周波数間バイアス算出装置及び方法
【課題】 簡単な構成で電離層遅延量を正確に求める。
【解決手段】 周波数間バイアス算出装置10は、データ収集部11、周波数間バイアス算出部12、データ出力部13等を備えている。データ収集部11は、GPS衛星40からGPS受信機20,21,22,…までの第一の周波数による各第一の擬似距離と第二の周波数による各第二の擬似距離とを、通信回線41を介してGPS受信機20,21,22,…から入力する。周波数間バイアス算出部12は、データ収集部11から入力した複数の第一及び第二の擬似距離を所定の演算式に代入して、第一及び第二の周波数による周波数間バイアスを算出する。データ出力部13は、周波数間バイアス算出部12で算出された周波数間バイアスを、通信回線41を介してGPS受信機20,21,22,…へ出力する。
【解決手段】 周波数間バイアス算出装置10は、データ収集部11、周波数間バイアス算出部12、データ出力部13等を備えている。データ収集部11は、GPS衛星40からGPS受信機20,21,22,…までの第一の周波数による各第一の擬似距離と第二の周波数による各第二の擬似距離とを、通信回線41を介してGPS受信機20,21,22,…から入力する。周波数間バイアス算出部12は、データ収集部11から入力した複数の第一及び第二の擬似距離を所定の演算式に代入して、第一及び第二の周波数による周波数間バイアスを算出する。データ出力部13は、周波数間バイアス算出部12で算出された周波数間バイアスを、通信回線41を介してGPS受信機20,21,22,…へ出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPSを利用して電離層遅延量を計算するための周波数間バイアス算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
GPSによる単独測位では、GPS衛星から送信される衛星の位置や時刻などの情報を一台のアンテナで受信することにより、衛星から電波が発信されてから受信機に到達するまでに要した時間を測り、この時間を距離に換算する。そして、位置のわかっているGPS衛星を動く基準として、四個以上の衛星から観測点までの距離を知ることにより、観測点の位置を決定する。
【0003】
DGPS(ディファレンシャルGPS)測位では、位置のわかっている基準局と位置を求めようとする観測点とで同時に単独測位を行い、基準局で観測したデータを無線等を用いて観測点へリアルタイムに送信し、基準局の位置成果に基づき観測点の位置をリアルタイムに補正して求める。
【0004】
ところで、衛星から発信された電波は、電離層を通過するときに時間の遅れが発生する。この時間の遅れを「電離層遅延量」といい、観測点の正確な位置を得るには、この電離層遅延量を知る必要がある。
【0005】
【特許文献1】特開平10−54871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の電離層遅延量を正確に求める技術は、構成が複雑になるという問題があった(例えば上記特許文献1)。特にGPS受信機側が複雑な構成になるので、GPS受信機の大型化及び高価格化を招く。また、正確な電離層遅延量を計算するためには、周波数間バイアスを除去することが必要である。周波数間バイアスは、周波数間での電気的な経路差によるものであり、受信機、衛星等のハードウェアごとに異なる。しかしながら、特許文献1の技術では、周波数間バイアスが何ら考慮されていないため、計算した電離層遅延量の精度が低かった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、簡単な構成でありながら電離層遅延量を正確に求めることのできる、周波数間バイアス算出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る周波数間バイアス算出装置は、GPS衛星から複数のGPS受信機までの第一の周波数による各第一の擬似距離と第二の周波数による各第二の擬似距離とを、当該複数のGPS受信機から入力するデータ収集部と、このデータ収集部から入力した複数の前記第一及び第二の擬似距離を所定の演算式に代入して前記第一及び第二の周波数による周波数間バイアスを算出する周波数間バイアス算出部と、この周波数間バイアス算出部で算出された周波数間バイアスを前記GPS受信機へ出力するデータ出力部と、を備えたものである。
【0009】
前記データ出力部は、DGPS基準局に対しても前記周波数間バイアスを出力する機能を有する、としてもよい。
【0010】
前記周波数間バイアス算出部は、次のようにしてもよい。前記第一及び第二の周波数で決まる係数をK、前記第一の擬似距離をρ1、前記第二の擬似距離をρ2、前記GPS衛星と前記GPS受信機との間の真の電離層遅延量をI'、前記GPS衛星の周波数間バイアスをτ、前記GPS受信機の周波数間バイアスをR、前記第一の周波数をf1、前記第二の周波数をf2、γ=(f1/f2)2としたとき、次式「K(ρ2−ρ1)=I'+τ+{R/(γ−1)}」に既知の前記K,γ及び複数の実測値の前記ρ1,ρ2を代入することにより連立方程式を作成し、この連立方程式を解くことにより未知の前記I',τ,Rの解を得る。
【0011】
本発明に係る周波数間バイアス算出方法は、本発明を方法の発明として捉えたものであり、本発明に係る周波数間バイアス算出装置に使用される。
【0012】
GPSを利用して電離層遅延量を計算するために、複数周波数のGPS受信機を利用することが一般的である。このとき、正確な電離層遅延量を計算するためには、周波数間バイアスを除去することが必要である。周波数間バイアスは、周波数間での電気的な経路差によるものであり、受信機、衛星等のハードウェアごとに異なる。現存するGPS衛星の周波数はL1(1575.42MHz)、L2(1227.6MHz)の二周波であり、その周波数間バイアス(以下「L1/L2バイアス」という。)は0〜10[m]程度である。1[m]程度のDGPS位置精度を求めるシステムには、このバイアスは非常に大きい。
【0013】
本発明は、このL1/L2バイアスに代表される周波数間バイアスを計算することができるバイアス算出装置(多量なデータを収集するデータ収集部及びそのデータを使用して周波数間バイアスを算出する周波数間バイアス算出部を有する。)を設けることによって、ユーザのシステムを肥大化することなく電離層遅延量の計算精度を高める又はDGPS位置精度を高めることができる。以降、L1/L2の二周波を例にとって議論を進める。周波数が異なる場合は、これらを読み替えることで、同様の効果が得られる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、GPS衛星から複数のGPS受信機までの第一の周波数による各第一の擬似距離と第二の周波数による各第二の擬似距離とを複数のGPS受信機から入力し、入力した複数の第一及び第二の擬似距離を所定の演算式に代入して第一及び第二の周波数による周波数間バイアスを算出し、算出した周波数間バイアスをGPS受信機へ出力することにより、簡単な構成で正確な周波数間バイアスをユーザに提供することができる。また、大量の演算を周波数間バイアス算出装置側で行うことにより、GPS受信機側すなわちユーザ側の負担を軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明に係る周波数間バイアス算出装置の第一実施形態を示すブロック図である。以下、この図面に基づき説明する。
【0016】
本実施形態の周波数間バイアス算出装置10は、データ収集部11、周波数間バイアス算出部12、データ出力部13等を備えている。データ収集部11は、GPS衛星40からGPS受信機20,21,22,…までの第一の周波数による各第一の擬似距離と第二の周波数による各第二の擬似距離とを、通信回線41を介してGPS受信機20,21,22,…から入力する。周波数間バイアス算出部12は、データ収集部11から入力した複数の第一及び第二の擬似距離を所定の演算式に代入して、第一及び第二の周波数による周波数間バイアスを算出する。データ出力部13は、周波数間バイアス算出部12で算出された周波数間バイアスを、通信回線41を介してGPS受信機20,21,22,…へ出力する。
【0017】
GPS受信機20は、受信アンテナ31、GPS受信部32、電離層遅延量計算部33等を備えている。通信回線41は、例えば電話回線、インターネット、個別回線(無線等)などである。
【0018】
次に、GPS衛星40を「衛星1」、GPS受信機20を「受信機A」と言い換えて、更に具体的に説明する。
【0019】
受信機Aで得られる衛星1の電離層遅延量IA1はGPSの電波の遅延が周波数の2乗に比例することから、次式(1)によって求められる。
【0020】
IA1=dion{fL22/(fL12−fL22)}=1.54573(ρL2A1−ρL1A1) ・・・(1)
ρL1:L1擬似距離[m]
ρL2:L2擬似距離[m]
fL1:L1周波数=1575420000[Hz]
fL2:L2周波数=1227600000[Hz]
dion:電離層定数[m]
【0021】
ただし、この電離層遅延量には実際にはL1/L2バイアスが含まれており、以下のような式で計算できる。なお、L1/L2バイアスについては“Algorithm for Inter-frequency Bias Calibration and Application to
WAAS Ionosphere Modeling”, Y. Chao et al., Proceedings of ION-GPS-95, P.639-646に定義が示されている。
【0022】
IA1=I'A1+τ1gd+{RA/(γ−1)} ・・・(2)
γ=(f1/f2)2=(1575.42/1227.6)2=(77/60)2=1.64694
τ1gd:衛星1のL1/L2バイアス[m]
RA:受信機AのL1/L2バイアス[m]
I'A1:衛星1と受信機Aとの間の真の電離層遅延量
【0023】
したがって、式(2)は式(1)に基づき次のように書き直せる。
1.54573(ρL2A1−ρL1A1)=I'A1+τ1gd+{RA/(γ−1)} ・・・(3)
【0024】
衛星及び受信機のL1/L2バイアス、並びに真の電離層遅延量を未知数として、実測値であるL1擬似距離及びL2擬似距離を利用して方程式を解くことにより、衛星及び受信機のL1/L2バイアスを求めることができる。この場合、真の電離層遅延量は、衛星/受信機の組み合わせや時刻が異なれば当然異なった値となるが、電離層が太陽活動に大きく依存することを考慮し、太陽磁気座標系に変換し、衛星/受信機の視線が電離層を通過する緯度、経度、仰角の関数となるようなモデル化を行うことで、一つのモデルが形成できる。そのモデルのパラメータも同時に未知数として解くことを意味する。
【0025】
この方程式をより精度良く解くには、複数の受信機で測定した複数の共通衛星の電離層遅延量が必要であり、単独の受信機ユーザがそれを計算することは不可能である。本システムは、そのようなユーザがL1/L2バイアスを利用し正確な電離層遅延量を計算するための装置を提供する。
【0026】
周波数間バイアス算出装置10では、大量のデータを処理することになる。一方、GPS受信機20のユーザ側は、通信回線やweb等を通して周波数間バイアス算出装置10と接続し、少量のデータを伝送するだけで、バイアスデータを入手することが可能となる。
【0027】
図2は、本発明に係る周波数間バイアス算出装置の第二実施形態を示すブロック図である。以下、この図面に基づき説明する。ただし、図1と同じ部分は同じ符号を付すことにより説明を省略する。
【0028】
本実施形態では、データ出力部13が通信回線41を介してDGPS基準局30へ周波数間バイアスを出力する機能を有する。DGPS基準局30は、受信アンテナ31、GPS受信部32、DGPS補正計算部34、無線送信部35、送信アンテナ36等を備えている。
【0029】
DGPS補正値を計算してユーザに提供するDGPS基準局30にとっても、L1/L2バイアスは重要な情報である。DGPS基準局30においてL1/L2バイアスを除去しないと、その分DGPS補正誤差が大きくなる。本実施形態によれば、そのようなDGPS基準局30にバイアスデータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る周波数間バイアス算出装置の第一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る周波数間バイアス算出装置の第二実施形態を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0031】
10 周波数間バイアス算出装置
11 データ収集部
12 周波数間バイアス算出部
13 データ出力部
20,21,22 GPS受信機
30 DGPS基準局
31 受信アンテナ
32 GPS受信部
33 電離層遅延量計算部
34 DGPS補正計算部
35 無線送信部
36 送信アンテナ
40 GPS衛星
41 通信回線
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPSを利用して電離層遅延量を計算するための周波数間バイアス算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
GPSによる単独測位では、GPS衛星から送信される衛星の位置や時刻などの情報を一台のアンテナで受信することにより、衛星から電波が発信されてから受信機に到達するまでに要した時間を測り、この時間を距離に換算する。そして、位置のわかっているGPS衛星を動く基準として、四個以上の衛星から観測点までの距離を知ることにより、観測点の位置を決定する。
【0003】
DGPS(ディファレンシャルGPS)測位では、位置のわかっている基準局と位置を求めようとする観測点とで同時に単独測位を行い、基準局で観測したデータを無線等を用いて観測点へリアルタイムに送信し、基準局の位置成果に基づき観測点の位置をリアルタイムに補正して求める。
【0004】
ところで、衛星から発信された電波は、電離層を通過するときに時間の遅れが発生する。この時間の遅れを「電離層遅延量」といい、観測点の正確な位置を得るには、この電離層遅延量を知る必要がある。
【0005】
【特許文献1】特開平10−54871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の電離層遅延量を正確に求める技術は、構成が複雑になるという問題があった(例えば上記特許文献1)。特にGPS受信機側が複雑な構成になるので、GPS受信機の大型化及び高価格化を招く。また、正確な電離層遅延量を計算するためには、周波数間バイアスを除去することが必要である。周波数間バイアスは、周波数間での電気的な経路差によるものであり、受信機、衛星等のハードウェアごとに異なる。しかしながら、特許文献1の技術では、周波数間バイアスが何ら考慮されていないため、計算した電離層遅延量の精度が低かった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、簡単な構成でありながら電離層遅延量を正確に求めることのできる、周波数間バイアス算出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る周波数間バイアス算出装置は、GPS衛星から複数のGPS受信機までの第一の周波数による各第一の擬似距離と第二の周波数による各第二の擬似距離とを、当該複数のGPS受信機から入力するデータ収集部と、このデータ収集部から入力した複数の前記第一及び第二の擬似距離を所定の演算式に代入して前記第一及び第二の周波数による周波数間バイアスを算出する周波数間バイアス算出部と、この周波数間バイアス算出部で算出された周波数間バイアスを前記GPS受信機へ出力するデータ出力部と、を備えたものである。
【0009】
前記データ出力部は、DGPS基準局に対しても前記周波数間バイアスを出力する機能を有する、としてもよい。
【0010】
前記周波数間バイアス算出部は、次のようにしてもよい。前記第一及び第二の周波数で決まる係数をK、前記第一の擬似距離をρ1、前記第二の擬似距離をρ2、前記GPS衛星と前記GPS受信機との間の真の電離層遅延量をI'、前記GPS衛星の周波数間バイアスをτ、前記GPS受信機の周波数間バイアスをR、前記第一の周波数をf1、前記第二の周波数をf2、γ=(f1/f2)2としたとき、次式「K(ρ2−ρ1)=I'+τ+{R/(γ−1)}」に既知の前記K,γ及び複数の実測値の前記ρ1,ρ2を代入することにより連立方程式を作成し、この連立方程式を解くことにより未知の前記I',τ,Rの解を得る。
【0011】
本発明に係る周波数間バイアス算出方法は、本発明を方法の発明として捉えたものであり、本発明に係る周波数間バイアス算出装置に使用される。
【0012】
GPSを利用して電離層遅延量を計算するために、複数周波数のGPS受信機を利用することが一般的である。このとき、正確な電離層遅延量を計算するためには、周波数間バイアスを除去することが必要である。周波数間バイアスは、周波数間での電気的な経路差によるものであり、受信機、衛星等のハードウェアごとに異なる。現存するGPS衛星の周波数はL1(1575.42MHz)、L2(1227.6MHz)の二周波であり、その周波数間バイアス(以下「L1/L2バイアス」という。)は0〜10[m]程度である。1[m]程度のDGPS位置精度を求めるシステムには、このバイアスは非常に大きい。
【0013】
本発明は、このL1/L2バイアスに代表される周波数間バイアスを計算することができるバイアス算出装置(多量なデータを収集するデータ収集部及びそのデータを使用して周波数間バイアスを算出する周波数間バイアス算出部を有する。)を設けることによって、ユーザのシステムを肥大化することなく電離層遅延量の計算精度を高める又はDGPS位置精度を高めることができる。以降、L1/L2の二周波を例にとって議論を進める。周波数が異なる場合は、これらを読み替えることで、同様の効果が得られる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、GPS衛星から複数のGPS受信機までの第一の周波数による各第一の擬似距離と第二の周波数による各第二の擬似距離とを複数のGPS受信機から入力し、入力した複数の第一及び第二の擬似距離を所定の演算式に代入して第一及び第二の周波数による周波数間バイアスを算出し、算出した周波数間バイアスをGPS受信機へ出力することにより、簡単な構成で正確な周波数間バイアスをユーザに提供することができる。また、大量の演算を周波数間バイアス算出装置側で行うことにより、GPS受信機側すなわちユーザ側の負担を軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明に係る周波数間バイアス算出装置の第一実施形態を示すブロック図である。以下、この図面に基づき説明する。
【0016】
本実施形態の周波数間バイアス算出装置10は、データ収集部11、周波数間バイアス算出部12、データ出力部13等を備えている。データ収集部11は、GPS衛星40からGPS受信機20,21,22,…までの第一の周波数による各第一の擬似距離と第二の周波数による各第二の擬似距離とを、通信回線41を介してGPS受信機20,21,22,…から入力する。周波数間バイアス算出部12は、データ収集部11から入力した複数の第一及び第二の擬似距離を所定の演算式に代入して、第一及び第二の周波数による周波数間バイアスを算出する。データ出力部13は、周波数間バイアス算出部12で算出された周波数間バイアスを、通信回線41を介してGPS受信機20,21,22,…へ出力する。
【0017】
GPS受信機20は、受信アンテナ31、GPS受信部32、電離層遅延量計算部33等を備えている。通信回線41は、例えば電話回線、インターネット、個別回線(無線等)などである。
【0018】
次に、GPS衛星40を「衛星1」、GPS受信機20を「受信機A」と言い換えて、更に具体的に説明する。
【0019】
受信機Aで得られる衛星1の電離層遅延量IA1はGPSの電波の遅延が周波数の2乗に比例することから、次式(1)によって求められる。
【0020】
IA1=dion{fL22/(fL12−fL22)}=1.54573(ρL2A1−ρL1A1) ・・・(1)
ρL1:L1擬似距離[m]
ρL2:L2擬似距離[m]
fL1:L1周波数=1575420000[Hz]
fL2:L2周波数=1227600000[Hz]
dion:電離層定数[m]
【0021】
ただし、この電離層遅延量には実際にはL1/L2バイアスが含まれており、以下のような式で計算できる。なお、L1/L2バイアスについては“Algorithm for Inter-frequency Bias Calibration and Application to
WAAS Ionosphere Modeling”, Y. Chao et al., Proceedings of ION-GPS-95, P.639-646に定義が示されている。
【0022】
IA1=I'A1+τ1gd+{RA/(γ−1)} ・・・(2)
γ=(f1/f2)2=(1575.42/1227.6)2=(77/60)2=1.64694
τ1gd:衛星1のL1/L2バイアス[m]
RA:受信機AのL1/L2バイアス[m]
I'A1:衛星1と受信機Aとの間の真の電離層遅延量
【0023】
したがって、式(2)は式(1)に基づき次のように書き直せる。
1.54573(ρL2A1−ρL1A1)=I'A1+τ1gd+{RA/(γ−1)} ・・・(3)
【0024】
衛星及び受信機のL1/L2バイアス、並びに真の電離層遅延量を未知数として、実測値であるL1擬似距離及びL2擬似距離を利用して方程式を解くことにより、衛星及び受信機のL1/L2バイアスを求めることができる。この場合、真の電離層遅延量は、衛星/受信機の組み合わせや時刻が異なれば当然異なった値となるが、電離層が太陽活動に大きく依存することを考慮し、太陽磁気座標系に変換し、衛星/受信機の視線が電離層を通過する緯度、経度、仰角の関数となるようなモデル化を行うことで、一つのモデルが形成できる。そのモデルのパラメータも同時に未知数として解くことを意味する。
【0025】
この方程式をより精度良く解くには、複数の受信機で測定した複数の共通衛星の電離層遅延量が必要であり、単独の受信機ユーザがそれを計算することは不可能である。本システムは、そのようなユーザがL1/L2バイアスを利用し正確な電離層遅延量を計算するための装置を提供する。
【0026】
周波数間バイアス算出装置10では、大量のデータを処理することになる。一方、GPS受信機20のユーザ側は、通信回線やweb等を通して周波数間バイアス算出装置10と接続し、少量のデータを伝送するだけで、バイアスデータを入手することが可能となる。
【0027】
図2は、本発明に係る周波数間バイアス算出装置の第二実施形態を示すブロック図である。以下、この図面に基づき説明する。ただし、図1と同じ部分は同じ符号を付すことにより説明を省略する。
【0028】
本実施形態では、データ出力部13が通信回線41を介してDGPS基準局30へ周波数間バイアスを出力する機能を有する。DGPS基準局30は、受信アンテナ31、GPS受信部32、DGPS補正計算部34、無線送信部35、送信アンテナ36等を備えている。
【0029】
DGPS補正値を計算してユーザに提供するDGPS基準局30にとっても、L1/L2バイアスは重要な情報である。DGPS基準局30においてL1/L2バイアスを除去しないと、その分DGPS補正誤差が大きくなる。本実施形態によれば、そのようなDGPS基準局30にバイアスデータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る周波数間バイアス算出装置の第一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る周波数間バイアス算出装置の第二実施形態を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0031】
10 周波数間バイアス算出装置
11 データ収集部
12 周波数間バイアス算出部
13 データ出力部
20,21,22 GPS受信機
30 DGPS基準局
31 受信アンテナ
32 GPS受信部
33 電離層遅延量計算部
34 DGPS補正計算部
35 無線送信部
36 送信アンテナ
40 GPS衛星
41 通信回線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPS衛星から複数のGPS受信機までの第一の周波数による各第一の擬似距離と第二の周波数による各第二の擬似距離とを、当該複数のGPS受信機から入力するデータ収集部と、
このデータ収集部から入力した複数の前記第一及び第二の擬似距離を所定の演算式に代入して前記第一及び第二の周波数による周波数間バイアスを算出する周波数間バイアス算出部と、
この周波数間バイアス算出部で算出された周波数間バイアスを前記GPS受信機へ出力するデータ出力部と、
を備えた周波数間バイアス算出装置。
【請求項2】
前記データ出力部は、DGPS基準局に対しても前記周波数間バイアスを出力する機能を有する、
請求項1記載の周波数間バイアス算出装置。
【請求項3】
前記周波数間バイアス算出部は、
前記第一及び第二の周波数で決まる係数をK、前記第一の擬似距離をρ1、前記第二の擬似距離をρ2、前記GPS衛星と前記GPS受信機との間の真の電離層遅延量をI'、前記GPS衛星の周波数間バイアスをτ、前記GPS受信機の周波数間バイアスをR、前記第一の周波数をf1、前記第二の周波数をf2、γ=(f1/f2)2としたとき、次式
K(ρ2−ρ1)=I'+τ+{R/(γ−1)}
に既知の前記K,γ及び複数の実測値の前記ρ1,ρ2を代入することにより連立方程式を作成し、
この連立方程式を解くことにより未知の前記I',τ,Rの解を得る、
請求項1又は2記載の周波数間バイアス算出装置。
【請求項4】
GPS衛星から複数のGPS受信機までの第一の周波数による各第一の擬似距離と第二の周波数による各第二の擬似距離とを、当該複数のGPS受信機から入力するデータ収集ステップと、
このデータ収集ステップで入力した複数の前記第一及び第二の擬似距離を所定の演算式に代入して前記第一及び第二の周波数による周波数間バイアスを算出する周波数間バイアス算出ステップと、
この周波数間バイアス算出ステップで算出した周波数間バイアスを前記GPS受信機へ出力するデータ出力ステップと、
を備えた周波数間バイアス算出方法。
【請求項5】
前記データ出力ステップは、DGPS基準局に対しても前記周波数間バイアスを出力する、
請求項4記載の周波数間バイアス算出方法。
【請求項6】
前記周波数間バイアス算出ステップは、
前記第一及び第二の周波数で決まる係数をK、前記第一の擬似距離をρ1、前記第二の擬似距離をρ2、前記GPS衛星と前記GPS受信機との間の真の電離層遅延量をI'、前記GPS衛星の周波数間バイアスをτ、前記GPS受信機の周波数間バイアスをR、前記第一の周波数をf1、前記第二の周波数をf2、γ=(f1/f2)2としたとき、次式
K(ρ2−ρ1)=I'+τ+{R/(γ−1)}
に既知の前記K,γ及び複数の実測値の前記ρ1,ρ2を代入することにより連立方程式を作成し、
この連立方程式を解くことにより未知の前記I',τ,Rの解を得る、
請求項4又は5記載の周波数間バイアス算出方法。
【請求項1】
GPS衛星から複数のGPS受信機までの第一の周波数による各第一の擬似距離と第二の周波数による各第二の擬似距離とを、当該複数のGPS受信機から入力するデータ収集部と、
このデータ収集部から入力した複数の前記第一及び第二の擬似距離を所定の演算式に代入して前記第一及び第二の周波数による周波数間バイアスを算出する周波数間バイアス算出部と、
この周波数間バイアス算出部で算出された周波数間バイアスを前記GPS受信機へ出力するデータ出力部と、
を備えた周波数間バイアス算出装置。
【請求項2】
前記データ出力部は、DGPS基準局に対しても前記周波数間バイアスを出力する機能を有する、
請求項1記載の周波数間バイアス算出装置。
【請求項3】
前記周波数間バイアス算出部は、
前記第一及び第二の周波数で決まる係数をK、前記第一の擬似距離をρ1、前記第二の擬似距離をρ2、前記GPS衛星と前記GPS受信機との間の真の電離層遅延量をI'、前記GPS衛星の周波数間バイアスをτ、前記GPS受信機の周波数間バイアスをR、前記第一の周波数をf1、前記第二の周波数をf2、γ=(f1/f2)2としたとき、次式
K(ρ2−ρ1)=I'+τ+{R/(γ−1)}
に既知の前記K,γ及び複数の実測値の前記ρ1,ρ2を代入することにより連立方程式を作成し、
この連立方程式を解くことにより未知の前記I',τ,Rの解を得る、
請求項1又は2記載の周波数間バイアス算出装置。
【請求項4】
GPS衛星から複数のGPS受信機までの第一の周波数による各第一の擬似距離と第二の周波数による各第二の擬似距離とを、当該複数のGPS受信機から入力するデータ収集ステップと、
このデータ収集ステップで入力した複数の前記第一及び第二の擬似距離を所定の演算式に代入して前記第一及び第二の周波数による周波数間バイアスを算出する周波数間バイアス算出ステップと、
この周波数間バイアス算出ステップで算出した周波数間バイアスを前記GPS受信機へ出力するデータ出力ステップと、
を備えた周波数間バイアス算出方法。
【請求項5】
前記データ出力ステップは、DGPS基準局に対しても前記周波数間バイアスを出力する、
請求項4記載の周波数間バイアス算出方法。
【請求項6】
前記周波数間バイアス算出ステップは、
前記第一及び第二の周波数で決まる係数をK、前記第一の擬似距離をρ1、前記第二の擬似距離をρ2、前記GPS衛星と前記GPS受信機との間の真の電離層遅延量をI'、前記GPS衛星の周波数間バイアスをτ、前記GPS受信機の周波数間バイアスをR、前記第一の周波数をf1、前記第二の周波数をf2、γ=(f1/f2)2としたとき、次式
K(ρ2−ρ1)=I'+τ+{R/(γ−1)}
に既知の前記K,γ及び複数の実測値の前記ρ1,ρ2を代入することにより連立方程式を作成し、
この連立方程式を解くことにより未知の前記I',τ,Rの解を得る、
請求項4又は5記載の周波数間バイアス算出方法。
【図1】
【図2】
【図2】
【公開番号】特開2006−23144(P2006−23144A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200213(P2004−200213)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
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