説明

吸引アダプタを有する手持ち式電動工具装置

【課題】吸引装置を装着した電動工具装置の動作と吸引装置を装着しない電動工具装置の動作との間における動作切り替えを、作業者にとってより容易にする電動工具装置を得る。
【解決手段】手持ち式電動工具装置1であって、駆動ユニット3により回転軸8周りに回転可能な工具6と、工具6を少なくとも部分的に被覆する保護カバー7と、工具6により加工すべき加工材から切削した材料屑を、保護カバー7から排出する排出開口12と、保護カバー7と連結し、かつ吸引装置を連結するため、吸引開口22を有する接続部分21を設けた吸引アダプタ13とを有する電動工具装置において、吸引アダプタ13は、材料屑をガイドするためのガイド手段23を有し、ガイド手段23は、吸引開口22とは異なる排出開口26を有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の前段による特徴を有する手持ち式電動工具装置に関する。
【背景技術】
【0002】
手持ち式電動工具、例えば手持ち式丸鋸、面取り機、くり抜き機、またはスリット形成装置は、吸引装置を設けた状態ばかりでなく、設けない状態でも操作される。
【0003】
手持ち式丸鋸は、駆動ユニットにより回転軸周りに駆動される円形状の鋸刃、および加工すべき加工材に載置される載置プレートを有する。手持ち式丸鋸においては、切削屑用の排出ガイドを設けることが特に重要である。これは、周囲に飛散する切削屑が、作業者に向かって飛散しないようにするためである。このため、アーチ状の保護カバーによって、鋸刃の上側半分を被覆する。これら保護カバーは、載置プレートで終端する。平坦面として形成した載置プレートの下側は、加工材載置面を構成し、これにより丸鋸を加工材表面に沿って摺動させることができる。
【0004】
従来既知の保護カバーは、切削屑用の排出開口を有しており、この排出開口から鋸刃による切削屑が外部に放出される。切削屑を吸引装置により吸引できようにするため、保護カバーの排出開口に装着可能であり、また保護カバーにクランプされる吸引アダプタを設ける。丸鋸は、吸引装置を装着する、しないに関わらず使用することができるが、吸引アダプタを装着した場合、吸引装置を装着することによってのみ動作することができる。
【0005】
欠点は、吸引装置なしに電動工具装置を動作するには、吸引アダプタを保護カバーから取り外さなくてはならない点である。さらに、管状の接続部分が切削屑によって詰まるおそれもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上述した問題点に鑑み、工具が加工材から削り出される切削屑の電動工具装置内における排出を、より良好にすることにある。さらに、吸引装置を装着した電動工具装置の動作と、吸引装置を装着しない電動工具装置の動作との間における動作切り替えを、作業者にとってより容易にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
冒頭に述べた手持ち式電動工具装置の課題は、独立請求項1の特徴により解決することができる。有利な実施形態は、従属請求項に記載したとおりである。
【0008】
本発明によれば、吸引アダプタは材料屑をガイドするためのガイド手段を有しており、この場合、ガイド手段は、吸引開口とは異なる排出開口を有する。吸引開口とは異なる排出開口は、吸引装置を使用せずに電動工具装置を動作させる場合の材料屑用の排出開口として機能し、しかも吸引装置を吸引アダプタに接続する際、吸引チャネルへの通気を調節する。これにより、吸引装置を使用せずに電動工具装置を動作させる場合も、吸引アダプタを保護カバーから取り外す必要がないため好適である。
【0009】
好適な一実施形態では、吸引アダプタを保護手段と一体化させるか、または保護手段に堅固に連結する。これには、吸引アダプタが脱離することなく保護カバーに連結し、電動工具装置を常時使用できるという利点がある。
【0010】
別の代案としての好適な一実施形態では、吸引アダプタを保護手段に解離可能に連結することができる。吸引アダプタを解離可能に構成することで、例えば吸引アダプタが作業の妨げになる場合、作業者は、吸引アダプタを保護カバーから取り外すことができる。
【0011】
特に好適には、ガイド手段は、保護カバーに設ける第1ガイド部分と、吸引アダプタに設ける第2ガイド部分であって、排出開口を有する、該第2ガイド部分とを有する。第1および第2ガイド部分を構成することにより、排出される材料屑の方向が規定される。特に好適には、第2ガイド部分は、容積素子を画定する被覆素子および排出される材料屑の方向を規定するガイド手段を有する。
【0012】
好適な一実施形態では、排出開口は、スライド素子によって調節可能に構成する。排出開口を調節可能に構成することで、作業者が吸引装置を吸引アダプタに連結する際、吸引チャネルへの通気を調節し、チャネル内の詰まりを回避することができる。さらに、異なる性能を有する吸引装置であって、最適な動作状態に異なる程度の気流を必要とする吸引装置を使用することができる。これは、調節可能な排出開口によって気流を調整することができるからである。
【0013】
以下、本発明の実施形態を、添付図面につき説明する。図面は、必ずしも実施例を実際の縮尺通りに示すものではなく、むしろ本発明の説明に役立つように、斜視図および/またはやや変更を加えた形で示すものである。図面から直接識別できる点の補足として、関連する従来技術を参照されたい。その際、留意すべきは、本明細書に記載の実施形態および詳細に関し、記載の技術的範囲内で多岐におよぶ修正および変更を行うことができる。本明細書内の詳細な説明、図面、および特許請求の範囲に記載する本発明の特徴は、単独および本発明における任意の組み合わせによる好適な一実施形態にとって重要であり得る。さらに、本発明の全ての組み合わせには、詳細な説明、図面および/または特許請求の範囲に記載する特徴のうち、少なくとも2つが発明の範囲内において適用される。本発明の要旨は、以下に記載する好適な実施形態の正確な形式や詳細に限定されるものではなく、また特許請求の範囲に記載の要旨に対して、限定を加えた事項に限定されるものでもない。さらに、ある測定範囲に関し、記述した限界にある値の範囲内でも限界値とみなすことができ、また随意に適用し、かつ特許請求の範囲で記載することができる。以下、同一および類似の部分、または同一および類似の機能を有する部分には、便宜上、同一参照符号を付して示す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による手持ち式丸鋸の側面図である。
【図2】、本発明による吸引アダプタを排出開口に装着し、保護カバーに連結した丸鋸の保護カバーを示す説明図である。
【図3A】吸引アダプタの側面図である。
【図3B】図3Aに示すA-A線上の吸引アダプタの断面図である。
【図4A】吸引アダプタの代替的な実施形態の、閉鎖可能な排出開口を最大限に開いた第1ポジションの状態を示す説明図である。
【図4B】図4Aに示す吸引アダプタの排出開口を、開きが小さい中間ポジションの状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、手持ち式電動丸鋸1として構成した手持ち式電動工具装置を示す。手持ち式丸鋸1の構成は、従来技術に既知の手持ち式丸鋸とほぼ対応し、ハンドグリップ2、充電式バッテリ4によって給電される駆動ユニット3、載置プレート5および載置プレート5の空所から突出し、かつ部分的に上側の保護カバー7によりアーチ状に包囲される鋸刃6として形成した工具を有する。鋸刃6は、駆動ユニット3によって、回転軸8周りに回転方向9に駆動される。載置プレート5の下側は加工材載置面10を構成し、これにより手持ち式丸鋸1を加工すべき加工材に載置し、加工材表面に沿ってガイドすることができる。鋸刃6は、載置プレート5の下方において、振り子式保護カバーとして構成する、転回可能な下側保護カバー11に包囲される。
【0016】
上側保護カバー7は、鋸刃6を載置プレート5の上方領域において被覆する。これは、一方で鋸刃6による作業者のけがを防止し、他方で鋸刃6が加工材から切削され、飛散する切削屑または他の材料屑から作業者を保護する作用を行う。鋸刃6によって加工材から切削される材料屑は、鋸刃6の回転により加工材から切削された後、鋸刃6に向け接線方向に延びる直線に沿い、直接保護カバー7に向かって放出され、保護カバー7によって排出開口12にガイドされる。ここで排出開口12は、ハンドグリップ2に対して背反する保護カバー7の側面に設け、保護カバー7の排出開口12に吸引アダプタ13を装着し、また保護カバー7と連結する。
【0017】
図2は、吸引アダプタ13を装着した手持ち式丸鋸1の保護カバー7を示し、吸引アダプタ13は、排出開口12に装着し、また保護カバー7と連結する。
【0018】
吸引アダプタ13は、吸引アダプタ13を保護カバー7に固定するための固定部分20、吸引装置を接続するための吸引開口22を設けた吸引接続部分21、および材料屑をガイドするためのガイド手段23で構成する。
【0019】
手持ち式丸鋸1は、吸引モードにおいて、例えば集塵機として構成する吸引装置とともに動作することができる。吸引装置は吸引気流を発生させ、材料屑はこの吸引気流によって吸引連結部分21を介して吸引することができる。手持ち式丸鋸1は、吸引モードの他、吸引装置を使用しない第2モードでも動作可能である。
【0020】
固定部分20は、ねじ24または類似の連結手段によって、保護カバー7にクランプするか、または他の方法で固定する。
【0021】
吸引連結部分21は管状素子25で構成し、導状素子25は、その一方の端部においてガイド手段23に連結し、他方の端部において吸引開口22を設ける。管状素子25には、吸引装置の吸引ホースを接続可能とする。管状素子25には波形の外面にし、または螺旋もしくはねじ状に延在する溝を設ける。これらは、吸引ホースを接続するのに供する。
【0022】
ガイド手段23は排出開口26を有しており、この排出開口26は保護カバー7の排出開口12に対面し、吸引装置を使用せずに丸鋸1を動作させる際、材料屑の排出開口として機能する。吸引装置を吸引アダプタ13に接続する場合、吸引チャネルへの通気は、排出開口26によって調節する。
【0023】
図3Aは、保護カバー7の排出開口12に装着可能な吸引アダプタ13の側面図を示し、図3Bは、ガイド手段23のA-A線上の断面図を示す。
【0024】
ガイド手段23は、吸引装置を使用しない場合でも、材料屑を確実に保護カバー7から搬送できる構成とする。こののため、保護カバー7に第1ガイド部分30を設け、また吸引アダプタ13に第2ガイド部分31を設ける。第2ガイド部分31は、容積素子33を画定する被覆素子32、および排出される材料屑の方向を規定するダクト34によって構成する。ダクト34は、側方ダクト素子35および傾斜路36を有する。
【0025】
容積素子33の容積は、材料屑が極力詰まることなく外部に排出できるよう調節する。この目的に当たっては、断面図に見て適切な排出を可能とする構成にする必要がある。
【0026】
図4Aおよび図4Bは、代替的な実施形態として、調節可能な排出開口41を有する吸引アダプタ40を示す。
【0027】
排出開口41は、スライド素子42によって閉鎖可能な構成とする。スライド素子42は被覆素子32の上側に配置し、スライド方向43に変位可能に形成する。図4Aは、スライド素子42の第1端部ポジション、すなわち排出開口41が最大限開いた位置を示し、図4Bは、スライド素子42の中間ポジション、すなわち排出開口41の開きが少ない位置を示す。
【0028】
スライド素子42によって排出開口41の開きを調整可能に構成することで、吸引装置を吸引アダプタ40に連結する際、作業者が吸引チャネルへの通気を調節し、しかもチャネルの詰まりを回避することが可能になる。他方で、吸引装置を使用しない動作においては、材料屑が確実に外部に排出され、容積素子33の詰まりを回避するよう排出開口41を調節することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 手持ち式電動丸鋸
2 ハンドグリップ
3 駆動ユニット
4 充電式バッテリ
5 載置プレート
6 鋸刃
7 保護カバー
8 回転軸
9 回転方向
10 加工材載置面
11 下側保護カバー
12 排出開口
13 吸引アダプタ
20 固定部分
21 吸引接続部分
22 吸引開口
23 ガイド手段
24 ねじ
25 管状素子
26 排出開口
30 第1ガイド部分
31 第2ガイド部分
32 被覆素子
33 容積素子
34 ダクト
35 側方ダクト素子
36 傾斜路
40 吸引アダプタ
41 排出開口
42 スライド素子
43 スライド方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手持ち式電動工具装置(1)であって、
駆動ユニット(3)により回転軸(8)周りに回転可能な工具(6)と、
前記工具(6)を、少なくとも部分的に被覆する保護カバー(7)と、
前記工具(6)により加工すべき加工材から切削した材料屑を、前記保護カバー(7)から排出する排出開口(12)と、
前記保護カバー(7)に連結し、かつ吸引装置を接続するため、吸引開口(22)を有する接続部分(21)を設けた吸引アダプタ(13, 40)と
を有する電動工具装置において、
前記吸引アダプタ(13,40)は、前記材料屑をガイドするためのガイド手段(23)を有し、該ガイド手段(23)は、前記吸引開口(22)とは異なる排出開口(26,41)を有する構成とした電動工具装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動工具装置において、前記吸引アダプタ(13,40)を、前記保護カバー(7)に一体的に設ける、又は前記保護カバー(7)に対して堅固に連結する構成としたことを特徴とする電動工具装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電動工具装置において、前記吸引アダプタ(13,40)を、前記保護カバー(7)から解離可能に連結する構成としたことを特徴とする電動工具装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電動工具装置において、前記ガイド手段(23)は、前記保護カバー(7)に設ける第1ガイド部分(30)と、前記吸引アダプタ(13)に設ける第2ガイド部分(31)であって、排出開口(26)を有する、該第2ガイド部分(31)とを有する構成としたことを特徴とする電動工具装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電動工具装置において、前記第2ガイド部分(31)は、容積素子(33)を画定する被覆素子(32)と、排出される前記材料屑の方向を規定するダクト(34)とを有する構成としたことを特徴とする電動工具装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の電動工具装置において、前記排出開口(41)を、スライド素子(42)により、調節可能に構成したことを特徴とする電動工具装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の電動工具装置において、該装置を、丸鋸(1)、面取り機、くり抜き機又はスリッタ装置として構成したことを特徴とする電動工具装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2012−66379(P2012−66379A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208008(P2011−208008)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(591010170)ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト (339)
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100, 9494 Schaan, LIECHTENSTEIN
【Fターム(参考)】