説明

呼制御信号送信装置、プログラム及び方法

【課題】 通信装置へ呼制御信号を送信する呼制御信号送信装置において、送信先の通信装置で正常に処理可能な呼制御信号を生成する。
【解決手段】 本発明は呼制御信号を送信先の通信装置へ向けて送出する呼制御信号送信装置に関する。そして、呼制御信号送信装置は、呼制御信号の送信先ごとに、送信する呼制御信号の1行あたりのデータ量の上限値を記憶する手段と、当該呼制御信号送信装置が送信しようとする呼制御信号の送信先に対応する上限値を保持し、当該呼制御信号の全ての行のデータ量が保持した上限値を超えないように、当該呼制御信号を加工する手段とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、呼制御信号送信装置、プログラム及び方法に関し、例えば、SIP(Session Initiation Protocol)の信号を処理するサーバ(以下、「SIPサーバ」と呼ぶ)に適用し得る。
【背景技術】
【0002】
一般的にSIPメッセージ(非特許文献1、2参照)を中継処理するSIPサーバでは、送信元のSIP−UA(SIP User Agent)から与えられたSIPメッセージに含まれるSIP−URI(SIP Uniform Resource Identifier)などを編集して、当該宛先のSIP−UAへ向けて送出する。
【0003】
SIP−UA間のセッションを確立や維持をさせるために、SIPメッセージのヘッダ情報を編集する従来技術としては、従来、特許文献1〜3の記載技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−20301号公報
【特許文献2】特願2008−544426号公報
【特許文献3】特願2001−373520号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】IETF RFC2234
【非特許文献2】IETF RFC3261
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜3の記載技術等を用いた従来のSIPサーバにおいて、中継送信するSIPメッセージのヘッダ情報を加工する場合、その加工によりSIPメッセージのヘッダ情報が長くなってしまうと、送信先のSIP−UA(又は、宛先のSIP−UAに到達するまでに中継するSIPサーバ)の仕様によっては、処理できない恐れがある。例えば、送信先が長いヘッダ(たとえばAuthorizationなど認証に関するヘッダ)のパーシングに対応していない場合は、送信先でそのSIPメッセージが正常に処理できない場合がある。
【0007】
特に、SIPメッセージを中継処理するSIPサーバと、SIPメッセージの送信先が別のネットワーク事業者となる場合には、SIPサーバにおいて、送信先で正常に処理不能なSIPメッセージが生成されてしまう場合があり、注意が必要である。
【0008】
そのため、通信装置(たとえば、SIP−UA)へ呼制御信号(たとえば、SIPメッセージ等)を送信する呼制御信号送信装置(例えば、SIPサーバ)において、送信先の通信装置で正常に処理可能な呼制御信号を生成することができる呼制御信号送信装置、プログラム及び方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の本発明は、呼制御信号を送信先の通信装置へ向けて送出する呼制御信号送信装置において、(1)呼制御信号の送信先ごとに、送信する呼制御信号の1行あたりのデータ量の上限値を記憶する送信先情報記憶手段と、(2)上記送信先情報記憶手段から、当該呼制御信号送信装置が送信しようとする呼制御信号の送信先に対応する上限値を保持し、当該呼制御信号の全ての行のデータ量が保持した上限値を超えないように、当該呼制御信号を加工する呼制御信号加工手段とを有することを特徴とする。
【0010】
第2の本発明の呼制御信号送信プログラムは、呼制御信号を送信先の通信装置へ向けて送出する呼制御信号送信装置に搭載されたコンピュータを、(1)呼制御信号の送信先ごとに、送信する呼制御信号の1行あたりのデータ量の上限値を記憶する送信先情報記憶手段と、(2)上記送信先情報記憶手段から、当該呼制御信号送信装置が送信しようとする呼制御信号の送信先に対応する上限値を保持し、当該呼制御信号の全ての行のデータ量が保持した上限値を超えないように、当該呼制御信号を加工する呼制御信号加工手段とを有することを特徴とする。
【0011】
第3の本発明は、呼制御信号を送信先の通信装置へ向けて送出する呼制御信号送信装置が実行する呼制御信号送信方法において、(1)送信先情報記憶手段、呼制御信号加工手段を有し、(2)上記送信先情報記憶手段は、呼制御信号の送信先ごとに、送信する呼制御信号の1行あたりのデータ量の上限値を記憶し、(3)上記呼制御信号加工手段は、上記送信先情報記憶手段から、当該呼制御信号送信装置が送信しようとする呼制御信号の送信先に対応する上限値を保持し、当該呼制御信号の全ての行のデータ量が保持した上限値を超えないように、当該呼制御信号を加工することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、通信装置へ呼制御信号を送信する呼制御信号送信装置において、送信先の通信装置で正常に処理可能な呼制御信号を生成することができる
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に関係する各種装置の接続関係などの説明図である。
【図2】実施形態に係る送信先情報リストの内容例について示した説明図である。
【図3】実施形態に係る発呼側のSIP−UAが、SIPサーバを介して着呼側のSIP−UAとSIPメッセージを送受信する処理について示したシーケンス図である。
【図4】実施形態に係るSIPサーバ(SIP処理部)によりSIPメッセージが処理される動作について示したフローチャートである。
【図5】実施形態に係るSIPサーバ(SIP処理部)により、処理されるSIPメッセージの内容の遷移を示した説明図である。
【図6】実施形態に係るSIPサーバ(SIP処理部)により、SIPメッセージのRecord−Routeヘッダに対して行う改行処理の内容ついて示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(A)主たる実施形態
以下、本発明による呼制御信号送信装置、プログラム及び方法の一実施形態を、図面を参照しながら詳述する。この実施形態では、本発明の呼制御信号送信装置をSIPサーバに適用した例について説明する。
【0015】
(A−1)実施形態の構成
図1は、この実施形態のSIPサーバ10の機能的構成について説明したブロック図である。
【0016】
SIPサーバ10は、SIPに対応した通信装置であるSIP−UA(SIP−User Agent)の間で、SIPメッセージ(SIP信号)を中継処理するものである。図1では、SIPサーバ10は、SIP−UA21(発呼側)とSIP−UA22(着呼側)との間のSIP信号を処理するものとする。なお、SIPサーバ10が中継処理する対象の通信装置の数や接続構成は限定されないものである。
【0017】
なお、SIP−UA21、22は、SIP端末(ユーザが使用する電話装置等の端末)であっても良いし、SIPサーバであってもよい。すなわち、SIPサーバ10は対向する通信装置の種類によってプロキシ動作を行ったり、SIP加入者を収容する動作するものであっても良い。
【0018】
SIPサーバ10は、制御部11、送受信部12、及びSIP処理部13を有している。
【0019】
SIPサーバ10は、プロセッサやメモリ等のプログラムの実施構成及びネットワークに接続するためのインタフェース等を備えた情報処理装置に、実施形態の呼制御信号送信プログラムをインストールすることにより構築しても良く、その場合でも機能的には図1のように表わすことができる。
【0020】
制御部11は、SIPサーバ10の全体を制御するものである。
【0021】
送受信部12は、SIPサーバ10がネットワークに接続するためのインタフェースである。
【0022】
SIP処理部13は、当該SIPサーバ10が送信するSIPメッセージ(呼制御信号)を処理するものである。
【0023】
SIP処理部13は、送信先情報リスト13aを有しており、送信先情報リスト13aの内容に従ってSIPメッセージを処理する。
【0024】
図2は、送信先情報リスト13aの内容例について示した説明図である。
【0025】
送信先情報リスト13aでは、それぞれのデータ(列)ごとに、「リスト番号」、「送信先アドレス」、「送信先ポート番号」、「1ライン最大長」、「ドメイン番号」の項目の情報を記憶している。
【0026】
「リスト番号」の項目は、送信先情報リスト13aにおける当該データの識別子を示している。
【0027】
SIP処理部13において、「送信先アドレス」の項目は、当該データが対象とするSIPメッセージの送信先アドレスを示すものとする。「送信先アドレス」については、単一のものではなく、複数指定(例えば、範囲指定)するようにしても良い。また、SIP処理部13において、当該データが対象とするSIPメッセージの指定方法は、「送信先アドレス」に限定されず、例えば、他の情報(ドメイン名等)を用いるようにしても良い。
【0028】
「送信先ポート番号」の項目は、当該データの「送信先アドレス」へSIPメッセージを送信する際のポート番号を示している。なお、「送信先ポート番号」の項目は、SIP処理部13の処理で用いない場合には省略するようにしても良い。
【0029】
「ドメイン番号」の項目は、当該データの「送信先アドレス」に対応するドメインの識別子を示している。
【0030】
図2では、ドメイン番号としては、「1」、「2」という番号を付しているが、実際には、それぞれの番号に対応するドメイン名が図示しないテーブル等に登録されているものとする。ドメイン番号の項目の記述形式は限定されないものであり、例えば、ドメイン名自体を登録するようにしても良い。なお、「ドメイン番号」の項目は、SIP処理部13の処理で用いない場合には省略するようにしても良い。
【0031】
「1ライン最大長」の項目は、当該データが対象とするSIPメッセージ(「送信先アドレス」に対応するSIPメッセージ)の各ヘッダについて、1行(ライン)あたりに許容する最大の長さ(データ量)を示している。ここでは、1行とは、ヘッダにおいて、先頭又は改行を示す符号(例えば、CRLF等)から、次の改行を示す符号までの長さをいうものとする。また、ここでは、1ライン最大長で用いられる単位はバイトであるものとする。
【0032】
SIP処理部13は、与えられたSIPメッセージについて、送信先情報リスト13aから該当するデータを検出し、検出したデータの1ライン最大長の値を保持する。そして、SIP処理部13は、そのパケットのSIPメッセージに、取得した1ライン最大長の値を超える行が存在した場合には、超えないように、改行を示す符号を挿入する処理(以下、「改行処理」という)を施す。SIP処理部13による処理については、後述する動作説明において詳述する。
【0033】
(A−2)実施形態の動作
次に、以上のような構成を有するこの実施形態のSIPサーバ10の動作(実施形態の呼制御信号送信方法)を説明する。
【0034】
まず、SIP−UA21とSIP−UA22との間で、SIPサーバ10を介してメッセージを送受信し、セッションを確立させる処理の概要について説明する。
【0035】
図3は、発呼側のSIP−UA21が、SIPサーバ10を介して着個呼側のSIP−UA22とSIPメッセージを送受信する処理について示したシーケンス図である。
【0036】
まず、発呼側のSIP−UA21から、SIP−UA22へ発呼するためのINVITEのSIPメッセージが、SIPサーバ10へ送信されたものとする(S101)。
【0037】
次に、SIPサーバ10は受信したINVITEのSIPメッセージを変換処理(上述の改行処理を含み、詳細については後述する)して(S102)、SIP−UA22へ転送する(S103)。
【0038】
そして、INVITEのSIPメッセージを受信したSIP−UA22は、SIP−UA21に応答するためのOKのSIPメッセージ(ステータスコードが200)を、SIPサーバ10に送信し(S104)、そのSIPメッセージがSIPサーバ10により変換処理され(S105)、SIP−UA21に送信される(S106)。
【0039】
そして、OKのSIPメッセージを受信したSIP−UA21は、SIP−UA22に応答するための「ACK」のSIPメッセージを、SIPサーバ10に送信し(S107)、そのSIPメッセージがSIPサーバ10により変換処理され(S108)、SIP−UA22に送信される(S109)。
【0040】
そして、SIP−UA21とSIP−UA22との間のセッションが確立される(S110)。
【0041】
次に、SIPサーバ10(SIP処理部13)によるSIPメッセージの処理の具体例について説明する。ここでは、具体例として、上述のステップS102におけるINVITEのSIPメッセージの処理について説明するが、その他のSIPメッセージについても同様の方法で処理可能である。
【0042】
図4は、SIPサーバ10(SIP処理部13)によりSIPメッセージが処理される動作について示したフローチャートである。
【0043】
図5は、上述の図4のフローチャートに従って、SIPサーバ10(SIP処理部13)により処理されるSIPメッセージの内容(ヘッダ部分のみ記載)の遷移を示した説明図である。
【0044】
ここでは、SIP処理部13が、SIPメッセージの処理に用いる送信先情報リスト13aの内容については、図2のような内容であるものとする。
【0045】
図5(a)は、上述のステップS101で、SIP−UA21からSIPサーバ10に送信されるINVITEメッセージ(SIPメッセージ)の内容例について示している。
【0046】
SIP処理部13では、SIPメッセージ(図5(a)のSIPメッセージ)が与えられると、まず、当該SIPメッセージについて改行処理以外の編集処理(Contactヘッダや、Record−Routeヘッダの内容の変換等)を行う(S201)。
【0047】
図5(b)は、ステップS201により、図5(a)に示すSIPメッセージが、SIP処理部13により変換された後(改行処理は未処理の状態)の内容を示している。
【0048】
なお、図5(b)において付された下線は、変換前(図5(a)の内容)から、記述を変更した部分を示している。図5(b)では、SIPサーバ10にてContactヘッダのアドレス情報が自身のアドレスに編集されている。具体的には、図5(b)では、Contactヘッダにおいて、SIP−UA21のアドレス(192.168.1.2)が、SIPサーバ10のアドレス(192.168.1.1)に変換されている。また、図5(b)では、SIPセッション確立後のリクエストを転送するためのRecord−Routeヘッダ等が編集されている。具体的には、図5(b)では、Record−Routeヘッダにおいて、「<sip:192.168.1.1:5060;lr>,」が、新たに挿入されている。
【0049】
なお、SIP処理部13によるステップS201における、SIPメッセージに対する改行処理以外の処理の内容については限定されないものであり、既存のSIPサーバと同様の処理を適用することができる。
【0050】
そして、SIP処理部13は、送信先情報リスト13aから、当該SIPメッセージの送信先に対応するデータ(列)を検出し、検出したデータの1ライン最大長の値を保持する(S202)。
【0051】
ここでは、SIP−UA22のIPアドレスは192.168.1.3であるものとする。また、図1においては図示を省略しているが、ロケーションサーバ等により、「09012345678@domainA.net」というSIP上のアドレスに対応する通信装置として、SIP−UA22が登録されているものとする。そして、図5(b)に示すSIPメッセージには、Toヘッダ等に、「09012345678@domainA.net」が記載されている。すなわち、SIPサーバ10では、図5(b)に示すSIPメッセージの送信先は、SIP−UA22(IPアドレス:192.168.1.3)として認識されるものとする。
【0052】
そして、SIP処理部13では、送信先情報リスト13aから、図5(b)に示すSIPメッセージの送信先に対応するデータ(列)として、リスト番号が2のデータ(IPアドレス:192.168.1.3に対応するデータ)が検出される。さらに、SIP処理部13では、送信先情報リスト13aから、リスト番号が2のデータにおける1ライン最大長として100[バイト]が取得される。
【0053】
次に、SIP処理部13は、図5(b)に示すSIPメッセージの全ヘッダのそれぞれについて、記述された行の長さが、1ライン最大長(100バイト)を超えていないかを調査(S203、S204)する。そして、1ライン最大長を超えたヘッダがあった場合、そのヘッダがすべて1ライン最大長以内に収まるように改行可能位置を検索し、改行可能位置に改行を示す符号(改行文字)を挿入する処理を繰り返し実行する(S205〜S207)。
【0054】
上述のステップS203、S204では、図5(b)に示すSIPメッセージの全ヘッダのうち、Record−Routeヘッダ(図5(b)のL5の行)のみが、1ライン最大長(100バイト)を超えていたと判断されたものとする。すなわち、Record−Routeヘッダについてのみ、上述のステップS205〜S207の改行処理が行われたものとする。
【0055】
図6は、図5(b)に示すSIPメッセージにおいて、Record−Routeヘッダについて上述のステップS205〜S207の改行処理が行われた場合の処理内容について示した説明図である。
【0056】
図6(a)は、図5(b)に示すSIPメッセージにおけるRecord−Routeヘッダの内容(改行処理を施す前の状態)である。図6(a)では、Record−Routeヘッダにおいて、末尾の「=192.168.1.100;lr>」の分だけ1ライン最大長(100バイト)を超えていることを示している。なお、SIP処理部13では、各ヘッダについて、1ライン最大長(100バイト)を超えるか否かの判定には、CRLFの分(2バイト分)は含まれないものとする。
【0057】
そして、SIP処理部13は、上述のステップS206の処理で、図6(a)に示すRecord−Routeヘッダについて、末尾から改行可能な位置の検索を行う。改行可能な位置については、検索対象のSIPメッセージにおける各ヘッダの記述方式に応じて定義するようにしても良い。ここでは、SIP処理部13は、例として、「<」の括弧の記号の前に記述された「,」等の区切りの記号の位置を、改行可能位置として認識するものとする。例えば、SIP処理部13は、改行処理を行おうとするヘッダについて、「,<」という文字列を検出した場合、その「,」と「<」の文字の間を改行可能位置として検出するようにしても良い。
【0058】
ここでは、例として、SIPメッセージの各ヘッダで、「<……>,<……>,…」のように、所定の括弧記号で囲われた記述(例えば、「<……>」のような記述)と、所定の区切り記号(例えば、カンマ「,」等)が交互に記述されている場合には、上述の括弧記号で囲われた記述「<……>」の間の区切り記号「,」の位置で改行を行っても、送信先のSIP−UA22では正常に処理できるものとする。
【0059】
そうすると、SIP処理部13は、図6(a)に示すRecord−Routeヘッダについて、末尾から検索していくと、「sip:3Zqkv…」という記述の次に、「,<」という記述が検出されるため、この「,」と「<」の文字の間を改行可能位置として検出することになる。
【0060】
次に、SIP処理部13は、ステップS207の処理により、図6(a)に示すRecord−Routeヘッダについて、検出した改行可能位置に、改行を示す符号を挿入する。ここでは、SIP処理部13は、非特許文献2(RFC3261)の7.3.1項のルールに従って、改行可能位置に、改行を示す符号として、「CRLF」及び、「SP」(スペースを示す符号)を挿入するものとする。
【0061】
その結果、図6(a)に示すRecord−Routeヘッダ(L5)については、改行挿入位置に改行を示す符号が挿入され、図6(b)に示すように、L5aとL5bの行に分割されることになる。
【0062】
そして、SIP処理部13は、まだ、改行可能位置を未検索のL5aの行について、1ライン最大長(100バイト)を超えているか否かを確認し、超えている場合には、上述と同様に改行可能位置を検索する。このように、SIP処理部13は、当該ヘッダ内の全ての行の長さが、1ライン最大長(100バイト)以下となるまで、改行可能位置を未検索の行について、ステップS205〜S207の処理を繰り返す。ここでは、上述の図6(b)に示すL5aの行については、1ライン最大長(100バイト)以下であり、ステップS205〜S207は、繰り返し行われずに終了したものとして以降の説明を行う。
【0063】
そして、図5(b)に示すSIPメッセージについて、ステップS205〜S207の処理が行われた後の内容を、図5(c)に示す。
【0064】
図5(c)では、図5(b)におけるL5の行の記述が、改行処理によりL5a及びL5bに分割している様子について示している。そして、L5a及びL5bは、上述の通り、いずれも1ライン最大長(100バイト)以下の長さとなっている。
【0065】
以上のように、SIP処理部13は、図5(a)に示すSIPメッセージを、図5(c)に示すSIPに示すSIPメッセージに変換し、変換したSIPメッセージをSIP−UA22に対して送信(S208)して処理を終了する。
【0066】
(A−3)実施形態の効果
この実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0067】
SIPサーバ10では、送信しようとするSIPメッセージのヘッダうち、1行あたりの長さが送信先のSIP−UAが許容する上限(1ライン最大長)を超える場合には、その上限を超えないように改行可能な箇所を探して改行処理を行ってから送信している。これにより、SIPサーバ10から送信されたSIPメッセージは、送信先のSIP−UAにおいて、本来ならば処理不能なSIPメッセージであったとしても、正常に処理させることができる。
【0068】
また、SIPサーバ10では、送信先情報リスト13aにおいて、送信先ごとに許容する1行あたりの長さの上限(1ライン最大長)を規定し、SIPメッセージを処理する際に送信先情報リスト13aの情報を利用して、送信先のSIP−UAにおいて処理可能なSIPメッセージに加工している。これにより、SIPサーバ10では、送信先に応じて最低限の改行処理だけを行えれば良いことになり、SIPメッセージの処理を効率的に行うことができる。
【0069】
(B)他の実施形態
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するような変形実施形態も挙げることができる。
【0070】
(B−1)上記の実施形態では、本発明の呼制御信号送信装置を、SIPメッセージを中継処理するSIPサーバに適用した例について説明したが、その他にも、SIPのプロキシサーバやレジストラサーバ等、SIP信号等の呼制御信号を送信する装置にも適用することができる。また、本発明の呼制御信号送信装置は、SIP−UAにサービスを提供するサーバだけでなく、SIP−UA側に適用するようにしても良い。
【0071】
SIP−UA等の自ら生成したSIPメッセージを送信する装置に、本発明の呼制御信号送信装置を適用する場合には、例えば、自らが生成したSIPメッセージについて、上記の実施形態と同様に、送信先ごとの仕様に適合した改行処理を行うようにしても良い。
【0072】
(B−2)上記の実施形態では、送信先情報リスト13aには、送信先のIPアドレス等に応じて1ライン最大長を定義しているが、ネットワークの事業者単位で、1ライン最大長を定義するようにしても良い。
【0073】
例えば、インターネット等の複数のネットワーク事業者により構成されたネットワークでは、対応するSIPメッセージの仕様は、通常ネットワークの事業者単位で異なる場合がある。そのため、送信先情報リスト13aに、ネットワークの事業者単位で1ライン最大長を定義することにより、送信先へのSIPメッセージの送信に対応することができる。
【0074】
送信先情報リスト13aにおいて、ネットワーク事業者単位で、1ライン最大長を定義する方法としては、例えば、ネットワーク事業者単位となるIPアドレスの範囲や、ネットワーク事業者単位となるドメイン名(複数指定するようにしても良い)ごとに、1ライン最大長を定義するようにしても良い。
【0075】
(B−3)上記の実施形態では、SIPサーバ10は、送信するSIPメッセージについて、送信先情報リスト13aで定義された1ライン最大長に従い、必要に応じて改行を示す符号を挿入しているが、送信先のSIP−UAの仕様によっては、この改行を示す符号を認識できない場合もある。
【0076】
そこで、例えば、送信先情報リスト13aで、改行を示す符号を認識できない送信先に対する1ライン最大長として、十分に長い1ライン最大長(例えば、10000バイト等実際にはあり得ない長さ)を定義することにより、改行を示す符号を認識できない送信先に対しては、SIPメッセージに改行を示す符号を挿入しないようにすることができる。また、例えば、送信先情報リスト13aで、改行を示す符号を認識できない送信先に対する1ライン最大長として、具体的な値ではなく、SIPメッセージに改行を示す符号を挿入しないことを指示する情報を定義しておくようにしても良い。
【0077】
(B−4)上記の実施形態では、SIP処理部13により、SIPメッセージで各ヘッダの改行可能位置を検索する際に、例として、SIPメッセージで「,<」という文字列を検出した場合、その「,」と「<」の文字の間を改行可能位置として検出している。しかし、送信先のSIP−UAの仕様上正常に処理可能な位置(ヘッダの構文上で改行が許される位置)であれば、改行可能位置の定義は上述の位置に限定されない。
【0078】
また、上記の実施形態では、SIP処理部13は、SIPメッセージのヘッダで、改行可能位置に、改行を示す符号として、「CRLF」及び、「SP」(スペースを示す符号)を挿入しているが、送信先のSIP−UAの仕様上正常に処理可能な内容であれば、その符号の内容は限定されないものである。
【符号の説明】
【0079】
10…SIPサーバ、11…制御部、12…送受信部、13…SIP処理部13a…送信先情報リスト、13…SIP処理部、21、22…SIP−UA、SIP−UA21、SIP−UA22。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼制御信号を送信先の通信装置へ向けて送出する呼制御信号送信装置において、
呼制御信号の送信先ごとに、送信する呼制御信号の1行あたりのデータ量の上限値を記憶する送信先情報記憶手段と、
上記送信先情報記憶手段から、当該呼制御信号送信装置が送信しようとする呼制御信号の送信先に対応する上限値を保持し、当該呼制御信号の全ての行のデータ量が保持した上限値を超えないように、当該呼制御信号を加工する呼制御信号加工手段と
を有することを特徴とする呼制御信号送信装置。
【請求項2】
上記呼制御信号加工手段は、当該呼制御信号で、保持した上限値を超えるデータ量の行が存在した場合、その行に1又は複数の改行を示す符号を挿入して、当該呼制御信号の全ての行のデータ量が保持した上限値を超えないようにすることを特徴とする請求項1に記載の呼制御信号送信装置。
【請求項3】
上記送信先情報記憶手段は、呼制御信号の送信先に係るネットワーク事業者を示す識別子ごとに、上限値を記憶していることを特徴とする請求項1又は2に記載の呼制御信号送信装置。
【請求項4】
上記送信先情報記憶手段で、改行を示す符号を認識することができない送信先に対応する上限値として、上記呼制御信号加工手段による改行を示す符号を挿入する処理を行わせない程度に長い値を適用していることを特徴とする請求項2に記載の呼制御信号送信装置。
【請求項5】
呼制御信号を送信先の通信装置へ向けて送出する呼制御信号送信装置に搭載されたコンピュータを、
呼制御信号の送信先ごとに、送信する呼制御信号の1行あたりのデータ量の上限値を記憶する送信先情報記憶手段と、
上記送信先情報記憶手段から、当該呼制御信号送信装置が送信しようとする呼制御信号の送信先に対応する上限値を保持し、当該呼制御信号の全ての行のデータ量が保持した上限値を超えないように、当該呼制御信号を加工する呼制御信号加工手段と
して機能させることを特徴とする呼制御信号送信プログラム。
【請求項6】
呼制御信号を送信先の通信装置へ向けて送出する呼制御信号送信装置が実行する呼制御信号送信方法において、
送信先情報記憶手段、呼制御信号加工手段を有し、
上記送信先情報記憶手段は、呼制御信号の送信先ごとに、送信する呼制御信号の1行あたりのデータ量の上限値を記憶し、
上記呼制御信号加工手段は、上記送信先情報記憶手段から、当該呼制御信号送信装置が送信しようとする呼制御信号の送信先に対応する上限値を保持し、当該呼制御信号の全ての行のデータ量が保持した上限値を超えないように、当該呼制御信号を加工する
ことを特徴とする呼制御信号送信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−44303(P2012−44303A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181686(P2010−181686)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【出願人】(308033722)株式会社OKIネットワークス (165)
【Fターム(参考)】