説明

周波数変換装置

【課題】周波数変換装置の小型化が可能で周波数変換後の複数系統の信号を良好な特性で出力させる。
【解決手段】積層基板の接地層には、複数の衛星からの衛星放送信号の入射位置に、それぞれ開口部311,312を形成する。接地層の両面側に絶縁層を介して設けた配線層の開口部311,312の位置にプローブ41a-v,41b-h,42a-h,42b-vを形成する。プローブで受信された信号の周波変換を行う変換処理部を各配線層に設ける。開口部の一方の面側(A面側)に設けたプローブで、一方の偏波方式の衛星放送信号を受信し、他方の面側(B面側)に設けたプローブで、他方の偏波方式の衛星放送信号を受信し、変換処理部で中間周波信号に変換する。出力制御部45は、出力する複数系統の中間周波信号の選択を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、周波数変換装置に関する。詳しくは、接地層の両面側に絶縁層を介して設けられた配線層のそれぞれに、無線信号を受信するプローブと該プローブで受信された信号の周波変換を行う変換処理部を設け、接地層には、複数の衛星からの無線信号の入射位置に、開口部を衛星毎に形成し、プローブは開口部に形成することで、複数の衛星から送信された無線信号を受信して周波数変換を行うものである。
【背景技術】
【0002】
複数の衛星から送信された無線信号を受信するシステム、例えば衛星からの衛星放送信号を受信する衛星放送受信システムでは、1つの受信用アンテナで複数の衛星からの衛星放送信号を受信することが行われている。
【0003】
日本における衛星放送受信システムでは、例えば、東経128°および124°の位置に打ち上げられたJCSAT3およびJCSAT4と呼ばれる通信衛星(CS)から送信された衛星放送信号を、1つの受信用アンテナで受信することが行われている。
【0004】
ここで、2つの衛星から送信された衛星放送信号を受信する場合、受信用アンテナでは、2つの衛星より送信される衛星放送信号を周波数変換装置(LNB:Low Noise Block Down Converter)に供給し、衛星放送信号を受信して得られた信号を低雑音増幅したのち、中間周波信号に周波数変換してチューナ等に供給する。
【0005】
図7は、従来の周波数変換装置の回路構成を示している。周波数変換装置80のRF増幅部81は、例えばJCSAT3から送信された水平偏波信号および垂直偏波信号、ならびにJCSAT4から送信された水平偏波信号および垂直偏波信号を受信して得られた個々の信号のいずれかを低雑音増幅して、帯域通過フィルタ(BPF:Band Pass Filter)82に供給する。
【0006】
RF増幅部81は、偏波信号を受信して得られた信号の低雑音増幅を、偏波信号毎に行う増幅器(LNA:Low Noise Amplifier)811〜814と、LNA811,812から供給された信号を低雑音増幅してBPF82に供給するLNA815、およびLNA813,814から供給された信号を低雑音増幅してBPF82に供給するLNA816を有している。ここで、LNA811は、例えば第1の衛星から送信された水平偏波信号を受信して得られた信号の低雑音増幅を行う。また、LNA812は、例えば第1の衛星から送信された垂直偏波信号を受信して得られた信号の低雑音増幅を行う。LNA813は、例えば第2の衛星から送信された水平偏波信号を受信して得られた信号の低雑音増幅を行う。LNA814は、例えば第2の衛星から送信された垂直偏波信号を受信して得られた信号の低雑音増幅を行う。LAN811〜816に対する電源供給は、後述する電源供給制御回路90によって、所望の偏波信号を受信して得られた信号が低雑音増幅されてBPF82に供給されるように制御される。
【0007】
BPF82は、LAN815あるいはLNA816から供給された信号のイメージ除去を行い、イメージ除去後の信号をミキサ83に供給する。ミキサ83には、局部発振器84から局部発振信号(例えば11.2GHz)が供給されており、この局部発振信号をBPF82から供給された信号に混合して、中間周波(IF:Intermediate Frequency)信号SIFを生成する。このIF信号SIFは、中間周波増幅器(IF増幅器)85で増幅されたのち、低周波成分カット用のキャパシタ86を介してIF信号端子87からIF出力信号SIFoutとして出力される。
【0008】
IF信号端子87には、低周波成分カット用のキャパシタ88を介して、信号検出回路89が接続されている。また、IF信号端子87には、電源供給制御回路90が接続されている。
【0009】
IF信号端子87に接続されたチューナは、IF信号端子87を介して周波数変換装置80に電源供給を行う。また、チューナは、IF信号端子87から出力されるIF出力信号を、いずれの偏波信号に基づいて生成するか制御する。例えば周波数変換装置80に電源供給を行う際の電圧レベルを切り替えることで、垂直偏波信号あるいは水平偏波信号の選択を行う。また、電源供給を行う際に低周波パルス信号の重畳を選択的に行い、低周波パルス信号が重畳されているか否かによって、衛星の選択を行う。
【0010】
信号検出回路89は、IF信号端子87に接続されたチューナから、上述の低周波パルス信号が供給されているか否かを判別して、判別結果を示す判別信号CPを電源供給制御回路90に供給する。
【0011】
電源供給制御回路90は、チューナから電源供給が行われたときの電圧レベルと信号検出回路89から供給された判別信号CPに基づき、RF増幅部81のLNA811〜816に対する電源供給を制御する。なお、電源供給制御回路90は、周波数変換装置80の他の部分に対しても電源供給を行う。
【0012】
このように構成すると、チューナで2つの衛星のいずれかを選択して、さらに選択された衛星より送信される2種類の偏波信号のうちいずれかを選択すると、選択した偏波信号を受信して得られた信号が低雑音増幅されて、BPF82でイメージ信号が除去されたのちミキサ83に供給される。ミキサ83は、BPF82から出力された信号に局部発振信号を混合してIF信号SIFを生成する。このIF信号SIFは、IF増幅器85によって増幅されて、キャパシタ86によって低周波成分がカットされたのち、IF信号端子87からIF出力信号SIFoutとして出力される。したがって、チューナ側で選択した衛星からの所望の偏波信号に基づくIF出力信号SIFoutを周波数変換装置80から出力させることができる。
【0013】
また、特許文献1の発明のように、各偏波信号を受信してIF信号を生成し、このIF信号を選択して複数出力させるものとすれば、周波数変換装置80に複数のチューナを接続することが可能となり、衛星や偏波方式が異なる放送番組を同時に受信することができる。
【0014】
【特許文献1】特開2001−168751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、従来の周波数変換装置80では、基板の裏面を接地層として、表面の配線層にパターンレイアウトを行い、増幅器等の回路素子を載置することが一般的に行われている。このため、2つの衛星からの衛星放送信号を受信する場合、基板面積が大きくなってしまい周波数変換装置を小型化できない。
【0016】
また、複数の衛星放送信号を受信して複数系統のIF信号を出力する場合、表面の配線層にのみパターンレイアウトを行うと、信号経路を交差させなければ複数系統のIF信号を出力することができない場合が生じる。このような場合、信号経路の交差部分で高周波信号の結合が生じてしまい、それぞれの高周波信号が互いに悪影響を与えてしまう。
【0017】
そこで、この発明では、小型化が可能で周波数変換後の複数系統の信号を良好に出力できる周波数変換装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この発明に係る周波数変換装置は、接地層の両面側に絶縁層を介して設けられた配線層のそれぞれに、無線信号を受信するプローブと該プローブで受信された信号の周波変換を行う変換処理部を形成し、接地層には、複数の衛星からの無線信号の入射位置に、開口部を衛星毎に形成し、プローブは、開口部に形成したものである。
【0019】
この発明では、例えば複数の衛星からそれぞれ送信された複数の偏波方式の衛星放送信号が受信される。ここで、衛星からの衛星放送信号の入射位置に設けられた開口部では、一方の面に設けられたプローブによって一方の偏波方式の衛星放送信号が受信されて、他方の面に設けられたプローブでは、他方の偏波方式の衛星放送信号が受信される。
【0020】
また、この発明に係る周波数変換装置は、接地層の両面側に設けられている変換処理部で得られた信号を選択して、複数系統の出力を行う出力制御部を有するものである。すなわち、複数の衛星からそれぞれ送信された複数の偏波方式の衛星放送信号を受信する場合、複数の所望の衛星放送信号に基づく中間周波数信号が独立して出力される。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、接地層には、複数の衛星からの無線信号の入射位置に、開口部が衛星毎に形成されて、この接地層の両面側の配線層には、無線信号を受信するプローブと変換処理部が形成されて、プローブは開口部の位置に形成される。このため、複数の衛星からの無線信号を受信して周波数変換を行う周波数変換装置を小型化できる。また、接地層の両面側に変換処理部が設けられるので容易にアイソレーションを確保することができ、周波数変換後の複数系統の信号を良好に出力できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図を参照しながら、この発明の実施の形態について説明する。図1は、複数の衛星から送信された無線信号を受信するシステム、例えば上述のように2つの通信衛星から送信される衛星放送信号を受信する衛星放送受信システムにおいて用いられる衛星放送受信アンテナ10を示している。
【0023】
衛星放送受信アンテナ10は、2つの衛星からの衛星放送信号を反射する反射鏡11と、反射鏡11の焦点位置に設けられて、衛星放送信号を低雑音増幅したのち低い周波数帯の信号に周波数変換する周波数変換装置20を有している。
【0024】
図2は、周波数変換装置20の外観を示しており、図2Aは正面図、図2Bは側面図である。また、図3は図2AにおけるI−I’線位置での断面概略図である。周波数変換装置20は、略直方体形状の筐体21に筐体カバー22を嵌合させて一体に構成されている。筐体21の前面には、導波管210が形成されており、この導波管210は、円形状の開口穴211,212を有している。また、周波数変換装置20には、チューナ等を接続可能とするためにF型接栓等を用いた接続端子23,24が設けられている。
【0025】
周波数変換装置20の内部には、衛星放送信号を中間周波信号に変換する回路が形成されたコンバータ基板30が設けられている。コンバータ基板30の前面側に位置する筐体部分には、コンバータ基板30の筐体側となる配線層に形成されている接地パターンと対応した位置に凸部213が形成されている。また、コンバータ基板30の後面側には基板カバー26が設けられており、基板カバー26には、コンバータ基板30の基板カバー側となる配線層に形成されている接地パターンと対応した位置に凸部261が形成されている。このため、筐体21と基板カバー26を金属加工によって形成すれば、コンバータ基板30を挟持した状態で基板カバー26を筐体21に取り付けることにより、基板上の所望の領域をシールドすることができる。また、基板カバー26には、金属製の周波数調整ねじ27が設けられており、この周波数調整ねじ27を調整することで、後述する局部発振器から出力される局部発振信号を所望の周波数に設定できるようになされている。
【0026】
図4は、コンバータ基板30の回路ブロック構成を示している。なお、図4では、コンバータ基板30の筐体側の面(以下「A面」という)に設けられる回路と、コンバータ基板30の基板カバー側の面(以下「B面」という)に設けられる回路とを区分して示している。
【0027】
第1の衛星から送信された第1の偏波信号(例えば垂直偏波信号)を受信するために設けられたプローブ41a-vは、変換処理部43aの低雑音増幅器(LNA:Low Noise Amplifier)431a-vに接続される。LNA431a-vはLNA432a-vと縦続接続されており、プローブ41a-vで偏波信号を受信して得られた信号Sa-1vがLNA431a-v,432a-vによって低雑音増幅されて帯域通過フィルタ(BPF:Band Pass Filter)433a-vに供給される。
【0028】
BPF433a-vでは、LNA432a-vから供給された信号のイメージ除去を行い、イメージ除去後の信号をミキサ434a-vに供給する。ミキサ434a-vには、B面に設けられている局部発振器435からA面に設けられた増幅器436を介して局部発振信号SLOが供給されている。ミキサ434a-vは、BPF433a-vから供給された信号に局部発振信号SLOを混合して、中間周波(IF:Intermediate Frequency)信号SIF-1vを生成する。このIF信号SIF-1vは、出力制御部45のIF増幅器451a-v1とIF増幅器451a-v2に供給される。IF増幅器451a-v1は、IF信号SIF-1vを増幅して出力増幅器50aに供給する。IF増幅器451a-v2は、IF信号SIF-1vを増幅してB面側の出力増幅器50bに供給する。
【0029】
第2の衛星から送信された第2の偏波信号(例えば水平偏波信号)を受信するために設けられたプローブ42a-hは、変換処理部43aのLNA431a-hに接続される。LNA431a-hはLNA432a-hと縦続接続されており、プローブ42a-hで偏波信号を受信して得られた信号Sa-2hがLNA431a-h,432a-hによって低雑音増幅されてBPF433a-hに供給される。
【0030】
BPF433a-hでは、LNA432a-hから供給された信号のイメージ除去を行い、イメージ除去後の信号をミキサ434a-hに供給する。ミキサ434a-hには、増幅器436から局部発振信号SLOが供給されている。ミキサ434a-hは、BPF433a-hから供給された信号に局部発振信号SLOを混合して、IF信号SIF-2hを生成する。このIF信号SIF-2hは、IF増幅器451a-h1とIF増幅器451a-h2に供給される。IF増幅器451a-h1は、IF信号SIF-2hを増幅して出力増幅器50aに供給する。IF増幅器451a-h2は、IF信号SIF-2hを増幅して出力増幅器50bに供給する。
【0031】
同様に、第1の衛星から送信された第2の偏波信号(例えば水平偏波信号)を受信するために設けられたプローブ41b-hは、変換処理部43bのLNA431b-hに接続される。LNA431b-hはLNA432b-hと縦続接続されており、プローブ41b-hで偏波信号を受信して得られた信号Sb-1hがLNA431b-h,432b-hによって低雑音増幅されてBPF433b-hに供給される。
【0032】
BPF433b-hでは、LNA432b-hから供給された信号のイメージ除去を行い、イメージ除去後の信号をミキサ434b-hに供給する。ミキサ434b-hには、局部発振器435から局部発振信号SLOが供給されている。ミキサ434b-hは、BPF433b-hから供給された信号に局部発振信号SLOを混合して、IF信号SIF-1hを生成する。このIF信号SIF-1hは、IF増幅器451b-h1とIF増幅器451b-h2に供給される。IF増幅器451b-h1は、IF信号SIF-1hを増幅して出力増幅器50aに供給する。IF増幅器451b-h2は、IF信号SIF-1hを増幅してB面側の出力増幅器50bに供給する。
【0033】
第2の衛星から送信された第1の偏波信号(例えば垂直偏波信号)を受信するために設けられたプローブ42b-vは、変換処理部43bのLNA431b-vに接続される。LNA431b-vはLNA432b-vと縦続接続されており、プローブ42b-vで偏波信号を受信して得られた信号Sb-2vがLNA431b-v,432b-vによって低雑音増幅されてBPF433b-vに供給される。
【0034】
BPF433b-vでは、LNA432b-vから供給された信号のイメージ除去を行い、イメージ除去後の信号をミキサ434b-vに供給する。ミキサ434b-vには、局部発振器435から局部発振信号SLOが供給されている。ミキサ434b-vは、BPF433b-vから供給された信号に局部発振信号SLOを混合して、IF信号SIF-2vを生成する。このIF信号SIF-2vは、IF増幅器451b-v1とIF増幅器451b-v2に供給される。IF増幅器451b-v1は、IF信号SIF-2vを増幅して出力増幅器50aに供給する。IF増幅器451b-v2は、IF信号SIF-2vを増幅して出力増幅器50bに供給する。
【0035】
出力増幅器50aは、IF増幅器451a-v1,451a-h1,451b-v1,451b-h1から供給されたIF信号を増幅して、低周波成分カット用のキャパシタ51aを介してIF信号端子53からIF出力信号SIFout1として出力する。また、出力増幅器50bは、IF増幅器451a-v2,451a-h2,451b-v2,451b-h2から供給されたIF信号を増幅して、低周波成分カット用のキャパシタ51bを介してIF信号端子54からIF出力信号SIFout2として出力する。
【0036】
ここで、コンバータ基板30が筐体21に設けたときに、IF信号端子53には上述の接続端子23が接続される。このため、接続端子23と接続されているチューナにIF出力信号SIFout2を供給できる。
【0037】
このチューナは、第1の衛星から送信された第1の偏波信号と第2の偏波信号および第2の衛星から送信された第1の偏波信号と第2の偏波信号の中から、いずれか1つの偏波信号に基づいて生成したIF出力信号を接続端子23から出力させる制御機能を有するものである。例えばチューナは、周波数変換装置20に対して電源供給を行うときの電圧レベルを切り替えることで、垂直偏波信号あるいは水平偏波信号の選択を行わせる。また、電源供給を行う際に低周波パルス信号の重畳を選択的に行い、低周波パルス信号を重畳されているときには第1の衛星、低周波パルス信号が重畳されていないときには第2の衛星を選択させる。
【0038】
このため、低周波成分カット用のキャパシタ452aを介してIF信号端子53に出力制御部45の信号検出回路453aを接続して、接続端子23に接続されたチューナから、上述の低周波パルス信号が供給されているか否かを信号検出回路453aで判別して、判別結果を示す判別信号CPaを電源供給制御回路454aに供給する。
【0039】
電源供給制御回路454aは、IF信号端子53と接続されており、接続端子23に接続されたチューナから電源供給が行われたときの電圧レベル、および信号検出回路453aから供給された判別信号CPaに基づき、IF増幅器451a-v1,451a-h1,451b-v1,451b-h1に対する電源供給を制御して、第1の衛星から送信された第1の偏波信号と第2の偏波信号および第2の衛星から送信された第1の偏波信号と第2の偏波信号の中から、いずれか1つの偏波信号に基づいて生成したIF信号を出力増幅器50aに供給させる。
【0040】
また、コンバータ基板30が筐体21に設けたときに、IF信号端子54には上述の接続端子24が接続される。このため、接続端子24と接続されているチューナにIF出力信号SIFout2を供給できる。
【0041】
この接続端子24に接続されたチューナも接続端子23と接続されたチューナと同様に、第1の衛星から送信された第1の偏波信号と第2の偏波信号および第2の衛星から送信された第1の偏波信号と第2の偏波信号の中から、いずれか1つの偏波信号に基づいて生成したIF信号を接続端子24から出力させる制御機能を有するものである。
【0042】
このため、低周波成分カット用のキャパシタ452bを介してIF信号端子54に出力制御部45の信号検出回路453bを接続して、接続端子24に接続されたチューナから、上述の低周波パルス信号が供給されているか否かを信号検出回路453bで判別して、判別結果を示す判別信号CPbを電源供給制御回路454bに供給する。
【0043】
電源供給制御回路454bは、IF信号端子54と接続されており、接続端子24に接続されたチューナから電源供給が行われたときの電圧レベル、および信号検出回路453bから供給された判別信号CPbに基づき、IF増幅器451a-v2,451a-h2,451b-v2,451b-h2に対する電源供給を制御して、第1の衛星から送信された第1の偏波信号と第2の偏波信号および第2の衛星から送信された第1の偏波信号と第2の偏波信号の中から、いずれか1つの偏波信号に基づいて生成したIF信号を出力増幅器50bに供給させる。
【0044】
このように、電源供給制御回路454a,454bによってIF増幅部への電源供給を制御することで、接続端子23,24に接続されたチューナ側で選択した衛星からの所望の偏波信号に基づくIF出力信号SIFout1,SIFout2を、周波数変換装置20の接続端子23,24から独立して出力させることができる。なお、電源供給制御回路454a,454bは、IF増幅器以外に対しても電源供給を行うものである。
【0045】
図5は、コンバータ基板30の分解斜視図を示している。コンバータ基板30は、多層基板を用いて構成されており、接地層31の一方の面には、絶縁層32aを介して配線層33aが設けられ、他方の面には絶縁層32bを介して配線層33bが設けられている。配線層33aには、図4のA面側の回路を構成するための導体パターンを形成して、増幅器等の素子を載置する。また、配線層33bには、図4のB面側の回路を構成するための導体パターンを形成して、増幅器等の素子を載置する。
【0046】
図6は、コンバータ基板30におけるパターンレイアウトの概略図である。ここで、図6Aは配線層33aのパターンレイアウトを部品載置側から見た図、図6Bは接地層のパターン、図6Cは配線層33bのパターンレイアウトを部品載置側から見た図である。なお、図6A,図6Cでは、信号検出回路453a,453bと電源供給制御回路454a,454bに関する部分についてのパターンレイアウトは省略しており、信号検出回路453a,453bと電源供給制御回路454a,454bの載置位置を、一点鎖線で示す領域457a,457bとして示している。また、図6において、接地パターンとして用いられるパターンは直線シングルハッチングで示し、増幅器等の素子は直線クロスハッチングで示している。なお、図6では、コンバータ基板30と基板カバー26を筐体21に固定するネジ穴35も図示している。
【0047】
ここで、図4のA面側の回路とB面側の回路は、局部発振器435と増幅器436およびIF信号端子53,54の部分を除き構成が等しい。従って、図6Aに示す配線層33aのパターンレイアウトと図6Cに示す配線層33bのパターンレイアウトは共通化する。また、配線層33a側に増幅器436、配線層33b側に局部発振器435を載置させて、配線層33b側にIF信号端子53,54を設ける。
【0048】
コンバータ基板30は、図3に示す周波数調整ねじ27によって、局部発振器435の発振周波数を調整可能とするため、A面側の回路が設けられる配線層33aが筐体側で、B面側の回路が設けられる配線層33bが基板カバー側となるように筐体21に取り付けられる。
【0049】
接地層31には、衛星放送信号がB面側でも受信できるように、導波管210の開口穴211と対向する位置に開口部311、導波管210の開口穴212と対向する位置に開口部312をそれぞれ形成する。また、後述するように、スルーホールやビア等の電気的導通穴(以下「ビア」という)を設けて配線層33aのパターンと配線層33bのパターンを電気的に接続する場合、このビアが接地されてしまうことが無いようにビアの位置にビア用開口部313を設ける。
【0050】
配線層33aにおいて、筐体21の開口穴211と対応する領域には、例えば第1の衛星から送信された垂直偏波信号を受信するプローブ41a-vのパターンを形成する。また、開口穴212と対応する領域には、プローブ41a-vで受信する信号と偏波方式が異なる第2の衛星からの偏波信号、すなわち第2の衛星から送信された水平偏波信号を受信するプローブ42a-hのパターンを形成する。
【0051】
プローブ41a-vには、LNA431a-vを接続する。LNA431a-vには、マイクロストリップラインの結合線路を用いてLNA432a-vを接続する。LNA432a-vには、マイクロストリップラインで構成されたBPF433a-vを介してミキサ434a-vを接続する。ミキサ434a-vには、局部発振信号SLOを供給するための増幅器436を接続する。さらに、ミキサ434a-vは、ミキサ434a-vで生成したIF信号SIF-1vを増幅するIF増幅器451a-v1,451a-v2と接続する。IF増幅器451a-v1,451a-v2には、電源供給を行うための電源供給制御回路(図示せず)を接続する。
【0052】
プローブ42a-hには、LNA431a-hを接続する。LNA431a-hには、マイクロストリップラインの結合線路を用いてLNA432a-hを接続する。LNA432a-hには、マイクロストリップラインで構成されたBPF433a-hを介してミキサ434a-hを接続する。ミキサ434a-vには、増幅器436を接続する。さらに、ミキサ434a-hは、ミキサ434a-hで生成したIF信号SIF-2hを増幅するIF増幅器451a-h1,451a-h2と接続する。
【0053】
IF増幅器451a-v1,451a-h1は、出力増幅器50aと接続する。また、IF増幅器451a-v2,451a-h2は、ビア(図示せず)を介して、配線層33b側に設けられた出力増幅器50bと接続する。出力増幅器50aには、後述するようにビアを介してIF増幅器451b-v1,451b-h1も接続される。この出力増幅器50aは、キャパシタ51aとビア(図示せず)を介して、配線層33b側に設けられたIF信号端子53と接続する。
【0054】
配線層33bにおいて、筐体21の開口穴211と対応する領域には、プローブ41a-vで受信する偏波信号の送信を行う衛星からの異なる偏波信号、すなわち第1の衛星から送信された水平偏波信号を受信するプローブ41b-hのパターンを形成する。また、開口穴212と対応する領域には、プローブ42a-hで受信する偏波信号の送信を行う衛星からの異なる偏波信号、すなわち第2の衛星から送信された垂直偏波信号を受信するプローブ42b-vのパターンを形成する。
【0055】
プローブ41b-hには、LNA431b-hを接続する。LNA431b-hには、マイクロストリップラインの結合線路を用いてLNA432b-hを接続する。LNA432b-hには、マイクロストリップラインで構成されたBPF433b-hを介してミキサ434b-hを接続する。ミキサ434b-hには、局部発振信号SLOを供給するための局部発振器435を接続する。さらに、ミキサ434b-hは、ミキサ434b-hで生成したIF信号SIF-1hを増幅するIF増幅器451b-h1,451b-h2と接続する。IF増幅器451b-h1,451b-h2には、電源供給を行うための電源供給制御回路(図示せず)を接続する。
【0056】
プローブ42b-vには、LNA431b-vを接続する。LNA431b-vには、マイクロストリップラインの結合線路を用いてLNA432b-vを接続する。LNA432b-vには、マイクロストリップラインで構成されたBPF433b-vを介してミキサ434b-vを接続する。ミキサ434b-hには、局部発振器435を接続する。さらに、ミキサ434b-vは、ミキサ434b-vで生成したIF信号SIF-2vを増幅するIF増幅器451b-v1,451b-v2と接続する。
【0057】
IF増幅器451b-h1,451b-v1は、ビア(図示せず)を介して、配線層33a側に設けられた出力増幅器50aと接続する。また、IF増幅器451b-h2,451b-v2は、出力増幅器50bと接続する。出力増幅器50bには、上述したようにビア(図示せず)を介してIF増幅器451a-v2,451a-h2も接続される。この出力増幅器50bは、キャパシタ51bを介して、IF信号端子54と接続する。
【0058】
配線層33aの領域457aには、信号検出回路453aと電源供給制御回路454aを設け、接続端子23に接続されたチューナから電源供給が行われたときの電圧レベル、および低周波パルス信号が重畳されているか否かに応じて、IF増幅器451a-v1,451a-h1,451b-v1,451b-h1に対する電源供給を制御する。
【0059】
同様に、配線層33bの領域457bには、信号検出回路453bと電源供給制御回路454bを設け、接続端子24に接続されたチューナから電源供給が行われたときの電圧レベル、および低周波パルス信号が重畳されているか否かに応じて、IF増幅器451a-v2,451a-h2,451b-v2,451b-h2に対する電源供給を制御する。
【0060】
このように、コンバータ基板30を構成すると、図4に示すA面側の回路が接地層の一方の面に形成されて、他方の面にはB面側の回路が形成されることから、基板の表面にA面側の回路とB面側の回路を設ける場合に比べて基板サイズが小さくなる。従って、周波数変換装置20に複数のチューナを接続して、周波数変換装置20から出力されるIF出力信号を各チューナで独立に選択可能とする場合、周波数変換装置を小型化できる。
【0061】
また、基板の表面にA面側の回路とB面側の回路を設けるものとした場合、IF増幅器から出力されたIF信号を交差させないとIF信号端子53,54から出力させることができないため、IF信号のアイソレーションが劣化してしまう。しかし、A面側の回路は接地層の一方の面に形成し、他方の面にはB面側の回路を形成していることから、ビアを介して一方の面から他方の面にIF信号を供給することで、同一面でIF信号を交差させる必要がなくなりアイソレーションを容易に確保できる。すなわち、周波数変換装置20から出力されるIF出力信号を特性の良好な信号とすることができる。
【0062】
さらに、図6に示すように、配線層33aと配線層33bのパターンレイアウトは共通化されているので、配線層33aのパターンレイアウトと配線層33bのパターンレイアウトを個々に設計する場合に比べて、設計時間を短縮化することができる。また、設計変更等も容易となる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上のように、本発明に係る周波数変換装置は、複数の放送衛星から送信された衛星放送信号を受信して複数系統の中間周波信号を出力させるのに適用している。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】衛星放送受信アンテナの外観を示す図である。
【図2】周波数変換装置の構成を示す図である。
【図3】I−I’線位置での断面概略図である。
【図4】コンバータ基板の回路ブロック構成を示す図である。
【図5】コンバータ基板の分解斜視図である。
【図6】コンバータ基板のパターンレイアウトの概略図である。
【図7】従来の周波数変換装置の回路ブロック構成を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
10・・・衛星放送受信アンテナ、11・・・反射鏡、20,80・・・周波数変換装置、21・・・筐体、22・・・筐体カバー、23,24・・・接続端子、26・・・基板カバー、27・・・周波数調整ねじ、30・・・コンバータ基板、31・・・接地層、32a,32b・・・絶縁層、33a,33b・・・配線層、35・・・ネジ穴、41a-h,41b-v,42a-v,42b-h・・・プローブ、43a,43b・・・変換処理部、45・・・出力制御部、50a,50b・・・出力増幅器、53,54,87・・・IF信号端子、81・・・RF増幅部、82,433a-h,433a-v,433b-h,433b-v・・帯域通過フィルタ(BPF)、83,434a-h,434a-v,434b-h,434b-v・・ミキサ、84,435・・・局部発振器、85,451a-h1,451a-h2,451a-v1,451a-v2,451b-h1,451b-h2,451b-v1,451b-v2・・・中間周波増幅器(IF増幅器)、89,453a,453b・・・信号検出回路、90,454a,454b・・・電源供給制御回路、210・・・導波管、211,212・・・開口穴、311,312・・・開口部、313・・・ビア用開口部、431a-h,431a-v,431b-h,431a-h,432a-h,432a-v,432b-h,432b-v,811〜816・・・低雑音増幅器(LNA)、436・・・増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地層の両面側に絶縁層を介して設けられた配線層のそれぞれに、無線信号を受信するプローブと該プローブで受信された信号の周波変換を行う変換処理部を形成し、
前記接地層には、複数の衛星からの前記無線信号の入射位置に、開口部を衛星毎に形成し、
前記プローブは、前記開口部に形成した
ことを特徴とする周波数変換装置。
【請求項2】
前記開口部の一方の面側のプローブと他方の面側のプローブで異なる偏波方式の無線信号を受信する
ことを特徴とする請求項1記載の周波数変換装置。
【請求項3】
前記それぞれの配線層に設けられている変換処理部で得られた信号を選択して、複数系統の出力を行う出力制御部を有する
ことを特徴とする請求項1記載の周波数変換装置。
【請求項4】
前記それぞれの配線層のパターンレイアウトを共通化させた
ことを特徴とする請求項1記載の周波数変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−262183(P2006−262183A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−77855(P2005−77855)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】