説明

四肢静止不能疾患の予防/緩和、及び/又は、治療のための口腔/鼻咽腔送達できる医薬組成物

本発明は、四肢静止不能疾患の予防/緩和、及び/又は、治療のための口腔/鼻咽腔送達できる医薬組成物の調製のためのドーパミンアゴニストの使用、並びに、これを効果的に使用する医薬品、投与ユニット、及び、医薬キットに関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
不穏下肢症候群(Restless legs syndrome:RLS(むずむず脚症候群))は、強い運動衝動に付随して起こる、片脚又は両脚での偽感覚としてあらわれる神経疾患である。RLSの症状は、罹患片脚若しくは両脚を動かしたい抑えられない衝動に侵されたヒトに生じる体の一部のピリピリした痛み、ひきつり、疼き、むず痒さ、火傷のような痛み、痙攣、又は、疼痛を含む。これらの症状は、罹患した患者が、休息中又は静止中であるときに最も頻繁に生じる。長時間の覚醒して、座っている時間、例えば、映画館、飛行機、若しくは、自動車の中で座っている間に、RLSの症状は、非常に煩わしく、苦痛である場合があり、睡眠時間中、特に、夜に、その付随する運動衝動を伴うこの感覚障害が、休めずに、睡眠障害や、睡眠中断の症状に至らしめる。めったに無いが、同様の症状は、片腕若しくは両腕にも生じうる。
RLSは、あらゆる年齢層で起こりうるが、高齢者において次第により蔓延している。ほとんどの場合において、該症候群の重症度は、年齢とともに増加するが、例外もある。ある研究者たちは、RLSがアメリカ合衆国の間で1200万人もの数のヒトに影響を及ぼすと見積もっている。しかしながら、別の研究者たちは、過小診断及び誤診のために、より高い発生を見積もっている(Rados (2006) FDA Consumer Magazine 40(3)、http://www.fda.gov/fdac/features/2006/306_rls.html参照)。
【0002】
ドーパミン前駆物質は、脳がドーパミン(運動の制御に関わる化学神経伝達物質)に転化する薬剤である。ドーパミンアゴニストは、ドーパミンによって刺激されない脳の神経を直接刺激する。レボドパ(ドーパミン前駆物質)は、RLSを治療するために用いられている。レボドパと関係する、"増強(augmentation)"と呼ばれる症状の望ましくない悪化のために、多くの患者が現在ドーパミンアゴニストを用いる。例えば、ペルゴリド、プラミペキソール、及び、ロピニロールを、RLS及び不随意の四肢運動の治療において使用するために研究されている。ドーパミンアゴニストに関係するよく見られる副作用は、嘔気、鬱帯、疲労、及び、体液鬱帯を含む(Rowett & Tank (2005) Yahoo! Health Encyclopedia http://health.yahoo.com/ency/healthwise/ue4948参照)。
Schollmayerの米国特許出願公報番号第2004/0048779は、例えば、パッチ又は硬膏のような経皮投与的(transepicutaneous)医薬調製物の形態でドーパミンアゴニストであるロチゴチンを投与することを含むRLSを治療する方法を提案する。このように投与されたロチゴチンは、低用量であっても、耐え難い作用や不快な作用を起こすことなしに、患者の状態を改善できることが記載されている。0.5〜10mg/日の投与量が提案されている。
【0003】
Rimplerらの米国特許出願公報番号第2003/0166709は、デポー形態で、N-0923(ロチゴチン)を非経口投与するための医薬組成物を提案している。組成物はドーパミン代謝異常と関係するパーキンソン病又はRLSのような疾患の長期治療に適していることが、記載されている。組成物は、注射による投与に特によく適しているが、それは、粘膜投与、例えば鼻腔投与に適していることも記載されている。適した1日投与量は、0.5〜40mgで、理想としては2〜10mgであることが提案されている。
Swartら (1995) Pharm. Sci. 1:437-440は、HCl塩の形態で、ラットに口腔投与、鼻腔投与、又は、直腸投与した後に、経口投与の場合と比較して向上したN-0923(ロチゴチン) のバイオアベイラビリティを報告した。
Kramerの国際特許公報番号WO2005/063236は、α-シクロデキストリンと一緒にロチゴチンの薬学的に許容される酸付加塩、例えば、塩酸(HCl)塩を含む鼻腔の医薬製剤を提案する。1〜6mg/mlのロチゴチンHClの製剤濃度が、提案されている。このような製剤は、パーキンソン病及び他のドーパミン関連疾患の治療に有効であることが記載されている。背景技術として、'236公報は、"アポモルヒネ又はロチゴチンのようなドーパミンD2アゴニストは、原理上は、パーキンソン病、及び、ドーパミンレベルの増加が有益である他の疾患、例えばRLSを治療するために用いることができることが知られている"と報告している。
【0004】
Brechtの米国特許出願公報番号第2001/0053777は、他の神経精神性の薬剤とあわせて、クロニジンのようなα2アゴニストを投与することを含むRLSを治療する方法を提案している。N-0923(ロチゴチン)を含むドーパミンアゴニストは、その中に記載された神経精神性の薬剤の中に含まれている。薬剤の組合せは、経口、経脊髄、経肛門、又は、経静脈で、吸入投与、皮下投与、又は、経皮投与されうることが記載されている。
ロチゴチンは、開発段階であるか、経皮製剤(Schwarz PharmaのNeupro(登録商標)ロチゴチンパッチ)として様々な国において、既に承認されている。このような製剤は、被検者に1日1回投与することで、被検者の血漿中に比較的安定したロチゴチン濃度を提供できる特性を公表している。しかしながら、例えば、RLS症状が、特に急性であるか、又は、特に急性であると予測しうる場合に、経皮性ロチゴチンの治療的有用性を補うことができるロチゴチン投与のために更なる選択肢を有することが好ましい。このような更なる選択肢は、比較的急速な治療応答を提供でき、及び/又は、非常に大きな増分の投与量のロチゴチンを要しなくてよい場合に、特に有益である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
より一般的な、RLSのような四肢静止不能疾患の治療のための別の方法が、本分野で必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被検体に医薬組成物の1回以上の用量を投与することを含む、四肢静止不能疾患の予防/緩和、及び/又は、治療のための口腔/鼻咽腔送達できる医薬組成物の調製のためのロチゴチン、ロチゴチンの医薬的に許容される塩の一つ、及び/又は、ロチゴチンのプロドラッグ若しくは代謝産物の使用であって、各用量が、前記疾患の1以上の症状の発生及び/又は重症度を減少するために有効な量を含むが、24時間以内の全ての前記用量の総量が、約450μgのロチゴチン遊離塩基等価物を超えない、使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例7に記載した通りに、一連のSIT(推奨される静止試験)の間、ベースライン補正されたRLS症状重症度スコアにおけるロチゴチン治療の効果を示す図である。
【図2】実施例7に記載した通りに、5分間隔で被検体で評価された、経時的な平均RLS症状重症度スコアにおけるロチゴチン治療の効果を示す図である。
【図3】実施例7に記載した通りに、一連のSITの間、ベースライン補正されたPLMWI(睡眠中に生じた周期性四肢運動のインデックス)におけるロチゴチン治療の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書における"四肢静止不能疾患"は、通常、罹患した1以上の肢で不快な感覚若しくは違和感を伴い、又は、頻繁にこのような感覚に直接反応して、1以上の肢を動かしたい衝動(それは多くの場合抑え難い)によって特徴付けられる疾患である。
典型的な場合では、症状は1以上の肢の運動によって少なくとも部分的に和らぐが、休息中、若しくは、運動していない時間中、例えば、睡眠時間、及び、覚醒して座業的な静止時間中に、最も著しい。四肢静止不能疾患の例は、限定されないが、RLS及び周期性四肢運動障害(PLMD)を含み、これらは独立して発症するが、多くの場合、同じ被検者に同時に存在し、そして、共通の根本原因の兆候でありうる。
ロチゴチンは、化学物質に対するINN(国際一般的名称)で(-)-5,6,7,8-テトラヒドロ-6-[プロピル[2-(2-チエニル)エチル]アミノ]-1-ナフトールである:
【0009】
【化1】

ロチゴチン遊離塩基は、ロチゴチン塩から調製することができるので、本明細書におけるロチゴチン遊離塩基に関する記載は、微量のロチゴチン塩、例えばロチゴチンHClの存在を除外しない。微量の塩不純物は、典型的な場合では、ロチゴチン遊離塩基の約10質量%超過ではなく、例えば、約5質量%超過ではなく、約2質量%超過ではなく、約1質量%超過ではなく、又は、約0.1質量%超過ではない。更に注目すべきは、ロチゴチン遊離塩基が、微量を超える量で、化合物の他の形態、例えばHCl塩との組合せで用いることができることである。
【0010】
ある態様において、方法は、ロチゴチン遊離塩基を投与することを含む。他の好ましい態様において、方法は、ロチゴチンの酸付加塩、さらに好ましくはロチゴチンHClを投与することを含む。他の医薬的に許容される酸付加塩は、オキソリナート、タルトラート、シトラート、ホスファート、スルファート、及び、メタンスルホナートの塩を含む。
更なる態様において、投与される化合物は、ロチゴチンのプロドラッグである。プロドラッグは、一般に、それ自体医薬的な活性が弱いか、該活性を有さない薬剤であるが、インビボで医薬的な活性化合物に転化される。プロドラッグは、ある状況において、それらは、対応する活性化合物よりも投与することが容易であり得るため、しばしば、実用的である。活性化合物が体内に吸収されない場合に、プロドラッグは、例えば、経口投与によって、体内に吸収され、利用されうる。プロドラッグは、例えば、向上させた医薬組成物における溶解度により、活性化合物よりも簡単に調剤できる。
非限定の例として、本明細書で有効なプロドラッグは、そのフェノールのヒドロキシル基でのロチゴチンの誘導体であり、例えば、エステル(例えば、アリールカルボニルエステル、アルキルカルボニルエステル、又は、シクロアルキルカルボニルエステル、特に、6個以下の炭素原子を有するアルキルカルボニルエステル及びシクロアルキルカルボニルエステル、カルボナート、カルバマート、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、ホスファート、ホスホナート、スルファート、スルホナート、チオカルボニルエステル、オキシチオカルボニルエステル、チオカルバマート、エーテル、及び、シリルエーテル)でありうる。
【0011】
アルキルカルボニルエステルは、ロチゴチンの酸素原子が、-C(O)-アルキル基に結合した化合物を含む。アルキルカルボニルエステルは、アルカン酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、又は、吉草酸による、ロチゴチンのフェノールのヒドロキシ基のエステル化によって形成されうる。
シクロアルキルカルボニルエステルは、ロチゴチンの酸素原子が、-C(O)-シクロアルキル基に結合した化合物を含む。
アリールカルボニルエステルは、ロチゴチンの酸素原子が、-C(O)-アリール基に結合した化合物を含む。
カルボナートは、ロチゴチンの酸素原子が、-C(O)-O-R-アルキル基に結合した化合物であって、Rが後で定義されるとおりである化合物を含む。
カルバマートは、ロチゴチンの酸素原子が、-C(O)-NRR1、-C(O)-NH-R1、又は、-C(O)-NH2基に結合した化合物であって、R及びR1が後で定義されるとおりである化合物を含む。
アセタールは、ロチゴチンの酸素原子が、-CH(OR)R1基に結合した化合物であって、R及びR1が後で定義されるとおりである化合物を含む。
ケタールは、ロチゴチンの酸素原子が、-C(OR)R1R2基に結合した化合物であって、R、R1、及びR2が後で定義されるとおりである化合物を含む。
アシルオキシアルキルエーテルは、ロチゴチンの酸素原子が、-CHR-O-C(O)-R1、又は、-CH2-O-C(O)-R1基に結合した化合物であって、R及びR1が後で定義されるとおりである化合物を含む。
【0012】
ホスファートは、ロチゴチンの酸素原子が、-P(O2H)OR基に結合した化合物であって、Rが後で定義されるとおりである化合物を含む。
ホスホナートは、ロチゴチンの酸素原子が、-P(O2H)R基に結合した化合物であって、Rが後で定義されるとおりである化合物を含む。
スルファートは、ロチゴチンの酸素原子が、-S(O)2OR基に結合した化合物であって、Rが後で定義されるとおりである化合物を含む。
スルホナートは、ロチゴチンの酸素原子が、-S(O)2R基に結合した化合物であって、Rが後で定義されるとおりである化合物を含む。
チオカルボニルエステルは、ロチゴチンの酸素原子が、-C(=S)-R基に結合した化合物であって、Rが後で定義されるとおりである化合物を含む。
オキシチオカルボニルエステルは、ロチゴチンの酸素原子が、-C(=S)-O-R基に結合した化合物であって、Rが後で定義されるとおりである化合物を含む。
チオカルバマートは、ロチゴチンの酸素原子が、-C(=S)-N-RR1、-C(=S)-NH-R1、又は、-C(=S)-NH2基に結合した化合物であって、R及びR1が後で定義されるとおりである化合物を含む。
エーテルは、ロチゴチンの酸素原子が、-R基に結合した化合物であって、Rが後で定義されるとおりである化合物を含む。
【0013】
プロドラッグの上記の例において、それぞれR、R1及びR2は、独立して水素原子、アルキル(例えば、C1-6アルキル)、シクロアルキル(例えば、C3-10シクロアルキル)、又は、アリール(例えば、フェニル)である。
ある態様において、それぞれR、R1及びR2は、独立してC1-6アルキル、C3-10シクロアルキル、又は、フェニルである。
アルキル基は、分岐又は非分岐で、典型的な場合では、1〜10個の炭素原子を有することができ、例えば、C1-6アルキルである。アルキル基は、置換されていなくてもよく、又は、1つ以上の置換基、例えば、ハロゲン置換基で置換されてもよい。
シクロアルキル基は、環形状C原子のみを有してもよいし、又は、更にC原子を有してもよい。実例として、シクロアルキル基は、3-10個、4-8個、又は、4-6個のC原子を有する。
フェニル基は、1つ以上の位置で置換されてもよい(例えば、アルコキシ、アルキル、ハロゲン及び/又はニトロ置換基)。
ロチゴチンの実例プロドラッグは、例えば、以下の個別に引用された文献において、記載されている。
Den Daasら (1990) Naunyn Schiedebergs Arch. Pharmacol. 341:186-191.
Den Daasら (1991) J. Pharm. Pharmacol. 43:11-16.
【0014】
ロチゴチンは、5,6,7,8-テトラヒドロ-6-[プロピル[2-(2-チエニル)エチル] アミノ]-1-ナフトールの(S)-鏡像異性体である。これは、医薬組成物における(R)-鏡像異性体の含有量が本発明において低いことを意味する。(R)-鏡像異性体は、医薬組成物中でのロチゴチンの総量に基づいて、好ましくは、10モル%未満の含有量で存在し、特に好ましくは、2モル%未満の含有量で存在し、更に特に好ましくは、1モル%未満で存在する。
ロチゴチンのプロドラッグの適合性は、例えば、酵素カクテル、及び、細胞均質物、又は、酵素含有細胞画分と、定義した条件下で特定のプロドラッグ候補とをインキュベートして、活性ロチゴチンを測定することにより、決定することができる。適した酵素混合物は、例えば、WoburnのGentext、MAによって分配されたS9肝臓調製物である。プロドラッグの適合性を試験するための他の方法は、本分野における当業者に公知である。
例えば、インビトロでの活性物質へのプロドラッグの転化は、以下の方法でアッセイされうる。必須代謝酵素を含むミクロソーム画分は、ヒト、サル、イヌ、ラット、及び/又はマウスからの肝細胞均質物から、差動の遠心分離によって得られ、別に、細胞質分画を得ることも可能である。細胞亜分画は、定義されたタンパク質含有物の溶液を得る方法のように、バッファーに懸濁する。試験される1μMのプロドラッグの添加の後に、それを37℃で60分間インキュベートする。次いで、ロチゴチンが、HPLC/UV又はHPLC/MSによって定量化され、用いられる量に関係している。より詳細な分析のために、濃度系列又は時系列を調べる。
【0015】
更なる態様において、投与される化合物は、ロチゴチンの代謝産物である。ロチゴチンの代謝産物の例は、(S)-2-N-プロピルアミノ-5-ヒドロキシテトラリンであり、例えば、国際特許出願番号WO 2005/058296に開示されている。
本明細書において、ロチゴチン用量、量、及び、濃度が、ロチゴチン「遊離塩基等価物」の用量、量、及び、濃度として記載されている場合に、ロチゴチンが必ず遊離塩基形態で存在していると推定するべきではない。当業者は、例えば、1mgのロチゴチン遊離塩基(MW=約315)が、約1.115mgのロチゴチンHCl(MW=約315.5)と等価であることを理解しうる。本発明の好ましい態様において、ロチゴチンは、塩形態で存在し、より好ましくは、ロチゴチンHClとして存在する。
本発明の好ましい態様において、ロチゴチン、ロチゴチンのプロドラッグ又は代謝物、好ましくはロチゴチンHClを含む医薬組成物は、鼻腔投与される。
本発明の他の好ましい態様において、四肢静止不能疾患が、不穏下肢症候群(RLS)である。
本発明の他の好ましい態様において、四肢静止不能疾患が、周期性四肢運動障害(PLMD)である。
【0016】
周期性四肢運動障害(PLMD)は、夜間ミオクロヌスとしても知られているが、患者が睡眠中に無意識に動く睡眠障害である。PLMDは、典型的な場合では10〜60秒毎に、場合によっては夜通し発生する睡眠中の下肢単収縮運動又は痙動で特徴付けられる。該運動は、足首及び足指の小さな振動から、腕及び下肢の蹴りや震えまで多岐にわたる。時折、口、鼻、腹部の運動も発生する。周期性痙動は、(側に寝ている人はもちろん)特定の人を多くの場合覚醒させ、そして、眠りの質を大きくかき乱しうる。PLMDは、不眠症及び日中の眠気の原因となる。RLSと同様に、この障害の発生率は、年齢とともに増加する。
RLSとPLMDとの違いは、PLMDは、ヒトが睡眠している間に生じ、そして、症状がない一方で、PLSは、症状のせいで人々を寝られない状態にすることである。RLSのほとんどの被検者がPLMDを経験し、又は、将来PLMDを発病しうるが、PLMDのほとんどの患者がRLSを経験したことがない。結局、RLSと同様にPLMDの原因は分かっていない。
【0017】
国際RLS研究グループ(IRLSSG)は、米国の国立衛生研究所(NIH)と連携して、以下のRLSの4つの診断基準を作成した。
(a)いつも、下肢に不快な感覚及び違和感を伴う、又は、このような感覚で引き起こされる、下肢を動かしたいという抑えられない衝動、
(b)運動を続ける間、運動で部分的に又は完全に和らいだ症状、
(c)横たわるか、座っているような、休息中、若しくは、運動していない時間中での症状の発生若しくは悪化、
(d)夕刻又は夜のみに悪化する、又は、生じる症状。
様々な態様において、本方法によって治療される四肢静止不能疾患は、以下を含む。
(a)IRLSSG診断基準の少なくとも1つによって特徴付けられる疾患、
(b)上記基準の全てによって特徴付けられるようなRLS、
(c)軽度、中度、重度、極めて重度のRLS、
(d)中度から極めて重度のRLS、
(e)PLMDを伴う上記のいずれか、又は、
(f)PLMD(RLSの診断基準を伴うか否かを問わず)。
【0018】
本明細書における用語"RLS"又は"四肢静止不能疾患"は、ほとんど一般的には、両脚が同程度又は異なる程度に罹患するが、必ず両脚を罹患するものとは解釈されない。
RLSは、一般的に、(1)一期又は特発性、及び、(2)二期に分類される。一期RLSにおいて、症状の原因は、分かっておらず、患者に存在することが既知である他の病状とは関連がない。一期RLSは、二期RLSよりもより多くの潜行性発症の症状を有するものとして見なされ、若年で発症する。一期RLSの患者は、一般集団の中、更には二期RLSの患者集団の中のヒトより、罹患した家族を有する傾向がある。二期RLSでは、発症が通常更に急であるが、典型的な場合では40歳を超えてから生じる。このような場合において、RLSは、1以上の他の状態(例えば、妊娠、腎不全、神経障害、糖尿病、関節リウマチ、鉄不足、又は神経症)に関連して、又は、医薬(例えば、ドーパミン受容体アンタゴニスト、ヒスタミン受容体アンタゴニスト、選択性セロトニン再取込阻害剤、及び、他の抗鬱剤)の使用に関連して生じる。二期RLSの症状は、通常、関連する疾患又は状態が改善された場合、又は、関連する医薬投与をやめた場合に、軽減されるか、治癒する。
【0019】
現在、RLSを診断することに利用できる研究室での検査は存在しないので、医療診断は、例えば、上述したIRLSSG基準に従って、被検者の病歴及び症状を評価することで行われる。
症状の頻度及び治療への反応に基づいて、RLSは、3つのカテゴリー((1)間欠性又は場合による症状;(2)日常的な症状;及び(3)難治性症状)に分けることができる。
明細書において引用される文献において見られる間欠性RLSの定義にもかかわらず、本出願における用語"間欠性RLS"は、Silberら (2004) Mayo Clin. Proc. 79(7):916-922の定義に一致し、治療を必要とするのに十分な煩わしいが、日常的な治療を必要とするほど著しく頻発するわけではない症状を有するRLSを意味する。間欠性RLSの症状は、散在性に、周期的に(例えば、季節的又は月経周期に関連して)起こりうるか、座業的事象(例えば、会議、映画館、夕食会、飛行機での旅行、又は車での旅行)のような特定の誘発状態に関与しうる。間欠性RLS症状のこのような発症は、本明細書において、"炎症"と表される。日常的なRLSは、日常的な治療を必要とするのに十分な強度と頻度の症状により特徴付けられる。難治性RLSは、ほとんどの患者において通常適している治療に反応できないことにより特徴付けられる。
間欠性RLSの治療のためのアルゴリズムは、投薬以外の、及び、薬理学的な治療の双方を含む。投薬以外のアプローチは、以下の(1)血清フェリチンレベルが低い場合の鉄補、(2)精神覚醒活動、(3)カフェイン、ニコチン、アルコールを控えること、及び、(4)RLSを助長しうる点滴(例えば抗鬱剤)を控えることを含む。
【0020】
間欠性RLSの投薬治療について、不穏下肢症候群財団(Restless Legs Syndrome Foundation)のメディカルアドバイサリーボード(Medical Advisory Board)は、以下の薬剤を利用することを示唆している:(1)カルビドパ(carpidopa)/レボドパ, 25 mg/100mg、又は、徐放(CR), 25mg/100mg、(2)作用が小さいオピオイド(例えばプロポキシフェン又はコデイン)、又は、オピオイド(opiod)アゴニスト(例えばトラマドール)、(3)ベンゾジアゼピン、又はベンゾジアゼピンのアゴニスト(例えば、テマゼパム、トリアゾラム、ゾルピデム、又は、ザレプロン)、及び、(4)ドーパミンアゴニスト、例えば、プラミペキソール又はロピニロール。
カルビドパ/レボドパ, 25mg/100mg (1/2タブレット)は、夕刻、睡眠中、又は、夜間覚醒中に間欠的に生じるRLS、又は、特別な活動(例えば、飛行機、又は、非常に長い車の搭乗、又は、映画館での鑑賞)に関連したRLSに用いることができる。徐放カルビドパ/レボドパ, 25mg/100mg (1タブレット)は、夜間に患者を覚醒させるRLSのための睡眠前に代わりに用いることができる。しかしながら、CR形態でさえ、活性が比較的短い期間であり、ほとんど夜通しRLSが続く場合に、持続した有効性を引き起こすことはできない。
カルビドパ(Carpidopa)/レボドパ治療に関係する問題点は、増強及びリバウンドを含む。増強は、日中のRLS不快感の重症度の増加として定義され、その後に夕刻に医薬がそれぞれ投与された場合に、夜に症状が減少する。日常的にレボドパを投与する70%までの患者が、増強を発現し、200mg以上の1日用量で危険性が増す(Earley C. Jら, Sleep 1996, 19:801-810)。増強の危険性は、間欠使用(例えば、1週間に3回より少ない)で低くなるが、このことは、しっかり確立してはいない。レボドパの追加的用量の摂取が、増強の悪化をもたらすので、患者は事象について留意すべきである。早朝におけるリバウンド、つまりRLSの再発は、レボドパを投与する患者の20%〜35%において生じる(Earley C. J.,ら , Sleep 1996, 19:801-810; Guilleminault C.,ら , Neurology 1993; 43:445)。
【0021】
作用が小さいオピオイド及びベンゾジアゼピンも、間欠性RLSを治療するために用いることが推奨されている。しかしながら、依存性及び認容性の発現の危険性のために、これらの物質は、治療のために限られた場合のみ用いることができる。
ドーパミンアゴニストは、レボドパより長い半減期を有する点で有益であり、睡眠時間を通した効果の限定的な持続時間に関する懸念を取り除く。増強の発生は、一般的にドーパミンアゴニストについてあまり考慮されず、そして、RLSの治療のために用いられる用量は、パーキンソン病を治療するために用いられる用量よりはるかに少ない。しかしながら、ドーパミンアゴニストの活性は、一般的に摂取90〜120分後に始まる(経皮的に投与されたドーパミンアゴニストロチゴチンの作用の開始は、推定上さらに後に有効になる)ので、一度症状が始まると、これらの薬剤は、これまでのところ効果的に用いられていない。
【0022】
ここで、本発明は、ドーパミンアゴニストロチゴチンを含む口腔/鼻咽腔送達できる医薬組成物の投与が、投与10分後直ちにRLSの症状の抑制及び減少を引き起こすことを示す。従って、本発明において、好ましい態様は、不穏下肢症候群の急性治療のための医薬組成物の使用である。本発明における用語"急性治療"は、RLS症状が現れる場合、又は、特に急に現れることが予測できる場合であって、それ故に、相対的に速やかな治療効果を提供することが非常に有効である場合の治療として定義される。
さらに、本発明は、(上述したように)特に、間欠性RLSの治療のために有効である。従って、本発明の好適な態様は、間欠性の不穏下肢症候群(RLS)の治療のための医薬組成物の使用である。間欠性RLSを有する被検体のために、鼻腔送達できるの組成物は、必要な場合に応じて、症状を治療する一次手段として投与される。このような投与は、長期的であり得るものだが、より典型的に臨機(p.r.n.)、すなわち、必要な場合に応じてなされる。臨機の投与の場合に、それは、状況にあわせて単一治療を基本的に続けることができ、又は、下記で説明するような長期的な治療を更に含むレジメのコンポーネントであり得る。
【0023】
本発明の別の好ましい態様においては、被検体に医薬組成物の1回以上の用量を投与することに関し、その中で、各用量が、疾患の1以上の症状の発生及び/又は重症度を減少するために有効な量を含むが、24時間以内の全ての用量の総量が、約450μgのロチゴチン遊離塩基等価物を超えず、より好ましくは約400μg、更により好ましくは約350μg、更により好ましくは、約300μgのロチゴチン遊離塩基等価物を超えず、最も好ましくは約250μgのロチゴチン遊離塩基等価物を超えない。
本明細書における被検体は、ヒト、又は、非ヒトであり得る。非ヒトの場合には、被検体は動物、例えば、家畜、農場動物、外来種動物、及び動物園の動物、実験室の動物などを含むいずれかの種の哺乳類であり得る。特別興味深い態様において、被検体は、臨床で診断されたか若しくはされていない、RLSのような四肢静止不能疾患を患っているが、最も典型的な場合ではIRLSSG診断基準を満たしているヒト患者である。
【0024】
本発明者は、以下の実施例7で報告するようにプラセボ制御臨床実験で、ロチゴチンHClの鼻腔投与が、これまで意図された投与のいずれかの経路による投与よりはるかに低い用量で、RLSの治療に有効であることを示した。
例えばロチゴチンHClのようなドーパミンアゴニストを含む本発明の医薬組成物は、1回以上の用量で投与され、それぞれが、疾患の1以上の症状、例えば、感覚症状及び/又は周期性四肢運動の発生及び/又は重症度を減少するために有効である投与量を含む。
該疾患の1以上の症状の発生及び/又は重症度を減少するために有効な量を構成するものは、治療される四肢静止不能疾患、疾患の重症度、体重、及び、各自の被検体の他のパラメータ、一日の時間、被検体の活性又は不活性のレベル、被検体に投与される他の薬剤(もしあれば)、及び、他の因子に依存して変化しうるものであり、本明細書における開示内容に基づいて医師又は臨床医によって、過度の実験を行わなくても容易に確立できる。好ましくは、各用量で投与される活性薬剤の量が、許容できない程度の不都合な副作用を引き起こす量を超えない。
典型的な場合では、1回の投与につき、安全で、有効な投与量は、約10〜約450μg、又は、100〜450μg、好ましくは、約25〜約400μg、更に好ましくは、約50〜約300μg、又は、更に好ましくは、100〜約250μgロチゴチン遊離塩基等価物の範囲に含まれる。このような投与量は、これまでRLSの治療のための文献で提案されてきたものよりもはるかに少ない。
【0025】
上記の量で1回以上の用量は、24時間周期で投与されうる。最も一般的には、わずか1回の該用量が必要であることが分かっており、例えば、睡眠時に投与される。他の状況においては、しかしながら、症状が特別煩わしい場合、又は、被検体が座業的静止状態(例えば、車、バス、電車、又は、飛行機による旅行の間、授業に出席している間、文化的娯楽、又は、スポーツイベント、又は、デスクワークの間)で1日の覚醒時間のなかでかなりの時間を費やす場合に、24時間周期で2回以上の用量が必要になり得る。
典型的な場合では、一日の投与量、すなわち、24時間周期で口腔/鼻咽腔から投与される全ての用量の総量は、約450μgロチゴチン遊離塩基等価物より多くなく、好ましくは、約400μgロチゴチン遊離塩基等価物より多くなく、更に好ましくは約300μgロチゴチン遊離塩基等価物より多くなく、更に好ましくは約250μgロチゴチン遊離塩基等価物より多くない。
様々な四肢静止不能疾患(例えば間欠性RLS、日常的なRLS、難治性RLS)に関係する症状の頻度及び重症度が原因で、本発明の広い多様性の治療レジメが、このような疾患を患う被検体を治療することに用いられうる。従って、本発明の医薬組成物は、定期的に、又は、必要な場合に口腔/鼻咽腔から投与(例えば鼻腔投与)できる。いずれにしても、本発明の方法は、症状の速やかな、又は、実質的に即時の軽減を提供することができる。
【0026】
日常的な、又は、難治性RLSを患った被検体にとって、鼻腔投与組成物は、一次治療として再び、24時間周期中に1回以上、周期的に用いられうる。また、このような被検体にとって、鼻腔投与組成物は、RLS治療の他の手段、例えば、ロピニロール又はプラミペキソールのような経口投与可能なドーパミンアゴニストの経口投与、又は、ロチゴチンのような非経口投与可能なドーパミンアゴニストの経皮若しくは非経口投与を補うものとして投与されることができる。一態様において、本明細書で記載した口腔/鼻咽腔投与(例えば鼻腔投与)組成物は、ロチゴチン、又は、経皮パッチによってそれらの医薬的に許容される塩、プロドラッグ、若しくは、代謝産物の投与を含む長期治療を補うために、(必要に応じて)臨機投与される。
従って、1日単位で本明細書に表された最大の投与量は、各日及び毎日の口腔/鼻咽腔投与組成物の投与に必要とされるものとして解釈されるべきではない。更に、実質的に1日の最大値より少ない個々の口腔/鼻咽腔投与用量に当てられた投与量は、1日当たり1回より多い投与を必要とするものとして解釈されるべきではない。また、更に、例えば、経皮パッチによる口腔/鼻咽腔投与が、長期的なロチゴチン投与を補う場合、約450μgロチゴチン遊離塩基等価物の1日の最大の投与量は、口腔/鼻咽腔投与のみに適用され、1日当たり被検体に投与されるロチゴチンの総量ではないことが理解される。
【0027】
液体の口腔/鼻咽腔投与の組成物の場合において、ロチゴチン遊離塩基等価物の単独投与量は、組成物の特定の体積に含まれる。投与されうる体積は、ロチゴチン遊離塩基等価物の望ましい投与量に依存し、そして、組成物のロチゴチン遊離塩基等価物の濃度に依存する。鼻腔投与組成物にとって、片方又は両方の鼻孔に投与される体積は、実用的な体積で無ければならない。該体積は、公知の装置で投与することができないくらい小さすぎてはならず、用量の相当部分が鼻粘膜に保持されないくらい大きすぎてもならない。例えば、片方から両方の鼻孔への2つのアリコートにおけるヒト被検体への投与を意図した噴霧可能な製剤に関して、約10〜約300μl、例えば、約12.5〜約200 μl、又は、約20〜約100 μlの容量は、好ましくは両方の鼻孔に、1回の投与につき全部で約20〜約600 μl、例えば、1回の投与につき約25〜約400 μl、又は、約40〜約200 μl投与される。口腔/鼻咽腔を通った排液で部分的に組成物が使用されない傾向をなくすために、実用可能な限り低い体積で投与することは一般的に望ましい。必要に応じて、全用量は、片方の鼻孔に投与されうる。
本発明の好ましい態様において、医薬組成物の約25〜約250 μlの投与体積は、約25〜約450μgのロチゴチン遊離塩基等価物を供給する。
【0028】
四肢静止不能疾患に関係する症状は、被検体が休息中に最も頻繁に生じるので、投与のために最適な時間は、相対的に静止している期間の前、例えば、このような期間の前の約4時間にわたって又はそれ以内、約2時間にわたって又はそれ以内、約1時間にわたって又はそれ以内、約30分にわたって又はそれ以内、又は、約15分にわたって又はそれ以内である。本明細書において示された場合を除いては、"相対的に静止している期間"の文言は、被検体がほとんどの時間座っているか、横たわっている期間を示す。このことは、覚醒している期間、及び、睡眠期間を含み、例えば、覚醒した座業的期間、及び、睡眠時間を含む。本明細書における"睡眠時間"は、被検体が実際に睡眠していてもいなくても、被検体が就床している時間、若しくは、眠ろうとしている(例えば、仮眠)時間を意味する。本明細書における"覚醒した座業的期間"の文言は、被検体が通常覚醒しているが、活発に活動していない時間(例えば、映画館に行って映画を見ること、いすに座って本を読むこと、車又は飛行機の中で旅行者として旅行することなど)を表す。
実際の症状のためだけでなく、この症状にしばしば起因する睡眠の質及び持続の減少のせいで、RLSは、衰弱させる作用を有する。従って、ある態様において、本発明の医薬組成物は、睡眠時間中に睡眠の持続及び/又は質を向上させるために効果的な投与量で投与される。"睡眠の持続"の文言は、睡眠時間中の被検体が睡眠している全時間の定量的測定である。睡眠の持続は、全時間として、又は、"睡眠効率"として表すことができ、これは、睡眠期間に被検体が睡眠している時間の百分率を表す。本明細書における"睡眠の質"の文言は、被検者の睡眠がどの程度回復し、平穏であるかという被検者から得られた主観的評価、及び/又は、1以上の客観的評価を表しうる。主観的評価は、被検体に対して行われる標準アンケートを通して達成されうる。客観的評価は、ポリグラフ記録、及び、手首の活発な運動、頭の運動、及び/又は、まぶたの運動の測定を含む。
【0029】
他の態様は、本発明における医薬組成物の使用に関し、該医薬組成物が、投与後約4時間以内に、0〜10のRLSの重症度スケールに従って測定されるRLSの感覚症状の重症度を、少なくとも約1点、好ましくは少なくとも約2点減少するために有効である。
他の態様は、本発明における医薬組成物の使用に関し、該医薬組成物が、投与後約1時間以内に、0〜10のRLSの重症度スケールに従って測定されるRLSの感覚症状の重症度を少なくとも約1.5点、好ましくは少なくとも約2点減少するために有効である。
別の態様において、本発明は、医薬組成物の使用に関し、該医薬組成物が、少なくとも約3時間にわたる投与後約1時間後、0〜10のRLS重症度スケールに従って測定されるRLSの感覚症状の重症度を少なくとも約1点、好ましくは約2点減少するために有効である、
また、別の態様において、本発明は医薬組成物の使用に関し、該医薬組成物が、投与後、約1時間、好ましくは約30分、さらに好ましくは約20分、さらに好ましくは約15分、最も好ましくは約10分経つと直ぐに、0〜10のRLSの重症度スケールに従って測定された感覚症状の改善をもたらす。
【0030】
RLS症状の重症度のための採点システムは、RLS評価スケールと呼ばれ、IRLSSGによって作成されている。治療の治療効果を評価することは、臨床試験及び他の研究においてしばしば用いられている。該システムは、それぞれスコアが0-4の10の質問を用い、より高いスコアが、より重度の症状を表す。次いで、10の全ての結果が一緒に合計されて、全体のスコア、又は、診断インデックスを与え、重症度は、軽度(全体スコア 0〜10);中等度(全体スコア 11-20);重度(全体スコア 21-30);及び、極めて重度(31-40の全体スコア)のように記載される。患者は、以下の10の質問に回答して最後の1週間、彼/彼女の症状を評価する。
【0031】
1.全体的に見て、あなたの脚又は腕におけるRLSの不快感をどう判断しますか?
_(4) 極めて重度
_(3) 重度
_(1) 軽度
_(0) 症状なし
2.全体的に見て、あなたのRLS症状のために、動き回る必要性をどう判断しますか?
_(4) 極めて重度
_(3) 重度
_(1) 軽度
_(0) 症状なし
3.全体的に見て、動き回ることであなたのRLSによる腕又は脚の不快感がどの程度、軽減されましたか?
_(4) 軽減なし
_(3) 軽度の軽減
_(2) 中等度(24時間につき1〜3時間)
_(1) 完全又はほぼ完全に軽減
_(0) 軽減されうるRLS症状がない
4.あなたのRLS症状によるあなたの睡眠障害はどのくらい重度ですか?
_(4) 極めて重度
_(3) 重度
_(1) 軽度
_(0) 症状なし
5.あなたのRLS症状による日中のあなたの疲労又は眠気がどのくらい重度ですか?
_(4) 極めて重度
_(3) 重度
_(1) 軽度
_(0) 症状なし
【0032】
6.あなたのRLSは全体としてどのくらい重度ですか?
_(4) 極めて重度
_(3) 重度
_(1) 軽度
_(0) 症状なし
7.あなたのRLS症状が現れるのはどのくらいの頻度ですか?
_(4) 極めて頻繁に(1週間に6〜7日)
_(3) 頻繁に(1週間に4〜5日)
_(2) 往々にして(1週間に2〜3日)
_(1) 時々(1週間に1日)
_(0) 総じてなし
8.あなたがRLS症状を患う時に、平均してそれらはどのくらい重度でしたか?
_(4) 極めて重度(24時間当たり8時間又はそれ以上)
_(3) 重度(24時間当たり3〜8時間)
_(2) 中等度(24時間当たり1〜3時間)
_(1) 軽度(24時間当たり1時間未満)
_(0) 症状なし
9.全体的に見て、雑事を行うあなたの能力、例えば、十分な家事、家庭生活、人付き合い、学校生活、又は、仕事を営む能力において、あなたのRLS症状の影響は、どのくらい重度ですか?
_(4) 極めて重度
_(3) 重度
_(1) 軽度
_(0) 症状なし
10.あなたのRLS症状によるあなたの気分障害(例えば、怒り、落ち込み、悲しみ、不安、又は、いら立ち)は、どのくらい重度でしたか?
_(4) 極めて重度
_(3) 重度
_(1) 軽度
_(0) 症状なし
【0033】
いくつかの態様において、被検者のRLSの診断結果は、少なくとも一部はRLS評価スケールでの12以上(例えば、12以上、13以上、14以上、又は、15以上)のスコアに基づいて作成される。
数値の症状重症度スケールは、推奨される静止試験(SIT)の前、及び、その中で、RLS症状の重症度の主観的スコアを提供するために、RLS症状の感覚的コンポーネントの評価のために、被検者に対して行われる。スコア評価は、0(症状なし)から10(極めて重度)とする。他のスケールを用いることもでき、例えば、Stiasny-Kolsterら (2006) Mov. Disord. 21(9):1333-1339によって報告されてように、0(症状なし)から10(非常に重度)まで100mm視覚的アナログスケールを用いることができる。
RLSの感覚症状のためのこのような0-10の重症度スケールの例は、本明細書中の実施例7で記載された臨床試験で用いられている(図1及び2も参照)。このスケールは、上述したようなIRLSSGによって開発されたRLS評価スケールと混同されるべきでない。
【0034】
本発明の他の態様は、医薬組成物の使用に関し、その中で、医薬組成物が、投与後約4時間以内に、覚醒中の周期性四肢運動インデックス(Periodic Limb Movement Index during Wakefulness (PLMWI))に従って測定されるRLSの運動症状の重症度を、少なくとも約3点、好ましくは5点、より好ましくは10点、より好ましくは15点、更により好ましくは20点減少するために有効である。
本発明の他の態様は、医薬組成物の使用に関し、その中で、医薬組成物が、投与後約1時間以内で、RLSの運動症状の重症度を少なくとも約5PLMWI点、好ましくは少なくとも約10PLMWI点、より好ましくは約15PLMWI点減少するために有効である。
他の態様は、本発明における医薬組成物の使用に関し、その中で、医薬組成物が、少なくとも約3時間にわたる投与後約1時間以内に、RLSの運動症状の重症度を少なくとも約5PLMWI点、好ましくは少なくとも約10PLMWI点、好ましくは約15PLMWI点、更に好ましくは約20PLMWI点減少するために有効である。
【0035】
学説に制約されること無く、四肢静止不能疾患の症状の発生、及び/又は、重症度を減少する、ロチゴチン、又は、それの塩、プロドラッグ、若しくは、代謝産物の口腔/鼻咽腔投与の有効性は、このような投与後に達成されるロチゴチン血漿濃度に部分的に依存する。本明細書における"血漿中のロチゴチンの最大レベル"という文言は、口腔/鼻咽腔投与(例えば、鼻腔投与)後のロチゴチンの最大血漿濃度、すなわち、薬物動態の方法におけるこのような投与に関係するCmaxを意味する。好適な態様において、口腔/鼻咽腔投与組成物、例えば、鼻腔投与組成物は、投与後約4時間以内に、より好ましくは投与後約2時間以内、より好ましくは約1時間以内、更に好ましくは約30分以内、約20分以内、約15分以内、更に好ましくは約10分以内に、被検体の血漿中のロチゴチンの最大レベルを供給するために有効な方法で、ロチゴチンを送達するために調合される。この様な送達は、好ましくは、投与後、非常に早急(例えば、30分以内、好ましくは20分以内、更に好ましくは10分以内)に治療的有用性が起こることをもたらすものと考えられ、医薬組成物を臨機、治療にとって非常にふさわしいものとする。
【0036】
発症時間とは無関係に、治療学的薬効は、被検体への投与が、1日当たり約10回以下、例えば、1日当たり約8回、約6回、約4回、又は、約3回以下の投与頻度で行うことができるため十分な持続時間であるべきことが一般的に望ましい。さらに典型的な場合では、本発明における口腔/鼻咽腔投与は、1日当たり2回以下で、多くの場合、1日当たり1回以下で行われる。従って、他の態様は、本発明に従った医薬組成物の使用に関し、該医薬組成物が、持続的に少なくとも約1時間、好ましくは持続的に少なくとも約2時間、好ましくは持続的に少なくとも約3時間、更に好ましくは持続的に約4時間、更に好ましくは持続的に約6時間、更に好ましくは持続的に約8時間、更に好ましくは、持続的に約10時間、最も好ましくは持続的に約12時間にわたって、抗-四肢静止不能疾患の1以上の症状を減少することに効果的な被検体の血漿のロチゴチンの十分な濃度を提供するために有効な方法で、ロチゴチンを送達するため調製される。
【0037】
一般的に好適と分かっている鼻腔投与製剤の説明のための例は、PBS、α-シクロデキストリン、グリセロール、及び、クエン酸を含む賦形剤中にロチゴチンHClを含む組成物である。
一つの例として、特別に有益な2.5mg/mlロチゴチンHCl製剤が以下を含み、又は、特別な態様として本質的に以下からなる。
ロチゴチンHCl, 2.5 mg/ml
α-シクロデキストリン, 50 mg/ml
グリセロール, 31.2 mg/ml
クエン酸, 適量(pHを約5.8に調整するため)
PBS, 適量〜1 ml
更なる例として、特に有用な1.25 mg/ml ロチゴチンHCl製剤が以下を含み、又は、更に特別な態様として、本質的に以下からなる。
ロチゴチンHCl, 1.25 mg/ml
α-シクロデキストリン, 25 mg/ml
グリセロール, 31.2 mg/ml
クエン酸, 適量(pHを約5.8に調整するため)
PBS, 適量から1 ml
【0038】
様々な態様において、本発明の方法は、上記製剤、又は、それと実質上、生物学的に同等な製剤のひとつの鼻腔投与を含む。本明細書の背景において"実質上生物学的に同等な"製剤は、ヒト被検体への投与において標準PK原理に従って、参照製剤によって示された生物活性の約80%〜約125%の生物活性(例えばCmax及びAUC0-tを含むPKパラメータによる測定のように)を示すものである。上述した参照製剤と比較してテスト製剤のPKデータは、PK研究での比較実験による過度の実験を行うことなしに、当業者によって決定することができる。
更に一般的には、本発明は、水媒体中にロチゴチンHCl及びα-シクロデキストリンを含む製剤、又は、それと実質的に生物学的に同等な製剤の鼻腔投与を含む。
【0039】
本発明の上記の態様の全てにおいて、医薬組成物は、単剤治療で投与されうる。本明細書において用いられる、"単剤治療"は、ただ1つの薬剤(1つのドーパミンアゴニスト)の投与を含む状態又は疾患の治療のための治療法を意味する。本発明において、四肢静止不能疾患のための単剤治療は、本明細書で記載されたように口腔/鼻咽腔投与を含むことができ、そして、他の治療を含まない。用いられる例えばロチゴチンのようなドーパミンアゴニストの形態が、異なっていても(例えば、経皮投与ロチゴチン遊離塩基を組合せて、又は、補った鼻腔投与ロチゴチンHCl)、例えばロチゴチンのような同じドーパミンアゴニストの他の投与形態(例えば、経皮的パット又は蓄積注射)を組合せて、又は、補って例えばロチゴチンのようなドーパミンアゴニストを含む医薬組成物が、口腔/鼻咽腔から投与される場合に、このような投与も、本明細書においては"単剤治療"と見なす。
また、本発明の医薬組成物は、不穏下肢疾患又はそれらに関連する状態の治療のために有効な第二の活性薬剤(すなわちロチゴチン薬剤とは異なる薬剤)を用いた共治療(co-therapy)で投与することができる。本発明の医薬組成物の共治療的使用の一態様において、ドーパミンアゴニスト、好ましくはロチゴチンHClを含む組成物の口腔/鼻咽腔投与は、RLSのような四肢静止不能疾患の治療のための、異なる活性薬剤の長期投与を補うための臨機治療に用いられる(上述のように、このような臨機治療が、ロチゴチン薬剤での長期的治療を補う場合に、方法が共治療ではなく単剤治療の形態とみなされる)。
【0040】
RLSの長期的な治療のためにロチゴチンのほかに好適な薬剤は、例として、以下のリストから選択することができる。
アマンタジン、アポモルヒネ、ブロモクリプチン、カベルゴリン、カルモキシロール、(S)-ジデスメチルシブトラミン、ドペキサミン、フェノルドパム、イボパミン、レルゴトリル、リスリド、メマンチン、メスレルギン、ペルゴリド、ピリベジル、プラミペキソール、キナゴリド、ロピニロール、ロキシンドール、及び、タリペキソール。
本態様における例として、RLSの長期治療を提供する薬剤はロチゴチン以外のドーパミンアゴニストであり、例えば、プラミペキソール、又は、ロピニロールである。
他の態様において、ドーパミンアゴニスト、好ましくはロチゴチンHClを含む医薬組成物は、四肢静止不能疾患に関係する状態(例えば、妊娠、腎不全、神経障害、糖尿病、関節リウマチ、鉄不足、又は、神経症)に対処する第二の活性薬剤と併用して、口腔/鼻咽腔から投与される。本分野の当業者は、容易に、印刷された、又は、電子的形態、例えば、インターネットで、公に入手できる情報から特定の第二の活性薬剤の好適な投与形態、投与経路、及び、投与量を特定することができる。
例として、制限されること無く、このような第二の活性薬剤は、1つ以上の抗鎮痙剤、抗鬱剤、睡眠薬、オピオイド、又は、オピオイド受容体アゴニスト、ベンゾジアゼピン、又は、ベンゾジアゼピン受容体アゴニスト、鉄補給物、及び、これらの組合せを含みうる。以下の説明のための例は、医薬的に許容されるそれらの塩、及びそれらの組合せを含む。
【0041】
好適な鎮痙剤は、例として、以下のリストから選択することができる:
ガバペンチン、カルバマゼピン、オキシカルバゼピン(oxycarbazepine)、フェニトイン、ラコサミド、ラモトリジン、及び、ゾニシマド(zonisimade)。
好適な抗鬱剤は、例として、以下のリストから選択することができる:
シタロプラム、パロキセチン、フルオキセチン、ミルタザピン、トラゾドン、及び、セルトラリン。
好適な鎮静剤は、例として、以下のリストから選択することができる:
アモバルビタール、アオルピデム(aolpidem)、ブロマゼパム、ブロチゾラム、抱水クロラール、クロルプロマジン、クロナゼパム、ジフェンヒドラミン、ドキシラミン スクシナート、エスゾピクロン、エトクロルビノール、フルニトラゼパム、フルフェナジン、フルラゼパム、トリフロペラジン(frifluoperazine)、グルテチミド、ハロペリドール、ケタミン、ロルメタゼパム、ロキサピン スクシナート、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、ペントバルビタール、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、ラメルテオン、テマゼパム、チオチキセン、トリアゾラム、トリプトファン、ザレプロン、ゾルピデム、及び、ゾピクロン。
【0042】
好適な鎮痛薬、又は、鎮痛剤は、例として、以下のリストから選択することができる:
アセトアミノフェン、アルフェンタニル、ALGRX-4975、アリルプロジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベンジルモルフィン(benzylmorphine)、ベジトラミド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロニタゼン(clonitazene)、コデイン、シクラゾシン、デソモルヒネ、デキストロモラミド、デキストロプロポキシフェン、デゾシン、ジアンプロミド、ジアモルホン(diamorphone)、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルヒネ、ジメノキサドール(dimenoxadol)、ジメフェプタノール(dimepheptanol)、ジメチルチアンブテン(dimethylthiambutene)、ジオキサフェチル(dioxaphetyl) ブチラート、ジピパノン(dipipanone)、エプタゾシン、エトヘプタジン(ethoheptazine)、エチルメチルチアンブテン(ethylmethylthiambutene)、エチルモルヒネ、エトニタゼン(etonitazene)、フェンタニル、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ヒドロキシペチヂン(hydroxypethidine)、イソメタドン(isomethadone)、ケトベミドン、レバロルファン、レボルファノール タルトラート、レボフェナシル-モルファン(levophenacyl-morphan)、ロフェンタニル(lofentanil)、メペリジン、メプタジノール、メタゾシン(metazocine)、メサドン、メトポン、モルヒネ、マイロフィン(myrophine)、ナルブフィン、ナロルフィン、ナロキソン、ナルセイン、NCX-701、ニコモルフィン、NO-ナプロキセン、ノルレボファノール(norlevorphanol)、ノルメタドン、ノルモルヒネ、ノルピパノン(norpipanone)、アヘン、オキシコドン、オキシモルフォン、パパベレタム、ペンタゾシン、フェナドキソン(phenadoxone)、フェナゾシン、フェノモルファン(phenomorphan)、フェノペリジン、ピミノジン(piminodine)、ピリトラミド、プロヘプタジン(proheptazine)、プロメドール、プロペリジン(properidine)、プロピラム(propiram)、プロポキシフェン、スフェンタニル、チリジン、及び、トラマドル。
【0043】
好適なベンゾジアゼピン、又は、ベンゾジアゼピン受容体アゴニストは、例として、以下のリストから選択することができる:
クロナゼパム、トリアゾラム、フルニトラゼパム、ロラゼパム、ニトラゼパム、オキサゼパム、アルプラゾラム、及び、ジアゼパム。
【0044】
実際には、口腔/鼻咽腔送達できる医薬組成物は、このような組成物用の既知の型のディスペンサーで投与されうる。例えば、口粘膜への投与のための液体組成物は、口噴霧ディスペンサーによって投薬されうる。鼻腔投与組成物は、様々な型のディスペンサー(例えば、ネブサイザー、スプレー容器、乾燥粉末吸入器、定量吸入器など)で投与されうる。本明細書中の有用なディスペンサーは、機能的に、活性薬剤を含む溶液、懸濁液、又は粉末を含む貯蔵器と、接続されうる、又は、接続可能でありうる、又は、一体でありうる。
従って、一態様において、本発明は、1回以上の用量を提供する量で、医薬的に許容される賦形剤中に、各用量が、例えば、約10〜約450μgのロチゴチン遊離塩基等価物を含むロチゴチン薬剤を含む組成物を含む容器を含む医薬品を提供する。更に、この態様の医薬品は、四肢静止不能疾患、例えば、RLSの治療で1日当たり約450μgのロチゴチン遊離塩基等価物を超えない量で1回以上の用量の口腔/鼻咽腔投与、例えば、鼻腔投与するための貯蔵器上の表示、貯蔵器のパッケージの中の表示、又は、そのパッケージ上の表示を含む。
【0045】
本明細書における"投与するための表示"という文言は、状況又は疾患の治療における医薬組成物又は医薬品の使用についての情報、又は、使用説明書又は指示書を意味する。このような情報、使用説明書、又は、指示書は、制限されないが、示された治療の内容(本事例としては、RLSのような四肢静止不能疾患)におけるディスペンサーの操作、投与量、使用の頻度と時間、安全注意事項などの詳細を含みうる。投与するための表示は、医薬品、例えば、貯蔵器に直接印刷するか、それにラベルを貼り付けるか、医薬品のパッケージに同封するか、貼り付けるかすることができる。
一態様において、貯蔵器は、エアロゾル、噴霧器、液滴、又は、吸入可能な粉末として貯蔵器から組成物の投与ユニットを投薬するためのディスペンサーへの機能的接続に適している。例えば、この態様における医薬品は、ディスペンサーのための"詰め替え"でありうる。
【0046】
他の態様において、さらに、医薬品自体が、機能的に貯蔵器と接続された、又は接続されうるディスペンサーを含む。医薬品は、本態様に含まれ、その中で、例えば、ボトル(すなわち貯蔵器)の壁面への加圧が、その中に含まれる組成物を噴霧液滴若しくは粉末粒子として強力に噴出させる、スクイーズボトルの場合のように、貯蔵器とディスペンサーは、本質的に不可欠である。
該医薬品が液体の鼻腔投与組成物の投与用である場合に、ディスペンサーは、鼻孔に挿入するために設計された噴霧装置と、鼻孔に組成物を送達するための装置を作動させるための手段とを備えうる。
上述したような噴霧可能な液体の組成物は、このような装置によって送達されうる。貯蔵器は、必要に応じて、噴霧装置と作動手段と分けて提供され、この場合に、それは典型的な場合では噴霧装置に接続することに適しており、使用前、例えば使用の直前に、手段を作動することに適している。
噴霧装置は、組成物が、貯蔵器から供給される場合に、液体組成物の液滴を作り出すことができる装置であり得る。一態様において、液体組成物を圧力下で通り抜けさせて、液体を液滴にする場合に、噴霧装置は、ノズル又は狭窄路を含む。噴霧装置を作動するための本分野で公知の手段は、例えば、貯蔵器を絞る、又は吸引具を押す、又は、電気的に作動する装置の場合スイッチを入れることによる加圧を採用することができる。
【0047】
装置によって作られる液滴のサイズの範囲は、組成物の物理的特性、例えば粘度、及び、噴霧器の性質(例えば、ノズル開口部のサイズ)、及び、組成物を放出するために作動する装置の様式に依存する。液滴は、一般的に、吸入可能なエアロゾルを形成するように微細すぎてはならないが、口腔/鼻咽腔の粘膜に接着できないほど粗い粒であってはならない。
適宜、装置は、組成物の計量された体積、例えば、1回の用量につき約25〜約600 μl、例えば、約20〜約400μl、又は、約40〜約200μlの体積を送達するよう操作可能である。
装置は、適宜、異なる用量(例えば、組成物の50μl、100μl、150μl、200μl、又は、250μl)に対応する異なる計量された体積を送達することに適応しており、1mg/mlのロチゴチン遊離塩基等価物濃度を有する例示の組成物の場合に、1回の投与につきそれぞれ50μg、100μg、150μg、200μg、又は、250μgのロチゴチン遊離塩基等価物の用量に対応する。
【0048】
更なる態様において、本発明は、RLSのような四肢静止不能疾患の治療に効果的で、医薬的に許容できる賦形剤中に、ロチゴチン遊離塩基等価物を約10〜約450μgの量で含むロチゴチン薬剤を含む医薬投与ユニット、例えば、計量された投与ユニットを提供する。本明細書において、"投与ユニット"という文言は、単位量の医薬組成物で、一般的に、単独投与に適したユニット体積を意味する。一つの局面において、投与ユニットは、個別に、例えば、単独投与カプセル、カートリッジ、又は、詰め替えとしてパッケージされる。他の局面において、投与ユニットは、例えば、上述したような、ディスペンサーの単独作用の製品である。従って、投与ユニットは、実例として、例えば、計量された体積(約25〜600μl)であるとき、噴霧液体、若しくは、噴霧できる液体の形態で投与できる。
【0049】
更なる態様において、本発明は、以下を含む医薬キットを提供する:
(a)1回以上の用量を提供する量で、医薬的に許容される賦形剤中に、ロチゴチン薬剤を含み、各用量が、例えば、約10〜約450μgのロチゴチン遊離塩基等価物を含む組成物、及び、
(b)RLSのような四肢静止不能疾患の治療で1日当たり約450μgのロチゴチン遊離塩基等価物を超えない量で1回以上の用量の口腔/鼻咽腔投与、例えば、鼻腔投与するための表示がある説明書。
該説明書は、組成物と一緒に、又は、別々に供給されうる。"説明書"の文言は、本明細書において、制限されないが、ラベル、カタログ、広告、処方箋、指示シート、オーディオレコード、オーディオビジュアルレコード、CD-ROM、ウェブサイトなどを含む物理的形態、又は、ネットワーク形態をとることが理解される。組成物は、説明書を表すパッケージ又はラベルを有しうる。
【0050】
更なる態様において、本発明は、以下を含む医薬キットを提供する:
(a)四肢静止不能疾患の長期治療のために有効な量で第一のドーパミンアゴニストを含む経口製剤、経皮製剤、又は、非経口製剤、及び、
(b)疾患の1以上の進展症状の発生、及び/又は、重症度を減少するために、臨機に治療に有効な量で第二のドーパミンアゴニストを含む口腔/鼻咽腔の製剤であって、
第一のドーパミンアゴニストと第二のドーパミンアゴニストとが、同じ、若しくは、異なる製剤。
本明細書における"長期的"治療は、長期間にわたって続き、典型的な場合では、1日に2回以下、例えば、一日に1回、週に2回、又は週に一回程度の経皮投与製剤又は非経口投与製剤の習慣的な投与を含む治療を表す。長期的治療の目的は、第一のドーパミンアゴニストの被検者の血漿中の"基本"レベルを提供することであり、進展症状が生じる場合、又は、最大限の必要時に"補給"されうる。このような"補給"は、口腔/鼻咽腔投与製剤での"臨機"(p.r.n(pro re nata))治療により提供されることができ、これは、例えば、睡眠時間のような相対的に静止している期間中若しくは期間前に、又は、"基本"レベルがトラフである場合、又は、症状が特に重症、苦痛又は煩わしくなる場合に、特に有用でありうる。
本明細書における"進展症状"は、いずれかの理由で長期的治療によって適切に制御されず、緩和されず、予防されない症状を表す。例えば、進展症状は、(a)睡眠期間、又は、覚醒した座業的期間に導入中若しくはその期間中の被検体、(b)間欠性RLSの炎症、(c)第一のドーパミンアゴニストの相対的に低い血漿レベル(例えば、トラフか、その周辺)、(d)他の誘発因子、又は、上記の組合せの結果として生じうる。
【0051】
実例として、第一の及び第二のドーパミンアゴニストは、独立してアマンタジン、アポモルヒネ、ブロモクリプチン、カベルゴリン、カルモキシロール、(S)-ジデスメチルシブトラミン、ドペキサミン、フェノルドパム、イボパミン、レルゴトリル、リスリド、メマンチン、メスレルギン、ペルゴリド、ピリベジル、プラミペキソール、キナゴリド、ロピニロール、ロチゴチン、ロキシンドール、タリペキソール、それらの医薬的に許容される塩、プロドラッグ、及び、代謝産物、並びに、それらの組合せから選択されうる。一態様において、第一の及び第二のドーパミンアゴニストは、独立して、プラミペキソール、ロピニロール、又は、ロチゴチン薬剤、例えばロチゴチンHClを含む。好ましくは、少なくとも第二のドーパミンアゴニストは、ロチゴチン薬剤を含む。特に好ましい態様において、第一のドーパミンアゴニストは、ロチゴチン薬剤、例えば、経皮投与(例えば、Schwarz PharmaのNeupro(登録商標)ロチゴチンパッチのようなパッチ製剤)されるか、非経口投与(例えば、デポー注入製剤)されるロチゴチン遊離塩基を含み、第二のドーパミンアゴニストは、ロチゴチン薬剤、例えば、鼻腔投与(例えば鼻内噴霧)されるロチゴチンHClを含む。
本発明の他の態様は、間欠性の不穏下肢症候群(RLS)の予防/緩和、及び/又は、治療のための口腔/鼻咽腔送達できる医薬組成物の調製のためのドーパミンアゴニストの使用に関する。
【0052】
ある態様において、間欠性の不穏下肢症候群(RLS)の予防/緩和、及び/又は、治療、好ましくは、急性治療は、1以上のRLS感覚症状の発生及び/又は重症度の減少を意味する。ある態様において、医薬組成物、及び/又は、キットは、例えば0〜10スケールにおけるスコアの減少で測定されるような、感覚症状の重症度を減少するために有効である。効果的な方法は、少なくとも約1点で、例えば、少なくとも約2点、少なくとも約3点、又は、少なくとも約4点の減少をもたらすことができ、このような減少が投与後約4時間以内に、例えば、投与後約3時間以内に、約2時間以内に、約1時間以内に、約30分以内に、又は、約15分以内に、明白になる。
【0053】
ある態様において、間欠性の不穏下肢症候群(RLS)の予防/緩和、及び/又は、治療、好ましくは、急性治療は、1以上の運動症状の発生及び/又は重症度の減少を意味する。ある態様において、医薬組成物及び/又はキットは、例えば、覚醒インデックスの間の周期性四肢運動(PLMWI)に従って測定されるような運動障害の重症度を減少するために有効である。効果的な方法は、少なくとも約3点、例えば少なくとも約5点、少なくとも約7点、又は、少なくとも約10点のPLMWIにおける減少をもたらすことができ、このような減少が、投与後約4時間以内、例えば約3時間以内、約2時間以内、約1時間以内、約30分以内、約15分以内に明白になる。
本発明における"ドーパミンアゴニスト"という文言は、神経伝達物質ドーパミンの作用を模倣したドーパミン受容体を活性化する化合物として定義される。
【0054】
本発明の他の好ましい態様において、"ドーパミンアゴニスト"という文言は、アマンタジン、アポモルヒネ、ブロモクリプチン、カベルゴリン、カルモキシロール、光学的に純粋な(S)-ジデスメチルシブトラミン、ドペキサミン、フェノルドパム、イボパミン、レルゴトリル、リスリド、メマンチン、メスレルギン、ペルゴリド、ピリベジル、プラミペキソール、キナゴリド、ロピニロール、ロチゴチン、ロキシンドール、タリペキソール、それらの医薬的に許容される塩、プロドラッグ、及び、代謝産物、並びに、それらの組合せからなる群から選択される化学化合物であるものとして定義される。
本発明の好ましい態様において、ドーパミンアゴニストは、ロチゴチン、ロチゴチンのプロドラッグ若しくは代謝産物である。
【0055】
本発明において、ドーパミンアゴニスト、例えばロチゴチンHClを含む医薬組成物は、被検体の口腔/鼻咽腔小室で経粘膜投与される。本明細書における"口腔/鼻咽腔"小室は、相互接続された口、咽頭、及び、鼻の粘膜により形成された小室であり、そのそれぞれが粘膜内層を有する。薬剤は、この小室を介して投与されるだけでなく、そのなかで"経粘膜的に"投与され、このことは、少なくとも薬剤の本質的部分の吸収は、口、咽頭、及び、鼻の粘膜のうち1つ以上の粘膜内層を通って生じることを意味する。直接或いは飲み込むことで胃腸系を通過し、そこで吸収された薬剤の一部は、肝臓で初回通過代謝され、口内(すなわち経口)投与されたロチゴチンのバイオアベイラビリティを0近くまで減少することが知られている一連の過程のために、このことは重要である。例として、投与は、口腔(例えば、頬、口蓋、又は、舌下腺)、咽頭、鼻腔又はそれらの組合せでなされる。
【0056】
経粘膜送達のために、例えば、ロチゴチンHClのようなドーパミンアゴニストを含む医薬組成物は、定式化されていない活性医薬構成要素(API)として投与されうるが、多くの用途のためには、粘膜上に沈積し、粘膜に滞留するために適した医薬組成物にさらに適切に定式化される。このような組成物は、医薬的に許容される賦形剤中に医薬組成物を含み、固体(例えば粉末)、半固体(例えばゲル又はペースト)、又は、液体(例えば、水性、又は、非水性媒体)でありうる。口腔/鼻咽腔小室での経粘膜投与に適した組成物は、本明細書において、"口腔/鼻咽腔送達できる医薬組成物"又は"口腔/鼻咽腔投与製剤"として表され、同様に、口腔投与に適した組成物は、"口腔送達できる医薬組成物"又は"口腔投与製剤"として、鼻腔投与に適した組成物は、"鼻腔送達できる医薬品"又は"鼻腔投与製剤"として表される。本明細書の有用な口腔/鼻咽腔投与組成物の限定しない例は、口内噴霧、鼻内噴霧、鼻内点滴、及び、吸入粉末を含む。"吸入"粉末は、体腔に、本事例においては最も特定すると鼻腔への吸入に適した状態にした粒子径及び他の性質を有する粉末組成物である。
【0057】
一態様において、医薬組成物は、鼻腔投与に適している。このことは、該組成物が治療薬の鼻腔送達に物理的に適した形態にあることを意味する。該組成物は、例えば、鼻内噴霧、鼻内点滴、懸濁液、ゲル、軟膏、クリーム、又は、粉末として投与されうる。該組成物は、例として、組成物に推進力を与えるディスペンサーから鼻に粉末(例えば、粉末粒子又は霧化した液滴)を推進することにより、重力のもとで鼻に液体を点滴することにより、又は、組成物を含ませた鼻内タンポン又は鼻内スポンジを挿入することにより、投与しうる。特定の学説に固執することなく、鼻腔投与される場合に、ほとんどのドーパミンアゴニスト(例えばロチゴチン)の吸収は、鼻粘膜を通じると考えられている。
一態様において、鼻腔送達できる組成物は、吸入粉末の形態である。このような粉末は、ラクトース又はスターチのような適した原料粉末で固体微粒子形態中に活性薬剤を混合すること、又は、活性薬剤の液体プレ製剤を原料粉末上に吸収させることを含む、本分野で公知の方法で調製されうる。
他の態様において、鼻腔送達できる組成物は、噴霧できる液体(例えば、液媒体中に溶解又は分散した例えばロチゴチンHClのような、ドーパミンアゴニストを有するもの)の形態である。
NovaDel製薬株式会社は、最近、ロピニロール口内噴霧がパーキンソン病の将来性がある治療方法として開発されていると報告した(http://www.novadel.com/pdf/ NVDfactsheet.pdf.参照)。
【0058】
ある態様において、例えばロチゴチン、又はその塩、プロドラッグ若しくは代謝産物のようなドーパミンアゴニストは、少なくとも約0.1mg/ml、又は少なくとも約0.5mg/mlのドーパミンアゴニスト濃度(好ましくは、ロチゴチン遊離塩基等価物濃度)での口腔/鼻咽腔投与、さらに特に、鼻腔投与のため噴霧可能な液体組成物中に存在する。例えば、約0.5〜約5 mg/ml、約1〜約3 mg/ml、又は、約1.5〜約2.5 mg/mlのドーパミンアゴニスト濃度(好ましくはロチゴチン遊離塩基等価物濃度)は、一般的に好ましい。
これらの態様において投与された組成物は、1以上の医薬的に許容される補形剤、例えば、溶解度向上薬剤、等張化剤、緩衝剤(例えば、ホスファート又はアセタート)、酸性化剤、粘度調節剤、界面活性剤、保存剤、酸化防止剤、抗菌薬などとして有益な成分を含んでもよい水性賦形剤を含む。
組成物が水媒体中で調合された場合には、それは、1以上の医薬的に許容される等張(等張調整)化剤を含みうる。等張化剤は、好適な張性範囲に組成物を調整するために用いられ、典型的な場合には、実質的に等張の溶液を提供する。等張化剤の例は、グリセロール、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム(生理食塩水)、塩化カリウム、及び他の電解質、及びこれらの組合せを含む。
【0059】
医薬組成物は、1以上の医薬的に許容される溶解度向上薬を含んでもよい。シクロデキストリンは、溶解度向上薬の例であり、α-、β-及びγ-シクロデキストリンを含む。活性薬剤がロチゴチンHClである一態様において、組成物は、例えば上述したような好適な濃度で溶液中にロチゴチンHClを保持するために有効な量でα-デキストリンを含む。ある態様において、1以上のシクロデキストリン、例えばα-シクロデキストリンは、約1〜約500 mg/ml、例えば約10〜約100 mg/ml、約20〜約80 mg/ml、約30〜約70 mg/ml又は約40〜約60 mg/ml、例示として約50 mg/mlの濃度で組成物中に存在する。
医薬組成物は、1以上の医薬的に許容できる粘度調節剤を含んでもよい。粘度調節剤の説明のための例は、グリセロール及びカルボキシメチルセルロースを含む。液体の鼻腔投与組成物の粘度は、例えば、適切に約0.5〜約1.5mm2/s、例えば、約1〜約1.4mm2/sとすることができる(但し、これらの範囲外の粘度が特定の状況で有用になりうる)。ある態様において、粘度調節剤は、グリセロール及び/又はカルボキシメチルセルロースを含む。粘度は、既知の方法で測定することができ、本明細書で列挙された粘度は、DIN51562、パート1に従って動粘度を測定するためのボールを浮かせて水平にした(suspending ball-level)Ubbelohde毛細管粘度計により測定することができる。
【0060】
等張化剤及び/粘度調整剤として本明細書で用いられるグリセロールは、付加的な利益を有しうる。例えば、グリセロールは、鼻内粘膜上に鎮静効果を有しうる。更に、グリセロールは、上記で引用された国際特許公開番号WO 2005/063236に報告されているように、インビトロの浸透アッセイにおいて、ウシ鼻内粘膜によるロチゴチンの吸収を増強することが明らかになっている。
本明細書で有用な水性液状医薬組成物のpHは、好ましくは、約4.5〜約6.0であり、例えば約5.5〜約6.1である。約5.8のpHは、最善のロチゴチン取り込みをもたらすことが分かっている。組成物のpHは、例えば、アセタート及び/又はホスファート緩衝塩及び/又はクエン酸のような医薬的に許容される緩衝剤及び/又は酸性化剤で、それが調製されている間、又は、その後に調節されうる。ある態様において、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む鼻内組成物が投与される。
例として、本発明における有益な送達できる医薬組成物は、本分野で公知の方法で、又は、上記で引用した米国特許出願公開番号第2005/063236に記載されているように調製することができる。
【実施例】
【0061】
以下の実施例は、単に実例であり、いかなる方法においても本開示を制限しない。
<実施例1>
本発明の以下を含む鼻腔投与製剤を調製した。
2.5 g/l ロチゴチンHCl
85 g/l α-シクロデキストリン
8 g/l NaCl
0.2 g/l KC1
1.44 g/l Na2HPO4.2H2O
0.2 g/l KH2PO4
31.2 g/l グリセロール(87 % 水溶液)
最終体積まで添加するための水
pH調整用のクエン酸
溶液のpH 5.8
610mlの水をクエン酸でpH3に調整し、α-シクロデキストリン、グリセロール、及び、ロチゴチンHClを添加し、それぞれ、85mg/ml、2.6体積%、及び、2.5mg/mlの濃度にした。次いで、250mlの4×PBSバッファー溶液(標準PBSバッファー溶液の4倍の濃度を有する、すなわち、32 g/1 NaCl、0.8 g/1 KC1、5.76 g/1 Na2HPO4.2H2O、及び、0.8 g/l KH2PO4の濃度の水溶液)を添加し、次いで、pH5.8に到達するまで、1Mのクエン酸を滴下した。水を添加して最終体積の1000mlにした。
得られた溶液を0.22μm PESフィルターでろ過した。溶液を適当な医薬容器、例えば、8ml体積の暗色のバイアルに充填してもよく、そして、哺乳類、例えばヒトに鼻腔投与のために準備される。
【0062】
<実施例2>
室温(20℃)での水溶液中のロチゴチンHClの(最大)溶解度を、α-シクロデキストリン(α-CD)を用いることで、有意に向上できるが、β-シクロデキストリン(β-CD)を用いる場合、ロチゴチン溶解度はあまり増加しない。2つの種類の各シクロデキストリンの最大溶解度に近いシクロデキストリン濃度では、0.1 g/ml α-CD 溶液に5.03mg/mlのロチゴチンHClを溶解できる一方で、0.015 g/ml β-CD溶液に1.57 mg/mlのロチゴチンHClしか溶解できなかった。
アイソクラチックHPLC分析によって濃度を測定した(HPLCカラムLiChroCART 75×4 mm、Superspher 60 RP-select B 5 μm (メルク)、カラム温度:30℃、移動相:水/アセトニトリル/メタンスルホン酸(65/35/0.05 v/v/v)、流速:2 ml/分、注入量:50 μl、220nmでの検出、保持時間 約1.5 分)。既知の濃度を有する外部標準溶液を用いることで濃度を測定した。
結果を表1に示す。
【0063】
表1

n.d. =該当するデータがない
* =試験された溶液中の最大β-CD溶解度を超える
ロチゴチンHClの溶解度が0.1 g/mlのα-CDを添加することによって5倍に増加することが分かった。一方で、β-CDの最大溶解度の増強効果は、あまり大きくはないことが分かった(ファクター 1.6)。
ロチゴチン塩基は、実際には、水溶液、α-及びβ-シクロデキストリン含有水溶液のいずれにも不溶だった。
【0064】
<実施例3>
ロチゴチンHClの潜在的な鼻腔投与製剤の貯蔵安定性を評価するために、以下の製剤を調製した:
製剤サンプルA:
2.5 g/l ロチゴチン HCl
0.5 % (v/v) Tween 80
8 g/l NaCl
0.2 g/l KC1
1.44 g/l Na2HPO4.2H2O
0.2 g/l KH2PO4
最終体積まで添加するための水
pH調整用のクエン酸、pH 5.8
470mlの水をクエン酸でpH3に調整し、Tween 80、及び、ロチゴチンHClを添加し、それぞれ、0.5vol.%、及び、2.5mg/mlの濃度にした。次いで、200mlの4×PBSバッファー溶液を添加し、次いで、pH5.8に到達するまで、1Mのクエン酸を滴下した。水を添加して最終体積の800mlにした。
【0065】
製剤サンプルB:
2.5 g/l ロチゴチン HCl
85 g/l あるFα-シクロデキストリン
8 g/l NaCl
0.2 g/l KC1
1.44 g/l Na2HPO4.2H2O
0.2 g/l KH2PO4
最終体積まで添加するための水
pH調整用のクエン酸、pH 5.8
470mlの水をクエン酸でpH3に調整し、α-シクロデキストリン、及び、ロチゴチンHClを添加し、それぞれ、85 mg/ml、及び、2.5mg/mlの濃度にした。次いで、200mlの4×PBSバッファー溶液を添加し、次いで、pH5.8に到達するまで、1Mのクエン酸を滴下した。水を添加して最終体積の800mlにした。
安定性を、グラジエントHPLC分析を用いて経時的にロチゴチンの濃度を計測することによって測定した(HPLCカラム:Licrospher 100 CN、5 μm、125×4.6 mm (Bidhoff)、プレカラムフィルター:2 μm、移動相A:水/メタンスルホン酸(1000/0.5 (v/v))、移動相B:アセトニトリル/メタンスルホン酸(1000/0.5 (v/v))、流速 1.0 ml/分、グラジエントのプロフィール:0 分 95% A/5% B; 2 分 95% A/5% B; 35 分 40% A/60% B; 38 分 40% A/60% B; 39 分 95% A/5% B;初期圧力約90バール、注入体積80 μl、220 nm 及び 272 nmで検出、保持時間約18分)。面積が0.05%超過のクロマトグラムにおける全てのピークを35分の保持時間まで積分して、薬物物質の純度を計算した。相対純度は、ロチゴチンHClの分解を計算するために用いた。結果を表2に示した。
【0066】
表2

* これらの値は、与えられた条件での開始値と実際の試験点との間のロチゴチン吸収における損失を反映している。
** 純度における見かけの増加を、分析法の測定精度によって説明することができる。結果は、t=0での開始値と比較して、純度の有意な変化ではないものと解釈されるべきである。
α-シクロデキストリン(サンプルB)が、Tween 80製剤(サンプルA)と比較してロチゴチン HClの安定性を著しく増加することは、表2から容易に明らかである。α-シクロデキストリンの安定効果は、ロチゴチンHCl水溶液中での比較試験からも明らかになっている。次いで60℃で8週間貯蔵し、α-シクロデキストリンを含む1.6 mg/mlのロチゴチン溶液が、-0.07 mg/mlのロチゴチン濃度で減少を示した一方で、α-シクロデキストリンを含まない1.9 mg/mlのロチゴチン溶液が、-0.22 mg/mlの減少を示した。
【0067】
<実施例4>
2.5 g/l ロチゴチン HCl
50 g/l α-シクロデキストリン
4 g/l NaCl
0.1 g/l KCl
0.72 g/l Na2HPO4.2H2O
0.1 g/l KH2PO4
31.2 g/l グリセロール(87%水溶液)
水、470mlをクエン酸でpH3に調整し、α-シクロデキストリン、グリセロール、及び、ロチゴチンHClを添加し、それぞれ、50 mg/ml、及び、2.5mg/mlの濃度にした。次いで、200mlの2×PBSバッファー溶液を添加し、次いで、pH5.8に到達するまで、1Mのクエン酸を滴下した。水を添加して最終体積の800mlにした。
【0068】
<実施例5>
2.5 mg/ml ロチゴチン HCl
50 mg/ml α-シクロデキストリン
PBS 0.5× (NaCl, KCl, Na2HPO4, KH2PO4)
31.2 mg/ml グリセロール
クエン酸(pHを約5.8に調整するため)
【0069】
<実施例6>
1.25 mg/ml ロチゴチン HCl
25 mg/ml α-シクロデキストリン
PBS 0.5× (NaCl, KCl, Na2HPO4, KH2PO4)
31.2 mg/ml グリセロール
クエン酸(pHを約5.8に調整するため)
【0070】
<実施例7>
この実施例は、特発性RLSを患う被検者におけるRLSの急性症状の治療のためにロチゴチン鼻内噴霧の漸増用量の有効性、安全性、及び、認容性を評価したランダム化二重盲検プラセボ対照概念実証(proof-of-concept)試験に関する。これは、数値化された症状の重症度スケールにおける症状の重症度(感覚症状)の被検者評価と、静止していることによる症状の誘発後に、活動記録装置で計測された周期性四肢運動(PLM)インデックス(運動症状)とによって評価された。
この試験の通知は、最初に2006年10月17日にhttp://www.clinicaltrials.gov/ct/show/NCT00389831?order=1に投稿された。
【0071】
被検者
特発性RLSを患う全59人の被検者は、RLSの評定スケールによって確定した通りに、2つの治験実施施設で登録された。彼らが18〜65歳である場合に被検者に選ばれ、IRLSSGに従って4つの基本的特徴に基づいた特発性RLSの診断を受け、RLSの診断結果を確認するための適格評価(EA)で11点以上のRLS評価スケールスコア(診断インデックス、RLS-DI)を有しており、少なくともEAの直前の4週間にわたって、日常的なRLS症状を有した。RLS-DIは、RLSの診断結果を確定する、又は、除外するために用いられるツールである。それは、RLS診断結果の確率を測定する診断アルゴリズムを提供する。RLS-DIは、RLSを特定するための、又は、RLS症状の他の要因を除外するための必要度基準(5アイテム)、並びに、睡眠障害、RLSの家族歴、睡眠ポリグラムの研究結果、ドーパミンの治療に対する応答、及び、神経学の専門家の診断を含む10アイテムを有する。特異性を高めるために、主要なRLS症状が存在しない場合に、RLS-DIはアイテムをあまり重要視しない(Benesら, 2005)。この試験の被検者として登録するためには、それぞれの被検者は、RLS-DIスコアが11以上である必要があった。表3及び下記の表が示すように、プラセボ群及びロチゴチン群を比較する場合に、双方のロチゴチン治療の順番、RLSの発症及び診断からの経過時間、及び、他の診断基準に関して、比較されうる結果を確認した。平均RLS診断インデックスは、RLSの確定診断を示す双方の治療群に関して約16だった(Benesら, 2005)。
【0072】
表3:不穏下肢症候群の診断結果:平均 (SD)

RLS=不穏下肢症候群;SD=標準偏差
【0073】
試験への登録時点で、RLS症状の重症度によってこの試験で観察された被検者母集団を特徴付けるために、被検者は、第1日における最初のSITの開始前に、国際不穏下肢スケール(IRLS)を完成させることを要求された。IRLSは、RLSに起因する腕及び脚の不快感、動かしたい衝動、及び、症状の頻度を含む10アイテムを評価した(国際不穏下肢症候群研究グループ, 2003)。それぞれのアイテムが、0(なし)から4(極めて重度)のスケールにおける被検者で採点された。合計スコアは、0(RLS症状がない)〜40(全ての症状における最大重症度)で変動する。
以下の範囲が、重症度カテゴリーを決定するために用いられた:
・0 = なし
・1〜10 = 軽度
・11〜20 = 中度
・21〜30 = 重度
・31〜40 = 極めて重度
表4及び以下の表に示すように、プラセボ群とロチゴチン群とを比較した場合に、IRLS評定スケール合計スコアでの比較されうる結果を確認した。平均IRLSスコア25.8は、少なくとも中度の症状を示す全ての被検者で、重度のRLS症状を示した(最小スコア12)。
【0074】
表4:IRLS 評定スケール合計スコア

RLS=不穏下肢症候群
更に、被検者は、L-ドーパ応答であることが必要であり、EAの直前に少なくとも4週間、L-ドーパ治療下におかなければならない。全44人の被検者から、試験期間にわたってロチゴチン又はプラセボの鼻内噴霧を少なくとも1回適用して治療された42人の被検者をランダムに選んだ。表5は、試験の間の被検者体内動態を集約したものである。確実な集団(N=42)中、平均年齢が53.4歳(±7.5)で、37〜65歳の範囲内で、被験者の95%が65歳より若かった。被検者の多数(64%)が、女性だった。全ての被検者が白色人種であった。概して、ベースラインで治療群との間に重大な差異は無かった。
【0075】
表5.被検者の体内動態

試験薬剤は、3用量又はプラセボの55μl若しくは110μl ロチゴチン溶液を送達する、使用準備されている鼻内噴霧として投与された:
(a) 62 μg ロチゴチン (55 μlの1.25 mg/ml ロチゴチン HClにより投与)
(b) 124 μg ロチゴチン (110 μlの1.25 mg/ml ロチゴチン HClにより投与)
(c) 247 μg ロチゴチン (110 μlの2.5 mg/ml ロチゴチン HClにより投与)
【0076】
対応するプラセボ溶液は体積及び状況を一致させた。被検者は、4連続日で処理された。
被検者は、2つの治療選択肢の1つに、3:1 (ロチゴチン:プラセボ)の割合で、ランダムに割り振られた。個体内での比較を可能にするために、"ロチゴチン群"の中の全ての被検者が、第1日又は第2日のいずれかにおいてランダムな順番(1:1)でプラセボ治療を受け、ロチゴチン鼻内噴霧(62μg)若しくは適合したプラセボの最も低い用量の単独送達を受けた。第3日及び第4日において、被検者は、漸増用量の124及び247 μgでロチゴチン鼻内噴霧の単独送達を受けた。被検体は、各処理日において適合したプラセボ単独送達を受けた"プラセボ群"にランダムに割り振られた。
治験を行う医師が、前日の用量が安全に十分認容性を有すると判断した場合に、漸増用量での処理は、特定の被検者においてのみ継続された。
推奨される静止試験(Suggested Immobilization Test:SIT)(この間自発的に被検者が動いてはならない)が、下肢における運動と感覚症状を誘発するために行われた。静止していることによって、RLS症状の運動コンポーネントと感覚的コンポーネントの双方が悪化することが明らかになった。
SIT及び休止(用量での治療後の期間に症状を和らげることができる)を表6に示すように予定を決めた。ここで、試験薬物の吸入が0分に起こった。
【0077】
表6.SIT及び休止の予定

各治療日において、投与前SIT-0の開始から30分後、又は、数値化した症状重症度スケールにおける被検者の重症度スコアが5に達した直後のいずれか早い時間に試験薬物を投与した。投与前の最後のスコアを、各個人の被検者のベースライン値として定義する。
【0078】
主要有効性エンドポイント
1.下肢のRLS症状の重症度(感覚症状):各投与前及び投与後(SIT-0からSIT-6)の推奨されている静止試験の開始時、及び、各SIT中の毎5分間、数値化された症状重症度スケールを用いて、症状の重症度における主観的評価により評定した。
2.各SIT及び各SITの特定時間区分に対する覚醒インデックス(PLMWI)間のPLM(覚醒時のPLM エポック/時間、運動症状)を、SIT周期の全持続時間(投与前及び投与後SIT-0からSIT-6、約4.5時間)にわたって記録されたアクティグラフィー(actigraphy)によるPLM測定をベースとして評価した。
RLSは、通常、80〜85%のRLS患者において覚醒状態(PMLM)及び睡眠状態(PMLS)を引き起こす不随意PLMと関係した。PLMWIは、覚醒状態の間、PLMWの頻度及び運動症状の程度を示し、それ自体症状の主観的評価に加えて症状の重症度の評価を支持する。センターリーダーは、SIT期間に行われたアクティグラフ測定のPLM評価を標準化するために用いた。
【0079】
結果
下肢における症状の重症度は、各SIT中の毎5分間で、及び各投与前及び投与後のSIT-0からSIT-6の開始点で、数値化した症状重症度スケールを用いて主観的評価によって評定した。スケールにおけるスコアは、0("症状なし")から10("極めて重度")までで変化した。
鼻内噴霧の投与の直前に、"ロチゴチン群"における各処理日の重症度スコアは、以下の通り、プラセボ, 3.4 点;ロチゴチン 62 μg, 3.2 点; ロチゴチン 124 μg, 3.6 点;及び、ロチゴチン 247 μg, 3.4 点 (SIT-0の最後の被検者スコアの平均、ベースライン)だった。
"ロチゴチン群"の各処理日における重症度スコアのベースラインからの最大平均減少は、以下の通りだった:プラセボ, -0.9 点; ロチゴチン 62 μg, -0.8 点; ロチゴチン 124 μg, -2.0 点;及び、ロチゴチン 247 μg, -2.3 点。
【0080】
図1は、処理後の期間(個体の最後の投与前スコアによって補正)中のSITごとに平均のベースライン補正された重症度スコアにおける鼻内噴霧の効果を、グラフを用いて示す。
SITごとに症状の平均重症度における最も低いロチゴチン用量の効果は、プラセボ治療後に観察される効果と同等であると考えられた。用量依存的効果は、124 μg及び247 μgという2つのより高いロチゴチン用量の投与後、明らかだった。概して、これらの用量の後に観察される効果は、平均重症度スコアの約2点減少だった。この効果は、既にSIT-1(0-40分、投与後)の平均値で明白であり、4時間の試験期間の終わりまで、SIT-2からSIT-6まで安定であった。
"プラセボ群"の経時的な平均重症度スコア(データを示さず)は、プラセボ処理後の"ロチゴチン群"の被検者の経時的な平均重症度スコアと整合しており、このことは、観察された治療反応の有効性を支持した(上記参照)。特に、"プラセボ群"において、経時的重症度は、全ての処理日で同様の結果だった(すなわち、4日の処理期間にわたって、"学習効果"は無かった)。
【0081】
作用の開始のタイミングを評価するために、図2は、毎5分間、主観的評価された経時的な平均重症度スコアの経過を、グラフを用いて示す。
重症度スコアの治療を通した用量の区分別の傾向を、投与後10分経つとすぐに観察した。この時点で、静止していることによって誘発された症状の重症度は、プラセボ及び最も低いロチゴチン用量ではまだ増大する一方で、該重症度は、2つのより高い用量では改善する傾向にあった。従って、124μg及び247μgの2つの高いロチゴチン用量の効果の始まりは、投与の10分後に生じることが、結論付けられた。
予測されたように、SIT-1及びSIT-2の間の10分間の休止は、SIT-2の開始時に低い重症度スコアをもたらす症状の減少につながった。静止によって誘発したときに、症状の重症度はSIT-2の間に増加し、このことは、プラセボ又は62μgロチゴチンで治療された被検体で顕著だったが、124μg又は247μgのロチゴチンで治療された被検体において、軽度程度になった。
概して、124μg及び247μgの用量でのロチゴチン鼻内噴霧の投与は、症状重症度の用量依存性改善をもたらし、このことは、投与10分後に明白だった。
この作用は、SIT-2からSIT-6まで、4時間の試験時間の終わりまで安定していた。症状重症度のわずかな改善が、62μgロチゴチン鼻内噴霧の投与20分後に見られ、これは、SIT-1の残り時間に安定だったが、続くSIT期間中に確認できなかった。しかしながら、この効果に基づき、低用量の投与でさえ、RLS症状の改善の可能性をいくらか有することを除外してはならない。
【0082】
PLMW
PLMWの頻度は、全SIT期間にわたって行われるアクティグラフ測定で確定された。PLMWIは、1時間当たりPLMWの数と定義される。鼻内噴霧の投与の前に、"ロチゴチン群"の各処理日の平均PLMWIは以下の通り、プラセボ, 14.3;ロチゴチン 62 μg, 7.9; ロチゴチン 124 μg, 16.8;及び、ロチゴチン 247 μg, 25.8 (SIT-0の平均PLMWI、ベースライン)であった。
図3は、投与後の期間、(投与前SIT-0で補正された)SITあたりのベースラインの補正された平均PLMWIにおける鼻内噴霧の効果をグラフで示す。
PLMWIにおける改善は、被検者が最も高いロチゴチン用量(247μg)で治療された場合に観察された。一般的に、この治療の後に観察された作用は、PLMWIにおいて約10点のベースラインから減少した。2つの低い用量(62μg及び124μg)の結果は、プラセボと同様だった。
概して、PLMWIの結果は、このパラメータの高い可変性によって慎重に解釈されるべきである。
【0083】
結論
以下の結論が導き出された:
(a)124μg及び247μgの用量のロチゴチン鼻内噴霧の投与が、感覚症状の用量依存的改善につながった。
(b)作用の開始が、投与の10分後に観察された。SIT-2からSIT-6まで、観察された効果は、その4時間後の試験時間の終わりまで、安定していた。
(c)SIT-1の間、重症度スコアにおいて観察された効果に基づいて、投与された低用量(62μg)でさえ、RLS症状の改善の可能性をいくらか有することを除外してはならない。
【0084】
上記の記載及び明細書の実施例を考慮して、本出願に係る発明は、以下の独立した局面を有する。
i)被検体に医薬組成物の1回以上の用量を投与することを含む、四肢静止不能疾患の予防/緩和、及び/又は、治療のための口腔/鼻咽腔送達できる医薬組成物の調製のためのロチゴチン、ロチゴチンの医薬的に許容される塩の一つ、及び/又は、ロチゴチンのプロドラッグ、又は、代謝産物の使用であって、各用量が、疾患の1以上の症状の発生及び/又は重症度を減少するために有効な量を含むが、24時間以内の全ての用量の総量が、約450μgのロチゴチン遊離塩基等価物を超えない、使用、
ii)口腔/鼻咽腔送達できる医薬組成物が、鼻腔送達できる医薬組成物である局面i)に記載の使用、
iii)疾患が、不穏下肢症候群(RLS)である、上記局面のいずれかに記載の使用、
iv)医薬組成物が、不穏下肢症候群(RLS)の急性治療のために用いられる局面iii)に記載の使用、
v)間欠性の不穏下肢症候群(RLS)の治療のための局面iii)又はiv)に記載の使用、
vi)投与量が、1回の投与当たり約10〜約450μgのロチゴチン遊離塩基等価物である上記局面のいずれかに記載の使用、
vii)投与量が、1回の投与当たり約100〜約450μgのロチゴチン遊離塩基等価物である局面vi)に記載の使用、
viii)医薬組成物が、投与後約4時間以内に、0〜10のRLSの重症度スケールに従って測定されるRLSの感覚症状の重症度を少なくとも約1点減少するために有効である局面iii)〜vii)に記載の使用、
ix)医薬組成物が、投与後約1時間以内に、0〜10のRLSの重症度スケールに従って測定されるRLSの感覚症状の重症度を少なくとも約2点減少するために有効である局面iii)、iv)、v)、vii)及びviii)のいずれかに記載の使用、
x)医薬組成物が、少なくとも約3時間にわたる投与後約1時間を経て、0〜10のRLS重症度スケールに従って測定されるRLSの感覚症状の重症度を少なくとも約1点減少するために有効である局面ix)のいずれかに記載の使用、
xi)医薬組成物が、投与後約20分後直ぐに、0〜10のRLSの重症度スケールに従って測定される感覚症状の改善をもたらす局面iii)〜xi)のいずれかに記載の使用、
xii)医薬組成物が、投与後約4時間以内に、RLSの運動症状の重症度を少なくとも約3PLMWI(Periodic Limb Movement Index during Wakefulness)点減少するために有効である局面iii)〜xi)のいずれかに記載の使用、
xiii)医薬組成物が、投与後約1時間以内に、RLSの運動症状の重症度を少なくとも約10PLMWI点減少するために有効である局面iii)、iv)、v)、vii)、viii)、ix)、x)、xi)及びxii)に記載の使用、
xiv)医薬組成物が、少なくとも約3時間にわたる投与後約1時間以内に、RLSの運動症状の重症度を少なくとも約10PLMWI点減少するために有効である局面xiii)に記載の使用、
xv)医薬組成物が、持続的に少なくとも約2時間にわたって、疾患の1以上の症状を軽減することに有効であるのに十分な被検体の血漿中のロチゴニンのレベルを提供するために有効な方法で、ロチゴチンを送達するために形成された局面iii)、iv)、v)、vii)、viii)、ix)、x)、xi)、xii)、xiii)及びxiv)のいずれかに記載の使用、
xvi)医薬組成物が、疾患に罹患した1以上の肢の相対的に静止している期間前約2時間にわたって、又は、相対的に静止している期間前約2時間以内に、投与される上記局面のいずれかに記載の使用、
xvii)(a)1回以上の用量を提供する量で、医薬的に許容される賦形剤中に、ロチゴチン、又は、ロチゴチンの医薬的に許容される塩、プロドラッグ、若しくは、代謝産物を含む組成物を含む貯蔵器、及び、(b)四肢静止不能疾患の治療で1日当たり約450μgのロチゴチン遊離塩基等価物を超えない量で1回以上の用量の口腔/鼻咽腔投与するための貯蔵器上の表示、貯蔵器のパッケージの中の表示、又は、そのパッケージ上の表示を含む医薬品、
xviii)医薬的に許容される賦形剤中に、約10〜約450μgのロチゴチン遊離塩基等価物の量でロチゴチン、ロチゴチンの医薬的に許容される塩、プロドラッグ、又は、代謝産物を含む医薬投与ユニット、
xix)(a)1回以上の用量を提供する量で、医薬的に許容される賦形剤中に、ロチゴチン、又は、ロチゴチンの医薬的に許容される塩、プロドラッグ、若しくは、代謝産物を含む組成物、及び、(b)四肢静止不能疾患の治療で1日当たり約450μgのロチゴチン遊離塩基等価物を超えない量で1回以上の用量の口腔/鼻咽腔投与するための表示がある説明書を含む医薬キット、
xx)(a)四肢静止不能疾患の長期治療のために有効な量で第一のドーパミンアゴニストを含む経口製剤、経皮製剤、又は、非経口製剤、及び、(b)疾患の1以上の進展症状の発生、及び/又は、重症度を減少するために、必要な治療に有効な量で第二のドーパミンアゴニストを含む口腔/鼻咽腔の製剤を含み、第一のドーパミンアゴニストと第二のドーパミンアゴニストとが、同じ、若しくは、異なる医薬キット、
xxi)間欠性の不穏下肢症候群(RLS)の予防/緩和、及び/又は、治療のための口腔/鼻咽腔送達できる医薬組成物の調製のためのドーパミンアゴニストの使用、
xxii)ドーパントアゴニストは、アマンタジン、アポモルヒネ、ブロモクリプチン、カベルゴリン、カルモキシロール、(S)-ジデスメチルシブトラミン、ドペキサミン、フェノルドパム、イボパミン、レルゴトリル、リスリド、メマンチン、メスレルギン、ペルゴリド、ピリベジル、プラミペキソール、キナゴリド、ロピニロール、ロチゴチン、ロキシンドール、タリペキソール、それらの医薬的に許容される塩、プロドラッグ、若しくは、代謝産物、又は、それらの組合せを含む局面xxi)に記載の使用、
xxiii)ドーパミンアゴニストは、ロチゴチン、ロチゴチンのプロドラッグ、又は、代謝産物である局面xxii)に記載の使用、
xxiv)口腔/鼻咽腔送達できる医薬組成物が、鼻腔送達できる医薬組成物である局面xxi)〜xxiii)のいずれかに記載の使用。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に医薬組成物の1回以上の用量を投与することを含む、四肢静止不能疾患の予防/緩和、及び/又は、治療のための口腔/鼻咽腔送達できる医薬組成物の調製のためのロチゴチン、ロチゴチンの医薬的に許容される塩の一つ、及び/又は、ロチゴチンのプロドラッグ若しくは代謝産物の使用であって、
各用量が、前記疾患の1以上の症状の発生及び/又は重症度を減少するために有効な量を含むが、24時間以内の全ての前記用量の総量が、約450μgのロチゴチン遊離塩基等価物を超えない、使用。
【請求項2】
口腔/鼻咽腔送達できる医薬組成物が、鼻腔送達できる医薬組成物である請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記疾患が、不穏下肢症候群(RLS)であり、前記医薬組成物が、不穏下肢症候群(RLS)の急性治療のために、又は、間欠性の不穏下肢症候群(RLS)の治療のために用いられる請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
投与量が、1回の投与当たり約10〜約450μgのロチゴチン遊離塩基等価物である請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
医薬組成物が、投与後約1時間以内に、0〜10のRLSの重症度スケールに従って測定されるRLSの感覚症状の重症度を少なくとも約2点減少するために有効である、
又は、
医薬組成物が、少なくとも約3時間にわたる投与後約1時間を経て、0〜10のRLS重症度スケールに従って測定されるRLSの感覚症状の重症度を少なくとも約1点減少するために有効である、
請求項3又は4に記載の使用。
【請求項6】
医薬組成物が、投与後約20分経つと直ぐに、0〜10のRLSの重症度スケールに従って測定された感覚症状の改善をもたらす、請求項3〜5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
医薬組成物が、投与後1時間以内に、RLSの運動症状の重症度を少なくとも約10PLMWI点減少するために有効である、又は、
医薬組成物が、少なくとも約3時間にわたる投与後約1時間以内に、RLSの運動症状の重症度を少なくとも約10PLMWI点減少するために有効である、
請求項3〜6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
医薬組成物が、持続的に少なくとも約2時間にわたって、前記疾患の1以上の症状を軽減することに有効であるのに十分な被検体の血漿中のロチゴニンのレベルを提供するために有効な方法で、ロチゴチンを送達するために形成される、
請求項3〜7のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
医薬組成物が、疾患に罹患した1以上の肢の相対的に静止している期間前約2時間にわたって、又は、相対的に静止している期間前約2時間以内に、投与される請求項1〜8のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
(a)1回以上の用量を提供する量で、医薬的に許容される賦形剤中に、ロチゴチン、又は、ロチゴチンの医薬的に許容される塩、プロドラッグ、若しくは、代謝産物を含み、
各用量が、四肢静止不能疾患の1以上の症状の発生及び/又は重症度を減少するために有効な量を含むが、24時間以内の全ての前記用量の総量の投与が、約450μgのロチゴチン遊離塩基等価物を超えない、組成物を含む貯蔵器、及び、
(b)四肢静止不能疾患の治療で1日当たり約450μgのロチゴチン遊離塩基等価物を超えない量で前記1回以上の用量の口腔/鼻咽腔投与するための前記貯蔵器上の表示、前記貯蔵器のパッケージの中の表示、又は、そのパッケージ上の表示、
を含む医薬品。
【請求項11】
四肢静止不能疾患の予防/緩和、及び/又は、治療の方法での使用のための口腔/鼻咽腔送達できる医薬組成物中に、約10〜約450μgのロチゴチン遊離塩基等価物の量でロチゴチン、ロチゴチンの医薬的に許容される塩、プロドラッグ、又は、代謝産物を含む医薬投与ユニットであって、
各投与ユニットが、前記疾患の1以上の症状の発生及び/又は重症度を減少するために有効な量を含み、
1回以上の投与ユニットが、被検者に投与されるが、24時間以内の前記投与ユニットの投与が、約450μgのロチゴチン遊離塩基等価物を超えない、ユニット。
【請求項12】
(a)1回以上の用量を提供する量で、医薬的に許容される賦形剤中に、ロチゴチン、又は、ロチゴチンの医薬的に許容される塩、プロドラッグ、若しくは、代謝産物を含み、
各用量が、四肢静止不能疾患の1以上の症状の発生及び/又は重症度を減少するために有効な量を含むが、24時間以内の全ての前記用量の総量の投与が、約450μgのロチゴチン遊離塩基等価物を超えない、組成物、及び、
(b)四肢静止不能疾患の治療で1日当たり約450μgのロチゴチン遊離塩基等価物を超えない量で前記1回以上の用量の口腔/鼻咽腔投与するための表示がある説明書、
を含む医薬品。
【請求項13】
(a)四肢静止不能疾患の長期治療のために有効な量で第一のドーパミンアゴニストを含む経口製剤、経皮製剤、又は、非経口製剤、及び、
(b)前記疾患の1以上の進展症状の発生及び/又は重症度を減少するために、必要な治療に有効な量で第二のドーパミンアゴニストを含む口腔/鼻咽腔投与製剤を含み、
前記第一のドーパミンアゴニストと第二のドーパミンアゴニストとが、同じ、若しくは、異なる、
医薬キット。
【請求項14】
間欠性の不穏下肢症候群(RLS)の予防/緩和、及び/又は、治療のための口腔/鼻咽腔送達できる医薬組成物の調製のためのドーパミンアゴニストの使用であって、
組成物が、被検体に前記医薬組成物の1回以上の用量を投与することに適しており、
各用量が、前記疾患の1以上の症状の発生及び/又は重症度を減少するために有効な量を含むが、24時間以内の全ての前記用量の総量が、約450μgのロチゴチン遊離塩基等価物を超えない、使用。
【請求項15】
ドーパントアゴニストは、アマンタジン、アポモルヒネ、ブロモクリプチン、カベルゴリン、カルモキシロール、(S)-ジデスメチルシブトラミン、ドペキサミン、フェノルドパム、イボパミン、レルゴトリル、リスリド、メマンチン、メスレルギン、ペルゴリド、ピリベジル、プラミペキソール、キナゴリド、ロピニロール、ロチゴチン、ロキシンドール、タリペキソール、又は、それらの医薬的に許容される塩、プロドラッグ、若しくは、代謝産物、又は、それらの組合せを含む請求項14に記載の使用。
【請求項16】
ドーパミンアゴニストが、ロチゴチン、ロチゴチンのプロドラッグ、又は、代謝産物である請求項15に記載の使用。
【請求項17】
口腔/鼻咽腔送達できる医薬組成物が、鼻腔送達できる医薬組成物である請求項14〜16のいずれかに記載の使用。
【請求項18】
四肢静止不能疾患の予防/緩和、及び/又は、治療のための方法で使用するためのロチゴチン、ロチゴチンの医薬的に許容される塩の一つ、及び/又は、ロチゴチンのプロドラッグ若しくは代謝産物を含む、口腔/鼻咽喉送達できる医薬組成物であって、
組成物が、被検体に前記医薬組成物の1回以上の用量を投与することに適しており、
各用量が、前記疾患の1以上の症状の発生及び/又は重症度を減少するために有効な量を含むが、24時間以内の全ての前記用量の総量が、約450μgのロチゴチン遊離塩基等価物を超えない、医薬組成物。
【請求項19】
間欠性の不穏下肢症候群(RLS)の予防/緩和、及び/又は、治療のための方法で使用するためのドーパミンアゴニストを含む、口腔/鼻咽喉送達できる医薬組成物であって、
組成物が、被検体に前記医薬組成物の1回以上の用量を投与することに適しており、
各用量が、前記疾患の1以上の症状の発生及び/又は重症度を減少するために有効な量を含むが、24時間以内の全ての前記用量の総量が、約450μgのロチゴチン遊離塩基等価物を超えない、医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−526117(P2010−526117A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506904(P2010−506904)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055413
【国際公開番号】WO2008/135527
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(591071997)シュバルツ ファルマ アクチェンゲゼルシャフト (39)
【氏名又は名称原語表記】SCHWARZ PHARMA AKTIENGESELLSCHAFT
【住所又は居所原語表記】Alfred−Nobel−Strasse 10, D−40789 Monheim, Germany
【Fターム(参考)】