説明

四価金属リン酸塩およびピロリン酸塩の前駆体有機溶液と、それらの電極修飾のための使用と、>90℃の温度および/または低相対湿度で作動する燃料電池用複合膜の調製のための使用

【課題】四価金属リン酸塩およびピロリン酸塩の前駆体有機溶液と、それらの電極修飾のための使用と、>90℃の温度および/または低相対湿度で作動する燃料電池用の複合膜調製のための使用を提供する。
【解決手段】本発明は、M(IV)(OP−OH)、M(IV)[OP(OH)[OPO(OH)]およびM(IV)P(M=Zr、Hf、Ti)なる組成をもつ四価金属リン酸塩およびピロリン酸塩の前駆体有機溶液の調製に基づいている。これらの溶液の重要な一性質は、溶媒を蒸発させるときに、上記化合物が形成されることである。この特殊性によって、多孔性膜の細孔内部に、ポリマー膜中に、燃料電池の電極界面に、上記化合物を容易に挿入することが可能になる。それらの表面が酸性であるという性質、高い熱安定性および水への不溶性のため、これらの粒子は、90−130℃の温度範囲でのPEMFCの効率改善にとってきわめて関心のもたれるものとなる。非水の力を借りたM(IV)[OP(OH)[OPO(OH)]化合物類のプロトン伝導性という特別な特性は、低相対湿度でのPEMFCにおけるそれらの応用の新しい局面を開くものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四価金属リン酸塩およびピロリン酸塩の前駆体有機溶液と、それらの電極修飾のための使用と、>90℃の温度および/または低相対湿度で作動する燃料電池用複合膜の調製のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池(PEMFC)に対する関心は、これらの電気化学的発電装置が微粒子や毒性ガスを発生せず、さらに熱機関よりも性能がよいことから、かなり増大している。
【0003】
現在の自動車を燃料電池によってもたらされる新しい電気自動車で大規模に置換えることは、大都市の空気汚染に対して有益な効果をもつと期待されるだけでなく、現在の燃料燃焼の速度を低下させて、温室効果による危険をも減少させることができるであろう。
【0004】
もっとも工業化されたすべての国々における研究努力にもかかわらず、PEMFC電気自動車の大量生産は、種々の問題、特に要求される交換電流をいまだ有していない現行技術水準の電極の効率に関する問題および低相対湿度で作動するときの高いプロトン伝導性をいまだ有していない現行技術水準のプロトン伝導膜に関する問題によって、妨げられている。
【0005】
きわめて高価な白金電極および現在入手可能なペルフルオロスルホン酸タイプの膜を用いても、90℃を超える温度および70%未満の相対湿度のもとでは、PEMFCがそれらの性能を劇的に低下させる。実際に、今日の自動車用PEMFCは、70−90℃の温度範囲、75%を超える相対湿度のもとで作動することを余儀なくされており、電池の冷却、とりわけ夏季のそれ、あるいは水の取扱い・管理を複雑で、費用のかさむものとしている。
【0006】
先行特許において、電極/膜界面領域に無機粒子が存在することが、100℃を超える温度でのPEMFCの性能を相当改善することが示されている(G.Albertiら、EP1205994)。
【0007】
この重要な結果は、のちに、アメリカの研究者らによっても確認されている(L.Krishnanら、第21回ECS大会要約集、フィラデルフィア、2002年5月12−17日)。
【0008】
文献(たとえば、最近の総説:G.Alberti,M.Casciola,Annu.Rev.Res.2003,33:129およびそこでの引用文献)には、90℃を超える温度でのPEMFCの性能の改善が、これらの装置で使用される膜のポリマーマトリックス中に無機ナノ粒子を挿入することによって得られうることが報告されている。
【0009】
このように、現行技術水準の電極/膜界面領域および/または内部イオノマー膜への無機粒子の挿入の便益および経済性は、PEMFCの商業的発展にとって直接的に関連する重要性を帯びている。
【0010】
かかる挿入は、挿入すべき無機粒子が水および一般の有機溶媒に好ましくはきわめて不溶性でなければならず、しかもそれらはきわめて低い蒸気圧をもつゆえに、容易ではない。
【0011】
これらの挿入のためのきわめて有望な手順は、挿入すべき無機粒子の成分を含有する有機溶液を調製することの可能性に基づいたものである。
【0012】
かかる溶液は、好ましくは、最後に熱処理ののちに、溶媒を除去したときにのみ、不溶性の粒子が形成されるという性質を有していなければならない。それゆえ、これらの溶液は、不溶性無機粒子の可溶性前駆物質であると考えることができる。
【0013】
イオノマー膜にすでに挿入されている無機粒子の大部分は、普通には対応する金属アルコキシドの水による分解で得られるシリカあるいはチタニア、ジルコニアなどの金属酸化物を主成分としている(A.S.Arico,A.Antonucci,1999,EP0926754;Roziereら、WO0205370)。
【0014】
最近、組成がM(IV)(OP−G)2−x(OP−Ar−SOH)[式中、Gは一般的な有機または無機の基であり、Arはアリーレン基である]の四価金属リン酸塩・スルホフェニレンホスフォン酸塩の前駆体有機溶液の調製が報告されている(G.Albertiら、WO03/081691 A2)。
【0015】
リン酸ジルコニウムZr(OP−OH)などの層状四価金属リン酸塩は、酸性の薄層表面のゆえに、興味がもたれる;それゆえ、それらが、中温度燃料電池用の膜に挿入され、きわめて有望な結果が得られた(P.Costamagnaら、2002、Electrochimica Acta 47:1023;M.Yamashitaら、第201回ECS大会要約集、フィラデルフィア、2002年5月12−17日;B.Bauerら、WO03/077340 A2)。
【0016】
この場合、リン酸ジルコニウムの前駆体有機溶液は未知であったので、当該挿入は、より複雑な手順で行なわれている。特許WO96/29752では、「その場での」沈殿が用いられている。当該膜は、まず、ジルコニル塩含有溶液と接触させて、ジルコニウムとのイオン交換によって−SOH基のプロトンの置換を達成する。次に、該膜をリン酸と接触させることによって、−SOH基を再生させ、リン酸ジルコニウムの「その場での」沈殿を達成する。このように、この方法は、修飾すべきポリマー中に酸基が存在することを必要とする。特許WO03/77340 A2では、Zr(OP−OH)のアミンによる剥離過程ののちに、有機溶媒中の該化合物のゲルを調製することができる。次に、これらのゲルをイオノマーの有機溶液中に分散させる。この手順は、層状粒子が小さい孔の中へ入ることができず、それゆえそれらは多孔性膜の外表面上に留まるから、前もって成形された多孔性膜に充填するのに用いることはできない。
【0017】
最近、驚くべきことに、層状四価金属酸性リン酸塩の前駆体有機溶液も調製できることが見出され、イオノマー膜のマトリックス中への、多孔性膜の細孔の内部への容易な挿入および電極の触媒表面への析出が可能になった。
【0018】
これらの溶液の安定性に関する詳細な研究によって、その安定性は、a)有機溶媒の塩基性(この性質はそれのK値から容易に推論できる)を上昇させることによって;b)温度を低下させることによって;c)[リン酸]/[M(IV)]比を増大させることによって、増大させうることが示された。
【0019】
該前駆体溶液は、異なる[リン酸]/[M(IV)]比で調製できる。この比が正確に2である場合には、溶媒を除去後に、M(IV)(OP−OH)のみが得られる。
【0020】
しかし、場合によっては、2よりも大きい[リン酸]/[M(IV)]比を用いる方が、前駆体溶液の安定性が増すので、好都合でありうる。
【0021】
溶媒蒸発後に過剰のリン酸が残存し、それを(たとえば適当な溶媒による洗浄によって)除去しなければならないことは明らかである。
【0022】
これらの重要な結果を確信して、我々は、M(IV)[OP(OH)[OPO(OH)]などの三次元酸性リン酸塩についても前駆体溶液を調製することを試みた。
【0023】
この類のリン酸塩は最近発見されたばかりで(G.Albertiら、イタリア特許PG2003A000005)、試験した化合物のすべてが、きわめて低い(<1%)相対湿度においても、きわめて高いプロトン伝導性(100℃で1−3x10−2Scm−1)を示すゆえに、その類は大いに関心のもたれるものである。
【0024】
この場合にも、安定な前駆体溶液が形成される条件を見出すことが可能であった。かくして、この発見は、該化合物類を電極/膜界面領域に、技術水準のイオノマー膜の内部に、容易に挿入することを可能にするばかりでなく、セラミック膜またはポリマー膜の細孔の内部へそれらを挿入して、それらの潜在的用途を大幅に拡大することをも可能にする。特に関心がもたれるのが、ポリベンゾイミダゾール膜(PBI)へのそれらの挿入であり、そこでは、該三次元酸性リン酸塩が部分的にあるいは完全にリン酸塩に取って代りうる。最後に、該化合物類の熱安定性に関する検討によって、120°−130℃よりも高温で、立方晶系ピロリン酸塩M(IV)Pが形成されることが示された。それらの不溶性、高い熱安定性および化学的安定性のゆえに、それらの酸表面に関しても、M(IV)P粒子は、中温度PEMFCの電極および膜を修飾するのに用いることができる。
【0025】
ピロリン酸塩類の熱安定性のゆえに、溶媒を高温で除去することもできる。かくして、高沸点の溶媒でも、M(IV)Pの前駆体溶液の調製に使用できる。
【0026】
四価金属ピロリン酸塩の前駆体溶液は、高温で使用すべき多孔性セラミック膜に充填するのに特に適している。
【0027】
[特許文献1] EP1205994
[特許文献2] EP0926754
[特許文献3] WO0205370
[特許文献4] WO03/081691 A2
[特許文献5] WO03/077340 A2
[特許文献6] WO96/29752
[特許文献7] WO03/77340 A2
[特許文献8] イタリア特許PG2003A000005
[非特許文献1] L.Krishnanら、第21回ECS大会要約集、フィラデルフィア、2002年5月12−17日
[非特許文献2] G.Alberti,M.Casciola,Annu.Rev.Res.2003,33:129およびそこでの引用文献
[非特許文献3] P.Costamagnaら、2002、Electrochimica Acta 47:1023
[非特許文献4] M.Yamashitaら、第201回ECS大会要約集、フィラデルフィア、2002年5月12−17日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明の一つの目的は、室温またはそれより低温で十分な時間(少なくとも1時間)ゲル化あるいは沈殿を起さず、本明細書および請求の範囲に記載の使用が可能であり、それからの溶媒の蒸発によって、組成がZr(OP−OH)、M(IV)[OP(OH)[OPO(OH)]およびM(IV)Pで、立方晶系構造の不溶性化合物を直接調製できる四価金属塩およびリン酸を含有する種々の有機溶液を調製することである。しかし、他の場合には、ゲルも好ましいものでありうる。
【0029】
本発明の他の目的は、ポリマータイプかまたはセラミックタイプの多孔性膜の細孔の容易な充填を達成することである。
【0030】
本発明のさらに他の目的は、有機または無機ポリマーのマトリックスの内部への前記化合物類のナノ粒子の容易な挿入を達成するために前記の溶液類を使用することである。ただし、それらは同じ溶媒類に可溶性であるものとする。
【0031】
前記の使用は、本発明の対象である有機溶液の溶媒とは異なる溶媒に可溶性のポリマーにも及びうる。ただし、それらは前記有機溶液と混和性であるが、溶液の速やかなゲル化あるいはポリマーマトリックス中に分散されるべき化合物の沈殿を惹起することはないものとする。
【0032】
本発明のさらに他の目的は、PEMFCの電極/膜界面への前記ナノ粒子の、純粋な化合物としての、またはナフィオン、スルホン化PEKなどのプロトン伝導性イオノマーとの混合物としての、容易な挿入を達成するために、前記の溶液を使用することである。
【発明の実施の形態】
【0033】
以下の実施例は、本発明の理解を容易にするためのものであって、もっぱら特許請求の範囲の各請求項によって定義される本発明の範囲をいかようにも限定するものではない。
【0034】
M(IV)化合物の有機溶液および有機ゲルは、普通は、単一の化合物を含有する。しかし、異なる化合物の混合物も可能である。
【0035】
実施例1
この実施例は、ジルコニル塩およびリン酸を含有し、それよりα型リン酸ジルコニウムが得られるDMF溶液の詳細な調製法を例示する。これらの溶液の安定性に関する若干のデータも示す。
【0036】
無水プロピオン酸ジルコニル8.7g(マグネシウム・エレクトロン社、英国)をDMF40mLに溶解させる。この化合物の組成がZrO1.27(CHCHCOO)1.46(MW=217.9ドルトン)であったことを考慮すると、上記の量は0.04モルに相当する。
【0037】
別途、無水リン酸0.08モル(7.84g)をDMF40mLに溶解させる。この溶液に、先の溶液を、室温で撹拌下に、徐々に加える。澄明な溶液が得られる([Zr(IV)]=0.5M)。この溶液を80℃に加温すると、凝縮した透明なゲルの形成が認められる(このゲルは通常30分以内に形成される)。80および140℃で溶媒を蒸発させたあとに得られる固体は、H−NMR測定によって示されるように、認めうるほどの量のプロピオン酸塩を含んでいないが、DMFの存在はなお明瞭である。上記固体を1M HClで洗浄するとき、組成がZr(OH)0.6(OPOH)1.7の固体が得られる。粉末X線回折図形は、α型層状構造をもつリン酸ジルコニウムのピークを示す(図1の曲線aおよびb参照)。滴定曲線から見て、5.8meq/g量の酸性リン酸塩が得られる。
【0038】
実施例1の2
この実施例は、プロピオン酸ハフニウムオキシドクロリドおよびリン酸を含有し、それよりα型リン酸ハフニウムが得られるDMF溶液の詳細な調製法を例示する。これらの溶液の安定性に関する若干のデータも示す。
【0039】
この実施例で使用する混合型のプロピオン酸ハフニウム(IV)オキシドクロリドは、実験室で調製した。HfOCl・8HO(ストレム・ケミカルズ)およびプロピオン酸(アルドリッチ)をモル比1:3で計量し、開放ガラス容器中で混合する。この混合物を撹拌下に、油浴を用いて60℃に保持して、固体残留物を得る。化学分析によって、この無水の固体は、HfOCl0.64(CHCHCOO)1.36(MW=317.2ドルトン)の組成をもつことが示された。
【0040】
上記化合物12.7g(Hf0.04モルに相当、事前に100℃で30分間脱水)をDMF40mLに溶解させる。別途、無水リン酸0.08モル(7.84g)をDMF40mLに溶解させる。先の溶液を、室温で撹拌下に、あとの溶液に徐々に加える。澄明な溶液が得られる([Hf(IV)]=0.5M)。この溶液を80℃に加温すると、約30分後に、凝縮した透明なゲルの形成が認められる。80および140℃で約2時間溶媒を蒸発させたあとに得られる固体は、H−NMR測定によって示されるように、認めうるほどの量のプロピオン酸塩を含んでいないが、DMFの存在はなお明瞭である。1M HClで洗浄後、モル比[リン酸塩モル]/[Hfモル]=1.9の固体が得られる。
【0041】
実施例1の3
この実施例は、チタン塩およびリン酸を含有し、それよりα型リン酸チタンが得られるDMF溶液の詳細な調製法を例示する。これらの溶液の安定性に関する若干のデータも示す。
【0042】
無水リン酸0.08モル(7.84g)をイソブタノール68mLに溶解させる。チタンプロポキシド(98%アルドリッチ)、Ti(OCHCHCH(MW=284ドルトン)、11.36g(0.04モルに相当)を、撹拌下に、上記リン酸溶液に加えて、澄明な溶液([Ti(IV)]=0.1M)を得る。この溶液を80℃に加温すると、凝縮した透明なゲルの形成が認められる(それに要するのは通常30分以内である)。粉末X線回折図形は、α型層状構造をもつ半結晶性リン酸チタンのピークを示す(図2の曲線aおよびb参照)。化学分析によって、固体中のモル比[リン酸塩モル]/[Tiモル]は1.7±0.1であることが示された。
【0043】
実施例2
この実施例は、ジルコニル塩およびリン酸を含有し、それより組成がZr[OP(OH)[OPO(OH)]のリン酸ジルコニウムZrPが得られる3−ヘキサノール溶液の詳細な調製法を例示する。これらの溶液の安定性に関する若干のデータも示す。
【0044】
実施例1−1の3に記載したのと類似の手順に従って、無水プロピオン酸ジルコニル0.008モル(1.74g)を3−ヘキサノール40mLに溶解させ、その一方で、無水リン酸0.024モル(2.35g)を3−ヘキサノール40mLに溶解させる。次に、リン酸溶液を、0℃で撹拌下に、プロピオン酸ジルコニルの溶液([Zr]=0.1M)に、徐々に加える。得られる溶液の温度>80℃における挙動は、実施例1−1の3に記載した溶液のそれときわめて類似している。80℃での溶媒蒸発により、残留物が残り、それは、粉末X線回折図形が示すように、α型の層状構造をもつ(図1、曲線b参照)。その固体を80−90℃に放置すれば、Zr[OP(OH)[OPO(OH)]相への徐々の転化およびα相の消失が観察される。80℃で2日間の熱処理ののちに得られる粉末X線回折図形を図4、曲線bに示す。
【0045】
実施例2の2
この実施例は、ハフニウムオキシドジクロリドおよびリン酸を含有し、それより組成がHf[OP(OH)[OPO(OH)]のリン酸ハフニウムHfPが得られる3−ヘキサノール溶液の詳細な調製法を例示する。これらの溶液の安定性に関する若干のデータも示す。
【0046】
HfOCl0.41g(Hf1.53x10−3モル、ストレム・ケミカルズによって供給されたハフニウム(IV)オキシドジクロリド八水和物を100℃で30分間脱水して得たもの)を1−プロパノール3mLに溶解させる。プロパノールの約75%を蒸発させ、次に、3−ヘキサノールを体積が7.8mLになるまで加える。
【0047】
別途、無水リン酸0.46g(4.68x10−3モル)を、3−ヘキサノール7.8mLに溶解させる。このリン酸溶液を次に、0℃で撹拌下に、ハフニウムオキシドジクロリドの溶液にゆっくり加える。澄明な溶液が得られる。得られた溶液の温度>80℃における挙動は、実施例1に記載の溶液のそれにきわめて類似している。80℃での溶媒蒸発により、残留物が残り、それは、粉末X線回折図形が示すように、α型リン酸ハフニウムの構造をもつ(図2の曲線a参照)。この固体を80−90℃の温度に放置すると、Hf[OP(OH)[OPO(OH)]相へと徐々に転化し、層状α相が消失する。80℃で12日間の熱処理ののちに得られた粉末X線回折図形を図4に曲線bとして示す。
【0048】
実施例3
この実施例は、ジルコニル塩およびリン酸を含有し、それより組成がZrPのピロリン酸ジルコニウムが得られる3−ヘキサノール溶液の詳細な調製法を例示する。これらの溶液の安定性に関する若干のデータも示す。
【0049】
実施例2に記載のそれと類似の手順に従い、澄明な溶液を調製する。溶媒を80℃でまず蒸発させ、次に残留物を180℃で1日間加熱する。粉末X線回折図形(図5、曲線b)は、立方晶系構造のピロリン酸ジルコニウムの生成を示す。
【0050】
実施例3の2
この実施例は、チタン塩およびリン酸を含有し、それより組成がTiPのピロリン酸チタンが得られる3−ヘキサノール溶液の詳細な調製法を例示する。これらの溶液の安定性に関する若干のデータも示す。
【0051】
無水リン酸0.144モル(14.11g)を3−ヘキサノール73mLに溶解させる。0.024モルに相当するチタンプロポキシド(アルドリッチ)6.816gを、上記リン酸溶液に、0℃で撹拌下に加えて、澄明な溶液([Ti(IV)]=0.3)を得る。まず、溶媒を80℃で蒸発させ、次に、残留物を180℃で18時間加熱する。粉末X線回折図形(図6、曲線b参照)は、立方晶系構造のピロリン酸チタンの生成を示す。
【0052】
実施例4
この実施例は、多孔性ポリマー膜の細孔にリン酸ジルコニウムを充填するための、実施例1に示した有機溶液の使用を詳細に記述する。多孔性ポリテトラフルオロエチレン(PTFEまたはテフロン膜)の場合。
【0053】
実施例1に記載の手順に従って、澄明なDMF溶液を調製する。PTFE膜(フルオロポア・メンブランフィルター、ミリポア、細孔径0.5μm;厚み60μm;多孔度85%、初期重量0.0391g)を、上記溶液で、細孔の内部へその溶液がよく浸透できるように、約60分間かけて、完全に被覆する。この膜を上記溶液から取出し、膜の両外面上の過剰の液を速やかに除去し(たとえば両膜面を交互に濾紙と接触させて)、細孔内部の溶媒を80℃で1時間、次に140℃で一夜乾燥して除去する。膜の最終重量は0.0462gで、18%の重量増加である。所望の細孔充填度に応じて、全体の充填操作を数回繰返してもよい。
【0054】
実施例4の2
この実施例は、多孔性ポリマー膜の細孔にリン酸ハフニウムを充填するための、実施例1に示した有機溶液の使用を詳細に記述する。多孔性ポリテトラフルオロエチレン膜の場合。
【0055】
実施例2の2に記載の手順に従って、[Hf]=0.1Mの澄明溶液を調製する。
【0056】
実施例4に記載の手順に従って、PTFE膜を、温度0−3℃で、上記溶液により完全に被覆する。膜の重量増加は26重量%である、10日間の熱処理後に得られた粉末X線回折図形を図7の曲線bに示す。2θ=18°の回折ピークは膜ポリマーによるものである。
【0057】
実施例4の3
この実施例は、多孔性ポリマー膜の細孔に組成がHf[OP(OH)[OPO(OH)]のリン酸ジルコニウム、HfP、を充填するための、実施例2に示した有機溶液の使用を詳細に記述する。多孔性ポリテトラフルオロエチレン膜の場合。
【0058】
実施例2の2に記載の手順に従って、[Hf]=0.1M、[リン酸モル]/[Hfモル]=6の澄明溶液を調製する。実施例4の2に記載の手順に従って、PTFE膜を上記溶液で完全に被覆する。50−60℃で一夜かけて溶媒を除去し、次に、膜を80℃に維持して、無機化合物をHfP相へ転化させる。10日間の熱処理ののちに得られた粉末X線回折図形を図4の曲線cに示す。2θ=18°の回折ピークは膜ポリマーによるものである。
【0059】
実施例5
この実施例は、多孔性ポリマー膜の細孔にジルコニウムを充填するための、実施例3に示した有機溶液の使用を詳細に記述する。多孔性ポリテトラフルオロエチレン膜の場合。
【0060】
実施例2に記載の手順に従って、[Zr]=0.1M、[リン酸モル]/[Zrモル]=6の澄明溶液を調製する。実施例4の2に記載の手順に従って、PTFE膜を上記溶液で完全に被覆する。80℃で一夜かけて溶媒を除去し、次に、膜を180℃に1日間放置して、無機化合物を転化させる。熱処理後に得られた粉末X線回折図形を図5の曲線cに示すが、それは、立方晶系構造のピロリン酸ジルコニウムの生成を示している(図5、曲線a参照)。
【0061】
実施例5の2
この実施例は、多孔性ポリマー膜の細孔に組成がHfPのピロリン酸ハフニウムを充填するための、実施例3に示した有機溶液の使用を詳細に記述する。多孔性ポリテトラフルオロエチレン膜の場合。
【0062】
実施例4の3に記載の手順に従って調製した溶液で、PTFE膜を完全に被覆し、次に、この膜を実施例5に記載した通りに処理する。熱処理後に得られた粉末X線回折図形を図8の曲線bに示すが、それは、立方晶系構造のピロリン酸ハフニウムの生成を示している。
【0063】
実施例6
この実施例は、多孔性無機膜にリン酸またはピロリン酸ジルコニウムを部分的に充填して触媒特性をもつ膜を調製するための、実施例1−3に記載したまたは類似の有機溶液の使用を詳細に記述する。Hf[OP(OH)[OPO(OH)]を充填した酸化ジルコニウム管状非対称セラミック膜の場合
酸化ジルコニウム管状非対称セラミック膜(TAMIトリチャンネル、薄層の厚み0.14μm)を、デシケーター中、真空下で脱ガスする。真空下0−3℃に維持した膜を次に、実施例4の3に示した手順に従って調製した溶液で約10分間完全に被覆する。好ましくは30−70重量%の細孔の部分充填率を得るために、充填工程の回数を選択する。
【0064】
実施例7
この実施例は、所定百分率の所望粒子を充填した現行技術水準のポリマーマトリックスからなる複合膜を調製するための、実施例1−1の3に示した有機溶液の使用を例示する。20重量%のリン酸ジルコニウム粒子を充填したスルホン化ポリエーテルケトン(s−PEK)の場合。
【0065】
イオン交換容量が1.4x10−3当量/gのs−PEK(FuMA−Tech 1.4)1.0gを、前もって80℃で一夜脱水し、DMF10mLに120℃で溶解させる。この溶液に、実施例1の溶液1.65mLを加える。得られた混合物を室温で1時間撹拌下に保ち、次にガラス板上に注ぐ。80℃で5時間および120−130℃で2時間、溶媒を蒸発させる。次に、水中に浸漬することによって、膜をガラス支持体から引離し、希HCl溶液で洗浄し、1:1(v/v)エタノール/水混合物で洗浄し、室温で保存する。この無水の膜中のリン酸ジルコニウムの百分率は20重量%であり、膜の厚みは0.008cmである。
【0066】
実施例7の2
この実施例は、所定百分率の所望粒子を充填した現行技術水準のポリマーマトリックスからなる複合膜を調製するための、実施例1−1の3に示した有機溶液の使用を例示する。10重量%のリン酸ジルコニウム粒子を充填したフミオン(Fumion)の場合。
【0067】
イオン交換容量が0.9x10−3当量/gのフミオン(ペルフルオロスルホン酸、FuMA−Tech)1.0gを前もって80℃で一夜脱水し、DMF10mLに80℃で溶解させる。この溶液に、実施例1の溶液0.8mLを加える。得られた混合物を室温で1時間撹拌下に保ち、次にガラス板上に注ぐ。80℃で5時間および120−130℃で2時間、溶媒を蒸発させる。次に、水中に浸漬することによって、膜をガラス支持体から引離し、希HCl溶液で洗浄し、1:1(v/v)エタノール/水混合物で洗浄し、室温で保存する。この無水の膜中のリン酸ジルコニウムの百分率は10重量%であり、膜の厚みは0.008cmである。
【0068】
実施例7の3
この実施例は、所定百分率の所望粒子を充填した現行技術水準のポリマーマトリックスからなる複合膜を調製するための、実施例2−2の2に示した有機溶液の使用を例示する。16.5重量%のリン酸ハフニウム粒子を充填したフミオンの場合。
【0069】
無水のフミオン0.217gを、3−ヘキサノール/1−プロパノール1:1(v/v)混合物8mLに、40℃で約4時間かけて溶解させる。
【0070】
実施例2の2に記載の手順に従い、[Hf]=0.1M、[リン酸モル]/[Hfモル]=6の澄明な溶液を調製する。この溶液1.16mLを、室温で撹拌下に、上記ポリマー溶液に加える。得られた混合物を室温で1時間撹拌下に保ち、次にガラス板上に注ぐ。55℃で一夜および80℃で2日間、溶媒を蒸発させ、次に、なんらの溶媒をも用いることなく、膜をガラス支持体から直接引離す。この無水の膜中のリン酸ハフニウムの百分率は16.5重量%である。粉末X線回折図形を図9の曲線bに示す。
【0071】
実施例8
この実施例は、所定百分率の所望粒子を充填した現行技術水準のポリマーマトリックスからなる複合膜を調製するための、実施例2−2の2に示した有機溶液の使用を例示する。30重量%のHf[OP(OH)[OPO(OH)]粒子を充填したフミオンの場合。
【0072】
無水のフミオン0.217gを、3−ヘキサノール/1−プロパノール1:1(v/v)混合物8mLに、40℃で約4時間かけて溶解させる。
【0073】
実施例2の2に記載の手順に従い、[Hf]=0.1M、[リン酸モル]/[Hfモル]=10の澄明な溶液を調製する。この溶液1.98mLを、室温で撹拌下に、上記ポリマー溶液に加える。得られた混合物を室温で1時間撹拌下に保ち、次にガラス板上に注ぐ。55℃で一夜および80℃で3日間、溶媒を蒸発させ、次に、膜をガラス支持体から直接引離す。この無水の膜中のHf[OP(OH)[OPO(OH)]の百分率は30重量%である。粉末X線回折図形を図10の曲線bに示す。
【0074】
実施例9
この実施例は、所定百分率の所望粒子を充填した現行技術水準のポリマーマトリックスからなる複合膜を調製するための、実施例2−2の2に示した有機溶液の使用を例示する。16重量%のピロリン酸ハフニウム粒子を充填したフミオンの場合。
【0075】
実施例7の3に記載の手順に従って、複合膜を調製する。その膜の120℃で2時間および180℃で一夜の熱処理後、16重量%のHfPを含有する複合膜が得られる。粉末X線回折図形を図11、曲線bに示す。
【0076】
実施例10
この実施例は、電極/膜界面領域に無機粒子を挿入するための、実施例1−1の3に示した有機溶液の使用を例示する;Hf(OPOH)の場合。
【0077】
実施例1の2に記載の手順に従って、α−HfP前駆体の澄明なDMF溶液を調製する。この溶液を、ガス拡散電極(たとえば、デ・ノラ・ノースアメリカのELAT(商標)電極)の表面に直接噴霧する。溶媒を、まず80℃で約30分間の熱処理によって蒸発させ、次に140−150℃で5−6時間の熱処理によって完全に除去する。
【0078】
実施例10の2
この実施例は、電極/膜界面領域に無機粒子を挿入するための、実施例2−2の3に示した有機溶液の使用を例示する;HfPの場合。
【0079】
実施例2の2に記載の手順に従って、HfP前駆体の澄明な3−ヘキサノール溶液を調製する。この溶液を、ガス拡散電極表面に直接噴霧する。溶媒を、まず80℃で約30分間の熱処理によって蒸発させ、次に120−130℃で5−6時間の熱処理によって完全に除去する。
【0080】
実施例10の3
この実施例は、電極/膜界面領域に無機粒子を挿入するための、実施例3−3の2に示した有機溶液の使用を例示する;立方晶系ピロリン酸チタンの場合。
【0081】
実施例3の2に記載の手順に従って、TiP前駆体の澄明な3−ヘキサノール溶液を調製する。この溶液を、ガス拡散電極表面に直接噴霧する。溶媒を170−180℃で6−7時間の熱処理によって蒸発させる。この電極をエタノールで洗浄して、過剰のリン酸を除去する。最後に、残留エタノールを蒸発させて除去する。
【0082】
実施例11
この実施例は、電極/膜界面領域に無機粒子を挿入するための、実施例1−3に示した有機溶液の使用を例示する;ナフィオン中のα−HfPの場合。
【0083】
実施例1の2に記載の手順に従って、α−HfP前駆体の澄明なDMF溶液を調製する。その溶液0.15mLを、撹拌下にナフィオン溶液(アルドリッチ社の5重量%アルコール溶液)10gに加える。この溶液を、ガス拡散電極表面に直接噴霧または塗布する。溶媒を、まず80℃で約30分間の熱処理によって蒸発させ、次に130−140℃で5−6時間の熱処理によって完全に除去する。
【0084】
実施例11の2
この実施例は、電極/膜界面領域に無機粒子を挿入するための、実施例1−3に示した有機溶液の使用を例示する;ナフィオン中の立方晶系ピロリン酸ジルコニウムの場合。
【0085】
実施例3に記載の手順に従って、ZrP前駆体の澄明な3−ヘキサノール溶液を調製する。この溶液0.2mLを、撹拌下にナフィオン溶液10gに加える。この溶液を、ガス拡散電極表面に直接噴霧または塗布する。溶媒を、まず80℃で約30分間の熱処理によって蒸発させ、次に170−180℃で5−6時間の熱処理によって完全に除去する。この電極をエタノールで洗浄して、過剰のリン酸を除去する。最後に、残留エタノールを蒸発させて除去する。
【0086】
先に示した通り、リン酸ジルコニウムの有機溶媒中のゲルを、前もって形成させたこのプロトン導体の微結晶の剥離に基づく操作法によって調製することは、PCT特許WO03/077340 A2中に既に示されている。
【0087】
今回、有機溶媒中のリン酸ジルコニウムおよびハフニウムの同様のゲルが、より容易な操作法を用いて、前駆体溶液により直接得られうることが見出された。
【0088】
先に示した通り、それらの前駆体溶液を30−40℃よりも高い温度で加温するとき、濃厚なゲルの速やかな形成が認められる。これらのゲルの正確な本質は現在のところ不明である。溶媒除去後に不溶性のM(IV)リン酸塩が得られることを考慮に入れると、これらのゲルが層状M(IV)リン酸塩の小さいクラスター(集合体)によって構成されているようである。きわめて小さい成層粒子の境界に沿って存在する種の数が全種のかなりの割合になりうるので、これらの粒子の間の縁と縁との相互作用が表面−表面相互作用に優先しうるであろう。この場合には、それらのゲルは、有機溶媒をそれらの間に捕捉したきわめて小さい粒子のハウス−カード配列であるとみなすことができるであろう。溶媒を除去するとき、該ハウス−カード配列の不安定性が、平面的粒子の層状配列へと導きうるのであろう。これらのゲルの生成は比較的短い時間で達成されるので、層粒子の大きさは、前もって形成されたM(IV)リン酸塩の剥離によって得られる粒子のそれよりもずっと小さいと期待される。いずれにせよ、これらのゲルの本質およびそれらの粒子の正確な大きさをより明らかにするためには一層の研究を行なわなければならないが、調製が容易で経済的であることならびにそれらの調製後長時間経過しても安定であることは、複合プロトン伝導性膜の調製にとって、実用上きわめて重要である。
【0089】
実施例12
この実施例は、安定なリン酸ジルコニウム−DMFゲルの調製のための、モル比(HPO/Zr=2)の前駆体溶液の使用を例示する。
【0090】
まず、α型リン酸ジルコニウムの前駆体DMF溶液を、実施例1に示した通りにして調製する。
【0091】
上記前駆体溶液を80℃で30分間加熱する。多量の捕捉されたDMFを含有するリン酸ジルコニウムの凝縮した透明なゲルの形成が達成される。この実施例で用いた実験条件下では、リン酸ジルコニウムのwt/wt%は12%である。このゲルは、密閉容器中で保存でき、それの調製からきわめて長時間後でも使用できる。
【0092】
実施例12の2
この実施例は、リン酸ハフニウム−DMFゲルの調製のための、モル比(HPO/Hf=2)の前駆体溶液の使用を例示する。
【0093】
まず、α型リン酸ハフニウムの前駆体DMF溶液を、実施例1の2に示した通りにして調製する。
【0094】
上記前駆体溶液を80℃で30分間加熱する。多量の捕捉されたDMFを含有するリン酸ハフニウムの凝縮した透明なゲルの形成が達成される。この実施例で用いた実験条件下では、リン酸ハフニウムのwt/wt%は15%である。このゲルは、密閉容器中で保存でき、それの調製からきわめて長時間後でも使用できる。
【0095】
実施例12の3
この実施例は、安定なリン酸ハフニウム−DMFゲルの調製のための、モル比HPO/Hf=3の前駆体溶液の使用を例示する。
【0096】
まず、α型リン酸ハフニウムの前駆体DMF溶液を、実施例1の2に示した通りにして、この溶液中のモル比をHPO/Hf=3として、調製する。
【0097】
上記前駆体溶液を80℃で30分間加熱する。多量の捕捉されたDMFを含有するリン酸ハフニウムの凝縮した透明なゲルの形成が達成される。この場合には、用いたHPO/Hf比が3であったので、DMFゲル中に過剰のリン酸が残留する。この過剰のリン酸は、ゲルをDMFで2または3回洗浄することによって除去できる。
【0098】
この実施例で用いた実験条件下では、リン酸ハフニウムのwt/wt%は20%である。このゲルは、密閉容器中で保存でき、それの調製からきわめて長時間後でも使用できる。
【0099】
実施例13
この実施例は、リン酸ジルコニウムのナノ粒子を充填した複合フミオン膜を調製するための、実施例12で示したゲルの使用を例示する。
【0100】
秤取量のフミオン(無水イオノマー1gに相当)を、DMF8gに、80℃で激しく撹拌しながら溶解させる。この溶液に、実施例12のゲル0.44gを加える。混合物を室温で1時間撹拌下に保ち、次に、ガラス板上に注ぐ。溶媒を、80℃で5時間、120−130℃で2時間かけて蒸発させる。次に、膜を、水中への浸漬によってガラス支持体から引離し、希HCl溶液で洗い、エタノール/水1:1(v/v)混合物で洗い、室温で保存する。この無水の膜中のリン酸ジルコニウムの百分率は5%であり、膜厚みは0.006cmである。
【0101】
実施例13の2
この実施例は、リン酸ハフニウムのナノ粒子を充填した複合フミオン膜を調製するための、実施例12の2で示したゲルの使用を例示する。
【0102】
秤取量のフミオン(無水イオノマー1gに相当)を、DMF8gに、80℃で激しく撹拌しながら溶解させる。この溶液に、実施例12の2のゲル0.35gを加える。混合物を室温で1時間撹拌下に保ち、次に、ガラス板上に注ぐ。溶媒を、80℃で5時間、120−130℃で2時間かけて蒸発させる。次に、膜を、水中への浸漬によってガラス支持体から引離し、希HCl溶液で洗い、エタノール/水1:1(v/v)混合物で洗い、室温で保存する。この無水の膜中のリン酸ハフニウムの百分率は5%であり、膜厚みは0.008cmである。

【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】粉末X線回折図形を示す。
【図2】粉末X線回折図形を示す。
【図3】粉末X線回折図形を示す。
【図4】粉末X線回折図形を示す。
【図5】粉末X線回折図形を示す。
【図6】粉末X線回折図形を示す。
【図7】粉末X線回折図形を示す。
【図8】粉末X線回折図形を示す。
【図9】粉末X線回折図形を示す。
【図10】粉末X線回折図形を示す。
【図11】粉末X線回折図形を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四価金属の塩およびリン酸を含有する有機溶液であって、それより、溶媒蒸発後に、組成がM(IV)(OP−OH)、M(IV)[OP(OH)[OPO(OH)]およびM(IV)P[式中、M(IV)は四価金属である]の不溶性化合物の少なくとも1種を直接得ることのできる有機溶液。
【請求項2】
四価金属のアニオンが好ましくはカルボキシレート、クロリド、アルコキシドのうちから選ばれたものである請求項1に記載の有機溶液。
【請求項3】
四価金属がZr、Hf、Tiまたはそれらの混合物のうちから選ばれたものである請求項1または2に記載の有機溶液。
【請求項4】
ジルコニウムおよびハフニウムの塩類がジルコニルまたはハフニウムのオキシドプロピオネートおよび/またはクロリドまたは四塩化ハフニウムであり、チタニウムの場合にはチタニウムアルコキシドが選ばれる請求項1〜3のいずれかの有機溶液。
【請求項5】
有機溶媒が、通常プロトン伝導性イオノマーの溶解に使用される塩基性溶媒、たとえばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、少なくとも4個の炭素原子を含有するアルカノールおよび/またはそれらの混合物のうちから選ばれ、非プロトン性双極性溶媒、とりわけN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドおよびジメチルスルホキシドが好ましい請求項1〜4のいずれかに記載の有機溶液。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の、M(IV)(OP−OH)、M(IV)[OP(OH)[OPO(OH)]およびM(IV)Pの組成を有する不溶性化合物の前駆体有機溶液の使用であって、ポリマーまたは無機の多孔性膜の細孔内部への、これらの化合物、とりわけナノ粒子の形での化合物の、容易な挿入のための使用。
【請求項7】
下記の諸工程に基づいた、不溶性四価金属酸性リン酸塩M(IV)(OP−OH)、M(IV)[OP(OH)[OPO(OH)]および不溶性ピロリン酸塩M(IV)Pによる、請求項6に記載の多孔性膜の充填方法:a)請求項1〜5のいずれかの前駆体有機溶液の調製;b)該多孔性膜のかかる溶液による含浸;c)溶媒の除去;d)所望の細孔充填百分率が達成されるまでの工程bおよびcの反復。
【請求項8】
溶媒除去の大部分を好ましくは60−70℃での蒸発によって行い、最終の不溶性化合物への変換をより高い温度で、好ましくはM(IV)[OP(OH)[OPO(OH)]の場合は75−100℃;M(IV)(OP−OH)の場合は130−140℃、そしてM(IV)Pの場合は140−180℃で完了する請求項6または7の多孔性膜充填方法。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の、M(IV)(OP−OH)、M(IV)[OP(OH)[OPO(OH)]またはM(IV)Pなる組成をもつ不溶性化合物の前駆体有機溶液の、ナノ−ポリマー調製のための使用であって、該化合物のナノ粒子が、同じ溶媒に可溶性の有機または無機ポリマーのマトリックスの内部に分散されるものである前記使用。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の前駆体有機溶液の、請求項9のナノ−ポリマーの調製のための使用であって、該有機ポリマーマトリックスがプロトン伝導性イオノマーのそれである使用。
【請求項11】
下記の諸工程に基づいた、請求項9または10に記載のナノ−ポリマーまたはナノ−イオノマーの調製方法:a)請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成の一つをもち、同時に、技術水準に属するポリマーおよび/またはイオノマーを含有する有機溶液の調製または使用;b)溶媒の除去。
【請求項12】
溶媒の除去を、溶媒の蒸発によってまたは該ポリマーまたはイオノマーの非溶媒を用いて行なう請求項11のナノ−ポリマーまたはナノ−イオノマーの調製方法。
【請求項13】
有機または無機ポリマーのマトリックス中に分散されたM(IV)(OP−OH)、M(IV)[OP(OH)[OPO(OH)]およびM(IV)Pの粒子、とりわけナノ粒子によって構成されたナノ−ポリマー。
【請求項14】
マトリックスが技術水準のイオノマー、好ましくはペルフルオロカルボキシスルホン酸、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホンのそれである請求項13に記載のナノ−ポリマー。
【請求項15】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の前駆体有機溶液の、請求項13又は14に記載のナノ−ポリマーによって構成された膜の調製のための使用。
【請求項16】
下記の諸工程に基づいた、請求項13または14に記載のナノ−ポリマーによって構成された膜の調製方法:a)請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成の一つをもち、同時に、技術水準のポリマーまたはイオノマーを含有する有機溶液の調製または使用;b)この有機溶液を用いての、注型(流延)法として知られる方法などの技術水準の既知の任意の操作法によるナノ−ポリマー膜の調製;c)有機溶媒の除去。
【請求項17】
M(IV)(OP−OH)、M(IV)[OP(OH)[OPO(OH)]およびM(IV)Pの前駆体の有機溶液の、PEMFCの電極/膜界面へのこれらの化合物のナノ粒子の容易な挿入のための使用。
【請求項18】
同じ溶媒に可溶性のイオノマーおよび/または他のプロトン伝導性化合物を添加した請求項1〜5のいずれか1項に記載の前駆体有機溶液の、通常PEMFCの電極/膜界面に噴霧されるイオノマー中への不溶性化合物、とりわけナノ粒子の形での不溶性化合物の、容易な挿入のための使用。
【請求項19】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の前駆体有機溶液を用いて得られ、M(IV)[OP(OH)[OPO(OH)]または該化合物とプロトン伝導性イオノマーとの混合物を細孔に充填された多孔性膜(ポリマー膜または無機膜)によって構成された複合プロトン伝導性膜。
【請求項20】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物またはそれらの混合物を部分的に充填された細孔をもつポリマーまたは無機多孔性膜によって構成された複合膜。
【請求項21】
請求項13または14に記載のナノ−ポリマーによって構成されたプロトン伝導性ナノ−イオノマー膜。
【請求項22】
請求項20に記載の複合膜の触媒プロセスへの使用。
【請求項23】
請求項20に記載の複合膜の触媒膜反応器における使用。
【請求項24】
請求項19に記載の膜の電気化学装置における使用。
【請求項25】
請求項19〜21の膜のいずれか1項に記載の、とりわけ燃料の酸化によって電気エネルギーを発生させることを意図した、電気化学装置における使用。
【請求項26】
とりわけ電気自動車および/または携帯用電気装置を意図した燃料電池における請求項25に記載の膜の使用。
【請求項27】
請求項19〜21のいずれか1項に記載の膜の、水素、間接メタノールおよび直接メタノール燃料電池における技術水準のイオノマー膜の全体的性能の改善のための使用。
【請求項28】
四価金属酸性リン酸塩:M(IV)(OP−OH)、M(IV)[OP(OH)[OPO(OH)]およびM(IV)Pの前駆体溶液によって変性されたPBI膜。
【請求項29】
四価金属酸性リン酸塩:M(IV)(OP−OH)、M(IV)[OP(OH)[OPO(OH)]およびM(IV)Pの前駆体溶液によって変性されたPBI+リン酸膜。
【請求項30】
溶媒蒸発後に、M(IV)(OP−OH)、M(IV)[OP(OH)[OPO(OH)]およびM(IV)P[式中、M(IV)は四価金属である]なる組成をもつ不溶性化合物の少なくとも1種を直接得ることのできる四価金属塩およびリン酸を含有する有機ゲル。
【請求項31】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機溶液を加熱することによる、請求項30に記載の有機ゲルを調製する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2007−535594(P2007−535594A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509885(P2007−509885)
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009262
【国際公開番号】WO2005/105667
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(504337523)フーマ・テク ゲゼルシャフト フューア フンクティオネレ メンブラーネン ウント アンラーゲンテクノロギー エムベーハー (2)
【Fターム(参考)】