説明

吸水性樹脂粒子の製造方法

水溶性エチレン性不飽和単量体を逆相懸濁重合させて吸水性樹脂粒子を製造する方法であって、(A)界面活性剤および/または高分子保護コロイド、ならびに必要に応じて内部架橋剤の存在下、水溶性ラジカル重合開始剤を用いて、炭化水素系溶媒中で水溶性エチレン性不飽和単量体を第1段目の逆相懸濁重合に付し、(B)界面活性剤および/または高分子保護コロイドが炭化水素系溶媒に溶解している状態で、第1段目の逆相懸濁重合が終了した反応混合物に水溶性ラジカル重合開始剤および必要に応じて内部架橋剤を含む水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を添加し、引き続き逆相懸濁重合を行う操作を1段以上行った後、(C)得られた吸水性樹脂を後架橋剤で後架橋することを特徴とする吸水性樹睹粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、吸水性樹脂粒子の製造方法に関する。さらに詳しくは、高吸水量および高膨潤性を有し、かつ粒径の小さい吸水性樹脂粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
吸水性樹脂は、近年、紙おむつ、生理用品等の衛生材料用、保水材、土壌改良材等の農園芸材料用、ケーブル用止水材、結露防止材等の工業資材用等の種々の分野に広く使用されている。
このような吸水性樹脂としては、例えば、澱粉−アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物(特公昭49−43395号公報)、澱粉−アクリル酸グラフト共重合体の中和物(特開昭51−125468号公報)、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物(特開昭52−14689号公報)、ポリアクリル酸部分中和物(特開昭62−172006号公報)等が知られている。
吸水性樹脂に求められる性能としては、高吸水量、高吸水速度、高膨潤性および用途に応じた最適な粒径等が挙げられる。特に、ケーブル用止水材用においては、高吸水量および高膨潤性を有し、かつ粒径の小さい吸水性樹脂粒子が求められているが、これらの性能を同時に高めることが困難である。
【発明の開示】
本発明の目的は、高吸水量および高膨潤性を有し、かつ粒径の小さい吸水性樹脂粒子の製造方法を提供することにある。
本発明は、水溶性エチレン性不飽和単量体を逆相懸濁重合させて吸水性樹脂粒子を製造する方法であって、
(A)界面活性剤および/または高分子保護コロイド、ならびに必要に応じて内部架橋剤の存在下、水溶性ラジカル重合開始剤を用いて、炭化水素系溶媒中で水溶性エチレン性不飽和単量体を第1段目の逆相懸濁重合に付し、
(B)界面活性剤および/または高分子保護コロイドが炭化水素系溶媒に溶解している状態で、第1段目の逆相懸濁重合が終了した反応混合物に水溶性ラジカル重合開始剤および必要に応じて内部架橋剤を含む水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を添加し、引き続き逆相懸濁重合を行う操作を1段以上行った後、
(C)得られた吸水性樹脂を後架橋剤で後架橋する
ことを特徴とする吸水性樹脂粒子の製造方法に関する。
【図面の簡単な説明】
図1は、後述する実施例で用いられる膨潤高さ測定装置の概略説明図である。
図2は、実施例1で得られた吸水性樹脂粒子の電子顕徹鏡写真(倍率:50倍)である。
図3は、比較例1で得られた吸水性樹脂粒子の電子顕微鏡写真(倍率:50倍)である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の製造方法においては、まず、界面活性剤および/または高分子保護コロイド、ならびに必要に応じて内部架橋剤の存在下、水溶性ラジカル重合開始剤を用いて、炭化水素系溶媒中で水溶性エチレン性不飽和単量体を第1段目の逆相懸濁重合に付する。
水溶性エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸〔「(メタ)アクリ」とは「アクリ」または「メタクリ」を意味する。以下同じ〕、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸またはそのアルカリ金属塩;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のノニオン性モノマー;ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有不飽和モノマーまたはその四級化物等が挙げられ、それらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なお、アルカリ金属塩におけるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
水溶性エチレン性不飽和単量体のうち好ましいものは、工業的に入手が容易な点で、アクリル酸またはそのアルカリ金属塩、メタクリル酸またはそのアルカリ金属塩、アクリルアミド、メタクリルアミドならびにN,N−ジメチルアクリルアミドである。
水溶性エチレン性不飽和単量体は、通常、水溶液として用いることができる。水溶性エチレン性不飽和単量体の水溶液における水溶性エチレン性不飽和単量体の濃度は、25重量%〜飽和濃度であることが好ましい。
用いられる水溶性エチレン性不飽和単量体が酸基を含む場合、その酸基をアルカリ金属によって中和してもよい。アルカリ金属による中和度は、得られる吸水性樹脂粒子の浸透圧が大きく、吸水速度が速く、余剰のアルカリ金属の存在により安全性等に問題が生じない観点から、中和前の水溶性エチレン性不飽和単量体の酸基の10〜100モル%の範囲内にあることが好ましい。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等を挙げることができる。これらの中では、ナトリウムおよびカリウムが好ましい。
界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル〔「(ポリ)とは「ポリ」の接頭語がある場合とない場合の双方を意味する。以下同じ〕、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ヘキサグリセリルモノベヘレート等のノニオン系界面活性剤;脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルメチルタウリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸塩等のアニオン系界面活性剤等を挙げることができ、それらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中では、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルおよびヘキサグリセリルモノベヘレートが好ましい。
高分子保護コロイドとしては、例えば、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、無水マレイン化ポリエチレン、無水マレイン化ポリブタジエン、無水マレイン化EPDM(エチレン/プロピレン/ジエン/ターポリマー)等を挙げることができ、それらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
界面活性剤および高分子保護コロイドは、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。
界面活性剤および/または高分子保護コロイドの量は、第1段目の逆相懸濁重合に付される水溶性エチレン性不飽和単量体の水溶液100重量部に対して0.1〜5重量部が好ましく、0.2〜3重量部がより好ましい。
内部架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類のジまたはトリ(メタ)アクリル酸エステル類;前記ポリオール類とマレイン酸、フマール酸等の不飽和酸とを反応させて得られる不飽和ポリエステル類;N,N’−メチレンビスアクリルアミド等のビスアクリルアミド類;ポリエポキシドと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるジまたはトリ(メタ)アクリル酸エステル類;トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のポリイソシアネートと(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとを反応させて得られるジ(メタ)アクリル酸カルバミルエステル類;アリル化澱粉、アリル化セルロース、ジアリルフタレート、N,N’,N’’−トリアリルイソシアネート、ジビニルベンゼン等の重合性不飽和基を2個以上有する化合物;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等のジグリシジルエーテル化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物等の反応性官能基を2個以上有する化合物;3−メチル−3−オキセタンメタノール、3−エチル−3−オキセタンメタノール、3−ブチル−3−オキセタンメタノール、3−メチル−3−オキセタンエタノール、3−エチル−3−オキセタンエタノール、3−ブチル−3−オキセタンエタノール等のオキセタン化合物等を挙げることができ、それらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。それらの中では、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセリンジグリシジルエーテルおよびN,N’−メチレンビスアクリルアミドが低温での反応性に優れているので、好ましい。
内部架橋剤の量は、得られる重合体が適度な架橋により水溶性の性質が抑制され、十分な吸水性を示すようにする観点から、第1段目の逆相懸濁重合に付される水溶性エチレン性不飽和単量体100重量部に対して、好ましくは3重量部以下、より好ましくは0.001〜3重量部、さらに好ましくは0.001〜1重量部である。
水溶性ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩、アゾビス(シアノ吉草酸)等のアゾ化合物等を挙げることができ、それらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、水溶性ラジカル重合開始剤は、亜硝酸塩等と併用することにより、レドックス系重合開始剤として用いることができる。これらの中では、入手が容易で保存安定性が良好である観点から、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムおよび過硫酸ナトリウムが好ましい。
水溶性ラジカル重合開始剤の量は、重合反応の時間を短縮し、急激な重合反応を防ぐ観点から、通常、第1段目の逆相懸濁重合に付される水溶性エチレン性不飽和単量体1モルあたり、好ましくは0.00001〜0.02モル、より好ましくは0.001〜0.01モルである。
炭化水素系溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、リグロイン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等を挙げることができ、それらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中では、工業的に入手が容易で、品質が安定し、かつ安価である観点から、n−ヘキサン、n−ヘプタンおよびシクロヘキサンが好ましい。
炭化水素系溶媒の量は、重合熱を除去し、重合温度を制御しやすい観点から、通常、第1段目の逆相懸濁重合に付される水溶性エチレン性不飽和単量体100重量部に対して、好ましくは50〜600重量部、より好ましくは100〜550重量部である。
第1段目の逆相懸濁重合は、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液、界面活性剤および/または高分子保護コロイド、水溶性ラジカル重合開始剤ならびに必要に応じて内部架橋剤を炭化水素系溶媒中で攪拌下で加熱することにより、行うことができる。
逆相懸濁重合の際の反応温度は、使用する水溶性ラジカル重合開始剤の種類によって異なるので、一概には決定することができない。通常、該反応温度は、重合が迅速に進行し、重合時間が短くなり、経済的に好ましく、重合熱を除去することが簡単で、円滑に反応を行う観点から、好ましくは20〜110℃、より好ましくは40〜80℃である。反応時間は、通常、0.5〜4時間である。
かくして、第1段目の逆相懸濁重合が終了した反応混合物は、第2段目以降の逆相懸濁重合に供される。
なお、本発明においては、逆相懸濁重合は、2段以上の多段で行われるが、その段数は、生産性を高める観点から、2〜3段であることが好ましい。
本発明の第1の特徴は、第1段目で得られた反応混合物に含まれる界面活性剤および/または高分子保護コロイドが炭化水素系溶媒中に溶解している状態で、第1段目の逆相懸濁重合が終了した反応混合物に水溶性ラジカル重合開始剤および必要に応じて内部架橋剤を含む水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を添加し、引き続き2段目以降の逆相懸濁重合を行う点にある。
第1段目の逆相懸濁重合が終了した反応混合物に水溶性ラジカル重合開始剤および必要に応じて内部架橋剤を含む水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を添加し、引き続き2段目以降の逆相懸濁重合を行う際に、界面活性剤および/または高分子保護コロイドが溶媒中に溶解している状態とすることは、前記水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を添加する前および添加した後の反応混合物の温度を制御することにより、行うことができる。
水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を添加する前および添加した後の反応混合物の温度は、いずれも、好ましくは30〜60℃、より好ましくは40〜50℃である。水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を添加する際の温度が、30℃未満の場合、界面活性剤および/または高分子保護コロイドが溶媒中に析出し、60℃を超える場合、水溶性エチレン性不飽和単量体の水溶液が炭化水素系溶媒中に十分混合される前に重合反応が進行する傾向がある。
第1段目の逆相懸濁重合が終了した反応混合物に添加する水溶性ラジカル重合開始剤、内部架橋剤および水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液は、第1段目の逆相懸濁重合の際に用いたものと同様であってもよく、異なっていてもよい。
水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液における水溶性ラジカル重合開始剤の量は、重合反応の時間を短縮し、急激な重合反応を防ぐ観点から、通常、第2段目以降の各段階の重合に付される水溶性エチレン性不飽和単量体1モルあたり、好ましくは0.00001〜0.02モル、より好ましくは0.001〜0.01モルである。
また、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液における内部架橋剤の量は、得られる重合体が適度な架橋により水溶性の性質が抑制され、十分な吸水性を示すようにする観点から、第2段目以降の各段階の重合に付される水溶性エチレン性不飽和単量体100重量部に対して、好ましくは3重量部以下、より好ましくは0.001〜1重量部である。
第1段目の逆相懸濁重合で得られた反応混合物に添加する水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液の量は、生産性を高め、重合反応を円滑に行う観点から、第1段目で用いられた水溶性エチレン性不飽和単量体の水溶液100重量部に対して、好ましくは30〜400重量部、より好ましくは80〜200重量部である。
第1段目の逆相懸濁重合によって得られた反応混合物に、水溶性ラジカル重合開始剤および必要に応じて内部架橋剤を含む水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を添加した後に行う逆相懸濁重合は、前記第1段目の逆相懸濁重合と同様の条件で行うことができる。
前記操作は、前述したように、1段以上行われる。
次に、得られた吸水性樹脂を後架橋剤で後架橋する。本発明の第2の特徴は、前記方法によって得られた吸水性樹脂を、後架橋剤で架橋する点にある。
後架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のジオール、トリオールまたはポリオール類;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等のジグリシジルエーテル化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロルヒドリン等のエピハロヒドリン化合物;2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物等の反応性官能基を2個以上有する化合物を挙げることができ、それらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。それらの中では、低温での反応性に優れている観点から、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルおよびポリグリセリンジグリシジルエーテルが好ましい。
前記後架橋剤の量は、重合に付された水溶性エチレン性不飽和単量体の総量100重量部に対して、好ましくは0.01〜5重量部、より好ましくは0.03〜3重量部である。水溶性エチレン性不飽和単量体100重量部に対する後架橋剤の量が0.01重量部未満の場合、得られる吸水性樹脂粒子の吸水量が高くなりすぎてゲル強度が弱くなる傾向があり、また5重量部を超える場合、架橋が過度となるため、充分な吸水性を示さず、膨潤高さが低くなる傾向がある。
後架橋剤による吸水性樹脂の後架橋は、最終段の逆相懸濁重合の終了後に行われる。
吸水性樹脂と後架橋剤との混合は、水の存在下で行うことが好ましい。吸水性樹脂と後架橋剤とを混合する際の水の量は、吸水性樹脂の種類、粒度および含水率によって異なるが、通常、重合に付された水溶性エチレン性不飽和単量体の総量100重量部に対して、好ましくは5〜100重量部、より好ましくは8〜50重量部、さらに好ましくは10〜40重量部である。なお、前記水の量は、重合反応の際に含まれる水と後架橋剤を添加する際に必要に応じて用いられる水との合計量を意味する。
このように、吸水性樹脂と後架橋剤との混合時の水分量をコントロールすることにより、より好適に後架橋反応を進行させることができる。
吸水性樹脂と後架橋剤との混合の際には、必要に応じて、溶媒として親水性有機溶媒を用いてもよい。
親水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられ、それらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
吸水性樹脂を後架橋剤で架橋反応させる際の反応温度は、好ましくは30〜170℃、より好ましくは40〜150℃である。反応温度が30℃未満の場合、架橋反応が進みにくくなり、架橋反応に過大な時間を要する傾向があり、反応温度が170℃を越える場合、得られる吸水性樹脂が分解する傾向がある。
反応時間は、反応温度、架橋剤の種類およびその量、溶媒の種類等によって異なるので一概には決定することができないが、通常、1〜300分間、好ましくは5〜200分間である。
かくして、本発明の吸水性樹脂粒子が得られる。かかる吸水性樹脂粒子は、吸水性樹脂1gあたり300〜800gの吸水量を有し、吸水開始から60秒後における膨潤高さが5mm以上、平均粒径が10〜190μmを有するので、吸水量が多く、高膨潤性および高吸水速度を有するものである。なお、吸水性樹脂粒子の平均粒径は、好ましくは10〜190μm、より好ましくは10〜150μm、さらに好ましくは10〜100μmである。なお、吸水量、膨潤高さおよび平均粒径は、いずれも、後述する実施例に記載の測定方法によって測定したときの値である。
また、本発明の吸水性樹脂粒子は、粒子形状を有し、粒子同士の凝集がなく、しかも粒径250μm以上の粒子の含有率が5重量%以下と非常に少ないので、例えば、ケーブル用止水材等として好適に使用しうるものである。
なお、本発明の吸水性樹脂粒子には、さらに目的に応じて、滑剤、消臭剤、抗菌剤等の添加剤を添加してもよい。
添加剤の量は、吸水性樹脂粒子の用途、添加剤の種類等によって異なるが、重合に付された水溶性エチレン性不飽和単量体の総量100重量部に対して、好ましくは0.001〜10重量部、より好ましくは0.01〜5重量部である。
【実施例】
以下に、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明がこれら実施例等により限定されるものではない。
【実施例1】
内容積500mLの三角フラスコに80重量%のアクリル酸水溶液92g(1.02モル)を入れ、氷冷しながら21.0重量%水酸化ナトリウム水溶液146.0gを滴下して75モル%のアクリル酸の中和を行い、単量体濃度38重量%のアクリル酸部分中和塩水溶液を調製した。得られたアクリル酸部分中和塩水溶液に、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジエーテル9.2mg(53μモル)およびラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム92mg(0.34ミリモル)を添加し、これを第1段目重合用の単量体水溶液(a)とした。
一方、攪拌機、2段パドル翼、還流冷却器、滴下ロートおよび窒素ガス導入管を備えた内容積2リットルの五つ口円筒型丸底フラスコに、n−ヘプタン340g(500mL)と、界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステル〔三菱化学フーズ(株)製、商品名:S−370、HLB値3.0〕0.92gを加えてn−ヘプタンに溶解させた後、内温を35℃にした。その後、上記の第1段目重合用の単量体水溶液(a)を加えて35℃に保ち、攪拌下で懸濁し、系内を窒素ガスで置換した後、70℃に昇温して第1段目の逆相懸濁重合を行った。
次に、これとは別に、内容積500mLの三角フラスコに80重量%のアクリル酸水溶液92g(1.02モル)を入れ、氷冷しながら21.0重量%水酸化ナトリウム水溶液146.0gを滴下して75モル%のアクリル酸の中和を行い、単量体濃度38重量%のアクリル酸部分中和塩水溶液を調製した。得られたアクリル酸部分中和塩水溶液に、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル9.2mg(53μモル)およびラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム92mg(0.34ミリモル)を添加し、これを第2段目の逆相懸濁重合用の単量体水溶液(b)とした。
第1段目の逆相懸濁重合の終了後、重合スラリーを50℃に冷却し、界面活性剤が溶解している状態で、第2段目重合用の単量体水溶液(b)を系内に滴下し、50℃に保ちながら30分間攪拌を行うと同時に系内を窒素ガスで充分に置換した後、70℃に昇温して第2段目の逆相懸濁重合を行った。
逆相懸濁重合の終了後、再び加熱することによって、n−ヘプタンと水との共沸混合物から250gの水を抜き出した後、後架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル368mg(2.11ミリモル)を添加し、80℃で2時間、45gの水の存在下で後架橋反応を行った。架橋反応後、系内のn−ヘプタンと水を加熱留去することにより、吸水性樹脂粒子191.1gを得た。
得られた吸水性樹脂粒子の電子顕微鏡写真(倍率:50倍)を図2に示す。
【実施例2】
実施例1において、第1段目の逆相懸濁重合用の単量体水溶液(a)の内部架橋剤量を9.2mg(53μモル)から18.4mg(106μモル)に、第2段目の逆相懸濁重合用の単量体水溶液(b)の内部架橋剤量を9.2mg(53μモル)から18.4mg(106μモル)に、後架橋剤量を368mg(2.11ミリモル)から36.8mg(211μモル)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂粒子194.8gを得た。
【実施例3】
実施例1において、後架橋剤量を368mg(2.11ミリモル)から221mg(1.27ミリモル)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂粒子193.0gを得た。
【実施例4】
実施例1において、第1段目の逆相懸濁重合用の単量体水溶液(a)の内部架橋剤量を9.2mg(53μモル)から36.8mg(211μモル)に、第2段目の逆相懸濁重合用の単量体水溶液(b)の内部架橋剤量を9.2mg(53μモル)から12.9mg(74μモル)に、後架橋剤量を368mg(2.11ミリモル)から184mg(1.06ミリモル)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂粒子189.3gを得た。
【実施例5】
実施例1において、第1段目の逆相懸濁重合用の単量体水溶液(a)の内部架橋剤量を9.2mg(53μモル)から36.8mg(211μモル)に、第2段目の逆相懸濁重合用の単量体水溶液(b)の内部架橋剤量を9.2mg(53μモル)から36.8mg(211μモル)に、後架橋剤量を368mg(2.11ミリモル)から184mg(1.06ミリモル)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂粒子196.6gを得た。
【実施例6】
実施例1において、第1段目の逆相懸濁重合用の単量体水溶液(a)の内部架橋剤量を9.2mg(53μモル)から18.4mg(106μモル)に、第2段目の逆相懸濁重合用の単量体水溶液(b)の内部架橋剤量を9.2mg(53μモル)から18.4mg(106μモル)に、後架橋剤量を368mg(2.11ミリモル)から110mg(634μモル)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂粒子188.3gを得た。
比較例1
実施例1において、第1段目の逆相懸濁重合の終了後、重合スラリーを23℃に冷却し、界面活性剤が析出している状態で、第2段目の逆相懸濁重合用の単量体水溶液(b)を系内に滴下し、23℃に保ちながら30分間攪拌を行うと同時に系内を窒素ガスで充分に置換した後、70℃に昇温して第2段目の逆相懸濁重合を行った以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂粒子188.5gを得た。
得られた吸水性樹脂粒子の電子顕微鏡写真(倍率:50倍)を図3に示す。
図2に示す実施例1で得られた吸水性樹脂粒子の粒子と、図3に示す比較例1で得られた吸水性樹脂粒子の粒子とを対比して明らかなように、実施例1で得られた吸水性樹脂粒子は、粒子同士の凝集がなく、しかも各粒子がほぼ均一な粒径を有することがわかる。
次に、各実施例および比較例で得られた吸水性樹脂粒子を、下記に示す各種の試験に供した。その結果を表1に示す。
(1)吸水量
2000mL容のビーカー中で、吸水性樹脂粒子0.5gをイオン交換水1500gに分散し、30分攪拌して十分に膨潤させた。予め重量Wa(g)を測定しておいた目開き38μm(400メッシュ)の標準篩で、膨潤ゲルを含んだイオン交換水を濾過し、篩を水平に対して約30度程度の傾斜角となるように傾けた状態で30分間放置して、膨潤ゲルから余剰水を除いた。その後、膨潤ゲルを含んだ篩の重量Wb(g)を測定し、式:
〔吸水量(g/g)〕=(Wb−Wa)÷0.5
により、吸水量(g/g)を求めた。
(2)吸水速度
内容積100mL容のビーカーに、あらかじめ、0.9重量%生理食塩水50gを入れ、液温を25℃に調節し、スターラーチップ(長さ30mm、直径8mm)を用い、回転数600rpmで攪拌した。攪拌しながら、そのビーカー内に吸水性樹脂粒子2gを加えて、吸水性樹脂粒子がゲル化することによって液表面の渦がなくなるまでに要する時間を計測し、その時間を吸水速度とした。
(3)平均粒径および粒径が250μmを超える粒子の含有率
JIS標準篩を上から、目開き500μm(32メッシュ)の篩、目開き355μm(42メッシュ)の篩、目開き250μm(60メッシュ)の篩、目開き180μm(80メッシュ)の篩、目開き106μm(150メッシュ)の篩、目開き75μm(200メッシュ)の篩、目開き45μm(350メッシュ)の篩および受け皿の順に組み合わせ、最上の篩に吸水性樹脂粒子約100gを入れ、ロータップ式振とう器を用いて、20分間振とうさせた。
次に、各篩上に残った吸水性樹脂粒子の重量を全量に対する重量百分率として計算し、粒径の小さい方から順に積算することにより、篩の目開きと篩上に残った重量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算重量百分率50%に相当する粒径を平均粒径とした。
また、目開き500μm(32メッシュ)の篩および目開き250μm(60メッシュ)の篩を通過しなかった吸水性樹脂粒子の重量を全量に対する重量百分率として計算し、その値を粒径が250μmを超える粒子の含有率とした。
(4)膨潤高さ
吸水開始から60秒後および10分後の膨潤高さは、膨潤高さ測定装置を用いて測定した。その概略説明図を図1に示す。図1に示した膨潤高さ測定装置Xは、移動距離測定装置1と凹型円形カップ2(高さ30mm、内径80mm)、プラスチック製の凸型円形シリンダー3(外径79mm、吸水性樹脂粒子との接触面に直径2mmの貫通孔7が60個配設)および不織布4からなっている。膨潤高さ測定装置Xは、レーザー光6により距離の変位をmm単位で測定することができるようになっている。凹型円形カップ2は、所定量の吸水性樹脂粒子を均一に散布することができるようになっている。凸型円形シリンダー3は、不織布4の上に置かれ、吸水性樹脂粒子5に対して90gの荷重を均一に加えることができるようになっている。
凹型円形カップ2に試料(吸水性樹脂粒子5)0.2gを均一に散布し、その上に不織布4を敷く。凸型円形シリンダー3を不織布4の上に静かにのせ、移動距離測定装置1のセンサーのレーザー光6がシリンダーの中央部にくるように設置する。予め20℃に調節したイオン交換水130gを凹型円形カップ2内に投入し、吸水性樹脂粒子5が膨潤して凸型円形シリンダー3を押し上げた距離を測定する。吸水開始から60秒後および10分後における凸型円形シリンダー3の移動距離を膨潤高さとした。

表1に示された結果から、実施例1〜6で得られた吸水性樹脂粒子は、いずれも、高吸水量および高膨潤性を有し、かつ粒径が小さいことがわかる。一方、比較例1で得られた吸水性樹脂粒子は、粒径が大きく、吸水速度も遅いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
本発明の吸水性樹脂粒子は、紙おむつ、生理用品等の衛生材料用、保水材、土壌改良材等の農園芸材料用、ケーブル用止水材、結露防止材等の工業資材用等種々の分野で使用することができ、特にケーブル用止水材等の工業資材用に好適に用いられる。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性エチレン性不飽和単量体を逆相懸濁重合させて吸水性樹脂粒子を製造する方法であって、
(A)界面活性剤および/または高分子保護コロイド、ならびに必要に応じて内部架橋剤の存在下、水溶性ラジカル重合開始剤を用いて、炭化水素系溶媒中で水溶性エチレン性不飽和単量体を第1段目の逆相懸濁重合に付し、
(B)界面活性剤および/または高分子保護コロイドが炭化水素系溶媒に溶解している状態で、第1段目の逆相懸濁重合が終了した反応混合物に水溶性ラジカル重合開始剤および必要に応じて内部架橋剤を含む水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を添加し、引き続き逆相懸濁重合を行う操作を1段以上行った後、
(C)得られた吸水性樹脂を後架橋剤で後架橋する
ことを特徴とする吸水性樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
工程(C)で用いられる後架橋剤がエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセリンジグリシジルエーテルから選ばれた少なくとも1種である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
工程(C)において、重合に付された水溶性エチレン性不飽和単量体の総量100重量部に対して5〜100重量部の量の水の存在下で、吸水性樹脂を後架橋する請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
吸水量が300〜800g/g、吸水開始から60秒後における膨潤高さが5mm以上、平均粒径が10〜190μmである請求項1〜3いずれか記載の製造方法によって得られた吸水性樹脂粒子。

【国際公開番号】WO2004/083284
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【発行日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503663(P2005−503663)
【国際出願番号】PCT/JP2004/003278
【国際出願日】平成16年3月12日(2004.3.12)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)
【Fターム(参考)】