説明

回路基板とコネクタの電気的接続構造

【課題】回路基板とコネクタを電気的に接続する構造において、複数個の電極間の防水性を向上させる。
【解決手段】実装基板であるECU16に形成された電極収容凹部36には、カプラ22(コネクタ)の端子32が電気的に接続される第2電極34が収容される。電極収容凹部36と第2電極34との間には、第2電極34に向かって陥没した形状の段差部38が形成される。一方、カプラ22の挿入孔40に挿入されて接続用開口42から若干突出した端子32の先端の屈曲部位44は、電極収容凹部36(段差部38)に進入して第2電極34に当接する。この際、ECU16の第2底面25にカプラ22の端面が当接する。なお、端子32は、ECU16の厚み方向(X方向)に沿う方向に対して所定角度で傾斜するように設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板とコネクタの電気的接続構造に関し、一層詳細には、回路基板に設けられた電極と、コネクタに設けられた端子とを電気的に接続するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等には、内燃機関を電気的に制御する作用を営むエンジンコントロールユニット(ECU)が搭載される。ここで、ECUは、周知の通り、コンデンサやトランジスタ、アナログ/デジタル変換回路等が回路基板に設けられて構成されるとともにモールド樹脂によって覆われた実装基板であり、ケーシングに収容されることによって保護される。
【0003】
ECUと、該ECUによって制御されるべき機器とは、カプラ(コネクタ)を介して電気的に接続される。すなわち、ECUには複数個の電極が設けられ、一方、カプラに集束された複数個の信号線の各々には、端子が設けられる。個々の電極に対して各端子が電気的に接続されることにより、ECUとコネクタとが接続される。
【0004】
特許文献1には、この種の回路基板に実装される樹脂モールド電子部品が開示されている。具体的には、該特許文献1の図1及び図2に示されるように、樹脂は電子部品本体の全体を被覆するようにモールドされており、前記電子部品本体に電気的に接続された2個の端子電極のみが樹脂の外表面に露呈する。なお、端子電極の端面は樹脂の外表面と面一に設定され、端子電極同士の間には、これら端子電極同士を絶縁する堰を形成する熱可塑性合成樹脂が配設される。
【0005】
従って、この樹脂モールド電子部品では、見かけ上、2個の端子電極及び熱可塑性合成樹脂のそれぞれが、各端面が樹脂の外表面に面一となるようにして、樹脂に形成された凹部に収容された形態となっている。
【0006】
特許文献1によれば、熱可塑性合成樹脂が電気的な堰となることにより、2個の端子電極の間に放電が起こることを回避することが可能となる、とのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−243070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
周知の通り、自動車(自動二輪車を含む)等は雨中で運転されることがある。このため、若干ではあるが、ハーネス等をECUに雨水等が到達する可能性もある。従って、ECUの電極同士の間の防水性を向上させることが可能な構成を採用することが望ましい。
【0009】
そこで、特許文献1にて提案された構成を採用することが想起される。しかしながら、この構成では、2個の端子電極の各端面が樹脂モールド電子部品の実装面に露呈しているので、雨水等が万一実装面に到達した場合には、該雨水等が端子電極同士の間に介在し易い。
【0010】
そもそも、特許文献1記載の従来技術は、樹脂モールド電子部品を基板に実装する際に使用されるはんだを介しての放電が起こることを回避することに着目しており、雨水等が進入することは想定していないと考えられる。
【0011】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、電極同士の間の防水性を向上させることが可能な回路基板とコネクタの電気的接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するために、本発明は、樹脂材で被覆された回路基板に設けられて前記樹脂材から露呈した複数個の電極と、複数個のコネクタの各々に設けられた端子とを電気的に接続する電気的接続構造であって、
前記電極が前記回路基板に陥没形成された凹部の一部に収容され、且つ前記電極が収容された前記凹部に段部が形成されることを特徴とする。
【0013】
この場合、凹部と電極との間に、電極に向かって陥没した形状の段差部が形成される。このような構成においては、任意の電極と、これに隣接する別の電極との間の実距離が、電極が回路基板の底面と面一となるように(すなわち、段差部が形成されないように)実装されたときの互いに隣接する電極同士の実距離に比して大きくなる。つまり、いわゆる沿面距離を大きくすることができる。また、段差部によってラビリンス構造が形成される。
【0014】
以上のような理由から、雨水等が仮に回路基板に到達したとしても、回路基板に沿って移動することが困難である。このため、電極と端子の接触部分の防水性が向上する。
【0015】
その上、この構成では、例えば、作業者の指等が電極に接触することが容易に回避されるので、電極が汚れることを回避することもできる。
【0016】
また、回路基板の被覆端面に対してコネクタの端面を当接させたので、組み付け性を向上させつつ単極防水を図ることができる。
【0017】
さらに、端子が前記凹部に進入して電極に接触することが好ましい。この場合、電極が回路基板の端面と面一となるように設けられた場合に比して、回路基板からコネクタに至るまでの距離が小さくなるので、回路基板とコネクタの組立体の小型化を図ることができる。これにより省スペース化を図ることができるとともに、組立体の配置レイアウトの自由度を向上させることができる。
【0018】
そして、端子を、回路基板の厚み方向に対して傾斜するように接続することが好ましい。これにより端子を集約することが容易となるので、回路基板とコネクタの組立体の小型化を図ることができる。結局、一層の省スペース化を図ることができる。勿論、組立体の配置レイアウトの自由度も一層向上する。
【0019】
なお、端子の先端部を折曲、すなわち、湾曲ないし屈曲することが好ましい。これにより、いわゆるワイピング効果が発現する。従って、端子の電極への接触強度が大きくなると期待される。
【0020】
回路基板の好適な例としては、自動二輪車をはじめとする車体に搭載され、且つその両端面の各々に電極が設けられた両面基板からなるものを挙げることができる。この場合、該回路基板の一方の端面側に、車体の所定の機能を担う機能部品(例えば、スロットル開度センサやソレノイド)を配設し、残余の一方の端面側に、前記コネクタを配設することができる。
【0021】
上記の電気的接続構造を有するこの回路基板は、防水性が良好である。従って、例えば、自動二輪車等が雨中で運転される場合であっても、雨水等が進入し難い。さらに、省スペースであるので、車体に搭載する際の配置レイアウトの自由度も向上する。
【0022】
機能部品と電極を電気的に接続する場合にも、上記した電気的接続構造を採用することができる。すなわち、機能部品が配設される側の端面に凹部を陥没形成し、この凹部に、機能部品を電気的に接続するための電極を収容すればよい。
【0023】
このように構成することにより、機能部品と回路基板との電気的接続構造においても防水性が良好となる。また、回路基板を含む装置が一層小型化するので、さらなる省スペース化を図ることができる。
【0024】
回路基板を車体に搭載する場合には、該回路基板を、例えば、スロットルボディに取り付けるようにすればよい。そして、機能部品の1つであるスロットル開度センサをスロットル軸と同軸に設けることが好ましい。この場合、スロットル開度センサをスロットル軸に連なるようにして配置することができるので、スロットル開度センサとスロットル軸とが同軸でない場合に比して必要なスペースが狭小化する。従って、さらに一層の省スペース化を図ることができる。
【0025】
なお、その他の機能部品(例えば、ソレノイド)は、スロットルワイヤの引き出し方向側に偏倚するように配置すればよい。
【0026】
いずれにおいても、電極の長手方向が鉛直方向に沿って延在するように、換言すれば、電極が起立するように回路基板の向きを設定することが好ましい。この場合、仮に前記凹部に水等が進入したとしても、水等が該凹部に滞留することが困難となる。従って、端子と電極との接触部分の防水性が一層向上する。
【0027】
さらに、端子を、電極に接近するにつれて上昇するように傾斜させることが好ましい。この場合、たとえコネクタ側から水等が進入したとしても、この水等は、端子と電極の接触部分に到達する前に、重力の作用下に、下方に向かって流動する。これにより、端子と電極の接触部分まで水等が到達することを回避することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、回路基板に凹部を陥没形成してこの内部に電極を収容するとともに、前記電極が収容された前記凹部に内容積の残部を形成することで、前記凹部と前記電極との間に、前記電極に向かって陥没した形状の段差部を形成するようにしている。この段差部が存在することにより、隣接する電極同士の離間距離が大きくなるとともに、いわゆるラビリンス構造が形成される。その結果、電極同士の間の防水性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】自動二輪車の全体概略側面図である。
【図2】図1の一部拡大図である。
【図3】図1の自動二輪車に搭載されるスロットル装置の概略正面一部断面図である。
【図4】図3のスロットル装置の要部拡大一部断面分解図である。
【図5】図3のスロットル装置の別部位の要部拡大一部断面分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る回路基板とコネクタの電気的接続構造につき、自動二輪車に搭載されるスロットル装置に適用した場合を好適な実施の形態として挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0031】
先ず、自動二輪車の構成につき、その全体概略側面図である図1、及び一部拡大図である図2を参照して説明する。
【0032】
図1に示される自動二輪車100のメインフレーム102の前方側端部には、フロントフォーク104を操向可能に支承するヘッドパイプ106が取り付けられている。後ろ下がりに延びるメインフレーム102の後端部には、ピボットプレート108と、メインフレーム102に前端が溶接されて後ろ上がりに延びる左右一対のシートレール110と、シートレール110の中間部及びピボットプレート108間を結ぶ左右一対の補強フレーム112とが取り付けられている。
【0033】
フロントフォーク104の下端には前輪114が軸支され、フロントフォーク104の上部には柱状の操向ハンドル116が連結されている。フロントフォーク104には、前輪114の上方を覆うフロントフェンダ118が支持されている。メインフレーム102の下方には、シリンダ軸線を僅かに前上がりとした水冷単気筒のエンジン120が配置されている。エンジン120は、ピボットプレート108と、メインフレーム102の中間部に設けられたハンガプレート122とを用いて支持されている。
【0034】
ピボットプレート108を車幅方向に貫通するピボット124には、スイングアーム126の前端部が上下揺動可能に支承されている。スイングアーム126の後端には、ドライブチェーン128を介してエンジン120の出力が伝達される後輪130が回転自在に軸支されている。シートレール110とスイングアーム126との間には、リヤクッション132が設けられている。左右一対のシートレール110の間には燃料タンク134が配設されており、燃料タンク134の車体前方には、開閉式のシート135を開くことでアクセス可能な収納ボックス136が配設されている。後輪130の後部上方はリアフェンダ138で覆われている。
【0035】
エンジン120のシリンダヘッド137の上部側壁には、ECU16(図3参照)を内包する、いわゆるECU一体式のスロットル装置10が吸気管を介して接続されている。本実施の形態に係る電気的接続構造は、このスロットル装置10に採用されているが、この点については後に詳述する。
【0036】
前記吸気管の途中には、シリンダヘッド137の吸気ポートに向けて燃料を噴射する燃料噴射弁140(図2参照)が取り付けられている。スロットル装置10の上流端は、エアクリーナボックス142に接続されている。
【0037】
図3に示すように、スロットル装置10を構成するスロットルボディ12には、スロットル軸13が回転自在に軸支される。このスロットル軸13には、エンジン120に供給される空気量を調節するバタフライ型のスロットルバルブ14が連結されている。すなわち、スロットルバルブ14は、スロットル軸13が回転することに追従して回動する。このスロットルバルブ14にはプーリ144(図2参照)が連なって配置されるとともに、該プーリ144にスロットルワイヤ146が巻回される。
【0038】
メインフレーム102には、エンジン120の一部、スロットル装置10及びエアクリーナボックス142を覆う合成樹脂製の車体カバー148が取り付けられている。車体カバー148の車体前方には、乗員の脚部を前方から覆うレッグシールド150が配設されている。車体カバー148には、スロットル装置10の調節及びエンジン120からの熱抜きを可能とする開口部が、車体側面視でスロットルボディ12のやや後方に設けられている。
【0039】
次に、前記スロットル装置10につき説明する。
【0040】
図3は、スロットル装置10の概略正面一部断面図である。このスロットル装置10は、前記スロットルバルブ14と、該スロットルバルブ14の開度を調整するECU16とを含んで構成される。なお、図3中の参照符号18、19は、それぞれ、機能部品としてのスロットル開度センサ、ソレノイドを示す。スロットル開度センサ18は前記スロットルバルブ14の開度に関する情報を得る機能を営み、一方、ソレノイド19は、エンジン120に送られる燃料の量を制御するべく、図示しない燃料通路の開度を調整する役割を果たす。
【0041】
スロットル装置10はケーシング20を有し、ECU16は、このケーシング20内に収容される。換言すれば、スロットル装置10はいわゆるECU一体型のものであり、ECU16はスロットルボディ12に取り付けられる。また、ケーシング20には、コネクタとしてのカプラ22が連結される。
【0042】
ECU16は、第1底面24及び第2底面25の双方にコンデンサ等の所定の素子(図示せず)が実装された、いわゆる両面実装基板によって構成される。第1底面24側には、前記スロットル開度センサ18及びソレノイド19が配設され、一方、第2底面25側には、前記カプラ22が配設される。
【0043】
図3から諒解されるように、第1底面24側において、スロットル開度センサ18は、スロットルボディ12に軸支されたスロットル軸13と同軸に配置される。一方、ソレノイド19は、スロットル軸13の長手方向に対して略直交する方向に引き出されたスロットルワイヤ146に略平行に位置する。すなわち、ソレノイド19は、スロットルワイヤ146の引き出し方向側に偏倚して配設される。
【0044】
ECU16において、スロットル開度センサ18及びソレノイド19に臨む第1底面24には、これらスロットル開度センサ18及びソレノイド19とECU16の各端子26、28を電気的に接続するための第1電極30が設けられ、一方、カプラ22に臨む第2底面25には、カプラ22に集束された複数個の信号線31の各々に設けられた端子32を電気的に接続するための第2電極34が、複数個設けられる。
【0045】
また、ECU16の外表面には、第1電極30及び第2電極34が設けられた部位を除き、樹脂材35がモールドされている。換言すれば、第1電極30及び第2電極34は、樹脂材35から露呈している。
【0046】
本実施の形態に係る電気的接続構造は、前記第1電極30とスロットル開度センサ18及びソレノイド19の各端子26、28との接続と、前記第2電極34とカプラ22の端子32との接続に採用される。以下、この点につき、特に第2電極34側を例示して詳述する。
【0047】
図4に要部を拡大して示すように、ECU16の第2底面25には、電極収容凹部36が陥没形成される。第2電極34は、この電極収容凹部36に配置されている。なお、図4から諒解されるように、この場合、電極収容凹部36の深さ方向(図3及び図4におけるX方向に沿う方向)寸法は、第2電極34の高さ方向(X方向)寸法に比して大きく設定される。従って、第2電極34は、突出することなくその全体が電極収容凹部36に収容される。
【0048】
換言すれば、電極収容凹部36の容積は第2電極34の体積よりも大きく、このため、第2電極34は、電極収容凹部36の一部に収容される。従って、第2電極34が収容された後の電極収容凹部36には内容積に残部が形成され、これに伴って、電極収容凹部36と第2電極34との間に、第2電極34に向かって陥没した形状の段差部38が形成される。
【0049】
一方、カプラ22には、端子32を個別に挿入するための挿入孔40と、該挿入孔40に連通する接続用開口42が形成される。前記挿入孔40は、ECU16の厚み方向(X方向)に沿う方向に対して傾斜するように形成されている。従って、挿入孔40に挿入された端子32もまた、ECU16の厚み方向(X方向)に沿う方向に対して所定角度で傾斜する。
【0050】
各挿入孔40に挿入された端子32の先端部は、ECU16の厚み方向(X方向)に沿う方向に屈曲された後、接続用開口42の出口近傍において、幅方向(Y方向)に向かうようにさらに屈曲されている。この幅方向(Y方向)に向かう屈曲部位44が、電極収容凹部36(段差部38)に進入して第2電極34に当接する。
【0051】
図3に示すように、ケーシング20の側部には係合用突起46が設けられ、一方、カプラ22の内壁には係合用陥没48が形成される。係合用突起46が係合用陥没48に係合することにより、カプラ22とケーシング20が堅牢に連結される。なお、図3中の参照符号50は、シール材を示す。
【0052】
一方の第1底面24にも、図5に示すように電極収容凹部52が陥没形成される。勿論、電極収容凹部36、52は、樹脂材35で覆われていない。
【0053】
第1電極30は、その全体が電極収容凹部52に収容されており、電極収容凹部52から露呈した部分はない。従って、第1電極30が収容された後の電極収容凹部52には内容積の残部が形成され、結局、電極収容凹部52と第1電極30との間に、第1電極30に向かって陥没した形状の段差部54が形成される。
【0054】
スロットル開度センサ18の端子26、ソレノイド19の端子28は、ECU16の幅方向(Y方向)に沿う方向に屈曲した後、第1電極30に向かうようにして湾曲・傾斜している。この傾斜した先端部が、電極収容凹部52(段差部54)に進入して第1電極30に当接する。
【0055】
以上のように構成されたスロットル装置10は、図3に示すように、ECU16の幅方向(矢印Y方向)が鉛直方向に略一致するように、自動二輪車100(図1参照)に取り付けられる。従って、第1電極30及び第2電極34は、鉛直方向に沿って起立するように延在する(図3参照)。
【0056】
なお、図3における右方向、左方向は、自動二輪車100の右方向、左方向に一致する。すなわち、図3は、自動二輪車100の前方正面を視点として後方側を見たものである。従って、端子32は、第2電極34に接近するにつれて上昇するように傾斜している。
【0057】
本実施の形態に係る電気的接続構造は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
【0058】
スロットル装置10を組み立てる際には、上記したようにカプラ22とケーシング20が連結される。この最中には、図3及び図4に示すように、接続用開口42の出口から若干突出した端子32の先端の屈曲部位44がECU16の電極収容凹部36に進入し、第2電極34に接触する。この際、屈曲部位44は、その弾性によって、第2電極34の厚み方向(X方向)に沿って若干撓む。
【0059】
また、屈曲部位44によって、第2電極34に対するワイピング効果が発現する。このため、端子32の第2電極34への接触強度が大きくなると期待される。
【0060】
屈曲部位44と第2電極34が互いに接触すると、ECU16の第2底面25に対してカプラ22の端面が当接する。その結果、端子32と第2電極34の接触部分がECU16とカプラ22に封入される。この封入により、端子32と第2電極34の接触部分に雨水等が到達することを回避することができる。
【0061】
しかも、端子32が第2電極34に接近するにつれて上昇するように傾斜しているので、カプラ22の内部に雨水等がたとえ進入したとしても、この雨水等は、端子32と第2電極34の接触部分に到達する前に、重力の作用下に下方に向かって容易に流動する。このことによっても、端子32と第2電極34の接触部分に雨水等が到達することが回避される。
【0062】
以上のような理由から、ケーシング20内に雨水等が進入すること自体が困難となる。すなわち、スロットル装置10は、防水性に優れる。
【0063】
さらに、この場合、第2電極34の全体が電極収容凹部36に収容される結果、第2電極34と第2底面25との間に段差部38が存在する。この場合、任意の第2電極34と、これに隣接する第2電極34との間の実距離は、第2電極34がECU16の第2底面25と面一となるように実装されたときの互いに隣接する第2電極34、34同士の実距離に比して大きくなる。後者においては、段差部38が形成されることがないからである。加えて、本実施の形態によれば、段差部38によってラビリンス構造が形成される。
【0064】
従って、仮にケーシング20内に雨水等が進入したとしても、該雨水等が移動することが困難である。このため、屈曲部位44と第2電極34の接触部分の防水性が向上する。
【0065】
その上、ECU16の幅方向(矢印X方向)が鉛直方向に沿っているので、第2電極34が起立する。従って、雨水等が電極収容凹部36に滞留することが困難である。このことも、屈曲部位44と第2電極34の接触部分の防水性の向上に寄与する。
【0066】
また、任意の第2電極34から、これに隣接する第2電極34にわたって雨水等が延在することが困難となる。上記したように、隣接する第2電極34、34同士の間に段差部38が存在するため、これら第2電極34、34同士の離間距離が大きくなるからである。従って、互いに隣接する第2電極34、34同士の間の防水性を向上させることができる。
【0067】
また、端子32がECU16の厚み方向(X方向)に沿う方向に対して傾斜するように配置されるので、厚み方向(X方向)に沿う方向に端子32を延在させる場合に比して端子32を容易に集約させることができる。その上、ECU16の第2底面25にカプラ22の端面が当接するので、第2底面25とカプラ22との間に第2電極34や端子32が露呈する場合に比してスロットル装置10が小型化する。
【0068】
勿論、ECU16の第1電極30に対してスロットル開度センサ18の端子26、ソレノイド19の端子28が電気的に接続される第1底面24側においても、図5に示される構成から諒解されるように、第2底面26側と同様の効果が得られる。第1電極30の全体が電極収容凹部52に収容されるので、第1電極30と第1底面24との間に段差部54が形成されるからである。
【0069】
要するに、以上の構成を採用することにより、省スペース化を図ることができる。これに伴って、スロットル装置10の配置レイアウトの自由度が向上する。
【0070】
以上のように、本実施の形態によれば、実装基板であるECU16とカプラ22の電気的接続構造の防水性を向上させることが可能となるとともに、スロットル装置10のコンパクト化を図り、その結果、配置レイアウトの自由度を向上させることが可能となる。
【0071】
しかも、段差部38、54が存在するので、組立作業中に作業者の指が第1電極30、第2電極34に接触することが容易に回避される。このため、第1電極30、第2電極34が汚れることを回避することも容易である。
【0072】
特に、段差部38、54のピッチを狭く設定することが好ましい。この場合、より一層、第1電極30、第2電極34が汚れることを回避することができる。
【0073】
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0074】
例えば、上記した実施の形態においては、端子32の先端の屈曲部位44を第2電極34に当接させるようにしているが、屈曲部位44と第2電極34との間に導電性ゴムを介在させ、これにより端子32と第2電極34とを電気的に接続するようにしてもよい。特に、端子32の先端を導電性ゴムによって被覆した場合、端子32に対する防水効果が一層向上するという利点がある。
【0075】
また、本発明は、自動二輪車100に搭載されるECU16の第1電極30とスロットル開度センサ18及びソレノイド19の各端子26、28との接続、又は、第2電極34とカプラ22の端子32との電気的接続構造にのみ限定されるものではなく、回路基板の電極と、コネクタの端子とを電気的に接続する様々な場合に採用することが可能である。
【符号の説明】
【0076】
10…スロットル装置 12…スロットルボディ
13…スロットル軸 14…スロットルバルブ
16…ECU 20…ケーシング
22…カプラ 24、25…底面
26、28、32…端子 30、34…電極
36、52…電極収容凹部 38、54…段差部
40…挿入孔 42…接続用開口
44…屈曲部位 100…自動二輪車
144…プーリ 146…スロットルワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材で被覆された回路基板(16)に設けられて前記樹脂材から露呈した複数個の電極(34)と、複数個のコネクタ(22)の各々に設けられた端子(32)とを電気的に接続する電気的接続構造であって、
前記電極(34)が前記回路基板(16)に陥没形成された凹部(36)に収容され、且つ前記電極(34)が収容された前記凹部(36)に段部(38)が形成されることを特徴とする回路基板(16)とコネクタ(22)の電気的接続構造。
【請求項2】
請求項1記載の接続構造において、前記回路基板(16)の端面に対して前記コネクタ(22)の端面が当接することを特徴とする回路基板(16)とコネクタ(22)の電気的接続構造。
【請求項3】
請求項2記載の接続構造において、前記端子(32)が前記凹部(36)に進入して前記電極(34)に接触することを特徴とする回路基板(16)とコネクタ(22)の電気的接続構造。
【請求項4】
請求項3記載の接続構造において、前記端子(32)が前記回路基板(16)の厚み方向に対して傾斜するように接続されたことを特徴とする回路基板(16)とコネクタ(22)の電気的接続構造。
【請求項5】
請求項3又は4記載の接続構造において、前記端子(32)の先端部が折曲されていることを特徴とする回路基板(16)とコネクタ(22)の電気的接続構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の接続構造において、前記回路基板(16)が車体(100)に搭載されるものであるとともに、その両端面(24、25)の各々に電極(30、34)が設けられた両面基板であり、
前記回路基板(16)の一方の端面(25)側に、前記車体(100)の所定の機能を担う機能部品(18、19)が配設されるとともに、残余の一方の端面(24)側に前記コネクタ(22)が配設されることを特徴とする回路基板(16)とコネクタ(22)の電気的接続構造。
【請求項7】
請求項6記載の接続構造において、前記機能部品(18、19)が配設される側の端面に凹部(52)が陥没形成され、前記機能部品(18、19)を電気的に接続するための電極(30)が前記凹部(52)に収容されることを特徴とする回路基板(16)とコネクタ(22)の電気的接続構造。
【請求項8】
請求項6又は7記載の接続構造において、前記回路基板(16)がスロットルボディ(12)に取り付けられるとともに、前記機能部品(18、19)の1つであるスロットル開度センサ(18)がスロットル軸(13)と同軸に設けられ、且つその他の機能部品(19)がスロットルワイヤ(146)の引き出し方向側に偏倚して配置されることを特徴とする回路基板(16)とコネクタ(22)の電気的接続構造。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の接続構造において、前記電極(30、34)が鉛直方向に沿って起立することを特徴とする回路基板(16)とコネクタ(22)の電気的接続構造。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の接続構造において、前記端子(32)は、前記電極(34)に接近するにつれて上昇するように傾斜することを特徴とする回路基板(16)とコネクタ(22)の電気的接続構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−9385(P2012−9385A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146375(P2010−146375)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】