説明

回動体装置及び収納装置

【課題】製造コストを増加させることなく開口部の最大開き位置で蓋体を安定的に停止させることができるコンソールボックスを提供する。
【解決手段】ボックス本体13に制動部53を一体に設ける。制動部53は、開口部49の最大開き位置よりも閉じる位置側で蓋体12の摺接部27bと摺接して蓋体12の回動速度を減速させる。ボックス本体13に開放保持部54を一体に設ける。開放保持部54と蓋体12の当接支持部27aとが当接することにより開口部49の最大開き位置で蓋体12を保持する。緩衝材を別途用いて製造コストを増加させることなく、開口部49の最大開き位置で蓋体12を安定的に停止させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被開閉部を閉じる位置から開く位置まで回動可能に本体に軸支された回動体を有する回動体装置及びこれを備えた収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の運転席と助手席との間に配設され、上面などに開口部を有する本体としての収納体であるボックス本体及びこのボックス本体の開口部を開閉する回動体としての蓋体を備えた合成樹脂製の収納装置としてのコンソールボックスが知られている。そして、このコンソールボックスは、蓋体が開口部に回動可能に設けられ、この蓋体がばねによって開口部を開く方向に付勢されており、ボックス本体に対する蓋体のロックを解除することで、ばねの付勢によって蓋体が自動的に最大開き状態(全開状態)まで回動するように構成されている。このような蓋体は、一般的に、この蓋体の回動機構の一部がボックス本体側の一部と当接することにより回動が止まる停止機構を備えている。
【0003】
近年、アームレストともなる蓋体の内部にも小物などを収納できるように蓋体自体にスライド機構などを設けるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このような蓋体は重量が重く、ばねの付勢によって自動的に開くようにすると、必然的に付勢力が強いばねを用いなければならない。この場合、閉状態とした蓋体のロックを解除すると同時にばねによる付勢によって重量が大きい蓋体を跳ね上げて最大開き位置(全開位置)まで回動させる際、最大開き位置へと近づくにしたがって蓋体の回動速度が徐々に増すようになり、上記のような停止機構によって蓋体の回動を規定位置で停止させようとしても、蓋体が最も加速した状態でボックス本体側と当接するため、回動の衝撃を吸収しきれず、蓋体が閉方向へと跳ね返るように回動した後、開方向へと再度回動して最大開き位置で静止するおそれがある。すなわち、蓋体が最大開き位置近傍においてバウンドするような挙動を取るおそれがある。
【0004】
このような蓋体の挙動は、コンソールボックスの高級感を損なうため、例えばウレタン、あるいはゴムなどの緩衝材を配置することによって蓋体の跳ね返りを防止するように構成したり、ダンパなどの回動速度制御装置を用いて蓋体の回動速度を減速したりする構成が考えられるものの、これらの構成を採用すると、コスト増となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−211437号公報 (第3頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、製造コストを増加させることなく蓋体を最大開き位置で安定的に停止させる構成が求められている。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、製造コストを増加させることなく被開閉部の最大開き位置で回動体を安定的に停止させることができる回動体装置及びこれを備えた収納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の回動体装置は、被開閉部を備えた本体と、前記被開閉部を閉じる位置から開く位置まで回動可能に前記本体に軸支された回動体と、前記被開閉部を開く方向へと前記回動体を付勢する付勢手段と、前記本体と前記回動体とのいずれか一方に一体に設けられ、前記本体と前記回動体との他方の一部との当接により前記被開閉部の最大開き位置で前記回動体を保持する開放保持部と、前記本体と前記回動体とのいずれか一方に一体に設けられ、前記被開閉部の最大開き位置よりも閉じる位置側での前記本体と前記回動体との他方の一部との摺接により前記回動体の回動速度を減速させる制動部とを具備したものである。
【0009】
請求項2記載の回動体装置は、請求項1記載の回動体装置において、制動部は、回動体の回転中心を中心とし本体と前記回動体との他方の一部を通る仮想円と少なくとも一部が重なるように形成されているものである。
【0010】
請求項3記載の回動体装置は、請求項1または2記載の回動体装置において、制動部は、本体と回動体との他方の一部との摺接により弾性的に変形することで前記回動体の回動速度の減速量を調整する弾性部を少なくとも一部に備えているものである。
【0011】
請求項4記載の回動体装置は、請求項1ないし3いずれか一記載の回動体装置において、制動部は、開放保持部と連続して設けられているものである。
【0012】
請求項5記載の収納装置は、請求項1ないし4いずれか一記載の回動体装置を備え、本体は、被開閉部としての開口部、及びこの開口部と連通する収容部を有する収納体であり、回動体は、前記開口部を開閉する蓋体であるものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の回動体装置によれば、本体と回動体とのいずれか一方に一体に設けた制動部と本体と回動体との他方の一部とが、被開閉部の最大開き位置よりも閉じる位置側で摺接して回動体の回動速度を減速させるとともに、本体と回動体とのいずれか一方に一体に設けた開放保持部と本体と回動体との他方の一部とが当接することにより被開閉部の最大開き位置で回動体を保持することで、緩衝材などを別途用いて製造コストを増加させることなく、被開閉部の最大開き位置で回動体を安定的に停止させることができる。
【0014】
請求項2記載の回動体装置によれば、請求項1記載の回動体装置の効果に加え、制動部を回動体の回転中心を中心とし本体と回動体との他方の一部を通る仮想円と少なくとも一部が重なるように形成することにより、制動部と本体と回動体との他方の一部とが、被開閉部の最大開き位置よりも閉じる位置側で摺接して回動体の回動速度を減速させる構成を容易に形成できる。
【0015】
請求項3記載の回動体装置によれば、請求項1または2記載の回動体装置の効果に加え、制動部の少なくとも一部に設けた弾性部が、本体と回動体との他方の一部との摺接により弾性的に変形することによって回動体の回動速度の減速量を調整することで、制動部による回動体の回動速度が急激に低下したり、回動体の回動が被開閉部の最大開き位置よりも閉じる位置側で停止したりすることを、より確実に防止できる。
【0016】
請求項4記載の回動体装置によれば、請求項1ないし3いずれか一記載の回動体装置の効果に加え、制動部を開放保持部と連続して設けることで、回動速度を制動部によって減速させた回動体を、被開閉部の最大開き位置でより確実に停止させることができる。
【0017】
請求項5記載の収納装置によれば、請求項1ないし4いずれか一記載の回動体装置を備えることで、収容部と連通する開口部を開閉する蓋体を開口部の最大開き位置で確実に停止させることが可能な高品質の収納装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の回動体装置の一実施の形態を示す回動体としての蓋体の回動速度が減速されている状態を示す側面図である。
【図2】同上蓋体の閉状態を示す側面図である。
【図3】同上蓋体の最大開き状態を示す側面図である。
【図4】同上回動体装置の蓋体を示す斜視図である。
【図5】同上回動体装置の収納体を示す斜視図である。
【図6】同上回動体装置としての収納装置の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の回動体装置及び収納装置の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0020】
図1ないし図6において、10は回動体装置としての収納装置であるコンソールボックスで、このコンソールボックス10は、例えば自動車の車両の前席すなわち運転席と助手席との間に位置するセンタコンソールの一部を構成する。そして、このコンソールボックス10は、回動体としての蓋体12と、この蓋体12が回動可能に軸支されて自動車の車体側に取り付けられる本体としての収納体であるボックス本体13とを備えている。なお、以下、前後方向、両側方向及び上下方向などの方向は、コンソールボックス10を車体に取り付けた状態を基準として説明する。
【0021】
蓋体12は、リッドなどとも呼ばれ、ボックス本体13を回動により開閉するとともに、乗員が肘などを乗せるアームレストとしても機能するものである。そして、この蓋体12は、回動体本体としての蓋体本体であるアームレスト部16と、このアームレスト部16の下部に突出するヒンジ部17,17とを備えている。
【0022】
アームレスト部16は、コンソールボックス10の後部上側に位置しており、例えば皮革、あるいは布などによって覆われている。このアームレスト部16は、様々な形状とすることができるが、例えば前後方向に長手状に形成されている。さらに、このアームレスト部16の後部には、後方に向けて上方へと傾斜した傾斜部16aが形成されている。そして、このアームレスト部16の前部の下側には、ボックス本体13に対向する凹部16bが形成されている。
【0023】
また、各ヒンジ部17は、アームレスト部16の傾斜部16aの下部の両側から後方下側へと板状、すなわち前後方向及び上下方向に沿う面に沿って突出するヒンジ部本体21と、このヒンジ部本体21の後部上側から突出する軸支部22とをそれぞれ有している。
【0024】
各ヒンジ部本体21は、外側すなわち他方のヒンジ部17と反対側の側面に、略六角形状の補強リブ部24が形成されている。換言すれば、このヒンジ部本体21の外側の側面は、補強リブ部24間が肉抜きされた肉抜き部25となっている。なお、補強リブ部24は、説明をより明確にするために図4において一部を省略して示している。また、このヒンジ部本体21は、前側が円弧状に湾曲した湾曲部26となっているとともに、この湾曲部26の後端部に連続して、この湾曲部26に対して交差する方向へと突出する突出部27が形成されている。この突出部27は、湾曲部26側である前側が平面状の当接支持部27aとなっているとともに、先端部の反湾曲部26側である後側が円弧状に形成された摺接部27bとなっている。すなわち、これら当接支持部27aと摺接部27bとは、互いに隣接して配置されている。そして、当接支持部27aは、ボックス本体13側と当接する当接部であり、摺接部27bは、ボックス本体13側と摺接、すなわち干渉する干渉部である。
【0025】
また、軸支部22は、車幅方向すなわち両側方向を軸方向としてボックス本体13に軸支される部分であり、この軸支部22には、上側が開口した半円形状の付勢手段配置部である受け凹部31を備え、この受け凹部31の外側の一側が覆い部32により覆われている。この受け凹部31には、ボックス本体13の一部が嵌合するようになっている。さらに、覆い部32の中央部には、円形状の挿入開口32aが形成されており、この挿入開口32aには、蓋体12の回動軸34の端部が挿入されている。そして、覆い部32の挿入開口32aの両側には、直径方向に対して平行にリブ32b,32bが一体に形成されている。
【0026】
回動軸34の両端部は、それぞれヒンジ部17,17の軸支部22,22の挿入開口32a,32aに挿入され、係止手段としてのEリング35などによりヒンジ部17,17(蓋体12)に対して抜け止めされている。そして、この回動軸34の中心軸が蓋体12の回動中心となっている。このため、湾曲部26の形状は、回動軸34の中心軸を中心とした側面視の仮想的な円周に沿っている。
【0027】
なお、蓋体12は、例えばアームレスト部16を薄箱状とし、アームレスト部16の上部を下部に対して長手方向にスライド可能、あるいは回動可能などとすることで、小物などを収納できる回動体収容部(蓋体収容部)を内部に構成してもよい。
【0028】
一方、ボックス本体13は、例えば合成樹脂により箱状に形成されたケーシング部37と、このケーシング部37の両側を覆って前方へと伸びる側部化粧板38,38と、ケーシング部37の後部を覆う後部化粧板39とを有している。そして、このボックス本体13のケーシング部37の前方と側部化粧板38,38との間には、例えば前側から順に、図示しない変速操作部、及び、必要に応じてジョイスティックなどを備える多機能操作部などが配置される配置部40が区画されている。
【0029】
ケーシング部37は、有底角筒状のケーシング部本体41と、このケーシング部本体41の後部に設けられた支持部42とを一体に有している。
【0030】
ケーシング部本体41は、平板状の図示しない底板と、この底板の前端部から上方に立ち上げられた前板45と、底板の両側から上方に立ち上げられた側板46,46と、底板の後側から上方に立ち上げられた後板47とを一体に備えており、これら底板、前板45、側板46,46及び後板47により収容部48が区画されているとともに、前板45、側板46,46及び後板47の上端部により、収容部48と連通する四角形状の被開閉部としての開口部49が区画されている。
【0031】
前板45は、上下方向及び左右方向に延びる平板状に形成されている。また、この前板45は、側部化粧板38,38間にて配置部40に臨んで位置している。さらに、この前板45の上端部には、蓋体12をボックス本体13に係止する係止手段としてのクランプ部50が配置されている。このクランプ部50は、配置部40の上方で、かつ、アームレスト部16の前部の凹部16bに対向して位置している。そして、このクランプ部50は、図示しないばねなどの係止付勢手段により蓋体12を係止する方向に向けて付勢されており、この係止付勢手段の付勢により蓋体12の係止状態を維持するとともに、乗員などの外部操作によって係止を解除可能に構成されている。
【0032】
また、各側板46は、前後方向及び上下方向に沿って延びる平板状に形成されている。さらに、各側板46の外面、すなわち反収容部48側の面には、補強用のリブ部51が格子状に形成されている。さらに、各側板46の外面には、側部化粧板38,38を取り付けるための受け部52が複数形成されている。また、各側板46の外面の後部上側には、リブ部51と連続して、蓋体12の回動速度を所定範囲に亘って減速させる制動部53と、この制動部53と連続し蓋体12と当接可能な開放保持部54とが形成されている。そして、各側板46の上縁部には、開口部49の外方へとフランジ状に突出するフランジ部55が形成されている。
【0033】
制動部53は、リブ部51の上部と連続する制動部支持部としての連結部53aと、この連結部53aの上端部から開放保持部54に亘って連続する補助当接受部としての弾性部53bとを一体に有しており、側板46に対して、この側板46の厚さ方向である車幅方向に沿って突出するリブ状に一体成形されている。すなわち、この制動部53は、薄板状に形成されている。さらに、各制動部53は、回動軸34を介して蓋体12をボックス本体13に取り付けた状態で、蓋体12の各ヒンジ部17の湾曲部26の前方の上側寄りの位置に対向して位置している。
【0034】
連結部53aは、弾性部53bの下側を支持する部分であり、上下方向に沿って直線状に形成されている。
【0035】
また、弾性部53bは、蓋体12の各ヒンジ部17の突出部27の先端側の摺接部27bが蓋体12の回動時に摺接することで蓋体12の回動速度を抑制する部分であり、前方に向けて上方へと傾斜して長手状に形成されている。すなわち、この弾性部53bは、特に開放保持部54側である上側が蓋体12の回動中心である回動軸34の中心軸を中心とし摺接部27bを通る仮想円C、すなわち仮想的な円弧に対して僅かに(例えば0.3mm程度)重なる(ラップする)ように形成されている。さらに、この弾性部53bは、他の補強部などにより補強されていない、一枚板状に形成されており、摺接部27bが摺接することで板厚方向に僅かに弾性的に撓み変形可能となっている。なお、この弾性部53bは、蓋体12の各ヒンジ部17の突出部27の先端側の摺接部27bと摺接する形状であれば、直線状としてもよいし、例えば前側へと僅かに突出する円弧状に湾曲していてもよい。
【0036】
また、開放保持部54は、蓋体12の各ヒンジ部17の突出部27の当接支持部27aが蓋体12の回動時に対向して当接することで蓋体12の回動を規制する部分、すなわち蓋体12の最大回動角度(最大開き位置)を設定する部分であり、制動部53の弾性部53bの上端部から後方に向けて略水平状に延びて形成された平面状となっており、側板46に対して、この側板46の厚さ方向である車幅方向に沿って突出するリブ状に形成されている。すなわち、この開放保持部54は、薄板状に形成されている。さらに、この開放保持部54の上部には、補強部としての複数の補強リブ57が突設されている。これら補強リブ57は、側板46に一体形成されているとともに、側板46の上縁部のフランジ部55に連結され、開放保持部54を上下方向に補強している。なお、本実施の形態において、開放保持部54によって、蓋体12は、例えば最大で70°回動可能となっている。
【0037】
また、後板47は、上下方向及び左右方向に沿って延びる平板状に形成されている。さらに、この後板47の上端部には、後方に向けて上方へと傾斜した傾斜板部47aが一体に形成されている。この傾斜板部47aは、蓋体12により開口部49を閉塞した状態で蓋体12のアームレスト部16の後部の傾斜部16aに沿う部分である。そして、この後板47の後部には、傾斜板部47aの後部に亘って、支持部42が一体に形成されている。
【0038】
また、支持部42は、側部化粧板38,38の後部及び後部化粧板39によって覆われる部分であり、後板47の傾斜板部47aの下部に突出する支持部本体61と、この支持部本体61の下部に連続し後板47の外面である後面に沿って車幅方向の中央部に上下方向に長手状に形成された支持延設部62とを一体に備えている。
【0039】
支持部本体61は、傾斜板部47aから後方に向けて下方へと突出する両側板部65,65と、これら両側板部65,65の下端部間を連結する連結板部66とを備え、傾斜板部47aとともに四角形枠状に形成されている。
【0040】
各側板部65には、車幅方向を軸方向とする付勢手段保持部としての保持部71が上端寄りの位置に円筒状(ボス状)に突設され、この保持部71の周囲に、蓋体12との干渉を避ける逃げ部72が凹設されている。
【0041】
保持部71は、付勢手段としてのトーションばね74を保持する部分であり、この保持部71の外周面に、保持リブ部71aが軸方向に沿って複数形成されている。これら保持リブ部71aは、保持部71を補強するとともにトーションばね74を回り止めするものである。さらに、両側板部65,65の保持部71,71間に亘って、回動軸34が挿通されている。また、トーションばね74は、金属製の線状体がコイル状に巻回されて形成され、内部に挿入された保持部71の保持リブ部71aにより保持部71に保持されている。そして、このトーションばね74は、一端側が蓋体12に固定され、他端側がボックス本体13に固定されて、ボックス本体13の開口部49を開く方向(図1ないし図3の時計回り方向)へと蓋体12を付勢するようになっている。
【0042】
また、逃げ部72は、外縁部が保持部71(回動軸34)の中心軸を中心とする仮想的な円弧に沿って形成されている。
【0043】
また、支持延設部62の側部には、側部化粧板38を取り付けるための図示しない受け部が形成されている。さらに、支持延設部62の後部には、後部化粧板39を取り付けるための図示しない取付受け部が形成されている。
【0044】
そして、コンソールボックス10は、蓋体12が開口部49を閉じた状態(閉位置)でクランプ部50によってボックス本体13に係止されている。このとき、蓋体12は、アームレスト部16の傾斜部16aがボックス本体13の傾斜板部47aにより閉塞され、各ヒンジ部17の軸支部22が各逃げ部72に嵌合した状態となっている(図2)。
【0045】
この状態で、乗員などがクランプ部50を操作することにより蓋体12のボックス本体13への係止を解除すると、トーションばね74の付勢によって、蓋体12が回動軸34を中心として回動する。このとき、蓋体12は、アームレスト部16の前部が後方上側へと回動するため、各ヒンジ部17の突出部27が前方上側へと移動する。
【0046】
蓋体12が閉位置から開方向へと、所定の回動角度、例えば65°程度回動すると、各ヒンジ部17の突出部27の摺接部27bが制動部53の弾性部53bに接触し、この弾性部53bに沿って前方上側へと摺接することにより、これらの摩擦抵抗によって蓋体12の回動速度が減速される(図1)。このとき、弾性部53bが前側すなわち反摺接部27b側へと弾性的に撓むことによって、蓋体12の回動速度の減速量が調整され、蓋体12の回動速度が急激に低下することはない。
【0047】
そして、制動部53の弾性部53bに対して摺接部27bが蓋体12の最大開き位置(全開位置)までの所定の角度範囲、例えば5°に亘って摺接し続けることにより、蓋体12は回動速度が減速された状態を維持し、この状態で各ヒンジ部17の当接支持部27aがボックス本体13の各開放保持部54に当接すると、蓋体12は、閉方向へと跳ね返る(バウンドする)ことなくその回動が停止し、開口部49を最大に開いた最大開き位置で保持される(図3)。
【0048】
なお、蓋体12を閉じる際には、トーションばね74の付勢に抗して蓋体12のアームレスト部16を前方へと押し下げることにより、蓋体12がクランプ部50によりボックス本体13に係止され、開口部49を閉じた状態で保持される。
【0049】
このように、本実施の形態によれば、ボックス本体13に一体に設けた制動部53と蓋体12の摺接部27bとが、開口部49の最大開き位置よりも閉じる位置側で摺接して蓋体12の回動速度を減速させるとともに、ボックス本体13に一体に設けた開放保持部54と蓋体12の当接支持部27aとが当接することにより開口部49の最大開き位置で蓋体12を保持することで、例えばウレタン、あるいはゴムなどの緩衝材などを別途用いて製造コストを増加させることなく、開口部49の最大開き位置で蓋体12を安定的に停止させることができる。
【0050】
すなわち、制動部53は、ボックス本体13(のケーシング部37)を成形する際に同時に成形できるため、緩衝材などの別途の組み付け作業が不要であり、作業工数の増加や部品コストの増加を防止でき、製造コストが増加することがない。
【0051】
特に、例えば蓋体12の内部に回動体収容部(蓋体収容部)を設けるなど、蓋体12の重量が大きく、その重量に対応させてトーションばね74の付勢力を大きくした場合などでも、制動部53によって蓋体12の回動速度を確実に減速させることができ、開口部49の最大開き位置で蓋体12を安定的に停止させることができる。
【0052】
しかも、制動部53は、蓋体12の回動範囲のうち、所定の回動角度(本実施の形態では65°)から開口部49の最大開き位置側の所定の角度範囲(本実施の形態では5°)でのみ蓋体12の回動速度を減速させるため、蓋体12の回動初期(開き始め)の回動動作を損なうことがない。
【0053】
さらに、制動部53は、ボックス本体13(のケーシング部37)に、リブ部51と連続するリブ状に形成されているため、ボックス本体13(のケーシング部37)を成形するための金型に大きな設計変更を施すことなく容易に形成できる。
【0054】
また、制動部53(の弾性部53b)を、蓋体12の回動中心である回動軸34の中心軸を中心とし摺接部27bを通る仮想円Cと重なるように形成することにより、制動部53と蓋体12の摺接部27bとが、開口部49の最大開き位置よりも閉じる位置側で摺接して蓋体12の回動速度を減速させる構成を容易に形成できる。
【0055】
さらに、制動部53の一部に設けた弾性部53bが、蓋体12との摺接により弾性的に変形することによって蓋体12の回動速度の減速量を調整することで、制動部53との摺接による蓋体12の回動速度が急激に低下したり、蓋体12の回動が開口部49の最大開き位置よりも閉じる位置側で停止したりすることを、より確実に防止できる。
【0056】
また、制動部53を開放保持部54と連続して設けることで、回動速度を制動部53によって減速させた蓋体12を、開口部49の最大開き位置でより確実に停止させることができる。
【0057】
そして、収容部48と連通する開口部49を開閉する蓋体12をこの開口部49の最大開き位置で安定的に停止させることが可能となり、蓋体12の動作に高級感を与えることができ、高品質のコンソールボックス10を提供できる。
【0058】
なお、上記の一実施の形態において、蓋体12の回動速度をより確実に減速させるために、ダンパなどの回動速度制御装置を併用してもよい。
【0059】
また、車両の車室に備えられるコンソールボックス10について説明したが、この構成に限られず、車両の他の位置に配置される小物入れ、あるいはカップホルダなどの車両用収納ボックスなどに適用できる。そして、このような小物入れ、あるいはカップホルダなどに適用した場合など、蓋体12の重量が比較的小さく、トーションばね74の付勢力を比較的小さくすることができる場合には、蓋体12の回動初期(開き始め)から制動部53と蓋体12の摺接部27bとを摺接させるようにすることで、ダンパなどの回動速度制御装置を用いることなく蓋体12の回動速度(開き速度)を容易に制御できる。すなわち、制動部53及び開放保持部54は、蓋体12及びボックス本体13の大きさに拘らず設定できる。
【0060】
さらに、制動部53を蓋体12に一体に設け、蓋体12の回動により制動部53に摺接する摺接部をボックス本体13の一部に一体に設ける構成としてもよい。同様に、開放保持部54を蓋体12に一体に設け、蓋体12の回動により開放保持部54と当接して開口部49の最大開き位置で蓋体12を保持するように構成してもよい。
【0061】
そして、上記の一実施の形態では、車両の車室に備えられるコンソールボックス10について説明したが、この構成に限られず、車両の他の位置に配置される車両用収納ボックスなどに適用できる。また、車両用に限られず、種々の場所に取り付けられる収納装置に適用することもできる。そして、収納装置に限られず、すなわち、回動体は収納ボックスの開口部を開閉する蓋体に限られず、操作部などの部分を覆う蓋体を備えた蓋装置として適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、車両の車室に備えられるコンソールボックス、あるいは蓋体を有する小物入れやカップホルダなどに適用できる。
【符号の説明】
【0063】
10 回動体装置としての収納装置であるコンソールボックス
12 回動体としての蓋体
13 本体としての収納体であるボックス本体
48 収容部
49 被開閉部としての開口部
53 制動部
53b 弾性部
54 開放保持部
74 付勢手段としてのトーションばね
C 仮想円

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被開閉部を備えた本体と、
前記被開閉部を閉じる位置から開く位置まで回動可能に前記本体に軸支された回動体と、
前記被開閉部を開く方向へと前記回動体を付勢する付勢手段と、
前記本体と前記回動体とのいずれか一方に一体に設けられ、前記本体と前記回動体との他方の一部との当接により前記被開閉部の最大開き位置で前記回動体を保持する開放保持部と、
前記本体と前記回動体とのいずれか一方に一体に設けられ、前記被開閉部の最大開き位置よりも閉じる位置側での前記本体と前記回動体との他方の一部との摺接により前記回動体の回動速度を減速させる制動部と
を具備したことを特徴とする回動体装置。
【請求項2】
制動部は、回動体の回転中心を中心とし本体と前記回動体との他方の一部を通る仮想円と少なくとも一部が重なるように形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の回動体装置。
【請求項3】
制動部は、本体と回動体との他方の一部との摺接により弾性的に変形することで前記回動体の回動速度の減速量を調整する弾性部を少なくとも一部に備えている
ことを特徴とする請求項1または2記載の回動体装置。
【請求項4】
制動部は、開放保持部と連続して設けられている
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載の回動体装置。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか一記載の回動体装置を備え、
本体は、被開閉部としての開口部、及びこの開口部と連通する収容部を有する収納体であり、
回動体は、前記開口部を開閉する蓋体である
ことを特徴とする収納装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−95244(P2013−95244A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239099(P2011−239099)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】