリマーの単位重量あたりの吸収容量が低くなり、多量の吸収性ポリマーを使用しなければならない。これらの観点から通液速度の上限値は決定される。
【0046】
また、本発明の好ましい実施形態で用い得る吸収性ポリマーとしては、前記の各特性を満足するものが好ましく、具体的には例えば、ポリアクリル酸ソーダ、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、ポリアクリル酸ソーダ架橋体、(デンプン−アクリル酸)グラフト重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物、ポリアクリル酸カリウム、並びにポリアクリル酸セシウム等が挙げられる。尚、前記の各特性を満たすようにするためには、例えば、吸収性ポリマーの粒子表面に架橋密度勾配を設ければよい。或いは吸収性ポリマーの粒子を非球形状の不定形粒子とすればよい。具体的には特開平7−184956号公報の第7欄28行〜第9欄第6行に記載の方法を用いることができる。
【0047】
長繊維のウエブを有する本発明の吸収体は、フラップパルプを主体とする従来の吸収体に比較して繊維間の空隙の大きな疎な構造になっているので、該吸収体は液の透過性の良好なものでもある。従って、吸収性ポリマーの吸収速度が遅い場合は、液が吸収性ポリマーに吸収される前に吸収体を通過してしまい、該吸収体に十分吸収されない場合が起こりうる。この観点から、ウエブに含まれる吸収性ポリマーは、充分に吸収速度の速いものであることが好ましい。それによって、吸収体に液を確実に保持できるようになる。吸収性ポリマーの吸収速度は、当該技術分野においては一般にDW法の測定値によって表現される。DW法による吸収速度(ml/0.3g・30sec)は、DW法を実施する装置として一般的に知られている装置(Demand Wettability Tester)を用いて測定される。具体的には、生理食塩水の液面を等水位にセットしたポリマー散布台〔70mmφ、No.2濾紙をガラスフィルターNo.1上に置いた台〕上に、測定対象の吸収性ポリマーを0.3g散布する。吸収性ポリマーを散布した時点の吸水量を0とし、30秒後の吸水量(この吸収量は、生理食塩水の水位の低下量を示すビュレットの目盛りで測定される)を測定する。得られた吸収量の値を吸水速度とする。吸収速度は吸収性ポリマーの形状、粒径、かさ密度、架橋度等によって設計することができる。
【0048】
吸収体がパルプを含まないか又は吸収体中のパルプの含有量が30重量%以下である実施形態においては、DW法に従い測定された吸収速度が2〜10ml/0.3g・30sec、特に4〜8ml/0.3g・30secである吸収性ポリマーが好ましく用いられる。なお、このような吸収速度を有する吸収性ポリマーは、フラッフパルプを主体とする従来の吸収体においては、ゲルブロッキング、ひいては液漏れを発生させる原因になるとしてその使用が避けられていたものである。これに反して、本実施形態においてはウエブが疎な構造を有していることに起因して、ウエブ内への液の取り込みと取り込まれた液の通過速度が高いため、高吸収速度を有する吸収性ポリマーを用いてもゲルブロッキングが起こりにくく、逆に液漏れが効果的に防止される。
【0049】
上述のように、液通過時間が短い吸収性ポリマーや、吸収速度の高い吸収性ポリマーは単独で用いてもよいが、液通過時間や吸収速度が上述の望ましい範囲内にある別の吸収性ポリマーを混合あるいは共存させて用いてもよい。例えば、相対的に液通過時間の短い吸収性ポリマーS1と相対的に液通過時間の長い吸収性ポリマーS2を混合して用いる場合が挙げられる。この場合、吸収性ポリマーS1と吸収性ポリマーS2を比較すると、吸収性ポリマーS2の方が吸収倍率や吸収速度が高い反面、ゲルブロッキングに対する耐性は低い。吸収性ポリマーS1と吸収性ポリマーS2を共存させることで、吸収性能の高い吸収性ポリマーS2の間に、硬い(つまりゲルブロッキングが起こりくい)吸収性ポリマーS1が入り込むので、吸収体をより効率的に利用することができる。別の例としては、相対的に吸収速度の高い吸収性ポリマーS3と相対的に吸収速度の低い吸収性ポリマーS4を共存させる方法がある。この場合、吸収性ポリマーS3を裏面シート側に配し、吸収性ポリマーS4を表面シート側に配することで、吸収体の液の取り込み速度を一層高めた上で、液の固定能力も高めることができる。更に別の例としては、液通過時間の短い吸収性ポリマーS1を表面シート側に配し、吸収速度の高い吸収性ポリマーS3を裏面シート側に配しても同様の効果が得られる。
【0050】
上述の特定の吸収性能を有する吸収性ポリマーを用いることで、本発明の吸収体は薄くて柔らかいにもかかわらず、液戻りの量が一層少なくなる。液戻りの量は、好ましくは1g以下、更に好ましくは0.5g以下、一層好ましくは0.25g以下となる。液戻り量の測定方法は次の通りである。乳幼児用紙おむつ(Mサイズ)の場合、おむつの腹側の端縁部から150mmの位置の幅方向中央部に、着色した生理食塩水160gを、ロートを用いて注入する。着色には赤色1号を用い、色素の添加量は50ppmとする(生理食塩水10リットルに対して0.5g)。注入完了から10分後に、アドバンテック社製のろ紙No.4Aを10枚重ねたものをおむつ上に置く。ろ紙の上から3.43kPaの圧力を2分間加えて、ろ紙に生理食塩水を吸収させる。ろ紙の重量を測定し、重量の増加分を液戻り量とする。測定は3点行う。おむつのサイズが異なる場合は、生理食塩水の注入量、ろ紙の加圧条件を次のように変更する。ベビー用おむつの場合は、ろ紙の加圧は3.43kPaで統一し、生理食塩水の注入量をおむつのサイズによって変化させる(新生児、Sサイズは120g、その他のサイズは160g)。一方、生理用品も含め大人用の吸収性物品の場合には、ろ紙の加圧は5.15kPaで統一する。注入する液は、生理用品の場合には生理食塩水に代えて馬血10gとする。
【0051】
次に、吸収体10の好ましい製造方法(本発明の吸収体の製造方法の一実施形態)について、図4を参照して説明する。
図4に示す吸収体の製造装置は、長繊維からなるトウ12aを、連続搬送しつつ長手方向に伸長させて開繊させ、長繊維のウエブ12を得る開繊機構2、開繊機構2により開繊されたウエブ12を、張力を緩和した状態として、ポリマー13の供給位置まで搬送する張力緩和機構3、長繊維のウエブ12の片面にラップシート14を供給するラップシート供給機構4、ラップシート14上のウエブ12に、ラップシート14側とは反対側の面側から吸収性ポリマー13を供給する吸収性ポリマー供給機構6、ラップシート14の、ウエブ12の両側縁より延出した部分14a,14aを折り返して、ウエブ12の両面を該ラップシート14で被覆する折り返し機構7、両面をラップシートで被覆されたウエブ12をラップシートと共に厚み方向に加圧して圧縮し、該ウエブ12の一部における長繊維を切断する長繊維切断機構8を具備している。
【0052】
開繊機構2は、折り畳まれて圧縮された状態の原反から帯状のトウ12aを連続的に引き出し、そのトウ12aを搬送途中で順次開繊するように構成されている。開繊機構2は、開繊機(バンディングジェット)21〜23を備えている。また、開繊機21と22との間には、トウ11を一旦上方に送った後に降下させるためのガイド24を備え、開繊機22、23の間には、プレテンショニングロール25及びブルミングロール26を備えている。開繊機21〜23は、エアーを吹き付けて搬送中のトウを開繊させてその幅を拡げる装置である。プレテンショニングロール25は、開繊機21で開繊されたトウ12aをニップして所定の速度で繰り出す一対のロール250,251を備えている。ブルミングロール26は、周方向に延びる多数の溝及び凸条部を備えた金属製の溝ロール260と、周面がゴムで形成されたアンビルロール261とを備えており、プレテンショニングロール25との間に速度差を設け、溝ロール260の凸条部が押圧して張力を与える部分と溝ロール260の溝部に位置して張力を与えない部分とを生じさせることで、トウ12aを開繊させる。
【0053】
張力緩和機構3は、開繊機23の下流に配されたフィードロール31及びバキュームコンベア32を備えている。フィードロール31は、ブルミングロール26の周速度V2よりも遅い周速度で回転駆動される一対のロール310,311を備えている。フィードロール31は、開繊機構2によりトウ12aを開繊して得られた長繊維のウエブ12を、プレテンショニングロール25とブルミングロール26との間で伸長され張力を高められた状態のトウないしウエブよりも、張力を緩和した状態として、バキュームコンベア32上に供給されたラップシート14上に供給する。バキュームコンベア32は、フィードロール31の送り速度V3(一対のロール310,311の周速度)よりも更に遅い搬送速度V4で駆動される通気性の無端ベルト320と、バキュームボックス321とを備えている。バキュームコンベア32上のラップシート14上に供給されたウエブ12は、張力を緩和された状態のまま、無端ベルト320によって更に搬送され、ポリマーの供給位置まで搬送される。
【0054】
ラップシート供給機構4は、ラップシート14を、長繊維のウエブ12の片面側に供給する。ラップシート供給機構4は、ラップシート14の巻出手段と、巻き出されたラップシート14をバキュームコンベア32に案内する案内ロール(図示せず)とからなり、巻出手段は、ラップシート14が巻回されたロール41と該ロール41を駆動させる駆動装置(図示せず)とを備えている。
【0055】
吸収性ポリマー供給機構6は、長繊維のウエブ12の上面側(ラップシート14側とは反対側の面側)に配されたポリマー供給口から吸収性ポリマー13を散布する。無端ベルト320を挟んで、前記ポリマー供給口の反対側には、バキュームボックス321が位置しており、バキュームボックス321によりウエブ12の裏面側から吸引した状態下に吸収性ポリマーの散布も行うことができる。ポリマー供給口は、ウエブ12の搬送方向(長手方向)に直交する方向の幅がウエブの幅よりも狭くなっており、ウエブ12の幅方向中央の所定幅の領域にのみポリマー13を散布するようになされている。
【0056】
折り返し機構7は、流れ方向の両側に折曲用のガイド71を備えている。ラップシート14は、長繊維切断機構8を構成する一対のロール80,81により引っ張られて、連続的に搬送されながら、該ラップシート14の、ウエブ12の両側縁より外方に延出した部分14a,14aが、それぞれ、ガイド71によってウエブ12の上面側に折り返される。この折り返しにより、ウエブ12の上面側もラップシート14で被覆され、その結果、ウエブ12の上下両面がラップシート14により被覆された状態となる。
【0057】
長繊維切断機構8は、両面をラップシートで被覆された長繊維のウエブ12(以下、ポリマーが散布された長繊維のウエブ12及び該ウエブを被覆するラップシート14からなる複合体を吸収体連続体100ともいう)を挟んで厚み方向に加圧圧縮する一対のロール80,81を備えている。
一方のロール80は、軸長方向の中央の所定幅の部分の外周面80Mが、ゴム、シリコン等の弾性素材からなり、軸長方向における該中央領域の両側に位置する部分の外周面80Sがスチール等の金属等の硬質素材(非弾性素材)からなる。ロール80における、弾性素材からなる外周面80Mの、ウエブ12に直交する方向の幅は、ポリマー供給口の同方向の幅と略同じである。
長繊維切断機構8より下流には、吸収体連続体の切断機構5を備えている。吸収体連続体の切断機構5は、軸長方向に延びる切断刃51aを備えたカッターロール51とアンビルロール52とを備え、吸収体連続体100を、吸収性物品に組み込まれる個々の吸収体の長さに切断する。
【0058】
上述した製造装置を使用して吸収体10を製造するには、図4に示すように、開繊機構2によって、原反から帯状のトウ12aを連続的に引き出し、開繊機21〜23の圧搾空気によるトウ12aの幅の拡幅及びプレテンショニングロール25とブルミングロール26の周速度差によるトウ12aの延伸によって、該トウ12aを開繊し、長繊維からなるウエブ12を得る。
【0059】
そして、得られたウエブ12を、フィードロール31を介して、バキュームコンベア32上に供給されたラップシート14上に供給する。
そして、ウエブ12を、バキュームコンベア32によって、ラップシート14と共に搬送しながら、そのウエブ12に対して、吸収性ポリマー供給機構6により吸収性ポリマー13を散布する。
【0060】
本実施形態においては、吸収性ポリマー13を、ウエブ12の幅方向中央の所定幅の領域のみに散布している。また、吸収性ポリマー13を、ウエブ12の長手方向に連続的に散布している。吸収性ポリマー13の散布量は、後述する長繊維の切断において、長繊維が良好に切断されるようにする観点から、ウエブ12の坪量と同等以上であることが好ましく、より好ましくは2倍以上、更に好ましくは3倍以上である。例えば、ウエブ12の坪量が30g/m2 であった場合、吸収性ポリマー13の散布量は、30〜400g/m2 、特に60〜300g/m2 とすることが好ましい。
【0061】
本実施形態においては、トウ12aを開繊して得たウエブ12を、トウ12aを開繊させた際の最大伸長状態よりも収縮させた状態で、ラップシート14上に積層している。より具体的には、ブルミングロール26の周速度V2をプレテンショニングロール25の周速度V1よりも速くして、トウ12aを開繊させる一方、ブルミングロール26の周速度V2よりも、ラップシート14の搬送速度V4(バキュームコンベア32の無端ベルト320の搬送速度に同じ)を遅くすることによって、バキュームコンベア32上でのウエブ12の張力を緩めて捲縮性を発現させている。これにより、上述した長繊維及び短繊維の好ましい捲縮率を効率よく発現させることができる。本実施形態において、トウ12aを開繊させる際の最大伸長状態は、プレテンショニングロール25とブルミングロール26との間の伸長状態である。
【0062】
本実施形態においては、ラップシート14として、ウエブ12の上下両面を被覆するに充分な幅を有するラップシート14を用いている。ラップシート14は、図4に示すように、吸収性ポリマー13がウエブ12に供給された後、該ウエブ12の両側縁より延出した部分14a,14aが、折り返し機構7によって該ウエブ12の上面側に折り返され該上面側もラップシートによって被覆される。ラップシート14としては、従来、吸収性コアを包み込むときに用いられている各種の材料を特に制限なく用いることができる。
【0063】
次いで、吸収体連続体100に対して、上述した長繊維切断機構8による加圧圧縮及びそれによる長繊維の切断が行われる。この加圧圧縮及びそれによる長繊維の切断は、吸収体連続体100を、一対のロール80,81に挿通し、ウエブ12における、吸収性ポリマー13を散布した範囲の全域又は一部を厚み方向に加圧して行う。
長繊維の切断は、吸収性ポリマー13が散布されている範囲であって、しかも一方のロール80の弾性素材からなる外周面80Mと、他方のロール81の硬質素材からなる外周面との間に挟まれて加圧された部分に生じる。この長繊維の切断は、図5に示すように、長繊維121が、塊状の吸収性ポリマー13に押し当てられることにより生じる。
そして、ウエブ12の一部における長繊維が切断された吸収体連続体100は、吸収体連続体の切断機構5によって、それが組み込まれる吸収性物品の種類や寸法等に応じた所望の寸法に切断されて、吸収体10とされる。
本実施形態の製造方法によれば、このようにして、上述した形態の吸収体10を効率よく連続生産することができる。
【0064】
本発明における吸収体が組み込まれる吸収性物品としては、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、失禁パッド等が挙げられる。吸収性物品は、一般には、液透過性の表面シート、液不透過性又は撥水性の裏面シート、及びこれらの両シート間に介在された吸収体を具備している。
【0065】
本実施形態の吸収体10の製造方法によれば、塊状の吸収性ポリマーを散布する範囲と、加圧圧縮により長繊維を切断する範囲とを適宜に調節することで、所望の部位にスポット吸収性に優れた領域を有する吸収体を効率よく製造することができる。
【0066】
上述した吸収体の製造法では、長繊維のウエブと吸収性ポリマーを複合化した後に、圧縮ロールによって長繊維を切断したが、予め切断した繊維上に吸収性ポリマーを散布し複合化しても同様の効果が得られる。繊維の切断方法は例えば多数のスリットが刻まれた複数のロールにかみこませて切断する方法や、カッター刃による方法、その他、水流やレーザーを使うなど、公知の方法を使うことができる。長繊維は捲縮を有するため、一部の繊維が切断されていても互いの繊維が絡み合い、コンベア等に乗せて搬送することも可能である。
【0067】
図6は、本発明の他の実施形態の吸収体を模式的に示す図である。図6においては、右下がりの実線の斜線を付した領域RAが、吸収性ポリマーを散布した範囲(吸収性ポリマーが分布する範囲に同じ)であり、左下がりの点線の斜線を付した領域RBが、ウエブ12を加圧圧縮して、長繊維由来の短繊維を生じさせた範囲である。
【0068】
図6(a)に示す吸収体は、吸収性ポリマーが分布する範囲RAに短繊維が生じている範囲RBが含まれている。具体的には、吸収体の長手方向及び幅方向の何れの方向においても、吸収性ポリマーが分布する範囲RAに比べて短繊維が生じている範囲RBが狭い。
図6(a)に示す吸収体は、上述した吸収体の製造方法において、上述したロール80として、外周面の周方向に、弾性素材からなる切断部と金属等の硬質素材(非弾性素材)からなる非切断部とが交互に形成されており且つ該切断部のウエブ12に直交する方向の幅がポリマー供給口の同方向の幅より狭いロールを用いることにより製造することができる。この場合、ロール80の弾性素材からなる切断部とロール81の硬質素材からなる外周面との間で加圧圧縮された箇所の長繊維が切断される。金属からなる非切断部に代えて、切断部間に凹部を形成し、該凹部を、長繊維を切断させない非切断部とすることもできる。
【0069】
図6(b)に示す吸収体も、吸収性ポリマーが分布する範囲RAに短繊維が生じている範囲RBが含まれている。具体的には、吸収体の幅方向においては、吸収性ポリマーが分布する範囲RAより短繊維が生じている範囲RBの幅が狭く、吸収体の長手方向においては、吸収性ポリマーが分布する範囲RAと短繊維が生じている範囲RBの長さが同じである。
図6(b)に示す吸収体は、上述した吸収体の製造方法において、上述したロール80として、弾性素材からなる外周面80Mのウエブ12に直交する方向の幅が、ポリマー供給口の同方向の幅より狭いロールを用いることにより製造することができる。
【0070】
図6(c)に示す吸収体は、吸収性ポリマーが分布する範囲RAと短繊維が生じている範囲RBとが一致している。図6(c)に示す吸収体は、上述した吸収体の製造方法において、吸収性ポリマーを間欠的に散布すると共に、上記ロール80として、外周面の周方向に、弾性素材からなる切断部と、硬質素材(非弾性素材)からなる非切断部又は凹部である非切断部とが交互に形成されており且つ該切断部のウエブ12に直交する方向の幅がポリマー供給口の同方向の幅と同じロールを用いることにより製造することができる。
【0071】
図6(d)及び図6(e)に示す各吸収体は、吸収性ポリマーが分布する範囲RAよりも短繊維が生じている範囲RBが狭い。図6(d)示す吸収体は、上述した吸収体の製造方法において、吸収性ポリマーをウエブ全面に散布すると共に、上記ロール80として、外周面の周方向に、弾性素材からなる切断部と、硬質素材(非弾性素材)からなる非切断部又は凹部である非切断部とが交互に形成されており且つ該切断部のウエブ12に直交する方向の幅がポリマー供給口の同方向の幅と同じロールを用いることにより製造することができる。図6(e)に示す吸収体は、上述した吸収体の製造方法において、吸収性ポリマーをウエブ全面に散布すると共に、上記ロール80として、外周面の周方向に、弾性素材からなる切断部が連続的に形成されており且つ該切断部のウエブ12に直交する方向の幅がポリマー供給口の同方向の幅と同じロールを用いることにより製造することができる。
尚、図6(d)と図6(e)においては、長繊維は範囲RBで示された以外の領域に存在する。
【0072】
本発明の吸収体は、例えば、図6(a)、図6(c)及び図6(d)に示す各吸収体のように、吸収体の長手方向の前後端部それぞれに長繊維からなる部分を有する一方、それらの間に長繊維由来の多数の短繊維が存在する部分を有しているものであっても良い。その場合、図6(a)、図6(c)及び図6(d)に示す吸収体のように、吸収体の左右両側部にも長繊維からなる部分を有し、全体として、長繊維からなる部分が、短繊維が生じている範囲を囲んでいることが好ましいが、吸収体の左右両側部に長繊維からなる部分を有しないものであっても良い。
図6(a)〜図6(e)に示す吸収体においても、短繊維が生じている範囲RBが優れたスポット吸収性を示すので、該範囲RBを、着用者の液排泄部に対向する部位に位置するようにして、使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品に組み込んで使用することにより、液排泄部から排泄された液(尿や経血等)が、吸収体10の狭い範囲からスムーズに吸収され、その部分に存在する吸収性ポリマーに安定的に保持される。また、多量の液が供給されたり、多量の液が吸収体に吸収されたりした場合に、液が吸収体の長手方向両側部に達すると、吸収体の長手方向に配向している長繊維により、液は吸収体の長手方向(着用者の前後方向)に良好に拡散して吸収体の広い範囲が有効に利用される一方、吸収体の幅方向への拡散は抑制される。
【0073】
図7は、本発明の更に他の実施形態の吸収体を示す図である。
図7に示す吸収体10Aにおいては、吸収体の厚み方向の一部、即ち上下両面の内の一方の面側に塊状の吸収性ポリマー13が偏在している。そして、ウエブ12の平面方向における、吸収性ポリマー13が分布する範囲の略全域に、長繊維が切断されて多数の短繊維122が生じている。
吸収体10Aは、該吸収体10Aの幅の略2倍の幅を有する帯状の長繊維ウエブの幅方向の中央領域に吸収性ポリマー13を散布し、該中央領域を、弾性材料と金属との間に挟んで加圧圧縮して該中央領域の長繊維を切断して短繊維122とした後、該中央領域の両外方に位置する部分それぞれを、該中央領域上に折り返して積層させることにより得られる。
吸収体10Aは、上下両面の内の塊状の吸収性ポリマー13が偏在している面側が、着用者の肌側に位置するようにして、吸収性物品に組み込むことが好ましい。
【0074】
図8〜図10は、本発明の更に他の実施形態である吸収体104を、パンツ型の使い捨ておむつ101に組み込んだ状態を示す図である。この使い捨ておむつ101は、本発明の吸収性物品の一実施形態である。
使い捨ておむつ101は、液透過性の表面シート102、液不透過性又は撥水性の裏面シート103及び両シート102,103間に位置する液保持性の吸収体104を有する吸収性本体105と、該吸収性本体105の外側(非肌当接面側)に位置して該吸収性本体105を接合固定している外装体110とを具備する。外装体110は、腹側部Aに位置する部分の両側縁部と背側部Bに位置する部分の両側縁部とが接合されて、ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部を有するパンツ型の形態をなしている。図8は、その接合部を剥離しておむつを平面状に展開し且つ各部の弾性部材を伸長させた状態を示している。
外装体110は、2枚のシート111,112と、これら2枚のシート間に固定された各部の弾性部材とからなる。使い捨ておむつ101においては、図8に示すように、2枚のシート111,112間に、ウエスト開口部の周縁部にウエストギャザーを形成するウエスト部弾性部材171,レッグ開口部の周縁部にレッグギャザーを形成するレッグ部弾性部材181,及びウエスト開口部の周縁端から下方に20mm離間した位置からレッグ開口部の上端までの領域である胴回り部Dに左右に分割された状態の胴回りギャザーを形成する胴回り弾性部材191がそれぞれ伸張状態で固定されている。各弾性部材71、81、91はホットメルト型接着剤等の接合手段により接合されている。シート111は、おむつ前後方向において、シート112の前後端縁から延出した延出部を有し、それらの延出部はそれぞれ、外装体110のシート112上に吸収性本体105が配置された後、該吸収性本体105の前後端を覆うように該吸収性本体105側に折り返されて接着されている。
【0075】
本実施形態の吸収体104は、図8〜図10に示すように、吸収体104の非肌当接面側を構成する第1吸収コア141と該吸収体104の肌当接面側を構成する第2吸収コア142とを具備してなる。第1吸収コア141は、第2吸収コア142の非肌当接面側に配されている。
本実施形態の吸収体104においては、第2吸収コア142中に、長繊維のウエブと該ウエブ中に含まれる塊状の粒子とが含まれており、該ウエブの平面方向における該粒子が分布する範囲の少なくとも一部に、該長繊維が切断されて多数の短繊維が生じている。
尚、第2吸収コア142は、平面視矩形状であり、吸収体104を含む吸収性本体105の長手方向の略全長に亘る長さ及び該吸収性本体105の幅より若干狭い幅を有している。
【0076】
第1吸収コア141は、平面視したときの概略形状はほぼ矩形状であるが、おむつ101の股下部Cに配される部分の左右に、吸収体104の立体形状への変形を容易とする欠落部144,144を有している。吸収体104の立体形状への変形には、吸収体104がおむつ幅方向の断面(例えば図10に示す断面)において凹状をなすように変形する幅方向の変形、吸収体104がおむつ長手方向の断面において凹状をなすように変形する縦方向の変形、及びこれら両方向の変形が組み合わされた複合型の変形が代表例である。
本実施形態における欠落部144は、図8及び図10に示すように、股下部Cにおける吸収体104の側縁部143から離間した部位に、該吸収体104の長手方向に沿って延びるように形成されている。
股下部Cに形成された欠落部144の形成部位に関し、吸収体104の側縁部143から離間しているとは、少なくとも、おむつ長手方向中央位置において離間していることを意味する。おむつ長手方向中央位置とは、展開且つ伸長状態としたおむつの長手方向の全長を2等分する位置であり、図8中のIII−III線の位置である。
【0077】
第1吸収コア141における欠落部144は、その長手方向の両端144a,144bが、図8に示すように、何れも吸収体104の側縁部143に開口している。そのため、第1吸収コア141は、複数に分割されている。即ち、股下部Cにおいて、吸収体104の幅方向中央に位置する中央片141Mと、股下部Cにおいて、該中央片141Mの両側に位置する左右の側部片141S,141Sとに分割されている。吸収コアが欠落部を有するという場合の欠落部には、本実施形態の欠落部144のように、複数の分割片間に生じた隙間も含まれる。
【0078】
本実施形態の吸収体104においては、おむつ101の排泄部対向部である、おむつ101の股下部Cにおける幅方向中央部分における第2吸収コア142に、長繊維由来の短繊維122が多数生じている。より具体的には、第1吸収コア141における左右の欠落部144,144間に位置する部分(中央片141Mからなる部分)と重なっている部分に、長繊維由来の短繊維が生じている。排泄部対向部のスポット吸収性を高めることで、おむつ101の漏れ防止性が向上し、また、おむつのべたつきを低減することができる。他方、長繊維のウエブにおける、側部片141S,141Sと重なっている部分においては、ウエブを構成する長繊維121が長繊維の形態を維持しており、おむつ幅方向への液の拡散が抑制されて横漏れ防止性が向上している。
【0079】
また、別の実施形態においては、第1吸収コア141における左右の欠落部144,144間に位置する部分(中央片141Mからなる部分)と重なっている部分、ならびに側部片141S,141Sと重なっている部分に長繊維由来の短繊維が生じている。一方、左右の欠落部144,144に重なる部分においては、ウエブを構成する長繊維121が長繊維の形態を維持する形態をとった場合においても、上記おむつと同様の効果を発現することができる。
【0080】
本実施形態における第1吸収コア141は、図9及び図10に示すように、第2吸収コア142の非肌当接面側に重ねて配されており、第1吸収コア41の欠落部144,144は、何れも第2吸収コア142下に位置している。吸収体の肌当接面側とは、吸収体の両面のうち、着用時に着用者の肌側に向けられる面側であり、吸収体の非肌当接面側とは、吸収体の両面のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側に向けられる面側である。
【0081】
本実施形態における吸収体104は、第1吸収コア141が欠落部144を有することにより、該吸収体の立体形状への変形性が向上しており、図10に示すように、吸収体104の両側部、具体的には、第1吸収コア141の中央片141Mの両側に位置する部分が、おむつ着用時に、着用者の肌側に向けて容易に起立する。
【0082】
吸収体104の両側部を良好に起立させ、排尿部を包み込む理想的な立体形状を形成させる観点及び吸収体104の幅方向中央に位置する中央片141Mの作用により股間部における吸収体のよれを防止する観点から、おむつ幅方向における、吸収体の側縁部143と欠落部144(欠落部のおむつ幅方向中央寄り端部の位置)との間の距離W3(図8参照)は、吸収体104の幅W(図8参照)の10〜40%であることが好ましく、20〜30%であることが好ましい。左右の欠落部144間の幅W4(図8参照)は、20〜120mm、特に40〜100mmが好ましい。
欠落部144の幅(おむつ幅方向の寸法)は、3〜20mm、特に5〜15mmが好ましい。また、欠落部144のおむつ長手方向の長さ(本実施形態においては側部片141Sのおむつ長手方向の長さと同じ)は、幼児用のおむつにおいては、10〜35cm、特に15〜30cmが好ましく、成人用のおむつにおいては、15〜55cm、特に20〜50cmが好ましい。
【0083】
第1吸収コア141と第2吸収コア142のおむつ幅方向における曲げ剛性は、第1吸収コア41よりも第2吸収コア142の方が小さい。
第2吸収コア142は、おむつ幅方向の曲げ剛性が、第1吸収コア141よりも、10〜50g、特に20〜40g小さいことが好ましい。また、第2吸収コア142は、おむつ幅方向の曲げ剛性が、50g以下、特に40g以下であることが好ましく、第1吸収コア(第1吸収コア)F41は、おむつ幅方向の曲げ剛性が30〜80g、特に40〜70gであることが好ましい。
第1吸収コア及び第2吸収コアのおむつ幅方向の曲げ剛性は、以下のようにして測定することができる。
【0084】
<おむつ幅方向の曲げ剛性の測定方法>
曲げ剛性値はハンドルオ・メーターにより測定することができる。ハンドルオ・メーターによる測定方法は日本工業規格「JIS L―1096(一般織物試験方法)」に準じる。幅30mm溝を刻んだ支持台上に、長手方向に150mm、幅方向に100mmに切断した吸収体を、溝と直行する方向に配置する。吸収体の中央を厚み2mmのブレードで押し、吸収体が8mm押し込まれる時の抵抗値(g)をロードセルにて測定する。本発明で用いた装置は、大栄科学精器製作所製、風合い試験機(ハンドルオ・メーター法)HOM―2型である。3点の平均値を測定値とする。
【0085】
尚、本実施形態における吸収体104は、全体として、おむつ前後方向に縦長の矩形状の平面視形状を有している。また、吸収体104は、その全体が、ティッシュペーパーや透水性の不織布からなる透水性のラップシート(図示略)で被覆された状態で、表面シート102と裏面シート103との間に固定されている。
また、本実施形態に係るおむつ101における表面シート102は、吸収体104の両側縁部よりも延出する部分が、吸収体104の非肌当接面に巻き下げられており、吸収体の非肌当接面側において、裏面シート103に図示しない接着剤等により固定されている。
第1吸収コア141及び第2吸収コア142は、そのそれぞれが各々ラップシートで被覆されていても良い。第1吸収コア141と第2吸収コア142との間は接着剤等により部分的に接着されていても良いし、接着されていなくても良い。
【0086】
使い捨ておむつ101における、吸収性本体105の長手方向の両側それぞれには、おむつ長手方向へ延びるように防漏カフ106が設けられている。
防漏カフ106は、図9及び図10に示すように、防漏カフ形成用シート160、及び該防漏カフ形成用シート160に伸張状態で固定された弾性部材161によって形成されている。
【0087】
防漏カフ形成用シート160は、吸収性本体105の両側縁部105cを覆うように配されていることが好ましい。ここで、吸収性本体105の両側縁部を覆うようにとは、股下部に起立性を有する防漏カフを形成でき、該防漏カフの存在によって、吸収性本体の側縁部が装着者の肌に直接接触しにくくなっていることをいう。
より具体的には、防漏カフ形成用シート160は、展開且つ伸張状態(図8参照)のおむつ101における腹側部A及び背側部B(好ましくは更に股下部C)において、おむつの吸収性本体105の肌当接面側105aから非肌当接面側105bに亘るように配されていることが好ましい。また、防漏カフ形成用シート160は、腹側部A及び背側部Bそれぞれにおいて、吸収性本体105の肌当接面側105bに固定されていることが好ましい。このような構成により、防漏カフが吸収性本体の両側部を包み込み易くなって防漏性が向上する。肌当接面側105aとは、吸収性本体105の両面のうち、着用時に着用者の肌側に向けられる面側であり、吸収性本体105の非肌当接面側105bとは、吸収性本体105の両面のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側に向けられる面側である。
【0088】
防漏カフ106は、図10に示すように、少なくとも股下部Cにおいて起立可能である。防漏カフ106の自由端162近傍には、複数本の弾性部材161が自由端162に沿って固定されている。防漏カフ形成用シート160は、腹側部A及び背側部Bそれぞれにおいて、2ヶ所の折り曲げ部163、164で折り曲げられて三つ折り状態で、吸収性本体105の肌当接面側の面上に公知の接合手段(ヒートシール、接着剤等)により固定されている。
【0089】
使い捨ておむつ101においては、防漏カフ形成用シート160として、所定幅の帯状の撥水性シート一枚を、その長手方向に沿う折り曲げ線で二つ折りして、相対向する層間をホットメルト型接着剤又は部分的な熱又は超音波シール等で接合した2層構造のシートを用いている。弾性部材161は、この2層構造シートの層間に伸張状態で固定されている。
【0090】
股下部Cにおける吸収性本体105は、図10に示すように、該吸収性本体105幅方向の両側縁部105cよりもおむつ幅方向に対して内側の部位に、防漏カフ106の固定端を形成する、防漏カフ形成用シート160との固定部167を有する。固定部167は、ヒートシール、高周波シール、超音波シール、ホットメルト型の接着剤等の公知の接合手段により、防漏カフ形成用シート160と巻き下げられた表面シート102の延出部とを接合して形成されている。
【0091】
また、吸収性本体105における、固定部167よりもおむつ幅方向外側の部位に、該吸収性本体の側部立ち上げ用の弾性部材166が伸張状態で配されている。
弾性部材166は、吸収性本体105の両側縁部に、各側縁部に沿って且つ腹側部Aと背側部Bとの間に亘るように配されている。本実施形態に係る使い捨ておむつ101における弾性部材166は、吸収性本体105の両側縁部に配されているが、固定部167よりも外側であれば、配設部位は特に制限されず、吸収体104とその肌当接面側に位置する表面シート102との間、吸収体104と裏面シート103との間、吸収体104のラップシート(図示略)内部等に配することもできる。これらの2カ所以上に配することもできる。但し、吸収性本体105の両側縁部又はその近傍に配することが好ましい。
固定部167は、吸収性本体105の両側縁部105cから5〜50mm、特に10〜30mm程度、おむつ幅方向内側に入り込んだ部位に存在することが好ましい。
【0092】
図10に示すように、おむつ101の股下部Cの幅方向において、防漏カフ106の固定端の位置P1は、欠落部144の位置(欠落部144のおむつ幅方向中央寄り端部の位置)P2と略一致していることが好ましい。防漏カフ106の固定端は、防漏カフ106の自由端とは反対側に存する、吸収性本体105と防漏カフ形成シート160とが接合されている箇所である。位置P1とP2とが略一致していることによって、吸収性本体5の両側部の立ち上がり性が一層向上し、吸収体本体は排尿部を包み込む理想的な立体形状をより形成し易くなることから漏れ防止性能が一層向上する。
位置P1とP2とが略一致しているという表現には、位置P1と位置P2とが完全に一致している場合の他、製造時の精度誤差も考慮し、両位置P1,P2間の距離L(図10参照)が10mm以内である場合も含まれる。
上述した吸収体104の側縁部141と欠落部144との間の距離W4、吸収体の幅W、左右の欠落部144間の幅W3、欠落部の幅、固定部167の吸収性本体105の両側縁部105cからの距離、前記位置P1,P2間の距離の距離等の好ましい数値範囲は、おむつの長手方向中央位置において、測定するものとする。
【0093】
本実施形態に係る使い捨ておむつ101によれば、吸収体104の両側部が容易に屈曲して起立することに加えて、弾性部材166の存在及び吸収性本体105と防漏カフ形成シート160との固定部が特定の位置にあること等によって、図10に示すように、吸収体104の起立した両側部ないし起立した吸収性本体の両側部間に、肌当接面側に向けて凹状のポケット構造が形成される。そのポケット構造は、排泄物の漏れだしが生じにくく、また、多量の尿が短時間にまとまって排泄されたり、吸収されにくい水状便や軟便等が排泄された場合等にも、その凹状のポケット構造から排泄物が漏れだし難い。また、凹状のポケットから漏れ出した場合であっても、吸収性本体105の側縁部を覆う防漏カフ106が存在するため、おむつからの漏れだしが阻止される。即ち、排泄物が、股下部において起立した吸収性本体の側縁部を超えてしまった場合でも、この防漏カフがその外側に位置して、それ以上の排泄物の漏れを防止することができるので漏れ性能に優れている。また、防漏カフ106によって、吸収性本体の側縁部が着用時に装着者の肌に直接接触しにくくなっているため、装着時の違和感を防止することもできる。
【0094】
また、股下部Cは、装着者の動き等によって左右からの圧迫を特に受け易い部分であるため、当該部分において装着者の動きによって左右から加わった圧迫力が、吸収体104の両側部が起立することにより緩和されるため、吸収体104のパッドスタビリティ(ヨレ防止効果など)も向上させることができる。
更に、装着者が脚を広げる動きや上半身を捩る動きなどにより欠落部144が開き、第1吸収体141の幅方向中央に位置する中央片141Mと吸収体の側縁部とが離間するような場合において、第1吸収コア141の欠落部44が低剛性の第2吸収コア142と重なっていることにより、第1吸収コア141の中央片141Mと側縁部の間に生じた隙間を第2吸収コア142が覆い、この隙間より排泄物が漏れ出ることを防止する。
【0095】
また、本実施形態に係る使い捨ておむつ101によれば、横漏れ防止性能を飛躍的に向上させることができるため、防漏性能を向上させ、或いは低下を抑制しつつ、吸収性本体の幅や股下部の幅を狭くしてフィット性の向上を図ることができる。このような効果は、股下部Cにおける防漏カフ106が、着用者の肌に向かって大きく起立し、充分な高さを確保することができると共に、潰れても実質的な液吸収面を狭くしにくいことと相俟って一層確実に奏される。
また、第2吸収コアに含まれる繊維が連続である場合に比べて、繊維同士の引きつれがないので、吸収体両側領域が立ち上がりやすくなるとともに、吸収体中央部にスポット吸収性が付与できるので、横モレ防止性がよりいっそう向上する。そのため、第2吸収コアに含まれる短繊維や、該短繊維を生じさせるために散布する塊状の粒子は、幅方向中央部に偏寄して存在することが好ましい。
【0096】
股下部の幅を狭くした使い捨ておむつとしては、例えば、以下に示す条件を満たす使い捨ておむつを特に好ましい例として例示できる。吸収体104の幅;背側部B及び腹側部Aそれぞれにおける最大幅が60〜140mm、特に80〜120mm、股下部Cにおける最大幅が50〜140mm、特に70〜120mm。図9及び図10中の符号109は、吸収性本体105と外装体110とを接合する接着剤である。
【0097】
本実施形態で用いた第1吸収コア141は、おむつ幅方向における液の拡散速度が、おむつ長手方向における液の拡散速度よりも速いことが、おむつ前端部にまで液が到達するまでに時間がかかり前漏れ防止性能が向上するとの点から好ましい。
特定方向の液の拡散速度を高めるには、方向性のある溝などをエンボス加工等により形成することもできるが、構成繊維が当該方向に配向しているものを用いることが好ましい。液の拡散速度がおむつ幅方向とおむつ長手方向の何れが高いかは、例えば、各方向に長い試験片を切り出し、それぞれのそのクレム吸水高さを測定して比較することにより判断できる。
【0098】
図13〜17は、本発明の更に他の実施形態である吸収体を示す図である。図13〜図17に示す各吸収体10B〜10Fは、各図において斜線を付した部分に短繊維を含んでいる。
【0099】
図13に示す吸収体10Bは、短繊維を主体として構成される上部繊維層91と、長繊維を主体として構成される下部繊維層92とが積層された2層構造の繊維集合体からなる吸収性コア9と、該吸収性コア9を被覆するラップシート(図示略)とからなる。ラップシートは、図1及び図2に示す吸収体10と同様に、吸収性コア9の上下面及び長手方向両側部を被覆している。「長繊維と合成又は半合成繊維である短繊維を含む繊維集合体を含んでなる吸収体」は、例えば、この吸収体10Bのように、繊維集合体からなる吸収性コアが、このようなラップシートにより被覆されているものであっても良い。
吸収体10Bにおける短繊維は、吸収性物品に組み込まれたときに着用者の肌側に配置される上部繊維層91に偏在し、長繊維は、吸収性物品に組み込まれたときに着用者の肌側とは反対側に配置される下部繊維層92に偏在している。即ち、長繊維と短繊維は、吸収体の厚み方向における異なる部位に偏在している。
上部吸収層91は、その構成繊維中、繊維長70mm未満の短繊維の割合が、重量基準で50〜100%であることが好ましく、より好ましくは60〜100%、更に好ましくは80〜100%である。
下部吸収層92は、その構成繊維中、繊維長70mm超の長繊維の割合が、重量基準で50〜100%であることが好ましく、より好ましくは60〜100%、更に好ましくは80〜100%である。
【0100】
図13に示す吸収体10Bによれば、短繊維を含む上部繊維層91が優れたスポット吸収性を示すので、上部繊維層91を、着用者の液排泄部に対向する部位に位置するようにして、使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品に組み込むことにより、液排泄部から排泄された液(尿や経血等)を、狭い範囲からスムーズに吸収体に吸収させることができる。また、多量の液が供給されたり、多量の液が吸収体に吸収されたりした場合に、液が吸収体の長手方向両側部、あるいは上部繊維層91の非肌当接面側に配された部分に達すると、吸収体の長手方向に配向している長繊維により、液が吸収体の長手方向(着用者の前後方向)に良好に拡散して吸収体の広い範囲が有効に利用される一方、吸収体の幅方向への拡散は抑制されて優れた横漏れ防止性能が得られる。
尚、吸収体10Bにおいては、上部繊維層91の幅が下部繊維層92の幅より狭くなっているが、上部繊維層91の幅を下部繊維層92の幅と略同じとすることもできる。
【0101】
図14〜図17に示す各吸収体10C〜10Fは、単層の繊維集合体93からなる吸収性コア9と、該吸収性コア9を被覆するラップシート(図示略)とからなる。ラップシートは、吸収性コア9の上下面を被覆している。ラップシートは、吸収性コア9の少なくとも短繊維が偏在している部分9Sにおける上下面を被覆していることが好ましい。
図14〜図17に示す各吸収体10C〜10Fにおいては、各図において斜線を付した部分に短繊維が偏在しており、斜線を付していない部分に長繊維が偏在している。即ち、長繊維と短繊維は、各吸収体の平面方向における異なる部位に偏在している。
【0102】
図14に示す吸収体10Cは、繊維集合体93からなる吸収性コア9の長手方向の一端側に、短繊維が偏在する部分9Sを有し、長手方向の他端側に、長繊維が偏在する部分9Lを有する。短繊維が偏在する部分9Sを、使い捨ておむつの股下部から腹側部にかけて配置し、長繊維が偏在する部分9Lをおむつの背側部に配置することで、おむつの股下部に優れたスポット吸収性が得られると共に、いわゆる前漏れ(腹側部側からの漏れ)を効果的に防止することができる。他方、吸収体の前後を逆にして配置すれば、いわゆる後漏れを効果的に防止することができる。
【0103】
図15に示す吸収体10Dは、繊維集合体93からなる吸収性コア9の長手方向の一端側に、短繊維が偏在する馬蹄形状の部分9Sを有し、長手方向の他端側に、長繊維が偏在する部分9Lを有する。この吸収体10Dにおいては、その長手方向における前記部分9S側に吸収性ポリマーが偏在している。この吸収体10Dは、長手方向における前記部分9L側を、着用者の後側(背側)に向けておむつに組み込むことで、腹側において尿を優先的に吸収して吸収性ポリマーに保持させることができ、その部分の厚みが増すことによって、軟便がおしり側から股下部を超え前側に流れるのを防止することできる。
【0104】
図16に示す吸収体10Eは、繊維集合体93からなる吸収性コア9の幅方向中央部に、短繊維が偏在した部分9Sを有し、該部分9Sの両側に、長繊維が偏在した部分9Lを有している。
吸収性コア9を構成する繊維集合体93のうち、短繊維が偏在する部分9Sは、その構成繊維中、繊維長70mm未満の短繊維の割合が、重量基準で50〜100%であることが好ましく、より好ましくは60〜100%、更に好ましくは80〜100%である。尚、この好ましい短繊維の割合(より好ましい割合、更に好ましい割合を含む)は、図1及び図2に示す吸収体10の長繊維のウエブ12における、長繊維由来の短繊維を含む部分(中央領域Mに位置する部分)や、上述した吸収体10C,10Dにおいても同様である。
また、前記繊維集合体93のうち、長繊維が偏在し、短繊維を実質的に含まないか又は短繊維を前記部分9Sに比べて少量しか含まない部分9Lは、その構成繊維中、繊維長70mm超の長繊維の割合が、重量基準で50〜100%であることが好ましく、より好ましくは60〜100%、更に好ましくは80〜100%である。
【0105】
図16に示す吸収体10Eによれば、上述した図1及び図2に示す吸収体10と同様の効果が奏される。また、上述した吸収体104と同様に、その長手方向をおむつの前後方向に一致させておむつ等に組み込まれてときに、弾性部材により、その両側部を着用者の肌側に向かって立ち上げ易く、横漏れ防止壁を容易に形成可能である。吸収体10Eの両側部を起立させるための弾性部材は、該吸収体10Eの肌当接面側、非肌当接面側、該吸収体10Eの側縁部近傍、該吸収体10の内部等を挙げることができる。
【0106】
図17に示す吸収体10Fは、繊維集合体93からなる吸収性コア9中に、短繊維が存在する部分9Sが分散して配置されている。短繊維を含む複数の部分がランダム又は規則的パターンで存在することによって、短繊維を含む部分が素早く吸収して膨潤し、その膨潤により生じた隆起により、膨潤後も肌とおむつとの間の通気性が良好に維持される。尚、図17(b)に示すように、短繊維が存在する部分9Sを、単層からなる繊維集合体中に散在させるのに代えて、図17(c)に示すように、複数の繊維層91,92から吸収性コア9を構成し、一方の層92を、長繊維を主体とする層とし、他方の層91を、多数の分割片からなる短繊維主体の層とすることもできる。
短繊維を含む部分9Sは、短繊維を少量しか含まない部分9Lに比べて多量の吸収性ポリマーを含む。吸収性ポリマーの存在量は重量比で、9S/9L=10/1〜1.5/1である。あるいは短繊維を少量しか含まない部分9Lには吸収性ポリマーが実質的に含まれていないことが好ましい。実質的にとは、9Sに含まれる吸収性ポリマーの量に比べて、9Lの吸収性ポリマー量が1/10未満の状態を言い、また、製造の過程で9S部分に配置しようとした吸収性ポリマーが意図せずして少量9L部分に混ざってしまう場合を含む。
このように吸収性ポリマーを配置することにより、9L部分に比べて9S部分が隆起し、通気性を確保することができる。
【0107】
上記の吸収体10B〜10Fにおける短繊維は、何れも合成又は半合成繊維である。吸収体には、従来、パルプ繊維が汎用されているが、パルプ繊維ではない短繊維を用いることで、ぬれてもへたりがなく、繰り返しの吸収に対してもスポット吸収性が確保できる。
短繊維として用い得る合成繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ナイロン、アクリル繊維、ビニロン等を単独あるいは複合(偏芯および同芯の芯鞘型、サイドバイサイド型など)で用いることができる
短繊維として用い得る半合成繊維ととしては、レーヨン、セルローストリアセテート及び/又はセルロースジアセテート等が挙げられる。
合成及び半合成繊維は、それぞれ、上述のもの等を一種単独で又は2以上を組み合わせて使用することができる。また、合成又は半合成繊維という表現には、合成繊維と半合成繊維との併用も含まれる。
【0108】
吸収体10B〜10Fは、それぞれに含まれる短繊維が、長繊維を塊状の粒子で切断して生じさせたものでない点で、上述した第1実施形態の吸収体10と異なっている。
図13に示す吸収体10Bにおける上部繊維層91は、カード機を用いて製造したカードウエブ、空気を利用したエアレイドウエブ、又は、水を利用した湿式ウエブ等から構成することができる。カードウエブを構成する繊維は、カード機に供給する原綿の段階で既に短繊維である。他方、吸収体10Bにおける下部繊維層92は、上述した吸収体の製造方法と同様にトウを開繊して得たウエブから構成することができる。また、 スパンボンドなど溶融紡糸して得たウエブや樹脂を溶融・押し出しして成型(必要に応じて延伸)したフィルムを引き裂いて得たウエブから構成することもできる。
【0109】
図18(a)は、吸収体10Bの製造方法の一例を示す図である。
図18(a)に示す方法においては、ホッパ94で計量した短繊維122Aを、カード機95に供給して帯状のカードウエブ91Aを得、該ウエブ91A上に非塊状の吸収性ポリマー13を所定箇所に散布した後、該ウエブ91Aのポリマー散布面上に、トウを開繊して得た長繊維のウエブ12を重ね、ついで、その積層体を一対のローラー96,96間に挿通して厚み方向に加圧する。一対のローラー96,96による加圧は、前記積層体の厚みが減少して保形性が向上する一方、長繊維の切断が実質的に起こらない条件にて行う。一対のローラー96,96による加圧後、図示しないラップシート供給機構によりラップシートを供給して積層体を被覆し、次いで、吸収体一枚分の長さに順次切断することにより、上述した吸収体10Bが多数連続的に得られる。
【0110】
この実施形態の製造方法においては、吸収性ポリマー13を、カードウエブ91Aと長繊維のウエブ12との間に挟まれるように供給しており、得られた吸収体10Bにおいては、吸収体の厚み方向における、上部吸収層91と下部吸収層92との境界部付近に吸収性ポリマーが偏在している。
【0111】
図18(b)は、吸収体10C〜10Fの製造方法の一例を示す図である。
図18(b)に示す方法においては、トウを開繊して得た長繊維のウエブ12を連続的に搬送し、該ウエブ12を、伸長可能なシート14aに重ねた状態で、該ウエブ12上に非塊状の吸収性ポリマー13を散布する。そして、吸収性ポリマー13を散布したウエブ12を、一対のローラー97,97間に通し、該ウエブ12内に吸収性ポリマー13を押し込む。次いで、ウエブ12における、ポリマーの散布面(シート14a側とは反対側の面)とは反対側にも伸長可能なシート14bを重ね、両シート14a,14bに挟まれた状態のウエブ12を、長繊維の切断装置98に通して、該ウエブ12における長繊維を部分的に切断する。
【0112】
長繊維の切断装置98は、塊状の粒子の有無に拘わらずに長繊維を切断可能なものであり、例えば、周面又は表面に切断用突起を備えた加圧部を備え、該加圧部を、シート14a,14bに挟んだ状態のウエブ12に押し当てたとき、切断用突起に加圧された部分の長繊維を切断するように構成されたものを用いることができる。長繊維の切断装置98は、伸長するシート14a,14bについては、該切断用突起で加圧しても、該シートに孔を開けにくいものが好ましい。
図19は、図16に示す吸収体10Eを製造する場合の、切断装置98の切断用突起の配置の例を示すものであり、加圧ロールの周面(加圧部の表面)に形成された切断用突起の配置を、該ロールを展開して示してある。図19に示す通り、ウエブ12の幅方向中央部に対応する部分98Mには、切断用突起が千鳥配置に形成されており、該部分98Mでウエブ12を加圧することにより、該ウエブ12の中央領域に多数の短繊維を生じさせることができる。他方、ウエブ12の両側部に対応する部分98S,98Sには、切断用突起が形成されておらず、該ウエブ12左右の側部領域には実質的に短繊維が生じない。吸収体10C,10D及び10Fは、加圧部の表面に形成する切断用突起の配置を代える以外は同様にして製造することができる。
また、本発明の吸収体の更に他の実施形態として、図4に示す製造方法における塊状の粒子の散布パターンを変更し、図14〜図17に示す吸収体の各図中の斜線部の範囲に長繊維由来の短繊維を生じさせた吸収体が挙げられる。
【0113】
図20は、本発明の更に他の実施形態の吸収体の製造する方法を示す図である。
図20に示す方法においては、トウを開繊して得た長繊維のウエブ12を、長繊維の切断装置99に供給し、該切断装置99によりその長繊維を部分的に切断して、長繊維由来の短繊維を部分的に生じさせた後、その短繊維と、切断されなかった長繊維とからなるウエブを、一対のロール310,311と切断装置99との速度比によるウエブが引っ張られ延伸させる。このとき、不完全に切断されていた繊維が切断され短繊維が形成される。次いで、そのウエブの伸長状態を、一対のロール310,311とバキュームコンベア32との間で緩和し、その緩和状態のウエブ上に、バキュームコンベア32で反対側から吸引しつつ、吸収性ポリマー13を供給する。そして、図示しないラップシート供給機構によりラップシートを供給して積層体を被覆し、次いで、吸収体一枚分の長さに切断する。
切断装置99は繊維を切断できるものであれば特に制限なく用いることができる。例えば、ロータリーダイカッターや押し切り刃、あるいはレーザー等を用いることができる。
【0114】
この製造方法によれば、長繊維と長繊維由来の短繊維を含む繊維集合体からなり、長繊維と短繊維とが混在している吸収体が得られる。
本発明における、短繊維を含む繊維集合体中又は長繊維のウエブ中においては、構成繊維同士が結合されていないことが、吸収性ポリマーの膨潤を阻害しない点で好ましい。ここで「結合」とは、繊維同士が融着して一体化しており、吸水ポリマーの膨潤によっても結合が外れない状態を指し、繊維同士が絡み合い、ひっかかっている状態や水溶性のバインダーによって繊維がくっついていて、排泄によって結合がゆるみあるいははずれ、また、吸水ポリマーの膨潤によって繊維同士が移動可能である状態は「結合」に含まれない。
【0115】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は適宜変更可能である。
例えば、長繊維由来の短繊維及び吸収性ポリマーを含む長繊維のウエブは、フラッフパルプを含む積繊物と積層されていても良い。例えば、図1,2に示す吸収体や図6に示す吸収体における長繊維のウエブ12を、フラッフパルプを含む積繊物に積層し、これらの全体をラップシートで被覆して吸収体とすることもできる。そのような吸収体は、長繊維のウエブ12が、着用者の肌側に位置するように、吸収性物品に組み込んで使用することが好ましい。上述した吸収体104における第1吸収コア141は、フラッフパルプを含む積繊物からなる。
【0116】
フラッフパルプを含む積繊物としては、フラップパルプのみの積繊物、フラッフパルプと吸収性ポリマーの粒子との混合積繊物、フラッフパルプと熱融着性合成繊維を混合し熱処理により一体化した混合積繊物、フラッフパルプ、吸収性ポリマーの粒子と熱融着性合成繊維を混合し熱処理により一体化した混合積繊物、エンボス処理を施したフラッフパルプの積繊物、エンボス処理を施したフラッフパルプと吸収性ポリマーの粒子との混合積繊物、水散布処理を施したフラッフパルプと吸収性ポリマーの粒子との混合積繊物等を用いることができる。フラッフパルプを含む積繊物中のフラップパルプの含有量は、例えば50〜100質量%とすることができる。
【0117】
また、図7に示す吸収体10Aのように、幅広のウエブの両側部を折り返して2層構造のウエブとするのに代えて、一部を切断して短繊維化した長繊維のウエブと、短繊維化していない長繊維のウエブとを積層して2層構造の吸収体とすることもできる。
【0118】
本発明の吸収性物品は、上述した吸収体104に代えて、上述した他の吸収体を含むものであっても良い。また、パンツ型の使い捨ておむつに代えて、展開型の使い捨ておむつであっても良い。また、本発明の吸収体は、従来の使い捨ておむつ等における一般的な構成の吸収体と表面シートとの間に配し、いわゆるサブレイヤーないしセカンドシートとして使用するものであっても良い。
以上の各実施形態の吸収体を具備する本発明の吸収性物品は、相対向する一対の立体ギャザーを2組以上有していてもよい。例えば図11に示すように、吸収体201の側縁から側方に延出したレッグフラッフ220の側縁部に、吸収性物品の長手方向に延びる弾性ストランド221を伸長状態で配してレッグギャザー222を形成し、更に、レッグギャザー222と吸収体201の側縁部との間に基端部を有する第1立体ギャザー223及び第2立体ギャザー224を配している。第1立体ギャザー223はレッグギャザー寄りに配されており、第2立体ギャザー224は吸収体寄りに配されている。
【0119】
レッグフラップ222に位置するこれら3つのギャザーは、最も外方に位置するギャザーの収縮力が、それよりも内方に位置するギャザーの収縮力よりも大きくなるように各ギャザーの収縮力を調整することが好ましい。即ち、レッグギャザー222の収縮力をL1、第1立体ギャザー223の収縮力をL2、第2立体ギャザー224の収縮力をL3としたとき、L1>L2,L3となることが好ましい。特に、最も外方に位置するギャザーから内側に向かってギャザーの収縮力が次第に小さくなることが好ましい。つまりL1>L2>L3となることが好ましい。この理由は次の通りである。
【0120】
従来の吸収性物品の設計手法は、吸収性物品を薄くして、しかも液漏れしにくくするために、ギャザーの収縮力を強くし、着用者の身体と吸収性物品との間に隙間を空けないようにするという考えに基づいていた。しかしながら、ギャザーの収縮力が強すぎると、その跡が肌につきやすくなる。また、本発明のように薄くて柔軟や吸収体を用いた場合には、ギャザーの収縮力によって吸収性物品が収縮してしまい装着しづらくなってしまう。また、ギャザーの収縮力が強すぎると、吸収性物品の装着中に、該収縮力に起因する下向きの力が吸収性物品に働き、ずれが生じやすくなる。これに対して、レッグギャザー及び相対向する一対の立体ギャザーを2組以上用い、その収縮力を前述した関係とすることで、従来の吸収性物品に生じる前述の不都合を回避することができる。
【0121】
ギャザーの収縮力は次の方法で測定される。吸収性物品からギャザーを切り取り測定試料とする。テンシロンORIENTEC RTC−1150Aを用いて測定試料のヒステリシス曲線を描かせる。このヒステリシス曲線の戻り時の応力を収縮力とする。引っ張りと戻しの速度は300mm/minとする。試料の初期長は100mm、最大伸びは100mm(元の長さの2倍)とする。ヒステリシス曲線の戻り時の応力は、試料を最大伸びから50mm戻したときの測定値とする。測定は5点の平均値とする。最大伸びが100mmに満たない試料の場合は、伸びを50mmまでとし、そのときの値を測定値とする。
【0122】
各ギャザーの収縮力を調整するためには、例えば弾性体の太さを変える、弾性体の伸長率を変える、弾性体の本数を変える等の方法を、単独で、或いは組み合わせる。また、レッグギャザー22の伸縮域は、吸収性物品の股下部のみとすることが好ましい。
【0123】
図11に示す吸収性物品においては、レッグギャザー及び相対向する一対の立体ギャザーが2組用いられている。これに代えて、各実施形態の吸収体を具備する本発明の吸収性物品では、レッグギャザーは用いずに、相対向する一対の立体ギャザーを2組以上用いてもよい。例えば図12では、第1立体ギャザー223及び第2立体ギャザー224の2組の立体ギャザーを用いている。この場合にも、吸収性物品の幅方向外方から内側に向かうに連れて立体ギャザーの収縮力を次第に小さくすることが、前述した理由と同様の理由により好ましい。
上述した一の実施形態における説明省略部分及び一の実施形態のみが有する要件は、それぞれ他の実施形態に適宜適用することができ、また、各実施形態における要件は、適宜、実施形態間で相互に置換可能である。
【実施例】
【0124】
〔実施例1〕
先ず、捲縮したアセテート長繊維のトウを用意した。この長繊維の繊維径は2.1dtexであった。トウの全繊維量は2.5万dtexであった。このトウを、伸張下に搬送し空気開繊装置を用いて開繊し、開繊ウエブを得た。次いで、多数の円盤が軸周りに所定間隔おきに組み込まれたロールと、平滑な受けロールとの間に開繊ウエブを通して、該ウエブを梳いた。その後、幅100mmに調節し、その搬送速度を減速した状態でバキュームコンベア上に転写し、当該バキュームコンベア上でのウエブの張力を緩めて捲縮を発現させた。ウエブ中の繊維の捲縮率は30%、1cm当たりの捲縮数は15個であった。これによって長繊維間の空間を広げ、吸収性ポリマーを入り込ませ易くし、またウエブを厚くして吸収性ポリマーの埋没担持性を向上させた。ウエブ上に幅80mmで吸収性ポリマーを散布し、該吸収性ポリマーを開繊ウエブ中に埋没担持させた。ウエブの坪量は25g/m2、吸収性ポリマーの坪量は132g/m2であった。
【0125】
次に、開繊したフラッフパルプ100重量部と吸収性ポリマー100重量部を気流中で均一混合したものをT字状の型の上に積繊し、合計坪量300g/m2の積繊体を得た。T字状の型は、脚部の幅が100mmで、長さが100mm、横架部の幅が125mmで、長さが100mmあった。積繊体におけるフラッフパルプ及び吸収性ポリマーの坪量はそれぞれ150g/m2であった。積繊体上にウエブを重ね、これら全体をホットメルト粘着剤をスプレー塗工した坪量16g/m2のティッシュペーパーで包みこんだ。その後、金属ロール−ゴムロール間で圧縮を行い(2つのロール間のクリアランスは0mmに設定した。)、ウエブとティッシュペーパーを一体化するとともに、ウエブが圧縮され、吸収性ポリマーによってウエブの構成繊維を切断し、吸収体を得た。
このウエブ(繊維集合体ないし長繊維のウエブ)は、塊状の吸収性ポリマーと短繊維を含有しており、それらは、概ね図6(d)に示す態様で分布していた。
吸収体における短繊維の分布は、幅方向中央部80mm(吸収性ポリマーを散布した位置)に偏って存在した。ウエブ幅方向中央領域の短繊維の存在割合は86%(長繊維が14%)、ウエブ幅方向両端部の短繊維の存在割合は18%であった。
【0126】
(繊維分部の測定法)
吸収体長手方向中央部付近、肌当接面から無作為に100本の繊維を引き出し、JIS L1015の平均繊維長測定方法(C法)にしたがって繊維長を測定した。得られた測定データからヒストグラムを作成し、繊維長70m未満の繊維の割合を短繊維の存在割合として算出した。
【0127】
〔実施例2〕
実施例1におけるウエブへの吸収性ポリマーの散布位置を長手方向に間欠に散布(長手方向前側から100mmの位置から、350mmの位置に至るまでの範囲に、幅方向中央部80mmの幅で散布した。すなわち、散布面積は幅80mm×長さ250mm)し以外は実施例1と同様にして、吸収性ポリマーを開繊ウエブ中に埋没担持させた。次に、開繊したフラッフパルプをT字状の型の上に積繊し、坪量100g/m2の積繊体を得た。T字状の型は、実施例1と同様のものである。積繊体上にウエブを重ね、これら全体を親水化処理した坪量16g/m2のスパンボンド−メルトブローン−メルトブローン−スパンボンド不織布(SMMS)を用いて包み込み、吸収体を得た。該吸収体は実施例1と同様に金属ロール−ゴムロール間で圧縮を行い、ウエブの圧縮に伴って吸収性ポリマーでウエブの構成繊維が切断されている。
このウエブ(繊維集合体ないし長繊維のウエブ)は、塊状の吸収性ポリマーと短繊維を含有しており、それらは、概ね図6(a)に示す態様で分布していた。
吸収体における短繊維は、吸収性ポリマーを散布した位置で78%(長繊維が22%)、ポリマー非散布領域で12%であった。
【0128】
〔実施例3〕
実施例1で用いたものと同じ吸収性ポリマーを埋没担持させたウエブP1を作成した。次に、芯がポリプロピレン、鞘がポリエチレンからなる複合繊維(3.3dtex、51mmカット、繊維表面には表面を親水化し、静電気の発生を抑えるための界面活性剤処理が施されている。)をカードにかけて、坪量が30g/m2となるようにウエブ化(P2)した。得られた合成繊維ウエブP2を、吸収性ポリマーを埋没担持させたウエブP1に重ねた。
【0129】
次に、ホットメルト粘着剤をスプレー塗工した坪量16g/m2のティッシュペーパー上に、フラッフパルプ100重量部と吸収性ポリマー100重量部を気流中で均一混合したものをT字状の型の上に積繊して得られた、合計坪量300g/m2の積繊体(実施例1で用いたものと同じもの)を重ねた。
さらに、上記、P1とP2の積層体を重ね、さらに上からホットメルト粘着剤をスプレー塗工した坪量16g/m2のティッシュペーパーを重ねて、全体を包みこんだ。
吸収体における短繊維の分布は、厚み方向肌側の短繊維の存在割合は100%、ウエブ厚み方向裏面材側の短繊維の存在割合は4%(加工工程で意図せずに切断されたものと考えられる)であった。
【0130】
〔比較例1〕
開繊したフラッフパルプ100重量部と吸収性ポリマー100重量部を気流中で均一混合し、合計坪量520g/m2の積繊体を得た。フラッフパルプ及び吸収性ポリマーの坪量はそれぞれ260g/m2であった。得られた積繊体を坪量16g/m2のティッシュペーパーで包み吸収体を得た。積繊体とティッシュペーパーの間に、ホットメルト粘着剤5g/m2をスプレー塗工し、両者を接着した。これら以外は実施例1と同様にして吸収体を得た。
【0131】
〔比較例2〕
比較例1と同様に、開繊したフラッフパルプ100重量部と吸収性ポリマー100重量部を気流中で均一混合し、合計坪量300g/m2の積繊体を得た。フラッフパルプ及び吸収性ポリマーの坪量はそれぞれ150g/m2であった。それ以外は比較例1と同様にして吸収体を得た。これら以外は実施例1と同様にして吸収体を得た。
【0132】
〔比較例3〕
実施例1において、ロールでの圧縮、すなわち、繊維の切断を行わなかった以外は、実施例1と同様に吸収体を作成した。
【0133】
〔性能評価〕
実施例及び比較例で得られた吸収体について以下の方法で吸収容量を測定し、また構造安定性及び柔軟性を評価した。それらの結果を以下の表1に示す。
【0134】
〔吸収容量〕
得られた吸収体を45°の傾斜版に固定し、吸収体の上方側の端部から200mmの位置に生理食塩水を一定量、一定間隔ごとに繰り返し注入し、吸収体の下方側の端部からもれだすまでの注入量を比較した。比較例1の吸収容量を1.0とした時の相対値を以下の計算式を用いて算出した。
吸収容量(相対値)=(サンプルの吸収容量)/(比較例1の吸収容量)
【0135】
〔構造安定性〕
(1)ドライ時
100×200mmに作製した吸収体の中央部を切断し、100×100mmの吸収体を得た。切断面を真下にして、振幅5cmで1回/1秒の速度で20回振動を与えたとき、切断面からの落下したポリマーの量を測定した。以下の判断基準に従って吸収性ポリマーの埋没担持性を評価した。
混合した吸収性ポリマーのうち、
○:脱落した吸収性ポリマーの割合が10%以下である。
△:脱落した吸収性ポリマーの量が10%を超え、25%以下である。
×:脱落した吸収性ポリマーの量が25%を超える。
(2)ウエット時
100×200mmに切断した吸収体全面に、生理食塩水200gをほぼ均等に吸収させた後、静かに吸収体を持ち上げたとき、吸収体が破壊しないかどうかを目視判定した。また、脱落した吸収性ポリマーの重量を測定し、別途測定しておいた脱落した吸収性ポリマー単位重量あたりの遠心保持量で除することで脱落した吸収性ポリマーのドライ時の重量を算出する。さらに、吸収性ポリマーの配合量との関係から脱落した吸収性ポリマーの割合を算出する。なお、吸収性ポリマーの配合量は、あらかじめ重量を測定しておいた分析対象の吸収体をアスコルビン酸の水溶液に浸漬させ、十分な時間日光暴露をして、吸収性ポリマーを完全に分解させる。水洗と分解を繰り返し、吸収性ポリマーが完全に溶解した後乾燥させ、前記分解前の吸収体重量の差から吸収性ポリマーの配合量を見積もることができる。
○:脱落した吸収性ポリマーの割合が10%以下であり、吸収体の破壊がない。
△:脱落した吸収性ポリマーの割合が10%を超え、25%以下であり、吸収体の破壊がない。
×:脱落した吸収性ポリマーの割合が25%を超える、あるいは吸収体が破壊する。
【0136】
〔柔軟性〕
ハンドルオ・メーターを用いて吸収体の柔軟性を評価した。ハンドルオ・メーターの測定値は、その数値が小さい程、装着しやすさやフィット性が良好であることを示す。ハンドルオ・メーターによる測定方法は次の通りである。JIS L1096(剛軟性測定法)に準じて測定を行う。幅60mmの溝を刻んだ支持台上に、長手方向に150mm、幅方向に50mm切断した吸収体を、溝と直交する方向に配置する。吸収体の中央を厚み2mmのブレードで押した時に要する力を測定する。本発明で用いた装置は、大栄科学精機製作所製、風合い試験機(ハンドルオ・メーター法)、HOM−3型である。3点の平均値を測定値とする。得られた測定値に基づき、以下の基準に従って柔軟性を評価した。
○:ハンドルオ・メーターの測定値が2N以下である。
△:ハンドルオ・メーターの測定値が2Nを超え、4N以下である。
×:ハンドルオ・メーターの測定値が4Nを超える。
【0137】
〔拡散異方性〕
吸収体を平面において、吸収体中央部より液を注入したときの拡散の形状を、長軸側と短軸側の距離の違いで評価した。液の注入は、所定の量(40g/回、5g/sec)を注入し、吸収終了後5分後に拡散面積の長軸側と短軸側の長さを測定した。
また、肌当接面と吸収体内部あるいは、吸収体中央部と吸収体短部など、吸収体の部分部分で拡散性が異なる場合は両方の値を測定した。
得られた測定値のうち最も拡散性の異なった測定値をもとに、下記基準に基づき判定を行った。
○:拡散面積の長軸側と短軸側の長さの比が、長軸側/短軸側で1.5以上である
△:拡散面積の長軸側と短軸側の長さの比が、長軸側/短軸側で1.2以上1.5未満である
×:拡散面積の長軸側と短軸側の長さの比が長軸側/短軸側が1.0以上1.2未満である
【0138】
【表1】
【0139】
以上のように、実施例の吸収体は拡散異方性を有し、あるいはまた、それぞれ拡散性が異なる部分有する吸収体であることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】本発明の吸収体の一実施形態を一部破断して示す斜視図である。
【図2】図1の吸収体のII−II線断面を示す模式断面図である。
【図3】図1の吸収体の効果を説明する説明図(模式平面図)である。
【図4】本発明の吸収体の製造方法の一実施形態による工程を装置とともに模式的に示す斜視図である。
【図5】長繊維が吸収性ポリマーにより切断される様子を示す概念図である。
【図6】本発明の吸収体の他の実施形態を示す模式平面図である。
【図7】本発明の吸収体の更に他の実施形態を示す断面図(図2相当図)である。
【図8】本発明の吸収体の更に他の実施形態を用いた使い捨ておむつ(本発明の吸収性物品の一実施形態)を示す展開平面図である。
【図9】図8のI−I線断面を示す模式断面図である。
【図10】使用状態における図8のIII−III線断面を示す模式断面図である。
【図11】本発明の吸収性物品の他の実施形態における幅方向の断面構造を示す模式図である。
【図12】本発明の吸収性物品の更に他の実施形態における幅方向の断面構造を示す模式図(図11相当図)である。
【図13】本発明の吸収体の更に他の実施形態を示す図で、(a)は平面図、(b)は(a)のIV−IV線断面図である。
【図14】本発明の吸収体の更に他の実施形態を示す図で、(a)は平面図、(b)は(a)のV−V線断面図である。
【図15】本発明の吸収体の更に他の実施形態を示す図で、(a)は平面図、(b)は(a)のVI−VI線断面図である。
【図16】本発明の吸収体の更に他の実施形態を示す図で、(a)は平面図、(b)は(a)のVII−VII線断面図である。
【図17】本発明の吸収体の更に他の実施形態を示す図で、(a)は平面図、(b)は(a)のVIII−VIII線断面図である。
【図18】本発明の吸収体の製造方法の更の例を示す図である。
【図19】図18(b)に示す製造方法に用いた切断用突起の配置の例を示す加圧ロールの展開平面図である。
【図20】本発明の他の実施形態の吸収体の製造方法を示す図である。
【図21】繊維断面の形状の評価方法の説明図である。
【符号の説明】
【0141】
10,10A〜10F,104,201 吸収体
11 吸収性コア
12 長繊維のウエブ
121 長繊維
122 長繊維由来の短繊維
13 吸収性ポリマー
14 ラップシート
101 使い捨ておむつ(吸収性物品)
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品に好ましく用いられる吸収体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続フィラメントの開繊トウを用いた吸収性物品の吸収体が知られている。例えば、捲縮性アセテート繊維のトウ層と、この層の片面に積層した粉砕パルプ層とからなる吸収体であって、該吸収体の厚さ方向に両層をプレスで一体化したものが知られている(特許文献1参照)。この吸収体によれば、体液の拡散性が向上するとされている。しかし、アセテート繊維はパルプよりも吸水能力が劣るので、この吸収体の吸収容量を高めるためには、多量の粉砕パルプを使用しなければならない。その結果、吸収体が厚くなり、柔軟性が低下し吸収性物品の着用感が低下してしまう。
【0003】
ところで、使い捨ておむつにおける横漏れを防止する技術として、例えば、吸収体の両側部に着用者の肌側に向かって突出する凸条部を形成することが知られている。しかし、凸条部を形成するために、製造工程が複雑化したり、製造コストが上昇したりする。
【0004】
これらの技術とは別に、本出願人は先に、パルプ繊維、高吸水性ポリマー、及び該パルプ繊維より繊維長の長い親水性繊維よりなる多数の小塊より形成された吸収体を有する吸収性物品を提案している(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開昭57−160457号公報
【特許文献2】特開平07−024003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、柔軟で吸収性能に優れ、液の拡散を制御して液漏れを効率よく防止することができ、製造も容易な吸収体、及びそのような吸収体を効率よく製造可能な吸収体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、長繊維と合成又は半合成繊維である短繊維とを含む繊維集合体を含んでなる吸収体を提供することにより、前記目的を達成したものである。
【0008】
本発明は、長繊維のウエブと該ウエブ中に含まれる塊状の粒子とを有する吸収体であって、前記ウエブの平面方向における前記粒子が分布する範囲の少なくとも一部に、前記長繊維が切断されて多数の短繊維が生じている吸収体を提供することにより、前記目的を達成したものである。
【0009】
本発明は、長繊維のウエブと該ウエブ中に含まれる塊状の粒子とを有し、該ウエブの一部に、前記長繊維が切断されて多数の短繊維が生じている吸収体の製造方法であって、親水性を有する長繊維のウエブの塊状の粒子を散布した後、該粒子を散布した範囲の少なくとも一部を厚み方向に加圧し、該一部における前記長繊維を前記粒子に押し当てて切断させる、吸収体の製造方法を提供することにより、前記目的を達成したものである。
【0010】
本発明は、請求項1〜12の何れかに記載の吸収体を具備する吸収性物品であって、着用時に着用者の排泄部に対向配置される部位に、前記短繊維が存在する吸収性物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の吸収体は、柔軟で吸収性能に優れ、液の拡散を制御して液漏れを効率よく防止することができ、製造も容易である。
本発明の吸収体の製造方法によれば、そのような吸収体を効率よく製造可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明する。
第1実施形態の吸収体10は、図1及び図2に示すように、親水性を有する長繊維のウエブ12と該ウエブ12中に含まれる塊状の吸収性ポリマー13(塊状の粒子)からなる吸収性コア11と、該吸収性コア11を被覆するラップシート14とからなる。
吸収体10は、平面視して長方形状であり、吸収性物品に組み込まれた状態においては、該吸収体の長手方向と、着用時における着用者の前後方向とが一致する。
【0013】
長繊維のウエブ12は、元々はその全体が長繊維からなるものであったが、吸収体10として完成した状態においては、ウエブ12の一部における長繊維は、切断されて短繊維となっている。本発明においては、長繊維からなる部分と同一の長繊維が切断されて生じた短繊維からなる部分も、長繊維のウエブの一部とする。
本実施形態の吸収体10においては、長繊維が切断されて生じた短繊維を含む長繊維のウエブ12が、長繊維と合成又は半合成繊維である短繊維を含む繊維集合体である。
【0014】
吸収体10における吸収性ポリマー13は、吸収体10の平面方向の一部に偏在している。具体的には、図1及び図2に示すように、長繊維のウエブ12の平面方向における、吸収体10の幅方向中央の所定幅の領域M(以下、中央領域Mともいう)に位置する部分に偏在している。吸収性ポリマー13は、前記中央領域Mに位置する部分に、略一様に分布している一方、該中央領域Mの両外方の側部領域S,Sに位置する部分には実質的に存在していない。
【0015】
そして、ウエブ12の平面方向における、吸収性ポリマー13が分布する範囲、即ち前記中央領域Mに位置する部分には、側部領域S,Sに位置する部分を構成する長繊維121と同一の長繊維が切断されて生じた多数の短繊維122が存在している。他方、ウエブ12における、側部領域S,Sに位置する部分を構成する長繊維121は、長繊維の形態を維持している。側部領域S,Sに位置する部分の長繊維121は、ウエブ12の長手方向に配向している。
【0016】
長繊維のウエブ12は、長繊維として、捲縮した長繊維を含むことが好ましい。長繊維の捲縮率(JIS L0208)は好ましくは10〜90%であり、より好ましくは10〜60%であり、更に好ましくは10〜50%である。長繊維が捲縮していることで、吸収体10が全体的に柔軟に変形しやすいものとなり、吸収性物品に組み込まれたときの、着用者に対するフィット性や、凹形状に変形させて防漏性を向上させる場合の凹形状への変形性を高めることができる。
長繊維のウエブ12は、長繊維が切断されて生じた短繊維122(以下、長繊維由来の短繊維ともいう)として、捲縮した短繊維を含むことが好ましい。捲縮した短繊維は、上述した捲縮した長繊維と同程度の捲縮率を有していることが好ましい。短繊維が捲縮していることによって、ウエブ中に吸収性ポリマーがより安定に保持され、吸収性ポリマーが該ウエブ内を移動したり、該ウエブから脱落したりすることが抑制される。
【0017】
長繊維及び短繊維の前記捲縮は、二次元的でも三次元的でもよい。また、長繊維の捲縮率は、長繊維を引き伸ばしたときの長さAと、元の長繊維の長さBとの差の、伸ばしたときの長さAに対する百分率で定義され、以下の式から算出される。
捲縮率=((A−B)/A) × 100 (%)
【0018】
元の長繊維の長さとは、長繊維が自然状態において、長繊維の両端部を直線で結んだ長さをいう。自然状態とは、長繊維の一方の端部を水平な板に固定し、繊維の自重で下方に垂らした状態をいう。長繊維を引き伸ばした時の長さとは、長繊維の捲縮がなくなるまで伸ばした時の最小荷重時の長さをいう。長繊維の捲縮率は前述の通りであり、捲縮数は1cm当たり2〜25個、特に4〜20個、とりわけ10〜20個であることが好ましい。短繊維の捲縮率も同様にして測定される。ただし、捲縮率の測定は、長さ10mm以上の繊維で行う。
【0019】
親水性の長繊維(長繊維由来の短繊維も同様)には、本来的に親水性を有する繊維、及び本来的には親水性を有さないが、親水化処理が施されることによって親水性が付与された繊維の双方が包含される。好ましくは本来的に親水性を有する繊維であり、より好ましくはアセテートやレーヨンからなる繊維であり、とりわけアセテートはウエブが湿潤しても嵩高性が保持されるので好ましい。アセテートとしては、セルローストリアセテート及び/又はセルロースジアセテートを用いることが好ましい。
ウエブを構成する長繊維(長繊維由来の短繊維も同様)として、ナイロンやアクリル繊維等を用いることもできる。
【0020】
親水性の長繊維(長繊維由来の短繊維も同様)は、その水分率が10%未満、特に1〜8%であることが、通液性を確保する観点、即ち吸水しても可塑化されないために柔軟化せず、あるいは繊維が膨潤しないために目詰まりを起こさない観点から好ましい。また、水分率が高い繊維は繊維が吸湿して、あるいは繊維自体の親水性が強いために、繊維−繊維間や同一繊維の異なる部位間において水素結合によって、特に吸収性物品の製造工程において厚みを制御するために圧縮する際、あるいはまた、パック内などにおいて吸収性物品が長期圧縮された状態に置かれたときになどに、製品が硬くなり装着感の低下やこすれ等による身体トラブルを起こす可能性がある。
水分率は、特許文献2の段落〔0025〕に記載の方法で測定する。
【0021】
本発明において長繊維とは、繊維長をJIS L1015の平均繊維長測定方法(C法)で測定した場合、好ましくは70mm以上、更に好ましくは80mm以上、一層好ましくは100mm以上である繊維のことをいう。ただし、測定対象とするウエブの全長L(図1参照)が100mm未満である場合には、当該ウエブ中の繊維の好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上、一層好ましくは80%以上がウエブ全長にわたって延びている場合に、当該ウエブの繊維は長繊維であるとする。本発明で用いられる長繊維は一般に連続フィラメントと呼ばれるものである。また、連続フィラメントの束は一般にトウと呼ばれている。従って、本発明における長繊維とは、連続フィラメントを含む概念のものである。
また、本発明において短繊維とは、長繊維と同様の測定方法によりに測定した繊維長が70mm未満、より好ましくは5〜70mm、更に好ましくは10〜50mmである繊維のことをいう。
また、本発明の吸収体には、JIS L1015の測定法で測定するのが困難と思われる、あるいは大きな誤差を含みうるような、非常に短い繊維(長さ5mm未満)や粉状に近いものが含まれることがある。
【0022】
本発明における長繊維は、吸収体の製造時に、長繊維のウエブの一部を、塊状の粒子(塊状の吸収性ポリマー等)の存在下に加圧圧縮して切断する観点から、繊維強度が、3g/d以下であることが好ましく、0.5〜2.5g/dであることが好ましい。
繊維強度は、以下のようにして測定する。
〔繊維強度の測定方法〕
JIS L1015化学繊維ステープル試験法引張り強さの項に準拠して行った。すなわち、コピー用紙に、繊維1本を、該繊維の固定されていない部分の長さ(空間距離)が20mm(繊維が短い場合は10mm)となるように貼り付けた。具体的には、貼り付けテープ間の距離が20mm(繊維が短い場合は10mm)となるように、繊維の両端部それぞれを幅18mmの貼り付けテープ〔ニチバン株式会社のスコッチテープ(商品名)〕を用いてコピー用紙に固定した。
この試料を、引張り試験機のチャックに取り付け、上下の貼り付けテープ部近傍で紙を切断し、引張り試験に供した。
装置は、ORIENTEC RTC−1150A型テンシロン引張り試験機を用いた。フルスケール5kgのロードセルを用いて適宜測定レンジを切り替えて行った。引張り速度は、300mm/minであった。測定は10点行い、その平均値を測定値とした。平均値に対して20%以上値が振れた測定値は除き、測定を追加した。
尚、長繊維の繊度は 1.0〜10dtex、特に1.5〜8dtexであることが好ましい。
【0023】
本発明における長繊維は、吸収体の製造時に、長繊維のウエブの一部を、塊状の粒子(塊状の吸収性ポリマー等)の存在下に加圧圧縮して切断する観点から、繊維強度が、3g/d以下であることが好ましく、0.5〜2.5g/dであることが好ましい。
【0024】
長繊維を塊状の粒子で切断して得られた短繊維は、通常、該繊維の末端の断面形状と繊維中央部の断面形状が異なる。
末端の断面形状と繊維中央部の断面形状が異なるか否かは以下のようにして判断することができる。
(断面形状の異同の判断方法)
繊維端部および繊維中央部の断面形状を、電子顕微鏡を用いて観察する。
倍率は500倍以上で観察し、無作為に抽出した短繊維10本の観察結果を持って判断する。繊維端部の断面形状は、試料台に繊維を垂直に貼り付けて繊維長軸方向の断面方向から観察する。断面形状は電子顕微鏡の焦点深度内の輪郭を採用するものとし、末端断面の投影図ではない。そして、両端部のどちらか一方の断面形状を、該繊維の末端の断面形状とする。繊維中央部は、繊維の見かけの長さの中央部を、樹脂の尾引きが起こらないようにカミソリで切断し、同様に観察する。繊維の見かけの長さは、繊維が伸張しないように最低限の荷重で厚紙等の上に両端を固定する形で貼り付けたときの両端間の距離である。
【0025】
そして、端部断面の映像と繊維中央部断面の映像とを比較し、両者の形状がほぼ同じであり且つ面積もほぼ同じである場合には、「繊維の末端の断面形状と繊維中央部の断面形状とが同じ」と判断し、それ以外の場合は、「繊維の末端の断面形状と繊維中央部の断面形状とが同じ」ではないと判断する。
ここで、断面積がほぼ同じとは、図21(a)に示すように、端部断面の映像と繊維中央部断面の映像とを重ね合わせたときに、一方の映像と他方の映像とが重なっていない部分aの合計面積S1が、両映像が重なっている部分bの面積S2の3割以下〔(S1/S2)が0.3以下〕である場合をいう。
尚、端部断面の映像と繊維中央部断面の映像とを重ね合わせる際には、一方又は両方の映像をその中心点の回りに回転させたり、中心点を移動させたりして、できるだけ両映像が重なる部分bの面積S2が大きくなるようにする。
図21(a)は、端部断面と繊維中央部断面とが、形状が「ほぼ同じ」であり且つ断面積も「ほぼ同じ」である場合を示し、図21(b)は、端部断面と繊維中央部断面とが、形状が「ほぼ同じ」に該当せず、また、断面積も「ほぼ同じ」に該当しない場合を示している。
【0026】
長繊維由来の短繊維は、良好なスポット吸収性を得る観点から、個々の短繊維の長手方向両端(切断端部)の位置が、吸収体の長手方向においてランダムに位置していることが好ましい。
【0027】
本発明においては、塊状の粒子を用いることが好ましい。塊状の粒子としては、塊状の吸収性ポリマーが好ましい。塊状の吸収性ポリマーとは、水溶液重合法により重合した吸収性ポリマー含水ゲルを板状にキャストし乾燥後に粉砕したものや、逆相けん濁重合法で界面活性剤の種類や攪拌力を制御することにより不定形粒子が凝集してできたものである。これに対して、球状や複数の球状の凝集体や繊維状、鱗片状のものがある。
塊状の吸収性ポリマーの平均粒径は、150〜600μm、特に200〜500μmであることが好ましい。
【0028】
吸収性ポリマーの材料としては、使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収体に従来使用されている各種公知のポリマー材料を用いることができ、例えば、ポリアクリル酸ソーダ、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、ポリアクリル酸ソーダ架橋体、(デンプン−アクリル酸)グラフト重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物、ポリアクリル酸カリウム、並びにポリアクリル酸セシウム等が挙げられる。
吸収性ポリマーは、自重の20倍以上の水又は生理食塩水を吸収し保持し得る性能を有するものが好ましい。
【0029】
塊状の粒子としては、塊状の吸収性ポリマーの他に、例えば、セルロースパウダーや活性炭、シリカ、アルミナ各種粘土鉱物(ゼオライト、セピオライト、ベントナイト、カンクリナイト等)等の有機、無機粒子(消臭剤や抗菌剤)を用いることができる。これらは一種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。無機粒子は一部金属サイトを置換したものを用いることができる。これらは凝集体として用いても良いし、別の担体と複合化して用いてもよい。これら塊状の粒子は、2種以上を併用することもできる。活性炭やシリカゲルなどの多孔質粒子の平均粒径は、20〜300μm、特に50〜150μmであることが好ましい。凝集体あるいは担体との複合体の平均径は、150〜600μm、特に200〜500μmであることが好ましい。これら成分の働きは、吸収体に吸収された排泄物のにおいや素材由来のにおいを抑制することである。
【0030】
吸収性ポリマーとして、塊状のポリマーと非塊状のポリマーとを併用することができる。また、塊状の粒子を用いずに長繊維を切断する場合、非塊状のポリマーのみを用いることもできる。
非塊状のポリマーとしては、モノマーと重合開始剤、架橋剤等を混合したものと噴霧乾燥する方法、逆相けん濁重合法で溶媒の種類や界面活性剤の種類を調整する方法(おおむね、ポリマーと溶媒のsp値の差を小さくすることにより、表面のでこぼこがない球状のポリマーを得ることができる)等によって得られた球状の粒子等を用いることができる。
【0031】
本発明の吸収体は、ロール等によって吸収性ポリマーを圧縮し、長繊維の一部を切断する場合、吸収性ポリマーの一部が破砕され、粒径が細かくなる可能性を含む。粒径の細かい吸収性ポリマーは、粒径が大きい吸収性ポリマーに比べて最密充填されやすいため、ゲルブロッキングや吸収体への液の取り込み速度の低下を起こす可能性がある。また、表面架橋を施した吸収性ポリマーを用いた場合、粉砕によって内部の架橋の弱い部分が露出することになり、同様にゲルブロッキングの危険性をはらむ。ゲルブロッキングは表面の液残りや液戻りにつながる。よって、このような万一の状態に備えて、本発明の吸収体では吸収体に排泄物が吸収された場合に緩衝系が成り立つように、各種緩衝剤を含ませることができる。すなわち、各種有機、無機緩衝剤、即ち、酢酸、リン酸、クエン酸、コハク酸、アジピン酸、リンゴ酸、乳酸又はこれらの塩を単独あるいは組み合わせて用いたり、各種アミノ酸を用いることができる。また、各種有機、無機緩衝剤は、排泄物、例えば尿の分解による発生するアンモニアを中和し、おむつを中性〜弱酸性に保つ効果があり、それによって、万一おむつから肌への排泄物の液戻りがあっても、肌への影響を少なくすることができる。更に、各種有機、無機緩衝剤は、アンモニア等のアルカリを中和する働きがあるので、ウエブ12を構成する長繊維としてアセテート繊維のような分子構造内にエステル結合を有する繊維を用いた場合には、アルカリによるエステル結合の分解に起因する繊維の損傷が防止される効果も期待できる。
【0032】
また、本発明の効果であるスポット吸収性を高めるため、また、液保持性と吸収速度の向上、ドライの向上を目的に、親水性の微粉又は短繊維をウエブ中に共存させることができる。親水性の微粉又は短繊維としては、フィブリル化されているか又はフィブリル化されていないセルロースパウダー、カルボキシメチルセルロース及びその金属塩、カルボキシエチルセルロース及びその金属塩、ヒドロキシエチルセルロース及びその誘導体、シルクパウダー、ナイロンパウダー、レーヨン、コットン、羊毛などの短繊維が挙げられる。これらのうち、セルロースパウダーを用いると、前記の効果を最大限向上させ得るので好ましい。親水性の微粉又は短繊維は、吸収性ポリマーの散布前にウエブに散布してもよく、或いは吸収性ポリマーと混合しておき、両者を同時にウエブに散布してもよい。
【0033】
また、本発明の切断された短繊維の繊維長が短くなった場合は、ウエブの形態保持性を向上させて、ウエブの圧縮回復性を高め、またウエブのよれを起こりにくくし、更にウエブの搬送性を良好にすることを目的として、ウエブを構成する長繊維どうしを接合することが好ましい。長繊維どうしの接合には、例えばポリ酢酸ビニル、アクリルエマルジョンのような水溶性接着剤を用いることができる。
【0034】
長繊維がアセテートからなる場合には、アセテートを溶解・可塑化し得る剤、例えばトリアセチンを、吸収性ポリマー散布後のウエブに散布してアセテートを溶解・可塑化させ、長繊維どうしを接合させることができる。
【0035】
長繊維どうしの接合の他の方法には、熱可塑性樹脂の合成パルプをウエブ中に分散させ、次いで加熱して合成パルプを溶融させる方法が挙げられる。合成パルプは、吸収性ポリマーの散布と同時に又はその前後にウエブに散布することができる。散布に際しては、ウエブにおける散布面と反対側の面から吸引を行い、合成パルプ及び吸収性ポリマーがウエブ中に十分に行き渡るようにすることが好ましい。長繊維が熱可塑性樹脂からなる場合には、該熱可塑性樹脂の融点よりも低い融点を有する熱可塑性樹脂からなる合成パルプを用いることが好ましい。
【0036】
上記吸収体にエンボス加工を施した場合、エンボス加工によってウエブが圧密化した部分が多数形成される。その結果、ウエブ中に繊維密度の高い部分と低い部分とが存在するようになる。従って、繊維密度の高い部分と低い部分とで毛管力に差が生じ、吸収体1は液の引き込み性がより高くなる。
【0037】
さらに液のスポット吸収性を高めるために、さらにまた、ウエブの形態保持性を向上させるために、ウエブの上及び/又は下に、或いはこれに加えて又はこれに代えて、ウエブの側部に、紙や不織布などのシート材料を一枚又は複数枚重ね合わせるか又は覆い、ウエブとシート材料とを該シートに塗られた接着剤によって接合するか、又は熱融着する方法が挙げられる。この方法によれば、一対のシート材料間にウエブが挟持固定されてなるシート状の吸収体が得られる。そのようなシート状の吸収体は、シート材料との接合及びシート材料そのものの剛性に起因して剛性が高くなり、それによってハンドリング性が良好になるので、それ単独で容易に搬送させることができる。また、このシート状の吸収体は、所望の形状に容易に裁断あるいはくり抜くことができるので、吸収性物品の形状に応じた吸収体を容易に製造できる。
【0038】
前記のシート材料とウエブとを接着剤によって接合して、ウエブの保形性を高める場合には、ウエブの透水性、柔らかさ、通気性を損なわないように接着剤を塗布することが好ましい。そのためには、接着剤をできるだけ細い繊維状にして且つ断続的に(例えばスパイラル状、線状、連続したΩ形状に)塗布することが有利である。それによってウエブの特性を損なわずに繊維どうしを多数の接合点で接合することが可能になるからである。例えばホットメルト塗布装置の一種であるUFDファイバー(商品名)を用いることで、これを達成することができる。接着剤の種類に特に制限はなく、親水性接着剤及び疎水性接着剤の何れも用いることができる。特に好ましいものは親水性の接着剤である。親水性の接着剤としては例えば親水性ホットメルト粘着剤であるcycloflex(米国デラウエア州、ナショナル・スターチ・アンド・ケミカル社の登録商標)が挙げられる。
なお、シート材料とウエブの接着は主に互いの表面同士が接着されるが、一部の接着剤はウエブ中にもぐりこみ、ウエブの厚み方向内部の繊維同士を接着する場合を含む。
【0039】
前記のシート材料をウエブの上及び/又は下に重ねることは、吸収体の吸収性能を高める点からも有利である。吸収体の吸収性能を高めるためには、該シート材料として、各種繊維シートや繊維ウエブを用いることが好ましい。その例としては、エアスルー不織布、エアレイド不織布、乾式パルプ不織布、架橋パルプおよび架橋パルプを含む紙、及びそれらの複合体などが挙げられる。これらのシート材料は、1枚で用いてもよく、或いは複数枚を重ねて用いてもよい。これらのシート材料を構成する繊維は、その繊維径が1.7〜12dtex、特に2.2〜7.8dtex、とりわけ3.3〜5.6dtexであることが好ましい。坪量は15〜200g/m2 、特に20〜150g/m2 、とりわけ25〜120g/m2 であることが好ましい。特に、液の取り込み速度を向上させたい場合、液戻りを防止したい場合、シート材料中での液拡散を促進させたい場合には、坪量を15〜100g/m2 、特に20〜80g/m2 、とりわけ25〜50g/m2 とすることが好ましい。一方、吸収体のクッション性を高めたい場合、吸収体のヨレを起こりにくくしたい場合、吸収体に圧縮回復性を付与したい場合、吸収体からの水蒸気の蒸散を抑制したい場合には、坪量を25〜200g/m2 、特に30〜150g/m2 、とりわけ40〜120g/m2 とすることが好ましい。
【0040】
本実施形態の吸収体10によれば、図3に示すように、短繊維が生じている中央領域Mが、着用者の液排泄部に対向する部位Pに位置するようにして、使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品に組み込んで使用することにより、液排泄部から排泄された液(尿や経血等)が、短繊維による優れたスポット吸収性により、吸収体10の狭い範囲から吸収体10内にスムーズに吸収される。そして、吸収体10に吸収された液は、その部位に偏在する吸収性ポリマー13により吸収され、吸収体10内に安定に保持される。
吸収体10上に短時間に多量の液が供給されたり、長時間の使用等により多量の液が吸収体10に吸収されたりした場合には、液が、側部領域S,Sまで拡散することがある。しかし、側部領域S,Sそれぞれには長繊維がその形態を維持したまま存在し、それらは吸収体の長手方向に配向しているため、側部領域S,Sに達した液は、吸収体10の長手方向(着用者の前後方向)に良好に拡散し、側部領域S,Sを横切る方向への拡散は抑制される。これにより、吸収体10の両側縁からの液の漏れ出しが効果的に防止されると共に、吸収体の広い範囲が有効に活用される
【0041】
本実施形態の吸収体10における吸収性ポリマー13及び長繊維由来の短繊維122は、何れも、吸収体10の前記中央領域Mに存在しており、吸収性ポリマー(粒子)13が分布する範囲と短繊維122が生じている範囲とが一致している。
吸収性物品に組み込まれて使用されるときの側部漏れを防止する観点から、吸収体10の幅方向における、短繊維13が生じている範囲の幅(中央領域Mの幅に同じ)W1(図1参照)は、吸収体10の全幅W(図1参照)の20〜95%、特に50〜85%であることが好ましく、短繊維が実質的に存在しない範囲の幅(側部領域Sの幅に同じ)W2(図1参照)は、吸収体10の全幅Wの5〜80%、特に15〜50%であることが好ましい。
【0042】
尚、ラップシート14としては、ティッシュペーパー等のパルプシートや透水性の不織布等の透水性のシート材が好ましく用いられる。ただし、吸収性ポリマー13および短繊維122が実質的に含まれていないW2の部分はラップシートで覆われていなくても良い。
【0043】
本発明の好ましい実施形態で用いられる吸収性ポリマーは、その遠心脱水法による生理食塩水の吸水量が30g/g以上、特に30〜50g/gであることが、ポリマーの使用量の点や、液吸収後のゲル感が低下することを防止する点から好ましい。吸収性ポリマーの遠心脱水法による吸収量の測定は以下のようにして行う。すなわち、吸収性ポリマー1gを生理食塩水150mlで30分間膨潤させた後、250メッシュのナイロンメッシュ袋に入れ、遠心分離機にて143G(800rpm)で10分間脱水し、脱水後の全体重量を測定する。ついで、以下の式に従って遠心脱水法による吸水量(g/g)を算出する。
遠心脱水法による吸水量=(脱水後の全体重量−ナイロンメッシュ袋重量−乾燥時吸収性ポリマー重量−ナイロンメッシュ袋液残り重量)/乾燥時吸収性ポリマー重量
【0044】
さらに、吸収性ポリマーは、以下の方法で測定される液通過時間が20秒以下、特に2〜15秒、とりわけ4〜10秒であることがゲルブロッキングの発生及びそれに起因する吸収性能の低下を防止し、また、吸収が間に合わないことに起因する液の素抜けによるもれの防止の点から好ましい。液通過時間の測定は以下の通りである。即ち、断面積4.91cm2(内径25mmφ)で底部に開閉自在のコック(内径4mmφ)が設けられた円筒管内に、該コックを閉鎖した状態で、該吸収性ポリマー0.5gを生理食塩水とともに充填し、該生理食塩水により該吸収性ポリマーを飽和状態に達するまで膨潤させる。膨潤した該吸収性ポリマーが、沈降した後、該コックを開き、生理食塩水50mlを通過させる。該生理食塩水50mlが通過するのに要した時間を測定し、この時間を液通過時間とする。液通過時間は、吸収性ポリマーのゲル強度を反映する指標のひとつである。液通過時間が短いものほどゲル強度は強くなる。
【0045】
上記吸収性ポリマーとしては、加重下での通液性の高い吸収性ポリマーを用いることがさらに好ましい。吸収性ポリマーのゲルブロッキングを効果的に防止する観点から、吸収性ポリマーは、その通液速度の値が好ましくは30〜300ml/min、より好ましくは32〜200ml/min、更に好ましくは35〜100ml/minである。通液速度の値が30ml/min未満である場合、吸液によって飽和膨潤した吸収性ポリマーどうしが荷重下に付着し合って、液の通過を妨げてしまいゲルブロッキング発生が起こりやすくなる。通液速度の値は大きければ大きいほどゲルブロッキングの発生を防止する観点から好ましい。尤も、通液速度の値が40ml/min程度に高ければ、ゲルブロッキングの発生はほぼ確実に防止される。通液速度が300ml/minを超える場合は、吸収体中の液の流れ性が高すぎて、特に一度にたくさんの排泄物が排泄されたときや、月齢の高い乳幼児、あるいは大人の例に見られるように排泄速度が速い場合、さらに吸収体の薄型化を図った場合に液の固定が十分でなく、もれを生じる可能性がある。また、一般に、通液速度を高めることは吸収性ポリマーの架橋度を高くすることになり、吸収性ポリマーの単位重量あたりの吸収容量が低くなり、多量の吸収性ポリマーを使用しなければならない。これらの観点から通液速度の上限値は決定される。
【0046】
また、本発明の好ましい実施形態で用い得る吸収性ポリマーとしては、前記の各特性を満足するものが好ましく、具体的には例えば、ポリアクリル酸ソーダ、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、ポリアクリル酸ソーダ架橋体、(デンプン−アクリル酸)グラフト重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物、ポリアクリル酸カリウム、並びにポリアクリル酸セシウム等が挙げられる。尚、前記の各特性を満たすようにするためには、例えば、吸収性ポリマーの粒子表面に架橋密度勾配を設ければよい。或いは吸収性ポリマーの粒子を非球形状の不定形粒子とすればよい。具体的には特開平7−184956号公報の第7欄28行〜第9欄第6行に記載の方法を用いることができる。
【0047】
長繊維のウエブを有する本発明の吸収体は、フラップパルプを主体とする従来の吸収体に比較して繊維間の空隙の大きな疎な構造になっているので、該吸収体は液の透過性の良好なものでもある。従って、吸収性ポリマーの吸収速度が遅い場合は、液が吸収性ポリマーに吸収される前に吸収体を通過してしまい、該吸収体に十分吸収されない場合が起こりうる。この観点から、ウエブに含まれる吸収性ポリマーは、充分に吸収速度の速いものであることが好ましい。それによって、吸収体に液を確実に保持できるようになる。吸収性ポリマーの吸収速度は、当該技術分野においては一般にDW法の測定値によって表現される。DW法による吸収速度(ml/0.3g・30sec)は、DW法を実施する装置として一般的に知られている装置(Demand Wettability Tester)を用いて測定される。具体的には、生理食塩水の液面を等水位にセットしたポリマー散布台〔70mmφ、No.2濾紙をガラスフィルターNo.1上に置いた台〕上に、測定対象の吸収性ポリマーを0.3g散布する。吸収性ポリマーを散布した時点の吸水量を0とし、30秒後の吸水量(この吸収量は、生理食塩水の水位の低下量を示すビュレットの目盛りで測定される)を測定する。得られた吸収量の値を吸水速度とする。吸収速度は吸収性ポリマーの形状、粒径、かさ密度、架橋度等によって設計することができる。
【0048】
吸収体がパルプを含まないか又は吸収体中のパルプの含有量が30重量%以下である実施形態においては、DW法に従い測定された吸収速度が2〜10ml/0.3g・30sec、特に4〜8ml/0.3g・30secである吸収性ポリマーが好ましく用いられる。なお、このような吸収速度を有する吸収性ポリマーは、フラッフパルプを主体とする従来の吸収体においては、ゲルブロッキング、ひいては液漏れを発生させる原因になるとしてその使用が避けられていたものである。これに反して、本実施形態においてはウエブが疎な構造を有していることに起因して、ウエブ内への液の取り込みと取り込まれた液の通過速度が高いため、高吸収速度を有する吸収性ポリマーを用いてもゲルブロッキングが起こりにくく、逆に液漏れが効果的に防止される。
【0049】
上述のように、液通過時間が短い吸収性ポリマーや、吸収速度の高い吸収性ポリマーは単独で用いてもよいが、液通過時間や吸収速度が上述の望ましい範囲内にある別の吸収性ポリマーを混合あるいは共存させて用いてもよい。例えば、相対的に液通過時間の短い吸収性ポリマーS1と相対的に液通過時間の長い吸収性ポリマーS2を混合して用いる場合が挙げられる。この場合、吸収性ポリマーS1と吸収性ポリマーS2を比較すると、吸収性ポリマーS2の方が吸収倍率や吸収速度が高い反面、ゲルブロッキングに対する耐性は低い。吸収性ポリマーS1と吸収性ポリマーS2を共存させることで、吸収性能の高い吸収性ポリマーS2の間に、硬い(つまりゲルブロッキングが起こりくい)吸収性ポリマーS1が入り込むので、吸収体をより効率的に利用することができる。別の例としては、相対的に吸収速度の高い吸収性ポリマーS3と相対的に吸収速度の低い吸収性ポリマーS4を共存させる方法がある。この場合、吸収性ポリマーS3を裏面シート側に配し、吸収性ポリマーS4を表面シート側に配することで、吸収体の液の取り込み速度を一層高めた上で、液の固定能力も高めることができる。更に別の例としては、液通過時間の短い吸収性ポリマーS1を表面シート側に配し、吸収速度の高い吸収性ポリマーS3を裏面シート側に配しても同様の効果が得られる。
【0050】
上述の特定の吸収性能を有する吸収性ポリマーを用いることで、本発明の吸収体は薄くて柔らかいにもかかわらず、液戻りの量が一層少なくなる。液戻りの量は、好ましくは1g以下、更に好ましくは0.5g以下、一層好ましくは0.25g以下となる。液戻り量の測定方法は次の通りである。乳幼児用紙おむつ(Mサイズ)の場合、おむつの腹側の端縁部から150mmの位置の幅方向中央部に、着色した生理食塩水160gを、ロートを用いて注入する。着色には赤色1号を用い、色素の添加量は50ppmとする(生理食塩水10リットルに対して0.5g)。注入完了から10分後に、アドバンテック社製のろ紙No.4Aを10枚重ねたものをおむつ上に置く。ろ紙の上から3.43kPaの圧力を2分間加えて、ろ紙に生理食塩水を吸収させる。ろ紙の重量を測定し、重量の増加分を液戻り量とする。測定は3点行う。おむつのサイズが異なる場合は、生理食塩水の注入量、ろ紙の加圧条件を次のように変更する。ベビー用おむつの場合は、ろ紙の加圧は3.43kPaで統一し、生理食塩水の注入量をおむつのサイズによって変化させる(新生児、Sサイズは120g、その他のサイズは160g)。一方、生理用品も含め大人用の吸収性物品の場合には、ろ紙の加圧は5.15kPaで統一する。注入する液は、生理用品の場合には生理食塩水に代えて馬血10gとする。
【0051】
次に、吸収体10の好ましい製造方法(本発明の吸収体の製造方法の一実施形態)について、図4を参照して説明する。
図4に示す吸収体の製造装置は、長繊維からなるトウ12aを、連続搬送しつつ長手方向に伸長させて開繊させ、長繊維のウエブ12を得る開繊機構2、開繊機構2により開繊されたウエブ12を、張力を緩和した状態として、ポリマー13の供給位置まで搬送する張力緩和機構3、長繊維のウエブ12の片面にラップシート14を供給するラップシート供給機構4、ラップシート14上のウエブ12に、ラップシート14側とは反対側の面側から吸収性ポリマー13を供給する吸収性ポリマー供給機構6、ラップシート14の、ウエブ12の両側縁より延出した部分14a,14aを折り返して、ウエブ12の両面を該ラップシート14で被覆する折り返し機構7、両面をラップシートで被覆されたウエブ12をラップシートと共に厚み方向に加圧して圧縮し、該ウエブ12の一部における長繊維を切断する長繊維切断機構8を具備している。
【0052】
開繊機構2は、折り畳まれて圧縮された状態の原反から帯状のトウ12aを連続的に引き出し、そのトウ12aを搬送途中で順次開繊するように構成されている。開繊機構2は、開繊機(バンディングジェット)21〜23を備えている。また、開繊機21と22との間には、トウ11を一旦上方に送った後に降下させるためのガイド24を備え、開繊機22、23の間には、プレテンショニングロール25及びブルミングロール26を備えている。開繊機21〜23は、エアーを吹き付けて搬送中のトウを開繊させてその幅を拡げる装置である。プレテンショニングロール25は、開繊機21で開繊されたトウ12aをニップして所定の速度で繰り出す一対のロール250,251を備えている。ブルミングロール26は、周方向に延びる多数の溝及び凸条部を備えた金属製の溝ロール260と、周面がゴムで形成されたアンビルロール261とを備えており、プレテンショニングロール25との間に速度差を設け、溝ロール260の凸条部が押圧して張力を与える部分と溝ロール260の溝部に位置して張力を与えない部分とを生じさせることで、トウ12aを開繊させる。
【0053】
張力緩和機構3は、開繊機23の下流に配されたフィードロール31及びバキュームコンベア32を備えている。フィードロール31は、ブルミングロール26の周速度V2よりも遅い周速度で回転駆動される一対のロール310,311を備えている。フィードロール31は、開繊機構2によりトウ12aを開繊して得られた長繊維のウエブ12を、プレテンショニングロール25とブルミングロール26との間で伸長され張力を高められた状態のトウないしウエブよりも、張力を緩和した状態として、バキュームコンベア32上に供給されたラップシート14上に供給する。バキュームコンベア32は、フィードロール31の送り速度V3(一対のロール310,311の周速度)よりも更に遅い搬送速度V4で駆動される通気性の無端ベルト320と、バキュームボックス321とを備えている。バキュームコンベア32上のラップシート14上に供給されたウエブ12は、張力を緩和された状態のまま、無端ベルト320によって更に搬送され、ポリマーの供給位置まで搬送される。
【0054】
ラップシート供給機構4は、ラップシート14を、長繊維のウエブ12の片面側に供給する。ラップシート供給機構4は、ラップシート14の巻出手段と、巻き出されたラップシート14をバキュームコンベア32に案内する案内ロール(図示せず)とからなり、巻出手段は、ラップシート14が巻回されたロール41と該ロール41を駆動させる駆動装置(図示せず)とを備えている。
【0055】
吸収性ポリマー供給機構6は、長繊維のウエブ12の上面側(ラップシート14側とは反対側の面側)に配されたポリマー供給口から吸収性ポリマー13を散布する。無端ベルト320を挟んで、前記ポリマー供給口の反対側には、バキュームボックス321が位置しており、バキュームボックス321によりウエブ12の裏面側から吸引した状態下に吸収性ポリマーの散布も行うことができる。ポリマー供給口は、ウエブ12の搬送方向(長手方向)に直交する方向の幅がウエブの幅よりも狭くなっており、ウエブ12の幅方向中央の所定幅の領域にのみポリマー13を散布するようになされている。
【0056】
折り返し機構7は、流れ方向の両側に折曲用のガイド71を備えている。ラップシート14は、長繊維切断機構8を構成する一対のロール80,81により引っ張られて、連続的に搬送されながら、該ラップシート14の、ウエブ12の両側縁より外方に延出した部分14a,14aが、それぞれ、ガイド71によってウエブ12の上面側に折り返される。この折り返しにより、ウエブ12の上面側もラップシート14で被覆され、その結果、ウエブ12の上下両面がラップシート14により被覆された状態となる。
【0057】
長繊維切断機構8は、両面をラップシートで被覆された長繊維のウエブ12(以下、ポリマーが散布された長繊維のウエブ12及び該ウエブを被覆するラップシート14からなる複合体を吸収体連続体100ともいう)を挟んで厚み方向に加圧圧縮する一対のロール80,81を備えている。
一方のロール80は、軸長方向の中央の所定幅の部分の外周面80Mが、ゴム、シリコン等の弾性素材からなり、軸長方向における該中央領域の両側に位置する部分の外周面80Sがスチール等の金属等の硬質素材(非弾性素材)からなる。ロール80における、弾性素材からなる外周面80Mの、ウエブ12に直交する方向の幅は、ポリマー供給口の同方向の幅と略同じである。
長繊維切断機構8より下流には、吸収体連続体の切断機構5を備えている。吸収体連続体の切断機構5は、軸長方向に延びる切断刃51aを備えたカッターロール51とアンビルロール52とを備え、吸収体連続体100を、吸収性物品に組み込まれる個々の吸収体の長さに切断する。
【0058】
上述した製造装置を使用して吸収体10を製造するには、図4に示すように、開繊機構2によって、原反から帯状のトウ12aを連続的に引き出し、開繊機21〜23の圧搾空気によるトウ12aの幅の拡幅及びプレテンショニングロール25とブルミングロール26の周速度差によるトウ12aの延伸によって、該トウ12aを開繊し、長繊維からなるウエブ12を得る。
【0059】
そして、得られたウエブ12を、フィードロール31を介して、バキュームコンベア32上に供給されたラップシート14上に供給する。
そして、ウエブ12を、バキュームコンベア32によって、ラップシート14と共に搬送しながら、そのウエブ12に対して、吸収性ポリマー供給機構6により吸収性ポリマー13を散布する。
【0060】
本実施形態においては、吸収性ポリマー13を、ウエブ12の幅方向中央の所定幅の領域のみに散布している。また、吸収性ポリマー13を、ウエブ12の長手方向に連続的に散布している。吸収性ポリマー13の散布量は、後述する長繊維の切断において、長繊維が良好に切断されるようにする観点から、ウエブ12の坪量と同等以上であることが好ましく、より好ましくは2倍以上、更に好ましくは3倍以上である。例えば、ウエブ12の坪量が30g/m2 であった場合、吸収性ポリマー13の散布量は、30〜400g/m2 、特に60〜300g/m2 とすることが好ましい。
【0061】
本実施形態においては、トウ12aを開繊して得たウエブ12を、トウ12aを開繊させた際の最大伸長状態よりも収縮させた状態で、ラップシート14上に積層している。より具体的には、ブルミングロール26の周速度V2をプレテンショニングロール25の周速度V1よりも速くして、トウ12aを開繊させる一方、ブルミングロール26の周速度V2よりも、ラップシート14の搬送速度V4(バキュームコンベア32の無端ベルト320の搬送速度に同じ)を遅くすることによって、バキュームコンベア32上でのウエブ12の張力を緩めて捲縮性を発現させている。これにより、上述した長繊維及び短繊維の好ましい捲縮率を効率よく発現させることができる。本実施形態において、トウ12aを開繊させる際の最大伸長状態は、プレテンショニングロール25とブルミングロール26との間の伸長状態である。
【0062】
本実施形態においては、ラップシート14として、ウエブ12の上下両面を被覆するに充分な幅を有するラップシート14を用いている。ラップシート14は、図4に示すように、吸収性ポリマー13がウエブ12に供給された後、該ウエブ12の両側縁より延出した部分14a,14aが、折り返し機構7によって該ウエブ12の上面側に折り返され該上面側もラップシートによって被覆される。ラップシート14としては、従来、吸収性コアを包み込むときに用いられている各種の材料を特に制限なく用いることができる。
【0063】
次いで、吸収体連続体100に対して、上述した長繊維切断機構8による加圧圧縮及びそれによる長繊維の切断が行われる。この加圧圧縮及びそれによる長繊維の切断は、吸収体連続体100を、一対のロール80,81に挿通し、ウエブ12における、吸収性ポリマー13を散布した範囲の全域又は一部を厚み方向に加圧して行う。
長繊維の切断は、吸収性ポリマー13が散布されている範囲であって、しかも一方のロール80の弾性素材からなる外周面80Mと、他方のロール81の硬質素材からなる外周面との間に挟まれて加圧された部分に生じる。この長繊維の切断は、図5に示すように、長繊維121が、塊状の吸収性ポリマー13に押し当てられることにより生じる。
そして、ウエブ12の一部における長繊維が切断された吸収体連続体100は、吸収体連続体の切断機構5によって、それが組み込まれる吸収性物品の種類や寸法等に応じた所望の寸法に切断されて、吸収体10とされる。
本実施形態の製造方法によれば、このようにして、上述した形態の吸収体10を効率よく連続生産することができる。
【0064】
本発明における吸収体が組み込まれる吸収性物品としては、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、失禁パッド等が挙げられる。吸収性物品は、一般には、液透過性の表面シート、液不透過性又は撥水性の裏面シート、及びこれらの両シート間に介在された吸収体を具備している。
【0065】
本実施形態の吸収体10の製造方法によれば、塊状の吸収性ポリマーを散布する範囲と、加圧圧縮により長繊維を切断する範囲とを適宜に調節することで、所望の部位にスポット吸収性に優れた領域を有する吸収体を効率よく製造することができる。
【0066】
上述した吸収体の製造法では、長繊維のウエブと吸収性ポリマーを複合化した後に、圧縮ロールによって長繊維を切断したが、予め切断した繊維上に吸収性ポリマーを散布し複合化しても同様の効果が得られる。繊維の切断方法は例えば多数のスリットが刻まれた複数のロールにかみこませて切断する方法や、カッター刃による方法、その他、水流やレーザーを使うなど、公知の方法を使うことができる。長繊維は捲縮を有するため、一部の繊維が切断されていても互いの繊維が絡み合い、コンベア等に乗せて搬送することも可能である。
【0067】
図6は、本発明の他の実施形態の吸収体を模式的に示す図である。図6においては、右下がりの実線の斜線を付した領域RAが、吸収性ポリマーを散布した範囲(吸収性ポリマーが分布する範囲に同じ)であり、左下がりの点線の斜線を付した領域RBが、ウエブ12を加圧圧縮して、長繊維由来の短繊維を生じさせた範囲である。
【0068】
図6(a)に示す吸収体は、吸収性ポリマーが分布する範囲RAに短繊維が生じている範囲RBが含まれている。具体的には、吸収体の長手方向及び幅方向の何れの方向においても、吸収性ポリマーが分布する範囲RAに比べて短繊維が生じている範囲RBが狭い。
図6(a)に示す吸収体は、上述した吸収体の製造方法において、上述したロール80として、外周面の周方向に、弾性素材からなる切断部と金属等の硬質素材(非弾性素材)からなる非切断部とが交互に形成されており且つ該切断部のウエブ12に直交する方向の幅がポリマー供給口の同方向の幅より狭いロールを用いることにより製造することができる。この場合、ロール80の弾性素材からなる切断部とロール81の硬質素材からなる外周面との間で加圧圧縮された箇所の長繊維が切断される。金属からなる非切断部に代えて、切断部間に凹部を形成し、該凹部を、長繊維を切断させない非切断部とすることもできる。
【0069】
図6(b)に示す吸収体も、吸収性ポリマーが分布する範囲RAに短繊維が生じている範囲RBが含まれている。具体的には、吸収体の幅方向においては、吸収性ポリマーが分布する範囲RAより短繊維が生じている範囲RBの幅が狭く、吸収体の長手方向においては、吸収性ポリマーが分布する範囲RAと短繊維が生じている範囲RBの長さが同じである。
図6(b)に示す吸収体は、上述した吸収体の製造方法において、上述したロール80として、弾性素材からなる外周面80Mのウエブ12に直交する方向の幅が、ポリマー供給口の同方向の幅より狭いロールを用いることにより製造することができる。
【0070】
図6(c)に示す吸収体は、吸収性ポリマーが分布する範囲RAと短繊維が生じている範囲RBとが一致している。図6(c)に示す吸収体は、上述した吸収体の製造方法において、吸収性ポリマーを間欠的に散布すると共に、上記ロール80として、外周面の周方向に、弾性素材からなる切断部と、硬質素材(非弾性素材)からなる非切断部又は凹部である非切断部とが交互に形成されており且つ該切断部のウエブ12に直交する方向の幅がポリマー供給口の同方向の幅と同じロールを用いることにより製造することができる。
【0071】
図6(d)及び図6(e)に示す各吸収体は、吸収性ポリマーが分布する範囲RAよりも短繊維が生じている範囲RBが狭い。図6(d)示す吸収体は、上述した吸収体の製造方法において、吸収性ポリマーをウエブ全面に散布すると共に、上記ロール80として、外周面の周方向に、弾性素材からなる切断部と、硬質素材(非弾性素材)からなる非切断部又は凹部である非切断部とが交互に形成されており且つ該切断部のウエブ12に直交する方向の幅がポリマー供給口の同方向の幅と同じロールを用いることにより製造することができる。図6(e)に示す吸収体は、上述した吸収体の製造方法において、吸収性ポリマーをウエブ全面に散布すると共に、上記ロール80として、外周面の周方向に、弾性素材からなる切断部が連続的に形成されており且つ該切断部のウエブ12に直交する方向の幅がポリマー供給口の同方向の幅と同じロールを用いることにより製造することができる。
尚、図6(d)と図6(e)においては、長繊維は範囲RBで示された以外の領域に存在する。
【0072】
本発明の吸収体は、例えば、図6(a)、図6(c)及び図6(d)に示す各吸収体のように、吸収体の長手方向の前後端部それぞれに長繊維からなる部分を有する一方、それらの間に長繊維由来の多数の短繊維が存在する部分を有しているものであっても良い。その場合、図6(a)、図6(c)及び図6(d)に示す吸収体のように、吸収体の左右両側部にも長繊維からなる部分を有し、全体として、長繊維からなる部分が、短繊維が生じている範囲を囲んでいることが好ましいが、吸収体の左右両側部に長繊維からなる部分を有しないものであっても良い。
図6(a)〜図6(e)に示す吸収体においても、短繊維が生じている範囲RBが優れたスポット吸収性を示すので、該範囲RBを、着用者の液排泄部に対向する部位に位置するようにして、使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品に組み込んで使用することにより、液排泄部から排泄された液(尿や経血等)が、吸収体10の狭い範囲からスムーズに吸収され、その部分に存在する吸収性ポリマーに安定的に保持される。また、多量の液が供給されたり、多量の液が吸収体に吸収されたりした場合に、液が吸収体の長手方向両側部に達すると、吸収体の長手方向に配向している長繊維により、液は吸収体の長手方向(着用者の前後方向)に良好に拡散して吸収体の広い範囲が有効に利用される一方、吸収体の幅方向への拡散は抑制される。
【0073】
図7は、本発明の更に他の実施形態の吸収体を示す図である。
図7に示す吸収体10Aにおいては、吸収体の厚み方向の一部、即ち上下両面の内の一方の面側に塊状の吸収性ポリマー13が偏在している。そして、ウエブ12の平面方向における、吸収性ポリマー13が分布する範囲の略全域に、長繊維が切断されて多数の短繊維122が生じている。
吸収体10Aは、該吸収体10Aの幅の略2倍の幅を有する帯状の長繊維ウエブの幅方向の中央領域に吸収性ポリマー13を散布し、該中央領域を、弾性材料と金属との間に挟んで加圧圧縮して該中央領域の長繊維を切断して短繊維122とした後、該中央領域の両外方に位置する部分それぞれを、該中央領域上に折り返して積層させることにより得られる。
吸収体10Aは、上下両面の内の塊状の吸収性ポリマー13が偏在している面側が、着用者の肌側に位置するようにして、吸収性物品に組み込むことが好ましい。
【0074】
図8〜図10は、本発明の更に他の実施形態である吸収体104を、パンツ型の使い捨ておむつ101に組み込んだ状態を示す図である。この使い捨ておむつ101は、本発明の吸収性物品の一実施形態である。
使い捨ておむつ101は、液透過性の表面シート102、液不透過性又は撥水性の裏面シート103及び両シート102,103間に位置する液保持性の吸収体104を有する吸収性本体105と、該吸収性本体105の外側(非肌当接面側)に位置して該吸収性本体105を接合固定している外装体110とを具備する。外装体110は、腹側部Aに位置する部分の両側縁部と背側部Bに位置する部分の両側縁部とが接合されて、ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部を有するパンツ型の形態をなしている。図8は、その接合部を剥離しておむつを平面状に展開し且つ各部の弾性部材を伸長させた状態を示している。
外装体110は、2枚のシート111,112と、これら2枚のシート間に固定された各部の弾性部材とからなる。使い捨ておむつ101においては、図8に示すように、2枚のシート111,112間に、ウエスト開口部の周縁部にウエストギャザーを形成するウエスト部弾性部材171,レッグ開口部の周縁部にレッグギャザーを形成するレッグ部弾性部材181,及びウエスト開口部の周縁端から下方に20mm離間した位置からレッグ開口部の上端までの領域である胴回り部Dに左右に分割された状態の胴回りギャザーを形成する胴回り弾性部材191がそれぞれ伸張状態で固定されている。各弾性部材71、81、91はホットメルト型接着剤等の接合手段により接合されている。シート111は、おむつ前後方向において、シート112の前後端縁から延出した延出部を有し、それらの延出部はそれぞれ、外装体110のシート112上に吸収性本体105が配置された後、該吸収性本体105の前後端を覆うように該吸収性本体105側に折り返されて接着されている。
【0075】
本実施形態の吸収体104は、図8〜図10に示すように、吸収体104の非肌当接面側を構成する第1吸収コア141と該吸収体104の肌当接面側を構成する第2吸収コア142とを具備してなる。第1吸収コア141は、第2吸収コア142の非肌当接面側に配されている。
本実施形態の吸収体104においては、第2吸収コア142中に、長繊維のウエブと該ウエブ中に含まれる塊状の粒子とが含まれており、該ウエブの平面方向における該粒子が分布する範囲の少なくとも一部に、該長繊維が切断されて多数の短繊維が生じている。
尚、第2吸収コア142は、平面視矩形状であり、吸収体104を含む吸収性本体105の長手方向の略全長に亘る長さ及び該吸収性本体105の幅より若干狭い幅を有している。
【0076】
第1吸収コア141は、平面視したときの概略形状はほぼ矩形状であるが、おむつ101の股下部Cに配される部分の左右に、吸収体104の立体形状への変形を容易とする欠落部144,144を有している。吸収体104の立体形状への変形には、吸収体104がおむつ幅方向の断面(例えば図10に示す断面)において凹状をなすように変形する幅方向の変形、吸収体104がおむつ長手方向の断面において凹状をなすように変形する縦方向の変形、及びこれら両方向の変形が組み合わされた複合型の変形が代表例である。
本実施形態における欠落部144は、図8及び図10に示すように、股下部Cにおける吸収体104の側縁部143から離間した部位に、該吸収体104の長手方向に沿って延びるように形成されている。
股下部Cに形成された欠落部144の形成部位に関し、吸収体104の側縁部143から離間しているとは、少なくとも、おむつ長手方向中央位置において離間していることを意味する。おむつ長手方向中央位置とは、展開且つ伸長状態としたおむつの長手方向の全長を2等分する位置であり、図8中のIII−III線の位置である。
【0077】
第1吸収コア141における欠落部144は、その長手方向の両端144a,144bが、図8に示すように、何れも吸収体104の側縁部143に開口している。そのため、第1吸収コア141は、複数に分割されている。即ち、股下部Cにおいて、吸収体104の幅方向中央に位置する中央片141Mと、股下部Cにおいて、該中央片141Mの両側に位置する左右の側部片141S,141Sとに分割されている。吸収コアが欠落部を有するという場合の欠落部には、本実施形態の欠落部144のように、複数の分割片間に生じた隙間も含まれる。
【0078】
本実施形態の吸収体104においては、おむつ101の排泄部対向部である、おむつ101の股下部Cにおける幅方向中央部分における第2吸収コア142に、長繊維由来の短繊維122が多数生じている。より具体的には、第1吸収コア141における左右の欠落部144,144間に位置する部分(中央片141Mからなる部分)と重なっている部分に、長繊維由来の短繊維が生じている。排泄部対向部のスポット吸収性を高めることで、おむつ101の漏れ防止性が向上し、また、おむつのべたつきを低減することができる。他方、長繊維のウエブにおける、側部片141S,141Sと重なっている部分においては、ウエブを構成する長繊維121が長繊維の形態を維持しており、おむつ幅方向への液の拡散が抑制されて横漏れ防止性が向上している。
【0079】
また、別の実施形態においては、第1吸収コア141における左右の欠落部144,144間に位置する部分(中央片141Mからなる部分)と重なっている部分、ならびに側部片141S,141Sと重なっている部分に長繊維由来の短繊維が生じている。一方、左右の欠落部144,144に重なる部分においては、ウエブを構成する長繊維121が長繊維の形態を維持する形態をとった場合においても、上記おむつと同様の効果を発現することができる。
【0080】
本実施形態における第1吸収コア141は、図9及び図10に示すように、第2吸収コア142の非肌当接面側に重ねて配されており、第1吸収コア41の欠落部144,144は、何れも第2吸収コア142下に位置している。吸収体の肌当接面側とは、吸収体の両面のうち、着用時に着用者の肌側に向けられる面側であり、吸収体の非肌当接面側とは、吸収体の両面のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側に向けられる面側である。
【0081】
本実施形態における吸収体104は、第1吸収コア141が欠落部144を有することにより、該吸収体の立体形状への変形性が向上しており、図10に示すように、吸収体104の両側部、具体的には、第1吸収コア141の中央片141Mの両側に位置する部分が、おむつ着用時に、着用者の肌側に向けて容易に起立する。
【0082】
吸収体104の両側部を良好に起立させ、排尿部を包み込む理想的な立体形状を形成させる観点及び吸収体104の幅方向中央に位置する中央片141Mの作用により股間部における吸収体のよれを防止する観点から、おむつ幅方向における、吸収体の側縁部143と欠落部144(欠落部のおむつ幅方向中央寄り端部の位置)との間の距離W3(図8参照)は、吸収体104の幅W(図8参照)の10〜40%であることが好ましく、20〜30%であることが好ましい。左右の欠落部144間の幅W4(図8参照)は、20〜120mm、特に40〜100mmが好ましい。
欠落部144の幅(おむつ幅方向の寸法)は、3〜20mm、特に5〜15mmが好ましい。また、欠落部144のおむつ長手方向の長さ(本実施形態においては側部片141Sのおむつ長手方向の長さと同じ)は、幼児用のおむつにおいては、10〜35cm、特に15〜30cmが好ましく、成人用のおむつにおいては、15〜55cm、特に20〜50cmが好ましい。
【0083】
第1吸収コア141と第2吸収コア142のおむつ幅方向における曲げ剛性は、第1吸収コア41よりも第2吸収コア142の方が小さい。
第2吸収コア142は、おむつ幅方向の曲げ剛性が、第1吸収コア141よりも、10〜50g、特に20〜40g小さいことが好ましい。また、第2吸収コア142は、おむつ幅方向の曲げ剛性が、50g以下、特に40g以下であることが好ましく、第1吸収コア(第1吸収コア)F41は、おむつ幅方向の曲げ剛性が30〜80g、特に40〜70gであることが好ましい。
第1吸収コア及び第2吸収コアのおむつ幅方向の曲げ剛性は、以下のようにして測定することができる。
【0084】
<おむつ幅方向の曲げ剛性の測定方法>
曲げ剛性値はハンドルオ・メーターにより測定することができる。ハンドルオ・メーターによる測定方法は日本工業規格「JIS L―1096(一般織物試験方法)」に準じる。幅30mm溝を刻んだ支持台上に、長手方向に150mm、幅方向に100mmに切断した吸収体を、溝と直行する方向に配置する。吸収体の中央を厚み2mmのブレードで押し、吸収体が8mm押し込まれる時の抵抗値(g)をロードセルにて測定する。本発明で用いた装置は、大栄科学精器製作所製、風合い試験機(ハンドルオ・メーター法)HOM―2型である。3点の平均値を測定値とする。
【0085】
尚、本実施形態における吸収体104は、全体として、おむつ前後方向に縦長の矩形状の平面視形状を有している。また、吸収体104は、その全体が、ティッシュペーパーや透水性の不織布からなる透水性のラップシート(図示略)で被覆された状態で、表面シート102と裏面シート103との間に固定されている。
また、本実施形態に係るおむつ101における表面シート102は、吸収体104の両側縁部よりも延出する部分が、吸収体104の非肌当接面に巻き下げられており、吸収体の非肌当接面側において、裏面シート103に図示しない接着剤等により固定されている。
第1吸収コア141及び第2吸収コア142は、そのそれぞれが各々ラップシートで被覆されていても良い。第1吸収コア141と第2吸収コア142との間は接着剤等により部分的に接着されていても良いし、接着されていなくても良い。
【0086】
使い捨ておむつ101における、吸収性本体105の長手方向の両側それぞれには、おむつ長手方向へ延びるように防漏カフ106が設けられている。
防漏カフ106は、図9及び図10に示すように、防漏カフ形成用シート160、及び該防漏カフ形成用シート160に伸張状態で固定された弾性部材161によって形成されている。
【0087】
防漏カフ形成用シート160は、吸収性本体105の両側縁部105cを覆うように配されていることが好ましい。ここで、吸収性本体105の両側縁部を覆うようにとは、股下部に起立性を有する防漏カフを形成でき、該防漏カフの存在によって、吸収性本体の側縁部が装着者の肌に直接接触しにくくなっていることをいう。
より具体的には、防漏カフ形成用シート160は、展開且つ伸張状態(図8参照)のおむつ101における腹側部A及び背側部B(好ましくは更に股下部C)において、おむつの吸収性本体105の肌当接面側105aから非肌当接面側105bに亘るように配されていることが好ましい。また、防漏カフ形成用シート160は、腹側部A及び背側部Bそれぞれにおいて、吸収性本体105の肌当接面側105bに固定されていることが好ましい。このような構成により、防漏カフが吸収性本体の両側部を包み込み易くなって防漏性が向上する。肌当接面側105aとは、吸収性本体105の両面のうち、着用時に着用者の肌側に向けられる面側であり、吸収性本体105の非肌当接面側105bとは、吸収性本体105の両面のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側に向けられる面側である。
【0088】
防漏カフ106は、図10に示すように、少なくとも股下部Cにおいて起立可能である。防漏カフ106の自由端162近傍には、複数本の弾性部材161が自由端162に沿って固定されている。防漏カフ形成用シート160は、腹側部A及び背側部Bそれぞれにおいて、2ヶ所の折り曲げ部163、164で折り曲げられて三つ折り状態で、吸収性本体105の肌当接面側の面上に公知の接合手段(ヒートシール、接着剤等)により固定されている。
【0089】
使い捨ておむつ101においては、防漏カフ形成用シート160として、所定幅の帯状の撥水性シート一枚を、その長手方向に沿う折り曲げ線で二つ折りして、相対向する層間をホットメルト型接着剤又は部分的な熱又は超音波シール等で接合した2層構造のシートを用いている。弾性部材161は、この2層構造シートの層間に伸張状態で固定されている。
【0090】
股下部Cにおける吸収性本体105は、図10に示すように、該吸収性本体105幅方向の両側縁部105cよりもおむつ幅方向に対して内側の部位に、防漏カフ106の固定端を形成する、防漏カフ形成用シート160との固定部167を有する。固定部167は、ヒートシール、高周波シール、超音波シール、ホットメルト型の接着剤等の公知の接合手段により、防漏カフ形成用シート160と巻き下げられた表面シート102の延出部とを接合して形成されている。
【0091】
また、吸収性本体105における、固定部167よりもおむつ幅方向外側の部位に、該吸収性本体の側部立ち上げ用の弾性部材166が伸張状態で配されている。
弾性部材166は、吸収性本体105の両側縁部に、各側縁部に沿って且つ腹側部Aと背側部Bとの間に亘るように配されている。本実施形態に係る使い捨ておむつ101における弾性部材166は、吸収性本体105の両側縁部に配されているが、固定部167よりも外側であれば、配設部位は特に制限されず、吸収体104とその肌当接面側に位置する表面シート102との間、吸収体104と裏面シート103との間、吸収体104のラップシート(図示略)内部等に配することもできる。これらの2カ所以上に配することもできる。但し、吸収性本体105の両側縁部又はその近傍に配することが好ましい。
固定部167は、吸収性本体105の両側縁部105cから5〜50mm、特に10〜30mm程度、おむつ幅方向内側に入り込んだ部位に存在することが好ましい。
【0092】
図10に示すように、おむつ101の股下部Cの幅方向において、防漏カフ106の固定端の位置P1は、欠落部144の位置(欠落部144のおむつ幅方向中央寄り端部の位置)P2と略一致していることが好ましい。防漏カフ106の固定端は、防漏カフ106の自由端とは反対側に存する、吸収性本体105と防漏カフ形成シート160とが接合されている箇所である。位置P1とP2とが略一致していることによって、吸収性本体5の両側部の立ち上がり性が一層向上し、吸収体本体は排尿部を包み込む理想的な立体形状をより形成し易くなることから漏れ防止性能が一層向上する。
位置P1とP2とが略一致しているという表現には、位置P1と位置P2とが完全に一致している場合の他、製造時の精度誤差も考慮し、両位置P1,P2間の距離L(図10参照)が10mm以内である場合も含まれる。
上述した吸収体104の側縁部141と欠落部144との間の距離W4、吸収体の幅W、左右の欠落部144間の幅W3、欠落部の幅、固定部167の吸収性本体105の両側縁部105cからの距離、前記位置P1,P2間の距離の距離等の好ましい数値範囲は、おむつの長手方向中央位置において、測定するものとする。
【0093】
本実施形態に係る使い捨ておむつ101によれば、吸収体104の両側部が容易に屈曲して起立することに加えて、弾性部材166の存在及び吸収性本体105と防漏カフ形成シート160との固定部が特定の位置にあること等によって、図10に示すように、吸収体104の起立した両側部ないし起立した吸収性本体の両側部間に、肌当接面側に向けて凹状のポケット構造が形成される。そのポケット構造は、排泄物の漏れだしが生じにくく、また、多量の尿が短時間にまとまって排泄されたり、吸収されにくい水状便や軟便等が排泄された場合等にも、その凹状のポケット構造から排泄物が漏れだし難い。また、凹状のポケットから漏れ出した場合であっても、吸収性本体105の側縁部を覆う防漏カフ106が存在するため、おむつからの漏れだしが阻止される。即ち、排泄物が、股下部において起立した吸収性本体の側縁部を超えてしまった場合でも、この防漏カフがその外側に位置して、それ以上の排泄物の漏れを防止することができるので漏れ性能に優れている。また、防漏カフ106によって、吸収性本体の側縁部が着用時に装着者の肌に直接接触しにくくなっているため、装着時の違和感を防止することもできる。
【0094】
また、股下部Cは、装着者の動き等によって左右からの圧迫を特に受け易い部分であるため、当該部分において装着者の動きによって左右から加わった圧迫力が、吸収体104の両側部が起立することにより緩和されるため、吸収体104のパッドスタビリティ(ヨレ防止効果など)も向上させることができる。
更に、装着者が脚を広げる動きや上半身を捩る動きなどにより欠落部144が開き、第1吸収体141の幅方向中央に位置する中央片141Mと吸収体の側縁部とが離間するような場合において、第1吸収コア141の欠落部44が低剛性の第2吸収コア142と重なっていることにより、第1吸収コア141の中央片141Mと側縁部の間に生じた隙間を第2吸収コア142が覆い、この隙間より排泄物が漏れ出ることを防止する。
【0095】
また、本実施形態に係る使い捨ておむつ101によれば、横漏れ防止性能を飛躍的に向上させることができるため、防漏性能を向上させ、或いは低下を抑制しつつ、吸収性本体の幅や股下部の幅を狭くしてフィット性の向上を図ることができる。このような効果は、股下部Cにおける防漏カフ106が、着用者の肌に向かって大きく起立し、充分な高さを確保することができると共に、潰れても実質的な液吸収面を狭くしにくいことと相俟って一層確実に奏される。
また、第2吸収コアに含まれる繊維が連続である場合に比べて、繊維同士の引きつれがないので、吸収体両側領域が立ち上がりやすくなるとともに、吸収体中央部にスポット吸収性が付与できるので、横モレ防止性がよりいっそう向上する。そのため、第2吸収コアに含まれる短繊維や、該短繊維を生じさせるために散布する塊状の粒子は、幅方向中央部に偏寄して存在することが好ましい。
【0096】
股下部の幅を狭くした使い捨ておむつとしては、例えば、以下に示す条件を満たす使い捨ておむつを特に好ましい例として例示できる。吸収体104の幅;背側部B及び腹側部Aそれぞれにおける最大幅が60〜140mm、特に80〜120mm、股下部Cにおける最大幅が50〜140mm、特に70〜120mm。図9及び図10中の符号109は、吸収性本体105と外装体110とを接合する接着剤である。
【0097】
本実施形態で用いた第1吸収コア141は、おむつ幅方向における液の拡散速度が、おむつ長手方向における液の拡散速度よりも速いことが、おむつ前端部にまで液が到達するまでに時間がかかり前漏れ防止性能が向上するとの点から好ましい。
特定方向の液の拡散速度を高めるには、方向性のある溝などをエンボス加工等により形成することもできるが、構成繊維が当該方向に配向しているものを用いることが好ましい。液の拡散速度がおむつ幅方向とおむつ長手方向の何れが高いかは、例えば、各方向に長い試験片を切り出し、それぞれのそのクレム吸水高さを測定して比較することにより判断できる。
【0098】
図13〜17は、本発明の更に他の実施形態である吸収体を示す図である。図13〜図17に示す各吸収体10B〜10Fは、各図において斜線を付した部分に短繊維を含んでいる。
【0099】
図13に示す吸収体10Bは、短繊維を主体として構成される上部繊維層91と、長繊維を主体として構成される下部繊維層92とが積層された2層構造の繊維集合体からなる吸収性コア9と、該吸収性コア9を被覆するラップシート(図示略)とからなる。ラップシートは、図1及び図2に示す吸収体10と同様に、吸収性コア9の上下面及び長手方向両側部を被覆している。「長繊維と合成又は半合成繊維である短繊維を含む繊維集合体を含んでなる吸収体」は、例えば、この吸収体10Bのように、繊維集合体からなる吸収性コアが、このようなラップシートにより被覆されているものであっても良い。
吸収体10Bにおける短繊維は、吸収性物品に組み込まれたときに着用者の肌側に配置される上部繊維層91に偏在し、長繊維は、吸収性物品に組み込まれたときに着用者の肌側とは反対側に配置される下部繊維層92に偏在している。即ち、長繊維と短繊維は、吸収体の厚み方向における異なる部位に偏在している。
上部吸収層91は、その構成繊維中、繊維長70mm未満の短繊維の割合が、重量基準で50〜100%であることが好ましく、より好ましくは60〜100%、更に好ましくは80〜100%である。
下部吸収層92は、その構成繊維中、繊維長70mm超の長繊維の割合が、重量基準で50〜100%であることが好ましく、より好ましくは60〜100%、更に好ましくは80〜100%である。
【0100】
図13に示す吸収体10Bによれば、短繊維を含む上部繊維層91が優れたスポット吸収性を示すので、上部繊維層91を、着用者の液排泄部に対向する部位に位置するようにして、使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品に組み込むことにより、液排泄部から排泄された液(尿や経血等)を、狭い範囲からスムーズに吸収体に吸収させることができる。また、多量の液が供給されたり、多量の液が吸収体に吸収されたりした場合に、液が吸収体の長手方向両側部、あるいは上部繊維層91の非肌当接面側に配された部分に達すると、吸収体の長手方向に配向している長繊維により、液が吸収体の長手方向(着用者の前後方向)に良好に拡散して吸収体の広い範囲が有効に利用される一方、吸収体の幅方向への拡散は抑制されて優れた横漏れ防止性能が得られる。
尚、吸収体10Bにおいては、上部繊維層91の幅が下部繊維層92の幅より狭くなっているが、上部繊維層91の幅を下部繊維層92の幅と略同じとすることもできる。
【0101】
図14〜図17に示す各吸収体10C〜10Fは、単層の繊維集合体93からなる吸収性コア9と、該吸収性コア9を被覆するラップシート(図示略)とからなる。ラップシートは、吸収性コア9の上下面を被覆している。ラップシートは、吸収性コア9の少なくとも短繊維が偏在している部分9Sにおける上下面を被覆していることが好ましい。
図14〜図17に示す各吸収体10C〜10Fにおいては、各図において斜線を付した部分に短繊維が偏在しており、斜線を付していない部分に長繊維が偏在している。即ち、長繊維と短繊維は、各吸収体の平面方向における異なる部位に偏在している。
【0102】
図14に示す吸収体10Cは、繊維集合体93からなる吸収性コア9の長手方向の一端側に、短繊維が偏在する部分9Sを有し、長手方向の他端側に、長繊維が偏在する部分9Lを有する。短繊維が偏在する部分9Sを、使い捨ておむつの股下部から腹側部にかけて配置し、長繊維が偏在する部分9Lをおむつの背側部に配置することで、おむつの股下部に優れたスポット吸収性が得られると共に、いわゆる前漏れ(腹側部側からの漏れ)を効果的に防止することができる。他方、吸収体の前後を逆にして配置すれば、いわゆる後漏れを効果的に防止することができる。
【0103】
図15に示す吸収体10Dは、繊維集合体93からなる吸収性コア9の長手方向の一端側に、短繊維が偏在する馬蹄形状の部分9Sを有し、長手方向の他端側に、長繊維が偏在する部分9Lを有する。この吸収体10Dにおいては、その長手方向における前記部分9S側に吸収性ポリマーが偏在している。この吸収体10Dは、長手方向における前記部分9L側を、着用者の後側(背側)に向けておむつに組み込むことで、腹側において尿を優先的に吸収して吸収性ポリマーに保持させることができ、その部分の厚みが増すことによって、軟便がおしり側から股下部を超え前側に流れるのを防止することできる。
【0104】
図16に示す吸収体10Eは、繊維集合体93からなる吸収性コア9の幅方向中央部に、短繊維が偏在した部分9Sを有し、該部分9Sの両側に、長繊維が偏在した部分9Lを有している。
吸収性コア9を構成する繊維集合体93のうち、短繊維が偏在する部分9Sは、その構成繊維中、繊維長70mm未満の短繊維の割合が、重量基準で50〜100%であることが好ましく、より好ましくは60〜100%、更に好ましくは80〜100%である。尚、この好ましい短繊維の割合(より好ましい割合、更に好ましい割合を含む)は、図1及び図2に示す吸収体10の長繊維のウエブ12における、長繊維由来の短繊維を含む部分(中央領域Mに位置する部分)や、上述した吸収体10C,10Dにおいても同様である。
また、前記繊維集合体93のうち、長繊維が偏在し、短繊維を実質的に含まないか又は短繊維を前記部分9Sに比べて少量しか含まない部分9Lは、その構成繊維中、繊維長70mm超の長繊維の割合が、重量基準で50〜100%であることが好ましく、より好ましくは60〜100%、更に好ましくは80〜100%である。
【0105】
図16に示す吸収体10Eによれば、上述した図1及び図2に示す吸収体10と同様の効果が奏される。また、上述した吸収体104と同様に、その長手方向をおむつの前後方向に一致させておむつ等に組み込まれてときに、弾性部材により、その両側部を着用者の肌側に向かって立ち上げ易く、横漏れ防止壁を容易に形成可能である。吸収体10Eの両側部を起立させるための弾性部材は、該吸収体10Eの肌当接面側、非肌当接面側、該吸収体10Eの側縁部近傍、該吸収体10の内部等を挙げることができる。
【0106】
図17に示す吸収体10Fは、繊維集合体93からなる吸収性コア9中に、短繊維が存在する部分9Sが分散して配置されている。短繊維を含む複数の部分がランダム又は規則的パターンで存在することによって、短繊維を含む部分が素早く吸収して膨潤し、その膨潤により生じた隆起により、膨潤後も肌とおむつとの間の通気性が良好に維持される。尚、図17(b)に示すように、短繊維が存在する部分9Sを、単層からなる繊維集合体中に散在させるのに代えて、図17(c)に示すように、複数の繊維層91,92から吸収性コア9を構成し、一方の層92を、長繊維を主体とする層とし、他方の層91を、多数の分割片からなる短繊維主体の層とすることもできる。
短繊維を含む部分9Sは、短繊維を少量しか含まない部分9Lに比べて多量の吸収性ポリマーを含む。吸収性ポリマーの存在量は重量比で、9S/9L=10/1〜1.5/1である。あるいは短繊維を少量しか含まない部分9Lには吸収性ポリマーが実質的に含まれていないことが好ましい。実質的にとは、9Sに含まれる吸収性ポリマーの量に比べて、9Lの吸収性ポリマー量が1/10未満の状態を言い、また、製造の過程で9S部分に配置しようとした吸収性ポリマーが意図せずして少量9L部分に混ざってしまう場合を含む。
このように吸収性ポリマーを配置することにより、9L部分に比べて9S部分が隆起し、通気性を確保することができる。
【0107】
上記の吸収体10B〜10Fにおける短繊維は、何れも合成又は半合成繊維である。吸収体には、従来、パルプ繊維が汎用されているが、パルプ繊維ではない短繊維を用いることで、ぬれてもへたりがなく、繰り返しの吸収に対してもスポット吸収性が確保できる。
短繊維として用い得る合成繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ナイロン、アクリル繊維、ビニロン等を単独あるいは複合(偏芯および同芯の芯鞘型、サイドバイサイド型など)で用いることができる
短繊維として用い得る半合成繊維ととしては、レーヨン、セルローストリアセテート及び/又はセルロースジアセテート等が挙げられる。
合成及び半合成繊維は、それぞれ、上述のもの等を一種単独で又は2以上を組み合わせて使用することができる。また、合成又は半合成繊維という表現には、合成繊維と半合成繊維との併用も含まれる。
【0108】
吸収体10B〜10Fは、それぞれに含まれる短繊維が、長繊維を塊状の粒子で切断して生じさせたものでない点で、上述した第1実施形態の吸収体10と異なっている。
図13に示す吸収体10Bにおける上部繊維層91は、カード機を用いて製造したカードウエブ、空気を利用したエアレイドウエブ、又は、水を利用した湿式ウエブ等から構成することができる。カードウエブを構成する繊維は、カード機に供給する原綿の段階で既に短繊維である。他方、吸収体10Bにおける下部繊維層92は、上述した吸収体の製造方法と同様にトウを開繊して得たウエブから構成することができる。また、 スパンボンドなど溶融紡糸して得たウエブや樹脂を溶融・押し出しして成型(必要に応じて延伸)したフィルムを引き裂いて得たウエブから構成することもできる。
【0109】
図18(a)は、吸収体10Bの製造方法の一例を示す図である。
図18(a)に示す方法においては、ホッパ94で計量した短繊維122Aを、カード機95に供給して帯状のカードウエブ91Aを得、該ウエブ91A上に非塊状の吸収性ポリマー13を所定箇所に散布した後、該ウエブ91Aのポリマー散布面上に、トウを開繊して得た長繊維のウエブ12を重ね、ついで、その積層体を一対のローラー96,96間に挿通して厚み方向に加圧する。一対のローラー96,96による加圧は、前記積層体の厚みが減少して保形性が向上する一方、長繊維の切断が実質的に起こらない条件にて行う。一対のローラー96,96による加圧後、図示しないラップシート供給機構によりラップシートを供給して積層体を被覆し、次いで、吸収体一枚分の長さに順次切断することにより、上述した吸収体10Bが多数連続的に得られる。
【0110】
この実施形態の製造方法においては、吸収性ポリマー13を、カードウエブ91Aと長繊維のウエブ12との間に挟まれるように供給しており、得られた吸収体10Bにおいては、吸収体の厚み方向における、上部吸収層91と下部吸収層92との境界部付近に吸収性ポリマーが偏在している。
【0111】
図18(b)は、吸収体10C〜10Fの製造方法の一例を示す図である。
図18(b)に示す方法においては、トウを開繊して得た長繊維のウエブ12を連続的に搬送し、該ウエブ12を、伸長可能なシート14aに重ねた状態で、該ウエブ12上に非塊状の吸収性ポリマー13を散布する。そして、吸収性ポリマー13を散布したウエブ12を、一対のローラー97,97間に通し、該ウエブ12内に吸収性ポリマー13を押し込む。次いで、ウエブ12における、ポリマーの散布面(シート14a側とは反対側の面)とは反対側にも伸長可能なシート14bを重ね、両シート14a,14bに挟まれた状態のウエブ12を、長繊維の切断装置98に通して、該ウエブ12における長繊維を部分的に切断する。
【0112】
長繊維の切断装置98は、塊状の粒子の有無に拘わらずに長繊維を切断可能なものであり、例えば、周面又は表面に切断用突起を備えた加圧部を備え、該加圧部を、シート14a,14bに挟んだ状態のウエブ12に押し当てたとき、切断用突起に加圧された部分の長繊維を切断するように構成されたものを用いることができる。長繊維の切断装置98は、伸長するシート14a,14bについては、該切断用突起で加圧しても、該シートに孔を開けにくいものが好ましい。
図19は、図16に示す吸収体10Eを製造する場合の、切断装置98の切断用突起の配置の例を示すものであり、加圧ロールの周面(加圧部の表面)に形成された切断用突起の配置を、該ロールを展開して示してある。図19に示す通り、ウエブ12の幅方向中央部に対応する部分98Mには、切断用突起が千鳥配置に形成されており、該部分98Mでウエブ12を加圧することにより、該ウエブ12の中央領域に多数の短繊維を生じさせることができる。他方、ウエブ12の両側部に対応する部分98S,98Sには、切断用突起が形成されておらず、該ウエブ12左右の側部領域には実質的に短繊維が生じない。吸収体10C,10D及び10Fは、加圧部の表面に形成する切断用突起の配置を代える以外は同様にして製造することができる。
また、本発明の吸収体の更に他の実施形態として、図4に示す製造方法における塊状の粒子の散布パターンを変更し、図14〜図17に示す吸収体の各図中の斜線部の範囲に長繊維由来の短繊維を生じさせた吸収体が挙げられる。
【0113】
図20は、本発明の更に他の実施形態の吸収体の製造する方法を示す図である。
図20に示す方法においては、トウを開繊して得た長繊維のウエブ12を、長繊維の切断装置99に供給し、該切断装置99によりその長繊維を部分的に切断して、長繊維由来の短繊維を部分的に生じさせた後、その短繊維と、切断されなかった長繊維とからなるウエブを、一対のロール310,311と切断装置99との速度比によるウエブが引っ張られ延伸させる。このとき、不完全に切断されていた繊維が切断され短繊維が形成される。次いで、そのウエブの伸長状態を、一対のロール310,311とバキュームコンベア32との間で緩和し、その緩和状態のウエブ上に、バキュームコンベア32で反対側から吸引しつつ、吸収性ポリマー13を供給する。そして、図示しないラップシート供給機構によりラップシートを供給して積層体を被覆し、次いで、吸収体一枚分の長さに切断する。
切断装置99は繊維を切断できるものであれば特に制限なく用いることができる。例えば、ロータリーダイカッターや押し切り刃、あるいはレーザー等を用いることができる。
【0114】
この製造方法によれば、長繊維と長繊維由来の短繊維を含む繊維集合体からなり、長繊維と短繊維とが混在している吸収体が得られる。
本発明における、短繊維を含む繊維集合体中又は長繊維のウエブ中においては、構成繊維同士が結合されていないことが、吸収性ポリマーの膨潤を阻害しない点で好ましい。ここで「結合」とは、繊維同士が融着して一体化しており、吸水ポリマーの膨潤によっても結合が外れない状態を指し、繊維同士が絡み合い、ひっかかっている状態や水溶性のバインダーによって繊維がくっついていて、排泄によって結合がゆるみあるいははずれ、また、吸水ポリマーの膨潤によって繊維同士が移動可能である状態は「結合」に含まれない。
【0115】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は適宜変更可能である。
例えば、長繊維由来の短繊維及び吸収性ポリマーを含む長繊維のウエブは、フラッフパルプを含む積繊物と積層されていても良い。例えば、図1,2に示す吸収体や図6に示す吸収体における長繊維のウエブ12を、フラッフパルプを含む積繊物に積層し、これらの全体をラップシートで被覆して吸収体とすることもできる。そのような吸収体は、長繊維のウエブ12が、着用者の肌側に位置するように、吸収性物品に組み込んで使用することが好ましい。上述した吸収体104における第1吸収コア141は、フラッフパルプを含む積繊物からなる。
【0116】
フラッフパルプを含む積繊物としては、フラップパルプのみの積繊物、フラッフパルプと吸収性ポリマーの粒子との混合積繊物、フラッフパルプと熱融着性合成繊維を混合し熱処理により一体化した混合積繊物、フラッフパルプ、吸収性ポリマーの粒子と熱融着性合成繊維を混合し熱処理により一体化した混合積繊物、エンボス処理を施したフラッフパルプの積繊物、エンボス処理を施したフラッフパルプと吸収性ポリマーの粒子との混合積繊物、水散布処理を施したフラッフパルプと吸収性ポリマーの粒子との混合積繊物等を用いることができる。フラッフパルプを含む積繊物中のフラップパルプの含有量は、例えば50〜100質量%とすることができる。
【0117】
また、図7に示す吸収体10Aのように、幅広のウエブの両側部を折り返して2層構造のウエブとするのに代えて、一部を切断して短繊維化した長繊維のウエブと、短繊維化していない長繊維のウエブとを積層して2層構造の吸収体とすることもできる。
【0118】
本発明の吸収性物品は、上述した吸収体104に代えて、上述した他の吸収体を含むものであっても良い。また、パンツ型の使い捨ておむつに代えて、展開型の使い捨ておむつであっても良い。また、本発明の吸収体は、従来の使い捨ておむつ等における一般的な構成の吸収体と表面シートとの間に配し、いわゆるサブレイヤーないしセカンドシートとして使用するものであっても良い。
以上の各実施形態の吸収体を具備する本発明の吸収性物品は、相対向する一対の立体ギャザーを2組以上有していてもよい。例えば図11に示すように、吸収体201の側縁から側方に延出したレッグフラッフ220の側縁部に、吸収性物品の長手方向に延びる弾性ストランド221を伸長状態で配してレッグギャザー222を形成し、更に、レッグギャザー222と吸収体201の側縁部との間に基端部を有する第1立体ギャザー223及び第2立体ギャザー224を配している。第1立体ギャザー223はレッグギャザー寄りに配されており、第2立体ギャザー224は吸収体寄りに配されている。
【0119】
レッグフラップ222に位置するこれら3つのギャザーは、最も外方に位置するギャザーの収縮力が、それよりも内方に位置するギャザーの収縮力よりも大きくなるように各ギャザーの収縮力を調整することが好ましい。即ち、レッグギャザー222の収縮力をL1、第1立体ギャザー223の収縮力をL2、第2立体ギャザー224の収縮力をL3としたとき、L1>L2,L3となることが好ましい。特に、最も外方に位置するギャザーから内側に向かってギャザーの収縮力が次第に小さくなることが好ましい。つまりL1>L2>L3となることが好ましい。この理由は次の通りである。
【0120】
従来の吸収性物品の設計手法は、吸収性物品を薄くして、しかも液漏れしにくくするために、ギャザーの収縮力を強くし、着用者の身体と吸収性物品との間に隙間を空けないようにするという考えに基づいていた。しかしながら、ギャザーの収縮力が強すぎると、その跡が肌につきやすくなる。また、本発明のように薄くて柔軟や吸収体を用いた場合には、ギャザーの収縮力によって吸収性物品が収縮してしまい装着しづらくなってしまう。また、ギャザーの収縮力が強すぎると、吸収性物品の装着中に、該収縮力に起因する下向きの力が吸収性物品に働き、ずれが生じやすくなる。これに対して、レッグギャザー及び相対向する一対の立体ギャザーを2組以上用い、その収縮力を前述した関係とすることで、従来の吸収性物品に生じる前述の不都合を回避することができる。
【0121】
ギャザーの収縮力は次の方法で測定される。吸収性物品からギャザーを切り取り測定試料とする。テンシロンORIENTEC RTC−1150Aを用いて測定試料のヒステリシス曲線を描かせる。このヒステリシス曲線の戻り時の応力を収縮力とする。引っ張りと戻しの速度は300mm/minとする。試料の初期長は100mm、最大伸びは100mm(元の長さの2倍)とする。ヒステリシス曲線の戻り時の応力は、試料を最大伸びから50mm戻したときの測定値とする。測定は5点の平均値とする。最大伸びが100mmに満たない試料の場合は、伸びを50mmまでとし、そのときの値を測定値とする。
【0122】
各ギャザーの収縮力を調整するためには、例えば弾性体の太さを変える、弾性体の伸長率を変える、弾性体の本数を変える等の方法を、単独で、或いは組み合わせる。また、レッグギャザー22の伸縮域は、吸収性物品の股下部のみとすることが好ましい。
【0123】
図11に示す吸収性物品においては、レッグギャザー及び相対向する一対の立体ギャザーが2組用いられている。これに代えて、各実施形態の吸収体を具備する本発明の吸収性物品では、レッグギャザーは用いずに、相対向する一対の立体ギャザーを2組以上用いてもよい。例えば図12では、第1立体ギャザー223及び第2立体ギャザー224の2組の立体ギャザーを用いている。この場合にも、吸収性物品の幅方向外方から内側に向かうに連れて立体ギャザーの収縮力を次第に小さくすることが、前述した理由と同様の理由により好ましい。
上述した一の実施形態における説明省略部分及び一の実施形態のみが有する要件は、それぞれ他の実施形態に適宜適用することができ、また、各実施形態における要件は、適宜、実施形態間で相互に置換可能である。
【実施例】
【0124】
〔実施例1〕
先ず、捲縮したアセテート長繊維のトウを用意した。この長繊維の繊維径は2.1dtexであった。トウの全繊維量は2.5万dtexであった。このトウを、伸張下に搬送し空気開繊装置を用いて開繊し、開繊ウエブを得た。次いで、多数の円盤が軸周りに所定間隔おきに組み込まれたロールと、平滑な受けロールとの間に開繊ウエブを通して、該ウエブを梳いた。その後、幅100mmに調節し、その搬送速度を減速した状態でバキュームコンベア上に転写し、当該バキュームコンベア上でのウエブの張力を緩めて捲縮を発現させた。ウエブ中の繊維の捲縮率は30%、1cm当たりの捲縮数は15個であった。これによって長繊維間の空間を広げ、吸収性ポリマーを入り込ませ易くし、またウエブを厚くして吸収性ポリマーの埋没担持性を向上させた。ウエブ上に幅80mmで吸収性ポリマーを散布し、該吸収性ポリマーを開繊ウエブ中に埋没担持させた。ウエブの坪量は25g/m2、吸収性ポリマーの坪量は132g/m2であった。
【0125】
次に、開繊したフラッフパルプ100重量部と吸収性ポリマー100重量部を気流中で均一混合したものをT字状の型の上に積繊し、合計坪量300g/m2の積繊体を得た。T字状の型は、脚部の幅が100mmで、長さが100mm、横架部の幅が125mmで、長さが100mmあった。積繊体におけるフラッフパルプ及び吸収性ポリマーの坪量はそれぞれ150g/m2であった。積繊体上にウエブを重ね、これら全体をホットメルト粘着剤をスプレー塗工した坪量16g/m2のティッシュペーパーで包みこんだ。その後、金属ロール−ゴムロール間で圧縮を行い(2つのロール間のクリアランスは0mmに設定した。)、ウエブとティッシュペーパーを一体化するとともに、ウエブが圧縮され、吸収性ポリマーによってウエブの構成繊維を切断し、吸収体を得た。
このウエブ(繊維集合体ないし長繊維のウエブ)は、塊状の吸収性ポリマーと短繊維を含有しており、それらは、概ね図6(d)に示す態様で分布していた。
吸収体における短繊維の分布は、幅方向中央部80mm(吸収性ポリマーを散布した位置)に偏って存在した。ウエブ幅方向中央領域の短繊維の存在割合は86%(長繊維が14%)、ウエブ幅方向両端部の短繊維の存在割合は18%であった。
【0126】
(繊維分部の測定法)
吸収体長手方向中央部付近、肌当接面から無作為に100本の繊維を引き出し、JIS L1015の平均繊維長測定方法(C法)にしたがって繊維長を測定した。得られた測定データからヒストグラムを作成し、繊維長70m未満の繊維の割合を短繊維の存在割合として算出した。
【0127】
〔実施例2〕
実施例1におけるウエブへの吸収性ポリマーの散布位置を長手方向に間欠に散布(長手方向前側から100mmの位置から、350mmの位置に至るまでの範囲に、幅方向中央部80mmの幅で散布した。すなわち、散布面積は幅80mm×長さ250mm)し以外は実施例1と同様にして、吸収性ポリマーを開繊ウエブ中に埋没担持させた。次に、開繊したフラッフパルプをT字状の型の上に積繊し、坪量100g/m2の積繊体を得た。T字状の型は、実施例1と同様のものである。積繊体上にウエブを重ね、これら全体を親水化処理した坪量16g/m2のスパンボンド−メルトブローン−メルトブローン−スパンボンド不織布(SMMS)を用いて包み込み、吸収体を得た。該吸収体は実施例1と同様に金属ロール−ゴムロール間で圧縮を行い、ウエブの圧縮に伴って吸収性ポリマーでウエブの構成繊維が切断されている。
このウエブ(繊維集合体ないし長繊維のウエブ)は、塊状の吸収性ポリマーと短繊維を含有しており、それらは、概ね図6(a)に示す態様で分布していた。
吸収体における短繊維は、吸収性ポリマーを散布した位置で78%(長繊維が22%)、ポリマー非散布領域で12%であった。
【0128】
〔実施例3〕
実施例1で用いたものと同じ吸収性ポリマーを埋没担持させたウエブP1を作成した。次に、芯がポリプロピレン、鞘がポリエチレンからなる複合繊維(3.3dtex、51mmカット、繊維表面には表面を親水化し、静電気の発生を抑えるための界面活性剤処理が施されている。)をカードにかけて、坪量が30g/m2となるようにウエブ化(P2)した。得られた合成繊維ウエブP2を、吸収性ポリマーを埋没担持させたウエブP1に重ねた。
【0129】
次に、ホットメルト粘着剤をスプレー塗工した坪量16g/m2のティッシュペーパー上に、フラッフパルプ100重量部と吸収性ポリマー100重量部を気流中で均一混合したものをT字状の型の上に積繊して得られた、合計坪量300g/m2の積繊体(実施例1で用いたものと同じもの)を重ねた。
さらに、上記、P1とP2の積層体を重ね、さらに上からホットメルト粘着剤をスプレー塗工した坪量16g/m2のティッシュペーパーを重ねて、全体を包みこんだ。
吸収体における短繊維の分布は、厚み方向肌側の短繊維の存在割合は100%、ウエブ厚み方向裏面材側の短繊維の存在割合は4%(加工工程で意図せずに切断されたものと考えられる)であった。
【0130】
〔比較例1〕
開繊したフラッフパルプ100重量部と吸収性ポリマー100重量部を気流中で均一混合し、合計坪量520g/m2の積繊体を得た。フラッフパルプ及び吸収性ポリマーの坪量はそれぞれ260g/m2であった。得られた積繊体を坪量16g/m2のティッシュペーパーで包み吸収体を得た。積繊体とティッシュペーパーの間に、ホットメルト粘着剤5g/m2をスプレー塗工し、両者を接着した。これら以外は実施例1と同様にして吸収体を得た。
【0131】
〔比較例2〕
比較例1と同様に、開繊したフラッフパルプ100重量部と吸収性ポリマー100重量部を気流中で均一混合し、合計坪量300g/m2の積繊体を得た。フラッフパルプ及び吸収性ポリマーの坪量はそれぞれ150g/m2であった。それ以外は比較例1と同様にして吸収体を得た。これら以外は実施例1と同様にして吸収体を得た。
【0132】
〔比較例3〕
実施例1において、ロールでの圧縮、すなわち、繊維の切断を行わなかった以外は、実施例1と同様に吸収体を作成した。
【0133】
〔性能評価〕
実施例及び比較例で得られた吸収体について以下の方法で吸収容量を測定し、また構造安定性及び柔軟性を評価した。それらの結果を以下の表1に示す。
【0134】
〔吸収容量〕
得られた吸収体を45°の傾斜版に固定し、吸収体の上方側の端部から200mmの位置に生理食塩水を一定量、一定間隔ごとに繰り返し注入し、吸収体の下方側の端部からもれだすまでの注入量を比較した。比較例1の吸収容量を1.0とした時の相対値を以下の計算式を用いて算出した。
吸収容量(相対値)=(サンプルの吸収容量)/(比較例1の吸収容量)
【0135】
〔構造安定性〕
(1)ドライ時
100×200mmに作製した吸収体の中央部を切断し、100×100mmの吸収体を得た。切断面を真下にして、振幅5cmで1回/1秒の速度で20回振動を与えたとき、切断面からの落下したポリマーの量を測定した。以下の判断基準に従って吸収性ポリマーの埋没担持性を評価した。
混合した吸収性ポリマーのうち、
○:脱落した吸収性ポリマーの割合が10%以下である。
△:脱落した吸収性ポリマーの量が10%を超え、25%以下である。
×:脱落した吸収性ポリマーの量が25%を超える。
(2)ウエット時
100×200mmに切断した吸収体全面に、生理食塩水200gをほぼ均等に吸収させた後、静かに吸収体を持ち上げたとき、吸収体が破壊しないかどうかを目視判定した。また、脱落した吸収性ポリマーの重量を測定し、別途測定しておいた脱落した吸収性ポリマー単位重量あたりの遠心保持量で除することで脱落した吸収性ポリマーのドライ時の重量を算出する。さらに、吸収性ポリマーの配合量との関係から脱落した吸収性ポリマーの割合を算出する。なお、吸収性ポリマーの配合量は、あらかじめ重量を測定しておいた分析対象の吸収体をアスコルビン酸の水溶液に浸漬させ、十分な時間日光暴露をして、吸収性ポリマーを完全に分解させる。水洗と分解を繰り返し、吸収性ポリマーが完全に溶解した後乾燥させ、前記分解前の吸収体重量の差から吸収性ポリマーの配合量を見積もることができる。
○:脱落した吸収性ポリマーの割合が10%以下であり、吸収体の破壊がない。
△:脱落した吸収性ポリマーの割合が10%を超え、25%以下であり、吸収体の破壊がない。
×:脱落した吸収性ポリマーの割合が25%を超える、あるいは吸収体が破壊する。
【0136】
〔柔軟性〕
ハンドルオ・メーターを用いて吸収体の柔軟性を評価した。ハンドルオ・メーターの測定値は、その数値が小さい程、装着しやすさやフィット性が良好であることを示す。ハンドルオ・メーターによる測定方法は次の通りである。JIS L1096(剛軟性測定法)に準じて測定を行う。幅60mmの溝を刻んだ支持台上に、長手方向に150mm、幅方向に50mm切断した吸収体を、溝と直交する方向に配置する。吸収体の中央を厚み2mmのブレードで押した時に要する力を測定する。本発明で用いた装置は、大栄科学精機製作所製、風合い試験機(ハンドルオ・メーター法)、HOM−3型である。3点の平均値を測定値とする。得られた測定値に基づき、以下の基準に従って柔軟性を評価した。
○:ハンドルオ・メーターの測定値が2N以下である。
△:ハンドルオ・メーターの測定値が2Nを超え、4N以下である。
×:ハンドルオ・メーターの測定値が4Nを超える。
【0137】
〔拡散異方性〕
吸収体を平面において、吸収体中央部より液を注入したときの拡散の形状を、長軸側と短軸側の距離の違いで評価した。液の注入は、所定の量(40g/回、5g/sec)を注入し、吸収終了後5分後に拡散面積の長軸側と短軸側の長さを測定した。
また、肌当接面と吸収体内部あるいは、吸収体中央部と吸収体短部など、吸収体の部分部分で拡散性が異なる場合は両方の値を測定した。
得られた測定値のうち最も拡散性の異なった測定値をもとに、下記基準に基づき判定を行った。
○:拡散面積の長軸側と短軸側の長さの比が、長軸側/短軸側で1.5以上である
△:拡散面積の長軸側と短軸側の長さの比が、長軸側/短軸側で1.2以上1.5未満である
×:拡散面積の長軸側と短軸側の長さの比が長軸側/短軸側が1.0以上1.2未満である
【0138】
【表1】
【0139】
以上のように、実施例の吸収体は拡散異方性を有し、あるいはまた、それぞれ拡散性が異なる部分有する吸収体であることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】本発明の吸収体の一実施形態を一部破断して示す斜視図である。
【図2】図1の吸収体のII−II線断面を示す模式断面図である。
【図3】図1の吸収体の効果を説明する説明図(模式平面図)である。
【図4】本発明の吸収体の製造方法の一実施形態による工程を装置とともに模式的に示す斜視図である。
【図5】長繊維が吸収性ポリマーにより切断される様子を示す概念図である。
【図6】本発明の吸収体の他の実施形態を示す模式平面図である。
【図7】本発明の吸収体の更に他の実施形態を示す断面図(図2相当図)である。
【図8】本発明の吸収体の更に他の実施形態を用いた使い捨ておむつ(本発明の吸収性物品の一実施形態)を示す展開平面図である。
【図9】図8のI−I線断面を示す模式断面図である。
【図10】使用状態における図8のIII−III線断面を示す模式断面図である。
【図11】本発明の吸収性物品の他の実施形態における幅方向の断面構造を示す模式図である。
【図12】本発明の吸収性物品の更に他の実施形態における幅方向の断面構造を示す模式図(図11相当図)である。
【図13】本発明の吸収体の更に他の実施形態を示す図で、(a)は平面図、(b)は(a)のIV−IV線断面図である。
【図14】本発明の吸収体の更に他の実施形態を示す図で、(a)は平面図、(b)は(a)のV−V線断面図である。
【図15】本発明の吸収体の更に他の実施形態を示す図で、(a)は平面図、(b)は(a)のVI−VI線断面図である。
【図16】本発明の吸収体の更に他の実施形態を示す図で、(a)は平面図、(b)は(a)のVII−VII線断面図である。
【図17】本発明の吸収体の更に他の実施形態を示す図で、(a)は平面図、(b)は(a)のVIII−VIII線断面図である。
【図18】本発明の吸収体の製造方法の更の例を示す図である。
【図19】図18(b)に示す製造方法に用いた切断用突起の配置の例を示す加圧ロールの展開平面図である。
【図20】本発明の他の実施形態の吸収体の製造方法を示す図である。
【図21】繊維断面の形状の評価方法の説明図である。
【符号の説明】
【0141】
10,10A〜10F,104,201 吸収体
11 吸収性コア
12 長繊維のウエブ
121 長繊維
122 長繊維由来の短繊維
13 吸収性ポリマー
14 ラップシート
101 使い捨ておむつ(吸収性物品)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長繊維と合成又は半合成繊維である短繊維を含む繊維集合体を含んでなる吸収体。
【請求項2】
長繊維と短繊維とが混在している請求項1記載の吸収体。
【請求項3】
長繊維と短繊維は、前記吸収体の平面方向又は厚み方向における異なる部位に偏在している請求項1又は2記載の吸収体。
【請求項4】
吸収性ポリマーを含有し、該吸収性ポリマーは、前記吸収体の平面方向又は厚み方向における特定の部位に偏在している請求項1〜3何れかに記載の吸収体。
【請求項5】
塊状の粒子を含有し、該粒子は、前記吸収体の平面方向又は厚み方向における特定の部位に偏在しており、
前記粒子は、前記短繊維と同じ部位に存在している請求項1〜3の何れかに記載の吸収体。
【請求項6】
前記短繊維は、前記長繊維が切断されて形成された請求項1〜4の何れかに記載の吸収体。
【請求項7】
前記短繊維は、繊維強度が、3g/d以下である請求項6記載の吸収体。
【請求項8】
前記短繊維は、該繊維の末端の断面形状と、繊維中央部の断面形状が異なる請求項6又は7記載の吸収体。
【請求項9】
長繊維のウエブと該ウエブ中に含まれる塊状の粒子とを有する吸収体であって、
前記ウエブの平面方向における前記粒子が分布する範囲の少なくとも一部に、前記長繊維が切断されて多数の短繊維が生じている吸収体。
【請求項10】
前記粒子は、前記吸収体の平面方向又は厚み方向の一部に偏在している請求項9記載の吸収体。
【請求項11】
前記粒子が、吸収性ポリマーである請求項9又は10記載の吸収体。
【請求項12】
前記吸収体の平面方向において、前記粒子が分布する範囲と前記短繊維が生じている範囲とが一致しているか、又は該粒子が分布する範囲に前記短繊維が生じている範囲が含まれている、請求項9〜11の何れか記載の吸収体。
【請求項13】
前記繊維集合体、又は塊状の粒子を含む前記長繊維のウエブに、構成繊維が短繊維のみからなる繊維集合体が更に積層されている請求項1〜12の何れかに記載の吸収体。
【請求項14】
構成繊維が短繊維のみからなる前記繊維集合体が、更に吸収性ポリマーを含むことを特徴とする請求項13記載の吸収体。
【請求項15】
長繊維と合成又は半合成繊維である短繊維を含む前記繊維集合体中又は塊状の粒子を含む前記長繊維のウエブ中においては、構成繊維同士が結合されていない請求項1〜14の何れか記載の吸収体。
【請求項16】
長繊維のウエブと該ウエブ中に含まれる塊状の粒子とを有し、該ウエブの一部に、前記長繊維が切断されて多数の短繊維が生じている吸収体の製造方法であって、
親水性を有する長繊維のウエブの塊状の粒子を散布した後、該粒子を散布した範囲の少なくとも一部を厚み方向に加圧し、該一部における前記長繊維を前記粒子に押し当てて切断させる、吸収体の製造方法。
【請求項17】
請求項1〜15の何れかに記載の吸収体を具備する吸収性物品であって、
着用時に着用者の排泄部に対向配置される部位に、前記短繊維が存在する吸収性物品。
【請求項1】
長繊維と合成又は半合成繊維である短繊維を含む繊維集合体を含んでなる吸収体。
【請求項2】
長繊維と短繊維とが混在している請求項1記載の吸収体。
【請求項3】
長繊維と短繊維は、前記吸収体の平面方向又は厚み方向における異なる部位に偏在している請求項1又は2記載の吸収体。
【請求項4】
吸収性ポリマーを含有し、該吸収性ポリマーは、前記吸収体の平面方向又は厚み方向における特定の部位に偏在している請求項1〜3何れかに記載の吸収体。
【請求項5】
塊状の粒子を含有し、該粒子は、前記吸収体の平面方向又は厚み方向における特定の部位に偏在しており、
前記粒子は、前記短繊維と同じ部位に存在している請求項1〜3の何れかに記載の吸収体。
【請求項6】
前記短繊維は、前記長繊維が切断されて形成された請求項1〜4の何れかに記載の吸収体。
【請求項7】
前記短繊維は、繊維強度が、3g/d以下である請求項6記載の吸収体。
【請求項8】
前記短繊維は、該繊維の末端の断面形状と、繊維中央部の断面形状が異なる請求項6又は7記載の吸収体。
【請求項9】
長繊維のウエブと該ウエブ中に含まれる塊状の粒子とを有する吸収体であって、
前記ウエブの平面方向における前記粒子が分布する範囲の少なくとも一部に、前記長繊維が切断されて多数の短繊維が生じている吸収体。
【請求項10】
前記粒子は、前記吸収体の平面方向又は厚み方向の一部に偏在している請求項9記載の吸収体。
【請求項11】
前記粒子が、吸収性ポリマーである請求項9又は10記載の吸収体。
【請求項12】
前記吸収体の平面方向において、前記粒子が分布する範囲と前記短繊維が生じている範囲とが一致しているか、又は該粒子が分布する範囲に前記短繊維が生じている範囲が含まれている、請求項9〜11の何れか記載の吸収体。
【請求項13】
前記繊維集合体、又は塊状の粒子を含む前記長繊維のウエブに、構成繊維が短繊維のみからなる繊維集合体が更に積層されている請求項1〜12の何れかに記載の吸収体。
【請求項14】
構成繊維が短繊維のみからなる前記繊維集合体が、更に吸収性ポリマーを含むことを特徴とする請求項13記載の吸収体。
【請求項15】
長繊維と合成又は半合成繊維である短繊維を含む前記繊維集合体中又は塊状の粒子を含む前記長繊維のウエブ中においては、構成繊維同士が結合されていない請求項1〜14の何れか記載の吸収体。
【請求項16】
長繊維のウエブと該ウエブ中に含まれる塊状の粒子とを有し、該ウエブの一部に、前記長繊維が切断されて多数の短繊維が生じている吸収体の製造方法であって、
親水性を有する長繊維のウエブの塊状の粒子を散布した後、該粒子を散布した範囲の少なくとも一部を厚み方向に加圧し、該一部における前記長繊維を前記粒子に押し当てて切断させる、吸収体の製造方法。
【請求項17】
請求項1〜15の何れかに記載の吸収体を具備する吸収性物品であって、
着用時に着用者の排泄部に対向配置される部位に、前記短繊維が存在する吸収性物品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2007−283086(P2007−283086A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311470(P2006−311470)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】
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