説明

吸気ダクトのドレンバルブ

【課題】 簡略化した構造によって排液孔を介して液体を容易に排出でき、排液孔を介して液体が浸入することを確実に防止できる吸気ダクトのドレンバルブを提供すること。
【解決手段】 吸気ダクト10は、エンジン側に接続されるダクト基端部11と、基端部11の外周面に一体的に組み付けられるダクト先端部12と、基端部11と先端部12を連結するダクト連結部13とから構成される。そして、低位となるダクト連結部13の排液部13cにはドレンバルブ20が組み付けられる。バルブ20は取付部21と弁部22とを備えており、弁部22は傘状に成形されたダイヤフラム22aを備えている。ダイヤフラム22は、ダクト10内が負圧であるときに連結部13の外周面に密着して外部からの液体の浸入を防止し、大気圧であるときに連結部13の外周面から離間する方向に変形して内部からの液体の排出を許容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に対して外気を導入するための吸気系を構成する吸気ダクトに設けられる吸気ダクトのドレンバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、下記特許文献1に示されているような車両用エアダクトのドレンバルブ取付構造は知られている。この従来の車両用エアダクトのドレンバルブ取付構造は、排水穴が形成されたダクト本体の外側にリード弁タイプのドレンバルブを当接させ、ドレンバルブの外周に装着されるリテーナを兼ねたプロテクタをダクト本体にリベットにより固定することでドレンバルブをダクト本体に対して圧縮固定するようになっている。又、このようにダクト本体に装着されるプロテクタにはドレンバルブの外周の一部を覆うスプラッシュガードが一体的に形成されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−300497号公報
【発明の概要】
【0004】
上記従来の車両用エアダクトのドレンバルブ取付構造によってダクト本体に固定されるドレンバルブはリード弁タイプのドレンバルブである。このため、例えば、ダクト本体内部に浸入して溜まった水の排出が繰り返されると、ドレンバルブの先端に形成されたスリットが劣化し、常に、ダクト本体の内部と外部とが連通した状態となる可能性がある。この場合、ドレンバルブの先端に形成されたスリットを介して、ダクト本体の外部から内部に向けて、液体が浸入する場合がある。
【0005】
又、上記従来の車両用エアダクトのドレンバルブの取付構造においては、ドレンバルブの脱落の防止及びスプラッシュあるいはチッピング等からの保護のために、スプラッシュガードを備えたプロテクタをリベットによりダクト本体に固定する必要がある。この場合、構造が複雑化するとともにドレンバルブのリベットによる組み付け作業が極めて煩雑であり、さらには、プロテクタを設けるためのスペースが必要となる。ここで、近年、車両の小型化やエンジンルーム内の省スペース化等により、吸気ダクトの搭載スペースが限られるようになってきており、吸気ダクト全体を小型化することが熱望されている。
【0006】
本発明は、上記した問題に対処するためになされたものであり、その目的は簡略化した構造によって吸気ダクト内に浸入した液体を排液孔を介して外部に排出することができるとともに排液孔を介して外部から液体が浸入することを防止することができる吸気ダクトのドレンバルブを提供することにある。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、内燃機関に対して外気を導入するための吸気系を構成する吸気ダクトに形成された排液部に組み付けられる吸気ダクトのドレンバルブであって、前記ドレンバルブを、可撓性を有する弾性材料から形成し、前記吸気ダクトの前記排液部に形成された取付孔に対して挿入される取付突部と、この取付突部に一体的に形成されて前記取付孔の内径よりも大きな外径を有する膨出部と、前記取付突部及び前記膨出部の内部に形成された中空部とからなる取付部と、前記取付部に一体的に形成されて、前記内燃機関が外気を導入するときに前記吸気ダクトの前記排液部に形成された排液孔を覆って前記吸気ダクトの内部と外部との前記排液孔を介した連通を遮断し、前記排液孔から前記吸気ダクト内部に浸入した液体を排出するときに前記排液孔に溜まった前記液体の自重によって前記吸気ダクトの外方に向けて変形して前記吸気ダクトの内部と外部との前記排液孔を介した連通を許容する弁部とから構成したことにある。
【0008】
この場合、前記弁部は、例えば、前記取付部に対して傘状に形成されて、前記吸気ダクトの前記排液孔を覆うとともに前記排液孔に溜まった前記液体の自重によって前記吸気ダクトの外方に向けて変形するダイヤフラムを有するとよい。
【0009】
又、これらの場合、前記ドレンバルブは、例えば、前記取付部の取付突部の前記吸気ダクトの内部側からの引き伸ばしに伴って前記膨出部が前記中空部側に変形して前記取付孔を通過することにより、前記吸気ダクトに形成された前記排液部に組み付けられるとよい。そして、この場合、前記ドレンバルブの組み付けられる前記吸気ダクトは、例えば、軸線を含む面によって分割されているとよい。
【0010】
又、これらの場合、前記内燃機関に対して外気を導入するための吸気系を構成する吸気ダクトが、多孔質材料から形成されていて前記排液部及び前記取付孔を有する吸気ダクトであるとよい。
【0011】
これらによれば、ドレンバルブの弁部(より具体的には、ダイヤフラム)が内燃機関による外気吸入に伴って排液部に形成された排液孔を適切に覆う(より具体的には、密着して覆う)ことにより、排液孔を介した吸気ダクトの内部と外部との連通を遮断することができ、その結果、排液部を介して吸気ダクトの外部から内部に液体(例えば、雨水等)が浸入することを確実に防止することができる。又、排液部に外部から侵入した液体が溜まると、ドレンバルブの弁部(より具体的には、ダイヤフラム)が自動的に溜まった液体の自重によって排液孔を介した吸気ダクトの内部と外部との連通を許容することができ、その結果、排液部を介して吸気ダクトの内部から外部に液体を排出することができる。
【0012】
又、ドレンバルブを吸気ダクトに組み付ける際には、作業者がドレンバルブの取付部(より詳しくは、取付突部)を、例えば、分割された吸気ダクトの内部側から引っ張ることのみにより、取付部の膨出部を中空部に向けて変形させて排液部の取付孔を通過させることができ膨出部と取付孔とを確実に係合させることができる。したがって、極めて容易に、かつ、短時間により、ドレンバルブを吸気ダクトに組み付けることができ、組み付け作業性を大幅に向上させることができる。又、ドレンバルブの構成を簡略化することができ、吸気ダクトのコンパクト化や軽量化、コストダウンを達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係り、ドレンバルブの組み付けられた吸気ダクトの全体構成を概略的に示す図である。
【図2】図1のダクト連結部の搭載位置関係を説明するための図である。
【図3】図1のダクト連結部に形成される排液部の構造を説明するための図である。
【図4】図1のドレンバルブの構造を詳細に示す斜視図である。
【図5】図4のドレンバルブがダクト連結部(排液部)に組み付けられた状態を説明するための断面図である。
【図6】吸気ダクト及びドレンバルブの組み立てを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態に係る吸気ダクトのドレンバルブについて図面を参照しながら説明する。図1は、自動車等の内燃機関であるエンジンに接続されて吸気系を構成する吸気ダクト10の全体を概略的に示している。吸気ダクト10は、図示を省略するエンジンルーム内に搭載されていて、エンジンによって吸入される外気(空気)を導通するものである。ここで、車両の小型化やエンジンルームの省スペース化等に対応するため、本実施形態における吸気ダクト10は、エンジンルーム内の限られた搭載スペースにて他の機器の搭載性を阻害しないように、3次元形状(より詳しくは、螺旋形状)に組み付けられている。
【0015】
このように、3次元形状に組み付けられる吸気ダクト10は、図示を省略するエアクリーナに対して接続される略直管形状のダクト基端部11と、ダクト基端部11の軸線方向に対して略直交するようにダクト基端部11の外周面に組み付けられて外気を吸入するダクト先端部12と、ダクト基端部11及びダクト先端部12が螺旋形状となるように連結するダクト連結部13とから構成される。なお、ダクト基端部11の外周面に組み付けられるダクト先端部12は、ダクト基端部11の外周面との間で、エンジンが外気を吸入するときの吸気抵抗を低下させて圧力損失を低減する、所謂、ファンネル形状を形成するようになっている。すなわち、吸気ダクト10においては、別途、ファンネル形状を実現するための部材を装着しなくても、ダクト基端部11に対してダクト先端部12を一体的に組み付けることにより、ファンネル形状を実現することができるようになっている。
【0016】
ダクト連結部13は、図1及び図2に示すように、例えば、軸線を含む平面により上下2つに分割された上側部材13aと下側部材13bとから構成されている。上側部材13a及び下側部材13bは共に、例えば、射出成形(インジェクション成形)によって成形されるものであり、これら上側部材13a及び下側部材13bを互いに一体的に組み立てることによって管形状のダクト連結部13が形成される。そして、ダクト連結部13は、ダクト基端部11とダクト先端部12とが螺旋形状となるように連結して吸気ダクト10を構成し、この吸気ダクト10が車両のエンジンルーム内に搭載されるときには、図2に示すように、下側部材13bが最も低位となるように搭載される。
【0017】
このため、ダクト連結部13(より具体的には、下側部材13b)には、図3に詳細に示すように、吸気ダクト10の内部に浸入した液体(例えば、雨水等)を外部に排出するための排液部13cが形成されている。排液部13cは、図3に示すように、略円形の凹形状に形成されており、その略中央部分に後述するドレンバルブ20の取付部21と係合する取付孔13c1と、この取付孔13c1を中心として周状に複数(本実施形態においては4つ)の液体(雨水等)を排出するための排液孔13c2とが形成されて構成されている。
【0018】
ドレンバルブ20は、図1〜図3に示すように、吸気ダクト10を形成するダクト連結部13の下側部材13bに組み付けられるものである。そして、ドレンバルブ20は、図4に示すように、取付部21と弁部22とを備えている。ここで、ドレンバルブ20を形成する取付部21及び弁部22は、可撓性を有する弾性材料、例えば、エラストマ材料(より具体的には合成ゴム材料)等から形成されている。
【0019】
取付部21は、図4に示すように、取付突部21aを備えている。取付突部21aは、図5にて概略的な断面図を示すように、ダクト連結部13の下側部材13bの内面から所定長さだけ突出するように、より具体的には、後述するようにドレンバルブ20を組み付ける際に作業者が掴める程度の長さに設定されている。又、取付突部21aには、図4及び図5に示すように、ダクト連結部13(より詳しくは、下側部材13b)に形成された排液部13cの取付孔13c1と係合しドレンバルブ20をダクト連結部13(より詳しくは、下側部材13b)に対して一体的に固定させる膨出部21bが形成されている。膨出部21bは、排液部13cの取付孔13c1の内径よりも大きな外径を有するようになっている。さらに、取付突部21a及び膨出部21aの内部(すなわち、ダクト連結部13の外方)には、図5に示すように、中空部21cが形成されいる。
【0020】
弁部22は、図4及び図5に示すように、吸気ダクト10を形成するダクト連結部13(より詳しくは、下側部材13b)に形成された排液部13cの4つの排液孔13c2を覆うように、取付突部21aの先端側にて傘状に形成されたダイヤフラム22aを備えている。ダイヤフラム22aは、その断面形状が略円弧状となるように成形されており、図5に示すように、その先端部分がダクト連結部13の下側部材13bの外表面に対してラップする、言い換えれば、ダクト連結部13の下側部材13bとの間で締め代を有するように成形されている。又、弁部22は、図4及び図5に示すように、ダイヤフラム22aの基部すなわち取付突部21aとの接続位置近傍に形成されてダクト連結部13(より詳しくは、下側部材13b)の外表面と当接する当接部22bを備えている。当接部22bは、図5に示すように、取付部21の膨出部21bがダクト連結部13に形成された排液部13cの取付孔13c1と係合した状態にあるときにダクト連結部13の外表面に当接し、ドレンバルブ20を安定してダクト連結部13に組み付けるものである。
【0021】
次に、ドレンバルブ20の組み付け及び吸気ダクト10の組み立てについて説明する。
【0022】
まず、作業者は軸線を含む平面により分割されたダクト連結部13の下側部材13bに対してドレンバルブ20を組み付ける。具体的に、作業者は、下側部材13bに形成されている排液部13cの取付孔13c1に対して、ドレンバルブ20の取付部21を構成する取付突部21aの基端側を下側部材13bの外方側(ダクト連結部13の外部に相当)から挿通させ、挿通した基端側を下側部材13bの内方側(ダクト連結部13の内部側に相当)から膨出部21bが取付孔13c1を通過するまで引っ張る。このとき、取付突部21aは弾性部材(例えば、合成ゴム材料等)から形成されているため、作業者が取付突部21aを引っ張ることにより取付突部21a及び膨出部21bが軸方向に引き伸ばされて変形し、その結果、取付突部21a及び膨出部21bは径方向にてすなわち中空部21cに向けて痩せる(細くなる)。
【0023】
これにより、作業者は、極めて容易に取付突部21aに形成された膨出部21bを下側部材13bに形成された取付孔13c1に通すことができる。その後、作業者が取付突部21aの引っ張りを止めると、取付突部21a及び膨出部21bが元の形状に復元するため、膨出部21bと取付孔13c1とが係合し、ドレンバルブ20が下側部材13bに対して一体的に組み付けられる。なお、このように、膨出部21bと取付孔13c1とが係合することにより、ドレンバルブ20の弁部22に形成された当接部22bが下側部材13bの外表面に対して当接し、ドレンバルブ20が下側部材13bに対してガタツキなく組み付けられる。
【0024】
このように、ドレンバルブ20をダクト連結部13の下側部材13bに対して一体的に組み付けると、作業者はダクト連結部13を組み立てる。すなわち、作業者は、ドレンバルブ20を一体的に組み付けた下側部材13bと別途成形された上側部材13aとを、例えば、互いに成形された係合爪等を係合させることにより、管形状のダクト連結部13を組み立てる。続いて、作業者は、ダクト基端部11に対してダクト先端部12を組み付ける。この場合、例えば、ダクト先端部12に切り欠き部分が形成されていると、この切り欠き部とダクト基端部11の外周面とを一致させて(密着させて)組み付けることにより、より効果的にファンネル形状を実現することができる。
【0025】
そして、作業者は、一体的に組み付けられたダクト基端部11とダクト先端部12とに対してダクト連結部13を組み付けて、図6に示すように、ドレンバルブ20の組み付けられた吸気ダクト10を完成させる。すなわち、作業者は、一体的に組み付けられたダクト基端部11の一端側(先端側)とダクト先端部12の一端側(基端側)とに対して、組み付けられたダクト基端部11とダクト先端部12の位置に合わせて3次元的に成形されたダクト連結部13の端部をそれぞれ挿入し、例えば、結束バンド等の結束手段によって固定する。このとき、ダクト連結部13が3次元的にある程度の可撓性を有して成形されるため、作業者は極めて容易にダクト基端部11の一端側(先端側)とダクト先端部12の一端側(基端側)とに対してダクト連結部13を挿入して固定することができて、吸気ダクト10を極めて容易に、かつ、迅速に組み立てることができる。
【0026】
次に、吸気ダクト10に組み付けられたドレンバルブ20の効果について説明する。まず、車両のエンジンが作動中であるときには、エンジンは吸気ダクト10を介して外気を吸入する。すなわち、車両のエンジンが作動中であるときには、吸気ダクト10内が負圧に維持されて、外気がダクト先端部12からダクト連結部13を介してダクト基端部11に向けて導通する。このとき、ドレンバルブ20においては、弁部22を構成するダイヤフラム22aの先端部がダクト連結部13(より詳しくは、下側部材13b)の外表面に対して締め代を有するため、吸気ダクト10内が負圧に維持されているときにはドレンバルブ20のダイヤフラム22aがダクト連結部13の外表面に対して密着(吸着)する。したがって、車両のエンジンが作動中であるときには、ドレンバルブ20の弁部22を構成するダイヤフラム22aが排液孔13c2を介した吸気ダクト10の内部と外部との連通を確実に遮断するため、エンジンルーム内に浸入した液体(雨水等)が排液部13cを介して吸気ダクト10内に浸入することを確実に防止することができる。
【0027】
一方、車両のエンジンが作動中であるときに、ダクト先端部12から液体(雨水等)が浸入すると、浸入した雨水等は最も低位に配置されるダクト連結部13、より詳しくは、下側部材13bに形成された排液部13cに溜まる。このとき、車両のエンジンが作動中であるときには、上述したように、吸気ダクト10内が負圧に維持されるために、ドレンバルブ20の弁部22を構成するダイヤフラム22aがダクト連結部13(下側部材13b)に外表面に密着しており、ダクト連結部13の内部に溜まった水は排液部13cの排液孔孔13c2を介して外部に排水されない。なお、この場合には、吸気ダクト10内に浸入した液体(雨水等)は吸気ダクト10の最も低位となるダクト連結部13内に溜まるため、浸入した液体(雨水等)が車両のエンジンによって吸入されることを防止することができる。
【0028】
ところで、例えば、車両のエンジンが停止すると吸気ダクト10内は大気圧と等しくなる。したがって、ダクト連結部13の排液部13cに外側から組み付けられたドレンバルブ20のダイヤフラム22aは吸引(吸着)されることなく自由状態となる。この状態において、ダクト連結部13の内部、より詳しくは、排液部13cの排液孔13c2に溜まった液体(雨水等)がドレンバルブ20の傘状に形成されたダイヤフラム22aの内側に浸入すると、浸入した液体(雨水等)の重みによってダイヤフラム22aがダクト連結部13の外表面から外側に向けて離間する方向に変形する。これにより、ドレンバルブ20の弁部22を構成するダイヤフラム22aが排液孔13c2を介した吸気ダクト10の内部と外部と連通を許容するため、排液部13cの排液孔13c2に溜まった液体(雨水等)を極めてスムーズに吸気ダクト10外に排出することができる。
【0029】
以上の説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、ドレンバルブ20の弁部22(より詳しくは、ダイヤフラム22a)が排液部13cに形成された排液孔13c2を適切に覆うことにより、排液孔13c2を介した吸気ダクト10の内部と外部との連通が遮断され、その結果、排液部13cを介して吸気ダクト10の外部から内部に液体(雨水等)が浸入することを確実に防止することができる。又、排液部13cに液体(雨水等)が溜まると、ドレンバルブ20の弁部22(より詳しくは、ダイヤフラム22a)が自動的に溜まった液体(雨水等)の重み(自重)によって排液孔13c2を介した吸気ダクト10の内部と外部との連通を許容し、その結果、排液部13cを介して吸気ダクト10の内部から外部に液体(雨水等)を排出することができる。
【0030】
又、上記実施形態によれば、ドレンバルブ20を吸気ダクト10に組み付ける際に、作業者がドレンバルブ20の取付部21(より詳しくは、取付突部21a)を分割されたダクト連結部13の下側部材13bの内方から引っ張ることのみによって、取付部21の膨出部21bと排液部13cの取付孔13c1とを確実に係合させることができる。したがって、極めて容易に、かつ、短時間により、ドレンバルブ20を吸気ダクト10に組み付けることができ、組み付け作業性を大幅に向上させることができる。又、ドレンバルブ20の構成を簡略化することができ、吸気ダクト10のコンパクト化や軽量化、コストダウンを達成することができる。
【0031】
上記実施形態においては、吸気ダクト10の形成部材(形成材料)を特に限定することなく実施した。このため、上記実施形態においては、例えば、通気性を有しない樹脂材料を用いて吸気ダクト10を形成し、この吸気ダクト10を構成するダクト連結部13にドレンバルブ20を設けて実施することができる。この場合においては、ドレンバルブ20は、特に、吸気ダクト10のダクト先端部12によって形成される吸気口から浸入した液体(雨水等)を排液部13cを介して外部に排出するとともに排液部13cから吸気ダクト10の内部に液体(雨水等)が浸入することを防止する。
【0032】
ところで、近年、車両の吸気系において、エンジンの吸気に伴って発生する吸気騒音を低減する手法として、通気性を有する多孔質材料(例えば、不織布や織布等)から形成した吸気ダクト、所謂、ポーラスダクトを採用する場合がある。このポーラスダクトにおいては、管壁を介してダクト内部と外部との通気を許容することにより、吸気騒音を効果的に低減することができる。一方で、このような優れた吸気騒音低減効果を有するために必要な通気を確保する以上、管壁を介して液体(雨水等)が浸入し易くなる。したがって、一般に、ポーラスダクトにおいては、外面側に撥水剤を塗布して撥水層を形成し、外部からの液体(水)の浸入を防止するようになっているものの、通気性を有しない材料から形成された吸気ダクトと比べると液体(雨水等)は浸入し易い。
【0033】
したがって、このようなポーラスダクトにおいては、ダクト内部にある程度の液体(雨水等)が浸入することを前提とし、仮に液体(雨水等)が浸入した場合であっても速やかに排出されることが望まれる。この点に関し、例えば、上記実施形態において説明したダクト連結部13がポーラスダクトとして成形されており、このダクト連結部13に上記実施形態において説明したドレンバルブ20を組み付けることにより、上述した実施形態の場合と同様に、ドレンバルブ20は内部に浸入した液体(雨水等)を速やかに、かつ、確実に外部に排出することができる。又、このようなポーラスダクトにおいても、エンジンによって吸入される外気のほぼ全てが吸気口(上記実施形態においてはダクト先端部12)から吸入されるため、車両のエンジンが作動中であるときには、ダクト内部は、上記実施形態と同様に、負圧となる。したがって、ダクト連結部13をポーラスダクトとして成形した場合であっても、車両のエンジンが作動中であるときには、ドレンバルブ20の弁部22を構成するダイヤフラム22aがダクト連結部13の外周面に対して密着するため、排液部13cの排液孔13c2を介して外部から内部に液体(雨水等)が浸入することを確実に防止することができる。したがって、吸気ダクト10の一部又は全部をポーラスダクトとして成形した場合であっても、ドレンバルブ20を組み付けることにより、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0034】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態及び変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0035】
例えば、上記実施形態および変形例においては、3次元形状の吸気ダクト10にドレンバルブ20を設けて実施するようにした。しかし、この場合、例えば、略直管形状の吸気ダクトに対してドレンバルブ20を設けて実施可能であることは言うまでもない。この場合においても、略直管形状の吸気ダクトが車両のエンジンルーム内に搭載されるときに最も低位となる部分にドレンバルブ20を設けることにより、上記実施形態及び変形例と同様の効果が得られる。
【0036】
又、上記実施形態においては、吸気ダクト10に消音機構(例えば、レゾネータ等)を備えていない場合を説明したが、吸気ダクト10がレゾネータを備えるように実施可能であることは言うまでもない。この場合であっても、上記実施形態と同様に吸気ダクト10を構成することが可能であり、その結果、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【符号の説明】
【0037】
10…吸気ダクト、11…ダクト基端部、12…ダクト先端部、13…ダクト連結部、13a…上側部材、13b…下側部材、13c…排液部、13c1…取付孔、13c2…排液孔、20…ドレンバルブ、21…取付部、21a…取付突部、21b…膨出部、21c…中空部、22…弁部、22a…ダイヤフラム、22b…当接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に対して外気を導入するための吸気系を構成する吸気ダクトに形成された排液部に組み付けられる吸気ダクトのドレンバルブであって、
前記ドレンバルブを、可撓性を有する弾性材料から形成し、
前記吸気ダクトの前記排液部に形成された取付孔に対して挿入される取付突部と、この取付突部に一体的に形成されて前記取付孔の内径よりも大きな外径を有する膨出部と、前記取付突部及び前記膨出部の内部に形成された中空部とからなる取付部と、
前記取付部に一体的に形成されて、前記内燃機関が外気を導入するときに前記吸気ダクトの前記排液部に形成された排液孔を覆って前記吸気ダクトの内部と外部との前記排液孔を介した連通を遮断し、前記排液孔から前記吸気ダクト内部に浸入した液体を排出するときに前記排液孔に溜まった前記液体の自重によって前記吸気ダクトの外方に向けて変形して前記吸気ダクトの内部と外部との前記排液孔を介した連通を許容する弁部とから構成したことを特徴とする吸気ダクトのドレンバルブ。
【請求項2】
請求項1に記載した吸気ダクトのドレンバルブにおいて、
前記弁部は、
前記取付部に対して傘状に形成されて、前記吸気ダクトの前記排液孔を覆うとともに前記排液孔に溜まった前記液体の自重によって前記吸気ダクトの外方に向けて変形するダイヤフラムを有することを特徴とする吸気ダクトのドレンバルブ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載した吸気ダクトのドレンバルブにおいて、
前記ドレンバルブは、
前記取付部の取付突部の前記吸気ダクトの内部側からの引き伸ばしに伴って前記膨出部が前記中空部側に変形して前記取付孔を通過することにより、前記吸気ダクトに形成された前記排液部に組み付けられることを特徴とする吸気ダクトのドレンバルブ。
【請求項4】
請求項3に記載した吸気ダクトのドレンバルブにおいて、
前記ドレンバルブの組み付けられる前記吸気ダクトは、
軸線を含む面によって分割されていることを特徴とする吸気ダクトのドレンバルブ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか一つに記載した吸気ダクトのドレンバルブにおいて、
前記内燃機関に対して外気を導入するための吸気系を構成する吸気ダクトが、多孔質材料から形成されていて前記排液部及び前記取付孔を有する吸気ダクトであることを特徴とする吸気ダクトのドレンバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−219731(P2012−219731A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87216(P2011−87216)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000229069)株式会社セキソー (14)
【Fターム(参考)】