説明

器具傾斜装置

【課題】騒音を十分に軽減する等の性質を有しつつ、排油等のメンテナンスを容易に行わせることのできる、改良されたキャビネットを提供する。
【解決手段】潤滑油を排油するための装置は、真空ポンプ(22)を支持するための支持部(76)を備えるキャビネット(20)と、支持部(76)の下に置かれ、真空ポンプ(22)から排出される潤滑油を保持するくぼみ、及び排油口(61)を備える潤滑油保持受皿(54)と、潤滑油保持受皿(54)に対して相対的に回動可能とされる回転可能部材(90)とを備える。収集された潤滑油は回転可能部材(90)を回動させて、潤滑油保持受皿(54)の方向を変えることにより、受皿(54)の端から排油される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプを収容するキャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
真空ポンプは、実験室環境の中で、分析装置の動作を可能にし、また実験手順を行うために広く使用されている。たとえば、質量分析装置を適切に作動するために強力な真空が必要である。真空ポンプは多くの分析作業、実験作業に必須であるが、真空ポンプはしばしば比較的音が大きく、メンテナンスが大変である。真空ポンプを小さなキャビネットに入れて分離し、周囲の騒音を低減することができるが、このように分離すると過熱する場合がある。また真空ポンプは、ポンプの設定を調節し過剰な潤滑油を除去するメンテナンスが必要とされるが、既存のキャビネットでは、真空ポンプにアクセスして日常のメンテナンスを行うことが難しい場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、真空ポンプを入れる改善されたキャビネットに対するニーズが存在する。より具体的には、騒音を十分に軽減する等の性質を有しつつ、排油等のメンテナンスを容易に行わせることのできる、改良されたキャビネットが必要とされており、本発明は、そのようなキャビネットを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、キャビネット内の潤滑油保持受皿の方向を調節する装置を含む、真空ポンプを保持するキャビネットに関する。キャビネットは真空ポンプを保持するように構成され、潤滑油保持受皿を含む。潤滑油保持受皿は、第1の端、第2の端、真空ポンプから排出される潤滑油を保持するくぼみを備える。回転可能部材は潤滑油保持受皿と係合し、回転可能部材は受皿の第1の端を持ち上げ、収集された潤滑油を受皿の第2の端から排出しやすくする。
【0005】
上の説明は、本発明について以下にそれぞれ開示される実施形態またはすべての実装の手法についての詳細を記述することを意図したものではない。添付の図面及び以下の詳細な説明により、本発明の実施形態を具体的に例示するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の種々の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。ここでいくつかの図面を通じて同様の作用をする要素には同じ参照番号を付す。種々の実施形態を参照することは、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明は、特許請求の範囲によってのみ限定される。さらに、本明細書に示す任意の例は本発明を限定する意図はなく、本発明の例示に過ぎない。
【0007】
次に図1から図7を参照すると、例としての実施形態において、真空ポンプ22を含むキャビネット20が示される。キャビネット20は、真空ポンプ22の動作中ポンプ22を保持し、真空ポンプ22の温度上昇を防ぐように維持しながら真空ポンプへの比較的容易なアクセスを可能にし、真空ポンプが生成する周囲の騒音を低減するために適している。たとえば、真空ポンプ22は、質量分析装置、凍結乾燥装置、真空オーブンの中で使用できる。キャビネット20は実質的に真空ポンプを囲む。キャビネット20は、第1の側壁24、上面26、第2の側壁28を含む。上面26は縁25に沿って第1の側壁24に結合され、縁27に沿って第2の側壁28に結合される。一部の実施形態では、上面26と側壁24、28は、一片の曲板金などの単一の材料から一体として形成される。しかし他の実装では、上面26と側壁24、28は別々に形成され、ついで縁25、27に沿って結合される。
【0008】
上面26、側壁24、28は、真空ポンプを入れる内部空間またはエンクロージャを画定する。さらに、キャビネット20はキャビネット20の相対する端に配置される前面36と後面40とを含む。前面36は、キャビネット内に入れられた真空ポンプの前面に開口部を提供するドア38を含んでいてもよい。キャビネット20は、第1の壁24、上面26、第2の壁28の少なくとも一部を形成する1つまたは複数のアクセスパネルを取り外すことにより、キャビネット20への追加のアクセスが容易に得られるように構成される。第1のアクセスパネル32は、第1の壁24の一部と上面26の一部を形成する。第2のアクセスパネル34は、第2の壁28の一部と上面26を形成する。
【0009】
図示された実施形態のキャビネット20は、第1のアクセスパネル32と第2のアクセスパネル34が各々、ねじ52を緩めるか、アクセスパネル32または34をキャビネット20から持ち上げるなどによってキャビネット20から容易に取り外すことができるように構成される。第1と第2のアクセスパネル32と34を取り外すことにより、キャビネット20の内部への、特にキャビネット20の中の真空ポンプへのアクセスが可能となる。
【0010】
図2は、図1に示すキャビネット20の簡単な上面図であり、描かれた実施形態の第1のアクセスパネル32と第2のアクセスパネル34の相対的な位置を示す。また図2は、第1と第2のアクセスパネル32と34の縁に沿って形成される2つのポート50を示す。これらのポート50により、必要に応じてホースと真空配置がキャビネット20の中に延びることができ、また、真空ポンプの一部がキャビネット20から外に延びることができる。一部の実施形態ではキャビネット20が含むポートは1つだけであるが、別の実施形態ではキャビネット20が含むポートは3つ以上である。
【0011】
一部の実施形態では、第1と第2のアクセスパネル32と34は、キャビネット20の上面26の十分な部分を形成し、真空ポンプがキャビネット20から取り出せるように構成される。しかし他の実装では、第1と第2のアクセスパネル32と34を取り外すとキャビネット20内の真空ポンプ全体を取り出すことなくキャビネット20の内部へ必要なアクセスが可能となる。
【0012】
描かれた実施形態は2枚の取り外し可能なアクセスパネル32、34を含む。しかし代替の実施形態では取り外し可能なアクセスパネルは1枚だけであってもよく、または3枚以上の取り外し可能アクセスパネル32と34であってもよい。さらに、図示された実施形態では、上面26と第1の壁24と第2の壁28の各々の一部をカバーするアクセスパネル32と34を示すが、代替の実施形態では、キャビネット20の前面または後面の一部をカバーするアクセスパネルを含む。
【0013】
図1と図2に示すように、第1のアクセスパネル32と第2のアクセスパネル34は縁48に沿って合うようになっている。一部の実装では、第1と第2のアクセスパネル32と34は縁48に沿って重複しているが、他の実装では、アクセスパネル32と34は重複せず互いに接しても良い。アクセスパネル32と24は組み合わされて、真空ポンプの管、パイプ、コードがキャビネット20から外に延びることのできるポート50を形成する。また、排気管または排気フィルタなどの真空ポンプの種々の部分もこれらのポート50を介して延びることができる。示された実施形態における各ポート50の縁は、各アクセスパネル32、34の一部によって形成される。したがってアクセスパネル32と34は、ポート50を介して延びる任意のホース、管、または、他の物品を除去せずに、キャビネット20から持ち上げることができる。
【0014】
本発明の一部の実施形態では、代替のアクセスパネル32と34はポート50の異なる構成を備え、エンクロージャを異なる真空ポンプまたは異なる真空ポンプ構造に対応するようカスタム化することができる。たとえば、より多くのポート50またはより少ないポート50を備えてもよいし、異なる位置のポート50、異なる大きさのポート50を備えてもよい。キャビネットの残りの部分を変更せずに、カスタマイズされたアクセスパネルを選択することにより、キャビネットを特定のポート構成のためにカスタマイズすることができる。
【0015】
取り外し可能なアクセスパネル32、34がカバーする表面積は、実施形態に依存して変わってもよい。一部の実施形態では、取り外し可能なアクセスパネルは、上面26の一部、および、1つまたは複数の側面24、28の一部をカバーする。さらに別の実施形態では、取り外し可能なアクセスパネル32、34は、エンクロージャの上面32と34の一部、後面40の一部をカバーする。さらに、図1から図7に示すキャビネット20はまっすぐな縁に沿って結合された実質的に平らな面を有するが、代替の実施形態には、キャビネット20がカーブ面を有するかおよび/または非直線の縁を有するものも含まれる。
【0016】
図1と図3をさらに参照すると、キャビネット20はドア38を有する前面36を含む。この描かれた実施形態の中で、ドア38はちょうつがい41を中心に回転し、手で締めるねじ42、44によって閉じた位置に維持することができる。しかし、ドア38を開いたり取り外ししたりできるようにするために、ちょうつがい、ラッチ、ファスナなどを含む多くの代替の機構が使用できることを理解されたい。さらに、ドア38を閉じたままにしておくために、ねじ42、44の代わりに、種々の機構、ラッチ、ロック、ファスナを使用することができる。
【0017】
一部の実装では、キャビネット20は、真空ポンプから排出された潤滑油を保持するための取り外し可能な受皿54を備える。油受または潤滑油皿とも呼ばれるこの受皿54は、真空ポンプから排出される潤滑油を保持し、この保持された潤滑油はキャビネット20から定期的に除去することができる。図1の実施形態に描かれたキャビネット20は、複数のホイール56の上に装着される。ホイールによりキャビネット20は異なる位置に容易に動くことができ、実験室のベンチの下など便利な場所に容易に保管することができる。一部の実装では、エンクロージャが意図せずに回転することを防ぐように、ホイール56をロックすることができる。他の実装ではホイールは使用しなくても良い。
【0018】
次に図4を参照すると、キャビネット20の後面40が示される。キャビネット20の後面40は例えば、エンクロージャを電源に接続する接続部35を含んでいてもよい。また後面40は、回転してキャビネットの後部40を前部36に対して持ち上げ、受皿54内に収集された潤滑油が受皿の前面の排油口から流れ出ることができるような旋回スタンド58を含んでいてもよい。
【0019】
一部の実装では、後面40はキャビネット20の内側または外側に冷却空気が流れ、同時に、キャビネット20から漏れる音を制限するように構成される。一つの実施形態では、後面40は、1つまたは複数の冷却ファンが中に配置される1つまたは複数の開口部を含む。1つのファンを使用して、キャビネット20から空気を排出し、またはキャビネット20に空気を入れることができる。別法としては、1つは空気を入れるため、もう1つは空気を排出するための、2つのファンを使用する。さらに別の実装では、2つ以上のファンを使用して空気を入れたり排出したりする。簡単な構成では1つのファンだけを使用し、ファンをキャビネット20の後面40に配置してキャビネット20から空気を排出する。空気が排出されると、キャビネット20の前のドア38周囲の空隙からか、またはキャビネット20の下または受皿54の縁の周囲など、キャビネット20の他の開口部に沿って、追加の空気をキャビネット20に入れることができる。
【0020】
一部の実施形態では、キャビネット20の後面40から出る騒音のボリュームは、キャビネット20の後面40の開口部(複数可)の上にバッフル37を配置することによって限定される。一部の実施形態では、バッフル37は、下の開口部(複数可)をふさぐが、周囲に沿って空隙を有してシート周囲に容易に空気が流れるようになった、実質的に平らな材料のシート(プラスチックまたは金属など)を含む。一部の実装では、空隙はシートの全周囲に位置するが、他の実装では空隙は周囲の一部だけに沿って位置する。他の実装ではバッフルはカーブしているかおよび/または四角形ではない形状を有し、ファン(複数可)の形状をとってもよい。
【0021】
次に図5を参照すると、キャビネット20の種々の部分が側面図で示されている。この中には前面36、後面40、上面26、第2の側面28を含み、第2の側面28は第2のアクセスパネル34の一部を含む。キャビネット20の下の受皿54はキャビネット20の底面のほとんどに沿っているように描かれているが、他の実施形態では受皿54はより小さい。旋回スタンド58は図4には端面図、図5には側面図で示されている。また旋回スタンド58が周囲を回転する旋回ポイント65も示されている。図5では、旋回スタンド58はキャビネット20の後面40から少し離れて収容され、ラッチ99によって保持される。この図では、キャビネット20のすべてのホイール56が地面についており、潤滑油収集受皿54は実質的に水平な方向にあり、潤滑油を収集しやすくしている。この実施形態では、収集受皿は後ろから前に向かって傾斜し、前面で深い井戸になって潤滑油をプールするようになっている。
【0022】
本発明の一部の実施形態では、第1と第2のアクセスパネル32と34は各々独立して取り外すことができるか、または各々を共に取り外すことができる。図6は、第1のアクセスパネル32が取り外された後でキャビネット20の内部が現れているキャビネット20の上面図を示す。図7は、第2のアクセスパネル34が取り外された後でキャビネット20の内部21が現れているキャビネット20の上面図を示す。図6と図7では、2枚のアクセスパネル32と34を交互に取り外すところを示すが、アクセスパネル32と34を同時に取り外すこともできる。
【0023】
図8は、キャビネット20の後面40とバッフル37の別の図を示す。図示されたリップ部70は、キャビネット20の両側および上面26に沿って延びる。また、図8に示すキャビネット20は、2枚の取り外し可能なアクセスパネル32と34を示すが、この実施形態では、アクセスパネル32と34はキャビネット20のいずれかの側ではなく上面26の一部だけをカバーしている。図9は、図5に示すキャビネット20の断面図であり、旋回スタンド58の2つの位置を示し、エンクロージャの後部が持ち上げられ、収集受皿54への排油が可能になる方法を示す。
【0024】
潤滑油を収集受皿54に排出するために、旋回スタンド58を回転してエンクロージャの脚部67をエンクロージャ54の下の床と接触させ、受皿および/またはキャビネット20が旋回スタンド58の脚部69によって部分的に支持されると、受皿54の後部が持ち上げられるようになっている。収集受皿から排出した後、旋回スタンド58を回転して保持位置に戻し、収集受皿54をより水平な位置に戻すことができる。一部の実装では、収集受皿54はレールの上でスライドさせて外に出し、中を空にしてもよい。
【0025】
一部の実施形態では、キャビネット20から出る騒音のボリュームを、キャビネット20の側面24と28と上面26の一部または全部を、キャビネット20の後面40を過ぎて伸ばすことによって制御する。図5は、後面40の面55の位置を破線で示す。図5に示すように、側壁28は、後面40の面55を超えて伸び効果的にリップ部70を作成する拡張部70を有するように作成することができる。リップ部70は線A−A’の間で測定された距離Lだけ後面40の面55を越えて延びる。一部の実装では、キャビネット20の上面、または、第1の側面、第2の側面の少なくとも一部は、少なくとも12.7mm(0.5インチ)の距離Lだけ、キャビネット20の後面40の面55を越えて延びるが、他の実装では、エンクロージャの上面、または、第1の側面、第2の側面の一部は、少なくとも25.4mm(1.0インチ)の距離Lだけキャビネット20の後面が画定する面を超えて延びる。さらに別の実装では、エンクロージャの上面、または、第1の側面、第2の側面の一部は、少なくとも38.1mm(1.5インチ)の距離Lだけキャビネット22の後面が画定する面を超えて延びる。
【0026】
一部の実施形態では、リップ部70はキャビネットの側面と上面の周囲を延びるがキャビネットの底面に沿っては伸びず、動作においてはキャビネットは壁または他の平らな面に対して配置され、リップ部70が壁に緊密に接近するかまたは接触する。これにより、キャビネット20の底部または下部だけがリップ部70を有しないので、キャビネット20の後面40から床に下向きに流れる空気のチャネルが形成される。図5に描かれた実施形態では、リップ部70は側壁28の下の部分に沿っては伸びず、これらの下の部分における空気の流れに対する抵抗を低減すると同時に、キャビネット20を、床に沿ってすそ板またはトリムを有する壁に対して押し付けられるようになっている。
【0027】
一部の実施形態では、キャビネット20はさらに、エンクロージャの内部に防音材を含む。一部の実装では、防音材は発泡剤を含む。別法としては、防音布または防音不織布、または、他の防音材を使用することもできる。発泡剤などの防音材は、キャビネットの線の部分または内部全体に使用することができる。
【0028】
また本発明は、真空ポンプから潤滑油を収集する装置に関する。この装置は真空ポンプから潤滑油を受け取りまた保持するように構成された種々の深さの受皿を備える。種々の深さの受皿は、第1の深さを有する前部と第2の深さを有する後部とを含む。一部の実装では、種々の深さの受皿は、受皿が前部近くで深くなるように水平から傾斜を有する底面を有する。たとえば、種々の深さの受皿は、第2のより深い部分に向かって傾斜する第1の浅い部分を有する。他の実施形態では、種々の深さの受皿は、傾斜した領域によって接続される、複数の実質的に水平な領域を含む。一部の実施形態では、種々の深さの受皿は受皿から収集された潤滑油を排出するように構成された1つの注水口を有し、他の実施形態では、種々の深さの受皿は2つの注水口を有する。
【0029】
種々の深さの受皿54の2つの相対する縁は、真空ポンプを保持するキャビネットの側とスライドして係合するように構成される。一部の実施形態では、種々の深さの受皿54の相対する縁はフレーム71の側面に沿ったレール75にスライドして係合するように構成され、これらの種々の深さの受皿54の相対する縁は、受皿54の縁に沿って延びるリップ部77を備える。次に図10と図11を参照すると、例としてのキャビネットの内部が開示される。図10と図11は、真空ポンプを乗せることのできるフレーム71を示す。図示される実施形態では、フレーム71は、第1のサイドメンバー72と第2のサイドメンバー74、第1のクロスメンバー76と第2のクロスメンバー78を含む。一部の実施形態では、レール75はサイドメンバー72と74の一部を備え、他の実施形態では、サイドメンバー72と74からは独立している。
【0030】
図に示すフレーム71の後面82は、2つの換気開口部84を有する。これは典型的にはエンクロージャ(図示せず)の外側のバッフルによってカバーされている。図では、フレーム71の前面86、ドアまたはカバー38を示す。この実施形態では、ドア38はエンクロージャの前面を完全には密閉せず、周囲の少なくとも一部の周りに空隙88を有する。この空隙88によって、空気はエンクロージャの前を介して通過し、ついでエンクロージャの中で真空ポンプの周囲を流れてから、エンクロージャの後面にある換気開口部84のうち1つまたは両方から外に出る。しかし代替の実施形態では、ドア38はキャビネット20の前面を完全に密封し、これによって改善された防音を提供する。これらの実施形態では、空気は他の場所から流れ込んで冷却を提供する。さらに一部の代替の実施形態では、空気の流れは後面の換気開口部からキャビネットに入り、ついてキャビネットを介して前面から出る。
【0031】
フレーム71の下に潤滑油収集受皿54を配置する。図示された実施形態では、受皿54はキャビネット20の実質的に下側全体をカバーするが、別の実施形態では、受皿はエンクロージャの下側全体より少ない面積をカバーするように構成される。図10と図11に示す受皿はキャビネット20から取り外しできる。受皿54を取り外すことにより掃除がより簡単になり、受皿54の排油も補助されるが、代替の実施形態ではキャビネット20から容易に取り外すことはできない固定受皿54を備える。
【0032】
図10と図11に示す実施形態のように、受皿54が取り外しできる場合、受皿54は典型的には、受皿に収集された潤滑油をこぼさずに除去できるように構成される。従って、実質的に傾けずに取り外せるように全般に構成される。図10と図11に示す実施形態では、キャビネット20のフレーム71の第1と第2のサイドレール72、74に沿ってスライドし、受皿54を水平に保ちながら取り外すことができ、潤滑油がこぼれることを減らすかこぼれなくする。
【0033】
受皿54の別の態様はさらに図12と図13に詳細に示す。図12は、受皿54の例としての実施形態の上面斜視図であり、図13は、受皿54の前部の部分的な底面斜視図である。図に示す受皿54では、受皿の底面55は深いリザーバ部59に流れ込む浅い傾斜部57を有する。浅い傾斜部57は典型的には受皿54の後部近くに位置し、浅い傾斜部57に滴り落ちた潤滑油は、深いリザーバ部59に流れる。リザーバ部59は水平底面、傾斜底面、その他の形状を有していてもよい。浅い傾斜部57は実質的に平らな面として示されているが、代替の構成も可能である。しかし一般に、リザーバ部に向かって傾斜する部分から良好に排出できることが望ましい。一部の実施形態では、受皿はハンドル75を引いてキャビネット20から取り出すことができる。
【0034】
ポンプからなんらかの漏れ(溢出)がある場合、または、ポンプの潤滑油を収集受皿に排出したときに、受皿54の中にたまる潤滑油を定期的に除去することが必要になる。一つの実装構造では、受皿は受皿54の角に位置する2つの排油口61のいずれかから排油する。排油口61は、キャビネット20を支持する任意のホイールを超えて伸び、受皿54に排油している間ホイール上に潤滑油がこぼれることを防ぐように配置される。他の実装構造では、受皿の角のうち1つまたは受皿の前中央位置など、単一の排油口を使用する。さらに別の実施形態では、排油口は備えない。この場合潤滑油は排油プラグ、ポンプ、スクープなどで受皿から除去する。段差のある設計は図12と図13に示す実施形態と同様であるが、傾斜が異なる多数の領域を含む。一部の領域は比較的浅い傾斜を有し、別の領域は比較的急な傾斜を有する。さらに別の実装では、急な傾斜から浅い傾斜への遷移はあまり急ではなく、受皿の後部より前部に向かって全般に深くなる、カーブするかまたはウェーブ状の底となる。
【0035】
図10と図11に示す実施形態では、エンクロージャ内で真空ポンプが動作している間は、ポンプはクロスメンバー76と78の上に配置される。オプションとしては、ポンプはクロスメンバー76と78またはフレーム71の他の部分に、ボルトで固定するか他の方法で固定する。一部の実装では、クロスメンバー76、78と間の領域は開いているが、他の実装では追加の支持部材でカバーする。しかし一般には、潤滑油が真空ポンプから受皿54に容易に流れて収集受皿にすべての漏れ(溢出)が収集されるように、フレーム71の下側には十分な空間がある。典型的には、真空ポンプは受皿54の上に持ち上げられており受皿の上に乗っているわけではなく、真空ポンプを持ち上げたり移動したりすることなく受皿をエンクロージャから取り出すことができる。この設計により潤滑油の中にポンプが入ることも防ぐことができる。図に示した実施形態では、ポンプはクロスメンバーでフレーム上に支持されるが、多くの他の支持設計も可能であることを理解されたい。
【0036】
上述のように、一部の実施形態では、キャビネット20の下側にある受皿54は、受皿54をキャビネット20から取り出し、ついで受皿54の中身を注ぎだすことによって除去することができる。さらに一部の実施形態では、エンクロージャは、受皿54が水平の位置から傾斜位置に容易に傾斜でき、排油口を介して液体が流れ受皿から排油できるように構成される。一部の実施形態では全キャビネット20を傾け受皿54から排油するが、他の実施形態では受皿自体を傾けるか、または受皿と支持要素を傾ける。
【0037】
受皿を排油する補助となる装置の別の実施形態を図14と図15に示す。一つの実装構造では、受皿54はキャビネット20の後端を持ち上げるかまたは受皿54の後端をもちあげて傾け、受皿54の前部で潤滑油を排油口(複数可)から注ぎだす。図14と図15に示すように、キャビネット20の後端は旋回スタンド90を使用して持ち上げることができる。旋回スタンド90は軸92の周囲を回転する。図14に示す第1の位置では、旋回スタンド90は、旋回スタンド90がエンクロージャ20に持ち上げる力を加えない保存位置に収納されている。図15に示す第2の位置では、旋回スタンド90を回転させ、脚部94が床に接触しキャビネットを旋回スタンド90の脚部96上で支持することによりキャビネット20の後部を持ち上げる。一部の実施形態では、旋回スタンド90は受皿自体の相対する縁に固定されるが、他の実施形態では、キャビネット20の相対する縁に固定される。
【0038】
上述の実施形態に即して本発明を説明すると、本発明は、真空ポンプ(22)を支持するための支持部(76)を備えるキャビネット(20)と、支持部(76)の下に置かれ、第1の端、第2の端、真空ポンプ(22)から排出される潤滑油を保持するくぼみ、及び第2の端の近隣に位置する排油口(61)を備え、排油口(61)は、くぼみから連通するようにされた潤滑油保持受皿(54)と、潤滑油保持受皿(54)に対して相対的に回動可能とされ、潤滑油保持受皿(54)を第1の方向に向ける第1の位置、及び潤滑油保持受皿(54)を第2の方向に向ける第2の位置のそれぞれの位置で維持できるようする回転可能部材(90)とを備え、第2の位置にあるとき、第1の端は第2の端より相対的に高くされ、これによって、収集された潤滑油は、受皿(54)の第2の端で潤滑油保持受皿(54)から排出されるよう潤滑油保持受皿(54)の方向を調節できるようにしたことを特徴とする装置を提供する。
【0039】
好ましくは、回転可能部材(90)は、潤滑油保持受皿(54)を介した回転軸を有する。
【0040】
好ましくは、回転可能部材(90)は、脚部が係合するように構成されたレバー(96)を備え、レバー(96)は脚部が係合した時に回転可能部材(90)に回転力を提供するようにする。
【0041】
さらに、本発明は、真空ポンプ(22)を支持するための支持部(76)を備えるキャビネット(20)と、支持部(76)の下に置かれ、第1の端、第2の端、真空ポンプ(22)から排出された潤滑油を保持するくぼみ、及びくぼみとキャビネット(20)の外部とで液体が連通するようにした排油口(61)を備え、排油口(61)は、第2の端に近接した位置にあるようにした潤滑油保持受皿(54)と、潤滑油保持受皿(54)と対して相対的に回動可能とされ、潤滑油保持受皿(54)を所定位置に支持する少なくとも1つの回転可能な脚部(96)を備える回転可能部材(90)とを備え、潤滑油保持受皿(54)の第1の端は、回転可能部材を回動することにより、第1の方向から第2の方向へ向けられ、第2の向きで第2の端より相対的に高い位置に置かれ、これによって、収集された潤滑油が第2の端で潤滑油保持受皿(54)から排出できるよう潤滑油保持受皿(54)の方向を調節できるようにしたことを特徴とする装置を提供する。
【0042】
好ましくは、回転可能部材(90)は、一部に下向きの力を加えることにより、潤滑油保持受皿(54)の第2の端を持ち上げるようにする。
【0043】
好ましくは、回転可能部材(90)は、第1の方向と第2の方向との間で潤滑油保持受皿(54)を動かすために、潤滑油保持受皿(54)を介して軸を中心として回転し、潤滑油保持受皿(54)の下にある面と係合するように構成される。
【0044】
好ましくは、回転可能部材(90)は、潤滑油保持受皿(54)の相対する縁に固定される。
【0045】
好ましくは、回転可能部材(90)は、潤滑油保持受皿(54)を保持するエンクロージャの相対する縁に固定される。
【0046】
好ましくは、回転可能部材(90)は、脚係合レバー(67)を備える。
【0047】
好ましくは、装置は、潤滑油保持受皿(54)の方向が回転可能部材(90)の回転により変わるが、エンクロージャの方向は回転可能部材(90)の回転によって変わらないように構成される。
【0048】
上述の種々の実施形態は説明のために提供されるだけであり、本発明を限定するものと解釈すべきではない。当業者であれば、本明細書において図示され説明された例としての実施形態および用途に従わなくても、添付の特許請求の範囲に示す本発明の範囲から離れることなく、本発明に種々の修正や変更が可能であることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】真空ポンプを保持するためのキャビネットを示す正面斜視図である。
【図2】真空ポンプを保持するためのキャビネットを示す簡単な上面図である。
【図3】真空ポンプを保持するためのキャビネットを示す正面図である。
【図4】真空ポンプを保持するためのキャビネットを示す後面図である。
【図5】真空ポンプを保持するためのキャビネットを示す側面図である。
【図6】第1の側面部分を取り外した、真空ポンプを保持するためのキャビネットを示す簡単な上面図である。
【図7】第2の側面部分を取り外した、真空ポンプを保持するためのキャビネットを示す簡単な上面図である。
【図8】真空ポンプを保持するためのキャビネットを示す後面斜視図である。
【図9】真空ポンプを保持するためのキャビネットを示す側面の断面図である。
【図10】潤滑油を保持するためのフレームの下の受皿を示す、真空ポンプを保持するためのキャビネットのフレームを示す斜視図である。
【図11】潤滑油を保持するためのフレームの下の受皿がフレームから部分的に引き出されているところを示す、真空ポンプを保持するためのキャビネットのフレームを示す斜視図である。
【図12】真空ポンプからの潤滑油を保持するための受皿を示す上面斜視図である。
【図13】真空ポンプからの潤滑油を保持するための受皿の部分底面斜視図である。
【図14】エンクロージャがエンクロージャの一部を持ち上げる装置を含む、真空ポンプを保持するためのキャビネットの部分側面図である。
【図15】エンクロージャがエンクロージャの一部を持ち上げる装置を含む、真空ポンプを保持するためのキャビネットの部分側面図である。
【符号の説明】
【0050】
20 キャビネット
22 真空ポンプ
24 第1の側壁
25 縁
26 上面
27 縁
28 第2の側壁
32 第1のアクセスパネル
34 第2のアクセスパネル
35 連結部
36 前面
37 バッフル
38 ドア
40 後面
42 ねじ
44 ねじ
48 縁
50 ポート
52 ねじ
54 受皿
55 面
56 ホイール
58 旋回スタンド
59 ラッチ
61 排油口
65 旋回ポイント
67 エンクロージャの脚部
69 旋回スタンドの脚部
70 リップ部
71 フレーム
72 サイドメンバー
74 サイドメンバー
75 レール
76 クロスメンバー
78 クロスメンバー
84 換気開口部
86 前面
88 空隙
90 旋回スタンド
92 軸
94 脚部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプを支持するための支持部を備えるキャビネットと、
前記支持部の下に置かれ、第1の端、第2の端、前記真空ポンプから排出される潤滑油を保持するくぼみ、及び前記第2の端の近隣に位置する排油口を備え、該排油口は、前記くぼみから連通するようにされた潤滑油保持受皿と、
該潤滑油保持受皿に対して相対的に回動可能とされ、前記潤滑油保持受皿を第1の方向に向ける第1の位置、及び前記潤滑油保持受皿を第2の方向に向ける第2の位置のそれぞれの位置で維持できるようする回転可能部材とを備え、
前記第2の位置にあるとき、前記第1の端は前記第2の端より相対的に高くされ、これによって、収集された潤滑油は、前記受皿の第2の端で前記潤滑油保持受皿から排出されるよう潤滑油保持受皿の方向を調節できるようにしたことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記回転可能部材は、前記潤滑油保持受皿を介した回転軸を有することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記回転可能部材は、脚部が係合するように構成されたレバーを備え、前記レバーは前記脚部が係合した時に前記回転可能部材に回転力を提供するようにしたことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
真空ポンプを支持するための支持部を備えるキャビネットと、
前記支持部の下に置かれ、第1の端、第2の端、前記真空ポンプから排出された潤滑油を保持するくぼみ、及び該くぼみと前記キャビネットの外部とで液体が連通するようにした排油口を備え、該排油口は、前記第2の端に近接した位置にあるようにした潤滑油保持受皿と、
該潤滑油保持受皿と対して相対的に回動可能とされ、前記潤滑油保持受皿を所定位置に支持する少なくとも1つの回転可能な脚部を備える回転可能部材とを備え、
前記潤滑油保持受皿の前記第1の端は、前記回転可能部材を回動することにより、第1の方向から第2の方向へ向けられ、該第2の向きで前記第2の端より相対的に高い位置に置かれ、これによって、収集された潤滑油が前記第2の端で前記潤滑油保持受皿から排出できるよう潤滑油保持受皿の方向を調節できるようにしたことを特徴とする装置。
【請求項5】
前記回転可能部材は、一部に下向きの力を加えることにより、前記潤滑油保持受皿の前記第2の端を持ち上げるようにしたことを特徴とする、請求項1または4に記載の装置。
【請求項6】
前記回転可能部材は、前記第1の方向と前記第2の方向との間で前記潤滑油保持受皿を動かすために、前記潤滑油保持受皿を介して軸を中心として回転し、前記潤滑油保持受皿の下にある面と係合するように構成されることを特徴とする、請求項1または4に記載の装置。
【請求項7】
前記回転可能部材は、前記潤滑油保持受皿の相対する縁に固定されることを特徴とする、請求項1または4に記載の装置。
【請求項8】
前記回転可能部材は、前記潤滑油保持受皿を保持するエンクロージャの相対する縁に固定されることを特徴とする、請求項1または4に記載の装置。
【請求項9】
前記回転可能部材は、脚係合レバーを備えることを特徴とする、請求項1または4に記載の装置。
【請求項10】
前記装置は、前記潤滑油保持受皿の方向が前記回転可能部材の回転により変わるが、前記エンクロージャの方向は前記回転可能部材の回転によって変わらないように構成されることを特徴とする、請求項8に記載の装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−207582(P2006−207582A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−4182(P2006−4182)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【住所又は居所原語表記】395 Page Mill Road Palo Alto,California U.S.A.
【Fターム(参考)】