説明

噴射撹拌工法

【課題】無駄な施工を必要最低限まで減少させることが出来て、しかも、必要な有効断面の厚さ寸法を確保することが出来る噴射撹拌工法の提供。
【解決手段】第1の噴射撹拌手段(40)により複数の面積が比較的大きい領域(L1)に固化材を噴射して撹拌し(大面積の噴射工法)と、第2の噴射撹拌手段(10)により前記面積が比較的大きい領域(L1)と、面積が比較的大きい領域の共通接線(T1、T2)とで包囲された領域(LB)に固化材を噴射して撹拌する(大面積の噴射工法)。後者の領域(LB)における固化材の噴射、撹拌は、前者の領域(L1)における固化材の噴射、撹拌よりも後に行われるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良や液状化防止工法等で用いられる工法であって、地中固結体を造成しようとする領域、或いは、液状化を防止しようとする領域に、固化材を噴射して当該領域の土壌と撹拌する噴射撹拌工法に関する。
【背景技術】
【0002】
係る噴射撹拌工法としては、例えば、噴射装置に設けた撹拌翼先端のノズルから切削流体を噴射して、上下の撹拌翼先端から噴射された噴流を半径方向外方の所定位置で衝突させて交差噴流を構成し、撹拌軸下方の注入口から固化材を噴射し、撹拌軸を回転しながら引き上げることにより、原位置土を切削して、固化材と混合、撹拌する工法が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
施工期間の短縮や施工コスト削減のため、このような噴射撹拌工法を隣接する複数の領域(図19〜図21では2箇所)で行う場合が多い。図19、図20において、噴射撹拌工法を行った領域L1Pは2箇所ずつ施工されている。
そして、噴射撹拌工法を行った2箇所の領域L1P、L1Pは、重複して施工される領域Lsを設けており、強度的な観点から有効断面或いはその厚さ寸法が決定される。図19では有効断面の厚さ寸法は符号D1で示されており、図20では有効断面の厚さ寸法は符号D2で示されている。
【0004】
重複して施工される領域Lsが小さい方が、無駄な施工をする必要がなくなり、固化材の消費量やその他のコストを軽減することが出来る。しかし、図19及び図20を参照すれば明らかな様に、重複して施工される領域Lsが小さいと、有効断面の厚さ寸法が小さくなってしまう。
具体的には、重複して施工される領域Lsは、図19で示す従来技術の方が図20で示す従来技術よりも小さく、コスト節約の点からは良好である。しかし、図19における有効断面の厚さ寸法D1は、明らかに、図20における有効断面の厚さ寸法D2よりも小さい。
すなわち、有効断面の厚さ寸法(D1、D2)を大きくしようとすれば、重複して施工される領域Lsを大きくしなければならず、コスト削減の観点からは好ましくないという問題が存在する。
【0005】
係る問題に対して、例えば図21で示す様に、噴射撹拌工法を行った2箇所の領域L1P、L1Pにおける重複して施工される領域Lsを小さくして、重複して施工される領域Lsの両側の部分において、比較的小面積の領域について、別途、噴射撹拌工法を施工することが考えられる。
図21において、別途、噴射撹拌工法を施工した比較的小面積の領域を符号L3Pで示すと、領域L3Pを施工しない場合の有効断面の厚さ寸法D3に比較して、領域L3Pを施工した場合の有効断面の厚さ寸法D4は、明らかに増加する。
【0006】
しかし、領域L3Pにおいて、ハッチングを付して示す部分は有効断面の増加に全く寄与していない。従って、有効断面の増加という目的に対して、当該ハッチングを付した部分は無駄である。
さらに、領域L3Pと領域L1Pとが重複する部分が存在してしまうので、無駄な施工が増加してしまう。
【特許文献1】特開2001−115446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、無駄な施工を必要最低限まで減少させることが出来て、しかも、必要な有効断面の厚さ寸法を確保することが出来る噴射撹拌工法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の噴射撹拌工法は、面積が比較的大きい領域(大面積の噴射工法を施工した領域:L1、L1A)に第1の噴射撹拌手段(モニタ40)により固化材を噴射して撹拌する第1の工程(大面積の噴射工法)と、第2の噴射撹拌手段(モニタ10)により前記面積が比較的大きい領域(L1)とその(面積が比較的大きい領域L1の)共通接線(T1、T2)とで包囲された領域(縊れた領域:LB)に固化材を噴射して撹拌する第2の工程(小面積の噴射工法)、とを備えることを特徴としている(請求項1)。
【0009】
ここで、上述した第1の工程(大面積の噴射工法)及び第2の工程(小面積の噴射工法)では、共に、第1及び第2の噴射撹拌手段(モニタ40、モニタ10)を所定の深度まで貫入し、その後、地上側に引き上げ、該引き上げる段階で固化材を噴射して撹拌しているのが好ましい。
【0010】
本発明において、第2の噴射撹拌手段(モニタ10)は第1の噴射撹拌手段(モニタ40)に対して所定距離(δ)だけ下方に配置されており、前記第1の工程から前記所定距離(δ)に相当する時間が経過した後に前記第2の工程が行われるのが好ましい(請求項2)。
【0011】
ここで本発明において、前記第2の工程では、第2の噴射撹拌手段(モニタ10)に設けられた複数の固化材噴射手段(ノズルN、N1〜N5)から、面積が比較的大きい領域(L1)とその(面積が比較的大きい領域L1の)共通接線(T1、T2)とで包囲された領域(縊れた領域:LB)に対して、複数本の固化材噴流(Js)が噴射されるのが好ましい(請求項3)。
【0012】
或いは、第2の噴射撹拌手段(モニタ10)は回転或いは揺動自在に構成されており、前記第2の工程では、面積が比較的大きい領域(L1)とその(面積が比較的大きい領域L1の)共通接線(T1、T2)とで包囲された領域(縊れた領域:LB)に対して、固化材噴流(Js)を噴射するのが好ましい(請求項4)。
【発明の効果】
【0013】
上述する構成を具備する本発明の噴射撹拌工法によれば、大面積の噴射工法を施工した領域(L1、L1)は、重複する部分が殆ど存在しないように設定することが可能であり、無駄な施工を出来る限り排除することが出来る。そして、大面積の噴射工法を施工した領域(L1、L1)間の縊れた領域(LB)で残存している原位置土は、第2の工程(施工面積が小さい噴射工法)で固化材が噴射されることにより、固化材と混合、撹拌されるので、必要な有効断面の厚さ寸法(D)が確保される。
【0014】
ここで、有効断面の厚さ寸法(D)は、共通接線(T1、T2)の間隔以下であり、第2の工程(施工面積が小さい噴射工法)で固化材が噴射されるのは、前記比較的大きい領域(L1)とその(面積が比較的大きい領域L1の)共通接線(T1、T2)とで包囲された領域(縊れた領域LB)に限定して、固化材噴流(Js)を噴射する方が、有効断面に無関係な領域(図21の領域L3Pにおけるハッチングした部分)に対して固化材を噴射して、施工するという無駄を節約することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図中、同様な部材には同様な符号が付されている。
図1は、本発明の第1実施形態に係る噴射撹拌工法の施工手順を示している。
先ず、施工面積が大きい噴射工法(大面積の噴射工法)、例えば機械式の撹拌と、いわゆる「交差噴流」を用いた撹拌とを組み合わせた工法(図13〜図18において、後述)を、符号L1で示す隣接した複数の領域(図示の実施形態では隣接する二つの領域)について施工する(図1参照)。
【0016】
図1で示す様に、図示の実施形態では、大面積の噴射工法を施工した領域L1、L1は、重複する部分が殆ど存在しないように設定されており、無駄な施工を出来る限り排除している。
その結果、図1において符号LBで示す領域、すなわち大面積の噴射工法を施工した領域L1、L1間の「縊れた領域」では、施工されずに、原位置土が残存してしまう。
図1では、大面積の噴射工法を施工した領域L1、L1は点接触している様に表現されているが、実際の施工に際しては、図3で示す様に、多少の重複部分が存在する様に施工する。施工されないで原位置土が残存してしまう部分、いわゆる「巣」が形成されてしまうことを、防止するためである。
【0017】
縊れた領域LB、LBには、施工面積が小さい噴射工法(小面積の噴射工法:例えばモニタ10から噴射されるセメントミルク、モルタル等の固化材噴流の到達距離を短くして行われる地盤改良や、液状化防止のための噴射工法)を施工するためのボーリング孔(図1では明確には図示せず)が掘削されている。図1で示されていないボーリング孔には、固化材噴射用装置(モニタ)10が挿入されている。
そして、図1で示す様に、大面積の噴射工法を施工した領域L1、L1間の縊れた領域LB、LBに対して、モニタ10から、固化材の噴流Jsが噴射され、縊れた領域LB、LBの土壌と固化材とが混合される。
【0018】
図1で示す様に、縊れた領域LB、LBに固化材の噴流Jsが噴射され、縊れた領域LB、LBの土壌と固化材とが混合されることにより、撹拌噴射工法が施工された領域における有効断面の厚さ寸法Dは、図20で示す有効断面の厚さ寸法D2以上が確保される。
しかも、図20で示す従来技術とは異なり、大面積の噴射工法を施工した領域L1、L1の重なり合った領域は殆ど無く、無駄な施工が極限まで省略されている。
【0019】
縊れた領域LBについて、図2を参照して説明する。
図2において、大面積の噴射工法を施工した領域L1、L1の双方に接する2本の接線(仮想線)、すなわち共通接線T1、T2が、2点鎖線で示されている。また、大面積の噴射工法を施工した領域L1、L1の中心を結ぶ中心線CLが、1点鎖線で示されている。
大面積の噴射工法を施工した領域L1、L1間の縊れた領域LB、LBは、共通接線T1、T2に対して、中心線CL側の領域であり、図2においてはハッチングを付して表現されている。
換言すると、図2において、領域LB、LBは、共通接線T1、T2と、大面積の噴射工法を施工した領域L1、L1とにより包囲された領域である。
【0020】
再び図1において、モニタ10は縊れた領域LB内に配置され、モニタ10から固化材噴流Jsが噴射されるのは縊れた領域LB内に限定される。
図1及び図2を参照すれば明らかな様に、実施形態に係る噴射撹拌工法が施工される領域の有効断面の厚さ寸法D(図1)は、共通接線T1、T2間の寸法以下であり、モニタ10から固化材噴流Jsが噴射される領域は共通接線T1、T2よりも内側(図2の矢印I1、I2側)に限られる。従って、図示の実施形態によれば、有効断面以外の領域(図1における寸法Dで示す範囲よりも外側の領域)には、モニタ10から固化材噴流Jsを噴射しない。
従って、図21で示す様に、有効断面に無関係な領域(図21の領域L3Pにおけるハッチングした部分)を施工してしまうことがない。
【0021】
図1〜図9では、モニタ10は回動することなく、複数の固化材の噴流Jsを噴射する様に構成されている。
これに対して、モニタ10を回転可能或いは揺動可能に構成し、単一の固化材噴流Jsを流線を回動或いは揺動しながら噴射することも可能である。詳細は、図11、図12を参照して、後述する。
【0022】
ここで、縊れた領域LB、LBに対してモニタ10から固化材噴流Jsを噴射する工程(小面積の噴射工法:図1)は、大面積の噴射工法が領域L1、L1に対して施工された後に行われる。詳細については、図13、図14を参照して後述する。
但し、施工の条件如何によっては、領域L1、L1に対する大面積の噴射工法と、縊れた領域LB、LBに対する小面積の噴射工法とを、同時に行うことも可能である。
【0023】
縊れた領域LB、LBに対する小面積の噴射工法について、図3〜図8を参照して説明する。
図3は、図1で示す工程を簡略化して記載している。
図3において、大面積の噴射工法を施工した領域L1、L1間の縊れた領域LB、LBに対して、モニタ10から、固化材の噴流Jsが噴射される。図示を簡略化するために、図3においては、固化材の噴流Jsは、モニタ10からそれぞれ5本ずつ噴射されて示されている。
【0024】
モニタ10から噴射される固化材噴流Jsにより、縊れた領域LBの原位置土を切削する態様を説明するために、図3において、点線で囲まれた領域F4(縊れた領域LBを含む)を設定し、図4〜図8では、係る領域F4についてのみ示す。
図4において、縊れた領域LBの原位置土はハッチングを付して示されている。そして、簡略化のため、モニタ10から噴射される固化材噴流Jsは3本のみ示されており、符号Js1〜Js3が付されている。中央の固化材噴流Js2は、大面積の噴射工法を施工した領域L1、L1の重複部分に向って噴射されており、固化材噴流Js1、Js3は、固化材噴流Js2の左右に噴射されている。
図4で示す様に、縊れた領域LBの原位置土は、固化材噴流Js1〜Js3により切削される。換言すれば、図4で示す段階では、図4では図示しないモニタ10と、大面積の噴射工法を施工した領域L1、L1とを結んだ直線における原位置土が、固化材噴流Js1〜Js3により切削、撹拌される。
【0025】
図5において、左右の固化材噴流Js1、Js3は、大面積の噴射工法を施工した領域L1、L1と衝突した後、それぞれが2本の噴流(矢印Js1−1、Js1−2、Js3−1、Js3−2参照)に分流する。そして、固化材噴流Js1〜Js3及び分流のエネルギーにより、図6の符号α1、α2で示す領域は細断され、塊となること無く、固化材と良好に混合され、縊れた領域LBにおいて、原位置土の「巣」が出来てしまうことが防止される。
【0026】
図示はされていないが、縊れた領域LBにおける領域α1、α2以外の領域も、固化材噴流Js及びその分流(図5及び図6における矢印Js1−1、Js1−2、Js3−1、Js3−2参照)が保有する運動エネルギーにより、原位置土が切削、撹拌され、固化材と良好に混合される。
図7は、縊れた領域LBにおける原位置土が切削され、撹拌された後の状態を示している。
【0027】
図3〜図7において、固化材噴流Jsは、大面積の噴射工法を施工した領域L1、L1に衝突した後、図5〜図7で示す様に、領域L1、L1の境界に沿って分流する様に噴射されている。
換言すれば、固化材噴流Jsは、図8で示す噴流Jsw−1の様に、領域L1に衝突しない方向へ噴射されることが無い様に、噴射方向が設定される。或いは、固化材噴流Jsの噴射方向は、図9で示す噴流Jsw−2の様に、領域L1に衝突した後に、縊れた領域LBから離隔する方向へ向ってしまうことが無い様に、設定されている。
【0028】
図1〜図8では、大面積の噴射工法を施工した領域L1、L1は、重複する部分が小さくなる様に設定されている。これに対して、図9で示す様に、大面積の噴射工法を施工した領域L1、L1の重複部分が大きくなる様に、隣接する領域L1、L1を施工すると、領域L1、L1間の縊れた部分LBAは極めて小さくなり、有効厚さは領域L1とさほど変わらなくなる。
その様な場合は、縊れた部分LBAについて、図3〜図7で説明した小面積の噴射工法を実行する必然性は乏しい。
【0029】
領域L1について、有効厚さが大きい場合においても、図9において符号L1Aで示す領域、即ち、重複部分が大きくなる様に施工された2つの領域L1、L1から成る「ひょうたん」形の領域を隣接して形成し、ひょうたん形の領域L1A、L1A同士の重なり合う領域が小さい場合には、その間の縊れた領域LBの存在により、有効厚さが小さくなってしまう。
このような場合には、ひょうたん形の領域L1A、L1A間における縊れた領域LBで、図3〜図7で説明した小面積の噴射工法を実行することになる。
【0030】
図10は、図3〜図7で示す様に、5本の固化材噴流Jsを噴射するための機構を、模式的に示している。
図10において、モニタ10内には、地上側の設備から供給される固化材の流路L10と、固化材を噴射する噴射ノズルN1〜N5が設けられている。図10において、図示の簡略化のため、噴射ノズルN1〜N5は、単なる貫通孔として表現されている。
係る構成により、モニタ10は回動はしないが、複数本(図10では5本)の固化材噴流Jsを噴射するのである。
【0031】
図3〜図9では、モニタ10は回動せず、複数の固化材の噴流Jsを噴射しているが、モニタ10は公知、既存の技術により、回転可能或いは揺動可能に構成することが出来る。
その様な場合においては、固化材の噴流Jsを1本のみ噴射して、モニタ10自体を回動或いは搖動しても、縊れた領域LBの原位置土を切削して、崩落させることが可能である。
図11、図12は、その様な場合を示している。
【0032】
先ず、図11では、揺動するモニタを符号10Aで示している。
モニタ10Aは、図示しないロッドを介して、地上側の機器に接続されている。係る地上側の機器は、従来、公知の技術を用いて、モニタ10Aを、矢印R11で示す様に、時計方向、反時計方向へ、連続して、或いは間欠的に、揺動する。
図11のモニタ10Aは、単一のノズルNのみを備えているが、モニタ10Aが揺動することにより、固化材噴流Jsは、例えば実線で示す位置と点線で示す位置とを移動するので、図3〜図9において、縊れた領域LB全体を固化材噴流Jsで切削して、細断し、縊れた領域LBの原位置土は塊となること無く、固化材と良好に混合される。
【0033】
図12で示すモニタ10Bは、図11で示すモニタ10Aと概略同様な構成となっているが、図示しない地上側の機器により、矢印R12で示す様に、位置方向へ回転している。図12では、モニタ10Bが時計方向へ回転しているが、反時計方向(矢印R12の反対側)に回転させても良い。
モニタ10Bは、半円の円弧状をしているカバー12とセットになっている。
図12では明確に図示されていないが、縊れた領域LBが、図12において下方に存在する場合、カバー12はモニタ10Bの上半分を覆う様に取り付けられる。
【0034】
図12において、モニタ10Bが回転している間に、ノズルNが下方(縊れた領域LB側)を向いていれば、固化材噴流Jsは、縊れた領域LBへ噴射される(図12の実線の矢印)。
それに対して、ノズルNが縊れた領域LBに向いておらず、カバー12へ向いている場合には、ノズルNから噴射された固化材噴流Js(図12の点線の矢印)は、カバー12により遮断される。
このように構成することにより、固化材噴流Jsは、縊れた領域LB(図12の下方の領域:図12では図示せず)にのみ噴射される。
【0035】
図13、図14は、図1〜図12の第1実施形態に係る噴射撹拌工法を施工するための装置を示している。
図13は全体的な構成を示しており、図14は地中で土壌に作用する部分を模式的に示している。
【0036】
図13において、全体を符号20で示す地上側の施工マシンは、施工マシン20を移動し且つ操作するための車両部22と、所定深度まで部材を立て込むための立て込み部24とを有している。
立て込み部24には、ロッド26、28が、例えば2本ずつ設けられている。ロッド26は、その下端部に、大面積の噴射工法を施工する機器が備えられている。ロッド28の下端部には、小面積の噴射工法を施工する機器が備えられている。
ロッド26及びロッド28の下端部における符号δについては、図14を参照して説明する。
【0037】
図13において、ロッド26及びロッド28の上端は、駆動及び減速装置30に接続されている。図示はされていないが、駆動及び減速装置30は、駆動源であるモータ(伝動モータ或いは油圧モータ)と、減速機と、スイベルジョイントが設けられており、モータはインバータ制御されている。
駆動及び減速装置30により、ロッド28に設けられたモニタ10(10A、10B)は、回動しないようにすることも可能であれば(モニタ10:図10)、揺動させたり(モニタ10A:図11)、回転させる(モニタ10B、図12)ことも出来る。
なお、駆動及び減速装置30は、チェーン32により、立て込み部24を図13の上下方向について移動可能に構成されている。
【0038】
図14において、大面積の噴射工法を施工する機器を有するロッド26と、小面積の噴射工法を施工する機器を有するロッド28は、2本ずつ設けられている。
図14で、ロッド28は1本のみ示されているが、もう1本のロッド28は、紙面に垂直な方向の奥側に位置しており、手前側のロッド28により隠れている。
ロッド26とロッド28とは、連接ロッド34、34により接続されている。
【0039】
ロッド26下端部には、大面積の噴射工法を施工する機器、すなわちモニタ40が設けられている。
モニタ40は、水平方向(図14では左右方向)へ延在する撹拌翼42、44と、撹拌翼42、44の端部に設けられた固化材噴射用のノズル(図示せず)とを有している。
撹拌翼42、44は鉛直方向(図14の上下方向)に間隔を隔てて設けられているので、その端部に設けられた図示しないノズルも、上下方向へ一定の間隔を隔てている。そして、そのノズルから噴射された大面積の噴射工法用の固化材噴流Jcは、図14で示す様に、上下方向へ間隔を空けて設けられたノズルから噴射する固化材噴流Jc同士が、交差点Cで、衝突して、いわゆる「交差噴流」を構成する様に構成されている。
【0040】
固化材噴流Jc同士が交差点Cで衝突する結果、固化材噴流Jcによる原位置土の掘削は、ロッド26と交差点Cとの間の領域(半径方向内方の領域)に限定される。
そして、ロッド26を駆動及び減速装置30(図13)で回転させれば、回転翼42、44で原位置土を直接撹拌できるとともに、固化材噴流Jcで原位置土を切削しつつ、撹拌することが出来るのである。
【0041】
ロッド28の下方には、上述したモニタ10(10A、10B)が取り付けられている。
ここで、モニタ10のノズルNの鉛直方向(図14の上下方向)位置は、モニタ40からの交差噴流Jc、Jcが衝突する交差点Cに対して、符号δで示す距離だけ、下方に位置している。
これは、モニタ10により行われる小面積の噴射工法(図3〜図9の縊れた領域LBにおける施工)を、モニタ40によって行われる大面積の噴射工法(図1〜図9の領域L1における施工)よりも後に実施するためである。
【0042】
図3〜図9を参照して説明した通り、モニタ10により縊れた領域LBにおける原位置土を切削、撹拌する施工は、大面積の噴射工法が施工された領域L1の存在を前提としている。従って、モニタ10による施工は、モニタ40による施工から、所定時間だけ遅らせる必要がある。
ここで、モニタ40から固結材噴流Jcを噴射する施工も、モニタ10から固結材噴流Jsを噴射する施工も、施工領域の最深部まで、モニタが到達した後、モニタを引き上げることにより行われる。
モニタ10をモニタ40よりも下方に位置せしめれば、同一の鉛直方向位置については、モニタ40が引き上げられた後にモニタ10が引き上げられる。すなわち、モニタ10により、領域L1について、大面積の噴射工法が施工された後に、モニタ40が縊れた領域LBにおいて、図3〜図9の施工(小面積の噴射工法)を行うことになる。
【0043】
ここで、モニタ10から噴射される固化材も、モニタ40から噴射される固化材も、同一である。
図13において、固化材は、地上側の固化材供給装置(図示せず)から、ロッド26内の流路L14−1、L14−2を流れる。
右側のロッド26内の流路L14−1は、連接ロッド34内の流路L14−1Sと、右側のロッド26内の流路L14−1Lとに分岐する。流路L14−1Lを流れる固化材は、モニタ40の撹拌翼42、44内の流路L42、L44を流れ、交差噴流Jcとして噴出される。そして、流路L14−1Sを流れる固化材は、ロッド28内の流路L28を流れて、モニタ10から噴射される。
左側のロッド26内の流路L14−2も、連接ロッド34内の流路L14−2Sと、左側のロッド26内の流路L14−1Lとに分岐し、流路L14−1Lを流れる固化材はモニタ40から噴射され、流路L14−1Sを流れる固化材はモニタ10から噴射される。
【0044】
図14において、流路L14−1Sと流路L14−2Sとが合流して、ロッド28内の流路L28を流れるように見える。しかし、上述した様に、図14におけるロッド28は、紙面に垂直な方向に2本存在し、流路L14−1Sと流路L14−2Sの各々は、当該2本のロッド28の何れかを流れている。
【0045】
図14では、ロッド28内を流れる固化材は、ロッド26内の流路L14−1、L14−2と、連接ロッド34内の流路L14−1S、L14−2Sとを経由して供給されている。これに代えて、連接ロッド34内の流路L14−1S、L14−2Sを省略して、ロッド28内に、別途、固化材供給用の流路を形成することが望ましい。
モニタ40からの固化材噴射を停止した後、モニタ10からの固化材噴射を継続する場合に対処するためである。すなわち、その様な場合には、モニタ10の固化材供給経路と、モニタ40の固化材供給経路は、相互に独立していることが好ましく、ロッド26、28の各々において、固化材供給用の流路が形成されている必要がある。
【0046】
図15〜図18は、本発明の第2実施形態を示している。
図1で示すような第1実施形態に係る噴射撹拌工法は、2個のモニタ10により小面積の噴射工法を2箇所の縊れた領域LBに施工することにより、実施することが出来る。
ここで、例えば地中連壁の様に、長手方向へ連続する領域について噴射撹拌工法を施工して、且つ、有効厚さを確保するのであれば、大面積の噴射工法と小面積の噴射工法を施工するに際して、2箇所の縊れた領域LBにのみモニタ10で小面積の噴射工法を行ったのでは、不充分である。大面積の噴射工法を施工した領域L1、L1間に、縊れた領域LBであって、モニタ10で小面積の噴射工法が行われない領域が出来てしまうからである。
そのため、長手方向へ連続する領域について噴射撹拌工法を施工して、且つ、有効厚さを確保する場合には、図15、図16で示す様に、4個のモニタ10を用いて小面積の噴射工法を4箇所の縊れた領域LBに施工する必要がある。
【0047】
図15は噴射撹拌工法を施工する土壌側を示しており、図16は施工マシン20におけるロッド26、28の配置を示している。
図1〜図8では、大面積の噴射工法が施工された領域L1、L1間の縊れた領域LBについてのみ、モニタ10を用いて小面積の噴射工法を施工している。これに対して第2実施形態では、図15で示す様に、連壁の様に(図15の左右方向へ)連続する領域について噴射撹拌工法を施工し、且つ、固化材が噴射される領域の有効厚さを確保するために、縊れた領域LB−1、LB−1のみならず、その左側の縊れた領域LB−2、LB−2についても、モニタ10を用いて小面積の噴射工法を行い、原位置土と固化材とを混合している。
【0048】
図15で示す様に、縊れた領域LB−1、LB−1、LB−2、LB−2について小面積の噴射工法を施工するためには、図16で示す様に、下端部にモニタ10を設けたロッド26を、施工マシン20(図16では連接ロッド34と、ロッド26、28のみ示す)に設ける必要がある。
図16で示す施工マシン20により、噴射撹拌工法を施工すれば、大面積の噴射工法が施工される領域L1、L1の間に存在する全ての縊れた領域LB(LB−1、LB−2)において、ロッド26の下端部に設けられたモニタ10による小面積の噴射工法が施工される。
したがって、領域L1、L1とが重なる領域を小さくして無駄な施工を少なくするという要請と、有効厚さDを出来る限り大きくするという要請を、同時に充足することが可能となる。
【0049】
図17、図18は、第2実施形態を施工する施工マシンの様部を示している。モニタ10を下端部に有するロッド26が4本設けられている点を除き、図13、図14で示す施工マシン20と同様である。
そして、第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果も、第1実施形態と同様である。
【0050】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない。
例えば、図示の実施形態では、一度の施工で、大面積の噴射工法が2箇所の領域L1、L1で行われるが、1箇所のみに行われても良いし、3箇所以上同時に行うことも可能である。
また、大面積の噴射工法が施工された後に小面積の噴射工法が施工されるが、両者を同時に施工することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態の施工を説明するための平面図。
【図2】縊れた領域を説明するための平面図。
【図3】縊れた領域における施工を説明するための平面図。
【図4】図3の部分拡大図。
【図5】縊れた領域における図4に続く段階を説明する部分拡大図。
【図6】図5に続く段階を説明する部分拡大図。
【図7】図6に続く段階を説明する部分拡大図。
【図8】縊れた領域における不適当な固化材の噴射状態を示す部分拡大図。
【図9】第1実施形態の変形例を説明するための平面図。
【図10】縊れた領域の施工で用いられる装置を模式的に示す断面図。
【図11】図10の装置の変形例を示す断面図。
【図12】図10の装置のさらに別の変形例を示す断面図。
【図13】第1実施形態を実施する装置の全体図。
【図14】図13の装置において、地中で作業を行う部材を示す部分正面図。
【図15】本発明の第2実施形態の施工を説明するための平面図。
【図16】第2実施形態を施工する装置におけるロッドの配置を示す平面図。
【図17】第2実施形態を施工する装置の要部の正面図。
【図18】図17で示す装置の要部の平面図。
【図19】従来技術を説明する平面図。
【図20】図19とは異なる従来技術を施工した状態を説明する平面図。
【図21】図19、図10とは異なる従来技術を説明する平面図。
【符号の説明】
【0052】
L1・・・施工面積が大きい噴射工法(大面積の噴射工法)を施工した領域
L1P、L3P・・・従来技術に係る噴射撹拌工法を施工した領域
L1C・・・キリ孔
LB・・・大面積の噴射工法を施工した領域間の縊れた領域
10、10A、10B、40・・・モニタ
Js、Js−1〜Js−5・・・固化材噴流
Jc・・・交差噴流を構成する固化材噴流
L1A・・・噴射撹拌工法が施工されたひょうたん形の領域
20・・・施工マシン
22・・・車両部
24・・・立て込み部
26、28・・・ロッド
30・・・駆動及び減速装置
34・・・連接ロッド
C・・・交差点
N・・・ノズル
L10、L14−1、L14−2、L14−1L、L14−1S、L14−2L、L14−2S、L42・・・固化材流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面積が比較的大きい領域に第1の噴射撹拌手段により固化材を噴射して撹拌する第1の工程と、第2の噴射撹拌手段により前記面積が比較的大きい領域とその共通接線とで包囲された領域に固化材を噴射して撹拌する第2の工程、とを備えることを特徴とする噴射撹拌工法。
【請求項2】
第2の噴射撹拌手段は第1の噴射撹拌手段に対して所定距離だけ下方に配置されており、前記第1の工程から前記所定距離に相当する時間が経過した後に前記第2の工程が行われる請求項1の噴射撹拌工法。
【請求項3】
前記第2の工程では、第2の噴射撹拌手段に設けられた複数の固化材噴射手段から、面積が比較的大きい領域とその共通接線とで包囲された領域に対して、複数本の固化材噴流が噴射される請求項1、2の何れかの噴射撹拌工法。
【請求項4】
第2の噴射撹拌手段は回転或いは揺動自在に構成されており、前記第2の工程では、面積が比較的大きい領域とその共通接線とで包囲された領域に対して、固化材噴流を噴射する請求項1、2の何れかの噴射撹拌工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2008−38468(P2008−38468A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−214228(P2006−214228)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(390002233)ケミカルグラウト株式会社 (79)
【Fターム(参考)】