説明

吸引装置及びコネクタ

【課題】コネクタに、吸引開孔に供給するための液体源に接続し得るよう構成し、また第2のポートを使用しないときにこの第2のポートを閉鎖する閉止部を設けた吸引装置を提供する。
【解決手段】気管チューブは、その患者側端部の近傍における封止カフと、およびこのカフの直上における吸引口を有する。吸引口は、管腔から、コネクタ10で終端する吸引ライン9に接続する。コネクタ10の一方の端を先細形状とし、吸引源に接続するためのポート20を有する。コネクタ10は、さらに、サイドポート17を有し、このサイドポート17はシリンジの鼻状部を挿入して吸引口から洗浄液を噴出させ、分泌物を剥がし易くすることができるようにする。使用しないときは、サイドポート17は、弁によって、または2個のポート20および17を密閉するための形状部24および25を有する閉鎖キャップ21によって、閉鎖する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸引開孔、およびこの吸引開孔に一方の端部が連通するように接続した吸引ラインを有する医療外科装置を備えた吸引装置であって、前記吸引ラインの反対側における他方の端部にコネクタを設け、このコネクタは、前記吸引ラインに沿って延在する孔に開口する第1ポートを有し、この第1のポートを吸引源に接続し得るよう構成した該吸引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、分泌物、洗浄液、血液、又は他の体液の蓄積を除去することなど、吸引が必要な様々な医療処置がある。1つの例としては、カフより上方で気管に溜まる分泌物を除去することが望ましい場合の、カフ付気管チューブがある。そのような気管チューブにおいては、吸引ルーメン(管腔)をチューブ壁内に押出成形し、この吸引ルーメン(管腔)を、カフの直ぐ上方で患者側端部に向かう開孔から開口させることができる。吸引ルーメンは、他方の端部に向けて、吸引源に接続できるコネクタで終端する小径の孔に接続する。そのような吸引ルーメンを持つ気管チューブの一例としては、特許文献1(米国特許第5,201,310号)に記載されているものがある。
【特許文献1】米国特許第5,201,310号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
場合によっては、分泌物を除去し易くするために生理食塩水などの洗浄液を吸引ルーメンから導入することが必要となる。
現在、このことは、吸引ラインにおける装置側端部の接続部(コネクタ)を吸引回路から分離し、その代わりに洗浄液を収容するシリンジを接続部(コネクタ)に接続することで行っている。しかし、洗浄液を投与する必要がある度毎に吸引回路を遮断しなければならないことは望ましくない、すなわちこれには時間がかかり、吸引チューブからの分泌物の非衛生的な流出を引き起こす可能性があり、また感染のリスクを増大させる可能性があるからである。吸引ライン使用して、吸引用通路をなすとともに、他の液体をも投与する様々な他の医療機器が存在する。
【0004】
本発明の目的は、従来のものに代替し得る吸引装置及びコネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの態様によれば、上述の種類の吸引装置を提供し、本発明吸引装置は、吸引開孔に供給するための液体源に接続し得るよう構成し、また前記コネクタには、前記第2のポートを使用しないときにこの第2のポートを閉鎖する閉止部を設けたことを特徴とする。
【0006】
医療外科装置は気管チューブのようなチューブとすることができる。液体は洗浄液とすることができ、供給源は第2のポートに挿入するよう構成した鼻状部を有するシリンジとすることができる。閉止部はバルブまたは着脱可能な閉鎖キャップとすることができる。キャップはコネクタにストラップ連結することができ、第1及び第2のポートを閉鎖するための個別の形状部を有することができる。
【0007】
本発明の他の態様によれば、本発明の1つの態様に従った吸引装置のためのコネクタを提供する。
【0008】
本発明による気管内チューブとしての吸引装置の実施例を、以下に図面につき説明する。
【実施例1】
【0009】
まず図1〜図4につき説明すると、気管内チューブは湾曲したシャフト1を有し、このシャフト1は、角度の付いた患者側端部2および反対側の装置側端部3を有する。膨張可能な封止カフ4を患者側端部2に近接してシャフト1に取り付け、この封止カフはシャフトの内側湾曲部に沿ってシャフト壁内に押出成形で形成した膨張用ルーメン(管腔)5によって膨張又は収縮させる。小径孔を有する膨張用ライン6を、気管内チューブに沿った中間点付近で膨張用ルーメン5の開口部に取り付ける。気管内チューブは、さらに、シャフト1の壁内に押出成形で形成した吸引/洗浄用ルーメン(管腔)7を有し、この吸引/洗浄用ルーメン7は、シャフトの外側湾曲部に沿って延びて存在(延在)する。吸引/洗浄用ルーメン7は、カフ4の上方端部、すなわち装置側端部に近接してシャフト1の外側面に形成した開孔8に開口する。吸引/洗浄用ルーメン7は、気管内チューブの長さの中感点付近において小径孔を有する吸引/洗浄用ライン9の一方の端部に接続する。吸引/洗浄用ライン9は柔軟なチューブであり、他方の遊端において新規な接続部またはコネクタ10で終端させる。
【0010】
コネクタ10は、比較的硬質のプラスチック材料からライン9の端部の周囲に成形する。コネクタ10は、装置側端部部分11を有し、この装置側端部部分11は円形断面形状であり、装置側端部から患者側端部に向かって直径が増加する数個のテーパ付きの歯12を形成する。これらの歯は、コネクタの端部に押し込む弾性チューブコネクタ13(図3参照)のためのグリップ力を生ずるよう作用する。コネクタ10の患者側端部部分14はその外表面がほぼ滑らかであり、またコネクタの軸線に対して約45゜の角度で傾斜しており装置側端部に指向する、平坦面16を一方の側で生ずるくさび状の突起15を有する。平坦面16は横孔18(図4参照)に開口するポートをなす円形開孔17を有し、この横孔18は、コネクタ10に沿って吸引ライン9からコネクタの装置側端部11まで延在し、吸引ポート20に開口する、軸孔19に連通する。
【0011】
コネクタ10は、さらに、ライン9がコネクタに合流する位置において、ライン9に対して回転可能に取り付けるカラー22を一方の端部に有する、2ポイントで成形したプラスチック製のキャップ21の形式とした閉止部を有する。可撓性のストラップ23をカラー22から突出させ、反対側の端部にはコネクタ10の装置側端部11に装着して吸引ポート20を封止するよう構成した雌形閉止部24を形成する。ストラップ23には、さらに、その中間点付近に第2のポート17内に封止可能に嵌合し得る雄形閉止部25を設ける。図2はポート17および20の双方を開放するようにキャップ21を外した状態を示す。図4はポート17および20の双方を閉鎖するようキャップ21を取り付けた状態を示す。
【0012】
通常の使用では、主吸引ライン30をコネクタ10の装置側端部11に接続し、第2のポート17をキャップ21によって閉鎖し、吸引のために、洗浄ポートを経る吸引圧損失がないようにする。カフ4の上に集積する分泌物は開孔8、ルーメン7、吸引ライン9、コネクタ10、及び主吸引ライン30を経て除去される。気管に洗浄液、例えば生理食塩水を供給する必要があるときには、吸引を停止させるが主吸引ライン30はコネクタ10に接続したままにする。キャップ21を第2のポート17から引き抜き、洗浄液を収容するシリンジ32の鼻状部31を洗浄ポート17に封止係合するよう押し込む。シリンジ32のプランジャ33を押圧し、シリンジからコネクタ10を経てライン9に、またそれによって気管内チューブとカフ4上方の気管の間における空間に液体を注入する。つぎに、吸引を作動させ、カフ4の上方の分泌物および他の液体を吸引することができる。シリンジ32は接続したままとすることができ、必要ならば洗浄液の更なる容量を投与することができ、またはシリンジをコネクタ10から外し、開孔17をキャップ21により再び閉鎖することもできる。
【実施例2】
【0013】
洗浄ポートを封止するキャップを用いる代わりに、図5および図6に示した変更したコネクタにおけるような、弁を使用することができる。図1〜図4に示したコネクタのものと等しい特徴部分には、同じ参照符号に100を加えて示す。コネクタ110は、一体キャップ121と一体に成形した単一ピースである。コネクタ110の患者側端部114は、吸引/洗浄ライン109の後部に短い長さにわたりオーバーモールドする。このオーバーモールドした患者側端部部分には、環状のリブ136および溝137を形成して、コネクタの主要部分より撓み易くし、それによってコネクタに近い所で吸引洗浄ラインが屈曲された場合に吸引洗浄ラインの急激な屈曲及びねじれを防ぐひずみ逃がし部として作用させる。洗浄ポート117は半径方向外方に指向させ、横孔118には、簡単な一方向弁140、例えば常閉ではあるが、シリンジ132のプランジャ133を押圧するときに増大する液体圧力により開放する嘴状バルブを設ける。このコネクタ110は吸引源からコネクタが外されたときに吸引ポート120を閉鎖するための単独の閉鎖キャップ121を有する。しかし、図1〜図4に示したコネクタのように、コネクタは洗浄中も吸引源に連結したままでよいことは、理解されるであろう。
【0014】
吸引源を洗浄のために停止させるとき、吸引源に向かう方向の流れ抵抗は、開いた吸引口へ向かう方向の流れ抵抗よりもわずかにのみ高いため、吸引源の方向へも洗浄液は流れる。これは図5および図6に示したコネクタ、及び図1〜図4に示したコネクタの双方に当てはまる。所望なら、吸引源に向かう方向の更なる水流を減少させるために主吸引ライン30を洗浄中にクランプすることができる。
【0015】
コネクタに液体を供給することを可能にし、その一方でシリンジまたは他の液体源が接続されていないときの吸引圧の漏れを防ぐ、様々な他の弁を使用することができる。例えば、このような弁は、シリンジの鼻状部または他の接続具との接触により押圧されて開き、シリンジを外したときに閉じるような種類のものとすることができる。
【実施例3】
【0016】
図7に示すコネクタ210は、吸引ポート217がシリンジ232の鼻状部231の挿入によって自動的に閉鎖されるよう構成する。この特定の構成においては、コネクタ210はフラップ弁240を有し、このフラップ弁240は、洗浄ポート220の中にシリンジ232が挿入された時にシリンジ232の突起231によって押し下げられ、吸引ポート217と吸引/洗浄ルーメン207との間の通路を塞ぐようにする。
【0017】
代案として、吸引/洗浄ルーメンが洗浄源または吸引源に接続できるるように、コネクタに三方止めコックを組み込むことができる。
【0018】
本発明のコネクタは、極めてコンパクトで安価な装置となり、洗浄液または他の液体供給がし易く、吸引管を外すまたは追加の洗浄ラインを使用する必要性を回避することができる。本発明は、とくに気管内チューブまたは気管切開チューブのカフ上方における吸引と洗浄に適するものであるが、吸引と断続的な洗浄を行う必要がある他の医療機器においても適用できることは理解されるであろう。本発明は洗浄液の使用に限定されず、抗菌の液体、鎮痛又は麻酔の液体、潤滑剤、またはそれと同類のもののような他の液体を導入するのに使用することが出来る。液体源はシリンジである必要はなく、様々な他の型式、例えば吊り下げた液体バッグからのチューブおよびコネクタを経る重力送りとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】気管内チューブの側面図である。
【図2】吸引ラインの装置側端部およびコネクタを示し、キャップを開放した状態のコ拡大斜視図である。
【図3】吸引ライン及び洗浄シリンジを取り付けた状態を示すコネクタの側面図である。
【図4】キャップを閉鎖した状態を示すコネクタの一部断面とする側面図である。
【図5】洗浄シリンジを接続した状態を示す他のコネクタの斜視図である。
【図6】シリンジがなく、吸引ポートを閉鎖した状態を示す図5のコネクタの断面図である。
【図7】他の実施例によるコネクタの断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 シャフト
2 患者側端部
3 装置側端部
4 封止カフ
5 膨張用ルーメン(管腔)
6 膨張用ライン
7 吸引/洗浄用ルーメン(管腔)
8 吸引開孔
9 吸引/洗浄用ライン
10 コネクタ
11 装置側端部部分
12 テーパ付きの歯
13 弾性チューブコネクタ
14 患者側端部部分
15 くさび状の突起
16 平坦面
17 開孔
18 横孔
19 軸孔
20 吸引ポート
21 キャップ21
22 カラー
23 ストラップ
24 雌形閉止部
25 雄形閉止部
30 主吸引ライン
31 鼻状部
32 シリンジ
33 プランジャ
109 吸引/洗浄ライン
110 コネクタ
117 洗浄ポート
118 横孔
120 吸引ポート
121 閉鎖キャップ
132 シリンジ
133 プランジャ
136 環状のリブ
137 環状の溝
140 一方向弁
207 吸引/洗浄ルーメン
210 コネクタ
217 吸引ポート
231 鼻状部
232 シリンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引開孔(8)、およびこの吸引開孔に一方の端部が連通するように接続した吸引ライン(7,9)を有する医療外科装置(1)を備えた吸引装置であって、前記吸引ライン(7,9)の反対側における他方の端部にコネクタ(10)を設け、このコネクタ(10)は、前記吸引ライン(7,9)に沿って延在する孔に開口する第1ポート(20)を有し、この第1のポート(20)を吸引源に接続し得るよう構成した該吸引装置において、前記コネクタ(10)には、前記吸引ラインに沿う前記孔に同様に開口する第2のポート(17)を設け、この第2のポート(17)は、前記吸引開孔(8)に供給するための液体源(32)に接続し得るよう構成し、また前記コネクタ(10)には、前記第2のポート(17)を使用しないときにこの第2のポート(17)を閉鎖する閉止部(21,140,240)を設けたことを特徴とする吸引装置。
【請求項2】
医療外科装置をチューブ(1)としたことを特徴とする、請求項1記載の吸引装置。
【請求項3】
チューブを気管チューブ(1)としたことを特徴とする、請求項2記載の吸引装置。
【請求項4】
液体を洗浄液としたことを特徴とする、請求項1〜3のうちいずれか一項記載の吸引装置。
【請求項5】
前記液体源を、第2のポート(17)に挿入できるように構成した 鼻状部(31)を有するシリンジ(32)としたことを特徴とする、請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の吸引装置。
【請求項6】
前記閉止部を弁(140,240)としたことを特徴とする、請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の吸引装置。
【請求項7】
前記閉止部を着脱可能な閉鎖キャップ(21)としたことを特徴とする、請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の吸引装置。
【請求項8】
前記キャップ(21)を前記コネクタ(10)にストラップ連結したことを特徴とする、請求項7に従った吸引装置。
【請求項9】
前記キャップ(21)は、第1及び第2のポート(20および17)を閉鎖するための個別の形状部(24および25)を有するものとしたことを特徴とする、請求項7または8に従った吸引装置。
【請求項10】
請求項1〜9のうちいずれか一項に記載の装置のためのコネクタ(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−161672(P2008−161672A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−303650(P2007−303650)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(501038551)スミスズ グループ ピーエルシー (26)
【氏名又は名称原語表記】SMITHS GROUP PLC
【Fターム(参考)】