説明

周波数変調器

【課題】 周波数変換も同時に実施可能な、低雑音で、且つ、小型・低価格な周波数変調器を提供することを目的とする。
【解決手段】 所定周波数の入力信号を、同位相で且つ同振幅の第1の分配信号と第2の分配信号に分配する同相分配器と、前記所定周波数と異なる周波数の第1の変調信号を生成する第1の変調信号生成部と、前記第1の変調信号と同一周波数であり且つ前記第1の変調信号に対して90°の位相差を有する第2の変調信号を生成する第2の変調信号生成部と、前記第1の変調信号と前記第1の分配信号とを混合する第1の偶高調波ミキサと、前記第2の変調信号と前記第2の分配信号とを混合する第2の偶高調波ミキサと、前記第1の偶高調波ミキサの出力信号と前記第2の偶高調波ミキサの出力信号とを合成する90°位相合成器とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線通信システムあるいはレーダシステムの送受信機に用いられる周波数変調器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーダシステムで使用するエキサイタは、VHS帯等である原振信号を逓倍及びミキサによる周波数合成を行うことでシステムで要求される周波数の信号を生成する。エキサイタは、レーダシステムの性能を向上させるスペクトラム拡散やパルス圧縮を実現するため、位相変調、周波数変調、周波数変換等を実行している。
周波数変調器としては、基本波ミキサを用いた直交変調器等が用いられている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−116427号公報(図1)
【特許文献2】特開平7−30463号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
送受信機において位相変調、周波数変調、周波数変換等を実行し所望の周波数を生成する際、ミキサで発生するイメージ波を抑圧しなければ雑音となってレーダシステムに多大な影響を与えてしまう。
イメージ波の抑圧に関し、例えば特許文献1の周波数変調器ではギルバートセル型のミキサを用い、I信号を分割してI信号若しくはQ信号のいずれか側だけに送信信号をそのまま入力し、送信信号をそのまま入力されなかったQ信号には分割されたI信号の送信信号を微分器4に通過させた後にQ信号に入力するようにした。この結果、イメージ波が抑圧され、低雑音な周波数変調器を提供している。
しかしながら、従来の周波数変調器では周波数変調のみが実施されており、周波数変調器の出力信号の周波数は入力信号の周波数と概略同等の周波数であった。周波数変換を実施するには別途、後段に周波数変換用のミキサやバンドパスフィルタ等の部品を用意する必要があり、送受信機の小型化・低価格化の妨げとなっていた。
【0005】
この発明は係る課題を解決するためになされたものであり、低雑音で且つ小型・低価格な、周波数変換も同時に行う周波数変調器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の周波数変調器は、所定周波数の入力信号を、同位相で且つ同振幅の第1の分配信号と第2の分配信号に分配する同相分配器と、前記所定周波数と異なる周波数の第1の変調信号を生成する第1の変調信号生成部と、前記第1の変調信号と同一周波数であり且つ前記第1の変調信号に対して90°の位相差を有する第2の変調信号を生成する第2の変調信号生成部と、前記第1の変調信号と前記第1の分配信号とを混合する第1の偶高調波ミキサと、前記第2の変調信号と前記第2の分配信号とを混合する第2の偶高調波ミキサと、前記第1の偶高調波ミキサの出力信号と前記第2の偶高調波ミキサの出力信号とを合成する90°位相合成器とを備える。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、周波数変換も同時に実施可能な、低雑音で且つ小型・低価格な周波数変調器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1による周波数変調器の構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1による周波数変調器を使用した場合に、周波数変調器の出力が入力に対して概略2倍の周波数となることを説明する図である。
【図3】この発明の実施の形態2による周波数変調器の構成を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態2による周波数変調器を使用した場合に、周波数変調器の出力が入力に対して概略2倍の周波数となることを説明する図である。
【図5】従来の周波数変調器の構成を示す図である。
【図6】従来の周波数変調器を使用した場合に、周波数変調器の出力が入力に対して概略同等の周波数であることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、従来の特許文献1の周波数変調器の構成と動作について図を用いて説明する。図5は従来の周波数変調器の構成図である。図5において1は所定周波数(fin)の入力信号、2は入力信号を位相差0°で且つ同振幅である第1の分配信号と第2の分配信号とに分配する同相分配器、3は第1の変調信号を生成するIチャンネル周波数生成部、4は第2の変調信号を生成するQチャンネル周波数生成部、5はいずれか一方の信号に90°の位相変化を与えた後に合成する90°位相合成器、6は出力信号、7は第1の基本波ミキサ、8は第2の基本波ミキサである。
図5において、入力信号1(周波数:fin)は同相分配器2で位相差0°かつ概略同振幅に分配され、第1の基本波ミキサ7及び、第2の基本波ミキサ8に入力される。
第1の基本波ミキサ7にはIチャンネル信号発生部3から出力される変調信号(周波数:fa〜fb)が入力され、第2の基本波ミキサ8にはQチャンネル信号発生部4から出力される変調信号(周波数:fa〜fb)が入力される。
ここで、Iチャンネル周波数生成部3から出力される変調信号とQチャンネル周波数生成部4から出力される変調信号とは同一周波数であるが位相は90°異なるように予め設定されている。
これにより、第1の基本波ミキサ7で発生する所望波である入力信号と変調信号の混合波(周波数:fin+fa〜fin+fb)と、第2の基本波ミキサ8で発生する所望波である入力信号と変調信号の混合波(周波数:fin+fa〜fin+fb)とが、90°位相合成器5により同相で合成され出力される。
一方、第1の基本波ミキサ7で発生するイメージ波である入力信号と変調信号の混合波(周波数:fin−fa〜fin−fb)と、第2の基本波ミキサ8で発生するイメージ波である入力信号と変調信号の混合波(周波数:fin−fa〜fin−fb)とは、90°位相合成器5により逆相で合成され、抑圧される。
このように動作することで、Iチャンネル信号生成部3から出力される変調信号の周波数とQチャンネル信号生成部4から出力される変調信号の周波数とを同一に変化させることにより、ミキサで発生するイメージ波を抑圧した低雑音な周波数変調が可能となる。
図6は、従来の周波数変調器を使用した場合の周波数変調器の出力信号の周波数を示した図である。従来の周波数変調器では、出力信号の周波数(fin+fb)は入力信号の周波数(fin)に対して概略同等の周波数となる。
このように、従来の周波数変調器では周波数変調のみが実施され、低雑音な周波数変調が可能となるが、周波数変調器の出力信号の周波数は入力信号の周波数と概略同等の周波数となっていた。送受信機の機能として周波数変換を実施するには、別途後段に、周波数変換を実行するミキサやバンドパスフィルタ等の部品を用意する必要があり、送受信機の小型化・低価格化の妨げとなっていた。
【0010】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1の周波数変調器の構成を図1に示す。図1において9は第1の偶高調波ミキサ、10は第2の偶高調波ミキサである。なお、1〜6は従来の周波数変調器(図5、図6)での説明と同一のものであり、ここではその説明は省略する。なお、Iチャンネル信号生成部3は第1の変調信号生成部の一例でありQチャンネル信号生成部4は第2の変調信号生成部の一例である。
【0011】
次に、実施の形態1の周波数変調器の動作を図2を用いて説明する。図2は、実施の形態1の周波数変調器を構成する各構成からの出力信号の周波数を示した図である。
図2において、入力信号(周波数:fin)は同相分配器で位相差0°かつ概略同振幅の分配信号(第1の分配信号、第2の分配信号)に分配され、第1の偶高調波ミキサ9及び、第2の偶高調波ミキサ10に入力される。
第1の偶高調波ミキサ9にはIチャンネル信号発生部3から出力される第1の変調信号(周波数:fa〜fb)が入力され、第2の偶高調波ミキサ10にはQチャンネル信号発生部4から出力される変調信号(周波数:fa〜fb)が入力される。
ここで、Iチャンネル周波数生成部3から出力される変調信号とQチャンネル周波数生成部4から出力される変調信号は同一周波数であるが位相が90°異なるものとしておく。
【0012】
第1の偶高調波ミキサ9で発生する所望波である入力信号の2倍波と変調信号の混合波(周波数:2×fin+fa〜2×fin+fb)と、第2の偶高調波ミキサ10で発生する所望波である入力信号の2倍波と変調信号の混合波(周波数:2×fin+fa〜2×fin+fb)は90°合成器5により同相で合成され、出力信号(周波数:2×fin+fa〜2×fin+fb)として出力される。
一方、第1の偶高調波ミキサ9で発生するイメージ波である入力信号の2倍波と変調信号の混合波(周波数:2×fin−fa〜2×fin−fb)と、第2の偶高調波ミキサ10で発生するイメージ波である入力信号の2倍波と変調信号の混合波(周波数:2×fin−fa〜2×fin−fb)とは、90°位相合成器5により逆相で合成され抑圧される。
【0013】
このように、本実施の形態の周波数変調器では、偶高調波ミキサを備え、Iチャンネル信号生成部3及びQチャンネル信号生成部4から出力される変調信号の周波数を同一に変化させることにより、イメージ波を抑圧した低雑音な周波数変調が可能となる。これと共に、本実施の形態の周波数変調器では、出力信号の周波数を入力信号の周波数の概略2倍の周波数として周波数変換も行うことができる。
以上のように周波数変調と周波数変換を同時に実施することができ、イメージ波を抑圧して低雑音で、且つ、小型・低価格な周波数変調器を得ることができる。
【0014】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2の周波数変調器の構成を図3に示す。図3においては9は第1の偶高調波ミキサ、10は第2の偶高調波ミキサ、11は入力信号を位相差45°で且つ同振幅である第1の分配信号と第2の分配信号とに分配する45°位相分配器、12は同相合成器である。なお、1、3、4、6は従来の周波数変調器(図5、図6)での説明と同一のものであり、ここではその説明は省略する。
【0015】
次に、実施の形態2の周波数変調器の動作を図4を用いて説明する。図4は実施の形態2の周波数変調器を構成する各構成からの出力信号の周波数を示した図である。
図4において、入力信号(周波数:fin)は45°位相分配器で位相差45°かつ概略同振幅の分配信号(第1の分配信号、第2の分配信号)に分配され、第1の偶高調波ミキサ9及び第2の偶高調波ミキサ10に入力される。
第1の偶高調波ミキサ9にはIチャンネル信号発生部3から出力される変調信号(周波数:fa〜fb)が入力され、第2の偶高調波ミキサ10にはQチャンネル信号発生部4から出力される変調信号(周波数:fa〜fb)が入力される。
ここで、Iチャンネル周波数生成部3から出力される変調信号とQチャンネル周波数生成部4から出力される変調信号は同一周波数であるが位相が90°異なるものとしておく。
【0016】
第1の分配信号と第1の偶高調波ミキサ9で発生する所望波である入力信号の2倍波と変調信号の混合波(周波数:2×fin+fa〜2×fin+fb)と、第2の偶高調波ミキサ10で発生する所望波である入力信号の2倍波と変調信号の混合波(周波数:2×fin+fa〜2×fin+fb)は同相合成器12により同相で合成され出力される。
一方、第1の偶高調波ミキサ9で発生するイメージ波である入力信号の2倍波と変調信号の混合波(周波数:2×fin−fa〜2×fin−fb)と、第2の偶高調波ミキサで発生するイメージ波である入力信号の2倍波と変調信号の混合波(周波数:2×fin−fa〜2×fin−fb)は同相合成器により逆相で合成され抑圧される。
【0017】
このように、実施の形態2の周波数変調器では、偶高調波ミキサを備え、Iチャンネル信号生成部3及びQチャンネル信号生成部4から出力される変調信号の周波数を同一に変化させることにより、イメージ波を抑圧した低雑音な周波数変調が可能となる。これと共に、本実施の形態の周波数変調器では、出力信号の周波数を入力信号の周波数の概略2倍の周波数として周波数変換も行うことができる。
以上のように周波数変調と周波数変換を同時に実施することができ、イメージ波を抑圧して低雑音で、且つ、小型・低価格な周波数変調器を得ることができる。
【符号の説明】
【0018】
1 入力信号、2 同相分配器、3 Iチャンネル信号生成部、4 Qチャンネル信号生成部、5 90°合成器、6 出力信号、7 第1の基本波ミキサ、8 第2の基本波ミキサ、9 第1の偶高調波ミキサ、10 第2の偶高調波ミキサ、11 45°位相分配器、12 同相合成器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定周波数の入力信号を、同位相で且つ同振幅の第1の分配信号と第2の分配信号に分配する同相分配器と、
前記所定周波数と異なる周波数の第1の変調信号を生成する第1の変調信号生成部と、
前記第1の変調信号と同一周波数であり且つ前記第1の変調信号に対して90°の位相差を有する第2の変調信号を生成する第2の変調信号生成部と、
前記第1の変調信号と前記第1の分配信号とを混合する第1の偶高調波ミキサと、
前記第2の変調信号と前記第2の分配信号とを混合する第2の偶高調波ミキサと、
前記第1の偶高調波ミキサの出力信号と前記第2の偶高調波ミキサの出力信号とを合成する90°位相合成器と、
を備えることを特徴とする周波数変調器。
【請求項2】
所定周波数の入力信号を互いの位相差が45°で且つ同振幅の第1の分配信号と第2の分配信号に分配する45°位相分配器と、
前記所定周波数と異なる周波数の第1の変調信号を生成する第1の変調信号生成部と、
前記第1の変調信号と同一周波数であり且つ前記第1の変調信号に対して90°の位相差を有する第2の変調信号を生成する第2の変調信号生成部と、
前記第1の変調信号と前記第1の分配信号とを混合する第1の偶高調波ミキサと、
前記第2の変調信号と前記第2の分配信号とを混合する第2の偶高調波ミキサと、
前記第1の偶高調波ミキサの出力信号と前記第2の偶高調波ミキサの出力信号とを合成する同相合成器と、
を備えることを特徴とする周波数変調器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−244393(P2011−244393A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117281(P2010−117281)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】