説明

噴射ノズルの噴射口先端凹部の細孔放電加工方法および装置

【課題】 噴射ノズルの噴射孔長さの高精度加工が可能な細孔放電加工方法および装置の提供。
【解決手段】 次の工程からなることを特徴とする噴射ノズルの噴射口先端凹部の細孔放電加工方法。1.基準球35との接触を検出して加工電極Dの原点を設定する。2.基準加工物を被加工物クランプ装置に装着し、3.接触検出手段を用いて基準加工物の表面位置の座標を検出し、4.その座標データを記憶する。5.被加工物クランプ装置に被加工物である噴射ノズルを装着し、6.噴射ノズルの加工部の表面位置の座標を検出し、7.工程6で検出した加工部の表面位置のZ軸座標と工程4で記憶したZ軸座標との差を求め、この差に基づいて噴射ノズルの噴射口先端凹部のZ軸加工送り量を補正して放電加工を実施する。8.基準加工物に複数個所の加工部がある場合、その複数個所の加工部に対して前記工程3〜7を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は噴射ノズルの噴射口先端凹部の細孔放電加工方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、内燃機関の燃料噴射ノズルにおいて、噴射孔の長さと口径は燃料の噴射量や噴霧状態等の噴霧特性に大きな影響を及ぼす要因である。したがって、燃料噴射ノズルの噴射孔の長さと口径の加工にはより高い精度が要求されている。
【0003】
燃料噴射ノズルの噴射孔の加工には、ドリル加工も可能ではあるが1mm以下の細径の噴射孔の加工の場合にはドリルの折損や噴射孔端部にバリが発生するなどの問題があり、そのような細径の噴射孔の加工にはドリル加工よりも細孔放電加工機による加工が適している。
【0004】
また、燃料噴射ノズルの先端部には噴射燃料の微粒子化や空気との混合を促進すべく、噴射孔の内径より大きい段付き穴または凹部が設けてある(例えば特許文献1)。
【0005】
このような燃料噴射ノズルの段付き穴または凹部を従来の細孔放電加工機で加工する場合、噴射ノズル先端部の肉厚が変化した場合、段付き穴または凹部の噴射ノズル表面からの深さは一定となるが、段付き穴または凹部下側の噴射孔の長さが変化してしまうという問題がある。
【0006】
図7、8は、上述の燃料噴射ノズル先端部に設けられた段付き穴または凹部の模式的な説明図である。
【0007】
例えば、図7に示す燃料噴射ノズル100の先端部の肉厚がtであり、燃料噴出側には口径Dで深さlの大径の段付き穴101が設けてあり、この段付き穴101の下に口径d(d<D)で長さがLの噴射孔103が燃料噴射ノズル100の内部(図示省略)に連通しているものとする。
【0008】
上述の燃料噴射ノズル100の段付き穴101を従来の細孔放電加工機により加工する場合、燃料噴射ノズル100の燃料噴出側の上面を加工基準面105として加工が行なわれる(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開昭57−158973号公報
【特許文献2】特開平03−221323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の細孔放電加工機により前記燃料噴射ノズル100の段付き穴101を加工する際、図8に示すように燃料噴射ノズル100の先端部の肉厚tがα増減して、肉厚tから、t(=t+α)に増加、または、t(=t−α)に減少した場合、燃料噴出側の上面を加工基準面105として加工が行われるめ、段付き穴101の深さは一定(l=l=l)となるが、小径の噴射孔103の長さは、L(=L+α)>L、または、L(=L−α)<Lとなり、燃料噴射ノズルにおいて燃料噴射量や噴霧特性に大きく影響する噴射孔の長さLを高精度に加工することができない。すなわち、燃料噴射ノズルの噴射孔の加工方向と反対側の内面を基準とする噴射孔の長さLを高精度に加工することができなかった。
【0011】
本発明は上述の如き問題を解決するために成されたものであり、本発明の課題は、噴射孔の出口側に噴射孔の内径より大きい段付き穴または凹部を設けた燃料噴射ノズルの噴射孔の長さを高精度に加工することができる細孔放電加工方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の課題を解決する手段として請求項1に記載の噴射ノズルの噴射口先端凹部の放電加工方法は、次の工程からなることを特徴とするものである。
1.X、Yテーブル上の被加工物クランプ装置に設けたZ軸座標設定用の基準球と電極先端との接触を接触検出手段により検出して電極先端の原点を設定する。
2.噴射ノズルの基準となる基準加工物を前記被加工物クランプ装置に装着する。
3.基準加工物の加工部を加工位置へ移動位置決めし、前記接触検出手段を用いてこの基準加工物の加工部の表面位置の接触位置の座標を検出する。
4.前記工程3で検出した座標データを記憶する。
5.被加工物クランプ装置から基準加工物を取り外して、被加工物である噴射ノズルを装着する。
6.噴射ノズルの加工部を加工位置へ移動位置決めし、前記接触検出手段を用いてこの噴射ノズルの加工部の表面位置の座標を検出する。
7.工程6で検出した加工部の表面位置のZ軸座標と、前記工程4で記憶したZ軸座標との差を求め、この差に基づいて噴射ノズルの噴射口先端凹部のZ軸加工送り量を補正して放電加工を実施する。
8.前記基準加工物に複数個所の加工部がある場合、その複数個所の加工部に対して前記工程3〜7を実行する。
【0013】
請求項2に記載の細穴放電加工方法は、請求項1に記載の細穴放電加工方法において、前記噴射ノズルが燃料噴射ノズルであることを特徴とするものである。
【0014】
請求項3に記載の噴射ノズルの噴射口先端凹部の細孔放電加工装置は、Z軸方向に昇降位置決め自在な加工電極と被加工物クランプ装置に装着された被加工物とをXY軸方向に相対的に移動位置決め自在に設けた細孔放電加工装置において、前記加工物クランプ装置に前記加工電極の先端との接触を接触検出手段により検出して加工電極先端の基準位置である原点を設定するための基準球を設け、前記原点と、前記被加工物クランプ装置に装着された被加工物の加工位置表面とまたは基準加工物の加工位置の表面と前記加工電極とが接触した際に検出した位置座標データとを記憶する接触検出データ記憶手段とを設け、前記被加工物の加工位置表面のZ軸座標と前記基準加工物の表面位置のZ軸座標の差を求める比較演算手段を設け、該比較演算手段で求めた差に基づいて、前記噴射ノズルの噴射口先端凹部のZ軸加工送り量を補正して加工することを特徴とするものである。
【0015】
請求項4に記載の噴射ノズルの噴射口先端凹部の細孔放電加工装置は、請求項3記載の噴射ノズルの噴射口先端凹部の細孔放電加工装置において、前記噴射ノズルが燃料噴射ノズルであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本願発明の噴射ノズルの噴射口先端凹部の細孔放電加工方法および装置によれば、噴射孔の出口側に噴射孔の内径より大きい段付き穴または凹部を設けた燃料噴射ノズルの噴射孔の長さを高精度に加工することができる。
【0017】
また、加工電極先端の基準位置であるZ軸座標と基準加工物の加工部の表面位置のZ軸座標とを予め記憶しておけば被加工物ごとに基準加工物の加工位置の測定が不要となり、加工時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本願発明に係る細穴放電加工装置の正面図。
【図2】本願発明に係る細穴放電加工装置を一部破断した右側面図。
【図3】ターンテーブルに装着される被加工物クランプ装置の説明図。
【図4】ターンテーブルを傾斜させて基準加工物の加工部の座標を測定している図。
【図5】燃料噴射ノズル先端部の段付き穴または凹部の形状例で、図5(a)は、段付き穴が内径が一定の座繰り孔、図5(b)は表面側に開いた漏斗状の凹部を有する例。
【図6】本願発明に係る細穴放電加工装置CNC制御装置の構成の説明図。
【図7】燃料噴射ノズル先端部に設けられた段付き穴または凹部の模式的な説明図である。
【図8】従来の細孔放電加工機により燃料噴射ノズルの段付き穴を加工する場合の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面によって説明する。
【0020】
図1、図2は本発明に係る6軸制御(X,Y,Z,A,B,W)の細穴放電加工装置の一実施の形態を示したものである。
【0021】
図1、図2を参照するに、総括的に示す細穴放電加工装置1の基台3上には、図示省略の駆動手段及びY軸駆動モータMYによりY軸方向に移動位置決め可能なY軸テーブル5が設けてある。
【0022】
前記Y軸テーブル5には受け皿7を一体的に固定して設け、この受け皿7上に絶縁体である石定盤9を設けると共に、この石定盤9上にL字形のブラケット部材11が一体的に設けてある。
【0023】
上述のブラケット部材11上には、電気伝導度の小さい純水などの加工液13を入れるための加工槽15が取り付てあり、この加工槽15内に被加工物の燃料噴射ノズル37を固定するためのチルト可能なのターンテーブル装置17が設けてある(図3、4参照)。
【0024】
上述のターンテーブル装置17は、Z軸(図1の上下方向)に平行な軸心を回転中心とするA軸と、A軸に直交(Y軸に平行)する軸心を回転中心とするB軸(チルト軸)とを備えている。
【0025】
上述のB軸駆動部としてのB軸回転軸19は、前記L字形ブラケット部材11の底部から前記加工槽15の後側(図2において右側)の壁面に沿って上方に延伸するB軸取付部(図示省略)を回転自在に軸支している。このB軸回転軸19は前記加工槽15の後側壁面を貫通して加工槽15内部のほぼ中央部まで延伸させて設けてある。
【0026】
前記B軸回転軸19の左端の上部には、減速機(図示省略)を介して前記ターンテーブル装置17が回転可能に取付けてある。B軸回転軸19の回転駆動は前記加工槽15の外部に設けたB軸駆動モータMBで行われ、またターンテーブル装置17の回転駆動は、B軸回転軸19の軸心に沿って設けた外部に開口しためくら穴23を介してA軸駆動モータMAにより回転駆動ができるように設けてある。
【0027】
前記ターンテーブル装置17の裏面には、環状の通電リング(図示省略)が設けてあり、ターンテーブル装置17はこの通電リングを介して放電電源(図示省略)に接続してある。
【0028】
上記構成において、CNC制御装置61の制御の下にA軸駆動モータMAを適宜に回転駆動させれば、ターンテーブル装置17をA軸中心に適宜な角度回転させることができる。
【0029】
また、同様にB軸駆動モータMBを適宜に正転または逆転駆動させれば、ターンテーブル装置17をB軸を中心に時計方向または反時計方向へチルト(Tilt;傾斜)させることができる。さらに、前記Y軸駆動モータMYを適宜に回転駆動することにより、ターンテーブル装置17をY軸方向の任意の位置に位置決めすることができる。
【0030】
前記加工槽15の後方(図2において右方)の前記基台3上には、図1を前側から見て左右に立設した一対の支柱21(a,b)と、この一対の支柱21(a,b)の上部に水平に懸架した梁部材25cからなる門型フレーム23が設けてある。
【0031】
門型フレームの梁部材25cには、蛇腹27に保護されたX軸ガイドレール(図示省略)が設けてあり、このX軸ガイドレールにX軸駆動モータMXに駆動されるX軸キャリッジ29が前記Y軸に直交するX軸方向に移動位置決め自在に設けてある。
【0032】
前記X軸キャリッジ29には、Z軸駆動モータ(図示省略)によりZ軸(加工軸)の任意の位置に移動位置決め可能なZ軸キャリッジ31が設けてある。
【0033】
なお、前記X軸キャリッジ29はX軸駆動モータMXによりX軸の任意の位置へ位置決め自在である。また、前記Z軸キャリッジ31には、前記X軸キャリッジ29に対して適宜な高さにZ軸キャリッジ31を昇降移動させるW軸モータMWが設けてある。
【0034】
前記Z軸キャリッジ31には、中実または中空の棒状加工電極Dが回転自在に軸支されており、そして、これらの棒状電極Dを回転させるためのモータ(図示省略)が設けてある。また、前記中空の棒状電極、すなわちパイプ電極に対しては、加工液(純水等)を供給する加工液供給手段(図示省略)が設けてある。
【0035】
前記ターンテーブル装置17には、図3に示すような被加工材クランプ装置33が装着してあり、また、この被加工材クランプ装置には、前記加工電極Dの先端の基準位置である原点(X、Y、Z)を設定するための基準球35が設けてある。
【0036】
図3、4に示す如く、上述の被加工材クランプ装置33は、先端の噴射孔の形状が図5a、図5bに示す様な基準加工物37’または燃料噴射ノズル37を装着するためのクランプ機構を有している。燃料噴射ノズル37の先端の段付き孔または凹部の形状には、例えば、図5aに示す円形の座繰り穴101や、図5bに示す様な漏斗状の凹部102など種々の形状がある。なお、基準加工物37’とは、被加工物である前記燃料噴射ノズル37の基準となるように規定の寸法に正確な加工された燃料噴射ノズルである。
【0037】
被加工材クランプ装置33のベース39には、燃料噴射ノズル37または基準加工物37’の基部37aの内径部に嵌合する位置決めピン41と、基部37aの外径部に嵌合する環状部材43とが設けてある。
【0038】
前記環状部材43の上面部には、環状部材43の外径より小径の雄ねじを部を備えたキャップ取付部45が突出するように設けてある。そして、このキャップ取付部45の雄ねじ部に螺合する環状のキャップ47が設けてある。なお、キャップ47の下端部は前記環状部材43の上面部に当接係合自在となっている。
【0039】
上記構成において、燃料噴射ノズル37を被加工材クランプ装置33に装着固定する際には、まず、燃料噴射ノズル37の内径部を前記位置決めピン41に挿入し、キャップ47をキャップ取付部45の雄ねじ部に螺合させることにより装着固定する。この際、キャップ47の内側には前記燃料噴射ノズル37を被加工材クランプ装置33のベース39の方へ押圧付勢するスプリング49が弾装してあるので、燃料噴射ノズル37がベース39の方へ押圧されて確実に固定することができる。
【0040】
なお、前記燃料噴射ノズル37には前記スプリング49に係合する係合段部が形成してある。また、前記被加工材クランプ装置33のベース39と燃料噴射ノズル37との間にはZ軸方向の高さを調整可能な適宜な板厚のリング状のスペーサ51が挿入可能である。
【0041】
再度、図1を参照するに、前記門型フレーム23の支柱21bには、前述の6個の制御軸(X,Y,Z,A,B,W)他を制御可能なCNC制御装置61が設けてある。このCNC制御装置61は、前記X軸駆動モータMX 、Y軸駆動モータMY およびZ軸駆動モータ(図示省略)とを制御して前記加工電極Dを被加工物である燃料噴射ノズル37に対して3次元(X,Y,Z)の位置決めをすることができる。
【0042】
図6に示す示す如く、前述のCNC制御装置61に備わるCPU63のデータバス65には、キーボードなどのデータ入力手段67、LCDなどの表示手段69および加工プログラムメモリ71などが接続してあり、さらに、前記加工電極Dの先端が前記基準球35と、前記燃料噴射ノズル37または基準加工物37’とが接触した際の座標(X,Y,Z,A,B,W)を検出する接触検出手段73が接続されている。
【0043】
また、前記CNC制御装置61には、前記加工電極Dの先端と前記燃料噴射ノズル37または基準加工物37’とが接触した際のZ軸座標を記憶する接触検出データ記憶手段75と、前記被加工物である燃料噴射ノズル37の加工部の表面位置のZ軸座標と前記基準加工物の加工部の表面位置のZ軸座標の差を求める比較演算手段77とが前記CPU63に接続してある。
【0044】
上記構成の噴射ノズルの噴射口先端凹部の細孔放電加工装置1で、例えば内燃機関の燃料噴射ノズル37の噴射口先端の座繰り穴101を加工する場合について説明する。
【0045】
図3に示すように、加工槽15内のターンテーブル装置17上に装着された被加工材クランプ装置33のベース39に立設された位置決めピン41に基準加工物37’を挿入し、前記ベース39に設けた環状部材43の雄ねじ部にキャップ47を螺合することにより基準加工物37’を確実に固定してから、例えば、次の工程で加工する。
【0046】
(1)前記CNC制御装置61の制御の下にX軸駆動モータMXとY軸駆動モータMYを作動させて、被加工材クランプ装置33に設けた基準球35のZ軸方向の軸心と加工電極DのZ軸方向の軸心を一致させると共に、前記Z軸駆動モータを制御して前記加工電極Dを基準球35に接触する位置まで下降させて、この加工電極Dと基準球35の接触を接触検出手段73により検出して加工電極Dの先端の基準位置である原点(X,Y,Z)を設定する。
【0047】
(2)噴射ノズルの37の基準となる基準加工物37’を前記被加工物クランプ装置に装着する。
【0048】
(3)基準加工物37’の加工部を加工位置へ移動位置決めし、前記接触検出手段を用いてこの基準加工物37’の加工部表面の接触位置の座標(X,Y,Z,A,B,W)を検出する。
【0049】
(4)前記基準加工物37’の加工部表面の接触位置座標(X,Y,Z,A,B,W)データを接触検出データ記憶手段75に記憶する。
【0050】
(5)被加工物クランプ装置33から基準加工物37’を取り外して、被加工物である燃料噴射ノズル37を装着する。
【0051】
(6)前記燃料噴射ノズル37の加工部を加工位置へ移動位置決めし、前記接触検出手段を用いてこの噴射ノズルの加工部の表面の位置座標(X,Y,Z,A,B,W)を検出する。
【0052】
(7)検出した噴射ノズルの加工部の表面位置のZ軸座標と、前記基準加工物の加工部の表面位置のZ軸座標との差を求め、この差に基づいて噴射ノズルの噴射口先端凹部のZ軸加工送り量を補正して放電加工を実施する。
【0053】
(8)前記基準加工物に複数個所の加工部がある場合、その複数個所の加工部に対して前記工程(3)〜(7)を実行する。
【0054】
なお、上記構成の噴射ノズルの噴射口先端凹部の細孔放電加工装置1で、例えば内燃機関の燃料噴射ノズル37の噴射口先端の座繰り穴101を加工した場合、この座繰り穴101の加工後に加工電極Dを交換して噴射孔103を加工しても、噴射孔103を先に加工した後に座繰り穴101を加工しても構わない。
【0055】
本願発明の噴射ノズルの噴射口先端凹部の細孔放電加工方法および装置によれば、噴射孔103の出口側に噴射孔103の内径より大きい座繰り穴101または凹部を設けた燃料噴射ノズル37の噴射孔103の長さLを高精度に加工することができる。
【0056】
なお、加工電極Dの交換には本願出願人の出願である特開平8−290332号公報に記載の如き電極交換装置を使用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 細穴放電加工装置
3 基台
5 Y軸テーブル
7 受け皿
9 石定盤
11 ブラケット部材
13 加工液
15 加工槽
17 ターンテーブル装置
19 B軸回転軸
21a、21b 支柱
23 門型フレーム
25 梁部材c
27 蛇腹
29 X軸キャリッジ
31 Z軸キャリッジ
33 被加工材クランプ装置
35 基準球
37 燃料噴射ノズル
37’ 基準加工物
39 ベース
41 位置決めピン
43 環状部材
45 キャップ取付部
47 キャップ
49 スプリング
51 スペーサ
61 CNC制御装置
63 CPU
65 データバス
67 データ入力手段
69 表示手段
71 加工プログラムメモリ
73 接触検出手段
75 接触検出データ記憶手段
77 比較演算手段
100 燃料噴射ノズル
101 座繰り穴
102 漏斗状の凹部
103 噴射孔
105 加工基準面
D 加工電極
、L、L 噴射孔の長さ
MA A軸駆動モータ
MB B軸駆動モータ
MX X軸駆動モータ
MW W軸モータ
、t、t 先端部の肉厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程からなることを特徴とする噴射ノズルの噴射口先端凹部の細孔放電加工方法。
1.X、Yテーブル上の被加工物クランプ装置に設けたZ軸座標設定用の基準球と電極先端との接触を接触検出手段により検出して電極先端の原点を設定する。
2.噴射ノズルの基準となる基準加工物を前記被加工物クランプ装置に装着する。
3.基準加工物の加工部を加工位置へ移動位置決めし、前記接触検出手段を用いてこの基準加工物の加工部の表面位置の接触位置の座標を検出する。
4.前記工程3で検出した座標データを記憶する。
5.被加工物クランプ装置から基準加工物を取り外して、被加工物である噴射ノズルを装着する。
6.噴射ノズルの加工部を加工位置へ移動位置決めし、前記接触検出手段を用いてこの噴射ノズルの加工部の表面位置の座標を検出する。
7.工程6で検出した加工部の表面位置のZ軸座標と、前記工程4で記憶したZ軸座標との差を求め、この差に基づいて噴射ノズルの噴射口先端凹部のZ軸加工送り量を補正して放電加工を実施する。
8.前記基準加工物に複数個所の加工部がある場合、その複数個所の加工部に対して前記工程3〜7を実行する。
【請求項2】
請求項1に記載の噴射ノズルの噴射口先端凹部の細孔放電加工方法において、前記噴射ノズルが燃料噴射ノズルであることを特徴とする噴射ノズルの噴射口先端凹部の細孔放電加工方法。
【請求項3】
Z軸方向に昇降位置決め自在な加工電極と被加工物クランプ装置に装着された被加工物とをXY軸方向に相対的に移動位置決め自在に設けた細孔放電加工装置において、前記加工物クランプ装置に前記加工電極の先端との接触を接触検出手段により検出して加工電極先端の基準位置である原点を設定するための基準球を設け、前記原点と、前記被加工物クランプ装置に装着された被加工物の加工位置表面とまたは基準加工物の加工位置の表面と前記加工電極とが接触した際に検出した位置座標データとを記憶する接触検出データ記憶手段とを設け、前記被加工物の加工位置表面のZ軸座標と前記基準加工物の表面位置のZ軸座標の差を求める比較演算手段を設け、該比較演算手段で求めた差に基づいて、前記噴射ノズルの噴射口先端凹部のZ軸加工送り量を補正して加工することを特徴とする噴射ノズルの噴射口先端凹部の細孔放電加工装置。
【請求項4】
請求項3に記載の噴射ノズルの噴射口先端凹部の細孔放電加工装置において、前記噴射ノズルが燃料噴射ノズルであることを特徴とする噴射ノズルの噴射口先端凹部の細孔放電加工装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate