説明

吸収性樹脂粒子、これを含む吸収体及び吸収性物品

【課題】荷重下吸水量を向上させるに伴い保水量が大きく低下するという問題がない、すなわち、保水量及び荷重下吸水量が共に優れる吸収性樹脂粒子を提供する。
【解決手段】水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)、内部架橋剤(a3)並びに表面架橋剤(a4)を必須構成単位としてなる架橋重合体粒子(A)と、リグニンもしくはその誘導体(B)とを含んでなる吸収性樹脂粒子であり、リグニンもしくはその誘導体(B)の含有量は、架橋重合体粒子(A)の重量に基づいて、0.1〜30重量%であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性樹脂粒子、これを含有してなる吸収体及びこれを配してなる吸収性物品に関する。さらに詳しくは紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パット等の衛生材料に好適に用いられる吸収性樹脂粒子等に関する。
【背景技術】
【0002】
荷重下吸水量を高める方法として、架橋重合体粒子の表面近傍を表面架橋剤で架橋させる技術が知られている。例えば、特定範囲の平均粒径及び粒度分布をもつ重合体粉末を表面架橋する方法(特許文献1、2)、特定範囲の平均粒径及び粒度分布をもつ重合体粉末に表面架橋剤含有液を平均粒径200μm以下の液滴状態で噴霧混合して加熱する方法(特許文献3)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−196802号公報
【特許文献2】特開平9−309916号公報
【特許文献3】特開平11−349625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の特許文献1、2又は3の方法では、荷重下吸水量を向上させるに伴い保水量が大きく低下するという問題がある。すなわち、本発明は、保水量及び荷重下吸水量が共に優れる吸収性樹脂粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果本発明に到達した。すなわち、本発明は、吸収性樹脂粒子が、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)、内部架橋剤(a3)並びに表面架橋剤(a4)を必須構成単位としてなる架橋重合体粒子(A)と、リグニンもしくはその誘導体(B)とを含んでなる点を要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の吸収性樹脂粒子は、保水量及び荷重下吸水量が共に優れる。そして、本発明の吸収性樹脂粒子を用いた吸収性物品(紙おむつ等)は、使用者が装着した状態で座ったり横になったような場合でも、漏れが生じにくい。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<架橋重合体粒子(A)>
水溶性ビニルモノマー(a1)とは、25℃の水100gに少なくとも100g溶解する性質(溶解度)を持つビニルモノマーを意味する。
なお、溶解度は、「改訂3版 化学便覧 基礎編II(II−166ページ〜II−175ページ)」に記載された方法により測定される。
加水分解性ビニルモノマー(a2)とは、加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマーを意味する。
【0008】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)としては特に限定がないが、例えば、特開2005−075982号公報に記載の水溶性ラジカル重合単量体が挙げられる。これらのうち、吸収性能{吸収速度、拡散面積、表面ドライ感及びSDMEドライネス等}等の観点から、水溶性ビニルモノマー(a1)が好ましく、さらに好ましくはアニオン性ビニルモノマー、特に好ましくは炭素数3〜30のビニル基含有カルボン酸(塩){不飽和モノカルボン酸(塩)((メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸及びこれらの塩等);不飽和ジカルボン酸(塩)(マレイン酸、フマル酸、シト
ラコン酸、イタコン酸及びこれらの塩等);及び不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1〜8)エステル(マレイン酸モノブチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸のエチルカルビトールモノエステル、フマル酸のエチルカルビトールモノエステル、シトラコン酸モノブチルエステル及びイタコン酸グリコールモノエステル等}、次に好ましくは不飽和モノカルボン酸(塩)、最も好ましくはアクリル酸(塩)である。
【0009】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)は、それぞれ、単独で構成単位としてもよく、2種以上を構成単位としてもよい。水溶性ビニルモノマー(a1)及び加水分解性ビニルモノマー(a2)のうち、吸収性等の観点から、水溶性ビニルモノマー(a1)が好ましく、さらに好ましくは(a1)を単独で構成単位とすることである。
【0010】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び加水分解性ビニルモノマー(a2)の両方を構成単位とする場合、これらのビニルモノマー単位のモル比{(a1)/(a2)}は、75/25〜99/1が好ましく、さらに好ましくは85/15〜95/5、特に好ましくは90/10〜93/7、最も好ましくは91/9〜92/8である。この範囲であると、吸収性能がさらに良好となる。
【0011】
架橋重合体粒子(A)は、さらに、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマーと共重合できるその他のビニルモノマーを構成単位とすることができるが、その他のビニルモノマーを構成単位として含まないことが好ましい。
その他のビニルモノマーとしては、水溶性ビニルモノマー(a1)等と共重合できるモノマーであれば制限がなく、たとえば、特開2003−225565号公報に記載のビニルモノマー等が挙げられる。
その他のビニルモノマーを構成単位とする場合、その他のビニルモノマー単位の含有量(モル%)は、吸収性能の観点から、水溶性ビニルモノマー(a1)単位及び加水分解性ビニルモノマー(a2)単位の合計のモル数に基づいて、0.01〜30が好ましく、さらに好ましくは0.05〜20、特に好ましくは0.1〜15である。
【0012】
内部架橋剤(a3)としては、公知の内部架橋剤、例えば、特開2003−225565号公報に記載の内部架橋剤が使用できる。これらの内部架橋剤のうち、吸収性能等の観点から、エチレン性不飽和基を2個以上有する内部架橋剤が好ましく、さらに好ましくはトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート及び炭素数2〜10のポリオールのポリ(メタ)アリルエーテル、特に好ましくはトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、テトラアリロキシエタン及びペンタエリスリトールトリアリルエーテル、最も好ましくはペンタエリスリトールトリアリルエーテルである。
【0013】
内部架橋剤(a3)単位の含有量(モル%)は、人体への不快感等の観点から、水溶性ビニルモノマー(a1)単位及び加水分解性ビニルモノマー(a2)単位のモル数に基づいて、0.01〜1が好ましく、さらに好ましくは0.03〜0.5、特に好ましくは0.05〜0.1である。
【0014】
表面架橋剤(a4)としては、公知の表面架橋剤、例えば、特開2003−225565号公報に記載の表面架橋剤が使用できる。これらの表面架橋剤のうち、吸水性能等の観点から、水溶性ビニルモノマー(a1)単位の水溶性置換基{カルボキシ基、水酸基等}及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)単位の加水分解によって生成する水溶性置換基{カルボキシ基、水酸基等}と反応し得る官能基を少なくとも2個以上有する架橋剤が好ましく、さらに好ましくは多価グリシジル、特に好ましくはエチレングリコールジグリシジルエーテル及びグリセリンジグリシジルエーテル、最も好ましくはエチレングリコールジグリシジルエーテルである。
【0015】
表面架橋剤(a4)の含有量(重量%)は、人体への不快感等の観点から、水溶性ビニルモノマー(a1)単位及び加水分解性ビニルモノマー(a2)単位のモル数に基づいて、0.01〜0.1が好ましく、さらに好ましくは0.03〜0.08、特に好ましくは0.05〜0.06である。
【0016】
架橋重合体粒子(A)の重量平均粒子径(μm)は、100〜800が好ましく、さらに好ましくは200〜500、特に好ましくは300〜400である。この範囲であると、吸収性能及び人体への不快感がさらに良好となる。
【0017】
重量平均粒子径は、ロータップ試験篩振とう機及び標準ふるい(JIS Z8801−1:2000)を用いて、ペリーズ・ケミカル・エンジニアーズ・ハンドブック第6版(マックグローヒル・ブック・カンバニー、1984、21頁)に記載の方法で測定される。すなわち、JIS標準ふるいを、上から1000μm、850μm、710μm、500μm、425μm、355μm、250μm及び150μm、並びに受け皿の順、又は上から500μm、355μm、250μm、150μm、125μm、75μm及び45μm、並びに受け皿の順等に組み合わせる。最上段のふるいに測定粒子の約50gを入れ、ロータップ試験篩振とう機で5分間振とうさせる。各ふるい及び受け皿上の測定粒子の重量を秤量し、その合計を100重量%として各ふるい上の粒子の重量分率を求め、この値を対数確率紙{横軸がふるいの目開き(粒子径)、縦軸が重量分率}にプロットした後、各点を結ぶ線を引き、重量分率が50重量%に対応する粒子径を求め、これを重量平均粒子径とする。
【0018】
架橋重合体粒子に含まれる150μm以下の微粒子の含有量(重量%)は、0〜10が好ましく、さらに好ましくは1〜6である。
微粒子の含有量は、上記の重量平均粒径を求める際に作成するプロットを用いて求めることができる。
【0019】
架橋重合体粒子(A)は、公知の方法{特開2003−225565号公報及び特開2005−075982号公報等}と同様にして、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)並びに内部架橋剤(a3)を重合して、含水ゲルを調製し、必要により含水ゲルを細断した後、乾燥して、乾燥粒子を調製し、乾燥粒子と表面架橋剤(a4)とを反応させることにより得ることができる。
【0020】
<リグニンもしくはその誘導体(B)>
リグニンは、木材から得られる高分子のフェノール性化合物の総称であり、木材としては特に制限はない。
【0021】
リグニンの誘導体としては単独で使用しても、二種類以上を併用しても良く、リグニンスルホン酸塩、リグニンリン酸塩、リグニンカルボン酸塩等が挙げられ、吸収性能の観点から、リグニンスルホン酸塩が好ましい。
【0022】
リグニンスルホン酸塩としてはリグニンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸カルシウム、リグニンスルホン酸マグネシウム、リグニンスルホン酸カリウム、リグニンスルホン酸アルミニウム、リグニンスルホン酸亜鉛等が挙げられる。
【0023】
リグニンリン酸塩としてはリグニンリン酸ナトリウム、リグニンリン酸カルシウム、リグニンリン酸マグネシウム、リグニンリン酸カリウム、リグニンリン酸アルミニウム、リグニンリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0024】
リグニンカルボン酸塩としてはリグニンカルボン酸ナトリウム、リグニンカルボン酸カルシウム、リグニンカルボン酸マグネシウム、リグニンカルボン酸カリウム、リグニンカルボン酸アルミニウム、リグニンカルボン酸亜鉛等が挙げられる。
【0025】
(B)の含有量(重量%)は、架橋重合体粒子(A)の重量に基づいて、0.1〜30が好ましく、さらに好ましくは1〜15、特に好ましくは2〜10である。この範囲であると、吸収性能がさらに良好となる。
【0026】
本発明の吸収性樹脂粒子は、架橋重合体粒子(A)とリグニンもしくはその誘導体(B)とを混合することにより容易に得られる。(A)と(B)とを混合する段階としては、混合のし易さ等の観点から、(A)を製造する工程のうち、溶液重合により(A)を得る場合、重合工程前、重合工程中、重合工程直後、重合で得られた含水ゲルの細断(ミンチ)工程中、表面架橋工程直前、表面架橋工程中、表面架橋工程直後、乾燥工程直前、乾燥工程中又は乾燥工程直後が好ましく、さらに好ましくは含水ゲルの細断(ミンチ)工程中である。一方、逆相懸濁により(A)を得る場合、重合工程前、重合工程中、重合工程直後、脱水工程中、脱水工程直後、重合で得られた含水ゲルと重合に用いた有機溶剤とを分離する工程中、表面架橋工程直前、表面架橋工程中、表面架橋工程直後、乾燥工程直前、乾燥工程中又は乾燥工程直後が好ましく、さらに好ましくは脱水工程直後である。
【0027】
(A)と(B)との混合する温度(℃)としては特に限定ないが、(A)の劣化の観点から、10〜130が好ましく、さらに好ましくは15〜110、特に好ましくは20〜100である。
【0028】
(B)を固体として混合する場合、(A)と(B)とを混合するのに使用される装置としては、通常の混合機でよく、例えば、円筒型混合機、スクリュー型混合機、スクリュー型押出機、タービュライザー、ナウター型混合機、双腕型ニーダー、流動式混合機、V型混合機、リボン型混合機、流動式混合機、気流型混合機、回転円盤型混合機、コニカルブレンダー及びロールミキサー等が挙げられる。
【0029】
(B)を液体として混合する場合、(B)を溶媒に溶解又は乳化・分散させるか、または(B)を固体の融点以上に加熱して溶融することにより、液体として用いることができる。
【0030】
溶媒としては、水及び揮発性有機溶媒が含まれる。揮発性有機溶媒としては、除去しやすさの観点等から、20℃での蒸気圧(Pa)が0.13〜5.3のものが好ましく、さらに好ましくは0.15〜4.5、特に好ましくは0.23〜3.8のものである。揮発性有機溶媒としては、炭素数1〜3のアルコール(メタノール、エタノール及びイソプロピルアルコール等)、炭素数5〜8の炭化水素(ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン及びトルエン等)、炭素数2〜4のエーテル(ジメチルエーテル、ジエチルエーテル及びテトラヒドロフラン等)、炭素数3〜4のケトン(アセトン及びメチルエチルケトン等)、及び炭素数3〜5のエステル(蟻酸エチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル及び炭酸ジエチル等)等が挙げられる。水及び/又は揮発性有機溶媒を使用する場合、これらの含有量(重量%)は、(B)の重量に基づいて、1〜900が好ましく、さらに好ましくは5〜700、特に好ましくは10〜400である。水及び揮発性有機溶媒を使用する場合、水の使用量(重量%)は、水及び揮発性有機溶媒の重量に基づいて、50〜98が好ましく、さらに好ましくは60〜95、特に好ましくは70〜90である。
【0031】
(B)を液体として混合する場合、(A)に上記液体を噴霧するか、上記液体に(A)をディッピングする方法も使用できる。なお、(A)に固体状の(B)を接触させた後、(B)の融点以上に加熱して混合することもできる。
噴霧、ディッピング又は接触に適用できる混合装置としては、ナウターミキサー及びタービュライザ等が挙げられる。
【0032】
本発明の吸収性樹脂粒子には、必要により任意の段階{架橋重合体粒子(A)製造工程のうち、重合工程、細断工程、乾燥工程、粉砕工程、表面架橋工程及び/又はこれらの工程の前後、並びに(A)と(B)とを混合する工程後等}において、添加物を添加することができる。
添加物としては、公知(たとえば特開2003−225565号公報)の添加剤{防腐剤、防かび剤、抗菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、芳香剤、消臭剤及び有機質繊維状物等}等が使用でき、これらの1種又は2種以上を併用してもよい。
【0033】
本発明の吸収性樹脂粒子は、各種の吸収体に適用することにより、吸収性能に優れた吸収性物品を製造し得る。吸収体及び吸収性物品は、公知{例えば特開2005−186016号公報}の方法等により製造される。
吸収性物品としては、衛生用品{紙おむつ(子供用紙おむつ及び大人用紙おむつ等)、ナプキン(生理用ナプキン等)、嘔吐物吸収用エチケット袋、紙タオル、パッド(失禁者用パット及び手術用アンダーパット等)及びペットシート(ペット尿吸収シート及び保温シート等)等}、及び各種の家庭用及び産業用の吸収シート{鮮度保持シート、ドリップ吸収シート、水稲育苗シート、コンクリート養生シート及びケーブル等の水走り防止シート等}が含まれる。
これらのうち、本発明の吸収性樹脂粒子は吸収性能の観点から衛生用品に好適であり、さらに紙おむつ、パッド及び生理用ナプキン、特に紙おむつ及び生理用ナプキンに適している。
【実施例】
【0034】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特記しない限り、部は重量部を、%は重量%を示す。
【0035】
<製造例1>
アクリル酸81.8部(1.14モル部)、N,N’−メチレンビスアクリルアミド0.3部(0.002モル部)及び脱イオン水241部を攪拌・混合しながら、温度を1〜2℃に保ち、この混合液中に窒素を流入して、混合液中の溶存酸素量を0.02ppm以下とした。
引き続き、この混合液に、1%過酸化水素水溶液1部、0.2%アスコルビン酸水溶液1.2部及び2%の2,2’−アゾビスアミジノプロパンジハイドロクロライド水溶液2.8部を添加・混合して重合を開始させ、反応温度が70℃に達した後、重合温度75±5℃で約8時間重合することにより含水ゲル(C1)を得た。
<製造例2>
【0036】
アクリル酸ナトリウム88部(0.94モル部)、アクリル酸22.85部(0.3174モル部)、N,N’−メチレンビスアクリルアミド0.3部(0.002モル部)、脱イオン水293部及びジクロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ルテニウム0.001部を攪拌・混合しながら、温度を1〜2℃に保ち、この混合液中に窒素を流入して、混合液中の溶存酸素濃量を0.5ppm以下とした。
引き続き、この混合液に、1%過酸化水素水溶液0.3部、0.2%アスコルビン酸水溶液0.8部及び2%の2,2’−アゾビスアミジノプロパンジハイドロクロライド水溶液0.8部を添加・混合して重合を開始させ、反応液が80℃に達した後、重合温度80±2℃で約5時間重合することにより、含水ゲル(C2)を得た。
【0037】
<製造例3>
シクロヘキサン121.2部、ソルビタンモノステアレート0.9部を均一混合した後、この混合液中に窒素を流入し、混合液中の溶存酸素量を0.02ppm以下とし、反応溶媒を得た。
別に、アクリル酸45部(0.63モル部)と脱イオン水6.4部との混合液中に、氷冷下、水酸化ナトリウムの25%水溶液70部を加えてカルボキシル基の70当量%を中和した。さらに、この中和混合物に、N,N’−メチレンビスアクリルアミド0.033部(0.00021モル部)、次亜リン酸ナトリウム0.0546部及び2,2‘−アゾビスアミジノプロパンジハイドロクロライド0.0313部を加えて均一混合し、モノマー溶液を得た。
このモノマー溶液を、先の反応溶媒へ添加し、攪拌して分散させると共に、窒素を流入しながら油浴にて60℃に上昇させた。引き続き、この分散液体の温度を60℃に保ち、攪拌しながら2時間重合させた。2時間後の内容物は水で膨潤した含水ゲルがシクロヘキサン中に分散してスラリー状となっていた。次いで、油浴の温度を上げ、シクロヘキサンと水との共沸により、膨潤した含水ゲルの水分が20重量%になるまで脱水を行った。脱水後、攪拌を停止し、沈降する含水ゲルをデカンテーションによりシクロヘキサン相から分離し、含水ゲル(C3)を得た。
【0038】
<実施例1>
含水ゲル(C1)をインターナルミキサーで3〜7mmの大きさに細断して細断ゲルを得た後、この細断ゲル325部に48%の水酸化ナトリウム水溶液67.5部を添加してカルボキシル基の72当量%を中和し、さらに、リグニンスルホン酸カルシウム10部を加え中和細断ゲルを得た。なお、JIS K0113−1997に準拠{0.1規定水酸化カリウム水溶液を滴定液として使用、電位差滴定法、変曲点法}して測定した酸価から算出した中和細断ゲルの中和度は70.1当量%であった。
次いで、縦20cm×横20cm×高さ10cmで、天板を有さず、底板に目開き4mmの金網を装着したステンレス製のトレイに、この中和細断ゲルを約5cmの厚さに積層し、150℃、風速2.0m/sの条件で、通気型バンド乾燥機(井上金属製)で乾燥して、乾燥重合体を得た。
この乾燥重合体をジューサーミキサー(National MX−X53、松下電器(株)製)で粉砕し、目開き150及び710μmのふるいを用いて150〜710μmの粒子径範囲に調整した後、この100部を高速攪拌(細川ミクロン製 高速攪拌タービュライザーミキサー:回転数2000rpm)しながらエチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水/メタノール混合溶液(水/メタノールの重量比=60/40)の5.5部{エチレングリコールジグリシジルエーテル0.055部(0.00032モル部)}をスプレー噴霧しながら添加・混合し、140℃で30分間静置し加熱架橋(表面架橋)することにより吸収性樹脂粒子(1)を得た。
【0039】
<実施例2>
含水ゲル(C2)400部にリグニンスルホン酸カルシウム10部を加え、含水ゲル混合物をミンチ機(目皿穴径:6mm、飯塚工業社製 12VR−400K)にて25℃で5分間細断した後、通気型バンド乾燥機(135℃、2.0m/秒;井上金属工業(株)製)で乾燥し、乾燥重合体を得た。
得られた乾燥重合体を実施例1と同様に粉砕及び表面架橋して、吸収性樹脂粒子(2)を得た。
【0040】
<実施例3>
含水ゲル(C3)に対しリグニンスルホン酸カルシウム5.5部を加え、80〜90℃、13.3kPaで減圧乾燥し、乾燥重合体を得た。得られた乾燥重合体を実施例1と同様に表面架橋して、吸収性樹脂粒子(3)を得た。
【0041】
<実施例4>
リグニンスルホン酸カルシウムを含水ゲルでなく乾燥重合体に加えることに変更した以外、実施例1と同様にして吸収性樹脂粒子(4)を得た。
【0042】
<実施例5>
リグニンスルホン酸カルシウムを「10部」から「3部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸収性樹脂粒子(5)を得た。
【0043】
<実施例6>
リグニンスルホン酸カルシウム「10部」から「18部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸収性樹脂粒子(6)を得た。
【0044】
<実施例7>
リグニンスルホン酸カルシウムをリグニンに変更したこと以外、実施例1と同様にして吸収性樹脂粒子(7)を得た。
【0045】
<実施例8>
リグニンスルホン酸カルシウムをリグニンカルボン酸ナトリウムに変更したこと以外、実施例1と同様にして吸収性樹脂粒子(8)を得た。
【0046】
<比較例1>
リグニンスルホン酸カルシウムを添加しなかったこと以外、実施例1と同様にして吸収性樹脂粒子(9)を得た。
【0047】
実施例及び比較例により得られた吸収性樹脂粒子(1)〜(9)について、保水量及び荷重下吸収量を測定し、この結果を表1にまとめた。
【0048】
<保水量の測定法>
目開き63μmのナイロン網で作成したティーバッグ(縦20cm、横10cm)に測定試料1.00gを入れ、生理食塩水(食塩濃度0.9%)1000cc中に無撹拌下、1時間浸漬した後、15分間吊るして水切りした後、ティーバッグごと、遠心分離器にいれ、150Gで90秒間遠心脱水して余剰の生理食塩水を取り除き、ティーバックを含めた重量(h1)を測定した。一方、測定試料を入れないこと以外同様の操作により、ティーバッグの重量(h2)を求めた。そして、重量(h1)から重量(h2)を差し引くことにより保水量(g/g)を求めた。なお、使用する生理食塩水及び測定雰囲気の温度は
25℃±2℃であった。
【0049】
<荷重下吸収量の測定法>
目開き63μm(JIS Z8801−1:2006に準拠)のナイロン網を底面に貼った円筒型プラスチックチューブ(内径30mm、高さ60mm)内に測定試料0.1gを秤量し、プラスチックチューブを垂直にしてナイロン網上に測定試料がほぼ均一厚さになるように整え、この測定試料の上に40g/cmの荷重となるように外径29.5mm×22mmの分銅を乗せた。生理食塩水(食塩濃度0.9%)60mlの入ったシャーレ(直径:12cm)の中に測定試料及び分銅の入ったプラスチックチューブを垂直に立ててナイロン網側を下面にして浸し、放置し、60分後に試料及び分銅の入ったプラスチックチューブを計量し、測定試料が生理食塩水を吸収して増加した重量を算出し、この増加重量の10倍値を生理食塩水に対する荷重下吸収量(g/g)とした。なお、使用する生理食塩水及び測定雰囲気の温度は25℃±2℃であった。
【0050】
【表1】

【0051】
表1の結果から、本発明の吸収性樹脂粒子は、比較例に比べて、保水量及び荷重下吸水量が共に優れることがわかる。そして、この結果から、本発明の吸収性樹脂粒子を用いた吸収性物品(紙おむつ等)は、使用者が装着した状態で座ったり横になったような場合でも、漏れが生じにくいことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の吸収性樹脂粒子は、吸収性樹脂粒子と繊維状物とを含有してなる吸収体に適用でき、この吸収体を備えてなる吸収性物品{紙おむつ、生理用ナプキン及び医療用保血剤等}に有用である。また、ペット尿吸収剤、携帯トイレ用尿ゲル化剤、青果物用鮮度保持剤、肉類・魚介類用ドリップ吸収剤、保冷剤、使い捨てカイロ、電池用ゲル化剤、植物・土壌用保水剤、結露防止剤、止水剤、パッキング剤及び人工雪等の種々の用途にも使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)、内部架橋剤(a3)並びに表面架橋剤(a4)を必須構成単位としてなる架橋重合体粒子(A)と、リグニンもしくはその誘導体(B)とを含んでなる吸収性樹脂粒子。
【請求項2】
リグニンもしくはその誘導体(B)の含有量が、架橋重合体粒子(A)の重量に基づいて、0.1〜30重量%である請求項1に記載の吸収性樹脂粒子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吸収性樹脂粒子と繊維とを含有してなる吸収体。
【請求項4】
請求項3に記載の吸収体を配してなる吸収性物品。

【公開番号】特開2012−207138(P2012−207138A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74159(P2011−74159)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(301023009)サンダイヤポリマー株式会社 (57)
【Fターム(参考)】