説明

吸水性水分散紙

【課題】 優れた吸液性を有し、且つ、湿潤時の表面強度が高く、使用後は水流で分散処理でき、悪臭物質に対する脱臭作用を有する吸水性水分散紙を提供する
【解決手段】 繊維状カルボキシアルキルセルロースの少なくとも一部にカチオン型水溶性高分子との高分子電解質錯体が形成されてなる錯体繊維を含む吸液層と、その少なくとも片面に水分散性繊維または水分散性繊維と水溶性繊維を含む表面層が抄き合わせ接合により積層されたシート状物の全体又は一部にアルカリ性化合物並びに脱臭剤を含有せしめることで、水分散性と吸水性を兼備し、湿潤時の表面強度が高く、脱臭能力を有する吸水性水分散紙を得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚物等の液滴飛散箇所に敷設して液滴を吸収し、使用後に水洗トイレのフラッシュ水等で分散、流去できる防汚シート等に好適な吸水性水分散紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液滴の吸収用シートとして、ティッシュペーパー等の薄葉紙や不織布の積層体、紙や不織布の間に高吸水性樹脂を添加した積層シート等が使用されている。これらの吸収用シートの用途は、食品のドリップ吸収、貨物輸送用コンテナ内の結露水吸収、野菜や鮮魚の鮮度保持、紙おむつや生理用品の構成部材等、多岐にわたっており、これまでにも次の様に様々な提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、少なくとも1方が伸張紙からなる2枚の基紙の間に、熱可塑性樹脂と吸水樹脂を挟持・固定化した生鮮品輸送用吸水シートが提案されている。
【0004】
特許文献2には、和紙等の2枚の吸水性不織布の間に吸水樹脂を挟持・固定化した汚液吸水用シートが開示されている。
【0005】
特許文献3には、従来の吸水シートの欠点である吸水後の吸水樹脂の脱落を防止する手段として、基紙に反応型ホットメルト接着剤で吸水樹脂を固定した吸水シートが開示されている。
【0006】
特許文献4には、繊維状カルボキシアルキルセルロース塩の少なくとも一部にカチオン型水溶性高分子との高分子電解質錯体が形成された吸水性繊維を抄紙してなる吸水シートが開示されている。
【0007】
特許文献5には、架橋結合した繊維状カルボキシアルキルセルロースからなる表面層と繊維状カルボキシアルキルセルロース水溶性塩の少なくとも一部にカチオン型水溶性高分子との高分子電解質錯体が形成されてなる吸水性繊維を含む吸液層とが抄合せ接合により積層されてなる吸水シートが開示されている。
【0008】
また、使用後水洗トイレ等に流して処分できる吸水シートについて、特許文献6には水洗トイレに流せるトイレットペーパーからなる吸水性層と受け皿状の硬質部材からなり水洗トイレに流せない非吸水性層の二層構造とした小便雫取りマットが開示されている。
【0009】
特許文献7には、吸水性繊維と水溶性繊維とを混抄した吸水シートと、この吸水シートの一方面上に島状に点在するように形成した耐水性を有する複数の粘着剤、更に吸水シートの他方面上には各々独立するように形成した耐水性を有する印刷模様とを備えたトイレ用吸水シートが開示されている。この吸水シートは、使用後に水中に投入すると水溶性の繊維が溶けることによって接着層が形成されていない底面位置や印刷模様のない位置において吸水シートが細かく分散する。
【0010】
【特許文献1】特開平5−31856号公報
【特許文献2】特開平11−227085号公報
【特許文献3】特開2001−158074号公報
【特許文献4】特許第2891803号公報(特開平5−106190号公報)
【特許文献5】特許第3326325号公報(特開平9−239903号公報)
【特許文献6】特開2002−165729号公報
【特許文献7】特許第3692324号公報(特開2003−210359号公報)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1〜5で開示されている吸水シートは基紙として水不溶性の紙や不織布を用いているため、水中に投じてもシート形態が崩壊することがなく、水分散性や水溶性を有さないものである。また、使用している吸水樹脂や吸水性繊維は、水中に投じた後も吸水・膨潤した状態を維持するため、配管等のストレーナーが膨潤ゲルにより目詰まりするなど、排水上の問題が発生する。
【0012】
また、特許文献6で提案されている小便雫取りマットは、吸水性層がトイレットペーパー等の薄紙で吸水量が少ないばかりか、吸水性層自体の剛性が低いため、硬質部材からなり水洗トイレに流せない非吸水性層を受け皿とする二層構造を取る必要があり、吸水性と水分散性を兼備するシートとは言えないものである。
【0013】
特許文献7で開示されているトイレ用吸水シートは、吸水シートの表裏面それぞれに耐水性の粘着剤及び印刷模様が形成されている。このため、吸水シートは水に不溶である部分を含むので、そのままトイレに流すと詰まりや下水施設への負荷増加などの原因になることが懸念される。すなわち、使用後に水洗トイレの流水により島状の小片に分散させることができるものの、耐水性部分はそのまま残るので、下水管や下水処理場で処理できずに堆積し、下水処理施設の処理負荷が増加する場合が想定される。
【0014】
本発明は、上記のような従来の課題を解決するためになされたもので、高い吸液能力を有し、且つ水濡れ時の表面強度が高く、使用後は大量の水流で分散・溶解処理できる吸水性水分散紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、前記特許文献4に記載されているような膨潤性構造体にアルカリ性化合物を含有させることにより、膨潤性構造体の吸水能力が向上するばかりか、該膨潤性構造体を大量の水中に投じた場合、分散・溶解して元の形状が崩壊する現象を見出したことに基づいてなされたものである。
【0016】
本発明者等は、上記現象を利用し、上記膨潤性構造体からなる吸液層の少なくとも片面に、水滴や雫で濡れた場合の表面強度を向上させるための表面層を抄き合わせにより積層し、形成されたシート状物の全体又は一部にアルカリ性化合物を含有せしめて高い吸液能力と水中での分散・溶解性を付与することにより、前記課題を解決し、本発明を完成した。
【0017】
すなわち、本発明によれば、繊維状カルボキシアルキルセルロースの少なくとも一部にカチオン型水溶性高分子との高分子電解質錯体が形成されてなる錯体繊維を含む吸液層と、その少なくとも片面に水分散性または水溶性の表面層が抄き合わせ接合により積層されたシート状物の全体又は一部にアルカリ性化合物が含有されてなることにより、吸水性と水分散性を兼備し、かつ湿潤表面強度の高い吸水性水分散紙を得る事ができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の吸水性水分散紙は優れた吸液性を有し、且つ、湿潤時の表面強度が高く、使用後は水流で分散処理できるので、尿の一時的吸収と使用後の水中廃棄を目的とする防汚シート等、吸液後に水中での廃棄処理を必要とする広い分野への利用が可能である。また、上記特性を損なうことなく脱臭能力を付与することができるので、防汚シート等の悪臭を発する汚水を吸収する用途に好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。図1は本発明に関わる吸水性水分散紙の基本的な構成を模式的に表したものである。吸水性水分散紙1は吸液層11の少なくとも片面に表面層21が抄き合わせ接合により積層されたもので、吸液層11には吸液性の主体となる錯体繊維12が含まれ、また表面層21には水溶性繊維22と水分散性繊維23を含む。
【0020】
本発明において、吸液層は、繊維状カルボキシアルキルセルロースの少なくとも一部にカチオン型水溶性高分子との高分子電解質錯体が形成されてなる錯体繊維を含むことを特徴とするものであり、吸液層は表面層との抄合せ積層後に添加されるアルカリ性化合物により、対応する繊維状カルボキシアルキルセルロースの塩に変換されて吸水性を有するようになる。
【0021】
錯体繊維の基体となる繊維状カルボキシアルキルセルロースとしては、繊維状カルボキシメチルセルロース、繊維状カルボキシエチルセルロース等が列挙される。吸水性や水中に投じた場合の水溶性に関係が深い繊維状カルボキシアルキルセルロースのエーテル化度は、0.1〜1.0、好ましくは0.3〜0.8、更に好ましくは0.4〜0.6である。
【0022】
上記繊維状カルボキシアルキルセルロースに高分子電解質錯体を形成するために添加するカチオン型水溶性高分子は、分子中に塩基性基を有する高分子化合物であり、1級、2級、3級及び4級窒素原子の中から選ばれた少なくとも一種を有する繰り返し単位からなる水溶性高分子である。このようなカチオン型水溶性高分子の例としては、天然高分子化合物のキトサンがあり、合成高分子には、重合体の側鎖に1級、2級、3級又は4級窒素原子を有するポリマー(1)と、重合体の主鎖に1級、2級、3級又は4級窒素原子を有するポリマー(2)とがある。
【0023】
重合体の側鎖に1級、2級、3級又は4級窒素原子を有するポリマー(1)の1つの例としては、(1−a)1級、2級、3級又は4級窒素原子とこれ以外にビニル基などの重合可能な基を有するモノマーのホモポリマー、すなわち、次に挙げるモノマーの単独重合体である。N,N−ジアルキルビニルアミン、ビニルトリアルキルアンモニウム、N−アルキルアミノアルキルアクリレート、N−アルキルアミノアルキルメタアクリレート、N−アルキルアミノアルキルアクリルアミド、N−アルキルアミノアルキルメタアクリルアミド、N,N−ジアルキルアミノアルキルアクリレート、N,N−ジアルキルアミノアルキルメタアクリレート、N,N−ジアルキルアミノアルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルアミノアルキルメタアクリルアミド、アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウム、メタクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウム、アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウム、メタアクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウム、ビニロキシアルキルアミン、N−アルキルビニロキシアルキルアミン、N,N−ジアルキルビニロキシアルキルアミン、N,N,N−トリアルキルビニロキシアルキルアンモニウムなどのモノマー。これらのモノマーにおいてアルキル基は炭素数1〜4であり、アルキル基の代わりにアルカノール基が導入されているものでもよく、また、第4アンモニウム塩の窒素原子に結合する1つのアルキル基の代わりにアルコキシカルボニルアルキレン基が導入されているものでもよい。上記モノマーの単独重合体の具体的一例を挙げれば、ポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド)がある。
【0024】
重合体の側鎖に1級、2級、3級又は4級窒素原子を有するポリマー(1)の別の例としては、(1−b)1級、2級、3級又は4級窒素原子並びに他に重合可能な基を有するモノマーと、他のモノマーとの共重合体、すなわち、前記(1−a)で挙げたモノマーと他のモノマーとの共重合体である。他のモノマーとしては、アクリルアミド、メタアクリルアミド、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、酢酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジンなどである。共重合体の具体的一例を挙げれば、ポリ(3−アクリルアミド−3−メチルブチルトリメチルアンモニウムクロライド−CO−アクリルアミド)がある。
【0025】
重合体の側鎖に1級、2級、3級又は4級窒素原子を有するポリマー(1)の更に別の例としては、(1−c)ポリアクリルアミドなどのホモポリマーをマンニッヒ変性あるいはホフマン分解反応によりカチオン化したものがある。
【0026】
また、重合体の主鎖に1級、2級、3級又は4級窒素原子を有するポリマー(2)としては、(2−a)アイオネンポリマー、(2−b)ポリエチレンイミン、(2−c)狭義のポリアミン樹脂、(2−d)その他の縮合ポリマーがある。
【0027】
(2−a)アイオネンポリマーとは、イオン性アミノ基、特に4級アンモニウム基を主鎖に有するポリマーで、大部分の窒素原子は4級化されているものであり、例えば(2−a−i)分子両端にハロゲン原子を有するジハロ化合物と分子両端に3級窒素原子を有するジ第3アミンとの重付加体、(2−a−ii)第1アミン1モルにエピクロロヒドリン2モルが開環付加して生成する重合性先駆物質(分子両端に塩素基を有する第3アミン)と、分子両端に3級窒素原子を有するジ第3アミンとの重付加体、(2−a−iii)第2アミン1モルにエピクロロヒドリン1モルが開環付加して生成する、一方の分子端に塩素原子を、他方の分子端に3級窒素原子を有する化合物が重付加して得られるポリマーなどである。
【0028】
(2−b)ポリエチレンイミンは、エチレンイミンの開環重合によって生成するポリマーであり、主鎖と分岐した主鎖に、1級、2級及び3級窒素原子を有する。
【0029】
(2−c)ポリアミン樹脂の学問的定義は確立していないが、狭義には、例えば、1級、2級、3級、4級窒素原子を含み、4級化窒素原子が窒素原子総数の半分以下のものと定義され、4級化窒素原子が少ない点で前記アイオネンポリマーと区別される。例としては、次のものが挙げられる。(2−c−i)第1アミン1モルにエピクロロヒドリン1モルが開環付加した化合物を、4級窒素原子の生成を抑えて重縮合したポリマーであるポリアミン樹脂、およびその塩酸塩、(2−c−ii)アルキレンジアミンとエピクロロヒドリンとの重縮合体であるポリアミン樹脂、(2−c−iii)アルキレンジアミンとアルキレンジハライドとの重縮合体であるポリアミン樹脂。
【0030】
(2−d)その他の縮合ポリマーとしては、(2−d−i)アルキレンポリアミンとジカルボン酸との重縮合体であるポリアミンポリアミド、例えばジエチレントリアミンとアジピン酸の重縮合体、(2−d−ii)このポリアミンポリアミドにさらにエピクロロヒドリンとジメチルアミンを付加すると、エピクロロヒドリンの塩素基がポリアミンポリアミドのアミド基に付加して4級化するとともにエピクロロヒドリンがジメチルアミンに開環付加して、主鎖に2級、3級及び4級窒素原子を有し、側鎖に3級窒素原子を有するポリマーとなる。
【0031】
更に、上記のキトサン、単独重合体、共重合体及び変性物等において、1級、2級又は3級窒素原子を4級化剤で4級化したポリマーもカチオン型水溶性高分子である。4級化剤は、1級、2級又は3級の窒素原子にアルキル基、またはアルコキシカルボニルアルキレン基を導入できるもので、メチルクロライド、エチルクロライド、メチルブロマイド等のハロゲン化アルキル、ジメチル硫酸、クロル酢酸メチル等である。4級化反応は繰り返し単位がモノマーの段階で実施してから重合してもよいし、あるいは重合した後、ポリマー中の繰り返し単位に高分子反応により4級化を行ってもよい。
【0032】
上記カチオン型水溶性高分子は、1級、2級、3級又は4級窒素原子以外には架橋結合を生成する反応性の高い官能基、例えばグリシジル基、アルデヒド基、カルボキシル基、ビニル基、アリル基、N−メチロール基、チオール基、イソシアナート、イソチオシアナート等を実質的に含まないことが望ましい。これは、カチオン型水溶性高分子が、繊維状カルボキシアルキルセルロースと高分子電解質錯体を形成すること以外には、共有結合の架橋などを形成しないようにするためである。実質的に含まないとは、共有結合の架橋が、高分子電解質錯体の生成を阻害あるいは減少せしめない程度に含まない意である。
【0033】
また、上記カチオン型水溶性高分子は、カチオン当量がpH3〜9の範囲において0.1〜20ミリ当量/g、好ましくは1〜15ミリ当量/g、更に好ましくは2〜10ミリ当量/gであり、(数)平均分子量は5000〜100000、好ましくは5000〜70000、更に好ましくは5000〜20000である。
【0034】
繊維状カルボキシアルキルセルロースに対するカチオン型水溶性高分子の添加量は、繊維状カルボキシアルキルセルロースのアニオン当量の0.01〜100%のカチオン当量に相当する量の範囲内において、上記カチオン型水溶性高分子の種類に応じて適切な量が選択される。この範囲の量のカチオン型水溶性高分子の添加により、繊維状カルボキシアルキルセルロースに高分子電解質錯体が形成される。高分子電解質錯体とは、反対電荷を有する繊維状カルボキシアルキルセルロースとカチオン型水溶性高分子との間で、主にクーロン力を介して形成されると考えられる錯体である。その構造の詳細は明瞭ではないが、繊維状カルボキシアルキルセルロースの分子間でカチオン型水溶性高分子がイオン架橋したり、繊維状カルボキシアルキルセルロースの分子鎖へカチオン型水溶性高分子が寄り添ったりしている構造等が考えられる。
【0035】
高分子電解質錯体の形成により錯体繊維となった繊維状カルボキシアルキルセルロースは、アルカリ性化合物により対応する塩に変換されると繊維形態を保持したまま膨潤して繊維状ゲルとなるため、吸液性を有するようになる。
【0036】
前記吸液層には、上記錯体繊維に加えて、抄造性向上、湿潤強度向上、コスト低減のために、水分散性繊維を配合することが好ましい。
【0037】
水分散性繊維とは各種の天然繊維、半合成繊維、合成繊維から選択する事ができる。天然繊維としては、木材パルプ、非木材パルプなどの植物パルプ繊維、平均繊維長20mm以下のビスコースレーヨン等の再生セルロース繊維、平均繊維長20mm以下のリヨセル等の精製セルロース繊維である。半合成繊維としては、平均繊維長20mm以下のアセテート、プロミックス繊維。また合成繊維としては、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の生分解性熱可塑性樹脂を原料とする平均繊維長20mm以下の短繊維、平均繊維長20mm以下のポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維等の非生崩壊性合成繊維なども、繊維間の熱融着温度以下で使用する場合、水分散性繊維に含めることができる。なお、上記した非生崩壊性合成繊維は、水分散紙の水分散性や生崩壊性を損なわない範囲で適量を選定して配合しなければならない。
【0038】
更にまた、繊維状カルボキシアルキルセルロースのアルミニウム塩、鉄塩、銅塩、コバルト塩、亜鉛塩、錫塩、鉛塩、バリウム塩、マンガン塩などの繊維状カルボキシアルキルセルロース水不溶性塩も水分散性繊維に含めることができる。これらの繊維状カルボキシアルキルセルロース水不溶性塩にはアンモニア、アミン、イオウ系悪臭物質に対する脱臭効果がある。繊維状カルボキシアルキルセルロース不溶性塩の塩基飽和度(カルボキシル基のうち塩になったものの割合)は2〜50%、好ましくは10〜40%、更に好ましくは20〜30%である。
【0039】
吸液層に配合される水分散性繊維と錯体繊維の割合は、水分散性繊維/錯体繊維=0〜90/100〜10重量%である。吸液層は水分散性繊維を含まず錯体繊維のみで構成されるものであってもよく、一方、水分散性繊維の配合率は、90重量%以下、望ましく60重量%以下であり、更に望ましくは40重量%以下である。水分散性繊維の配合率が90重量%を越えると錯体繊維による吸水能力が低下して好ましくない。
【0040】
前記吸液層には、この他に必要に応じて、澱粉系、ポリアクリルアミド系紙力増強剤、蔗糖脂肪酸エステル等の湿潤剤、製紙用に通常使用される白色又は有色の填料や染料・顔料を添加することができる。
【0041】
以上のような成分で構成される吸液層は、かくして繊維状カルボキシアルキルセルロースの少なくとも一部にカチオン型水溶性高分子との高分子電解質錯体が形成されてなる錯体繊維を抄紙して形成されるが、水分散性繊維等が配合されると抄造性がさらに向上する。吸液層の坪量は、表面層の坪量より大きくすることが必要で、30〜200g/m、好ましくは50〜120g/m、更に好ましくは60〜100g/mである。吸液層は一基の抄き網で単層のシートとして抄造する他、2基以上の抄き網により複数の湿紙を抄造して抄き合わせることにより坪量の大きな吸液層を抄造することができる。また、この場合、吸液層を構成する各層について、錯体繊維と水分散性繊維等の配合率を変えることも可能である。
【0042】
本発明は、上記吸液層の少なくとも片面に水分散性および水溶性繊維からなる表面層が抄き合わせ接合により積層されてなることを特徴とする。表面層は水に濡れた場合に適度な湿潤強度と表面強度を保持し、かつ大量の水中では容易に分散・溶解する特性を有することが必要である。表面層を設けずに吸液層が露出している場合は、水に濡れた際に膨潤したゲルが露出し、紙表面の感触が悪く、外力によって表面形状が崩壊し易くなり、このため実用性に乏しく好ましくない。
【0043】
表面層に配合される水分散性繊維とは、各種の天然繊維、半合成繊維、合成繊維から選択する事ができる。天然繊維としては、木材パルプ、非木材パルプなどの植物パルプ繊維、平均繊維長20mm以下のビスコースレーヨン等の再生セルロース繊維、平均繊維長20mm以下のリヨセル等の精製セルロース繊維である。半合成繊維としては、平均繊維長20mm以下のアセテート、プロミックス繊維。また合成繊維としては、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の生分解性熱可塑性樹脂を原料とする平均繊維長20mm以下の短繊維、平均繊維長20mm以下のポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維等の非生崩壊性合成繊維なども、繊維間の熱融着温度以下で使用する場合、水分散性繊維に含めることができる。更にまた、繊維状カルボキシアルキルセルロースのアルミニウム塩、鉄塩、銅塩、コバルト塩、亜鉛塩、錫塩、鉛塩、バリウム塩、マンガン塩などの繊維状カルボキシアルキルセルロース水不溶性塩も水分散性繊維に含めることができる。これらの繊維状カルボキシアルキルセルロース水不溶性塩にはアンモニア、アミン、イオウ系悪臭物質に対する脱臭効果がある。繊維状カルボキシアルキルセルロース不溶性塩の塩基飽和度(カルボキシル基のうち塩になったものの割合)は2〜50%、好ましくは10〜40%、更に好ましくは20〜30%である。
【0044】
表面層に配合される水溶性繊維とは、繊維状カルボキシアルキルセルロースであり、具体的には繊維状カルボキシメチルセルロース、繊維状カルボキシエチルセルロース等が列挙される。
【0045】
繊維状カルボキシアルキルセルロースはカルボキシアルキル基が遊離酸型のもので、吸水性や水中に投じた場合の水溶性に関係が深いエーテル化度は、0.1〜1.0、好ましくは0.3〜0.8、更に好ましくは0.4〜0.6である。繊維状カルボキシアルキルセルロースは遊離酸型のカルボキシアルキル基を有するため、水に不溶であり、ゲル化することもないが、吸液層と抄合せ接合後に形成されるシートにアルカリ性化合物を含有させることにより対応する水溶性塩に変換され、水溶性繊維となるものである。
【0046】
また、表面層へのアルカリ性化合物の含有を部分的に行い、水分散性を損なわないよう面積約1平方センチメートル以下の島状のパターンで、繊維状カルボキシアルキルセルロースの一部を水溶性塩に変換せずに残すことにより、繊維状カルボキシアルキルセルロースのアンモニア、アミン系悪臭物質との反応性を利用してこれら悪臭物質を雰囲気中から除去する繊維状脱臭剤として機能させることができる。
【0047】
表面層に配合される水分散性繊維および水溶性繊維の種類と配合率は、目標とする湿潤状態での表面強度、引張り強度と、表面層に付与する水分散性、親水性の程度によって決定される。一般に、水溶性繊維の配合率が増すほどアルカリ性化合物を含有した後の表面層は分散・溶解し易くなり、一方、水分散性繊維の配合率が増すほど湿潤状態での表面強度や引張り強さは高くなる。
【0048】
表面層において、適度な表面強度と水分散性を兼備させるための配合は、水分散性繊維/水溶性繊維=100〜70/0〜30重量%、望ましくは水分散性繊維/水溶性繊維=90〜80/10〜20重量%、更に望ましくは水分散性繊維/水溶性繊維=95〜85/5〜15重量%である。
【0049】
上記表面層には、この他に必要に応じて、澱粉系、ポリアクリルアミド系紙力増強剤、蔗糖脂肪酸エステル等の湿潤剤を添加することができる。製紙用に通常使用される白色または有色の填料や染料・顔料の粉体を添加することもできるが、内添の場合は、これら粉体とともに凝集・定着剤を添加して、吸水によりシートが再湿潤状態になった時、粉体が脱落するのを防止しなければならない。凝集・定着剤としては、ポリアクリルアミド類、ポリアクリル酸ソーダ類、ポリエチレングリコール類等の高分子系凝集・定着剤、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化第2鉄、硫酸第2鉄などの無機系凝集・定着剤、カチオン性澱粉、キトサン等の天然高分子系凝集・定着剤を用いることができる。
【0050】
表面層は、吸液層の低い湿潤表面強度を補強し、積層シート全体の湿潤強度を高める必要があるため、その坪量は5〜30g/m、好ましくは10〜20g/mである。坪量が5g/mより低いと湿潤強度は十分付与されず、30g/mを超えると積層シート全体に占める表面層の割合が大きくなり、積層シートの吸水量が低下して好ましくない。
【0051】
積層シートの構成は、1層の吸液層の片面に1層の表面層が抄き合わせ接合された2層構造のもの、1層の吸液層の両面に各1層の表面が抄き合わせ接合された3層構造のものの他、吸液層に配合される水分散性繊維等が異なる吸液層を複数、例えば2、3、4、5層積層し、その片面または両面に表面層が抄き合わせ接合された多層構造のものとすることができる。
【0052】
かくして、表面層と吸液層が抄合せにより接合された積層シートが形成されるが、該積層シートには引き続きアルカリ性化合物が添加され、繊維状カルボキシアルキルセルロースを中和して対応する繊維状カルボキシアルキルセルロース水溶性塩に変換するとともに、中和当量を越える過剰分のアルカリ性化合物を該積層シート中に含有させる。繊維状カルボキシアルキルセルロース水溶性塩の形成により、表面層の水分散性が大幅に向上し、吸液層には吸水性が付与される。また、積層シート中に含有される過剰分のアルカリ性化合物は、該シートが大量の水中に投ぜられた場合にアルカリ性水溶液となり、吸液層の繊維状カルボキシアルキルセルロースとカチオン型水溶性高分子との高分子電解質錯体繊維を解離させるため、吸液層は水に分散・溶解するようになる。
【0053】
アルカリ性化合物とは、次に列挙されるものであり、2種以上を混合して使用しても良い。水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物。炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属の炭酸塩並びに炭酸水素塩。リン酸ナトリウム等のアルカリ金属のリン酸塩、第二リン酸塩。水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の第2族元素金属水酸化物の内、水に不溶な塩を形成しないもの。エタノールアミン等のアミン類、アルカノールアミン類およびアンモニア。
【0054】
アルカリ性化合物の添加量は使用したアルカリ性化合物の種類に関係なく、アルカリ性化合物が添加された部分の表面層に関しては、該表面層に含まれる繊維状カルボキシアルキルセルロースの中和当量以上とすることが必要である。アルカリ性化合物の添加量が中和当量に満たないと、繊維状カルボキシアルキルセルロースが完全に水溶性塩に変換されず、表面層の水分散性が低下するので好ましくない。
【0055】
吸液層については、アルカリ性化合物が添加された部分の吸液層に含まれる繊維状カルボキシアルキルセルロースの中和当量の1.1〜1.7倍にすることが必要である。アルカリ性化合物の量が繊維状カルボキシアルキルセルロースの中和当量の1.1倍に満たないと、吸液層中の過剰なアルカリ性化合物の量が不足し、吸液層が使用後に大量の水中に投ぜられた場合、繊維状カルボキシアルキルセルロースとカチオン型水溶性高分子との高分子電解質錯体繊維が解離しないため、吸液層はシート形態を保持して水に分散・溶解しないので好ましくない。一方、アルカリ性化合物の量が繊維状カルボキシアルキルセルロースの中和当量の1.7倍を越えると、吸液層中の過剰なアルカリ性化合物の量が過大となり、使用中に液滴を吸水した段階で分散・溶解し、使用後までシート形態を保持できなくなるので好ましくない。
【0056】
本発明にかかる吸水性水分散紙を製造するには、繊維状カルボキシアルキルセルロースの分散液へ、カチオン型水溶性高分子を添加することにより、繊維状カルボキシアルキルセルロースの少なくとも一部に高分子電解質錯体を形成した錯体繊維を調製し、これに必要に応じて水分散性繊維を配合して抄紙原料とし、これを抄紙して吸液層湿紙を作製する。また、繊維状カルボキシアルキルセルロースの分散液に水分散性繊維を配合して抄紙原料とし、これを抄紙して表面層湿紙を形成する。吸液層用湿紙と表面層用湿紙を抄き合わせて2層の湿紙とし、該湿紙を加熱乾燥する方法、或いは、上記吸液層湿紙が中間層、表面層湿紙が両外側層となるように抄き合わせて3層の湿紙として、該湿紙を加熱乾燥する方法に基づいて積層シートを作製する。湿紙の抄き合わせは、特開平4−37536号公報に記載されている製紙技術において通常用いられる抄き合わせの方法を用いることができる。
【0057】
次に、上記積層シートにアルカリ性化合物の溶液を含有させる。これらのアルカリ性化合物は水溶液またはメタノール、アセトン等の有機溶媒を含む水溶液の形で添加される。積層シートへの添加方法は、上記アルカリ性化合物の水溶液または該水溶液と相溶性のある水性有機溶媒との混合液の中に該積層シートを浸漬した後、加圧ロールで過剰液を絞る方法、スプレーで散布する方法、ロールコーター等で塗工する方法、グラビア印刷等で印刷する方法など公知の方法を用いることができる。また、印刷方式で面積約1平方センチメートル以下の未印刷部が不連続な島状に形成されるようにアルカリ性化合物を添加してもよい。このようにアルカリ性化合物がパターン状に印刷されると、未印刷部は膨潤性や水分散性が乏しくなり湿潤時の表面強度が向上するが、連続的にアルカリ性化合物が印刷された部分は分散、溶解するので、湿潤状態での表面強度が高まり、かつ水分散性を兼備した積層シートが得られる。
【0058】
上記積層シートには、必要に応じて水溶性または水分散性の紙力増強剤、着色剤等の加工剤を含浸、塗工することができる。水溶性または水分散性の紙力増強剤としては、澱粉、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース塩,アルギン酸塩、各種水溶性ガム類、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。着色剤は一般に製紙用に使用される填料や染料、顔料等の公知のものを用いることができる。
【0059】
加工剤は、積層シートへのアルカリ性化合物の添加前またはアルカリ性化合物と同時に添加することができ、添加方法はサイズプレス等の含浸加工、ロールコーター等による塗工、スプレー散布、グラビア印刷等の印刷方式など公知の方法で行うことができる。
【0060】
本発明に用いる脱臭剤は、アルカリ性化合物との共存下でも脱臭作用を発現でき、かつ積層シートの吸水性能や水分散性並びに湿潤表面強度を低減させない特性が必要である。また、アンモニア、アミン等の塩基性悪臭物質やメチルメルカプタン、ジメチルサルファイド、硫化水素等のイオウ系悪臭物質のうち、少なくとも1つ以上の悪臭物質に対する脱臭能力を持つことが必要である。このような特性を有する脱臭剤であれば、脱臭原理に制限は無く、吸着型、化学反応型等の何れの脱臭剤も使用でき、2種以上の脱臭剤を混合使用しても良い。
【0061】
本発明で使用可能な吸着作用に基づく脱臭剤としては、活性炭、活性炭素繊維、ゼオライト、シリカゲル、活性白土、モンモリロナイト、麦飯石等や、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物、二酸化ケイ素・酸化アルミニウム・酸化亜鉛複合組成物などが挙げられる。これら脱臭剤の形状は粉末、顆粒、繊維状等があり、その形状に制限はない。
【0062】
本発明で使用可能な化学反応に基づく脱臭剤としては、ポリカルボン酸の金属塩または金属キレート化合物が挙げられる。ポリカルボン酸とは1分子内に1つ以上のカルボキシル基を有する化合物で、分子量は任意なもので良く、高分子電解質でもよい。ポリカルボン酸の具体例としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ポリアクリル酸架橋体、ポリメタクリル酸架橋体、カルボン酸型弱酸性陽イオン交換樹脂、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸などが挙げられる。
【0063】
ポリカルボン酸の金属塩または金属キレート化合物とは、上記ポリカルボン酸と多価金属イオンとの塩または金属キレート化合物で、多価金属イオンの具体例としてFe2+、Fe3+、Cu2+、Al3+、Mg2+、Zn2+、Sn4+、Pb2+、Ba2+、Ca2+等の各イオンを例示できる。これらの金属イオンは通常いずれか1種類が用いられるが2種以上同時に用いてもよい。
【0064】
上記化学反応型脱臭剤の形状は粉末、顆粒、繊維状等があるが、その形状に制限はなく同様に使用できる。
【0065】
吸着型脱臭剤および化学反応型脱臭剤の添加方法は、吸液層や表面層の抄紙原料に添加して抄造時に抄き込む方法、および積層シート形成後に含浸、塗布等の方法によって添加することができ、何れの方法においても本発明の吸水性水分散紙の吸水性能や水分散性を低下させることはない。なお、積層シート形成後に脱臭剤を添加する場合、脱臭剤の添加時期は該積層シートに対するアルカリ性化合物の添加前または添加後あるいは同時添加の何れであってもよい。
【0066】
上記脱臭剤の添加量は0.1〜20g/m、好ましくは2〜10g/mである。添加量が0.1g/mに満たないと脱臭能力が小さく実用性に乏しい。また、添加量が20g/mを越えると、脱臭剤が脱落し易くなり好ましくない。該脱臭剤には、必要に応じて澱粉、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の水溶性バインダーや粘度調整剤等を配合することができる。
【0067】
本発明の吸水性水分散紙に使用できる更に別種の脱臭剤として、酸性化合物が挙げられる。該酸性化合物は、アンモニア等の塩基性悪臭物質の脱臭に有効で、中和反応により塩基性悪臭物質を無臭性の物質に変換することができる。本発明の吸水性水分散紙を前記した防汚シートとして用いる場合は、男性用便器の尿滴飛散箇所に敷設して尿滴を吸収し、使用後に水洗トイレのフラッシュ水等で分散、流去する使用方法が想定される。この用途においては、アンモニア等の塩基性悪臭物質が主体となるため、脱臭剤として上記酸性化合物が有効に使用できる。
【0068】
しかし、酸性化合物として硫酸等の強酸を用いると、吸液層並びに表面層の繊維状カルボキシアルキルセルロースとアルカリ性化合物から生成した繊維状カルボキシアルキルセルロース水溶性塩が水不溶性の繊維状カルボキシアルキルセルロースに加水分解され、吸水性と水分散性が失われる。繊維状カルボキシアルキルセルロース水溶性塩と共存して加水分解を引き起こさない酸性化合物はカルボキシアルキルセルロースより酸性度が低いことが必要で、コハク酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、リンゴ酸、クエン酸、グルタル酸、乳酸等のpka値が3.0以上の有機酸、第一リン酸塩等の弱酸水素塩などが挙げられる。
【0069】
これらの酸性化合物からなる脱臭剤は、アルカリ性化合物添加後の積層シートの片面または両面にパターン状に塗布する必要がある。塗布パターンは、面積約1平方センチメートル以下の塗布部が不連続な島状に形成されるようにして、塗布しない部分はアルカリ性化合物が中和されずに残留するようにしなければならない。このように酸性化合物からなる脱臭剤がパターン状に塗布されると、塗布部はアルカリ性化合物が中和されるものの繊維状カルボキシアルキルセルロース水溶性塩はそのまま残るため吸水性を喪失することはない。一方、アルカリ性化合物が存在しないため、脱臭剤塗布部は水分散性が乏しくなるが、連続層となっている脱臭剤未塗布部にはアルカリ性化合部が残留しており、水中で分散、溶解するので、吸水性、水分散性および塩基性悪臭物質の脱臭能力を兼備した吸水性水分散紙が得られる。
【0070】
酸性化合物からなる脱臭剤の塗布方法は、フレキソ印刷、クラビア印刷、スクリーン印刷等の印刷方式、粉体散布機による点状散布方式、ホットメルトアプリケーターによる点状溶融添加方式などが挙げられる。
【0071】
脱臭剤の塗布量は0.1〜20g/m、好ましくは2〜10g/mである。塗布量が0.1g/mに満たないと脱臭能力が小さく実用性に乏しい。また、塗布量が20g/mを越えると、塗布層が脱落し易くなり好ましくない。酸性化合物からなる脱臭剤には、必要に応じて澱粉、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の水溶性バインダーや粘度調整剤等を配合することができる。
【実施例1】
【0072】
以下に本発明にかかる吸水性水解紙の実施例を示すが、各実施例、および比較例において、吸水性水分散紙の吸水量、湿潤状態での表面強度、水分散性、アンモニア脱臭能力は気温摂氏23度、相対湿度50%に設定した試験室内に於いて、次のようにして評価した。なお、以下の実施例において重量部、重量%とあるのは、固形分重量部、固形分重量%の意味である。
【0073】
〈吸水量〉10cm×12cmの試験片を100メッシュ金網製の籠に入れ、水道水1000ml中に15分間浸漬した後引き上げ、一端を上にして1分間吊るして過剰水を落下させてから試験片の重量を測定した。吸水量は次式により算出した。
吸水量(g/g)=〔(過剰水除去後の試験片重量g)−(試験片風乾重量g)〕÷(試験片風乾重量g)
【0074】
〈湿潤表面強度〉10cm×10cmの試験片の表面層側の中央部分に、3ml容シリンジで水滴を5滴滴下し、水滴が紙中に浸透した後、指を載せ、力をかけず30往復擦った時の表面の破れ及びゲル化の程度を観察し、5段階で評価した。表面強度1は破れ、ゲル化による表面形状の崩壊が極めて多い状態、表面強度2はゲル化が起こり表面形状の部分的な崩壊が認められた状態、表面強度3は表面がややゲル化するが形状崩壊しない状態、表面強度4は表面にぬめりが生ずるがゲル化や破れはほとんどない状態、表面強度5は破れやゲル化が生じない状態を示している。本評価にて表面強度4以上を以て実用的強度を有するものとした。
【0075】
〈水分散時間〉300mlビーカーに脱イオン水300mlを入れてスターラーで650rpmに攪拌しながら3cm角の試験片1枚を投入し、試験片が2つ以上に千切れる時間をストップウォッチで求め、5回の測定の平均値を水分散時間とした。水分散時間が短いほど水分散性は優れていると評価した。
【0076】
〈アンモニア脱臭能力〉15cm×20cmの試験片を容量300mlの三角フラスコに入れてガス注入口付きシリコンゴム栓で密栓した後、ガス注入口からアンモニア標準ガスをガスタイトシリンジで注入して三角フラスコ内のガス初濃度を200PPMとした。1時間後に株式会社ガステック製ガス検知管をガス注入口から三角フラスコ内に差し込み、三角フラスコ内のガス濃度(PPM)を測定し、次式により脱臭率を算出した。アンモニア脱臭率(%)=100−ガス検知管定量濃度÷アンモニアガス初濃度×100
【0077】
(吸液層の作製)
繊維状カルボキシメチルセルロース(CMC−H)(ニチリン化学(株)製、エーテル化度0.43、遊離酸型)を水に分散させて、1.5%濃度にした分散液を用意した。これにポリアミン樹脂(住友化学工業(株)製、数平均分子量10000、カチオン当量はpH6で5.8ミリ当量/g、重合体主鎖に4級化窒素原子および3級窒素原子含有)を前記繊維状カルボキシメチルセルロースに対して2.0重量%の割合で添加し攪拌して得た錯体繊維、および表1の吸液層の水分散性繊維の欄に示すような各種水分散性繊維を、それぞれ所定重量部配合して吸液層の抄紙用原料を調成し、坪量60g/mの吸液層湿紙を作製した。
【0078】
(表面層の作製)
別に、水分散性繊維としてカナダ濾水度680CSFに叩解した針葉樹晒し木材パルプを用い、水中に分散して表面層の抄紙用原料を調成し、坪量10g/mの表面層湿紙を作製した。
【0079】
(積層紙の作製)
吸液層湿紙の片面に表面層湿紙を重ね、搾水用濾紙を介して3.5kg/cmで5分間加圧した後、回転式ドライヤーの加熱鏡面板に接触させて乾燥し、2層抄き合わせ型の積層紙を作製した。
【0080】
得られた積層紙について、アルカリ性化合物として炭酸ナトリウムを用いて含浸加工し、回転式ドライヤーで上記と同様に乾燥して本発明の吸水性水分散紙を得た。上記手抄き紙へのアルカリ性化合物の添加量は、錯体繊維を形成する繊維状カルボキシメチルセルロースのアニオン当量の1.26倍とした。また、その特性を表1に示した。
【実施例2】
【0081】
実施例1で作製した積層紙を用い、含浸加工時の炭酸ナトリウム添加量を、錯体繊維を形成する繊維状カルボキシメチルセルロースのアニオン当量の1.30倍とした他は、実施例1と同様の手順にて本発明の吸水性水分散紙を得た。
【実施例3】
【0082】
実施例1で作製した積層紙を用い、含浸加工時のアルカリ性化合物として炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム1:1混合物を用い、添加量を錯体繊維を形成する繊維状カルボキシメチルセルロースのアニオン当量の1.47倍とした他は、実施例1と同様の手順にて本発明の吸水性水分散紙を得た。
【実施例4】
【0083】
実施例3と同様の手順にて本発明の吸水性水分散紙を得たが、含浸加工時の炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム1:1混合物添加量を錯体繊維を形成する繊維状カルボキシメチルセルロースのアニオン当量の1.53倍とした
【実施例5】
【0084】
実施例1で作製した積層紙を用い、含浸加工時の炭酸ナトリウム添加量を、錯体繊維を形成する繊維状カルボキシメチルセルロースのアニオン当量の1.10倍とした他は、実施例1と同様の手順にて本発明の吸水性水分散紙を得た。
【0085】
(比較例1、2、および3)
また、上記炭酸ナトリウム無添加のもの、および添加量が繊維状カルボキシメチルセルロースのアニオン当量の1.05、1.78倍のものも作製し、それぞれ比較例1〜3としてその特性を表3に示した。
【0086】
表1より、実施例1〜5の2層抄き合わせ型積層紙は、吸水量が自重(坪量70g/m)の18倍以上と高く、湿潤表面強度は5で破れやゲル化が見られず、水分散時間は10秒以下で水分散性が優れていた。一方、表3の比較例1のように炭酸ソーダを添加しないものや、比較例2のように添加した炭酸ソーダの当量比が1.10に満たないものは吸水量が極めて低く、水分散時間が極度に長くなり、実質的に水分散性のないものであった。また、比較例3のように添加した炭酸ナトリウムの当量比が1.7を越えるものは、吸水量、水分散性が優れているものの湿潤時の表面強度が弱く、濡れた部分が溶けて穴が開いてしまう。
【0087】
以上のことから、本発明の吸水性水分散紙は、炭酸ナトリウムの添加量が繊維状カルボキシメチルセルロースのアニオン当量の1.10〜1.70倍の範囲であれば、吸水性、水分散性が高く、少量の水濡れによっても表面形態が崩れない湿潤表面強度を有することが明白である。
【実施例6】
【0088】
(吸液層の作製)
繊維状カルボキシメチルセルロース(CMC−H)(ニチリン化学(株)製、エーテル化度0.43、遊離酸型)を水に分散させて、1.5%濃度にした分散液にカチオン型水溶性高分子としてカチオン型ポリアクリルアミド樹脂(明成化学工業(株)製、カチオン当量4.5ミリ当量/g、重合体側鎖に4級化窒素原子含有)を前記繊維状カルボキシメチルセルロースに対して2.0重量%の割合で添加し攪拌して得た錯体繊維を用意した。次いで、カナダ濾水度680CSFに叩解した針葉樹晒し木材パルプの水中分散液を用意し、それぞれを表2に示すように所定重量部配合して吸液層の抄紙用原料を調成し、坪量60g/mの吸液層湿紙を作製した。
【0089】
(表面層の作製)
別に、繊維状カルボキシメチルセルロース(CMC−H)(ニチリン化学(株)製、エーテル化度0.43、遊離酸型)とカナダ濾水度680CSFに叩解した針葉樹晒し木材パルプを20:80の割合(重量部)で配合して水中に分散した混合繊維原料を用意し、坪量10g/mの表面層湿紙を作製した。
【0090】
(積層紙の作製)
吸液層湿紙の片面に表面層湿紙を重ね、搾水用濾紙を介して3.5kg/cmで5分間加圧した後、回転式ドライヤーの加熱鏡面板に接触させて乾燥し、2層抄き合わせ型の積層紙を作製した。
【0091】
得られた積層紙について、アルカリ性化合物として炭酸ナトリウムを用いて含浸加工し、回転式ドライヤーで上記と同様に乾燥して本発明の吸水性水分散紙を得た。上記積層紙への炭酸ナトリウムの添加量は、錯体繊維を形成する繊維状カルボキシメチルセルロースのアニオン当量の1.30倍とした。特性を表2に示した。
【実施例7】
【0092】
実施例6と同様の手順にて本発明の吸水性水分散紙を得たが、表面層の繊維配合を、繊維状カルボキシメチルセルロース(CMC−H)(ニチリン化学(株)製、エーテル化度0.43、遊離酸型)とカナダ濾水度680CSFに叩解した針葉樹晒し木材パルプを30:70の割合(重量部)とした。
【0093】
(比較例4、5)
上記表面層の繊維状カルボキシメチルセルロースの配合割合を40重量部または50重量部として、他は実施例6、7と同様にした吸水性水分散紙を作製し、比較例4、5として表4に示した。
【0094】
表2より、実施例6、7の2層抄き合わせ型積層紙は、吸水量が自重(坪量70g/m)の25倍と高く、湿潤表面強度は4〜5で破れやゲル化が見られず、水分散時間は5秒以下で水分散性が優れていた。一方、表4の比較例3、4のように表面層の水溶性繊維の配合率が30重量%を越えたものは吸水量が高く、水分散時間が短くなるものの、湿潤時の表面強度が弱く、濡れた部分が破れたり溶けて穴が開いてしまう。
【0095】
以上のことから、本発明の吸水性水分散紙は、表面層の水溶性繊維の配合率が0〜30重量%の範囲であれば、吸水性、水分散性が高く、少量の水濡れによっても表面形態が崩れない湿潤表面強度を有することが明白である。
【実施例8】
【0096】
(吸液層の作製)
繊維状カルボキシメチルセルロース(CMC−H)(ニチリン化学(株)製、エーテル化度0.43、遊離酸型)を水に分散させて、1.5%濃度にした分散液を用意した。これにポリエチレンイミン樹脂((株)日本触媒製、数平均分子量70000、重合体主鎖に1級、2級、および3級窒素原子含有)を前記繊維状カルボキシメチルセルロースに対して0.03重量%の割合で添加し攪拌して得た錯体繊維の50重量部と、水分散性繊維としてカナダ濾水度680CSFに叩解した針葉樹晒し木材パルプの50重量部を配合して吸液層の抄紙用原料を調成し、坪量53g/mの吸液層湿紙を作製した。
【0097】
(表面層の作製)
別に、繊維状カルボキシメチルセルロース(CMC−H)(ニチリン化学(株)製、エーテル化度0.43、遊離酸型)の20重量部とカナダ濾水度680CSFに叩解した針葉樹晒し木材パルプの80重量部を配合した混合繊維原料を用意し、坪量27g/mの表面層湿紙を作製した。
【0098】
(積層紙の作製)
吸液層湿紙の両面に表面層湿紙を重ね、搾水用濾紙を介して3.5kg/cmで5分間加圧した後、回転式ドライヤーの加熱鏡面板に接触させて乾燥し、3層抄き合わせ型の積層紙を作製した。特性を表5に示した。
【0099】
得られた積層紙について、アルカリ性化合物として炭酸ナトリウムを用い、炭酸ナトリウム/酸化澱粉(日本コーンスターチ(株)製)/吸着型脱臭剤(大和化学工業(株)製、二酸化ケイ素・酸化アルミニウム・酸化亜鉛複合組成物)=7/1/1.35重量部の割合で配合した水溶液を含浸加工し、回転式ドライヤーで乾燥して表5の実施例8に示す本発明の吸水性水分散紙を得た。なお、上記積層紙への炭酸ナトリウムの添加量は、錯体繊維を形成する繊維状カルボキシメチルセルロースのアニオン当量の1.60倍とした。また、吸着型脱臭剤の添加量は1.5g/mであった。
【0100】
表5より、実施例8の3層抄き合わせ型積層紙は、吸水量が自重(坪量107g/m)の28倍と高く、湿潤表面強度は5で破れやゲル化が見られず、水分散時間は8秒で水分散性が優れていた。また、アンモニア脱臭率は60%で、アンモニアガスに対する脱臭作用が見られた。これらのことから、本発明の3層抄き合わせ型吸水性水分散紙は、吸水性、水分散性が高く、少量の水濡れによっても表面形態が崩れない湿潤表面強度、並びに脱臭能力を有することが明白である。
【実施例9】
【0101】
(吸液層の作製)
実施例8と同様にして坪量80g/mの吸液層湿紙を作製した。
【0102】
(表面層の作製)
別に、繊維状カルボキシメチルセルロース(CMC−H)(ニチリン化学(株)製、エーテル化度0.43、遊離酸型)の10重量部とカナダ濾水度650CSFに叩解した広葉樹晒し木材パルプの80重量部およびレーヨン短繊維(1.7dt×5mm)の10重量部を配合した混合繊維原料を用意し、坪量30g/mの表面層湿紙を作製した。
【0103】
(積層紙の作製)
吸液層湿紙の両面に表面層湿紙を重ね、搾水用濾紙を介して3.5kg/cmで5分間加圧した後、回転式ドライヤーの加熱鏡面板に接触させて乾燥し、3層抄き合わせ型の積層紙を作製した。
【0104】
得られた積層紙について、アルカリ性化合物として炭酸ナトリウムを用い、炭酸ナトリウム/酸化澱粉(日本コーンスターチ(株)製)/化学反応型脱臭剤(ポリアクリル酸鉄(III)塩粉末、ポリアクリル酸のカルボキシル基に対する鉄(III)イオンのグラム当量比:0.5)=7/1/2重量部の割合で配合した水溶液を含浸加工し、回転式ドライヤーで乾燥して表5の実施例9に示す本発明の吸水性水分散紙を得た。なお、上記積層紙への炭酸ナトリウムの添加量は、錯体繊維を形成する繊維状カルボキシメチルセルロースのアニオン当量の1.49倍とした。また、化学反応型脱臭剤の添加量は2.5g/mであった。
【0105】
表5より、実施例9の3層抄き合わせ型手抄き紙は、吸水量が自重(坪量140g/m)の32倍と高く、湿潤表面強度は5で破れやゲル化が見られず、水分散時間は4秒で水分散性が優れていた。また、アンモニア脱臭率は99%で、アンモニアガスに対する優れた脱臭作用を有していた。これらのことから、本発明の3層抄き合わせ型吸水性水分散紙は、吸水性、水分散性が高く、少量の水濡れによっても表面形態が崩れない湿潤表面強度、並びに脱臭能力を有することが明白である。
【実施例10】
【0106】
実施例8と同様にして3層抄き合わせ型の積層紙を作製した。得られた積層紙について、アルカリ性化合物として炭酸ナトリウムを用い、炭酸ナトリウム/酸化澱粉(日本コーンスターチ(株)製)=7/1重量部の割合で配合した水溶液を含浸加工し、回転式ドライヤーで乾燥して吸水性水分散紙を得た。なお、上記手抄き紙への炭酸ナトリウムの添加量は、錯体繊維を形成する繊維状カルボキシメチルセルロースのアニオン当量の1.60倍とした。
【0107】
次に、酸性化合物からなる脱臭剤としてコハク酸を用い、コハク酸/ポリビニルピロリドン/エチルアルコール=15/3/82重量部の組成の塗布液を、直径2mmの円が水玉模様状に分散したパターンで上記吸水性水分散紙の片面にグラビア印刷した。コハク酸の添加量は4g/mであった。
【0108】
表5より、実施例10の3層抄き合わせ型手抄き紙は、吸水量が自重(坪量111g/m)の25倍と高く、湿潤表面強度は5で破れやゲル化が見られず、水分散時間は8秒で水分散性が優れていた。また、アンモニア脱臭率は99%で、アンモニアガスに対する優れた脱臭作用が見られた。これらのことから、本発明の3層抄き合わせ型吸水性水分散紙は、吸水性、水分散性が高く、少量の水濡れによっても表面形態が崩れない湿潤表面強度、並びに脱臭能力を有することが明白である。
【0109】
表1は実施例1から5までの特性をまとめたものである。
【表1】

【0110】
表2は実施例6および7の特性をまとめたものである。
【表2】

【0111】
表3は比較例1から3までの特性をまとめたものである。
【表3】

【0112】
表4は比較例4及び5の特性をまとめたものである。
【表4】

【0113】
表5は実施例8から10の特性をまとめたものである。
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明による吸水性水分散紙は優れた吸水性を持ち、また廃棄処理に於いては下水道処理施設等への負荷を増大させることなく水分散処理が可能であり、また紙の特性である加工しやすさを持ち合わせている事から、水滴等による濡れの発生しやすい箇所での清潔保持に好適であり、特にトイレ用防汚マット、介護用マット等への応用に適している。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】吸収層の片面に表面層を設けた本発明の吸水性水分散紙の構成を示した断面模式図である。
【符号の説明】
【0116】
1 吸水性水分散紙
11 吸水層
12 錯体繊維
21 表面層
22 水溶性繊維
23 水分散性繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維状カルボキシアルキルセルロースの少なくとも一部にカチオン型水溶性高分子との高分子電解質錯体が形成されてなる錯体繊維を含む吸液層と、その少なくとも片面に水分散性および水溶性繊維とを含む表面層が抄き合わせ接合により積層されたシート状物の全体又は一部にアルカリ性化合物が含有されてなることを特徴とする吸水性水分散紙。
【請求項2】
吸液層が水分散性繊維を含むことを特徴とする請求項1に記載の吸水性水分散紙。
【請求項3】
表面層の水溶性繊維が繊維状カルボキシアルキルセルロースであることを特徴とする請求項1に記載の吸水性水分散紙。
【請求項4】
水分散性繊維が、天然繊維、半合成繊維および合成繊維から選ばれた少なくとも1種である請求項1または2に記載の吸水性水分散紙。
【請求項5】
繊維状カルボキシアルキルセルロースの一部または全部が水溶性塩を形成していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の吸水性水分散紙。
【請求項6】
アルカリ性化合物がアルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、第二リン酸塩、ホウ酸塩、珪酸塩、並びにアンモニア、アミン類、アルカノールアミン類から選ばれた少なくとも1種である請求項1〜5のいずれかに記載の吸水性水分散紙。
【請求項7】
カチオン型水溶性高分子が重合体の側鎖に1級、2級、3級または4級窒素原子を有するポリマーおよび重合体の主鎖に1級、2級、3級または4級窒素原子を有するポリマーの中から選ばれた少なくとも1種である請求項1〜6のいずれかに記載の吸水性水分散紙。
【請求項8】
前記吸水性水分散紙は、少なくとも1種類以上の脱臭剤を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の吸水性水分散紙。
【請求項9】
脱臭剤が二酸化ケイ素・酸化アルミニウム・酸化亜鉛複合組成物であることを特徴とする請求項8に記載の吸水性水分散紙。
【請求項10】
脱臭剤がポリカルボン酸の金属塩または金属キレート化合物であることを特徴とする請求項8に記載の吸水性水分散紙。
【請求項11】
脱臭剤がコハク酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、リンゴ酸、クエン酸、グルタル酸、乳酸等のpka値が3.0以上の有機酸、第一リン酸塩等の弱酸水素塩であり、かつこれらの脱臭剤が、アルカリ性化合物添加後の積層シートの片面または両面に不連続な島状パターン状に塗布されていることを特徴とする請求項8に記載の吸水性水分散紙。

【図1】
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【公開番号】特開2009−7723(P2009−7723A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192599(P2007−192599)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000176637)日本製紙パピリア株式会社 (26)
【Fターム(参考)】