説明

吸水性樹脂組成物、吸収体及び吸収性物品

【課題】抗菌、消臭性能に優れ、安全に取り扱うことができ、かつゲル安定性に優れた吸水性樹脂組成物を提供する。また、該吸水性樹脂組成物を用いて製造される吸収体、及び、該吸収体を用いて製造される吸収性物品を提供する。
【解決手段】吸水性樹脂とキク科植物抽出物とを含有する吸水性樹脂組成物。好ましくは、キク科植物抽出物の使用量は、吸水性樹脂100質量部に対して0.005〜5質量部である。例えば、吸収体は、前記吸水性樹脂組成物と親水性繊維とを含有する。例えば、吸収性物品は、液体透過性シートと液体不透過性シートの間に前記吸収体が保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌、消臭性能に優れ、安全に取り扱うことができ、かつゲル安定性に優れた吸水性樹脂組成物に関する。また、本発明は、該吸水性樹脂組成物を用いて製造される吸収体、及び、該吸収体を用いて製造される吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸水性樹脂は、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等の衛生材料、ペット用の尿吸収材料、パッキング材等の土木建築用資材、ドリップ吸収剤、保冷材等の食品鮮度保持用材料、土壌用保水材等の農園芸用物品等の種々の分野で使用されている。
衛生材料である紙おむつ等に代表される吸収性物品は、体液等の液体を吸収する吸収体が、体に接する側に配された柔軟な液体透過性の表面シート(トップシート)と、表面シートの反対側に配された液体不透過性の背面シート(バックシート)とにより保持された構造を有する。通常、吸収体は、吸水性樹脂と親水性繊維との混合物からなる。
吸収性物品においては、体液、特に人尿を吸収した際に、不快な臭いを発生することが問題となっている。これらの臭いは、皮膚及び消化管に存在しているバクテリアが、尿素、タンパク質等の体液の成分を分解する酵素を生産し、体液の成分がその酵素により分解されることによって発生する腐敗臭であると考えられる。
【0003】
これらの臭いの発生を抑制するために、活性炭、ゼオライト等の臭気成分吸着剤を混合した吸収体(例えば、特許文献1、2参照)や、上記バクテリアを殺菌し、経時的な腐敗臭の増加を防ぐ、銀、銅、亜鉛等の抗菌性金属を無機化合物に担持させた無機系抗菌剤と吸水性樹脂とからなる組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。臭いの発生を抑制する他の手段として、第4級アンモニウム塩等の殺菌剤と吸水性樹脂とからなる吸水剤(例えば、特許文献4参照)等が提案されている。
【0004】
また、臭いの発生を抑制するために、抗菌性を有するホスホニウム塩モノマー成分と、該ホスホニウム塩モノマー成分と共重合可能でかつ重合後に高吸水性樹脂となり得るモノマー成分とを架橋重合させた抗菌性高吸水性樹脂が提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【0005】
一方、人尿中には吸水性樹脂を劣化させるいくつかの因子が含まれており、吸水性樹脂が人尿を吸収すると、ゲルの劣化(強度が低下したり、ゲルが分解したりすること)が生じる。ゲルが劣化することで、ゲルの間の隙間が塞がれ、その結果、液体の浸透が妨げられるゲルブロッキングが生じ、液体の拡散性が悪くなり、吸収性物品に使用したときに人尿が漏れる原因となる。またゲルの分解によりゲルの可溶成分が溶出した場合には、かぶれなどの原因となる。
さらに、紙おむつ等の吸収性物品は、夜間の使用のように長時間着用することも多いため、人尿を吸収した後も長時間にわたってゲル安定性を発揮する吸水性樹脂が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−037805号公報
【特許文献2】特表平11−512946号公報
【特許文献3】特表2001−505237号公報
【特許文献4】特開2000−079159号公報
【特許文献5】特開平8−092020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜3に開示されている臭気成分吸着剤や無機系抗菌剤は、吸水性樹脂との親和性に劣るため、紙おむつ等の吸収性物品を製造する際に吸着剤や抗菌剤が発塵し、製造の際の作業環境が悪化するという問題がある。また、特許文献4に開示されている第4級アンモニウム塩等の殺菌剤と吸水性樹脂とからなる吸水剤は、殺菌剤が、皮膚、粘膜と接触することによる炎症を引き起こす可能性がある。特許文献5に開示されている抗菌性高吸水性樹脂には、抗菌性を有するモノマー成分が高価であるため、経済的でないという欠点がある。また、これらの特許文献においては、吸水性樹脂組成物のゲル安定性は、考慮されていない。
【0008】
本発明は、抗菌、消臭性能に優れ、安全に取り扱うことができ、かつゲル安定性に優れた吸水性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、該吸水性樹脂組成物を用いて製造される吸収体、及び、該吸収体を用いて製造される吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、吸水性樹脂とキク科植物抽出物とを含有する吸水性樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる吸水性樹脂組成物は、抗菌、消臭性能に優れ、安全性が高く発塵の問題のないキク科植物抽出物を含有するため、抗菌、消臭性能に優れ、安全に取り扱うことができ、かつゲル安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明にかかる吸水性樹脂組成物は、吸水性樹脂とキク科植物抽出物とを含有する。
【0012】
上記吸水性樹脂としては、例えば、アクリル酸部分中和物重合体の架橋物、デンプン−アクリル酸塩グラフト共重合体の架橋物、ビニルアルコール−アクリル酸塩共重合体の架橋物、無水マレイン酸グラフトポリビニルアルコールの架橋物、架橋イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物等が挙げられる。これらの吸水性樹脂のなかでも、大量の液体を吸収すると共に、多少の荷重をかけても吸収した液体を分子内に保持しうることから、アクリル酸部分中和物重合体の架橋物が好ましい。
【0013】
上記吸水性樹脂の製造方法は特に限定されず、例えば、逆相懸濁重合法、水溶液重合法等が挙げられる。
【0014】
上記キク科植物としては、キク(イエギク)、アルニカ、エチナシ、カミツレ、カワラヨモギ、ステビア、セイヨウウスユキソウ、セイヨウノコギリソウ、トウキンセンカ、フキタンポポ、マリーゴールド、ヤーコン等が挙げられる。これらのキク科植物の中でも、抗菌性や安全性、また吸水性樹脂組成物のゲル安定性に効果があることから、ステビア、トウキンセンカ及びフキタンポポが好ましい。
【0015】
抽出物の原料として用いられる植物の部位は、特に制限はなく、葉、茎、花、蕾、根、種子、果実、果皮、果核、地上部、全草又はこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、特に葉や花を用いることが好ましい。原料は、生のまま抽出に供してもよいが、抽出効率の観点から、乾燥や粉砕等の処理を行ったものが好ましい。
【0016】
キク科植物抽出物は、植物の抽出に一般に用いられる方法により抽出したものを使用してもよいし、市販品を用いてもよい。
【0017】
上記キク科植物から抽出物を取り出す方法としては、例えば、原料を抽出溶媒に浸漬して行う方法が挙げられる。この場合、抽出効率を上げるため攪拌を行ったり、抽出溶媒中でホモジナイズしてもよい。抽出溶媒としては、水、親水性有機溶媒又はこれらの混合溶媒を用いることができる。親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類等が用いられる。抽出温度としては、5℃程度から抽出溶媒の沸点以下の温度が好ましい。抽出時間は、原料、抽出溶媒の種類や抽出温度によって異なるが、4時間〜14日程度が好ましい。
【0018】
上記キク科植物抽出物の使用量は、上記吸水性樹脂100質量部に対して0.005〜5質量部であることが好ましい。吸水性樹脂組成物として充分な抗菌消臭性を発現させ、また得られる吸水性樹脂組成物のゲル安定性の観点から、0.005質量部以上が好ましく、抗菌消臭性能に関する費用対効果と、キク科植物抽出物自身の臭気を抑制する観点から、5質量部以下が好ましい。上記キク科植物抽出物の使用量は、0.05〜3質量部であることがより好ましく、0.1〜2質量部であることが更に好ましい。
【0019】
本発明にかかる吸水性樹脂組成物は、例えば、以下の(a)〜(c)の方法で製造することができるが、本発明にかかる吸水性樹脂組成物はこれらの方法により製造されたものに限定されない。
(a)吸水性樹脂に、キク科植物抽出物を直接噴霧混合する方法。
(b)吸水性樹脂に、キク科植物抽出物の水溶液あるいはアルコール溶液を噴霧混合し、乾燥する方法。
(c)吸水性樹脂を膨潤させない溶媒中に、吸水性樹脂とキク科植物抽出物とを添加し、攪拌混合後、溶媒を除去する方法。
なお、本発明に用いられるキク科植物抽出物は、発塵を抑制する観点から、液状であることが好ましい。
【0020】
本発明にかかる吸水性樹脂組成物と親水性繊維とを含有する吸収体もまた、本発明の1つである。
【0021】
上記親水性繊維としては、例えば、セルロース繊維、人工セルロース繊維、親水化処理された合成繊維等が挙げられる。
【0022】
本発明にかかる吸収体の好適な態様としては、例えば、本発明にかかる吸水性樹脂組成物と親水性繊維とを均一な組成となるように混合することによって得られる混合分散体、2枚の層状の親水性繊維の間に吸水性樹脂組成物が挟まれたサンドイッチ構造体等が挙げられる。
【0023】
本発明にかかる吸収体には、吸収体の形態保持性を高めるために、熱融着性合成繊維、ホットメルト接着剤、接着性エマルジョン等の接着性バインダーを添加してもよい。
【0024】
液体透過性シートと液体不透過性シートとの間に本発明にかかる吸収体が保持されている吸収性物品もまた、本発明の1つである。
【0025】
上記液体透過性シートとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の繊維からなる、エアスルー型、スパンボンド型、ケミカルボンド型、ニードルパンチ型等の不織布が挙げられる。
【0026】
上記液体不透過性シートとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の樹脂からなる合成樹脂フィルム等が挙げられる。
【0027】
本発明にかかる吸収性物品は、例えば、紙おむつ、生理用ナプキンや失禁パッド等の衛生材料、ペット用の尿吸収材料、パッキング材等の土木建築用資材、ドリップ吸収剤、保冷材等の食品鮮度保持用材料、土壌用保水材等の農園芸用物品等に好適に用いられる。
【0028】
以下に、本発明を合成例、製造例、実施例及び比較例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0029】
[合成例]
攪拌機、2段パドル翼、還流冷却器、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えた2L容の丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn−ヘプタン280gをとり、ショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ(株)、リョートーシュガーエステルS−370)0.83gを添加し、撹拌しながら80℃まで昇温してショ糖ステアリン酸エステルを溶解した後、50℃まで冷却した。
一方、500mL容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92g(1.02モル)をとり、外部より冷却しつつ、21質量%の水酸化ナトリウム水溶液146.0gを滴下して75モル%の中和を行った後、ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.074g(0.27ミリモル)、内部架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド9.2mg(0.06ミリモル)を加えて溶解し、第1段目の単量体水溶液を調製した。
前記の第1段目の単量体水溶液の全量を、前記セパブルフラスコに添加して、系内を窒素で充分に置換した後、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、第1段目の重合を30分間行い、第1段目の反応混合物を得た。
一方、別の500mL容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液128.8g(1.43モル)をとり、外部より冷却しつつ、27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gを滴下して75モル%の中和を行った後、ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.10g(0.37ミリモル)、内部架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド12.9mg(0.08ミリモル)を加えて溶解して、第2段目の単量体水溶液を調製した。
前記第1段目の反応混合物を25℃に冷却し、同温度の前記第2段目の単量体水溶液を系内に添加し、30分間吸収させると同時に系内を窒素で充分に置換した後、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、第2段目の重合を30分間行った。
第2段目の重合後、125℃の油浴で反応混合物を昇温し、n−ヘプタンと水との共沸蒸留によりn−ヘプタンを還流しながら222gの水を系外へ抜き出した後、エチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液3.98g(0.46ミリモル)を添加し、80℃で2時間、後架橋反応を行った。その後、125℃の油浴で反応混合物を昇温し、n−ヘプタンを蒸発させて乾燥することによって、吸水性樹脂225.4gを得た。
【0030】
[製造例1]
キク科植物のトウキンセンカの花200gを乾燥、粉砕し、50容量%エタノール水溶液1L中にて、20℃で3日間攪拌抽出した後、濾過して濾液を得た。濾液を減圧下濃縮し、十分に乾燥した後、50容量%エタノール水溶液を用いて溶解し、1質量%トウキンセンカ抽出液を得た。
【0031】
[製造例2]
キク科植物のトウキンセンカの花500gを乾燥、粉砕し、70容量%エタノール水溶液3L中にて、20℃で7日間静置抽出した後、濾過して濾液を得た。濾液を減圧下濃縮し、十分に乾燥した後、50容量%エタノール水溶液を用いて溶解し、5質量%トウキンセンカ抽出液を得た。
【0032】
[製造例3]
キク科植物としてフキタンポポの花200gを使用した以外は製造例1と同様にして、2質量%フキタンポポ抽出液を得た。
【0033】
[製造例4]
キク科植物のステビアの葉200gを乾燥、粉砕し、温水(50℃)1L中にて5時間攪拌抽出した後、濾過して濾液及び濾物を得た。濾物を再度、温水(50℃)1L中にて5時間攪拌抽出した後、濾過して、得られた濾液を先の操作で得られた濾液と混合した。この液を減圧下濃縮し、十分に乾燥した後、50容量%エタノール水溶液を用いて溶解し、1質量%ステビア抽出液を得た。
【0034】
[実施例1]
合成例で得られた吸水性樹脂20gに、キク科植物抽出物として、製造例1で得られたトウキンセンカ抽出液(1質量%)20gを充分に混合した。次いで、この混合物を100℃の油浴で30分間加熱してエタノール及び水を留去し、吸水性樹脂組成物20.2gを得た。
【0035】
[実施例2]
合成例で得られた吸水性樹脂20gに、キク科植物抽出物として、製造例1で得られたトウキンセンカ抽出液(1質量%)0.6gを直接噴霧し、充分に混合した。次いで、この混合物を100℃の油浴で30分間加熱してエタノール及び水を留去し、吸水性樹脂組成物20.0gを得た。
【0036】
[実施例3]
キク科植物抽出物として、製造例2で得られたトウキンセンカ抽出液(5質量%)を16g用いた以外は、実施例1と同様にして吸水性樹脂組成物20.7gを得た。
【0037】
[実施例4]
キク科植物抽出物として、製造例3で得られたフキタンポポ抽出液(2質量%)を15g用いた以外は、実施例1と同様にして吸水性樹脂組成物20.3gを得た。
【0038】
[実施例5]
キク科植物抽出物として、製造例4で得られたステビア抽出液(1質量%)を6g用いた以外は、実施例2と同様にして吸水性樹脂組成物20.0gを得た。
【0039】
[実施例6]
合成例で得られた吸水性樹脂50gに、キク科植物抽出物として、製造例1で得られたトウキンセンカ抽出液(1質量%)0.2gを直接噴霧し、充分に混合した。次いで、この混合物を100℃の油浴で30分間加熱してエタノール及び水を留去し、吸水性樹脂組成物50.0gを得た。
【0040】
[実施例7]
キク科植物抽出物として、製造例2で得られたトウキンセンカ抽出液(5質量%)を24g用いた以外は、実施例1と同様にして吸水性樹脂組成物21.1gを得た。
【0041】
[比較例1]
合成例で得られた吸水性樹脂20gを、そのまま用いた。
【0042】
実施例により得られた吸水性樹脂組成物及び比較例の吸水性樹脂の人尿吸収時のゲル安定性、及び吸収体の臭気官能試験を以下の方法により行った。
【0043】
<人尿吸収時のゲル安定性>
成人男性から採取した人尿39gを100mLビーカーに分取し、吸水性樹脂組成物又は吸水性樹脂1gを添加して、人尿吸収ゲルを作成した。この人尿吸収ゲルを40℃の恒温槽内に入れ、24時間後のゲル安定性について、以下の評価基準に従って評価した。結果を表1に示した。
A:ゲルの弾力性があり、強く押してもつぶれない。
B:ゲルの弾力性はあるが、強く押すとつぶれる。
C:ゲルの形状はあるが、軽くつまむとつぶれる。
D:ゲルの形状が崩れている。
【0044】
<吸収体の臭気官能試験>
(a)吸収体の作製
吸水性樹脂組成物または吸水性樹脂1gと解砕パルプ1gをブレンドしたものを、空気抄造によって直径5cmのティッシュ上に形成させ、同じ大きさのティッシュ上に重ねた後、145kPaの荷重を30秒間施して吸収体を作製した。
【0045】
(b)臭気官能試験
100mLマイヤーフラスコに新鮮な人尿50mLを入れ、尿素0.25g、使用済みおむつから採取したパルプ1gを加え、溶液を24時間放置し発酵尿を作製した。次いで、新鮮な人尿と上記発酵尿を9:1(質量比)の割合で混合することにより、試験液を調製した(新鮮な人尿は無菌なため、発酵尿を混合しないと充分な臭気が発生しない)。
上記(a)で得られた吸収体を250mLガラス瓶に入れた後、上記試験液30gを添加して吸収体を膨潤させた。試験液を添加後、直ちに密封し、40℃で24時間保存した。保存後、5人のパネラー(A〜E)に、250mLガラス瓶中の臭気を、規定基準の「6段階臭気強度表示法」に準じて下記の基準により判定してもらい、その平均値で評価した。結果を表1に示した。
5:強烈な臭い
4:強い臭い
3:楽に認識できる臭い
2:何の臭いか分かる弱い臭い
1:やっと感知できる臭い
0:無臭
【0046】
【表1】

【0047】
表1中のキク科植物抽出物の使用量の数値は、吸水性樹脂100質量部に対する値(質量部)である。
表1から明らかなように、実施例1〜7の吸水性樹脂組成物は、比較例1の吸水性樹脂組成物と比較して、人尿吸収時のゲル安定性に優れ、臭気の抑制にも優れていることがわかる。また実施例6の場合、キク科植物抽出物の量が少ないため、人尿吸収時のゲル安定性が悪くなる傾向にあり、また人尿の不快な臭気の抑制効果が少ない。実施例7の場合、人尿の不快な臭気等は抑制されるが、キク科植物抽出物が多いため、キク科植物抽出物そのものの臭気が強くなる傾向にある。
一方、比較例1においては、キク科植物抽出物が混合されていないため、人尿吸収時のゲル安定性が低く、人尿の不快な臭気の抑制ができない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、抗菌、消臭性能に優れ、安全に取り扱うことができ、かつゲル安定性に優れた吸水性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該吸水性樹脂組成物を用いて製造される吸収体、及び、該吸収体を用いて製造される吸収性物品を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性樹脂とキク科植物抽出物とを含有する吸水性樹脂組成物。
【請求項2】
キク科植物抽出物の使用量が、吸水性樹脂100質量部に対して0.005〜5質量部である請求項1記載の吸水性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載の吸水性樹脂組成物と親水性繊維とを含有する吸収体。
【請求項4】
液体透過性シートと液体不透過性シートの間に請求項3記載の吸収体が保持されている吸収性物品。

【公開番号】特開2013−14707(P2013−14707A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149387(P2011−149387)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)
【Fターム(参考)】