説明

回路基板ユニットの製造方法および超音波検査方法

【課題】安価で、製造にかかる手間が少なく、しかも、回路基板の全数を超音波検査することが可能な回路基板ユニットの製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂塗布工程では、回路基板2の上面2aに実装された半導体素子4に流動状態の合成樹脂40を塗布する。次いで、超音波検査工程では、流動状態の合成樹脂40にプローブ30の先端部30aを接触させた状態で超音波検査を行う。プローブ30の先端部30aには、予め流動状態の合成樹脂41が塗布されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板ユニットの製造方法および超音波検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場で製造される製品は、所定の品質を有しているか否か、製造時に検査されることがある。このときの検査方法の1つとして、超音波検査がある(例えば、特許文献1参照)。超音波検査は、プローブから超音波を発振し、製品を透過または反射した超音波を測定することにより、製品内部の状態を検査する。この超音波は、音響インピーダンスの変化する空隙で反射しやすいという特性を有する。そして、この特性に基づいて製品内部の状態を検査するので、超音波を空気中へ射出して伝達することは困難である。
【0003】
このため、超音波測定を行う際に、超音波伝達用の媒体として、音響インピーダンスがマッチしたものが必要とされる。例えば、超音波検査では、ジャム状の特製の媒体をプローブと製品との間に介在させたり、製品を水に漬けた状態で、超音波検査が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−312789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、工場で製造される製品の1つに、回路基板がある。通常、回路基板の表面には、半導体素子等の素子が、半田を用いて実装されている。このような回路基板のなかには素子が合成樹脂で覆われ、これにより、素子が合成樹脂部材によって保護されているものがある。このような回路基板の製造時には、素子と回路基板とを接続する半田部分や合成樹脂に余分な気泡が混ざっていないか検査される。このときの検査方法としては、回路基板にX線を透過させることで半田部分や合成樹脂部材の内部を検査するX線検査や、回路基板に向けて超音波を発振することで半田部分や合成樹脂部材の内部を検査する超音波検査がある。
【0006】
しかしながら、半田部分の厚みは薄いので、X線検査は適していない。特に、絶縁層と導電層とを積層した多層回路基板であって、各導電層を接続するビアを有する多層回路基板においては、気泡とビアとの判別が、X線検査では困難である。一方、超音波検査は、薄い半田部分の内部の気泡の検出には適しているけれども、超音波発振・検出用のプローブと合成樹脂部材との間にジャム状の媒質や、水等を介在させる必要がある。ジャム状の媒質を用いる場合には、検査専用の媒質が必要でコストが高くつく上、超音波検査の後、ジャム状の媒質を除去する必要があり、手間がかかる。また、水を媒質として使用する場合、回路基板を水槽に漬ける必要があり、破壊検査となってしまう。このため、例えば製造ロット毎に1つの回路基板を検査用として水槽に漬けて超音波検査をし、その製造ロットでの各回路基板の気泡の有無を推定し、検査した回路基板以外の回路基板を製品として出荷する必要がある。したがって、水を媒体とする場合、回路基板の全部を検査する全数検査をすることができず、製品の信頼性の向上に余地がある。また、検査用の回路基板は、出荷できないので、その分、製品1つあたりの製造コストが増してしまう。
【0007】
本発明は、かかる背景のもとでなされたもので、安価で、製造にかかる手間が少なく、しかも、回路基板の全数を超音波検査することが可能な回路基板ユニットの製造方法および超音波検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、回路基板(2)の実装面(2a)に実装された素子(4)に流動状態の合成樹脂(40)を塗布する樹脂塗布工程と、前記流動状態の合成樹脂に超音波印加部(30a)を接触させた状態で超音波検査を行う超音波検査工程と、を備えることを特徴とする回路基板ユニット(1)の製造方法を提供する(請求項1)。
本発明によれば、超音波検査工程において、回路基板ユニットの一部(合成樹脂部材)を構成するための流動状態の合成樹脂を媒質として用いて超音波検査を行うことができる。これにより、超音波印加部の超音波を回路基板ユニットの製造中間体に伝えるための、専用の媒質を用意しなくてよい。したがって、超音波検査に関連して専用の媒質を用意・除去する手間が不要であり、製造コストを低減できるとともに製造に係る手間を少なくできる。さらに、回路基板ユニットの製造中間体を水に漬けて超音波検査する必要がないので、超音波検査の後の製造中間体を製品として用いることができる。したがって、回路基板ユニットの製造中間体の全数を検査する全数検査をすることができる。これにより、製品の信頼性を向上できるとともに、製造コストをより低減できる。しかも、素子の実装状態の検査と、流動状態の合成樹脂に気泡が存在しているか等の検査とを一括して行うことができる。これにより、回路基板ユニットの製造にかかる手間を少なくできる。その分、回路基板ユニットの製造コストをより低減できる。
【0009】
また、本発明において、前記超音波検査が行われた後、前記流動状態の合成樹脂を硬化させる硬化工程を備える場合がある(請求項2)。
この場合、流動状態の合成樹脂を用いて超音波検査を行った後、流動状態の合成樹脂を硬化させることで、素子を覆う合成樹脂部材を形成できる。したがって、超音波検査に用いた流動状態の合成樹脂をそのまま製品として利用することができる。
【0010】
また、本発明において、前記素子には、接続線(5)が接続されており、前記樹脂塗布工程では、前記接続線の一部(5a)が露出するように前記流動状態の合成樹脂を塗布する場合がある(請求項3)。この場合、樹脂塗布工程の後、合成樹脂から接続線が露出することとなる。したがって、この突出した接続線を目印にして、超音波検査を行う場所を容易に特定できる。
【0011】
また、本発明において、前記超音波印加部は、前記流動状態の合成樹脂に接触される前に、流動状態の合成樹脂(41)を塗布されている場合がある(請求項4)。
この場合、超音波印加部を素子上の流動状態の合成樹脂に挿し入れる際に、この流動状態の合成樹脂に気泡が入ることを抑制できる。また、樹脂塗布工程で接続線の一部を目印として露出させている場合には、この接続線を超音波検査の際に、超音波印加部に塗布された合成樹脂で埋めることができる。したがって、露出した状態の接続線を埋めるための専用の工程が不要であり、回路基板ユニットの製造工程をより少なくできる。
【0012】
また、本発明は、回路基板の実装面に実装された素子に塗布された流動状態の合成樹脂に、超音波印加部を接触させて超音波検査を行うことを特徴とする超音波検査方法を提供する(請求項5)。
本発明によれば、回路基板ユニットの一部(合成樹脂部材)を構成するための流動状態の合成樹脂を媒質として用いて超音波検査を行うことができる。これにより、超音波印加部の超音波を回路基板ユニットの製造中間体に伝えるための、専用の媒質を用意しなくてよい。したがって、超音波検査に関連して専用の媒質を用意・除去する手間が不要であり、製造コストを低減できるとともに、製造に係る手間を少なくできる。さらに、回路基板ユニットの製造中間体を水に漬けて超音波検査する必要がないので、超音波検査の後の製造中間体を製品として用いることができる。したがって、回路基板ユニットの製造中間体の全数を検査する全数検査をすることができる。これにより、製品の信頼性を向上できるとともに、製造コストをより低減できる。しかも、素子の実装状態の検査と、流動状態の合成樹脂に気泡が存在しているか等の検査とを一括して行うことができる。これにより、回路基板ユニットの製造にかかる手間を少なくできる。その分、回路基板ユニットの製造コストをより低減できる。
【0013】
なお、上記において、括弧内の数字等は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の回路基板ユニットの製造方法により製造された回路基板ユニットの断面図である。
【図2】回路基板ユニットの製造方法の主要部を説明するための図であり、(A)は、半導体素子が取り付けられる前の回路基板を示しており、(B)は、半導体素子を実装する実装工程を示しており、(C)は、樹脂塗布工程を示している。
【図3】回路基板ユニットの製造方法の主要部を説明するための図であり、(A)および(B)は、それぞれ、超音波検査工程を示している。
【図4】回路基板ユニットの製造方法の主要部を説明するための図であり、(A)は、超音波検査工程を示しており、(B)は、再減圧工程を示している。
【図5】回路基板ユニットの製造方法の主要部を説明するための図であり、(A)および(B)は、それぞれ、再検査工程を示している。
【図6】回路基板ユニットの製造方法の主要部を説明するための図であり、(A)は、熱硬化工程を示しており、(B)は、プローブを洗浄する工程を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好ましい実施の形態を添付図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の回路基板ユニットの製造方法により製造された回路基板ユニット1の断面図である。図1を参照して、回路基板ユニット1は、例えば、電動パワーステアリング装置のブラシレスモータからなる電動モータを駆動するためのパワー回路基板を含んでいる。回路基板ユニット1は、回路基板2と、例えばアルミニウム板からなるヒートシンクとしての放熱板3と、回路基板2に実装されたFET(Field Effect Transistor)等の半導体素子4と、半導体素子4に取り付けられた接続線としてのボンディングワイヤ5と、合成樹脂部材6とを備えている。
【0016】
回路基板2は、複数の絶縁層8が上下に積層され、且つ、隣り合う絶縁層8間にそれぞれ導電部9が配置された多層回路基板である。また、最下層の絶縁層8aは、絶縁性の接着層10と接着されている。最下層の絶縁層8aと接着層10との間にも、導電部9cが配置されている。最下層の導電部9cは、絶縁性の接着層10を介して、放熱板3に接続されている。接着層10は、最下層の絶縁層8aおよび導電部9cと、放熱板3とに接着されている。
【0017】
回路基板2の実装面としての上面2aは、導電部9a,9bと、絶縁性のレジスト層11とによって形成されている。導電部9aには、半田部材12を用いて半導体素子4が接続されている。半導体素子4と導電部9aとは、半田部材12によって電気的に接続され、且つ互いに固定されている。このように、半導体素子4は、ベアチップ実装されている。
【0018】
半導体素子4の下面には半田部材12が固定され、且つ半導体素子4の上面には、ボンディングワイヤ5の一端が固定されている。ボンディングワイヤ5の他端は、導電部9bに固定されている。
導電部9aは、回路基板2の厚み方向に並ぶ他の導電部9に複数のビアホール13を介して電気的に接続されている。各ビアホール13は、銅からなる円筒状の金属メッキ層によって形成されており、このメッキ層の内側に金属ペーストや樹脂等が充填されている。ビアホール13によって、半導体素子4からの熱を放熱板3に逃がし易くされている。
【0019】
合成樹脂部材6は、例えば、高温で流動状(例えば、液状)にされた原料としての、ガラス繊維が混ぜられたエポキシ樹脂等の熱硬化性の合成樹脂を回路基板2の上面2aに塗布し、この合成樹脂を硬化させることにより形成されている。合成樹脂部材6は、回路基板2の上面2aの少なくとも一部と、半田部材12と、半導体素子4と、ボンディングワイヤ5とを覆っており、これらの部材を保護する機能や、放熱性を向上する機能を有している。
【0020】
次いで、回路基板ユニット1の製造方法を説明する。
まず、図2(A)に示すように、接着層10によって放熱板3が接着された回路基板2を用意する。この回路基板2の導電部9a上(上面2a)には、予め半田部材12が設けられている。この半田部材12を図示しない加熱部材で加熱して溶融させる。
そして、溶融した半田部材12に、半導体素子4を取り付ける(実装工程)。これにより、図2(B)に示すように、半田部材12と半導体素子4とが結合され、半導体素子4が上面2aに実装される。この半田接続工程では、半田部材12が溶融した状態から温度が下がって硬化する際に、半田部材12の内部に気泡21が混ざる可能性がある。この気泡21の有無や大きさは、後述する超音波検査工程で検査される。
【0021】
次いで、半導体素子4にボンディングワイヤ5が取り付けられる(ワイヤボンディング工程)。具体的には、ボンディング装置25によって、回路基板2上にボンディングワイヤ5が配置される。すなわち、ボンディング装置25によって、ボンディングワイヤ5の他端が導電部9bに固定され、且つ、ボンディングワイヤ5の一端が半導体素子4の上面に固定される。これにより、図2(C)に示すように、ボンディングワイヤ5が回路基板2および半導体素子4に固定される。
【0022】
ワイヤボンディング工程の後は、図2(C)に示すように、樹脂が塗布される(樹脂塗布工程)。樹脂塗布工程は、真空ポンプ26等によって大気圧よりも低い気圧にされた減圧室27に回路基板2を置いた状態で行われる。回路基板2には、流動状態(例えば略液体状態)の合成樹脂40が、回路基板2の上面2aに塗布される。流動状態の合成樹脂40は、ガラス繊維が混ぜられたエポキシ樹脂等の合成樹脂である。
【0023】
流動状態の合成樹脂40は、回路基板2の上面2aの少なくとも一部(この実施形態においいて、略全面)、半田部材12および半導体素子4を覆うように塗布される。また、この流動状態の合成樹脂40は、ボンディングワイヤ5のうち、半導体素子4よりも上方にある逆U字状の上部5aが露出するように塗布される。流動状態の合成樹脂40が塗布される際、流動状態の合成樹脂40に気泡22が生じることがある。ただし、樹脂塗布工程が減圧室27で行われるので、この気泡22は、流動状態の合成樹脂40の内部から外部に逃げやすくされている。この気泡22の有無や大きさは、後述する超音波検査工程で検査される。
【0024】
次いで、回路基板2を減圧室27から取り出し、超音波検査を行う(超音波検査工程)。具体的には、図3(A)に示すように、超音波検査装置28を用いる。超音波検査装置28は、CPUやROM等を含む検査装置本体29と、検査装置本体29にケーブルを介して接続されたプローブ30と、検査装置本体29に接続されたモニタ31とを備えている。
【0025】
プローブ30の超音波印加部および超音波検出部としての先端部30aには、超音波検査に先立ち、流動状態の合成樹脂41が塗布されている。流動状態の合成樹脂41が塗布されたプローブ30は、まず、図3(B)に示すように配置される。すなわち、流動状態の合成樹脂40から露出していたボンディングワイヤ5の上部5aの上方で且つボンディングワイヤ5の近傍に、プローブ30が配置される。これにより、ボンディングワイヤ5の上部5aは、流動状態の合成樹脂41で埋められる。流動状態の合成樹脂41は、流動状態の合成樹脂40と一体になる。
【0026】
この状態で、プローブ30の先端部30aから流動状態の合成樹脂40に向けて超音波が印加され、さらに、先端部30aに向けてかえってきた超音波が先端部30aに検出される。これにより、ボンディングワイヤ5の上部5aの周辺部分における流動状態の合成樹脂40に気泡22が存在しているか否かが検査される。
次いで、流動状態の合成樹脂40に先端部30aを漬けた状態で、プローブ30を略水平に移動させる。これより、プローブ30を図4(A)に示すように配置する。すなわち、プローブ30の先端部30aがボンディングワイヤ5の一端、半導体素子4および半田部材12の上方に位置するように、プローブ30を配置する。この状態で、プローブ30の先端部30aから流動状態の合成樹脂40に向けて超音波が印加され、さらに、先端部30aに向けてかえってきた超音波が先端部30aに検出される。これにより、ボンディングワイヤ5の一端の周辺における流動状態の合成樹脂40に気泡22が存在しているか否が検査され、且つ、半田部材12に気泡21が存在しているか否かが検査される。
【0027】
上記の気泡21,22の検査は、例えば、以下のようにして行われる。すなわち、プローブ30の先端部30aで検出された超音波に関する信号は、検査装置本体29に出力され、検査本体で所定の処理が施される。その後、検査装置本体29からモニタ31に画像信号が出力される。これにより、流動状態の合成樹脂40の内部や半田部材12の内部が、画像としてモニタ31に映し出される。
【0028】
また、検査装置本体29では、前記画像信号に基づいて気泡21,22を上から見たときの面積をそれぞれ測定する。そして、測定した気泡21,22のそれぞれの面積が所定値未満(ゼロを含む)である場合には、良品であると判定し、所定値以上である場合には、不良品であると判定する。
半田部材12内の気泡21は、半導体素子4と半田部材12との接合面の近傍に集中する傾向にあり、半田部材12の実質的な厚みを薄くしてしまう。したがって、気泡21は、少ないほうが好ましい。
【0029】
また、流動状態の合成樹脂40内の気泡22は、流動状態の合成樹脂40が硬化した後において、気泡22の周辺の部分に応力集中が生じる原因となる。特に、ボンディングワイヤ5の周辺の気泡22は、ボンディングワイヤ5に高い応力が生じる原因となる。したがって、気泡22は少ないほうが好ましい。
なお、検査装置本体29のROM(Read Only Memory)に、回路基板2、半田部材12、半導体素子4およびボンディングワイヤ5の配置のデータを格納しておき、格納したデータを用いて、ボンディングワイヤ5や半導体素子4の周辺部分の気泡21,22の有無や大きさを判定してもよい。
【0030】
上記の検査において、半田部材12の内部の気泡21の面積が所定値以上であることにより不良品判定がされた場合には、図4(A)の回路基板ユニット1の製造中間体15は、廃棄される。一方、気泡21の面積は所定値未満であるけれども、流動状態の合成樹脂40の内部の気泡22の面積が所定値以上であることにより不良品判定がされた場合、図4(A)の製造中間体15には、気泡22を除去するための処理(気泡除去処理、再減圧工程)が施される。
【0031】
具体的には、製造中間体15を、図4(B)に示すように、再度、減圧室27に配置する。そして、真空ポンプ26によって、減圧室27内の圧力を、樹脂塗布工程(図2(C)参照)のときよりも低くする。これにより、図4(B)に示すように、流動状態の合成樹脂40の内部の気泡22が、流動状態の合成樹脂40の外部に向けて移動し、流動状態の合成樹脂40の内部の気泡22の少なくとも一部が除去される。
【0032】
その後、製造中間体15は、減圧室27から取り出され、図5(A)および図5(B)に示すように、再び超音波検査装置28によって検査される(再検査工程)。このときの検査の態様は、図3(B)および図4(A)に示す超音波検査工程と同様である。
図5(A)を参照して、再検査工程では、図3(B)の超音波検査のときと同様に、流動状態の合成樹脂41が塗布されたプローブ30を流動状態の合成樹脂40に挿すことで、超音波検査を行う。
【0033】
再検査の結果、流動状態の合成樹脂40の内部を上から見たときの気泡22の面積が所定値未満になったことが判定され、良品判定がなされると、図6(A)に示すように、製造中間体15の流動状態の合成樹脂40を熱硬化する(熱硬化工程)。具体的には、ヒータ32によって流動状態の合成樹脂40を所定の温度に加熱することで、硬化させる。これにより、流動状態の合成樹脂40が硬化して合成樹脂部材6になる。合成樹脂部材6によって、半導体素子4およびボンディングワイヤ5が封止され、回路基板ユニット1が完成する。
【0034】
図6(B)を参照して、前述のプローブ30の先端部30aには、製造中間体15を検査する毎に流動状態の合成樹脂41が塗布される。しかしながら、このプローブ30に流動状態の合成樹脂41を塗布したままでは、流動状態の合成樹脂41が乾燥等により硬化してしまうおそれがある。そこで、プローブ30の先端部30aの流動状態の合成樹脂41は、例えば、製造中間体15を所定数検査したときや、一定時間経過毎に、洗浄される。この洗浄は、ノズル33を用いたエア噴射によって行ってもよいし、水洗でもよいし、有機溶剤を用いた洗浄でもよい。
【0035】
以上説明したように、本実施形態によれば、超音波検査工程において、回路基板ユニット1の一部(合成樹脂部材6)を構成するための流動状態の合成樹脂40を媒質として用いて超音波検査を行うことができる。これにより、プローブ30の先端部30aを回路基板ユニット1の製造中間体15に伝えるための、専用の媒質を用意しなくてよい。したがって、超音波検査に関連して、専用の媒質を用意・除去する手間が不要であり、製造コストを低減できるとともに、製造に係る手間を少なくできる。
【0036】
さらに、回路基板ユニット1の製造中間体15を水に漬けて超音波検査する必要がないので、超音波検査の後の製造中間体15を完成させて、製品として用いることができる。したがって、回路基板ユニット1の製造中間体15の全数を検査する全数検査をすることができる。これにより、回路基板ユニット1の信頼性を向上できるとともに、製造コストをより低減できる。
【0037】
しかも、半導体素子4の実装状態(気泡21の有無)の検査と、流動状態の合成樹脂40に気泡22が存在しているかの検査とを一括して行うことができる。これにより、回路基板ユニット1の製造にかかる手間を少なくできる。その分、回路基板ユニット1の製造コストをより低減できる。
また、流動状態の合成樹脂40を用いて超音波検査を行った後、流動状態の合成樹脂40を硬化させることで、半導体素子4等を覆う合成樹脂部材6を形成できる。したがって、超音波検査に用いた流動状態の合成樹脂40をそのまま製品として利用することができる。
【0038】
また、樹脂塗布工程では、ボンディングワイヤ5の上部5aが露出するように流動状態の合成樹脂40が塗布される。これにより、樹脂塗布工程の後、流動状態の合成樹脂40からボンディングワイヤ5の上部5aが露出することとなる。したがって、この突出したボンディングワイヤ5の上部5aを目印にして、超音波検査を行う場所を容易に特定できる。
【0039】
また、プローブ30の先端部30aは、回路基板2上の流動状態の合成樹脂40に接触する前に、流動状態の合成樹脂41を塗布されている。これにより、プローブ30の先端部30aを回路基板2上の流動状態の合成樹脂40に挿し入れる際に、流動状態の合成樹脂40に気泡が入ることを抑制できる。また、樹脂塗布工程でボンディングワイヤ5の上部5aを目印として露出させているけれども、この上部5aを超音波検査の際に、流動状態の合成樹脂41で埋めることができる。したがって、露出した状態のボンディングワイヤ5の上部5aを埋めるための専用の工程が不要であり、回路基板ユニット1の製造工程をより少なくできる。
【0040】
本発明は、以上の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
例えば、合成樹脂部材6は、回路基板2の上面2aの一部を覆っているけれども、回路基板2の上面2aの全部を覆っていてもよい。また、合成樹脂部材6は、熱硬化性の樹脂を用いて形成されているけれども、これに限らない。合成樹脂部材6の材料は、硬化前の状態で超音波を伝達可能であればよい。
【0041】
また、超音波検査工程において、ボンディングワイヤ5と導電部9bとの接合部における気泡の有無、またはボンディングワイヤ5と導電部9bとの接合面積の大きさを検査してもよい。また、ボンディングワイヤ5と半導体素子4との接合部における気泡の有無、またはボンディングワイヤ5と半導体素子4との接合面積の大きさを検査してもよい。
また、樹脂塗布工程において、ボンディングワイヤ5の全部を流動状態の合成樹脂40で覆ってもよい。さらに、超音波検査工程において、流動状態の合成樹脂41が塗布されていないプローブ30の先端部30aを、流動状態の合成樹脂40に挿してもよい。
【0042】
さらに、素子として半導体素子4を例示したけれども、半導体素子4に代えて、ダイオード等の他の素子を用いてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…回路基板ユニット、2…回路基板、2a…上面(実装面)、4…半導体素子(素子)、5…ボンディングワイヤ(接続線)、5a…上部(接続線の一部)、30a…先端部(超音波印加部)、40,41…流動状態の合成樹脂。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板の実装面に実装された素子に流動状態の合成樹脂を塗布する樹脂塗布工程と、
前記流動状態の合成樹脂に超音波印加部を接触させた状態で超音波検査を行う超音波検査工程と、を備えることを特徴とする回路基板ユニットの製造方法。
【請求項2】
請求項1において、前記超音波検査が行われた後、前記流動状態の合成樹脂を硬化させる硬化工程を備えることを特徴とする回路基板ユニットの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2において、前記素子には、接続線が接続されており、
前記樹脂塗布工程では、前記接続線の一部が露出するように前記流動状態の合成樹脂を塗布することを特徴とする回路基板ユニットの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項において、前記超音波印加部は、前記流動状態の合成樹脂に接触される前に、流動状態の合成樹脂を塗布されていることを特徴とする回路基板ユニットの製造方法。
【請求項5】
回路基板の実装面に実装された素子に塗布された流動状態の合成樹脂に、超音波印加部を接触させて超音波検査を行うことを特徴とする超音波検査方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−237372(P2011−237372A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111106(P2010−111106)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】