説明

吸引装置及びその制御方法

【課題】容器内に蓄積した吸引物の量に応じて、自動的に吸引を停止し、装置の信頼性の向上を図ると共に、利用者の利便性の向上を図ることができる吸引装置を提供すること。
【解決手段】一端に吸引口が形成された吸引管路11と、この吸引管路に吸引力を付勢する吸引ポンプ2と、吸引管路上に設けられ吸引口から吸引した吸引物を蓄積する容器3と、この容器と吸引ポンプとの間を外気に開放する開放弁5と、容器内に蓄積される吸引物の量を計測する吸引物量計測手段31と、この吸引物量計測手段による計測結果に応じて吸引ポンプ2の吸引動作を停止すると共に開放弁5を開放するよう制御する吸引停止制御手段8と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸引装置にかかり、特に、液体を吸引する吸引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
手術時や診察時、処置時などに、患者の人体から血液や痰などの体液を吸引するために、吸引装置が用いられる。このような医療用に用いられる吸引装置は、一端に吸引口が形成された吸引管路と、吸引管路に吸引力を付勢する吸引ポンプと、吸引管路上に設けられ吸引物を蓄積する容器と、を備えている。かかる構成にて、吸引ポンプから吸引管路に吸引力を付勢することで、吸引口から人体の痰などの吸引物を吸引することができる。このとき、吸引管路上に設けられた容器との連結口は、当該容器の上方(例えば、蓋部)に形成されているため、吸引された吸引物は吸引管路上の容器に到達すると、連結口から容器内の底に自重で落下する。これにより、吸引物を容器に蓄積することができると共に、吸引物が吸引ポンプ側に流入することを抑制することができる。
【0003】
このような吸引装置においては、吸引ポンプの停止時には、吸引管路及び容器内が負圧に保たれるため、吸引ポンプの再起動に時間がかかるといった問題や、吸引口に依然として吸引力が付勢された状態となり、また、容器内に溜まった吸引物がポンプ側に流入する、という問題が生じうる。かかる問題を解消すべく、特許文献1では、吸引管路に大気圧開放弁を設けている。そして、この大気圧開放弁を吸引ポンプの停止と同時に開くよう制御することで、ポンプの停止時に吸引管路が負圧になることを抑制でき、迅速な再起動を実現し、また、吸引力の残存を抑制している。また、かかる構成において、吸引ポンプによる吸引を一時的に停止する場合には、吸引ポンプを駆動したまま吸引管路に設けた大気圧開放弁を開放し、当該吸引管路内をほぼ大気圧に戻して吸引を停止し、再び吸引を開始する場合には、上記大気圧開放弁を閉じることで迅速な起動を行うことができる。また、特許文献2には、吸引中の患者が咳やくしゃみなどの大きな体動を起こすと、容器内が負圧になって当該容器内の封水が逆流するという不都合に備え、容器内の負圧を抑制するための電磁弁を設けている。そして、特に、容器内の圧力あるいは水位に応じて、電磁弁を制御している。
【0004】
【特許文献1】特開2004−49704号公報
【特許文献2】特開2002−65843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上述した構成の吸引装置では、容器に吸引物が多量に溜まってくると、容器内の吸引物が吸引管路との連結口に達し、吸引物自体が吸引ポンプ側に流入するおそれが生じうる。これに対しては、吸引を行う看護者等が吸引物の量を監視していなければならず、自動的に吸引を停止するために注意が必要であり、利用者の利便性が低下しうる、という問題があった。なお、上述した特許文献2の技術では、容器内の封水の水位を計測しているだけであるため、当該容器内に蓄積した吸引物の蓄積量に応じて吸引停止といった処理を実現することができない。また、特許文献2では、封水の水位に応じて容器内の圧力を計測し、これに応じて吸引ポンプを停止せずに吸引圧や電磁弁の開閉を制御して容器内が過剰に負圧になることを抑制しているが、依然として吸引が継続されているため、吸引口から吸引が実行されたり、吸引物が吸引ポンプ側に流入する可能性が生じ、装置の信頼性、及び、利用者の利便性の向上を図ることができない、という問題が生じる。
【0006】
このため、本発明では、容器内に蓄積した吸引物の量に応じて、自動的に、吸引を停止し、装置の信頼性の向上を図ると共に、利用者の利便性の向上を図ることができる吸引装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明の一形態である吸引装置は、一端に吸引口が形成された吸引管路と、この吸引管路に吸引力を付勢する吸引ポンプと、吸引管路上に設けられ吸引口から吸引した吸引物を蓄積する容器と、この容器と吸引ポンプとの間を外気に開放する開放弁と、容器内に蓄積される吸引物の量を計測する吸引物量計測手段と、この吸引物量計測手段による計測結果に応じて吸引ポンプの吸引動作を停止すると共に開放弁を開放するよう制御する吸引停止制御手段と、を備えた、という構成を採っている。
【0008】
上記発明によると、まず、吸引ポンプによる吸引を開始して吸引口から吸引物を吸引すると、当該吸引物は吸引管路上に設けた容器内に蓄積され、吸引を継続することで吸引物の蓄積量が増加する。このとき、吸引物計測手段が容器内の吸引物の蓄積量を計測し、この計測結果に応じて、例えば、吸引物量が予め定められた量に達すると、吸引停止制御手段が、吸引ポンプの吸引動作を停止するよう制御すると同時に、吸引管路上に設けられた開放弁を開放する。これにより、吸引物量に応じて自動的に吸引動作が停止すると共に、容器及び吸引管路が外気に開放させるため、当該容器内や吸引管路内の負圧状態が継続することを防止でき、吸引の継続及び吸引物が吸引ポンプ側に流入することを抑制することができる。従って、装置の信頼性の向上を図ると共に、利用者の利便性の向上を図ることができる。
【0009】
そして、本発明では、上記吸引物量計測手段は、容器内に蓄積された吸引物の液面と共に上昇する上昇手段と、この上昇手段の上昇状態を計測することにより容器内の吸引物の量を計測する上昇計測手段と、を備えた、という構成を採る。また、本発明では、上記上昇手段は、容器内に蓄積された吸引物の液面付近に浮かぶフロートであり、上昇計測手段は、フロートの高さを検出することで容器内の吸引物の量を計測するフロート位置計測手段である、という構成を採る。さらに、本発明では、上記フロートに磁力発生手段を設けると共に、フロート位置計測手段は、フロートに設けられた磁力発生手段からの磁力を検出し当該検出結果に応じてフロートの高さを検出する、という構成を採る。
【0010】
このように、吸引物量計測手段として、吸引物の液面と共に上昇する上昇手段を設けると共に、この上昇手段の上昇状態を計測することで、自動的に容器に蓄積された吸引物の量を計測して、上述したように、吸引ポンプの停止及び開放弁の開放を行う。特に、上昇手段として容器内の吸引物に浮かぶフロートを用い、このフロートに設けられた磁石の磁力を計測することで、フロートの高さを検出して吸引物の量を計測することができる。従って、簡易な構成にて実現できるため、装置の組み付けの容易化、迅速化、さらには、低コスト化を図ることができる。
【0011】
また、本発明では、上記フロート及びフロート位置計測手段を、容器の高さ方向に沿ったほぼ中心線上に位置するよう設けた、という構成を採る。これにより、フロートとフロート位置計測手段とが共に容器の中心部に位置するため、装置の組み付け時の位置合わせが容易となり、これらの位置ずれを抑制して、より確実に吸引物の量を検出することができる。
【0012】
また、本発明では、容器内に、当該容器内に蓄積された吸引物の液面と共に上昇し、所定の高さまで上昇したときに吸引ポンプ側に位置する容器と吸引管路との連結口を塞ぐ閉塞フロートを設けた、という構成を採る。これにより、吸引物の液面の上昇に伴い閉塞フロートが上昇し、吸引ポンプ側に位置する容器と吸引管路との連結口を塞ぐ。これにより、吸引物が吸引ポンプ側に流入することをより有効に抑制することができる。
【0013】
また、本発明の他の形態は、一端に吸引口が形成された吸引管路と、この吸引管路に吸引力を付勢する吸引ポンプと、吸引管路上に設けられ吸引口から吸引した吸引物を蓄積する容器と、この容器と吸引ポンプとの間を外気に開放する開放弁と、を備えた吸引装置を制御する方法であって、容器内に蓄積される吸引物の量を計測し、この計測結果に応じて吸引ポンプの吸引動作を停止すると共に開放弁を開放するよう制御する、という構成を採る。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以上のように構成され機能するので、これによると、吸引して容器に蓄積された吸引物量に応じて、自動的に吸引を停止すると共に、吸引管路を外気に開放するため、吸引停止時に容器内や吸引管路内の負圧状態が維持されること防止でき、吸引の継続、及び、吸引物が吸引ポンプ側に流入することを抑制することができる。その結果、より確実に吸引を停止することができ、装置の信頼性の向上を図ることができると共に、利用者の利便性の向上を図ることができる、という従来にない優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、吸引装置にて、吸引した吸引物の量に応じて、自動的に、かつ、より確実に、吸引を停止すると共に、吸引物が吸引ポンプ側に流入することを抑制する構成に特徴を有する。また、吸引物の量を計測するための構成に特徴を有しており、装置構成の簡素化、低コスト化を図ることができる。
【0016】
以下、本発明の具体的な構成及び動作を、実施例にて説明する。なお、実施例では、手術時や診察時、処置時などに、患者の人体から血液や痰などの体液を吸引するために用いる医療用の吸引装置を一例に挙げて説明するが、医療用に限定されるものではない。つまり、本発明の吸引装置は、いかなる用途に用いられ、いかなる物体を吸引するために用いられてもよい。
【実施例1】
【0017】
本発明の第1の実施例を、図1乃至図6を参照して説明する。図1乃至図3は、吸引装置の構成を示す図であり、図4乃至図6は、吸引装置の動作を示す図である。
【0018】
[構成]
本実施例における吸引装置は、手術時や診察時、処置時などに、患者の人体から血液や痰などの体液を吸引するためのものである。その外観を図1に示す。また、図2及び図3は、吸引装置の構成を示すブロック図である。
【0019】
図1に示すように、本実施例における吸引装置は、まず、複数の筐体パーツが組みつけられることによって略直方体形状に形成された本体部10を備えている。そして、この本体部10の前面に形成された凹部には、吸引物を蓄積する吸引瓶3(容器)と、当該吸引瓶3に吸引管路12にて連結された安全瓶4と、が装備されている。なお、安全瓶4は、吸引瓶3から飛散した水滴等を蓄積し、吸引ポンプ2に流入することを防止するよう機能する。
【0020】
また、吸引管路12は、図2に示すように、吸引瓶3内を介して、当該吸引瓶3の蓋部に形成された連結口11bを通じてさらに延設され(符号11参照)、その端部が吸引口11aを形成している。そして、その反対側では、吸引管路11,12は、安全瓶4内を介して吸引ポンプ2に連結するまで延びる(符号13参照)。さらに、吸引管路11,12,13は、吸引ポンプ2から吸引した気体を外部に排出する管路14にまで延びて形成されている。換言すると、吸引管路11,12,13,14は、一端側に吸引口11aが形成されており、その途中に、吸引瓶3、安全瓶4、吸引ポンプ2、が連結していて、他端側に排出口が形成されている。
【0021】
また、図1には図示しないが、本体部10の内部には、吸引管路11,12,13に吸引力を付勢する吸引ポンプ2を備えている。なお、吸引ポンプ2は、例えば、ダイヤフラムポンプである。そして、この吸引ポンプ2と安全瓶4とを連結する吸引管路13には、当該吸引管路13を外気(大気)に開放する電磁弁5(開放弁)が設けられている。この電磁弁5が開放されると、吸引管路13、安全瓶14、また、これに連結している連結管路12及び吸引瓶3内、さらには、連結管路11が、ほぼ大気圧となる。なお、吸引管路13には、圧力調整弁6及び真空計7も設けられているが、かかる構成は一般的な構成であるため、その詳細な説明は省略する。
【0022】
そして、吸引瓶3は、図1に示すように、内部に吸引物Xを蓄積可能なよう底面を有する円筒状に形成されている。また、吸引瓶3の上方開口部には円板状の蓋部30が設けられており、この蓋部30には、上述した吸引管路11,12との連結口、つまり、吸引口側11aに連結される連結口11bと、安全瓶3及び吸引ポンプ2側に連結される連結口12aと、が設けられている。
【0023】
さらに、蓋部30の中心部の裏面側、つまり、吸引瓶3の内部の上方には、図2に示すように、液体である吸引物Xに対して密度が小さく、吸引物Xの液面付近に浮かぶ第1フロート31が設けられている。そして、この第1フロート31は、吸引瓶3内に蓄積された吸引物Xの液面の上昇に伴って上昇するよう機能する(上昇手段)。なお、第1フロート31は、上述したように蓋部30の裏面側の中心部に設けられているため、吸引物Xの液面付近のほぼ中心に位置して浮かぶよう配設される。
【0024】
そして、第1フロート31は、具体的には、その上方部分の周囲が、上端部及び下端部に対してくびれて形成されている。また、これに対応して、蓋部30の裏面側には、当該蓋部30裏面から吸引瓶3の深さ方向に延びる所定の長さの略筒状のガイド33を有している。このガイド33は、中心に貫通孔を有する底面を有すると共に、内部に空間部を形成している。そして、第1フロート31に形成されたくびれ部分が、上記ガイド33の底面に形成された貫通孔に挿通しており、第1フロート31の上端部が、略円筒状のガイド33内の空間部に収容された状態になる。このとき、第1フロート31のくびれ部分が所定の長さを有しているため、当該くびれ部分がガイド33の貫通孔を往復移動可能となり、第1フロートの上端部がガイド33の空間部に沿って上下動可能となっている。これにより、吸引瓶3内の吸引物Xの量が増えその液面が上昇すると、この液面と共に第1フロート31が上昇することとなるが、ガイド33に沿って第1フロート31の上端部が蓋部30に接近するよう上方に移動する。つまり、ガイド33は第1フロート31の上昇経路を形成しており、その上昇動作の安定化を図っている。また、第1フロート31の上端部には、所定の磁力を発生するマグネット32(磁力発生手段)が設けられている。
【0025】
ここで、吸引瓶3の蓋部30は、その中心部分で、本体部10に回動自在に設けられた吸引瓶押さえ部9にて上方から押さえつけられている(図1参照)。そして、この吸引瓶押さえ部9には、上述した第1フロート31の上端部に設けられたマグネット32に対応して、当該マグネット32の磁力を検出するホール素子や磁気抵抗効果素子などの磁気センサ90が設けられている。つまり、この磁気センサ90は、吸引瓶3の蓋部30が位置する上端付近のほぼ中心に位置するよう設けられている。
【0026】
また、上記磁気センサ90は、マグネット32の磁力の強度を検出して、その検出結果を制御部8に伝達する。従って、磁気センサ90は、検出した磁力の有無や強度等に応じて、後述するように、第1フロートの上昇状態、つまり、第1フロートの高さ方向の位置を検出することができるフロート位置計測手段(上昇計測手段)として機能する。その結果、吸引瓶3に蓄積された吸引物Xの液面高さ、つまり、吸引物Xの量を計測することができる。例えば、磁力が予め設定した値以上であることを検出すると、吸引瓶3内の吸引物Xの液面が所定の高さに達し、吸引物Xの蓄積量が所定の量に達したことを検知ことができる。
【0027】
以上より、マグネット32を備え液面に応じて上昇する第1フロート31と、その上昇状態を検出する磁気センサ90とは、吸引瓶3内の吸引物Xの量を計測する吸引物量計測手段として機能する。
【0028】
ここで、上述したように、磁気センサ90と第1フロート31とは、吸引瓶30の高さ方向に沿ったほぼ中心線上に位置することとなるため、装置の組み付け時の位置合わせが容易となる。つまり、第1フロート31は略円形状の蓋部30の裏面側に設けられているが、蓋部30をどのような向きで装備しても第1フロート31は中心に位置し、また、吸引瓶押さえ部9は蓋部30の中心を上方から押さえるため、当該吸引瓶押さえ部9も中心に位置することとなる。従って、これらの位置ずれを抑制することができ、より確実に吸引物の量を検出することができる。また、上述したように、吸引瓶押さえ部9にて吸引瓶3を上方から押さえて装置を組み付けるため、吸引瓶3や磁気センサ30等の上下方向の位置のばらつきを抑制することができる。さらには、吸引瓶3を上方から押さえる構造であり、着脱時には吸引瓶押さえ部9を回動させればよいため、吸引瓶3の着脱が容易となり、メンテナンスが容易となる。
【0029】
また、吸引瓶31の内部であって、蓋部30に形成された安全瓶4及び吸引ポンプ2側に位置する吸引管路12との連結口12aの裏面側には、図2に示すように、液体である吸引物Xに対して密度が小さく、吸引物Xの液面付近に浮かぶ第2フロート34が設けられている。従って、この第2フロート34は、吸引瓶3内に蓄積された吸引物Xの液面の上昇に伴って上昇するよう機能する。また、これに対応して、蓋部30の裏面側には、当該蓋部30の裏面から吸引瓶3の深さ方向に所定の長さの空間部を有しており、当該空間部の側壁に貫通孔が形成された第2ガイド35が設けられている。そして、この第2ガイド35の空間部に第2フロート34が収容されており、当該第2フロート34は第2ガイド35内を上下移動する。つまり、吸引瓶3内の吸引物Xの量が増え、吸引物Xが第2ガイド35の空間部内に流入し、その液面が上昇すると、吸引物Xの液面と共に第2ガイド35に沿って第2フロート34が上昇し、当該第2フロート34の上端面が連結口12aに当接し、当該連結口12aを塞ぐ。つまり、第2フロート34は、吸引瓶3内に蓄積された吸引物Xの液面と共に上昇し、所定の高さまで上昇したときに、吸引ポンプ2側に位置する吸引管路12との連結口12aを塞ぐよう機能する(閉塞フロート)。
【0030】
また、本体部10の内部には、上述した吸引ポンプ2と電磁弁5の動作を制御する制御部8が設けられている。この制御部8には、所定のプログラムが組み込まれることにより、図3に示すように、センサ検出部81と、ポンプ制御部82と、電磁弁制御部83と、が構築されている。センサ検出部81は、信号線91を介して磁気センサ90にて検出された検出結果を取得する。つまり、第1フロート31が上昇し、当該第1フロート31のマグネット32の磁力が所定の強度となったことを磁気センサ90で検知すると、その旨の情報を取得し、ポンプ制御部82及び電磁弁制御部83(吸引停止制御手段)に通知する。これを受けたポンプ制御部82は、信号線21を介して吸引ポンプ2に対して停止指令を出す。これと同時に、電磁弁制御部83は、信号線51を介して電磁弁5に対して弁を開放する指令を出す。これにより、吸引動作が停止すると共に、電磁弁5が開放される。なお、上記制御は、上述したように作動するリレー等の機器を装備した電気回路にて実現してもよい。
【0031】
[動作]
次に、上記構成の吸引装置による動作を、図4乃至図6を参照して説明する。図4は、吸引動作を示す説明図であり、図5は、吸引停止時の動作を示す説明図である。また、図6は、吸引装置の動作を示すフローチャートである。
【0032】
まず、吸引を開始する際には、オペレータが電源ボタンや吸引開始ボタン等を押下することで(ステップS1)、制御部8から吸引ポンプ2に吸引開始指令が発せられ、吸引ポンプ2が作動する(ステップS2)。このとき、電磁弁5は、後述するように前回の吸引終了時に閉じられていることとする。すると、図4に示すように、吸引ポンプ2からの吸引力が安全瓶4や吸引瓶3を介して吸引管路11,12,13に付勢され、その一端側である吸引口11aに吸引力が発生する(矢印A1,A2,A3)。なお、吸引した気体は、吸引ポンプ2から吸引管路14を介して排気される(矢印A4)。
【0033】
そして、オペレータが吸引口11aを吸引対象物に近づけると、吸引物が吸引口11aから吸引され(矢印B1)、この吸引物は吸引管路11を通り、連結口11bから吸引瓶3内に蓄積される(矢印B2)。すると、しだいに吸引瓶3内の吸引物Xの量が増加し、蓄積された吸引物Xの液面が徐々に増加する(矢印B3)。この液面の上昇に伴い、吸引物Xに浮かぶ第1フロート31の高さが上昇し(矢印B4)、また、第2フロート34も上昇する(矢印B5)。
【0034】
その後、さらに吸引瓶3内の吸引物Xの量が増加し液面高さが上昇すると、図5に示すように、第1フロート31及び第2フロート34が、吸引瓶3の蓋部30に当接、あるいは、近接する。すると、第1フロート31の上端部に設けられたマグネット32から発生している磁力が磁気センサ90にて検出され(矢印C1)、信号線91を介して制御部8にて通知される(矢印C2,C2’)。これを検知した制御部8は(ステップS3:イエス)、信号線21を介して吸引ポンプ2に対し停止指令を発すると共に(矢印C3,C3’)、電磁弁5に対して弁を開く指令を発する(矢印C4,C4’)(ステップS4)。
【0035】
以上より、吸引物Xの量が一定量に達すると、このことが自動的に検知され、吸引動作が停止すると共に、電磁弁5が開き、吸引管路11,12,13や吸引瓶3、安全瓶4が外気に開放させる。その結果、吸引管路11,12,13内や吸引瓶3等が負圧状態のままになること防止でき、吸引口11aからの吸引を確実に停止すると共に、吸引瓶3内に蓄積された吸引物Xが吸引ポンプ2側に流入することを防止することができる。従って、装置の信頼性の向上を図ることができると共に、利用者の利便性の向上を図ることができる。そして、吸引物Xの量の検出を、上述したように第1フロート31とマグネット32及び磁気センサ90を用いるといった簡易な構成にて実現できるため、装置の組み付けの容易化、迅速化、さらには、低コスト化を図ることができる。
【0036】
また、吸引瓶3内の吸引物Xの液面の上昇に伴い、第2フロート34も上昇し、吸引ポンプ2側に位置する吸引瓶3と吸引管路12との連結口12aを塞ぐ。これにより、より確実に、吸引瓶3から吸引物Xが吸引ポンプに流入することを抑制することができ、さらなる装置の信頼性の向上を図ることができる。
【0037】
なお、上述したように吸引ポンプ2の停止後は、オペレータが吸引装置の電源を切ることで(ステップS5)、電磁弁5が閉じ(ステップS6)、次回の吸引に備える。
【0038】
ここで、上記では、吸引瓶3に蓄積された吸引物Xの量を検出する手段として、第1フロート31に埋め込んだマグネットと、磁気センサとを用いた場合を例示したが、吸引物Xの液面の高さや吸引物Xの蓄積量を検出する構成であれば、いかなる構成であってもよい。但し、上述したように、磁気センサを用いることで、電気的に非接触にて検出することができるため、感電等の不都合の発生を防止することができ、装置の信頼性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明における吸引装置は、手術時や診察時、処置時などに、患者の人体から血液や痰などの体液を吸引する医療用の吸引装置、あるいは、その他の用途の吸引装置として利用することができ、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】吸引装置の構成を示す外観図である。
【図2】吸引装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図2に開示した制御部の構成を示す機能ブロック図である。
【図4】吸引装置の動作を示す説明図であり、吸引時の動作を示す図である。
【図5】吸引装置の動作を示す説明図であり、吸引停止時の動作を示す図である。
【図6】吸引装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0041】
11,12,13,14 吸引管路
11a 吸引口
11b,12a 連結口
2 吸引ポンプ
3 吸引瓶
30 蓋部
31 第1フロート
32 マグネット
33 ガイド
34 第2フロート
35 第2ガイド
4 安全瓶
5 電磁弁
6 圧力調整弁
7 真空計
8 制御部
81 センサ検出部
82 ポンプ制御部
83 電磁弁制御部
9 吸引瓶押さえ部
90 磁気センサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に吸引口が形成された吸引管路と、この吸引管路に吸引力を付勢する吸引ポンプと、前記吸引管路上に設けられ前記吸引口から吸引した吸引物を蓄積する容器と、この容器と前記吸引ポンプとの間を外気に開放する開放弁と、前記容器内に蓄積される吸引物の量を計測する吸引物量計測手段と、この吸引物量計測手段による計測結果に応じて前記吸引ポンプの吸引動作を停止すると共に前記開放弁を開放するよう制御する吸引停止制御手段と、
を備えたことを特徴とする吸引装置。
【請求項2】
前記吸引物量計測手段は、前記容器内に蓄積された吸引物の液面と共に上昇する上昇手段と、この上昇手段の上昇状態を計測することにより前記容器内の吸引物の量を計測する上昇計測手段と、を備えた、
ことを特徴とする請求項1記載の吸引装置。
【請求項3】
前記上昇手段は、前記容器内に蓄積された吸引物の液面付近に浮かぶフロートであり、
前記上昇計測手段は、前記フロートの高さを検出することで前記容器内の吸引物の量を計測するフロート位置計測手段である、
ことを特徴とする請求項2記載の吸引装置。
【請求項4】
前記フロートに磁力発生手段を設けると共に、
前記フロート位置計測手段は、前記フロートに設けられた前記磁力発生手段からの磁力を検出し当該検出結果に応じて前記フロートの高さを検出する、
ことを特徴とする請求項3記載の吸引装置。
【請求項5】
前記フロート及び前記フロート位置計測手段を、前記容器の高さ方向に沿ったほぼ中心線上に位置するよう設けた、
ことを特徴とする請求項4記載の吸引装置。
【請求項6】
前記容器内に、当該容器内に蓄積された吸引物の液面と共に上昇し、所定の高さまで上昇したときに前記吸引ポンプ側に位置する容器と前記吸引管路との連結口を塞ぐ閉塞フロートを設けた、
ことを特徴とする請求項1,2,3,4又は5記載の吸引装置。
【請求項7】
一端に吸引口が形成された吸引管路と、この吸引管路に吸引力を付勢する吸引ポンプと、前記吸引管路上に設けられ前記吸引口から吸引した吸引物を蓄積する容器と、この容器と前記吸引ポンプとの間を外気に開放する開放弁と、を備えた吸引装置の制御方法であって、
前記容器内に蓄積される吸引物の量を計測し、この計測結果に応じて前記吸引ポンプの吸引動作を停止すると共に前記開放弁を開放するよう制御する、
ことを特徴とする吸引装置の制御方法。


【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【公開番号】特開2009−66182(P2009−66182A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237575(P2007−237575)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(596170103)株式会社興伸工業 (3)
【Fターム(参考)】