説明

吸込みケーシング及び流体機械

【課題】軸方向に小型化を図りつつ、流体を周方向に均一なものとして軸方向に導入可能な吸込みケーシング及び流体機械を提供する。
【解決手段】吸込みケーシング1Aは、径方向外周側から内周側へ流体を導入する吸込ノズル11と、吸込ノズル11と外周側で連通する略ドーナツ状の空間で、吸込ノズル11から導入された流体Fを、軸方向Lに開口し略環状に配設された入口開口部に案内するチャンバー12とを備え、チャンバー12は、径方向幅が、吸込ノズル11と連通する接続部から中心軸を挟んで反対側に向かうに従って、周方向Cに次第に狭くなるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、径方向に沿って導入される流体を、略環状の開口に向かって軸方向に沿うように案内する吸込みケーシング及びこれを備えた流体機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、パイプラインや大型ターボ冷凍機に用いられる圧縮機等の流体機械では、流体を導入する流体導入部に、該流体導入部から装置本体側に回転軸回りに周方向全体にわたって流体を供給するために、吸込みケーシングが設けられている。このような吸込みケーシングは、例えば、径方向外周側から内周側へと流体を導入する吸込ノズルと、該吸込ノズルと連通してドーナツ状に形成された円環流路とを備え、この円環流路から軸方向に流体を導入する構造を有している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、上記のような流体機械では、その性能向上、振動抑制などの点から、流体を周方向全体にわたって均一なものとして供給することが要求され、図7及び図8に示すような吸込みケーシングが採用されている。すなわち、図7及び図8に示す圧縮機50において、吸込みケーシング51は、吸込ノズル52と、該吸込ノズル52と連通してドーナツ状に形成されたチャンバー53と、チャンバー53の内周側にラッパ状に形成され、チャンバー53の内周壁において軸方向Lにその一部で開口する吸込流路54とを備えている。このような吸込みケーシング51では、吸込流路54がチャンバー53の内周壁において軸方向Lの一部のみ開口していることで、吸込ノズル52から導入された流体Fは、概ね、チャンバー53内に周方向C全体にわたって充満された後に、ラッパ状の吸込流路54に流入し装置本体55側に導入される。このため、特許文献1のような構造と比較して、周方向Cに流体の均一化を図ることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−309154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図7及び図8に示すような吸込みケーシング51でも、吸込ノズル52から導入された流体Fの一部がチャンバー53内で周方向Cに流通せずに直接吸込流路54に流入し、装置本体55側のインペラ55aに供給されてしまう。このため、流体Fの周方向Cの均一化を図るには、チャンバー53の軸方向寸法が大きくなってしまい、流体機械全体として軸方向に大型化してしまう問題があった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、軸方向に小型化を図りつつ、流体を周方向に均一なものとして軸方向に導入可能な吸込みケーシング及び流体機械を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明の吸込みケーシングは、径方向外周側から内周側へ流体を導入する吸込ノズルと、該吸込ノズルと外周側で連通する略ドーナツ状の空間で、前記吸込ノズルから導入された流体を、軸方向に開口し略環状に配設された入口開口部に案内するチャンバーとを備え、該チャンバーは、径方向幅が、前記吸込ノズルと連通する接続部から中心軸を挟んで反対側に向かうに従って、周方向に次第に狭くなるように形成されていることを特徴としている。
【0008】
この構成によれば、略ドーナツ状の空間であるチャンバーの径方向幅が、吸込ノズルと連通する接続部から中心軸を挟んで反対側に向かうに従って、周方向に次第に狭くなるように形成されている。このため、吸込ノズルから導入された流体は、接続部側から反対側へ周方向に流通するに従って入口開口部に径方向に漸近するように案内されることとなり、接続部側に対してその反対側で入口開口部への流入を促進させることができる。このため、チャンバー内において接続部側だけで流体が滞留し、また、入口開口部に流入してしまうことを抑えて、接続部と反対側へと流通させることができ、流体の周方向の均一化を図ることができる。また、径方向幅が周方向に次第に狭くなる形状によって周方向の均一化を図ることができることで、チャンバーの軸方向寸法を最小限とすることができる。
【0009】
また、上記の吸込みケーシングにおいて、前記チャンバー内に周方向に複数設けられ、前記吸込ノズルから周方向に沿って流入した前記流体をそれぞれ前記入口開口部に案内する第一の仕切羽根を備え、該第一の仕切羽根のそれぞれは、内周端側で径方向に沿って前記入口開口部に向かうように配設されているとともに、外周端側に向かうに従って前記吸込ノズルに向かうように配設されていることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、吸込ノズルからチャンバー内に導入された流体は、周方向に複数設けられ内周端側で径方向に沿って入口開口部に向かうように配設された第一の仕切羽根によって入口開口部に案内される。ここで、第一の仕切羽根は、外周端側に向かうに従ってそれぞれ吸込ノズルに向かうように配設されていることで、接続部と反対側においても、接続部側から周方向に沿って流通する流体を好適に入口開口部まで案内することができる。このため、チャンバー内で接続部側から反対側への流体の周方向の流通をさらに促進することができ、入口開口部へ導入される流体の周方向の均一化をさらに図ることができる。
【0011】
また、上記の吸込みケーシングにおいて、前記チャンバー内に設けられ、前記吸込ノズルから径方向に沿って導入される前記流体を周方向に沿うように案内する第二の仕切羽根を備えることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、吸込ノズルからチャンバー内に径方向に沿って導入された流体は、第二の仕切羽根によって周方向に沿って案内される。このため、接続部側から反対側への流体の周方向の流通をさらに促進することができ、入口開口部へ導入される流体の周方向の均一化をさらに図ることができる。
【0013】
また、上記の吸込みケーシングにおいて、前記チャンバーの前記接続部と中心軸を挟んで反対側で、内部を周方向に区画する仕切部を備えることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、接続部と反対側で仕切部によってチャンバーの内部が周方向に区画されており、接続部から周方向一方側に流通する流体が接続部と反対側でさらに周方向に流通するのを規制している。このため、接続部から周方向両側へとそれぞれ流通する流体が、互いの流れを阻害してしまうことを防止しつつ、接続部と反対側で、それぞれ入口開口部へと案内されることとなり、入口開口部へ導入される流体の周方向の均一化をさらに図ることができる。
【0015】
また、上記の吸込みケーシングにおいて、内部に略ドーナツ状の空洞部を有するケーシング本体と、該ケーシング本体の内周面に着脱可能に嵌め込まれ、前記空洞部の残りの空間を前記チャンバーとして形成する嵌め込みパーツとを備えるが好ましい。
【0016】
この構成によれば、組立時には、嵌め込みパーツが取り外された空洞部を利用して装置本体側の内部構造を容易に組み付けることが可能である。また、ケーシング本体の外周面に嵌め込みパーツを嵌め込むことで、径方向幅が周方向に次第に狭くなるようなチャンバーを容易に形成することができる。
【0017】
また、本発明は、上記の吸込みケーシングと、自身の軸回りに回転可能な回転軸と、該回転軸に取り付けられた略円盤状の部材で、軸方向一方側に略環状に配設された入口開口部に前記吸込みケーシングによって前記流体が案内されるインペラとを備えることを特徴としている。
【0018】
この構成によれば、上記の吸込みケーシングを備えることで、流体を周方向に均一に導入して性能の向上、振動の抑制を図ることができるとともに、全体として軸方向に小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の吸込みケーシングによれば、軸方向に小型化を図りつつ、流体を周方向に均一なものとして軸方向に導入することができる。
また、本発明の流体機械によれば、性能の向上、振動の抑制を図ることができるとともに、全体として軸方向に小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態の圧縮機を示す一部を破断した側面図である。
【図2】本発明の実施形態の吸込みケーシングを示し、図1の切断線A−Aにおける断面図である。
【図3】本発明の実施形態の第1の変形例の吸込みケーシングを示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態の第2の変形例の吸込みケーシングを示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態の第3の変形例の吸込みケーシングを示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態の第4の変形例の吸込みケーシングを示す一部を破断した側面図である。
【図7】従来の圧縮機を示す一部を破断した側面図である。
【図8】従来の吸込みケーシングを示し、図6の切断線B−Bにおける断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態について図1及び図2を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態の流体機械である圧縮機1は、圧縮する流体Fが導入される吸込みケーシング10と、吸込みケーシング10から導入された流体Fを圧縮する装置本体1Bと、装置本体1Bで圧縮された流体Fを送出する排出ケーシング1Cとによって構成されており、略筒状のケーシング本体2と、ケーシング本体2の内部に配設された回転軸3と、回転軸3に取り付けられた略円盤状のインペラ4とを備えている。回転軸3は、両端部において、ケーシング本体2に設けられた図示しない軸受によって自身の軸回りに回転可能に支持されている。
【0022】
装置本体1Bにおいて、回転軸3にはインペラ4が軸方向Lに複数設けられているともに、ケーシング本体2には、当該インペラ4が収容される作動室2aが形成されている。また、ケーシング本体2において、各インペラ4が収容される作動室2a間には、軸方向Lの上流L1側となるインペラ4Aから吐出される流体Fを、軸方向Lの下流L2側となるインペラ4Bに案内する吐出通路2bが形成されている。吐出通路2bは、軸回りに円環状に形成されている。また、吐出通路2bは、軸方向Lの上流L1側のインペラ4Aの径方向D外周側に開口する出口開口部4aから吐出される流体Fを、軸方向Lの下流L2側となるインペラ4Bの軸方向Lの上流L1側に開口する入口開口部4bに案内するために、断面視して略U字状に形成されている。また、吐出通路2bにおいて軸方向Lの下流L2側には、放射状にリターンベーン5が配設されている。
【0023】
また、排出ケーシング1Cにおいて、ケーシング本体2には、軸方向Lの最も下流L2側となるインペラ4Bの出口開口部4aから吐出する流体Fを案内する吐出通路2cと、吐出通路2cと連通する円環状のスクロール2dと、スクロール2dと連通して径方向D外周側に流体Fを排出させる排出ノズル6とが設けられている。
【0024】
次に、吸込みケーシング1Aの詳細について説明する。図1及び図2に示すように、吸込みケーシング1Aは、径方向D外周側から内周側へ流体Fを導入する吸込ノズル11と、ケーシング本体2の内部に設けられて吸込ノズル11と外周側で連通する略ドーナツ状の空間で、軸方向Lの最も上流L1側となるインペラ4Aの入口開口部4bに連通するチャンバー12とを備える。吸込ノズル11は、ケーシング本体2の外周側に突出して設けられており、チャンバー12の外周側に連通している。
【0025】
また、チャンバー12は、径方向D外周側に配設された略環状の導入部13と、略環状で断面視して導入部13から内周側に向かって次第に軸方向Lの下流L2側へと向かうように湾曲してインペラ4Aの入口開口部4bに連通する案内部14とを有する。このため、吸込ノズル11によって導入部13に導入された流体Fを、導入部13に沿って周方向Cに流通させるとともに、案内部14に流通させて次第に径方向D内周側へと流入させてインペラ4Aの入口開口部4bに導入することが可能となっている。
【0026】
ここで、図2に示すように、導入部13は、吸込ノズル11が接続された接続部となる上部12aから回転軸3を中心として周方向Cにそれぞれ略90度程度位置がずれた側部12bまで、径方向幅Wd(Wd1)が略一定に形成されている。また、導入部13の径方向幅Wdは、側部12bから、上部12aと回転軸3の中心を挟んで反対側の位置(上部12aから回転軸3を中心として周方向Cに略180度ずれた位置)となる下部12cへ周方向Cに次第に径方向幅Wd(Wd2)が狭くなるように、外周面12dが湾曲形成されている。また、下部12cにおいては、チャンバー12内を周方向Cに区画する仕切部15が設けられており、チャンバー12の外周面12dが該仕切部15に連続するように径方向D内周側に向かうように湾曲形成されている。
【0027】
ここで、本実施形態において、チャンバー12は、ケーシング本体2に形成された略ドーナツ状の空洞部2eと、該空洞部2eに着脱可能に嵌め込まれた嵌め込みパーツ16により形成されている。空洞部2eは、チャンバー12の導入部13と対応しており、円環状に形成された第一の部分2fと、チャンバー12の案内部14と対応しており、円環状で断面視して内周側に向かって次第に軸方向Lの下流L2側へと向かうように湾曲した第二の部分2gとを有する。また、嵌め込みパーツ16は、空洞部2eの外周面2hにおいて、チャンバー12の両側部12bから下部12cまでの範囲に嵌め込まれ、両側部12bと対応する両端部16aから、下部12cと対応する中央部16bに向かうに従って次第に部材厚が厚くなるように略三日月状に形成されている。そして、この嵌め込みパーツ16の部材厚の変化により、嵌め込みパーツ16が嵌め込まれた両側部12bから下部12cの範囲においては側部12bから下部12cに向かうに従って次第に径方向幅Wdが狭くなるように、また、仕切部15に連続するように形成されている。
【0028】
なお、嵌め込みパーツ16を嵌め込む方向としては、ケーシング本体2の空洞部2eを軸方向Lに開口可能な構成として、軸方向Lに嵌め込むようにしても良いし、ケーシング本体2及び嵌め込みパーツ16を分割可能とし、分割した状態でそれぞれ露出する空洞部2eに嵌め込むようにしても良い。
【0029】
また、チャンバー12において、案内部14には、導入部13を周方向Cに流通する流体Fを入口開口部4bに向かって径方向Dに案内する第一の仕切羽根17が周方向Cに複数設けられている。第一の仕切羽根17は、いずれも内周端17a側で径方向Dに沿って入口開口部4bに向かうように配設されている。一方で、第一の仕切羽根17は、それぞれ外周端17b側に向かうに従って吸込ノズル11に向かうように配設されている。このため、複数の第一の仕切羽根17は、その周方向Cの位置によって形状が異なっており、吸込ノズル11が設けられた上部12aにおいては内周端17aから外周端17bまで径方向Dに直線状に形成されているとともに、側部12b及び下部12cにおいては内周端17aから外周端17bへ、径方向Dに沿う状態から上部12aへ向かうように湾曲形成されており、その曲率は側部12bよりも下部12c側の方が大きくなっている。なお、本実施形態では、第一の仕切羽根17は、チャンバー12において案内部14に設けられているものとしたが、外周端17bが導入部13まで延びているような構成としても良い。
【0030】
また、チャンバー12の導入部13において、吸込ノズル11と接続される接続部となる上部12aには、吸込ノズル11から径方向Dに沿って導入される流体Fを周方向Cに沿うように案内する第二の仕切羽根18が設けられている。第二の仕切羽根18は、本実施形態では三つ設けられており、中央の第二の仕切羽根18Aが吸込ノズル11の中心線L11に沿って径方向Dに配設され、第一の仕切羽根17の最も上部12aに位置するものに連続している。また、両端の第二の仕切羽根18は、それぞれ上部12aから側部12bに向かって次第に互いの間隔が広がるようにハの字状に配設されている。なお、第二の仕切羽根18の形態としては、本実施形態のものに限られず、例えば、さらに多数配置しても良いし、また、上端側が吸込ノズル11の内部まで延出されているようにしても良い。
【0031】
次に、この実施形態の吸込みケーシング1Aの作用について説明する。図1及び図2に示すように、この実施形態の吸込みケーシング1Aでは、吸込ノズル11によって径方向D外周側から内周側へと流通する流体Fは、チャンバー12に連通する上部12aで導入部13に流入する。ここで、三つの第二の仕切羽根18が設けられていることによって、導入部13に流入した流体Fを周方向C両側へと案内することができ、好適に周方向Cに沿って流通させることができる。そして、導入部13において周方向Cに流通する流体Fは、次第に内周側に位置する案内部14に流入し、インペラ4の入口開口部4bまで流通することとなる。
【0032】
ここで、チャンバー12の導入部13の径方向幅Wdが、上部12aから両側部12bを経て下部12cに向かうに従って、周方向Cに次第に狭くなるように形成されている。このため、吸込ノズル11から導入された流体Fは、上部12a側から両側部12bを経て下部12c側へ周方向Cに流通するのに従って、入口開口部4bに次第に近づくように案内されることとなり、上部12a側に対して下部12c側で、案内部14を経てインペラ4の入口開口部4bへと流入するのを促進させることができる。このため、チャンバー12内において上部12a側だけで、流体Fが滞留し、また、インペラ4の入口開口部4bに流入してしまい、周方向Cに偏流(速度分布、圧力分布の偏り)が生じてしまうことを抑えて、下部12c側へと流通させることができ、流体Fの周方向Cの均一化を図ることができる。また、このような径方向幅Wdが周方向Cに次第に狭くなるチャンバー12の形状によって周方向Cの均一化を図ることができることで、チャンバー12の軸方向Lに沿った寸法を最小限とすることができる。また、上記吸込みケーシング1Aを備えた圧縮機1としては、装置本体1B側に供給される流体Fの周方向Cの均一化により、性能向上、振動の抑制を図ることができる。また、上記のとおり吸込みケーシング1Aの軸方向Lに沿う寸法を最小限にすることができることで、全体として軸方向Lに小型化を図ることができ、また、それ故に回転軸3のスパン長を小さくして、振動の抑制をさらに図ることができる。
【0033】
特に、吸込ノズル11から流体Fが導入される上部12aと反対側の下部12cで仕切部15によってチャンバー12の内部が周方向Cに区画されており、上部12aから周方向C一方側に流通する流体Fが下部12c側でさらに周方向Cに流通するのを規制している。このため、上部12aから周方向C両側へとそれぞれ流通する流体Fが、互いの流れを阻害してしまうことを防止しつつ、下部12c側で、それぞれインペラ4の入口開口部4bへと案内されることとなり、入口開口部4bへ導入される流体Fの周方向Cの均一化をさらに図ることができる。また、本実施形態では、チャンバー12の外周面12dが、下部12cにおいて該仕切部15に連続するように径方向D内周側に向かうように湾曲形成されているので、下部12cにおける導入部13から案内部14への流体Fの流入をより滑らかに案内することができ、入口開口部4bへ導入される流体Fの周方向Cの均一化をさらに図ることができる。
【0034】
また、上記のとおり、第二の仕切羽根18によって、吸込ノズル11からチャンバー12内に径方向Dに沿って導入された流体Fを周方向Cに沿うように案内することができ、導入部13において上部12a側から下部12c側への流体Fの周方向Cの流通をさらに促進することができる。また、案内部14においては、第一の仕切羽根17が設けられ、外周端17b側に向かうに従ってそれぞれ吸込ノズル11に向かうように配設されていることで、下部12c側においても、上部12a側から周方向Cに沿って流通する流体Fを好適に案内部14を経てインペラ4の入口開口部4bまで案内することができる。このため、チャンバー12内で上部12a側から下部12c側への流体Fの周方向Cの流通をさらに促進することができる。これらのように本実施形態では、第一の仕切羽根17及び第二の仕切羽根18によって、インペラ4の入口開口部4bへ導入される流体Fの周方向Cの均一化をさらに図ることができる。
【0035】
また、本実施形態では、チャンバー12は、ケーシング本体2に形成された空洞部2eと、空洞部2eの外周面2hに着脱可能に嵌め込まれた嵌め込みパーツ16によって形成されている。このため、圧縮機1を組み立てる際には、嵌め込みパーツ16が嵌め込まない状態でケーシング本体2の空洞部2eを利用して装置本体1B側の内部構造を容易に組み付けることができる。その一方で、ケーシング本体2の外周面に嵌め込みパーツ16を嵌め込むことで、径方向幅Wdが周方向Cに次第に狭くなるようなチャンバー12を容易に形成することができる。
【0036】
図3は、本実施形態の第1の変形例を示している。図3に示すように、この変形例の吸込みケーシング20では、第二の仕切羽根18を備えていない構成となっている。このような吸込みケーシング1Aにおいても、径方向幅Wdが周方向Cに次第に狭くなるようなチャンバー12の形状により、また、第一の仕切羽根17により、インペラ4の入口開口部4bへ導入される流体Fの周方向Cの均一化をさらに図り、また、それ故に軸方向Lに沿う寸法を最小限とすることができる。
【0037】
また、図4は、本実施形態の第2の変形例を示している。図4に示すように、この変形例の吸込みケーシング21では、第一の仕切羽根17は、吸込ノズル11の中心線L11に沿う一枚のみとなっている。このような吸込みケーシング1Aにおいても、径方向幅Wdが周方向Cに次第に狭くなるようなチャンバー12の形状により、また、第二の仕切羽根18により、インペラ4の入口開口部4bへ導入される流体Fの周方向Cの均一化をさらに図り、また、それ故に軸方向Lに沿う寸法を最小限とすることができる。
【0038】
また、図5は、本実施形態の第3の変形例を示している。図5に示すように、この変形例の吸込みケーシング22では、第一の仕切羽根17、第二の仕切羽根18及び仕切部15のない構成となっている。また、チャンバー12の形状も、径方向幅Wdが側部12bから下部12cに向かうに従って周方向Cに次第に狭くなるような形状を呈しているものの、下部2cにおいて径方向D内周側に向かうような形状を呈していない。このような吸込みケーシング1Aにおいても、径方向幅Wdが周方向Cに次第に狭くなるようなチャンバー12の形状により、インペラ4の入口開口部4bへ導入される流体Fの周方向Cの均一化をさらに図り、また、それ故に軸方向Lに沿う寸法を最小限とすることができる。
【0039】
また、図6は、本実施形態の第4の変形例を示している。図6に示すように、この変形例の吸込みケーシング23では、チャンバー24の導入部25の形状が異なっている。すなわち、本変形例のチャンバー24の導入部25では、軸方向Lの下流L2側の内面が径方向D外周側から内周側に向かうに従って、軸方向Lの上流L1側の内面に近づくように傾斜している。このため、本変形例の導入部25では、軸方向幅Wlが、径方向D外周側から内周側に向かうに従って次第に小さくなるように形成されている。そして、本変形例の吸込みケーシング23では、上記のような導入部25の形状により、チャンバー24の導入部25に導入され、案内部14に流入する流れを増速させることができ、これにより周方向Cに沿う流れをさらに一様化させることができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0041】
なお、上記実施形態及び各変形例では、チャンバーの径方向幅は、上部から側部まで略一定とするとともに、側部から次第に狭くなるように設定されているものとしたが、これに限るものではない。例えば、上部から径方向幅が次第に狭くなるようにしても良いし、径方向幅が一定となる範囲を側部よりも下側まで伸ばして、下部側の範囲のみで径方向幅が狭くなるようにしても良い。
【符号の説明】
【0042】
1 圧縮機(流体機械)
1A、20、21、22、23 吸込みケーシング
2 ケーシング本体
2e 空洞部
3 回転軸
4 インペラ
4b 入口開口部
11 吸込ノズル
12、24 チャンバー
12a 上部(接続部)
15 仕切部
16 嵌め込みパーツ
17 第一の仕切羽根
18 第二の仕切り羽根
C 周方向
D 径方向
L 軸方向
F 流体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向外周側から内周側へ流体を導入する吸込ノズルと、
該吸込ノズルと外周側で連通する略ドーナツ状の空間で、前記吸込ノズルから導入された流体を、軸方向に開口し略環状に配設された入口開口部に案内するチャンバーとを備え、
該チャンバーは、径方向幅が、前記吸込ノズルと連通する接続部から中心軸を挟んで反対側に向かうに従って、周方向に次第に狭くなるように形成されていることを特徴とする吸込みケーシング。
【請求項2】
請求項1に記載の吸込みケーシングにおいて、
前記チャンバー内に周方向に複数設けられ、前記吸込ノズルから周方向に沿って流入した前記流体をそれぞれ前記入口開口部に案内する第一の仕切羽根を備え、
該第一の仕切羽根のそれぞれは、内周端側で径方向に沿って前記入口開口部に向かうように配設されているとともに、外周端側に向かうに従って前記吸込ノズルに向かうように配設されていることを特徴とする吸込みケーシング。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の吸込みケーシングにおいて、
前記チャンバー内に設けられ、前記吸込ノズルから径方向に沿って導入される前記流体を周方向に沿うように案内する第二の仕切羽根を備えることを特徴とする圧縮機の吸込みケーシング。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の吸込みケーシングにおいて、
前記チャンバーの前記接続部と中心軸を挟んで反対側で、内部を周方向に区画する仕切部を備えることを特徴とする吸込みケーシング。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の吸込みケーシングにおいて、
内部に略ドーナツ状の空洞部を有するケーシング本体と、
該ケーシング本体の内周面に着脱可能に嵌め込まれ、前記空洞部の残りの空間を前記チャンバーとして形成する嵌め込みパーツとを備えることを特徴とする吸込みケーシング。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の吸込みケーシングと、
自身の軸回りに回転可能な回転軸と、
該回転軸に取り付けられた略円盤状の部材で、軸方向一方側に略環状に配設された入口開口部に前記吸込みケーシングによって前記流体が案内されるインペラとを備えることを特徴とする流体機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−203251(P2010−203251A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47187(P2009−47187)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】