説明

回路の抽出装置及び抽出方法、シミュレーション情報生成システム及び方法、並びにネットリスト

【課題】 回路シミュレーションにおいて実デバイスのドレイン電流及びゲート容量を共に精度良く再現することができるような,回路情報を抽出する。
【解決手段】 トランジスタ部形状認識手段1はマスクレイアウトデータ11からトランジスタ部の形状を認識し、トランジスタ部形状データ12を生成する。トランジスタサイズ計算手段2はトランジスタ部形状データ12に基づいて、回路シミュレーションにおけるドレイン電流が実デバイスにおけるドレイン電流と合致するような等価トランジスタサイズを求め、トランジスタサイズデータ14として出力する。補正容量生成手段3は前記等価トランジスタサイズを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおけるゲート容量の差を求め、求めた差に相当する容量値を有する補正容量を仮想的に生成する。ネットリスト出力手段4はトランジスタサイズデータ14及び補正容量データ17を回路シミュレーションに用いる回路情報としてネットリスト18に反映させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体集積回路の設計において用いられる、マスクレイアウトから回路情報を抽出するための回路の抽出装置及び抽出方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、マイクロプロセッサに代表されるLSI(Large Scale Integration )は、プロセス技術や設計技術等の進歩に伴い、その性能や集積度を急速に高めている。高性能、高集積LSIを実現するためには精度の高い回路設計を行うことが要求され、高精度な回路設計においてCAD(Computer Aided Design )ツールが重要な役割を担っている。
【0003】設計精度に深く関与するCADツールの一つとして、回路シミュレータがある。回路シミュレータとは、設計されたLSIを対象として、MOSトランジスタ、容量、抵抗、インダクタンス等の素子の接続情報及びトランジスタサイズ(トランジスタ幅、トランジスタ長)、容量値、抵抗値、インダクタンス値等の特性情報を含むネットリストを基にして、実デバイス(実際に製造されたLSI)を想定したシミュレーションを行うものである。前記のネットリストは、例えば、設計されたLSIのマスクレイアウトから回路の抽出装置によって抽出することができる。
【0004】回路の抽出装置及び回路シミュレータを用いた従来のLSIのシミュレーションについて、図14に示すMOSトランジスタを対象にした場合を例にとって説明する。
【0005】図14はMOSトランジスタのマスクレイアウトの一例を示す図である。図14に示すように、MOSトランジスタ90は、ゲート91、ソース92、ドレイン93、基板94の4端子から構成されている。95,96は、それぞれソース92、ドレイン93への接続のためのコンタクトである。また、Wはトランジスタ幅(ゲート幅)であり、Lはトランジスタ長(ゲート長)である。
【0006】まず、回路の抽出装置によって、図14に示すマスクレイアウトから図15に示すようなネットリストが抽出される。図15に示すネットリストは、MOSトランジスタ90を記述するものであり、トランジスタサイズ(トランジスタ幅W,トランジスタ長L)のデータを含んでいる。
【0007】次に、回路シミュレータによって、図15に示すネットリストを基にして回路シミュレーションが行われる。回路シミュレータは、図15に示すネットリストに含まれたトランジスタサイズデータに基づいて図1414に示すMOSトランジスタ90のドレイン電流及びゲート容量を決定し、実デバイスの動作を再現する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来には以下のような問題があった。
【0009】従来の回路の抽出装置では、回路シミュレータによる回路シミュレーションにおいてMOSトランジスタのドレイン電流及びゲート容量が精度良く再現されるようなネットリストを、マスクレイアウトから抽出することができなかった。
【0010】実デバイスにおいては、トランジスタサイズ(トランジスタ幅、トランジスタ長)が等しくてもトランジスタ部(ゲート)の形状が異なると、MOSトランジスタのドレイン電流及びゲート容量は必ずしも等しくはならない。ところが、通常の回路シミュレータでは、トランジスタサイズ(トランジスタ幅、トランジスタ長)が等しいMOSトランジスタは、ドレイン電流及びゲート容量は等しいものとして取り扱われる。
【0011】図16はMOSトランジスタのマスクレイアウトの他の例を示す図であり、トランジスタ部(ゲート)91が折れ曲がったMOSトランジスタ90Aを示している。ここで、図14に示すMOSトランジスタ90と図16に示すMOSトランジスタ90Aとにおいて、トランジスタ幅W及びトランジスタ長Lがそれぞれ等しいものとする。この場合、実デバイスにおいては、トランジスタ部91の形状の相違からMOSトランジスタ90とMOSトランジスタ90Aとではドレイン電流及びゲート容量が異なるにも拘らず、回路シミュレータは、MOSトランジスタ90とMOSトランジスタ90Aとをドレイン電流及びゲート容量が同じものとして取り扱ってしまう。
【0012】ネットリストにおいて、回路シミュレーションにおけるドレイン電流の精度を高めるためにMOSトランジスタのトランジスタサイズを補正した場合には、回路シミュレーションにおいてゲート容量の精度が低下してしまう。一方、ゲート容量の精度を高めるためにMOSトランジスタのトランジスタサイズを補正した場合には、ドレイン電流の精度が低下してしまう。
【0013】すなわち、従来では、ドレイン電流及びゲート容量を共に精度良く実デバイスに合わせ込めるようなネットリストを生成することができず、このため、精度の高い回路シミュレーションを行うことができないという問題があった。
【0014】前記の問題に鑑み、本発明は、マスクレイアウトから回路シミュレーションに用いる回路情報を抽出する回路の抽出装置及び回路の抽出方法として、回路シミュレーションにおいてトランジスタのドレイン電流及びゲート容量が共に精度良く再現できるような回路情報を抽出可能にすることを課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】前記の課題を解決するため、請求項1の発明が講じた手段は、半導体回路のマスクレイアウトから回路シミュレーションに用いる回路情報を抽出する回路の抽出装置として、前記半導体回路が有するトランジスタについて、前記マスクレイアウトから認識した前記トランジスタの形状を基にして、回路シミュレーションと実デバイスとにおいてドレイン電流が合致するような等価トランジスタサイズを求めると共に、この等価トランジスタサイズを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおけるゲート容量の差に相当する容量値を有する補正容量を仮想的に生成して、前記等価トランジスタサイズ及び前記補正容量のデータを回路シミュレーションに用いる回路情報とするものである。
【0016】請求項1の発明により、トランジスタ部の形状が異なること等に起因する,回路シミュレーションと実デバイス(実際に製造された半導体回路)とにおけるドレイン電流の相違は、等価トランジスタサイズを求めることによってなくすことができると共に、トランジスタ部の形状が異なること等に加えて等価トランジスタサイズによってドレイン電流を合わせ込んだことに起因する,回路シミュレーションと実デバイスとにおけるゲート容量の相違は、補正容量を仮想的に生成することによってなくすことができる。したがって、前記等価トランジスタサイズ及び前記補正容量のデータを回路シミュレーションに用いる回路情報として用いることによって、回路シミュレーションにおいてトランジスタのドレイン電流及びゲート容量を共に精度良く再現することができる。
【0017】そして、請求項2の発明は、前記請求項1の発明を具体化したものであり、半導体回路のマスクレイアウトから回路シミュレーションに用いる回路情報を抽出する回路の抽出装置として、前記マスクレイアウトからトランジスタを認識し、認識したトランジスタのトランジスタ部の形状を認識するトランジスタ部形状認識手段と、前記トランジスタ部形状認識手段によって認識されたトランジスタ部の形状に基づいて、回路シミュレーションにおける前記トランジスタのドレイン電流が実デバイスにおける前記トランジスタのドレイン電流と合致するような等価トランジスタサイズを求めるトランジスタサイズ計算手段と、前記トランジスタサイズ計算手段によって求められた等価トランジスタサイズを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおける前記トランジスタのゲート容量の差を求め、求めた差に相当する容量値を有する補正容量を仮想的に生成する補正容量生成手段とを備えたものとする。
【0018】また、前記の課題を解決するため、請求項3の発明が講じた解決手段は、半導体回路の製造後の仕上り形状を考慮したマスクレイアウトから、回路シミュレーションに用いる回路情報を抽出する回路の抽出装置として、前記半導体回路が有するトランジスタについて、前記マスクレイアウトから認識した,曲線を含む前記トランジスタの形状を基にして、回路シミュレーションと実デバイスとにおいてドレイン電流が合致するような等価トランジスタサイズを求めると共に、この等価トランジスタサイズを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおけるゲート容量の差に相当する容量値を有する補正容量を仮想的に生成して、前記等価トランジスタサイズ及び前記補正容量のデータを回路シミュレーションに用いる回路情報とするものである。
【0019】請求項3の発明により、トランジスタ部の形状が異なること、トランジスタ部の形状が曲線を有すること等に起因する,回路シミュレーションと実デバイスとにおけるドレイン電流の相違は、等価トランジスタサイズを求めることによってなくすことができると共に、トランジスタ部の形状が異なること、トランジスタ部の形状が曲線を有すること等に加えて等価トランジスタサイズによってドレイン電流を合わせ込んだことに起因する,回路シミュレーションと実デバイスとにおけるゲート容量の相違は、補正容量を仮想的に生成することによってなくすことができる。このため、半導体回路の製造後の仕上がり形状を考慮したマスクレイアウトのようにトランジスタ部の形状が曲線で表されたマスクレイアウトを回路抽出の対象とする場合でも、等価トランジスタサイズ及び補正容量を求めることが可能であるので、仕上がり形状を考慮した等価トランジスタサイズ及び補正容量を回路シミュレーションに用いる回路情報として抽出することができる。したがって、前記等価トランジスタサイズ及び前記補正容量のデータを回路シミュレーションに用いる回路情報として用いることによって、回路シミュレーションにおいてトランジスタのドレイン電流及びゲート容量を共に精度良く再現することができる。
【0020】そして、請求項4の発明は、前記請求項3の発明を具体化したものであり、半導体回路の製造後の仕上り形状を考慮したマスクレイアウトから、回路シミュレーションに用いる回路情報を抽出する回路の抽出装置として、前記マスクレイアウトからトランジスタを認識し、認識したトランジスタのトランジスタ部の形状をこの形状が有する曲線も含めて認識するトランジスタ部形状認識手段と、前記トランジスタ部形状認識手段によって認識されたトランジスタ部の形状に基づいて、回路シミュレーションにおける前記トランジスタのドレイン電流が実デバイスにおける前記トランジスタのドレイン電流と合致するような等価トランジスタサイズを計算するトランジスタサイズ計算手段と、前記トランジスタサイズ計算手段によって求められた等価トランジスタサイズを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおける前記トランジスタのゲート容量の差を求め、求めた差に相当する容量値を有する補正容量を仮想的に生成する補正容量生成手段とを備えているものとする。
【0021】また、前記の課題を解決するため、請求項5の発明が講じた手段は、半導体回路のマスクレイアウトから回路シミュレーションに用いる回路情報を抽出する回路の抽出装置として、前記半導体回路が有するトランジスタについて、前記マスクレイアウトから認識した前記トランジスタの形状を基にして、回路シミュレーションと実デバイスとにおいてゲート容量が合致するような等価トランジスタサイズを求めると共に、この等価トランジスタサイズを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおけるドレイン電流の差に相当する電流値を有する補正電流源を仮想的に生成して、前記等価トランジスタサイズ及び前記補正電流源のデータを回路シミュレーションに用いる回路情報とするものである。
【0022】請求項5の発明により、トランジスタ部の形状が異なること等に起因する,回路シミュレーションと実デバイスとにおけるゲート容量の相違は、等価トランジスタサイズを求めることによってなくすことができると共に、トランジスタ部の形状が異なること等に加えて等価トランジスタサイズによってゲート容量を合わせ込んだことに起因する,回路シミュレーションと実デバイスとにおけるドレイン電流の相違は、補正電流源を仮想的に生成することによってなくすことができる。したがって、前記等価トランジスタサイズ及び前記補正電流源のデータを回路シミュレーションに用いる回路情報とすることによって、回路シミュレーションにおいてトランジスタのドレイン電流及びゲート容量を共に精度良く再現することができる。
【0023】そして、請求項6の発明は、前記請求項5の発明を具体化したものであって、半導体回路のマスクレイアウトから回路シミュレーションに用いる回路情報を抽出する回路の抽出装置として、前記マスクレイアウトからトランジスタを認識し、認識したトランジスタのトランジスタ部の形状を認識するトランジスタ部形状認識手段と、前記トランジスタ部形状認識手段によって認識されたトランジスタ部の形状に基づいて、回路シミュレーションにおける前記トランジスタのゲート容量が実デバイスにおける前記トランジスタのゲート容量と合致するような等価トランジスタサイズを求めるトランジスタサイズ計算手段と、前記トランジスタサイズ計算手段によって求められた等価トランジスタサイズを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおける前記トランジスタのドレイン電流の差を求め、求めた差に相当する電流値を有する補正電流源を仮想的に生成する補正電流源生成手段とを備えているものである。
【0024】また、前記の問題を解決するため、請求項7の発明が講じた手段は、半導体回路のマスクレイアウトから回路シミュレーションに用いる回路情報を抽出する回路の抽出装置と、前記半導体回路のプロセス情報等の情報から回路シミュレーションに用いるパラメータを抽出するパラメータ抽出手段とを備えたシミュレーション用情報生成システムとして、前記回路の抽出装置は、前記半導体回路が有するトランジスタについて、前記マスクレイアウトから認識した前記トランジスタの形状を基にして、回路シミュレーションと実デバイスとにおいてゲート容量が合致するような等価トランジスタサイズを求め、求めた等価トランジスタサイズを回路シミュレーションに用いる回路情報として出力するものであり、前記パラメータ抽出手段は、前記回路の抽出装置によって求められた等価トランジスタサイズを入力とし、この等価トランジスタサイズを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおいて前記トランジスタのドレイン電流が合致するようなパラメータを抽出するものであるものとする。
【0025】請求項7の発明により、トランジスタ部の形状が異なること等に起因する回路シミュレーションと実デバイスとにおけるゲート容量の相違は、回路の抽出装置によって求められた等価トランジスタサイズを回路情報として用いることによってなくすことができると共に、トランジスタ部の形状が異なること等に加えて等価トランジスタサイズによってゲート容量を合わせ込んだことに起因する回路シミュレーションと実デバイスとにおけるドレイン電流の相違は、パラメータ抽出手段によって等価トランジスタサイズを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおいて前記トランジスタのドレイン電流が合致するようなパラメータを抽出することによってなくすことができる。したがって、回路シミュレーションにおいてトランジスタのドレイン電流及びゲート容量が共に精度良く再現することができる。
【0026】また、前記の課題を解決するため、請求項8の発明が講じた手段は、半導体回路のマスクレイアウトから回路シミュレーションに用いる回路情報を抽出する回路の抽出方法として、前記半導体回路が有するトランジスタについて、前記マスクレイアウトから認識した前記トランジスタの形状を基にして、回路シミュレーションと実デバイスとにおいてドレイン電流が合致するような等価トランジスタサイズを求めたのち、この等価トランジスタサイズを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおけるゲート容量の差に相当する容量値を有する補正容量を仮想的に生成することにより、前記等価トランジスタサイズ及び前記補正容量のデータを回路シミュレーションに用いる回路情報とするものである。
【0027】請求項8の発明により、トランジスタ部の形状が異なること等に起因する,回路シミュレーションと実デバイスとにおけるドレイン電流の相違は、等価トランジスタサイズを求めることによってなくすことができると共に、トランジスタ部の形状が異なること等に加えて等価トランジスタサイズによってドレイン電流を合わせ込んだことに起因する,回路シミュレーションと実デバイスとにおけるゲート容量の相違は、補正容量を仮想的に生成することによってなくすことができる。したがって、前記等価トランジスタサイズ及び前記補正容量のデータを回路シミュレーションに用いる回路情報とすることによって、回路シミュレーションにおいてトランジスタのドレイン電流及びゲート容量を共に精度良く再現することができる。
【0028】そして、請求項9の発明は、前記請求項8の発明を具体化したものであり、半導体回路のマスクレイアウトから回路シミュレーションに用いる回路情報を抽出する回路の抽出方法として、マスクレイアウトからトランジスタを認識し、認識したトランジスタのトランジスタ部の形状を認識するトランジスタ部形状認識工程と、前記トランジスタ部形状認識工程によって認識されたトランジスタ部の形状に基づいて、回路シミュレーションにおける前記トランジスタのドレイン電流が実デバイスにおける前記トランジスタのドレイン電流と合致するような等価トランジスタサイズを求めるトランジスタサイズ計算工程と、前記トランジスタサイズ計算工程によって求められた等価トランジスタサイズを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおける前記トランジスタのゲート容量の差を求め、求めた差に相当する容量値を有する補正容量を仮想的に生成する補正容量生成工程とを備えているものとする。
【0029】また、前記の課題を解決するため、請求項10の発明が講じた解決手段は、半導体回路の製造後の仕上り形状を考慮したマスクレイアウトから回路シミュレーションに用いる回路情報を抽出する回路の抽出方法として、前記半導体回路が有するトランジスタについて、前記マスクレイアウトから認識した,曲線を含む前記トランジスタの形状を基にして、回路シミュレーションと実デバイスとにおいてドレイン電流が合致するような等価トランジスタサイズを求めたのち、この等価トランジスタサイズを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおけるゲート容量の差に相当する容量値を有する補正容量を仮想的に生成することにより、前記等価トランジスタサイズ及び前記補正容量のデータを回路シミュレーションに用いる回路情報とするものである。
【0030】請求項10の発明により、トランジスタ部の形状が異なること、トランジスタ部の形状が曲線を有すること等に起因する,回路シミュレーションと実デバイスとにおけるドレイン電流の相違は、等価トランジスタサイズを求めることによってなくすことができると共に、トランジスタ部の形状が異なること、トランジスタ部の形状が曲線を有すること等に加えて等価トランジスタサイズによってドレイン電流を合わせ込んだことに起因する,回路シミュレーションと実デバイスとにおけるゲート容量の相違は、補正容量を仮想的に生成することによってなくすことができる。このため、半導体回路の製造後の仕上がり形状を考慮したマスクレイアウトのようにトランジスタ部の形状が曲線で表されたマスクレイアウトを回路抽出の対象とする場合でも、等価トランジスタサイズ及び補正容量を求めることが可能であるので、仕上がり形状を考慮した等価トランジスタサイズ及び補正容量を回路シミュレーションに用いる回路情報として抽出することができる。したがって、前記等価トランジスタサイズ及び前記補正容量のデータを回路シミュレーションに用いる回路情報として用いることによって、回路シミュレーションにおいてトランジスタのドレイン電流及びゲート容量を共に精度良く再現することができる。
【0031】そして、請求項11の発明は、請求項10の発明を具体化したものであり、半導体回路の製造後の仕上り形状を考慮したマスクレイアウトから回路シミュレーションに用いる回路情報を抽出する回路の抽出方法として、前記マスクレイアウトからトランジスタを認識し、認識したトランジスタのトランジスタ部の形状をこの形状が有する曲線も含めて認識するトランジスタ部形状認識工程と、前記トランジスタ部形状認識工程によって認識されたトランジスタ部の形状に基づいて、回路シミュレーションにおける前記トランジスタのドレイン電流が実デバイスにおける前記トランジスタのドレイン電流と合致するような等価トランジスタサイズを求めるトランジスタサイズ計算工程と、前記トランジスタサイズ計算工程によって求められた等価トランジスタサイズを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおける前記トランジスタのゲート容量の差を求め、求めた差に相当する容量値を有する補正容量を仮想的に生成する補正容量生成工程とを備えているものとする。
【0032】また、請求項12の発明が講じた手段は、半導体回路のマスクレイアウトから回路シミュレーションに用いる回路情報を抽出する回路の抽出方法として、前記半導体回路が有するトランジスタについて、前記マスクレイアウトから認識した前記トランジスタの形状を基にして、回路シミュレーションと実デバイスとにおいてゲート容量が合致するような等価トランジスタサイズを求めたのち、この等価トランジスタサイズを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおけるドレイン電流の差に相当する電流値を有する補正電流源を仮想的に生成することにより、前記等価トランジスタサイズ及び前記補正電流源のデータを回路シミュレーションに用いる回路情報とするものである。
【0033】請求項12の発明により、トランジスタ部の形状が異なること等に起因する,回路シミュレーションと実デバイスとにおけるゲート容量の相違は、等価トランジスタサイズを求めることによってなくすことができると共に、トランジスタ部の形状が異なること等に加えて等価トランジスタサイズによってゲート容量を合わせ込んだことに起因する,回路シミュレーションと実デバイスとにおけるドレイン電流の相違は、補正電流源を仮想的に生成することによってなくすことができる。したがって、前記等価トランジスタサイズ及び前記補正電流源のデータを回路シミュレーションに用いる回路情報とすることによって、回路シミュレーションにおいてトランジスタのドレイン電流及びゲート容量を共に精度良く再現することができる。
【0034】そして、請求項13の発明は、前記請求項12の発明を具体化したものであり、半導体回路のマスクレイアウトから回路シミュレーションに用いる回路情報を抽出する回路の抽出方法として、前記マスクレイアウトからトランジスタを認識し、認識したトランジスタのトランジスタ部の形状を認識するトランジスタ部形状認識工程と、前記トランジスタ部形状認識工程によって認識されたトランジスタ部の形状に基づいて、回路シミュレーションにおける前記トランジスタのゲート容量が実デバイスにおける前記トランジスタのゲート容量と合致するような等価トランジスタサイズを求めるトランジスタサイズ計算工程と、前記トランジスタサイズ計算工程によって求められた等価トランジスタサイズを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおける前記トランジスタのドレイン電流の差を求め、求めた差に相当する電流値を有する補正電流源を仮想的に生成する補正電流源生成工程とを備えているものとする。
【0035】また、請求項14の発明が講じた解決手段は、半導体回路のマスクレイアウトから回路シミュレーションに用いる回路情報を抽出する回路の抽出工程と、前記半導体回路のプロセス情報等の情報から回路シミュレーションに用いるパラメータを抽出するパラメータ抽出工程とを備えたシミュレーション用情報生成方法として、前記回路の抽出工程は、前記半導体回路が有するトランジスタについて、前記マスクレイアウトから認識した前記トランジスタの形状を基にして、回路シミュレーションと実デバイスとにおいてゲート容量が合致するような等価トランジスタサイズを求める工程を備えており、前記パラメータ抽出工程は、前記回路の抽出工程によって求められた等価トランジスタサイズを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおいて前記トランジスタのドレイン電流が合致するようなパラメータを抽出する工程を備えているものとする。
【0036】請求項14の発明により、トランジスタ部の形状が異なること等に起因する回路シミュレーションと実デバイスとにおけるゲート容量の相違は、回路の抽出工程によって求められた等価トランジスタサイズを回路情報として用いることによってなくすことができると共に、トランジスタ部の形状が異なること等に加えて等価トランジスタサイズによってゲート容量を合わせ込んだことに起因する回路シミュレーションと実デバイスとにおけるドレイン電流の相違は、パラメータ抽出工程によって等価トランジスタサイズを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおいて前記トランジスタのドレイン電流が合致するようなパラメータを抽出することによってなくすことができる。したがって、回路シミュレーションにおいて実デバイスにおけるトランジスタのドレイン電流及びゲート容量を共に精度良く再現することができる。
【0037】また、請求項15の発明が講じた解決手段は、半導体回路の回路構成を記述するネットリストとして、半導体回路が有するトランジスタについて、トランジスタサイズが当該ネットリストを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおいてドレイン電流が合致するような等価トランジスタサイズに置き換えられていると共に、当該ネットリストを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおけるゲート容量の差に相当する容量値を有する仮想的に生成された補正容量が記述されているものである。
【0038】請求項15の発明に係るネットリストは、請求項1に係る回路の抽出装置又は請求項8に係る回路の抽出方法によって抽出された回路情報を含むものであり、このネットリストを用いて回路シミュレーションを行うことにより、実デバイスにおけるトランジスタのドレイン電流及びゲート容量を共に精度良く再現することができる。
【0039】さらに、請求項16の発明が講じた解決手段は、半導体回路の回路構成を記述するネットリストとして、半導体回路が有するトランジスタについて、トランジスタサイズが当該ネットリストを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおいてゲート容量が合致するような等価トランジスタサイズに置き換えられていると共に、当該ネットリストを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおけるドレイン電流の差に相当する電流値を有する仮想的に生成された補正電流源が記述されているものである。
【0040】請求項14の発明に係るネットリストは、請求項5に係る回路の抽出装置又は請求項12に係る回路の抽出方法によって抽出された回路情報を含むものであり、このネットリストを用いて回路シミュレーションを行うことにより、実デバイスにおけるトランジスタのドレイン電流及びゲート容量を共に精度良く再現することができる。
【0041】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0042】(第1の実施形態)図1は本発明の第1の実施形態に係る回路の抽出装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る回路の抽出装置10は、トランジスタ部形状認識手段1と、トランジスタサイズ計算手段2と、補正容量生成手段3と、ネットリスト出力手段4とからなる。
【0043】本実施形態は、トランジスタサイズ(トランジスタ幅、トランジスタ長)を実デバイスのドレイン電流を基準として計算し、計算したトランジスタサイズから得られたゲート容量と実デバイスのゲート容量との差を補正容量としてネットリストに反映させることにより、回路シミュレーションの精度を向上させるものである。
【0044】まず、図1に示す回路の抽出装置10における各構成要素間のデータの流れを説明する。
【0045】トランジスタ部形状認識手段1は、マスクレイアウトデータ11を読み込み、MOSトランジスタの認識とトランジスタ部の形状の認識とを行い、トランジスタ部形状データ12を出力する。トランジスタサイズ計算手段2は、トランジスタ部形状データ12を読み込み、後述する等価トランジスタ幅及び等価トランジスタ長を解析式13aから計算又は参照テーブル13bを参照して求め、トランジスタサイズデータ14として出力する。補正容量生成手段3は、トランジスタ部形状データ12及びトランジスタサイズデータ14を読み込み、後述する補正容量を解析式15aから計算又は参照テーブル15bを参照して求め、補正容量データ17として出力する。ネットリスト出力手段4は、トランジスタサイズデータ14及び補正容量データ17を読み込み、ネットリスト18を出力する。
【0046】次に、図1に示す回路の抽出装置10における各構成要素の動作を詳細に説明する。
【0047】まず、トランジスタ部形状認識手段1の動作について説明する。
【0048】トランジスタ部形状認識手段1は、マスクレイアウトデータ11を読み込み、読み込んだマスクレイアウトデータ11の中からゲート、ソース、ドレイン、基板の4端子を有するMOSトランジスタを認識する。MOSトランジスタを認識すると、次に、認識したMOSトランジスタのトランジスタ部の形状を認識する。
【0049】図2はMOSトランジスタのマスクレイアウトの簡略図であり、トランジスタ部の形状の種類を表す図である。図2において、60は拡散領域であり、61はポリシリコン領域である。トランジスタ部62は、一般的には拡散領域60とポリシリコン領域61とが重なった領域と定義される(図2ではトランジスタ部62に斜線を付している)。本実施形態の説明では、トランジスタ部62の形状は例えば図2(a)〜(e)のように大別されるものとする。図2ではトランジスタ部の形状の例として、(a)は直線形を、(b)は90度折れ曲がり形を、(c)は不連続形を、(d)は45度折れ曲がり形を、(e)はトランジスタ長変化形を、それぞれ示している。
【0050】トランジスタ部形状認識手段1は、トランジスタ部62の頂点座標を求めた後、求めた頂点座標のX、Y座標を比較することによって、トランジスタ部62の形状を認識する。そして認識したトランジスタ部62の形状を、例えば図2(a)〜(e)のいずれかに分類する。
【0051】トランジスタ部形状認識手段1は、認識結果をトランジスタ部形状データ12として出力する。表1はトランジスタ部形状データ12の例を示している。
【0052】
【表1】


【0053】表1の例では、トランジスタ部形状データ12は、トランジスタ識別番号、トランジスタ部形状分類コード、及びトランジスタ部頂点座標からなる。トランジスタ識別番号は、認識したMOSトランジスタ個々に付けられる番号である。トランジスタ部形状分類コードはトランジスタ部62の形状を分類するためのコードであり、表1の例では図2(a)に示す直線形を“a”、図2(b)に示す90度折れ曲がり形を“b”、図2(c)に示す不連続形を“c”というように設定している。トランジスタ部頂点座標は、トランジスタサイズを求める際に用いる,トランジスタ部62の各頂点を表す2次元のX、Y座標からなる座標情報(X、Y)である。トランジスタ部62の形状によって頂点の個数に差があるので、座標情報の個数もトランジスタ部62の形状によって異なる。例えば、分類コードa(図2(a)に示す直線形)では座標情報は4個、分類コードb(図2(b)に示す90度折れ曲がり形)では座標情報は6個になる。
【0054】次に、トランジスタサイズ計算手段2の動作について説明する。
【0055】すでに説明したように、トランジスタサイズ計算手段2は、実デバイスのドレイン電流を基準としてトランジスタサイズ(トランジスタ幅、トランジスタ長)を計算する。計算した結果のトランジスタサイズを、等価トランジスタサイズ(等価トランジスタ幅、等価トランジスタ長)という。
【0056】トランジスタサイズ計算手段2は、まずトランジスタ部形状データ12を読み込む。次に、読み込んだトランジスタ形状データ12の各MOSトランジスタに対して、ドレイン電流を実デバイスのドレイン電流と等価にするために、解析式13a又は参照テーブル13bを用いてドレイン電流が実デバイスのドレイン電流と等価になるような等価トランジスタ幅W、等価トランジスタ長Lを求める。
【0057】ここで、ドレイン電流を実デバイスのドレイン電流と等価にするとは、製造プロセス毎に異なるトランジスタサイズ、トランジスタ部62の形状、及びドレイン電流の関係を合わせ込むことを意味する。すなわち、回路シミュレータは、与えられたトランジスタサイズと製造プロセスの能力とに基づいてドレイン電流を決定するが、課題の項で説明したように、トランジスタ部62の形状の相違によるドレイン電流の差異をシミュレーション結果に反映させることができない。このため、回路シミュレータの精度を見かけ上向上させるために、トランジスタ部62の形状の相違によるドレイン電流の差をトランジスタサイズに反映させることによってドレイン電流を実デバイスのドレイン電流と等価にするのである。
【0058】実デバイスのドレイン電流の値としては、実測値又はトランジスタ部の形状の相違をシミュレーション結果に反映させることができるプロセスシミュレータやデバイスシミュレータ等により得られた値を用いる。
【0059】得られた実デバイスのドレイン電流が、関数化できる場合は解析式13aを用い、関数化が困難な場合は参照テーブル13bを用いる。
【0060】まず解析式13aを用いる場合について説明する。解析式13aを用いる場合は、対象となるMOSトランジスタのトランジスタ部形状分類コード(表1に示す)に対応した解析式を解析式13aの中から選ぶと共に、前記MOSトランジスタのトランジスタ部頂点座標(表1に示す)からトランジスタ部の各辺の長さ等の寸法を求めて、求めた寸法を解析式13aの中から選んだ解析式に代入することによって、前記MOSトランジスタの等価トランジスタ幅W、等価トランジスタ長Lを計算する。
【0061】図2(a)〜(e)に示すトランジスタ部形状に対して、等価トランジスタ幅W、等価トランジスタ長Lを求めるための解析式13aは例えば次のようになる。
図2(a)… (W,L)=(W1 ,L1 )
(b)… (W,L)=(W1 +W2 +Kx ×Wx ,L1 )
(c)… (W,L)=(W1 +W2 +Kx ×Wx ,L1 )
(d)… (W,L)=(W1 +W2 +W3 +Kx ×Wx +Ky ×Wy , L1 )
(e)… (W,L)=(W1 ,L1 ),(W2 ,L2 ), (Kx ×Wx ,Ky ×(L1 +L2 )/2)
…(1)
ここで、W1 ,W2 ,W3 ,Wx ,Wy はトランジスタ部62の中心線の長さで表した各部のトランジスタ幅、L1 ,L2 は各部のトランジスタ長であり、図2(a)〜(e)にそれぞれ示している。またKx ,Ky はトランジスタ部62の形状の相違によるドレイン電流の差異をトランジスタサイズに反映させる補正係数である。なお、トランジスタ部62の形状の相違によるドレイン電流の差異はLSIの製造プロセスによって異なるので、補正係数Kx ,Ky は、LSIの製造プロセスによって異なることになる。
【0062】図2(a)〜(d)に示すようなトランジスタ部形状を有するMOSトランジスタは、図3に示すような1個のトランジスタからなる回路70で表されるが、図2(e)に示すようなトランジスタ長が変化するトランジスタ部形状を有するMOSトランジスタについては、トランジスタ部62をトランジスタ長毎に分割して、図4に示すような並列に接続された複数のトランジスタ70a,70b,70cからなる回路70で表される。分割された各トランジスタは、回路シミュレーションにおいて、分割されていないトランジスタと同様に扱うことができる。このため式(1)に示すように、図2(e)に示すトランジスタ部形状については3組の等価トランジスタ幅W、等価トランジスタ長Lを各々計算する必要がある。図3及び図4において、71はゲート、72はソース、73はドレイン、74は基板である。
【0063】なお、解析式13aとして、トランジスタ部62の各寸法を変数とする任意の関数を用いてもよい。例えば図2(a)〜(e)に示すトランジスタ部形状について、次のような式で等価トランジスタ幅Wを求める。等価トランジスタ長Lについても同様である。
図2(a)… W=functiona(W1 ,L1 )
(b)… W=functionb(W1 ,W2 ,Wx ,L1 )
(c)… W=functionc(W1 ,W2 ,Wx ,L1 )
(d)… W=functiond(W1 ,W2 ,W3 ,Wx ,Wy ,L1 )
(e)… W=functione(W1 ,W2 ,Wx ,L1 ,L2 )
…(2)
functiona〜functioneはそれぞれ、各トランジスタ形状における等価トランジスタ幅Wを表す関数である。
【0064】次に、参照テーブル13bを用いる場合について説明する。参照テーブル13bには例えば、トランジスタ部形状分類コード毎に、トランジスタ部62の各寸法に対応する等価トランジスタ幅W、等価トランジスタ長Lを記述したテーブルが準備されている。トランジスタサイズ計算手段2は、トランジスタ部形状データ12のトランジスタ部形状分類コードやトランジスタ部頂点座標等の情報を用いて参照テーブル13bを検索し、所定の等価トランジスタ幅W、等価トランジスタ長Lを読み出す。
【0065】表2は参照テーブル13bに準備されたテーブルの例を示す表である。表2では、図2(b)に示すトランジスタ部形状についてのトランジスタ幅W1 、W2の組み合わせに対する等価トランジスタ幅Wが記述されている。
【0066】
【表2】


【0067】なお参照テーブル13bを用いる場合、準備されたテーブルに適当な寸法の値がないときには、内挿法又は外挿法によって近似的に等価トランジスタ幅W、等価トランジスタ長Lを求める。
【0068】したがって、参照テーブル13bを用いる場合には、トランジスタ部62の形状及びトランジスタサイズを想定したデータを数多く準備しておくほど、等価トランジスタサイズ(等価トランジスタ幅、等価トランジスタ長)を精度良く求めることができる。
【0069】以上のようにして求められた等価トランジスタサイズ(等価トランジスタ幅、等価トランジスタ長)のデータは、トランジスタサイズデータ14として出力される。表3はトランジスタサイズデータ14の例を示すものである。表3において、トランジスタ識別番号毎に等価トランジスタ幅W及び等価トランジスタ長Lが示されている。
【0070】
【表3】


【0071】次に、補正容量生成手段3の動作について説明する。補正容量生成手段3は、トランジスタ部62の形状が異なること及びトランジスタサイズ計算手段2によってトランジスタサイズを合わせ込んだことにより生じる、回路シミュレーションと実デバイスとにおけるゲート容量の差を求め、求めた差に相当する容量値を有する補正容量を仮想的に生成する。具体的には、ゲート容量の実測値等から、トランジスタサイズ計算手段2によって求められた等価トランジスタサイズに基づいて計算したゲート容量を差し引くことにより、補正容量の容量値を求める。
【0072】補正容量生成手段3はまず、トランジスタ部形状認識手段1によって得られたトランジスタ部形状データ12とトランジスタサイズ計算手段2によって得られたトランジスタサイズデータ14とを読み込む。
【0073】次に、トランジスタサイズデータ14が有する等価トランジスタ幅及び等価トランジスタ長に基づいて、各MOSトランジスタのゲート容量を計算する。ゲート容量にはゲート・ソース間容量、ゲート・ドレイン間容量、及びゲート・基板間容量の3種類があり、各々解析式15a又は参照テーブル15bに基づいて求められる。そして、求めたゲート容量と実測値データ16が有する実デバイスのゲート容量との差を求めて、これを補正容量の容量値とする。
【0074】以下の説明では、実デバイスのゲート・ソース間容量、ゲート・ドレイン間容量、及びゲート・基板間容量をそれぞれCgs1 ,Cgd1 ,Cgb1 とし、等価トランジスタ幅W及び等価トランジスタ長Lに基づいて求めたゲート・ソース間容量、ゲート・ドレイン間容量、及びゲート・基板間容量をそれぞれCgs2 ,Cgd2,Cgb2 とする。
【0075】実測値データ16が有する実デバイスのゲート容量Cgs1 、Cgd1 、Cgb1 は、トランジスタサイズ及び製造プロセスの能力の相違によるゲート容量の差異だけでなくトランジスタ部62の形状の相違によるゲート容量の差異も観測可能な,実際の測定やプロセスシミュレーション、デバイスシミュレーション等によって求められたものである。
【0076】表4は実測値データ16の一例を示す表である。実測値データ16は、トランジスタ部62の形状毎に準備されており、表4は図2(a)に示す直線形のトランジスタ形状についての実デバイスのゲート容量を示している。
【0077】
【表4】


【0078】一方、等価トランジスタ幅W及び等価トランジスタ長Lに基づくゲート容量は、以下のようにして求められる。
【0079】まず解析式15aを用いる場合を説明する。解析式15aには、ゲート・ソース間容量Cgs2 、ゲート・ドレイン間容量Cgd2 、及びゲート・基板間容量Cgb2 をそれぞれ表す、等価トランジスタ幅Wと等価トランジスタ長Lとを変数とする任意の関数が準備されている。すなわち、各ゲート容量は解析式15aにおいて次のように表されている。
Cgs2 =functiongs(W,L)
Cgd2 =functiongd(W,L)
Cgb2 =functiongb(W,L)
…(3)
functiongs,functiongd,functiongbはゲート容量を表す関数である。ゲート容量を表す関数としては、例えば、回路シミュレータに内蔵されているMOSトランジスタのゲート容量モデルに用いられている関数が用いられる。
【0080】補正容量生成手段3は、トランジスタサイズデータ14の等価トランジスタ幅W及び等価トランジスタ長Lを、解析式15aに代入して、所定のゲート容量を計算する。
【0081】次に参照テーブル15bを用いる場合を説明する。参照テーブル15bには、等価トランジスタ幅Wとトランジスタ長Lの組み合わせに対する,ゲート・ソース間容量Cgs2 、ゲート・ドレイン間容量Cgd2 、及びゲート・基板間容量Cgb2 が記述されている。表5は参照テーブル15bの例を示す表である。
【0082】
【表5】


【0083】補正容量生成手段3は、トランジスタサイズデータ14の等価トランジスタ幅W及び等価トランジスタ長Lを用いて参照テーブル15bを検索し、所定のゲート容量を読み出す。参照テーブル15bに等価トランジスタ幅W及び等価トランジスタ長Lの組み合わせに合致する値がない場合は、内挿法又は外挿法によって近似的にゲート容量を求める。
【0084】次に、実デバイスのゲート容量と等価トランジスタサイズを基にして求めたゲート容量とから、補正容量を求める。ゲート・ソース間補正容量をΔCgs、ゲート・ドレイン間補正容量をΔCgd、ゲート・基板間補正容量をΔCgbとすると、各補正容量は次のような式で求められる。
ΔCgs=Cgs1 −Cgs2 ΔCgd=Cgd1 −Cgd2 ΔCgb=Cgb1 −Cgb2 …(4)
【0085】(具体的な計算例)補正容量の計算について具体的な数値を用いて説明する。ここでは、トランジスタ部形状認識手段1によってマスクレイアウトデータ11から認識されたMOSトランジスタが、トランジスタ部の形状は図2(a)に示すような直線形であり、トランジスタ幅W1 及びトランジスタ長L1 が共に1.0(μm)であるものとする。
【0086】まずトランジシスタサイズ計算手段2によって、前記MOSトランジスタの等価トランジスタ幅W及び等価トランジスタ長Lが求められる。ここでは式(1)に示す解析式13aにしたがって、等価トランジスタ幅W及び等価トランジスタ長Lは、次式のように求められるものとする。
【0087】
(W,L)=(W1 ,L1 )
=(1.0,1.0)
【0088】次に補正容量生成手段3によって、補正容量の容量値が計算される。実デバイスのゲート容量は、表4に示す実測値データ16にしたがって求められるものとすると、Cgs1 =1.01Cgd1 =1.01Cgb1 =1.01となる。一方、等価トランジスタデータに基づくゲート容量は、例えば解析式15aから、 Cgs2 =functiongs(W,L)=functiongs(1.0,1.0)=1.0 Cgd2 =functiongd(W,L)=functiongd(1.0,1.0)=1.0 Cgb2 =functiongb(W,L)=functiongb(1.0,1.0)=1.0のようになるものとする。したがって、補正容量は式(4)から、ΔCgs=Cgs1 −Cgs2 =1.01−1.0=0.01ΔCgd=Cgd1 −Cgd2 =1.01−1.0=0.01ΔCgb=Cgb1 −Cgb2 =1.01−1.0=0.01と求められる。
【0089】以上のようにして求められた各補正容量の容量値は、補正容量データ17として出力される。表6は補正容量データ17の例を示す表であり、表6において、トランジスタ識別番号毎に3つの補正容量ΔCgs,ΔCgd,ΔCgbが記述されている。
【0090】
【表6】


【0091】なお、ゲート容量は印加電圧により容量値が異なるという特性を有するため、解析式15a又は参照テーブル15bをこの特性を考慮したものとすることによって、回路シミュレーションの精度をさらに向上させるネットリストを生成することができる。
【0092】次に、ネットリスト出力手段4の動作を詳細に説明する。
【0093】ネットリスト出力手段4は、トランジスタサイズデータ14及び補正容量データ17を読み込み、トランジスタサイズデータ14から各MOSトランジスタの等価トランジスタサイズ(等価トランジスタ幅W,等価トランジスタ長L)を読み出し、この等価トランジスタサイズを有するMOSトランジスタをネットリスト18に記述する。また、補正容量データ17から各MOSトランジスタの補正容量すなわちゲート・ソース間補正容量ΔCgs、ゲート・ドレイン間補正容量ΔCgd、及びゲート・基板間補正容量ΔCgbを読み出し、読み出したこれらの補正容量をネットリスト18に記述する。
【0094】図5は本実施形態に係るネットリスト18に記述されたMOSトランジスタの接続関係を示す回路図である。図5において、80はゲート・ソース間補正容量、81はゲート・ドレイン間補正容量、82はゲート・基板間補正容量である。
【0095】図6は、ネットリスト出力手段4によって生成されたネットリスト18の例を示す図である。図6において、文頭が“M”である行はMOSトランジスタを表しており、第1項はトランジスタ識別番号、第2〜5項はMOSトランジスタの端子番号、第6項はMOSトランジスタの型、第7項は等価トランジスタ幅、第8項は等価トランジスタ長である。文頭が“C”である行は容量(ここでは補正容量)を表しており、第1項は容量識別番号、第2,3項は容量が接続される2端子、第4項は容量値である。
【0096】以上説明したように、本実施形態に係る回路の抽出装置によると、ドレイン電流については等価トランジスタサイズ(等価トランジスタ幅,等価トランジスタ長)を求めることによって実際の値に合わせ込むと共に、ゲート容量についても補正容量を仮想的に求めることによって実際の値に合わせ込むので、回路シミュレーションにおいてドレイン電流及びゲート容量の両方の物理量を高精度に再現できるネットリストを出力することができる。
【0097】なお、本実施形態では、トランジスタサイズ計算手段2及び補正容量生成手段3がそれぞれ、解析式と参照テーブルとを使い分ける構成としているが、解析式又は参照テーブルのいずれか一方のみを用いる構成としてもよい。
【0098】また、本実施形態では、MOSトランジスタと補正容量のみをネットリストに記述する構成になっているが、これらに加えて、トランジスタのソース、ドレインの形状(面積、周囲長)に関する情報、配線容量等の寄生容量、配線抵抗、コンタクト抵抗、ソース抵抗、ドレイン抵抗等の寄生抵抗、又は寄生インダクタンスもマスクレイアウトから抽出してネットリストに記述する構成としてもよい。
【0099】さらに、本実施形態ではネットリスト出力手段4によってネットリストを生成する構成としているが、トランジスタサイズデータ14及び補正容量データ17自体を本実施形態に係る回路の抽出装置の出力データとしてもよい。
【0100】図7は本実施形態に係る回路の抽出装置の変形例の構成を示すブロック図である。図7において、回路の抽出装置10Aは、図1に示す回路の抽出装置10が有するネットリスト出力手段4を備えておらず、トランジスタサイズ計算手段2によって得られたトランジスタサイズデータ14及び補正容量生成手段3によって得られた補正容量データ17を直接外部に出力する構成となっている。図7に示す回路の抽出装置10Aを用いる場合は、従来のネットリストに対して、トランジスタサイズデータを全てトランジスタデータ14に置き換えると共に補正容量データ17を付加することによって、図1に示す回路の抽出装置から出力されるネットリスト18と同様のネットリスト18Aを生成することができる。なおこのとき、従来のネットリストと回路の抽出装置10Aから出力されたトランジスタサイズデータ14及び補正容量データ17とにおいて、トランジスタ認識番号が必ずしも一致していない場合があるが、この場合にはネットリスト同士を比較するソフトウエアを用いて対応をとればよい。
【0101】(第2の実施形態)図8は本発明の第2の実施形態に係る回路の抽出装置の構成を示すブロック図である。図8に示すように、本実施形態に係る回路の抽出装置20は、仕上がり形状を考慮したマスクレイアウトに対してトランジスタ部の形状を認識できるトランジスタ部形状認識手段6と、トランジスタサイズ計算手段7と、補正容量生成手段8と、ネットリスト出力手段9とからなり、仕上がり形状を考慮したマスクレイアウトからネットリストを抽出できる点で第1の実施形態と異なる。なお、ネットリスト出力手段9は、図1に示す第1の実施形態に係る回路の抽出装置10が有するネットリスト出力手段4と同様のものである。
【0102】図9(a)〜(e)は、図2(a)〜(e)に示すマスクレイアウトに基づいて製造されたMOSトランジスタの形状を示す簡略図である。
【0103】一般にマスクレイアウトは、直線の組み合わせからなる。ところが、例えば図2に示すようなマスクレイアウトに基づいて実デバイスを製造すると、図9に示すような曲線を含む形状に仕上がる。このマスクレイアウトと仕上り形状との差は、実デバイスの動作に微妙な影響を与える。製造プロセスの微細化が進むにつれて、マスクレイアウトと仕上がり形状との差は増大する。したがって、仕上がり形状が実デバイスの動作に与える影響はプロセスの微細化が進むほど大きくなり、無視できなくなる。
【0104】本実施形態は、マスクレイアウトと仕上がり形状との差が実デバイスの動作に影響を与えることに鑑み、実デバイスの仕上がり形状を考慮してマスクレイアウトを予め変換し、変換したマスクレイアウトに対して等価トランジスタサイズや補正容量を求めることによって、第1の実施形態よりもさらに回路シミュレーションの精度を向上させるものである。
【0105】まず、図8に示す回路の抽出装置20における各構成要素間のデータの流れを説明する。
【0106】トランジスタ部形状認識手段6は、変換後マスクレイアウトデータ21を読み込み、MOSトランジスタの認識とトランジスタ部の形状の認識とを行い、トランジスタ部形状データ22を出力する。トランジスタサイズ計算手段7は、トランジスタ部形状データ22を読み込み、解析式23aから計算又は参照テーブル23bを参照して等価トランジスタ幅及び等価トランジスタ長を求め、トランジスタサイズデータ24として出力する。補正容量生成手段8は、トランジスタ部形状データ22及びトランジスタサイズデータ24を読み込み、補正容量を解析式25aから計算又は参照テーブル25bを参照して求め、補正容量データ27として出力する。ネットリスト出力手段9は、トランジスタサイズデータ24及び補正容量データ27を読み込み、ネットリスト28を出力する。
【0107】変換後マスクレイアウトデータ21は、製造プロセスを経た後の仕上り形状を詳細にシミュレーションすることができるプロセスシミュレータの機能を用いて、元のマスクレイアウトから生成する。
【0108】次に、トランジスタ部形状認識手段6の動作を詳細に説明する。図1に示す第1の実施形態に係る回路の抽出装置10が有するトランジスタ部形状認識手段1と異なるのは、トランジスタ部の輪郭が曲線であってもその形状を認識できる点である。
【0109】トランジスタ部形状認識手段6は、変換後マスクレイアウトデータ21を読み込み、ゲート、ソース、ドレイン、基板の4端子を有するMOSトランジスタを認識する。変換後マスクレイアウトデータ21では、MOSトランジスタのマスクレイアウトは図9(a)〜(e)のようになっている。第1の実施形態と同様に、トランジスタ部62(図9では斜線を付している)は拡散領域60とポリシリコン領域61とが重なった領域と定義される。
【0110】MOSトランジスタを認識すると、トランジスタ部形状認識手段6は次に、認識したMOSトランジスタのトランジスタ部62の形状を認識する。そして認識したトランジスタ部62の形状を例えば図9(a)〜(e)のいずれかに分類する。図9ではトランジスタ部62の形状の例として、(a)は直線形を、(b)は90度折れ曲がり形を、(c)は不連続形を、(d)は45度折れ曲がり形を、(e)はトランジスタ長変化形を、それぞれ示している。
【0111】トランジスタ部形状認識手段6は、認識結果をトランジスタ部形状データ22として出力する。トランジスタ部形状データ22は、表1に示すトランジスタ識別番号及びトランジスタ部形状分類コードに加えて、元のマスクレイアウトを変換して変換後マスクレイアウトデータ21を生成する際に合わせ込まれた曲線を表す式、並びにその曲線の始点座標及び終点座標からなる。曲線の始点座標と終点座標は、トランジスタサイズを後に求める際に用いる2次元のX、Y座標からなる座標情報(X、Y)である。
【0112】次に、トランジスタサイズ計算手段7の動作を詳細に説明する。図1に示す第1の実施形態に係る回路の抽出装置10が有するトランジスタサイズ計算手段2と異なるのは、曲線の式並びに曲線の始点座標及び終点座標を含むトランジスタ部形状データ22についても、精度良く等価トランジスタサイズを計算することができる点である。
【0113】トランジスタサイズ計算手段7は、まずトランジスタ部形状データ22を読み込む。次に、読み込んだトランジスタ形状データ22の各MOSトランジスタに対して、ドレイン電流が実デバイスのドレイン電流と等価になるような等価トランジスタ幅W、等価トランジスタ長Lを、解析式23a又は参照テーブル23bを用いて求める。
【0114】解析式23aは、同一形状のトランジスタ部について輪郭曲線の式や輪郭曲線の始点座標・終点座標毎に解析式を備えている点で、図1に示す第1の実施形態に係る回路の抽出装置10における解析式13aと異なっている。したがって、解析式23aを用いることによって、同一形状のトランジスタであって輪郭曲線の式や曲線の始点座標・終点座標が異なるものについてもそれぞれ、ドレイン電流が精度良く再現される等価トランジスタサイズを計算することができる。
【0115】また、参照テーブル23bも解析式23aと同様に、同一形状のトランジスタについて、輪郭曲線の式や輪郭曲線の始点座標・終点座標毎にテーブルを備えている。
【0116】次に、補正容量生成手段8の動作を詳細に説明する。図1に示す第1の実施形態に係る回路の抽出装置10が有する補正容量生成手段3と異なるのは、輪郭曲線の式や曲線の始点座標・終点座標を含むトランジスタ部形状データ22について、精度良く補正容量を計算することができる点である。
【0117】具体的な計算動作は、トランジスタサイズ計算手段7と同様に、輪郭曲線の式や輪郭曲線の始点座標・終点座標を考慮した解析式25a、参照テーブル25bを用いることによって行われる。
【0118】以上説明したように、本実施形態に係る回路の抽出装置によると、実デバイスの仕上がり形状を考慮して変換したマスクレイアウトに対して、等価トランジスタサイズ及び補正容量を求めることができるので、回路シミュレーションにおいてドレイン電流及びゲート容量を第1の実施形態よりも精度良く再現できるネットリストを抽出することができる。
【0119】なお、本実施形態では、図9に示すように、ポリシリコン領域61についてのみマスクレイアウト変換を行い輪郭を曲線化しているが、拡散領域や配線領域等についてもマスクレイアウト変換を行ってもかまわない。
【0120】また、本実施形態では、トランジスタサイズ計算手段7及び補正容量生成手段8がそれぞれ、解析式と参照テーブルとを使い分ける構成としているが、解析式又は参照テーブルのいずれか一方のみを用いる構成としてもよい。
【0121】また、本実施形態では、MOSトランジスタと補正容量のみをネットリストに出力する構成になっているが、これらに加えて、トランジスタのソース、ドレインの形状(面積、周囲長)に関する情報、配線容量等の寄生容量、配線抵抗、コンタクト抵抗、ソース抵抗、ドレイン抵抗等の寄生抵抗、又は寄生インダクタンスもマスクレイアウトから抽出してネットリストに出力する構成としてもよい。
【0122】さらに、本実施形態ではネットリスト出力手段9によってネットリストを生成する構成としているが、図7に示す第1の実施形態の変形例と同様に、トランジスタサイズデータ24及び補正容量データ27を本実施形態に係る回路の抽出装置の出力データとしてもよい。
【0123】(第3の実施形態)図10は本発明の第3の実施形態に係る回路の抽出装置の構成を示すブロック図である。図10に示す本実施形態に係る回路の抽出装置30は、図1に示す第1の実施形態に係る回路の抽出装置10と共通のトランジスタ部形状認識手段1及びネットリスト出力手段4、並びにトランジスタサイズ計算手段31及び補正電流源生成手段32によって構成されている。
【0124】第1及び第2の実施形態では、回路シミュレーションと実デバイスとにおいてドレイン電流が一致するように等価トランジスタサイズ(等価トランジスタ幅,等価トランジスタ長)を求めると共に、求めた等価トランジスタサイズによる回路シミュレーションと実デバイスとにおけるゲート容量の差を補正容量とするものであった。
【0125】これに対して本実施形態は、回路シミュレーションと実デバイスとにおいて「ゲート容量」が一致するように等価トランジスタサイズ(等価トランジスタ幅,等価トランジスタ長)を求めると共に、求めた等価トランジスタサイズによる回路シミュレーションと実デバイスとにおける「ドレイン電流」の差を、「補正電流源」によって表すものである。
【0126】図10に示す本実施形態に係る回路の抽出装置30における各構成要素間のデータの流れを説明する。
【0127】まず、トランジスタ部形状認識手段1は、マスクレイアウトデータ11を読み込み、MOSトランジスタの認識とトランジスタ部の形状の認識とを行い、トランジスタ部形状データ12を出力する。トランジスタサイズ計算手段31は、トランジスタ部形状データ12を読み込み、回路シミュレーションと実デバイスとにおいてゲート容量が一致するような等価トランジスタ幅及び等価トランジスタ長を解析式33aから計算又は参照テーブル33bを参照して求め、トランジスタサイズデータ34として出力する。補正電流源生成手段32は、トランジスタ部形状データ12及びトランジスタサイズデータ34を読み込み、後述する補正電流源を解析式35aから計算又は参照テーブル35bを参照して仮想的に求め、補正電流源データ37として出力する。ネットリスト出力手段4は、トランジスタサイズデータ34及び補正電流源データ37を読み込み、ネットリスト38を出力する。
【0128】次に、図10に示す回路の抽出装置30における各構成要素の動作を説明する。トランジスタ部形状認識手段1及びネットリスト出力手段4については、第1の実施形態と同様であるのでここでは説明を省略する。
【0129】トランジスタサイズ計算手段31は、まずトランジスタ部形状データ12を読み込む。次に、読み込んだトランジスタ形状データ12に含まれる各MOSトランジスタに対して、ゲート容量が実デバイスのゲート容量と等価になるような等価トランジスタ幅W、等価トランジスタ長Lを、解析式33a又は参照テーブル33bを用いて求める。
【0130】実デバイスのゲート容量の値としては、実測値又はトランジスタ部の形状の違いをシミュレーションに反映させることができるプロセスシミュレータやデバイスシミュレータ等により得られた値を用いる。得られた実デバイスのゲート容量が、関数化できる場合は解析式33aを用い、関数化が困難な場合は参照テーブル33bを用いる。解析式33a及び参照テーブル33bの用い方については第1の実施形態と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0131】補正電流源生成手段32は、等価トランジスタサイズ(等価トランジスタ幅、等価トランジスタ長)が求められたマスクレイアウト上の各MOSトランジスタについて、トランジスタ部の形状が異なること及びトランジスタサイズ計算手段31によってトランジスタサイズが合わせ込まれたこと等により生じた実デバイスのドレイン電流との差を求め、求めた差に相当する電流量の補正電流源を仮想的に生成する。
【0132】具体的には、ドレイン電流の実測値等から、トランジスタサイズ計算手段31によって求められた等価トランジスタサイズ(等価トランジスタ幅、等価トランジスタ長)に基づいて計算したドレイン電流を差し引くことにより、補正電流源の電流量を求める。
【0133】補正電流源生成手段32はまず、トランジスタ部形状認識手段1によって得られたトランジスタ部形状データ12とトランジスタサイズ計算手段31によって得られたトランジスタサイズデータ34とを読み込む。
【0134】次に、トランジスタサイズデータ34が有する等価トランジスタ幅及び等価トランジスタ長に基づいて、各MOSトランジスタのドレイン電流を計算する。このドレイン電流は解析式35a又は参照テーブル35bを用いて求められる。そして、求めたドレイン電流と実測値データ36が有する実際のドレイン電流との差を求め、この差に相当する電流量を有する電流源を補正電流源として仮想的に生成する。
【0135】表7は実測値データ36の一例を示す表である。実測値データ36はトランジスタ部の形状毎に準備されており、表7は図2(a)に示す直線形のトランジスタ部形状についての実際のドレイン電流IDSを示している。
【0136】
【表7】


【0137】図11は、ネットリスト38に記述されたMOSトランジスタの接続関係を表す図である。図11において、85はMOSトランジスタ、86は仮想的に生成された補正電流源である。図11に示すように、補正電流源86はMOSトランジスタ85と並列に設けられ、補正電流源86の電流の向きは、実デバイスのドレイン電流が等価トランジスタサイズに基づいて求めたドレイン電流よりも大きいとき(電流の差が“+”のとき)は、MOSトランジスタ85のドレイン電流の向きと同じであり、実デバイスのドレイン電流が等価トランジスタサイズに基づいて求めたドレイン電流よりも小さいとき(電流の差が“−”のとき)は、MOSトランジスタ85のドレイン電流の向きと逆である。
【0138】以上説明したように、本実施形態に係る半導体回路の抽出装置によると、ゲート容量については等価トランジスタサイズ(等価トランジスタ幅及び等価トランジスタ長)を求めることによって実際の値に合わせ込むことができ、さらにドレイン電流についても補正電流源を仮想的に求めることによって実際の値に合わせ込むことができるため、回路シミュレーションにおいてドレイン電流及びゲート容量の両方の物理量を高精度に再現できるネットリストをマスクレイアウトデータから抽出することができる。
【0139】ここで、本実施形態と第1の実施形態とを比較する。
【0140】まず、第1の実施形態では、実デバイスのゲート容量と等価トランジスタサイズに基づいて求めたゲート容量との差が正であるときは、このゲート容量の差は仮想的な補正容量によって表現することができるが、ゲート容量の差が負であるときはこのゲート容量の差をネットリストに反映させることはできない。容量値が負である容量はありえないからである。これに対して、本実施形態では、実デバイスのドレイン電流と等価トランジスタサイズに基づいて求めたドレイン電流との差が正であっても負であっても、このドレイン電流の差を仮想的な補正電流源によってネットリストに反映させることができる。なぜなら、ドレイン電流の差の正負は補正電流源の電流の向きによって表すことができるからである。
【0141】また、第1の実施形態では、一定の容量値を持つ補正容量によってゲート容量を合わせ込むので、ゲート容量の電圧依存性を扱うことが困難である。第1の実施形態では回路の動作電圧(例えば5V,3V)におけるゲート容量値を求めているが、実際のゲート容量はゲート電圧によって変化するからである。これに対して、本実施形態では、容量の電圧依存性も扱うことができる。
【0142】なお、本実施形態では、トランジスタサイズ計算手段31及び補正電流源生成手段32がそれぞれ、解析式と参照テーブルとを使い分ける構成としているが、解析式又は参照テーブルのいずれか一方のみを用いる構成としてもよい。
【0143】また、本実施形態では、MOSトランジスタと補正電流源のみをネットリストに出力する構成になっているが、これらに加えて、トランジスタのソース、ドレインの形状(面積、周囲長)に関する情報、配線容量等の寄生容量や、配線抵抗、コンタクト抵抗、ソース抵抗、ドレイン抵抗等の寄生抵抗、又は寄生インダクタンスもマスクレイアウトから抽出してネットリストに出力する構成としてもよい。
【0144】さらに、本実施形態ではネットリスト出力手段4によってネットリストを生成する構成としているが、図7に示す第1の実施形態の変形例と同様に、トランジスタデータ34及び補正電流源データ37を出力データとする構成としてもよい。
【0145】(第4の実施形態)図12は、本発明の第4の実施形態に係るシミュレーション用情報生成システムの概略を示す図である。図12に示すように、本実施形態に係るシミュレーション用情報生成システムは回路の抽出装置40及びパラメータ抽出手段53によって構成されており、回路シミュレータ55は一般的には、マスクレイアウトデータ11から回路の抽出装置40によって抽出されたネットリスト45と、トランジスタ特性51やプロセス情報52からパラメータ抽出手段53によって抽出されたパラメータ54とを情報として用いて回路シミュレーションを行う。
【0146】第1〜第3の実施形態は、回路の抽出装置40によって、回路シミュレーションにおいてドレイン電流及びゲート容量が共に精度良く再現できるようなネットリスト45を生成するものであり、パラメータ54については従来どおりのものを用いているものであった。
【0147】これに対して本実施形態は、ゲート容量を実際の値に合わせ込むために等価トランジスタサイズ(等価トランジスタ幅,等価トランジスタ長)を求めてネットリスト45に反映させると共に、ドレイン電流を実際の値に合わせ込むために回路シミュレーションに用いるパラメータ54を等価トランジスタサイズ(等価トランジスタ幅,等価トランジスタ長)を基にして補正するものである。言い換えると、第3の実施形態において仮想的に生成した補正電流源に相当する情報をパラメータ54に反映させるものである。図12では、回路の抽出装置40からパラメータ抽出手段53への等価トランジスタサイズ(等価トランジスタ幅,等価トランジスタ長)のデータの流れを破線で示している。
【0148】図13は、本実施形態に係るシミュレーション用情報抽出システムにおける回路の抽出装置40の構成を示すブロック図である。図13において、まず、トランジスタ部形状認識手段1は、マスクレイアウトデータ11を読み込み、MOSトランジスタの認識とトランジスタ部の形状の認識とを行い、トランジスタ部形状データ12を出力する。トランジスタサイズ計算手段31は、トランジスタ部形状データ12を読み込み、回路シミュレーションと実デバイスとにおいてゲート容量が一致するような等価トランジスタ幅及び等価トランジスタ長を解析式33aから計算又は参照テーブル33bを参照して求め、トランジスタサイズデータ34として出力する。ネットリスト出力手段4は、トランジスタサイズデータ34を読み込み、ネットリスト45を出力する。
【0149】図13に示す回路の抽出装置40は、補正電流源生成手段32を備えていない点で図10に示す第3の実施形態に係る回路の抽出装置30と異なる。したがって、ネットリスト45は図10に示すネットリスト38と異なり補正電流源の情報を含んでいない。トランジスタ部形状認識手段1、トランジスタサイズ計算手段31、及びネットリスト出力手段4の動作は第3の実施形態と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0150】回路抽出装置40は、トランジスタ部形状データ12及びトランジスタサイズデータ34をパラメータ抽出手段53に出力する。パラメータ抽出手段53は、トランジスタサイズデータが有する等価トランジスタサイズ(等価トランジスタ幅、等価トランジスタ長)を用いて、トランジスタ毎にパラメータ54a,54b,54cというように抽出する。
【0151】以上説明したように、本実施形態によると、ゲート容量については等価トランジスタサイズを求めネットリストに反映させることによって実際の値に合わせこむことができ、さらにドレイン電流については等価トランジスタサイズを用いてパラメータを補正することによって実際の値に合わせこむことができるので、回路シミュレーションにおいてドレイン電流及びゲート容量の両方の物理量を高精度に再現させることができる。
【0152】
【発明の効果】以上のように本発明によると、回路シミュレーションにおいて、トランジスタのドレイン電流及びゲート容量を共に精度良く再現することができるような回路情報(等価トランジスタサイズ及び補正容量、補正電流源又はパラメータ)を抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る回路の抽出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】(a)〜(e)はMOSトランジスタのマスクレイアウトの簡略図であり、トランジスタ部の形状の種類を表す図である。
【図3】図2(a)〜(d)に示すMOSトランジスタに相当する回路図である。
【図4】図2(e)に示すMOSトランジスタに相当する回路図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るネットリストに記述されたMOSトランジスタの接続関係を示す回路図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るネットリストの一例を表す図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る回路の抽出装置の変形例の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る回路の抽出装置の構成を示すブロック図である。
【図9】(a)〜(e)は、図2(a)〜(e)に示すマスクレイアウトに基づいて製造されたMOSトランジスタの仕上り形状を示す簡略図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る回路の抽出装置の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係るネットリストに記述されたMOSトランジスタの接続関係を示す回路図である。
【図12】シミュレーション用情報生成システムの概略図である。
【図13】本発明の第4の実施形態に係る回路の抽出装置の構成を示すブロック図である。
【図14】MOSトランジスタのマスクレイアウトの一例を示す図である。
【図15】図14に示すMOSトランジスタのマスクレイアウトから抽出されたネットリストである。
【図16】MOSトランジスタのマスクレイアウトの他の例を示す図であり、トランジスタ部(ゲート)が折れ曲がったMOSトランジスタを示す図である。
【符号の説明】
1,6 トランジスタ部形状認識手段
2,7,31 トランジスタサイズ計算手段
3,8, 補正容量生成手段
4,9 ネットリスト出力手段
10,10A,20,30,40 回路の抽出装置
11 マスクレイアウトデータ
12,22 トランジスタ部形状データ
13a,23a,33a 解析式
13b,23b,33b 参照テーブル
14,24,34 トランジスタサイズデータ
15a,25a,35a 解析式
15b,25b,35b 参照テーブル
16,26,36 実測値
17,27 補正容量データ
18,18A,28,38,45 ネットリスト
21 変換後マスクレイアウトデータ
32 補正電流源生成手段
37 補正電流源データ
53 パラメータ抽出手段
54,54a,54b,54c パラメータ
55 回路シミュレータ
62 トランジスタ部
80,81,82 補正容量
86 補正電流源

【特許請求の範囲】
【請求項1】 半導体回路のマスクレイアウトから、回路シミュレーションに用いる回路情報を抽出する回路の抽出装置であって、前記半導体回路が有するトランジスタについて、前記マスクレイアウトから認識した前記トランジスタの形状を基にして、回路シミュレーションと実デバイスとにおいてドレイン電流が合致するような等価トランジスタサイズを求めると共に、この等価トランジスタサイズを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおけるゲート容量の差に相当する容量値を有する補正容量を仮想的に生成して、前記等価トランジスタサイズ及び前記補正容量のデータを回路シミュレーションに用いる回路情報とすることを特徴とする回路の抽出装置。
【請求項2】 半導体回路のマスクレイアウトから、回路シミュレーションに用いる回路情報を抽出する回路の抽出装置であって、前記マスクレイアウトからトランジスタを認識し、認識したトランジスタのトランジスタ部の形状を認識するトランジスタ部形状認識手段と、前記トランジスタ部形状認識手段によって認識されたトランジスタ部の形状に基づいて、回路シミュレーションにおける前記トランジスタのドレイン電流が実デバイスにおける前記トランジスタのドレイン電流と合致するような等価トランジスタサイズを計算するトランジスタサイズ計算手段と、前記トランジスタサイズ計算手段によって求められた等価トランジスタサイズを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおける前記トランジスタのゲート容量の差を求め、求めた差に相当する容量値を有する補正容量を仮想的に生成する補正容量生成手段とを備えていることを特徴とする回路の抽出装置。
【請求項3】 半導体回路の製造後の仕上り形状を考慮したマスクレイアウトから、回路シミュレーションに用いる回路情報を抽出する回路の抽出装置であって、前記半導体回路が有するトランジスタについて、前記マスクレイアウトから認識した,曲線を含む前記トランジスタの形状を基にして、回路シミュレーションと実デバイスとにおいてドレイン電流が合致するような等価トランジスタサイズを求めると共に、この等価トランジスタサイズを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおけるゲート容量の差に相当する容量値を有する補正容量を仮想的に生成して、前記等価トランジスタサイズ及び前記補正容量のデータを回路シミュレーションに用いる回路情報とすることを特徴とする回路の抽出装置。
【請求項4】 半導体回路の製造後の仕上り形状を考慮したマスクレイアウトから、回路シミュレーションに用いる回路情報を抽出する回路の抽出装置であって、前記マスクレイアウトからトランジスタを認識し、認識したトランジスタのトランジスタ部の形状をこの形状が有する曲線も含めて認識するトランジスタ部形状認識手段と、前記トランジスタ部形状認識手段によって認識されたトランジスタ部の形状に基づいて、回路シミュレーションにおける前記トランジスタのドレイン電流が実デバイスにおける前記トランジスタのドレイン電流と合致するような等価トランジスタサイズを計算するトランジスタサイズ計算手段と、前記トランジスタサイズ計算手段によって求められた等価トランジスタサイズを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおける前記トランジスタのゲート容量の差を求め、求めた差に相当する容量値を有する補正容量を仮想的に生成する補正容量生成手段とを備えていることを特徴とする回路の抽出装置。
【請求項5】 半導体回路のマスクレイアウトから、回路シミュレーションに用いる回路情報を抽出する回路の抽出装置であって、前記半導体回路が有するトランジスタについて、前記マスクレイアウトから認識した前記トランジスタの形状を基にして、回路シミュレーションと実デバイスとにおいてゲート容量が合致するような等価トランジスタサイズを求めると共に、この等価トランジスタサイズを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおけるドレイン電流の差に相当する電流値を有する補正電流源を仮想的に生成して、前記等価トランジスタサイズ及び前記補正電流源のデータを回路シミュレーションに用いる回路情報とすることを特徴とする回路の抽出装置。
【請求項6】 半導体回路のマスクレイアウトから、回路シミュレーションに用いる回路情報を抽出する回路の抽出装置であって、前記マスクレイアウトからトランジスタを認識し、認識したトランジスタのトランジスタ部の形状を認識するトランジスタ部形状認識手段と、前記トランジスタ部形状認識手段によって認識されたトランジスタ部の形状に基づいて、回路シミュレーションにおける前記トランジスタのゲート容量が実デバイスにおける前記トランジスタのゲート容量と合致するような等価トランジスタサイズを求めるトランジスタサイズ計算手段と、前記トランジスタサイズ計算手段によって求められた等価トランジスタサイズを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおける前記トランジスタのドレイン電流の差を求め、求めた差に相当する電流値を有する補正電流源を仮想的に生成する補正電流源生成手段とを備えていることを特徴とする回路の抽出装置。
【請求項7】 半導体回路のマスクレイアウトから回路シミュレーションに用いる回路情報を抽出する回路の抽出装置と、前記半導体回路のプロセス情報等の情報から回路シミュレーションに用いるパラメータを抽出するパラメータ抽出手段とを備えたシミュレーション用情報生成システムにおいて、前記回路の抽出装置は、前記半導体回路が有するトランジスタについて、前記マスクレイアウトから認識した前記トランジスタの形状を基にして、回路シミュレーションと実デバイスとにおいてゲート容量が合致するような等価トランジスタサイズを求め、求めた等価トランジスタサイズを回路シミュレーションに用いる回路情報として出力するものであり、前記パラメータ抽出手段は、前記回路の抽出装置によって求められた等価トランジスタサイズを入力とし、この等価トランジスタサイズを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおいて前記トランジスタのドレイン電流が合致するようなパラメータを抽出するものであることを特徴とするシミュレーション用情報生成システム。
【請求項8】 半導体回路のマスクレイアウトから、回路シミュレーションに用いる回路情報を抽出する回路の抽出方法であって、前記半導体回路が有するトランジスタについて、前記マスクレイアウトから認識した前記トランジスタの形状を基にして、回路シミュレーションと実デバイスとにおいてドレイン電流が合致するような等価トランジスタサイズを求めたのち、この等価トランジスタサイズを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおけるゲート容量の差に相当する容量値を有する補正容量を仮想的に生成することにより、前記等価トランジスタサイズ及び前記補正容量のデータを回路シミュレーションに用いる回路情報とすることを特徴とする回路の抽出方法。
【請求項9】 半導体回路のマスクレイアウトから、回路シミュレーションに用いる回路情報を抽出する回路の抽出方法であって、前記マスクレイアウトからトランジスタを認識し、認識したトランジスタのトランジスタ部の形状を認識するトランジスタ部形状認識工程と、前記トランジスタ部形状認識工程によって認識されたトランジスタ部の形状に基づいて、回路シミュレーションにおける前記トランジスタのドレイン電流が実デバイスにおける前記トランジスタのドレイン電流と合致するような等価トランジスタサイズを求めるトランジスタサイズ計算工程と、前記トランジスタサイズ計算工程によって求められた等価トランジスタサイズを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおける前記トランジスタのゲート容量の差を求め、求めた差に相当する容量値を有する補正容量を仮想的に生成する補正容量生成工程とを備えていることを特徴とする回路の抽出方法。
【請求項10】 半導体回路の製造後の仕上り形状を考慮したマスクレイアウトから、回路シミュレーションに用いる回路情報を抽出する回路の抽出方法であって、前記半導体回路が有するトランジスタについて、前記マスクレイアウトから認識した,曲線を含む前記トランジスタの形状を基にして、回路シミュレーションと実デバイスとにおいてドレイン電流が合致するような等価トランジスタサイズを求めたのち、この等価トランジスタサイズを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおけるゲート容量の差に相当する容量値を有する補正容量を仮想的に生成することにより、前記等価トランジスタサイズ及び前記補正容量のデータを回路シミュレーションに用いる回路情報とすることを特徴とする回路の抽出方法。
【請求項11】 半導体回路の製造後の仕上り形状を考慮したマスクレイアウトから、回路シミュレーションに用いる回路情報を抽出する回路の抽出方法であって、前記マスクレイアウトからトランジスタを認識し、認識したトランジスタのトランジスタ部の形状をこの形状が有する曲線も含めて認識するトランジスタ部形状認識工程と、前記トランジスタ部形状認識工程によって認識されたトランジスタ部の形状に基づいて、回路シミュレーションにおける前記トランジスタのドレイン電流が実デバイスにおける前記トランジスタのドレイン電流と合致するような等価トランジスタサイズを求めるトランジスタサイズ計算工程と、前記トランジスタサイズ計算工程によって求められた等価トランジスタサイズを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおける前記トランジスタのゲート容量の差を求め、求めた差に相当する容量値を有する補正容量を仮想的に生成する補正容量生成工程とを備えていることを特徴とする回路の抽出方法。
【請求項12】 半導体回路のマスクレイアウトから、回路シミュレーションに用いる回路情報を抽出する回路の抽出方法であって、前記半導体回路が有するトランジスタについて、前記マスクレイアウトから認識した前記トランジスタの形状を基にして、回路シミュレーションと実デバイスとにおいてゲート容量が合致するような等価トランジスタサイズを求めたのち、この等価トランジスタサイズを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおけるドレイン電流の差に相当する電流値を有する補正電流源を仮想的に生成することにより、前記等価トランジスタサイズ及び前記補正電流源のデータを回路シミュレーションに用いる回路情報とすることを特徴とする回路の抽出方法。
【請求項13】 半導体回路のマスクレイアウトから、回路シミュレーションに用いる回路情報を抽出する回路の抽出方法であって、マスクレイアウトからトランジスタを認識し、認識したトランジスタのトランジスタ部の形状を認識するトランジスタ部形状認識工程と、前記トランジスタ部形状認識工程によって認識されたトランジスタ部の形状に基づいて、回路シミュレーションにおける前記トランジスタのゲート容量が実デバイスにおける前記トランジスタのゲート容量と合致するような等価トランジスタサイズを求めるトランジスタサイズ計算工程と、前記トランジスタサイズ計算工程によって求められた等価トランジスタサイズを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおける前記トランジスタのドレイン電流の差を求め、求めた差に相当する電流値を有する補正電流源を仮想的に生成する補正電流源生成工程とを備えていることを特徴とする回路の抽出方法。
【請求項14】 半導体回路のマスクレイアウトから回路シミュレーションに用いる回路情報を抽出する回路の抽出工程と、前記半導体回路のプロセス情報等の情報から回路シミュレーションに用いるパラメータを抽出するパラメータ抽出工程とを備えたシミュレーション用情報生成方法であって、前記回路の抽出工程は、前記半導体回路が有するトランジスタについて、前記マスクレイアウトから認識した前記トランジスタの形状を基にして、回路シミュレーションと実デバイスとにおいてゲート容量が合致するような等価トランジスタサイズを求める工程を備えており、前記パラメータ抽出工程は、前記回路の抽出工程によって求められた等価トランジスタサイズを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおいて前記トランジスタのドレイン電流が合致するようなパラメータを抽出する工程を備えていることを特徴とするシミュレーション用情報生成方法。
【請求項15】 半導体回路の回路構成を記述するネットリストであって、半導体回路が有するトランジスタについて、トランジスタサイズが当該ネットリストを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおいてドレイン電流が合致するような等価トランジスタサイズに置き換えられていると共に、当該ネットリストを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおけるゲート容量の差に相当する容量値を有する仮想的に生成された補正容量が記述されていることを特徴とするネットリスト。
【請求項16】 半導体回路の回路構成を記述するネットリストであって、半導体回路が有するトランジスタについて、トランジスタサイズが当該ネットリストを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおいてゲート容量が合致するような等価トランジスタサイズに置き換えられていると共に、当該ネットリストを用いた回路シミュレーションと実デバイスとにおけるドレイン電流の差に相当する電流値を有する仮想的に生成された補正電流源が記述されていることを特徴とするネットリスト。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図11】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図9】
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【図14】
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【図15】
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【図7】
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【図8】
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【図16】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開平9−219455
【公開日】平成9年(1997)8月19日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−292384
【出願日】平成8年(1996)11月5日
【出願人】(000005843)松下電子工業株式会社 (43)