説明

吸水性樹脂組成物、吸収体及び吸収性物品

【課題】
おむつやペットシート等の吸収性物品に用いた場合でも、排尿後時間経過による菌の繁殖を防ぎ、悪臭の発生を防ぐことができる吸水性樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】
吸水性樹脂粒子(A)及び抗菌剤(B)を含有してなり、抗菌剤(B)が一般式(1)で示されるアンモニウム塩であることを特徴とする吸水性樹脂組成物を用いる。

(R(R (1)

[Rはn−デシル基、Rはメチル基、Xは塩化物イオン又はグルコン酸アニオンである。]
抗菌剤(B)の含有量は吸水性樹脂粒子(A)の重量に基づいて、0.001〜1重量%が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂組成物、これを用いてなる吸収体及び吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
親水性重合体と、液状変性剤(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール及びポリエチレングリコール等)及び無機粉体(酸化アルミニウム、酸化マグネシウム及び酸化亜鉛等)からなる粉体化変性剤とからなる吸水性樹脂が知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平9−278900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら従来の吸水性樹脂は、おむつやペットシート等の吸収性物品に用いた場合、排尿後、時間経過と共に菌が繁殖し、悪臭が発生するという問題がある。この結果、吸収性物品の装着している際の肌へのストレスや、装着者及び周囲の人々へ不快感を与えるという問題がある。
すなわち、本発明の目的は、おむつやペットシート等の吸収性物品に用いた場合でも、排尿後時間経過による菌の繁殖を防ぎ、悪臭の発生を防ぐことができる吸水性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の吸水性樹脂組成物の特徴は、吸水性樹脂粒子(A)及び抗菌剤(B)を含有してなり、抗菌剤(B)が一般式(1)で示されるアンモニウム塩である点を要旨とする。

(R(R (1)

[Rはn−デシル基、Rはメチル基、Xは塩化物イオン又はグルコン酸アニオンである。]
【発明の効果】
【0005】
本発明の吸水性樹脂組成物は、おむつやペットシート等の吸収性物品に適用した場合でも、排尿後時間経過による菌の繁殖を防ぐことができる。したがって、悪臭が発生せず、装着時の肌へのストレスや、装着者及び周囲の人々への不快感を著しく低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
<吸水性樹脂粒子について(A)>
吸水性樹脂粒子(A)としては、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに内部架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体であれば特に制限がなく、公知のもの{たとえば、以下の(1)〜(16)の重合体等}をそのまま用いることができる。
(1)特公昭53−46199号公報又は特公昭53−46200号公報等に記載のデンプン−アクリル酸(塩)グラフト架橋共重合体。
(2)特開昭55−133413号公報等に記載の水溶液重合(断熱重合、薄膜重合又は噴霧重合等)により得られる架橋ポリアクリル酸(塩)。
(3)特公昭54−30710号公報、特開昭56−26909号公報又は特開平11−5808号公報等に記載の逆相懸濁重合により得られる架橋ポリアクリル酸(塩)。
(4)特開昭52−14689号公報又は特開昭52−27455号公報等に記載のビニルエステルと不飽和カルボン酸又はその誘導体との共重合体のケン化物。
(5)特開昭58−2312号公報又は特開昭61−36309号公報等に記載のアクリル酸(塩)とスルホ(スルホネート)基含有モノマーとの共重合体。
【0007】
(6)米国特許第4389513号等に記載のイソブチレン−無水マレイン酸共重合架橋体のケン化物。
(7)特開昭46−43995号公報等に記載のデンプン−アクリロニトリル共重合体の加水分解物。
(8)米国特許第4650716号等に記載の架橋カルボキシメチルセルロース。
(9)高分子ゲルの最新動向(シーエムシー出版、2004年発行)等に記載のポリアルキレン(エチレン、プロピレン等)グリコール架橋体。
(10)高分子ゲルの最新動向(シーエムシー出版、2004年発行)等に記載のポリビニルアルコール架橋体。
(11)特開2003−48997号公報に記載のデンプン放射線架橋体。
(12)特開平9−85080号公報に記載のカルボキシル基含有架橋セルロース。
(13)特開平10−251402号公報に記載のポリアミノ酸放射線架橋体。
(14)特開2002−179770号公報に記載の架橋ポリアスパラギン酸。
(15)特開2001−120992号公報に記載の多糖類の多価金属イオン架橋体。
【0008】
(16)特開2003−052742号公報、特開2003−082250号公報、特開2003−165883号公報、特開2003−176421号公報、特開2003−183528号公報、特開2003−192732号公報、特開2003−225565号公報、特開2003−238696号公報、特開2003−335970号公報、特開2004−091673号公報、特開2004−121400号公報、特開2004−123835号公報、特開2005−075982号公報、特開2005−095759号公報、特開2005−186015号公報、特開2005−186016号公報、特開2006−110545号公報、特開2006−122737号公報、特開2006−131767号公報、特開2006−160774号公報、特開2006−206777号公報、特開2006−219661号公報、特開2007−069161等に記載された高性能吸水性樹脂{架橋ポリアクリル酸(塩)}。
【0009】
これらのうち、(1)、(2)、(3)及び(16)が好ましく、さらに好ましくは(1)、(2)及び(16)、特に好ましくは(2)及び(16)である。
なお、吸水性樹脂粒子(A)は、表面架橋されていてもよい。
【0010】
吸水性樹脂粒子(A)の形状は粒子状であれば制限はないが、不定形(破砕状)、真球状、板状及び棒状が好ましく、さらに好ましくは不定形(破砕状)、真球状又は板状、特に好ましくは不定形(破砕状)又は板状である。
【0011】
吸水性樹脂粒子(A)は、公知の方法(ふるい分け、粉砕後ふるい分け等)等により、粒径範囲を調整することができる。
【0012】
吸水性樹脂粒子(A)の重量平均粒子径(μm)は、100〜800が好ましく、さらに好ましくは200〜500、特に好ましくは300〜400である。この範囲であると、吸収性物品の耐モレ性がさらに良好となる。
【0013】
重量平均粒子径は、測定試料の粒度分布を測定し、対数確率紙{横軸:粒径、縦軸:累積含有量(重量%)}に、累積含有量と粒子径との関係をプロットし、累積含有量が50重量%に対応する粒子径を求めることにより得られる。粒度分布は、JIS Z8815−1994に準拠して測定され、たとえば、内径150mm、深さ45mmのふるい{目開き:710μm、500μm、300μm、150μm及び106μm}を、目開きの狭いふるいを下にして重ね、一番上の最も目開きの広い710μmのふるいの上に、測定試料50gを入れ、ふるい振動機にて10分間ふるい、各ふるいの上に残った測定試料の重量を測定し、最初の測定試料の重量に基づく各ふるいの上に残った測定試料の重量%を求めることによって測定される。
【0014】
<抗菌剤(B)>
一般式(1)で示されるアンモニウム塩は、テトラアルキルアンモニウム塩であるが、n−デシル基(R)及びメチル基(R)以外のアルキル基であると、菌の繁殖を防ぐ効果が著しく劣る。さらに、吸水性樹脂組成物の粉体流動性が著しく劣る。したがって、ジn−デシルジメチルアンモニウム塩以外だと、悪臭の発生を効果的に防ぐことができない。また、吸水性樹脂組成物の取扱性が著しく劣る。
【0015】
塩化物イオン又はグルコン酸アニオン(X)以外のアニオンであると、菌の繁殖を防ぐ効果が著しく劣る。さらに、吸水性樹脂組成物の粉体流動性が著しく劣る。したがって、ジn−デシルジメチルアンモニウム塩以外だと、悪臭の発生を効果的に防ぐことができない。また、吸水性樹脂組成物の取扱性が著しく劣る。
【0016】
一般式(1)で示されるアンモニウム塩としては、ジn−デシルジメチルアンモニウムクロライド、ジn−デシルジメチルアンモニウムグルコン酸塩及びこれらの混合物が含まれる。
【0017】
一般式(1)で示されるアンモニウム塩は、通常の方法で製造することができる。
ジn−デシルメチルアミン又はn−デシルジメチルアミンと、アルキル化剤とを反応させて、4級化させることにより得ることができる。なお、必要に応じてアニオン交換する。
【0018】
アルキル化剤としては、ジメチル硫酸、ジメチル炭酸、メチルクロライド、メチルブロマイド、メチルイオダイド、ジn−デシル硫酸、ジn−デシル炭酸、n−デシルクロライド、n−デシルブロマイド及びn−デシルイオダイド等が挙げられる。
【0019】
4級化は、公知の溶媒(たとえば、メチルアルコール、エチルアルコール及びイソプロピルアルコール等)を用いてもよい。
【0020】
4級化の温度(℃)は、50〜200が好ましく、さらに好ましくは50〜150である。
【0021】
アニオン交換の方法としては、たとえば、グルコン酸水溶液に、ジn−デシルジメチルアンモニウムメチルカーボネートのメタノール溶液を徐々に加え、発生する二酸化炭素及び溶媒を留去する方法が適用できる。アニオン交換の反応温度としては、80〜90℃程度が好ましい。
【0022】
抗菌剤(B)は、製造時に使用した溶媒の溶液(たとえば、アルコール溶液)又は水溶液で用いられる。
抗菌剤(B)が溶液の場合、抗菌剤の濃度(重量%)は、溶液の重量に基づいて、1〜〜80が好ましく、さらに好ましくは5〜60である。この範囲であると、粘度等の観点から取り扱いやすく、吸水性樹脂粒子(A)と混合する際に、不要な溶媒の量を制限することができる。
【0023】
抗菌剤(B)の含有量(重量%)は、吸水性樹脂粒子(A)の重量に基づいて、0.001〜1が好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.8、特に好ましくは0.3〜0.5である。この範囲であると、おむつやペットシート等の吸収性物品に適用した場合でも、排尿後時間経過による菌の繁殖を防ぐことができる。したがって、悪臭が発生せず、装着時の肌へのストレスや、装着者及び周囲の人々への不快感を著しく低減できる。
【0024】
本発明の吸水性樹脂組成物は、吸水性樹脂粒子(A)と抗菌剤(B)とを均一混合することにより容易に得られる。吸水性樹脂粒子(A)と抗菌剤(B)とを混合する段階としては、吸水性樹脂粒子(A)を製造する工程のうち、溶液重合により吸水性樹脂粒子(A)を得る場合、表面架橋反応工程(加熱工程)の直後が好ましい。また、逆相懸濁により架橋重合体粒子(A)を得る場合、乾燥工程直後である。
【0025】
いずれの場合においても、吸水性樹脂粒子(A)の水分が12重量%以下(好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは8重量%以下)の乾燥状態で混合することが好ましい。
なお、水分は、赤外水分測定器{たとえば、(株)ケット科学研究所製JE400:120±5℃、30分、加熱前の雰囲気湿度50±10%RH、ランプ仕様100V、40W)により加熱したときの加熱前後の吸水性樹脂粒子(A)の重量減量から求められる。
【0026】
均一混合の温度(℃)としては特に限定ないが、30〜100が好ましく、さらに好ましくは40〜80、特に好ましくは50〜60である。
吸水性樹脂粒子(A)と抗菌剤(B)とを均一混合するのに使用される装置としては、通常の混合機でよく、例えば、円筒型混合機、スクリュー型混合機、スクリュー型押出機、タービュライザー、ナウター型混合機、双腕型ニーダー、流動式混合機、V型混合機、リボン型混合機、流動式混合機、気流型混合機、回転円盤型混合機、コニカルブレンダー及びロールミキサー等が挙げられる。
【0027】
本発明の吸水性樹脂組成物には、必要により任意の段階{吸水性樹脂粒子(A)の製造工程のうち、重合工程、破砕工程、乾燥工程、粉砕工程、表面架橋工程及び/又はこれらの工程の前後等等}において、添加物を添加することができる。
添加物としては、公知(たとえば特開2003−225565号公報)の添加剤{防腐剤、防かび剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、消臭剤及び有機質繊維状物等}等が使用でき、これらの1種又は2種以上を併用してもよい。
【0028】
本発明の吸水性樹脂組成物は、各種の吸収体に適用することにより、吸収性物品を製造し得る。吸収体及び吸収性物品は、公知{例えば特開2005−186016号公報}の方法等により製造される。
吸収性物品としては、衛生用品{紙おむつ(子供用紙おむつ及び大人用紙おむつ等)、ナプキン(生理用ナプキン等)、嘔吐物吸収用エチケット袋、紙タオル、パッド(失禁者用パット及び手術用アンダーパット等)及びペットシート(ペットシート及び保温シート等)等}、及び各種の家庭用及び産業用の吸収シート{鮮度保持シート、ドリップ吸収シート等}が含まれる。
これらのうち、本発明の吸水性樹脂組成物は排尿後時間経過による菌の繁殖を防ぎ、また悪臭の発生を防ぐいう観点から衛生用品に好適であり、さらに紙おむつ、パッド及び生理用ナプキン、ペットシート、特に紙おむつ及びペットシートに適している。
【実施例】
【0029】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特記しない限り、部は重量部を示す。
<製造例1>
アクリル酸ナトリウム88部、アクリル酸22.85部、N,N’−メチレンビスアクリルアミド0.3部、脱イオン水293及びジクロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ルテニウム0.001部を攪拌・混合しながら、温度を1〜2℃に保ち、この混合液中に窒素を流入して、混合液中の溶存酸素濃量を0.5ppm以下とした。引き続き、この混合液に、1重量%過酸化水素水溶液0.3部、0.2重量%アスコルビン酸水溶液0.8部及び2重量%の2,2’−アゾビスアミジノプロパンジハイドロクロライド水溶液0.8部を添加・混合して重合を開始させ、反応液が80℃に達した後、重合温度80±2℃で約5時間重合することにより、含水樹脂(ゲル1)を得た。
【0030】
この含水樹脂(ゲル1)400部をミンチ機(目皿穴径:6mm、飯塚工業(株)製 12VR−400K)にて25℃で5分間細断した後、通気型バンド乾燥機(135℃、2.0m/秒;井上金属工業(株)製)で乾燥し、乾燥重合体を得た。
【0031】
この乾燥重合体をジューサーミキサー(National MX−X53、松下電器(株)製)で粉砕し、目開き150及び710μmのふるいを用いて150〜710μmの粒子径範囲に調整した後、この100部を高速攪拌(ホソカワミクロン(株)製、高速攪拌タービュライザーミキサー:回転数2000rpm)しながらエチレングリコールジグリシジルエーテルの1重量%水/メタノール混合溶液(水/メタノールの重量比=60/40)の5.5部をスプレー噴霧しながら添加・混合し、140℃で30分間静置し加熱架橋(表面架橋)することにより吸水性樹脂粒子(A1)を得た。
【0032】
<製造例2>
アクリル酸81.8部、N,N’−メチレンビスアクリルアミド0.3部及び脱イオン水241部を攪拌・混合しながら、温度を1〜2℃に保ち、この混合液中に窒素を流入して、混合液中の溶存酸素量を0.02ppm以下とした。引き続き、この混合液に、1重量%過酸化水素水溶液1部、0.2重量%アスコルビン酸水溶液1.2部及び2重量%の2,2’−アゾビスアミジノプロパンジハイドロクロライド水溶液2.8部を添加・混合して重合を開始させ、反応温度が70℃に達した後、重合温度75±5℃で約8時間重合することにより含水樹脂(ゲル2)を得た。
【0033】
この含水樹脂(ゲル2)をインターナルミキサーで3〜7mmの大きさに細断して細断ゲルを得た後、この細断ゲル325部に48重量%の水酸化ナトリウム水溶液67.5部を添加してカルボキシル基の72当量%を中和して、中和細断ゲルを得た。なお、JIS K0113−1997に準拠(0.1規定水酸化カリウム水溶液を滴定液として使用、電位差滴定法、変曲点法)して測定した酸価から算出した中和細断ゲルの中和度は70.1当量%であった。
【0034】
次いで、縦20cm×横20cm×高さ10cmで、天板を有さず、底板に目開き4mmの金網を装着したステンレス製のトレイに、この中和細断ゲルを約5cmの厚さに積層し、150℃、風速2.0m/sの条件で、通気型バンド乾燥機(井上金属工業(株)製)で乾燥して、乾燥重合体を得た。
【0035】
この乾燥重合体を製造例1と同様の方法(粉砕、表面架橋)により吸水性樹脂粒子(A2)を得た。
【0036】
<製造例3>
シクロヘキサン121.2部及びソルビタンモノステアレート0.9部を均一混合した後、この混合液中に窒素を流入し、混合液中の溶存酸素量を0.02ppm以下とし、反応溶媒を得た。
【0037】
一方、アクリル酸45部及び水6.4部の混合液中に、氷冷下、水酸化ナトリウムの25重量%水溶液70部を加えてカルボキシル基の70当量%を中和した。さらに、この中和混合物に、N,N’−メチレンビスアクリルアミド0.033部、次亜リン酸ナトリウム0.0546部、及び2,2‘−アゾビスアミジノプロパンジハイドロクロライド0.0313部を加えて均一混合し、モノマー溶液を得た。
【0038】
このモノマー溶液を、先の反応溶媒へ添加し、攪拌して分散させると共に、窒素を流入しながら油浴にて60℃に上昇させた。引き続き、この分散液体の温度を60℃に保ち、攪拌しながら2時間重合させた。2時間後の内容物は水で膨潤した含水樹脂(ゲル3)がシクロヘキサン中に分散してスラリー状となっていた。次いで、油浴の温度を上げ、シクロヘキサンと水との共沸により、膨潤した含水樹脂(ゲル3)の水分が20重量%になるまで脱水を行った。脱水後、攪拌を停止し、沈降する含水樹脂(ゲル3)をデカンテーションによりシクロヘキサン相から分離した。この含水樹脂(ゲル3)を80〜90℃、13.3kPaで減圧乾燥し、乾燥重合体を得た。
【0039】
この乾燥重合体を製造例1と同様の方法(表面架橋)により吸水性樹脂粒子(A3)を得た。
【0040】
<製造例4>
メタノール56部、ジn−デシルメチルアミン274部(0.88モル部)及び炭酸ジメチル144部(1.6モル部)を、120℃で20時間反応させた後、メタノール及び炭酸ジメチルを留去し、濃度を70重量%に調整して、ジn−デシルジメチルアンモニウムメチルカーボネートのメタノール溶液を得た。
【0041】
50重量%グルコン酸水溶液157部(0.4モル部)及び水300部から構成される混合水溶液を80〜90℃に保ちながら、この混合水溶液に、70重量%ジn−デシルジメチルアンモニウムメチルカーボネートのメタノール溶液229部(0.4モル部)を2時間かけて加え、発生する二酸化炭素を除去し、溶媒(水及びメタノール)を留去して、抗菌剤(B1){ジn−デシルジメチルアンモニウムグルコン酸塩}を得た。
【0042】
<実施例1>
吸水性樹脂粒子(A1)100部と抗菌剤(B1){ジn−デシルジメチルアンモニウムグルコン酸塩}0.001部とをコニカルブレンダー(ホソカワミクロン(株)製)で均一混合して、本発明の吸水性樹脂組成物(1)を得た。
【0043】
<実施例2>
抗菌剤(B1)の使用量を「0.001部」から「0.1部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂組成物(2)を得た。
【0044】
<実施例3>
抗菌剤(B1)の使用量を「0.001部」から「0.3部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂組成物(3)を得た。
【0045】
<実施例4>
抗菌剤(B1)の使用量を「0.001部」から「0.5部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂組成物(4)を得た。
【0046】
<実施例5>
抗菌剤(B1)の使用量を「0.001部」から「0.8部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂組成物(5)を得た。
【0047】
<実施例6>
抗菌剤(B1)の使用量を「0.001部」から「1部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂組成物(6)を得た。
【0048】
<実施例7>
「抗菌剤(B1)0.001部」を「抗菌剤(B2){ジn−デシルジメチルアンモニウムクロライド:カチオンDDC−50、三洋化成工業(株)製}0.01部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂組成物(7)を得た。
【0049】
<実施例8>
「抗菌剤(B1)0.001部」を「抗菌剤(B2)0.1部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂組成物(8)を得た。
【0050】
<実施例9>
「抗菌剤(B1)0.001部」を「抗菌剤(B2)0.3部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂組成物(9)を得た。
【0051】
<実施例10>
「抗菌剤(B1)0.001部」を「抗菌剤(B2)0.5部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂組成物(10)を得た。
【0052】
<実施例11>
「抗菌剤(B1)0.001部」を「抗菌剤(B2)0.8部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂組成物(11)を得た。
【0053】
<実施例12>
「抗菌剤(B1)0.001部」を「抗菌剤(B2)1部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂組成物(12)を得た。
【0054】
<実施例13>
「吸水性樹脂粒子(A1)」を「吸水性樹脂粒子(A2)」に変更したこと、及び「抗菌剤(B1)の使用量を「0.001部」から「0.3部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂組成物(13)を得た。
【0055】
<実施例14>
「吸水性樹脂粒子(A1)」を「吸水性樹脂粒子(A3)」に変更したこと、及び「抗菌剤(B1)の使用量を「0.001部」から「0.3部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂組成物(14)を得た。
【0056】
<比較例1>
吸水性樹脂粒子(A1)100部と、粉体化変性剤{エポミンP−1000(日本触媒(株)製)5部と、フローセンUF−1.5(住友精化(株)製)5部との均一混合物}0.1部とを卓上ニーダー(PN−1型、(株)入江商会製)で均一混合して、比較用の吸水性樹脂組成物(H1)を得た。
【0057】
<比較例2>
「粉体化変性剤0.1部」を「液状変性剤{エポミンP−1050}1部」に変更したこと以外、比較例1と同様にして、比較用の吸水性樹脂組成物(H2)を得た。
【0058】
<比較例3>
メタノール56部、ジn−デシルメチルアミン274部(0.88モル部)及び炭酸ジエチル189部(1.6モル部)を、120℃で20時間反応させた後、メタノール及び炭酸ジエチルを留去し、濃度を70重量%に調整して、ジn−デシルメチルエチルアンモニウムメチルカーボネートのメタノール溶液を得た。
【0059】
50重量%グルコン酸水溶液157部(0.4モル部)及び水300部から構成される混合水溶液を80〜90℃に保ちながら、この混合水溶液に、70重量%ジn−デシルメチルエチルアンモニウムメチルカーボネートのメタノール溶液237部(0.4モル部)を2時間かけて加え、発生する二酸化炭素を除去し、溶媒(水及びメタノール)を留去して、抗菌剤(HB1){ジn−デシルメチルエチルアンモニウムグルコン酸塩}を得た。
【0060】
吸水性樹脂粒子(A1)100部と抗菌剤(HB1){ジn−デシルメチルエチルアンモニウムグルコン酸塩}0.3部とをコニカルブレンダー(ホソカワミクロン(株)製)で均一混合して、比較用の吸水性樹脂組成物(H3)を得た。
【0061】
<比較例4>
メタノール56部、ジn−ウンデシルメチルアミン298部(0.88モル部)及び炭酸ジメチル144部(1.6モル部)を、120℃で20時間反応させた後、メタノール及び炭酸ジメチルを留去し、濃度を70重量%に調整して、ジn−ウンデシルジメチルアンモニウムメチルカーボネートのメタノール溶液を得た。
【0062】
50重量%グルコン酸水溶液157部(0.4モル部)及び水300部から構成される混合水溶液を80〜90℃に保ちながら、この混合水溶液に、70重量%ジn−ウンデシルジメチルアンモニウムメチルカーボネートのメタノール溶液245部(0.4モル部)を2時間かけて加え、発生する二酸化炭素を除去し、溶媒(水及びメタノール)を留去して、抗菌剤(HB2){ジn−ウンデシルジメチルアンモニウムグルコン酸塩}を得た。
【0063】
吸水性樹脂粒子(A2)100部と抗菌剤(HB2){ジn−ウンデシルジメチルアンモニウムグルコン酸塩}0.5部とをコニカルブレンダー(ホソカワミクロン(株)製)で均一混合して、比較用の吸水性樹脂組成物(H4)を得た。
【0064】
<比較例5>
n−ノニルジメチルアミン171部(1モル部)及びn−ノニルクロライド162.5部(1モル部)を90℃で反応させて、比較用の抗菌剤(HB3){ジn−ノニルジメチルアンモニウムクロライド}を得た。
【0065】
吸水性樹脂粒子(A3)100部と抗菌剤(HB3){ジn−ノニルジメチルアンモニウムクロライド}0.5部とをコニカルブレンダー(ホソカワミクロン(株)製)で均一混合して、比較用の吸水性樹脂組成物(H5)を得た。
【0066】
<比較例6>
n−ノニルジメチルアミン171部(1モル部)及びn−デシルブロマイド222.9部(1モル部)を90℃で反応させて、比較用の抗菌剤(HB4){n−デシルn−ノニルジメチルアンモニウムブロマイド}を得た。
【0067】
吸水性樹脂粒子(A1)100部と抗菌剤(HB4){n−デシルn−ノニルジメチルアンモニウムブロマイド}0.3部とをコニカルブレンダー(ホソカワミクロン(株)製)で均一混合して、比較用の吸水性樹脂組成物(H6)を得た。
【0068】
吸水性樹脂組成物(1)〜(14)及び(H1)〜(H6)について、保水量、粉体流動性及び抗菌性を下記方法により評価し、これらの結果を表1に示した。
【0069】
<保水量>
公称目開き63μmのナイロン網(JIS Z8801−1:2006)で作成したティーバッグ(縦20cm、横10cm)に測定試料1.00gを入れ、生理食塩水(食塩濃度0.9重量%)1,000cc中に無撹拌下、1時間浸漬した後、15分間吊るして水切りした。その後、ティーバッグごと、遠心分離器にいれ、150Gで90秒間遠心脱水して余剰の生理食塩水を取り除き、ティーバックを含めた重量(h1)を測定し次式から保水量を求めた。なお、使用する生理食塩水及び測定雰囲気の温度は25℃±2℃であった。
【0070】

保水量(g/g)=(h1)−(h2)

(h2)は、測定試料の無い場合について上記と同様の操作により計測したティーバックの重量である
【0071】
<粉体流動性>
パウダーテスター(ホソカワミクロン(株)製、公称目開き710μmのふるい)を用いて、安息角を求め、この安息角を粉体流動性とした。安息角が大きいほど粉体流動性に劣ることを表す。
【0072】
<抗菌性>
300ccフラスコに感受性ブイヨン培地3.45g及び水150mlを入れて溶解した後、オートクレーブ滅菌して培地を調製した。この培地に測定試料1.0gを添加して攪拌した後(測定試料は水を吸収して膨潤した)、初期の菌株数が1×10個/mlとなるように大腸菌を播種した。このサンプルを37℃で振とう培養して、2時間後及び10時間後にサンプリングし、滅菌生食水で100倍に希釈を行った。
【0073】
この希釈品を滅菌シャーレに1mlずつ入れた後、寒天培地を20ml注ぎ、シャーレ上に均一に分散固化させ、空気雰囲気下、37℃で2日間培養した。培養後にコロニーカウントし、希釈倍率をかけて生菌株数とした。なお、生菌株数測定は、混和平面培養法にて行った。
【0074】
一方、ブランクとして測定試料を添加しなかったこと以外、上記と同様にして培養した場合の生菌株数は、2時間後で5×10個/ml、10時間後で6×10個/mlであった。
【0075】
大腸菌(初期の菌株数が1×10個/ml)をアンモニア産生菌(初期の菌株数が1×10個/ml)に変更したこと以外、上記と同様にして抗菌性を評価した。一方、ブランクとして測定試料を添加しなかった場合の生菌株数は、2時間後で8×10個/ml、10時間後で4×10 個/mlであった。
【0076】
【表1】



【0077】
<実施例15>
フラッフパルプ100部と、実施例1で得た吸水性樹脂組成物(1)100部とを気流型混合装置{(株)オーテック製パッドフォーマー}で混合した混合物を、坪量約400g/mとなるように目開き63μmのナイロン網で作成したシート上に均一に積層し、5Kg/cmの圧力で30秒間プレスし、吸収体(K1)を得た。
吸収体(K1)を40cm×30cmの長方形に裁断し、これと同じ大きさ(14cm×36cm)の吸水紙(坪量15.5g/m:アドバンテック東洋(株)製、フィルターペーパー2番)2枚で挟んだ後、更にポリエチレンシート(タマポリ(株)製ポリエチレンフィルムUB−1、14cm×36cm)を裏面に、不織布(坪量20.0g/m、14cm×36cm:旭化成(株)製エルタスガード)を表面に配置することにより吸収性物品(1)を1枚作成した。
【0078】
<実施例16〜28>
「吸水性樹脂組成物(1)」を、「吸水性樹脂組成物(2)〜(14)のいずれか」に変更したこと以外、実施例15と同様にして、吸収体(K2)〜(K14)を調製し、さらに吸収性物品(2)〜(14)を作成した。
【0079】
<比較例7〜12>
「吸水性樹脂組成物(1)」を、「吸水性樹脂組成物(H1)〜(H6)のいずれか」に変更したこと以外、実施例15と同様にして、吸収体(HK1)〜(HK6)を調製し、さらに吸収性物品(H1)〜(H6)を作成した。
【0080】
吸収性物品(1)〜(14)及び(H1)〜(H6)について、それぞれ、下記方法により悪臭効果防止テストを行い、結果を表2に示した。
【0081】
<臭気テスト>
測定試料(吸収性物品)の中央部に新鮮尿80mlを加えて吸収させ、5リットルの広口瓶に入れて密閉した後、これを40℃に設定した恒温槽内で10時間保管した。その後、無臭室内で広口瓶の蓋を開けて臭いを嗅ぎ、次の6段階で臭気強度を評価した。評価はT&Tオルファクトメーター法にて臭気判定能力確認済みの10人のパネラーで実施し、10人の平均値を求めた。
なお、新鮮尿は、動物病院から提供された犬尿を使用した。
【0082】
0:無臭
1:やっと感知できる臭い(感知イキ値濃度)
2:何の臭いかわかる弱い臭い(認知イキ値濃度)
3:楽に感知できる臭い
4:強い臭い
5:強烈な臭い
【0083】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性樹脂粒子(A)及び抗菌剤(B)を含有してなり、抗菌剤(B)が一般式(1)で示されるアンモニウム塩であることを特徴とする吸水性樹脂組成物。

(R(R (1)

[Rはn−デシル基、Rはメチル基、Xは塩化物イオン又はグルコン酸アニオンである。]
【請求項2】
抗菌剤(B)の含有量が、吸水性樹脂粒子(A)の重量に基づいて、0.001〜1重量%である請求項1に記載の吸水性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吸水性樹脂組成物と繊維とを含有してなる吸収体。
【請求項4】
請求項3に記載の吸収体を配してなる吸収性物品。

【公開番号】特開2009−235199(P2009−235199A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81602(P2008−81602)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(301023009)サンダイヤポリマー株式会社 (57)
【Fターム(参考)】