説明

唾液分泌を補助するシアル酸

本発明は、一般に、低下した唾液分泌に関連づけられる障害、並びにかかる障害を治療する又は予防するために用いることができる組成物の分野に関する。本発明の一実施形態は、低下した唾液分泌に関連づけられる障害を治療する及び/又は予防するためのシアル酸を含む組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、一般に、低下した(imapaired)唾液分泌に関連づけられる障害、並びにかかる障害を治療する又は防止するために用いることができる組成物の分野に関する。本発明の一実施形態は、低下した唾液分泌に関連づけられる障害を治療する及び/又は予防するためのシアル酸を含む組成物に関する。
【0002】
多くの人は良好な健康状態で老齢期まで生きる。しかし、多くの機能的及び構造的変化が老化中に体で起こり、すべての人がその変化に容易に対応できるわけではない。個体間の差の理由は多種多様であり、それには遺伝子型、栄養及び行動が含まれる。
【0003】
老化は、ニューロンの機能的変化並びに中枢及び末梢神経系の進行性のニューロン喪失を伴う。
【0004】
年齢にしばしば関連する典型的な状態は、唾液分泌の欠乏と関連づけられる口内乾燥感である。
【0005】
このような口内乾燥感は、嚥下困難を伴うことがあり、この嚥下困難は、人に良好な健康状態を持続させるために十分な量で普通の食品を消費する意欲をさらに減じる。
【0006】
したがって、当技術分野で、低下した唾液分泌に関連する問題を処理する又は防止するために用いることができる組成物の必要性がある。
【0007】
本発明者らは、この必要性に取り組んできた。
【0008】
したがって、本発明の目的は、誰もが利用可能であり、望まれない副作用のリスクなしに投与することができ、安価で、特に高齢者の唾液分泌を改善するために用いることができる組成物を当技術分野に提供することである。
【0009】
この目的は、独立請求項の主題によって達成された。従属請求項は本発明をさらに展開する。
【0010】
シアル酸(SiAc)は、ノイラミン酸(NeuAc)に由来する荷電した9炭素単糖類ファミリーである。NeuAcは、普通ならヒトにおいて形成される唯一のシアル酸である。他の脊椎動物では、例えば、N−グリコリルノイラミン酸(NeuGc)も存在する。
【0011】
今日、シアル酸は、乳幼児栄養の分野でしばしば用いられる。例えば、乳幼児の認知発達におけるSiAcのあり得る関与について、Wang(Wang,B.and Brand−Miller,J.(2003)Eur.J.Clin.Nutr.Nov;57巻(11号):1351〜69頁)がまとめた。簡単にいうと、母乳で育てた乳幼児と調製粉乳で育てた乳幼児を比較する研究では、普通の乳幼児用の調製粉乳に比べて母乳の高いNeuAc含有量は、乳幼児の唾液及び脳のNeuAc含有量の増加と相関することが実証される。しかし、ヒトにおけるNeuAc補充の、行動への効果は得られていない。しかしながら、NeuAcを牛乳に補充すると、ヒトの乳の属性を牛乳に与え、それらは小児の脳の発達に影響を与え得ると推測される。
【0012】
SiAc、例えばNeuAcに富む天然資源は、例えば、人乳、ゾウの乳、インド水牛の乳、食肉、卵及び魚である。
【0013】
本発明者らは、シアル酸を高齢ラットに投与した。高齢動物は、若年動物に比べて唾液分泌が少ないことを示した。驚くべきことに、シアル酸の摂餌によって、若年動物において見出される唾液分泌に等しい唾液分泌の刺激の増加をもたらす。
【0014】
したがって、本発明の一実施形態は、低下した唾液分泌に関連づけられる障害を治療する及び/又は予防するためのシアル酸を含む組成物である。
【0015】
低下した唾液分泌に関連づけられる障害は、嚥下障害、口腔乾燥症及びそれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0016】
嚥下障害は、嚥下のための口内準備又は物質を口から胃に移動することの困難を特徴とする嚥下における障害である。これはまた、口内で食物を位置づける際の問題が含まれている。嚥下障害は、神経又は筋肉の制御の問題による。嚥下障害は、例えば、脳卒中及び頭部/頚部癌治療後によく見られる。嚥下障害は栄養及び水分補給を損ない、誤嚥性肺炎及び脱水症をもたらし得る。
【0017】
口腔乾燥症は、唾液分泌機能の低下による口内乾燥感についての医学用語である。慢性口内乾燥は不快となり得、重篤な健康問題をもたらす。口内乾燥は、味覚、咀嚼、嚥下、及び会話の困難を引き起こす恐れがある。未治療の状態であれば、重症口内乾燥は、虫歯及びカンジダなどの口の感染のレベルを増加させ得る。
【0018】
シアル酸の好ましい形態は、N−アセチルノイラミン酸である。
【0019】
N−アセチルノイラミン酸は、以下の同義語及び略語を有する。すなわち、o−シアル酸;5−アセトアミド−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクト−2−ノヌロソン酸;5−アセトアミド−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクトノヌロソン酸;アセノイラミン酸;N−アセチル−ノイラミナート;N−アセチルノイラミン酸;NANA、及びNeu5Acである。
【0020】
成分及び/又は組成物がシアル酸で富化されていることが好ましい可能性がある。
【0021】
本発明の一実施形態は、低下した唾液分泌に関連づけられる障害を治療する又は予防するための、トレオニンに富むペプチド/タンパク質主鎖に結合しているN−アセチルノイラミン酸を含むタンパク質画分を含む組成物である。
【0022】
トレオニンに富むとは、トレオニン含有量がヒトのタンパク質質量における平均トレオニン存在量よりも高いことを意味する。例えば、トレオニン含有量は、ヒトのタンパク質質量における平均トレオニン存在量に比べて少なくとも10%増加し得る。
【0023】
したがって、トレオニンは、タンパク質分画中のアミノ酸の少なくとも6.3モル%を占め得る。
【0024】
例えば、トレオニンは、アミノ酸総数の約8〜22%の量で存在し得る。
【0025】
タンパク質分画は約7〜25質量%のN−アセチルノイラミン酸をさらに含むことができる。
【0026】
N−アセチルノイラミン酸は、グリカン結合形態で提供することができる。例えば、N−アセチルノイラミン酸は、糖タンパク質及び/又はプロテオグリカンに結合した形態で提供することができる。
【0027】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、タンパク質分画は、トレオニンに富むペプチド/タンパク質主鎖(アミノ酸の総数の8〜22%)及び7〜25質量%のNeuAc含有量を特徴とするN−アセチルノイラミン酸(NeuAc)を含む。
【0028】
N−アセチルノイラミン酸は、オリゴ糖成分の形態、例えば、一般式RSac[式中、Rはアミノ酸残基であり、Sacは、N−アセチルノイラミン酸、N−アセチルガラクトサミン及びガラクトースを含む群から選択される単糖であり、nは1〜10の値を有し、ただし、nが1の値を有する場合、Rはトレオニン残基又はセリン残基であり、nが2〜10の値を有する場合、ペプチドは少なくとも1種のトレオニン又はセリン残基を含み、mは2〜4の値を有する]の、かつ、成分の少なくとも15モル%はN−アセチルノイラミン酸である、グリコシル化されたアミノ酸及びペプチドを含むオリゴ糖成分の形態で提供することができる。
【0029】
好ましくは、nは1〜3の値を有し、mは3又は4の値を有する。
【0030】
この成分は、トレオニン又はセリンのヒドロキシル基に結合している糖鎖の一部として少なくとも15モル%のシアル酸を含む。シアル酸は、その鎖の一部を形成することができる又はそれ自体その鎖中の単糖ユニットの置換基になり得る。
【0031】
好ましくは、オリゴ糖成分は以下の単糖を含む。
【表1】

【0032】
オリゴ糖成分は、セリン及びトレオニンの混合物の20〜25モル%を含むことができる。
【0033】
オリゴ糖成分は、以下のグリコシル化されたアミノ酸又はペプチドを含むことができる。
NeuAc−α−2,3−Gal−β−1,3−(NeuAc−α−2,6−)−GalNAc−R
NeuAc−α−2,3−Gal−β−1,3−GalNAc−R
Gal−β−1,3−(NeuAc−α−2,6−)−GalNAc−R
Gal−β−1,3−GalNAc−R
【0034】
本発明のオリゴ糖成分は、エキソプロテアーゼ及びエンドプロテアーゼを一緒に又は順次用いて、遊離のアミノ酸及び鎖長2〜10を有するペプチドの混合物を得、加水分解された混合物を、分子量1000〜2000ダルトンを有する分画を保持するようにナノろ過にかけて、CGMPの加水分解によって生成することができる。
【0035】
CGMP自体は、全乳が酵素レンニンで処理されてカゼインを沈殿させるチーズ製造の副生成物である。この過程において、CGMPは、κカゼインから切断され、乳清タンパク質を含む溶液中に残存する。この生成物は甘味乳清として知られている。CGMPは、当技術分野で知られている任意の過程によって乳清タンパク質から分離することができる。適当な過程は、欧州特許第986312号に記載されている。
【0036】
理論によって縛られるものではないが、本発明者らは、トレオニンに富むペプチド/タンパク質主鎖に結合したN−アセチルノイラミン酸、例えば、グリカンに結合したN−アセチルノイラミン酸を含むタンパク質分画は、以下の推論から、遊離のN−アセチルノイラミン酸と比較して有利であると考える。遊離のN−アセチルノイラミン酸は、非常に高速の「急性の」取り込み及びN−アセチルノイラミン酸の全身的な増加をもたらし、尿へのより高い排出によって循環N−アセチルノイラミン酸レベルの高速の回復を誘発する。トレオニンに富むペプチド/タンパク質主鎖に結合したN−アセチルノイラミン酸を含むタンパク質分画はこれを回避する。例えば、グリカン結合のN−アセチルノイラミン酸は全腸管部に達し、小腸下部及び結腸を含めた腸管全体におけるN−アセチルノイラミン酸のゆっくりとした「慢性の」取り込みをもたらす。
【0037】
この組成物は、高齢者に投与され得る。
【0038】
対象は、対象の出生国における予想される平均寿命の半分を超える場合、好ましくは、対象の出生国における予想される平均寿命の3分の2を超える場合、より好ましくは、対象の出生国における予想される平均寿命の4分の3を超える場合、最も好ましいのは、対象の出生国における予想される平均寿命の5分の4を超える場合、「高齢者」とみなされる。
【0039】
組成物は、ヒト或いは動物、特にペット、愛玩動物及び/又は家畜に投与することができる。
【0040】
本発明の組成物は、栄養組成物、栄養補助食品、飲料、食品添加物又は医薬品となり得る。食品添加物又は医薬品は、例えば、錠剤、カプセル剤、香錠又は液体の形態となり得る。食品添加物又は医薬品は、好ましくは、長期間一定のSiAcの供給を可能にする徐放配合物として提供される。
【0041】
組成物は、好ましくは、粉乳ベースの製品、インスタント飲料、レディ・トゥ・ドリンク(ready−to−drink)配合物、栄養粉末、栄養液体、乳ベースの製品、特にヨーグルト若しくはアイスクリーム、穀物製品、飲料、水、コーヒー、カップチーノ、麦芽飲料、チョコレート味飲料、調理用製品、スープ、局所クリーム剤、坐剤、錠剤、シロップ剤、並びに経皮適用のための配合物からなる群から選択される。
【0042】
乳は、動物又は植物の源から得られる任意の乳となり得、好ましくは、牛乳、人乳、羊乳、山羊乳、馬乳、ラクダの乳、米乳又は豆乳である。
【0043】
乳の代わりに、乳由来タンパク質分画又は初乳をも用いることができる。
【0044】
組成物は、保護親水コロイド(ゴム、タンパク質、加工デンプンなど)、結合剤、皮膜形成剤、封入剤/封入材料、壁材料/外皮材料、マトリックス化合物、コーティング、乳化剤、界面活性剤、可溶化剤(油、脂肪、ワックス、レシチンなど)、吸収剤、担体、充填剤、共化合物、分散化剤、湿潤剤、加工助剤(溶媒)、流動化剤、テイストマスキング剤、増量剤、ゼリー化剤、ゲル形成化剤、酸化防止剤及び抗菌剤をさらに含むことができる。組成物はまた、それだけには限らないが、水、任意の起源のゼラチン、植物ゴム、リグニンスルホナート、タルク、砂糖、デンプン、アラビアゴム、植物油、ポリアルキレングリコール、矯味剤、保存剤、安定剤、乳化剤、緩衝液、滑沢剤、着色料、湿潤剤、充填剤などを含めた、従来の医薬品添加物、補助薬、賦形剤及び希釈剤を含むことができる。さらに、組成物は、USRDAなどの政府機関の勧告に従って、経口又は経腸投与に適した有機若しくは無機担体物質並びにビタミン、鉱物、微量元素及び他の微量栄養素を含むことができる。
【0045】
例えば、組成物は、1日用量当たり以下の微量栄養素の1種又は複数を以下に示す範囲で含むことができる。すなわち、300〜500mgのカルシウム、50〜100mgのマグネシウム、150〜250mgのリン、5〜20mgの鉄、1〜7mgの亜鉛、0.1〜0.3mgの銅、50〜200μgのヨウ素、5〜15μgのセレン、1000〜3000μgのβカロテン、10〜80mgのビタミンC、1〜2mgのビタミンB1、0.5〜1.5mgのビタミンB6、0.5〜2mgのビタミンB2、5〜18mgのナイアシン、0.5〜2.0μgのビタミンB12、100〜800μgの葉酸、30〜70μgのビオチン、1〜5μgのビタミンD、3〜10μgのビタミンEである。
【0046】
本発明の組成物は、タンパク質源、炭水化物源及び/又は脂質源を含むことができる。
【0047】
任意の適当な食物タンパク質は、例えば、動物性タンパク質(乳タンパク質、食肉タンパク質及び卵タンパク質など);植物性タンパク質(大豆タンパク質、小麦タンパク質、米タンパク質、及びエンドウ豆タンパク質など);遊離アミノ酸の混合物;又はそれらの組合せを用いることができる。カゼイン及び乳清などの乳タンパク質及び大豆タンパク質が特に好ましい。タンパク質分画が、タンパク質分画のアミノ酸の総数の約8〜22%の量でトレオニンを含んだとき、本発明の目的のための非常に前向きな結果になった。
【0048】
組成物が脂肪源を含む場合、脂肪源は、より好ましくは、調製物の5%〜40%のエネルギー;例えば、20%〜30%のエネルギーを提供する。DHAは加えてもよい。適当な脂肪プロフィールは、カノーラ油、トウモロコシ油及び高オレイン酸ヒマワリ油の混合物を用いて得ることができる。
【0049】
炭水化物源は、より好ましくは、組成物の40%〜80%のエネルギーを提供することができる。任意の適当な炭水化物は、例えば、スクロース、乳糖、グルコース、果糖、コーンシロップ固形物、マルトデキストリン、及びそれらの混合物を用いることができる。
【0050】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、タンパク質画分は、N−アセチルノイラミン酸(NeuAc)を含み、トレオニンに富むペプチド/タンパク質主鎖(アミノ酸総数の8〜22%)及び7〜25質量%のNeuAc含有量を特徴とする。
【0051】
組成物は、プロバイオティック微生物並びに/或いはフラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ペクチン及び/又はそれらの加水分解物などのプレバイオティックをも含むことができる。
【0052】
組成物がプロバイオティクスを含む場合、プロバイオティクス及びプレバイオティクスの存在が相乗効果を生むため、プレバイオティックは特に好ましい。
【0053】
「プロバイオティック」とは、宿主の健康又は福祉において有益な効果を有する微生物細胞製剤又は微生物細胞の構成物(components)を意味する。(Salminen S、Ouwehand A. Benno Y.ら、「Probiotics:how should they be defined」Trends Food Sci.Technol.1999年:10巻107〜10頁)。
【0054】
すべてのプロバイオティック微生物は、本発明に従って用いることができる。好ましくは、プロバイオティック微生物は、ビフィドバクテリウム属、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属及びサッカロミセス属又はそれらの混合からなる群から選択され、具体的には、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、エンテロコッカス・フェシウム、サッカロマイセス・ブラウディ及びラクトバチルス・ロイテリ又はそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、ラクトバチルス・ジョンソニー(NCC533;CNCM I−1225)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(NCC490;CNCM I−2170)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(NCC2705;CNCM I−2618)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(2818;CNCM I−3446)、ラクトバチルス・パラカゼイ(NCC2461;CNCM I−2116)、ラクトバチルス・ラムノサスGG(ATCC53103)、ラクトバチルス・ラムノサス(NCC4007;CGMCC 1.3724)、エンテロコッカス・フェシウムSF 68(NCIMB101415)、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0055】
「プレバイオティック」とは、腸の中のプロバイオティックの増殖を促進する食品物質を意味する。プレバイオティックは、胃及び/又は腸上部の中で分解せず、又はこれらを摂取する人のGI管で吸収されるが、プレバイオティックは胃腸の微生物叢及び/又はプロバイオティックによって発酵する。プレバイオティクスは、例えば、Glenn R.Gibson and Marcel B.Roberfroid、Dietary Modulation of the Human Colonic Microbiota:Introducing the Concept of Prebiotics、J.Nutr.1995年 125巻:1401〜1412頁によって定義されている。
【0056】
本発明に従って用いることができるプレバイオティクスは、特に制限されず、腸の中のプロバイオティクスの増殖を促進するすべての食品物質を含む。好ましくは、プレバイオティクスは、場合によって果糖、ガラクトース、マンノースを含むオリゴ糖;食物繊維、特に、可溶性繊維、大豆繊維;イヌリン;又はそれらの混合物からなる群から選択することができる。好ましいプレバイオティクスは、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖、グリコシルスクロース(glycosylsucrose)、ラクトスクロース、ラクツロース、パラチノーゼ−オリゴ糖、マルトオリゴ糖、ゴム及び/又はそれらの加水分解物、ペクチン及び/又はそれらの加水分解物である。
【0057】
本発明の組成物中のシアル酸の効果は、本質的に用量依存性であることが判明した。少量では効果が小さくなり、大量では多すぎて提供されたすべてのSiAcを体が利用できないようなこともあり得る。提供されるSiAcの厳密な量は、例えば、治療する対象及びその状態に依存する。
【0058】
一般にSiAcはあらゆる量において有益な効果をもたらすが、シアル酸が組成物の乾燥質量1mg〜250mg/gの量で組成物中に存在する場合、特に好ましいということが判明した。
【0059】
シアル酸は、治療する対象体重1kg当たり1mg〜2g、好ましくは体重1kg当たり0.025g〜0.8g/kgの1日量で投与することができる。
【0060】
当業者には、開示された本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載した本発明のすべての特徴を自由に組み合わせることができることが理解されよう。特に、本発明の使用のために記載した特徴は、本発明の組成物に適用することができ、逆の場合もあり得る。
【0061】
本発明のさらなる利点及び特徴は、以下の実施例及び図から明らかである。
【実施例】
【0062】
若年成体(3カ月)及び老齢ラット(24カ月)を、食餌100g当たり0.15gの濃度でシアル酸を含む半合成の食餌(対照)又は食餌100g当たり0.9gの最終濃度までシアル酸をさらに補充した半合成の食餌(Sia)を摂餌させた。
【0063】
実験的食餌の3週間後にコリン作動性ニューロンのニューロン活性を評価した。この最後に、ラットにピロカルピン(IP、24カ月ラットの体重1kg当たり1.5mg及び3カ月ラットの体重1kg当たり2mg)を注射した。ピロカルピンは、コリン作動性ニューロンに作用するムスカリン性アゴニストであり、唾液分泌をもたらす。したがって、唾液収集の刺激はクロノメーターで時間を計った。約7分後、収集を停止した。
【0064】
図1及び2に示すように、老齢動物は、若年動物に比べて唾液分泌の刺激が少ないことを示した。シアル酸を摂餌の際、老齢動物は、若年動物と類似の唾液分泌の刺激の値になった。これは、シアル酸の摂餌が年齢と共に低下したコリン作動性ニューロン機能の機能的回復を助けたことを示している。
【0065】
ここでなされた観察は、本来の唾液分泌が栄養手法によってシアル酸を提供することにより老齢動物において回復することを示している。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】高齢ラットは、若年成体ラットと比べたとき時間当たりの唾液産生の刺激によって測定されたコリン作動性ニューロン活性が少ないことを示すが、シアル酸に富む食事を摂餌させた際にニューロン活性の有意な増加を示すことを証明する図である。平均値及び平均値の標準誤差を示す。N=9〜10;は、t検定によって、対照の食餌において3カ月と24カ月を比較したp=0.0035及び24カ月の対照とSiaによる食餌を比較したp=0.0024で有意差を示す。
【図2】3週間対照の食餌(白棒)又はNeuAcで富化された食餌(黒棒)を摂餌させた若年成体(3カ月)及び老齢期(24カ月)ラットにおけるピロカルピンによって刺激された唾液分泌を再び示す図である。平均値及びSDを示す(N=8〜10)。2方向ANOVAでは、有意な年齢(p=0.0364)及び治療(p=0.0037)効果及びほぼ有意な相互作用(p=0.0550)効果を示した。NeuAcを摂餌すると、若年成体ラットよりもはるかに効率的に老齢ラットにおいて唾液分泌の刺激が増加したことに留意されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低下した唾液分泌に関連づけられる障害を治療する及び/又は予防するためのシアル酸を含む組成物。
【請求項2】
シアル酸がN−アセチルノイラミン酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
シアル酸がトレオニンに富むペプチド/タンパク質主鎖に結合している、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
約7〜25質量%のシアル酸及びアミノ酸総数の約8〜22%の量のトレオニンを含むタンパク質分画を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
シアル酸が、一般式RSac[式中、Rはアミノ酸残基であり、Sacは、N−アセチルノイラミン酸、N−アセチルガラクトサミン及びガラクトースを含む群から選択される単糖であり、nは1〜10の値を有し、ただし、nが1の値を有する場合、Rはトレオニン残基又はセリン残基であり、nが2〜10の値を有する場合、ペプチドは少なくとも1つのトレオニン又はセリン残基を含み、mは2〜4の値を有する]の、グリコシル化されたアミノ酸及びペプチドを含むオリゴ糖成分として提供され、前記成分の少なくとも15モル%がN−アセチルノイラミン酸である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
低下した唾液分泌に関連づけられる障害が嚥下障害、口腔乾燥症及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
医薬組成物、食品、食品添加物又は栄養補助食品である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
抗酸化植物抽出物、ビタミン又は微量栄養素などのニューロン保護剤;並びに/或いはプロバイオティック微生物及び/又はプレバイオティック、好ましくはフラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ペクチン及び/又はそれらの加水分解物をさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
シアル酸が組成物の乾燥質量1g当たり1mg〜250mgの量で組成物中に存在する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
対象の体重1kg当たり1mg〜2gの1日量でシアル酸が投与される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
粉乳ベースの製品、インスタント飲料、レディ・トゥ・ドリンク配合物、栄養粉末、栄養液体、乳ベースの製品、特にヨーグルト若しくはアイスクリーム、穀物製品、ビスケット、シリアルバー、飲料、水、コーヒー、カップチーノ、茶、フルーツジュース、麦芽飲料、チョコレート味飲料、調理用製品、スープ、菓子製品、チョコレート、局所クリーム剤、坐剤、錠剤、シロップ剤、経皮適用のための配合物からなる群から選択される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−519896(P2011−519896A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507909(P2011−507909)
【出願日】平成21年5月6日(2009.5.6)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055461
【国際公開番号】WO2009/135867
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】