説明

吹付けコンクリート製造装置、それを用いた吹付けコンクリートの製造方法、及びその吹付けコンクリート

【課題】 初期の付着力が良好なためにリバウンド率が小さく、粉じん量が少なく、作業性が良い吹付けが可能となる、吹付けコンクリート製造装置、それを用いた吹付けコンクリートの製造方法、及びその吹付けコンクリートを提供する。
【解決手段】 吹付け用コンクリート圧送管、アルミニウム成分とイオウ成分とを含有してなる酸性の液体急結剤圧送管、吹付け用コンクリートと、圧送した液体急結剤とを混合するシャワリング管、及びノズルを構成とする吹付けコンクリート製造装置、該吹付けコンクリート製造装置を用いる吹付けコンクリートの製造方法、並びに、該吹付けコンクリートの製造方法で製造された吹付けコンクリートを構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、道路、鉄道、及び導水路等のトンネルにおいて、露出した地山面へ吹き付ける時に使用する吹付けコンクリート製造装置、それを用いた吹付けコンクリートの製造方法、及びその吹付けコンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル掘削等、露出した地山の崩落を防止するために急結剤をコンクリートに配合した急結性吹付けコンクリートの吹付け工法が行われている(特許文献1参照)。
この工法は、通常、掘削工事現場に設置した計量混合プラントで、セメント、骨材、及び水を混合して吹付けコンクリートを調製し、アジテータ車で運搬し、コンクリートポンプで圧送し、その途中に設けた合流管で、他方から圧送した急結剤と混合し、急結性吹付けコンクリートとして地山面に所定の厚みになるまで吹き付ける工法である。
【0003】
この際に使用する急結剤としては、カルシウムアルミネート及び/又はアルカリアルミン酸塩、並びに、それらとアルカリ炭酸塩等の混合物が知られている(特許文献2、特許文献3、特許文献4、及び特許文献5参照)。
この急結剤を用いた急結性吹付けコンクリートは、凝結が速く、コンクリートが速やかに硬化するので、崩落の危険がある地山面を保護できるが、材齢28日後の長期強度は、急結剤を添加しない吹付けコンクリートと比較すると、30%前後低下するという課題があった。
【0004】
このように、急結剤の添加により強度低下が起こるが、比較的安定した地山においては地山を保護するのには充分な強度であり、かなり不安定な地山においては、吹付け厚さを厚くすることにより対処されてきた。
【0005】
最近では、長期強度発現性を高め、さらには永久構造物用途として、硫酸アルミニウムを含有するアルカリ骨材反応抑制型急結剤が知られている。
【0006】
硫酸アルミニウムを含有するアルカリ骨材反応抑制型急結剤としては、結晶水を有する含水硫酸アルミニウムとアルミン酸カルシウムの混合物が提案されている(特許文献6参照)。
しかしながら、この混合物は、アルカリアルミン酸塩を使用した急結剤よりも急結性が弱く、湧水箇所の吹付けや厚吹きには適さない場合があった。
【0007】
また、これら従来の急結剤を空気圧送して吹付け用コンクリートに使用した場合には、吹付け時のリバウンド率や粉じん量が大きいという課題があった。
【0008】
【特許文献1】特公昭60−004149号公報
【特許文献2】特開昭64−051351号公報
【特許文献3】特公昭56−027457号公報
【特許文献4】特開昭61−026538号公報
【特許文献5】特開昭63−210050号公報
【特許文献6】特開平08−048553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者は、上記課題を種々検討した結果、ある特定の吹付けコンクリート製造装置を使用することにより、上記課題を解決できる知見を得て本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明は、吹付け用コンクリート圧送管1、アルミニウム成分とイオウ成分とを含有してなる酸性の液体急結剤の圧送管2、圧送した、吹付け用コンクリートと液体急結剤とを混合するシャワリング管3、及びノズル4を構成とする吹付けコンクリート製造装置であり、シャワリング管3に設けた液体急結剤出口5の数が2〜15個である該吹付けコンクリート製造装置であり、液体急結剤出口5の総面積が2〜30cm2である該吹付けコンクリート製造装置であり、液体急結剤出口5からノズル4の先端の吹付けコンクリート出口6までの距離が20〜150cmである該吹付けコンクリート製造装置であり、吹付けコンクリート出口6の内径aとシャワリング管3の吹付け用コンクリート入口7の内径bの比率(a/b)が0.3〜0.9である該吹付けコンクリート製造装置であり、該吹付けコンクリート製造装置を用いる吹付けコンクリートの製造方法であり、該吹付けコンクリートの製造方法で製造された吹付けコンクリートである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の吹付けコンクリート製造装置を使用することにより、初期の付着力が良好で、リバウンド率が小さく、粉じん量が少なく、作業性が良い吹付けが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における部や%は特に規定しない限り質量基準で示す。
なお、本発明のコンクリートとは、モルタルをも含むものであり、液体急結剤添加前のコンクリートを吹付け用コンクリート、液体急結剤添加後のコンクリートを吹付けコンクリートとする。
【0013】
本発明は、吹付け用コンクリートと、液体急結剤とを混合して吹付けコンクリートとし、これを吹き付けるために使用する吹付けコンクリート製造装置、それを用いた吹付けコンクリートの製造方法、及びその吹付けコンクリートに関するものである。
【0014】
本発明で使用する液体急結剤は、アルミニウム成分やイオウ成分を主成分とする酸性の液体急結剤である。
【0015】
アルミニウム成分の供給原料は特に限定されるものではないが、非晶質もしくは結晶質の水酸化アルミニウム、アルミニウムの硫酸塩、及びアルミン酸塩等の無機アルミニウム化合物、有機アルミニウム化合物、並びに、アルミニウム錯体等の化合物が挙げられ、これらのうちの一種又は二種以上が使用可能である。本発明では、イオウ成分の供給原料ともなるアルミニウムの硫酸塩の使用が好ましい。
【0016】
イオウ成分の供給原料は特に限定されるものではないが、硫黄や硫黄華のような元素状態の硫黄の他に、硫化物、硫酸又は硫酸塩、亜硫酸又は亜硫酸塩、チオ硫酸又はチオ硫酸塩、並びに、有機硫黄化合物等が挙げられ、これらのうちの一種又は二種以上が使用可能である。これらのうち、水への溶解性が高く、製造コストが安く、かつ、急結性状が優れる面から硫酸又は硫酸塩が好ましく、硫酸塩としては明礬類や硫酸アルミニウムなどが好ましい。
【0017】
本発明の液体急結剤は、アルミニウム成分やイオウ成分の他に、アルカリ金属成分やフッ素成分を含有させることが可能である。
【0018】
アルカリ金属成分の供給原料は特に限定されるものではないが、アルカリ金属元素、即ち、リチウム、ナトリウム、及びカリウムを含む水溶性の化合物であれば特に制限されるものではなく、アルカリ金属元素の酸化物、過酸化物、塩化物、水酸化物、硝酸塩、亜硝酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、アルミン酸塩、硫酸塩、チオ硫酸塩、過硫酸塩、硫化塩、炭酸塩、重炭酸塩、シュウ酸塩、ホウ酸塩、フッ化塩、ケイ酸塩、ケイフッ化塩、明礬、及び金属アルコキシドなどが使用可能であり、これらのうちの一種又は二種以上が使用可能である。これらの中で、硫酸塩、重炭酸塩、シュウ酸塩、フッ化塩、ケイフッ化塩、及び明礬等が好ましい。
【0019】
フッ素成分を含有するものとしては、水に溶解又は分散する化合物であれば特に限定されるものではなく、フッ化塩、ケイフッ化塩、フッ化ホウ素塩、有機フッ素化合物、及びフッ化水素酸等のフッ素化合物が挙げられ、これらのうちの一種又は二種以上が使用可能である。
本発明では、安全性が高く、製造コストが安く、かつ、凝結性状が優れる面から、フッ化塩やケイフッ化塩が好ましい。
【0020】
本発明の液体急結剤は、さらに、アルカノールアミンを含有させることが可能である。
アルカノールアミンとは、構造式においてN-R-OH構造を有する有機化合物である。ここで、Rはアルキル基又はアリル基と呼ばれる原子団であり、例えば、メチレン基、エチレン基、及びN-プロピレン基等の直鎖型のアルキル基、イソプロピル基等の枝分かれ構造を有するアルキル基、並びに、フェニル基やベンジル基等の芳香族環を有するアリル基等が挙げられる。
また、Rは、窒素原子と2箇所以上で結合していてもよく、Rの一部又は全部が環状構造であってもよい。R-OHは、窒素原子と複数箇所結合していてもよく、R-OHの他、水素が結合することも可能である。
さらに、Rは複数の水酸基と結合していてもよく、アルキル基の一部に炭素や水素以外の元素、例えば、イオウ、フッ素、塩素、及び酸素等が含まれていてもよい。
本発明では、ジエタノールアミン及び/又はN,N-ジメチルエタノールアミンが好ましい。
【0021】
本発明の液体急結剤は、保存安定性を向上させる目的で、有機酸やリン酸類を含有させることが可能である。
有機酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、及び縮合リン酸類、又はこれらの塩類の一種又は二種以上が挙げられる。
【0022】
液体急結剤は、各成分を完全に溶液化したものから懸濁化したものまで使用可能である。
【0023】
液体急結剤のpHは酸性であれば良く、pH2〜4が好ましい。pH2未満では優れた強度発現性が得られない場合があり、pH4を超えると液体急結剤の安定性が悪くなる場合がある。
【0024】
液体急結剤の固形分濃度は、30〜70%が好ましく、35〜60%がより好ましい。30%未満では優れた急結性が得られない場合があり、70%を超えると液の安定性が悪くなる場合がある。
【0025】
液体急結剤中のAl2O3/SO3モル比は特に限定されるものではないが、0.2〜0.6が好ましく、0.3〜0.5がより好ましい。モル比がこの範囲外では、優れた急結性が得られない場合がある。
【0026】
液体急結剤の使用量は、吹付け用コンクリート中のセメント100部に対して、5〜20部が好ましく、7〜15部がより好ましい。5部未満では優れた急結性が得られない場合がある。
【0027】
ここで、本発明で使用するセメントとしては、通常市販されている普通、早強、中庸熱、及び超早強等の各種ポルトランドセメント、並びに、これらのポルトランドセメントにフライアッシュや高炉スラグなどを混合した各種混合セメントなどが挙げられ、これらを微粉末化して使用することも可能であり、廃棄物利用型セメントも使用可能である。
廃棄物利用型セメントは、都市型廃棄物や下水汚泥を主原料として製造されるセメントを総称するものであり特に限定されるものではない。
これらセメントのうち、吹付けに要求されるリバウンド率や粉じん量の低減、圧送性、強度発現性、及び施工条件等により適したセメントを選択できるが、一般的に使用できる普通ポルトランドセメントや早強ポルトランドセメントが好ましい。
本発明において、セメントの使用量は、350〜550kg/m3が好ましい。350kg/m3未満では、優れた強度発現性が得られない場合があり、550kg/m3を超えると施工コストが上昇し、経済的に好ましくない。
【0028】
本発明では、さらに、必要に応じて、吹付け用コンクリートに減水剤や増粘剤等を併用することも可能である。
【0029】
減水剤とは、吹付け用コンクリートの流動性を改善するために使用するもので、液状や粉状のものいずれも使用可能である。
減水剤としては、ポリオール誘導体、リグニンスルホン酸塩やその誘導体、及び高性能減水剤等が挙げられ、これらのうちの一種又は二種以上を使用することが可能である。これらの中では、高強度発現性や分散安定性の面で、高性能減水剤が好ましい。高性能減水剤により、液体急結剤の使用量を少なくでき、また、粉じんの発生量やリバウンド率を極めて少なくすることが可能である。
【0030】
増粘剤とは、吹付け用コンクリートに粘性を与え、吹付け直後のダレを防止し、リバウンド率を小さくし、粉じん発生を抑制するものをいう。
【0031】
さらに、本発明では、吹付け用コンクリートの凝結時間を遅延させるために、有機酸又はその塩、有機酸又はその塩と炭酸塩の混合物、リン酸塩、ホウ酸又はその塩、並びに、アルコール類等の凝結遅延剤を使用することも可能である。
【0032】
減水剤や増粘剤は、吹付け用コンクリートに、液体急結剤に、さらに、これらの複数のいずれにも添加することが可能であるが、強度向上、リバウンド防止、及び凝結コントロールの面で、吹付け用コンクリートに添加することが好ましい。特に、減水剤としてナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物を、増粘剤としてセルロース類を併用した場合に、その効果は大きい。
【0033】
また、超微粉や繊維を使用することも可能である。
【0034】
本発明で使用する水の使用量は、強度発現性の面で、水/セメント比で35%以上が好ましく、40〜55%がより好ましい。35%未満だと吹付け用コンクリートが充分に混合できない場合があり、55%を超えると強度発現性を阻害する場合がある。
【0035】
本発明で使用する骨材は、吸水率が低くて、骨材強度が高いものが好ましく、細骨材率や骨材の最大寸法は吹付けできれば特に制限されるものではない。
【0036】
細骨材としては、川砂、山砂、石灰砂、及び珪砂等が使用可能であり、粗骨材としては、川砂利、山砂利、及び石灰砂利等が使用可能である。
本発明において、吹付け用コンクリートの細骨材率は0.5以上が好ましい。0.5未満では、吹付け用コンクリートの圧送性が不良になったり、吹付け時のリバウンド率が大きくなる場合がある。
【0037】
吹付け用コンクリートのスランプ値やフロー値は特に限定されるものではなく、施工可能なコンクリートが調製されればいかなる数値のものも使用可能である。
【0038】
本発明の吹付けコンクリート製造装置を図面に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
本発明の吹付けコンクリート製造装置は、吹付け用コンクリート圧送管1、アルミニウム成分とイオウ成分とを含有してなる酸性の液体急結剤圧送管2、圧送した、吹付け用コンクリートと液体急結剤とを混合するシャワリング管3、及びノズル4を構成とするものである。
【0040】
本発明において、吹付け用コンクリートは、吹付け用コンクリート圧送管を通してシャワリング管まで圧送される。
【0041】
吹付け用コンクリート圧送管としては、耐圧性の金属メッシュ入りのホース(耐圧ホース)や金属製の配管が使用可能である。通常は、耐圧ホースが使用され、その前後は金属管を使用することが好ましい。
耐圧ホースの長さは特に限定されるものではなく、施工状況により使用される長さは変わってくるが、通常、5〜30mのものが使用される。
耐圧ホースの直径は、モルタルの場合は1〜3.5インチ、コンクリートの場合は2.5〜3.5インチのものが通常使用される。この範囲未満では圧送圧が高くなり、圧送が困難となる場合があり、この範囲を超えると耐圧ホースの取り扱いが不便になる場合がある。
【0042】
液体急結剤は、液体急結剤圧送管3を介して、シャワリング管3の液体急結剤出口5から吹付け用コンクリートと合流混合される。
液体急結剤圧送管3の形状などは特に限定されるものではない。
【0043】
本発明で使用するシャワリング管3は、外管と内管からなる二重構造を有し、吹付け用コンクリートが圧送される内管の径は、通常、1.0〜3.5インチ程度のものであり、該内管に2つ以上の液体急結剤出口5を有するものである。
液体急結剤出口5の数は2〜15個が好ましく、4〜10個がより好ましい。液体急結剤出口5が1個では吹付け用コンクリートと液体急結剤の均一な混合が得られず、優れた付着性や粉じん低減性が得られない場合があり、16個以上では液体急結剤出口5が閉塞する場合がある。
また、シャワリング管3の長さは特に限定されるものではないが、通常、5〜50cm程度のものが使用され、その他、寸法などは特に限定されるものではない。
シャワリング管の材質は特に限定されるものではないが、金属製、樹脂製、及びプラスチック製のものが使用可能であり、これらを複合したものも使用可能である。
【0044】
本発明で使用するシャワリング管3の液体急結剤出口5の形状は特に限定されるものではない。また、吹付け用コンクリートの流れに対して、垂直もしくは吹付けコンクリート出口6方向に角度をつけて開けることが好ましい。
【0045】
液体急結剤出口5の総面積は特に限定されるものではないが、2〜30cm2が好ましく、4〜20cm2がより好ましい。2cm2未満では液体急結剤出口5が閉塞する場合があり、30cm2を超えると吹付け用コンクリートと液体急結剤の均一な混合が得られず、優れた付着性や粉じん低減性が得られない場合がある。
【0046】
ノズル4とは、シャワリング管3の排出側端部より、吹付けコンクリート出口6までを形成するものであり、ノズル4としては、連続的に縮径しているものや、縮径後に吹付けコンクリートを整流する直管をつけたものが使用可能である。
ノズル4の長さは、15〜145cmが好ましく、25〜75cmがより好ましい。15cm未満では、吹付け用コンクリートと液体急結剤の均一な混合が得られず、優れた付着性や粉じん低減性が得られない場合があり、145cmを超えると、液体急結剤出口の閉塞や液体急結剤出口以降のノズル4などでの吹付けコンクリートによる閉塞が起こる場合がある。
ノズル4は、金属製のものやセラミックス製のものが使用可能であり、ゴム素材でできたノズルの配管内面にセラミックスや金属でライニングされたものやこれらのチップ状のものを埋め込んだものが使用可能である。
【0047】
シャワリング管3の液体急結剤出口5からノズル4の先端の吹付けコンクリート出口6までの距離は特に限定されるものではないが、20〜150cmが好ましく、30〜80cmがより好ましい。20cm未満では、吹付け用コンクリートと液体急結剤の均一な混合が得られず、優れた付着性や粉じん低減性が得られない場合があり、150cmを超えると、液体急結剤出口5の閉塞や液体急結剤出口以降のノズル4などでの吹付けコンクリートによる閉塞が起こる場合がある。
【0048】
ノズル4の先端の吹付けコンクリート出口6の内径aとシャワリング管の吹付け用コンクリート入口7の内径bの比率(a/b)は特に限定されるものではないが、0.3〜0.9が好ましく、0.4〜0.7がより好ましい。0.3未満では液体急結剤出口5の閉塞や液体急結剤出口以降のノズル4などでの吹付けコンクリートによる閉塞が起こる場合があり、0.9を超えると、吹付け用コンクリートと液体急結剤の均一な混合が得られず、優れた付着性や粉じん低減性が得られない場合がある。
【0049】
本発明の吹付け工法においては、従来使用の吹付け設備等が使用可能であり、吹付け圧力は特に限定されるものではなく、吹付けコンクリートの吐出量は、通常、1.5〜20m3/hであり、吹付け空気量は特に限定されるものではない。
本発明の吹付けでは、乾式吹付け工法も施工可能であるが、粉じん量が多くなるおそれがあるので、あらかじめ水を吹付け用コンクリート側に加えて混練りしたものに液体急結剤を添加する湿式吹付け工法を使用することが好ましい。
【0050】
湿式吹付け工法としては、セメント、細骨材、粗骨材、及び水を加えて吹付け用コンクリートを調製し、例えば、ピストン式コンクリートポンプ又は空気圧送方式でこのコンクリートを圧送し、他方、液体急結剤は液体圧送ポンプにて圧送し、吹付け用コンクリートに添加し、吹付けコンクリートとして吹き付けるものである。
【0051】
吹付け設備は、吹付けが充分に行われれば特に限定されるものではなく、例えば、吹付け用コンクリートの圧送にはアリバー社商品名「アリバー280」、シンテック社「MKW-25SMT」、PET社「G4ポンプ」、及びスクイズポンプなどが使用可能である。
また、液体急結剤の圧送には一般的に液体を圧送する装置、例えば、スクイズポンプ、プランジャーポンプ、ダイヤフラムポンプ、スクリューポンプ、及びギヤポンプなどが使用可能である。
【実施例】
【0052】
以下、実施例に基づき本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
実験例1
各材料の単位量を、セメント420kg/m3、細骨材1,140kg/m3、粗骨材618kg/m3、及び水197kg/m3として吹付け用コンクリートを調製し、シンテック社コンクリート圧送機商品名「MKW-25SMT」により、10m3/hの速度で圧送した。
長さ10mの3インチ耐圧ホースの後に、内管の径が3インチの表1に示すシャワリング管、連続的に縮径したノズルの順序で組み込んだ。
液体圧送ポンプを用いて圧送された液体急結剤を、シャワリング管手前にジョイントされたチーズ管を用いて4m3/minの空気と共に圧送し、吹付け用コンクリート中のセメント100部に対して、12部となるように、吹付け用コンクリートに添加・混合して吹付けコンクリートとし、5分間吹き付けた。
シャワリング管の液体急結剤出口からノズル先端の吹付けコンクリート出口までの距離は50cmであり、吹付けコンクリート出口の内径aとシャワリング管の吹付け用コンクリート入口の内径bの比率(a/b)は0.7である。
また、比較のため、シャワリング管でなくY字管を使用した場合についても同様に試験した。結果を表1に併記する。
【0054】
<使用材料>
セメント :普通ポルトランドセメント、市販品、ブレーン値3,200cm2/g、密度3.15g/cm3
細骨材 :新潟県糸魚川市姫川産川砂、表乾状態、密度2.62g/cm3
粗骨材 :新潟県糸魚川市姫川産川砂利、表乾状態、密度2.64g/cm3、最大寸法10mm
液体急結剤:Al2O3 9%、SO3 19%、F 2.5%、Na2O 3%の液体急結剤、密度1.41g/cm3、pH2.6
【0055】
<評価方法>
液体急結剤出口閉塞の有無:シャワリング管の液体急結剤出口の閉塞の有無を確認。
リバウンド率:吹付け時の吹付けコンクリートのリバウンド率。高さ4.4mの模擬トンネル内側に吹付けコンクリートを吹き付けた際の吹付け量とリバウンド量から算出。リバウンド率(%)=リバウンド量(kg)/吹付け総量(kg)×100
24時間強度:幅25cm×長さ25cmのプルアウト型枠に設置したピンを、プルアウト型枠表面から吹付けコンクリートで被覆し、型枠の裏側よりピンを引き抜き、その時の引き抜き強度を求め、(24時間強度)=(引き抜き強度)×4/(供試体接触面積)の式から算出。
【0056】
【表1】

【0057】
実験例2
液体急結剤出口の数6で液体急結剤出口の総面積5cm2のシャワリング管を用いて、液体急結剤出口からノズルの先端の吹付けコンクリート出口までの距離を表2に示すように変えて試験したこと以外は実験例1と同様に試験した。結果を表2に示す。
【0058】
【表2】

【0059】
実験例3
液体急結剤出口の数6で液体急結剤出口の総面積5cm2のシャワリング管を用いて、吹付けコンクリート出口であるノズル先端の内径aとシャワリング管の吹付け用コンクリート入口の内径bの比率(a/b)を表3に示すように変えて試験したこと以外は実験例1と同様に試験した。結果を表3に示す。
【0060】
【表3】

【0061】
実験例4
液体急結剤出口の数6で液体急結剤出口の総面積5cm2のシャワリング管を用いて、液体急結剤をセメント100部に対して、表4に示す量使用したこと以外は実験例1と同様に試験した。結果を表4に示す。
【0062】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の吹付けコンクリート製造装置、それを用いた吹付けコンクリートの製造方法、及びその吹付けコンクリートは、例えば、道路、鉄道、及び導水路等のトンネルにおいて、露出した地山面へ吹き付ける時に使用できるものであり、これらの他に、深礎吹付けや法面吹付けの用途にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、本発明の吹付けコンクリート製造装置の外観図である。
【図2】図2は、本発明の吹付けコンクリート製造装置の軸方向の断面図である。
【図3】図3は図2の液体急結剤出口センター部の断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 吹付け用コンクリート圧送管
2 液体急結剤圧送管
3 シャワリング管
4 ノズル
5 液体急結剤出口
6 吹付けコンクリート出口
7 吹付け用コンクリート入口
8 シャワリング管外管
9 シャワリング管内管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吹付け用コンクリート圧送管1、アルミニウム成分とイオウ成分とを含有してなる酸性の液体急結剤の圧送管2、圧送した、吹付け用コンクリートと液体急結剤とを混合するシャワリング管3、及びノズル4を構成とする吹付けコンクリート製造装置。
【請求項2】
シャワリング管3に設けた液体急結剤出口5の数が2〜15個である請求項1に記載の吹付けコンクリート製造装置。
【請求項3】
液体急結剤出口5の総面積が2〜30cm2である請求項1又は請求項2に記載の吹付けコンクリート製造装置。
【請求項4】
液体急結剤出口5からノズル4の先端の吹付けコンクリート出口6までの距離が20〜150cmである請求項1〜請求項3のうちの1項に記載の吹付けコンクリート製造装置。
【請求項5】
吹付けコンクリート出口6の内径aとシャワリング管3の吹付け用コンクリート入口7の内径bの比率(a/b)が0.3〜0.9である請求項4に記載の吹付けコンクリート製造装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のうちの1項に記載の吹付けコンクリート製造装置を用いる吹付けコンクリートの製造方法。
【請求項7】
請求項6の吹付けコンクリートの製造方法で製造された吹付けコンクリート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−23706(P2007−23706A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−210955(P2005−210955)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】