説明

噴射装置およびエアゾール式製品

【課題】 利用者が意図していないガス抜きが行われることを防止することができる噴射装置を提供する。
【解決手段】 噴射装置30は、エアゾール容器20の内容物の噴射を行うためのノズル43と、ノズル43に噴射を行わせるための噴射ボタン45と、噴射ボタン45を覆うキャップ50と、キャップ50を回転可能に支持する基部40と、基部40に対するキャップ50の回転の規制を行う回転規制タブ56とを備え、キャップ50は、基部40に対するキャップ50の回転位置が噴射許可位置のときに押されることによって噴射ボタン45を押すキャップ側ボタン53と、基部40に対するキャップ50の回転位置がガス抜き位置のときに噴射ボタン45を押し続けるガス抜きタブ55とを有し、回転規制タブ56は、回転位置がガス抜き位置になることを前記規制によって妨げており、前記規制が解除される状態になるようにキャップ50に切り離し可能に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器の内容物の噴射を行うための噴射装置およびこれを備えたエアゾール式製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアゾール容器のガス抜きのための機構を備えた噴射装置として、エアゾール容器と噴射ヘッド本体間の回転操作のみで連続噴射可能状態となり、噴射ヘッド本体の押し下げ操作で連続噴射が開始されるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。この連続噴射によって、エアゾール容器のガス抜きが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−302175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の噴射装置は、回転操作や押し下げ操作といった一般的な操作のみでガス抜きが開始されるので、利用者の誤操作により利用者が意図していないガス抜きが行われる可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、利用者が意図していないガス抜きが行われることを防止することができる噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の噴射装置は、エアゾール容器の内容物の噴射を行うためのノズルと、押されることによって前記ノズルに前記噴射を行わせるための噴射ボタンと、前記噴射ボタンを覆うキャップと、前記キャップを回転可能に支持する支持部材と、前記支持部材に対する前記キャップの回転の規制を行う回転規制部材とを備え、前記支持部材に対する前記キャップの回転位置は、前記噴射が許可される噴射許可位置と、前記エアゾール容器のガス抜きのためのガス抜き位置とを含み、前記キャップは、前記回転位置が前記噴射許可位置のときに押されることによって前記噴射ボタンを押すキャップ側ボタンと、前記回転位置が前記ガス抜き位置のときに前記噴射ボタンを押し続けるガス抜き部材とを有し、前記回転規制部材は、前記回転位置が前記ガス抜き位置になることを前記規制によって妨げており、前記規制が解除される状態へ変形可能に前記キャップおよび前記支持部材の少なくとも一方に設けられていることを特徴とする。
【0007】
この構成により、本発明の噴射装置は、支持部材に対するキャップの回転位置がガス抜き位置になるためには、支持部材に対するキャップの回転の規制が解除される状態へ回転規制部材が変形させられなければならない。したがって、本発明の噴射装置は、利用者の誤操作により利用者が意図していないガス抜きが行われることを防止することができる。
【0008】
本発明の噴射装置の前記変形は、切り離しであることが好ましい。
【0009】
この構成により、本発明の噴射装置は、支持部材に対するキャップの回転位置がガス抜き位置になるためには、回転規制部材が切り離されなければならない。したがって、本発明の噴射装置は、利用者の誤操作により利用者が意図していないガス抜きが行われることを防止することができる。
【0010】
本発明の噴射装置の前記回転位置は、前記噴射が禁止される噴射禁止位置を含み、前記回転規制部材は、前記噴射許可位置および前記噴射禁止位置の位置決めを行う部材であることが好ましい。
【0011】
この構成により、本発明の噴射装置の回転規制部材は、支持部材に対するキャップの回転位置がガス抜き位置になることを許可する機能に加えて、支持部材に対するキャップの回転位置が噴射許可位置および噴射禁止位置に切り替えられる際の位置決めの機能も有する。したがって、本発明の噴射装置は、これらの機能を別々の部材で実現する場合と比較して、構成を簡略化することができる。
【0012】
本発明の噴射装置の前記キャップは、前記回転位置が前記ガス抜き位置のときに前記ノズルの噴射口に対向する噴射口対向壁部を有していることが好ましい。
【0013】
この構成により、本発明の噴射装置は、エアゾール容器のガス抜きの際にノズルの噴射口から噴射されるガスが噴射口対向壁部に当たって拡散する。したがって、本発明の噴射装置は、エアゾール容器のガス抜きの際にガスが噴射装置外に強い勢いで噴射されることを防止することができる。
【0014】
本発明のエアゾール式製品は、本発明の噴射装置と、前記噴射装置が取り付けられたエアゾール容器とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の噴射装置は、利用者が意図していないガス抜きが行われることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るエアゾール式製品の側面図である。
【図2】基部に対するキャップの回転位置が噴射許可位置であるときの図1に示すエアゾール式製品の上面図である。
【図3】図2のIII矢視断面図である。
【図4】基部に対するキャップの回転位置が噴射禁止位置であるときの図1に示すエアゾール式製品の上面図である。
【図5】図4のV矢視断面図である。
【図6】基部に対するキャップの回転位置がガス抜き位置であるときの図1に示すエアゾール式製品の上面図である。
【図7】図6のVII矢視断面図である。
【図8】図1に示すエアゾール式製品の噴射装置の基部の上面図である。
【図9】図1に示すエアゾール式製品の噴射装置のキャップの底面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係るエアゾール式製品の側面図であって、回転規制タブの折り曲げ後の状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0018】
(第1の実施の形態)
まず、本実施の形態に係るエアゾール式製品の構成について説明する。
【0019】
図1は、本実施の形態に係るエアゾール式製品10の側面図である。
【0020】
図1に示すように、エアゾール式製品10は、エアゾール容器20と、エアゾール容器20の上部に取り付けられてエアゾール容器20の内容物の噴射を行うための噴射装置30とを備えている。噴射装置30は、プラスチック製の基部40と、基部40に取り付けられたプラスチック製のキャップ50とを備えている。
【0021】
図2は、基部40に対するキャップ50の回転位置が噴射許可位置であるときのエアゾール式製品10の上面図である。図3は、図2のIII矢視断面図である。図4は、基部40に対するキャップ50の回転位置が噴射禁止位置であるときのエアゾール式製品10の上面図である。図5は、図4のV矢視断面図である。図6は、基部40に対するキャップ50の回転位置がガス抜き位置であるときのエアゾール式製品10の上面図である。図7は、図6のVII矢視断面図である。なお、図2、図4および図6において、破線は、基部40およびキャップ50の構成のうち隠れている構成の一部を示している。
【0022】
図1〜図3に示すように、基部40は、エアゾール容器20のマウンティングカップ21に装着されるようになっている。基部40は、軸線31を中心とした回転方向である矢印31aおよび矢印31bで示す方向にキャップ50を回転可能に支持する支持部材を構成している。基部40に対するキャップ50の回転位置は、エアゾール容器20の内容物の噴射が許可される噴射許可位置(図2および図3参照。)と、エアゾール容器20の内容物の噴射が禁止される噴射禁止位置(図4および図5参照。)と、エアゾール容器20のガス抜きのためのガス抜き位置(図6および図7参照。)とを含んでいる。なお、エアゾール容器20のマウンティングカップ21には、エアゾール容器20の内容物が噴射されるためのステム22が中央に形成されている。ステム22は、軸線31の延在方向のうち矢印31cで示す方向に移動させられることによって開放されるようになっている。
【0023】
図8は、基部40の上面図である。
【0024】
図1〜図3および図8に示すように、基部40は、マウンティングカップ21が挿入される挿入口41aが一端に形成されてエアゾール容器20の肩部23を覆う肩カバー部41と、軸線31を軸とした略円筒形の円筒部42と、エアゾール容器20のステム22に係合してエアゾール容器20の内容物の噴射を行うためのノズル43と、円筒部42およびノズル43を繋ぐインテグラルヒンジ部44と、押されることによってノズル43に噴射を行わせるための噴射ボタン45と、エアゾール容器20の内容物の噴射を禁止するためのストッパ46とを有している。
【0025】
肩カバー部41は、軸線31を軸とした略円筒形であって、挿入口41aを介して圧入されるマウンティングカップ21に内周面で係合するようになっている。また、肩カバー部41は、挿入口41a側とは反対側の端面41bでキャップ50に係合するようになっている。また、肩カバー部41は、外周面上に溝41cが1箇所のみ形成されている。溝41cは、軸線31を中心とした角度で約100°の範囲において、軸線31の延在方向の全範囲にわたって形成されている。溝41cのうち矢印31aで示す方向の端の壁部41dは、噴射許可位置(図2参照。)の位置決めに使用されるようになっている。また、溝41cのうち矢印31bで示す方向の端の壁部41eは、噴射禁止位置(図4参照。)の位置決めに使用されるようになっている。
【0026】
円筒部42は、肩カバー部41のうち挿入口41a側とは反対側の部分に繋がっている。円筒部42は、外周面上に環状突起部42aが形成されている。
【0027】
ノズル43は、軸線31を軸とした略円筒形の円筒部43aと、軸線31と直交する直線を軸とした略円筒形であって円筒部43aに繋がっている円筒部43bとを有している。円筒部43aは、内周側にエアゾール容器20のステム22に係合する係合部43cを有している。円筒部43bは、エアゾール容器20の内容物が噴射される噴射口43dが円筒部43a側とは反対側の端に形成されている。円筒部43aおよび円筒部43bの内部には、係合部43cに係合されたステム22から噴射口43dまで連通する流路43eが形成されている。
【0028】
インテグラルヒンジ部44は、円筒部42のうち肩カバー部41側とは反対側の部分と、ノズル43のうち噴射口43dの近傍の部分とを繋いでいる。
【0029】
噴射ボタン45は、ノズル43の円筒部43aに円筒部43b側とは反対側で繋がっている。噴射ボタン45は、矢印31cで示す方向とは反対方向の端に配置されていて軸線31に直交している操作面45aと、操作面45aに繋がっている傾斜面45bとが形成されている。傾斜面45bは、操作面45aに対して矢印31aで示す方向に配置されていて、矢印31aで示す方向に存在する箇所ほど矢印31cで示す方向に位置するように傾斜している。
【0030】
ストッパ46は、円筒部42のうち肩カバー部41側とは反対側の部分に繋がっている。ストッパ46は、矢印31aで示す方向においてノズル43から噴射ボタン45までの間に配置されている。ストッパ46は、矢印31cで示す方向における位置が噴射ボタン45の操作面45aと同一であって軸線31に直交しているストッパ面46aが形成されている。
【0031】
図9は、キャップ50の底面図である。
【0032】
図1〜図3および図9に示すように、キャップ50は、基部40の円筒部42が挿入される挿入口51aが一端に形成されていて軸線31を軸とした略円筒形である円筒部51と、円筒部51のうち挿入口51a側とは反対側に繋がっている天井部52と、基部40に対するキャップ50の回転位置が噴射許可位置(図2および図3参照。)のときに押されることによって基部40の噴射ボタン45を押すキャップ側ボタン53と、天井部52およびキャップ側ボタン53を繋ぐインテグラルヒンジ部54と、基部40に対するキャップ50の回転位置がガス抜き位置(図6および図7参照。)のときに基部40の噴射ボタン45を押し続けるガス抜き部材としてのガス抜きタブ55と、基部40に対するキャップ50の回転の規制を行う回転規制部材としての回転規制タブ56とを有している。キャップ50は、基部40の円筒部42、ノズル43、インテグラルヒンジ部44、噴射ボタン45およびストッパ46を覆うようになっている。
【0033】
円筒部51は、壁部51bと、内周面上に設けられた環状突起部51cと、基部40に対するキャップ50の回転位置が噴射許可位置(図2および図3参照。)のときにノズル43の噴射口43dに対向して噴射口43dを外部に露出させる噴射口用窓51dとを有している。なお、壁部51bは、基部40に対するキャップ50の回転位置がガス抜き位置(図6および図7参照。)のときにノズル43の噴射口43dに対向するようになっており、噴射口対向壁部を構成している。また、円筒部51は、基部40の肩カバー部41の端面41bに係合する端面51eが形成されている。ここで、キャップ50は、円筒部51の挿入口51aを介して円筒部51内に基部40の円筒部42が挿入され、円筒部51の環状突起部51cが円筒部42の環状突起部42aとすれ違うときに円筒部51の径が一時的に拡がることによって、図3に示す状態で基部40に取り付けられる。キャップ50は、環状突起部51cで基部40の円筒部42の環状突起部42aに係合するとともに、円筒部51の端面51eで基部40の肩カバー部41の端面41bに係合することによって、矢印31aおよび矢印31bで示す方向に回転可能に基部40に支持されている。
【0034】
キャップ側ボタン53は、天井部52の中央から少しずれた位置に配置されている。キャップ側ボタン53は、強度を増すために周縁に設けられた補強リブ53aと、基部40の噴射ボタン45を押すために設けられたリブ53bとを有している。補強リブ53aは、矢印31cで示す方向に突起している。リブ53bは、キャップ側ボタン53のうちインテグラルヒンジ部54側とは反対側の部分に設けられており、矢印31cで示す方向に突起している。
【0035】
ガス抜きタブ55は、天井部52に設けられており、矢印31cで示す方向に突起している。ガス抜きタブ55の位置は、軸線31を中心とした角度において、リブ53bに対して矢印31aで示す方向に約130°ずれている。ガス抜きタブ55は、基部40の噴射ボタン45の操作面45aに接触するための接触面55aと、接触面55aに繋がっている傾斜面55bとが形成されている。接触面55aは、ガス抜きタブ55において矢印31cで示す方向の端に配置されていて軸線31に直交している。傾斜面55bは、接触面55aに対して矢印31bで示す方向に配置されていて、矢印31aで示す方向に存在する箇所ほど矢印31cで示す方向に位置するように傾斜している。
【0036】
回転規制タブ56は、基部40の肩カバー部41の溝41c内に配置されている。回転規制タブ56の位置は、軸線31を中心とした角度において、ガス抜きタブ55に対して約180°ずれている。回転規制タブ56は、基部40の肩カバー部41の溝41cの壁部41dに係合することによって、基部40に対するキャップ50の回転位置を噴射許可位置(図2参照。)に位置決めするようになっている。回転規制タブ56は、基部40の肩カバー部41の溝41cの壁部41eに係合することによって、基部40に対するキャップ50の回転位置を噴射禁止位置(図4参照。)に位置決めするようになっている。回転規制タブ56は、基部40の肩カバー部41の溝41cの壁部41dまたは壁部41eに係合することで基部40に対するキャップ50の回転の規制を行うことによって、基部40に対するキャップ50の回転位置がガス抜き位置(図6参照。)になることを妨げている。なお、回転規制タブ56は、円筒部51に繋がっている薄肉部56aを有しており、薄肉部56aの部分で利用者によって引きちぎられることが可能である。すなわち、回転規制タブ56は、基部40に対するキャップ50の回転の規制が解除される状態になるように円筒部51に切り離し可能に設けられている。
【0037】
次に、エアゾール式製品10の機能について説明する。
【0038】
(噴射許可時)
まず、基部40に対するキャップ50の回転位置が噴射許可位置でない場合、エアゾール式製品10は、利用者によって基部40に対してキャップ50が回転させられることによって、図2および図3に示すように基部40に対するキャップ50の回転位置が噴射許可位置にされる。なお、キャップ50の回転規制タブ56は、図2において基部40の溝41cの壁部41dに接触していないが、利用者によって基部40に対してキャップ50が矢印31aで示す方向に回転させられる場合に、基部40の溝41cの壁部41dに接触して基部40に対するキャップ50の回転を止めることによって、基部40に対する回転位置を噴射許可位置に位置決めすることができる。
【0039】
次いで、図2および図3に示すように基部40に対するキャップ50の回転位置が噴射許可位置であるとき、エアゾール式製品10は、利用者によってキャップ側ボタン53が矢印31cで示す方向に押し下げられると、キャップ側ボタン53のリブ53bが噴射ボタン45の操作面45aを矢印31cで示す方向に押し下げる。すると、噴射ボタン45と繋がっているノズル43がエアゾール容器20のステム22を矢印31cで示す方向に押し下げてステム22を開放する。これによって、エアゾール容器20の内容物は、ステム22、ノズル43および噴射口用窓51dを介してエアゾール式製品10の外部に噴射される。
【0040】
(噴射禁止時)
まず、基部40に対するキャップ50の回転位置が噴射禁止位置でない場合、エアゾール式製品10は、利用者によって基部40に対してキャップ50が回転させられることによって、図4および図5に示すように基部40に対するキャップ50の回転位置が噴射禁止位置にされる。なお、キャップ50の回転規制タブ56は、図4において基部40の溝41cの壁部41eに接触していないが、利用者によって基部40に対してキャップ50が矢印31bで示す方向に回転させられる場合に、基部40の溝41cの壁部41eに接触して基部40に対するキャップ50の回転を止めることによって、基部40に対する回転位置を噴射禁止位置に位置決めすることができる。
【0041】
次いで、図4および図5に示すように基部40に対するキャップ50の回転位置が噴射禁止位置であるとき、エアゾール式製品10は、利用者によってキャップ側ボタン53が矢印31cで示す方向に押し下げられると、キャップ側ボタン53のリブ53bがストッパ46のストッパ面46aに接触してキャップ側ボタン53の押し下げが防止される。これによって、噴射ボタン45の操作面45aが矢印31cで示す方向に押し下げられることが防止される。すなわち、エアゾール容器20の内容物は、エアゾール式製品10の外部に噴射されない。
【0042】
したがって、エアゾール式製品10は、エアゾール容器20の内容物が利用者の意図に反して噴射されてしまうということを防止することができる。
【0043】
(ガス抜き時)
まず、回転規制タブ56がキャップ50から切り離されていない場合、回転規制タブ56は、基部40の肩カバー部41の溝41cの壁部41dまたは壁部41eに係合することで基部40に対するキャップ50の回転の規制を行うことによって、基部40に対するキャップ50の回転位置がガス抜き位置になることを妨げている。したがって、回転規制タブ56がキャップ50から切り離される必要がある。エアゾール式製品10は、利用者によって回転規制タブ56が薄肉部56aの部分で引きちぎられることによって回転規制タブ56がキャップ50から切り離され、基部40に対するキャップ50の回転の規制が解除される。
【0044】
次いで、基部40に対するキャップ50の回転位置がガス抜き位置でない場合、エアゾール式製品10は、利用者によって基部40に対してキャップ50が矢印31bで示す方向に回転させられる。すると、ガス抜きタブ55は、傾斜面55bで噴射ボタン45の傾斜面45bに接触した後、徐々に噴射ボタン45を矢印31cで示す方向に押し下げる。そして、エアゾール式製品10は、図6および図7に示すように基部40に対するキャップ50の回転位置がガス抜き位置にされているとき、ガス抜きタブ55が接触面55aで噴射ボタン45の操作面45aに接触しているので、噴射ボタン45が矢印31cで示す方向に完全に押し下げられている。
【0045】
したがって、エアゾール式製品10は、図6および図7に示すように基部40に対するキャップ50の回転位置がガス抜き位置であるとき、噴射ボタン45と繋がっているノズル43がエアゾール容器20のステム22を矢印31cで示す方向に押し下げてステム22を開放している。これによって、エアゾール容器20内のガスは、ステム22およびノズル43を介して噴射され続ける。ここで、ノズル43の噴射口43dには円筒部51の壁部51bが対向しているので、ノズル43の噴射口43dから噴射されたガスは、壁部51bに当たって、エアゾール容器20のマウンティングカップ21と噴射装置30とで囲まれた空間内に拡散し、キャップ50の天井部52とキャップ側ボタン53との隙間やキャップ50の噴射口用窓51dを通ってエアゾール式製品10の外部に流れ出る。
【0046】
以上に説明したように、噴射装置30は、基部40に対するキャップ50の回転位置がガス抜き位置になるためには、回転規制タブ56が切り離されなければならない。したがって、噴射装置30は、利用者の誤操作により利用者が意図していないガス抜きが行われることを防止することができる。
【0047】
噴射装置30は、基部40に対するキャップ50の回転位置がガス抜き位置にされた後も、利用者によって基部40に対してキャップ50が矢印31aで示す方向に回転させられることによって、エアゾール容器20のガス抜きを中止することができる。例えば、利用者がエアゾール容器20の内容物を使い切ったと判断してエアゾール容器20の廃棄のためにエアゾール容器20のガス抜きを開始したが、利用者が想像していた以上にエアゾール容器20の内容物が残っていた場合に、利用者がエアゾール容器20のガス抜きの中止を希望することが考えられる。また、利用者がエアゾール容器20のガス抜きを開始したが、エアゾール容器20から噴射されたガスに引火する可能性があるタバコの火などの火気が周囲で発生した場合に、利用者が安全のためにエアゾール容器20のガス抜きの中止を希望することが考えられる。また、利用者がエアゾール容器20のガス抜きを開始したが、電話がかかってきたりしてガス抜きを看視し続けることができなくなった場合に、利用者が安全のためにエアゾール容器20のガス抜きの中止を希望することが考えられる。
【0048】
上述したように、噴射装置30の回転規制タブ56は、基部40に対するキャップ50の回転位置がガス抜き位置になることを許可する機能に加えて、基部40に対するキャップ50の回転位置が噴射許可位置および噴射禁止位置に切り替えられる際の位置決めの機能も有する。したがって、噴射装置30は、これらの機能を別々の部材で実現する場合と比較して、構成を簡略化することができる。
【0049】
また、噴射装置30は、エアゾール容器20のガス抜きの際に、ノズル43の噴射口43dに壁部51bが対向するので、ノズル43の噴射口43dから噴射されるガスがキャップ50の壁部51bに当たって拡散する。したがって、噴射装置30は、エアゾール容器20のガス抜きの際にガスが噴射装置30外に強い勢いで噴射されることを防止することができる。ガス抜きは、主にエアゾール式製品10の廃棄時に行われるので、ガスが特定の方向に強い勢いで噴射される必要性が乏しい。噴射装置30は、ガス抜きの際にガスが拡散されるようになっており、例えばガスが利用者に強い勢いで直接当たることを防止することができる。
【0050】
なお、基部40に対するキャップ50の回転の規制を行う回転規制部材は、回転規制タブ56としてキャップ50に設けられているが、キャップ50ではなく基部40に設けられていても良いし、基部40およびキャップ50の両方に設けられていても良い。
【0051】
(第2の実施の形態)
まず、本実施の形態に係るエアゾール式製品の構成について説明する。なお、本実施の形態に係るエアゾール式製品の構成のうち第1の実施の形態に係るエアゾール式製品10(図1参照。)の構成と同様な構成については、エアゾール式製品10の構成と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0052】
図10は、本実施の形態に係るエアゾール式製品110の側面図であって、回転規制タブ156の折り曲げ後の状態の図である。
【0053】
図10に示すように、エアゾール式製品110の構成は、エアゾール式製品10(図1参照。)が噴射装置30(図1参照。)に代えて噴射装置130を備えた構成と同様である。噴射装置130の構成は、噴射装置30がキャップ50(図1参照。)に代えてキャップ150を備えた構成と同様である。キャップ150の構成は、キャップ50が回転規制タブ56(図1参照。)に代えて回転規制タブ156を備えた構成と同様である。回転規制タブ156の構成は、円筒部51に連結している連結部156aを回転規制タブ56が薄肉部56a(図1参照。)に代えて備えた構成と同様である。
【0054】
回転規制タブ156は、図10に示すように連結部156aの部分で利用者によって折り曲げられることが可能である。すなわち、回転規制タブ156は、基部40に対するキャップ150の回転の規制が解除される状態になるように円筒部51に折り曲げ可能に設けられている。
【0055】
次に、エアゾール式製品110の機能について説明する。
【0056】
エアゾール式製品110は、回転規制タブ156が図10に示すように折り曲げられる前に、第1の実施の形態に係るエアゾール式製品10の図1に示す状態と同様の状態であるので、第1の実施の形態に係るエアゾール式製品10の噴射許可時や噴射禁止時の機能と同様の機能を発揮することができる。
【0057】
ここで、回転規制タブ156は、図10に示すように連結部156aの部分で利用者によって折り曲げられることによって、基部40の肩カバー部41の溝41cの壁部41dまたは壁部41eに係合しない状態、すなわち、基部40に対するキャップ150の回転の規制が解除される状態に変形させられる。したがって、エアゾール式製品110は、基部40に対するキャップ150の回転位置がガス抜き位置になることができるので、第1の実施の形態に係るエアゾール式製品10のガス抜き時の機能と同様の機能を発揮することができる。
【0058】
このように、本発明のエアゾール式製品は、第1の実施の形態において説明した切り離しや、本実施の形態において説明した折り曲げなどのような回転規制部材の変形態様の種類にかかわらず、支持部材に対するキャップの回転の規制が解除される状態へ変形可能に回転規制部材が設けられていれば良い。
【符号の説明】
【0059】
10 エアゾール式製品
20 エアゾール容器
30 噴射装置
40 基部(支持部材)
43 ノズル
43d 噴射口
45 噴射ボタン
50 キャップ
51b 壁部(噴射口対向壁部)
53 キャップ側ボタン
55 ガス抜きタブ(ガス抜き部材)
56 回転規制タブ(回転規制部材)
110 エアゾール式製品
130 噴射装置
150 キャップ
156 回転規制タブ(回転規制部材)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器の内容物の噴射を行うためのノズルと、押されることによって前記ノズルに前記噴射を行わせるための噴射ボタンと、前記噴射ボタンを覆うキャップと、前記キャップを回転可能に支持する支持部材と、前記支持部材に対する前記キャップの回転の規制を行う回転規制部材とを備え、
前記支持部材に対する前記キャップの回転位置は、前記噴射が許可される噴射許可位置と、前記エアゾール容器のガス抜きのためのガス抜き位置とを含み、
前記キャップは、前記回転位置が前記噴射許可位置のときに押されることによって前記噴射ボタンを押すキャップ側ボタンと、前記回転位置が前記ガス抜き位置のときに前記噴射ボタンを押し続けるガス抜き部材とを有し、
前記回転規制部材は、前記回転位置が前記ガス抜き位置になることを前記規制によって妨げており、前記規制が解除される状態へ変形可能に前記キャップおよび前記支持部材の少なくとも一方に設けられていることを特徴とする噴射装置。
【請求項2】
前記変形は、切り離しであることを特徴とする請求項1に記載の噴射装置。
【請求項3】
前記回転位置は、前記噴射が禁止される噴射禁止位置を含み、
前記回転規制部材は、前記噴射許可位置および前記噴射禁止位置の位置決めを行う部材であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の噴射装置。
【請求項4】
前記キャップは、前記回転位置が前記ガス抜き位置のときに前記ノズルの噴射口に対向する噴射口対向壁部を有していることを特徴する請求項1から請求項3までの何れかに記載の噴射装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までの何れかに記載の噴射装置と、前記噴射装置が取り付けられたエアゾール容器とを備えていることを特徴とするエアゾール式製品。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−189024(P2010−189024A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34099(P2009−34099)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【Fターム(参考)】