説明

吸引機器の先端構造、および当該先端構造を具備する吸引用アダプター並びに吸引式洗浄ガン

【課題】加圧エアーの吐出位置を変更できるようにし、従前の吸引式のクリーナーでは除去できないような溝や穴に入り込んだ塵埃、切削屑、又は切削油等であっても、これを効果的に吸引して除去できるようにした吸引機器の先端構造、および当該先端構造を具備する吸引用アダプター並びに吸引式洗浄ガンを提供すること。
【解決手段】 吸引構造を具備する掃除機や加圧エアーを利用したクリーナー等の吸引機器における吸引部分先端の吸引構造であって、筒状に構成されている吸引部分の先端側に開口する吸引口と、当該吸引口内又はその近傍に配設されて、前記吸引口の鉛直投影面内に流体を吐出する噴射ノズルとを具備し、当該噴射ノズルの先端部分は、前記吸引部分の吸引口よりも突出可能な程度に進退自在に設けられている吸引部分先端の吸引構造とし、これを備えた吸引用アダプターおよび吸引式洗浄ガンとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械装置や製品、部品の製造や清掃等で使用する吸引機器の先端構造、および当該先端構造を具備する吸引用アダプター並びに吸引式洗浄ガンに関し、特に吸引場所・地点の形状、構造、大きさ、深さに合わせて効果的に吸引することができるようにした吸引機器の先端構造、および当該先端構造を具備する吸引用アダプター並びに吸引式洗浄ガンに関する。
【背景技術】
【0002】
各種工作機械によって加工され完成に至るまでの部品には複雑な形状で凹凸部や取付用穴やネジ穴を有する物が殆どである。そしてタップ(工具)によりネジ切り工程を行う前に、前工程で加工した下穴に蓄積した切削屑を工具破損防止の為に除去する必要があり、工場内に配されたコンプレッサーの圧縮空気を利用しエアーガンで吹き飛ばす方法が一般に広く用いられている。その他にも、機械の溝掃除、治具切粉吸引、又は建築物その他の構造体の穿孔時に孔内に残存する切削屑を除去するための手段としてエアーガンが使用される。かかるエアーガンを用いたクリーニング方法では、ガンのノズルを局所に向けて噴射し除去する事により部品に不要な傷をつける事無く複雑で精密な部品類でも塵埃や切削屑を除去出来るという利点があった。
【0003】
しかしながら、圧縮空気の噴射によって除去された切削屑、切削油等が加工部品の形状(特に止りネジ下穴等の場合)により周囲への跳ね返りが発生し、作業者の方向にも飛散するため、衝立、保護眼鏡等を必要とするものとなっていた。また、飛散した切削屑、切削油等が前に清掃した切削穴に入り込んでしまい、再度、清掃しなければならず作業上も非効率なものとなっていた。
【0004】
そこで従前においては、特許文献1(実開平7−31157号公報)の「従来の技術及びその問題点」欄に示されているように、圧搾エアーを後端側に噴射することによるエゼクタ作用により、先端側において吸引作用が得る事が提案されていた。しかしながら、このようなエアーガンでは、バルブの開閉により吸引、噴射のいずれか一方のみしか行うことができず不便であったことから、同特許文献1では、一端に吸引口、他端に排気口を有する吸引通路を備え、該吸引通路の途中には、先端が前記排気口側に臨み、基端側が第1バルブを介して圧搾エアー導入通路に連通する噴射ノズルが接続され、前記圧搾エアー導入通路には、第2バルブを介して、先端に噴射口を有する噴射通路に連通する分岐通路が設けられたエアーガンを提案している。
【0005】
また特許文献2(特開平8−275912号公報)では、通常のクリーナー(真空掃除機)としても、付着塵埃を吹き飛ばして清掃する目的にも使用できる、比較的軽くて小形な噴射機能付きクリーナーとして、通常のクリーナーに、結合、切断の何れの状態にも任意に切り替えられる2個のクラッチを介して、上記クリーナーの駆動用電動機で空気圧縮機をも駆動可能とし、上記空気圧縮機により吸気フィルタを通して吸引した清浄な空気を圧縮してノズルから噴射させ、器具に付着した塵埃を吹き飛ばして清掃する噴射機能を付加した噴射機能付きクリーナーが提案されている。そしてこのクリーナーでは、クリーナーの吸引用ファンと空気圧縮機の双方を同時に動かすこともできるものとなっている。
【0006】
更に特許文献3(特開平10−43699号公報)では、除塵用のクリーナーに於て、凹凸等のある複雑な立体形状の物体に付着した塵を局部的に除去できるクリーナーとして、先端部にて開口するエアー吸入口と、先端側から見て該エアー吸入口の中央部に位置するように配設される超音波エアー噴出ノズルと、該超音波エアー噴出ノズルへのエアー送り状態と停止状態とに切換え可能なスイッチ機構とを有するペンシル型クリーナーヘッドを備え、該クリーナーヘッドに、上記エアー吸入口に連通する可撓バキューム管と、上記超音波エアー噴出ノズルに連通する可撓エアー供給管を連結し、さらに上記クリーナーヘッドのエアー吸入口から常時エアーを吸入するように構成したクリーナーが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平7−31157号公報
【特許文献2】特開平8−275912号公報
【特許文献3】特開平10−43699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の通り、従前においても加圧エアーを利用し、そのエゼクタ作用(流体の流れる向きに周囲の流体が引き込まれる事により発生する吸引作用)を利用して塵埃、切削屑、又は切削油等を吸引するクリーナーは公知であり、またクリーナーの吸引用ファンと空気圧縮機の双方を同時に動かすことのできるクリーナーも提案されている。
【0009】
しかしながら、従来提供されているクリーナーでは、吸引力が限られているだけでなく、加圧エアーを吐出する位置が固定されており、溝や穴の形状、大きさ、或いは深さに応じて、当該加圧エアーの吐出位置を変更することができなかった。
【0010】
そこで本発明は、加圧エアーの吐出位置を変更できるようにし、従前の吸引式のクリーナーでは除去できないような溝や穴に入り込んだ塵埃、切削屑、又は切削油等であっても、これを効果的に吸引して除去できるようにした吸引機器の先端構造、および当該先端構造を具備する吸引用アダプター並びに吸引式洗浄ガンを提供することを第1の課題とする。
【0011】
そしてかかる第1の課題を前提とした上で、その操作性を向上させることも必要である。より具体的には、塵埃、切削屑、又は切削油等を吸引除去する穴や溝は、必ずしも同じ深さに形成されているとは限らないことから、クリーニング操作中においても、その吸引具合に応じて加圧エアーの突出を調整し、最適なクリーニング効果を得られるようにすることが望ましい。そこで本発明は、前記第1の課題を解決すると共に、更に操作性を向上させた吸引機器の先端構造、および当該先端構造を具備する吸引用アダプター並びに吸引式洗浄ガンを提供することを第2の課題とする。
【0012】
更に、前記特許文献2で提案されているクリーナーは、吸引用ファンと空気圧縮機の双方を同時に動かすことができるものとなっているが、その請求項2に記載されている通り、空気噴射ノズルは広い底面を開口部としたクリーナー用の円錐形吸引部の中心を通り上記円錐底面開口部に達することから、吸引できる物の大きさは円錐形吸引部開口径の半分以下の大きさが限界となっている。
【0013】
そこで本発明は、吸引部分の内径程度の大きさの物でも吸引可能にした吸引機器の先端構造、および当該先端構造を具備する吸引用アダプター並びに吸引式洗浄ガンを提供することを第3の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題の少なくとも何れかを解決するため、本発明では、吸引式のクリーナーの吸引領域に対して加圧エアー等の流体を吐出するノズルを、進退自在に設けることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0015】
即ち本発明にかかる吸引機器の先端構造は、吸引構造を具備する掃除機や加圧エアーを利用したクリーナー等の吸引機器における吸引部分先端の吸引構造であって、筒状に構成されている吸引部分の先端側に開口する吸引口と、当該吸引口内又はその近傍に配設されて、前記吸引口の鉛直投影面内に流体を吐出する噴射ノズルとを具備し、当該噴射ノズルの先端部分は、前記吸引部分の吸引口よりも突出可能な程度に進退自在に設けられていることを特徴とする。
【0016】
かかる吸引機器の先端構造によれば、クリーニングする溝や穴の深さ、或いは大きさに応じて、前記噴射ノズルを溝又は穴内に侵入させ、当該噴射ノズルから吐出される流体によって、溝又は穴内に入り込んだ塵埃、切削屑又は切削油等を吐き出させ、これを吸引部分の吸引口で吸い込むことができる。即ち、穴や溝の深さや大きさに応じて噴射ノズルの(溝や穴内への)進入具合を調整することができ、これによりクリーニング対象となる溝や穴に応じた、塵埃、切削屑又は切削油等を吐き出させるための最適なエアーを含む流体の流れを生じさせることができ、クリーニング効果を向上させることができる。
【0017】
上記本発明の吸引機器の先端構造において、噴射ノズルは、少なくとも吸引部分の吸引口よりも突出可能な程度に進退自在であれば良く、吸引機器において筒状に形成された吸引部分の内側に設置する他、当該吸引部分の外側に配置することもでき、更に当該吸引部分を構成する壁面内に配置することもできる。
【0018】
噴射ノズルを吸引部分の内側に設置する場合には、噴射ノズルを吸引部分の中心に配置することもできるが、望ましくは、当該噴射ノズルは、前記吸引部分の軸芯に対して偏心した位置、更に望ましくは吸引部分の内壁面に沿う位置に、進退自在に設ける。噴射ノズルを吸引部分内に偏芯させて配置することにより、当該吸引部分の水平断面径程の大きさのもの迄であれば吸引することが可能になる為である。よって、例えば吸引される対象が専ら粉状物、液体などの様に流動性の高いものの場合には、この噴射ノズルは吸引部分の中央に配置されていても良い。
【0019】
そして本発明において、前記噴射ノズルは、吸引口の鉛直投影面内に流体を吐出するものであり、かつ進退自在に配置されるものであることから、当該噴射ノズルに対して流体を供給する手段が必要になる。かかる流体を供給する手段として、本発明では管状部材を使用することが望ましい。
【0020】
即ち、前記噴射ノズルは流体を案内する管状部材の先端に設置されており、前記筒状に構成されている吸引部分には、その壁面内に管状部材を軸方向にスライド自在に収容するガイド孔が形成されている「吸引部分先端の吸引構造」とすることが望ましい。
【0021】
この噴射ノズルが設置される管状部材は、少なくとも流体を吐出した際に、その反作用で変形したりブレたり揺動することの無い程度の強度乃至は定型性を備えていることが望ましい。その為には、例えば金属製の管として形成する他、これと同程度の硬さを有する樹脂製の管で構成することができる。なお、この管状部材は、その一部が柔軟性を有する樹脂製のチューブで形成されていても良いが、少なくとも吸引部分の吸引口よりも突出する領域は、金属製または十分な硬さを有する樹脂製の管(即ち硬質の管)で構成されるのが望ましい。但し溝や穴の形状或いは溝や穴の開口する向きによっては、当該溝や穴に沿って任意に変形させた方が望ましい場合もある。よって、このように溝や穴の形状などに沿って変形させる場合には、樹脂などを用いて適宜柔軟性を有する管として形成することも可能である。なお、この管の硬さについては、吐出する加圧エアーの量や流速に応じて適宜変更することもできる。
【0022】
また、この噴射ノズルは、吸引口の鉛直投影面内に流体を吐出するものであることから、少なくとも流体を吐出するための開口を備える。この吸引口の鉛直投影面内とは、吸引口の開口面をクリーニング対象物に投影した領域のことであり、前記噴射ノズルは、当該領域の少なくとも何れかの部分に、噴射の向きを問わず加圧エアーを供給する様に構成される。
【0023】
この流体を吐出するための開口は、噴射ノズルの先端側に設けられ、噴射ノズルの軸方向に吐出させる向きの開口を形成する他、当該噴射ノズルの放射方向に吐出させる向きの開口を形成することもできる。更に、当該噴射ノズルの放射方向斜め後方に向かって、或いは当該噴射の放射方向斜め前方に向かって流体を吐出させる向きの開口を形成することもできる。かかる流体を吐出するための開口の向きは、溝又は穴内において重点的にクリーニングする部分が何れの部位か、或いは除去する物の容積や質量によって適宜選定することができる。例えば溝又は穴の底面に蓄積した塵埃や切削屑などを除去する場合には、管の軸方向に吐出させる向きの開口とすることができ、一方で溝又は穴の側面に付着した塵埃や切削屑などを除去する場合には、管の放射方向に吐出させる向きの開口とすることができる。
【0024】
更に当該流体を吐出するための開口を備える噴射ノズルは、複数の形状・構造のものを用意し、管状部材に対して適宜着脱自在に構成することもできる。この場合、当該噴射ノズルは、管状に形成された管状部材と、この管状部材の先端に着脱自在に形成された噴射ノズルとで構成することができ、前記流体を吐出するための開口は、この噴射ノズルに形成することができる。
【0025】
なお、上記噴射ノズルと管状部材とは必ずしも2つの部材を組み合わせたものだけに限らず、例えば管状部材の先端側を加工して噴射ノズルとしたものも含まれ、また噴射ノズルの末端側を延長させて、この延長させた部分を管状部材としたものも含まれる。即ちこれらの技術は本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0026】
上記本発明において、噴射ノズルから吸引口の鉛直投影面内(即ち吸引口の先端側)に向けて流体を吐出する流体は、多くの場合はコンプレッサーなどから供給される空気であるが、必ずしも此れに限定されるものではなく、例えば窒素やヘリウム等の不活性ガスであっても良く、また防爆などの処置を施した上で、水素や酸素、或いはプロパンガスなどの活性ガスであっても良い。更に当該流体は必ずしも気体である必要は無く、例えば水や各種洗浄液、或いはアルコールその他の炭化水素油などの液体であったり、これら液体をミスト状にしたものであっても良い。
【0027】
また上記吸引構造が採用される吸引機器は、必ずしも吸引構造を具備する掃除機や加圧エアーのエゼクタ効果を利用したクリーナー等に限られるものではなく、気体、液体又は固体を吸引するために使用される各種の機械器具における吸引部分の構造として採用することができ、当該機械器具は家庭用であるか産業用であるかを問わず実施することができる。
【0028】
次に、本発明では上記の吸引機器の先端構造に関連するものとして、当該先端構造を具備する吸引用アダプターを提供し、当該吸引用アダプターにより前記課題の少なくとも何れかを解決する。
【0029】
即ち、本発明では、筒状に形成された吸引筒の軸方向一端側に吸引口、他端側に排出口を形成すると共に、当該吸引筒の吸引口に形成される吸引部分は、上記本発明の吸引構造を具備しており、当該吸引構造における噴射ノズルには、加圧エアーその他の加圧流体を供給するラインと接続可能な加圧ライン接続手段が形成されていることを特徴とする吸引用アダプターも提供する。
【0030】
かかる吸引用アダプターは、加圧エアーを供給するエアーガンなどに取り付けて使用することができ、エアーガンから供給された加圧エアーを、加圧ライン接続手段から噴射ノズルに導入することで、当該噴射ノズルは溝や穴内に加圧エアーを吐出させることができる。そして加圧エアーで吐き出された塵埃や切削屑あるいは切削油などは、吸引口の吸引部分で吸い取られ、排出口から排出することができる。ここで、吸引口における吸引力は、吸引筒内において、加圧エアーを排出側開口に向けて吐出させることにより、そのエゼクタ作用(流体の流れる向きに周囲の流体が引き込まれる事により発生する吸引作用)を利用して塵埃、切削屑、又は切削油等を吸引する吸引力を得ることができる。その他にも、排出側開口から掃除機などにより吸引することで吸引力を得ることもできる。
【0031】
特に、当該吸引用アダプターがエアーガンその他の加圧エアーを供給可能な加圧エアー供給器具に繋げて使用される吸引用のアダプターである場合には、その吸引口に存在する吸引部分は、上記した本発明の吸引構造を具備し、当該吸引構造における噴射ノズルには、加圧エアー供給器具から加圧エアーが供給されて、その先端からエアーを吐出させる吸引用アダプターとすることができる。
【0032】
この吸引用アダプターを使用することにより、エアーガンを始めとする加圧ガスを吐出させる各種のエアーツール単体で、或いはエアーツールと吸引式の掃除機とを組み合わせて使用することにより、狭いか或いは深い溝や穴においても、効率的にクリーニングを行うことが可能になる。
【0033】
そして本発明では、前記吸引機器の先端構造に関連する発明として、従前におけるエアーガンを用いて構成されて、エアーガンから供給される加圧エアーを噴射ノズルから吐出させることで、深いか或いは狭い溝や穴に入り込んだ塵埃、切削屑、又は切削油等を吐き出させることのできる吸引式洗浄ガンを提供し、前記課題の少なくとも何れかを解決する。
【0034】
即ち、本発明では、加圧エアーが導入されて此れを先端から吐出させる流体路を具備するエアーガン本体と、当該エアーガン本体の先端側に接続される吸引筒とからなり、当該吸引筒の先端側に存在する吸引部分は、本発明にかかる吸引構造を具備し、エアーガン本体に導入された加圧エアーは、少なくとも吸引構造を構成する噴射ノズルに供給されて、その先端からエアーを吐出させることを特徴とする吸引式洗浄ガンも提供する。
【0035】
かかる吸引式洗浄ガンでは、エアーガン本体から供給される加圧エアーが噴射ノズルに案内され、当該噴射ノズルは洗浄対象となる溝内又は穴内に進入可能に形成されていることから、加圧エアーの噴出により空気の流れを生じさせ、この溝内又は穴内に入り込んでいる塵埃や切削屑、或いは切削油と言った異物を効率的に吐き出させることができる。そして吐き出された異物は、エアーガンから分岐して吸引筒内に供給される加圧エアーのエゼクタ効果による吸引、或いは別途準備された掃除機その他の吸引装置による吸引によって吸引・排出されることになる。
【0036】
上記の吸引式洗浄ガンにおいて、エアーガン本体と吸引筒との構成は、例えば以下のように構成することができる。
即ち、グリップの先端適宜角度姿勢に一体化してなる吸引筒の先端側に、その先端側方向に向けて気体を噴射可能とする噴射ノズルを偏芯配置し、当該グリップの基端から該噴射ノズルに渡る管路の中途適所に同グリップを把持した手指で操作可能となる外壁に操作入力部を露出するよう噴射スイッチを配した圧縮気回路を内蔵すると共に、該圧縮気回路の噴射スイッチと噴射ノズルとの間適所から分岐した負圧誘導回路の末端を、当該吸引筒内の、該噴射ノズルとは反対側方向(即ち吸引筒末端側)に向けて開口するよう設け、後端部前適所にR形状の湾曲形状で進行方向を変更する流路を設けてあるものとすることができる。
【0037】
また、噴射ノズルがその基端部に共通の着脱機構の一部を設けた少なくとも2個準備し、各噴射ノズルは互いのノズルの長さを、長、短の関係とするよう設定することもできる。
【0038】
また、噴射ノズルが、その基端部に着脱機構の一部を設け、吸引筒先端側の着脱機構部に装着した場合に、同噴射ノズルの先端が、該吸引筒先端から突出配置するよう固定されていても良い。また、噴射ノズルが、その基端部に着脱機構の一部を設け、吸引筒先端側の着脱機構部に装着した場合に、同噴射ノズルの先端が、該吸引筒先端より奥側に後退配置するよう固定されても良い。
【0039】
また、吸引筒先端部に、吸引口部のサイズを広くし、且つ全体の長さを長く設けた広口タイプの吸引ノズル、及び同ノズルに適合する長いタイプの噴射ノズルを装着可能としても良い。
【発明の効果】
【0040】
上記本発明にかかる吸引部分先端の吸引構造によれば、吸引口の先端側に向けて加圧エアーなどの流体を吐出する噴射ノズルが進退自在に設けられていることから、深い溝や穴、或いは開口が狭い溝や穴内にも当該噴射ノズルを進入させることができる。そしてこの噴射ノズルから加圧エアーを噴射乃至は吐出させる事により、溝や穴内に空気の流れを生じさせ、溝や穴内の塵埃、切削屑或いは切削油などの異物を吐き出させることができる。溝や穴内の異物が吐き出されることから、吸引口が溝や穴内に入り込めない場合でも、確実に異物を吸い込み・除去することができる。
【0041】
よって本発明により、加圧エアーの吐出位置を変更できるようにし、従前の吸引式のクリーナーでは除去できないような溝や穴に入り込んだ塵埃、切削屑、又は切削油等であっても、これを効果的に吸引して除去できるようにした吸引機器の先端構造、および当該先端構造を具備する吸引用アダプター並びに吸引式洗浄ガンが提供される。
【0042】
また、この噴射ノズルを管状に形成することにより、当該管の抜き差し動作により、溝や穴に対する加圧エアーの噴出し又は吐出位置を自在に調整することができ、操作性が向上することになる。よって本発明では、塵埃、切削屑、又は切削油等を吸引除去する穴や溝が同じ深さに形成されていない場合であっても、クリーニング操作中においても、その吸引具合に応じて加圧エアーの突出を調整し、最適なクリーニング効果を得られるようにした吸引機器の先端構造、および当該先端構造を具備する吸引用アダプター並びに吸引式洗浄ガンを提供することができる。
【0043】
更に噴射ノズルを吸引部分の軸芯に対して偏心した位置に、進退自在に設けた場合には、塵埃、切削屑又は切削油等の異物を吸引するための空間を最大限に大きくすることができ、これにより吸引部分の内径程度の大きさの物でも吸引可能にした吸引機器の先端構造、および当該先端構造を具備する吸引用アダプター並びに吸引式洗浄ガンを提供することができる。
【0044】
そして噴射ノズルを管状に形成し、筒状に構成されている吸引部分の壁面内に管状の噴射ノズルを軸方向にスライド自在に収容するガイド孔を形成した場合には、当該噴射ノズルから噴射する流体の反作用、或いは吸引部分における吸引力によっても、当該噴射ノズルがブレたり揺動したりすることが無く、安定して目的の場所に進入させることができる。更に、吸引される異物が噴射ノズルに引っかかって詰まらせる虞をなくして、メンテナンスしやすい吸引機器の先端構造、および当該先端構造を具備する吸引用アダプター並びに吸引式洗浄ガンを提供することができる。

【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本実施の形態にかかる吸引用アダプターを設置した吸引式洗浄ガンを示す斜視図
【図2】図1に示した吸引式洗浄ガンの要部縦断面略図
【図3】図2におおけるA−A’断面図
【図4】噴射ノズルのいくつかの実施の形態を示す断面図
【図5】吸引機器の先端構造によるクリーニング作用を示す略図
【図6】関連する他の実施の形態にかかる吸引用アダプターを設置した吸引式洗浄ガンを示す斜視図
【図7】図6に示した吸引式洗浄ガンの要部縦断面略図
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、図面を参照しながら、本発明にかかる吸引機器の先端構造10、および当該先端構造10を具備する吸引用アダプター20並びに吸引式洗浄ガン30の具体的な1つの実施形態を説明する。
【0047】
図1は、本実施の形態にかかる吸引用アダプター20を設置した吸引式洗浄ガン30を示す斜視図であり、当該吸引用アダプター20の吸引部分には本実施の形態にかかる先端構造10が採用されている。図2は図1に示した吸引式洗浄ガン30の要部縦断面略図であり、図3はこの図2におおけるA−A’断面図であり、図4は、噴射ノズル22のいくつかの実施の形態を示す断面図であり、図5は、この実施の形態にかかる吸引機器の先端構造10によるクリーニング作用を示す略図である。そして図6は、関連する他の実施の形態にかかる吸引用アダプター20を設置した吸引式洗浄ガン30を示す斜視図であり、図7は図6に示した吸引式洗浄ガン30の要部縦断面略図である。
【0048】
先ず、図1を参照しながら、本実施の形態にかかる吸引式洗浄ガン30と、これは図示しないエアーコンプレッサー等から加圧エアーが導入されるエアーガン本体31と、このエアーガン本体31の先端に連結された吸引用アダプター20で構成されている。両者は着脱自在に連結する他、溶接や接着などによって一体化しておくことも可能である。
【0049】
次に、図1及び2を参照しながら、この吸引式洗浄ガン30の内部構造を含む全体構造を説明する。なお、以下において本実施の形態にかかる吸引用アダプター20は、当該吸引式洗浄ガン30におけるエアーガン本体31をのぞいた部分であり、また吸引部分先端の吸引構造10は、この吸引式洗浄ガン30における吸引筒21先端部分の構成であり、何れも吸引式洗浄ガン30の説明から明らかであるので、以下にあわせて説明する。
【0050】
図1ではその内部構造を省略しているが、この吸引式洗浄ガン30には、図2に示す様に、エアーコンプレッサー等から供給された加圧エアーを導く流路34が設けられており、当該流路34はこのエアーガン本体31の適所、本実施の形態では下面に形成されたトリガー33を操作することにより開閉する事が可能である。そしてこの流路34から供給される加圧エアーは、エアーガン本体31の上面から出ている柔軟性を有するチューブ32に導かれ、このチューブ32が吸引用アダプター20の上方に差し込まれていることから、当該加圧エアーはチューブ32によって吸引用アダプター20に供給される。
【0051】
吸引用アダプター20は、湾曲させたエルボー部分21Rを有する筒状に形成された吸引筒21を具備し、その下端側を吸引口23とすると共に、末端側を排出口24として構成されている。そして吸引筒21の末端側に形成される排出口24には、掃除機などの適宜吸引装置を接続することができ、当該吸引装置の吸引によって、吸引口23には吸引力が生じ、当該吸引口23の周囲に存在する塵埃やごみ、或いは切削屑や切削油などを吸引することができる。
【0052】
またこの吸引筒21は、そのエルボー部分21Rから吸引口23に向かう周面に沿って延伸する管状部材25と、当該管状部材25の先端に設けられた噴射ノズル22を備えている。この管状部材25には前記したチューブ32が連結されており、エアーガン本体31に供給された加圧エアーは、トリガー33の操作によりチューブ32、管状部材25を通って、噴射ノズル22から噴出されることになる。
【0053】
噴射ノズル22から噴射される加圧エアーは、吸引口23の先端側から吸引口23の鉛直投影面内に加圧ガスを噴出させ、これが溝や穴等に入り込んだ異物を吹き出す。吹き出された異物は吸引装置による吸引により吸引口23から吸い込まれ、排出口24から排出されることになる。
【0054】
特に本実施の形態において、管状部材25は吸引筒21の壁面内に、その軸方向に摺動自在に収容されており、当該吸引筒21の壁面には、この管状部材25を収容するガイド孔26が形成されている。そしてこのガイド孔26を通った管状部材25の先端には、噴射ノズル22が設置されており、このような構成により、管状部材25の上端側、即ちチューブ32との連結側を保持して上下動させることにより、その先端に存在する噴射ノズル22は、吸引筒21における下端側である吸引部分の吸引口23よりも突出する程度に進退自在となっている。
【0055】
本実施の形態において、この噴射ノズル22はガイド孔26の内径よりもわずかに大きい外径で形成されている。このように形成することにより、加圧ガスの噴射により管状部材25が押し上げられたとしても、当該噴射ノズル22がストッパーとして機能し、当該管状部材25が抜け出てしまう虞をなくしている。
【0056】
また、吸引筒21の壁面内に形成されるガイド孔26は、本実施の形態では図3に示す様に、ガイド孔26が形成される部分を吸引筒21内に突起させた形状となっており、これにより異物を吸引するときの流露を最大限に大きく形成している。なお、管状部材25は必ずしも吸引筒21内にガイド孔26を形成してこの中を通す必要は無く、例えば吸引筒21の内部空間27を通るように配置しても良い。この場合でも、当該管状部材25の上下動の操作部を設ける必要があり、例えば前述のように、その末端側を吸引筒21の外部に突出させておくことができる。また、吸引筒21内に管状部材25を露出させて配置する場合であっても、より大きな異物でも吸引できるように、当該管状部材25は吸引筒21内における内壁面に沿うように(偏芯させて)配置されることが望ましい。
【0057】
上記噴射ノズル22に関し、図4を参照しながら、前記管状部材25の先端に取り付けることのできる噴射ノズル22の実施の形態を説明する。この図4に示した噴射ノズル22は、図面上方に形成された段状に内径を大きくした部分に管状部材25を内嵌するように形成されており、先端側には複数の開口28が設けられており、この開口28から加圧エアーが噴射される。特に図4(A)は、噴射ノズル22の軸方向に向かって加圧エアーを噴射する開口28を備えており、図4(B)は、噴射ノズル22の軸方向及び放射方向に向かって加圧エアーを噴射する開口28を備えており、図4(C)は、噴射ノズル22の軸方向及び放射方向の末端側に向かって加圧エアーを噴射する開口28を備えており、図4(D)は、噴射ノズル22の軸方向及び放射方向の先端側に向かって加圧エアーを噴射する開口28を備えている。これらのノズルは、クリーニングする溝や孔の形状、或いは除去する異物の存在箇所に応じて、適宜変更して使用することができる。
【0058】
次に、上記のように構成された吸引式洗浄ガン30の動作について図5を参照しながら説明する。先ず、クリーニング対象となる溝又は孔がそれ程深くない図5(A)に示すような状態においては、排出口24からの吸引機械器具による吸引である程度の異物を吸い込むことができる。しかし溝又は穴内に付着してしまい、吸引だけでは吸い込むことのできない異物については、噴射ノズル22からの加圧エアーの噴射によって吐き出させ、此れを吸引口23から吸引することで溝又は穴内を十分にクリーニングすることができる。
【0059】
そしてかかるクリーニング動作において、吸引口23では溝又は穴内のみならず、当該溝又は穴の周囲の空気も吸い込んでいることから、溝又は穴内から吐き出された異物が吸引口23の外側に吐き出されて撒き散らすことは無く、全て吸引筒21内に吸い込まれることになる。その結果、周囲を2次汚染することなく、十分なクリーニングを行うことができる。
【0060】
一方、図5(B)に示す様に、溝又は穴が深く、吸引口での吸引による吸引力では底部の異物を持上げることができない場合もある。そこでこのような場合には、管状部材25を操作して噴射ノズル22を溝又は穴内に差し込みながら加圧エアーを噴射させ、当該溝又は穴内に気流を生じさせることで異物を舞い立たせ、これを吸引口23から吸い込むことができる。特に切削屑や塵埃などは、常に底部だけに存在するとは限らず、当該溝又は穴内に堆積していることも多い。このような場合は、管状部材25を徐々に差し込みながら吸引を行うことにより、堆積した異物の表面から徐々に吸い込み・除去することができる。
【0061】
そして、この実施の形態にかかる吸引式洗浄ガン30では、噴射ノズル22を溝又は穴内に進退自在に設けておくことで、吸引筒21における吸引口23とクリーニングする溝又は穴の口部分との距離を一定に保っておくことができる。これにより、溝又は穴の周囲から巻き込んで吸引する空気の量を一定に保つことができ、安定した吸引を行うことができる。この点、仮に吸引ノズルを固定した場合には、この吸引口23とクリーニングするあ溝又は穴の口部分との距離も変化してしまい、安定した吸引が困難になってしまう。
【0062】
次に、図6及び7を参照しながら、他の実施の形態にかかる吸引式洗浄ガン30と、此れに採用することのできる吸引用アダプター20の例を説明する。
【0063】
先ずこの実施の形態に示す吸引式洗浄ガン30(および吸引用アダプター20)は、加圧ガスを供給することによるエゼクタ効果を利用して吸引力を発生させるように構成されており、その為の構成が吸引筒21内に構成されている点が、前記図1や2に示した吸引式洗浄ガン30(および吸引用アダプター20)とは異なっている。
【0064】
即ち、この実施の形態にかかる吸引式洗浄ガン30(および吸引用アダプター20)は、吸引筒21におけるエルボー部分21Rよりも先端側(吸引口側)に、半径方向外側に向かって膨らんだ膨出部40が形成されており、この膨出部40内には、図7に示すような加圧エアーが案内される流路41が形成されている。この流路41は膨出部40内を一周するように設けられており、当該流路41に、吸引筒21の末端側(即ちエルボー部側)に向かって加圧エアーを噴射させる向きのエゼクタ側開口42が、その1箇所又は2箇所以上に設けられている。
【0065】
このように形成された吸引式洗浄ガン30において、トリガー33の操作により加圧エアーが膨出部40内の流路41に供給されると、これがエゼクタ側開口42から吸引筒21内に噴射され、そのエゼクタ効果によって吸引口23には吸引ガスによる吸引力が発生することになる。また噴射ノズル22にも加圧エアーが供給されることから、加圧エアーによって噴射および吸引を実現する吸引式洗浄ガン30(および吸引用アダプター20)が提供される。
【0066】
なお、この膨出部40内に形成された流路41内に供給される加圧エアーは、本実施の形態では噴射ノズル22に供給する加圧エアーを分岐させて使用しているが、噴射ノズル22とは別系統で供給される加圧エアーを供給することも可能である。また、このように形成した吸引式洗浄ガン30(および吸引用アダプター20)であっても、排出口24から別途吸引装置で吸引することももちろん可能である。
【0067】
特に、この実施の形態に示した吸引式洗浄ガン30(および吸引用アダプター20)では、エゼクタ効果を生じさせるエゼクタ側開口42は、吸引筒21の壁面に形成されており、エゼクタにおける駆動ガスの供給を行う流路41は、吸引筒21の外側に設けている。このように形成することで、吸引筒21内にはエゼクタのための突起物が存在せず、よってより大きな異物でも吸引することが可能になっている。
【0068】
尚、本発明の吸引機器の先端構造10、および当該先端構造10を具備する吸引用アダプター20並びに吸引式洗浄ガン30は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0069】
10 先端構造(吸引構造)
20 吸引用アダプター
21 吸引筒
21R エルボー部分
22 噴射ノズル
23 吸引口
24 排出口
25 管状部材
26 ガイド孔
27 内部空間
28 開口
30 吸引式洗浄ガン
31 エアーガン本体
32 チューブ
33 トリガー
34 流路
40 膨出部
41 流路
42 エゼクタ側開口




【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引構造を具備する掃除機や加圧エアーを利用したクリーナー等の吸引機器における吸引部分先端の吸引構造であって、
筒状に構成されている吸引部分の先端側に開口する吸引口と、
当該吸引口内又はその近傍に配設されて、前記吸引口の鉛直投影面内に流体を吐出する噴射ノズルとを具備し、
当該噴射ノズルの先端部分は、前記吸引部分の吸引口よりも突出可能な程度に進退自在に設けられていることを特徴とする、吸引部分先端の吸引構造。
【請求項2】
前記噴射ノズルは、前記吸引部分の軸芯に対して偏心した位置に、進退自在に設けられている請求項1に記載の吸引部分先端の吸引構造。
【請求項3】
前記噴射ノズルは流体を案内する管状部材の先端に設置されており、
前記筒状に構成されている吸引部分には、その壁面内に管状部材を軸方向にスライド自在に収容するガイド孔が形成されている請求項1又は2に記載の吸引部分先端の吸引構造。
【請求項4】
筒状に形成された吸引筒の軸方向一端側に吸引口、他端側に排出口を形成すると共に、
当該吸引筒の吸引口に形成される吸引部分は、請求項1〜3の何れか一項に記載の吸引構造を具備しており、
当該吸引構造における噴射ノズルには、加圧エアーその他の加圧流体を供給するラインと接続可能な加圧ライン接続手段が形成されていることを特徴とする吸引用アダプター。
【請求項5】
加圧エアーが導入されて此れを先端から吐出させる流体路を具備するエアーガン本体と、
当該エアーガン本体の先端側に接続される吸引筒とからなり、
当該吸引筒の先端側に存在する吸引部分は、請求項1〜3の何れか一項に記載の吸引構造を具備し、
エアーガン本体に導入された加圧エアーは、少なくとも吸引構造を構成する噴射ノズルに供給されて、その先端からエアーを吐出させることを特徴とする吸引式洗浄ガン。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−96214(P2012−96214A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248799(P2010−248799)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(502180277)株式会社深瀬 (2)
【Fターム(参考)】