説明

吸収性物品のワークのカッター装置

【課題】カッターロールに対するアンビルロールの姿勢を良好な状態に維持しつつ、アンビルロールの中央部の撓みを効果的に抑制してカッター刃の切断性を良好にする。
【解決手段】カッター刃21が突出して設けられたカッターロール20と、カッターロール20に対向して配された外周面によってカッター刃を受けるアンビルロール40と、アンビルロール40の外周面に所定の当接部位55で当接してアンビルロール40を押圧することにより、アンビルロール40の撓み変形を抑制するバックアップロール50と、を有する。カッターロール20の回転軸C20に沿う方向の端部側の位置には、アンビルロール40の外周面に当接する環状凸部25が設けられている。バックアップロール50の前記当接部位55は、回転軸C50に沿う方向の両端部に位置し、且つ、前記回転軸C50に沿う方向に関して前記環状凸部25よりも中央側に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ等の吸収性物品のワークを切るカッター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使い捨ておむつ等の吸収性物品の製造ラインでは、不織布等のワーク1aを搬送方向に搬送中に、当該ワーク1aに対して一部を打ち抜いたり、切り込みを入れたり、製品単位に分断すること等が行われる。つまり、ワーク1aを切ることが行われる。そして、これは、ロータリーダイカッター装置110によってなされる。
【0003】
図1の概略正面図に示すように、このカッター装置110は、外周面20sからカッター刃21が突出したカッターロール20と、カッター刃21を受ける平滑なアンビルロール40と、を有する。そして、カッターロール20とアンビルロール40とをワーク1aの搬送方向(図1の紙面を貫通する方向)に沿って回転させながら、これらのロール20,40同士の間隙Gr(以下、ロール間隙Grとも言う)にワーク1aを通過させることにより、ワーク1aをカットする。
【0004】
ここで、カッターロール20は、ベアラ部25,25を有している。ベアラ部25,25は、外周面20sの両端部に周方向に沿って環状に突出した環状凸部であり、各ベアラ部25,25をアンビルロール40の外周面40sに当接させることにより、回転トルクを一方のロール20(40)から他方のロール40(20)へと伝達させる機能を有する。
【0005】
また、カッター刃21への切断力の付与は、カッターロール20の回転軸C20に沿う方向(以下、回転軸方向C20とも言う)の両端部にそれぞれ設けられた油圧シリンダー17,17によってなされる。つまり、各油圧シリンダー17,17でアンビルロール40をカッターロール20の方へ押圧することにより、カッター刃21に切断力が付与される。
【0006】
但し、このときには、図1に示すように回転軸方向C20の両端部でカッターロール20を押圧することに起因して、二点鎖線で示すように、回転軸方向C20の中央部P110にてロール間隙Grが開くように各ロール20,40は撓み変形し易く、これにより、カッター刃21の切断性が悪くなってしまう。
【0007】
このロール40の撓み変形の抑制方法として、特許文献1には、図2A及び図2Bに示すように、アンビルロール40の外周面40sに対向させてバックアップロール250を配置し、バックアップロール250をアンビルロール40に当接させることによりアンビルロール40をカッターロール20の方へ押し込むことが示されている。
【0008】
そして、このバックアップロール250の配置例としては、図2Aのように回転軸方向C20の中央部P110に一つだけバックアップロール250を配置することや、図2Bのように回転軸方向C20に関してカッターロール20のベアラ部25,25の位置と同位置にそれぞれバックアップロール250を配置することなどが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−62775号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前者の例では、図2Aに示すように、バックアップロール250は、回転軸方向C20の中央部P110の一点でのみアンビルロール40に当接して押圧するので、当該押圧に伴って、アンビルロール40の回転軸C40がカッターロール20の回転軸C20に対して平行状態から傾いてしまう虞があって、つまり、ロール20,40の姿勢安定性の点で問題がある。
【0011】
また、後者の例では、図2Bに示すように、バックアップロール250,250のアンビルロール40への当接位置が、カッターロール20のベアラ部25,25と同位置になっているので、当該当接位置を介してバックアップロール250,250からアンビルロール40へと付与される押圧力が、アンビルロール40の中央部P40に有効に伝わらず、その結果、アンビルロール40の中央部P40の撓みを有効に抑制することができない。
【0012】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、カッターロールに対するアンビルロールの姿勢を良好な状態に維持しつつ、アンビルロールの中央部の撓みを効果的に抑制してカッター刃の切断性を良好にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための主たる発明は、
搬送方向に搬送される吸収性物品のワークを切るカッター装置であって、
前記搬送方向と交差する方向に沿う回転軸周りに回転し、外周面にカッター刃が突出して設けられたカッターロールと、
前記カッターロールと連動して回転し、前記カッターロールの外周面に対向して配された外周面によって前記カッター刃を受けるアンビルロールと、
前記アンビルロールの外周面に所定の当接部位で当接して前記アンビルロールを押圧することにより、前記アンビルロールの撓み変形を抑制するバックアップロールと、を有し、
前記カッターロールの外周面のうちで前記カッター刃の位置よりも前記回転軸に沿う方向の端部側の位置には、それぞれ前記外周面から突出して前記アンビルロールの外周面に当接する環状凸部が設けられており、
前記バックアップロールの前記当接部位は、前記回転軸に沿う方向の両端部に位置し、且つ、前記回転軸に沿う方向に関して前記環状凸部よりも中央側に位置していることを特徴とする吸収性物品のワークのカッター装置である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、カッターロールに対するアンビルロールの姿勢を良好な状態に維持しつつ、アンビルロールの中央部の撓みを効果的に抑制してカッター刃の切断性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来のカッター装置110の概略正面図である。
【図2】図2A及び図2Bは、それぞれ、アンビルロール40の撓みを抑制可能な従来のカッター装置110a,110bの概略正面図である。
【図3】図3Aは、本実施形態に係るカッター装置10の概略正面図であり、図3Bは同側面図である。
【図4】カッター装置10が半製品1aを打ち抜く様子を示す概略上面図である。
【図5】バックアップロール50のベアラ部55のCD方向の設置位置の説明図である。
【図6】カッター装置10の右半部拡大図である。
【図7】カッター刃21とベアラ部55とのCD方向の位置関係の説明図である。
【図8】その他の実施の形態に係るカッター装置10aの概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0017】
搬送方向に搬送される吸収性物品のワークを切るカッター装置であって、
前記搬送方向と交差する方向に沿う回転軸周りに回転し、外周面にカッター刃が突出して設けられたカッターロールと、
前記カッターロールと連動して回転し、前記カッターロールの外周面に対向して配された外周面によって前記カッター刃を受けるアンビルロールと、
前記アンビルロールの外周面に所定の当接部位で当接して前記アンビルロールを押圧することにより、前記アンビルロールの撓み変形を抑制するバックアップロールと、を有し、
前記カッターロールの外周面のうちで前記カッター刃の位置よりも前記回転軸に沿う方向の端部側の位置には、それぞれ前記外周面から突出して前記アンビルロールの外周面に当接する環状凸部が設けられており、
前記バックアップロールの前記当接部位は、前記回転軸に沿う方向の両端部に位置し、且つ、前記回転軸に沿う方向に関して前記環状凸部よりも中央側に位置していることを特徴とする吸収性物品のワークのカッター装置。
【0018】
このような吸収性物品のワークのカッター装置によれば、バックアップロールのアンビルロールへの当接部位は、回転軸に沿う方向に関して、カッターロールの環状凸部よりも中央側に位置している。よって、当該当接部位を介してバックアップロールからの押圧力がアンビルロールの中央部に有効に伝達され、その結果、アンビルロールの中央部の撓みをより直接的且つ選択的に抑制してカッター刃の切断性を高めることができる。
また、当該当接部位は、回転軸に沿う方向の両端部の位置に設けられており、これにより、バックアップロールは、アンビルロールを両端支持しながらカッターロールの方へ押圧することができる。よって、カッターロールに対するアンビルロールの姿勢を所期の良好な状態(例えば平行状態)に維持し易く、このことも切断性の向上に寄与する。
【0019】
かかる吸収性物品のワークのカッター装置であって、
前記バックアップロールの前記当接部位は、前記回転軸に沿う方向に関して、一部も前記環状凸部とオーバーラップしていないのが望ましい。
このような吸収性物品のワークのカッター装置によれば、バックアップロールの当接部位は、一部も環状凸部とオーバーラップしていないので、バックアップロールからの押圧力は、カッターロールの環状凸部に邪魔されずに効率良く且つ確実にアンビルロールの中央部に伝達される。その結果、アンビルロールの中央部の撓みをより一層直接的且つ選択的に抑制してカッター刃の切断性を更に高めることができる。
【0020】
かかる吸収性物品のワークのカッター装置であって、
前記アンビルロールの外周面のうちで前記カッター刃と対向しない部位に、前記バックアップロールの前記当接部位が当接するのが望ましい。
このような吸収性物品のワークのカッター装置によれば、アンビルロールの外周面のうちでカッター刃を受ける部位には、バックアップロールの当接部位は当接しないようになる。よって、当該カッター刃を受ける部位のバックアップロールとの当接による損傷を有効に防ぐことができて、その結果、カッター刃の切断性の低下を抑制可能となる。
【0021】
かかる吸収性物品のワークのカッター装置であって、
前記バックアップロールは、その外周面から突出した第2環状凸部を前記回転軸に沿う方向の両端部にそれぞれ前記当接部位として有し、
前記回転軸に沿う方向に関して、前記第2環状凸部の各々は、前記カッターロールの前記カッター刃の位置と、前記カッターロールの前記環状凸部の位置との間に配置されているのが望ましい。
このような吸収性物品のワークのカッター装置によれば、カッターロールに対するアンビルロールの姿勢を所期の良好な状態に維持し、且つ、アンビルロールの中央部の撓みをより直接的且つ選択的に抑制し、且つ、アンビルロールの外周面のうちでカッター刃を受ける部位のバックアップロールとの当接による損傷をより有効に防止することができる。
【0022】
===本実施形態===
図3A及び図3Bは、本実施形態に係るカッター装置10の説明図である。図3Aは、カッター装置10の概略正面図であり、図3Bは同側面図である。また、図4は、カッター装置10が半製品1aを打ち抜く様子を示す概略上面図である。
図4に示すように、カッター装置10は、吸収性物品の一例としてのパンツ型の使い捨ておむつ1の製造ラインで使用される。そして、この例では、カッター装置10は、搬送方向に連続搬送される不織布等の柔軟な連続シート状部材の半製品1a(ワークに相当)に、おむつ1の製品ピッチP1でおむつ1の脚周り開口部1hを打ち抜き形成する。
【0023】
但し、半製品1aは何等連続シート状部材に限るものではなく、つまり、おむつ1の製品に相当する単位で分かれて個別搬送されるものでも構わない。なお、その場合には、半製品1aを搬送する搬送機構としては、搬送ローラー101に代えて、サクションコンベア(載置面に吸着機能を有したベルトコンベア)等が使用される。また、半製品1aを切る態様も、打ち抜きに限るものではなく、連続シート状部材を製品単位に分断しても良いし、半製品1aの一部に切り込みを入れるだけでも良い。
【0024】
以下では、かかる半製品1aの搬送方向のことを「MD方向」とも言い、更にMD方向と直交する方向のうちで、半製品1aの厚み方向ではない方向(半製品1aが連続シート状部材の場合には当該シート状部材の幅方向)のことを「CD方向」とも言う。また、CD方向については、その一方側を左側、他方側を右側とも言う。
【0025】
図3A及び図3Bに示すように、カッター装置10は、鉛直方向に三本のロール20,40,50を順次積み重ねてなる三段ロール構成である。すなわち、カッター装置10は、軸受け部材12を介してCD方向に平行な回転軸C20周りに回転可能に支持された上段ロールとしてのカッターロール20と、カッターロール20の下方に隣接配置されて、軸受け部材13を介してCD方向に平行な回転軸C40周りに回転可能に支持された中段ロールとしてのアンビルロール40と、アンビルロール40の下方に隣接配置されて、軸受け部材14を介してCD方向に平行な回転軸C50周りに回転可能に支持され下段ロールとしてのバックアップロール50と、カッターロール20又はアンビルロール40の少なくとも一方を駆動回転する駆動機構60と、を有する。
【0026】
そして、搬送方向たるMD方向に沿って互いに駆動回転するカッターロール20とアンビルロール40との間に、同MD方向に沿って半製品1aを通す際に、カッターロール20の外周面20sのカッター刃21とアンビルロール40の外周面40sとで半製品1aを挟むことにより、半製品1aには、脚周り開口部1hが打ち抜き形成される。なお、詳細には後述するが、このとき、バックアップロール50は、アンビルロール40の外周面40sに下方から当接して同ロール40をカッターロール20の方へと押圧する。よって、アンビルロール40の中央部P40の下方への撓み変形は抑制されて、カッター装置10の切断性は良好に維持される。また、打ち抜かれた打ち抜き片は、適宜な不図示の回収機構により半製品1aから分離されて製造ライン外へと排出・回収される。
【0027】
ちなみに、上述のようにカッターロール20とアンビルロール40とが互いにMD方向に沿って回転する場合には、カッターロール20の回転軸C20周りの回転方向(図3Bの例では反時計回り)とバックアップロール50の回転軸C50周りの回転方向とは、互いに同じ向きであるが、アンビルロール40の回転軸C40周りの回転方向(図3Bの例では時計回り)は、これらロール20,50の回転方向に対して逆向きとなる。また、上述の各回転軸C20,C40,C50に沿う方向(回転軸方向)は、CD方向と平行である。以下、各構成要素20,40,50,60について説明する。
【0028】
カッターロール20は、ロール本体たるロール胴部22と、そのCD方向の両端部にそれぞれ同芯に突出形成された小径部23,23と、を有する。各小径部23には、既述の軸受け部材12が配される。一方、ロール胴部22の外周面20sにおけるCD方向の中央部P20には、カッター刃21が設けられている。カッター刃21は、打ち抜くべき形状たる脚周り開口部1hの形状に倣って外周面20sから突出して設けられており、これにより、カッター刃21は、脚周り開口部1hの形状に対応した閉じた領域A21を外周面20s上に区画している。以降、このカッター刃21の部分も含めその内側の閉じた領域A21のことを、カッター刃区画領域A21とも言う。
また、カッター刃21の先端の周回半径は、例えば、おむつ1の製品ピッチP1を2π(円周率の2倍の値)で除算した値に概ね等しくなるように設定されており、これにより、カッターロール20が1回転すると、半製品1aは、略製品1ピースに相当する長さP1だけMD方向に送られる。
【0029】
カッターロール20のロール胴部22の外周面20sには、図3Aに示すように、一対のベアラ部25,25(環状凸部に相当)が一体に設けられている。ベアラ部25とは、ロール胴部22のCD方向の両端部にそれぞれ周方向に沿って設けられた大径部のことである。そして、カッター装置10の定常運転時には、当該ベアラ部25,25が周面25sにてアンビルロール40の外周面40sに圧接される。このベアラ部25の周面25sの半径は、例えばカッター刃21の先端の周回半径と同値、又は切断時の切断荷重によるカッター刃21の撓み変形分だけ小さく設定される。但し、カッター刃21の切断性を阻害せずにベアラ部25の周面25sをアンビルロール40の外周面40sに圧接可能であれば、何等上述の同値等に限るものではなく、例えば、ベアラ部25の周面25sの半径の方が、カッター刃21の周回半径より大きくても良い。
【0030】
ちなみに、上述からわかるように、微視的に言えばベアラ部25の周面25sがアンビルロール40の外周面40sに当接しているのであるが、当該周面25sはベアラ部25の一部であることから、巨視的にはベアラ部25がアンビルロール40の外周面40sに当接していると言うこともできる。そのため、以下の説明では、そのように言うこともある。例えば、ベアラ部25の周面25sがアンビルロール40の外周面40sに当接することを、単に「ベアラ部25がアンビルロール40に当接する」と言ったり、或いは、ベアラ部25の周面25sのCD方向の幅W25のことを、単に「ベアラ部25の幅W25」と言うこともある。
【0031】
アンビルロール40も、ロール本体たるロール胴部42と、そのCD方向の両端部にそれぞれ同芯に突出形成された小径部43,43と、を有する。そして、各小径部43には、既述の軸受け部材13が配される。ロール胴部42は、例えばその外周面40sがCD方向にフラットな平ロール状である。すなわち、この例では、ロール胴部42の半径は、CD方向の略全長に亘り同径となっている。但し、カッター刃21の切断性やベアラ部25(55)に対する圧接性が阻害されない範囲であれば、ロール胴部42の外周面40sのロールプロフィール(輪郭形状)をフラットから変更しても良い。
【0032】
バックアップロール50も、ロール本体たるロール胴部52と、そのCD方向の両端部にそれぞれ同芯に突出形成された小径部53,53と、を有する。各小径部53には、既述の軸受け部材14が配される。一方、ロール胴部52の外周面50sには、一対のベアラ部55,55(第2環状凸部、及び当接部位に相当)が一体に設けられている。これらのベアラ部55,55も、前述のカッターロール20のベアラ部25と類似構造であり、つまり、ロール胴部52のCD方向の両端部にそれぞれ周方向に沿って設けられた大径部である。そして、カッター装置10の定常運転時には、当該ベアラ部55,55がアンビルロール40の外周面40sに圧接される。
【0033】
なお、かかるベアラ部55,55のCD方向の配置位置は、バックアップロール50への要求機能たるアンビルロール40の撓み抑制機能に大きく影響し、引いてはカッター刃21の切断性にも影響し、これについては後述する。
【0034】
また、前述のカッターロール20の場合と同様に、微視的に言えばベアラ部55の周面55sがアンビルロール40の外周面40sに当接しているのであるが、当該周面55sはベアラ部55の一部であることから、巨視的にはベアラ部55がアンビルロール40の外周面40sに当接していると言うこともできる。そのため、以下の説明では、そのように言うこともある。例えば、ベアラ部55の周面55sがアンビルロール40の外周面40sに当接することを、単に「ベアラ部55がアンビルロール40に当接する」と言ったり、或いは、ベアラ部55の周面55sのCD方向の幅W55のことを、単に「ベアラ部55の幅W55」と言うこともある。
【0035】
このような三本の各ロール20,40,50にあっては、油圧シリンダー17,17等の圧接機構により、上下に隣り合うロール20,40(40,50)同士がロール胴部22,42(42,52)にて圧接される。つまり、ロール20、40同士がロール胴部22,42にて圧接され、ロール40,50同士がロール胴部42,52にて圧接される。
【0036】
図3A及び図3Bを参照して、より詳しく説明すると、カッター装置10は、これらロール20,40,50を支持するためのハウジング部材15を有している。ハウジング部材15は、CD方向の両側にそれぞれ立設する略矩形の一対の枠体15a,15aを有し、各枠体15aの内側には、カッターロール20の小径部23とアンビルロール40の小径部43とバックアップロール50の小径部53とがそれぞれ対応する軸受け部材12,13,14に嵌った状態で上段中段下段という具合に並んで配されている。また、下段のバックアップロール50の各軸受け部材14,14と、対応する各枠体15a,15aとの間には、それぞれ油圧シリンダー17,17が介装されており、これら油圧シリンダー17,17の作動によってバックアップロール50は軸受け部材14,14を介して上下昇降可能に支持されている。よって、油圧シリンダー17,17を作動する作動油の油圧値を適宜設定すれば、枠体15a,15aからバックアップロール50が反力を得ながら、その油圧値に応じた圧接力でもって、自身50のベアラ部55,55を介してアンビルロール40を上方のカッターロール20の方へと押し上げ、また、カッターロール20は、枠体15a,15aから下方の反力を得て、これにより、カッターロール20とアンビルロール40とはロール胴部22,42にて圧接される。なお、かかる油圧シリンダー17は、上段のカッターロール20の各軸受け部材12と、対応する各枠体15aとの間に介装しても良い。また、圧接機構として、油圧シリンダー17の代わりに、エアシリンダーや電動送りねじ機構を用いても良い。
【0037】
図3Aに示すように、カッターロール20などを駆動回転する駆動機構60は、駆動源としての不図示のモータと、このモータの駆動回転力をカッターロール20に伝達すべくモータの駆動回転軸とカッターロール20の端部とを同芯に連結するユニバーサルジョイントの如き軸継手61と、カッターロール20の駆動回転力をアンビルロール40に伝達してアンビルロール40を駆動回転する駆動伝達用ギア63,63と、を有する。駆動伝達用ギア63,63は、カッターロール20の小径部23の端部及びアンビルロール40の小径部43の端部の両者にそれぞれ設けられ、これらギア63,63同士が噛み合うことにより、駆動回転力がアンビルロール40へと伝達される。その結果、アンビルロール40は、カッターロール20に連動して駆動回転する。
【0038】
但し、駆動機構60の構成例は何等上述に限るものではなく、例えば駆動伝達用ギア63,63を設けずに、カッターロール20のベアラ部25との当接によってカッターロール20からアンビルロール40へと回転力を付与しても良いし、あるいは、駆動源としてのモータをカッターロール20に連結せずに、アンビルロール40の方に連結しても良いし、更には、カッターロール20及びアンビルロール40の両者をそれぞれ対応する駆動源に連結しても良い。
【0039】
また、この例では、バックアップロール50は、そのベアラ部55,55にてアンビルロール40と当接することにより同ロール40から回転力を得て連れ回りする従動ロールとして構成されているが、何等これに限るものではなく、駆動源としてのモータで駆動回転するようにしても良いし、バックアップロール50の端部に同芯にギアを設けて、アンビルロール40の端部の駆動伝達用ギア63に噛み合わせて回転力を得るようにしても良い。
【0040】
ところで、図1を参照して前述したように、カッター刃21で半製品1aを打ち抜く際には、カッター刃21の切断力の反力が、ロール間隙Grを開くようにカッターロール20及びアンビルロール40に作用するので、カッターロール20はCD方向の中央部P20において上方に撓み、他方アンビルロール40は同中央部P40において下方に撓む。そして、この撓み変形量が大きいと所期の切断力を確保できずにカッター刃21の切断性が低下し、最悪の場合には、半製品1aを打ち抜き損じてしまう。
【0041】
そのため、この図3A及び図3Bのカッター装置10では、アンビルロール40の下方に対向配置されたバックアップロール50によって、アンビルロール40を上方のカッターロール20の方へと押圧し、この押圧力によって、アンビルロール40の中央部P40の下方の撓み変形を抑制するようにしている。
【0042】
但し、かかる押圧力は、バックアップロール50のベアラ部55,55のみを介してアンビルロール40に付与される。そのため、ベアラ部55,55のCD方向の設置位置などは、アンビルロール40の中央部P40の撓み変形の抑制能力だけでなく、アンビルロール40の姿勢にも影響を及ぼし、最終的にはカッター刃21の切断性に影響する。
【0043】
そこで、本実施形態では、バックアップロール50のベアラ部55,55のCD方向の設置位置などに関して幾つかの工夫をしている。以下、これら工夫について説明する。
図5は、本実施形態に係るバックアップロール50のベアラ部55のCD方向の設置位置の説明図である。
【0044】
先ず第1の工夫として、バックアップロール50のベアラ部55,55は、CD方向の両端部にそれぞれ設けられている。よって、バックアップロール50は、アンビルロール40を両端支持しながらカッターロール20の方へと上方に安定して押し上げることができる。つまり、アンビルロール40は両端支持状態でバックアップロール50に押し上げられるので、カッターロール20に対するアンビルロール40の姿勢を、良好な姿勢状態とされる互いの回転軸C20,C40同士が平行な状態に維持し易くなり、その結果、カッター刃21の切断性を良好にできる。
【0045】
また、これら一対のベアラ部55,55は、カッターロール20のカッター刃21をCD方向の両側から挟むような位置に配置されている。つまり、一方のベアラ部55は、カッター刃21よりもCD方向の一方端寄りたる左端部に位置しており、もう一方のベアラ部55は、カッター刃21よりもCD方向の他方端寄りたる右端部に位置している。よって、これらベアラ部55,55は、アンビルロール40を、カッター刃21の両脇の位置に相当する位置で支持しながら、同ロール40の外周面40sをカッター刃21に押し付けることができて、これにより、CD方向の左右に略対称な圧力分布でもってアンビルロール40の外周面40sをカッター刃21に当接可能となり、このこともカッター刃21の切断性の向上に寄与する。
【0046】
第2の工夫として、バックアップロール50のベアラ部55,55は、カッターロール20のベアラ部25,25よりもCD方向の中央側に配置されている。よって、バックアップロール50からの上向きの押圧力が、カッターロール20のベアラ部25に邪魔されずに効率良くアンビルロール40のCD方向の中央部P40に伝達される。その結果、アンビルロール40の中央部P40の下方への撓みをより直接的且つ選択的に抑制してカッター刃21の切断性を高めることができる。
【0047】
ちなみに、この図5の例では、バックアップロール50及びカッターロール20のどちらのベアラ部55,25も、CD方向に所定の幅W55,W25を有しているが、ここで、バックアップロール50のベアラ部55は、CD方向の位置に関してその一部もカッターロール20のベアラ部25とオーバーラップしていない状態で同ベアラ部25よりもCD方向の中央側に位置している。つまり、バックアップロール50のベアラ部55は、その全部位(周面55sの全幅)に亘って、カッターロール20のベアラ部25よりもCD方向の中央側に位置している。よって、バックアップロール50からの上向きの押圧力を、より一層効率良くアンビルロール40のCD方向の中央部P40に伝達可能となる。
【0048】
但し、本発明の概念は、何等上述の完全にオーバーラップさせない構成に限るものではない。すなわち、バックアップロール50のベアラ部55が、カッターロール20のベアラ部25よりもCD方向の中央側に位置している限りにおいては、ベアラ部55の一部55fがベアラ25にオーバーラップしていても良い。図6はその説明図であって、カッター装置10の右半部拡大図である。
同図6を見てわかるように、この例では、バックアップロール50のベアラ部55の一部55fが、CD方向の位置に関してカッターロール20のベアラ部25にオーバーラップしている。そして、この構成の場合には、望ましくは、バックアップロール50のベアラ部55の幅W55の中心位置P55が、カッターロール20のベアラ部25の幅W25の中心位置P25よりも、CD方向の中央側に位置していると良い。
【0049】
このようになっていれば、バックアップロール50のベアラ部55の押圧力のアンビルロール40の中央部P40への伝達が、カッターロール20のベアラ部25に阻害され難くなり、結果、アンビルロール40の中央部P40の下方への撓み変形を有効に抑制することができる。ちなみに、この押圧力のアンビルロール40の中央部P40への伝達性の観点からは、前述のオーバーラップさせない構成(図5の構成)が最も好ましいのは言うまでもない。
【0050】
また、望ましくは、図7の概略正面図に示すように、CD方向の位置に関して、バックアップロール50のベアラ部55が、カッターロール20のカッター刃21(カッター刃区画領域A21)と一部もオーバーラップしないように配置されていると良い。すなわち、同ベアラ部55を、アンビルロール40の外周面40sのうちでカッター刃21(カッター刃区画領域A21)と対向しない部位A40に当接させると良い。図7の例では、CD方向の位置に関して、バックアップロール50の各ベアラ部55は、カッターロール20のカッター刃21の位置と、カッターロール20のベアラ部25の位置との間に配置されている。
【0051】
そして、このように配置されていれば、アンビルロール40の外周面40sのうちでカッター刃21を受ける部位40sr、つまりカッター刃21の受け刃となる部位40srに、バックアップロール50のベアラ部55は当接しないようになる。よって、当該受け刃となる部位40srにベアラ部55が当接して当該部位40srが損傷するという事態を確実に防ぐことができて、結果、カッター刃21の切断性の低下を有効に抑制可能となる。
【0052】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、以下に示すような変形が可能である。
【0053】
前述の実施形態では、吸収性物品の一例として、着用対象に装着されてその排泄液を吸収する使い捨ておむつ1を例示したが、尿や経血等の排泄液を吸収するものであれば何等これに限るものではなく、例えば生理用ナプキンやペットの排泄液を吸収するペットシート等でも良い。
【0054】
前述の実施形態では、カッター装置10の一例として、カッターロール20とアンビルロール40とバックアップロール50とを順次積み重ねてなる三段ロール構成を示したが、何等これに限るものではなく、更にバックアップロールの数を増やしても良い。例えば、カッターロール20の上方にカッターロール20の撓みを抑制するバックアップロールを積み重ねて四段ロール構成にしても良いし、あるいは、バックアップロール50の下方に更に別のバックアップロールを積み重ねても良い。
【0055】
前述の実施形態では、アンビルロール40の下方への撓み変形を抑制するバックアップロール50を一本物のロールで構成していたが、何等これに限るものではない。例えば、図8に示すように、CD方向の両端部に、それぞれ狭幅の外周面150asを有したロール150a,150aを二本配置し、これら二本で一つのバックアップロール150を構成しても良い。つまり、二本のロール150a,150aを組み合わせることにより、アンビルロール40の下方の撓み変形を抑制する一つのバックアップロール50aとして機能させても良い。ちなみに、この場合には、各ロール150aの外周面150asが、アンビルロール40の外周面40sに当接する当接部位となるので、図3Aのベアラ部55,55に相当する構成は一切無く、また、各ロール150a,150aは、CD方向に関して、カッターロール20の各ベアラ部25,25よりも中央側に配置されることになる。更に、この図8の例では、ハウジング部材15の一部である床部15b、すなわち、ハウジング部材15の枠体15a,15a同士を下端部で連結する床部15bの上面に、各ロール150a,150aが載置固定されている関係上、圧接機構としての各油圧シリンダー17,17は、カッターロール20の各軸受け部材12,12と、対応する各枠体15aとの間に介装されている。
【符号の説明】
【0056】
1 おむつ(吸収性物品)、1a 半製品(ワーク)、1h 脚周り開口部、
10 カッター装置、10a カッター装置、
12 軸受け部材、13 軸受け部材、14 軸受け部材、
15 ハウジング部材、15a 枠体、15b 床部、
17 油圧シリンダー、
20 カッターロール、20s 外周面、21 カッター刃、
22 ロール胴部、23 小径部、
25 ベアラ部(環状凸部)、25s 周面、
40 アンビルロール、40s 外周面、40sr 受け刃となる部位、
42 ロール胴部、43 小径部、
50 バックアップロール、50s 外周面、
52 ロール胴部、53 小径部、
55 ベアラ部(当接部位、第2環状凸部)、55s 周面(当接部位)、
55f 一部、
60 駆動機構、61 軸継手、63 駆動伝達ギア、
101 搬送ローラー、
110 カッター装置、110a カッター装置、110b カッター装置、
150 バックアップロール、150a ロール、150as 外周面、
Gr ロール間隙、A21 カッター刃区画領域、A40 範囲、
C20 回転軸、C40 回転軸、C50 回転軸、
P20 中央部、P25 中心位置、P40 中央部、P55 中心位置、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向に搬送される吸収性物品のワークを切るカッター装置であって、
前記搬送方向と交差する方向に沿う回転軸周りに回転し、外周面にカッター刃が突出して設けられたカッターロールと、
前記カッターロールと連動して回転し、前記カッターロールの外周面に対向して配された外周面によって前記カッター刃を受けるアンビルロールと、
前記アンビルロールの外周面に所定の当接部位で当接して前記アンビルロールを押圧することにより、前記アンビルロールの撓み変形を抑制するバックアップロールと、を有し、
前記カッターロールの外周面のうちで前記カッター刃の位置よりも前記回転軸に沿う方向の端部側の位置には、それぞれ前記外周面から突出して前記アンビルロールの外周面に当接する環状凸部が設けられており、
前記バックアップロールの前記当接部位は、前記回転軸に沿う方向の両端部に位置し、且つ、前記回転軸に沿う方向に関して前記環状凸部よりも中央側に位置していることを特徴とする吸収性物品のワークのカッター装置。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性物品のワークのカッター装置であって、
前記バックアップロールの前記当接部位は、前記回転軸に沿う方向に関して、一部も前記環状凸部とオーバーラップしていないことを特徴とする吸収性物品のワークのカッター装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吸収性物品のワークのカッター装置であって、
前記アンビルロールの外周面のうちで前記カッター刃と対向しない部位に、前記バックアップロールの前記当接部位が当接することを特徴とする吸収性物品のワークのカッター装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の吸収性物品のワークのカッター装置であって、
前記バックアップロールは、その外周面から突出した第2環状凸部を前記回転軸に沿う方向の両端部にそれぞれ前記当接部位として有し、
前記回転軸に沿う方向に関して、前記第2環状凸部の各々は、前記カッターロールの前記カッター刃の位置と、前記カッターロールの前記環状凸部の位置との間に配置されていることを特徴とする吸収性物品のワークのカッター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−27642(P2013−27642A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167336(P2011−167336)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】