説明

嚥下性に優れた食品及び調味料

【課題】液状食品に限定されず、食品本来の形や味を損ねず、かつ嚥下特性に優れる食品の提供。
【解決手段】嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人が摂食の困難な食品とオクラ、モロヘイヤ及びメカブから選ばれる1種以上の3mm幅以下の輪切り、微塵切り又は擂り潰しとが均一に混ぜ込まれ、加熱調理された嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は嚥下性に優れた食品及び嚥下性付与性に優れた調味料に関する。さらに詳しくは、輪切りした、微塵切りした又は擂り潰したオクラ、モロヘイヤ又はメカブを嚥下補助素材として使用した食品及び調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢になるにつれ、さまざまな身体機能の低下が生じてくる。その一つに嚥下機能の低下がある。嚥下が困難な人は嚥下時に食品が誤って気管に流入するいわゆる誤嚥が生じ、肺炎や窒息死等の原因となる。そのため、ミキサー食(だし汁又は水ととろみ剤とともにミキサーにかける)や刻み食(だし汁又は水ととろみ剤とともにフードカッターにかける)が供される。
【0003】
しかしながら、嚥下が困難となっても昔食べた懐かしい味は忘れられず、その食品への郷愁は募るばかりである。そのため、経口摂取が可能な食品を提供しようとする研究(例えば、非特許文献1、2参照。)が多く行われ、これらの食品を作るために、増粘剤や配合の調整が行われたり、機能素材が添加されたり、いろいろな試みがなされ、多数関連特許が提出されている。
【0004】
すなわち、嚥下が困難な人に適した食品として、1)食塊形成性(食品の口中でのまとまりやすさ)に優れること、2)のどへの付着性が少ないことなどが挙げられ、このようなテクスチャー条件を満たす食品、あるいは既存食品にかかる性質を付与するためのゲル化剤、増粘剤の開発が種々検討されている。既存食品のテクスチャーを上記のごとく改良するゲル化剤、増粘剤としては、例えば、「キサンタンガム含有流動状食品」(特許文献1)にみられるキサンタンガム、「易嚥下補助組成物並びにこれを用いた食品組成物及び医薬品用組成物」(特許文献2)にみられるタラガム及び/又はローカストビーンガムとキサンタンガムの併用、「嚥下補助食品」(特許文献3)にみられるローメトキシルペクチン、アルギン酸ナトリウム及びカラギナンから選択される1種類又は2種類以上の併用、「液状食品粘稠化剤」(特許文献4)にみられるタピオカ澱粉又はバレイショ澱粉の使用、「ゲル状組成物及びその製造方法」(特許文献5)にみられる寒天及び/又はファーセルランとネイティブ型ジェランガムの併用、κカラギナンとキサンタンガム及び/又はネイティブ型ジェランガムの併用、及びジェランガムとグアーガム及び/又はローカストビーンガムの併用等が知られている。
【0005】
ゲル化剤や増粘剤を利用して、食品物性を嚥下しやすいものに改良するためには素材の選択と使用量の設定が重要である。脱アシル型ジェランガムや寒天は、食品工業の分野で汎用される代表的なゲル化剤である。しかし、これらの素材は総じて脆い食感のゲルを形成し、一度破砕したゲルは再結着しにくいという性質を有する。また、脆さを低減するために低濃度で使用すると、離水が多くなるという問題もある。つまり、これらのゲルは咀嚼したときに均一な食塊を形成しにくく、嚥下が困難な人用の食品の基盤素材として必ずしも有効ではない。一方、サイリウムシードガムは、食品の保水性を向上させる素材として知られており、例えば、ゼリー状食品の離水防止及び食感改良の目的で他のゼリー化剤と併用できる(特許文献6)。
【0006】
しかし、食品への応用に際しては、サイリウムシードガムが有する高い粘稠性が問題となることがある。サイリウムシードガムの粘稠性を抑える方法として、化工澱粉、アラビアガム、アラビノガラクタン、グアーガム分解物、プルラン、食物繊維及びこれらの組合
せから選択されるサイリウム粘性低下用多糖類(特許文献7)、多糖類を造粒したサイリウム粘性低下造粒多糖類(特許文献8)などが知られているものの、飲み込み時に喉(咽頭相)へ付着する性質が依然として強いため、嚥下が困難な人用の食品の基盤素材として使用されることは殆どない。
【0007】
サイリウムシードガムと他のゲル化剤、増粘剤との併用も知られており、例えば、「易嚥下補助組成物並びにこれを用いた食品用組成物及び医薬品用組成物」(特許文献2)にみられるようにタラガム及び又はローカストビーンガムとキサンタンガムとを併用してなる易嚥下補助組成物に、食塊形成性を付与する目的でサイリウムシードガムを配合する方法が記載されている。しかし、この補助組成物も粘稠性、付着性が依然として高く、必ずしも優れた飲み込み特性を再現できるわけではない。また、サイリウムシードガムを添加することで、特有の植物臭が付与され、透明性が低下するなど、嗜好性の面で劣る。
【0008】
ところが、それらはいずれも高齢者になじみの薄い食品添加物である増粘剤などが用いられ、高齢者に親しみにくいこと、それら増粘剤からなる嚥下補助剤をお茶やジュース、汁物に加えたときに不味いことなどが問題となっている。このため、高齢者の認知度も高い天然素材:寒天とコンニャク粉などを使用したもの(特許文献9)が提案されている。しかしながら、高齢者になじみのある天然素材である寒天とコンニャク粉を併用すると、食品の味の再現が難しい。
【0009】
【特許文献1】特開平11−318356号公報
【特許文献2】特開2000−191553号公報
【特許文献3】特開2000−325041号公報
【特許文献4】特開平5−38262号公報
【特許文献5】特開2002−300854号公報
【特許文献6】特開昭60−137252号公報
【特許文献7】特許第2977823号公報
【特許文献8】特開2001−103934号公報
【特許文献9】特開2004−159529号公報
【非特許文献1】渡瀬峰男,「嚥下障害者及び高齢者に向く嚥下食の開発の研究基礎と応用−1−」,NewFoodIndustry,(株)食品資材研究会,平成11年2月1日,第41巻,第2号,P.71−79
【非特許文献2】高橋智子ら,「市販増粘剤を用いた飲料の飲み込み特性及び力学的特性の特徴−市販増粘剤の使い易さも含めて−」,NewFoodIndustry,(株)食品資材研究会,平成14年3月1日,第44巻,第3号,P.33−41
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
食品と混ぜることにより食品にとろみをつけて飲み込みやすくするための嚥下補助食品(とろみ剤)が市販されている。嚥下補助食品の主原料は上記した多糖類である。嚥下補助食品と混ぜることができる食品は、水、ジュース、スープ、味噌汁、流動食などの液状の食品に限られるという問題点がある。また、嚥下補助食品は無味無臭で食品本来の味を損ねることがないと謳われているものの、実際には食品本来の形や味を大きく損ねることが多く、嚥下が困難な人に喜んで受け入れられているわけではない。そこで、本発明の目的は、液状食品に限定されず、食品本来の形や味を損ねず、かつ嚥下性に優れる食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者はさまざまなゲル化素材の組み合わせや配合比率について鋭意研究した結果、オクラ、モロヘイヤ及びメカブから選ばれる1種以上の3mm幅以下の輪切り、微塵切り又は擂り潰しが加熱殺菌後の増粘性に優れ、1重量%という比較的少量で、食品本来の味を損ねることなく、嚥下性を食品に付与できることを発見し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人が摂食の困難な食品とオクラ、モロヘイヤ及びメカブから選ばれる1種以上の3mm幅以下の輪切り、微塵切り又は擂り潰しとが均一に混ぜ込まれ、加熱調理された嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の食品を提供する。上記食材以外にも、ぬめりのある食材として、つるな、つるむらさき、モズク、長いも、とろろ芋、昆布、サトイモ、明日葉、なめこ、えのき茸など多くの食材が知られているが、加熱調理後も少量の添加量で充分な嚥下性を付与することができる食材は、オクラ、モロヘイヤおよびメカブであった。加工食品を流通させるためには加熱調理が必須であることから、加熱調理後も充分な嚥下性を付与できる特性は非常に重要となる。また、オクラ、モロヘイヤ及びメカブから選ばれる1種以上の3mm幅以下の輪切り、微塵切り又は擂り潰しは食品に混ぜても食品本来の味を損ねることがなく、さらに、食品の色彩を変化させることもない。食品の外観、特に色彩は、食品の味と同様非常に重要な要素であり、食品の色彩が食品本来の色彩と著しく異なる場合には食欲を減退させかねない。したがって、食品本来の味及び色彩を損ねない特性も非常に重要である。本発明の嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の食品は、加熱調理後の嚥下性に優れているという特性と、食品本来の味、形及び色彩を損ねないという特性を兼ね備えるものであり、非常に優れた発明である。
オクラ、モロヘイヤ及びメカブから選ばれる1種以上の3mm幅以下の輪切り、微塵切り又は擂り潰しの量は嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人が摂食の困難な食品に対して1重量%以上50重量%以下であることが好ましく、1重量%以上10重量%以下であることがより好ましい。この範囲の添加量だと優れた嚥下性が発揮されやすい。
嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人が摂食の困難な食品の好ましい例として、卯の花煮、ひじき煮、切干大根煮、卵焼き、だし巻き卵、スクランブルエッグ、ポテトサラダ、大豆煮、おにぎり、炒飯、炊き込みご飯、ちらし寿司、巻き寿司、握り寿司及びカレーライス等が挙げられる。
【0013】
本発明者は、さらに、オクラ、モロヘイヤ及びメカブから選ばれる1種以上の3mm幅以下の輪切り、微塵切り又は擂り潰しは食品だけでなく調味料にも適用でき、嚥下性付与性を備えた調味料を提供できることを見出した。
【0014】
すなわち、本発明は、調味料とオクラ、モロヘイヤ及びメカブから選ばれる1種以上の3mm幅以下の輪切り、微塵切り又は擂り潰しとが均一に混ぜ込まれ、加熱調理された嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の調味料を提供する。本発明の嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の調味料は、通常の食品に使用することで食品を嚥下し易くすることが可能となり、本発明の嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の食品と同様の効果を得ることができる。本発明の嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の調味料は、食品本来の味や形を変化させることがない。
オクラ、モロヘイヤ及びメカブから選ばれる1種以上の3mm幅以下の輪切り、微塵切り又は擂り潰しの量は調味料に対して5重量%以上50重量%以下であることが好ましい。この範囲の添加量だと優れた嚥下性が発揮されやすい。
調味料の好ましい例として、酢、味噌、マヨネーズ及び醤油等が挙げられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、嚥下性に欠ける食品を、その食品の本来の形や味をほとんど変えることなく、嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人がたやすく摂食できる食品として提供できる。そして、ほとんどを高齢者が占める嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人の食の楽しみを広げ、ひいては食欲や健康状態の向上につながる。また、本発明の嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の調味料を用いると、嚥下性に欠ける食品に十分な嚥下性を容易に与えることができる。このように、本発明は嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人の生活の質(QOL)を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の食品及び嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の調味料について詳細に説明する。
【0017】
本発明の嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の食品は、嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人が摂食の困難な食品とオクラ、モロヘイヤ及びメカブから選ばれる1種以上の3mm幅以下の輪切り、微塵切り又は擂り潰しとが均一に混ぜ込まれ、加熱調理されたことを特徴としている。
【0018】
嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人とは、加齢により、又は神経・筋の疾患により、健常者に比べて物を飲み込む力(嚥下力)が低下している者をいい、嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人は通常の食品を食べると誤って気管に流入させて誤嚥が生じるおそれがある。したがって、嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人は流動食や通常の食事をフードプロセッサで細かくしたもの等の飲み込みやすい食品しか食べさせてもらえない。嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人が摂食の困難な食品とは、嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人が摂食し易いように加工や調理等されていない食品をいい、健常者が普通に食べているあらゆる食品が含まれる。嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人が摂食の困難な食品は、主食であっても惣菜であってもよい。嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人が摂食の困難な食品の具体的な例として、卯の花煮、ひじき煮、切干大根煮、卵焼き、だし巻き卵、スクランブルエッグ、ポテトサラダ、大豆煮、おにぎり、炒飯、炊き込みご飯、ちらし寿司、巻き寿司、握り寿司、カレーライス、里芋煮、きんぴらごぼう及び白飯等が挙げられるが、これらに限られない。
【0019】
オクラ、モロヘイヤ及びメカブから選ばれる1種以上の3mm幅以下の輪切り、微塵切り又は擂り潰しとは、オクラ、モロヘイヤ又はメカブの可食部分を包丁、おろし金、すり鉢、フードプロセッサ等の一般的な調理器具を使って3mm幅以下に輪切りした、微塵切りした又は擂り潰したものをいい、一緒に混ぜ合わせる食品を飲み込みやすくさせる(嚥下性付与性)という優れた効果を有している。しかも、加熱によっても嚥下性付与性は低下しない。オクラ、モロヘイヤ及びメカブは単独で用いてもよく、任意の複数を組み合わせたものを用いてもよい。また、3mm幅以下に輪切りしたもの、微塵切りしたもの及び擂り潰したものを単独で用いてもよく任意の複数を組み合わせて用いてもよい。オクラ、モロヘイヤ及びメカブから選ばれる1種以上の3mm幅以下の輪切り、微塵切り又は擂り潰しの添加量は、特に限定されない。オクラ、モロヘイヤ又はメカブは天然物であるため、品種、栽培地、栽培条件、収穫時期等によってその効果は左右される。また、一緒に加える食品によっても添加量は左右される。当業者であれば、十分な嚥下性付与性が発揮できるように添加量を適宜調整することが可能である。通常、オクラ、モロヘイヤ及びメカブから選ばれる1種以上の3mm幅以下の輪切り、微塵切り又は擂り潰しの添加量は、一緒に加える食品に対して1重量%以上50重量%以下である。より好ましくは、1重量%以上10重量%以下である。さらに好ましくは、3重量%以上7重量%以下である。
【0020】
嚥下性付与の効果を最大限に発揮させるために、本発明の嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の食品とオクラ、モロヘイヤ及びメカブから選ばれる1種以上の3mm幅以下の輪切り、微塵切り又は擂り潰しとを均一に混ぜ込む。均一に混ぜ込まずに単にトッピングしただけではこの効果を十分発揮できない。混ぜ込み方は特に限定されず、食品の種類に応じて一般的な調理方法に従って適宜行うことができる。
【0021】
加熱調理とは、焼く、炒める、揚げる、炊く、ゆでる、煮る、蒸す等の一般的な加熱調理をいう。加熱時間及び加熱温度は食品によって異なるが、一般的な調理の加熱温度及び時間でよい。加熱調理は、嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人が摂食の困難な食品とオクラ、モロヘイヤ及びメカブから選ばれる1種以上の3mm幅以下の輪切り、微塵切り又は擂り潰しとを混ぜた後に行ってもよく、各々を加熱調理した後に両者を混ぜてもよい。好ましくは、嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人が摂食の困難な食品とオクラ、モロヘイヤ及びメカブから選ばれる1種以上の3mm幅以下の輪切り、微塵切り又は擂り潰しとを別々に加熱調理し、両者を混ぜる。オクラ、モロヘイヤ又はメカブの3mm幅以下の輪切り、微塵切り又は擂り潰しと加熱とは、どちらを先に行っても構わないが、加熱が先である方が好ましい。より好ましい形態では、オクラ、モロヘイヤ又はメカブをゆでた後、3mm幅以下の輪切り、微塵切り又は擂り潰したものを使用する。
【0022】
本発明の嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の食品は、本発明の効果に支障を与えない限度で、寒天、コンニャク粉を加えてもよい。寒天の種類としては、特に限定されるものではないが、物性の特徴として高ゼリー強度、低ゼリー強度、易溶性、高粘度、低粘度品などがあり、原料海藻として、マクサ、オゴノリ、オバクサ、イタニグサ、オオオゴノリなどがある。コンニャク粉は、サトイモ科の植物であるコンニャクイモAmorphophallusKonjackochの根茎を乾燥し粉砕したものがある。また、水溶性食物繊維、グアーガム分解物、大豆多糖類、ポリデキストリン、難消化性デキストリン等を配合することにより食品になめらかさを与え、離水を抑えることができる。さらに、本発明の嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の食品は、調製する際、必要に応じて、増粘剤、酸味料、着色料及び香料などの食品添加物、糖類、乳成分、果汁、機能性素材などを添加してもよい。好ましい添加物としては、寒天及び増粘剤が挙げられる。寒天及び増粘剤を単独で又は両方を添加することで、嚥下性をさらに改善できる場合がある。
【0023】
本発明の嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の食品の作り方の例は以下の通りである。まず、通常の方法で嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人が摂食の困難な食品を加熱調理し、一方でオクラ、モロヘイヤ又はメカブを加熱調理した後、包丁などを使って3mm幅以下の輪切り、微塵切り又は擂り潰し、両者を均一となるように混ぜ込む。嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人が摂食の困難な食品とオクラ、モロヘイヤ及びメカブから選ばれる1種以上の3mm幅以下の輪切り、微塵切り又は擂り潰しとを均一となるように混ぜ込んだ後に加熱調理しても、本発明の嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の食品を作ることができる。当業者であれば、食品に応じた適切な調理方法を適用することが可能である。
【0024】
本発明の嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の食品の好ましい形態は、嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人が摂食の困難な食品に対し調理前または調理後食品1重量%以上10重量%未満のオクラ、モロヘイヤまたはメカブの微塵切りまたは擂り潰し成分を混合し、1分以上加熱調理してなることを特徴とする嚥下性に優れた食品である。本発明の嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の食品の別の好ましい形態は、混合前食品重量の3重量%以上7重量%以下のオクラ、モロヘイヤまたはメカブの微塵切りまたは擂り潰し成分を含む上記食品である。本発明の嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の食品のさらに別の好ましい形態は、嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人が摂食の困難な食品が、卯の花、ひじき煮、切干大根煮、卵焼き、出し巻き、スクランブルエッグ、ポテトサラダ、ご飯ものからなる群から選ばれる上記食品である。
【0025】
本発明の嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の調味料は、調味料とオクラ、モロヘイヤ及びメカブから選ばれる1種以上の3mm幅以下の輪切り、微塵切り又は擂り潰しとが均一に混ぜ込まれ、加熱調理されたことを特徴としている。本発明の嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の調味料は嚥下性付与性を有しており、本発明の嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の調味料を使用した食品は嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人でも容易に飲み込むことができるようになる。
【0026】
調味料の具体例として、調味料は酢、味噌、マヨネーズ及び醤油等が挙げられるが、これらに限られない。
【0027】
オクラ、モロヘイヤ及びメカブから選ばれる1種以上の3mm幅以下の輪切り、微塵切り又は擂り潰しの添加量は特に限定されない。上述の通り、オクラ、モロヘイヤ又はメカブは天然物であるため、品種、栽培地、栽培条件、収穫時期等によってその効果は左右され、また、一緒に加える調味料によっても添加量は左右される。当業者であれば、十分な嚥下性付与性が発揮できるように添加量を適宜調整することが可能である。通常、オクラ、モロヘイヤ及びメカブから選ばれる1種以上の3mm幅以下の輪切り、微塵切り又は擂り潰しの添加量は、一緒に加える調味料に対して5重量%以上50重量%以下である。より詳細には、調味料が酢の場合、合わせ酢に対して20重量%以上50重量%以下のオクラ、モロヘイヤ及びメカブから選ばれる1種以上の3mm幅以下の輪切り、微塵切り又は擂り潰しを加えることが好ましい。調味料が味噌の場合、練り味噌に対して5重量%以上30重量%以下のオクラ、モロヘイヤ及びメカブから選ばれる1種以上の3mm幅以下の輪切り、微塵切り又は擂り潰しを加えることが好ましい。調味料がマヨネーズの場合、マヨネーズに対して5重量%以上30重量%以下のオクラ、モロヘイヤ及びメカブから選ばれる1種以上の3mm幅以下の輪切り、微塵切り又は擂り潰しを加えることが好ましい。調味料が醤油の場合、醤油に対して20重量%以上50重量%以下のオクラ、モロヘイヤ及びメカブから選ばれる1種以上の3mm幅以下の輪切り、微塵切り又は擂り潰しを加えることが好ましい。
【0028】
加熱調理は本発明の嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の食品の説明において述べた通りである。また、本発明の嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の調味料は、本発明の嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の食品の説明において述べたような添加物等を添加してもよい。
【0029】
本発明の嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の調味料の作り方の例は以下の通りである。オクラ、モロヘイヤ又はメカブを加熱調理した後、包丁などを使って3mm幅以下の輪切り、微塵切り又は擂り潰し、調味料と均一になるように混ぜ込む。調味料とオクラ、モロヘイヤ及びメカブから選ばれる1種以上の3mm幅以下の輪切り、微塵切り又は擂り潰しとを均一となるように混ぜ込んだ後に加熱調理しても、本発明の嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の調味料を作ることができる。当業者であれば、調味料に応じた適切な調理方法を適用することが可能である。
【0030】
本発明の嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の調味料の好ましい形態は、酢の物又は寿司用合わせ酢100重量部に対し加熱調理したオクラ、モロヘイヤまたはメカブの微塵切りまたは擂り潰し成分20〜50重量部を含むことを特徴とする嚥下性付与合わせ酢である。本発明の嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の調味料の別の好ましい形態は、味噌100重量部に対し加熱調理したオクラ、モロヘイヤまたはメカブの微塵切りまたは擂り潰し成分5〜30重量部を含むことを特徴とする嚥下性付与合わせ味噌である。本発明の嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の調味料のさらに別の好ましい形態は、マヨネーズ100重量部に対し加熱調理したオクラ、モロヘイヤまたはメカブの微塵切りまたは擂り潰し成分50〜30重量部を含むことを特徴とする嚥下性付与合わせマヨネーズである。本発明の嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の調味料のさらに別の好ましい形態は、かけ醤油100重量部に対し加熱調理したオクラ、モロヘイヤまたはメカブの微塵切りまたは擂り潰し成分20〜50重量部を含むことを特徴とする嚥下性付与合わせかけ醤油である。
【実施例】
【0031】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限するものではない。
【0032】
のど越し(嚥下性)の良い食べ物(惣菜・米飯・調味料)をつくるために加える食材を以下のようにして検討した。
以下の天然食材を加熱して、小さく切った後、みじん切り又はさらに擂り潰してペースト状にして、のど越しを良くしたい食品にそのまま、又は、水(だし汁、その他液体)に分散させて加える。また、加熱しないで、のど越しを良くする食品にそのまま加えてから共に加熱してもよい。
・オクラ:生のまま刻んでもヌメリはあるが、混ぜ込むオクラは1分ほどゆでて、ごく薄い小口切り(1mm)で使用、又は、それをみじんに切って使用。又は擂り潰す
・メカブ:上記オクラと同様に調理する。
・モロヘイヤ:茹でて1ミリ角のみじん切りにして使った。モロヘイヤはオクラに比べて、粘りの力が弱い場合もあるが、新鮮なものはオクラより粘りの力は強い場合もあった。
・モズク:加熱する時間が長くなると、粘り気がかなり落ちる。
・なめこ:上記オクラと同様に調理する。加熱しても粘り気は落ちない。加熱時間が長くなると僅かに落ちる。経済性、色彩等を考慮すると適当でないと判断した。
・えのき茸、生椎茸:上記オクラと同様に調理する。なめこに比べるとぬめりは非常に低い。これを材料に使えるほどの粘りではない。
・ツルムラサキ、ツルナ:上記オクラと同様に調理する。僅かに感じる粘りで、これを材料に使えるほどの粘りではない。
・サトイモ:上記オクラと同様に調理する。これをぬめり材料に使えるほどの粘りではない。
・じゅん菜:上記オクラと同様に調理する。粘りは強いが、豊富にある原料ではなく、価格的にも使いにくい。
・昆布:上記オクラと同様に調理する。加熱すると粘りは減少し、その後消失。使えない。
・長芋、菊芋、掌芋、自然薯:上記オクラと同様に調理する。加熱すると粘りは減少し、その後消失。使えない。
以上の結果、加熱調理後の粘性及び価格から、嚥下性付与性食材としてオクラ、モロヘイヤ及びメカブを選択した。年中安定した安い価格で手に入るので好ましい。また、特にオクラは組み合わせた食品の味や見た目を損なうことも少ない。
【0033】
〔ご飯もの実施例〕
オクラ、モロヘイヤともみじん切りにし、加熱調理して使用した。
・おにぎり
(オクラ)0.1cm×2cmカットの塩吹き昆布を混ぜたご飯100gについて5g(5%)混合したものは、嚥下性が改善できた。
(モロヘイヤ)オクラと同%で同じ効果が得られた。
・炒飯
(オクラ)最初から、他の具と共に炒めたがネバネバは失われていなかった。1合(310g)のご飯につき10g(3.2%)を混合した。卵の部分は卵1個(60g)につき10g(約17%)を加え十分混合し、通常のご飯と同様に加熱した。のど越しは良かった。卵の部分ものど越しが良かった。卵のオクラ量はもっと減らしても十分な嚥下性が得られる。
(モロヘイヤ)同%で試みたが結果も同じ効果が得られた。
・炊き込みご飯
(オクラ)人参、ごぼう、揚げを加えて炊いた。3合につき10g(1%強)だったが、のど越しは加えないよりよくなっているが嚥下性は不十分である。
(モロヘイヤ)炊き込みご飯がたけたところへ後混ぜした。オクラと同じ量で効果はオクラと同程度の嚥下性が得られた。
・ちらし寿司、巻き寿司、握り寿司
(オクラ)ご飯2合分に10g(約1.5%)を混合した。オクラの風味や粘りは酢味とも合う。のど越しはとてもよかったので、1%程度での嚥下性が得られる。
(モロヘイヤ)ご飯2合分に10g(約1.5%)を混合した。酢味とも合う。のど越しはよい。ちらし寿司の具は種類を選び小さく切る。具は人参、筍、椎茸、卵焼き。巻き寿司は歯切れの良い焼きのりを使い、巻き芯の種類を選ぶ。巻き芯は卵焼き、刻みあなご、刻み三つ葉、刻み干瓢。(切るとばらばらになった)。握り寿司はネタを選ぶ。玉子にオクラを混ぜ込んで焼いた握り(玉)は嚥下性は良好であった。ご飯物の場合、軟らかめであっても普通のご飯の範疇の場合はご飯粒の周りをオクラが取り囲んで、のど越しがよくなる。
【0034】
〔麺類の実施例〕
・ぶっかけ素麺
(オクラ)みじん切りのオクラをゆでた素麺の3%量、麺つゆに混ぜ込み、その麺つゆをかけた。のど越しが良くなった
(モロヘイヤ)も同様であった。
・酢味噌素麺
(オクラ)みじん切りのオクラをゆでた素麺の3%量、酢味噌に加えて混ぜ、それで素麺を和えた。のど越しがよくなった。
(モロヘイヤ)も同様であった。
・マヨネーズ和え素麺
(オクラ)みじん切りのオクラをゆでた素麺の3%量、マヨネーズに混ぜ込み、素麺を和えた。のど越しが良くなった。
(モロヘイヤ)も同様であった。
【0035】
〔和惣菜の実施例〕
・卯の花煮
3%は0%と同様に、のど越し効果は感じられなかった。
10%はヌルッ、ツルッとして、卯の花を食べている感じではない。
7%はのど越し効果がある。
5%はのど越し効果はあるが、やや弱い。
・切干大根煮
炊く時に最初から加えた。3%以上7%以下でのど越しはよく、味に違和感はない。
・ひじき煮
ひじき煮に1%加えたが、0%と変わりない。また、ひじき煮に2.5%加えたが、変わりない。しかし、ひじき煮に5%加えた場合、少し粘りが出て、飲み込みやすくなった。ひじき煮に10%加えると、あきらかに飲み込みやすい。7,8%が最適で、味にも違和感がなかった。
・玉子焼き
3%以上7%でのど越しはよく、味に違和感はない。
・焼きなす
元々、のど越しが良いほうの食品だが、5%でさらに良くなった。
・大根おろし
20%以上の濃度を含有する合わせ醤油でのど越しが良くなる。釜揚げシラスを加えるのも可能となった。しかし、50%以上を含有すると、違和感が生ずる。したがって、醤油100重量部に対し20〜50重量部含有の加熱した微塵切り及び擂り潰したオクラ又はモロヘイヤはのど越しのよい合わせ醤油を形成した。
・のど越しの良い煉り味噌
(オクラ)練り味噌50gに5g(10%)加えて混ぜても、のど越しがよくならなかったが、出汁でゆるくすれば(5%程度)、この濃度でもてきめん効果が現われた。しかし、味の面では30%が限度である。
・のど越しのよいマヨネーズ
(オクラ)マヨネーズ25gに5g(20%)加えて混ぜ、ポテトサラダで試した。のど越しがよくなった。5%程度から効果があるが、30%超えると、味に違和感が出る。
・わかめ酢の物
20%以上の濃度を含有する合わせ酢でのど越しが良くなる。釜揚げシラスを加えるのも可能となった。しかし、50%以上を含有すると、違和感が生ずる。したがって、合わせ酢100重量部に対し20〜50重量部含有の加熱した微塵切り及び擂り潰したオクラ又はモロヘイヤはのど越しのよい合わせ酢を形成した。
【0036】
本発明の嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の食品及び嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の調味料の飲み込み易さ、味及び見た目について客観的な評価を行うため、健常人(嚥下に困難のない人)を評価者とした官能試験を行った。本発明の嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の食品及び対照である通常の食品の2種類(A及びB)を用意し、被験者にはA及びBのどちらが本発明の嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の食品であるかを伏せて試食してもらった。評価は飲み込み易さ、美味しさ及び見た目の3項目である。評価は以下の5段階で行った:AはBよりも非常に優れる、AはBよりも優れる、AとBは同等である、AはBよりも劣る、AはBよりも非常に劣る。
【0037】
なお、健常人を評価者とした官能試験を行ったのは、嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人の試食は危険が伴うからである。嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人が試食し、万が一、誤嚥が生じた場合、嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人は肺炎や窒息死を起こしかねない。特に、通常の食品を試食した場合には誤嚥の危険性は非常に高い。嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人を危険にさらす官能試験は行うべきではないため、健常者を評価者とした官能試験を行った。
【0038】
本発明の嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の食品(A)が対照の食品(B)よりも非常に優れる場合は5、優れる場合は4、同等の場合には3、劣る場合には2、非常に劣る場合には1とし、結果を表にまとめた。
【0039】
試験例1:卯の花煮
Aは、ゆでた粗微塵切りのオクラを、卯の花煮(B)に対して5%(w/w)混ぜ込んだもの。12名に評価してもらった。結果を表1に示す。表中の数字は、各評価を下した評価者の人数を表し、空欄はその評価を下した評価者がいなかった(0人)ことを表す。
【表1】

【0040】
試験例2:ひじきの煮物
Aは、ゆでた微塵切りのオクラを、ひじきの煮物(B)対して8%(w/w)混ぜ込んだもの。11名に評価してもらった。結果を表2に示す。
【表2】

【0041】
試験例3:切干大根煮
Aは、ゆでた1mm幅の輪切りのオクラを、切干大根煮(B)に対して8%(w/w)混ぜ込んだものを13名に評価してもらった。結果を表3に示す。
【表3】

【0042】
試験例4:卵焼き(1)
Aは、ゆでた粗微塵切りのオクラを溶き卵に対して10%(w/w)加えて作った卵焼き。Bは、オクラを加えずに作った卵焼き。10名に評価してもらった。結果を表4に示す。
【表4】

【0043】
試験例5:卵焼き(2)
Aは、ゆでた1mm幅の輪切りのオクラを溶き卵に対して40%(w/w)加えて作った卵焼き。Bは、オクラを加えずに作った卵焼き。11名に評価してもらった。結果を表5に示す。
【表5】

【0044】
試験例6:だし巻き卵
Aは、ゆでた粗微塵切りのオクラを、10%のだし汁を加えた溶き卵に対して10%(w/w)加えて作っただし巻き卵。Bは、オクラを加えずに作っただし巻き卵。14名に評価してもらった。結果を表6に示す。
【表6】

【0045】
試験例7:スクランブルエッグ
Aは、ゆでた1mm幅の輪切りのオクラを10%(v/w)の牛乳を加えた溶き卵に対して10%(w/w)加えて作ったスクランブルエッグ。Bは、オクラを加えずに作ったスクランブルエッグ。13名に評価してもらった。結果を表7に示す。
【表7】

【0046】
試験例8:マッシュタイプのポテトサラダ
Aは、ゆでた微塵切りのモロヘイヤを20%(v/w)の牛乳でゆるめたポテトサラダに対して8%(w/w)加えたもの。Bは、モロヘイヤを加えずに作ったポテトサラダ。10名に評価してもらった。結果を表8に示す。
【表8】

【0047】
試験例9:軟らか大豆煮
Aは、ゆでた粗微塵切りのモロヘイヤを軟らか大豆煮に対して7%(w/w)混ぜ込んだもの。Bは、モロヘイヤを加えずに作った軟らか大豆煮。11名に評価してもらった。結果を表9に示す。
【表9】

【0048】
試験例10:おにぎり
Aは、ゆでた微塵切りのオクラを白いご飯に対して6%(w/w)混ぜ込んで作ったおにぎり。Bは、オクラを加えずに作ったおにぎり。なお、A、Bともに水加減を通常よりも20%増量して炊飯した。15名に評価してもらった。結果を表10に示す。
【表10】

【0049】
試験例11:炒飯
Aは、白いご飯に対して、7%(w/w)のゆでた1mm幅の輪切りのオクラを、炒飯が出来上がる直前に混ぜ込み、炒め合わせた炒飯。Bは、オクラを混ぜ込まずに作った炒飯。炒飯の具は、炒り卵(Aは試験例7のスクランブルエッグ)、微塵切りの焼豚及び微塵切りの椎茸である。10名に評価してもらった。結果を表11に示す。
【表11】

【0050】
試験例12:炊き込みご飯
Aは、炊き上がった炊き込みご飯に対して、ゆでた粗微塵切りのオクラを8%(w/w)混ぜ込んだもの。Bは、オクラを混ぜ込まないもの。なお、A、Bともに水加減を通常よりも20%増量して炊飯した。11名に評価してもらった。結果を表12に示す。
【表12】

【0051】
試験例13:ちらし寿司
Aは、合わせ酢を合わせたご飯(寿司ご飯)に対して、7%(w/w)のゆでた1mm幅の輪切りのオクラを他の具と一緒に混ぜ込んだちらし寿司。Bは、オクラを混ぜ込まないもの。ちらし寿司の具は、卵焼き(5mm角切り;Aは試験例5の卵焼きを使用)、微塵切りの人参と微塵切りの椎茸を煮たもの及び微塵切りの焼きあなご。なお、A、Bともに水加減を通常よりも20%増量して炊飯した。13名に評価してもらった。結果を表13に示す。
【表13】

【0052】
試験例14:巻き寿司
Aは、合わせ酢を合わせたご飯(寿司ご飯)に対して、7%(w/w)のゆでた1mm幅の輪切りのオクラを混ぜ込んだ。Bは、オクラを混ぜ込まないもの。卵焼き(Aは試験例5の卵焼きを使用)、調味した粗微塵切りの椎茸、調味した粗微塵切りのかんぴょう及び鯛でんぶの具を、寿司ご飯で巻いて巻き寿司を作った。なお、A、Bともに水加減を通常よりも20%増量して炊飯した。A、Bともに海苔は噛み切り易い海苔を焼き海苔にして用いた。また食しやすいように、A、Bともに通常よりも薄く切った。これを11名に評価してもらった。結果を表14に示す。
【表14】

【0053】
試験例15:握り寿司
Aは、合わせ酢を合わせたご飯(寿司ご飯)に対して、7%(w/w)のゆでた微塵切りのオクラを混ぜた。Bはオクラを混ぜ込まないもの。卵焼き(Aは試験例5の卵焼きを使用)、マグロ、蒸しあなご、微塵切りのゆで海老、微塵切りのゆでカニ肉などの喉ごしのよいものをネタにして握り寿司を作った。なお、A、Bともに水加減を通常よりも20%増量して炊飯した。これを11名に評価してもらった。結果を表15に示す。
【表15】

【0054】
試験例16:カレーライス
通常の具材を入れて軟らかく炊き上げたカレーソースに対して、10%(w/w)のゆでた2mm幅の輪切りのオクラを混ぜた。一方、ゆでた微塵切りのオクラを白いご飯に対して6%(w/w)混ぜ込んでものをカレーライス用のご飯とした(A)。カレーソースにもご飯にもオクラを混ぜ込まないものをBとした。なお、A、Bともに水加減を通常よりも20%増量して炊飯した。このようにして作ったカレーライスを14名に評価してもらった。結果を表16に示す。
【表16】

【0055】
試験例17:ゴーヤーチャンプルー
Aは、出来上がり直前のゴーヤーチャンプルーに対して、10%(w/w)のゆでた1mm幅の輪切りのオクラを混ぜ込んだもの。Bは、オクラを混ぜ込まないもの。11名に評価してもらった。結果を表17に示す(ただし、評価者の記入漏れがあったため、飲み込みやすさの合計人数は10名となっている)。
【表17】

【0056】
試験例18:ぶっかけ素麺
市販の麺つゆに対して、20%(w/w)のゆでて擂り潰したモロヘイヤを加えてよく混ぜたものを素麺にかけて絡めたものをAとし、市販の麺つゆを素麺にかけて絡めたものとBとした。12名に評価してもらった。結果を表18に示す(ただし、評価者の記入漏れがあったため、飲み込みやすさの合計人数も美味しさの合計人数も11名となっている)。
【表18】

【0057】
試験例19:マヨネーズ
Aは、マヨネーズに対して、30%(w/w)のゆでた粗微塵切りのオクラを混和した。マッシュタイプのポテトサラダに対して、30%(w/w)のオクラ入りのマヨネーズ(マヨネーズ分は20%(w/w))を加えたものを11名に評価してもらった。対照であるBは、マッシュタイプのポテトサラダに対して、20%(w/w)の通常のマヨネーズを加えたものである。結果を表19に示す。
【表19】

【0058】
試験例20:練り味噌
市販の練り味噌に対して、40%(w/w)の熱湯を加えてトロリとした状態にした(これをBとする)。AはBに対して、30%(w/w)のゆでた微塵切りのメカブを混和した。軟らかく炊いた大根に対して、20%(w/w)のB又は26%(w/w)のAをかけた風呂吹き大根を用意し、11名に評価してもらった。結果を表20に示す。
【表20】

【0059】
試験例21:かけ醤油
市販の醤油に対して、20%(w/w)の濃いかつお出し汁及び3%(w/w)の砂糖を加える(これをBとする)。AはBに対して、30%(w/w)のゆでた微塵切りのオクラを加えた。ゆでたほうれん草に、A又はBのかけ醤油を10%(v/w)かけて13名に評価してもらった。結果を表21に示す。
【表21】

【0060】
試験例22:合わせ酢
市販の合わせ酢(これをBとする)に対して、60%(w/w)のゆでた微塵切りのメカブを加えてAとした。白いご飯に、A又はBの合わせ酢を7%(v/w)混ぜて寿司ご飯を作り、具を入れずにこのまま13名に評価してもらった。結果を表22に示す。
【表22】

【0061】
試験例23:味噌汁
Bは、通常の方法で作ったジャガイモとワカメの入った味噌汁。Aは、Bを作り始める段階で、味噌汁の1%(w/w)のみじん切りのメカブを加えたもの。12名に評価してもらった。結果を表23に示す。
【表23】

【0062】
試験例24:お吸い物
Bは、通常の方法で作ったほうれん草と豆腐の入ったお吸い物。Aは、Bを作り始める段階で、お吸い物の1%(w/w)のみじん切りのメカブを加えたもの。13名に評価してもらった。結果を表24に示す(ただし、評価者の記入漏れがあったため、飲み込みやすさの合計人数は12名となっている)。
【表24】

【0063】
上記試験例から明らかなように、本発明の嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の食品及び嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の調味料は、飲み込み易さ、美味しさ及び見た目に優れている。
【0064】
市販のとろみ剤を加えた食品についても、上記試験例と同様に、健常人を評価者とした官能試験を行った。Bは通常の食品を、Cは市販のとろみ剤をBに加えたものとした。評価は以下の5段階で行った:CはBよりも非常に優れる(5)、CはBよりも優れる(4)、CとBは同等である(3)、CはBよりも劣る(2)、CはBよりも非常に劣る(1)。
【0065】
比較例1:ひじきの煮物
Bは、試験例2と同じ、通常のひじきの煮物。Cは、Bにトロミ剤(キッセイ薬品工業株式会社、商品名「スルーキング」)の5%(w/w)溶液を10%(w/w)加えたもの。13名に評価してもらった。結果を表25に示す。また、代表的な評価者のコメントとして、「トロミ剤で作った液がひじきのひとつひとつを覆って、ひじきの味をマスクしてしまい、ひじきの煮物の味が感じられず非常にまずい。」や「飲み込みやすさは、オクラの場合と大差ないが、これだけまずいと飲み込む意欲が失せそう。」というものがあった。
【表25】

【0066】
比較例1:切干大根煮
Bは試験例3と同じ、通常の切干大根煮。Cは、Bにトロミ剤(キッセイ薬品工業株式会社、商品名「スルーキング」)の5%(w/w)溶液を10%(w/w)加えたもの。13名に評価してもらった。結果を表26に示す。また、代表的な評価者のコメントとして、「トロミ剤で作った液が切干大根煮のひとつひとつを覆って、切干大根の風味が感じられず非常にまずい。」や「飲み込みやすさは、オクラの場合と差がないが、これだけまずいと食べたくない。」というものがあった。
【表26】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人が摂食の困難な食品とオクラ、モロヘイヤ及びメカブから選ばれる1種以上の3mm幅以下の輪切り、微塵切り又は擂り潰しとが均一に混ぜ込まれ、加熱調理された嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の食品。
【請求項2】
オクラ、モロヘイヤ及びメカブから選ばれる1種以上の3mm幅以下の輪切り、微塵切り又は擂り潰しの量は嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人が摂食の困難な食品に対して1重量%以上50重量%以下である、請求項1記載の食品。
【請求項3】
オクラ、モロヘイヤ及びメカブから選ばれる1種以上の3mm幅以下の輪切り、微塵切り又は擂り潰しの量は嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人が摂食の困難な食品に対して1重量%以上10重量%以下である、請求項1記載の食品。
【請求項4】
嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人が摂食の困難な食品は卯の花煮、ひじき煮、切干大根煮、卵焼き、だし巻き卵、スクランブルエッグ、ポテトサラダ、大豆煮、おにぎり、炒飯、炊き込みご飯、ちらし寿司、巻き寿司、握り寿司及びカレーライスからなる群から選ばれる請求項1〜3に記載の食品。
【請求項5】
調味料とオクラ、モロヘイヤ及びメカブから選ばれる1種以上の3mm幅以下の輪切り、微塵切り又は擂り潰しとが均一に混ぜ込まれ、加熱調理された嚥下が困難な人又は嚥下に障害のある人用の調味料。
【請求項6】
オクラ、モロヘイヤ及びメカブから選ばれる1種以上の3mm幅以下の輪切り、微塵切り又は擂り潰しの量は調味料に対して5重量%以上50重量%以下である、請求項5記載の調味料。
【請求項7】
調味料は酢、味噌、マヨネーズ及び醤油からなる群から選ばれる、請求項5記載の調味料。

【公開番号】特開2008−228729(P2008−228729A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37728(P2008−37728)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(395004874)ブンセン株式会社 (4)
【Fターム(参考)】