説明

哺乳類のステロイドの代謝物質

本明細書には、特定の実施形態において、アンドロゲン受容体媒介性の疾患又は疾病を処置するための、ステロイド誘導体、そのような化合物を製造する方法、そのような化合物を含む医薬組成物及び薬剤、及びそのような化合物を使用する方法が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アンドロゲン受容体媒介性の疾患又は疾病を処置するための、化合物、及びそのような化合物を製造する方法、そのような化合物を含む医薬組成物及び薬剤、及びそのような化合物を使用する方法が記載される。
【背景技術】
【0002】
前立腺癌は、男性において最も一般的な癌であり、2009年に27,360を超える死亡の原因となる(National Cancer Institute, 2009)。大多数の前立腺癌死亡は、従来のアンドロゲン遮断療法に反応性のない転移性疾患の進行が原因である。アンドロゲン遮断療法は、1940年代以降、前立腺癌を有する患者における標準治療であった。アンドロゲン遮断にもかかわらず、ほとんどの患者は、最終的に疾患の進行を経験する。長年、疾患のこの後の相は、「ホルモン不応性前立腺癌」又は「アンドロゲン非依存性前立腺癌」と呼ばれた。それ以降、アンドロゲン遮断療法を数年間続けた後に出現する前立腺癌は、アンドロゲンに依存したままであることが明らかになった。残存した前立腺癌細胞は、(副腎から発現した)低レベルの循環するアンドロゲンを移入し、これらの低レベルのテストステロンにかなり感応的になり、及び実際に、前立腺癌細胞自体内のテストステロンを合成する能力を得た。前立腺癌のこの段階は、現在、「去勢抵抗性前立腺癌」又はCRPCと称される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書には、特定の実施形態において、アンドロゲン受容体媒介性の疾患を処置するための、化合物、及びそのような化合物を製造する方法、そのような化合物を含む医薬組成物及び薬剤、及びそのような化合物を使用する方法が記載される。
【0004】
幾つかの実施形態において、本発明は、式(1)の構造、
【0005】
【化1】

【0006】
を有する化合物又は式(1)の構造を有する化合物の薬学的に許容可能な塩又はN−オキシドを提供し、
式中、
(a) ABCD環状構造及び/又は、1つ又は両方のメチル基は、独立して、C−C−アルキル、ハロゲン化したC−C−アルキル、C−C−アルケニル、ハロゲン化したC−C−アルケニル、ハロゲン、アミノ、アミノアルキレン、ヒドロキシイミノ、n,n+1−エポキシ、カルボニル(オキソ)、グルクロニド、グルクロン酸塩、O結合(O−linked)硫酸塩、及びヒドロキシから選択された、1以上の置換基によって随意に置換され、
(b) Xは、グルクロニド、グルクロン酸塩、O結合硫酸塩、OH又はOであり、及び、
(c) 点線は、独立して二重結合又は単結合となる各々の出現で引かれ(taken at each occurrence)、ここで、化合物は、
【0007】
【化2】

【0008】
ではなく、及びここで、化合物は、被験体への薬物の投与後にインビボで形成される。
【0009】
幾つかの実施形態において、本発明は、有効な量の化合物を含む医薬組成物を提供し、ここで、被験体への組成物の投与後に、化合物は、式(1)、
【0010】
【化3】

【0011】
のその代謝物質又は薬学的に許容可能な塩又は、N−オキシドを生成し、
式中、
(a) ABCD環状構造及び/又は1つ又は両方のメチル基は、独立して、C−C−アルキル、ハロゲン化したC−C−アルキル、C−C−アルケニル、ハロゲン化したC−C−アルケニル、ハロゲン、アミノ、アミノアルキレン、ヒドロキシイミノ、n,n+1−エポキシ、カルボニル(オキソ)、グルクロニド、グルクロン酸塩、O結合硫酸塩、及びヒドロキシから選択された、1以上の置換基によって随意に置換され、
(b) Xは、グルクロニド、グルクロン酸塩、O結合硫酸塩、OH又はOであり、及び、
(c) 点線は、独立して二重結合又は単結合となる各々の出現で引かれ、ここで、化合物もしくは代謝物質も、
【0012】
【化4】

【0013】
ではなく、ここで、代謝物質は、アンドロゲン受容体媒介性の疾患又は疾病を処置するのに有効である。
【0014】
幾つかの実施形態において、本発明は、アンドロゲン受容体媒介性の疾患又は疾病を処置する方法を提供し、該方法は、アンドロゲン生合成を阻害し、アンドロゲン受容体シグナル伝達を阻害し、及びアンドロゲン受容体感受性を減少させるために、治療上有効な量の化合物又はその薬学的に許容可能な塩又はN−オキシドを、それを必要とする患者に投与する工程を含み、ここで、前記化合物は、被験体への化合物の投与後に、その代謝物質又は薬学的に許容可能な塩又はN−オキシドを生成し、ここで、代謝物質は、式(1)の構造、
【0015】
【化5】

【0016】
を有し、
式中、
(a) ABCD環状構造及び/又は1つ又は両方のメチル基は、独立して、C−C−アルキル、ハロゲン化したC−C−アルキル、C−C−アルケニル、ハロゲン化したC−C−アルケニル、ハロゲン、アミノ、アミノアルキレン、ヒドロキシイミノ、n,n+1−エポキシ、カルボニル(オキソ)、グルクロニド、グルクロン酸塩、O結合硫酸塩、及びヒドロキシから選択された、1以上の置換基によって随意に置換され、
(b) Xは、グルクロニド、グルクロン酸塩、O結合硫酸塩、OH又はOであり、及び、
(c) 点線は、独立して二重結合又は単結合となる各々の出現で引かれ、ここで、化合物もしくは代謝物質も、
【0017】
【化6】

【0018】
ではない。
【0019】
幾つかの実施形態において、本発明は、式(1)の構造、
【0020】
【化7】

【0021】
を有する化合物又は式(1)の構造を有する化合物の薬学的に許容可能な塩又はN−オキシドを提供し、
式中、
(a) ABCD環状構造及び/又は1つ又は両方のメチル基は、独立して、n,n+1エポキシ、オキソ、ヒドロキシから選択された2つの置換基によって置換され、
(b) Xは、グルクロニド、グルクロン酸塩、O結合硫酸塩、OH又はOであり、及び、
(c) 点線は、独立して二重結合又は単結合となる各々の出現で引かれ、ここで、化合物は、
【0022】
【化8】

【0023】
ではなく、及びここで、化合物は、被験体への薬物の投与後にインビボで形成される。
【0024】
幾つかの実施形態において、本発明は、式(1)の構造、
【0025】
【化9】

【0026】
を有する化合物又は式(1)の構造を有する化合物の薬学的に許容可能な塩又はN−オキシドを提供し、
式中、
(a) ABCD環状構造及び1つのメチル基は、独立して、n,n+1エポキシ、オキソ、及びヒドロキシから選択された置換基によって置換され、
(b) Xは、グルクロニド、グルクロン酸塩、O結合硫酸塩、OH又はOであり、及び、
(c) 点線は、独立して二重結合又は単結合となる各々の出現で引かれ、ここで、化合物は、
【0027】
【化10】

【0028】
ではなく、及びここで、化合物は、被験体への薬物の投与後にインビボで形成される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明の新しい特徴は、特に、添付の特許請求の範囲内に明記される。本発明の特徴及び利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される、具体例を明記する後述する詳細な説明及び以下の添付図面を引用することによって得られる。
【0030】
【図1】図1は、様々な時点での、NADPH生成システムがある状態及びない状態における、0.1Mのリン酸緩衝液及びプールされたラット肝臓ミクロソームによる10μmの化合物(1)のインキュベーション後の、化合物(1)の濃度、及びそのあり得る(potential)代謝物質の表である。
【図2】図2は、様々な時点での、NADPH生成システムがある状態及びない状態における、0.1Mのリン酸緩衝液、3mMのMgCl、1mMのEDTA及びプールされたラット肝臓ミクロソームによる10μmの化合物(1)のインキュベーション後の、化合物(1)の濃度、及びそのあり得る代謝物質の表である。
【図3】図3は、様々な時点での、NADPH生成システムがある状態及びない状態における、0.1Mのリン酸緩衝液及びプールされたイヌ肝臓ミクロソームによる10μmの化合物(1)のインキュベーション後の化合物(1)の濃度、及びそのあり得る代謝物質の表である。
【図4】図4は、様々な時点での、NADPH生成システムがある状態及びない状態における、0.1Mのリン酸緩衝液、3mMのMgCl、1mMのEDTA及びプールされたイヌ肝臓ミクロソームによる10μmの化合物(1)のインキュベーション後の、化合物(1)の濃度、及びそのあり得る代謝物質の表である。
【図5】図5は、様々な時点での、NADPH生成システムがある状態及びない状態における、0.1Mのリン酸緩衝液及びプールされたサル肝臓ミクロソームによる10μmの化合物(1)のインキュベーション後の、化合物(1)の濃度、及びそのあり得る代謝物質の表である。
【図6】図6は、様々な時点での、NADPH生成システムがある状態及びない状態における、0.1Mのリン酸緩衝液、3mMのMgCl、1mMのEDTA及びプールされたサル肝臓ミクロソームによる10μmの化合物(1)のインキュベーション後の、化合物(1)の濃度、及びそのあり得る代謝物質の表である。
【図7】図7は、様々な時点での、NADPH生成システムがある状態及びない状態における、0.1Mのリン酸緩衝液及びプールされたヒト肝臓ミクロソームによる10μmの化合物(1)のインキュベーション後の、化合物(1)の濃度、及びそのあり得る代謝物質の表である。
【図8】図8は、様々な時点での、NADPH生成システムがある状態及びない状態における、0.1Mのリン酸緩衝液、3mMのMgCl、1mMのEDTA及びプールされたヒト肝臓ミクロソームによる10μmの化合物(1)のインキュベーション後の、化合物(1)の濃度、及びそのあり得る代謝物質の表である。
【図9】図9は、化合物(1)の代表的なクロマトグラムである(m/z 389)。
【図10】図10は、120分間までのラット肝臓ミクロソームにおける10μMの化合物(1)のインキュベーションの代表的なクロマトグラムである(m/z 405)。
【図11】図11は、120分間までのラット肝臓ミクロソームにおける10μMの化合物(1)のインキュベーションの代表的なクロマトグラムである(m/z 421)。
【図12】図12は、120分間までのEDTA及びMgClによるラット肝臓ミクロソームにおける10μMの化合物(1)のインキュベーションの代表的なクロマトグラムである(m/z 405)。
【図13】図13は、120分間までのEDTA及びMgClによるラット肝臓ミクロソームにおける10μMの化合物(1)のインキュベーションの代表的なクロマトグラムである(m/z 421)。
【図14】図14は、120分間までのイヌ肝臓ミクロソームにおける10μMの化合物(1)のインキュベーションの代表的なクロマトグラムである(m/z 405)。
【図15】図15は、120分間までのイヌ肝臓ミクロソームにおける10μMの化合物(1)のインキュベーションの代表的なクロマトグラムである(m/z 421)。
【図16】図16は、120分間までのEDTA及びMgClによるイヌ肝臓ミクロソームにおける10μMの化合物(1)のインキュベーションの代表的なクロマトグラムである(SIR m/z 405)。
【図17】図17は、120分間までのEDTA及びMgClによるイヌ肝臓ミクロソームにおける10μMの化合物(1)のインキュベーションの代表的なクロマトグラムである(SIR m/z 421)。
【図18】図18は、120分間までのサル肝臓ミクロソームにおける10μMの化合物(1)のインキュベーションの代表的なクロマトグラムである(SIR m/z 405)。
【図19】図19は、120分間までのサル肝臓ミクロソームにおける10μMの化合物(1)のインキュベーションの代表的なクロマトグラムである(SIR m/z 421)。
【図20】図20は、120分間までのEDTA及びMgClによるサル肝臓ミクロソームにおける10μMの化合物(1)のインキュベーションの代表的なクロマトグラムである(SIR m/z 405)。
【図21】図21は、120分間までのEDTA及びMgClによるサル肝臓ミクロソームにおける10μMの化合物(1)のインキュベーションの代表的なクロマトグラムである(SIR m/z 421)。
【図22】図22は、120分間までのヒト肝臓ミクロソームにおける10μMの化合物(1)のインキュベーションの代表的なクロマトグラムである(SIR m/z 405)。
【図23】図23は、120分間までのヒト肝臓ミクロソームにおける10μMの化合物(1)のインキュベーションの代表的なクロマトグラムである(SIR m/z 421)。
【図24】図24は、120分間までのEDTA及びMgClによるヒト肝臓ミクロソームにおける10μMの化合物(1)のインキュベーションの代表的なクロマトグラムである(SIR m/z 405)。
【図25】図25は、120分間までのEDTA及びMgClによるヒト肝臓ミクロソームにおける10μMの化合物(1)のインキュベーションの代表的なクロマトグラムである(SIR m/z 421)。
【図26】図26は、水中の0.1%のギ酸及びアセトニトリル中の0.1%のギ酸におけるイヌ血漿からの親化合物のクロマトグラムである。
【図27】図27は、水中の0.1%のギ酸及びアセトニトリル中の0.1%のギ酸におけるサル血漿からの親化合物のクロマトグラムである。
【図28】図28は、水中の0.1%のギ酸及びアセトニトリル中の0.1%のギ酸において最適化されたHPLCパラメーターを使用する、サル血漿からの親化合物のクロマトグラムである。
【図29】図29は、ヒト血漿中の親化合物の較正曲線である。
【図30】図30は、直接の注入に関する親化合物のフラグメンテーションパターンである。
【図31】図31は、解析方法による希釈剤(analytical method diluent)中の0.417ng/mLの親のフラグメンテーションパターンである。
【図32】図32は、ヒト血漿中の5ng/mLの親のフラグメンテーションパターンである。
【図33】図33は、ヒト血漿中の10ng/mLの親のフラグメンテーションパターンである。
【図34】図34は、抽出されたカニクイザル血漿中のMRM 389〜195を示すクロマトグラムである。
【図35】図35は、Std.1のMRM 389〜195を示すクロマトグラムである。
【図36】図36は、Std.2のMRM 389〜195を示すクロマトグラムである。
【図37】図37は、Std.3のMRM 389〜195を示すクロマトグラムである。
【図38】図38は、Std.5のMRM 389〜195を示すクロマトグラムである。
【図39】図39は、Std.6のMRM 389〜195を示すクロマトグラムである。
【図40】図40は、Std.7のMRM 389〜195を示すクロマトグラムである。
【図41】図41は、親に関して最適化されたMS/MS パラメーターを使用する、親の生成物イオンスペクトルである。
【図42】図42は、親に関して最適化されたMS/MS パラメーターを使用する、Std.1の生成物イオンスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(特定の化学用語)
特に他に明記のない限り、明細書及び請求項を含む、本出願に使用される以下の用語は、下記の定義を有する。明細書及び添付の請求項において使用されるように、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈がはっきりと特に指示していない限り、複数の指示対象を含む。標準的な化学用語の定義は、Carey and Sundberg ”ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY 4TH ED.” Vols. A (2000) and B (2001), Plenum Press, New Yorkを含む、参考資料において見られ得、その全体が引用によって本明細書に組み込まれる。特に指示のない限り、当該技術分野の技術内の、質量分析、NMR、HPCL、タンパク質化学、生化学、組換え型DNA技術及び薬理学の従来の方法が用いられる。
【0032】
用語「アルケニル基」は、本明細書に使用されるように、中に1以上の二重結合を有する炭化水素鎖を指す。アルケニル基の二重結合は、別の不飽和基に対して非共役性又は共役性であり得る。適切なアルケニル基は、限定されないが、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、2−エチルヘキセニル、2−プロピル−2−ブテニル、4−(2−メチル−3−ブテン)−ペンテニルなどの、(C−C)アルケニル基を含む。アルケニル部分は、分枝鎖、直鎖、又は環状であり得(この場合、「シクロアルケニル」基としても知られる)、置換され得ない又は置換され得る。
【0033】
本明細書に使用されるような用語「アルコキシ基」は、−O−(アルキル)を含み、ここで、アルキルは、本明細書に定義される通りである。ほんの一例として、C1−6アルコキシは、限定されないが、メトキシ、エトキシなどを含む。アルコキシ基は、置換され得ない又は置換され得る。
【0034】
用語「アルキル」は、本明細書に使用されるように、1〜10の炭素原子を有する炭化水素基を指し、直線の、分枝した、環式の、飽和した及び/又は不飽和の特徴を含む。それが本明細書に現われる場合は常に、「1〜10」などの数値域は、所望の範囲内の各整数を指し、例えば、本発明の定義はまた、数値域が指定されていない用語「アルキル」の出現を含むが、「1〜10の炭素原子」又は「C1−10」又は「(C−C10)」は、アルキル基が、10の炭素原子を含むそれ以下の、1つの炭素原子、2つの炭素原子、3つの炭素原子などから成り得ることを意味する。アルキル部分は、「飽和したアルキル」基であり得、これは、アルキル部分が、任意のアルケン又はアルキンの部分を包含しないことを意味する。代表的な飽和したアルキル基は、限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、2−メチル−1−プロピル、2−メチル−2−プロピル、2−メチル−1−ブチル、3−メチル−1−ブチル、2−メチル−3−ブチル、2,2−ジメチル−1−プロピル、2−メチル−1−ペンチル、3−メチル−1−ペンチル、4−メチル−1−ペンチル、2−メチル−2−ペンチル、3−メチル−2−ペンチル、4−メチル−2−ペンチル、2,2−ジメチル−1−ブチル、3,3−ジメチル−1−ブチル、2−エチル−1−ブチル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、及びn−ヘキシル、及びヘプチル及びオクチルなどのより長いアルキル基を含む。アルキル部分はまた、「不飽和のアルキル」部分であり得、これは、アルキル部分が、少なくとも1つのアルケン又は少なくとも1つのアルキンの部分を包含することを意味する。「アルケン」部分は、少なくとも2つの炭素原子及び少なくとも1つの炭素−炭素二重結合からなる基を指し、「アルキン」部分は、少なくとも2つの炭素原子及び少なくとも1つの炭素−炭素三重結合からなる基を指す。代表的な不飽和のアルキル基は、限定されないが、エテニル、プロペニル、ブテニル、プロパルギルなどを含む。アルキル基は、置換され得ない又は置換され得る。置換されたアルキル基は、限定されないが、ほんの一例として、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルなどの、ハロゲン置換されたアルキル基を含む。
【0035】
用語「アルキニル」基は、本明細書に使用されるように、中に1以上の三重結合を有する炭化水素鎖を指す。アルキニル基の三重結合は、別の不飽和基に対して非共役性又は共役性であり得る。適切なアルキニル基は、限定されないが、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、メチルプロピニル、4−メチル−1−ブチニル、4−プロピル−2−ペンチニル、及び4−ブチル−2−ヘキシニルなどの、(C−C)アルキニル基を含む。アルキニル部分は、分枝鎖又は直鎖であり得、置換され得ない又は置換され得る。用語「エステル」は、本明細書に使用されるように、式COORを有する化学部分を指し、ここで、Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、及び(環炭素を介して結合される)ヘテロ脂環式からなる群から選択される。本明細書に記載される化合物上のヒドロキシ又はカルボキシルの側鎖は、エステル化され得る。このようなエステルを作るための手順及び特定の基は、当業者に公知であり、Greene and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., John Wiley & Sons, New York, NY, 1999などの、参考文献に容易に見られ得、これは、その全体が引用によって本明細書に組み込まれる。エステル基は、置換され得ない又は置換され得る。
【0036】
用語「ハロゲン」は、本明細書に使用されるように、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを意味する。好ましいハロゲン基は、フルオロ、クロロ及びブロモである。
【0037】
本明細書に使用されるような用語「ヘテロ原子」は、炭素又は水素以外の周期表における任意の原子を意味する。そのようなヘテロ原子は、限定されないが、フッ素、塩素又は臭素などのハロゲン、酸素及び硫黄などのカルコゲン、窒素、リン、シリコン、又はホウ素を含む。好ましいヘテロ原子は、フッ素、塩素、酸素、窒素、及び硫黄である。
【0038】
用語「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」、「ハロアルキニル」及び「ハロアルコキシ」は、1以上のハロゲン基又はそれらの組み合わせによって置換される、アルキル、アルケニル、アルキニル及びアルコキシの構造を含む。
【0039】
本明細書に使用されるような用語「グルクロニド(glucuronide)」、「グルクロニド(glucuronido)」などは、以下に例証されるような単結合を介した、又は2、3又は4つのヒドロキシの位置でのグルクロン酸結合を指す:
【0040】
【化11】

【0041】
本明細書に使用されるような用語「グルクロン酸塩(glucuronate)」、「グルクロン酸塩(glucuronato)」などは、以下に例証されるような単結合を介したグルクロン酸結合を指す:
【0042】
【化12】

【0043】
用語「員環」は、本明細書に使用されるように、任意の環式構造を包含し得る。用語「員」は、環を構築する骨格原子の数を示すように意図される。したがって、例えば、シクロヘキシル、ピリジン、ピラン及びチオピランは、6員環であり、シクロペンチル、ピロール、イミダゾール、フラン、及びチオフェンは、5員環である。
【0044】
用語「部分(moiety)」は、分子の特定のセグメント又は官能基を指す。化学部分は、しばしば、分子に埋め込まれた又は付加された化学成分と認識される。
【0045】
用語「保護基」は、本明細書に使用されるように、いくつかの又はすべての反応的な部分を遮断し、保護基が取り除かれるまでそのような基が化学反応に関与するのを選択的に防ぐ、化学部分を指す。
【0046】
用語「反応物」は、本明細書に使用されるように、共有結合を生みだすために使用される求核分子又は求電子を指す。
【0047】
特に指示のない限り、置換基は、「随意に置換された」と考えられると、例えば、アルケニル、アルキル、アルコキシ、アルキルアミン、アルキルチオ、アルキニル、アミド、一置換及び二置換のアミノ基を含むアミノ、アリール、アリールオキシ、アリールチオ、カルボニル、炭素環、シアノ、シクロアルキル、ハロゲン、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアリール、複素環、ヒドロキシ、イソシアナート、イソチオシアナト、メルカプト、ニトロ、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、ペルハロアルキル、ペルフルオロアルキル、シリル、スルホニル、チオカルボニル、チオシアナト、トリハロメタンスルホニル、及びそれらの保護された化合物から個々に及び独立して選択される1以上の基によって置換され得る基であることが意図される。上記の置換基の保護された化合物を形成し得る保護基は、当業者に公知であり、Greene and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., John Wiley & Sons, New York, NY, 1999, and Kocienski, Protective Groups, Thieme Verlag, New York, NY, 1994などの、参考文献に見られ得、それらは、それら全体が引用によって本明細書に組み込まれる。
【0048】
(特定の薬学用語)
製剤、組成物又は成分に関する用語「許容可能な」は、本明細書に使用されるように、処置されている被験体の一般的な健康に対して持続的な悪影響を有さないことを意味する。
【0049】
用語「アゴニスト」は、本明細書に使用されるように、別の分子の活性又は受容体部位の活性を増強する、化合物、薬物、酵素活性化剤又はホルモンモジュレーターなどの、分子を指す。
【0050】
用語「アンタゴニスト」は、本明細書に使用さられるように、別の分子の活性又は受容体部位の活性を減少させる、又は防ぐ、化合物、薬物、酵素インヒビター又はホルモンモジュレーターなどの分子を指す。
【0051】
用語「担体」は、本明細書に使用されるように、細胞又は組織へ化合物を組み込むのを促進する、相対的に無毒な化学化合物又は薬剤を指す。
【0052】
用語「同時投与」などは、本明細書に使用されるように、一人の患者に選択された治療薬の投与を包含することを意味し、薬剤が投与の同じ又は異なる経路によって、あるいは同じ又は異なる時間に投与される、処置レジメンを含むことが意図される。
【0053】
用語「有効な量」又は「治療上有効な量」は、本明細書に使用されるように、処置されている疾患又は疾病の1以上の症状をある程度和らげる、投与されている十分な量の薬剤又は化合物を指す。その結果、疾患の徴候、症状、又は原因を減少及び/又は軽減し、又は生物系の任意の他の所望の変化をもたらし得る。例えば、治療上の使用のための「有効な量」は、疾患の臨床的に有意な減少を提供するために必要とされる、本明細書に開示されるような化合物を含む組成物の量である。任意の個々の場合における、適切な「有効」な量は、用量漸増試験などの技術を使用して決定され得る。
【0054】
用語「増強する(enhance)」又は「増強すること(enhancing)」は、本明細書に使用されるように、効力又は持続時間のいずれかにおいて、所望の効果を増加又は延長させることを意味する。したがって、治療薬の効果を増強することに関して、用語「増強すること」は、効力又は持続時間のいずれかにおいて、系に対する他の治療薬の効果を増加又は延長させる能力を指す。「増強させる有効な量」は、本明細書に使用されるように、所望の系において別の治療薬の効果を増強するのに十分な量を指す。
【0055】
用語「キット」及び「製品」は、同義語として使用される。
【0056】
用語「代謝物質」は、本明細書に使用されるように、化合物が代謝されるときに形成される、化合物の誘導体を指す。前記代謝物質はまた、分光器及び他の分析的な手段を介するそれらの構造の測定の後に、慎重な化学合成によって生成され得る。
【0057】
用語「活性代謝物」は、本明細書に使用されるように、化合物が代謝される時に形成される、化合物の生物学的に活性な誘導体を指す。
【0058】
用語「代謝された(metabolized)」は、本明細書に使用されるように、有機体によって特定の物質が変化する、(限定されないが、加水分解反応及び酵素により触媒された反応を含む)過程(processes)の全体を指す。したがって、酵素は、化合物への特定の構造的変化をもたらし得る。例えば、チトクロームP450は、様々な酸化反応及び還元反応を触媒する一方で、ウリジン二リン酸グルクロニルトランスフェラーゼは、芳香族アルコール、脂肪族アルコール、カルボン酸、アミン、及び遊離スルフィヒドリル基への活性化グルクロン酸分子の転移を触媒する。代謝に関するさらなる情報は、The Pharmacological Basis of Therapeutics, 9th Edition, McGraw−Hill (1996)から得られ得る。
【0059】
用語「調節する」は、本明細書に使用されるように、ほんの一例として、標的の活性を増強する、標的の活性を阻害する、標的の活性を限定する、又は標的の活性を拡張することを含む、標的の活性を変化させるように、標的と直接的又は間接的にのどちらかで相互作用することを意味する。
【0060】
用語「モジュレーター」は、本明細書に使用されるように、標的と直接的又は間接的のどちらかで相互作用する分子を指す。相互作用は、限定されないが、アゴニストとアンタゴニストの相互作用を含む。
【0061】
「薬学的に許容可能な」は、本明細書に使用されるように、化合物の生物学的活性又は特性を抑止せず、比較的無毒である、担体又は希釈剤などの物質を指し、即ち、該物質は、所望されない生物学的効果を引き起こさずに、又は該物質が含まれる組成物のいかなる成分とも有害な方法で相互作用せずに、個体に投与され得る。
【0062】
化合物の用語「薬学的に許容可能な塩」は、本明細書に使用されるように、薬学的に許容可能な塩を指す。
【0063】
用語「薬学的な組み合わせ(pharmaceutical combination)」は、本明細書に使用されるように、1より多い活性成分の混合又は組み合わせに由来し、活性成分の固定された及び固定されない組み合わせの両方を含む、生成物を意味する。用語「固定された組み合わせ」は、活性成分、例えば式(1)の化合物及び助剤の両方が、単一の実体又は用量の形態で患者に同時投与されることを意味する。用語「固定されない組み合わせ」は、活性成分、例えば式(1)の化合物及び助剤が、具体的な時間制限の介入なく同時に、平行して、又は連続して別々の実体として患者に投与されることを意味し、このような投与は、患者の身体に有効なレベルの2つの化合物を提供する。後者の用語はまた、カクテル療法、例えば3以上の活性成分の投与にも当てはまる。
【0064】
用語「医薬組成物」は、本明細書に使用されるように、活性化合物又は化合物の、担体、安定化剤、希釈剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、及び/又は賦形剤などの、他の化学成分との混合物を指す。
【0065】
用語「被験体」又は「患者」は、哺乳動物及び非哺乳動物を含む。哺乳動物の例は、限定されないが、哺乳動物のクラスの任意のメンバー:ヒト、チンパンジーのようなヒト以外の霊長類、及び他の類人猿及びサル類、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどの家畜、ウサギ、イヌ、及びネコなどの家庭の動物、ラット、マウス及びモルモットなどのような、げっ歯類を含む、実験動物を含む。非哺乳動物の例は、限定されないが、鳥類、魚類などを含む。本明細書に提供される方法及び組成物の1つの実施形態において、哺乳動物はヒトである。
【0066】
用語「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」、及び「処置(treatment)」は、本明細書に使用されるように、疾患又は疾病の症状を軽減、緩和、又は改善すること、更なる症状を予防すること、症状の根底にある代謝の原因を改善又は予防すること、疾患又は疾病を阻害すること、例えば疾患又は疾病の進行を阻止すること、疾患又は疾病を和らげること、疾患又は疾病を退行させること、疾患又は疾病により生じる疾病を和らげること、あるいは疾患又は疾病の症状を止めることを含む。
【0067】
(例示的な生物学的活性)
<アンドロゲン受容体(AR)>
アンドロゲンは、標的組織の細胞内で、特定の受容体、アンドロゲン受容体(AR)に結合する。ARは、身体の多数の組織において発現され、テストステロン(T)及びジヒドロテストステロン(DHT)などの、内因性のアンドロゲンリガンドの生理学的効果に加え、病態生理学的効果も現れる受容体である。構造上、ARは、3つの主な機能ドメイン:リガンド結合ドメイン(LBD)、DNA結合ドメイン、及びアミノ末端ドメインからなる。ARに結合し、内因性のARリガンドの効果を模倣する化合物は、ARアゴニストと呼ばれ、一方で内因性のARリガンドの効果を阻害する化合物は、ARアンタゴニストと称される。受容体へのアンドロゲンの結合は、受容体を活性化し、標的遺伝子に隣接しているDNA結合部位へ受容体を結合させる。そこから、受容体は、遺伝子の発現を規制するために、コアクチベータータンパク質及び塩基性の転写因子と相互に作用する。したがって、その受容体を介して、アンドロゲンは、細胞における遺伝子発現の変化を引き起こす。これらの変化は、最終的に、標的組織の生理機能において目に見える、細胞の代謝的産出(output)、分化又は増殖という結果を引き起こす。前立腺において、アンドロゲンは、アンドロゲン感受性組織の細胞質内に存在するARに結合することによって、前立腺組織及び前立腺癌細胞の成長を刺激する。
【0068】
選択的にARを調節する化合物は、限定されないが、前立腺癌、良性前立腺肥大症、女性型多毛症、脱毛症、神経性食欲不振、乳癌、ざ瘡、骨疾患などの筋骨格系の疾病、造血状態(hematopoietic conditions)、神経筋疾患、リウマチ疾患、癌、AIDS、悪液質、及び男性避妊法において用いられるホルモン補充療法(HRT)に関する、男性の性能強化に関する、男性の生殖状態に関する、一次又は二次の男性性腺機能低下症を含む、様々な疾患、及び疾病の処置又は予防において臨床的に重要である。
【0069】
<去勢抵抗性前立腺癌>
内因性のホルモン(例えば、テストステロン)の作用を遮断する薬剤(抗アンドロゲン)は、前立腺癌の処置に高度に有効であり、日常的に使用される(アンドロゲン除去療法)。最初は腫瘍成長を抑えるに有効であるが、これらのアンドロゲン除去療法は、結局、ほとんどすべての患者において失敗し、「去勢抵抗性前立腺癌」(「CRPC」)につながる。すべてではないが、ほとんどの前立腺癌細胞は、最初に、アンドロゲン除去療法に反応する。しかしながら、時間とともに、前立腺癌細胞の残存する個体群は、アンドロゲン除去療法によって生じた選択圧に反応したが、今はそれに対して反応がない(refractory)ために出現する。原発性癌が、利用可能な療法に反応がないだけではなく、癌細胞はまた、原発腫瘍から離れ、血流を移動し得、疾患を離れた部位(特に骨)まで拡散させる。他の影響の中で、これは著しい疼痛及び更なる骨の脆弱性を引き起こす。
【0070】
CRPC細胞は、利用可能なままである細胞内のアンドロゲンに対する反応を増強するための、少なくとも3つの異なる経路を増幅させることによる、低レベルの循環するアンドロゲンによって特徴付けられた環境において生存することが予期される。これらは:(1)ARコピー数を増加させ、その結果、内科的去勢療法によって誘発された低レベルの循環するアンドロゲンに対する、細胞の感受性を増加させる、ARの発現のアップレギュレーション、(2)アンドロゲン遮断療法の後に細胞に残るアンドロゲンの移入(importation)に関係する酵素の発現の増加、(3)CRPC細胞がその細胞自体のアンドロゲンを合成することを可能にする、ステロイド産生を規制する遺伝子の発現の増加を含む。ステロイド産生経路における重要な酵素は、チトクロームC17α−ヒドロキシラーゼ/C17,20−リアーゼ(CYP17)であり、該酵素は、副腎、精巣、及び前立腺におけるアンドロゲン産生を制御する。
【0071】
本明細書には、特定の実施形態において、限定されないが、前立腺癌、良性前立腺肥大症、女性型多毛症、脱毛症、神経性食欲不振、乳癌、ざ瘡、骨疾患などの筋骨格系の疾病、造血状態、神経筋疾患、リウマチ疾患、癌、AIDS、悪液質、及び男性避妊法において用いられるホルモン補充療法(HRT)に関する、男性の性能強化に関する、男性の生殖状態に関する、一次又は二次の男性性腺機能低下症を含む、アンドロゲン受容体媒介性の疾患又は疾病を処置するための、化合物、そのような化合物を作る方法、そのような化合物を含む医薬組成物及び薬剤、およびそのような化合物を使用する方法が記載される。幾つかの実施形態において、アンドロゲン受容体媒介性の疾患又は疾病は、前立腺癌である。特定の実施形態において、前立腺癌は、去勢抵抗性前立腺癌である。
【0072】
本明細書には、特定の実施形態において、アンドロゲン生合成を減少させる、アンドロゲン受容体シグナル伝達を減少させる、及びアンドロゲン受容体感受性を低下させる、化合物、そのような化合物を含む医薬組成物、及び薬剤、及びそのような化合物を使用する方法が記載される。
【0073】
1つの態様において、化合物、そのような化合物を含む医薬組成物及び薬剤、及びそのような化合物を使用する方法は、アンドロゲン生合成を減少させる。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される化合物は、アンドロゲン産生を制御する酵素の活性を阻害する。特定の実施形態において、本明細書に開示される化合物は、チトクロームC17α−ヒドロキシラーゼ/C17,20−リアーゼ(CYP17)の活性を阻害する。
【0074】
1つの態様において、化合物、そのような化合物を含む医薬組成物及び薬剤、およびそのような化合物を使用する方法は、アンドロゲン受容体シグナル伝達を減少させる。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される化合物は、ARに結合し、テストステロン結合の競合的インヒビターである。
【0075】
1つの態様において、化合物、そのような化合物を含む医薬組成物及び薬剤、およびそのような化合物を使用する方法は、アンドロゲン受容体感受性を減少させる。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される化合物は、細胞内のARタンパク質の含量を減少させ、低レベルのアンドロゲン増殖シグナルによって持続される細胞の能力を低減する。特定の実施形態において、本明細書に開示される化合物は、薬物の被験体への投与の後にインビボで形成される。
【0076】
(化合物)
式(1)の化合物、その薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能なN−オキシド、薬学的に活性な代謝物質、薬学的に許容可能なプロドラッグ、薬学的に許容可能な多形体及び薬学的に許容可能な溶媒和物は、ステロイドホルモン核内受容体の活性を調節し、それゆえ、アンドロゲン受容体媒介性の疾患又は疾病を処置するのに有用である。
【0077】
【化13】

【0078】
式(1)の化合物において、ABCD環状構造は、ステロイドの、「A」、「B」、「C」及び「D」の環状部分又はそのアナログであり、それらは随意に置換され、Xは、グルクロニド、グルクロン酸塩、O結合硫酸塩、OH又はOであり、及び、ここで、点線は、原子価を満たし、安定分子を作るように、独立して二重結合又は単結合となる各々の出現で引かれ得る。
【0079】
ABCD環状構造の随意の置換基は、1以上の:C−C−アルキル及びハロゲン化されたC−C−アルキル;二重結合が環状構造に直接付けられる場合を含む、C−C−アルケニル及びハロゲン化されたC−C−アルケニル;ハロゲン;アミノ;アミノアルキレン;ヒドロキシイミノ;n,n+1−エポキシ;カルボニル(オキソ);グルクロニド、グルクロン酸塩、O結合硫酸塩、及びヒドロキシを含む。ABCD環状構造の隣接した炭素原子上の水素置換基は、炭素原子間のさらなる結合によって随意に取り除かれ得る且つ置換され得、その結果、環状構造内のこれらの炭素間の二重結合をもたらす。幾つかの実施形態において、ABCD環状構造上の随意の置換は、環状構造の10及び/又は13の位置でのメチル基である。
【0080】
式(1)の特定の実施形態は、2つの置換基を含み、各々の置換基は、「A」、「B」、「C」及び「D」の環の任意の位置で、ヒドロキシ、カルボニル(オキソ)、又はn,n+1エポキシから独立して選択される。式(1)の特定の実施形態は、「A」、「B」、「C」及び「D」の環の任意の位置で、ヒドロキシ、カルボニル(オキソ)、又はn,n+1エポキシから独立して選択される1つの置換基を含む。
【0081】
式(1)の特定の具体的な実施形態は、式(2)、式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)、式(8)、式(9)、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)、式(17)、式(18)、式(19)、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)、式(29)、式(30)、及び式(31)のように以下に示され、式中、Xは、グルクロニド、グルクロン酸塩、又はO結合硫酸塩である。
【0082】
【化14】

【0083】
【化15】

【0084】
式(1)の特定の具体的な実施形態は、式(32)、式(33)、式(34)、式(35)、式(36)、式(37)、式(38)、式(39)、式(40)、式(41)、式(42)、式(43)、式(44)、式(45)、式(46)、式(47)、式(48)、式(49)、式(50)、式(51)、式(52)、式(53)、式(54)、式(55)、式(56)、式(57)、式(58)、式(59)、式(60)、式(61)、式(62)、式(63)、式(64)、及び式(65)のように以下に示される。
【0085】
【化16】

【0086】
【化17】

【0087】
【化18】

【0088】
(化合物の合成)
式(I)の化合物は、当業者に公知の標準合成技術を使用して、又は本明細書に記載される方法と組み合わせた、当業者に公知の方法を使用して合成され得る。さらに、本明細書に示される溶媒、温度及び他の反応条件は、当業者の経験及び知識によって変えられ得る。
【0089】
式(1)の化合物の合成に使用される出発物質は、Aldrich Chemical Co. (Milwaukee, Wis.)、Sigma Chemical Co. (St. Louis, Mo.)などの、商業的供給源から得られ得るか、又は出発物質は合成され得る。本明細書に記載される化合物及び異なる置換基を有する他の関連する化合物は、例えば、March, ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY 4th Ed., (Wiley 1992); Carey and Sundberg, ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY 4th Ed., Vols. A and B (Plenum 2000, 2001),及びGreen and Wuts, PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS 3rd Ed., (Wiley 1999)に記載されるような、当業者に既知の技術及び物質を使用して合成され得る(これら全ては、それら全体が引用によって本明細書に組み込まれる)。本明細書に開示されるような化合物の調製のための一般的な方法は、当該技術分野において公知の反応に由来し、該反応は、本明細書に提供されるような、式において見られる様々な成分を導入するために、当業者によって理解されるように、適切な試薬及び条件を使用することによって変更され得る。参考として、以下の合成方法が利用され得る。
【0090】
式(1)の化合物は、親化合物中に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、又はアルミニウムイオンによって置換されるか、または有機塩基と配位する(coordinates with)かのいずれかの時に形成される、薬学的に許容可能な塩として調製され得る。さらに、開示される化合物の塩形態は、出発物質又は中間物の塩を使用して調製され得る。
【0091】
化合物(1)を作成する様々な方法が熟考され、以下の記載は限定しない例として提供される。幾つかの実施形態において、以下の化学反応の1以上は、不活性雰囲気、例えば、窒素、アルゴン中で行われる。幾つかの実施形態において、反応の温度がモニタリングされる。幾つかの実施形態において、反応は、HPLC又はTLCによってモニタリングされる。幾つかの実施形態において、反応のpHがモニタリングされる。幾つかの実施形態において、反応の温度が制御される。幾つかの実施形態において、生成物の純度はHPLCによって測定される。幾つかの実施形態において、実験は、小規模、中規模、大規模、分析的規模、又は製造規模で実行される。幾つかの実施形態において、生成物は、シリカゲル、セライト、又はそれらの組み合わせを含む、パッドを介したろ過によって澄まされる。
【0092】
幾つかの実施形態において、合成は、大規模で行われる。幾つかの実施形態において、大規模は、約1から約10kgまでの規模を含む。幾つかの実施形態において、合成は、製造規模で行われる。幾つかの実施形態において、製造規模は、約10kgより大きい規模を含む。幾つかの実施形態において、製造規模は、約10から約1,000kgまでの規模を含む。幾つかの実施形態において、製造規模は、約10から約100kgまでの規模を含む。幾つかの実施形態において、製造規模は、約10から約50kgまでの規模を含む。幾つかの実施形態において、製造規模は、約33.4kgの規模を含む。
【0093】
幾つかの実施形態において、製造規模の合成を計画するか又は行うために使用される情報を集めるために、実験は小規模で行われる。幾つかの実施形態において、より小規模で得られた結果は、製造規模で再生可能であると予期される。幾つかの実施形態において、より小規模で得られた結果は、製造規模で再生可能であると予期されない。幾つかの実施形態において、製造規模で得られた収量は、より小規模で得られた収量より多い。幾つかの実施形態において、製造規模で得られた収量は、より小規模で得られた収量より少ない。
【0094】
【化19】

【0095】
1つの実施形態において、溶媒中の式iの化合物の溶液は調製される。その後、式iiの化合物は、溶液に接触され、結果として生じる混合物は、式iiiの化合物を提供するのに十分な期間、塩基の存在下で加熱される。幾つかの実施形態において、その期間は、約1時間、約2時間、約4時間、約8時間、約12時間、又は約24時間である。幾つかの実施形態において、時間は、約1時間から約24時間までである。幾つかの実施形態において、塩基は、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、又はリン酸カリウムを含む。幾つかの実施形態において、溶媒は、DMFを含む。幾つかの実施形態において、温度は、約50℃、約70℃、約100℃、約150℃、又は還流条件を維持するのに有効な温度である。幾つかの実施形態において、温度は、約50℃から約200℃までである。式iiiの化合物は、反応混合物から分離され、当業者に公知の任意の方法によって精製され得る。このような方法は、限定されないが、水性混合物を反応混合物へ注ぐ工程を含み、それによって、固形物として化合物iiiを沈殿させる。式iiiの分離した化合物は、当業者に公知の任意の方法によって随意に精製され得る。このような方法は、限定されないが、水による倍散を含む。
【0096】
【化20】

【0097】
1つの実施形態において、溶媒中の式iiiの化合物の溶液は調製され、溶液は、式ivの化合物を提供するのに十分な期間、触媒と接触される。幾つかの実施形態において、その期間は、約1時間、約2時間、約4時間、約8時間、約12時間、又は約24時間である。幾つかの実施形態において、時間は、約1時間から約24時間までである。幾つかの実施形態において、触媒は、炭素上のパラジウム、炭素上のプラチナ、遷移金属塩又は遷移金属錯体を含む。幾つかの実施形態において、溶媒は、N−メチルピロリドンである。幾つかの実施形態において、温度は、約50℃、約70℃、約100℃、約150℃、約190℃、約200℃、又は還流条件を維持するのに有効な温度である。幾つかの実施形態において、温度は、約50℃から約250℃までである。式ivの化合物は、反応混合物から分離され、当業者に公知の任意の方法によって精製され得る。このような方法は、限定されないが、インラインろ過及び/又は結晶化を含む。式iiiの分離した化合物は、当業者に公知の任意の方法によって随意に精製され得る。
【0098】
【化21】

【0099】
1つの実施形態において、溶媒中の式ivの化合物の溶液は調製され、溶液は、式vの化合物(すなわち、化合物(1))を提供するのに十分な期間、塩基と接触される。幾つかの実施形態において、その期間は、約1時間、約2時間、約4時間、約8時間、約12時間、又は約24時間である。幾つかの実施形態において、時間は、約1時間から約24時間までである。幾つかの実施形態において、塩基は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、混合したアルカリアルコキシド(例えばリチウム−カリウムアルコキシド)、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、又はリン酸カリウムを含む。幾つかの実施形態において、溶媒は、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、t−ブタノール、又はそれらの混合物を含む。幾つかの実施形態において、溶媒は、メタノールを含み、塩基はナトリウムメトキシドを含む。幾つかの実施形態において、温度は、約35℃、約50℃、約70℃、約100℃、又は還流条件を維持するのに有効な温度である。幾つかの実施形態において、温度は、約25℃から約100℃までである。式vの化合物は、反応混合物から分離され、当業者に公知の任意の方法によって精製され得る。このような方法は、限定されないが、抽出を含む。式iiiの分離した化合物は、当業者に公知の任意の方法によって随意に精製され得る。このような方法は、限定されないが、倍散を含む。
【0100】
(化合物のさらなる形態)
便宜上、本明細書のこのセクション及び他の部分において記載される化合物の形態及び他の特徴は、一例として、「式(I)」などの、単一の式を使用する。しかしながら、本明細書に記載される化合物の形態及び他の特徴は、式(I)の範囲内にある本明細書に示されるすべての式に等しくうまく当てはまる。例えば、本明細書に記載される化合物の形態及び他の特徴は、式(2)、式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)、式(8)、式(9)、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)、式(17)、式(18)、式(19)、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)、式(29)、式(30)、式(31)、式(32)、式(33)、式(34)、式(35)、式(36)、及び式(37)を有する化合物の他に、これらの一般的な式の範囲内にある特定の化合物のすべてにも適用され得る。
【0101】
式(1)の化合物は、遊離塩基の形態の化合物を、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタリン酸などの無機酸、および酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、p-トルエンスルホン酸、酒石酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、アリールスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、2-ナフタリンスルホン酸、4-メチルビシクロ-[2.2.2]オクタ-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、4,4'-メチレンビス-(3-ヒドロキシ-2-エン-1-カルボン酸)、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、及びムコン酸などの有機酸を含む、薬学的に許容可能な無機酸又は有機酸と反応させることにより、(薬学的に許容可能な塩のタイプである)薬学的に許容可能な酸付加塩として調製され得る。前記塩はまた、所望の対イオンを加える沈殿による溶液からの、又はイオン交換樹脂などの適切な媒体を使用することによるかのいずれかの塩交換によって生成され得る。そのような方法は、限定されないが、テトラフェニルボラート、テトラフルオロボラート及びヘキサフルオロホスファートを含む塩を形成するために使用され得る。
【0102】
あるいは、式(1)の化合物は、化合物の遊離酸形態を、限定されないが、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミンなどの有機塩基、及び水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどの無機塩基を含む、薬学的に許容可能な無機塩基又は有機塩基と反応させることによって、(薬学的に許容可能な塩のタイプである)薬学的に許容可能な塩基付加塩として調整され得る。
【0103】
薬学的に許容可能な塩に対する言及が、その溶媒付加形態又は結晶形態、特に溶媒和物又は多形体を含むことを理解されたい。溶媒和物は、定比又は不定比量の溶媒のいずれかを含み、水、エタノールなどの薬学的に許容可能な溶媒での結晶化の過程の間に形成され得る。水和物は、溶媒が水である時に形成され、又はアルコラートは、溶媒がアルコールの時に形成される。式(1)の化合物の溶媒和物は、本明細書に記載される過程の間に、都合よく調製又は形成され得る。ほんの一例ではあるが、式(1)の化合物の水和物は、限定されないが、ジオキサン、テトラヒドロフラン又はメタノールなどを含む、有機溶媒を用いて、水性/有機溶媒混合物からの再結晶によって都合よく調製され得る。さらに、本明細書に提供される化合物は、溶媒和形態と同様、非溶媒和形態でも存在し得る。一般的に、溶媒和形態は、本明細書に提供される化合物及び方法の目的のために、非溶媒和形態と同等であると考えられる。
【0104】
式(1)の化合物は、多形体としても知られる結晶形態を含む。多形体は、化合物の同じ元素組成の異なる結晶充填配置を含む。多形体は、通常、異なるX線回折パターン、赤外線スペクトル、融点、密度、硬度、結晶形、光学特性及び電気特性、安定性、及び溶解度を有する。再結晶溶媒、結晶化の速度、及び保管温度などの様々な要因は、支配的な単結晶形態を引き起こし得る。酸化されていない形態における式(1)の化合物は、限定されないが、アセトニトリル、エタノール、水溶性のジオキサンなどの適切な不活性有機溶媒において、限定されないが、硫黄、二酸化硫黄、トリフェニルホスフィン、トリアルキルホスフィン、水素化硼素リチウム、水素化硼素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、三塩化リン、三臭化リンなどの還元剤によって、0〜80℃までで処置することによって、式(I)の化合物のN−オキシドから調製され得る。さらに、前記還元剤は、樹脂又はシリカなどの固体担体上に共有結合され得るか、又は配位的に保持され(coordinatively supported)得る。
【0105】
本明細書に記載される、式(I)の化合物は、(例えば、放射性同位体で)同位体的に、または限定されないが、発色団又は蛍光部分、生物発光ラベル、又は化学発光ラベルの使用を含む、別の他の手段によって標識化され得る。式(I)の化合物は、1以上のキラル中心を備え得、各中心は、R又はS配置において存在し得る。本明細書に示される化合物は、全てのジアステレオマー、エナンチオマー、及びエピマーの形態の他に、それらの適切な混合物も含む。式(1)の化合物は、化合物のエピマー混合物を、光学活性分割剤と反応させ、化学的に異なる化合物の混合物を形成し、成分を分離し、分割剤を取り除き、及び純粋なエピマーを回収することによって、それらの個々のジアステレオマー又はエピマーとして調製され得る。エピマーの分解(resolution)が、本明細書に記載される化合物の共有結合のジアステレオマーの誘導体を使用して行われ得るが、分離できる複合体が好ましい(例えば、結晶のジアステレオマー塩)。ジアステレオマーは、異なる物理的特性(例えば、融点、沸点、溶解度、反応性など)を有し、これらの相違点を利用することによって容易に分離され得る。ジアステレオマーは、キラルクロマトグラフィーによって、又は好ましくは、溶解度の違いに基づく分離/分解(separation/resolution)技術によって分離され得る。その後、エピマー化を生じない任意の実用的な手段によって、分割剤と共に、純粋なエピマーが回収される。それらの立体異性混合物からの化合物の立体異性体の分解に適用可能な、当該技術のより詳細な記載は、Jean Jacques, Andre Collet, Samuel H. Wilen, “Enantiomers, Racemates and Resolutions”, John Wiley And Sons, Inc., 1981において見られ得、その全体が引用によって本明細書に組み込まれる。
【0106】
さらに、本明細書に提供される化合物及び方法は、幾何異性体として存在し得る。本明細書に提供される化合物及び方法は、すべてのシス、トランス、シン、アンチ、エントゲーゲン(E)、及びツザメン(Z)異性体、ならびにそれらの適切な混合物を含む。幾つかの状況において、化合物は、互変異性体として存在し得る。すべての互変異性体は、本明細書に記載される式内に含まれ、化合物及び方法によって本明細書に提供される。本明細書に提供される化合物及び方法の更なる実施形態において、単一の予備段階、組み合わせ、または相互変換から得られるエナンチオマー及び/又はジアステレオ異性体の混合物も、本明細書に記載される適用に有用であり得る。
【0107】
(医薬組成物/製剤)
医薬組成物は、本明細書に使用されるように、式(1)の化合物の、担体、結合剤、安定化剤、希釈剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、及び/又は賦形剤などの他の化学成分との混合物を指す。医薬組成物は、有機体への化合物の投与を促進する。式(1)の化合物を含む医薬組成物は、限定されないが、以下のものを含む、当該技術分野に公知の、任意の従来の形態及び経路によって医薬組成物として治療上有効な量で投与され得る:静脈内、経口、直腸、エアロゾル、非経口、眼、肺、経皮、膣、耳、鼻、及び局所の投与。
【0108】
当業者は、全身よりもむしろ局所に、例えば、臓器への直接的な化合物の注入を介して、しばしばデポー製剤又は徐放製剤において化合物を投与し得る。さらに、当業者は、標的薬物送達システムにおいて、例えば、臓器特異性抗体でコーティングされたリポソームにおいて、式(1)の化合物を含む医薬組成物を投与し得る。リポソームは、臓器の標的とされ、臓器によって選択的に取り込まれる。さらに、式(1)の化合物を含む医薬組成物は、急速放出製剤の形態、持続放出製剤の形態、又は中間放出製剤の形態で提供され得る。
【0109】
経口投与に関して、式(1)の化合物は、活性化合物を、当該技術分野に周知の薬学的に許容可能な担体又は賦形剤と組み合わせることによって、容易に調剤され得る。このような担体は、本明細書に記載される化合物が、処置される被験体による経口摂取のための、錠剤、粉末剤、丸薬、ドラゼー、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、エリキシル剤、スラリー、懸濁液などのように調剤されることを可能にする。
【0110】
経口使用のための医薬調製物は、所望されれば、錠剤又はドラゼーコアを得るために、適切な助剤を加えた後に、1以上の固体の賦形剤を、本明細書に記載される化合物の1以上と混合させ、結果として生じる混合物を随意に粉砕し、顆粒の混合物を処理することによって得られる。
【0111】
ドラゼーコアは、適切なコーティングによって提供される。この目的のために、濃縮された砂糖水が使用され得、それらは随意に、結合剤、崩壊剤、香味剤又は安定化剤;ラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、及び適切な有機溶媒又は溶媒混合液を随意に含み得る。色素又はピグメントは、識別のために、又は活性化合物の用量の異なる組み合わせを特徴付けるために、錠剤又はドラゼーのコーティングに加えられ得る。
【0112】
経口で使用され得る医薬製剤は、ゼラチンで作られた押し込み型カプセル剤の他に、グリセロール又はソルビトールなどの、ゼラチン及び可塑剤で作られた軟らかい、密閉されたカプセル剤も含む。幾つかの実施形態において、カプセル剤は、製薬ゼラチン、ウシゼラチン、及び植物ゼラチンの1以上を含む硬ゼラチンカプセルを含む。幾つかの例において、ゼラチンは、アルカリ処理される。押し込み型カプセル剤は、ラクトースなどの充填剤、スターチなどの結合剤、及び/又はタルク又はステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、及び随意に安定化剤との混合で、活性成分を含み得る。軟カプセル剤において、活性化合物は、脂肪油、液動パラフィン、又は液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体中に溶解又は懸濁され得る。さらに、安定化剤が加えられ得る。経口投与のためのすべての製剤は、そのような投与に適した用量であるべきである。
【0113】
口腔内又は舌下投与に関して、組成物は、従来の方法で調剤された、錠剤、ロゼンジ、又はゲルの形態をとり得る。非経口注入は、ボーラス注入又は持続注入に関係する。式(1)の化合物の医薬組成物は、油性又は水溶性のビヒクル中の滅菌した懸濁液、溶液又はエマルションとして、非経口注入に適した形態であり得、懸濁化剤、安定化剤及び/又は分散剤などの製剤化剤を含み得る。非経口投与のための医薬製剤は、水溶性の形態で活性化合物の水溶液を含む。さらに、活性化合物の懸濁液は、好適な油性の注射懸濁液として調製され得る。適切な親油性溶媒又はビヒクルは、胡麻油などの脂肪油、オレイン酸エチル又はトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームを含む。水溶性の注射懸濁液は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、又はデキストランなどの、懸濁液の粘性を増加させる物質を含み得る。随意に、懸濁液はまた、化合物の溶解度を増加させる適切な安定化剤または薬剤を含み得、高濃縮溶液の調製を可能にする。あるいは、活性成分は、使用前には、好適なビヒクル、例えば、滅菌した発熱物質を含まない水で構成するための粉末形態であり得る。
【0114】
式(1)の化合物は、局所的に投与され得、溶液、懸濁液、ローション剤、ゲル、ペースト剤、薬用スティック、バーム、クリーム、軟膏剤などの様々な局所的に投与可能な組成物に調剤され得る。このような医薬化合物は、可溶化剤、安定化剤、等張化促進剤、緩衝液、及び防腐剤を含み得る。
【0115】
式(1)の構造を有する化合物の経皮投与に適した製剤は、経皮送達装置及び経皮送達パッチを用い得、脂溶性のエマルション又は緩衝水溶液であり得、ポリマー又は接着剤中に溶解及び/又は分散され得る。このようなパッチは、連続的、パルス状、又はオンデマンドの医薬品の送達のために構築され得る。またさらに、式(1)の化合物の経皮送達は、イオン泳動的なパッチなどの手段によって達成され得る。さらに、経皮的なパッチは、式(1)の化合物の制御された送達を提供し得る。律速膜を使用することによって、あるいはポリマーマトリックス又はゲル内で化合物を捕捉することによって、吸収の速度は遅らせられ得る。逆に、吸収促進剤は、吸収を増やすために使用され得る。吸収促進剤又は担体は、皮膚を介した通過を補助する吸収性の薬学的に許容可能な溶媒を含み得る。例えば、経皮装置は、裏打ち材(backing member)、随意に担体を備える化合物を含み、随意に、長時間にわたって制御された速度及び予め定められた速度で化合物を宿主の皮膚に送達するための律速バリアを含有するリザーバー、及び装置を皮膚に固定するための手段を含む包帯(bandage)の形態である。
【0116】
吸入による投与に関して、式(1)の化合物は、エアロゾル、噴霧又は粉末としての形態であり得る。式(1)の医薬組成物は、適切な推進剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適切なガスを使用して、加圧包装又は噴霧器からエアロゾルスプレーを示す形態で都合よく送達され得る。加圧エアロゾルの場合において、投与ユニットは、測定された量を送達する弁を提供することによって決定され得る。ほんの一例として、吸入器又は注入器において使用するためのゼラチンなどのカプセル剤及び薬包は、化合物の粉末混合及びラクトース又はスターチなどの適切な粉末基材を含んで調剤され得る。
【0117】
式(1)の化合物は、ココアバター又は他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含む、浣腸剤、直腸ゲル、直腸泡(rectal foams)、直腸エアロゾル、坐剤、ゼリー状の坐剤、又は停留浣腸剤などの直腸組成物に加え、ポリビニルピロリドン、PEGなどの合成ポリマーにおいて調剤され得る。組成物の坐剤形態において、限定されないが、脂肪酸グリセリドの混合物などの低融点ワックスは、随意にココアバターと組み合わされて、最初に融解される。
【0118】
本明細書に提供される処置又は使用の方法を実行する際に、本明細書に提供される治療上有効な量の式(1)の化合物は、医薬組成物において、処置されるべき疾患又は疾病を有する哺乳動物に投与される。好ましくは、哺乳動物はヒトである。治療上有効な量は、疾患の重症度、被験体の年齢及び相対的な健康状態、使用される化合物の効力及び他の要因に依存して、幅広く異なり得る。化合物は、単独で又は混合物の成分として1以上の治療薬と組み合わせて使用され得る。
【0119】
医薬組成物は、活性化合物を医薬的に使用され得る製剤へと処理するのを促進する賦形剤及び助剤を含む、1以上の生理学的に許容可能な担体を使用する従来の方法で調剤され得る。適切な製剤は、選択される投与の経路に依存する。周知の技術、担体、及び賦形剤はどれも、適切なものとして、及び当該技術分野において理解されるものとして使用され得る。式(1)の化合物を含む医薬組成物は、ほんの一例ではあるが、従来の混合、溶解、造粒、ドラゼー製造、湿式粉砕(levigating)、乳化、カプセル化、封入、又は圧迫の過程の手段によるなど、従来の方法で製造され得る。
【0120】
医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤、及び遊離酸又は遊離塩基の形態、又は薬学的に許容可能な塩形態の活性成分として本明細書に記載される式(1)の化合物を含む。さらに、本明細書に記載される方法及び医薬組成物は、N−オキシド、(多形体としても知られる)結晶形態に加え、同じ種類の活性を有するこれらの化合物の活性代謝物の使用も含む。幾つかの状況において、化合物は、互変異性体として存在し得る。全ての互変異性体は、本明細書に示される化合物の範囲内に含まれる。さらに、本明細書に記載される化合物は、非溶媒和形態と同様に溶媒和形態で、水、エタノールなどの、薬学的に許容可能な溶媒と共に存在し得る。本明細書に示される化合物の溶媒和形態はまた、本明細書に開示されると考えられる。さらに、医薬組成物は、他の医療薬剤又は医薬品、担体、防腐剤、安定化剤、湿潤剤又は乳化剤などのアジュバント、溶解促進剤、浸透圧を調節するための塩、及び/又は緩衝液を含み得る。さらに、医薬組成物はまた、他の治療上有益な物質を含み得る。
【0121】
本明細書に記載される化合物を含む組成物の調製のための方法は、固形物、半固形物又は液体を形成するために、1以上の不活性な、薬学的に許容可能な賦形剤又は担体を用いて、化合物を調剤する工程を含む。固形組成物は、限定されないが、粉末、錠剤、分散性顆粒、カプセル剤、カシェ剤、及び坐剤を含む。液体組成物は、本明細書に開示されるような、化合物を溶解する溶液、化合物を含むエマルション、又は化合物を含むリポソーム、ミセル、又はナノ粒子を含む溶液を含む。半固形組成物は、限定されないが、ゲル、懸濁液及びクリームを含む。組成物は、液体溶液又は懸濁液中にあり得るか、使用前に液体中で溶液又は懸濁液に適した固形形態であり得るか、またはエマルションとしてあり得る。これらの組成物はまた、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤などの微量の非毒性補助物質を含み得る。
【0122】
本明細書に記載される医薬組成物の要約は、例えば、Remington:
The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Ed (Easton, Pa.: Mack Publishing Company, 1995);Hoover, John E., Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pennsylvania 1975;Liberman, H.A. and Lachman, L., Eds., Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker, New York, N.Y., 1980;及びPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Seventh Ed.(Lippincott Williams & Wilkins 1999)に見られ得、それら全体が引用によって本明細書に組み込まれる。
【0123】
(投与方法および処置方法)
式(1)の化合物は、ステロイドホルモン核内受容体の活性が疾患の病因および/または病状の一因となる疾患または疾病の処置のための薬剤の調製に使用され得る。さらに、処置を必要とする被験体において、本明細書に記載の疾患または疾病のいずれかを処置するための方法は、式(1)の少なくとも1つの化合物、または、その薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能なN−オキシド、薬学的に活性な代謝物質、薬学的に許容可能なプロドラッグ、あるいは、薬学的に許容可能な溶媒和物を含む医薬組成物を、治療上有効な量で前記被験体に投与する工程を含む。
【0124】
本明細書に記載される化合物を含有する組成物は、予防的および/または治療的な処置のために投与され得る。治療用途において、組成物は、疾患または疾病の症状を治療するかまたは少なくとも部分的に阻止するのに十分な量で、すでに疾患または疾病に苦しんでいる被検体に投与される。この使用に有効な量は、疾患または疾病の重症度および経過、以前の治療、被検体の健康状態、体重、薬物への反応、および、治療に当たる医師の判断に依存する。日常の実験(用量漸増臨床試験を含むがこれに限定されない)によってこのような治療上有効な量を測定することは、当業者にとって当該技術の範囲内で十分よく考えられる。
【0125】
本明細書に記載の化合物を含有する組成物は、以下から選択された病態または病状を処置するために使用することができる:このような処置を必要としている患者における、一時性および二次性高アルドステロン症、ナトリウム貯留の増加、マグネシウムおよびカリウム排泄(利尿)の増加、水貯留の増加、高血圧(収縮期、または、収縮期の/弛緩期の組み合わせ)、炎症、白血病とリンパ腫などの悪性腫瘍、クッシングの先天性副腎過形成、原発性慢性副腎皮質機能低下症、二次性副腎機能低下症、前立腺癌、良性前立腺過形成、脱毛症、乳癌、AIDS、悪液質、男性避妊法で使用されるホルモン補充療法(HRT)に関しては精巣癌、卵巣癌、肺癌、骨粗鬆症、骨量減少、骨代謝回転の異常増加、転移性の骨疾患、および、悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症。該方法は、本明細書に記載の有効な量の化合物、あるいは、その互変異性体、プロドラッグ、溶媒和物、または、塩を患者に投与する工程を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の化合物を含有する組成物は、前立腺癌を処置するために使用され得る。他の実施形態では、本明細書に記載の化合物を含む組成物は、去勢抵抗性前立腺癌を処置するために使用することができる。
【0126】
本明細書に記載の化合物を含有する組成物は、以下から選択される病態または病状を処置するために使用することができる:膀胱癌、前立腺疾患、前立腺肥大症、前立腺痛、前立腺炎、前立腺肥大、尿失禁、前立腺新生物および癌、陰茎新生物および癌、精巣腫瘍および癌、セルトリ−ライディッヒ細胞腫、ライディッヒ細胞腫、セルトリ細胞腫、ウィルムス腫瘍、腎細胞癌、腎腫瘍、尿管腫瘍、アンドロゲン性脱毛症、性腺機能低下症、過剰多毛性(hyperpilosity)、および、良性前立腺肥大症(benign prostate hypertrophia)、前立腺の腺腫および腫瘍(重度の転移性の前立腺癌など)、乳癌、脳癌、皮膚癌、卵巣癌、膀胱癌、リンパ腺癌、肝癌、および、腎癌の場合などのアンドロゲン受容体を含有する良性または悪性の腫瘍細胞の処置、膵臓癌、骨粗鬆症、精子形成の抑制(suppressing spermatogenesis)、リビドー、悪液質、子宮内膜症、多嚢胞性卵巣症候群、食欲不振、男性における加齢性のテストステロンレベルの減少、男性の更年期障害、男性ホルモン補充、ならびに、男性および女性の性機能障害のためのアンドロゲン補充といったアンドロゲン依存の加齢性疾患および疾病、ならびに、外来患者における筋萎縮症の阻害。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の化合物を含む組成物は、前立腺癌を処置するために使用され得る。他の実施形態では、本明細書に記載の化合物を含有する組成物は、去勢抵抗性前立腺癌を処置するために使用され得る。
【0127】
患者の状態が改善しない場合、医師の判断で、化合物の投与は、慢性的に、すなわち、患者の疾患または疾病の症状を改善させるか、または、さもなければ抑制または制限するために、患者の寿命が尽きるまでの間を含む長期間、投与され得る。患者の状態が改善する場合、医師の判断に基づいて、化合物の投与は、継続的に与えられ得るか、または、一定期間一時的に中止され得る(すなわち、「休薬期間」)。
【0128】
ひとたび患者の状態が改善すると、必要に応じて維持量が投与される。続いて、投与の量または頻度あるいはその両方は、症状に応じて、改善された疾患または疾病が保持されるレベルまで減らされ得る。しかしながら、症状が再発すると、患者は長期的に間欠処置を必要とする。
【0129】
特定の例において、本明細書に記載される治療上有効な量の少なくとも1つの化合物(または、その薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能なN−オキシド、薬学的に活性な代謝物質、薬学的に許容可能なプロドラッグ、および、薬学的に許容可能な溶媒和物)を、別の治療薬と組み合わせて投与することは適切であってもよい。ほんの一例として、本明細書の化合物の1つを受けた後に患者が経験する副作用の1つが炎症である場合、最初の治療薬と組み合わせて、抗炎症剤を投与するのが適切であり得る。または、ほんの一例として、本明細書に記載される化合物の1つの治療効果は、アジュバントの投与によって高められ得る(すなわち、アジュバント自体は最小の治療的有用性を有し得るだけであるが、別の治療薬と併用することで、患者に対する全体的な治療的有用性が高められ得る)。または、ほんの一例として本明細書に記載される化合物の1つを、治療効果を同様に有する別の治療薬(同様に治療レジメンを含む)とともに投与することで、患者が経験する効果は増大され得る。あらゆる場合において、処置される疾患または疾病にかかわらず、患者が受ける全体的な有用性は、2つの治療薬を単に加えたものであり得るか、さもなければ、患者は相乗的な有用性を受け得る。例えば、相乗効果は、式(1)の化合物と、低カリウム血症、高血圧症、うっ血性心不全、腎不全、とりわけ、慢性腎不全、再狭窄、アテローム性動脈硬化、シンドロームX、肥満、腎症、心筋梗塞後(post−myocardial infarction)、冠状動脈性心疾患、高血圧と内皮機能不全後のコラーゲン生成、繊維症、および、リモデリングの増加の処置に使用される他の物質とで生じ得る。そのような化合物の例は、オルリスタットなどの抗肥満剤、抗高血圧薬、変力薬、および、限定されないがループ利尿薬(エタクリン酸、フロセミド、および、トルセミドなど)を含む脂質低下薬;ベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、および、トランドラプリルなどのアンジオテンシン変換酵素(ACE)インヒビター;ジゴキシンなどのNa−K−ATPアーゼ膜ポンプのインヒビター;中性エンドペプチダーゼ(NEP)インヒビター、オマパトリラト、サンパトリラト(sampatrilat)、および、ファシドトリルなどのACE/NEPインヒビター;特定のバルサルタン中の、カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、テルミサルタン、および、バルサルタンなどのアンジオテンシンIIアンタゴニスト;アセブトロール、ベタキソロール、ビソプロロール、メトプロロール、ナドロール、プロパノロール、ソタロール、および、チモロールなどのβ−アドレナリン受容体遮断薬;ジゴキシン、ドブタミンおよびミルリノンなどの変力薬;アムロジピン、ベプリジル、ジルチアゼム、フェロジピン、ニカルジビン、ニモジピン、ニフェジピン、ニソルジピン、および、ベラパミルなどのカルシウムチャネル遮断薬;ならびに、ロバスタチン、ピタバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、メバスタチン、ベロスタチン(velostatin)、フルバスタチン、ダルバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチン、および、リバスタチン(rivastatin)などの3−ヒドロキシ−3−メチル−グルタリルコエンザイムA還元酵素(HMG−CoA)インヒビターを含む。本明細書に記載される化合物が他の治療と併用して投与される場合、同時投与された化合物の投与量は、当然のことながら、用いられる同時投与の薬物の種類、用いられる具体的な薬物、処置されている疾患または疾病などに依存して変化する。さらに、1以上の生理学的に活性な薬剤とともに同時投与される時に、本明細書で提供される化合物は、生理学的に活性な薬剤と同時に、または、連続してのいずれかで投与され得る。連続して投与される場合、主治医は、生理活性物質と組み合わせてタンパク質を投与する適切な順序を決定する。
【0130】
いかなる場合においても、複数の治療薬(その1つは本明細書に記載される化合物の1つである)は、任意の順番でまたは同時にさえも投与され得る。もし同時であれば、複数の治療薬は、一回の、統一された形態で、または、複数回の形態で(ほんの一例として、一回の丸薬または2つの別々の丸薬のどちらかとして)提供され得る。治療薬の1つが複数回投与で与えられ得るか、または、両方の治療薬が複数回投与として与えられ得る。もし同時でなければ、複数回投与の間の期間は、0週間以上4週間未満で変わり得る。さらに、組み合わせの方法、組成物および製剤は、2つのみの薬剤の使用に限定されない。複数の治療上の組み合わせが想定される。
【0131】
加えて、式(1)の化合物は、患者に追加の効果または相乗的な効果を提供し得る手順と組み合わせても使用され得る。ほんの一例として、患者は、本明細書に記載される方法において、治療的および/または予防的な有用性を見出すことが期待され、ここで、式(1)の医薬組成物および/または他の治療法との併用は、その個体が、特定の疾患または障害と相互に関連することが知られている突然変異遺伝子のキャリアであるかどうかを決定するための遺伝子検査と組み合わされる。
【0132】
式(1)の化合物と併用療法は、疾患または疾病の発生の前後、または、その間に、投与可能であり、化合物を含有する組成物を投与するタイミングは変えることができる。したがって、例えば、化合物は、疾患または疾病の発生を防止するために予防薬として使用可能であり、かつ、疾病または疾患の傾向のある被験体に連続的に投与可能である。化合物および組成物は、症状の発症の間または発症の後、できるだけ早急に被検体に投与され得る。化合物の投与は、症状の発症後の最初の48時間以内に、好ましくは症状の発症後の最初の48時間以内に、より好ましくは症状の発症後の最初の6時間以内に、および、最も好ましくは症状の発症後の3時間以内に開始され得る。最初の投与は、例えば、静脈注射、ボーラス注入、5分間から約5時間にわたる点滴、丸薬、カプセル、経皮パッチ、口腔送達など、または、それらの組み合わせなどの任意の実用的な経路を介してもよい。化合物は、好ましくは、疾患または疾病の発症が検知されるか、または、疑われた後に、実行可能となるやいなや投与され、疾患の処置に必要な期間は、例えば、約1ヶ月から約3ヶ月である。処置の期間は、各被検体ごとに異なってもよく、その期間は既存の基準を用いて決定され得る。例えば、化合物または化合物を含有する製剤は、少なくとも2週間、好ましくは約1ヶ月から約3年間、および、さらに好ましくは約1ヶ月から約10年間投与され得る。
【0133】
本明細書に記載される医薬組成物は、正確な投与量の単回投与に適したユニット剤形であり得る。ユニット剤形において、製剤は、1以上の化合物の適量を含有する単位用量に分割される。単位用量は、製剤の別々の量を含有するパッケージの形態であり得る。制限しない例は、包装された錠剤またはカプセル剤、および、バイアルまたはアンプル中の粉末である。水溶性懸濁液組成物は、単回投与用の再密閉不可能な容器に入れられてもよい。あるいは、複数回投与用の密閉可能な容器が使用されてもよく、その場合、組成物中に防腐剤を含むことが典型的である。ほんの一例として、非経口注入のための製剤は、アンプル(ただしこれに限定されない)を含むユニット剤形で与えられてもよく、または、防腐剤が加えられた複数回投与用の容器で与えられてもよい。
【0134】
本明細書中に記載される式(1)の化合物に適した1日の投与量は、体重あたり約0.03乃至約60mg/kgまでである。限定されないが、ヒトを含む大型哺乳動物において示された1日の投与量は、約1mgから約4000mgの範囲であり、便宜上、限定されないが、一日に4回までを含む分割用量で投与されるか、または、遅延形態(retard form)で投与される。経口投与のための適切な単位剤形は、約1mgから約4000mgまでの活性成分を含む。幾つかの実施形態において、式(1)の化合物の単一用量は、約50mgから約2,000mgまでの範囲内にある。幾つかの実施形態において、式(1)の化合物の単一用量は、約90mg、約200mg、約250mg、約325mg、約650mg、約975mg、約1300mg、約1625mg、または、約1950mgである。幾つかの実施形態において、約90mg、約325mg、約650mg、約975mg、約1300mg、約1625mg、または、約1950mgの式(1)の化合物の投与は、複数回投与として与えられる。
【0135】
個々の処置レジメンに関する変数が大きいため、前述の範囲は単に示唆的なものでしかなく、これらの推奨値からの考慮すべき可動域はありがちなものである。このような投与量は、限定されないが、使用される化合物の活性、処置される疾患または疾病、投与の様式、個々の被験体の要件、処置される疾患または疾病の重症度、および、専門家の判断などの、多くの変数によって変化し得る。
【0136】
このような治療レジメンの毒性および治療効果は、限定されないが、LD50(個体群の50%が死に至る用量)およびED50(個体群の50%に治療上有効な用量)を測定する手順を含む、細胞培養物または実験動物における標準の薬学的手順によって測定され得る。毒性効果と治療効果の間の用量比が治療指数であり、LD50とED50間の比率として表され得る。高い治療指数を示す化合物が好ましい。細胞培養アッセイと動物研究から得られたデータは、ヒトで使用するための様々な投与量を調剤するのに使用され得る。このような化合物の投与量は、好ましくは、最小の毒性を備えたED50を含む血中濃度の範囲内にある。投与量は、用いられる投与量および利用される投与の経路によって、この範囲内で変わり得る。
【0137】
(インキュベーション研究)
インキュベーション培地は、MgCl/EDTAの存在下および不在下で、化合物(1)の溶解度について最適化された。被験物質の溶解は、MgCl/EDTAの存在下よりもその不在下でわずかに優れていたように思われた。しかしながら、CYP 450活性の活性化における二価カチオン、MgClの役割は十分に定義されていない(Saito et al.,2006,Tamura et al.,1988)。それ故、化合物(1)の代謝の安定はEDTAとMgClの存在下と不在下で行なわれた。
【0138】
(基準と品質管理)
標準曲線に対する線形回帰の決定係数(r)値は、≧0.998であった。曲線中の逆算された濃度に基づいた相対誤差(%)はすべての標準値の±15%以内であった。相対誤差(%)はすべてのQCに関して±16%以内であった。
【0139】
(陰性対照)
化合物(1)を含むがミクロソームを含まない2つの空試料(0および120分)(0.1Mのリン酸緩衝液と交換された量)が、陰性対照として各々のアッセイに含まれていた。すべての機会において、化合物(1)は、0分と比較して、100%近く(7%以内に)までの120分後の%回復によって実証されるように、インキュベーション期間にわたって化学的に安定していた。(図11−18)
【0140】
(0.1Mのリン酸緩衝液中の化合物(1)の代謝の安定性)
様々な時間にわたってNADPH生成システムの存在下または不在下でプールされたラット、イヌ、サル、および、ヒトの肝臓ミクロソームを用いたインキュベーション後の化合物(1)の濃度とその代謝物質が、それぞれ、図10、図14、図18、および、図22で提示される。
【0141】
0.1Mのリン酸緩衝液中のプールされたラットの肝臓ミクロソームを用いた、10μMの標的濃度の化合物(1)のインキュベーションから得られた結果は、0分のインキュベーションと比較して、86%までの回復を含むNADPH生成システムの存在下での120分のインキュベーションの間、化合物(1)は比較的安定していたということを実証した(図10)。化合物(1)の明らかな欠乏は観察されなかったが、5つの新規なピーク(3.3、4.9、および、8.8分で溶出するm/z 405、および、1.0および3.7分で溶出するm/z 421)が検出された。m/z 405および421(例えば、モノおよびジヒドロキシル化)を有するありうる代謝物質は、NADPHおよび時間に依存した方法でラット肝臓ミクロソーム中の10μMの標的濃度の化合物(1)によるインキュベーション後に観察された(図10および図11)。
【0142】
NADPH生成システムと0.1Mのリン酸緩衝液の存在下でイヌの肝臓ミクロソーム中の10μMの標的濃度の化合物(1)のインキュベーションは、被験物質が60分にわたって代謝的に安定していたことを実証した。120分のインキュベーション後に、化合物(1)の25%までの欠乏が、0分のインキュベーションと比較して観察された(図14)。陰性対照(0分および/またはNADPHを含まない)サンプル中に存在しない新しいピークが調べられ、そして、ラット肝臓ミクロソームと同じように、m/z 405および421(例えば、モノおよびジヒドロキシル化)を有するありうる代謝物質が検出された。実際に、5つの新規なピーク(3.4、5.1、および、9.2分までに溶出するm/z 405、および、1.0および1.9分までに溶出するm/z 421)が、時間に依存した手法のイヌの肝臓ミクロソーム中の10μMの標的濃度の化合物(1)によるインキュベーション後に観察された(図14および図15)。
【0143】
NADPH生成システムの存在下または不在下でサルの肝臓ミクロソームを含むリン酸緩衝液中の標的濃度10μMの化合物(1)のインキュベーションから得られた結果は、被験物質が著しく代謝したことを実証した。120分間のインキュベーションにわたって、15%から55%までの化合物(1)の時間に依存した欠乏が観察された(図18)。親化合物の欠乏は新規なピークの形成に相関していた。実際に、4つの新規なピーク(5.1および9.2分までに溶出するm/z 405、ならびに、1.0および1.9分までに溶出するm/z 421)は、NADPHおよび時間に依存した方法で、サルの肝臓ミクロソーム中の10μMの標的濃度の化合物(1)によるインキュベーション後に観察された(図18および図19)。
【0144】
0.1Mのリン酸緩衝液のみの存在下で、ヒト肝臓ミクロソーム中の化合物(1)のインキュベーションは、被験物質がNADPHと時間に依存した方法で少なくとも50%まで代謝されることを実証した。化合物(1)の欠乏は新しいピークの形成と同時であった。抽出されたイオンクロマトグラムを用いて、m/z 405および421(例えばモノおよびジヒドロキシル化)を含むありうる代謝物質が調査された。試験された条件におけるヒト肝臓ミクロソーム中の化合物(1)の代謝は、7つの新規なピーク(2.1、3.4、4.7、8.4、および、10.6分までに溶出するm/z 405、および、1.0と3.6分までに溶出するm/z 421)をもたらした。
【0145】
(0.1Mのリン酸緩衝液、1mMのEDTA、および、3mMのMgCl中の化合物(1)の代謝の安定性)
0.1Mのリン酸緩衝液中の、1mMのEDTA中の、3mMのMgCl中の、および、様々な時間のNADPH生成システムの存在下または不在下での、プールされたラット、イヌ、サル、および、ヒトの肝臓ミクロソームを用いたインキュベーション後の化合物(1)の濃度とその代謝物質が、それぞれ、図12、図16、図20、および、図24に提示される。
【0146】
プールされたラットの肝臓ミクロソームを含む10μMの標的濃度の化合物(1)のインキュベーションから得られた結果は、0分のインキュベーションと比較して、85%までの回復を含むNADPH生成システムの存在下での60分間のインキュベーションにわたって、化合物(1)が比較的安定していたことを実証した。しかしながら、120分では、化合物(1)の回復は、0分と比較して79%までわずかに減少した(図12)。イオン電流クロマトグラムの合計に基づいて、陰性対照(0分および/またはNADPHを含まない)サンプル中に存在しない任意の新規なピークは、m/z 405および421(例えば、モノおよびジヒドロキシル化)が検出されたありうる代謝物質の抽出されたイオンクロマトグラムを用いて調べられた。実際に、親化合物のわずかな欠乏は、時間とNADPHに依存した5つの新規なピーク(3.3、4.9、および、8.7分までに溶出するm/z 405、および、1.0および3.7分までに溶出するm/z 421)の形成に関連した(図12および図13)。それらのピークもMgClとEDTAのインキュベーションがない場合に検出された。
【0147】
NADPH生成システムの存在下でのイヌの肝臓ミクロソーム中の10μMの標的濃度の化合物(1)のインキュベーションは、被験物質がラットの際に似た手法で代謝的に安定していたことを実証した。0分と比較して、化合物(1)は、85%までの回復を伴って60分にわたって安定していた。120分間のインキュベーション後に、化合物(1)はNADPHに依存した手法で少なくとも24%まで代謝された(図14)。陰性対照(0分のおよび/またはNADPHを含まない)サンプル中に存在しない新規なピークが調べられた。ラットの肝臓ミクロソームと同様に、m/z 405および421(例えば、モノとジヒドロキシル化)を含むありうる代謝物質が検出された。実際に、4つの新規なピーク(5.1と9.1分までに溶出するm/z 405、および、1.0と1.9分までに溶出するm/z 421)が、時間に依存した手法のイヌの肝臓ミクロソーム中の10μMの標的濃度の化合物(1)によるインキュベーション後に観察された(図16および図17)。それらのピークもMgClとEDTAのインキュベーションがない場合に検出された。
【0148】
NADPH生成システムの存在下および不在下でサルの肝臓ミクロソームを含む10μMの標的濃度の化合物(1)のインキュベーションから得られた結果は、被験物質がNADPHと時間に依存した手法の120分間のインキュベーションにわたって代謝的に不安定であることを実証した。親化合物の欠乏(120分で37%まで減少する)は、新規なピークの形成に相関した。実際に、4つの新規なピーク(5.1と9.3分までに溶出する405、および、1.0と1.9分までに溶出するm/z 421)は、NADPHと時間に依存した手法でのサルの肝臓ミクロソーム中の10μMの標的濃度の化合物(1)によるインキュベーション後に観察された(図20および図21)。それらのピークもMgClとEDTAのインキュベーションのない場合に検出された。
【0149】
ヒトの肝臓ミクロソーム中のインキュベーション後に、化合物(1)は、NADPH生成システムの存在下では120分間比較的安定していた(89%までの回復)。しかしながら、ヒト肝臓ミクロソームを含む10μMの化合物(1)のインキュベーションは、時間に依存した手法で6つの新規なピーク(4.7、8.3、および、10.6分までに溶出するm/z 405、および、1.0、1.7、および、3.6分までに溶出するm/z 421)の形成をもたらした(図24および図25)。それらのピークもMgClとEDTAのインキュベーションのない場合に検出された。
【0150】
(インキュベーション研究から得られる結論)
120分間のインキュベーション後の、プールされた雄雌混合のラット、イヌ、サル、および、ヒトの肝臓ミクロソーム中の10μMの標的濃度の化合物(1)の代謝の安定は、EDTAとMgClの存在下と不在下で行われた。親化合物の欠乏と、時間に依存した手法での代謝物質の形成が、NADPH生成システムの存在下または不在下で調べられた。
【0151】
EDTAとMgClの存在下で10μMの標的濃度の化合物(1)のインキュベーションから得られた結果は、化合物(1)が60分にわたってラットとイヌの肝臓ミクロソーム中で代謝的に安定していたことを実証した。NADPH−GSを含まない陰性対照の(ラットミクロソーム中の)わずかな増加と(イヌミクロソーム中で21%までの)著しい減少と比較して、120分間のインキュベーション後、親化合物の21%までと24%までの欠乏は、ラットとイヌの肝臓ミクロソームでそれぞれ観察され、アッセイ中の変化を示している。化合物(1)は、30〜120分間のインキュベーション後に、16%までの欠乏から37%までの欠乏までで示されるように、サルミクロソームではそれほど安定していなかった。しかしながら、このシステムは、NADPH−GSの不在下で化合物(1)の濃度の上昇を示した(30分および120分のインキュベーションの間、−14%まで、および、−12%まで)。サルの肝臓ミクロソームとは対照的に、化合物(1)は、NADPH生成システムの存在下で120分のインキュベーションにわたって11%までのわずかな欠乏によって実証されるように、ヒト肝臓ミクロソームでは代謝的に安定していたが、NADPH−GSの不在下では、ヒト肝臓ミクロソームは化合物(1)をわずかに(7%まで)欠乏させた。陰性対照が標準的なアッセイ変化を示している間は、代謝物の安定傾向にあるとの解釈が依然としてなされてもよい。
【0152】
すべての種において、親化合物の欠乏は、新しいピーク、推定代謝物(モノ酸化)(monooxidation)の形成に関連していた。それらの推定代謝物の形成は時間とNADPHとに依存しており、したがって、化合物(1)の生体内変化における、シトクロムP450および/またはフラビン含有モノオキシゲナーゼ(FMO)酵素のいずれかの関与を示唆しているということは注目に値する。
【0153】
結論として、化合物(1)は、ラット、イヌ、および、ヒトの肝臓ミクロソームで代謝的に安定しており、EDTAとMgClの存在下での120分間のインキュベーション後に、サルの肝臓ミクロソームではそれほど安定していなかった。
【0154】
(キット/製品)
本明細書に記載の治療用途で使用するために、キットおよび製品も本明細書中で記載される。このようなキットは、運搬装置、パッケージ、あるいは、例えば、バイアル、チューブなどの1以上の容器を収容するために仕切られた容器を含み、容器の各々は、本明細書に記載の方法で使用される個別の要素の1つを含む。適切な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、注射器、および、試験管を含む。容器はガラスやプラスチックなどの様々な材料から形成可能である。
【0155】
例えば、容器は、本明細書中に開示されるように、随意に組成物中に、または、別の薬剤と組み合わせて、本明細書中に記載の1以上の化合物を含むことができる。容器は随意に無菌の点検ポートを有する(例えば、容器は静脈注射用の溶液バッグまたは皮下注射針で貫通可能なストッパを備えたバイアルであってもよい)。このようなキットは、識別についての記載、ラベル、または本明細書中に記載の方法での使用に関する取扱説明書を備えた化合物を随意に含む。
【0156】
キットは典型的には1以上の追加の容器を含み、その各々は、本明細書中に記載される化合物の使用のための商業的な観点とユーザの観点から望ましい1以上の様々な材料(例えば、試薬、随意に濃縮形式で、および/または、デバイスで)を含む。このような材料の制限しない例としては、緩衝液、希釈剤、フィルタ、針、注射器、運搬装置、パッケージ、容器、バイアル、および/または、使用の内容ならびに/あるいは使用説明書を表示したチューブのラベル、および、使用説明書を備えた添付文書が含まれるが、これらに限定されない。取扱説明書のセットも典型的には含まれる。
【0157】
ラベルは容器上にあるか、または、容器に付随し得る。ラベルを形成している文字、数字、または他の字体が容器本体に取り付けられたり、成形されたり、または、エッチングされたりする場合、ラベルは容器上にある。ラベルが例えば、添付文書として、容器を保持する入れ物または運搬装置の内部にある場合、ラベルは容器に付随してもよい。ラベルは内容物が具体的な治療用途に使用されることを示すために用いられ得る。ラベルは、例えば、本明細書に記載の方法で、内容物を用いる使用するための指示を示すように用いられてもよい。
【実施例】
【0158】
以下の実施例は、式(1)の化合物を生成するための方法、及び式(1)の有効性及び安全性を試験するための例示的方法を提供する。これらの実施例は、例示目的のみに提供され、本明細書に提供される特許請求の範囲を制限しない。本明細書に開示され請求される方法のすべては、本開示に照らして、不当な実験なしでなされ、実行され得る。特許請求の範囲の概念、精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される方法へ、及び該方法の工程に、又は一連の工程に変更が適用され得ることは当業者に明らかである。当業者に明らかなすべてのこのような同様の代替及び改変は、添付された特許請求の範囲の精神、範囲及び概念内にあると考えられる。
【0159】
(実施例1:式(1)の化合物の合成)
(実施例1a:3α−アセトキシ−17−(1H−ベンズイミダゾル−1−イル)−16−ホルミルアンドロスタ−5,16−ジエンの合成)
【0160】
【化22】

【0161】
33.4kgの3α−アセトキシ−17−クロロ−16−ホルミルアンドロスタ−5,16ジエンを、ジメチルホルムアミド(DMF)中でベンズイミダゾール及び炭酸カリウムと混合させ、出発物質の残りの量によって決定されるように、反応が終了するまで加熱する。反応が終了した後、反応混合物を冷却し、冷却した水と混合し、反応物をクエンチする。固形物をクエンチした反応混合物から分離し、順にDMFと水の混合物、水、希釈した水性の塩化水素酸、水、希釈した水性の炭酸水素ナトリウム、及び水で洗浄する。その後、中間生成物、3α−アセトキシ−17−(1H−ベンズイミダゾル1−イル)−16−ホルミルアンドロスタ−5,16−ジエンをその後乾燥する。
【0162】
(実施例1b:3α−アセトキシ−17−(1H−ベンズイミダゾル1−イル)−アンドロスタ−5,16−ジエンの合成及び精製)
【0163】
【化23】

【0164】
3α−アセトキシ−17−(1H−ベンズイミダゾル1−イル)−16−ホルミルアンドロスタ−5,16−ジエンを、N−メチルピロリドン(NMP)中の約10%のパラジウム炭素(Pd/C)と混合し、反応混合物中の3α−アセトキシ−17−(1H−ベンズイミダゾル1−イル)−16−ホルミルアンドロスタ−5,16−ジエン/3α−アセトキシ−17−(1H−ベンズイミダゾル1−イル)アンドロスタ−5,16−ジエンの比率によって決定されるように、反応が終了するまで加熱する。反応が終了した後、反応混合物を冷却する。硫酸マグネシウムを加え、結果として生じる混合物を濾過する。水を濾液に加え、結果として生じる混合物を撹拌する。固形で粗製の3α−アセトキシ−17−(1H−ベンズイミダゾル1−イル)−アンドロスタ−5,16−ジエンを、水/NMP混合物から分離し、水とメタノールの混合物で洗浄し、乾燥し、包装する。
【0165】
粗製の3α−アセトキシ−17−(1H−ベンズイミダゾル1−イル)アンドロスタ−5,16−ジエンを、酢酸エチル中に溶解し、澄ませる(clarified)。この混合物の容量を、減圧蒸留によって減少させる。結果として生じる混合物を冷却し、固形物を分離し、冷たい酢酸エチルで洗浄し、真空下で乾燥する。幾つかの実施形態において、不純物のレベルを測定するためにサンプルにインプロセスの試験(in−process test)を行う。不純物のレベルが許容可能でなければ、再結晶プロセスを繰り返す。
【0166】
(実施例1c:3α−ヒドロキシ−17−(1H−ベンズイミダゾル1−イル)−アンドロスタ−5,16−ジエンの合成及び精製)
【0167】
【化24】

【0168】
3α−アセトキシ−17−(1H−ベンズイミダゾル1−イル)アンドロスタ−5,16−ジエンを、メタノール中でナトリウムメトキシドと混合させ、3α−アセトキシ−17−(1H−ベンズイミダゾル1−イル)アンドロスタ−5,16−ジエンの残りの量によって決定されるように、反応が終了するまで加熱する。反応が終了した後、反応混合物を冷却し、水と混合することで反応物をクエンチする。結果として生じるスラリーを撹拌し、更に冷却する。固形で粗製の3α−ヒドロキシ−17−(1H−ベンズイミダゾル1−イル)アンドロスタ−5,16−ジエンを、クエンチした反応混合物から分離し、メタノールと水の混合物で洗浄し、その後、洗浄液が中性になるまで水で洗浄し、続いて乾燥して、包装する。
【0169】
粗製の3α−ヒドロキシ−17−(1H−ベンズイミダゾル1−イル)アンドロスタ−5,16−ジエンを、メタノールと酢酸エチルの混合物中に溶解し、澄ませる。生成物を、溶媒交換によって、メタノール/酢酸エチル溶液から酢酸エチル単独へと移す。結果として生じる混合物を冷却し、固形物を分離し、冷たい酢酸エチルで洗浄し、真空下で乾燥する。幾つかの実施形態において、不純物のレベルを測定するためにサンプルにインプロセスの試験を行う。不純物のレベルが許容可能でなければ、再結晶プロセスを繰り返す。
【0170】
(実施例2:(5S,10S,13S)−17−(1H−ベンゾ[d]イミダゾル1−イル)−10,13−ジメチル−4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3(2H)−オン(6)の合成)
【0171】
【化25】

【0172】
(工程1:(3S,5S,10S,13S)−17−クロロ−16−ホルミル−10,13−ジメチル−2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−イルアセテート(2)の調製)
無水のクロロホルム(60mL)中のアセテート1(3.0g、9.02mmol)の溶液を、窒素下で、オキシ塩化リン(15.0mL)およびジメチルホルムアミド(15.0mL)の冷たい(0℃)攪拌した溶液に液滴で加えた。25℃までその混合物を温め、次に還流まで5時間加熱し、その後50℃で一晩撹拌した。結果として生じる混合物を減圧下で濃縮し、氷上に注ぎ、酢酸エチルにより抽出した。混合した抽出物を、水、ブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、そして溶媒を減圧下で取り除くことで、白色固形物を得た。1〜10%のEtOAc/ヘキサンを使用するフラッシュクロマトグラフィーによる精製によって化合物2(2.59g、81%)を得た。H NMR(300MHz,CDCl)δ0.85(s,3H)、0.95(s,3H)、0.96−1.55(m,11H)、1.60−173(m,5H)、1.80−1.84(m,2H)、1.97−2.06(m,1H)、2.0(s,3H)、2.52(m,1H)、4.67(m,1H)、9.96(s,1H)。
【0173】
(工程2:(3S,5S,10S,13S)−17−(1H−ベンゾ[d]イミダゾル1−イル)−16−ホルミル−10,13−ジメチル−2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−イルアセテート(3)の調製)
乾燥DMF(22mL)中の化合物2(2.58g、6.80mmol)、ベンズイミダゾール(2.41g、20.4mmol)および炭酸カリウム(3.4g、24.6mmol)の混合物を、N下で25℃で1時間加熱した。その混合物を25℃まで冷却し、水に加え、得られた固形物をEtOAcにより抽出した。混合した抽出物を、水、ブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、減圧下で溶媒を取り除くことで、茶色の固形物を得た。1〜3%のMeOH/CHClを使用するフラッシュクロマトグラフィーによる精製によって淡黄色固形物(3.0g、定量(quant))として化合物3を得た。H NMR(300MHz,CDCl)δ0.86(s,6H)、0.89−1.6(m,10H)、1.61−1.80(m,8H)、2.01(s,3H)、2.24−2.33(m,1H)、2.75(dd,J=15.1,6.06Hz、1H)、4.68(m,1H)、7.33(m,3H)、7.84(m,1H)、7.86(s,1H)、9.56(s,1H)。APCI=461。
【0174】
(工程3:(3S,5S,10S,13S)−17−(1H−ベンゾ[d]イミダゾル1−イル)−10,13−ジメチル−2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−イルアセテート(4)の調製)
乾燥ベンゾニトリル(8mL)中の化合物3(1.5g、3.0mmol)の溶液を、Pd/C(10wt%、750mg)の存在下で16時間還流した。25℃まで冷却した後、触媒をセライトのパッドを介した濾過によって取り除いた。濾液を蒸発し、その残留物を1%のMeOH/CHClを使用するフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、淡黄色固形物(0.7g、50%)として化合物4を得た。H NMR(300MHz,CDCl)δ0.86(s,3H)、0.96(s,3H)、0.78−0.9(m,1H)、1.0−1.51(m,2H)、1.27−1.83(m,15H)、2.03(s,3H)、2.10−2.18(m,1H)、2.34−2.42(m,1H)、4.68(m,1H)、5.96(s,1H)、7.27(m,2H)、7.45(m,1H)、7.80(m、1H)、7.95(s、1H)。APCI=433。
【0175】
(工程4:(3S、5S、10S、13S)−17−(1H−ベンゾ[d]イミダゾル1−イル)−10,13−ジメチル−2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−オール(5)の調製)
0℃でメタノール(11.0mL)中のアセテート4(450mg、1.61mmol)の溶液に、メタノール中のKOH溶液(10%、4.3mL)を液滴で加えた。混合物を25℃まで温め、一晩撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発し、残留物に水を加え、混合物を酢酸エチルにより抽出した。その有機相を、水、ブラインで洗浄し、乾燥させた(NaSO)。溶媒を減圧下で取り除くことで粗製の物質を得、それを100%のCHClおよび1〜2%のMeOH/CHClでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、淡黄色固形物(400mg、63%)として5を分離した。H NMR(300MHz,CDCl)δ0.85(s,3H)、0.97(s,3H)、0.78−0.81(m,1H)、0.99−1.50(m,10H)、1.60−1.90(m,8H)、2.11−2.20(m,1H)、2.34−2.41(m,1H)、3.62(m,1H)、5.95(dd,J=1.6,3.3Hz,1H)、7.28(m,2H)7.47(m,1H)、7.80(m,1H)、7.94(s,1H)。HPLC=98%。APCI=391。
【0176】
(工程5:(5S,10S,13S)−17−(1H−ベンゾ[d]イミダゾル1−イル)−10,13−ジメチル−4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3(2H)−オン(6)の調製)
ジクロロメタン(4.0mL)とアセトニトリル(0.4mL)の混合物中の5の溶液(150mg、0.38mol)に、N−メチルモルホリン−N−オキシド(NMO、108mg、0.92mmol)、モレキュラーシーブ(4Å、300mg)および過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウム(TPAP、14mg、0.04mmol)を加えた。その混合物を25℃で4時間撹拌した。反応混合物をセライトのパッドを介して濾過し、その濾液を黒色の残留物へと濃縮し、その残留物を、遊離液として100%のCHClを、その後1〜2%のMeOH/CHClを使用するフラッシュクロマトグラフィーによって精製することで、オフホワイト固形物(77mg、52%)として6を分離した。H NMR(300MHz,CDCl)δ0.99(s,3H)、1.05(s,3H)、1.07−1.15(m,2H)、1.30−1.52(m,4H)、1.62−1.85(m,6H)、1.96−2.43(m,8H)、5.96(dd,J=1.6,3.3Hz,1H)、7.28(m,2H)、7.47(m,1H)、7.80(m,1H)、7.93(s,1H)。HPLC=96%。APCI=389。
【0177】
(実施例3:(5R,10S,13S)−17−(1H−ベンゾ[d]イミダゾル1−イル)−10,13−ジメチル−4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3(2H)−オン(7)の合成)
【0178】
【化26】

【0179】
(工程1:(3R,5R,10S,13S)−10,13−ジメチル−17−オキソヘキサデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−イルアセテート(2)の調製)
ピリジン(30mL)中のアルコール1(3.0g、10.33mmol)の溶液に、0℃でN下で無水酢酸(4.22g、41.32mmol)を液滴で加え、その後25℃まで混合物を温め、25℃で一晩撹拌した。水を反応混合物に加え、結果として生じる混合物をEtOAcで希釈した。有機相を分離し、水相をEtOAcで抽出した。混合した有機相を、順番に1NのHCl、飽和した炭酸水素ナトリウム、水およびブラインで洗浄した。有機相を乾燥させ(NaSO)、蒸発させることで白色固形物(3.45g、定量)として所望のアセテート2を分離した。H NMR(300MHz,CDCl)δ0.84(s,3H)、0.95(s、3H)、1.0−1.58(m,13H)、1.60−1.74(m,2H)、1.78−1.98(m,5H)、2.0(s、3H)、2.10(m,1H)、2.45(m,1H)、4.71(m,1H)。
【0180】
(工程2:(3R,5R,10S,13S)−17−クロロ−16−ホルミル−10,13−ジメチル−2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−イルアセテート(3)の調製)
無水クロロホルム(30mL)中のアセテート2(1.5g、4.51mmol)の溶液を、オキシ塩化リン(7.5mL)およびジメチルホルムアミド(7.5mL)の冷たい(0℃)攪拌した溶液に窒素下で液滴で加えた。その混合物を25℃まで温め、還流まで5時間加熱し、その後50℃で一晩撹拌した。結果として生じる混合物を減圧下で濃縮し、氷上に注ぎ、その後酢酸エチルで抽出した。混合した抽出物を、水、ブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、溶媒を減圧下で取り除くことで白色固形物を得た。1〜10%のEtOAc/ヘキサンを使用するフラッシュクロマトグラフィーによる精製によって化合物3(1.17g、68%)を得た。H NMR(300MHz,CDCl)δ0.94(s,3H)、0.96(s,3H)、1.0−1.58(m,13H)、1.60−2.0(m,5H)、1.98−2.1(m,1H)、2.0(s,3H)、2.51(m,1H)、4.71(m,1H)、9.97(s,1H)。
【0181】
(工程3:(3R,5R,10S,13S)−17−(1H−ベンゾ[d]イミダゾル1−イル)−16−ホルミル−10,13−ジメチル−2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−イルアセテート(4)の調製)
乾燥ジメチルホルムアミド(10mL)中の化合物3(1.17g、3.08mmol)、ベンズイミダゾール(1.09g、9.22mmol)および炭酸カリウム(1.54g、11.1mmol)の混合物をN下で80℃で1時間加熱した。混合物を25℃まで冷却し、水に加え、得られた固形物をEtOAcで抽出した。混合した抽出物を、水、ブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、溶媒を取り除くことで茶色の固形物を得た。1〜3%のMeOH/CHClを使用するフラッシュクロマトグラフィーによる精製によって、淡黄色固形物(1.40g、定量)として化合物4を得た。H NMR(300MHz,CDCl)δ0.94(s,6H)、0.92−1.5(m,6H)、1.50−1.59(m,2H)、1.60−1.90(m,10H)、2.03(s,3H)、2.24−2.33(m,1H)、2.75(dd,J=15.1,6.06Hz,1H)、4.74(m,1H)、7.33(m,3H)、7.84(m,1H)、7.86(s,1H)、9.59(s,1H)。APCI=461。
【0182】
(工程4:(3R,5R,10S,13S)−17−(1H−ベンゾ[d]イミダゾル1−イル)−10,13−ジメチル−2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−イルアセテート(5)の調製)
乾燥ベンゾニトリル(3.4mL)中の化合物4(700mg、1.51mmol)の溶液を、Pd/C(10wt%、350mg)の存在下で8時間還流した。RT(室温)まで冷却した後、触媒をセライトのパッドによる濾過によって取り除いた。濾液を蒸発させ、その残留物を1%のMeOH/CHClを使用するフラッシュクロマトグラフィーによって精製することで、淡黄色固形物(0.46g、71%)として化合物5を得た。H NMR(300MHz,CDCl)δ0.94(s,3H)、0.97(s,3H)、0.92−1.5(m,6H)、1.50−1.59(m,2H)、1.60−1.90(m,10H)、2.03(s,3H)、2.24−2.33(m,1H)、2.75(dd,J=15.1,6.06Hz,1H)、4.74(m,1H)、5.96(s,1H)、7.27(m,2H)、7.33(m,1H)、7.81(m,1H)、7.93(s,1H)。APCI=433。
【0183】
(工程5:(3R,5R,10S,13S)−17−(1H−ベンゾ[d]イミダゾル1−イル)−10,13−ジメチル−2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−オール(6)の調製)
メタノール(7.0mL)中のアセテート5(450mg、1.04mmol)の溶液に、0℃でメタノール中のKOHの溶液(10%、2.8mL)を液滴で加え、その混合物を25℃まで温め、2時間撹拌した。溶媒を残留物にまで減圧下で蒸発させ、残留物に水を加えた。結果として生じる混合物を、酢酸エチルにより抽出した。有機相を、水、ブラインで洗浄し、乾燥させた(NaSO)。溶媒を減圧下で取り除くことで粗製の物質を得、それを100%のCHClでの、その後1〜2%のMeOH/CHClでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製することで、淡黄色固形物(250mg、63%)として6まで分離した。H NMR(300MHz,CDCl)δ0.94(s,3H)、0.97(s,3H)、1.00−1.35(m,1H)、1.22−1.56(m,8H)、1.60−2.0(m,10H)、2.10−2.20(m,1H)、2.34−2.45(m,1H)、3.65(m,1H)、5.96(dd,J=1.6,3.3Hz,1H)、7.28(m,2H)、7.47(m,1H)、7.79(m,1H)、7.93(s,1H)。HPLC=100%。APCI=391。
【0184】
(工程6:(5R,10S,13S)−17−(1H−ベンゾ[d]イミダゾル−1−イル)−10,13−ジメチル−4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3(2H)−オン(7)の調製)
ジクロロメタン(3.0mL)とアセトニトリル(0.33mL)の混合物中の6(130mg、0.33mmol)の溶液に、N−メチルモルホリン−N−オキシド(NMO、94mg、0.8mmol)、モレキュラーシーブ(4Å、260mg)および過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウム(TPAP、12mg、0.034mmol)を加えた。その混合物を25℃で4時間撹拌した。反応混合物をセライトのパッドを介して濾過し、その濾液を黒色の残留物にまで濃縮し、それを遊離液として100%のCHClを、次に1〜2%のMeOH/CHClを使用するフラッシュクロマトグラフィーによって精製することで、オフホワイト固形物(91mg、70%)として7を分離した。H NMR(300MHz,CDCl)δ0.99(s,3H)、1.07(s,3H)、1.20−1.54(m,4H)、1.62−1.78(m,4H)、1.80−1.92(m,4H)、1.96−2.20(m,3H)、2.15−2.25(m,2H)、2.28−2.5(m,2H)、2.73(m、1H)、5.96(dd,J=1.6,3.3Hz,1H)、7.28(m,2H)、7.47(m,1H)、7.79(m,1H)、7.93(s,1H)。HPLC=99%。APCI=389。
【0185】
(実施例4:(3S,10R,13S)−17−(1H−ベンゾ[d]イミダゾル−1−イル)−10,13−ジメチル−2,3,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15ドデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−オール(3))
【0186】
【化27】

【0187】
(工程1:(10R,13S)−17−(1H−ベンゾ[d]イミダゾル−1−イル)−10,13−ジメチル−6,7,8,9,10,11,12,13,14,15−デカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3(2H)−オン(2)の調製)
ケトン2をWO2006/093993に記載されていた手順に従って調製した。
【0188】
(工程2:(3S,10R,13S)−17−(1H−ベンゾ[d]イミダゾル1−イル)−10,13−ジメチル−2,3,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15ドデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−オール(3)の調製)
メタノール(4mL)中のケトン2の溶液(150mg、0.39mmol)に、N下で塩化セリウム七水和物(145mg、0.39mmol)を加え、その溶液を−20℃まで冷却した。その後、水素化ホウ素ナトリウム(7.4mg、0.195mmol)を加え、その混合物を、−20℃で0.5時間、その後−15℃で0.5時間撹拌した。水をEtOAcに続けて、反応混合物に加えた。有機相を分離し、水相をEtOAcで抽出した。混合した有機相をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、蒸発させることで白色固形物(150mg、定量)として所望の生成物3を分離した。H NMR(300MHz,CDCl)δ0.90−1.06(m,2H)、0.99(s,3H)、1.08(s,3H)、1.27−1.50(m,3H)、1.57−1.87(m,7H)、1.90−1.98(m,1H)、2.05−2.42(m,4H)、4.14(m,1H)、5.32(d,J=1.4Hz,1H)、5.96(dd,J=3.03,1.4Hz,1H)、7.29(m,2H)、7.47(m,1H)、7.80(m,1H)、7.96(s,1H)、HPLC=97%、APCI=389。
【0189】
(実施例5:医薬組成物)
(実施例2a:経口組成物)
経口送達用の医薬組成物を調製するために、式(1)の化合物を、約0.20g/mLのかさ密度および約0.31g/mLのタップ密度を有するように微粉化する。90mgの微粉化した化合物を、経口投与に適したサイズ「3」のカプセルにパック充填する。
【0190】
(実施例2b:経口組成物)
経口送達用の医薬組成物を調製するために、式(1)の化合物を、約0.20g/mLのかさ密度および約0.31ng/mLのタップ密度を有するように微粉化する。325mgの微粉化した化合物を、経口投与に適したサイズ「00」のカプセルにパック充填する。
【0191】
(実施例2c:経口組成物)
経口送達用の医薬組成物を調製するために、90mgの式(1)の化合物を、200mgのラクトースおよび1%のステアリン酸マグネシウムと混合する。混合物を混ぜ合わせ、経口投与に適する錠剤に直接圧縮する。
【0192】
(実施例6:インビトロの薬理学的研究)
(実施例3a:アンドロゲン受容体結合アッセイ)
アンドロゲン受容体(AR)競合結合を、変異したAR(384nMのIC50)を発現するアンドロゲン感受性のあるヒト前立腺癌細胞株(LNCaP)細胞における、および野生型AR(845nMのIC50)を発現する細胞における、放射標識したR1881(アンドロゲンアゴニスト)を使用して測定した。濃度を増加させる際に、式(1)の化合物を細胞に加える。放射標識したR1881の量をARへの競合結合の測定として測定する。
【0193】
(実施例3b:リアーゼ活性の阻害)
トランスフェクトしたE.coliによって発現されるインタクトな(Intact)CYP17を分離し、酵素源として精製する。基質として17−α−ヒドロキシプレグネノロンを放射標識した。CYP17活性を、基質のC−21側鎖の開裂中に形成された、トリチウム標識した酢酸の量によって測定した。基質のCYP17開裂に対する阻害効果を評価するために、式(1)の化合物を濃度を増加させる際に反応に加える。
【0194】
(実施例3c:前立腺癌細胞株のテストステロン誘発性増殖の阻害)
ヒト前立腺癌細胞株(LNCaP及びLAPC−4)を培養液中で成長させ、1nMのジヒドロテストステロン(DHT)によって刺激する。DHTのこの濃度は、前立腺癌細胞の増殖を刺激する。増殖に対する効果を評価するために、濃度を増加させる際に式(1)の化合物を細胞に加える。
【0195】
(実施例3d:前立腺癌細胞株におけるアンドロゲン受容体(AR)タンパク質の分解)
培養細胞におけるすべてのタンパク質合成を阻害するために、シクロヘキシミドを、ヒト前立腺癌細胞株(LNCaP)に加える。抽出タンパク質を、ARタンパク質に向けられたモノクローナル抗体により調べると、シクロヘキシミド処置は、単独で、時間依存性の方法によってARレベルを低下させた。濃度を増加させる際に式(1)の化合物を細胞に加えることで、その付加が培養下で経時的にARタンパク質の著しくより大きな減少率をもたらすか否かを測定する。
【0196】
(実施例7:インビボの薬理学的研究)
(実施例4a:重度の易感染性免疫不全(Severely Compromised Immunodeficient)(SCID)マウスにおけるヒト前立腺癌の異種移植片の増殖の阻害)
LAPC4前立腺癌細胞腫瘍の異種移植片を、SCIDマウスに移植する。癌を有するマウスに、体重(BW)1kg当たり50mgの式(1)の化合物の皮下(SC)投与を毎日2回受けさせる。腫瘍サイズを毎週測定し、ビヒクル、Casodex(登録商標)又は去勢のみを受ける対照マウスと比較する。
【0197】
(実施例8:β−ヒドロキシ−17(1H−ベンズイミダゾル1−イル)アンドロスタ−5,16−ジエンの代謝物質の検出)
(試験システム)
3β−ヒドロキシ−17(1H−ベンズイミダゾル1−イル)アンドロスタ−5,16−ジエンを、プールされたラットの、イヌの、サルの、およびヒトの肝臓ミクロソームと共に0.6mg/mLのタンパク質濃度でインキュベートする。インキュベーションの混合物は0.1Mのリン酸カリウム緩衝液pH7.4またはインキュベーション緩衝液のいずれかを含んでいる。インキュベーションの混合物の〜37℃での事前の2分間のインキュベーションに続いて、その反応を、NADPH生成システム(NADPH−GS)(1mMのNADP+、5mMのグルコース−6−リン酸、1.0単位/mLのグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ)、または0.1Mのリン酸緩衝液を加えることによって開始させる。適切な時点(0、15、30、60および120分)で、反応を適切な停止液(アセトニトリル中の0.1%の蟻酸)を加えることよって停止させる。サンプルを20℃で10分間およそ10000xgで遠心分離にかける。各々のサンプルからの上清の量を分析用の予め標識化されたHPLCバイアルに移す。残りの親化合物またはあり得る代謝物質の形成をモニタリングするために、サンプルをLC/MSによって分析する。各々の場合において、TOK−001を含んでいるがミクロソームを含まない空サンプルが含まれている。
【0198】
(結果)
3β−ヒドロキシ−17(1H−ベンズイミダゾル1−イル)アンドロスタ−5,16−ジエンのLC/MSは389のm/zを示す。すべての種類において、肝臓ミクロソームによる3β−ヒドロキシ−17(1H−ベンズイミダゾル1−イル)アンドロスタ−5,16−ジエンの枯渇は、陰性対照と比較して、m/z405と421の新しいピークの形成に相互に関連し、このことは推定上の代謝物質(例えば、モノおよびジヒドロキシル化)を示す。
【0199】
(実施例9:HPLC−MS/MSによる代謝物質の化学構造の確認)
血漿中の親化合物:
【0200】
【化28】

【0201】
の定量化のためのHPLC−MS/MSの方法を導入し、非ヒトの霊長類の血漿サンプル中のあり得る代謝物質ピークのベースライン分離を提供するために最適化した。勾配の変化と共に、移動相と安定相のいくつかの組み合わせを評価した。改善された分離は、変化した勾配でACE 5 C18安定相を用いて得られた。
【0202】
最適化された方法は、その方法のためになされた変更が、親の定量化のためのその性能に悪影響を与えないということを確かめるために与えられた(qualify)。最適化された方法は、0.5−500ng/mLの親の範囲にわたって線形であると結論付けられた。直線領域にわたって18の基準のうちの合計18が、それらの名目上の濃度の±15%以内までは逆算の許容可能な基準に合致し、各2回の抽出に関してその15%未満のCVを有した。
【0203】
イヌとサルにおける研究からの保持されたインビボの血漿サンプルを、確認した方法に従って抽出し、フルスキャン様式で分析した。いくつかの種は、親に関して質量変化を伴うと同定され、このことは、前に観察されたインビボの変化に対応した。
【0204】
質量分析計への直接の注入によって、親化合物に関して、明らかな切断パターンを得た。分析希釈剤およびヒト血漿の両方中に調製された、漸減する濃度のサンプルを分析し、どの濃度で、観察された切断パターンを背景雑音と識別することができるかを決定した。
【0205】
希釈剤中に0.417ng/mLの親、および血漿中に5−10ng/mLの親を含むサンプルに関して、明らかなパターンを得た。
【0206】
親のあり得る代謝物質の9つの真正の基準の分析によって、真正の基準のうちの2つ(Std.5およびStd.7)は、インビボの研究からのサンプルにおいて観察された、2つの代謝物質のピークのうちの1つと共に共溶出したことが測定された。9つの真正の基準のいずれも、別の観察された代謝物質ピークと一致しなかった。
【0207】
インビボの研究の間、さらなるピークが、親化合物を伴って溶出し、または親化合物と共にほとんど共溶出したことが観察された。これらのさらなるピークは、同じ質量推移(389m/z〜195m/z)を用いて複数の反応モニタリング(MRM)によって得られ、このことは、分析物のピーク以外のピークは、1以上の二重結合移動及び/又は第2の水酸基のエピマー化または移動によって生成された親の異性体である可能性が高いということを示す。親のあり得る異性体の代謝物質を確認し、分析実験においてコンパレーターの基準として使用するために合成した。そのような実験においては、正確で再現可能な定量化のために、親とさらなるピークとの間の十分な分離が必要であった。
【0208】
(HPLC−MS/MSの生物分析方法の最適化)
親の定量化のための最初のHPLC−MS/MSの方法は、HPLC−MS/MSのプラットフォームに導入された。従来の研究からのイヌとサルの血漿サンプルを、確認された方法に従って抽出し、もとのクロマトグラフィーを再現するために分析した。サンプルのクロマトグラムを図26および27に示す。
【0209】
様々な分析カラムをスクリーングし、抽出したイヌおよびサルの血漿サンプルを分析し、移動相:水中の0.1%のギ酸およびアセトニトリル中の0.1%のギ酸、で試験した。ピークの形状、ピーク面積およびピーク対称性のパラメーターを、カラムの選択の際に評価した。以下の表に、試験したカラムと観察されたクロマトグラフィーの短いコメントを示す。
【0210】
【表1】

【0211】
最も有望な結果が、ACE 5 C18(p/n ACE−121−0502)カラムを用いて得られた。さらなる移動相を、観察されたピーク間の分離を改善する際のそれらの有効性に関して評価した。さらなる移動相は:
・水中の0.1%のギ酸およびメタノール(MeOH)中の0.1%のギ酸;および
・2mMの酢酸アンモニウム、0.1%のギ酸、95:5のHO:MeOHおよび2mMの酢酸アンモニウム、0.1%のギ酸、5:95のHO:MeOHを含んだ。
【0212】
3組の移動相すべてから同様の結果を得た。確認された方法から変更されたパラメーターの数を最小限にするために、もとの移動相(水中の0.1%のギ酸およびアセトニトリル中の0.1%のギ酸)を、最適化された方法のために選択した。その方法に対する最終的な変更は、観察されたピーク間の分離を改善するために勾配の最適化を含んだ。抽出されたサル血漿サンプルに関して、最適化された方法論を用いて得られたサンプルのクロマトグラムを、図28に示す。
【0213】
以下に、要約されたヒト血漿中の親の定量化のための最適化されたHPLC−MS/MSの生物分析方法を示した。
【0214】
【表2】

【0215】
0.5−1,000ng/mLの範囲にわたって較正基準を準備し、下記に述べるように2通り(in duplicate)抽出した。
【0216】
【表3】

【0217】
較正基準の抽出の結果を以下に示す。較正曲線を図29に示す。
【0218】
【表4】

【0219】
最適化された方法は、親の0.5−500ng/mLの範囲にわたり線形であることが測定された。直線領域にわたって18の基準のうちの合計18が、それらの名目上の濃度の±15%以内までは逆算の許容可能な基準に合致し、各2回の抽出に関してその15%未満のCVを有した。定量化の下限(LLOQ)および定量化の上限(ULOQ)で準備された基準の両方の組は、その指定された許容基準を満たした。
【0220】
ブランク血漿(blank plasma)の抽出は一貫した親シグナルを示した。抽出されたブランク血漿のおよそ20のインジェクションの平均シグナルは、およそ0.05ng/mLの計算された濃度に対応し、それは、定量の下限の10%を表わした(0.5ng/mL)。このブランクシグナル(blank signal)は、ヒト血漿中の親の定量化に影響を与えなかった。
【0221】
最適化されたHPLC−MS/MSの生物分析の方法は、フルスキャン様式におけるデータを集めるために変更され、従来の研究からの血漿サンプルを抽出し、分析した。有望な代謝物質の予想されたm/zは、親からの質量変化に関するフルスキャンデータから抽出した。それらのそれぞれの持続時間に加えて、同定されたあり得る代謝物質を、イヌとサルの血漿サンプルに関して以下に列挙する。アスタリスクの印のあるエントリーは、あり得る代謝物質が恐らく同様のm/zを有する異なる種類からの同位体の分布による場合を表わす。これらの場合は、2単位のみしか異ならないm/z値を有する種の共溶出および各々のピークに相当するピーク強度に基づいて確認された。
【0222】
【表5】

【0223】
【表6】

【0224】
分析方法の希釈剤中に準備された親の溶液を、直接質量分析計に注入することによって、親薬物の明らかな切断パターンを得、そのパターンを図30に示す。
【0225】
一連の親の基準を分析方法の希釈剤中で準備し、切断パターンを得るために生成物イオン走査方式で分析した。背景雑音とそのパターンを識別することができる最も低い濃度は、分析方法の希釈剤中で調製した親のおよそ0.42ng/mLであることが測定された。この切断パターンを図31に示す。
【0226】
次に、親を血漿へスパイクし(spike)、確認された方法に従って抽出を行った。漸減された濃度の結果として生ずるサンプルを、指定された切断パターンの存在に関して保持されたインビボの研究サンプルを分析することが実現可能か否かを測定した。背景雑音と切断パターンを識別することができるかもしれない最も低い濃度の血漿サンプルは、血漿中の親の5−10ng/mLの範囲であることが測定された。2つの濃度に対する切断パターンを図32および33に示す。確認されたパターンは、5ng/mLのサンプルに関して観察された(図32)が;しかしながら、インビボのサンプルに適用された時、低いシグナル強度は制限因子になり得る。
【0227】
あり得る代謝物質の真正の9つの基準を方法の希釈剤において準備し、最適化されたHPLC−MS/MSの方法によって分析した。抽出されたカニクイザル血漿に対する可能な代謝物質および比較の要約は、以下に提供される。抽出された血漿サンプルのクロマトグラム、および観察されたピークを備えた9つの真正の基準の6つのクロマトグラムを、図34−40に示す。9つの真正の基準のうちの3つ、Std.4、Std.8およびStd.9は、391→195のMRMにおいて方法クロマトグラフィーにおいて観察されず、一方、2つの他の基準、Std.1およびStd.6は、391→195のMRMで小さなピークのみを有した。これらの5つの基準は注入され、Std.4、Std.6、Std.8およびStd.9は、親化合物の質量より2原子質量単位大きな分子イオン質量を有することが測定された。最適化されたMS/MSのパラメーターの下では、m/z 195フラグメントは有意量で生成されなかったが、化合物Std.1は、親化合物の分子量と同じ388原子質量単位の分子量を有することが測定された。親のために最適化されたMS/MSのパラメーターを用いて得られた親化合物およびStd.1の生成物イオンスペクトルの比較を、図41および42に提供する。
【0228】
【表7】

【0229】
真正の基準のどれも、1.7分でサルプルにおいて観察された、初期に溶出する代謝物質のクロマトグラフィーと一致しなかった。
【0230】
真正の代謝物質のうちの2つ、Std.5およびStd.7は、2.7分で後に溶出する代謝物質のクロマトグラフィーと一致した。
【0231】
Std.2の真正の標準が親化合物と共に共溶出する(最も顕著なピーク)ことが観察された。このあり得る代謝物質が血漿サンプルの中にあると、それは現在の方法において親から区別可能ではない。
【0232】
真正の基準、Std.1およびStd.3は、血漿サンプルのクロマトグラフィーでは観察されなかった独特のピークを有していた。親に関して最適化されたMS/MSのパラメーターによって、m/z 195フラグメントは有意量で生成されず(図41および42)、むしろ最も顕著なフラグメントは、m/z 119であったが、Std.1の真正の標準は、388原子質量単位である親の質量と一致する親の質量を有することが観察された。
【0233】
真正の基準Std.4、Std.6、Std.8およびStd.9は、390原子質量単位の親質量、これは親の質量より2原子質量単位大きい、を有することが観察された。Std.6の真正の基準は、著しくより低い反応によってであるが、クロマトグラフ上で、2.7分で、親と共に、および後で溶出する代謝物質と共に共溶出する小さなピークを有することが観察され、このことは、親より2原子質量単位大きな観察された親質量と組み合わせると、これらの2つのピークがStd.6サンプル中の不純物に由来すること示唆する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)の構造、
【化1】

を有する化合物又は式(1)の構造を有する化合物の薬学的に許容可能な塩又はN−オキシドであって、
式中、
(a) ABCD環状構造及び/又は1つ又は両方のメチル基は、独立して、C−C−アルキル、ハロゲン化したC−C−アルキル、C−C−アルケニル、ハロゲン化したC−C−アルケニル、ハロゲン、アミノ、アミノアルキレン、ヒドロキシイミノ、n,n+1−エポキシ、カルボニル(オキソ)、グルクロニド、グルクロン酸塩、O結合硫酸塩、及びヒドロキシから選択された、1以上の置換基によって随意に置換され、
(b) Xは、グルクロニド、グルクロン酸塩、O結合硫酸塩、OH又はOであり、及び、
(c) 点線は、独立して二重結合又は単結合となる各々の出現で引かれ、ここで、前記化合物は、
【化2】

ではなく、及びここで、前記化合物は、被験体への薬物の投与後にインビボで形成されることを特徴とする化合物。
【請求項2】
Xは、OHであることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(1)の構造を有する前記化合物は、
【化3】

【化4】

【化5】

から選択され、式中、Xが、グルクロニド、グルクロン酸塩、又はO結合硫酸塩であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
式(1)の構造を有する前記化合物は、
【化6】

【化7】

【化8】

から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
有効な量の化合物を含む医薬組成物であって、ここで、被験体への前記組成物の投与後に、前記化合物は、式(1)、
【化9】

のその代謝物質又は薬学的に許容可能な塩又はN−オキシドを生成し、
式中、
(a) ABCD環状構造及び/又は1つ又は両方のメチル基は、独立して、C−C−アルキル、ハロゲン化したC−C−アルキル、C−C−アルケニル、ハロゲン化したC−C−アルケニル、ハロゲン、アミノ、アミノアルキレン、ヒドロキシイミノ、n,n+1−エポキシ、カルボニル(オキソ)、グルクロニド、グルクロン酸塩、O結合硫酸塩、及びヒドロキシから選択された、1以上の置換基によって随意に置換され、
(b) Xは、グルクロニド、グルクロン酸塩、O結合硫酸塩、OH又はOであり、及び、
(c) 点線は、独立して二重結合又は単結合となる各々の出現で引かれ、ここで、前記化合物もしくは前記代謝物質も、
【化10】

ではなく、ここで、前記代謝物質は、アンドロゲン受容体媒介性の疾患又は疾病を処置するのに、即ち処置に、有効であることを特徴とする、医薬組成物。
【請求項6】
式(1)の構造を有する前記化合物は、
【化11】

【化12】

【化13】

から選択され、式中、Xが、グルクロニド、グルクロン酸塩、又はO結合硫酸塩であることを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
式(1)の構造を有する前記化合物は、
【化14】

【化15】

【化16】

から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記処置は、アンドロゲン生合成を阻害すること、即ちアンドロゲン生合成の阻害、アンドロゲン受容体シグナル伝達を阻害すること、即ちアンドロゲン受容体シグナル伝達の阻害、又はアンドロゲン受容体感受性を減少させること、即ちアンドロゲン受容体感受性の減少、を含むことを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記アンドロゲン生合成の阻害は、チトクロームC17α−ヒドロキシラーゼ/C17,20−リアーゼ(CYP17)の活性を阻害することを含むことを特徴とする、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記アンドロゲン受容体シグナル伝達の阻害は、テストステロン結合の競合的阻害を含むことを特徴とする、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記アンドロゲン受容体感受性の減少は、細胞内のアンドロゲン受容体タンパク質の含量の減少、及び低レベルのアンドロゲン増殖シグナルによって持続される、細胞の低下した能力を含むことを特徴とする、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記処置は、アンドロゲン生合成を阻害すること、アンドロゲン受容体シグナル伝達を阻害すること、及びアンドロゲン受容体感受性を減少させることを含むことを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記組成物は、非経口的に、静脈内に、筋肉内に、皮内に、皮下に、腹腔内に、経口的に、口腔に、舌下に、粘膜に、直腸に、経皮的に、皮膚に、眼に、又は吸入によって投与されることを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記組成物は、錠剤、カプセル剤、クリーム、ローション剤、油、軟膏、ゲル、ペースト、粉末、懸濁液、エマルション、溶液として投与されることを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記組成物は、カプセル剤として投与されることを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記カプセル剤は、粉末としての化合物を含むことを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記粉末は、微粉化されることを特徴とする、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記カプセル剤は、約50mgから約500mgまでの化合物を含むことを特徴とする、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記カプセル剤は、1日当たり、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10回、患者に投与されることを特徴とする、請求項15乃至18のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記カプセル剤は、前立腺癌の処置のために患者に投与されることを特徴とする、請求項15乃至18のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記カプセル剤は、去勢抵抗性前立腺癌の処置のために患者に投与されることを特徴とする、請求項15乃至18のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記組成物は、1以上の薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記賦形剤は、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、界面活性剤、流動促進剤、結合剤、砂糖、スターチ、ニス、又はワックスを含むことを特徴とする、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記有効な量の化合物は、薬学的に許容可能な塩、N−オキシド、プロドラッグ、結晶多形体、又は溶媒和物を含むことを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記アンドロゲン受容体媒介性の疾患又は疾病は、前立腺癌、良性前立腺肥大症、多毛症、脱毛症、神経性食欲不振、乳癌、及び男性性腺機能低下症から成る群から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記アンドロゲン受容体媒介性の疾患又は疾病は、前立腺癌であることを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記前立腺癌は、去勢抵抗性前立腺癌であることを特徴とする、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
アンドロゲン受容体媒介性の疾患又は疾病を処置する方法であって、該方法は、アンドロゲン生合成を阻害し、アンドロゲン受容体シグナル伝達を阻害し、及びアンドロゲン受容体感受性を減少させるために、治療上有効な量の化合物又はその薬学的に許容可能な塩又はN−オキシドを、それを必要とする患者に投与する工程を含み、ここで、前記化合物は、被験体への前記化合物の投与後に、その代謝物質又は薬学的に許容可能な塩又はN−オキシドを生成し、ここで、前記代謝物質は、式(1)の構造、
【化17】

を有し、
式中、
(a) ABCD環状構造及び/又は1つ又は両方のメチル基は、独立して、C−C−アルキル、ハロゲン化したC−C−アルキル、C−C−アルケニル、ハロゲン化したC−C−アルケニル、ハロゲン、アミノ、アミノアルキレン、ヒドロキシイミノ、n,n+1−エポキシ、カルボニル(オキソ)、グルクロニド、グルクロン酸塩、O結合硫酸塩、及びヒドロキシから選択された、1以上の置換基によって随意に置換され、
(b) Xは、グルクロニド、グルクロン酸塩、O結合硫酸塩、OH又はOであり、及び、
(c) 点線は、独立して二重結合又は単結合となる各々の出現で引かれ、ここで、前記化合物もしくは前記代謝物質も、
【化18】

ではないことを特徴とする方法。
【請求項29】
前記アンドロゲン受容体媒介性の疾患又は疾病は、前立腺癌、良性前立腺肥大症、多毛症、脱毛症、神経性食欲不振、乳癌、及び男性性腺機能低下症から成る群から選択されることを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記アンドロゲン受容体媒介性の疾患又は疾病は、前立腺癌であることを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記前立腺癌は、去勢抵抗性前立腺癌であることを特徴とする、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
治療上有効な量の第2の物質の投与をさらに含むことを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
式(1)の構造、
【化19】

を有する化合物又は式(1)の構造を有する化合物の薬学的に許容可能な塩又はN−オキシドであって、
式中、
(a) ABCD環状構造及び/又は1つ又は両方のメチル基は、独立して、n,n+1エポキシ、オキソ、ヒドロキシから選択された2つの置換基によって置換され、
(b) Xは、グルクロニド、グルクロン酸塩、O結合硫酸塩、OH又はOであり、及び、
(c) 点線は、独立して二重結合又は単結合となる各々の出現で引かれ、ここで、前記化合物は、
【化20】

ではなく、及びここで、前記化合物は、被験体への薬物の投与後にインビボで形成されることを特徴とする化合物。
【請求項34】
式(1)の構造、
【化21】

を有する化合物又は式(1)の構造を有する化合物の薬学的に許容可能な塩又はN−オキシドであって、
(a) ABCD環状構造及び1つのメチル基は、独立して、n,n+1エポキシ、オキソ、及びヒドロキシから選択された置換基によって置換され、
(b) Xは、グルクロニド、グルクロン酸塩、O結合硫酸塩、OH又はOであり、及び、
(c) 点線は、独立して二重結合又は単結合となる各々の出現で引かれ、ここで、化合物は、
【化22】

ではなく、及びここで、前記化合物は、被験体への薬物の投与後にインビボで形成されることを特徴とする化合物。

【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−510856(P2013−510856A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538889(P2012−538889)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/055996
【国際公開番号】WO2011/059969
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(511187720)トーカイ ファーマシューティカルズ,インク. (3)
【Fターム(参考)】