説明

吸収可能な外科用ファスナー

【課題】改良された吸収可能な外科用ファスナーの提供。
【解決手段】着用者に対して任意の有害な影響なくしてヒト身体中で溶解する金属材料の組み合わせを含む吸収可能な外科用ファスナー。好ましくは、該金属材料の組み合わせは金属合金であり、該金属合金は、保護不動態化被覆を形成する第1の成分、および該合金の十分な腐食を確実にする第2の成分を含む。さらに好ましくは、上記第1の成分は、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、亜鉛およびシリコンからなる群から選択される少なくとも1つの金属。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景)
(技術分野)
本開示は、吸収可能な外科用ファスナー(例えば、ステープル)に、そしてより特定すれば、吸収可能な金属の外科用ファスナーに関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の背景)
外科的に固定するデバイスは、外科医が、外科用ファスナーを付与することにより身体組織を連結することを可能にする。これらファスナーは、単一で連続して付与され得るか、または任意の数が同時に付与され得る。外科用ファスナーは、金属および非金属材料から作製されることが知られている。
【0003】
金属ファスナーは、しばしば、不活性であるタンタルまたはステンレス鋼のような材料作製される。しかし、金属ファスナーは、代表的には吸収可能ではなく、そしてそれ故、しばしば永久的に移植され得るか、またはこの金属ファスナーを傷が十分に治癒した後に創傷部位から除去されることを可能にする創傷部位上で用いられる。
【0004】
非金属ファスナーは、通常、吸収可能であり、そして、しばしば、タンパク質を基礎にした材料を含む、天然または合成の、ポリマーまたはコポリマーおよび樹脂のような材料から作製される。しかし、非金属ファスナーは、しばしば、固定される組織が治癒することを可能にするに十分な時間の間それらの引張り強さを保持する困難性を経験する。また、それらは、しばしば、金属ピン、穿孔などからの支援なくして特定の組織を貫通するに十分に剛直性でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、組織を貫通するために十分な剛直性を維持、治癒プロセスの間に十分な引っ張り強さを維持し、そして吸収されるとき有害な影響を生成しない吸収可能な金属外科用ファスナーの必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(要旨)
本開示は、創傷を閉鎖するための外科用ファスナー、およびこのファスナーを用いる方法を提供する。この外科用ファスナーは、任意の有害な影響なくしてヒト身体で溶解する金属材料の組み合わせを含む。このファスナーを用いる方法は、創傷を取り囲む組織に接近する工程、および本明細書中に記載される外科用ファスナーをこの接近された組織に固定する工程を包含する。
例えば、本願発明は以下を提供する。
(項目1)
外科用ファスナーであって:
上記外科用ファスナーの着用者に対し任意の有害な影響なくしてヒト身体中で溶解する金属材料の組み合わせを含む、外科用ファスナー。
(項目2)
上記金属材料の組み合わせが金属合金であり、上記金属合金が、保護不動態化被覆を形成する第1の成分、および上記合金の十分な腐食を確実にする第2の成分を含む、項目1に記載の外科用ファスナー。
(項目3)
上記第1の成分が、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、亜鉛およびシリコンからなる群から選択される少なくとも1つの金属である、項目2に記載の外科用ファスナー。
(項目4)
上記第2の成分が、リチウム、ナトリウム、カリウム、マンガン、カルシウムおよび鉄からなる群から選択される少なくとも1つの金属である、項目2に記載の外科用ファスナー。
(項目5)
上記金属合金が、マグネシウムを含む、項目2に記載の外科用ファスナー。
(項目6)
上記金属合金が、マグネシウム−ナトリウム合金である、項目2に記載の外科用ファスナー。
(項目7)
上記外科用ファスナーが、ステープルである、項目1に記載の外科用ファスナー。
(項目8)
組織接着剤、組織封止剤および医薬からなる群から選択されるさらなる成分をさらに含む、項目1に記載の外科用ファスナー。
(項目9)
創傷を閉鎖する方法であって:
上記創傷を取り囲む組織に接近する工程;および
項目1に記載の外科用ファスナーを接近された上記組織に固定する工程、を包含する、方法。
(項目10)
組織接着剤、組織封止剤および医薬からなる群から選択されるさらなる成分を、固定され接近された組織に固定する工程をさらに包含する、項目9に記載の創傷を閉鎖する方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(詳細な説明)
本開示は、外科用ファスナーであって、このインプラントを着用するヒトに対し任意の有害な影響なくしてヒト身体中で溶解する金属材料の組み合わせを含む外科用ファスナーを提供する。金属材料の組み合わせは、この外科用ファスナーの材料が、特定の分解速度で、そして生体不適合性産物の生成なくして溶解するように設計される。このタイプの外科用ファスナーは、金属外科用ファスナーの有利な機械的性質を、非金属、またはポリマーを基礎にした外科用ファスナーの生体吸収性と組合せる。
【0008】
1つの実施形態では、この金属材料の組み合わせは金属合金であり、この合金成分の選択は−−以下に詳細に説明されるように−−生体適合性分解の必要条件を達成するために供される。結果として、この金属合金は、無害な成分を形成して、比較的迅速に−−数ヶ月の期間内に−−身体内で溶解する材料の組み合わせから構成されなければならない。
【0009】
得られるべき相応する均一な分解のために、このような合金は、それ自体を保護酸化物被覆で覆う第1の成分を含む。この第1の成分は、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、亜鉛およびシリコンの群1つまたはいくつかの金属から選択される。達成されるべき上記で述べた酸化物被覆の均一な溶解には、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、鉄またはマンガンのような、血液または間質液で十分な溶解度を所有する第2の成分が上記合金に添加される。
【0010】
上記で述べられた元素は適切である。なぜなら、それらは、任意の様式でヒト身体中に存在し−−マグネシウム、亜鉛、ナトリウム、カリウム、カルシウム、イオンおよびマンガンなど−−または非毒性であることが知られている−−チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、シリコンおよびリチウムなど−−からである。不動態化および可溶性成分の組み合わせは、生体適合性分解産物への、時宜を得た、そして均一な分解を確実にする。この分解速度は、これら2つの成分の比によって調節され得る。
【0011】
特に有用な実施形態では、上記合金は、上記分解産物が、ナトリウム、カリウム、カルシウム、鉄または亜鉛の塩のような可溶性の塩であるように、またはコロイド粒子として創まる、チタン、タンタルまたはニオブの酸化物のような不溶性分解産物であるように形成され得る。分解速度は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムまたは亜鉛の分解の間に発生する水素のようなガスが、任意の巨視的ガス泡を形成せずに物理的に溶解するような組成によって調節される。
【0012】
特に有用である合金の1つの組み合わせは、ナトリウム−マグネシウム合金である。分解産物として水酸化ナトリウムは、高い溶解度を所有するので、この合金は、かさ張った殻形成なくして溶解する。ナトリウムは溶解し、そして水酸化マグネシウムは、創傷治癒組織中でリスクなくして堆積し得る微細沈殿物を形成する。
【0013】
金属材料の別の有用な分解可能な組み合わせは、0.1%〜1%の範囲である重量%の亜鉛−チタン合金である。この組み合わせは、用いられる材料として亜鉛の比較的強力な結晶成長を阻止し、これは、外科用ファスナーの比較的もろく、そして壊れ易い挙動を引き起こし得る。上記材料が働くとき、チタンの付加は、結晶境界上にZn15Ti相の形成に至り、これは、任意のさらなる結晶成長を阻止する。粒サイズのこの減少は、一般に、延性、特に破裂における伸び−−すなわち、その破裂までの機械的負荷の下にある材料の伸長%を改善する。
【0014】
金が、0.1重量%〜2重量%で、この合金に添加される場合、この材料が硬化するとき、粒サイズのさらなる減少が達成される。これは、この材料の引張り強度をさらに改善する。
【0015】
本開示の外科用ファスナーは、皮膚、筋膜または内部器官上の創傷を閉鎖するために用いられ得る。創傷の閉鎖は、この創傷を取り囲む組織を接近すること、それに接すること、および/またはそれを重複すること、および上記ファスナーを、上記創傷に対して所定の位置に配置し、上記取り囲む組織を、上記創傷が治癒されるまで、接近され、接し、そして/または重複された位置に維持することを含む。
【0016】
当業者に公知の任意の外科用ファスナーが、本開示に記載される金属合金から形成され得る。さらに、この外科用ファスナーは、創傷を閉鎖することで有用な、任意の形状、サイズおよび寸法に形成され得る。外科用ファスナーのいくつかの例は、ステープル、ピン、ストラップ、ケーブル、およびクリップを含む。このファスナーの特に有用な実施形態は、外科用ステープルである。
【0017】
ステープルの場合には、広範な種類の外科用ステープルおよび外科用ステープラーが知られ、そして当該技術分野の全体で用いられている。本明細書中に記載される外科用ステープルは、従来設計の任意の外科用ステープラーとの使用のために適合され得る。このようなデバイスの例は、米国特許第4,354,628号、同第5,014,899号、同第5,040,715号、同第5,799,857号および同第5,915,616号に記載されている。これらステープルは、供給されたカーリッジ、反復ステープル留め器具中、または直線または円に複数のステープルをセットする器具で用いられ得、単一の発射がまた、本発明の範囲内に含まれる。現存するステープル留め器具の特定の改変が、本発明のステープルを物理的に収容するために要求され得るが、このような改変は、この器具の製造業者の現在の技術の範囲内に十分であることが理解される。
【0018】
本明細書中に記載されるような外科用ファスナーは、その機能が器官、組織または構造物を付着または保持することである接着剤;流体漏失を防ぐ封止剤;出血を止めるか、または防ぐ止血剤;および医薬を含むその他の外科的に適合可能な創傷処置材料と組み合わせて用いられ得ることが想定される。採用され得る接着剤の例は、タンパク質由来の、アルデヒドを基礎にした接着剤材料、例えば、市販され入手可能な、Cryolife,Inc.によって商標名BioGlueTMの下で販売されるアルブミン/グルタルアルデヒド材料、ならびに、Tyco Healthcare Group,LPおよびEthicon Endosurgery,Inc.によってそれぞれ商標名IndermilTMおよびDermaBondTMの下で販売されるシアノアクリレートを基礎にした材料を含む。採用され得る封止剤の例は、フィブリン封止剤、およびコラーゲンを基礎にした封止剤、および合成ポリマーを基礎にした組織封止剤を含む。市販され、入手可能な封止剤の例は、Cohesion TechnologiesおよびBaxter International,Inc.によって商標名CoSealTMの下で販売される、合成のポリエチレングリコールを基礎にしたヒドロゲル材料である。採用され得る止血剤材料の例は、フィブリンを基礎にした止血剤、コラーゲンを基礎にした止血剤、酸化再生セルロースを基礎にした止血剤、およびゼラチンを基礎にした局所止血剤を含む。市販され入手可能な止血剤材料の例は、Baxter International,Inc.によって販売され、商標名CoStasisTM、およびTisseelTMの下で販売されるフィブリノーゲン−トロンビン組み合わせ材料である。本明細書中の止血剤は、収れん薬、例えば、硫酸アルミニウム、および凝固剤を含む。
【0019】
上記接着剤、封止剤または医薬は、本明細書中に記載される任意の外科用ファスナー上に堆積されるか、またはその中に含浸され得る。この医薬は、薬物、酵素、成長因子、ペプチド、タンパク質、色素、診断薬もしくは止血剤、または狭窄の予防において用いられる任意のその他の薬物のような、1つ以上の医療的および/または外科的に有用な物質を含み得る。
【0020】
明らかに、本発明の多くの改変例および変更例が、上記の教示を考慮して可能であり、そして添付の請求項の範囲内で、本発明は、詳細に記載されたのとは異なるその他で実施され得ることが企図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【公開番号】特開2012−130746(P2012−130746A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−43395(P2012−43395)
【出願日】平成24年2月29日(2012.2.29)
【分割の表示】特願2008−500996(P2008−500996)の分割
【原出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(500329892)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (94)
【Fターム(参考)】