呼吸数又は心拍数測定装置及び測定システム
【課題】患者にとって拒否感がなく、着用が簡便で、且つ物理的変化に非常に敏感であって呼吸数又は心拍数を正確に測定することができる呼吸数又は心拍数測定装置を提供する。
【解決手段】呼吸数又は心拍数により長さ変化を起こす2枚の弾性バンド;前記弾性バンド2枚の間に挿入され、弾性バンドの変化により長さ変化を起こす圧電性高分子材料;及び前記弾性バンドと圧電性高分子材料の間の、圧電性高分子材料の両面にそれぞれ取り付けられ、圧電性高分子材料の長さ変化により発生された電気的信号を伝達する電極層を含む、呼吸数又は心拍数測定装置。
【解決手段】呼吸数又は心拍数により長さ変化を起こす2枚の弾性バンド;前記弾性バンド2枚の間に挿入され、弾性バンドの変化により長さ変化を起こす圧電性高分子材料;及び前記弾性バンドと圧電性高分子材料の間の、圧電性高分子材料の両面にそれぞれ取り付けられ、圧電性高分子材料の長さ変化により発生された電気的信号を伝達する電極層を含む、呼吸数又は心拍数測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸数又は心拍数測定装置及び測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸数と脈拍数は人を含めて哺乳動物の健康状態を示す基本的な指標であり、脈波(pulse wave)の測定を通じて計算される脈波伝播速度(pulse wave velocity : PWV)は動脈の弾力性及び詰まり程度を評価することができる良い指標である。
【0003】
息の吸い込みと吐き出しを1回とする時、動きのない安楽な状態での1分あたり回数を一般的に呼吸数と定義する。呼吸を1回する間に、胸部と腹部は1回の膨脹と収縮をするので、胸部又は腹部の1分間の膨脹と収縮の回数を測定することで分当たり呼吸数を計算することができる。
【0004】
心臓の収縮と弛緩による動脈の膨脹と収縮により発生する脈波の1分間回数で脈拍数を測定する。心臓が動く間の持続的な動脈の膨脹と収縮現象を用いて左側胸、頭、手首、足首などの血管に手を当てて感じる1分間の拍動数で脈拍数を測定することができる。
【0005】
心臓の拍動により発生した動脈内の脈波が頭、手首、足首などに到逹する時間はそれぞれ異なるが、これを脈波遅延時間と言う。この時、心臓から頭、手首、足首に至るまでの動脈の長さを各々知れば、脈波伝播速度(PWV)を計算することができる。元気な人と動脈硬化ができて血管の一部が詰まっている人の脈波伝播速度は相当な差がある。血管が詰まっていて血管の内径が小さくなればなるほど脈波伝播速度は速くなる。周期的に身体の各部位の脈波伝播速度を測定することにより心臓から頭、心臓から手首、心臓から足首に至る動脈の弾力性及び詰まり程度を診断することができる。
【0006】
呼吸をする時は、時間によって胸周りと腹部周りが主に大きく変化し、心臓が拍動する時は、血管の膨脹と収縮で時間によって頭周り、手首周り、足首周りなどが周期的に変化する。心臓拍動の振幅は呼吸の場合よりははるかに小さいが、胸周りと腹部周りは呼吸周波数よりはずっと速い周波数で時間によって周期的に変化する。
【0007】
病院や診療所で手術中の患者と、24時間心臓拍動と呼吸の推移を見守らなければならない心血管系疾患の患者と、挙動が非常に不便な高齢者とに対して、心臓拍動と呼吸数を持続的にモニタリングする装備が必須に使われてきた。最近のモバイル技術の発達によって心筋梗塞、冠状動脈疾患、不整脈などによる突然死と急死の発生確率が高い患者らのための携帯型心電図−呼吸信号測定装置が持続的に開発され且つ小型化され、携帯がもっと簡便になり、またバッテリーの消耗量も非常に減りつつある。
【0008】
現在病院での手術の時、患者に対して主に使われている呼吸測定装置である呼気終末二酸化炭素(End−Tidal CO2、ETCO2)測定装置は、呼吸過程で発生した二酸化炭素の量を時間によって測定して、最近の15秒乃至30秒の間の呼吸数を計算して分当たり呼吸数を得る。このような方法は、呼吸過程で発生する二酸化炭素の量を正確に測定することで呼吸数の測定だけでなく、患者の現在の代謝状態まで知ることができるというメリットがある。
【0009】
しかし、このような方法は呼気時に吐き出す空気内の二酸化炭素の量を正確に測定するために、気体捕集過程でホースを、鼻腔を介して気管支まで挿入しなければならないので、被施術者にとって苦痛を誘発するというデメリットがある。したがって、呼気終末二酸化炭素測定装置の使用は手術時の全身痲酔状態の患者や意識のない重症患者に対してのみに制限される。また、このような呼気終末二酸化炭素測定装置の信頼度は呼吸気体捕集装置の種類によって大きく変わるという問題点もある。
【0010】
したがって、呼気終末二酸化炭素測定装置を軽症患者に適用して正確な呼吸数を測定するには患者の苦痛を誘発するので、これを解決するための多様な方法が研究されつつある。
【0011】
一つの方法として、聴診器の原理を利用して、呼吸する時に発生する気道内の音波を電気信号に変化させて吸気と呼気を区分して呼吸数を測定する心音法がある。しかし、この方式は、周辺の騷音に敏感であって周辺の騷音が心音に比べて小さくなければならないため測定がよくできない。
【0012】
他の方法としては、心電図(Electrocardiogram、ECG)信号を測定し、ここに低周波フィルターを用いて呼吸信号を得る方法があるが、その信号の強さが非常に微弱で、また誤差範囲が広くて実際に使われにくい。
【0013】
その他に、二重コイルを内包するベルトを胸部及び上腹部に設置して、呼吸時の胸部の膨脹と収縮の時に発生する物理的な変化による二重コイルのインダクタンス又は電気容量の変化を測定する方法がある。しかし、二重コイルを利用する場合には外部の電磁気的干渉(EMI)に脆弱であるからこれを補うためのセンサーが更に必要とされる。
【0014】
よって、外部の電磁気的干渉効果に強くて、着用が簡便で患者に拒否感を与えず、製作コストが安くて、その正確度が常用装備と同様、又はそれ以上であるセンサーの開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、呼吸数又は心拍数により長さ変化を起こす2枚の弾性バンド;前記弾性バンド2枚の間に挿入され、弾性バンドの変化により長さ変化を起こす圧電性高分子材料;及び前記弾性バンドと圧電性高分子材料の間の、圧電性高分子材料の両面にそれぞれ取り付けられ、圧電性高分子材料の長さ変化により発生された電気的信号を伝達する電極層を含む、弾性バンド型呼吸数又は心拍数測定装置を提供することである。
【0016】
また、本発明の他の目的は、上記呼吸数又は心拍数測定装置を含むセンサー部;前記センサーで測定されたアナログ信号の雑音を取り除いて増幅するアナログ信号処理部;前記信号処理部で処理されたアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換部;前記デジタル信号を分析して呼吸数又は心拍数データを得るデジタル信号処理手段;及び、前記呼吸数又は心拍数データを表示する表示部からなる、呼吸数又は心拍数測定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の本発明の目的は、呼吸数又は心拍数により長さ変化を起こす2枚の弾性バンド;前記弾性バンド2枚の間に挿入され、弾性バンドの変化により長さ変化を起こす圧電性高分子材料;及び前記弾性バンドと圧電性高分子材料の間の、圧電性高分子材料の両面にそれぞれ取り付けられ、圧電性高分子材料の長さ変化により発生された電気的信号を伝達する電極層を含む、呼吸数又は心拍数測定装置を提供することで達成することができる。
【0018】
前記電極層の一面または両面はシリコーン系ゴム材料で被覆されることが望ましい。
【0019】
前記物質は圧電性高分子材料であることが望ましい。また前記圧電性高分子材料は、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンを含むブレンド、フッ化ビニリデン共重合体又はナイロン−11などから選ばれることが望ましい。
【0020】
更に前記ポリフッ化ビニリデンを含むブレンドは、ポリフッ化ビニリデン/ポリメチルメタクリレートブレンド、ポリフッ化ビニリデン/ポリ酢酸ビニルブレンド、又は、ポリフッ化ビニリデン/ポリ酢酸ビニル共重合体のブレンドなどから選ばれることが望ましい。
【0021】
また前記フッ化ビニリデン共重合体は、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、又は、フッ化ビニリデン/トリクロロフルオロエチレン共重合体などから選ばれることが望ましい。
【0022】
前記圧電性高分子材料はフィルム、シート、シリンダー、紐、ストランド、ファイバー、織布又はナノ纎維ウェブなどの形態であることが望ましい。
【0023】
前記電極層は金、銀、銅、白金、アルミニウム、ニッケル又はコバルトなどの材質で製造することができる。伝導性リードは前記2つの電極層に連結される。
【0024】
前記圧電性高分子材料と電極層の間の、圧電性高分子材料の両面は、高分子材料で被覆されることが望ましい。前記高分子材料はブタジエン系ゴム又はラテックス、イソプレン系ゴム又はラテックス、クロロプレン系ゴム又はラテックス、 ニトリル系ゴム又はラテックス、シリコーン系ゴム又はラテックス、ポリウレタン系ゴム又はラテックス、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアクリル、ポリイミド又はポリアセテートなどから選ばれることが望ましい。また前記高分子材料の被覆の厚さは100μm乃至5mmであることが望ましい。
【0025】
前記弾性バンドは周知の弾性繊維で作られても良く、その引張り歪み(tensile strain)は0.1乃至0.4であることが望ましい。
【0026】
また、上述の本発明の他の目的は、上記呼吸数又は心拍数測定装置を含むセンサー部;前記センサーで測定されたアナログ信号の雑音を取り除いて増幅するアナログ信号処理部;前記信号処理部で処理されたアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換部;前記デジタル信号を分析して呼吸数又は心拍数データを得るデジタル信号処理手段;及び、前記呼吸数又は心拍数データを表示する表示部からなる、呼吸数又は心拍数測定システムを提供することで達成することができる。
【0027】
前記呼吸数又は心拍数測定システムは更に補助記憶装置を備えることができる。補助記憶装置に格納されている、患者の呼吸数又は心拍数を通して患者の状態をチェックしても良い。
【発明の効果】
【0028】
また本発明の呼吸数又は心拍数測定装置は、患者にとって拒否感がなく、着用が簡便で、且つ物理的変化に非常に敏感であって呼吸数又は心拍数を正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】圧電効果の原理を示す図面である。
【図2】本発明の圧電性高分子材料を含むセンサーの一実施様態を示す図面である。
【図3】図2のセンサーを2枚の弾性纎維バンド内に挿入して製造された弾性バンド型装置の写真及び前記装置が取り付けられた手首の断面図である。
【図4】本発明の呼吸数及び心拍数測定システムの構成図である。
【図5】本発明の呼吸数及び心拍数測定システムの信号処理部に含まれる入力バッファー回路図である。
【図6】本発明の呼吸数及び心拍数測定システムの信号処理部に含まれるフィルタリング回路図である。
【図7】本発明の呼吸数及び心拍数測定システムの信号処理部に含まれる増幅及び出力回路図である。
【図8】本発明の弾性バンド型呼吸数又は心拍数測定装置を安楽な状態の人の右手首に取り付けた時測定した(a)時間領域信号及び(b)周波数領域信号を示す。
【図9】本発明の弾性バンド型呼吸数又は心拍数測定装置を安楽な状態の人の胸に取り付けた時測定した(a)時間領域信号及び(b)周波数領域信号を示す。
【図10】本発明の弾性バンド型呼吸数又は心拍数測定装置を人の胸に取り付けて、前記センサーのシリコーン被覆の厚さによる信号を示す。
【図11】手首に取り付けられた本発明の弾性バンド型呼吸数又は心拍数測定装置の引張り歪みによる心拍信号の変化を示すグラフである。
【図12】いろいろな身体部分で測定した心拍パルスを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、次の実施様態をもって本発明をより具体的に説明する。しかし、次の実施様態又は図面に係る説明は本発明の具体的な実施様態を特定して説明しようとするだけであって、本発明の権利範囲をこれらに記載した内容で限定するか、又は制限解釈しようとする意図ではない。
【0031】
図1は電極の形で作られた本発明のセンサーの圧電効果の原理を示す。厚さ方向に圧力を加えると、厚さが減りながら電荷密度が変化することによって厚さ方向に電流(又は電圧)が発生する。この時発生した電流(又は電圧)の大きさは圧力の大きさに比例する。一方、厚さ方向に圧力を加える代りに圧電性高分子フィルムの長さ方向や幅方向に圧力を加える場合や延伸する場合にも外力(又は伸率を)によって厚さが減る程度が変わり、この時厚さ方向に発生する電流(又は電圧)の大きさは外力(又は伸率を)に比例する。
【0032】
図2は本発明の圧電性高分子フィルムの一実施様態を示す。図2によれば、前記センサーは、圧電性高分子フィルム21、圧電性高分子フィルム21の両面のそれぞれを被覆する電極層22、金属リベットを用いて電極層に連結された伝導性リード線23、及び、前記電極層を被覆するゴム層24からなる。
【0033】
前記圧電性高分子フィルム21は、まず圧電性高分子材料を溶液鋳造又は溶融成形の工程を通じて得られたフィルムを1軸又は2軸延伸して製造する。前記高分子フィルムの厚さは6μm乃至2,000μmが望ましい。また前記圧電性高分子材料はポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンを含むブレンド、フッ化ビニリデン共重合体又はナイロン−11などから選ばれることが望ましい。
【0034】
さらに前記ポリフッ化ビニリデンを含むブレンドは、ポリフッ化ビニリデン/ポリメチルメタクリレートブレンド、ポリフッ化ビニリデン/ポリ酢酸ビニルブレンド、又は、ポリフッ化ビニリデン/ポリ酢酸ビニル共重合体のブレンドなどから選ばれることが望ましい。
【0035】
また前記フッ化ビニリデン共重合体は、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、又は、フッ化ビニリデン/トリクロロフルオロエチレン共重合体などから選ばれることが望ましい。
【0036】
前記延伸された圧電性フィルムを厚さ方向に高電圧をかけてコロナ処理を行う。前記コロナ処理を行えば、前記延伸された圧電性フィルム内に無秩序に存在する双極子(dipole)が外部電圧の方向に整列される。その後、外部電場を取り除いても一方向に配列された双極子は元通りに戻ることができないことにより、いわゆる残留分極(Pr: remanent polarization)を有する。
【0037】
前記伝導性電極層22は前記分極処理が終わった圧電フィルムの両面に伝導性電極を設けてキャパシターの形態で製作する。前記電極層は銀ペースト(silver paste)を塗布することで形成することができる。またスパッタリング(sputtering)、真空熱蒸着、電子ビーム蒸発法(e−beam evaporation)などの方法を通じて金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)などを蒸着することもできる。この時、電極層が設けられた圧電フィルムの長さは5mm乃至300mm、幅は5mm乃至25mmであることが望ましい。
【0038】
次に、前記電極層が設けられた圧電フィルムを所望する大きさで切断した上部及び下部電極に金属リベット(rivet)などを使用して伝導性リード線23を連結し、本発明のセンサーと信号処理部との連結を容易にするためにリード線の端に小型コネクター(connector)やプラグ(plug)を連結することができる。
【0039】
必要に応じて、前記電極層の摩耗を防止するために前記電極層が設けられた圧電フィルムを、溶液鋳造を通じてブタジエン系ゴム又はラテックス、イソプレン系ゴム又はラテックス、クロロプレン系ゴム又はラテックス、ニトリル系ゴム又はラテックス、シリコーン系ゴム又はラテックス、ポリウレタン系ゴム又はラテックスなどの高分子材料被膜で被覆しても良い。またポリエチレン、ポリエステル、ポリアクリル、ポリイミド、ポリアセテートなどの高分子フィルムをラミネーションすることもできる。この時の被膜の厚さは50μm乃至500μm、ラミネーションの厚さは3μm乃至30μmであることが望ましい。
【0040】
哺乳類の胸、腹、頭、手首又は足首に本発明の圧電性高分子フィルムを位置させても、呼吸や心臓拍動による圧電性高分子フィルムの厚さ方向の変化は無視できるほどに小さいため呼吸や心臓拍動による電流や電圧の変化を測定することは容易でない。
【0041】
ところが、本発明の圧電性高分子フィルムを胸、腹、頭、手首、足首の周りに巻着すれば、呼吸や心臓拍動によるこれら部分の円周の変化が圧電性高分子フィルムの長さ方向への変化を易しく起こすので、呼吸や心臓拍動による電流や電圧の変化を容易に測定することができる。
【0042】
しかし、圧電性高分子フィルムの引張り歪み(tensile strain)が非常に低いため、胸、腹、頭、手首、足首の周りを巻着することが容易ではない。よって、圧電性高分子フィルムを2枚の弾性纎維バンドの間に挿入して縫製した弾性バンドで胸、腹、頭、手首、足首の周りを囲むことが望ましい。その結果、呼吸や心臓拍動による胸、腹、頭、手首、足首などの周りの長さの変化が弾性バンドの長さの変化を起こす。よって、前記弾性バンド内に挿入されている圧電性高分子フィルムの長さが変化することになって呼吸や心臓拍動を測定することができる。
【0043】
ところで、圧電性高分子フィルムを保護膜でコーティングする場合は、前記弾性バンドとの密着性が悪くて互いに滑ることになる。よって弾性バンドが伸長されても滑り(slip)のせいで圧電性高分子フィルムが共に伸長されなくて前記圧電性高分子フィルムから発生する電流(又は電圧)信号が微弱になる。したがって心臓拍動と呼吸をモニタリングすることは容易ではない。また弾性バンド型装置を身体部位から脱着することにより弾性バンドの長さが元通り回復する過程で曲げ強度が低い圧電性高分子フィルムが折れる現象が生じる。
【0044】
また、ポリエステルのような高分子フィルムがラミネーションされた圧電性高分子フィルムは曲げ強度が大きいので、前記弾性バンドが元の長さまで回復する過程において折れる現象を防止することができる。しかし高分子フィルムがラミネーションされた圧電性高分子フィルムは弾性率も同時に大きく増加する。したがって心臓拍動及び呼吸による胸、頭、手首、足首などの外周の増加による圧電性高分子フィルムの長さ方向への伸び率が、前記保護膜がコーティングされた圧電性高分子フィルムに比べて非常に小さくなる。そのため、増幅器のゲイン(gain)を非常に高くしなければならない。しかし、この場合には雑音信号も共に増幅されて、非常に精巧なフィルター(filter)回路を設計しなければ純粋な心臓拍動波と呼吸波を雑音から分離することに難しい点がある。
【0045】
本発明者らは上述の問題点を解決するために両面に電極だけが設けられた圧電性高分子フィルム、電極が設けられた後に高分子材料で被覆した圧電性高分子フィルム、電極が設けられた後に高分子フィルムでラミネーションした圧電性高分子フィルムの一面あるいは両面にシリコーン系ゴム溶液(PDMS)を使用して、望ましくは厚さが100μm乃至5mmになるようにゴムを被覆させた。
【0046】
その結果、電極層が設けられた圧電性高分子フィルムの被覆表面の摩擦係数が増加して、弾性バンドが伸びる時の圧電性高分子フィルムの滑りが著しく減り、曲げ強度も大きく増加された。よって、人体から弾性バンド型呼吸数又は心拍数測定装置を脱着する時、伸びた弾性バンドが元の長さまで回復する過程で圧電性高分子フィルムが折れる現象も同時に防止することができた。前記弾性バンドは公知の弾性纎維を使用することができ、特に限定されない。
【0047】
本発明の呼吸数又は心拍数測定装置の望ましい実施様態として弾性纎維バンド型装置が次のように製造されることができる。電極層が設けられた圧電性高分子フィルムをこれより幅と長さが長い第1弾性纎維バンドと第2弾性纎維バンド(この場合、第1の弾性纎維バンドの幅は第2の弾性繊維バンドのそれと同様で、長さはフィルム型コンデンサーより若干長くする)との間に位置させる。前記2つの弾性纎維バンドを縫製して前記電極層が設けられた圧電性高分子フィルムが前記2つの弾性纎維バンドとよく密着するようにする。前記電極層に連結されるコネクター又はプラグも前記弾性纎維バンドに固定させることが望ましい。
【0048】
前記弾性纎維バンドに、一対のベルクロ(Velcro(登録商標))テープ(hook and fastener tape)を縫製して設けるか、又は一対のプラスチックバックルを設けて、脱着を容易にすることができる。
【0049】
図3は図2の高分子フィルムを2枚の弾性纎維バンド内に挿入して製造された弾性バンド型装置の写真及び前記装置が取り付けられた手首の断面図である。
【0050】
本発明の弾性バンド型装置を用いて呼吸数又は心拍数測定システムを形成することができる。本発明の呼吸数又は心拍数測定システムの一実施様態を図4に示した。
【0051】
図4によれば、本発明の呼吸数又は心拍数測定システムはセンサー部と、アナログ信号処理部と、アナログ−デジタル変換部と、デジタル信号処理手段及び表示部とからなる。前記アナログ−デジタル変換部、デジタル信号処理手段及び表示部は、コンピューターで具現することができる。前記センサー部は圧電性高分子フィルムを内蔵している弾性バンド型装置である。
【0052】
前記アナログ信号処理部は公知の方法で構成することができるが、具体的には前記センサー部と連結されて前記センサー部で測定した電気的信号が入力される入力バッファー回路(図5)と、フィルタリング回路(図6)と、信号を増幅するための増幅回路とを備える増幅及び出力回路(図7)とからなることができる。
【0053】
前記アナログデジタル変換部、デジタル信号処理手段(Digital Signal Processing、DSP)及び表示部(display)もそれぞれ従来の装置からなることができる。
【0054】
前記アナログ信号処理部から出るアナログ電圧信号をデータ収集ボード(DAQ board)上にあるアナログ−デジタル変換器(analog-digital converter、ADC)を用いてデジタル信号に変換し、LabVIEW、Visual C++、Visual Basic、MatLAB、又はその他のソフトウェアを使って作成したプログラムで分析して得られたデータを、表示部であるモニターに示すと共に補助記憶装置にこれらデータを保存することができる。
【0055】
胸、頭、手首、足首などから出る心臓拍動波と呼吸波のような生体信号を測定してモニター上にその結果を実時間ディスプレーすると共に周辺装置(PC、PDA又はstand alone装備)の補助記憶装置に保存することができる。
【0056】
前記センサー部から発生する信号には患者の心臓拍動及び呼吸以外のその他の原因による物理的変化まで含まれるので、前記アナログ信号処理部を通した後、追加的な処理過程を経る。患者の胸部、腹部、頭、手首、足首から測定された心臓拍動信号と呼吸信号が混合している信号を実時間波形でモニター上に示すと共に補助記憶装置に保存する。特に本発明の弾性バンド型呼吸数又は心拍数測定装置を胸部と腹部に取り付けた場合は、心臓拍動波と呼吸波が混合している信号が示されるが、心臓拍動波の振幅が呼吸波の振幅の1/10程度であり、心臓拍動波の振動数が呼吸波の振動数より3倍乃至6倍大きいため、呼吸波と心臓拍動波の区別が容易にできる。本発明の弾性バンド型呼吸数又は心拍数測定装置を頭、手首、足首に付けて動きのない状態で観測される信号は心臓拍動だけに係る信号であるので、より容易に脈波伝播速度を測定することができる。
【0057】
このような本発明の呼吸数又は心拍数測定システムは全身痲酔患者だけでなく、一般の軽症患者及び正常人に至るまで実時間で正確な呼吸パターンと心臓拍動パターンを測定、分析して、患者の危急状況を感知して医者、看護婦、看病人などに直ちに知らせるようにすることを目的とする。また測定された信号はデジタル化して各種保存装置に保存することができ、以後に医者が患者の状態を逆追跡することもできる。
【0058】
さらにこのようなデジタル情報は多様なプログラム(LabVIEW、Visual C++、Visual Basic、MatLABなどを利用したプログラム)で分析されて、従来の通信手段を通じて患者の応急状態を認知する次第、近くの病院と公共機関に知らせることもできる。
【実施例】
【0059】
実施例1.呼吸及び心拍パルスの測定
本発明の弾性バンド型呼吸数又は心拍数測定装置を手首、足首、頭、胸などに少し締められた状態で取り付けて本実験を行った。血管に沿って流れる血液の量によって圧力が弾性バンド型装置に加えられ、センサーに変形を加える。バンド型装置の変形はバンド型装置の内部に位置した圧電性フィルムの圧電現象によって電気信号が発生する。このように発生された信号は図4及び図5乃至図7に示した本発明の呼吸数又は心拍数測定システムで処理されて、コンピューター画面上に実時間に波形で現れることになるが、これを図8(a)及び図9(a)に示した。
【0060】
図8(a)及び図9(a)に示した実時間波形を高速フーリエ変換技法(Fast Fourier Transform、以下「FFT」と称する)を用いて測定した周波数領域のパワースペクトラム(power spectrum)を図8(b)及び図9(b)に示した。
【0061】
図8のグラフは手首に弾性バンド型呼吸数又は心拍数測定装置を取り付けて測定したので、周期的な心拍波形だけが示されることが分かる。これをFFT処理した結果、パワースペクトラムの1次ピーク点が1.2Hzで現れたので、脈拍数は分当たり1.2×60=72回であることが分かる。
【0062】
図9のグラフは胸に弾性バンド型呼吸数又は心拍数測定装置を取り付けて測定したので、周期的な呼吸波形(振幅がより大きい波形)と心拍波形(振幅がより小さい波形)が重なって現れた。これをFFT処理した結果、1次ピークが0.32Hzで最も大きく現れ、1次ピーク振動数の2倍である0.64Hzで1次ピークよりは大きさがかなり減少した2次ピークが現れ、1次ピーク振動数の3倍である0.96Hzで無視できるほどの小さい3次ピークが現われた。よって、0.32Hzで現われた1次ピークは呼吸に係るものであるので、分当たり呼吸数は0.32×60=19.2回になる。
【0063】
一方、実時間心拍波形の振幅は呼吸波形の振幅よりはるかに小さく、振動数は呼吸波形に比べてはるかに大きいため、呼吸の1次FFTピークよりは強さが相当小さいが、呼吸の3次FFTピークよりは当然大きく現れるはずなので、1.28Hzで現われたFFTピークは呼吸の4次FFTピークではなく、心拍波形の1次FFTピークであることが分かる。したがって分当たり心拍数は1.28×60=76.8回である。
【0064】
実施例2.圧電性フィルムを被覆したゴムの厚さが測定信号に及ぼす影響
圧電性フィルムを被覆したゴムの厚さが身体の呼吸による測定信号の強さに及ぼす影響を測るために、シリコーンゴムを被覆していないセンサー、厚さ1mmのシリコーンゴムで被覆したセンサー、厚さ2.5mmのシリコーンゴムで被覆したセンサーを内蔵した3種類の弾性バンド型装置を使って実施例1と同様の方法で胸に取り付けた後、同じ測定条件で測定した。測定した実時間呼吸/心臓拍動の混合波形を図9に示した。
【0065】
被覆したゴムの厚さが増加すればするほど呼吸による実時間信号の強さが増加することが判明した。これは被覆ゴムの厚さが増加するほど圧電性高分子フィルムと弾性纎維バンドとの密着性が良くなり、弾性纎維バンドの伸長による圧電性高分子フィルムの滑りが小さくなるので、その分伸長がよくできるということが分かる。
【0066】
実施例3.弾性纎維バンドの引張り歪みが測定信号に及ぼす影響
図11は、弾性纎維バンドを、引張り歪みを異にして手首に付けた後、実施例1と同様の方法で実時間脈波の振幅の大きさを纎維バンドの引張り歪みによって示したものである。
【0067】
弾性纎維バンドの引張り歪みが0.3まで増加することによって脈波の信号は急激に増加するが、前記引張り歪みが0.3より大きくなると、脈波の信号強さが急激に減ることが分かる。本発明の弾性纎維バンドでは長時間着用時の信号の強さと被試験者の安楽さを同時に考慮する時、引張り歪みを0.25程度にすることが一番好適であった。
【0068】
弾性バンド型装置を身体に取り付ける時に弾性バンドの引張り歪みを増加させると、圧電フィルムセンサーと弾性纎維バンドとの摩擦力が増加して圧電フィルムセンサーの滑りの低下によって呼吸や脈拍による身体部位の周囲が増加するので、弾性纎維バンドの伸長によって圧電性高分子フィルムの伸長も良くなって信号の大きさが増加した。しかし引張り歪みがとても大きい弾性纎維バンドを取り付けると、呼吸と心臓拍動による弾性ベルトの伸長が縮んで、返って測定信号の大きさが減少した。また、弾性纎維バンドを手首や足首に取り付ける場合、引張り歪みがとても大きい弾性纎維バンドを取り付けると動脈を押す圧力が増加して、却って動脈内への血の流れを阻むので脈波を確かに測り難いことがある。
【0069】
実施例4.多チャンネル脈拍波形の測定及びパルス波動の速度測定
実施例1の弾性バンド型装置を心臓が位置した胸部、頭、右手首、右側足首に同時に取り付ける多チャンネルシステムを構成し、多チャンネルアナログ−デジタル変換器及びデータ収集装置を通じて前記いろいろな部位で同時に脈拍波形を測定した。
【0070】
同時に測定したデータは画面上で実時間に現われ、各波形のパルス時間差測定値と予め入力された弾性バンドの位置データを用いて各位置に到逹する脈波の速度を得た。本実験をする間には胸部から心拍波形だけを得るために約10秒間呼吸を止めた。
【0071】
図12は、本発明の弾性バンド型装置を心臓が位置した胸部、頭、右手首、右足首に同時に取り付けて測定した4ヶ所の実時間脈波を示すものである。
【0072】
図12によれば、心拍波形を基準とすると、頭、手首、足首の順で脈波の遅延が増加することが分かる。正常被験者の測定時間内の部位別遅延時間を平均した結果、頭は73ms、右手首は119ms、右側足首は148msであり、標準偏差は28ms以下であった。 このような部位別脈波遅延時間を定期的に測定することにより被験者の血管の健康状態を簡単に点検してみることができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のセンサー、装置及びシステムは、構造物、人間を含む動物、植物などの一部分での長さ又は外周の変化を測定することができるようにする。これにより、構造物などの安全性、植物の成長、人を含む動物の呼吸数又は心拍数を測定することができる。
【0074】
本発明の呼吸数又は心拍数測定装置は、患者にとって大した拒否感がなく、着用が簡便で、且つ物理的変化に非常に敏感であるので呼吸数と心拍数を測定することにおいて有利である。よって、応急室、手術室、重患者室などで呼吸数又は心拍数を測定する手段及び患者監視システム(patient monitoring system)に使用することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸数又は心拍数測定装置及び測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸数と脈拍数は人を含めて哺乳動物の健康状態を示す基本的な指標であり、脈波(pulse wave)の測定を通じて計算される脈波伝播速度(pulse wave velocity : PWV)は動脈の弾力性及び詰まり程度を評価することができる良い指標である。
【0003】
息の吸い込みと吐き出しを1回とする時、動きのない安楽な状態での1分あたり回数を一般的に呼吸数と定義する。呼吸を1回する間に、胸部と腹部は1回の膨脹と収縮をするので、胸部又は腹部の1分間の膨脹と収縮の回数を測定することで分当たり呼吸数を計算することができる。
【0004】
心臓の収縮と弛緩による動脈の膨脹と収縮により発生する脈波の1分間回数で脈拍数を測定する。心臓が動く間の持続的な動脈の膨脹と収縮現象を用いて左側胸、頭、手首、足首などの血管に手を当てて感じる1分間の拍動数で脈拍数を測定することができる。
【0005】
心臓の拍動により発生した動脈内の脈波が頭、手首、足首などに到逹する時間はそれぞれ異なるが、これを脈波遅延時間と言う。この時、心臓から頭、手首、足首に至るまでの動脈の長さを各々知れば、脈波伝播速度(PWV)を計算することができる。元気な人と動脈硬化ができて血管の一部が詰まっている人の脈波伝播速度は相当な差がある。血管が詰まっていて血管の内径が小さくなればなるほど脈波伝播速度は速くなる。周期的に身体の各部位の脈波伝播速度を測定することにより心臓から頭、心臓から手首、心臓から足首に至る動脈の弾力性及び詰まり程度を診断することができる。
【0006】
呼吸をする時は、時間によって胸周りと腹部周りが主に大きく変化し、心臓が拍動する時は、血管の膨脹と収縮で時間によって頭周り、手首周り、足首周りなどが周期的に変化する。心臓拍動の振幅は呼吸の場合よりははるかに小さいが、胸周りと腹部周りは呼吸周波数よりはずっと速い周波数で時間によって周期的に変化する。
【0007】
病院や診療所で手術中の患者と、24時間心臓拍動と呼吸の推移を見守らなければならない心血管系疾患の患者と、挙動が非常に不便な高齢者とに対して、心臓拍動と呼吸数を持続的にモニタリングする装備が必須に使われてきた。最近のモバイル技術の発達によって心筋梗塞、冠状動脈疾患、不整脈などによる突然死と急死の発生確率が高い患者らのための携帯型心電図−呼吸信号測定装置が持続的に開発され且つ小型化され、携帯がもっと簡便になり、またバッテリーの消耗量も非常に減りつつある。
【0008】
現在病院での手術の時、患者に対して主に使われている呼吸測定装置である呼気終末二酸化炭素(End−Tidal CO2、ETCO2)測定装置は、呼吸過程で発生した二酸化炭素の量を時間によって測定して、最近の15秒乃至30秒の間の呼吸数を計算して分当たり呼吸数を得る。このような方法は、呼吸過程で発生する二酸化炭素の量を正確に測定することで呼吸数の測定だけでなく、患者の現在の代謝状態まで知ることができるというメリットがある。
【0009】
しかし、このような方法は呼気時に吐き出す空気内の二酸化炭素の量を正確に測定するために、気体捕集過程でホースを、鼻腔を介して気管支まで挿入しなければならないので、被施術者にとって苦痛を誘発するというデメリットがある。したがって、呼気終末二酸化炭素測定装置の使用は手術時の全身痲酔状態の患者や意識のない重症患者に対してのみに制限される。また、このような呼気終末二酸化炭素測定装置の信頼度は呼吸気体捕集装置の種類によって大きく変わるという問題点もある。
【0010】
したがって、呼気終末二酸化炭素測定装置を軽症患者に適用して正確な呼吸数を測定するには患者の苦痛を誘発するので、これを解決するための多様な方法が研究されつつある。
【0011】
一つの方法として、聴診器の原理を利用して、呼吸する時に発生する気道内の音波を電気信号に変化させて吸気と呼気を区分して呼吸数を測定する心音法がある。しかし、この方式は、周辺の騷音に敏感であって周辺の騷音が心音に比べて小さくなければならないため測定がよくできない。
【0012】
他の方法としては、心電図(Electrocardiogram、ECG)信号を測定し、ここに低周波フィルターを用いて呼吸信号を得る方法があるが、その信号の強さが非常に微弱で、また誤差範囲が広くて実際に使われにくい。
【0013】
その他に、二重コイルを内包するベルトを胸部及び上腹部に設置して、呼吸時の胸部の膨脹と収縮の時に発生する物理的な変化による二重コイルのインダクタンス又は電気容量の変化を測定する方法がある。しかし、二重コイルを利用する場合には外部の電磁気的干渉(EMI)に脆弱であるからこれを補うためのセンサーが更に必要とされる。
【0014】
よって、外部の電磁気的干渉効果に強くて、着用が簡便で患者に拒否感を与えず、製作コストが安くて、その正確度が常用装備と同様、又はそれ以上であるセンサーの開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、呼吸数又は心拍数により長さ変化を起こす2枚の弾性バンド;前記弾性バンド2枚の間に挿入され、弾性バンドの変化により長さ変化を起こす圧電性高分子材料;及び前記弾性バンドと圧電性高分子材料の間の、圧電性高分子材料の両面にそれぞれ取り付けられ、圧電性高分子材料の長さ変化により発生された電気的信号を伝達する電極層を含む、弾性バンド型呼吸数又は心拍数測定装置を提供することである。
【0016】
また、本発明の他の目的は、上記呼吸数又は心拍数測定装置を含むセンサー部;前記センサーで測定されたアナログ信号の雑音を取り除いて増幅するアナログ信号処理部;前記信号処理部で処理されたアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換部;前記デジタル信号を分析して呼吸数又は心拍数データを得るデジタル信号処理手段;及び、前記呼吸数又は心拍数データを表示する表示部からなる、呼吸数又は心拍数測定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の本発明の目的は、呼吸数又は心拍数により長さ変化を起こす2枚の弾性バンド;前記弾性バンド2枚の間に挿入され、弾性バンドの変化により長さ変化を起こす圧電性高分子材料;及び前記弾性バンドと圧電性高分子材料の間の、圧電性高分子材料の両面にそれぞれ取り付けられ、圧電性高分子材料の長さ変化により発生された電気的信号を伝達する電極層を含む、呼吸数又は心拍数測定装置を提供することで達成することができる。
【0018】
前記電極層の一面または両面はシリコーン系ゴム材料で被覆されることが望ましい。
【0019】
前記物質は圧電性高分子材料であることが望ましい。また前記圧電性高分子材料は、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンを含むブレンド、フッ化ビニリデン共重合体又はナイロン−11などから選ばれることが望ましい。
【0020】
更に前記ポリフッ化ビニリデンを含むブレンドは、ポリフッ化ビニリデン/ポリメチルメタクリレートブレンド、ポリフッ化ビニリデン/ポリ酢酸ビニルブレンド、又は、ポリフッ化ビニリデン/ポリ酢酸ビニル共重合体のブレンドなどから選ばれることが望ましい。
【0021】
また前記フッ化ビニリデン共重合体は、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、又は、フッ化ビニリデン/トリクロロフルオロエチレン共重合体などから選ばれることが望ましい。
【0022】
前記圧電性高分子材料はフィルム、シート、シリンダー、紐、ストランド、ファイバー、織布又はナノ纎維ウェブなどの形態であることが望ましい。
【0023】
前記電極層は金、銀、銅、白金、アルミニウム、ニッケル又はコバルトなどの材質で製造することができる。伝導性リードは前記2つの電極層に連結される。
【0024】
前記圧電性高分子材料と電極層の間の、圧電性高分子材料の両面は、高分子材料で被覆されることが望ましい。前記高分子材料はブタジエン系ゴム又はラテックス、イソプレン系ゴム又はラテックス、クロロプレン系ゴム又はラテックス、 ニトリル系ゴム又はラテックス、シリコーン系ゴム又はラテックス、ポリウレタン系ゴム又はラテックス、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアクリル、ポリイミド又はポリアセテートなどから選ばれることが望ましい。また前記高分子材料の被覆の厚さは100μm乃至5mmであることが望ましい。
【0025】
前記弾性バンドは周知の弾性繊維で作られても良く、その引張り歪み(tensile strain)は0.1乃至0.4であることが望ましい。
【0026】
また、上述の本発明の他の目的は、上記呼吸数又は心拍数測定装置を含むセンサー部;前記センサーで測定されたアナログ信号の雑音を取り除いて増幅するアナログ信号処理部;前記信号処理部で処理されたアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換部;前記デジタル信号を分析して呼吸数又は心拍数データを得るデジタル信号処理手段;及び、前記呼吸数又は心拍数データを表示する表示部からなる、呼吸数又は心拍数測定システムを提供することで達成することができる。
【0027】
前記呼吸数又は心拍数測定システムは更に補助記憶装置を備えることができる。補助記憶装置に格納されている、患者の呼吸数又は心拍数を通して患者の状態をチェックしても良い。
【発明の効果】
【0028】
また本発明の呼吸数又は心拍数測定装置は、患者にとって拒否感がなく、着用が簡便で、且つ物理的変化に非常に敏感であって呼吸数又は心拍数を正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】圧電効果の原理を示す図面である。
【図2】本発明の圧電性高分子材料を含むセンサーの一実施様態を示す図面である。
【図3】図2のセンサーを2枚の弾性纎維バンド内に挿入して製造された弾性バンド型装置の写真及び前記装置が取り付けられた手首の断面図である。
【図4】本発明の呼吸数及び心拍数測定システムの構成図である。
【図5】本発明の呼吸数及び心拍数測定システムの信号処理部に含まれる入力バッファー回路図である。
【図6】本発明の呼吸数及び心拍数測定システムの信号処理部に含まれるフィルタリング回路図である。
【図7】本発明の呼吸数及び心拍数測定システムの信号処理部に含まれる増幅及び出力回路図である。
【図8】本発明の弾性バンド型呼吸数又は心拍数測定装置を安楽な状態の人の右手首に取り付けた時測定した(a)時間領域信号及び(b)周波数領域信号を示す。
【図9】本発明の弾性バンド型呼吸数又は心拍数測定装置を安楽な状態の人の胸に取り付けた時測定した(a)時間領域信号及び(b)周波数領域信号を示す。
【図10】本発明の弾性バンド型呼吸数又は心拍数測定装置を人の胸に取り付けて、前記センサーのシリコーン被覆の厚さによる信号を示す。
【図11】手首に取り付けられた本発明の弾性バンド型呼吸数又は心拍数測定装置の引張り歪みによる心拍信号の変化を示すグラフである。
【図12】いろいろな身体部分で測定した心拍パルスを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、次の実施様態をもって本発明をより具体的に説明する。しかし、次の実施様態又は図面に係る説明は本発明の具体的な実施様態を特定して説明しようとするだけであって、本発明の権利範囲をこれらに記載した内容で限定するか、又は制限解釈しようとする意図ではない。
【0031】
図1は電極の形で作られた本発明のセンサーの圧電効果の原理を示す。厚さ方向に圧力を加えると、厚さが減りながら電荷密度が変化することによって厚さ方向に電流(又は電圧)が発生する。この時発生した電流(又は電圧)の大きさは圧力の大きさに比例する。一方、厚さ方向に圧力を加える代りに圧電性高分子フィルムの長さ方向や幅方向に圧力を加える場合や延伸する場合にも外力(又は伸率を)によって厚さが減る程度が変わり、この時厚さ方向に発生する電流(又は電圧)の大きさは外力(又は伸率を)に比例する。
【0032】
図2は本発明の圧電性高分子フィルムの一実施様態を示す。図2によれば、前記センサーは、圧電性高分子フィルム21、圧電性高分子フィルム21の両面のそれぞれを被覆する電極層22、金属リベットを用いて電極層に連結された伝導性リード線23、及び、前記電極層を被覆するゴム層24からなる。
【0033】
前記圧電性高分子フィルム21は、まず圧電性高分子材料を溶液鋳造又は溶融成形の工程を通じて得られたフィルムを1軸又は2軸延伸して製造する。前記高分子フィルムの厚さは6μm乃至2,000μmが望ましい。また前記圧電性高分子材料はポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンを含むブレンド、フッ化ビニリデン共重合体又はナイロン−11などから選ばれることが望ましい。
【0034】
さらに前記ポリフッ化ビニリデンを含むブレンドは、ポリフッ化ビニリデン/ポリメチルメタクリレートブレンド、ポリフッ化ビニリデン/ポリ酢酸ビニルブレンド、又は、ポリフッ化ビニリデン/ポリ酢酸ビニル共重合体のブレンドなどから選ばれることが望ましい。
【0035】
また前記フッ化ビニリデン共重合体は、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、又は、フッ化ビニリデン/トリクロロフルオロエチレン共重合体などから選ばれることが望ましい。
【0036】
前記延伸された圧電性フィルムを厚さ方向に高電圧をかけてコロナ処理を行う。前記コロナ処理を行えば、前記延伸された圧電性フィルム内に無秩序に存在する双極子(dipole)が外部電圧の方向に整列される。その後、外部電場を取り除いても一方向に配列された双極子は元通りに戻ることができないことにより、いわゆる残留分極(Pr: remanent polarization)を有する。
【0037】
前記伝導性電極層22は前記分極処理が終わった圧電フィルムの両面に伝導性電極を設けてキャパシターの形態で製作する。前記電極層は銀ペースト(silver paste)を塗布することで形成することができる。またスパッタリング(sputtering)、真空熱蒸着、電子ビーム蒸発法(e−beam evaporation)などの方法を通じて金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)などを蒸着することもできる。この時、電極層が設けられた圧電フィルムの長さは5mm乃至300mm、幅は5mm乃至25mmであることが望ましい。
【0038】
次に、前記電極層が設けられた圧電フィルムを所望する大きさで切断した上部及び下部電極に金属リベット(rivet)などを使用して伝導性リード線23を連結し、本発明のセンサーと信号処理部との連結を容易にするためにリード線の端に小型コネクター(connector)やプラグ(plug)を連結することができる。
【0039】
必要に応じて、前記電極層の摩耗を防止するために前記電極層が設けられた圧電フィルムを、溶液鋳造を通じてブタジエン系ゴム又はラテックス、イソプレン系ゴム又はラテックス、クロロプレン系ゴム又はラテックス、ニトリル系ゴム又はラテックス、シリコーン系ゴム又はラテックス、ポリウレタン系ゴム又はラテックスなどの高分子材料被膜で被覆しても良い。またポリエチレン、ポリエステル、ポリアクリル、ポリイミド、ポリアセテートなどの高分子フィルムをラミネーションすることもできる。この時の被膜の厚さは50μm乃至500μm、ラミネーションの厚さは3μm乃至30μmであることが望ましい。
【0040】
哺乳類の胸、腹、頭、手首又は足首に本発明の圧電性高分子フィルムを位置させても、呼吸や心臓拍動による圧電性高分子フィルムの厚さ方向の変化は無視できるほどに小さいため呼吸や心臓拍動による電流や電圧の変化を測定することは容易でない。
【0041】
ところが、本発明の圧電性高分子フィルムを胸、腹、頭、手首、足首の周りに巻着すれば、呼吸や心臓拍動によるこれら部分の円周の変化が圧電性高分子フィルムの長さ方向への変化を易しく起こすので、呼吸や心臓拍動による電流や電圧の変化を容易に測定することができる。
【0042】
しかし、圧電性高分子フィルムの引張り歪み(tensile strain)が非常に低いため、胸、腹、頭、手首、足首の周りを巻着することが容易ではない。よって、圧電性高分子フィルムを2枚の弾性纎維バンドの間に挿入して縫製した弾性バンドで胸、腹、頭、手首、足首の周りを囲むことが望ましい。その結果、呼吸や心臓拍動による胸、腹、頭、手首、足首などの周りの長さの変化が弾性バンドの長さの変化を起こす。よって、前記弾性バンド内に挿入されている圧電性高分子フィルムの長さが変化することになって呼吸や心臓拍動を測定することができる。
【0043】
ところで、圧電性高分子フィルムを保護膜でコーティングする場合は、前記弾性バンドとの密着性が悪くて互いに滑ることになる。よって弾性バンドが伸長されても滑り(slip)のせいで圧電性高分子フィルムが共に伸長されなくて前記圧電性高分子フィルムから発生する電流(又は電圧)信号が微弱になる。したがって心臓拍動と呼吸をモニタリングすることは容易ではない。また弾性バンド型装置を身体部位から脱着することにより弾性バンドの長さが元通り回復する過程で曲げ強度が低い圧電性高分子フィルムが折れる現象が生じる。
【0044】
また、ポリエステルのような高分子フィルムがラミネーションされた圧電性高分子フィルムは曲げ強度が大きいので、前記弾性バンドが元の長さまで回復する過程において折れる現象を防止することができる。しかし高分子フィルムがラミネーションされた圧電性高分子フィルムは弾性率も同時に大きく増加する。したがって心臓拍動及び呼吸による胸、頭、手首、足首などの外周の増加による圧電性高分子フィルムの長さ方向への伸び率が、前記保護膜がコーティングされた圧電性高分子フィルムに比べて非常に小さくなる。そのため、増幅器のゲイン(gain)を非常に高くしなければならない。しかし、この場合には雑音信号も共に増幅されて、非常に精巧なフィルター(filter)回路を設計しなければ純粋な心臓拍動波と呼吸波を雑音から分離することに難しい点がある。
【0045】
本発明者らは上述の問題点を解決するために両面に電極だけが設けられた圧電性高分子フィルム、電極が設けられた後に高分子材料で被覆した圧電性高分子フィルム、電極が設けられた後に高分子フィルムでラミネーションした圧電性高分子フィルムの一面あるいは両面にシリコーン系ゴム溶液(PDMS)を使用して、望ましくは厚さが100μm乃至5mmになるようにゴムを被覆させた。
【0046】
その結果、電極層が設けられた圧電性高分子フィルムの被覆表面の摩擦係数が増加して、弾性バンドが伸びる時の圧電性高分子フィルムの滑りが著しく減り、曲げ強度も大きく増加された。よって、人体から弾性バンド型呼吸数又は心拍数測定装置を脱着する時、伸びた弾性バンドが元の長さまで回復する過程で圧電性高分子フィルムが折れる現象も同時に防止することができた。前記弾性バンドは公知の弾性纎維を使用することができ、特に限定されない。
【0047】
本発明の呼吸数又は心拍数測定装置の望ましい実施様態として弾性纎維バンド型装置が次のように製造されることができる。電極層が設けられた圧電性高分子フィルムをこれより幅と長さが長い第1弾性纎維バンドと第2弾性纎維バンド(この場合、第1の弾性纎維バンドの幅は第2の弾性繊維バンドのそれと同様で、長さはフィルム型コンデンサーより若干長くする)との間に位置させる。前記2つの弾性纎維バンドを縫製して前記電極層が設けられた圧電性高分子フィルムが前記2つの弾性纎維バンドとよく密着するようにする。前記電極層に連結されるコネクター又はプラグも前記弾性纎維バンドに固定させることが望ましい。
【0048】
前記弾性纎維バンドに、一対のベルクロ(Velcro(登録商標))テープ(hook and fastener tape)を縫製して設けるか、又は一対のプラスチックバックルを設けて、脱着を容易にすることができる。
【0049】
図3は図2の高分子フィルムを2枚の弾性纎維バンド内に挿入して製造された弾性バンド型装置の写真及び前記装置が取り付けられた手首の断面図である。
【0050】
本発明の弾性バンド型装置を用いて呼吸数又は心拍数測定システムを形成することができる。本発明の呼吸数又は心拍数測定システムの一実施様態を図4に示した。
【0051】
図4によれば、本発明の呼吸数又は心拍数測定システムはセンサー部と、アナログ信号処理部と、アナログ−デジタル変換部と、デジタル信号処理手段及び表示部とからなる。前記アナログ−デジタル変換部、デジタル信号処理手段及び表示部は、コンピューターで具現することができる。前記センサー部は圧電性高分子フィルムを内蔵している弾性バンド型装置である。
【0052】
前記アナログ信号処理部は公知の方法で構成することができるが、具体的には前記センサー部と連結されて前記センサー部で測定した電気的信号が入力される入力バッファー回路(図5)と、フィルタリング回路(図6)と、信号を増幅するための増幅回路とを備える増幅及び出力回路(図7)とからなることができる。
【0053】
前記アナログデジタル変換部、デジタル信号処理手段(Digital Signal Processing、DSP)及び表示部(display)もそれぞれ従来の装置からなることができる。
【0054】
前記アナログ信号処理部から出るアナログ電圧信号をデータ収集ボード(DAQ board)上にあるアナログ−デジタル変換器(analog-digital converter、ADC)を用いてデジタル信号に変換し、LabVIEW、Visual C++、Visual Basic、MatLAB、又はその他のソフトウェアを使って作成したプログラムで分析して得られたデータを、表示部であるモニターに示すと共に補助記憶装置にこれらデータを保存することができる。
【0055】
胸、頭、手首、足首などから出る心臓拍動波と呼吸波のような生体信号を測定してモニター上にその結果を実時間ディスプレーすると共に周辺装置(PC、PDA又はstand alone装備)の補助記憶装置に保存することができる。
【0056】
前記センサー部から発生する信号には患者の心臓拍動及び呼吸以外のその他の原因による物理的変化まで含まれるので、前記アナログ信号処理部を通した後、追加的な処理過程を経る。患者の胸部、腹部、頭、手首、足首から測定された心臓拍動信号と呼吸信号が混合している信号を実時間波形でモニター上に示すと共に補助記憶装置に保存する。特に本発明の弾性バンド型呼吸数又は心拍数測定装置を胸部と腹部に取り付けた場合は、心臓拍動波と呼吸波が混合している信号が示されるが、心臓拍動波の振幅が呼吸波の振幅の1/10程度であり、心臓拍動波の振動数が呼吸波の振動数より3倍乃至6倍大きいため、呼吸波と心臓拍動波の区別が容易にできる。本発明の弾性バンド型呼吸数又は心拍数測定装置を頭、手首、足首に付けて動きのない状態で観測される信号は心臓拍動だけに係る信号であるので、より容易に脈波伝播速度を測定することができる。
【0057】
このような本発明の呼吸数又は心拍数測定システムは全身痲酔患者だけでなく、一般の軽症患者及び正常人に至るまで実時間で正確な呼吸パターンと心臓拍動パターンを測定、分析して、患者の危急状況を感知して医者、看護婦、看病人などに直ちに知らせるようにすることを目的とする。また測定された信号はデジタル化して各種保存装置に保存することができ、以後に医者が患者の状態を逆追跡することもできる。
【0058】
さらにこのようなデジタル情報は多様なプログラム(LabVIEW、Visual C++、Visual Basic、MatLABなどを利用したプログラム)で分析されて、従来の通信手段を通じて患者の応急状態を認知する次第、近くの病院と公共機関に知らせることもできる。
【実施例】
【0059】
実施例1.呼吸及び心拍パルスの測定
本発明の弾性バンド型呼吸数又は心拍数測定装置を手首、足首、頭、胸などに少し締められた状態で取り付けて本実験を行った。血管に沿って流れる血液の量によって圧力が弾性バンド型装置に加えられ、センサーに変形を加える。バンド型装置の変形はバンド型装置の内部に位置した圧電性フィルムの圧電現象によって電気信号が発生する。このように発生された信号は図4及び図5乃至図7に示した本発明の呼吸数又は心拍数測定システムで処理されて、コンピューター画面上に実時間に波形で現れることになるが、これを図8(a)及び図9(a)に示した。
【0060】
図8(a)及び図9(a)に示した実時間波形を高速フーリエ変換技法(Fast Fourier Transform、以下「FFT」と称する)を用いて測定した周波数領域のパワースペクトラム(power spectrum)を図8(b)及び図9(b)に示した。
【0061】
図8のグラフは手首に弾性バンド型呼吸数又は心拍数測定装置を取り付けて測定したので、周期的な心拍波形だけが示されることが分かる。これをFFT処理した結果、パワースペクトラムの1次ピーク点が1.2Hzで現れたので、脈拍数は分当たり1.2×60=72回であることが分かる。
【0062】
図9のグラフは胸に弾性バンド型呼吸数又は心拍数測定装置を取り付けて測定したので、周期的な呼吸波形(振幅がより大きい波形)と心拍波形(振幅がより小さい波形)が重なって現れた。これをFFT処理した結果、1次ピークが0.32Hzで最も大きく現れ、1次ピーク振動数の2倍である0.64Hzで1次ピークよりは大きさがかなり減少した2次ピークが現れ、1次ピーク振動数の3倍である0.96Hzで無視できるほどの小さい3次ピークが現われた。よって、0.32Hzで現われた1次ピークは呼吸に係るものであるので、分当たり呼吸数は0.32×60=19.2回になる。
【0063】
一方、実時間心拍波形の振幅は呼吸波形の振幅よりはるかに小さく、振動数は呼吸波形に比べてはるかに大きいため、呼吸の1次FFTピークよりは強さが相当小さいが、呼吸の3次FFTピークよりは当然大きく現れるはずなので、1.28Hzで現われたFFTピークは呼吸の4次FFTピークではなく、心拍波形の1次FFTピークであることが分かる。したがって分当たり心拍数は1.28×60=76.8回である。
【0064】
実施例2.圧電性フィルムを被覆したゴムの厚さが測定信号に及ぼす影響
圧電性フィルムを被覆したゴムの厚さが身体の呼吸による測定信号の強さに及ぼす影響を測るために、シリコーンゴムを被覆していないセンサー、厚さ1mmのシリコーンゴムで被覆したセンサー、厚さ2.5mmのシリコーンゴムで被覆したセンサーを内蔵した3種類の弾性バンド型装置を使って実施例1と同様の方法で胸に取り付けた後、同じ測定条件で測定した。測定した実時間呼吸/心臓拍動の混合波形を図9に示した。
【0065】
被覆したゴムの厚さが増加すればするほど呼吸による実時間信号の強さが増加することが判明した。これは被覆ゴムの厚さが増加するほど圧電性高分子フィルムと弾性纎維バンドとの密着性が良くなり、弾性纎維バンドの伸長による圧電性高分子フィルムの滑りが小さくなるので、その分伸長がよくできるということが分かる。
【0066】
実施例3.弾性纎維バンドの引張り歪みが測定信号に及ぼす影響
図11は、弾性纎維バンドを、引張り歪みを異にして手首に付けた後、実施例1と同様の方法で実時間脈波の振幅の大きさを纎維バンドの引張り歪みによって示したものである。
【0067】
弾性纎維バンドの引張り歪みが0.3まで増加することによって脈波の信号は急激に増加するが、前記引張り歪みが0.3より大きくなると、脈波の信号強さが急激に減ることが分かる。本発明の弾性纎維バンドでは長時間着用時の信号の強さと被試験者の安楽さを同時に考慮する時、引張り歪みを0.25程度にすることが一番好適であった。
【0068】
弾性バンド型装置を身体に取り付ける時に弾性バンドの引張り歪みを増加させると、圧電フィルムセンサーと弾性纎維バンドとの摩擦力が増加して圧電フィルムセンサーの滑りの低下によって呼吸や脈拍による身体部位の周囲が増加するので、弾性纎維バンドの伸長によって圧電性高分子フィルムの伸長も良くなって信号の大きさが増加した。しかし引張り歪みがとても大きい弾性纎維バンドを取り付けると、呼吸と心臓拍動による弾性ベルトの伸長が縮んで、返って測定信号の大きさが減少した。また、弾性纎維バンドを手首や足首に取り付ける場合、引張り歪みがとても大きい弾性纎維バンドを取り付けると動脈を押す圧力が増加して、却って動脈内への血の流れを阻むので脈波を確かに測り難いことがある。
【0069】
実施例4.多チャンネル脈拍波形の測定及びパルス波動の速度測定
実施例1の弾性バンド型装置を心臓が位置した胸部、頭、右手首、右側足首に同時に取り付ける多チャンネルシステムを構成し、多チャンネルアナログ−デジタル変換器及びデータ収集装置を通じて前記いろいろな部位で同時に脈拍波形を測定した。
【0070】
同時に測定したデータは画面上で実時間に現われ、各波形のパルス時間差測定値と予め入力された弾性バンドの位置データを用いて各位置に到逹する脈波の速度を得た。本実験をする間には胸部から心拍波形だけを得るために約10秒間呼吸を止めた。
【0071】
図12は、本発明の弾性バンド型装置を心臓が位置した胸部、頭、右手首、右足首に同時に取り付けて測定した4ヶ所の実時間脈波を示すものである。
【0072】
図12によれば、心拍波形を基準とすると、頭、手首、足首の順で脈波の遅延が増加することが分かる。正常被験者の測定時間内の部位別遅延時間を平均した結果、頭は73ms、右手首は119ms、右側足首は148msであり、標準偏差は28ms以下であった。 このような部位別脈波遅延時間を定期的に測定することにより被験者の血管の健康状態を簡単に点検してみることができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のセンサー、装置及びシステムは、構造物、人間を含む動物、植物などの一部分での長さ又は外周の変化を測定することができるようにする。これにより、構造物などの安全性、植物の成長、人を含む動物の呼吸数又は心拍数を測定することができる。
【0074】
本発明の呼吸数又は心拍数測定装置は、患者にとって大した拒否感がなく、着用が簡便で、且つ物理的変化に非常に敏感であるので呼吸数と心拍数を測定することにおいて有利である。よって、応急室、手術室、重患者室などで呼吸数又は心拍数を測定する手段及び患者監視システム(patient monitoring system)に使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸数又は心拍数により長さ変化を起こす2枚の弾性バンド;
前記弾性バンド2枚の間に挿入され、弾性バンドの変化により長さ変化を起こす圧電性高分子材料;及び
前記弾性バンドと圧電性高分子材料の間の、圧電性高分子材料の両面にそれぞれ取り付けられ、圧電性高分子材料の長さ変化により発生された電気的信号を伝達する電極層を含む、
呼吸数又は心拍数測定装置。
【請求項2】
前記電極層の一面または両面はシリコーン系ゴム材料で被覆されることを特徴とする請求項1に記載の呼吸数又は心拍数測定装置。
【請求項3】
前記圧電性高分子材料はポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンを含むブレンド、フッ化ビニリデン共重合体及びナイロン−11からなる群より選ばれることを特徴とする請求項1に記載の呼吸数又は心拍数測定装置。
【請求項4】
前記ポリフッ化ビニリデンを含むブレンドは、ポリフッ化ビニリデン/ポリメチルメタクリレートブレンド、ポリフッ化ビニリデン/ポリ酢酸ビニルブレンド、及び、ポリフッ化ビニリデン/ポリ酢酸ビニル共重合体のブレンドからなる群より選ばれることを特徴とする請求項3に記載の呼吸数又は心拍数測定装置。
【請求項5】
前記フッ化ビニリデン共重合体は、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びフッ化ビニリデン/トリクロロフルオロエチレン共重合体からなる群より選ばれることを特徴とする請求項3に記載の呼吸数又は心拍数測定装置。
【請求項6】
前記圧電性高分子材料はフィルム、シート、シリンダー、紐、ストランド、ファイバー、織布及びナノ纎維ウェブからなる群より選ばれる形態であることを特徴とする請求項1に記載の呼吸数又は心拍数測定装置。
【請求項7】
前記電極層は金、銀、銅、白金、アルミニウム、ニッケル及びコバルトからなる群より選ばれることを特徴とする請求項1に記載の呼吸数又は心拍数測定装置。
【請求項8】
前記弾性バンドは弾性纎維からなることを特徴とする請求項1に記載の呼吸数又は心拍数測定装置。
【請求項9】
前記圧電性高分子材料と電極層の間の、圧電性高分子材料の両面は、高分子材料で被覆されることを特徴とする請求項1に記載の呼吸数又は心拍数測定装置。
【請求項10】
前記高分子材料はブタジエン系ゴム又はラテックス、イソプレン系ゴム又はラテックス、クロロプレン系ゴム又はラテックス、ニトリル系ゴム又はラテックス、シリコーン系ゴム又はラテックス、ポリウレタン系ゴム又はラテックス、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアクリル、ポリイミド及びポリアセテートからなる群より選ばれる少なくとも一つ以上であることを特徴とする請求項9に記載の呼吸数又は心拍数測定装置。
【請求項11】
前記高分子材料による被覆の厚さは100μm乃至5mmであることを特徴とする請求項9に記載の呼吸数又は心拍数測定装置。
【請求項12】
前記弾性バンドの引張り歪み(tensile strain)は0.1乃至0.4であることを特徴とする請求項1に記載の呼吸数又は心拍数測定装置。
【請求項13】
前記電極層に伝導性リード線が連結されることを特徴とする請求項1に記載の呼吸数又は心拍数測定装置。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13のいずれか一項の測定装置を含むセンサー部;
前記センサー部で測定されたアナログ信号の雑音を取り除いて増幅するアナログ信号処理部;
前記アナログ信号処理部で処理されたアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換部;
前記デジタル信号を分析して呼吸数又は心拍数データを得るデジタル信号処理手段;及び
前記呼吸数又は心拍数データを表示する表示部からなる、呼吸数又は心拍数測定システム。
【請求項15】
補助記憶装置をさらに備えることを特徴とする請求項14に記載の呼吸数又は心拍数測定システム。
【請求項1】
呼吸数又は心拍数により長さ変化を起こす2枚の弾性バンド;
前記弾性バンド2枚の間に挿入され、弾性バンドの変化により長さ変化を起こす圧電性高分子材料;及び
前記弾性バンドと圧電性高分子材料の間の、圧電性高分子材料の両面にそれぞれ取り付けられ、圧電性高分子材料の長さ変化により発生された電気的信号を伝達する電極層を含む、
呼吸数又は心拍数測定装置。
【請求項2】
前記電極層の一面または両面はシリコーン系ゴム材料で被覆されることを特徴とする請求項1に記載の呼吸数又は心拍数測定装置。
【請求項3】
前記圧電性高分子材料はポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンを含むブレンド、フッ化ビニリデン共重合体及びナイロン−11からなる群より選ばれることを特徴とする請求項1に記載の呼吸数又は心拍数測定装置。
【請求項4】
前記ポリフッ化ビニリデンを含むブレンドは、ポリフッ化ビニリデン/ポリメチルメタクリレートブレンド、ポリフッ化ビニリデン/ポリ酢酸ビニルブレンド、及び、ポリフッ化ビニリデン/ポリ酢酸ビニル共重合体のブレンドからなる群より選ばれることを特徴とする請求項3に記載の呼吸数又は心拍数測定装置。
【請求項5】
前記フッ化ビニリデン共重合体は、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びフッ化ビニリデン/トリクロロフルオロエチレン共重合体からなる群より選ばれることを特徴とする請求項3に記載の呼吸数又は心拍数測定装置。
【請求項6】
前記圧電性高分子材料はフィルム、シート、シリンダー、紐、ストランド、ファイバー、織布及びナノ纎維ウェブからなる群より選ばれる形態であることを特徴とする請求項1に記載の呼吸数又は心拍数測定装置。
【請求項7】
前記電極層は金、銀、銅、白金、アルミニウム、ニッケル及びコバルトからなる群より選ばれることを特徴とする請求項1に記載の呼吸数又は心拍数測定装置。
【請求項8】
前記弾性バンドは弾性纎維からなることを特徴とする請求項1に記載の呼吸数又は心拍数測定装置。
【請求項9】
前記圧電性高分子材料と電極層の間の、圧電性高分子材料の両面は、高分子材料で被覆されることを特徴とする請求項1に記載の呼吸数又は心拍数測定装置。
【請求項10】
前記高分子材料はブタジエン系ゴム又はラテックス、イソプレン系ゴム又はラテックス、クロロプレン系ゴム又はラテックス、ニトリル系ゴム又はラテックス、シリコーン系ゴム又はラテックス、ポリウレタン系ゴム又はラテックス、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアクリル、ポリイミド及びポリアセテートからなる群より選ばれる少なくとも一つ以上であることを特徴とする請求項9に記載の呼吸数又は心拍数測定装置。
【請求項11】
前記高分子材料による被覆の厚さは100μm乃至5mmであることを特徴とする請求項9に記載の呼吸数又は心拍数測定装置。
【請求項12】
前記弾性バンドの引張り歪み(tensile strain)は0.1乃至0.4であることを特徴とする請求項1に記載の呼吸数又は心拍数測定装置。
【請求項13】
前記電極層に伝導性リード線が連結されることを特徴とする請求項1に記載の呼吸数又は心拍数測定装置。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13のいずれか一項の測定装置を含むセンサー部;
前記センサー部で測定されたアナログ信号の雑音を取り除いて増幅するアナログ信号処理部;
前記アナログ信号処理部で処理されたアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換部;
前記デジタル信号を分析して呼吸数又は心拍数データを得るデジタル信号処理手段;及び
前記呼吸数又は心拍数データを表示する表示部からなる、呼吸数又は心拍数測定システム。
【請求項15】
補助記憶装置をさらに備えることを特徴とする請求項14に記載の呼吸数又は心拍数測定システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−9980(P2013−9980A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−194734(P2012−194734)
【出願日】平成24年9月5日(2012.9.5)
【分割の表示】特願2010−525770(P2010−525770)の分割
【原出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(510077875)バイオ−エービーシー ラボ,インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月5日(2012.9.5)
【分割の表示】特願2010−525770(P2010−525770)の分割
【原出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(510077875)バイオ−エービーシー ラボ,インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】
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