回路基板
【課題】高電圧端子に液滴(インクなど)が付着したときに、高電圧端子からメモリー用端子の方に液滴が広がってしまうために過電圧検出端子よりも先にメモリー用端子に過電圧が印加されてしまう現象を防止する。
【解決手段】回路基板(200)は、記憶装置に接続された第1の端子(260)と、第1の端子に印加される電圧よりも高い電圧が印加される第2の端子(250)と、第3の端子(210)とを備える。第3の端子は第1の端子及び第2の端子に隣接して配置されており、印刷装置に設けられた過電圧検出部に接続される。第1の端子と第2の端子の間の基板表面上には凸部(PR)が設けられており、第2の端子から第1の端子に液滴が広がるよりも、第2の端子から第3の端子に液滴が広がり易いように構成されている。
【解決手段】回路基板(200)は、記憶装置に接続された第1の端子(260)と、第1の端子に印加される電圧よりも高い電圧が印加される第2の端子(250)と、第3の端子(210)とを備える。第3の端子は第1の端子及び第2の端子に隣接して配置されており、印刷装置に設けられた過電圧検出部に接続される。第1の端子と第2の端子の間の基板表面上には凸部(PR)が設けられており、第2の端子から第1の端子に液滴が広がるよりも、第2の端子から第3の端子に液滴が広がり易いように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に用いる印刷材カートリッジ用の回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、印刷材カートリッジとして、印刷材に関する情報(例えばインク残量)を格納する記憶装置を搭載したものが利用されている。例えば、特許文献1では、インクカートリッジに、記憶装置が設けられた基板が搭載されている。また、基板には、記憶装置に接続される端子(「メモリー用端子」とも呼ぶ)の他に、メモリー用端子よりも高い電圧が印加される高電圧端子と、高電圧端子との間の短絡を検出する端子(「短絡検出端子」又は「過電圧検出端子」と呼ぶ)とが設けられている。過電圧検出端子は、過度に高い電圧がメモリー用端子に印加されるのを未然に防止して、記憶装置の損傷を防止することを意図している。
【0003】
しかしながら、高電圧端子に液滴(インクなど)が付着したときに、高電圧端子からメモリー用端子の方に液滴が広がってしまい、過電圧検出端子で過電圧を検出できない場合があった。すなわち、従来の回路基板の構成では、過電圧検出端子の機能を十分に活用することができず、過電圧検出端子よりも先にメモリー用端子に過度に高い電圧が印加されてしまう場合があった。
【0004】
なお、上述の各種の問題は、インクカートリッジ用の回路基板に限らず、他の種類の印刷材(例えば、トナー)が収容された印刷材カートリッジ用の回路基板についても同様であった。さらに、印刷材以外の他の種類の液体を噴射する液体噴射装置及びそのための液体収容容器(液体収容体)で使用される回路基板についても同様の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−228464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高電圧端子に液滴(インクなど)が付着したときに、高電圧端子からメモリー用端子の方に液滴が広がってしまうために過電圧検出端子よりも先にメモリー用端子に過電圧が印加されてしまう現象を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
第1〜第3の装置側端子と過電圧検出部とを有する印刷装置に、電気的に接続可能な回路基板であって、
記憶装置と、
前記記憶装置に接続され、前記第1の装置側端子と接触する第1の端子と、
前記第1の端子に印加される電圧よりも高い電圧が印加され、前記第2の装置側端子と接触する少なくとも1つの第2の端子と、
各々が前記第3の装置側端子と接触する2つの第3の端子と、
前記2つの第3の端子を接続する配線と、を備え、
前記第3の端子は、前記第1の端子及び前記第2の端子の隣に配置されており、
前記第3の端子は、前記第3の装置側端子を介して前記過電圧検出部に接続される端子であり、
前記第1の端子と前記第2の端子との間に、前記配線が配置されている、回路基板。
この構成によれば、第2の端子(高電圧端子)に液滴が付着したときにも、第1の端子(メモリー用端子)と第2の端子(高電圧端子)との間に設けられた配線が液滴の障壁として機能するので、液滴の広がりが防止される。従って、第3の端子(過電圧検出端子)よりも先に第1の端子(メモリー用端子)に過電圧が印加されてしまう現象の発生の可能性を低下させることができる。
【0009】
[適用例2]
適用例1記載の回路基板であって、
前記回路基板は、さらに、レジスト被膜を含み、
前記配線上に前記レジスト被膜が配置されている、回路基板。
この構成によれば、配線とレジストとが液滴の障壁として機能するので、液滴の障壁の機能を高めることができる。
【0010】
[適用例3]
適用例2に記載の回路基板であって、
前記第1の端子は複数設けられており、
前記第2の端子は2つ設けられており、
前記第1ないし第3の端子は、第1列と第2列を構成するように配置されており、
前記2つの第2の端子は、前記第2列の両端に配置されており、
前記2つの第3の端子は、前記第1列の両端に配置されており、
前記配線は前記第2列の前記2つの第2の端子の各々と前記第2列の前記第1の端子の間に配置される、回路基板。
【0011】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、印刷材カートリッジ、複数種類の印刷材カートリッジで構成された印刷材カートリッジセット、カートリッジアダプター、複数種類のカートリッジアダプターで構成されたカートリッジアダプターセット、回路基板、印刷装置、液体噴射装置、印刷装置とカートリッジとを備える印刷材供給システム、液体噴射装置とカートリッジとを備える液体供給システム、カートリッジや回路基板の装着状態の検出方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】基板の一実施形態を示す図。
【図2】過電圧検出端子と高電圧端子とメモリー用端子を示す斜視図。
【図3】基板の他の実施形態を示す図。
【図4】本発明による印刷システムの第1実施形態における印刷装置の構成を示す斜視図。
【図5】インクカートリッジの構成を示す斜視図。
【図6A】カートリッジ装着部の構成を示す図。
【図6B】カートリッジ装着部の構成を示す図。
【図6C】カートリッジ装着部の構成を示す図。
【図7】カートリッジ装着部内にインクカートリッジが装着された状態を示す概念図。
【図8】印刷システムの第1実施形態における基板の構成を示す図。
【図9】印刷システムの第1実施形態におけるインクカートリッジの基板と印刷装置の電気的構成を示すブロック図。
【図10】印刷システムの第1実施形態におけるセンサー関連処理回路の内部構成を示す図。
【図11】印刷システムの第1実施形態における接触検出部及び液量検出部と、カートリッジのセンサーとの接続状態を示すブロック図。
【図12】装着検出処理で使用される各種の信号を示すタイミングチャート。
【図13】接触不良がある場合の典型的な信号波形を示すタイミングチャート。
【図14】過電圧検出端子とセンサー端子がリーク状態にある場合の典型的な信号波形を示すタイミングチャート。
【図15】基板と接触検出部と検知パルス発生部と非接触状態検出部との接続状態の等価回路を示す図。
【図16】非接触状態検出部内に設けられるリーク判定部の構成例を示すブロック図。
【図17】4つのカートリッジに対する装着検出処理を示すタイミングチャート。
【図18】液量検出処理のタイミングチャート。
【図19】装着検出処理で使用される信号の他の例を示すタイミングチャートである。
【図20】印刷システムの第2実施形態における基板の構成を示す図。
【図21】印刷システムの第2実施形態におけるインクカートリッジと印刷装置の電気的構成を示すブロック図。
【図22】印刷システムの第2実施形態におけるカートリッジ検出回路の内部構成を示す図。
【図23】印刷システムの第2実施形態におけるカートリッジの装着検出処理の内容を示す説明図。
【図24】印刷システムの第2実施形態における個別装着電流値検出部の内部構成を示す図。
【図25】印刷システムの第2実施形態における装着検出処理の全体手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
A.回路基板の実施形態:
図1(A)は、本発明の一実施形態における回路基板200の表面の構成を示している。以下では、回路基板を単に「基板」とも呼ぶ。この基板200は、インクカートリッジ(後述)に装着されるものである。基板200の表面は、インクカートリッジに基板200が装着されたときに外側に露出している面である。基板200の上端部には、ボス溝201が形成され、基板200の下端部には、ボス穴202が形成されている。
【0014】
図1(A)における矢印SDは、印刷装置に設けられたカートリッジ装着部(後述)へのカートリッジの装着方向を示している。基板200の裏面には、記憶装置(図示省略)が設けられており、表面には9つの端子210〜290からなる端子群が設けられている。これらの端子210〜290は、印刷装置に設けられた装置側端子とそれぞれ接触する端子として使用される。なお、端子210〜290を「接触端子」とも呼ぶ。基板200に設けられる記憶装置は、例えば、カートリッジ100のインクに関する情報(例えばインク残量)を格納するために使用される。端子210〜290は、略矩形状に形成され、装着方向SDと略垂直な列を2列形成するように配置されている。2つの列のうち、装着方向SDの手前側の列(図1(A)における上側に位置する列)を上側列R1(第1列)と呼び、装着方向SDの奥側の列(図1(A)における下側に位置する列)を下側列R2(第2列)と呼ぶ。なお、これらの列R1,R2は、複数の端子の装置側端子と接触する接触部cpによって形成される列であると考えることも可能である。
【0015】
一実施形態において、上側列R1を形成する端子210〜240と、下側列R2を形成する端子250〜290は、それぞれ以下の機能(用途)を有する。
<上側列R1>
(1)過電圧検出端子210
(2)メモリー用端子220(リセット端子)
(3)メモリー用端子230(クロック端子)
(4)過電圧検出端子240
<下側列R2>
(5)高電圧端子250
(6)メモリー用端子260(電源端子)
(7)メモリー用端子270(接地端子)
(8)メモリー用端子280(データ端子)
(9)高電圧端子290
【0016】
5つのメモリー用端子220,230,260,270,280は、基板200に設けられた記憶装置に接続された端子である。但し、これらの複数のメモリー用端子にどのような機能(用途)を割り当てるかは任意である。2つの高電圧端子250,290は、メモリー用端子よりも高い電圧が印加される端子である。これらの高電圧端子250,290は、基板200に設けられた高電圧デバイス(記憶装置よりも高い電圧で動作するデバイスもしくは記憶装置よりも高い電圧が印加されるデバイス)に接続されている。高電圧デバイスの例については後述する。
【0017】
過電圧検出端子210(又は240)は、高電圧端子250(又は290)と過電圧検出端子210(又は240)との間の意図しない短絡によって過電圧検出端子210(又は240)に生じる過度に高い電圧(「過電圧」と呼ぶ)を検出するための端子である。過電圧は、本来、装置側端子から過電圧端子に印加される電圧よりも高い電圧である。過電圧検出端子210(又は240)は、高電圧端子250(又は290)と少なくとも1つのメモリー用端子260(又は280)の両方に隣接する位置に配置されている。また、過電圧検出端子210,240は、印刷装置に設けられた過電圧検出部(後述)に接続される。
【0018】
複数の端子210〜290のそれぞれは、その中央部に、印刷装置に設けられた複数の装置側端子のうちの対応する端子と接触する接触部cpを含んでいる。上側列R1を形成する端子210〜240の各接触部cpと、下側列R2を形成する端子250〜290の各接触部cpは、互い違いに配置され、いわゆる千鳥状の配置を構成している。また、上側列R1を形成する端子210〜240と、下側列R2を形成する端子250〜290も、互いの端子中心が装着方向SDに並ばないように、互い違いに配置され、千鳥状の配置を構成している。
【0019】
上側列R1の2つの過電圧検出端子210,240及びその接触部は、上側列R1の両端部、すなわち、上側列R1の最も外側にそれぞれ配置されている。また、下側列R2の2つの過電圧検出端子250,290及びその接触部は、下側列R2の両端部、すなわち、下側列R2の最も外側にそれぞれ配置されている。メモリー用端子220、230、260、270、280及びその接触部は、複数の端子210〜290の全体が配置されている領域内の略中央に集合して配置されている。
【0020】
図1(B)は、基板200の絶縁基材190の表面に形成された導体パターンの一例を示している。ここでは、図1(A)に示した9つの端子210〜290の他に、導体で形成された配線CPTと、7つのスルーホールTH220,TH230,TH250,TH260,TH270,TH280,TH290とが形成されている。これらの7つのスルーホールは、配線CPTによっていずれかの端子と接続されている。各スルーホールに付された符号の末尾の3桁の数字は、各スルーホールに接続されている端子を表している。例えば、図1(B)の左上に存在するスルーホールTH220は、端子220と接続されている。各スルーホールは、絶縁基材190を貫通して、基板表面の配線と基板裏面の配線を電気的に接続する。各スルーホールの裏面側にも配線や端子が形成されており、これらの配線や端子を介して記憶装置や高電圧デバイスが接続されている。
【0021】
図1(B)において、2つの過電圧端子210,240は、基板200の表面(厳密に言えば絶縁基材の表面)に形成された配線CPTaによって接続されている。より具体的に言えば、配線CPTaは、第1の過電圧端子210の下端(挿入方向の先端)から下方(挿入方向)に延び、第1の高電圧端子250とメモリー用端子260との間を通って基板200の下端に達し、更に、基板200の下端(挿入方向の先端)から上方(挿入方向と逆方向)に延びて第2の高電圧端子290とメモリー用端子280との間を通り、第2の過電圧端子240に達している。即ち、挿入方向とほぼ垂直の方向で隣り合う第1の高電圧端子250とメモリー用端子260との間、また、挿入方向とほぼ垂直の方向で隣り合う第2の高電圧端子290とメモリー用端子280との間に配線CPTaが位置している。
【0022】
図1(C)は、図1(B)の導体パターンの上にレジスト被膜RC1,RC2が形成された状態を示している。図1(A)に示した9つの端子210〜290は、印刷装置に設けられた装置側端子とそれぞれ接触する端子として使用されるので、レジスト被膜RC1.RC2で覆われない状態に維持されている。図1(C)の状態では、9つの端子210〜290を含む1つの領域にわたって1つのレジスト開口部NRC(レジスト被膜が存在しない領域)が形成されている。また、このレジスト開口部NRCを挟んで、上部のレジスト被膜RC1と下部のレジスト被膜RC2が互いに分離されている。上部のレジスト被膜RC1の下端は櫛歯状に形成されており、その櫛歯と端子210〜240が1つずつ交互に配置されている。また、下部のレジスト被膜RC2の上端も櫛歯状に形成されており、その櫛歯と端子250〜290が1つずつ交互に配置されている。なお、基板200の表面のうち、9つの端子210〜290以外の領域をすべてレジスト被膜で覆うようにしてもよい。
【0023】
図2(A)は、図1(C)における過電圧検出端子210と高電圧端子250とメモリー用端子260を示す斜視図である。図1(C)で説明したように、過電圧端子210に接続された配線CPTaの上にはレジスト被膜RC2が形成されている。図2(B)は、高電圧端子250と、これに隣接するメモリー用端子260と、これらの端子250、260の間に設けられた配線CPTa及びレジスト被膜RC2の高さの関係を示す断面図である。一実施形態では、絶縁基材190の表面から測定した端子210,260の高さ(厚み)、及び、配線CPTaの高さ(厚み)はいずれも約30μmに設定される。また、レジスト被膜RC2の高さ(厚み)は約20μmに設定される。このとき、配線CPTaとレジスト被膜RC2とが重なる凸部PRの高さは、約40μmとなる。凸部PRの高さが配線CPTaの高さとレジスト被膜RC2の高さの合計にならない理由は、液体状のレジストを塗布したときに、配線CPTaを覆うレジスト液の厚みが小さくなってしまうためである。この場合にも、配線CPTaとレジスト被膜RC2とが重なる凸部PRは、液滴の障壁として機能するので、インクなどの液滴が高電圧端子250からメモリー用端子260に広がる現象を防止することができる。従って、高電圧端子250に液滴が付着した場合にも、高電圧端子250からメモリー用端子260にその液滴が広がって端子250,260間に短絡が生じ、メモリー用端子260に、記憶装置の動作電圧の絶対最大定格よりも高い電圧が印加されることを防止できる。なお、このような凸部PRの効果を「ダム効果」とも呼ぶ。
【0024】
図2(C)は、高電圧端子250と、これに隣接する過電圧検出端子210の高さの関係を示す断面図である。図1(C)でも説明したように、高電圧端子250と過電圧検出端子210は、絶縁基材190の表面上にレジスト被膜が形成されていないレジスト開口部NRC内に配置されている。これらの端子250,210の間には、図2(B)で示したような凸部PRが存在しない。図2(C)と図2(B)とを比較すれば理解できるように、仮に高電圧端子250に液滴が付着すると、その液滴は、高電圧端子250からメモリー用端子260にその液滴が広がるよりも、高電圧端子250から過電圧端子210により広がりやすい構成となっている。従って、メモリー用端子260に記憶装置の動作電圧の絶対最大定格よりも高い電圧が印加されるよりも前の時点で、過電圧検出端子210で過電圧を先に検出できる可能性が高いので、高い電圧により記憶装置が損傷する可能性を低減できる。
【0025】
なお、2つの過電圧端子210,240は配線CPTaにより短絡接続されており、図2(B)に示した凸部PRは、この配線CPTa上にレジスト被膜RC2が形成されたものである。このように、図1及び図2に示した実施形態では、2つの過電圧端子210,240を短絡接続するための配線CPTaを利用して、ダム効果を有する凸部PRを形成している。従って、凸部PRを形成するための特別な構造(本来は不要な導体パターンなど)を設ける必要が無いという利点がある。但し、凸部PRを形成するために、いずれの端子にも接続されていない導体を端子250,260の間及び端子280,290の間にそれぞれ設けるようにしてもよい。
【0026】
図3(A)は、回路基板の他の実施形態を示している。図3(A)の基板200pは、図1(C)における配線CPTa(過電圧検出端子210,240間の接続配線)を省略し、この代わりに、過電圧検出端子210,240用のスルーホールTH210,TH240を設けたものである。過電圧検出端子210,240は、これらのスルーホールTH210,TH240を介して基板の裏面に形成された配線(図示省略)を介して接続される。この場合には、高電圧端子250とメモリー用端子260との間の凸部PRaは、レジスト被膜RC2のみで構成されている。従って、この凸部PRaは、図2(B)に示した凸部PR(配線CPTaとレジスト被膜RC2とを含む)よりも高さが低く、液滴の障壁としての機能もやや低いものである。しかしながら、図3(A)の基板200pにおいても、高電圧端子250に液滴が付着したときに、その液滴が、高電圧端子250からメモリー用端子260にその液滴が広がるよりも、高電圧端子250から過電圧端子210により広がりやすい構成となっている点で図1(C)に示した基板と共通している。
【0027】
図3(B)は、回路基板の更に他の実施形態を示している。図3(B)の基板200qは、図1(C)における過電圧検出端子210(又は240)と高電圧端子250(又は290)の間にも、レジスト被膜RCsを設けた構成を有している。この基板200qでは、図2(C)と異なり、過電圧検出端子210と高電圧端子250の間にレジスト被膜RCsが存在する。しかし、このレジスト被膜RCsの高さは、図2(B)に示した凸部PRよりも低い。従って、図3(B)の基板200qにおいても、高電圧端子250に液滴が付着したときに、その液滴が、高電圧端子250からメモリー用端子260にその液滴が広がるよりも、高電圧端子250から過電圧端子210により広がりやすい構成となっている点で図1(C)に示した基板と共通している。この例から理解できるように、過電圧検出端子210(又は240)と高電圧端子250(又は290)の間に絶縁基材190の表面から突出した凸部(例えばレジスト被膜RCs)が存在する場合には、この凸部よりも、高電圧端子250(又は290)とメモリー用端子260(又は280)との間の凸部PRの方が高さがより大きいことが好ましい。
【0028】
図3(C)は、回路基板の更に他の実施形態を示している。図3(C)の基板200rは、図3(A)におけるレジスト被膜の凸部PRaの代わりに、別の凸部PRbを設けた構成を有している。この凸部PRbは、レジスト被膜のような非導電性材料で形成されていてもよく、あるいは、端子や配線のような導電性材料で形成されていてもよい。なお、凸部PRbを導電性材料で形成する場合には、この凸部PRbをメモリー用端子と短絡接続しないことが好ましいが、過電圧検出端子と接続しても良い。また、凸部PRbを導電性材料で形成する場合には、端子210〜290を絶縁基材190に形成する工程と同工程にて凸部PRbを形成してもよい。この基板200rにおいても、高電圧端子250に液滴が付着したときに、その液滴が、高電圧端子250からメモリー用端子260にその液滴が広がるよりも、高電圧端子250から過電圧端子210により広がりやすい構成となっている点で図1(C)に示した基板と共通している。
【0029】
これらのいくつかの例からも理解できるように、回路基板としては、メモリー用端子(第1の端子)と高電圧端子(第2の端子)の間の基板表面上に凸部が設けられており、これによって、高電圧端子(第2の端子)に液滴が付着した場合に、高電圧端子(第2の端子)からメモリー用端子(第1の端子)に液滴が広がるよりも、高電圧端子(第2の端子)から過電圧検出端子(第3の端子)に液滴が広がり易いように構成された任意の回路基板を採用することが可能である。なお、メモリー用端子(第1の端子)と高電圧端子(第2の端子)の間に形成される凸部は、その表面が非導電性であることが好ましい。また、高電圧端子(第2の端子)と過電圧検出端子(第3の端子)との間に何らかの凸部が存在する場合には、この凸部よりも、メモリー用端子(第1の端子)と高電圧端子(第2の端子)との間に設けられた凸部の方が高さがより大きいことが好ましい。
【0030】
なお、基板上の端子や配線の個数や配列は、図1〜図3に示したものから任意に変更可能である。但し、基板には、少なくとも1つのメモリー用端子と、少なくとも1つの高電圧端子と、少なくとも1つの過電圧検出端子を設けることが好ましい。この場合においても、過電圧検出端子は、高電圧端子とメモリー用端子の両方に隣接する位置に配置されていることが好ましい。なお、以下で説明する印刷システムの実施形態では、基板の端子配列の具体例を説明しているが、配線パターンやスルーホール、レジスト被膜などについては図示及び説明を省略する。
【0031】
B.印刷システムの第1実施形態:
図4は、本発明による印刷システムの一実施形態における印刷装置の構成を示す斜視図である。印刷装置1000は、インクカートリッジが装着されるカートリッジ装着部1100と、回動自在なカバー1200と、操作部1300とを有する。この印刷装置1000は、ポスターなどの大判の用紙(A2〜A0サイズ等)に印刷を行う大型のインクジェットプリンター(Large Format Ink Jet Printer)である。カートリッジ装着部1100を「カートリッジホルダー」又は単に「ホルダー」とも呼ぶ。図4に示す例では、カートリッジ装着部1100には、4つのインクカートリッジが独立に装着可能であり、例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4種類のインクカートリッジが装着される。なお、カートリッジ装着部1100に装着されるインクカートリッジとしては、これ以外の任意の複数種類のインクカートリッジを採用可能である。図4には、説明の便宜上、互いに直交するXYZ軸が描かれている。+X方向は、インクカートリッジ100がカートリッジ装着部1100に挿入される方向(以下、「挿入方向」又は「装着方向」と呼ぶ)である。カートリッジ装着部1100には、カバー1200が開閉可能に取り付けられている。カバー1200は省略可能である。操作部1300は、ユーザーが各種の指示や設定を行うための入力装置であり、また、ユーザーに各種の通知を行うための表示部を備えている。なお、この印刷装置1000は、印刷ヘッドや、印刷ヘッドの走査を行うための主走査送り機構及び副走査送り機構、印刷ヘッドを駆動してインクを吐出させるヘッド駆動機構等を有しているが、ここでは図示を省略する。この印刷装置1000のように、ユーザーにより交換されるカートリッジが、印刷ヘッドのキャリッジ以外の場所に設けられたカートリッジ装着部に装着される印刷装置のタイプを、「オフキャリッジタイプ」と呼ぶ。
【0032】
図5は、インクカートリッジ100の外観を示す斜視図である。図5のXYZ軸は、図4のXYZ軸に対応している。なお、インクカートリッジを単に「カートリッジ」とも呼ぶ。このカートリッジ100は、扁平な略直方体の外観形状を有しており、3方向の寸法L1,L2,L3のうちで、長さL1(挿入方向のサイズ)が最も大きく、幅L2が最も小さく、高さL3が長さL1と幅L2の中間である。但し、印刷装置のタイプによっては、長さL1が高さL3よりも小さいカートリッジも存在する。
【0033】
カートリッジ100は、先端面(第1の面)Sfと、後端面(第2の面)Srと、天井面(第3の面)Stと、底面(第4の面)Sbと、2つの側面(第5及び第6の面)Sc,Sdとを備えている。先端面Sfは、挿入方向Xの先頭に位置する面である。先端面Sfと後端面Srは、6つの面のうちで最も小さく、互いに対向している。先端面Sfと後端面Srのそれぞれは、天井面Stと底面Sbと2つの側面Sc,Sdとに交わっている。カートリッジ100がカートリッジ装着部1100に装着された状態では、天井面Stが鉛直方向の上端に位置し、底面Sbが鉛直方向の下端に位置する。2つの側面Sc,Sdは、6つの面の中で最も大きな面であり、互いに対向している。カートリッジ100の内部には、可撓性材料で形成されたインク収容室120(「インク収容袋」とも呼ぶ)が設けられている。インク収容室120は、可撓性材料で形成されているので、インクが消費されてゆくにつれて次第に収縮し、主に厚み(Y方向の幅)が小さくなってゆく。
【0034】
先端面Sfは、2つの位置決め穴131,132と、インク供給口110とを有している。2つの位置決め穴131,132は、カートリッジ装着部1100内におけるカートリッジの収容位置を定めるために用いられる。インク供給口110は、カートリッジ装着部1100のインク供給管と接続されて、カートリッジ100内のインクを印刷装置1000に供給する。天井面Stには、回路基板200が設けられている。図5の例では、回路基板200は、天井面Stの先端(挿入方向Xの最も奥側の端部)に設けられている。但し、回路基板200は、天井面Stの先端近傍の他の位置に設けても良く、さらに、天井面St以外の位置に設けても良い。回路基板200には、インクに関する情報を格納するための不揮発性の記憶装置が搭載されている。なお、回路基板200を単に「基板」とも呼ぶ。底面Sbは、カートリッジ100を収容位置に固定するために用いられる固定溝140を有している。第1の側面Scと第2の側面Sdは互いに対向しており、また、先端面Sf,天井面St、後端面Sr,及び,底面Sbと直交する。第2の側面Sdと先端面Sfが交わる位置には、凹凸嵌合部134が配置されている。この凹凸嵌合部134は、カートリッジ装着部1100の凹凸嵌合部と共に、カートリッジの誤装着を防止するために用いられる。
【0035】
このカートリッジ100は、大型インクジェットプリンター用のカートリッジであり、個人向けの小型インクジェットプリンター用のカートリッジに比べて、カートリッジ寸法が大きく、また、収容されているインク量も多い。例えば、カートリッジの長さL1は、大型インクジェットプリンター用のカートリッジでは100mm以上であるのに対して、小型インクジェットプリンター用のカートリッジでは70mm以下である。また、未使用時のインク量は、大型インクジェットプリンター用のカートリッジでは17ml以上(典型的には100ml以上)であるのに対して、小型インクジェットプリンター用のカートリッジでは15ml以下である。また、多くの場合に、大型インクジェットプリンター用のカートリッジは、先端面(挿入方向の先頭の面)においてカートリッジ装着部と機械的に連結されるのに対して、小型インクジェットプリンター用のカートリッジでは底面においてカートリッジ装着部と機械的に連結される。大型インクジェットプリンター用のカートリッジでは、このような寸法、重量、又は、カートリッジ装着部との連結位置に関する特徴点に起因して、小型インクジェットプリンター用のカートリッジに比べて回路基板200の端子における接触不良が発生し易い傾向にある。この点については更に後述する。
【0036】
ところで、従来は、カートリッジに設けられている多数の端子のうちの1つ又は2つの端子を用いて装着状態の検出が行われるのが普通であった。しかし、カートリッジが正しく装着されていることが検出された場合にも、装着検出に使用されていない他の端子については、印刷装置の端子との接触が不十分な場合がある。特に、記憶装置用の端子の接触が不十分な場合には、記憶装置からのデータの読み出し時や記憶装置へのデータの書き込み時にエラーが発生するという問題が生じる。
【0037】
このような端子の接触不良の問題は、ポスターなどの大判の用紙(A2〜A0サイズ等)に印刷を行う大型インクジェットプリンター用のインクカートリッジにおいて特に重要である。すなわち、大型インクジェットプリンターでは、インクカートリッジの寸法が小型インクジェットプリンターに比べて大きく、また、カートリッジに収容しているインク重量も多い。発明者らは、このような寸法及び重量の違いから、大型インクジェットプリンターでは、小型インクジェットプリンターに比べてインクカートリッジが傾き易い傾向にあることを見いだした。また、大型インクジェットプリンターでは、インクカートリッジとカートリッジホルダー(「カートリッジ装着部」とも呼ぶ)との連結位置がインクカートリッジの側面に設けられていることが多く、一方、小型インクジェットプリンターではインクカートリッジの底面に連結位置が設けられていることが多い。このような連結位置の相違点からも、大型インクジェットプリンターは、小型インクジェットプリンターに比べてインクカートリッジが傾き易い傾向にあることが判明した。このように、大型インクジェットプリンターでは、種々の構成に起因して、小型インクジェットプリンターに比べてインクカートリッジが傾き易く、この結果、基板の端子における接触不良が発生し易い傾向にある。そこで、発明者らは、特に大型インクジェットプリンターに関して、記憶装置用の端子の接触状態が良好であることをより確実に検出したいという要望を持つに至ったものである。
【0038】
図6A〜図6Cは、カートリッジ装着部1100の構成を示す図である。図6Aは、カートリッジ装着部1100を斜め後方から見た斜視図であり、図6Bは、カートリッジ装着部1100の内部を、その正面(カートリッジを挿入する口)から見た図である。図6Cは、カートリッジ装着部1100の内部を断面から見た図である。なお、図6A〜図6Cでは、図示の便宜上、一部の壁部材などを省略している。図6A〜図6CのXYZ軸は図4,図5のXYZ軸に相当する。カートリッジ装着部1100は、カートリッジを収容するための4つの収容スロットSL1〜SL4を備えている。図6Bに示すように、カートリッジ装着部1100の内部には、1スロット毎に、インク供給管1180と、一対の位置決めピン1110,1120と、凹凸嵌合部1140と、接点機構1400とが設けられている。図6Cに示すように、インク供給管1180と、一対の位置決めピン1110,1120と、凹凸嵌合部1140は、カートリッジ装着部の奥壁部材1160に固定されている。インク供給管1180と、位置決めピン1110,1120と、凹凸嵌合部1140とは、スライダー部材1150に設けられた貫通孔1181,1111,1121,1141に挿入され、カートリッジの装着方向とは逆向きに突出して配置されている。図6Aは、奥壁部材1160をはずして、スライダー部材1150を裏側からみた図である。図6Aでは、位置決めピンを省略して図示している。図6Aに示すように、スライダー部材1150の裏側には、一対の位置決めピン1110,1120に対応した一対の付勢バネ1112,1122が設けられている。図6Cに示すように、一対の付勢バネ1112,1122は、スライダー部材1150と奥壁部材1160に固定して配置されている。
【0039】
インク供給管1180は、カートリッジ100のインク供給口110(図5(A))に挿入されて、インクを印刷装置1000内部の印刷ヘッドに供給するために用いられる。位置決めピン1110,1120は、カートリッジ100がカートリッジ装着部1100に挿入される際に、カートリッジ100に設けられた位置決め穴131,132に挿入されて、カートリッジ100の収容位置を定めるために用いられる。凹凸嵌合部1140は、カートリッジ100の凹凸嵌合部134の形状に対応する形状を有しており、各収容スロットSL1〜SL4毎に異なる形状を有している。これにより、各収容スロットSL1〜SL4には、予め決定された一種類のインクを収容するカートリッジのみが収容可能となり、他の色のカートリッジは収容できないこととなる。
【0040】
各収容スロットの奥の壁面に配置されたスライダー部材1150は、カートリッジの装着方向(X方向)及び排出方向(−X方向)にスライド可能に構成されている。各収容スロットに設けられた一対の付勢バネ1112,1122(図6A)は、スライダー部材1150を排出方向に付勢している。カートリッジ100は、収容スロットに挿入される際に、スライダー部材1150とともに一対の付勢バネ1112,1122を装着方向に押してゆき、付勢バネ1112,1122の付勢力に抗しつつ押し込まれる。従って、カートリッジ100は、カートリッジ装着部1100に収容された状態において、一対の付勢バネ1112,1122によって排出方向に付勢される。また、この収容状態では、各収容スロットSL1〜SL4の底部に設けられた固定部材1130(図6B)が、カートリッジ100の底面Sbに設けられた固定溝140(図5(A))に係合する。この固定部材1130と固定溝140の係合によって、付勢バネ1112,1122の付勢力によりカートリッジ100がカートリッジ装着部1100から排出されてしまうことが防止される。
【0041】
カートリッジ100を排出する場合には、ユーザーによりカートリッジ100が一旦装着方向に押し込まれると、これに応じて固定部材1130と固定溝140との間の係合が外れる。この結果、カートリッジ100は、一対の付勢バネ1112,1122の付勢力により排出方向(−X方向)に押し出される。従って、ユーザーはカートリッジ100をカートリッジ装着部1100から容易に取り出すことができる。
【0042】
接点機構1400(図6B)は、カートリッジ100がカートリッジ装着部1100に挿入された場合に、回路基板200の端子210〜290(図1)と接触して導通する複数の装置側端子を有する。印刷装置1000の制御回路は、この接点機構1400を介して、回路基板200との間で信号の送受信を行う。
【0043】
図7(A)は、カートリッジ装着部1100内にカートリッジ100が適正に装着された状態を示している。この状態では、カートリッジ100は傾いておらず、その上面や底面がカートリッジ装着部1100の上端部材や下端部材と平行な状態にある。カートリッジ装着部1100のインク供給管1180は、カートリッジ100のインク供給口110に連結され、カートリッジ装着部1100の位置決めピン1110,1120は、カートリッジ100の位置決め穴131,132に挿入される。さらに、カートリッジ装着部1100の底部に設けられた固定部材1130は、カートリッジ100の底面に設けられた固定溝140に係合する。そして、カートリッジの先端面Sfが、カートリッジ装着部1100の一対の付勢バネ1112,1122によって排出方向に付勢されている。カートリッジ100が適正に装着された状態では、カートリッジ装着部1100の接点機構1400と、カートリッジ100の基板200の端子210〜290(図1)とが互いに良好な接触状態で接触する。
【0044】
ところで、カートリッジ装着部1100は、カートリッジ100の装着を容易にするために、その内部に多少の遊びがある。このため、カートリッジ100は、図7(A)に示すような傾いていない正立した適正な状態で収納されるとは限らず、カートリッジの幅方向(Y方向)に平行な軸を中心として傾く場合がある。具体的には、図7(B)に示すようにカートリッジの後端がやや下がった状態に傾斜したり、逆に、図7(C)に示すようにカートリッジの後端がやや上がった状態に傾斜したりする場合が生じる。特に、インクが消費されてゆき、インク界面LLが低下してくると、収容されているインク重量の変化に応じた重心の変化や、付勢バネ1112,1122による付勢力とインク重量を含むカートリッジ重量とのバランスが変化する。そして、この重量バランスの変化に応じてカートリッジが傾きやすくなる傾向がある。カートリッジが傾くと、カートリッジの基板200に設けられた複数の端子の中のいくつかの端子に接触不良が発生する可能性がある。特に、図7(B),(C)の状態では、基板200(図1)の上側列R1の端子群210〜240と、下側列R2の端子群250〜290のうちの一方の1つ以上の端子に接触不良が発生する可能性がある。
【0045】
また、カートリッジが傾く際には、図7(B),(C)とは垂直な方向の傾き(装着方向Xに平行な軸を中心とした傾き)も併せて発生する場合がある。このときには、図1に示す基板200も、その装着方向SDに平行な軸を中心として左右に傾き、基板200の左側にある端子群210,220,250,260と、右側にある端子230,240,280,290群と、のうちの一方の1つ以上の端子に接触不良が発生する可能性がある。
【0046】
このような接触不良が発生すると、カートリッジの記憶装置203と印刷装置1000との間の信号の送受信を正常に行うことができないという不具合が生じる。また、インク滴やほこりなどの異物が基板200の端子付近に付着すると、端子同士に意図しない短絡やリークが発生する場合もある。以下で説明する各種の実施形態における装着状態の検出処理では、このようなカートリッジの傾きに起因する接触不良を検出したり、異物に起因する意図しない短絡やリークを検出したりするために実行される。
【0047】
ところで、大型のインクジェットプリンター用のカートリッジは、個人向けの小型のインクジェットプリンター用のカートリッジと比較して、以下のような特徴点を有している。
(1)カートリッジ寸法が大きい(長さL1が100mm以上)。
(2)収容されているインク量が多い(17ml以上であり、典型的には100mL以上である)。
(3)先端面(装着方向の先頭の面)においてカートリッジ装着部と機械的に連結される。
(4)インク収容室内の空間が区切られておらず、単一のインク収容室(インク収容袋)を構成している。
大型インクジェットプリンターの種類によっては、これらの特徴点(1)〜(4)のうちのいくつかを有さないカートリッジも利用されるが、これらのうちの少なくとも1つの特徴点を有するものが普通である。
【0048】
大型インクジェットプリンター用のカートリッジでは、このような寸法、重量、カートリッジ装着部との連結位置、又はインク室構成の特徴点を有するために、小型インクジェットプリンター用のカートリッジに比べてカートリッジが傾き易く、この結果、基板200の端子における接触不良が発生し易い傾向にある。従って、特に大型インクジェットプリンター及びそのカートリッジについて、以下で説明するような端子の接触不良、意図しない短絡、リーク等の検出処理を行う意義が大きいものと考えられる。
【0049】
図8は、印刷システムの第1実施形態における基板200aの構成を示す図である。端子210〜290の配列は、図1(A)に示したものと同じである。但し、各端子の機能(用途)は以下の通りであり、図1(A)に示した実施形態と若干異なっている。
【0050】
<上側列R1>
(1)過電圧検出端子210(リーク検出/装着検出兼用)
(2)リセット端子220
(3)クロック端子230
(4)過電圧検出端子240(リーク検出/装着検出兼用)
<下側列R2>
(5)センサー端子250(装着検出兼用)
(6)電源端子260
(7)接地端子270
(8)データ端子280
(9)センサー端子290(装着検出兼用)
【0051】
上側列R1の両端にある端子210,240とその接触部は、過電圧の検出(後述)と、端子間のリーク検出(後述)と、装着検出(接触検出)とに使用される。また、下側列R2の端子250,290とその接触部は、カートリッジ100に設けられたセンサーを使用したインク残量の検出と、装着検出(接触検出)の両方に使用される。なお、この端子群210〜290の接触部を含む四角形の領域の四隅にある端子210,240,250,290の4つの接触部が装着検出(接触検出)に使用される(後述)。なお、印刷システムの第1実施形態において、上側列R1の両端に配置された2つの端子210,240の接触部には、記憶装置を駆動するための第1電源電圧VDD(後述)と同じ電圧、又は、第1電源電圧VDDから生成された電圧が印加され、下側列R2の両端に配置された2つの端子250,290の接触部には、印刷ヘッドを駆動するために用いられる第2電源電圧VHV(後述)と同じ電圧、又は、第2電源電圧VHVから生成された電圧が印加される。ここで、「第2電源電圧VHVから生成された電圧」としては、第1電源電圧VDDよりも高く、第2電源電圧VHVよりも低い電圧を使用することが好ましい。
【0052】
ところで、印刷材カ―トリッジの装着状態や接触検出の一態様として、カートリッジの端子同士に意図しない短絡が生じていないか否かを調べる短絡検出が行われる場合がある。短絡検出では、例えば、通常の電源電圧(3.3V)よりも高い電圧が印加される高電圧用端子に隣接した位置に過電圧検出用端子を設け、この過電圧検出用端子に過剰な電圧が発生するか否かが調べられる。そして、過電圧検出用端子に過剰な電圧が検出された場合には、高電圧用端子への高電圧の印加が停止される。しかしながら、過電圧検出用端子に過剰な電圧が発生したときに直ちに高電圧の印加を停止したとしても、その停止前に発生していた過剰な電圧に起因して、カートリッジや印刷装置に何らかの不具合が発生する可能性を否定できないという問題がある。以下に説明する印刷システムの第1実施形態や印刷システムの第2実施形態は、このような従来の問題点を解決するための工夫も含んでいる。
【0053】
図9は、第1実施形態におけるカートリッジの基板200aと印刷装置1000との電気的構成を示すブロック図である。印刷装置1000は、表示パネル430と、電源回路440と、主制御回路400と、サブ制御回路500aとを備えている。表示パネル430は、ユーザーに印刷装置1000の動作状態や、カートリッジの装着状態などの各種の通知を行うための表示部である。表示パネル430は、例えば、図4の操作部1300に設けられる。電源回路440は、第1の電源電圧VDDを生成する第1電源441と、第2の電源電圧VHVを生成する第2電源442とを有している。第1の電源電圧VDDは、ロジック回路に用いられる通常の電源電圧(定格3.3V)である。第2の電源電圧VHVは、印刷ヘッドを駆動してインクを吐出させるために用いられる高い電圧(例えば定格42V)である。これらの電圧VDD、VHVは、サブ制御回路500aに供給され、また、必要に応じて他の回路にも供給される。なお、主制御回路400と、サブ制御回路500aとを含む回路を、「制御回路」と呼ぶことも可能である。
【0054】
カートリッジの基板200a(図8)に設けられた9つの端子のうち、リセット端子220と、クロック端子230と、電源端子260と、接地端子270と、データ端子280は、記憶装置203に電気的に接続されている。記憶装置203は、アドレス端子を持たず、クロック端子から入力されるクロック信号SCKのパルス数と、データ端子から入力されるコマンドデータとに基づいてアクセスするメモリセルが決定され、クロック信号SCKに同期して、データ端子よりデータを受信し、もしくは、データ端子からデータを送信する不揮発性メモリーである。クロック端子230は、サブ制御回路500aから記憶装置203にクロック信号SCKを供給するために用いられる。電源端子260と接地端子270には、印刷装置1000から記憶装置を駆動するための電源電圧(例えば定格3.3V)と接地電圧(0V)がそれぞれ供給されている。この記憶装置203を駆動するための電源電圧は、第1の電源電圧VDDから直接与えられる電圧か、第1の電源電圧VDDから生成されるもので第1の電源電圧VDDよりも低い電圧でもよい。データ端子280は、サブ制御回路500aと記憶装置203との間で、データ信号SDAをやり取りするために用いられる。リセット端子220は、サブ制御回路500aから記憶装置203にリセット信号RSTを供給するために用いられる。2つの過電圧検出端子210,240は、カートリッジ100の基板200a(図8)内で配線を介して互いに接続されている。なお、図9の例では2つの過電圧検出端子210,240は配線により接続されているが、これらを接続する配線の一部を抵抗に置き換えてもよい。なお、2つの端子が配線により接続されている状態を、「接続」又は「導線接続」とも呼ぶ。
【0055】
図9において、装置側端子510〜590と、基板200aの端子210〜290とを接続する配線経路には、配線名SCK,VDD,SDA,RST,OV1,OV2,DT1,DT2が付されている。これらの配線名のうち、記憶装置用の配線経路のものは、信号名と同じ名称が使用されている。なお、装置側端子510〜590は、図6B及び図7に示した接点機構1400に設けられている。装置側端子520、530、560〜580(第1の装置側端子)は、回路基板の端子220、230、260〜280に接触して接続され、また、プリンターの本体のメモリー制御回路に接続されている。装置側端子550と590(第2の装置側端子)は、回路基板の端子250と290に接続される。装置側端子510と540(第3の装置側端子)は、回路基板の端子210と240に接続される。
【0056】
基板200aは、記憶装置203と、9つの端子210〜290の他に、インク残量の検出に使用されるセンサー208を備えている。センサー208としては、例えば、ピエゾ素子を使用した周知のインク残量センサーを使用することができる。なお、ピエゾ素子は、電気的には容量素子として機能する。
【0057】
主制御回路400は、CPU410と、メモリー420とを有している。サブ制御回路500aは、メモリー制御回路501と、センサー関連処理回路503とを有している。センサー関連処理回路503は、カートリッジ装着部1100におけるカートリッジの装着状態の検出と、センサー208を用いたインク残量の検出とを行うための回路である。センサー関連処理回路503は、カートリッジの装着状態の検出を行うために使用されるので、センサー関連処理回路503を「装着検出回路」と呼ぶことも可能である。センサー関連処理回路503は、カートリッジのセンサー208に、記憶装置203に印加又は供給される電源電圧VDDに比べて高い電圧を印加又は供給する高電圧回路である。なお、センサー208に印加する高い電圧としては、印刷ヘッドの駆動に用いる電源電圧VHV(定格42V)そのものを利用するか、もしくは、印刷ヘッドの駆動に用いる電源電圧VHVから生成したやや低い電圧(例えば36V)を利用することが可能である。
【0058】
図10は、印刷システムの第1実施形態におけるセンサー関連処理回路503の内部構成を示す図である。ここでは、4つのカートリッジがカートリッジ装着部に装着された状態が示されており、各カートリッジを区別するために参照符号IC1〜IC4が使用されている。センサー関連処理回路503は、非装着状態検出部670と、過電圧検出部620と、検知パルス発生部650と、センサー処理部660とを有している。センサー処理部660は、接触検出部662と、液量検出部664とを含んでいる。接触検出部662は、カートリッジのセンサー208を用いてセンサー端子250,290の接触状態の検出を行う。液量検出部664は、カートリッジのセンサー208を用いてインク残量の検出を行う。検知パルス発生部650と非装着状態検出部670は、全カートリッジが装着されているか否かの検出(非装着状態の検出処理)と、端子210/250間、及び、端子240/290間のリーク状態の検出と、を行う。過電圧検出部620は、過電圧検出端子210,240に過大な電圧が印加されているか否かの検出を行う。
【0059】
各カートリッジ内において、第1と第2の過電圧検出端子210,240は配線を介して互いに接続されている。図10の例では、過電圧検出端子210,240は配線により短絡接続されているが、その接続配線の一部を抵抗としても良い。1番目のカートリッジIC1の第1の過電圧検出端子210は、対応する装置側端子510を介してセンサー関連処理回路503内の配線651に接続されており、この配線651は、非装着状態検出部670に接続されている。n番目(n=1〜3)のカートリッジの第2の過電圧検出端子240と、n+1番目のカートリッジの第1の過電圧検出端子210とは、対応する装置側端子540,510を介して互いに接続される。また、4番目のカートリッジIC4の第2の過電圧検出端子240は、対応する装置側端子540を介して検知パルス発生部650に接続される。すべてのカートリッジIC1〜IC4がカートリッジ装着部内に正しく装着されていれば、各カートリッジの過電圧検出端子240,210を順次経由して、検知パルス発生部650と非装着状態検出部670とが互いに接続される。一方、1つでも未装着のカートリッジがある場合や装着不良がある場合には、装置側端子510,540もしくはカートリッジIC1〜IC4の端子210,240のいずれかに未接触や接触不良が生じて、検知パルス発生部650と非装着状態検出部670とが非接続状態となる。従って、非装着状態検出部670は、検知パルス発生部650から送られる検査信号DPinsに対応する応答信号DPresを受信できるか否かに応じて、カートリッジIC1〜IC4の過電圧検出端子210,240のいずれかに未接触や接触不良が存在するか否かを判定することができる。このように、印刷システムの第1実施形態では、すべてのカートリッジIC1〜IC4がカートリッジ装着部内に装着されたときには各カートリッジの過電圧検出端子240,210が順次直列に接続されるので、その接続状態を調べることによって、カートリッジIC1〜IC4の過電圧検出端子210,240のいずれかに未接触や接触不良が存在するか否かを判定することができる。このような未接触や接触不良が発生する典型的な場合は、1つ以上のカートリッジが未装着の場合である。従って、非装着状態検出部670は、検査信号DPinsに対応する応答信号DPresを受信できるか否かに応じて、1つ以上のカートリッジが未装着か否かを直ちに判定することが可能である。検査信号DPinsは、第1の電源電圧VDDから供給される電圧をもとに生成すればよい。
【0060】
4つのカートリッジIC1〜IC4の第1の過電圧検出端子210は、対応する装置側端子510を介して、ダイオード641〜644のアノード端子に接続される。また、4つのカートリッジIC1〜IC4の第2の過電圧検出端子240は、対応する装置側端子540を介して、ダイオード642〜645のアノード端子に接続される。なお、第2のダイオード642のアノード端子は、第1のカートリッジIC1の第2の過電圧検出端子240と、第2のカートリッジIC2の第1の過電圧検出端子210に共通に接続される。ダイオード643,644も同様に、1つのカートリッジの第2の過電圧検出端子240と隣接するカートリッジの第1の過電圧検出端子210に共通に接続される。これらのダイオード641〜645のカソード端子は、過電圧検出部620に並列に接続されている。これらのダイオード641〜645は、過電圧検出端子210,240に異常な過電圧(本来、端子210、240に印加される電圧よりも高い電圧)が印加されていないか否かを監視するために使用される。このような異常な電圧値(「過電圧」と呼ぶ)は、各カートリッジの過電圧検出端子210,240のいずれかと、センサー端子250,290のいずれかとの間に意図しない短絡が生じている場合に発生する可能性がある。例えば、インク滴やゴミなどの異物が基板200(図8)の表面に付着すると、第1の過電圧検出端子210と第1のセンサー端子250の間、又は、第2の過電圧検出端子240と第2のセンサー端子290の間に意図しない短絡が発生する可能性がある。このような意図しない短絡が発生すると、ダイオード641〜645のいずれかを介して過電圧検出部620に電流が流れるので、過電圧検出部620は、過電圧の発生の有無、及び、意図しない短絡の発生の可能性の有無を判定することが可能である。また、一般に、意図しない短絡の原因となる異物は、基板200の上方から下方に、かつ、外側から内側に向けて進入しやすい。従って、過電圧検出端子210,240の接触部が基板200aの上側列R1上に配置される接触部の両端(図8)の接触部となるように配置しておけば、過電圧検出端子210,240が、センサー端子250,290の近くに配置されるので、センサー端子250、290に印加される高電圧がメモリー端子220,230,260,270,280に印加される可能性を低減することが可能である。
【0061】
図11は、接触検出部662及び液量検出部664と、カートリッジのセンサー208との接続状態を示すブロック図である。センサー208は、切換スイッチ666を介して、接触検出部662と液量検出部664の一方に選択的に接続される。センサー208が接触検出部662に接続された状態では、接触検出部662が、センサー端子250,290とこれらに対応する装置側端子550,590とが良好な接触状態にあるか否かを検出する。一方、センサー208が液量検出部664に接続された状態では、液量検出部664が、カートリッジ内のインク残量が所定量以上あるか否かを検出する。接触検出部662は、比較的低い電源電圧VDD(例えば3.3V)を用いて動作する。一方、液量検出部664は、比較的高い電源電圧HV(例えば36V)を用いて動作する。
【0062】
なお、接触検出部662と液量検出部664は、個々のカートリッジ毎に個別に設けられていてもよく、あるいは、複数のカートリッジに共通に、1つの接触検出部662と1つの液量検出部664が設けられていても良い。後者の場合には、個々のカートリッジのセンサー端子250,290と、接触検出部662及び液量検出部664との接続状態を切り換えるための切り換えスイッチがさらに設けられる。
【0063】
図12は、印刷システムの第1実施形態におけるカートリッジの装着検出処理(「接触検出処理」とも呼ぶ)に用いられる各種の信号を示すタイミングチャートである。カートリッジの装着検出処理には、第1の装着検出信号SPins,SPresと、第2の装着検出信号DPins,DPresとが使用される。なお、信号名の末尾に「ins」が付された信号SPins,DPinsは、センサー関連処理回路503からカートリッジの基板200に出力される信号であり、「装着検査信号」と呼ぶ。また、信号名の末尾に「res」が付された信号SPres、DPresは、カートリッジの基板200からセンサー関連処理回路503に入力される信号であり、「装着応答信号」と呼ぶ。
【0064】
以下に示すように、印刷システムの第1実施形態では、以下の3種類の装着状態検出処理が実行される。
(1)第1の装着検出処理:第1の装着検出信号SPins,SPresを用いた個々のカートリッジのセンサー端子250,290の接触状態の検出
(2)第2の装着検出処理:第2の装着検出信号DPins,DPresを用いた1つ以上のカートリッジの非装着状態の検出(全カートリッジの過電圧検出端子210,240の接触状態の検出)
(3)リーク検出処理:第2の装着検出信号DPins,DPresを用いた端子210/250間、及び、端子240/290間のリーク状態の検出
【0065】
第1と第2の装着検出処理では端子の接触状態が検出されるので、これらの処理を「接触検出処理」と呼ぶことも可能である。また、第1と第2の装着検出信号を「第1の接触検出信号SPins,SPres」、「第2の接触検出信号DPins,DPres」とも呼ぶことも可能である。
【0066】
第1の装着検出信号SPins,SPresは、接触検出部662が、個々のカートリッジのセンサー端子250,290の接触状態を検出するために使用される。図10に示すように、第1の装着検査信号SPinsは、接触検出部662から一方のセンサー端子290に供給される信号であり、第1の装着応答信号SPresは、他方のセンサー端子250から接触検出部662に戻る信号である。第1の接触検査信号SPinsは、図12の第1の期間P11にハイレベルH1になり、その後の第2の期間P12にローレベルになる信号である。なお、第1の装着検査信号SPinsのハイレベルH1の電圧は、例えば3.0Vに設定されている。端子250,290の両方が正常な接触状態にある場合には、第1の装着応答信号SPresは、第1の装着検査信号SPinsと同じレベル変化を示す。
【0067】
第2の装着検査信号DPinsは、図10に示すように、検知パルス発生部650から第4のカートリッジIC4の過電圧検出端子240に供給される信号であり、第2の装着応答信号DPresは、第1のカートリッジIC1の過電圧検出端子210から非装着状態検出部670に入力される信号である。図12に示すように、第2の装着検査信号DPinsは、7つの期間P21〜P27に区分される。すなわち、第2の装着検査信号DPinsは、期間P21ではハイインピーダンス状態になり、期間P22,P24,P26ではハイレベルH2になり、他の期間P23,P25,P27ではローレベルになる。第2の装着検査信号DPinsのハイレベルH2の電圧は、2.7Vに設定されており、第1の装着検査信号SPinsのハイレベルH1(3.0V)と異なる電圧レベルに設定されている。なお、第2の装着検査信号DPinsの第1と第2の期間P21,P22は、第1の装着検査信号SPinsの第1の期間P11の一部に相当する。また、第2の装着検査信号DPinsの第4〜第7の期間P24〜P27は、第1の装着検査信号SPinsの第2の期間P12の一部に相当する。全カートリッジの端子210,240が正常な接触状態にある場合には、第2の装着応答信号DPresは、第1の期間P21でローレベルとなり、第2の期間P22以降は第2の装着検査信号DPinsと同じレベルを示す信号となる。なお、第2の装着応答信号DPresが第1の期間P21でローレベルとなる理由は、第1の期間P21の直前の状態において、第2の装着応答信号DPresが(すなわち非装着状態検出部670への入力配線651が)ロ―レベルとなっているからである。
【0068】
図13(A)は、端子250,290の少なくとも一方の接触が不良である場合の信号波形を示している。この場合には、第1の装着応答信号SPresは、期間P11,P12を通じてローレベルになる。接触検出部662は、期間P11内の予め定められたタイミングt11で装着応答信号SPresのレベルを調べることによって、端子250,290の接触の良否を判定することができる。端子250,290に接触不良のあるカートリッジが検出された場合には、主制御回路400が、表示パネル430に、そのカートリッジの装着状態が不良である旨を示す情報(文字や画像)を表示してユーザーに通知することが好ましい。
【0069】
図13(B)は、全カートリッジの端子210,240のうちの少なくとも一つの端子が接触不良にある場合の信号波形を示している。この場合には、第2の装着応答信号DPresは、期間P21〜P27を通じてローレベルになる。従って、非装着状態検出部670は、第2の装着検査信号DPinsがハイレベルとなる期間P22,P24,P26の予め設定されたタイミングt22,t24,t25において、第2の装着応答信号DPresのレベルを調べることによって、1つ以上のカートリッジが正常に装着していない状態を検出することが可能である。なお、この判定は、3つのタイミングt22,t24,t25の少なくとも1カ所で行えば十分である。1つ以上のカートリッジが正常に装着されていないと判定された場合には、主制御回路400が、表示パネル430に装着状態が不良である旨を示す情報(文字や画像)を表示してユーザーに通知することが好ましい。
【0070】
上述した非装着状態の検出処理(第2の装着検出処理)の目的だけであれば、第2の装着検査信号DPinsを、第1の装着検査信号SPinsと類似した単純なパルス信号としても良い。第2の装着検査信号DPinsが図12のような複雑な波形形状を有している理由は、主に、以下で説明するリーク状態の検出(第3の装着状態検出処理)のためである。
【0071】
図14(A)は、過電圧検出端子240とセンサー端子290の間がリーク状態にある場合の信号波形を示している。ここで、「リーク状態」とは、意図しない短絡と言えるほどの極低抵抗状態では無いが、ある程度以下の抵抗値(例えば10kΩ以下の抵抗値)で接続されている状態を意味している。この場合には、第2の装着応答信号DPresが特有の信号波形を示す。すなわち、第2の装着応答信号DPresは、第1の期間P21でローレベルから第1のハイレベルH1に立ち上がり、第2の期間P22で第2のハイレベルH2に低下する。第1のハイレベルH1は、第1の装着検査信号SPinsのハイレベルH1とほぼ同じ電圧である。このような波形は、以下に説明する等価回路から理解できる。
【0072】
図15(A)は、基板200aと、接触検出部662と、検知パルス発生部650と、非装着状態検出部670との接続関係を示している。この状態は、隣接する端子間にリークが無い状態である。図15(B)は、端子240,290の間にリークがある場合の等価回路を示している。ここでは、端子240,290の間のリーク状態が、抵抗RLで模擬されている。センサー208は、容量素子としての機能を有する。図15(B)のセンサー208の容量と、端子240,290間の抵抗RLとを含む回路は、第1の接触検査信号SPinsに対してローパスフィルター回路(積分回路)として機能する。従って、非装着状態検出部670に入力される第2の装着応答信号DPresは、図14(A)に示すように、第1の装着検査信号SPinsのハイレベルH1(約3V)にまで徐々に立ち上がる信号となる。非装着状態検出部670は、期間P21内の1つ以上の(好ましくは複数の)タイミングt21において第2の装着応答信号DPresの電圧レベルを調べることによって、端子240,290の間にリークがあることを識別することができる。あるいは、第2の装着応答信号DPresの第1と第2の期間P21,P22における第2の装着応答信号DPresのハイレベルH1,H2の電圧の差から、端子240/290間がリークしていると判定することも可能である。
【0073】
なお、図14(A)の第1の期間P21における第2の装着応答信号DPresの変化は、期間P21における第2の装着検査信号DPinsのレベルを、第1のハイレベルH1よりも低いレベルに設定したときにも得られる。従って、例えば、第2の装着検査信号DPinsを期間P21においてローレベルに維持するようにしても、端子240,290の間のリーク状態を検出することが可能である。また、第2の装着検査信号DPinsを期間P21〜P23に渡ってローレベルに維持するようにしても良い。
【0074】
端子240,290間にリークがある場合には、更に、第1の装着応答信号SPresが特有の変化を示す。すなわち、第1の装着応答信号SPresは、期間P24,P26において、第2の装着検査信号DPinsがハイレベルに立ち上がるのに応じて立ち上がる。従って、これらの期間P24,P26の所定のタイミングt24,t25で第1の装着応答信号SPresを調べることによっても、リークが発生しているか否かを判定することが可能である。
【0075】
図14(B)は、他の過電圧検出端子210とセンサー端子250がリーク状態にある場合の信号波形を示している。この場合にも、第2の装着応答信号DPresが特有の信号波形を示す。すなわち、第2の装着応答信号DPresは、第1の期間P21において、ローレベルから急激に立ち上がった後にやや緩やかに低下する。このときのピークの電圧レベルは、第2の装着検査信号DPinsのハイレベルH2よりも高く、第1の装着検査信号SPinsのハイレベルH1に近いレベルにまで達する。
【0076】
図15(C)は、端子210,250の間にリークがある場合の等価回路を示している。ここでは、端子210,250の間のリーク状態が、抵抗RLで模擬されている。センサー208の容量と、端子210,250間の抵抗RLとを含む回路は、第1の装着検査信号SPinsに対するハイパスフィルター回路(微分回路)として機能する。従って、第2の装着応答信号DPresは、図14(B)に示すように、第1の期間P21でピーク形状を示す信号となる。但し、第2の期間P22以降は、第2の装着応答信号DPresは、第2の装着検査信号DPinsの変化と同様の変化を示す。非装着状態検出部670は、期間P21内の任意の1つ又は複数のタイミングt21における第2の装着応答信号DPresの電圧レベルを調べることによって、端子210,250の間にリークがあることを識別することができる。なお、端子240,290間にリークがある場合(図14(A))と、端子210,250の間にリークがある場合(図14(B))では、第1の期間P21の中央から終端までのタイミングにおける信号DPresの電圧レベルと、第2の期間P22における信号DPresの電圧レベルの関係が逆転している。従って、これらの2つのタイミングにおける信号DPresの電圧レベルを比較することによって、端子240,290間と端子210,250の間のいずれにリークがあるかを正確に識別することが可能である。
【0077】
なお、図14(B)のような第2の装着応答信号DPresの変化は、期間P21において第2の装着検査信号DPinsの出力端子(すなわち、検知パルス発生部650の出力端子)をハイインピーダンス状態に設定したときに得られる。従って、例えば、第2の装着検査信号DPinsを、期間P21ではハイインピーダンス状態に設定すれば、期間P22,P23でローレベルに設定するようにしても、端子210,250の間のリーク状態を検出することが可能である。
【0078】
端子210,250間にリークがある場合にも、第1の装着応答信号SPresが特有の変化を示す。すなわち、第1の装着応答信号SPresは、期間P24,P26において、第2の装着検査信号DPinsがハイレベルに立ち上がるのに応じて立ち上がる。従って、これらの期間P24,P26の所定のタイミングt24,t25で第1の装着応答信号SPresを調べることによっても、リークが発生しているか否かを判定することが可能である。但し、第1の装着応答信号SPresの変化は、端子240,290間にリークがある場合(図14(A))と、端子210,250間にリークがある場合(図14(B))とでそれほど大きな違いが無い。従って、タイミングt24,t25における第1の装着応答信号SPresの検査では、2組の端子のいずれにリークが発生しているのかを識別することはできない。但し、この識別をする必要が無い場合には、第1の装着応答信号SPresの検査でも十分である。
【0079】
上述した図12〜図14の説明から理解できるように、2つの装着検査信号SPins,DPinsのうちの少なくとも一方を調べることによって、隣接する端子同士がリーク状態にあるか否かを検出することが可能である。
【0080】
図16は、図15に示すリーク状態を判定するために使用可能なリーク判定部の構成例を示すブロック図である。リーク判定部は、非装着状態検出部670内に設けることができる。図16(A)のリーク判定部672は、複数のダイオードの直列接続で構成された電圧障壁部674と、電流検出部675とを有している。電圧障壁部674のしきい値電圧Vthは、第1の装着検査信号SPinsのハイレベルH1よりも低く、第2の装着検査信号DPinsのハイレベルH2よりも高い値に設定される。従って、第2の装着応答信号DPresの電圧レベルが第2のハイレベルH2以上になったときに、電圧障壁部674から電流検出部675に電流が流れる。従って、電流検出部675は、図14の期間P21において電圧障壁部674から電流が入力されるか否かに応じて、端子240/290間と,端子210/250間の少なくとも一方でリークが発生しているか否かを検出することができる。但し、この回路では、端子240/290間と,端子210/250間のいずれでリークが発生しているのかを識別することはできない。
【0081】
図16(B)のリーク判定部672は、AD変換部676と波形分析部677とを有している。この回路では、第2の装着応答信号DPresの変化が、AD変換部676でデジタル化されて波形分析部677に供給される。波形分析部677は、波形の形状を分析することによって、リーク状態を判定することができる。例えば、図14の期間P21における第2の装着応答信号DPresがローパスフィルターを通過した信号(緩やかに上昇する上に凸の信号)である場合には、端子240/290間にリークがあるものと判定できる。一方、第2の装着応答信号DPresがハイパスフィルターを通過した信号(鋭いピークを示す信号)である場合には、端子210/250間にリークがあるものと判定できる。なお、AD変換部676の動作クロック周波数は、このような波形分析のために十分に高い周波数に設定される。波形分析部677は、更に、第2の装着応答信号DPresの変化の時定数を求め、リーク状態における等価回路の抵抗値及び容量値を算出することが可能である。例えば、図15(B),(C)の等価回路では、リークしている端子間の抵抗RLのみが未知であり、他の抵抗の抵抗値や容量素子208の容量値は既知である。従って、第2の装着応答信号DPresの変化の時定数から、リークしている端子間の抵抗RLを算出することが可能である。なお、リーク判定部の構成としては、これら以外の種々の回路構成を採用可能である。
【0082】
以上の図12〜図16の説明から理解できるように、(i)第2の装着応答信号DPresが第1の装着検査信号SPinsの影響を受けているか否か(図14(A),(B)のDPres)、及び、(ii)第1の装着応答信号SPresが第2の装着検査信号DPinsの影響を受けているか否か(図14(A),(B)のSPres)、のうちの少なくとも一方を調べることによって、端子250/290間又は端子210/240にリークがあるか否かを判定することが可能である。2つの装着検査信号SPins、DPinsとしては、電圧レベルが一定の信号(例えば常にローレベルまたはハイレベルに維持される信号)ではなく、電圧レベルがそれぞれ変化する異なる信号波形を有する信号を使用することが好ましい。なお、図12〜図14の信号波形は簡略化して描かれていることに注意すべきである。
【0083】
2つの過電圧検出端子210,240のうちの少なくとも一方でリークが検出された場合には、そのリーク発生箇所を印刷装置内の図示しない不揮発性メモリーに記録しておくようにしてもよい。こうすれば、印刷装置のメインテナンスの際に、リークが発生しやすい端子位置を調べ、印刷装置内の接点機構1400(図6B)の端子の接点やバネの調整を行うことによって、リークを発生し難くする対策を施すことが可能である。
【0084】
図17は、4つのカートリッジIC1〜IC4に対する装着検出処理のタイミングチャートである。ここでは、個々のカートリッジに個別に供給される第1の装着検査信号SPins_1〜SPins_4と、全カートリッジの端子240,210の直列接続に対して供給される第2の装着検査信号DPinsとが示されている。このように、4つのカートリッジに関する装着検査が1カートリッジ毎に順次行われ、また、個々のカートリッジに対しては、第1と第2の装着検査信号SPins,DPinsが同じ期間に供給されて上述した3種類の装着検出処理が実行される。これらの検査において、装着不良(接触不良)やリークが検出された場合には、表示パネル430にその旨を表示することによって、カートリッジの再装着をユーザーに勧告することが好ましい。一方、これらの装着検査の結果、装着不良やリークが検出されなかった場合には、その後に、各カートリッジのインク残量の検出や、記憶装置203からのデータの読み出しなどが行われる。
【0085】
図18は、液量検出処理のタイミングチャートである。液量検出処理では、液量検査信号DSが一方のセンサー端子290に供給される。この液量検査信号DSは、センサー208を構成する圧電素子の一方の電極に供給される。液量検査信号DSは、液量検出部664(図10)によって生成されるアナログ信号である。この液量検査信号DSの最大電圧は例えば約36Vであり、最小電圧は約4Vである。センサー208の圧電素子はカートリッジ100内のインクの残量に応じて振動し、振動によって発生した逆起電圧が液量応答信号RSとして圧電素子から他方のセンサー端子250を介して液量検出部664に送信される。液量応答信号RSは、圧電素子の振動数に対応する周波数を有する振動成分を含んでいる。液量検出部664は、液量応答信号RSの周波数を測定することによって、インク残量が所定量以上であるか否かを検出することができる。このインク残量検出処理は、上述したリーク検査(リーク検出処理)で使用された第1の装着検査信号DPinsよりも高い電圧レベルを有する高電圧信号DSを、端子250,290を介してセンサー208に供給する高電圧処理である。
【0086】
このように、インク残量の検出時には、高電圧の液量検査信号DSがセンサー端子250,290に印加される。仮に、センサー端子250,290と過電圧検出端子210,240との間の絶縁が不十分な場合には、端子210,240に異常な過電圧が生じる。この場合には、ダイオード641〜645(図10)を介して過電圧検出部620に電流が流れるので、過電圧検出部620は、過電圧の発生の有無を判定することが可能である。過電圧が検出されると、過電圧検出部620から液量検出部664に過電圧の発生を示す信号が供給され、これに応じて液量検出部664が液量検査信号DSの出力を直ちに停止する。これは、過電圧によって生じ得るカートリッジや印刷装置の損傷を防止するためである。すなわち、センサー端子250(又は290)と過電圧検出端子210(又は240)との間の絶縁が不十分な場合には、センサー端子と記憶装置用端子との間の絶縁も不十分になっている恐れがある。このとき、過電圧検出端子210,240に過電圧が発生すると、記憶装置用端子にもその過電圧が印加されて、その記憶装置用端子に接続されている記憶装置や印刷装置の回路に損傷が生じる可能性がある。従って、過電圧が検出されたときに液量検査信号DSの出力を直ちに停止すれば、過電圧によって生じ得るカートリッジや印刷装置の損傷を防止することができる。
【0087】
なお、図12〜図17で説明したように、インク残量の検出に先立って、複数種類の装着状態検出処理が実行される。このうちのリーク状態検出処理では、図14〜図16で説明したように、端子240/290間、又は、端子210/250間に低抵抗なリーク状態が発生しているか否かが検出される。すなわち、これらのリーク状態の検出処理では、比較的低い電圧レベル(約3V)の装着検査信号SPins,DPinsを用いて、端子240/290間、又は、端子210/250間が、或る抵抗値(例えば10kΩ)以下の低抵抗状態にあるか否か検出することができる。また、これらの端子間にリークが無いと判定された場合には、端子240/290間、又は、端子210/250間の抵抗値は、上記の抵抗値(約10kΩ)以上であることが保証される。従って、このリーク状態の検出処理の後に、より高い電圧レベル(約36V)の信号を用いてインク残量の検出処理を実行しても、過電圧検出端子210,240に懸かる過電圧が極めて大きな値になることが無い。このように、印刷システムの第1実施形態では、相対的に低い電圧レベルの信号を用いて端子240/290間、又は、端子210/250間のリーク状態を検査し、その結果、リークが無い場合にのみ、相対的に高い電圧レベルの信号を端子250,290に印加している。従って、リーク状態の検査を行わない場合に比べて、印刷装置やカートリッジに生じうる過電圧のレベルをより低下させることが可能である。
【0088】
図19(A)は、印刷システムの第1実施形態の装着検出処理で使用される信号の第1の変形例を示すタイミングチャートである。図12との違いは、第2の装着検出信号DPins,DPresのハイレベルの値が、第1の装着検出信号SPins,SPresと同じに設定されている点であり、他は図12の信号と同じである。これらの信号を使用しても、図13〜図16で説明した各種の装着状態検出処理をほぼ同様に行うことが可能である。但し、この場合には、図14(A)の第2の期間P22における第2の装着応答信号DPresのレベルは、第1の期間P21におけるレベルH1と同じになるので、第1と第2の期間P21,P22における第2の装着応答信号DPresのレベルの差から、端子240/290間がリークしていると判定することはできない。但し、図14(A)と図14(B)に示したように、第1の期間P21における第2の装着応答信号DPresのレベル変化から、端子240/290間と、端子210/250間のいずれがリークしているかを区別することは依然として可能である。
【0089】
図19(B)は、印刷システムの第1実施形態の装着検出処理で使用される信号の第2の変形例を示すタイミングチャートである。図12との違いは、第2の装着検査信号DPinsが、第2の期間P22と第4の期間P24でローレベルに設定されている点と、これに応じて第2の装着応答信号DPresが期間P21〜P25を通じてローレベルに維持されている点であり、他は図12の信号と同じである。これらの信号を使用しても、図13〜図16で説明した各種の装着検出をほぼ同様に行うことが可能である。この場合には、図13(B)のタイミングt22,t24における判定ができなくなるが、図13と図14で説明した他のタイミングでの判定は依然として可能である。
【0090】
図12及び図19の各種の信号の例から理解できるように、装着検出信号(接触検出信号)の電圧レベルや波形としては、種々の変形が可能である。但し、端子240/290間及び端子210/250間のリーク状態の検出を行う場合には、第1の装着検出信号SPinsがハイレベルとなる際に、第2の装着検出信号DPins(又はその信号線)をローレベルからハイインピーダンス状態に変更するか、又は、ローレベルに維持することが好ましい。
【0091】
以上のように、印刷システムの第1実施形態において、基板の複数の記憶装置用端子の接触部の周囲の四隅、より具体的には、基板の複数の記憶装置用端子が配置された領域の外側で、かつ、その領域を包含する四角形の領域の四隅に装着検出端子の接触部を設けたので、これらの装着検出端子と対応する装置側端子とが良好な接触状態にあることを確認することによって、記憶装置用端子に関しても良好な接触状態を確保することが可能である。また、印刷システムの第1実施形態では、基板の一対の端子250,290に関する第1の装着応答信号SPresと、他の一対の端子210,240に関する第2の装着応答信号DPresとの少なくとも一方を調べることによって、全カートリッジが装着されているか否かの装着検出処理と、端子間にリークがあるか否かのリーク状態検出処理とを同時に実行することができる。さらに、印刷システムの第1実施形態では、端子250,290に対して相対的に高い電圧(約36V)を印加する高電圧処理に先だって、相対的に低い電圧(約3V)を用いて上記リーク状態の検出処理を行うので、極めて高い過電圧が端子250,290からリークしてカートリッジや印刷装置に損傷を与えることを防止できる。
【0092】
C.印刷システムの第2実施形態:
図20は、印刷システムの第2実施形態における基板の構成を示す図である。端子210〜290の配列は、図8に示したものと同じである。但し、各端子の機能(用途)は以下の通りであり、印刷システムの第1実施形態と若干異なっている。
【0093】
<上側列R1>
(1)過電圧検出端子210(装着検出兼用)
(2)リセット端子220
(3)クロック端子230(
4)過電圧検出端子240(装着検出兼用)
<下側列R2>
(5)装着検出端子250
(6)電源端子260
(7)接地端子270
(8)データ端子280
(9)装着検出端子290
【0094】
上側列R1の端子210〜240の機能及び用途は、印刷システムの第1実施形態とほぼ同じである。下側列R2の端子250,290は、カートリッジ100に設けられた抵抗素子を使用した装着検出に使用される点で印刷システムの第1実施形態と異なっている。なお、この端子群210〜290の接触部の四隅にある端子210,240,250,290の接触部が装着検出(接触検出)に使用される点は、印刷システムの第1実施形態と同じである。なお、印刷システムの第2実施形態においても、上側列R1の両端に配置された2つの端子210,240の接触部には、記憶装置を駆動するための第1電源電圧VDDと同じ電圧、又は、第1電源電圧VDDから生成された電圧が印加され、下側列R2の両端に配置された2つの端子250,290の接触部には、印刷ヘッドを駆動するために用いられる第2電源電圧VHVと同じ電圧、又は、第2電源電圧VHVから生成された電圧が印加される。ここで、「第2電源電圧VHVから生成された電圧」としては、第1電源電圧VDDよりも高く、第2電源電圧VHVよりも低い電圧を使用することが好ましい。
【0095】
図21は、印刷システムの第2実施形態におけるカートリッジの基板200bと印刷装置1000との電気的構成を示すブロック図である。基板200bは、記憶装置203と、9つの端子210〜290の他に、個々のカートリッジの装着検出に使用される抵抗素子204を備えている。
【0096】
主制御回路400は、印刷システムの第1実施形態と同様に、CPU410と、メモリー420とを有している。サブ制御回路500bは、メモリー制御回路501と、カートリッジ検出回路502とを有している。
【0097】
カートリッジ検出回路502は、カートリッジ装着部1100におけるカートリッジの装着検出を行うための回路である。従って、カートリッジ検出回路502を「装着検出回路」と呼ぶことも可能である。カートリッジ検出回路502とカートリッジの抵抗素子204とは、記憶装置203の動作電圧に比べて高い電圧(本実施形態では、定格42V)で動作する高電圧回路である。抵抗素子204は、カートリッジ検出回路502から記憶装置203の動作電圧に比べて高い電圧が印加されるデバイスである。
【0098】
図22は、印刷システムの第2実施形態におけるカートリッジ検出回路502の内部構成を示す図である。ここでは、4つのカートリッジ100がカートリッジ装着部に装着された状態が示されており、各カートリッジを区別するために参照符号IC1〜IC4が使用されている。カートリッジ検出回路502は、検出電圧制御部610と、過電圧検出部620と、個別装着電流値検出部630と、検知パルス発生部650と、非装着状態検出部670とを有している。これらの回路のうち、過電圧検出部620と、検知パルス発生部650と、非装着状態検出部670は、図10に示したこれらの回路とほぼ同じ構成及び機能を有している。検出電圧制御部610は、カートリッジの端子250に供給する電圧を制御する機能を有する。
【0099】
カートリッジ検出回路502には、装着検出用の高い電源電圧VHVが供給されている。この高電源電圧VHVは、印刷ヘッド駆動用の電圧であり、第2電源442(図21)から検出電圧制御部610に供給されている。検出電圧制御部610の出力端子は、各カートリッジIC1〜IC4の装着位置に設けられた4つの装置側端子550に並列に接続されている。なお、高電源電圧VHVを、「高電圧VHV」と呼ぶ。検出電圧制御部610の出力端子の電圧値VHOは、個別装着電流値検出部630にも供給されている。各装置側端子550は、対応するカートリッジの第1の装着検出端子250に接続される。各カートリッジ内では、第1と第2の装着検出端子250,290の間に、抵抗素子204がそれぞれ設けられている。4つのカートリッジIC1〜IC4の抵抗素子204の抵抗値は、同一の値Rに設定されている。カートリッジ検出回路502内には、各カートリッジの抵抗素子204とそれぞれ直列接続される抵抗素子631〜634が設けられている。
【0100】
各カートリッジ内において、第1と第2の過電圧検出端子210,240は配線により短絡接続されている。また、これらの過電圧検出端子210,240は、装置側端子510,540と、カートリッジ検出回路502内に設けられたダイオード641〜645とを介して、過電圧検出部620に接続されている。これらの端子210,240,510,540及びダイオード641〜645と、過電圧検出部620との接続関係及び機能は、印刷システムの第1実施形態(図10)で説明したものと同じである。
【0101】
図23(A),(B)は、印刷システムの第2実施形態におけるカートリッジの装着検出処理の内容を示す説明図である。図23(A)では、印刷装置のカートリッジ装着部1100に装着可能なカートリッジIC1〜IC4がすべて装着された状態を示している。4つのカートリッジIC1〜IC4の抵抗素子204の抵抗値は、同一の値Rに設定されている。カートリッジ検出回路502内には、各カートリッジの抵抗素子204とそれぞれ直列接続される抵抗素子631〜634が設けられている。これらの抵抗素子631〜634の抵抗値は、互いに異なる値に設定されている。具体的には、これらの抵抗素子631〜634のうち、n番目(n=1〜4)のカートリッジICnに対応づけられた抵抗素子63nの抵抗値は、(2n―1)R(Rは一定値)に設定されている。この結果、n番目のカートリッジ内の抵抗素子204と、カートリッジ検出回路502内の抵抗素子63nとの直列接続によって、2nRの抵抗値を有する抵抗が形成される。n番目(n=1〜N)のカートリッジに対する2nRの抵抗は、個別装着電流値検出部630に対して互いに並列に接続される。なお、以下では、直列接続抵抗701〜704を、「装着検出用抵抗」又は単に「抵抗」とも呼ぶ。個別装着電流値検出部630で検出される検出電流IDETは、これらの4つの抵抗701〜704の合成抵抗値Rcで電圧VHVを除した値VHV/Rcである。ここで、カートリッジの個数をNとしたとき、N個のカートリッジがすべて装着されている場合には、検出電流IDETは以下の式で与えられる。
【0102】
【数1】
【0103】
【数2】
1つ以上のカートリッジが未装着であれば、これに応じて合成抵抗値Rcが上昇し、検出電流IDETは低下する。
【0104】
図23(B)は、カートリッジIC1〜IC4の装着状態と、検出電流IDETとの関係を示している。図の横軸は、16種類の装着状態を示しており、縦軸はこれらの装着状態における検出電流IDETの値を示している。16種類の装着状態は、4つのカートリッジIC1〜IC4から任意に1〜4個を選択することによって得られる16個の組み合わせに対応している。なお、これらの個々の組み合わせを「サブセット」とも呼ぶ。検出電流IDETは、これらの16種類の装着状態を一意に識別可能な電流値となる。換言すれば、4つのカートリッジIC1〜IC4に対応づけられた4つの抵抗701〜704の個々の抵抗値は、4つのカートリッジが取り得る16種類の装着状態が、互いに異なる合成抵抗値Rcを与えるように設定されている。
【0105】
4つのカートリッジIC1〜IC4がすべて装着状態にあれば、検出電流IDETはその最大値Imaxとなる。一方、最も抵抗値の大きな抵抗704に対応づけられたカートリッジIC4のみが未装着の状態では、検出電流IDETは最大値Imaxの0.93倍となる。従って、検出電流IDETが、これらの2つの電流値の間の値として予め設定されたしきい値電流Ithmax以上であるか否かを調べれば、4つのカートリッジIC1〜IC4がすべて装着されているか否かを検出することが可能である。なお、個別装着検出のために、通常のロジック回路の電源電圧(約3.3V)よりも高い電圧VHVを使用する理由は、検出電流IDETのダイナミックレンジを広くとることによって、検出精度を高めるためである。
【0106】
個別装着電流値検出部630は、検出電流IDETをデジタル検出信号SIDETに変換して、CPU410(図21)にそのデジタル検出信号SIDETを送信する。CPU410は、このデジタル検出信号SIDETの値から、16種類の装着状態のいずれであるかを判定することが可能である。1つ以上のカートリッジが未装着であると判定された場合には、CPU410は、表示パネル430にその未装着状態を示す情報(文字や画像)を表示してユーザーに通知する。
【0107】
上述したカートリッジの装着検出処理は、N個のカートリッジに関する2N種類の装着状態に応じて合成抵抗値Rcが一意に決まり、これに応じて検出電流IDETが一意に決まることを利用している。ここで、抵抗701〜704の抵抗値の許容誤差をεと仮定する。また、全カートリッジIC1〜IC4が装着された状態の第1の合成抵抗値をRc1とし、4番目のカートリッジIC4のみが非装着である状態の第2の合成抵抗値をRc2とすると、Rc1<Rc2が成立する(図23(B))。この関係Rc1<Rc2は、各抵抗701〜704の抵抗値が許容誤差±εの範囲内で変動する場合にも成立することが好ましい。このとき、最悪条件は、許容誤差±εを考慮した場合に、第1の合成抵抗値Rc1がその最大値Rc1maxを取り、第2の合成抵抗値Rc2がその最小値Rc2minを取る場合である。これらの合成抵抗値Rc1max,Rc2minを識別できるようにするためには、Rc1max<Rc2minという条件が満足されていれば良い。この条件Rc1max<Rc2minから、以下の式が導かれる。
【0108】
【数3】
【0109】
すなわち、許容誤差±εが(3)式を満足すれば、常にN個のカートリッジの装着状態に応じて合成抵抗値Rcが一意に決まり、これに応じて検出電流IDETが一意に決まることを保証することができる。但し、実際の設計上の抵抗値の許容誤差は、(3)式の右辺の値よりも小さな値に設定することが好ましい。また、上述のような検討を行わずに、抵抗701〜704の抵抗値の許容誤差を十分に小さな値(例えば1%以下の値)に設定するようにしてもよい。
【0110】
図24は、個別装着電流値検出部630の内部構成を示す図である。個別装着電流値検出部630は、電流−電圧変換部710と、電圧比較部720と、比較結果記憶部730と、電圧補正部740とを有している。
【0111】
電流―電圧変換部710は、オペアンプ712と帰還抵抗R11とで構成される反転増幅回路である。オペアンプ712の出力電圧VDETは、以下の式で与えられる。
【0112】
【数4】
ここで、VHOは検出電圧制御部610(図22)の出力電圧、Rcは4つの抵抗701〜704(図23(A))の合成抵抗である。この出力電圧VDETは、検出電流IDETを表す電圧値を有する。
【0113】
なお、(4)式で与えられる電圧VDETは、検出電流IDETによる電圧(IDET・R11)を反転した値を示す。そこで、電流―電圧変換部710に反転増幅器を追加し、この追加の反転増幅器で電圧VDETを反転した電圧を、電流―電圧変換部710の出力電圧として出力してもよい。この追加の反転増幅器の増幅率の絶対値は、1とすることが好ましい。
【0114】
電圧比較部720は、しきい値電圧生成部722とコンパレーター724(オペアンプ)と切換制御部726とを有している。しきい値電圧生成部722は、参照電圧Vrefを複数の抵抗R1〜Rmで分圧して得られる複数のしきい値電圧Vth(j)の一つを、切換スイッチ723で選択して出力する。これらの複数のしきい値電圧Vth(j)は、図23(B)に示した16種類の装着状態における検出電流IDETの値を識別するしきい値に相当する。コンパレーター724は、電流―電圧変換部710の出力電圧VDETと、しきい値電圧生成部722から出力されるしきい値電圧Vth(j)とを比較して、2値の比較結果を出力する。この2値の比較結果は、個々のカートリッジIC1〜IC4が装着されているか否かを示している。すなわち、電圧比較部720は、個々のカートリッジIC1〜IC4が装着されているか否かを調べ、その比較結果を順次出力する。典型的な例では、電圧比較部720は、まず、最も大きな抵抗701(図23(A))に対応付けられた第1のカートリッジIC1が装着されているか否かを調べて、その比較結果を示すビット値を出力する。その後、第2〜第4のカートリッジIC2〜IC4が装着されているかを順次調べて、その比較結果を示すビット値を出力する。切換制御部726は、各カートリッジに対する比較結果に基づいて、次のカートリッジの装着検出のためにしきい値電圧生成部722から出力すべき電圧値Vth(j)を切り換える制御を行う。
【0115】
比較結果記憶部730は、電圧比較部720から出力される2値の比較結果を、切換スイッチ732で切り換えてビットレジスター734内の適切なビット位置に格納する。この切換スイッチ732の切り換えタイミングは、切換制御部726から指定される。ビットレジスター734は、印刷装置に装着可能な個々のカートリッジの装着の有無を示すN個(ここではN=4)のカートリッジ検出ビットと、異常な電流値が検出されたことを示す異常フラグビットとを有している。異常フラグビットは、すべてのカートリッジが装着されている状態での電流値Imax(図23(B))に比べて有意に大きな電流が流れている場合にHレベルとなる。但し、異常フラグビットは省略可能である。ビットレジスター734に格納された複数のビット値は、デジタル検出信号SIDET(検出電流信号)として主制御回路400のCPU410(図21)に送信される。CPU410は、このデジタル検出信号SIDETのビット値から、個々のカートリッジが装着されているか否かを判定する。前述したように、印刷システムの第2実施形態では、デジタル検出信号SIDETの4つのビット値は、個々のカートリッジが装着されているか否かを示している。従って、CPU410は、デジタル検出信号SIDETの個々のビット値から、個々のカートリッジが装着されているか否かを直ちに判定することが可能である。
【0116】
電圧比較部720と比較結果記憶部730の両者は、いわゆるA−D変換部を構成している。A−D変換部としては、図24に示した電圧比較部720と比較結果記憶部730の代わりに、周知の他の種々の構成を採用することが可能である。
【0117】
電圧補正部740は、しきい値電圧生成部722で生成される複数のしきい値電圧Vth(j)を、装着検出用の高電圧VHV(図22)の変動に追従して補正するための回路である。電圧補正部740は、オペアンプ742と2つの抵抗R21,R22で構成された反転増幅回路として構成されている。オペアンプ742の反転入力端子には、入力抵抗R22を介して図22の検出電圧制御部610の出力端子電圧VHOが入力されており、非反転入力端子には参照電圧Vrefが入力されている。このとき、オペアンプ742の出力電圧AGNDは以下の式で与えられる。
【0118】
【数5】
【0119】
この電圧AGNDは、しきい値電圧生成部722の低電圧側の基準電圧AGNDとして使用される。例えば、Vref=2.4V,VHO=42V,R21=20kΩ,R22=400kΩとすれば、AGND=0.42Vとなる。上述した(4)式と、(5)式とを比較すれば理解できるように、しきい値電圧生成部722の低電圧側の基準電圧AGNDは、検出電圧値VDETと同様に、検出電圧制御部610の出力電圧VHO(すなわち装着検出用の高電圧電源VHV)の値に応じて変化する。これらの2つの電圧AGND、VDETの差異は、抵抗比R21/R22、R11/Rcの差から生じている。このような電圧補正部740を使用すれば、装着検出用の電源電圧VHVが何らかの原因で変動しても、しきい値電圧生成部722で生成される複数のしきい値電圧Vth(j)が、電源電圧VHVの変動に追従して変化する。この結果、検出電圧値VDETと複数のしきい値電圧Vth(j)の両方が、電源電圧VHVの変動に追従して変化するので、電圧比較部720において正確な装着状態を表す比較結果を得ることができる。特に、抵抗比R21/R22と抵抗比R11/Rc1(Rc1は全カートリッジ装着時の合成抵抗値)の値を等しく設定すれば、検出電圧値VDETと複数のしきい値電圧Vth(j)を、電源電圧VHVの変動に対してほぼ同じ変化幅で変化するように正確に追従させることが可能である。但し、電圧補正部740は省略してもよい。
【0120】
図25は、カートリッジ検出回路502によって行われる装着検出処理の全体手順を示すフローチャートである。この装着検出処理は、カートリッジ装着部1100のカバー1200(図4)が開かれると開始される。この処理では、各カートリッジの記憶装置203は非通電状態(電源電圧VDDが供給されない状態)に維持される。
【0121】
ステップS110,S120では、図25で説明した非装着状態の検出処理が実行される。この結果、すべてのカートリッジが装着されていれば、ステップS120から後述するステップS140に進む。一方、1つ以上のカートリッジの未装着が検出された場合には、ステップS130において、主制御回路400が、非装着エラー処理を実行する。非装着エラー処理は、例えば、表示パネル430に「カートリッジが正しく装着されていません」のような通知(未装着カートリッジがある旨の通知)を表示する処理である。ステップS140では、カートリッジ検出回路502の検出電圧制御部610(図22)が、装着検出用の高電圧VHV(42V)をカートリッジの装着検出用デバイス(本実施形態では抵抗素子204)に印加する。ステップS150、S160では、過電圧検出部620が、過電圧が発生しているか否かを検出する。過電圧が発生している場合には、ステップS200において、過電圧検出部620が検出電圧制御部610に過電圧の発生を通知し、高電圧VHVの供給を停止させる。この場合には、表示パネル430に、過電圧が発生した旨や、カートリッジを一度脱着して再度挿入する操作を行うことなどの指示を表示させてもよい。一方、過電圧が生じていない場合には、ステップS160からステップS170に進み、図23及び図24で説明したカートリッジの個別装着検出処理が実行される。この個別装着検出処理は、記憶装置用の電源電圧(3.3V)よりも高い電圧レベルを有する高電圧信号(42V)を、端子250,290を介して抵抗素子204に供給する高電圧処理である。なお、ステップS170の個別装着検出処理において、1つ以上のカートリッジが非装着の場合には、表示パネル430に判定結果(未装着のカートリッジの種類)を表示するようにしてもよい。例えば、判定結果として、複数のカートリッジの装着位置のうちの未装着位置と、その未装着位置に装着すべきカートリッジの種類(例えばイエローカートリッジ)とを表示するようにしてもよい。
【0122】
個別装着検出処理が終了すると、図25のステップS180に戻り、カートリッジ装着部1100のカバー1200が閉じられたか否かが判断される。カバー1200が閉じられていなければ、ステップS180からステップS110に戻り、上述したステップS110以降の処理が再度実行される。一方、カバー1200が閉じられると、ステップS190において、検出電圧制御部610が高電圧VHVの供給を停止して、処理が完了する。
【0123】
以上のように、印刷システムの第2実施形態においても、印刷システムの第1実施形態と同様に、基板の複数の記憶装置用端子の接触部の周囲の四隅、より具体的には、基板の複数の記憶装置用端子が配置された領域の外側で、かつ、その領域を包含する四角形の領域の四隅に装着検出端子の接触部を設けたので、これらの装着検出端子と対応する装置側端子とが良好な接触状態にあることを確認することによって、記憶装置用端子に関しても良好な接触状態を確保することが可能である。
【0124】
更に、印刷システムの第2実施形態では、カートリッジの交換の最中に個々のカートリッジの未装着状態が表示パネル430に表示されるので、ユーザーはこの表示を見ながらカートリッジ交換を実行することが可能である。特に、カートリッジを交換するときに、そのカートリッジが未装着から装着に変わったことが表示パネル430に表示されるので、カートリッジ交換作業に不慣れなユーザーでも安心して次の操作に進むことが可能である。また、印刷システムの第2実施形態では、カートリッジの記憶装置203が非通電の状態でカートリッジの装着検出を行うことができるので、いわゆる記憶装置の活線挿抜(印刷装置のメモリー制御回路が、カートリッジの記憶装置が印刷装置の装置側端子に接続されているか否かにかかわらず、カートリッジの記憶装置にアクセスし、そのアクセス中に、カートリッジが装着されたり、カートリッジがはずされたりすること。)によって生じるビット誤りの発生を防止することが可能である。
【0125】
D.変形例:
なお、この発明は上記の実施形態や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0126】
・変形例1:
上述した各種実施形態における基板の端子や接触部の配列は、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態の基板では、複数の端子やそれらの接触部が、カートリッジの装着方向に垂直な方向に沿った互いに平行な2つの列に配置されているが、この代わりに、カートリッジの装着方向に平行な方向に沿った2つの列に配置されていてもよい。また、2列でなく、3列以上に分かれて配置されていてもよい。
【0127】
また、装着検出用の端子の数は任意であり、5つ以上配置してもよい。さらに、記憶装置用の複数の端子の種類や配列も、上記以外の種々の変形が可能である。例えば、リセット端子は省略可能である。但し、記憶装置用の複数の接触部は、他の端子(装着検出用の端子)の接触部が、記憶装置用端子の接触部同士の間に入らないような集合した状態で配置されていることが好ましい。
【0128】
・変形例2:
上記各実施形態では、カートリッジに搭載される電気デバイスとして、記憶装置203の他に、センサー208(図9)や抵抗素子204(図21)が使用されているが、カートリッジに搭載される複数の電気デバイスは、これらに限られず、1つ以上の任意の種類の電気デバイスをカートリッジに搭載するようにしてもよい。例えば、インク量検出のためのセンサーとして、圧電素子を用いたセンサーの代わりに、光学的なセンサーをカートリッジに設けても良い。また、3.3Vよりも高い電圧が印加される電気デバイスとしても、センサー208(図9)や抵抗素子204(図21)以外のデバイスを使用してもよい。さらに、印刷システムの第2実施形態では、記憶装置203と抵抗素子204の両方が基板200に設けられているが、カートリッジの電気デバイスは、他の任意の部材上に配置することが可能である。例えば、記憶装置203は、カートリッジの筐体や、アダプター、あるいは、カートリッジとは別体の他の構造体上に配置されても良い。この点は、印刷システムの第1実施形態についても同様である。
【0129】
・変形例3:
上記印刷システムの第2実施形態では、n番目のカートリッジ内の抵抗素子204と、カートリッジ検出回路502内の対応する抵抗素子63n(n=1〜4)とで4つの装着
検出用抵抗701〜704が形成されているが、これらの装着検出用抵抗の抵抗値は、1つの抵抗素子のみで実現してもよく、また、3つ以上の抵抗素子で実現してもよい。例えば、2つの抵抗素子204,631で構成される装着検出用抵抗701を、単一の抵抗素子で置き換えるようにしてもよい。他の装着検出用抵抗も同様である。複数の抵抗素子で1つの装着検出用抵抗を構成する場合には、それらの抵抗素子の抵抗値の配分は任意に変更可能である。また、これらの単一の抵抗素子又は複数の抵抗素子は、カートリッジと印刷装置本体の一方のみに設けてもよい。例えば装着検出用抵抗をすべてカートリッジ上に設けるようにすれば、印刷装置本体には装着検出用抵抗を構成する抵抗素子は不要となる。
【0130】
・変形例4:
上記各実施形態で記載されている各種の構成要素のうち、特定の目的・作用・効果に関係の無い構成要素は省略可能である。例えば、カートリッジ内の記憶装置203は、カートリッジの個別装着検出に使用されていないので、カートリッジの個別装着検出を主な目的とする場合には省略可能である。また、上述した各種の処理のうち、任意の一部の処理、及び、その処理に関連している構成要素を省略することも可能である。
【0131】
・変形例5:
上記各実施形態では、インクカートリッジに本発明を適用しているが、他の印刷材、例えば、トナーが収容された印刷材収容体(印刷材収容容器)についても同様に本発明を適用可能である。
【0132】
また、本発明は、インクジェットプリンター及びそのインクカートリッジに限らず、インク以外の他の液体を噴射する任意の液体噴射装置及びその液体収容容器にも適用することができる。例えば、以下のような各種の液体噴射装置及びその液体収容容器に適用可能である。
(1)ファクシミリ装置等の画像記録装置
(2)液晶ディスプレー等の画像表示装置用のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射装置
(3)有機EL(Electro Luminescence)ディスプレーや、面発光ディスプレー (Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材噴射装置
(4)バイオチップ製造に用いられる生体有機物を含む液体を噴射する液体噴射装置
(5)精密ピペットとしての試料噴射装置
(6)潤滑油の噴射装置
(7)樹脂液の噴射装置
(8)時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置
(9)光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂液等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置
(10)基板などをエッチングするために酸性又はアルカリ性のエッチング液を噴射する液体噴射装置
(11)他の任意の微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッドを備える液体噴射装置
【0133】
なお、「液滴」とは、液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう「液体」とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であれば良い。例えば、「液体」は、物質が液相であるときの状態の材料であれば良く、粘性の高い又は低い液状態の材料、及び、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような液状態の材料も「液体」に含まれる。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなども「液体」に含まれる。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種の液体状組成物を包含するものとする。
【符号の説明】
【0134】
100…インクカートリッジ、190…絶縁基材、200,200a…基板(回路基板)、201…ボス溝、202…ボス穴、203…記憶装置、204…抵抗素子、208…センサー(容量素子)、210〜290…基板端子、210cp〜290cp…接触部、300…連結基板部、301〜304…小基板部、310,320…予備端子、400…主制御回路、410…CPU、420…メモリー、430…表示パネル、500a…サブ制御回路、501…メモリー制御回路、502…カートリッジ検出回路、503…センサー関連処理回路、510〜590…装置側端子(電気接触部材)、610…検出電圧制御部、620…過電圧検出部、630,630b…個別装着検出部、631〜634…抵抗素子、641〜645…ダイオード、650…検知パルス発生部、651…入力配線、660…センサー処理部、662…接触検出部、664…液量検出部、666…切換スイッチ、670…非装着状態検出部、672…リーク判定部、674…電圧障壁部、675…電流検出部、676…AD変換部、677…波形分析部、701〜704…装着検出用抵抗(直列接続抵抗)、710…電流―電圧変換部、712…オペアンプ、720…電圧比較部、722…電圧生成部、723…切換スイッチ、724…コンパレーター、726…切換制御部、730…比較結果記憶部、732…切換スイッチ、734…ビットレジスター、740…電圧補正部、742…オペアンプ、750…入力切換スイッチ、751〜754…入力端子、1000…印刷装置、1100…カートリッジ装着部、1110,1120…ピン、1112,1122…付勢バネ、1111,1121…貫通孔、1130…固定部材、1140…凹凸嵌合部、1141…貫通孔、1150…スライダー部材、1160…奥壁部材、1180…インク供給管、1181…貫通孔、1200…カバー、1300…操作部、1400…接点機構。
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に用いる印刷材カートリッジ用の回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、印刷材カートリッジとして、印刷材に関する情報(例えばインク残量)を格納する記憶装置を搭載したものが利用されている。例えば、特許文献1では、インクカートリッジに、記憶装置が設けられた基板が搭載されている。また、基板には、記憶装置に接続される端子(「メモリー用端子」とも呼ぶ)の他に、メモリー用端子よりも高い電圧が印加される高電圧端子と、高電圧端子との間の短絡を検出する端子(「短絡検出端子」又は「過電圧検出端子」と呼ぶ)とが設けられている。過電圧検出端子は、過度に高い電圧がメモリー用端子に印加されるのを未然に防止して、記憶装置の損傷を防止することを意図している。
【0003】
しかしながら、高電圧端子に液滴(インクなど)が付着したときに、高電圧端子からメモリー用端子の方に液滴が広がってしまい、過電圧検出端子で過電圧を検出できない場合があった。すなわち、従来の回路基板の構成では、過電圧検出端子の機能を十分に活用することができず、過電圧検出端子よりも先にメモリー用端子に過度に高い電圧が印加されてしまう場合があった。
【0004】
なお、上述の各種の問題は、インクカートリッジ用の回路基板に限らず、他の種類の印刷材(例えば、トナー)が収容された印刷材カートリッジ用の回路基板についても同様であった。さらに、印刷材以外の他の種類の液体を噴射する液体噴射装置及びそのための液体収容容器(液体収容体)で使用される回路基板についても同様の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−228464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高電圧端子に液滴(インクなど)が付着したときに、高電圧端子からメモリー用端子の方に液滴が広がってしまうために過電圧検出端子よりも先にメモリー用端子に過電圧が印加されてしまう現象を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
第1〜第3の装置側端子と過電圧検出部とを有する印刷装置に、電気的に接続可能な回路基板であって、
記憶装置と、
前記記憶装置に接続され、前記第1の装置側端子と接触する第1の端子と、
前記第1の端子に印加される電圧よりも高い電圧が印加され、前記第2の装置側端子と接触する少なくとも1つの第2の端子と、
各々が前記第3の装置側端子と接触する2つの第3の端子と、
前記2つの第3の端子を接続する配線と、を備え、
前記第3の端子は、前記第1の端子及び前記第2の端子の隣に配置されており、
前記第3の端子は、前記第3の装置側端子を介して前記過電圧検出部に接続される端子であり、
前記第1の端子と前記第2の端子との間に、前記配線が配置されている、回路基板。
この構成によれば、第2の端子(高電圧端子)に液滴が付着したときにも、第1の端子(メモリー用端子)と第2の端子(高電圧端子)との間に設けられた配線が液滴の障壁として機能するので、液滴の広がりが防止される。従って、第3の端子(過電圧検出端子)よりも先に第1の端子(メモリー用端子)に過電圧が印加されてしまう現象の発生の可能性を低下させることができる。
【0009】
[適用例2]
適用例1記載の回路基板であって、
前記回路基板は、さらに、レジスト被膜を含み、
前記配線上に前記レジスト被膜が配置されている、回路基板。
この構成によれば、配線とレジストとが液滴の障壁として機能するので、液滴の障壁の機能を高めることができる。
【0010】
[適用例3]
適用例2に記載の回路基板であって、
前記第1の端子は複数設けられており、
前記第2の端子は2つ設けられており、
前記第1ないし第3の端子は、第1列と第2列を構成するように配置されており、
前記2つの第2の端子は、前記第2列の両端に配置されており、
前記2つの第3の端子は、前記第1列の両端に配置されており、
前記配線は前記第2列の前記2つの第2の端子の各々と前記第2列の前記第1の端子の間に配置される、回路基板。
【0011】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、印刷材カートリッジ、複数種類の印刷材カートリッジで構成された印刷材カートリッジセット、カートリッジアダプター、複数種類のカートリッジアダプターで構成されたカートリッジアダプターセット、回路基板、印刷装置、液体噴射装置、印刷装置とカートリッジとを備える印刷材供給システム、液体噴射装置とカートリッジとを備える液体供給システム、カートリッジや回路基板の装着状態の検出方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】基板の一実施形態を示す図。
【図2】過電圧検出端子と高電圧端子とメモリー用端子を示す斜視図。
【図3】基板の他の実施形態を示す図。
【図4】本発明による印刷システムの第1実施形態における印刷装置の構成を示す斜視図。
【図5】インクカートリッジの構成を示す斜視図。
【図6A】カートリッジ装着部の構成を示す図。
【図6B】カートリッジ装着部の構成を示す図。
【図6C】カートリッジ装着部の構成を示す図。
【図7】カートリッジ装着部内にインクカートリッジが装着された状態を示す概念図。
【図8】印刷システムの第1実施形態における基板の構成を示す図。
【図9】印刷システムの第1実施形態におけるインクカートリッジの基板と印刷装置の電気的構成を示すブロック図。
【図10】印刷システムの第1実施形態におけるセンサー関連処理回路の内部構成を示す図。
【図11】印刷システムの第1実施形態における接触検出部及び液量検出部と、カートリッジのセンサーとの接続状態を示すブロック図。
【図12】装着検出処理で使用される各種の信号を示すタイミングチャート。
【図13】接触不良がある場合の典型的な信号波形を示すタイミングチャート。
【図14】過電圧検出端子とセンサー端子がリーク状態にある場合の典型的な信号波形を示すタイミングチャート。
【図15】基板と接触検出部と検知パルス発生部と非接触状態検出部との接続状態の等価回路を示す図。
【図16】非接触状態検出部内に設けられるリーク判定部の構成例を示すブロック図。
【図17】4つのカートリッジに対する装着検出処理を示すタイミングチャート。
【図18】液量検出処理のタイミングチャート。
【図19】装着検出処理で使用される信号の他の例を示すタイミングチャートである。
【図20】印刷システムの第2実施形態における基板の構成を示す図。
【図21】印刷システムの第2実施形態におけるインクカートリッジと印刷装置の電気的構成を示すブロック図。
【図22】印刷システムの第2実施形態におけるカートリッジ検出回路の内部構成を示す図。
【図23】印刷システムの第2実施形態におけるカートリッジの装着検出処理の内容を示す説明図。
【図24】印刷システムの第2実施形態における個別装着電流値検出部の内部構成を示す図。
【図25】印刷システムの第2実施形態における装着検出処理の全体手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
A.回路基板の実施形態:
図1(A)は、本発明の一実施形態における回路基板200の表面の構成を示している。以下では、回路基板を単に「基板」とも呼ぶ。この基板200は、インクカートリッジ(後述)に装着されるものである。基板200の表面は、インクカートリッジに基板200が装着されたときに外側に露出している面である。基板200の上端部には、ボス溝201が形成され、基板200の下端部には、ボス穴202が形成されている。
【0014】
図1(A)における矢印SDは、印刷装置に設けられたカートリッジ装着部(後述)へのカートリッジの装着方向を示している。基板200の裏面には、記憶装置(図示省略)が設けられており、表面には9つの端子210〜290からなる端子群が設けられている。これらの端子210〜290は、印刷装置に設けられた装置側端子とそれぞれ接触する端子として使用される。なお、端子210〜290を「接触端子」とも呼ぶ。基板200に設けられる記憶装置は、例えば、カートリッジ100のインクに関する情報(例えばインク残量)を格納するために使用される。端子210〜290は、略矩形状に形成され、装着方向SDと略垂直な列を2列形成するように配置されている。2つの列のうち、装着方向SDの手前側の列(図1(A)における上側に位置する列)を上側列R1(第1列)と呼び、装着方向SDの奥側の列(図1(A)における下側に位置する列)を下側列R2(第2列)と呼ぶ。なお、これらの列R1,R2は、複数の端子の装置側端子と接触する接触部cpによって形成される列であると考えることも可能である。
【0015】
一実施形態において、上側列R1を形成する端子210〜240と、下側列R2を形成する端子250〜290は、それぞれ以下の機能(用途)を有する。
<上側列R1>
(1)過電圧検出端子210
(2)メモリー用端子220(リセット端子)
(3)メモリー用端子230(クロック端子)
(4)過電圧検出端子240
<下側列R2>
(5)高電圧端子250
(6)メモリー用端子260(電源端子)
(7)メモリー用端子270(接地端子)
(8)メモリー用端子280(データ端子)
(9)高電圧端子290
【0016】
5つのメモリー用端子220,230,260,270,280は、基板200に設けられた記憶装置に接続された端子である。但し、これらの複数のメモリー用端子にどのような機能(用途)を割り当てるかは任意である。2つの高電圧端子250,290は、メモリー用端子よりも高い電圧が印加される端子である。これらの高電圧端子250,290は、基板200に設けられた高電圧デバイス(記憶装置よりも高い電圧で動作するデバイスもしくは記憶装置よりも高い電圧が印加されるデバイス)に接続されている。高電圧デバイスの例については後述する。
【0017】
過電圧検出端子210(又は240)は、高電圧端子250(又は290)と過電圧検出端子210(又は240)との間の意図しない短絡によって過電圧検出端子210(又は240)に生じる過度に高い電圧(「過電圧」と呼ぶ)を検出するための端子である。過電圧は、本来、装置側端子から過電圧端子に印加される電圧よりも高い電圧である。過電圧検出端子210(又は240)は、高電圧端子250(又は290)と少なくとも1つのメモリー用端子260(又は280)の両方に隣接する位置に配置されている。また、過電圧検出端子210,240は、印刷装置に設けられた過電圧検出部(後述)に接続される。
【0018】
複数の端子210〜290のそれぞれは、その中央部に、印刷装置に設けられた複数の装置側端子のうちの対応する端子と接触する接触部cpを含んでいる。上側列R1を形成する端子210〜240の各接触部cpと、下側列R2を形成する端子250〜290の各接触部cpは、互い違いに配置され、いわゆる千鳥状の配置を構成している。また、上側列R1を形成する端子210〜240と、下側列R2を形成する端子250〜290も、互いの端子中心が装着方向SDに並ばないように、互い違いに配置され、千鳥状の配置を構成している。
【0019】
上側列R1の2つの過電圧検出端子210,240及びその接触部は、上側列R1の両端部、すなわち、上側列R1の最も外側にそれぞれ配置されている。また、下側列R2の2つの過電圧検出端子250,290及びその接触部は、下側列R2の両端部、すなわち、下側列R2の最も外側にそれぞれ配置されている。メモリー用端子220、230、260、270、280及びその接触部は、複数の端子210〜290の全体が配置されている領域内の略中央に集合して配置されている。
【0020】
図1(B)は、基板200の絶縁基材190の表面に形成された導体パターンの一例を示している。ここでは、図1(A)に示した9つの端子210〜290の他に、導体で形成された配線CPTと、7つのスルーホールTH220,TH230,TH250,TH260,TH270,TH280,TH290とが形成されている。これらの7つのスルーホールは、配線CPTによっていずれかの端子と接続されている。各スルーホールに付された符号の末尾の3桁の数字は、各スルーホールに接続されている端子を表している。例えば、図1(B)の左上に存在するスルーホールTH220は、端子220と接続されている。各スルーホールは、絶縁基材190を貫通して、基板表面の配線と基板裏面の配線を電気的に接続する。各スルーホールの裏面側にも配線や端子が形成されており、これらの配線や端子を介して記憶装置や高電圧デバイスが接続されている。
【0021】
図1(B)において、2つの過電圧端子210,240は、基板200の表面(厳密に言えば絶縁基材の表面)に形成された配線CPTaによって接続されている。より具体的に言えば、配線CPTaは、第1の過電圧端子210の下端(挿入方向の先端)から下方(挿入方向)に延び、第1の高電圧端子250とメモリー用端子260との間を通って基板200の下端に達し、更に、基板200の下端(挿入方向の先端)から上方(挿入方向と逆方向)に延びて第2の高電圧端子290とメモリー用端子280との間を通り、第2の過電圧端子240に達している。即ち、挿入方向とほぼ垂直の方向で隣り合う第1の高電圧端子250とメモリー用端子260との間、また、挿入方向とほぼ垂直の方向で隣り合う第2の高電圧端子290とメモリー用端子280との間に配線CPTaが位置している。
【0022】
図1(C)は、図1(B)の導体パターンの上にレジスト被膜RC1,RC2が形成された状態を示している。図1(A)に示した9つの端子210〜290は、印刷装置に設けられた装置側端子とそれぞれ接触する端子として使用されるので、レジスト被膜RC1.RC2で覆われない状態に維持されている。図1(C)の状態では、9つの端子210〜290を含む1つの領域にわたって1つのレジスト開口部NRC(レジスト被膜が存在しない領域)が形成されている。また、このレジスト開口部NRCを挟んで、上部のレジスト被膜RC1と下部のレジスト被膜RC2が互いに分離されている。上部のレジスト被膜RC1の下端は櫛歯状に形成されており、その櫛歯と端子210〜240が1つずつ交互に配置されている。また、下部のレジスト被膜RC2の上端も櫛歯状に形成されており、その櫛歯と端子250〜290が1つずつ交互に配置されている。なお、基板200の表面のうち、9つの端子210〜290以外の領域をすべてレジスト被膜で覆うようにしてもよい。
【0023】
図2(A)は、図1(C)における過電圧検出端子210と高電圧端子250とメモリー用端子260を示す斜視図である。図1(C)で説明したように、過電圧端子210に接続された配線CPTaの上にはレジスト被膜RC2が形成されている。図2(B)は、高電圧端子250と、これに隣接するメモリー用端子260と、これらの端子250、260の間に設けられた配線CPTa及びレジスト被膜RC2の高さの関係を示す断面図である。一実施形態では、絶縁基材190の表面から測定した端子210,260の高さ(厚み)、及び、配線CPTaの高さ(厚み)はいずれも約30μmに設定される。また、レジスト被膜RC2の高さ(厚み)は約20μmに設定される。このとき、配線CPTaとレジスト被膜RC2とが重なる凸部PRの高さは、約40μmとなる。凸部PRの高さが配線CPTaの高さとレジスト被膜RC2の高さの合計にならない理由は、液体状のレジストを塗布したときに、配線CPTaを覆うレジスト液の厚みが小さくなってしまうためである。この場合にも、配線CPTaとレジスト被膜RC2とが重なる凸部PRは、液滴の障壁として機能するので、インクなどの液滴が高電圧端子250からメモリー用端子260に広がる現象を防止することができる。従って、高電圧端子250に液滴が付着した場合にも、高電圧端子250からメモリー用端子260にその液滴が広がって端子250,260間に短絡が生じ、メモリー用端子260に、記憶装置の動作電圧の絶対最大定格よりも高い電圧が印加されることを防止できる。なお、このような凸部PRの効果を「ダム効果」とも呼ぶ。
【0024】
図2(C)は、高電圧端子250と、これに隣接する過電圧検出端子210の高さの関係を示す断面図である。図1(C)でも説明したように、高電圧端子250と過電圧検出端子210は、絶縁基材190の表面上にレジスト被膜が形成されていないレジスト開口部NRC内に配置されている。これらの端子250,210の間には、図2(B)で示したような凸部PRが存在しない。図2(C)と図2(B)とを比較すれば理解できるように、仮に高電圧端子250に液滴が付着すると、その液滴は、高電圧端子250からメモリー用端子260にその液滴が広がるよりも、高電圧端子250から過電圧端子210により広がりやすい構成となっている。従って、メモリー用端子260に記憶装置の動作電圧の絶対最大定格よりも高い電圧が印加されるよりも前の時点で、過電圧検出端子210で過電圧を先に検出できる可能性が高いので、高い電圧により記憶装置が損傷する可能性を低減できる。
【0025】
なお、2つの過電圧端子210,240は配線CPTaにより短絡接続されており、図2(B)に示した凸部PRは、この配線CPTa上にレジスト被膜RC2が形成されたものである。このように、図1及び図2に示した実施形態では、2つの過電圧端子210,240を短絡接続するための配線CPTaを利用して、ダム効果を有する凸部PRを形成している。従って、凸部PRを形成するための特別な構造(本来は不要な導体パターンなど)を設ける必要が無いという利点がある。但し、凸部PRを形成するために、いずれの端子にも接続されていない導体を端子250,260の間及び端子280,290の間にそれぞれ設けるようにしてもよい。
【0026】
図3(A)は、回路基板の他の実施形態を示している。図3(A)の基板200pは、図1(C)における配線CPTa(過電圧検出端子210,240間の接続配線)を省略し、この代わりに、過電圧検出端子210,240用のスルーホールTH210,TH240を設けたものである。過電圧検出端子210,240は、これらのスルーホールTH210,TH240を介して基板の裏面に形成された配線(図示省略)を介して接続される。この場合には、高電圧端子250とメモリー用端子260との間の凸部PRaは、レジスト被膜RC2のみで構成されている。従って、この凸部PRaは、図2(B)に示した凸部PR(配線CPTaとレジスト被膜RC2とを含む)よりも高さが低く、液滴の障壁としての機能もやや低いものである。しかしながら、図3(A)の基板200pにおいても、高電圧端子250に液滴が付着したときに、その液滴が、高電圧端子250からメモリー用端子260にその液滴が広がるよりも、高電圧端子250から過電圧端子210により広がりやすい構成となっている点で図1(C)に示した基板と共通している。
【0027】
図3(B)は、回路基板の更に他の実施形態を示している。図3(B)の基板200qは、図1(C)における過電圧検出端子210(又は240)と高電圧端子250(又は290)の間にも、レジスト被膜RCsを設けた構成を有している。この基板200qでは、図2(C)と異なり、過電圧検出端子210と高電圧端子250の間にレジスト被膜RCsが存在する。しかし、このレジスト被膜RCsの高さは、図2(B)に示した凸部PRよりも低い。従って、図3(B)の基板200qにおいても、高電圧端子250に液滴が付着したときに、その液滴が、高電圧端子250からメモリー用端子260にその液滴が広がるよりも、高電圧端子250から過電圧端子210により広がりやすい構成となっている点で図1(C)に示した基板と共通している。この例から理解できるように、過電圧検出端子210(又は240)と高電圧端子250(又は290)の間に絶縁基材190の表面から突出した凸部(例えばレジスト被膜RCs)が存在する場合には、この凸部よりも、高電圧端子250(又は290)とメモリー用端子260(又は280)との間の凸部PRの方が高さがより大きいことが好ましい。
【0028】
図3(C)は、回路基板の更に他の実施形態を示している。図3(C)の基板200rは、図3(A)におけるレジスト被膜の凸部PRaの代わりに、別の凸部PRbを設けた構成を有している。この凸部PRbは、レジスト被膜のような非導電性材料で形成されていてもよく、あるいは、端子や配線のような導電性材料で形成されていてもよい。なお、凸部PRbを導電性材料で形成する場合には、この凸部PRbをメモリー用端子と短絡接続しないことが好ましいが、過電圧検出端子と接続しても良い。また、凸部PRbを導電性材料で形成する場合には、端子210〜290を絶縁基材190に形成する工程と同工程にて凸部PRbを形成してもよい。この基板200rにおいても、高電圧端子250に液滴が付着したときに、その液滴が、高電圧端子250からメモリー用端子260にその液滴が広がるよりも、高電圧端子250から過電圧端子210により広がりやすい構成となっている点で図1(C)に示した基板と共通している。
【0029】
これらのいくつかの例からも理解できるように、回路基板としては、メモリー用端子(第1の端子)と高電圧端子(第2の端子)の間の基板表面上に凸部が設けられており、これによって、高電圧端子(第2の端子)に液滴が付着した場合に、高電圧端子(第2の端子)からメモリー用端子(第1の端子)に液滴が広がるよりも、高電圧端子(第2の端子)から過電圧検出端子(第3の端子)に液滴が広がり易いように構成された任意の回路基板を採用することが可能である。なお、メモリー用端子(第1の端子)と高電圧端子(第2の端子)の間に形成される凸部は、その表面が非導電性であることが好ましい。また、高電圧端子(第2の端子)と過電圧検出端子(第3の端子)との間に何らかの凸部が存在する場合には、この凸部よりも、メモリー用端子(第1の端子)と高電圧端子(第2の端子)との間に設けられた凸部の方が高さがより大きいことが好ましい。
【0030】
なお、基板上の端子や配線の個数や配列は、図1〜図3に示したものから任意に変更可能である。但し、基板には、少なくとも1つのメモリー用端子と、少なくとも1つの高電圧端子と、少なくとも1つの過電圧検出端子を設けることが好ましい。この場合においても、過電圧検出端子は、高電圧端子とメモリー用端子の両方に隣接する位置に配置されていることが好ましい。なお、以下で説明する印刷システムの実施形態では、基板の端子配列の具体例を説明しているが、配線パターンやスルーホール、レジスト被膜などについては図示及び説明を省略する。
【0031】
B.印刷システムの第1実施形態:
図4は、本発明による印刷システムの一実施形態における印刷装置の構成を示す斜視図である。印刷装置1000は、インクカートリッジが装着されるカートリッジ装着部1100と、回動自在なカバー1200と、操作部1300とを有する。この印刷装置1000は、ポスターなどの大判の用紙(A2〜A0サイズ等)に印刷を行う大型のインクジェットプリンター(Large Format Ink Jet Printer)である。カートリッジ装着部1100を「カートリッジホルダー」又は単に「ホルダー」とも呼ぶ。図4に示す例では、カートリッジ装着部1100には、4つのインクカートリッジが独立に装着可能であり、例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4種類のインクカートリッジが装着される。なお、カートリッジ装着部1100に装着されるインクカートリッジとしては、これ以外の任意の複数種類のインクカートリッジを採用可能である。図4には、説明の便宜上、互いに直交するXYZ軸が描かれている。+X方向は、インクカートリッジ100がカートリッジ装着部1100に挿入される方向(以下、「挿入方向」又は「装着方向」と呼ぶ)である。カートリッジ装着部1100には、カバー1200が開閉可能に取り付けられている。カバー1200は省略可能である。操作部1300は、ユーザーが各種の指示や設定を行うための入力装置であり、また、ユーザーに各種の通知を行うための表示部を備えている。なお、この印刷装置1000は、印刷ヘッドや、印刷ヘッドの走査を行うための主走査送り機構及び副走査送り機構、印刷ヘッドを駆動してインクを吐出させるヘッド駆動機構等を有しているが、ここでは図示を省略する。この印刷装置1000のように、ユーザーにより交換されるカートリッジが、印刷ヘッドのキャリッジ以外の場所に設けられたカートリッジ装着部に装着される印刷装置のタイプを、「オフキャリッジタイプ」と呼ぶ。
【0032】
図5は、インクカートリッジ100の外観を示す斜視図である。図5のXYZ軸は、図4のXYZ軸に対応している。なお、インクカートリッジを単に「カートリッジ」とも呼ぶ。このカートリッジ100は、扁平な略直方体の外観形状を有しており、3方向の寸法L1,L2,L3のうちで、長さL1(挿入方向のサイズ)が最も大きく、幅L2が最も小さく、高さL3が長さL1と幅L2の中間である。但し、印刷装置のタイプによっては、長さL1が高さL3よりも小さいカートリッジも存在する。
【0033】
カートリッジ100は、先端面(第1の面)Sfと、後端面(第2の面)Srと、天井面(第3の面)Stと、底面(第4の面)Sbと、2つの側面(第5及び第6の面)Sc,Sdとを備えている。先端面Sfは、挿入方向Xの先頭に位置する面である。先端面Sfと後端面Srは、6つの面のうちで最も小さく、互いに対向している。先端面Sfと後端面Srのそれぞれは、天井面Stと底面Sbと2つの側面Sc,Sdとに交わっている。カートリッジ100がカートリッジ装着部1100に装着された状態では、天井面Stが鉛直方向の上端に位置し、底面Sbが鉛直方向の下端に位置する。2つの側面Sc,Sdは、6つの面の中で最も大きな面であり、互いに対向している。カートリッジ100の内部には、可撓性材料で形成されたインク収容室120(「インク収容袋」とも呼ぶ)が設けられている。インク収容室120は、可撓性材料で形成されているので、インクが消費されてゆくにつれて次第に収縮し、主に厚み(Y方向の幅)が小さくなってゆく。
【0034】
先端面Sfは、2つの位置決め穴131,132と、インク供給口110とを有している。2つの位置決め穴131,132は、カートリッジ装着部1100内におけるカートリッジの収容位置を定めるために用いられる。インク供給口110は、カートリッジ装着部1100のインク供給管と接続されて、カートリッジ100内のインクを印刷装置1000に供給する。天井面Stには、回路基板200が設けられている。図5の例では、回路基板200は、天井面Stの先端(挿入方向Xの最も奥側の端部)に設けられている。但し、回路基板200は、天井面Stの先端近傍の他の位置に設けても良く、さらに、天井面St以外の位置に設けても良い。回路基板200には、インクに関する情報を格納するための不揮発性の記憶装置が搭載されている。なお、回路基板200を単に「基板」とも呼ぶ。底面Sbは、カートリッジ100を収容位置に固定するために用いられる固定溝140を有している。第1の側面Scと第2の側面Sdは互いに対向しており、また、先端面Sf,天井面St、後端面Sr,及び,底面Sbと直交する。第2の側面Sdと先端面Sfが交わる位置には、凹凸嵌合部134が配置されている。この凹凸嵌合部134は、カートリッジ装着部1100の凹凸嵌合部と共に、カートリッジの誤装着を防止するために用いられる。
【0035】
このカートリッジ100は、大型インクジェットプリンター用のカートリッジであり、個人向けの小型インクジェットプリンター用のカートリッジに比べて、カートリッジ寸法が大きく、また、収容されているインク量も多い。例えば、カートリッジの長さL1は、大型インクジェットプリンター用のカートリッジでは100mm以上であるのに対して、小型インクジェットプリンター用のカートリッジでは70mm以下である。また、未使用時のインク量は、大型インクジェットプリンター用のカートリッジでは17ml以上(典型的には100ml以上)であるのに対して、小型インクジェットプリンター用のカートリッジでは15ml以下である。また、多くの場合に、大型インクジェットプリンター用のカートリッジは、先端面(挿入方向の先頭の面)においてカートリッジ装着部と機械的に連結されるのに対して、小型インクジェットプリンター用のカートリッジでは底面においてカートリッジ装着部と機械的に連結される。大型インクジェットプリンター用のカートリッジでは、このような寸法、重量、又は、カートリッジ装着部との連結位置に関する特徴点に起因して、小型インクジェットプリンター用のカートリッジに比べて回路基板200の端子における接触不良が発生し易い傾向にある。この点については更に後述する。
【0036】
ところで、従来は、カートリッジに設けられている多数の端子のうちの1つ又は2つの端子を用いて装着状態の検出が行われるのが普通であった。しかし、カートリッジが正しく装着されていることが検出された場合にも、装着検出に使用されていない他の端子については、印刷装置の端子との接触が不十分な場合がある。特に、記憶装置用の端子の接触が不十分な場合には、記憶装置からのデータの読み出し時や記憶装置へのデータの書き込み時にエラーが発生するという問題が生じる。
【0037】
このような端子の接触不良の問題は、ポスターなどの大判の用紙(A2〜A0サイズ等)に印刷を行う大型インクジェットプリンター用のインクカートリッジにおいて特に重要である。すなわち、大型インクジェットプリンターでは、インクカートリッジの寸法が小型インクジェットプリンターに比べて大きく、また、カートリッジに収容しているインク重量も多い。発明者らは、このような寸法及び重量の違いから、大型インクジェットプリンターでは、小型インクジェットプリンターに比べてインクカートリッジが傾き易い傾向にあることを見いだした。また、大型インクジェットプリンターでは、インクカートリッジとカートリッジホルダー(「カートリッジ装着部」とも呼ぶ)との連結位置がインクカートリッジの側面に設けられていることが多く、一方、小型インクジェットプリンターではインクカートリッジの底面に連結位置が設けられていることが多い。このような連結位置の相違点からも、大型インクジェットプリンターは、小型インクジェットプリンターに比べてインクカートリッジが傾き易い傾向にあることが判明した。このように、大型インクジェットプリンターでは、種々の構成に起因して、小型インクジェットプリンターに比べてインクカートリッジが傾き易く、この結果、基板の端子における接触不良が発生し易い傾向にある。そこで、発明者らは、特に大型インクジェットプリンターに関して、記憶装置用の端子の接触状態が良好であることをより確実に検出したいという要望を持つに至ったものである。
【0038】
図6A〜図6Cは、カートリッジ装着部1100の構成を示す図である。図6Aは、カートリッジ装着部1100を斜め後方から見た斜視図であり、図6Bは、カートリッジ装着部1100の内部を、その正面(カートリッジを挿入する口)から見た図である。図6Cは、カートリッジ装着部1100の内部を断面から見た図である。なお、図6A〜図6Cでは、図示の便宜上、一部の壁部材などを省略している。図6A〜図6CのXYZ軸は図4,図5のXYZ軸に相当する。カートリッジ装着部1100は、カートリッジを収容するための4つの収容スロットSL1〜SL4を備えている。図6Bに示すように、カートリッジ装着部1100の内部には、1スロット毎に、インク供給管1180と、一対の位置決めピン1110,1120と、凹凸嵌合部1140と、接点機構1400とが設けられている。図6Cに示すように、インク供給管1180と、一対の位置決めピン1110,1120と、凹凸嵌合部1140は、カートリッジ装着部の奥壁部材1160に固定されている。インク供給管1180と、位置決めピン1110,1120と、凹凸嵌合部1140とは、スライダー部材1150に設けられた貫通孔1181,1111,1121,1141に挿入され、カートリッジの装着方向とは逆向きに突出して配置されている。図6Aは、奥壁部材1160をはずして、スライダー部材1150を裏側からみた図である。図6Aでは、位置決めピンを省略して図示している。図6Aに示すように、スライダー部材1150の裏側には、一対の位置決めピン1110,1120に対応した一対の付勢バネ1112,1122が設けられている。図6Cに示すように、一対の付勢バネ1112,1122は、スライダー部材1150と奥壁部材1160に固定して配置されている。
【0039】
インク供給管1180は、カートリッジ100のインク供給口110(図5(A))に挿入されて、インクを印刷装置1000内部の印刷ヘッドに供給するために用いられる。位置決めピン1110,1120は、カートリッジ100がカートリッジ装着部1100に挿入される際に、カートリッジ100に設けられた位置決め穴131,132に挿入されて、カートリッジ100の収容位置を定めるために用いられる。凹凸嵌合部1140は、カートリッジ100の凹凸嵌合部134の形状に対応する形状を有しており、各収容スロットSL1〜SL4毎に異なる形状を有している。これにより、各収容スロットSL1〜SL4には、予め決定された一種類のインクを収容するカートリッジのみが収容可能となり、他の色のカートリッジは収容できないこととなる。
【0040】
各収容スロットの奥の壁面に配置されたスライダー部材1150は、カートリッジの装着方向(X方向)及び排出方向(−X方向)にスライド可能に構成されている。各収容スロットに設けられた一対の付勢バネ1112,1122(図6A)は、スライダー部材1150を排出方向に付勢している。カートリッジ100は、収容スロットに挿入される際に、スライダー部材1150とともに一対の付勢バネ1112,1122を装着方向に押してゆき、付勢バネ1112,1122の付勢力に抗しつつ押し込まれる。従って、カートリッジ100は、カートリッジ装着部1100に収容された状態において、一対の付勢バネ1112,1122によって排出方向に付勢される。また、この収容状態では、各収容スロットSL1〜SL4の底部に設けられた固定部材1130(図6B)が、カートリッジ100の底面Sbに設けられた固定溝140(図5(A))に係合する。この固定部材1130と固定溝140の係合によって、付勢バネ1112,1122の付勢力によりカートリッジ100がカートリッジ装着部1100から排出されてしまうことが防止される。
【0041】
カートリッジ100を排出する場合には、ユーザーによりカートリッジ100が一旦装着方向に押し込まれると、これに応じて固定部材1130と固定溝140との間の係合が外れる。この結果、カートリッジ100は、一対の付勢バネ1112,1122の付勢力により排出方向(−X方向)に押し出される。従って、ユーザーはカートリッジ100をカートリッジ装着部1100から容易に取り出すことができる。
【0042】
接点機構1400(図6B)は、カートリッジ100がカートリッジ装着部1100に挿入された場合に、回路基板200の端子210〜290(図1)と接触して導通する複数の装置側端子を有する。印刷装置1000の制御回路は、この接点機構1400を介して、回路基板200との間で信号の送受信を行う。
【0043】
図7(A)は、カートリッジ装着部1100内にカートリッジ100が適正に装着された状態を示している。この状態では、カートリッジ100は傾いておらず、その上面や底面がカートリッジ装着部1100の上端部材や下端部材と平行な状態にある。カートリッジ装着部1100のインク供給管1180は、カートリッジ100のインク供給口110に連結され、カートリッジ装着部1100の位置決めピン1110,1120は、カートリッジ100の位置決め穴131,132に挿入される。さらに、カートリッジ装着部1100の底部に設けられた固定部材1130は、カートリッジ100の底面に設けられた固定溝140に係合する。そして、カートリッジの先端面Sfが、カートリッジ装着部1100の一対の付勢バネ1112,1122によって排出方向に付勢されている。カートリッジ100が適正に装着された状態では、カートリッジ装着部1100の接点機構1400と、カートリッジ100の基板200の端子210〜290(図1)とが互いに良好な接触状態で接触する。
【0044】
ところで、カートリッジ装着部1100は、カートリッジ100の装着を容易にするために、その内部に多少の遊びがある。このため、カートリッジ100は、図7(A)に示すような傾いていない正立した適正な状態で収納されるとは限らず、カートリッジの幅方向(Y方向)に平行な軸を中心として傾く場合がある。具体的には、図7(B)に示すようにカートリッジの後端がやや下がった状態に傾斜したり、逆に、図7(C)に示すようにカートリッジの後端がやや上がった状態に傾斜したりする場合が生じる。特に、インクが消費されてゆき、インク界面LLが低下してくると、収容されているインク重量の変化に応じた重心の変化や、付勢バネ1112,1122による付勢力とインク重量を含むカートリッジ重量とのバランスが変化する。そして、この重量バランスの変化に応じてカートリッジが傾きやすくなる傾向がある。カートリッジが傾くと、カートリッジの基板200に設けられた複数の端子の中のいくつかの端子に接触不良が発生する可能性がある。特に、図7(B),(C)の状態では、基板200(図1)の上側列R1の端子群210〜240と、下側列R2の端子群250〜290のうちの一方の1つ以上の端子に接触不良が発生する可能性がある。
【0045】
また、カートリッジが傾く際には、図7(B),(C)とは垂直な方向の傾き(装着方向Xに平行な軸を中心とした傾き)も併せて発生する場合がある。このときには、図1に示す基板200も、その装着方向SDに平行な軸を中心として左右に傾き、基板200の左側にある端子群210,220,250,260と、右側にある端子230,240,280,290群と、のうちの一方の1つ以上の端子に接触不良が発生する可能性がある。
【0046】
このような接触不良が発生すると、カートリッジの記憶装置203と印刷装置1000との間の信号の送受信を正常に行うことができないという不具合が生じる。また、インク滴やほこりなどの異物が基板200の端子付近に付着すると、端子同士に意図しない短絡やリークが発生する場合もある。以下で説明する各種の実施形態における装着状態の検出処理では、このようなカートリッジの傾きに起因する接触不良を検出したり、異物に起因する意図しない短絡やリークを検出したりするために実行される。
【0047】
ところで、大型のインクジェットプリンター用のカートリッジは、個人向けの小型のインクジェットプリンター用のカートリッジと比較して、以下のような特徴点を有している。
(1)カートリッジ寸法が大きい(長さL1が100mm以上)。
(2)収容されているインク量が多い(17ml以上であり、典型的には100mL以上である)。
(3)先端面(装着方向の先頭の面)においてカートリッジ装着部と機械的に連結される。
(4)インク収容室内の空間が区切られておらず、単一のインク収容室(インク収容袋)を構成している。
大型インクジェットプリンターの種類によっては、これらの特徴点(1)〜(4)のうちのいくつかを有さないカートリッジも利用されるが、これらのうちの少なくとも1つの特徴点を有するものが普通である。
【0048】
大型インクジェットプリンター用のカートリッジでは、このような寸法、重量、カートリッジ装着部との連結位置、又はインク室構成の特徴点を有するために、小型インクジェットプリンター用のカートリッジに比べてカートリッジが傾き易く、この結果、基板200の端子における接触不良が発生し易い傾向にある。従って、特に大型インクジェットプリンター及びそのカートリッジについて、以下で説明するような端子の接触不良、意図しない短絡、リーク等の検出処理を行う意義が大きいものと考えられる。
【0049】
図8は、印刷システムの第1実施形態における基板200aの構成を示す図である。端子210〜290の配列は、図1(A)に示したものと同じである。但し、各端子の機能(用途)は以下の通りであり、図1(A)に示した実施形態と若干異なっている。
【0050】
<上側列R1>
(1)過電圧検出端子210(リーク検出/装着検出兼用)
(2)リセット端子220
(3)クロック端子230
(4)過電圧検出端子240(リーク検出/装着検出兼用)
<下側列R2>
(5)センサー端子250(装着検出兼用)
(6)電源端子260
(7)接地端子270
(8)データ端子280
(9)センサー端子290(装着検出兼用)
【0051】
上側列R1の両端にある端子210,240とその接触部は、過電圧の検出(後述)と、端子間のリーク検出(後述)と、装着検出(接触検出)とに使用される。また、下側列R2の端子250,290とその接触部は、カートリッジ100に設けられたセンサーを使用したインク残量の検出と、装着検出(接触検出)の両方に使用される。なお、この端子群210〜290の接触部を含む四角形の領域の四隅にある端子210,240,250,290の4つの接触部が装着検出(接触検出)に使用される(後述)。なお、印刷システムの第1実施形態において、上側列R1の両端に配置された2つの端子210,240の接触部には、記憶装置を駆動するための第1電源電圧VDD(後述)と同じ電圧、又は、第1電源電圧VDDから生成された電圧が印加され、下側列R2の両端に配置された2つの端子250,290の接触部には、印刷ヘッドを駆動するために用いられる第2電源電圧VHV(後述)と同じ電圧、又は、第2電源電圧VHVから生成された電圧が印加される。ここで、「第2電源電圧VHVから生成された電圧」としては、第1電源電圧VDDよりも高く、第2電源電圧VHVよりも低い電圧を使用することが好ましい。
【0052】
ところで、印刷材カ―トリッジの装着状態や接触検出の一態様として、カートリッジの端子同士に意図しない短絡が生じていないか否かを調べる短絡検出が行われる場合がある。短絡検出では、例えば、通常の電源電圧(3.3V)よりも高い電圧が印加される高電圧用端子に隣接した位置に過電圧検出用端子を設け、この過電圧検出用端子に過剰な電圧が発生するか否かが調べられる。そして、過電圧検出用端子に過剰な電圧が検出された場合には、高電圧用端子への高電圧の印加が停止される。しかしながら、過電圧検出用端子に過剰な電圧が発生したときに直ちに高電圧の印加を停止したとしても、その停止前に発生していた過剰な電圧に起因して、カートリッジや印刷装置に何らかの不具合が発生する可能性を否定できないという問題がある。以下に説明する印刷システムの第1実施形態や印刷システムの第2実施形態は、このような従来の問題点を解決するための工夫も含んでいる。
【0053】
図9は、第1実施形態におけるカートリッジの基板200aと印刷装置1000との電気的構成を示すブロック図である。印刷装置1000は、表示パネル430と、電源回路440と、主制御回路400と、サブ制御回路500aとを備えている。表示パネル430は、ユーザーに印刷装置1000の動作状態や、カートリッジの装着状態などの各種の通知を行うための表示部である。表示パネル430は、例えば、図4の操作部1300に設けられる。電源回路440は、第1の電源電圧VDDを生成する第1電源441と、第2の電源電圧VHVを生成する第2電源442とを有している。第1の電源電圧VDDは、ロジック回路に用いられる通常の電源電圧(定格3.3V)である。第2の電源電圧VHVは、印刷ヘッドを駆動してインクを吐出させるために用いられる高い電圧(例えば定格42V)である。これらの電圧VDD、VHVは、サブ制御回路500aに供給され、また、必要に応じて他の回路にも供給される。なお、主制御回路400と、サブ制御回路500aとを含む回路を、「制御回路」と呼ぶことも可能である。
【0054】
カートリッジの基板200a(図8)に設けられた9つの端子のうち、リセット端子220と、クロック端子230と、電源端子260と、接地端子270と、データ端子280は、記憶装置203に電気的に接続されている。記憶装置203は、アドレス端子を持たず、クロック端子から入力されるクロック信号SCKのパルス数と、データ端子から入力されるコマンドデータとに基づいてアクセスするメモリセルが決定され、クロック信号SCKに同期して、データ端子よりデータを受信し、もしくは、データ端子からデータを送信する不揮発性メモリーである。クロック端子230は、サブ制御回路500aから記憶装置203にクロック信号SCKを供給するために用いられる。電源端子260と接地端子270には、印刷装置1000から記憶装置を駆動するための電源電圧(例えば定格3.3V)と接地電圧(0V)がそれぞれ供給されている。この記憶装置203を駆動するための電源電圧は、第1の電源電圧VDDから直接与えられる電圧か、第1の電源電圧VDDから生成されるもので第1の電源電圧VDDよりも低い電圧でもよい。データ端子280は、サブ制御回路500aと記憶装置203との間で、データ信号SDAをやり取りするために用いられる。リセット端子220は、サブ制御回路500aから記憶装置203にリセット信号RSTを供給するために用いられる。2つの過電圧検出端子210,240は、カートリッジ100の基板200a(図8)内で配線を介して互いに接続されている。なお、図9の例では2つの過電圧検出端子210,240は配線により接続されているが、これらを接続する配線の一部を抵抗に置き換えてもよい。なお、2つの端子が配線により接続されている状態を、「接続」又は「導線接続」とも呼ぶ。
【0055】
図9において、装置側端子510〜590と、基板200aの端子210〜290とを接続する配線経路には、配線名SCK,VDD,SDA,RST,OV1,OV2,DT1,DT2が付されている。これらの配線名のうち、記憶装置用の配線経路のものは、信号名と同じ名称が使用されている。なお、装置側端子510〜590は、図6B及び図7に示した接点機構1400に設けられている。装置側端子520、530、560〜580(第1の装置側端子)は、回路基板の端子220、230、260〜280に接触して接続され、また、プリンターの本体のメモリー制御回路に接続されている。装置側端子550と590(第2の装置側端子)は、回路基板の端子250と290に接続される。装置側端子510と540(第3の装置側端子)は、回路基板の端子210と240に接続される。
【0056】
基板200aは、記憶装置203と、9つの端子210〜290の他に、インク残量の検出に使用されるセンサー208を備えている。センサー208としては、例えば、ピエゾ素子を使用した周知のインク残量センサーを使用することができる。なお、ピエゾ素子は、電気的には容量素子として機能する。
【0057】
主制御回路400は、CPU410と、メモリー420とを有している。サブ制御回路500aは、メモリー制御回路501と、センサー関連処理回路503とを有している。センサー関連処理回路503は、カートリッジ装着部1100におけるカートリッジの装着状態の検出と、センサー208を用いたインク残量の検出とを行うための回路である。センサー関連処理回路503は、カートリッジの装着状態の検出を行うために使用されるので、センサー関連処理回路503を「装着検出回路」と呼ぶことも可能である。センサー関連処理回路503は、カートリッジのセンサー208に、記憶装置203に印加又は供給される電源電圧VDDに比べて高い電圧を印加又は供給する高電圧回路である。なお、センサー208に印加する高い電圧としては、印刷ヘッドの駆動に用いる電源電圧VHV(定格42V)そのものを利用するか、もしくは、印刷ヘッドの駆動に用いる電源電圧VHVから生成したやや低い電圧(例えば36V)を利用することが可能である。
【0058】
図10は、印刷システムの第1実施形態におけるセンサー関連処理回路503の内部構成を示す図である。ここでは、4つのカートリッジがカートリッジ装着部に装着された状態が示されており、各カートリッジを区別するために参照符号IC1〜IC4が使用されている。センサー関連処理回路503は、非装着状態検出部670と、過電圧検出部620と、検知パルス発生部650と、センサー処理部660とを有している。センサー処理部660は、接触検出部662と、液量検出部664とを含んでいる。接触検出部662は、カートリッジのセンサー208を用いてセンサー端子250,290の接触状態の検出を行う。液量検出部664は、カートリッジのセンサー208を用いてインク残量の検出を行う。検知パルス発生部650と非装着状態検出部670は、全カートリッジが装着されているか否かの検出(非装着状態の検出処理)と、端子210/250間、及び、端子240/290間のリーク状態の検出と、を行う。過電圧検出部620は、過電圧検出端子210,240に過大な電圧が印加されているか否かの検出を行う。
【0059】
各カートリッジ内において、第1と第2の過電圧検出端子210,240は配線を介して互いに接続されている。図10の例では、過電圧検出端子210,240は配線により短絡接続されているが、その接続配線の一部を抵抗としても良い。1番目のカートリッジIC1の第1の過電圧検出端子210は、対応する装置側端子510を介してセンサー関連処理回路503内の配線651に接続されており、この配線651は、非装着状態検出部670に接続されている。n番目(n=1〜3)のカートリッジの第2の過電圧検出端子240と、n+1番目のカートリッジの第1の過電圧検出端子210とは、対応する装置側端子540,510を介して互いに接続される。また、4番目のカートリッジIC4の第2の過電圧検出端子240は、対応する装置側端子540を介して検知パルス発生部650に接続される。すべてのカートリッジIC1〜IC4がカートリッジ装着部内に正しく装着されていれば、各カートリッジの過電圧検出端子240,210を順次経由して、検知パルス発生部650と非装着状態検出部670とが互いに接続される。一方、1つでも未装着のカートリッジがある場合や装着不良がある場合には、装置側端子510,540もしくはカートリッジIC1〜IC4の端子210,240のいずれかに未接触や接触不良が生じて、検知パルス発生部650と非装着状態検出部670とが非接続状態となる。従って、非装着状態検出部670は、検知パルス発生部650から送られる検査信号DPinsに対応する応答信号DPresを受信できるか否かに応じて、カートリッジIC1〜IC4の過電圧検出端子210,240のいずれかに未接触や接触不良が存在するか否かを判定することができる。このように、印刷システムの第1実施形態では、すべてのカートリッジIC1〜IC4がカートリッジ装着部内に装着されたときには各カートリッジの過電圧検出端子240,210が順次直列に接続されるので、その接続状態を調べることによって、カートリッジIC1〜IC4の過電圧検出端子210,240のいずれかに未接触や接触不良が存在するか否かを判定することができる。このような未接触や接触不良が発生する典型的な場合は、1つ以上のカートリッジが未装着の場合である。従って、非装着状態検出部670は、検査信号DPinsに対応する応答信号DPresを受信できるか否かに応じて、1つ以上のカートリッジが未装着か否かを直ちに判定することが可能である。検査信号DPinsは、第1の電源電圧VDDから供給される電圧をもとに生成すればよい。
【0060】
4つのカートリッジIC1〜IC4の第1の過電圧検出端子210は、対応する装置側端子510を介して、ダイオード641〜644のアノード端子に接続される。また、4つのカートリッジIC1〜IC4の第2の過電圧検出端子240は、対応する装置側端子540を介して、ダイオード642〜645のアノード端子に接続される。なお、第2のダイオード642のアノード端子は、第1のカートリッジIC1の第2の過電圧検出端子240と、第2のカートリッジIC2の第1の過電圧検出端子210に共通に接続される。ダイオード643,644も同様に、1つのカートリッジの第2の過電圧検出端子240と隣接するカートリッジの第1の過電圧検出端子210に共通に接続される。これらのダイオード641〜645のカソード端子は、過電圧検出部620に並列に接続されている。これらのダイオード641〜645は、過電圧検出端子210,240に異常な過電圧(本来、端子210、240に印加される電圧よりも高い電圧)が印加されていないか否かを監視するために使用される。このような異常な電圧値(「過電圧」と呼ぶ)は、各カートリッジの過電圧検出端子210,240のいずれかと、センサー端子250,290のいずれかとの間に意図しない短絡が生じている場合に発生する可能性がある。例えば、インク滴やゴミなどの異物が基板200(図8)の表面に付着すると、第1の過電圧検出端子210と第1のセンサー端子250の間、又は、第2の過電圧検出端子240と第2のセンサー端子290の間に意図しない短絡が発生する可能性がある。このような意図しない短絡が発生すると、ダイオード641〜645のいずれかを介して過電圧検出部620に電流が流れるので、過電圧検出部620は、過電圧の発生の有無、及び、意図しない短絡の発生の可能性の有無を判定することが可能である。また、一般に、意図しない短絡の原因となる異物は、基板200の上方から下方に、かつ、外側から内側に向けて進入しやすい。従って、過電圧検出端子210,240の接触部が基板200aの上側列R1上に配置される接触部の両端(図8)の接触部となるように配置しておけば、過電圧検出端子210,240が、センサー端子250,290の近くに配置されるので、センサー端子250、290に印加される高電圧がメモリー端子220,230,260,270,280に印加される可能性を低減することが可能である。
【0061】
図11は、接触検出部662及び液量検出部664と、カートリッジのセンサー208との接続状態を示すブロック図である。センサー208は、切換スイッチ666を介して、接触検出部662と液量検出部664の一方に選択的に接続される。センサー208が接触検出部662に接続された状態では、接触検出部662が、センサー端子250,290とこれらに対応する装置側端子550,590とが良好な接触状態にあるか否かを検出する。一方、センサー208が液量検出部664に接続された状態では、液量検出部664が、カートリッジ内のインク残量が所定量以上あるか否かを検出する。接触検出部662は、比較的低い電源電圧VDD(例えば3.3V)を用いて動作する。一方、液量検出部664は、比較的高い電源電圧HV(例えば36V)を用いて動作する。
【0062】
なお、接触検出部662と液量検出部664は、個々のカートリッジ毎に個別に設けられていてもよく、あるいは、複数のカートリッジに共通に、1つの接触検出部662と1つの液量検出部664が設けられていても良い。後者の場合には、個々のカートリッジのセンサー端子250,290と、接触検出部662及び液量検出部664との接続状態を切り換えるための切り換えスイッチがさらに設けられる。
【0063】
図12は、印刷システムの第1実施形態におけるカートリッジの装着検出処理(「接触検出処理」とも呼ぶ)に用いられる各種の信号を示すタイミングチャートである。カートリッジの装着検出処理には、第1の装着検出信号SPins,SPresと、第2の装着検出信号DPins,DPresとが使用される。なお、信号名の末尾に「ins」が付された信号SPins,DPinsは、センサー関連処理回路503からカートリッジの基板200に出力される信号であり、「装着検査信号」と呼ぶ。また、信号名の末尾に「res」が付された信号SPres、DPresは、カートリッジの基板200からセンサー関連処理回路503に入力される信号であり、「装着応答信号」と呼ぶ。
【0064】
以下に示すように、印刷システムの第1実施形態では、以下の3種類の装着状態検出処理が実行される。
(1)第1の装着検出処理:第1の装着検出信号SPins,SPresを用いた個々のカートリッジのセンサー端子250,290の接触状態の検出
(2)第2の装着検出処理:第2の装着検出信号DPins,DPresを用いた1つ以上のカートリッジの非装着状態の検出(全カートリッジの過電圧検出端子210,240の接触状態の検出)
(3)リーク検出処理:第2の装着検出信号DPins,DPresを用いた端子210/250間、及び、端子240/290間のリーク状態の検出
【0065】
第1と第2の装着検出処理では端子の接触状態が検出されるので、これらの処理を「接触検出処理」と呼ぶことも可能である。また、第1と第2の装着検出信号を「第1の接触検出信号SPins,SPres」、「第2の接触検出信号DPins,DPres」とも呼ぶことも可能である。
【0066】
第1の装着検出信号SPins,SPresは、接触検出部662が、個々のカートリッジのセンサー端子250,290の接触状態を検出するために使用される。図10に示すように、第1の装着検査信号SPinsは、接触検出部662から一方のセンサー端子290に供給される信号であり、第1の装着応答信号SPresは、他方のセンサー端子250から接触検出部662に戻る信号である。第1の接触検査信号SPinsは、図12の第1の期間P11にハイレベルH1になり、その後の第2の期間P12にローレベルになる信号である。なお、第1の装着検査信号SPinsのハイレベルH1の電圧は、例えば3.0Vに設定されている。端子250,290の両方が正常な接触状態にある場合には、第1の装着応答信号SPresは、第1の装着検査信号SPinsと同じレベル変化を示す。
【0067】
第2の装着検査信号DPinsは、図10に示すように、検知パルス発生部650から第4のカートリッジIC4の過電圧検出端子240に供給される信号であり、第2の装着応答信号DPresは、第1のカートリッジIC1の過電圧検出端子210から非装着状態検出部670に入力される信号である。図12に示すように、第2の装着検査信号DPinsは、7つの期間P21〜P27に区分される。すなわち、第2の装着検査信号DPinsは、期間P21ではハイインピーダンス状態になり、期間P22,P24,P26ではハイレベルH2になり、他の期間P23,P25,P27ではローレベルになる。第2の装着検査信号DPinsのハイレベルH2の電圧は、2.7Vに設定されており、第1の装着検査信号SPinsのハイレベルH1(3.0V)と異なる電圧レベルに設定されている。なお、第2の装着検査信号DPinsの第1と第2の期間P21,P22は、第1の装着検査信号SPinsの第1の期間P11の一部に相当する。また、第2の装着検査信号DPinsの第4〜第7の期間P24〜P27は、第1の装着検査信号SPinsの第2の期間P12の一部に相当する。全カートリッジの端子210,240が正常な接触状態にある場合には、第2の装着応答信号DPresは、第1の期間P21でローレベルとなり、第2の期間P22以降は第2の装着検査信号DPinsと同じレベルを示す信号となる。なお、第2の装着応答信号DPresが第1の期間P21でローレベルとなる理由は、第1の期間P21の直前の状態において、第2の装着応答信号DPresが(すなわち非装着状態検出部670への入力配線651が)ロ―レベルとなっているからである。
【0068】
図13(A)は、端子250,290の少なくとも一方の接触が不良である場合の信号波形を示している。この場合には、第1の装着応答信号SPresは、期間P11,P12を通じてローレベルになる。接触検出部662は、期間P11内の予め定められたタイミングt11で装着応答信号SPresのレベルを調べることによって、端子250,290の接触の良否を判定することができる。端子250,290に接触不良のあるカートリッジが検出された場合には、主制御回路400が、表示パネル430に、そのカートリッジの装着状態が不良である旨を示す情報(文字や画像)を表示してユーザーに通知することが好ましい。
【0069】
図13(B)は、全カートリッジの端子210,240のうちの少なくとも一つの端子が接触不良にある場合の信号波形を示している。この場合には、第2の装着応答信号DPresは、期間P21〜P27を通じてローレベルになる。従って、非装着状態検出部670は、第2の装着検査信号DPinsがハイレベルとなる期間P22,P24,P26の予め設定されたタイミングt22,t24,t25において、第2の装着応答信号DPresのレベルを調べることによって、1つ以上のカートリッジが正常に装着していない状態を検出することが可能である。なお、この判定は、3つのタイミングt22,t24,t25の少なくとも1カ所で行えば十分である。1つ以上のカートリッジが正常に装着されていないと判定された場合には、主制御回路400が、表示パネル430に装着状態が不良である旨を示す情報(文字や画像)を表示してユーザーに通知することが好ましい。
【0070】
上述した非装着状態の検出処理(第2の装着検出処理)の目的だけであれば、第2の装着検査信号DPinsを、第1の装着検査信号SPinsと類似した単純なパルス信号としても良い。第2の装着検査信号DPinsが図12のような複雑な波形形状を有している理由は、主に、以下で説明するリーク状態の検出(第3の装着状態検出処理)のためである。
【0071】
図14(A)は、過電圧検出端子240とセンサー端子290の間がリーク状態にある場合の信号波形を示している。ここで、「リーク状態」とは、意図しない短絡と言えるほどの極低抵抗状態では無いが、ある程度以下の抵抗値(例えば10kΩ以下の抵抗値)で接続されている状態を意味している。この場合には、第2の装着応答信号DPresが特有の信号波形を示す。すなわち、第2の装着応答信号DPresは、第1の期間P21でローレベルから第1のハイレベルH1に立ち上がり、第2の期間P22で第2のハイレベルH2に低下する。第1のハイレベルH1は、第1の装着検査信号SPinsのハイレベルH1とほぼ同じ電圧である。このような波形は、以下に説明する等価回路から理解できる。
【0072】
図15(A)は、基板200aと、接触検出部662と、検知パルス発生部650と、非装着状態検出部670との接続関係を示している。この状態は、隣接する端子間にリークが無い状態である。図15(B)は、端子240,290の間にリークがある場合の等価回路を示している。ここでは、端子240,290の間のリーク状態が、抵抗RLで模擬されている。センサー208は、容量素子としての機能を有する。図15(B)のセンサー208の容量と、端子240,290間の抵抗RLとを含む回路は、第1の接触検査信号SPinsに対してローパスフィルター回路(積分回路)として機能する。従って、非装着状態検出部670に入力される第2の装着応答信号DPresは、図14(A)に示すように、第1の装着検査信号SPinsのハイレベルH1(約3V)にまで徐々に立ち上がる信号となる。非装着状態検出部670は、期間P21内の1つ以上の(好ましくは複数の)タイミングt21において第2の装着応答信号DPresの電圧レベルを調べることによって、端子240,290の間にリークがあることを識別することができる。あるいは、第2の装着応答信号DPresの第1と第2の期間P21,P22における第2の装着応答信号DPresのハイレベルH1,H2の電圧の差から、端子240/290間がリークしていると判定することも可能である。
【0073】
なお、図14(A)の第1の期間P21における第2の装着応答信号DPresの変化は、期間P21における第2の装着検査信号DPinsのレベルを、第1のハイレベルH1よりも低いレベルに設定したときにも得られる。従って、例えば、第2の装着検査信号DPinsを期間P21においてローレベルに維持するようにしても、端子240,290の間のリーク状態を検出することが可能である。また、第2の装着検査信号DPinsを期間P21〜P23に渡ってローレベルに維持するようにしても良い。
【0074】
端子240,290間にリークがある場合には、更に、第1の装着応答信号SPresが特有の変化を示す。すなわち、第1の装着応答信号SPresは、期間P24,P26において、第2の装着検査信号DPinsがハイレベルに立ち上がるのに応じて立ち上がる。従って、これらの期間P24,P26の所定のタイミングt24,t25で第1の装着応答信号SPresを調べることによっても、リークが発生しているか否かを判定することが可能である。
【0075】
図14(B)は、他の過電圧検出端子210とセンサー端子250がリーク状態にある場合の信号波形を示している。この場合にも、第2の装着応答信号DPresが特有の信号波形を示す。すなわち、第2の装着応答信号DPresは、第1の期間P21において、ローレベルから急激に立ち上がった後にやや緩やかに低下する。このときのピークの電圧レベルは、第2の装着検査信号DPinsのハイレベルH2よりも高く、第1の装着検査信号SPinsのハイレベルH1に近いレベルにまで達する。
【0076】
図15(C)は、端子210,250の間にリークがある場合の等価回路を示している。ここでは、端子210,250の間のリーク状態が、抵抗RLで模擬されている。センサー208の容量と、端子210,250間の抵抗RLとを含む回路は、第1の装着検査信号SPinsに対するハイパスフィルター回路(微分回路)として機能する。従って、第2の装着応答信号DPresは、図14(B)に示すように、第1の期間P21でピーク形状を示す信号となる。但し、第2の期間P22以降は、第2の装着応答信号DPresは、第2の装着検査信号DPinsの変化と同様の変化を示す。非装着状態検出部670は、期間P21内の任意の1つ又は複数のタイミングt21における第2の装着応答信号DPresの電圧レベルを調べることによって、端子210,250の間にリークがあることを識別することができる。なお、端子240,290間にリークがある場合(図14(A))と、端子210,250の間にリークがある場合(図14(B))では、第1の期間P21の中央から終端までのタイミングにおける信号DPresの電圧レベルと、第2の期間P22における信号DPresの電圧レベルの関係が逆転している。従って、これらの2つのタイミングにおける信号DPresの電圧レベルを比較することによって、端子240,290間と端子210,250の間のいずれにリークがあるかを正確に識別することが可能である。
【0077】
なお、図14(B)のような第2の装着応答信号DPresの変化は、期間P21において第2の装着検査信号DPinsの出力端子(すなわち、検知パルス発生部650の出力端子)をハイインピーダンス状態に設定したときに得られる。従って、例えば、第2の装着検査信号DPinsを、期間P21ではハイインピーダンス状態に設定すれば、期間P22,P23でローレベルに設定するようにしても、端子210,250の間のリーク状態を検出することが可能である。
【0078】
端子210,250間にリークがある場合にも、第1の装着応答信号SPresが特有の変化を示す。すなわち、第1の装着応答信号SPresは、期間P24,P26において、第2の装着検査信号DPinsがハイレベルに立ち上がるのに応じて立ち上がる。従って、これらの期間P24,P26の所定のタイミングt24,t25で第1の装着応答信号SPresを調べることによっても、リークが発生しているか否かを判定することが可能である。但し、第1の装着応答信号SPresの変化は、端子240,290間にリークがある場合(図14(A))と、端子210,250間にリークがある場合(図14(B))とでそれほど大きな違いが無い。従って、タイミングt24,t25における第1の装着応答信号SPresの検査では、2組の端子のいずれにリークが発生しているのかを識別することはできない。但し、この識別をする必要が無い場合には、第1の装着応答信号SPresの検査でも十分である。
【0079】
上述した図12〜図14の説明から理解できるように、2つの装着検査信号SPins,DPinsのうちの少なくとも一方を調べることによって、隣接する端子同士がリーク状態にあるか否かを検出することが可能である。
【0080】
図16は、図15に示すリーク状態を判定するために使用可能なリーク判定部の構成例を示すブロック図である。リーク判定部は、非装着状態検出部670内に設けることができる。図16(A)のリーク判定部672は、複数のダイオードの直列接続で構成された電圧障壁部674と、電流検出部675とを有している。電圧障壁部674のしきい値電圧Vthは、第1の装着検査信号SPinsのハイレベルH1よりも低く、第2の装着検査信号DPinsのハイレベルH2よりも高い値に設定される。従って、第2の装着応答信号DPresの電圧レベルが第2のハイレベルH2以上になったときに、電圧障壁部674から電流検出部675に電流が流れる。従って、電流検出部675は、図14の期間P21において電圧障壁部674から電流が入力されるか否かに応じて、端子240/290間と,端子210/250間の少なくとも一方でリークが発生しているか否かを検出することができる。但し、この回路では、端子240/290間と,端子210/250間のいずれでリークが発生しているのかを識別することはできない。
【0081】
図16(B)のリーク判定部672は、AD変換部676と波形分析部677とを有している。この回路では、第2の装着応答信号DPresの変化が、AD変換部676でデジタル化されて波形分析部677に供給される。波形分析部677は、波形の形状を分析することによって、リーク状態を判定することができる。例えば、図14の期間P21における第2の装着応答信号DPresがローパスフィルターを通過した信号(緩やかに上昇する上に凸の信号)である場合には、端子240/290間にリークがあるものと判定できる。一方、第2の装着応答信号DPresがハイパスフィルターを通過した信号(鋭いピークを示す信号)である場合には、端子210/250間にリークがあるものと判定できる。なお、AD変換部676の動作クロック周波数は、このような波形分析のために十分に高い周波数に設定される。波形分析部677は、更に、第2の装着応答信号DPresの変化の時定数を求め、リーク状態における等価回路の抵抗値及び容量値を算出することが可能である。例えば、図15(B),(C)の等価回路では、リークしている端子間の抵抗RLのみが未知であり、他の抵抗の抵抗値や容量素子208の容量値は既知である。従って、第2の装着応答信号DPresの変化の時定数から、リークしている端子間の抵抗RLを算出することが可能である。なお、リーク判定部の構成としては、これら以外の種々の回路構成を採用可能である。
【0082】
以上の図12〜図16の説明から理解できるように、(i)第2の装着応答信号DPresが第1の装着検査信号SPinsの影響を受けているか否か(図14(A),(B)のDPres)、及び、(ii)第1の装着応答信号SPresが第2の装着検査信号DPinsの影響を受けているか否か(図14(A),(B)のSPres)、のうちの少なくとも一方を調べることによって、端子250/290間又は端子210/240にリークがあるか否かを判定することが可能である。2つの装着検査信号SPins、DPinsとしては、電圧レベルが一定の信号(例えば常にローレベルまたはハイレベルに維持される信号)ではなく、電圧レベルがそれぞれ変化する異なる信号波形を有する信号を使用することが好ましい。なお、図12〜図14の信号波形は簡略化して描かれていることに注意すべきである。
【0083】
2つの過電圧検出端子210,240のうちの少なくとも一方でリークが検出された場合には、そのリーク発生箇所を印刷装置内の図示しない不揮発性メモリーに記録しておくようにしてもよい。こうすれば、印刷装置のメインテナンスの際に、リークが発生しやすい端子位置を調べ、印刷装置内の接点機構1400(図6B)の端子の接点やバネの調整を行うことによって、リークを発生し難くする対策を施すことが可能である。
【0084】
図17は、4つのカートリッジIC1〜IC4に対する装着検出処理のタイミングチャートである。ここでは、個々のカートリッジに個別に供給される第1の装着検査信号SPins_1〜SPins_4と、全カートリッジの端子240,210の直列接続に対して供給される第2の装着検査信号DPinsとが示されている。このように、4つのカートリッジに関する装着検査が1カートリッジ毎に順次行われ、また、個々のカートリッジに対しては、第1と第2の装着検査信号SPins,DPinsが同じ期間に供給されて上述した3種類の装着検出処理が実行される。これらの検査において、装着不良(接触不良)やリークが検出された場合には、表示パネル430にその旨を表示することによって、カートリッジの再装着をユーザーに勧告することが好ましい。一方、これらの装着検査の結果、装着不良やリークが検出されなかった場合には、その後に、各カートリッジのインク残量の検出や、記憶装置203からのデータの読み出しなどが行われる。
【0085】
図18は、液量検出処理のタイミングチャートである。液量検出処理では、液量検査信号DSが一方のセンサー端子290に供給される。この液量検査信号DSは、センサー208を構成する圧電素子の一方の電極に供給される。液量検査信号DSは、液量検出部664(図10)によって生成されるアナログ信号である。この液量検査信号DSの最大電圧は例えば約36Vであり、最小電圧は約4Vである。センサー208の圧電素子はカートリッジ100内のインクの残量に応じて振動し、振動によって発生した逆起電圧が液量応答信号RSとして圧電素子から他方のセンサー端子250を介して液量検出部664に送信される。液量応答信号RSは、圧電素子の振動数に対応する周波数を有する振動成分を含んでいる。液量検出部664は、液量応答信号RSの周波数を測定することによって、インク残量が所定量以上であるか否かを検出することができる。このインク残量検出処理は、上述したリーク検査(リーク検出処理)で使用された第1の装着検査信号DPinsよりも高い電圧レベルを有する高電圧信号DSを、端子250,290を介してセンサー208に供給する高電圧処理である。
【0086】
このように、インク残量の検出時には、高電圧の液量検査信号DSがセンサー端子250,290に印加される。仮に、センサー端子250,290と過電圧検出端子210,240との間の絶縁が不十分な場合には、端子210,240に異常な過電圧が生じる。この場合には、ダイオード641〜645(図10)を介して過電圧検出部620に電流が流れるので、過電圧検出部620は、過電圧の発生の有無を判定することが可能である。過電圧が検出されると、過電圧検出部620から液量検出部664に過電圧の発生を示す信号が供給され、これに応じて液量検出部664が液量検査信号DSの出力を直ちに停止する。これは、過電圧によって生じ得るカートリッジや印刷装置の損傷を防止するためである。すなわち、センサー端子250(又は290)と過電圧検出端子210(又は240)との間の絶縁が不十分な場合には、センサー端子と記憶装置用端子との間の絶縁も不十分になっている恐れがある。このとき、過電圧検出端子210,240に過電圧が発生すると、記憶装置用端子にもその過電圧が印加されて、その記憶装置用端子に接続されている記憶装置や印刷装置の回路に損傷が生じる可能性がある。従って、過電圧が検出されたときに液量検査信号DSの出力を直ちに停止すれば、過電圧によって生じ得るカートリッジや印刷装置の損傷を防止することができる。
【0087】
なお、図12〜図17で説明したように、インク残量の検出に先立って、複数種類の装着状態検出処理が実行される。このうちのリーク状態検出処理では、図14〜図16で説明したように、端子240/290間、又は、端子210/250間に低抵抗なリーク状態が発生しているか否かが検出される。すなわち、これらのリーク状態の検出処理では、比較的低い電圧レベル(約3V)の装着検査信号SPins,DPinsを用いて、端子240/290間、又は、端子210/250間が、或る抵抗値(例えば10kΩ)以下の低抵抗状態にあるか否か検出することができる。また、これらの端子間にリークが無いと判定された場合には、端子240/290間、又は、端子210/250間の抵抗値は、上記の抵抗値(約10kΩ)以上であることが保証される。従って、このリーク状態の検出処理の後に、より高い電圧レベル(約36V)の信号を用いてインク残量の検出処理を実行しても、過電圧検出端子210,240に懸かる過電圧が極めて大きな値になることが無い。このように、印刷システムの第1実施形態では、相対的に低い電圧レベルの信号を用いて端子240/290間、又は、端子210/250間のリーク状態を検査し、その結果、リークが無い場合にのみ、相対的に高い電圧レベルの信号を端子250,290に印加している。従って、リーク状態の検査を行わない場合に比べて、印刷装置やカートリッジに生じうる過電圧のレベルをより低下させることが可能である。
【0088】
図19(A)は、印刷システムの第1実施形態の装着検出処理で使用される信号の第1の変形例を示すタイミングチャートである。図12との違いは、第2の装着検出信号DPins,DPresのハイレベルの値が、第1の装着検出信号SPins,SPresと同じに設定されている点であり、他は図12の信号と同じである。これらの信号を使用しても、図13〜図16で説明した各種の装着状態検出処理をほぼ同様に行うことが可能である。但し、この場合には、図14(A)の第2の期間P22における第2の装着応答信号DPresのレベルは、第1の期間P21におけるレベルH1と同じになるので、第1と第2の期間P21,P22における第2の装着応答信号DPresのレベルの差から、端子240/290間がリークしていると判定することはできない。但し、図14(A)と図14(B)に示したように、第1の期間P21における第2の装着応答信号DPresのレベル変化から、端子240/290間と、端子210/250間のいずれがリークしているかを区別することは依然として可能である。
【0089】
図19(B)は、印刷システムの第1実施形態の装着検出処理で使用される信号の第2の変形例を示すタイミングチャートである。図12との違いは、第2の装着検査信号DPinsが、第2の期間P22と第4の期間P24でローレベルに設定されている点と、これに応じて第2の装着応答信号DPresが期間P21〜P25を通じてローレベルに維持されている点であり、他は図12の信号と同じである。これらの信号を使用しても、図13〜図16で説明した各種の装着検出をほぼ同様に行うことが可能である。この場合には、図13(B)のタイミングt22,t24における判定ができなくなるが、図13と図14で説明した他のタイミングでの判定は依然として可能である。
【0090】
図12及び図19の各種の信号の例から理解できるように、装着検出信号(接触検出信号)の電圧レベルや波形としては、種々の変形が可能である。但し、端子240/290間及び端子210/250間のリーク状態の検出を行う場合には、第1の装着検出信号SPinsがハイレベルとなる際に、第2の装着検出信号DPins(又はその信号線)をローレベルからハイインピーダンス状態に変更するか、又は、ローレベルに維持することが好ましい。
【0091】
以上のように、印刷システムの第1実施形態において、基板の複数の記憶装置用端子の接触部の周囲の四隅、より具体的には、基板の複数の記憶装置用端子が配置された領域の外側で、かつ、その領域を包含する四角形の領域の四隅に装着検出端子の接触部を設けたので、これらの装着検出端子と対応する装置側端子とが良好な接触状態にあることを確認することによって、記憶装置用端子に関しても良好な接触状態を確保することが可能である。また、印刷システムの第1実施形態では、基板の一対の端子250,290に関する第1の装着応答信号SPresと、他の一対の端子210,240に関する第2の装着応答信号DPresとの少なくとも一方を調べることによって、全カートリッジが装着されているか否かの装着検出処理と、端子間にリークがあるか否かのリーク状態検出処理とを同時に実行することができる。さらに、印刷システムの第1実施形態では、端子250,290に対して相対的に高い電圧(約36V)を印加する高電圧処理に先だって、相対的に低い電圧(約3V)を用いて上記リーク状態の検出処理を行うので、極めて高い過電圧が端子250,290からリークしてカートリッジや印刷装置に損傷を与えることを防止できる。
【0092】
C.印刷システムの第2実施形態:
図20は、印刷システムの第2実施形態における基板の構成を示す図である。端子210〜290の配列は、図8に示したものと同じである。但し、各端子の機能(用途)は以下の通りであり、印刷システムの第1実施形態と若干異なっている。
【0093】
<上側列R1>
(1)過電圧検出端子210(装着検出兼用)
(2)リセット端子220
(3)クロック端子230(
4)過電圧検出端子240(装着検出兼用)
<下側列R2>
(5)装着検出端子250
(6)電源端子260
(7)接地端子270
(8)データ端子280
(9)装着検出端子290
【0094】
上側列R1の端子210〜240の機能及び用途は、印刷システムの第1実施形態とほぼ同じである。下側列R2の端子250,290は、カートリッジ100に設けられた抵抗素子を使用した装着検出に使用される点で印刷システムの第1実施形態と異なっている。なお、この端子群210〜290の接触部の四隅にある端子210,240,250,290の接触部が装着検出(接触検出)に使用される点は、印刷システムの第1実施形態と同じである。なお、印刷システムの第2実施形態においても、上側列R1の両端に配置された2つの端子210,240の接触部には、記憶装置を駆動するための第1電源電圧VDDと同じ電圧、又は、第1電源電圧VDDから生成された電圧が印加され、下側列R2の両端に配置された2つの端子250,290の接触部には、印刷ヘッドを駆動するために用いられる第2電源電圧VHVと同じ電圧、又は、第2電源電圧VHVから生成された電圧が印加される。ここで、「第2電源電圧VHVから生成された電圧」としては、第1電源電圧VDDよりも高く、第2電源電圧VHVよりも低い電圧を使用することが好ましい。
【0095】
図21は、印刷システムの第2実施形態におけるカートリッジの基板200bと印刷装置1000との電気的構成を示すブロック図である。基板200bは、記憶装置203と、9つの端子210〜290の他に、個々のカートリッジの装着検出に使用される抵抗素子204を備えている。
【0096】
主制御回路400は、印刷システムの第1実施形態と同様に、CPU410と、メモリー420とを有している。サブ制御回路500bは、メモリー制御回路501と、カートリッジ検出回路502とを有している。
【0097】
カートリッジ検出回路502は、カートリッジ装着部1100におけるカートリッジの装着検出を行うための回路である。従って、カートリッジ検出回路502を「装着検出回路」と呼ぶことも可能である。カートリッジ検出回路502とカートリッジの抵抗素子204とは、記憶装置203の動作電圧に比べて高い電圧(本実施形態では、定格42V)で動作する高電圧回路である。抵抗素子204は、カートリッジ検出回路502から記憶装置203の動作電圧に比べて高い電圧が印加されるデバイスである。
【0098】
図22は、印刷システムの第2実施形態におけるカートリッジ検出回路502の内部構成を示す図である。ここでは、4つのカートリッジ100がカートリッジ装着部に装着された状態が示されており、各カートリッジを区別するために参照符号IC1〜IC4が使用されている。カートリッジ検出回路502は、検出電圧制御部610と、過電圧検出部620と、個別装着電流値検出部630と、検知パルス発生部650と、非装着状態検出部670とを有している。これらの回路のうち、過電圧検出部620と、検知パルス発生部650と、非装着状態検出部670は、図10に示したこれらの回路とほぼ同じ構成及び機能を有している。検出電圧制御部610は、カートリッジの端子250に供給する電圧を制御する機能を有する。
【0099】
カートリッジ検出回路502には、装着検出用の高い電源電圧VHVが供給されている。この高電源電圧VHVは、印刷ヘッド駆動用の電圧であり、第2電源442(図21)から検出電圧制御部610に供給されている。検出電圧制御部610の出力端子は、各カートリッジIC1〜IC4の装着位置に設けられた4つの装置側端子550に並列に接続されている。なお、高電源電圧VHVを、「高電圧VHV」と呼ぶ。検出電圧制御部610の出力端子の電圧値VHOは、個別装着電流値検出部630にも供給されている。各装置側端子550は、対応するカートリッジの第1の装着検出端子250に接続される。各カートリッジ内では、第1と第2の装着検出端子250,290の間に、抵抗素子204がそれぞれ設けられている。4つのカートリッジIC1〜IC4の抵抗素子204の抵抗値は、同一の値Rに設定されている。カートリッジ検出回路502内には、各カートリッジの抵抗素子204とそれぞれ直列接続される抵抗素子631〜634が設けられている。
【0100】
各カートリッジ内において、第1と第2の過電圧検出端子210,240は配線により短絡接続されている。また、これらの過電圧検出端子210,240は、装置側端子510,540と、カートリッジ検出回路502内に設けられたダイオード641〜645とを介して、過電圧検出部620に接続されている。これらの端子210,240,510,540及びダイオード641〜645と、過電圧検出部620との接続関係及び機能は、印刷システムの第1実施形態(図10)で説明したものと同じである。
【0101】
図23(A),(B)は、印刷システムの第2実施形態におけるカートリッジの装着検出処理の内容を示す説明図である。図23(A)では、印刷装置のカートリッジ装着部1100に装着可能なカートリッジIC1〜IC4がすべて装着された状態を示している。4つのカートリッジIC1〜IC4の抵抗素子204の抵抗値は、同一の値Rに設定されている。カートリッジ検出回路502内には、各カートリッジの抵抗素子204とそれぞれ直列接続される抵抗素子631〜634が設けられている。これらの抵抗素子631〜634の抵抗値は、互いに異なる値に設定されている。具体的には、これらの抵抗素子631〜634のうち、n番目(n=1〜4)のカートリッジICnに対応づけられた抵抗素子63nの抵抗値は、(2n―1)R(Rは一定値)に設定されている。この結果、n番目のカートリッジ内の抵抗素子204と、カートリッジ検出回路502内の抵抗素子63nとの直列接続によって、2nRの抵抗値を有する抵抗が形成される。n番目(n=1〜N)のカートリッジに対する2nRの抵抗は、個別装着電流値検出部630に対して互いに並列に接続される。なお、以下では、直列接続抵抗701〜704を、「装着検出用抵抗」又は単に「抵抗」とも呼ぶ。個別装着電流値検出部630で検出される検出電流IDETは、これらの4つの抵抗701〜704の合成抵抗値Rcで電圧VHVを除した値VHV/Rcである。ここで、カートリッジの個数をNとしたとき、N個のカートリッジがすべて装着されている場合には、検出電流IDETは以下の式で与えられる。
【0102】
【数1】
【0103】
【数2】
1つ以上のカートリッジが未装着であれば、これに応じて合成抵抗値Rcが上昇し、検出電流IDETは低下する。
【0104】
図23(B)は、カートリッジIC1〜IC4の装着状態と、検出電流IDETとの関係を示している。図の横軸は、16種類の装着状態を示しており、縦軸はこれらの装着状態における検出電流IDETの値を示している。16種類の装着状態は、4つのカートリッジIC1〜IC4から任意に1〜4個を選択することによって得られる16個の組み合わせに対応している。なお、これらの個々の組み合わせを「サブセット」とも呼ぶ。検出電流IDETは、これらの16種類の装着状態を一意に識別可能な電流値となる。換言すれば、4つのカートリッジIC1〜IC4に対応づけられた4つの抵抗701〜704の個々の抵抗値は、4つのカートリッジが取り得る16種類の装着状態が、互いに異なる合成抵抗値Rcを与えるように設定されている。
【0105】
4つのカートリッジIC1〜IC4がすべて装着状態にあれば、検出電流IDETはその最大値Imaxとなる。一方、最も抵抗値の大きな抵抗704に対応づけられたカートリッジIC4のみが未装着の状態では、検出電流IDETは最大値Imaxの0.93倍となる。従って、検出電流IDETが、これらの2つの電流値の間の値として予め設定されたしきい値電流Ithmax以上であるか否かを調べれば、4つのカートリッジIC1〜IC4がすべて装着されているか否かを検出することが可能である。なお、個別装着検出のために、通常のロジック回路の電源電圧(約3.3V)よりも高い電圧VHVを使用する理由は、検出電流IDETのダイナミックレンジを広くとることによって、検出精度を高めるためである。
【0106】
個別装着電流値検出部630は、検出電流IDETをデジタル検出信号SIDETに変換して、CPU410(図21)にそのデジタル検出信号SIDETを送信する。CPU410は、このデジタル検出信号SIDETの値から、16種類の装着状態のいずれであるかを判定することが可能である。1つ以上のカートリッジが未装着であると判定された場合には、CPU410は、表示パネル430にその未装着状態を示す情報(文字や画像)を表示してユーザーに通知する。
【0107】
上述したカートリッジの装着検出処理は、N個のカートリッジに関する2N種類の装着状態に応じて合成抵抗値Rcが一意に決まり、これに応じて検出電流IDETが一意に決まることを利用している。ここで、抵抗701〜704の抵抗値の許容誤差をεと仮定する。また、全カートリッジIC1〜IC4が装着された状態の第1の合成抵抗値をRc1とし、4番目のカートリッジIC4のみが非装着である状態の第2の合成抵抗値をRc2とすると、Rc1<Rc2が成立する(図23(B))。この関係Rc1<Rc2は、各抵抗701〜704の抵抗値が許容誤差±εの範囲内で変動する場合にも成立することが好ましい。このとき、最悪条件は、許容誤差±εを考慮した場合に、第1の合成抵抗値Rc1がその最大値Rc1maxを取り、第2の合成抵抗値Rc2がその最小値Rc2minを取る場合である。これらの合成抵抗値Rc1max,Rc2minを識別できるようにするためには、Rc1max<Rc2minという条件が満足されていれば良い。この条件Rc1max<Rc2minから、以下の式が導かれる。
【0108】
【数3】
【0109】
すなわち、許容誤差±εが(3)式を満足すれば、常にN個のカートリッジの装着状態に応じて合成抵抗値Rcが一意に決まり、これに応じて検出電流IDETが一意に決まることを保証することができる。但し、実際の設計上の抵抗値の許容誤差は、(3)式の右辺の値よりも小さな値に設定することが好ましい。また、上述のような検討を行わずに、抵抗701〜704の抵抗値の許容誤差を十分に小さな値(例えば1%以下の値)に設定するようにしてもよい。
【0110】
図24は、個別装着電流値検出部630の内部構成を示す図である。個別装着電流値検出部630は、電流−電圧変換部710と、電圧比較部720と、比較結果記憶部730と、電圧補正部740とを有している。
【0111】
電流―電圧変換部710は、オペアンプ712と帰還抵抗R11とで構成される反転増幅回路である。オペアンプ712の出力電圧VDETは、以下の式で与えられる。
【0112】
【数4】
ここで、VHOは検出電圧制御部610(図22)の出力電圧、Rcは4つの抵抗701〜704(図23(A))の合成抵抗である。この出力電圧VDETは、検出電流IDETを表す電圧値を有する。
【0113】
なお、(4)式で与えられる電圧VDETは、検出電流IDETによる電圧(IDET・R11)を反転した値を示す。そこで、電流―電圧変換部710に反転増幅器を追加し、この追加の反転増幅器で電圧VDETを反転した電圧を、電流―電圧変換部710の出力電圧として出力してもよい。この追加の反転増幅器の増幅率の絶対値は、1とすることが好ましい。
【0114】
電圧比較部720は、しきい値電圧生成部722とコンパレーター724(オペアンプ)と切換制御部726とを有している。しきい値電圧生成部722は、参照電圧Vrefを複数の抵抗R1〜Rmで分圧して得られる複数のしきい値電圧Vth(j)の一つを、切換スイッチ723で選択して出力する。これらの複数のしきい値電圧Vth(j)は、図23(B)に示した16種類の装着状態における検出電流IDETの値を識別するしきい値に相当する。コンパレーター724は、電流―電圧変換部710の出力電圧VDETと、しきい値電圧生成部722から出力されるしきい値電圧Vth(j)とを比較して、2値の比較結果を出力する。この2値の比較結果は、個々のカートリッジIC1〜IC4が装着されているか否かを示している。すなわち、電圧比較部720は、個々のカートリッジIC1〜IC4が装着されているか否かを調べ、その比較結果を順次出力する。典型的な例では、電圧比較部720は、まず、最も大きな抵抗701(図23(A))に対応付けられた第1のカートリッジIC1が装着されているか否かを調べて、その比較結果を示すビット値を出力する。その後、第2〜第4のカートリッジIC2〜IC4が装着されているかを順次調べて、その比較結果を示すビット値を出力する。切換制御部726は、各カートリッジに対する比較結果に基づいて、次のカートリッジの装着検出のためにしきい値電圧生成部722から出力すべき電圧値Vth(j)を切り換える制御を行う。
【0115】
比較結果記憶部730は、電圧比較部720から出力される2値の比較結果を、切換スイッチ732で切り換えてビットレジスター734内の適切なビット位置に格納する。この切換スイッチ732の切り換えタイミングは、切換制御部726から指定される。ビットレジスター734は、印刷装置に装着可能な個々のカートリッジの装着の有無を示すN個(ここではN=4)のカートリッジ検出ビットと、異常な電流値が検出されたことを示す異常フラグビットとを有している。異常フラグビットは、すべてのカートリッジが装着されている状態での電流値Imax(図23(B))に比べて有意に大きな電流が流れている場合にHレベルとなる。但し、異常フラグビットは省略可能である。ビットレジスター734に格納された複数のビット値は、デジタル検出信号SIDET(検出電流信号)として主制御回路400のCPU410(図21)に送信される。CPU410は、このデジタル検出信号SIDETのビット値から、個々のカートリッジが装着されているか否かを判定する。前述したように、印刷システムの第2実施形態では、デジタル検出信号SIDETの4つのビット値は、個々のカートリッジが装着されているか否かを示している。従って、CPU410は、デジタル検出信号SIDETの個々のビット値から、個々のカートリッジが装着されているか否かを直ちに判定することが可能である。
【0116】
電圧比較部720と比較結果記憶部730の両者は、いわゆるA−D変換部を構成している。A−D変換部としては、図24に示した電圧比較部720と比較結果記憶部730の代わりに、周知の他の種々の構成を採用することが可能である。
【0117】
電圧補正部740は、しきい値電圧生成部722で生成される複数のしきい値電圧Vth(j)を、装着検出用の高電圧VHV(図22)の変動に追従して補正するための回路である。電圧補正部740は、オペアンプ742と2つの抵抗R21,R22で構成された反転増幅回路として構成されている。オペアンプ742の反転入力端子には、入力抵抗R22を介して図22の検出電圧制御部610の出力端子電圧VHOが入力されており、非反転入力端子には参照電圧Vrefが入力されている。このとき、オペアンプ742の出力電圧AGNDは以下の式で与えられる。
【0118】
【数5】
【0119】
この電圧AGNDは、しきい値電圧生成部722の低電圧側の基準電圧AGNDとして使用される。例えば、Vref=2.4V,VHO=42V,R21=20kΩ,R22=400kΩとすれば、AGND=0.42Vとなる。上述した(4)式と、(5)式とを比較すれば理解できるように、しきい値電圧生成部722の低電圧側の基準電圧AGNDは、検出電圧値VDETと同様に、検出電圧制御部610の出力電圧VHO(すなわち装着検出用の高電圧電源VHV)の値に応じて変化する。これらの2つの電圧AGND、VDETの差異は、抵抗比R21/R22、R11/Rcの差から生じている。このような電圧補正部740を使用すれば、装着検出用の電源電圧VHVが何らかの原因で変動しても、しきい値電圧生成部722で生成される複数のしきい値電圧Vth(j)が、電源電圧VHVの変動に追従して変化する。この結果、検出電圧値VDETと複数のしきい値電圧Vth(j)の両方が、電源電圧VHVの変動に追従して変化するので、電圧比較部720において正確な装着状態を表す比較結果を得ることができる。特に、抵抗比R21/R22と抵抗比R11/Rc1(Rc1は全カートリッジ装着時の合成抵抗値)の値を等しく設定すれば、検出電圧値VDETと複数のしきい値電圧Vth(j)を、電源電圧VHVの変動に対してほぼ同じ変化幅で変化するように正確に追従させることが可能である。但し、電圧補正部740は省略してもよい。
【0120】
図25は、カートリッジ検出回路502によって行われる装着検出処理の全体手順を示すフローチャートである。この装着検出処理は、カートリッジ装着部1100のカバー1200(図4)が開かれると開始される。この処理では、各カートリッジの記憶装置203は非通電状態(電源電圧VDDが供給されない状態)に維持される。
【0121】
ステップS110,S120では、図25で説明した非装着状態の検出処理が実行される。この結果、すべてのカートリッジが装着されていれば、ステップS120から後述するステップS140に進む。一方、1つ以上のカートリッジの未装着が検出された場合には、ステップS130において、主制御回路400が、非装着エラー処理を実行する。非装着エラー処理は、例えば、表示パネル430に「カートリッジが正しく装着されていません」のような通知(未装着カートリッジがある旨の通知)を表示する処理である。ステップS140では、カートリッジ検出回路502の検出電圧制御部610(図22)が、装着検出用の高電圧VHV(42V)をカートリッジの装着検出用デバイス(本実施形態では抵抗素子204)に印加する。ステップS150、S160では、過電圧検出部620が、過電圧が発生しているか否かを検出する。過電圧が発生している場合には、ステップS200において、過電圧検出部620が検出電圧制御部610に過電圧の発生を通知し、高電圧VHVの供給を停止させる。この場合には、表示パネル430に、過電圧が発生した旨や、カートリッジを一度脱着して再度挿入する操作を行うことなどの指示を表示させてもよい。一方、過電圧が生じていない場合には、ステップS160からステップS170に進み、図23及び図24で説明したカートリッジの個別装着検出処理が実行される。この個別装着検出処理は、記憶装置用の電源電圧(3.3V)よりも高い電圧レベルを有する高電圧信号(42V)を、端子250,290を介して抵抗素子204に供給する高電圧処理である。なお、ステップS170の個別装着検出処理において、1つ以上のカートリッジが非装着の場合には、表示パネル430に判定結果(未装着のカートリッジの種類)を表示するようにしてもよい。例えば、判定結果として、複数のカートリッジの装着位置のうちの未装着位置と、その未装着位置に装着すべきカートリッジの種類(例えばイエローカートリッジ)とを表示するようにしてもよい。
【0122】
個別装着検出処理が終了すると、図25のステップS180に戻り、カートリッジ装着部1100のカバー1200が閉じられたか否かが判断される。カバー1200が閉じられていなければ、ステップS180からステップS110に戻り、上述したステップS110以降の処理が再度実行される。一方、カバー1200が閉じられると、ステップS190において、検出電圧制御部610が高電圧VHVの供給を停止して、処理が完了する。
【0123】
以上のように、印刷システムの第2実施形態においても、印刷システムの第1実施形態と同様に、基板の複数の記憶装置用端子の接触部の周囲の四隅、より具体的には、基板の複数の記憶装置用端子が配置された領域の外側で、かつ、その領域を包含する四角形の領域の四隅に装着検出端子の接触部を設けたので、これらの装着検出端子と対応する装置側端子とが良好な接触状態にあることを確認することによって、記憶装置用端子に関しても良好な接触状態を確保することが可能である。
【0124】
更に、印刷システムの第2実施形態では、カートリッジの交換の最中に個々のカートリッジの未装着状態が表示パネル430に表示されるので、ユーザーはこの表示を見ながらカートリッジ交換を実行することが可能である。特に、カートリッジを交換するときに、そのカートリッジが未装着から装着に変わったことが表示パネル430に表示されるので、カートリッジ交換作業に不慣れなユーザーでも安心して次の操作に進むことが可能である。また、印刷システムの第2実施形態では、カートリッジの記憶装置203が非通電の状態でカートリッジの装着検出を行うことができるので、いわゆる記憶装置の活線挿抜(印刷装置のメモリー制御回路が、カートリッジの記憶装置が印刷装置の装置側端子に接続されているか否かにかかわらず、カートリッジの記憶装置にアクセスし、そのアクセス中に、カートリッジが装着されたり、カートリッジがはずされたりすること。)によって生じるビット誤りの発生を防止することが可能である。
【0125】
D.変形例:
なお、この発明は上記の実施形態や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0126】
・変形例1:
上述した各種実施形態における基板の端子や接触部の配列は、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態の基板では、複数の端子やそれらの接触部が、カートリッジの装着方向に垂直な方向に沿った互いに平行な2つの列に配置されているが、この代わりに、カートリッジの装着方向に平行な方向に沿った2つの列に配置されていてもよい。また、2列でなく、3列以上に分かれて配置されていてもよい。
【0127】
また、装着検出用の端子の数は任意であり、5つ以上配置してもよい。さらに、記憶装置用の複数の端子の種類や配列も、上記以外の種々の変形が可能である。例えば、リセット端子は省略可能である。但し、記憶装置用の複数の接触部は、他の端子(装着検出用の端子)の接触部が、記憶装置用端子の接触部同士の間に入らないような集合した状態で配置されていることが好ましい。
【0128】
・変形例2:
上記各実施形態では、カートリッジに搭載される電気デバイスとして、記憶装置203の他に、センサー208(図9)や抵抗素子204(図21)が使用されているが、カートリッジに搭載される複数の電気デバイスは、これらに限られず、1つ以上の任意の種類の電気デバイスをカートリッジに搭載するようにしてもよい。例えば、インク量検出のためのセンサーとして、圧電素子を用いたセンサーの代わりに、光学的なセンサーをカートリッジに設けても良い。また、3.3Vよりも高い電圧が印加される電気デバイスとしても、センサー208(図9)や抵抗素子204(図21)以外のデバイスを使用してもよい。さらに、印刷システムの第2実施形態では、記憶装置203と抵抗素子204の両方が基板200に設けられているが、カートリッジの電気デバイスは、他の任意の部材上に配置することが可能である。例えば、記憶装置203は、カートリッジの筐体や、アダプター、あるいは、カートリッジとは別体の他の構造体上に配置されても良い。この点は、印刷システムの第1実施形態についても同様である。
【0129】
・変形例3:
上記印刷システムの第2実施形態では、n番目のカートリッジ内の抵抗素子204と、カートリッジ検出回路502内の対応する抵抗素子63n(n=1〜4)とで4つの装着
検出用抵抗701〜704が形成されているが、これらの装着検出用抵抗の抵抗値は、1つの抵抗素子のみで実現してもよく、また、3つ以上の抵抗素子で実現してもよい。例えば、2つの抵抗素子204,631で構成される装着検出用抵抗701を、単一の抵抗素子で置き換えるようにしてもよい。他の装着検出用抵抗も同様である。複数の抵抗素子で1つの装着検出用抵抗を構成する場合には、それらの抵抗素子の抵抗値の配分は任意に変更可能である。また、これらの単一の抵抗素子又は複数の抵抗素子は、カートリッジと印刷装置本体の一方のみに設けてもよい。例えば装着検出用抵抗をすべてカートリッジ上に設けるようにすれば、印刷装置本体には装着検出用抵抗を構成する抵抗素子は不要となる。
【0130】
・変形例4:
上記各実施形態で記載されている各種の構成要素のうち、特定の目的・作用・効果に関係の無い構成要素は省略可能である。例えば、カートリッジ内の記憶装置203は、カートリッジの個別装着検出に使用されていないので、カートリッジの個別装着検出を主な目的とする場合には省略可能である。また、上述した各種の処理のうち、任意の一部の処理、及び、その処理に関連している構成要素を省略することも可能である。
【0131】
・変形例5:
上記各実施形態では、インクカートリッジに本発明を適用しているが、他の印刷材、例えば、トナーが収容された印刷材収容体(印刷材収容容器)についても同様に本発明を適用可能である。
【0132】
また、本発明は、インクジェットプリンター及びそのインクカートリッジに限らず、インク以外の他の液体を噴射する任意の液体噴射装置及びその液体収容容器にも適用することができる。例えば、以下のような各種の液体噴射装置及びその液体収容容器に適用可能である。
(1)ファクシミリ装置等の画像記録装置
(2)液晶ディスプレー等の画像表示装置用のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射装置
(3)有機EL(Electro Luminescence)ディスプレーや、面発光ディスプレー (Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材噴射装置
(4)バイオチップ製造に用いられる生体有機物を含む液体を噴射する液体噴射装置
(5)精密ピペットとしての試料噴射装置
(6)潤滑油の噴射装置
(7)樹脂液の噴射装置
(8)時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置
(9)光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂液等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置
(10)基板などをエッチングするために酸性又はアルカリ性のエッチング液を噴射する液体噴射装置
(11)他の任意の微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッドを備える液体噴射装置
【0133】
なお、「液滴」とは、液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう「液体」とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であれば良い。例えば、「液体」は、物質が液相であるときの状態の材料であれば良く、粘性の高い又は低い液状態の材料、及び、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような液状態の材料も「液体」に含まれる。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなども「液体」に含まれる。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種の液体状組成物を包含するものとする。
【符号の説明】
【0134】
100…インクカートリッジ、190…絶縁基材、200,200a…基板(回路基板)、201…ボス溝、202…ボス穴、203…記憶装置、204…抵抗素子、208…センサー(容量素子)、210〜290…基板端子、210cp〜290cp…接触部、300…連結基板部、301〜304…小基板部、310,320…予備端子、400…主制御回路、410…CPU、420…メモリー、430…表示パネル、500a…サブ制御回路、501…メモリー制御回路、502…カートリッジ検出回路、503…センサー関連処理回路、510〜590…装置側端子(電気接触部材)、610…検出電圧制御部、620…過電圧検出部、630,630b…個別装着検出部、631〜634…抵抗素子、641〜645…ダイオード、650…検知パルス発生部、651…入力配線、660…センサー処理部、662…接触検出部、664…液量検出部、666…切換スイッチ、670…非装着状態検出部、672…リーク判定部、674…電圧障壁部、675…電流検出部、676…AD変換部、677…波形分析部、701〜704…装着検出用抵抗(直列接続抵抗)、710…電流―電圧変換部、712…オペアンプ、720…電圧比較部、722…電圧生成部、723…切換スイッチ、724…コンパレーター、726…切換制御部、730…比較結果記憶部、732…切換スイッチ、734…ビットレジスター、740…電圧補正部、742…オペアンプ、750…入力切換スイッチ、751〜754…入力端子、1000…印刷装置、1100…カートリッジ装着部、1110,1120…ピン、1112,1122…付勢バネ、1111,1121…貫通孔、1130…固定部材、1140…凹凸嵌合部、1141…貫通孔、1150…スライダー部材、1160…奥壁部材、1180…インク供給管、1181…貫通孔、1200…カバー、1300…操作部、1400…接点機構。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1〜第3の装置側端子と過電圧検出部とを有する印刷装置に、電気的に接続可能な回路基板であって、
記憶装置と、
前記記憶装置に接続され、前記第1の装置側端子と接触する第1の端子と、
前記第1の端子に印加される電圧よりも高い電圧が印加され、前記第2の装置側端子と接触する少なくとも1つの第2の端子と、
各々が前記第3の装置側端子と接触する2つの第3の端子と、
前記2つの第3の端子を接続する配線と、を備え、
前記第3の端子は、前記第1の端子及び前記第2の端子の隣に配置されており、
前記第3の端子は、前記第3の装置側端子を介して前記過電圧検出部に接続される端子であり、
前記第1の端子と前記第2の端子との間に、前記配線が配置されている、回路基板。
【請求項2】
請求項1記載の回路基板であって、
前記回路基板は、さらに、レジスト被膜を含み、
前記配線上に前記レジスト被膜が配置されている、回路基板。
【請求項3】
請求項2に記載の回路基板であって、
前記第1の端子は複数設けられており、
前記第2の端子は2つ設けられており、
前記第1ないし第3の端子は、第1列と第2列を構成するように配置されており、
前記2つの第2の端子は、前記第2列の両端に配置されており、
前記2つの第3の端子は、前記第1列の両端に配置されており、
前記配線は前記第2列の前記2つの第2の端子の各々と前記第2列の前記第1の端子の間に配置される、回路基板。
【請求項1】
第1〜第3の装置側端子と過電圧検出部とを有する印刷装置に、電気的に接続可能な回路基板であって、
記憶装置と、
前記記憶装置に接続され、前記第1の装置側端子と接触する第1の端子と、
前記第1の端子に印加される電圧よりも高い電圧が印加され、前記第2の装置側端子と接触する少なくとも1つの第2の端子と、
各々が前記第3の装置側端子と接触する2つの第3の端子と、
前記2つの第3の端子を接続する配線と、を備え、
前記第3の端子は、前記第1の端子及び前記第2の端子の隣に配置されており、
前記第3の端子は、前記第3の装置側端子を介して前記過電圧検出部に接続される端子であり、
前記第1の端子と前記第2の端子との間に、前記配線が配置されている、回路基板。
【請求項2】
請求項1記載の回路基板であって、
前記回路基板は、さらに、レジスト被膜を含み、
前記配線上に前記レジスト被膜が配置されている、回路基板。
【請求項3】
請求項2に記載の回路基板であって、
前記第1の端子は複数設けられており、
前記第2の端子は2つ設けられており、
前記第1ないし第3の端子は、第1列と第2列を構成するように配置されており、
前記2つの第2の端子は、前記第2列の両端に配置されており、
前記2つの第3の端子は、前記第1列の両端に配置されており、
前記配線は前記第2列の前記2つの第2の端子の各々と前記第2列の前記第1の端子の間に配置される、回路基板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2012−121322(P2012−121322A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243129(P2011−243129)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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