説明

吸引圧送車または吸引圧送装置におけるレシーバタンクの排出ゲートのシール構造

【課題】負圧および加圧を利用して回収対象物を吸引、排出する吸引圧送車または吸引圧送装置において、加圧によってシール部材が押し出されるのを防止する。
【解決手段】負圧および加圧を利用して吸引対象物を吸引、排出するレシーバタンク3と、レシーバタンク3の開口部を開閉する排出ゲート5とを有する吸引圧送車または吸引圧送装置における排出ゲート5のシール構造であって、排出ゲート5に形成された第1の凹溝43と、第1の凹溝43の中に第1の凹溝43よりも幅狭に形成された第2の凹溝44と、第2の凹溝44に嵌合される基部47と、基部47に接続され、基部47よりも幅広かつ第1の凹溝43よりも幅狭に形成された頭部46とから構成されるパッキン46とを含むシール構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥、泥砂、石炭、灰やセメントなどの回収対象物を、負圧および加圧を利用して吸引、排出する吸引圧送車または吸引圧送装置におけるレシーバタンクのシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水管、マンホール、道路の側溝等における汚泥回収、浄水場の泥砂回収や、一般河川の浚渫作業などにおいて、汚泥や泥砂等の回収対象物を吸引して回収するために吸引圧送車や吸引圧送装置が利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の吸引圧送車には、車体フレームの前側に吸引ブロワが設けられ、車体フレームの後部に傾動可能にレシーバタンクが設けられている。また、レシーバタンクの後方には、タンク上部に上部支持部によって支持され、この上部支持部を支点にして下部が開閉するように構成された排出ゲートが設けられている。
【0004】
この吸引車では、吸引ブロワの吸引エアによってレシーバタンク内を負圧状態とし、この負圧を利用してレシーバタンクに回収対象物を吸引して貯留し、所定の排気場所まで搬送して排出することができる。なお、レシーバタンク内に貯留した回収対象物は、レシーバタンク後方の排出ゲートを開いて排出したり、レシーバタンク内を加圧(通常0.06MPa)して、排出ゲートに設けられた排出口から加圧排出したりすることが可能となっている。
【0005】
ところで、この吸引車では、排出ゲートを閉じた際にレシーバタンク後方の開口部が密閉されるように、ゴム製のシール部材が用いられている。図6は従来のレシーバタンクの排出ゲートのシール構造を示す部分断面図である。図6に示すように、従来のレシーバタンクでは、排出ゲートの周縁部101に凹溝102を設け、この凹溝102にシール部材103を嵌め込んでいる。これにより、排出ゲートを閉じた際には、このシール部材103がレシーバタンク後方の開口部の周縁に密着し、開口部が密閉される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−255096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上述の吸引車において、レシーバタンク内を通常よりも高い加圧状態(0.2MPa)とし、この加圧空気を利用して回収対象物を排出する場合、排出ゲートの凹溝に嵌め込んだシール部材103が、この加圧によって押し出されて変形してしまい、加圧状態を保てなくなることがある。
【0008】
そこで、本発明では、負圧および加圧を利用して回収対象物を吸引、排出する吸引圧送車または吸引圧送装置において、加圧によってシール部材が押し出されるのを防止し、加圧状態を保つことが可能な排出ゲートのシール構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の吸引圧送車または吸引圧送装置におけるレシーバタンクの排出ゲートのシール構造は、負圧および加圧を利用して吸引対象物を吸引、排出するレシーバタンクと、レシーバタンクの開口部を開閉する排出ゲートとを有する吸引圧送車または吸引圧送装置における排出ゲートのシール構造であって、レシーバタンクの開口部または排出ゲートに形成された第1の凹溝と、第1の凹溝の中に第1の凹溝よりも幅狭に形成された第2の凹溝と、第2の凹溝に嵌合される基部と、基部に接続され、基部よりも幅広かつ第1の凹溝よりも幅狭に形成された頭部とから構成されるシール部材とを含むシール構造である。
【0010】
本発明のシール構造によれば、レシーバタンクの開口部または排出ゲートの第2の凹溝に基部が嵌合されて保持されたシール部材は、その頭部が変形して対面側のシール面に密着し、レシーバタンクの開口部を密閉する。この状態においてシール部材の頭部は、基部側の一部が第1の凹溝内にある。そのため、レシーバタンク内が加圧状態となった場合に、シール部材は、まず基部よりも幅広の頭部が第1の凹溝の内壁面に拘束されて変形が抑えられるので、この第1の凹溝の中の第2の凹溝内に嵌合されている基部の変形が防止される。
【0011】
ここで、シール部材は、基部の第2の凹溝の側壁面に当接する面に凸部が形成されたものであることが望ましい。これにより、第2の凹溝にシール部材の基部が嵌合された際に、基部の凸部が変形して第2の凹溝の側壁面に密着することで、シール部材の基部が第2の凹溝の側壁面から押圧されて保持される。
【0012】
また、シール部材は、凸部が2カ所以上形成されたものであることが望ましい。これにより、基部の凸部が変形して第2の凹溝の側壁面に密着する際に、2カ所以上でシール部材の基部が第2の凹溝の側壁面から押圧されるので、基部の全体がより安定して保持される。
【0013】
さらに、凸部は、第2の凹溝の奥に向かって幅狭となるテーパ面を有するものであることが望ましい。これにより、シール部材を取り付ける際には、凸部のテーパ面に沿って基部が変形するので、シール部材の基部を第2の凹溝内へ挿入しやすくなる。逆に、第2の凹溝内に挿入された基部は、引き抜く方向に対しては変形しにくくなる。
【発明の効果】
【0014】
(1)レシーバタンクの開口部または排出ゲートに形成された第1の凹溝と、第1の凹溝の中に第1の凹溝よりも幅狭に形成された第2の凹溝と、第2の凹溝に嵌合される基部と、基部に接続され、基部よりも幅広かつ第1の凹溝よりも幅狭に形成された頭部とから構成されるシール部材とを含むシール構造により、レシーバタンク内が加圧状態となった場合に、第1の凹溝の中の第2の凹溝内に嵌合されている基部の変形が防止されるので、負圧によってシール部材が押し出されるのを防止することができ、加圧状態を保つことが可能となる。
【0015】
(2)シール部材が、基部の第2の凹溝の側壁面に当接する面に凸部が形成されたものであることにより、第2の凹溝にシール部材の基部が嵌合された際に、基部の凸部が変形して第2の凹溝の側壁面に密着し、基部が第2の凹溝の側壁面から押圧されて保持されるので、さらに基部が第2の凹溝から引き抜かれるのを防止することができる。
【0016】
(3)シール部材が、凸部が2カ所以上形成されたものであることにより、基部の凸部が変形して第2の凹溝の側壁面に密着する際に、2カ所以上でシール部材の基部が第2の凹溝の側壁面から押圧され、基部の全体がより安定して保持されるので、さらに基部が引き抜かれるのを防止することができる。
【0017】
(4)凸部が、第2の凹溝の奥に向かって幅狭となるテーパ面を有するものであることにより、シール部材を取り付ける際には、凸部のテーパ面に沿って基部が変形するので、シール部材の基部を第2の凹溝内へ挿入しやすくなり、作業性が向上する。また、第2の凹溝内に挿入された基部は、引き抜く方向に対しては変形しにくくなるので、さらに基部が第2の凹溝から引き抜かれるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】本発明の実施の形態における吸引圧送車の側面図である。
【図1B】本発明の実施の形態における吸引圧送車の平面図である。
【図1C】本発明の実施の形態における吸引圧送車の背面図である。
【図2】図1Aの吸引圧送車の排出ゲートの断面図である。
【図3】図2のフランジの拡大断面図である。
【図4】図2のパッキンの断面図である。
【図5】図1Aの吸引圧送車の空気配管系統図である。
【図6】従来のレシーバタンクの排出ゲートのシール構造を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1Aは本発明の実施の形態における吸引圧送車の側面図、図1Bは平面図、図1Cは背面図、図2は図1Aの吸引圧送車の排出ゲートの断面図、図3は図2のフランジの拡大断面図、図4は図2のパッキンの断面図、図5は図1Aの吸引圧送車の空気配管系統図である。
【0020】
図1A〜図1Cにおいて、本実施形態における吸引圧送車1は、車体2上のサブフレーム2’に傾動ピン2aを介して傾倒自在に軸支されたレシーバタンク3と、レシーバタンク3の後端部にヒンジピン3aを介して回動自在に軸支されてレシーバタンク3の後端開口部を開閉可能であり、かつ下部にチャンバ41が形成された排出ゲート4と、排出ゲート4におけるチャンバ41の後端部に着脱自在に固定されてその後端開口を閉鎖する椀状のチャンバゲート5と、レシーバタンク3に湿式または乾式の吸引回収物を吸引回収し、吸引回収された湿式の吸引回収物をレシーバタンク3から加圧排出する吸引加圧手段6A(図5参照。)と、レシーバタンク3に吸引回収された乾式の吸引回収物をレシーバタンク3から圧送する圧送手段6B(図5参照。)とから構成されている。
【0021】
排出ゲート4には、開閉弁71を配設した吸引配管7が連結されている。排出ゲート4のチャンバ41には、一端部が内部に導入されるとともに、他端部が周壁を貫通して外部に延出されて開閉弁81が配設された乾式回収物兼湿式回収物排出配管(以下、「回収物排出配管」と称す。)8が設けられている。なお、チャンバゲート5は、吸引回収物が乾式である場合に使用される乾式用チャンバゲートと、湿式である場合に使用される湿式用チャンバゲートとがあり、吸引回収物に応じて交換可能となっている。乾式用チャンバゲートには、略円錐台状のキャンバスが配設されるとともに、キャンバスによって区画されたエア室にエア導入配管52が連結されている。
【0022】
また、図2に示すように、排出ゲート4の周縁部にはフランジ42が設けられている。フランジ42には、図3に示すように第1の凹溝43と、この第1の凹溝43の中央に第1の凹溝43よりも幅狭に形成された第2の凹溝44とが、周回するように設けられている。これらの凹溝43,44内には、シール部材としてのゴム製の帯状のパッキン45が配設されている。排出ゲート4を閉じた際、パッキン45はレシーバタンク3の後端開口部の周縁部に密着し、排出ゲート4とレシーバタンク3の後端開口部との接合面を密閉する。
【0023】
図4に示すようにパッキン45は、レシーバタンク3の後端開口部の周縁部に密着する頭部46と、第2の凹溝44に嵌合される基部47とから構成されている。頭部46は、基部47よりも幅広かつ第1の凹溝43よりも幅狭に形成されている。また、レシーバタンク3の後端開口部の周縁部に当接する頭部46の先端面46aは、曲面状に形成されている。一方、第1の凹溝43の底面43aに当接する頭部46の下端面46bは平面状に形成されている。頭部46は、レシーバタンク3の後端開口部の周縁部に押さえ付けられた際に、頭部46がつぶれることで、レシーバタンク3の後端開口部の周縁部に密着する。
【0024】
また、基部47には、第2の凹溝44の側壁面44aに当接する面に2カ所以上の凸部47aが形成されている。凸部47aは、それぞれ第2の凹溝44の奥に向かって幅狭となるテーパ面47bを有する。なお、基部47の最も細い部分の幅は、第2の凹溝44の幅とほぼ同じ幅である。また、凸部47aの頭頂部分の幅は、第2の凹溝44の幅よりも幅広となっている。
【0025】
吸引加圧手段6Aは、図5に示すように、動力取出装置(図示せず。)を介してエンジン動力により駆動されるブロワ10と、片側上方に集塵機11が設けられた集塵タンク13と、他のサイクロン集塵機12とから主に構成されている。レシーバタンク3およびサイクロン集塵機12間は加減圧配管14を介して接続され、サイクロン集塵機12およびブロワ10の吸引口間は吸引配管16を介して接続され、ブロワ10の吐出口および集塵機11間は吐出配管17を介して接続されている。
【0026】
加減圧配管14には、後述する加圧配管18との接続部よりもレシーバタンク3側に位置して開閉弁141が、サイクロン集塵機12側に位置して開閉弁142がそれぞれ配設されている。また、サイクロン集塵機12の集塵箱とレシーバタンク3間はサイクロン回収配管24を介して接続されている。サイクロン回収配管24には開閉弁241が配設されている。
【0027】
吸引配管16には、開閉弁161が配設されており、この吸引配管16の上下流両側には、フィルタ配管19の両端部が接続されている。このフィルタ配管19には、サイクロン集塵機12側から順に開閉弁191、バグフィルタ15、開閉弁192が配設されている。また、吸引配管16には、フィルタ配管19との接続部(開閉弁192側の接続部)よりブロワ10側で開閉弁163が配設された吸引配管162が接続されている。
【0028】
吐出配管17の途中位置には、タンク式セパレータ20が介設されている。吐出配管17と加減圧配管14は、加減圧配管14側から順に開閉弁182、開閉弁181を配設した加圧配管18がタンク式セパレータ20を介して接続されている。また、吐出配管17には、タンク式セパレータ20より集塵タンク13側に位置して開閉弁171が配設され、吐出配管17のタンク式セパレータ20よりブロワ10側と集塵タンク13とはリリーフ配管21で接続されている。リリーフ配管21にはリリーフ弁211が設けられている。
【0029】
圧送手段6Bは、動力取出装置(図示せず。)を介してエンジン動力により駆動されるコンプレッサ25等で構成されている。コンプレッサ25の吐出口は、後述するエア導入配管52およびエゼクタ配管82に、圧縮空気供給配管26を介して接続されている。圧縮空気供給配管26はその途中位置より下流側においてエア導入配管52に接続されるエアレーション用配管26aと、エゼクタ配管82に接続されるエゼクタ用配管26bと、レシーバタンク3に接続される加圧用配管26cとに分岐している。これらの配管26a,26b,26cにはそれぞれ開閉弁261,262,263が設けられている。また、配管26cの開閉弁263よりもレシーバタンク3側には開閉弁264が設けられている。
【0030】
なお、本実施の形態においては、開閉弁142,171,181,182,261,262,263等には手動操作にて開閉される手動式バルブが採用されており、開閉弁141,161,163,191,192,241,264等には後述のスイッチ操作に応じて開閉される電磁パイロット式バルブが採用されているが、上記手動式バルブを電磁パイロット式バルブにしたり、上記電磁パイロット式バルブを手動式バルブにしたりすることは可能である。
【0031】
ところで、図1A〜図1Cに示すように、サブフレーム2’およびレシーバタンク3間には、傾倒シリンダ22が配設され、また、レシーバタンク3および排出ゲート4間には、開閉シリンダ23が配設されており、動力取出装置(図示せず。)を介してエンジン動力により駆動される油圧ポンプ(図示せず。)からの圧油をそれぞれ傾倒シリンダ22および開閉シリンダ23のピストンロッド側油室またはピストン側油室に供給することにより、各シリンダ22,23を伸長作動させ、あるいは、縮退作動させることができる。これにより、傾倒シリンダ22の伸縮作動により、レシーバタンク3を傾動ピン2a回りに傾動、あるいは伏倒させる一方、開閉シリンダ23の伸縮作動により、排出ゲート4をヒンジピン3a回りに回動させてレシーバタンク3の後端開口を開放、あるいは、閉鎖することができる。
【0032】
次に、このように構成された吸引圧送車1の作動について説明する。
まず、粉体などの乾式回収物を回収し、排出する場合は、吸引配管7に吸引パイプ(図示せず。)を接続し、吸引回収物を吸引する位置まで延設する。次いで、開閉弁181,182,161,163,261,262,263,264を閉鎖するとともに、開閉弁141,142,171,191,192を開放してブロワ10を駆動すれば、その吸引口が、加減圧配管14、サイクロン集塵機12、バグフィルタ15を通してレシーバタンク3に連通し、吐出口が吐出配管17、集塵機11を経て大気に連通する。
【0033】
これにより、ブロワ10は、レシーバタンク3内の空気を吸引して大気に排出することから、レシーバタンク3内を負圧化することができる。レシーバタンク3の圧力が一定以下に低下すれば、開閉弁71を開放することにより、乾式回収物が吸引パイプおよび吸引配管7を通してレシーバタンク3に吸引回収される。この際、加減圧配管14を通してレシーバタンク3内に回収した乾式回収物の一部がブロワ10側に吸引されるが、その乾式回収物は、サイクロン集塵機12およびバグフィルタ15によって捕集される。
【0034】
また、セメント工場のサイロからレシーバタンク3のハッチ27を開放することにより乾式回収物(セメント)を重力で収容することもできる。
【0035】
このようにして、レシーバタンク3に乾式回収物が順次吸引回収され、一定量に達したならば、乾式回収物の吸引回収作業を停止して走行状態に復帰させる。そして、吸引圧送車1を排出地まで移動させ、回収物排出配管8に圧送パイプ(図示せず。)を接続し、排出位置まで延設した後、傾倒シリンダ22を伸長作動させ、レシーバタンク3を傾動ピン2a回りに傾動させる。
【0036】
次いで、開閉弁163,261,262,263,264を開放する。これにより、コンプレッサ25の吐出口は、圧縮空気供給配管26、エアレーション用配管26a、エア導入配管52を通してキャンバスによって区画されたエア室に連通する。また、このコンプレッサ25の吐出口は、圧縮空気供給配管26、エゼクタ用配管26b、回収物排出配管8に設けられたエゼクタ配管82(図2参照。)を通して回収物排出配管8に連通する。さらに、このコンプレッサ25の吐出口は、圧縮空気供給配管26、加圧用配管26cを通してレシーバタンク3に連通する。
【0037】
これにより、コンプレッサ25を駆動すれば、圧縮空気供給配管26、エアレーション用配管26a、エア導入配管52を通してキャンバスによって区画されたエア室に加圧空気を供給することから、キャンバス上に流下した乾式回収物は、キャンバスを通して供給される加圧空気によって流動化する。また、コンプレッサ25は、外気を吸引し、圧縮空気供給配管26、加圧用配管26cを通してレシーバタンク3に加圧空気を供給する。この状態で、回収物排出配管8の開閉弁81を開放すれば、流動化した乾式回収物は、回収物排出配管8および圧送パイプを経てサイロなどの排出位置まで圧送される。
【0038】
この際、回収物排出配管8に設けられたエゼクタ配管82(図2参照。)に加圧空気が供給されることによって、エゼクタ効果により回収物排出配管8および圧送パイプ内の乾式回収物の排出が促進される。
【0039】
一方、汚泥などの湿式回収物を回収し、排出する場合には、吸引配管7に吸引パイプ(図示せず。)を接続し、吸引回収物を吸引する位置まで延設する。この状態で、開閉弁163,181,182,191,192,261,262,263,264を閉鎖するとともに、開閉弁141,142,161,171を開放してブロワ10を駆動すれば、加減圧配管14を通してレシーバタンク3の空気が吸引され、その内部が負圧に維持される。その後、開閉弁71を開放すれば、湿式回収物は、吸引パイプおよび吸引配管7を通してレシーバタンク3に吸引回収される。
【0040】
なお、加減圧配管14を通してレシーバタンク3に回収された湿式回収物の一部がブロワ10側に吸引されるが、その湿式回収物は、サイクロン集塵機12によって捕集される。
【0041】
このようにして、レシーバタンク3に湿式回収物が吸引回収され、一定量に達したならば、湿式回収物の吸引回収作業を停止して走行状態に復帰させる。そして、吸引圧送車1を排出地まで移動させた後、開閉弁81を配設して排出ゲート4に連結された回収物排出配管8(図2参照。)に圧送パイプ(図示せず。)を接続し、排出位置まで延設する。
【0042】
次いで、開閉弁142,171,191,192,261,262,263,264を閉鎖するとともに、開閉弁161,163,181,182を開放してブロワ10を駆動すれば、ブロワ10は、吸引配管162、吸引配管16を通して空気を吸引し、吐出配管17、タンク式セパレータ20、加圧配管18、加減圧配管14を通してレシーバタンク3に加圧空気を供給する。これにより、レシーバタンク3が加圧される。この状態で、回収物排出配管8の開閉弁81を開放すれば、レシーバタンク3に吸引回収された湿式回収物は、回収物排出配管8および圧送パイプを経て排出位置まで圧送される。
【0043】
また、開閉シリンダ23を伸長作動させ、排出ゲート4をヒンジピン3a回りに上方に回動させてレシーバタンク3の後端開口を開放させた後、傾倒シリンダ22を伸長作動させ、レシーバタンク3を傾動ピン2a回りに後方に傾動させることにより、湿式回収物を重力排出することもできる。
【0044】
なお、本実施形態における吸引圧送車1では、レシーバタンク3の後方開口部を開閉する排出ゲート4の第2の凹溝44にパッキン45の基部47が嵌合されて保持されており、排出ゲート4を閉じているときには、このパッキン45の頭部46が変形して対面側のシール面に密着し、レシーバタンク3の開口部を密閉している。この状態においてパッキン45の頭部46は、基部47側の一部が第1の凹溝43内にある。
【0045】
そのため、前述のようにレシーバタンク3内を加圧した際に、パッキン45は、まず基部47よりも幅広の頭部46が第1の凹溝43の内壁面43bに拘束されて変形が抑えられるので、この第1の凹溝43の中の第2の凹溝44内に嵌合されている基部47の変形が防止される。これにより、加圧によってパッキン45が押し出されることが防止され、加圧状態を保つことが可能となっている。
【0046】
また、本実施形態における吸引圧送車1では、パッキン45が、基部47の第2の凹溝44の側壁面44aに当接する面に凸部47aが形成されているので、第2の凹溝44にパッキン45の基部47が嵌合された際に、基部47の凸部47aが変形して第2の凹溝44の側壁面44aに密着し、基部47が第2の凹溝44の側壁面44aから押圧されて保持される。これにより、本実施形態における吸引圧送車1では、さらに基部47が第2の凹溝44から引き抜かれることが防止されており、加圧状態を維持できる。
【0047】
特に、本実施形態における吸引圧送車1では、凸部47aが2カ所以上形成されたパッキン45を使用しているため、基部47の凸部47aが変形して第2の凹溝44の側壁面44aに密着する際に、2カ所以上でパッキン45の基部47が第2の凹溝44の側壁面44aから押圧され、基部47の全体がより安定して保持される。したがって、本実施形態における吸引圧送車1では、さらに基部47が第2の凹溝44から引き抜かれることが防止されており、加圧状態を維持できる。
【0048】
また、本実施形態における吸引圧送車1では、凸部47aが、第2の凹溝44の奥に向かって幅狭となるテーパ面47bを有しているので、このパッキン45を取り付ける際には、凸部47aのテーパ面47bに沿って基部47が変形するので、パッキン45の基部47を第2の凹溝44内へ挿入しやすく、作業性が向上している。また、第2の凹溝44内に挿入された基部47は、引き抜く方向に対しては変形しにくくなるので、さらに基部47が第2の凹溝44から引き抜かれることが防止されており、加圧状態を維持できる。
【0049】
なお、本実施形態においては、排出ゲート4側に凹溝43,44およびパッキン45を設ける構成であるが、これらはレシーバタンク3の後端開口部側に設ける構成とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、汚泥、泥砂、石炭、灰やセメントなどの回収対象物を、負圧を利用して吸引、排出する吸引圧送車または吸引圧送装置におけるレシーバタンクのシール構造およびこれに用いられるシール部材として有用である。
【符号の説明】
【0051】
1 吸引圧送車
2 車体
2’ サブフレーム
3 レシーバタンク
4 排出ゲート
41 チャンバ
42 フランジ
43 第1の凹溝
43a 底面
43b 内壁面
44 第2の凹溝
44a 側壁面
45 パッキン
46 頭部
46a 先端面
46b 下端面
47 基部
47a 凸部
47b テーパ面
5 排出ゲート
6A 吸引加圧手段
6B 圧送手段
7 吸引配管
8 回収物排出配管
10 ブロワ
11 集塵機
12 サイクロン集塵機
13 集塵タンク
15 バグフィルタ
22 傾倒シリンダ
23 開閉シリンダ
25 コンプレッサ
27 ハッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負圧および加圧を利用して吸引対象物を吸引、排出するレシーバタンクと、
前記レシーバタンクの開口部を開閉する排出ゲートと
を有する吸引圧送車または吸引圧送装置における前記排出ゲートのシール構造であって、
前記レシーバタンクの開口部または前記排出ゲートに形成された第1の凹溝と、
前記第1の凹溝の中に前記第1の凹溝よりも幅狭に形成された第2の凹溝と、
前記第2の凹溝に嵌合される基部と、前記基部に接続され、前記基部よりも幅広かつ前記第1の凹溝よりも幅狭に形成された頭部とから構成されるシール部材と
を含むシール構造。
【請求項2】
前記シール部材は、前記基部の前記第2の凹溝の側壁面に当接する面に凸部が形成されたものである請求項1記載のシール構造。
【請求項3】
前記シール部材は、前記凸部が2カ所以上形成されたものである請求項2記載のシール構造。
【請求項4】
前記凸部は、前記第2の凹溝の奥に向かって幅狭となるテーパ面を有するものである請求項2または3に記載のシール構造。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−190349(P2010−190349A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36779(P2009−36779)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】