説明

回路情報管理装置、その方法及びプログラム

【課題】配線路の経路長に応じて熱量を陰影で表示し、放熱効果が最適となるビアの配置を設計する回路情報管理装置等を提供する。
【解決手段】底面積及び高さが仮想的に設定されたビア及びチップ含む回路記憶する回路情報記憶部21、回路要素を配置する配置部22、ビアがチップと配線により接続されている場合、ビアの上方にチップと接続している配線路の経路長に応じた高さで、仮想の点光源を配置する放熱体光源配置部24、チップの上方に消費電力に応じた高さで仮想の点光源を配置する発熱体光源配置部27、ビアが放熱する熱量及びチップが発熱する熱量を、点光源から照射された光による陰影として形成する陰影生成部25、ビアの陰影領域及びチップの陰影領域において、それぞれが重なっている重畳領域と、チップの陰影領域との差分が最小となるようにビア及び/又はチップの配置を変更する配置変更部29、形成陰影を表示する表示制御部26とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱体を要素に含む回路の情報を管理する回路情報管理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、3次元集積回路やMEMS(Micro−Electro−Mechanical Systems)等の配線パターンを設計する際に、CADを使用した設計が一般的に行われている。これらの装置には、チップのように熱を発生する発熱体が含まれており、それらが発する熱により回路に不具合が生じる場合があり、過熱による温度の上昇を防止すると共に、温度分布が均一化できるような設計を行う必要がある。一方、回路を構成するビアや配線等(放熱体)は、発熱体が発生する熱を拡散して放熱する機能を有している。すなわち、発熱体からの熱を放熱体により効率よく拡散して、回路全体で熱を均一化するような設計支援ツールの開発が望まれている。
【0003】
回路の発熱を考慮して、熱特性に優れた半導体集積回路を設計する技術として、例えば特許文献1に示す技術が開示されている。特許文献1に示す技術は、システム仕様情報に基づき、当該システムを収納する筐体および、前記筐体内に収納され、当該システムを構成する実装基板と、前記実装基板上に実装されるパッケージ基板を含むパッケージの設計を行う第1の工程と、前記設計を行う工程で得られた設計結果に基づき、前記筐体内における前記実装基板および前記パッケージの熱解析を行う工程と、前記熱解析を行う工程の解析結果に基づき、半導体集積回路システムの設計を行う第2の工程とを含み、望ましくは、この第2の工程では、半導体集積回路の素子配置を決定するように、前記パッケージに搭載する半導体集積回路の設計を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−102631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、熱伝導ベクトルが強い方向に多くのビアの穴を設けることで、放熱効果を高めることが記載されているが、個々のビアでどの程度の放熱を実現することができるか明確に示されず、また、半導体集積回路とビアとを接続する配線経路について考慮されているわけではないため、放熱効果を最適にするビアの配置や個数を正確に設計することが困難であるという課題を有する。
【0006】
すなわち、発熱体からの熱は配線のような熱伝導率が高い要素を伝わるため、その配線の長さに応じて放熱効果が大きく異なる。例えば、発熱体から同じ距離の位置にビアを配設した場合であっても、一方の配線は大きく迂回しており、他方の配線は最短距離で直線の配線であれば、その配線経路の経路長に応じてビアごとに放熱効果が異なる。しかしながら、特許文献1には、このように配線の経路長を考慮した放熱効果が演算されておらず、放熱効果が最適となるようにビアの配置や数を正確に設計することが困難である。
【0007】
本発明は、発熱体と放熱体との配線路の経路長に応じて熱量を陰影で表示し、放熱効果が最適となるビアの配置を設計する回路情報管理装置等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本願に開示する回路情報管理装置は、特性に応じて立体形状の底面積及び高さが
仮想的に設定された回路の要素に関する情報を、熱を発する発熱体と熱を吸収する放熱体とに区分して記憶する回路情報記憶手段と、前記回路情報記憶手段に記憶されている情報に基づいて、前記回路が形成される空間内の任意の位置に前記要素を配置する回路要素配置手段と、前記回路要素配置手段で配置された各要素について、当該要素の特性に応じて、当該要素の上方に仮想の点光源を配置する光源配置手段と、前記光源配置手段で配置された点光源から照射された光による前記要素の陰影領域を演算し、前記放熱体が放熱する熱量及び/又は発熱体が発熱する熱量を、前記要素の陰影として形成する陰影形成手段と、前記形成された陰影を表示する表示制御手段とを備えるものである。
【0009】
このように、本願に開示する回路情報管理装置においては、回路を構成する要素である放熱体及び発熱体の上方に、その要素の特定に応じて仮想の点光源を配設し、点光源から照射された光で放熱体が放熱する熱量及び/又は発熱体が発熱する熱量を陰影として形成し、形成された陰影を表示するため、回路を構成する要素の熱量に関する情報を陰影という形で利用者が視覚的に認識しやすい態様で模式的に表示し、利用者の視認性を向上させて直感的に熱量を認識させることができるという効果を奏する。
【0010】
(2)本願に開示する回路情報管理装置は、前記光源配置手段が、前記配置された各要素における放熱体と発熱体とが配線により接続されている場合に、前記放熱体の上方に、前記発熱体と接続している配線路の経路長に応じた高さで仮想の点光源を配置するものである。
【0011】
このように、本願に開示する回路情報管理装置においては、放熱体と発熱体とが配線により接続されている場合に、前記放熱体の上方に、前記発熱体と接続している配線路の経路長に応じた高さで仮想の点光源を配置するため、配線路の経路長に応じた熱伝導率を考慮して放熱体の冷却効率を放熱体ごとに求めることができると共に、その冷却効率を陰影という形で模式的に表示し、利用者の視認性を向上させて直感的に放熱体の冷却効率を認識させることができるという効果を奏する。
【0012】
(3)本願に開示する回路情報管理装置は、前記光源配置手段が、前記配置された各要素における発熱体の上方に、前記発熱体の消費電力に応じた高さで仮想の点光源を配置するものである。
【0013】
このように、本願に開示する回路情報管理装置においては、配置された各要素における発熱体の上方に、前記発熱体の消費電力に応じた高さで仮想の点光源を配置するため、消費電力に応じた発熱体の発熱量を求めることができると共に、その発熱量を陰影という形で模式的に表示し、利用者の視認性を向上させて直感的に発熱体の発熱量を認識させることができるという効果を奏する。
【0014】
(4)本願に開示する回路情報管理装置は、前記発熱体が複数積層されて配置されている場合に、前記光源配置手段が、前記積層された発熱体のそれぞれに対して当該発熱体の消費電力に応じた高さで仮想の点光源を配置し、前記陰影形成手段が、前記積層された発熱体のそれぞれに対して前記配置された点光源から照射された光による陰影領域を形成し、前記表示制御手段が、基板に近い発熱体の陰影から順次優先して上書きして表示するものである。
【0015】
このように、本願に開示する回路情報管理装置においては、発熱体が複数積層されて配置されている場合に、積層された発熱体のそれぞれに対して当該発熱体の消費電力に応じた高さで仮想の点光源を配置し、その点光源から照射された光による陰影領域を形成し、基板に近い発熱体の陰影から順次優先して上書きして表示するため、チップ等の発熱体が積層している場合であっても、それぞれの発熱体について発熱量を陰影として表示するこ
とができ、利用者の視認性を向上させて直感的に発熱体の発熱量を認識させることができるという効果を奏する。
【0016】
(5)本願に開示する回路情報管理装置は、前記発熱体が複数積層され、それぞれの層が電極で接続されている場合に、前記光源配置手段が、最下層の発熱体の上方に前記電極で接続されている発熱体の合計の消費電力に応じた高さで仮想の点光源を配置し、前記陰影形成手段が、前記配置された点光源から照射された光による前記最下層の発熱体の陰影領域を形成するものである。
【0017】
このように、本願に開示する回路情報管理装置においては、発熱体が複数積層され、それぞれの層が電極で接続されている場合に、最下層の発熱体の上方に前記電極で接続されている発熱体の合計の消費電力に応じた高さで仮想の点光源を配置し、配置された点光源から照射された光による前記最下層の発熱体の陰影領域を形成するため、複数積層されたチップ等の発熱体がビアで接続されている場合には、それらを一体となった一つのチップと見なし、最下層のチップの仮想形状にしたがって、積層されたチップ全体の消費電力に応じた発熱量を陰影として表示することができ、利用者の視認性を向上させて直感的に発熱体の発熱量を認識させることができるという効果を奏する。
【0018】
(6)本願に開示する回路情報管理装置は、前記放熱体の陰影領域、及び前記発熱体の陰影領域において、それぞれが重なっている重畳領域と、前記発熱体の陰影領域との差分が、前記要素の制約条件の範囲内で最小となるように前記放熱体及び/発熱体の配置を変更する配置変更手段を備えるものである。
【0019】
このように、本願に開示する回路情報管理装置においては、放熱体の陰影領域と発熱体の陰影領域とで重なっている重畳領域と、発熱体の陰影領域との差分が、制約条件の範囲内で最小となるように放熱体及び/又は発熱体の配置を変更するため、制約条件の範囲内で放熱体による冷却効果を最大限に活かした回路設計を行うことができるという効果を奏する。なお、ここで言う制約条件とは、主に熱(温度)に関する制約条件を指すが、接続関係やデザインに関する制約条件を含むものであってもよい。
【0020】
(7)本願に開示する回路情報管理装置は、前記放熱体の陰影領域、前記発熱体の陰影領域、及び前記重畳領域が異なる表示態様で表示されることを特徴とするものである。
【0021】
このように、本願に開示する回路情報管理装置においては、放熱体の陰影領域、発熱体の陰影領域、及び重畳領域が異なる表示態様で表示されるため、熱量の情報を陰影として捉えて視認性を向上させると共に、発熱体による発熱と放熱体による冷却との関連を視覚により直感的に捉えることができるという効果を奏する。
【0022】
(8)本願に開示する回路情報管理装置は、前記放熱体の立体形状の高さが、当該放熱体の材質に基づいて設定され、前記発熱体の立体形状の高さが、当該発熱体の最低消費電力、最高消費電力及び/又は平均消費電力に基づいて設定されていることを特徴とするものである。
【0023】
このように、本願に開示する回路情報管理装置においては、放熱体の立体形状の高さが材質に基づいて設定され、発熱体の立体形状の高さが最低消費電力、最高消費電力及び/又は平均消費電力に基づいて設定されるため、放熱体の材質、発熱体の最高消費電力及び/又は平均消費電力を考慮した陰影を形成することができ、それに基づいて正確な熱量を演算し回路設計に利用することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の実施形態に係る回路情報管理装置のハードウェア構成図である。
【図2】第1の実施形態に係る回路情報管理装置の機能ブロック図である。
【図3】第1の実施形態に係る回路情報管理装置のデータ構造を示す図である。
【図4】第1の実施形態に係る回路情報管理装置における放熱体の陰影を示す図である。
【図5】第1の実施形態に係る回路情報管理装置における放熱体と陰影との関係を示す図である。
【図6】第1の実施形態に係る回路情報管理装置における放熱体の断面形状と陰影との関係を示す図である。
【図7】第1の実施形態に係る回路情報管理装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】第2の実施形態に係る回路情報管理装置の機能ブロック図である。
【図9】第2の実施形態に係る回路情報管理装置における発熱体の陰影を示す図である。
【図10】第2の実施形態に係る回路情報管理装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】第2の実施形態に係る回路情報管理装置において発熱体がビアで接続されずに積層された場合の陰影モデルを示す図である。
【図12】第2の実施形態に係る回路情報管理装置において発熱体がビアで接続されて積層された場合の陰影モデルを示す図である。
【図13】第3の実施形態に係る回路情報管理装置の機能ブロック図である。
【図14】第3の実施形態に係る回路情報管理装置が管理する放熱体及び発熱体を含む回路の一例を示す図である。
【図15】第3の実施形態に係る回路情報管理装置における放熱体、発熱体及びそれらの陰影を示す第1の図である。
【図16】第3の実施形態に係る回路情報管理装置における放熱体、発熱体及びそれらの陰影を示す第2の図である。
【図17】第3の実施形態に係る回路情報管理装置の動作を示す第1のフローチャートである。
【図18】第3の実施形態に係る回路情報管理装置の動作を示す第2のフローチャートである。
【図19】第3の実施形態に係る回路情報管理装置における放熱体、発熱体及びそれらの陰影を示す第3の図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明は多くの異なる形態で実施可能である。従って、本実施形態の記載内容のみで本発明を解釈すべきではない。また、本実施形態の全体を通して同じ要素には同じ符号を付けている。
【0026】
以下の実施の形態では、主に装置について説明するが、所謂当業者であれば明らかな通り、本発明は方法、及び、コンピュータを動作させるためのプログラムとしても実施できる。また、本発明はハードウェア、ソフトウェア、または、ハードウェア及びソフトウェアの実施形態で実施可能である。プログラムは、ハードディスク、CD−ROM、DVD−ROM、光記憶装置、または、磁気記憶装置等の任意のコンピュータ可読媒体に記録できる。さらに、プログラムはネットワークを介した他のコンピュータに記録することができる。
【0027】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係る回路情報管理装置について、図1ないし図7を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る回路情報管理装置のハードウェア構成図、図2は、本実施形態に係る回路情報管理装置の機能ブロック図、図3は、本実施形態に係る回路情報管理装置のデータ構造を示す図、図4は、本実施形態に係る回路情報管理装置における放熱体の陰影を示す図、図5は、本実施形態に係る回路情報管理装置における放熱体と陰影との関係を示す図、図6は、本実施形態に係る回路情報管理装置における放熱体の断面形状と陰影との関係を示す図、図7は、本実施形態に係る回路情報管理装置の動作を示すフローチャートである。
【0028】
本実施形態に係る回路情報管理装置は、特性に応じて立体形状の底面積及び高さが仮想的に設定された放熱体を少なくとも回路の要素に含み、当該要素に関する情報を記憶する回路情報記憶手段と、前記回路情報記憶手段に記憶されている情報に基づいて、前記回路が形成される空間内の任意の位置に前記要素を配置する回路要素配置手段と、前記放熱体が発熱体と配線により接続されている場合に、当該放熱体の上方に、前記発熱体と接続している配線路の経路長に応じた高さで、仮想の点光源を配置する光源配置手段と、前記放熱体が放熱する熱量を、前記光源配置手段で配置された点光源から照射された光による前記放熱体の陰影として形成する陰影形成手段と、前記形成された陰影を表示する表示制御手段とを備えるものである。
【0029】
図1において、回路情報管理装置1は、CPU10、RAM11、ROM12、ハードディスク(HDとする)13、通信I/F14、及び入出力I/F15を備える。ROM12やHD13には、オペレーティングシステムや各種プログラム(例えば、CADプログラム、回路情報管理プログラム等)が格納されており、必要に応じてRAM11に読み出され、CPU10により各プログラムが実行される。
【0030】
通信I/F14は、他の装置(例えば、サーバ、上位装置等)と通信を行うためのインタフェースである。入出力I/F15は、キーボードやマウス等の入力機器からの入力を受け付けたり、プリンタやモニタ等にデータを出力するためのインタフェースである。この入出力I/F15は、必要に応じて光磁気ディスク、フロッピーディスク、CD−R、DVD−R等のリムーバブルディスク等に対応したドライブを接続することができる。各処理部はバスを介して接続され、情報のやり取りを行う。
【0031】
図2において、回路情報管理装置1は、回路情報部21と配置部22と経路長演算部23と放熱体光源配置部24と陰影生成部25と表示制御部26とを備える。
【0032】
回路情報部21は、回路を構成する要素に関する様々な情報を記憶する記憶部である。この回路情報部21が記憶する回路情報のデータ構造について、一例を図3に示す。図3に示すように、データ構造は大きく分けて接続情報を格納する記憶部310と要素のレイアウト情報を格納する記憶部320とを有する。
【0033】
記憶部310には、ポートに関する情報を格納するポート部311、ネットに関する情報を格納するネット部312、インスタンスに関する情報を格納するインスタンス部313、ポートインスタンスに関する情報を格納するポートインスタンス部314、及び陰影に関する情報を格納する陰影部315を有する。ポート部311とネット部312との間、及びネット部312とポートインスタンス部314との間には接続関係があり、陰影部315は、ポート部311、ネット部312、及びインスタンス部313と双方向のポインタで対応付けられている。
【0034】
記憶部320には、記憶部310に格納された情報のレイアウト情報が記憶されており、ポート部311に対応する端子図形321、ネット部312に対応する配線図形・VI
A322、インスタンス部313に対応する部品定義名・部品配置情報323(部品定義325を参照して得られる)、陰影部315に対応する陰影図形324を有する。陰影を発生するための放熱体の材質等の条件は部品定義325に定義されており、放熱体(例えばビア)を定義する際に、その定義体に部品定義325にて定義された材質を付加する構成となっている。なお、回路情報部21では、各要素ごとに、放熱体又は発熱体に区分されて記憶されている。
【0035】
図2に戻って、配置部22は、回路情報部21に記憶されている回路の各要素を制約条件に応じて配置する処理を行う。経路長演算部23は、配置された要素のうちチップ等の発熱体とビア等の放熱体が配線で接続されている場合に、その配線路の経路長を演算する処理を行う。放熱体光源配置部24は、発熱体との経路長に応じて放熱体の上方に点光源を配置する処理を行う。点光源の配置は、放熱体の上方であって放熱体の断面中心の延長線上に配置されるのが望ましい。
【0036】
陰影生成部25は、点光源から光を照射することで放熱体が放熱する熱量を陰影として形成する。ここで、陰影モデルについて説明する。図4に放熱体の陰影を示す。本実施形態においては、放熱体として例えばTSV(シリコン貫通電極:Through-silicon via)とすることができる。ここでは、単にビアとする。図4(A)は、異なる2つのビアの実データの上断面図であり、図4(B)は、それぞれのビアの特性に応じて設定された仮想の立体形状を示す。ビアは材質に応じて熱伝導率が異なるため、まずその特性に応じて仮想の立体形状を設定し、回路情報部21に記憶しておく。すなわち、図4に示すように熱伝導率が高く冷却効率が高いビア41には冷却効率に応じてビアの高さを高く設定し、熱伝導率が低く冷却効率が低いビア42には冷却効率に応じてビアの高さを低く設定する。つまり、ビアの上面から点光源までの距離が同じであれば、高さが高いビアほど大きな陰影ができ、陰影の大きさが冷却効率を示すモデルとなる。
【0037】
なお、太さについても冷却効率に応じて仮想的に設定してもよいが、ここでは実データい基づく太さをそのまま利用することとする。
【0038】
図5を用いて陰影、点光源、放熱体の関係について説明する。図5(A)は、放熱体の上面から点光源までの距離が同じで放熱体の立体形状が異なる場合の陰影を示し、図5(B)は、放熱体の立体形状が同じで放熱体の上面から点光源までの距離が異なる場合の陰影を示している。図5(A)において、D1>D2=D3、d1=d2=d3、r1=r2<r3の関係である。すなわち、A−1とA−2とでは放熱体の立体形状の高さが異なっており、そのために立体形状の高さが高いA−1の方が広い面積を有する陰影が形成されている。A−2とA−3とでは放熱体の立体形状の太さ(断面径)が異なっており、そのために立体形状の太さが太いA−2の方が広い面積を有する陰影が形成されている。したがって、上記で説明したように、本モデルにおいては陰影の面積からA−1>A−2>A−3の順で冷却効率が高い放熱体となる。
【0039】
図5(B)において、D4=D5=D6、d4<d5<d6、r4=r5=r6の関係である。すなわち、B−1とB−2とでは放熱体の上面から点光源までの高さが異なっており、そのために点光源の高さが低いB−1の方が広い面積を有する陰影が形成されている。B−2とB−3とでも同様に、点光源の高さが低いB−2の方が広い面積を有する陰影が形成されている。したがって、上記で説明したように、本モデルにおいては陰影の面積からB−1>B−2>B−3の順で冷却効率が高い放熱体となる。
【0040】
このように放熱体の立体形状及び点光源の位置を設定することで、放熱体の陰影を形成し、その陰影を熱量として捉えることができる。
【0041】
なお、図4、図5においては、図6(A)に示すように放熱体の立体形状を断面円形状の円柱としているが、図6(B)に示すように断面多角形(又は角丸多角形)の多角柱(又は角丸多角柱)としてもよく、その場合、断面形状に応じた形状で陰影が形成されるようにしてもよい。また、図6(C)のように複数の放熱体が近設されている場合には、それぞれの放熱体の陰影が融合した形状で陰影が形成されるようにしてもよい。
【0042】
図2に戻って、表示制御部26は、陰影生成部25が生成した陰影を表示画面20に表示する。
【0043】
次に、本実施形態に係る回路情報管理装置の動作について、図7のフローチャートを用いて説明する。まず、回路情報部21から放熱体の陰影の発生条件を読み込む(S71)。ここで読み込まれる発生条件は、放熱体の立体形状の高さを決めるための放熱体の材質である。また、同時にその図形の情報等も読み込まれる。回路情報部21に記憶されている回路の各要素に関する情報に基づいて、配置部22が回路の初期配置を行う(S72)。配置された各要素について、放熱体と発熱体とが配線により直接接続されている場合に、経路長演算部23が、放熱体から発熱体までの配線路の経路長を計算する(S73)。放熱体光源配置部24が、S73で計算した経路長の長さに応じて点光源の位置を設定する(S74)。
【0044】
点光源の位置は、放熱体から発熱体までの配線路の経路長が長いほど、放熱体の上面からの高さが高くなるように設定される。発熱体から発生する熱は、主に熱伝導率が非常に高い配線を通じて伝導される。すなわち、配線の経路長が長いほど熱伝導率が悪くなり、冷却効率が低くなる。したがって、配線の経路長が長いほど点光源と放熱体との距離が大きくなり、陰影の面積が小さくなるように点光源の位置が設定される。
【0045】
陰影生成部25が、S74で設定された点光源からの光の照射により、放熱体が放熱する熱量を陰影として形成し(S75)、表示制御部26が、形成された陰影を表示画面20表示して(S76)、処理を終了する。なお、陰影の出力は表示画面20への表示だけではなく、プリンタによる印刷で行ってもよい。
【0046】
このように、本実施形態に係る回路情報管理装置によれば、配線路の経路長に応じて異なる熱伝導率を考慮した放熱体の冷却効率を放熱体ごとに正確に求めることができると共に、その冷却効率を陰影という形で模式的に表示し、利用者の視認性を向上させて直感的に熱量を認識させることができる。
【0047】
(本発明の第2の実施形態)
本実施形態に係る回路情報管理装置について、図8ないし図10を用いて説明する。図8は、本実施形態に係る回路情報管理装置の機能ブロック図、図9は、本実施形態に係る回路情報管理装置における発熱体の陰影を示す図、図10は、本実施形態に係る回路情報管理装置の動作を示すフローチャート、図11は、本実施形態に係る回路情報管理装置において発熱体がビアで接続されずに積層された場合の陰影モデルを示す図、図12は、本実施形態に係る回路情報管理装置において発熱体がビアで接続されて積層された場合の陰影モデルを示す図である。
【0048】
本実施形態に係る回路情報管理装置は、特性に応じて立体形状の底面積及び高さが仮想的に設定された発熱体を少なくとも回路の要素に含み、当該要素に関する情報を記憶する回路情報記憶手段と、前記回路情報記憶手段に記憶されている情報に基づいて、前記回路が形成される空間内の任意の位置に前記要素を配置する回路要素配置手段と、前記発熱体の上方に、当該発熱体の消費電力に応じた高さで仮想の点光源を配置する光源配置手段と、前記発熱体が放熱する熱量を、前記光源配置手段で配置された点光源から照射された光
による前記発熱体の陰影として形成する陰影形成手段と、前記形成された陰影を表示する表示制御手段とを備えるものである。
【0049】
なお、本実施形態において前記第1の実施形態と重複する説明については省略する。
【0050】
図8において、回路情報管理装置1は、回路情報部21と配置部22と発熱体光源配置部27と陰影生成部25と表示制御部26とを備える。回路情報部21は、回路を構成する要素に関する様々な情報を記憶する記憶部である。この回路情報部21が記憶する回路情報のデータ構造は、第1の実施形態における図3と同様であり、陰影を発生するための発熱体の最低消費電力等の条件は、部品定義325に定義されており、発熱体(例えばチップ)を定義する際に、その定義体に部品定義325にて定義された発熱情報を付加する構成である。
【0051】
配置部22は、回路情報部21に記憶されている回路の各要素を制約条件に応じて配置する処理を行う。発熱体光源配置部27は、発熱体の消費電力に応じて発熱体の上方に点光源を配置する処理を行う。点光源の配置は、発熱体の上方であって発熱体の断面中心又は重心の延長線上に配置されるのが望ましい。
【0052】
陰影生成部25は、点光源から光を照射することで発熱体が発熱する熱量を陰影として形成する。ここで、陰影モデルについて説明する。本実施形態においては、発熱体は主にチップとする。チップは消費電力に応じて発熱量が異なるため、消費電力に応じて仮想の立体形状を設定し、回路情報部21に記憶しておく。すなわち、消費電力が高く発熱する熱量が大きい場合にはチップの高さを高くし、消費電力が低く発熱する熱量が小さい場合にはチップの高さを低く設定する。つまり、チップの上面から点光源までの距離が同じであれば、高さが高いチップほど大きな陰影ができ、陰影の大きさが発熱量を示すモデルとなる。
【0053】
なお、太さについても発熱量に応じて仮想的に設定してもよいが、ここでは実データい基づく太さをそのまま利用することとする。
【0054】
図9を用いて陰影、点光源、発熱体の関係について説明する。図9(A)は、発熱体の上面から点光源までの距離が同じで発熱体の立体形状が異なる場合の陰影を示し、図9(B)は、発熱体の立体形状が同じで発熱体の上面から点光源までの距離が異なる場合の陰影を示している。図9(A)において、D8>D7、d7=d8の関係である。すなわち、図9(A)のA−1とA−2とでは発熱体の立体形状の高さが異なっており、そのために立体形状の高さが高いA−2の方が広い面積を有する陰影が形成されている。したがって、上記で説明したように、本モデルにおいては陰影の面積からA−2>A−1の順で発熱量が大きい発熱体となる。
【0055】
図9(B)において、D9=D10、d9>d10の関係である。すなわち、図9(B)のB−1とB−2とでは発熱体の上面から点光源までの高さが異なっており、そのために点光源の高さが低いB−2の方が広い面積を有する陰影が形成されている。したがって、上記で説明したように、本モデルにおいては陰影の面積からB−2>B−1の順で発熱量が大きい発熱体となる。
【0056】
このように発熱体の立体形状及び点光源の位置を設定することで、発熱体の陰影を形成し、その陰影を熱量として捉えることができる。
【0057】
図8に戻って、表示制御部26は、陰影生成部25が生成した陰影を表示画面20に表示する。
【0058】
次に、本実施形態に係る回路情報管理装置の動作について、図10のフローチャートを用いて説明する。まず、回路情報部21から発熱体の陰影の発生条件を読み込む(S101)。ここで読み込まれる発生条件は、発熱体の最低消費電力、平均消費電力、最高消費電力等である。例えば、発熱体の立体形状の高さは、ここで読み込んだ最低消費電力、平均消費電力及び最高消費電力のいずれかに応じて設定するようにしてもよいし、それらの任意の組み合わせに基づいて設定されるようにしてもよい。また、同時にその図形の情報等も読み込まれる。
【0059】
回路情報部21に記憶されている回路の各要素に関する情報に基づいて、配置部22が回路の初期配置を行う(S102)。配置された各要素について、配置された条件を考慮して発熱体の消費電力を演算する(S103)。すなわち、発熱体の消費電力は、配置や接続条件に応じて異なるため、配置後の消費電力を演算しておく。このS103演算処理は、図示していないが別途設けられた演算部(例えば、消費電力演算部とする)が行うようにしてもよいし、発熱体光源配置部27が行うようにしてもよい。演算された発熱体の消費電力に応じて、発熱体光源配置部27が点光源の位置を設定する(S104)。
【0060】
なお、上記S103の処理を省略し、S101で読み込んだ3つの値のうちいずれかの値を消費電力として点光源の位置を設定するようにしてもよい。
【0061】
点光源の位置は、消費電力が大きいほど発熱体の上面からの高さが低くなるように設定される。発熱体から発生する熱は、主に消費電力に比例して大きくなる。すなわち、消費電力が大きいほど発熱する熱量が大きくなる。したがって、消費電力が大きいほど点光源と放熱体との距離が小さくなり、陰影の面積が大きくなるように点光源の位置が設定される。
【0062】
設定された点光源からの光の照射により、発熱体が発熱する熱量を陰影生成部25が陰影として形成し(S105)、表示制御部26が、形成された陰影を表示して(S106)、処理を終了する。なお、陰影の出力は表示画面20への表示だけではなく、プリンタによる印刷で行ってもよい。
【0063】
ここで、発熱体が複数積層されている場合の陰影の表示について説明する。ここでは、発熱体をチップとすると、積層されたチップは、それぞれが熱伝導率が高い物(例えば、ビア、熱伝導率係数が高い接着剤、熱伝導率係数が高いテープ等)を介して積層されている場合とそうでない場合とに大別することができる。
【0064】
複数積層されて配置されているチップが、熱伝導率が高い物を介して積層されていない場合は、発熱体光源配置部27が、前記積層された発熱体のそれぞれに対して消費電力に応じた高さで仮想の点光源を配置し、陰影生成部25が、積層された発熱体のそれぞれに対して配置された点光源から照射された光による陰影領域を形成し、表示制御部26が、基板に近い発熱体の陰影から順次優先して上書きして表示する。
【0065】
図11に、チップが積層され、それぞれの層間が熱伝導率が高い物を介していない場合の陰影モデルを示す。積層されたチップが熱伝導率が高い物を介していない場合は、それぞれのチップが基板に対して個別に発熱の影響を与えることになるため、点光源がチップごとに配置され、その高さは各チップの消費電力に応じて決定される。すなわち、図11(A)に示すように、それぞれの点光源から照射された光による陰影領域が形成されて表示される。このとき、それぞれの陰影領域の表示態様を異ならせることが望ましい。
【0066】
また、図11(B)に示すように、上部のチップ(チップB)の大きさが小さく、その
陰影領域が直下のチップ(チップA)の上面の領域内に収まる場合は、直下のチップ(チップA)の上面に陰影領域が形成され、表示されるようにしてもよい。さらに、図11(C)に示すように、陰影の表示は、当該陰影を表示する対象(ここでは基板となる)に近い方のチップ(チップA)の陰影領域が優先して(チップBの陰影領域に対して上書きされて)表示されるようにしてもよい。
【0067】
図12に、チップが積層され、それぞれの層間が熱伝導率が高い物を介している場合の陰影モデルを示す。積層されたチップが熱伝導率が高い物を介している場合は、それぞれのチップを一体的に捉えて一つのチップと見なす。すなわち、図12に示すように、熱伝導率が高い物を介して積層されているチップの合計消費電力に応じた高さで、陰影を表示する対象(ここでは基板となる)に最も近いチップ(チップA)の上部に点光源が配置される。したがって、陰影領域は、基板に最も近いチップAの形状に応じて形成され、その大きさは、接続されているチップ(チップAとチップB)の合計の消費電力に応じて表示される。
【0068】
このように、本実施形態に係る回路情報管理装置によれば、消費電力に応じて異なる発熱量を考慮して、発熱体が発生する熱量を正確に求めることができると共に、その熱量を陰影という形で模式的に表示し、利用者の視認性を向上させて直感的に熱量を認識させることができる。
【0069】
(本発明の第3の実施形態)
本実施形態に係る回路情報管理装置について、図13ないし図19を用いて説明する。図13は、本実施形態に係る回路情報管理装置の機能ブロック図、図14は、本実施形態に係る回路情報管理装置が管理する放熱体及び発熱体を含む回路の一例を示す図、図15は、本実施形態に係る回路情報管理装置における放熱体、発熱体及びそれらの陰影を示す第1の図、図16は、本実施形態に係る回路情報管理装置における放熱体、発熱体及びそれらの陰影を示す第2の図、図17は、本実施形態に係る回路情報管理装置の動作を示す第1のフローチャート、図18は、本実施形態に係る回路情報管理装置の動作を示す第2のフローチャート、図19は、本実施形態に係る回路情報管理装置における放熱体、発熱体及びそれらの陰影を示す第3の図である。
【0070】
本実施形態に係る回路情報管理装置は、特性に応じて立体形状の底面積及び高さが仮想的に設定された放熱体及び発熱体を少なくとも回路の要素に含み、当該要素に関する情報を記憶する回路情報記憶手段と、前記回路情報記憶手段に記憶されている情報に基づいて、前記回路が形成される空間内の任意の位置に前記要素を配置する回路要素配置手段と、前記放熱体が発熱体と配線により接続されている場合に、当該放熱体の上方に、前記発熱体と接続している配線路の経路長に応じた高さで、仮想の点光源を配置すると共に、前記発熱体の上方に、前記発熱体の消費電力に応じた高さで仮想の点光源を配置する光源配置手段と、前記放熱体が放熱する熱量及び前記発熱体が発熱する熱量を、前記点光源から照射された光による前記放熱体及び発熱体の陰影として形成する陰影形成手段と、前記形成された陰影を表示する表示制御手段とを備え、さらに、前記放熱体の陰影領域、及び前記発熱体の陰影領域において、それぞれが重なっている重畳領域と、前記発熱体の陰影領域との差分が、前記要素の制約条件の範囲内で最小となるように前記放熱体の配置を変更する放熱体配置変更手段を備えるものである。
【0071】
なお、本実施形態において前記各実施形態と重複する説明については省略する。
【0072】
図13において、回路情報管理装置1は、回路情報部21と配置部22と経路長演算部23と放熱体光源配置部24と発熱体光源配置部27と陰影生成部25と表示制御部26と熱量演算部28と配置変更部29とを備える。回路情報部21、配置部22、経路長演
算部23、放熱体光源配置部24、発熱体光源配置部27及び陰影生成部25の機能は、前記各実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0073】
熱量演算部28は、放熱体の陰影領域と発熱体の陰影領域とが重複している重畳領域と、発熱体の陰影領域との差分を求め、その差分を熱量の差分として演算する。表示制御部26は、発熱体及び放熱体を含む回路を構成する各要素、並びにそれらの陰影領域を表示する。配置変更部29は、熱量演算部28が演算した陰影領域の差分の情報に基づいて、放熱体の冷却効果が最適となるように放熱体及び/又は発熱体の配置を変更する。このとき、例えば、シミュレーテッドアニーリング法等により自動演算で最適な配置を求めてもよいし、利用者の操作に基づいて配置が変更されるようにしてもよい。
【0074】
熱量演算部28、表示制御部26及び配置変更部29の機能について詳細に説明する。図14に放熱体及び発熱体を含む回路の一例(図14(A))とそれぞれの陰影領域の一例(図14(B))とを示す。図14(A)は、基板上に発熱体であるチップ121、並びに放熱体であるビア122及びビア123が配設されており、チップ121とビア122とが配線124で接続され、チップ121とビア123とが配線125で接続されている。配線124と配線125は、それぞれの経路長が配線124<配線125の関係であり、ビア122とビア123は、いずれも銅を材質とする同じ太さ(水平方向の断面の半径)のものである。
【0075】
図14(B)は、ビア122とその陰影領域122a、チップ121とその陰影領域121a、及びビア123とその陰影領域123aを示している。ビア122とビア123は、いずれも材質が銅で太さが同じであることから全く同じ立体形状で設定される。しかし、点光源の位置は、チップ121との配線124、125の経路長に応じてそれぞれ設定されるため、経路長が短い方のビア122の上面から点光源までの距離X1の方が、経路長が長い方のビア123の上面から点光源までの距離X2よりも小さくなる(X1<X2)。すなわち、図14(B)に示すように、ビア122の陰影領域122aの方が、ビア123の陰影領域123aより大きくなる。チップ121の陰影領域121aについては、最低消費電力、最高消費電力、及び/又は平均消費電力(ここでは、最低消費電力とする)により立体形状が設定され、チップ121の配置及び接続状態に応じた配置消費電力に基づいて点光源の位置が設定されることで形成されている。
【0076】
図14の回路の上面図を図15に示す。図15(A)が初期配置の状態における陰影境域を表示した場合を示し、図15(B)がビアの配置を変更した場合の陰影領域を表示した場合を示している。図15(A)の場合は、図14において説明した通り、配線の経路長が短いビア122の陰影領域122aが、配線の経路長が長いビア123の陰影領域123aより大きくなっている。図15(A)において、ビア122の陰影領域122aとビア123の陰影領域123aとの一部が、チップ121の陰影領域121aに重ることで、チップ121の陰影領域121aが小さくなっている。これは、チップ121による発熱をビア122、123が放熱することで冷却していることを意味している。
【0077】
図15(B)において、ビア123の配置を変更することで配線125が短くなり、それに応じて陰影領域123aが大きくなっている。すなわち、ビア123を移動させることで配線125の経路長を短くし、点光源の位置を低くし、陰影領域123aを大きくしている。陰影領域123aが大きくなることで、図15(A)の場合と比較して、チップ121の陰影領域121aがより小さくなり、冷却効率が向上していることがわかる。
【0078】
なお、図15においては、ビア122、123の陰影領域122a、123aとチップ121の陰影領域121aとが重複している重畳領域を図示していないが、陰影領域122a、123aを半透明にして、重複領域を明示するようにしてもよい。その場合、ビア
の陰影領域とチップの陰影領域とそれらの重畳領域とは異なる表示態様(例えば、模様の違い、色彩の違い、文字による説明文等)で表示されるのが望ましい。
【0079】
また、図15(A)の状態から図15(B)の状態に配置が変更される場合、ビア123の制約条件を考慮した配置の変更がされるものとする。
【0080】
また、図15においては、ビア123の配置を変更しているが、チップ121、ビア122及び/又はビア123のいずれの配置を変更するようにしてもよい。
【0081】
図15の表示に、チップ121の陰影領域121aの大きさを数値で示したものを図16に示す。図16(A)は、図15(A)に対応して初期配置の状態を示しており、図16(B)は、図15(B)に対応してビアの配置を変更した場合の状態を示している。数値が示す大きさはチップ121の陰影領域121aを示すと共に、熱量の大きさを示している。すなわち、数値(陰影領域121aの大きさ)が小さい程、発熱量が小さく、冷却効率が高いこととなる。図16(A)の状態では、陰影領域121aの大きさが「105」で、図16(B)の状態では、陰影領域121aの大きさが「72」であることから、図16(B)の方が、冷却効率が高いことを容易に認識することができる。この数値は、例えば利用者がマウス等を用いてビア123を移動させた場合には、マウスポインタの移動と共に、そのマウスポインタの位置にビア123が配置されたものとしてリアルタイムにチップ121の陰影領域121aの大きさを演算して表示できるようにしてもよい。
【0082】
次に、本実施形態に係る回路情報管理装置の動作について説明する。図17は、自動演算で最適な配置を求める場合の処理を示す。まず、回路情報部21から発熱体、放熱体の陰影の発生条件を読み込む(S1501)。ここで読み込まれる発熱体の陰影の発生条件は、発熱体の立体形状の高さを設定するための発熱体の最低消費電力、平均消費電力、最高消費電力等である。放熱体の陰影の発生条件は、放熱体の立体形状の高さを決めるための放熱体の材質である。また、同時に放熱体、発熱体の図形の情報や熱に関する制約条件等も読み込まれる。
【0083】
陰影の発生条件が読み込まれると検討回数を設定する(S1502)。検討回数は利用者が任意に設定できるようにしてもよいし、予め登録されている検討回数を設定するようにしてもよい。回路情報部21に記憶されている回路の各要素に関する情報に基づいて、配置部22が回路の初期配置を行う(S1503)。
【0084】
S1503で初期配置された各要素について、配置された条件を考慮して発熱体の消費電力を演算する(S1504)。すなわち、発熱体の消費電力は、配置や接続条件に応じて異なるため、配置後の消費電力を演算しておく。なお、このS1504の処理を省略し、S1501で読み込んだ最低消費電力、平均消費電力、最高消費電力のうちいずれかの値を消費電力としてもよい。演算された発熱体の消費電力に応じて、発熱体光源配置部27が発熱体についての点光源の位置を設定し(S1505)、陰影生成部25が、点光源からの光の照射により、発熱体が発熱する熱量を陰影として形成(S1506)する。なお、発熱体の点光源の位置は、消費電力が大きいほど発熱体の上面からの高さが低くなるように設定される。
【0085】
S1503で初期配置された各要素について、放熱体と発熱体とが配線により直接接続されている場合に、経路長演算部23が、放熱体から発熱体までの配線路の経路長を計算する(S1507)。放熱体光源配置部24が、S1507で計算した経路長の長さに応じて点光源の位置を設定し(S1508)、陰影生成部25が、点光源からの光の照射により、放熱体が放熱する熱量を陰影として形成する(S1509)。なお、放熱体の点光源の位置は、放熱体から発熱体までの配線路の経路長が長いほど、放熱体の上面からの高
さが高くなるように設定される。
【0086】
発熱体及び放熱体のそれぞれの陰影が形成されると、熱量演算部28が放熱体による放熱効果(発熱体の陰影−放熱体の陰影)を演算する(S1510)。すなわち、図15等で示すように、チップ121の陰影領域121aと、ビア122,123の陰影領域122a,123aとが重畳する重畳領域が、放熱体が放熱した熱量に相当し、チップ121の陰影領域121aから重畳領域を引いた領域が最終的な発熱量となる。
【0087】
S1507からS1510までの処理の実行回数が、S1502で設定された検討回数以下かどうかを判定し(S1511)、小さければ、配置変更部29が最終的な発熱量が小さくなるように(放熱体の放熱効果が大きくなるように)放熱体及び/又は発熱体の配置を変更する(S1512)。配置を変更する具体的な手法として、例えばシミュレーテッド・アニーリング法を用いることができる。この演算により、例えば、図15(A)の状態から図15(B)の状態にビアの配置が変更されて、最終的な発熱量を小さくし放熱効果を大きくすることができる。このとき、S1501で読み込んだ熱に関する制約条件を満たす範囲内で放熱体及び/又は発熱体の配置を変更するものとする。配置が変更されると実行回数に1を加算し(S1513)、S1507からS1511までの処理を繰り返す。
【0088】
S1511で、実行回数が検討回数より大きければ、設定された検討回数分のシミュレーションがなされたため、最終的な回路の配置を決定し、表示制御部26が、陰影を表示画面20表示して(S1514)、処理を終了する。なお、陰影の出力は表示画面20への表示だけではなく、プリンタによる印刷で行ってもよい。
【0089】
次に、図18を用いて利用者の操作に基づいて配置が変更される場合の処理を説明する。なお、図17に同様の処理については詳細を省略する。まず、回路情報部21から発熱体、放熱体の陰影の発生条件を読み込む(S1601)。回路情報部21に記憶されている回路の各要素に関する情報に基づいて、配置部22が回路の初期配置を行い(S1602)、初期配置された各要素について、配置された条件を考慮して発熱体の消費電力を演算する(S1603)。
【0090】
演算された発熱体の消費電力に応じて、発熱体光源配置部27が発熱体についての点光源の位置を設定し(S1604)、陰影生成部25が、点光源からの光の照射により、発熱体が発熱する熱量を陰影として形成(S1605)する。S1602で初期配置された各要素について、放熱体と発熱体とが配線により直接接続されている場合に、経路長演算部23が、放熱体から発熱体までの配線路の経路長を計算する(S1606)。放熱体光源配置部24が、S1606で計算した経路長の長さに応じて点光源の位置を設定し(S1607)、陰影生成部25が、点光源からの光の照射により、放熱体が放熱する熱量を陰影として形成する(S1608)。
【0091】
発熱体及び放熱体のそれぞれの陰影が形成されると、熱量演算部28が放熱体による放熱効果(発熱体の陰影−放熱体の陰影)を演算する(S1609)。利用者からの入力指示情報を判定し(S1610)、利用者からの指示情報が「再検討」であれば、利用者からの配置変更の指示情報に応じて、配置変更部29が放熱体及び/又は発熱体の配置を変更し(S1611)、S1606からS1610までの処理を繰り返す。利用者からの指示情報が「検討終了」であれば、現在の配置情報で決定し、表示制御部26が陰影を表示画面20表示して(S1612)、処理を終了する。
【0092】
なお、ここでは放熱体から発熱体までの配線の経路長に応じて点光源の位置を設定したが、放熱体と発熱体とが図19に示すようにワイヤを介して接続されている場合には、そ
のワイヤの長さも含めた経路長に応じて点光源の位置が設定されるようにしてもよい。すなわち、図19に示すように、ワイヤの長さ+配線の長さが長い放熱体ほど冷却効率が悪く陰影領域が小さく形成されて表示されるようにしてもよい。
【0093】
このように、本実施形態に係る回路情報管理装置によれば、放熱体の陰影領域と発熱体の陰影領域とで重なっている重畳領域と、発熱体の陰影領域との差分が、制約条件の範囲内で最小となるように放熱体及び/又は発熱体の配置を変更するため、制約条件の範囲内で放熱体による冷却効果を最大限に活かした回路設計を行うことができる。また、放熱体の陰影領域、発熱体の陰影領域、及び重畳領域が異なる表示態様で表示することで、熱量の情報を陰影として捉えて視認性を向上させると共に、発熱体による発熱と放熱体による冷却との関連を視覚により直感的に捉えることができる。さらに、放熱体の立体形状の高さが材質に基づいて設定され、発熱体の立体形状の高さが最低消費電力、最高消費電力及び/又は平均消費電力に基づいて設定されるため、放熱体の材質、発熱体の最高消費電力及び/又は平均消費電力を考慮した陰影を形成することができ、それに基づいて正確な熱量を演算し回路設計に利用することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 回路情報管理装置
10 CPU
11 RAM
12 ROM
13 HD
14 通信I/F
15 入出力I/F
20 表示画面
21 回路情報部
22 配置部
23 経路長演算部
24 放熱体光源配置部
25 陰影生成部
26 表示制御部
27 発熱体光源配置部
28 熱量演算部
29 配置変更部
41,42 ビア
121 チップ
122,123 ビア
121a,122a,123a 陰影領域
124,125 配線
310,320 記憶部
311 ポート部
312 ネット部
313 インスタンス部
314 ポートインスタンス部
321 端子図形
322 配線図形・ビア
323 部品定義名・部品配置情報
324 陰影図形
325 部品定義

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特性に応じて立体形状の底面積及び高さが仮想的に設定された回路の要素に関する情報を、熱を発する発熱体と熱を吸収する放熱体とに区分して記憶する回路情報記憶手段と、
前記回路情報記憶手段に記憶されている情報に基づいて、前記回路が形成される空間内の任意の位置に前記要素を配置する回路要素配置手段と、
前記回路要素配置手段で配置された各要素について、当該要素の特性に応じて、当該要素の上方に仮想の点光源を配置する光源配置手段と、
前記光源配置手段で配置された点光源から照射された光による前記要素の陰影領域を演算し、前記放熱体が放熱する熱量及び/又は発熱体が発熱する熱量を、前記要素の陰影として形成する陰影形成手段と、
前記形成された陰影を表示する表示制御手段とを備えることを特徴とする回路情報管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回路情報管理装置において、
前記光源配置手段が、前記配置された各要素における放熱体と発熱体とが配線により接続されている場合に、前記放熱体の上方に、前記発熱体と接続している配線路の経路長に応じた高さで仮想の点光源を配置することを特徴とする回路情報管理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回路情報管理装置において、
前記光源配置手段が、前記配置された各要素における発熱体の上方に、前記発熱体の消費電力に応じた高さで仮想の点光源を配置することを特徴とする回路情報管理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の回路情報管理装置において、
前記発熱体が複数積層されて配置されている場合に、
前記光源配置手段が、前記積層された発熱体のそれぞれに対して当該発熱体の消費電力に応じた高さで仮想の点光源を配置し、
前記陰影形成手段が、前記積層された発熱体のそれぞれに対して前記配置された点光源から照射された光による陰影領域を形成し、
前記表示制御手段が、基板に近い発熱体の陰影から順次優先して上書きして表示することを特徴とする回路情報管理装置。
【請求項5】
請求項3に記載の回路情報管理装置において、
前記発熱体が複数積層され、それぞれの層が電極で接続されている場合に、
前記光源配置手段が、最下層の発熱体の上方に前記電極で接続されている発熱体の合計の消費電力に応じた高さで仮想の点光源を配置し、
前記陰影形成手段が、前記配置された点光源から照射された光による前記最下層の発熱体の陰影領域を形成することを特徴とする回路情報管理装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の回路情報管理装置において、
前記放熱体の陰影領域、及び前記発熱体の陰影領域において、それぞれが重なっている重畳領域と、前記発熱体の陰影領域との差分が、前記要素の制約条件の範囲内で最小となるように前記放熱体及び/又は発熱体の配置を変更する配置変更手段を備えることを特徴とする回路情報管理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の回路情報管理装置において、
前記放熱体の陰影領域、前記発熱体の陰影領域、及び前記重畳領域が異なる表示態様で表示されることを特徴とする回路情報管理装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の回路情報管理装置において、
前記放熱体の立体形状の高さが、当該放熱体の材質に基づいて設定され、前記発熱体の立体形状の高さが、当該発熱体の最低消費電力、最高消費電力及び/又は平均消費電力に基づいて設定されていることを特徴とする回路情報管理装置。
【請求項9】
コンピュータが、
特性に応じて立体形状の底面積及び高さが設定された回路の要素に関する情報を、熱を発する発熱体と熱を吸収する放熱体とに区分して記憶する回路情報記憶手段に記憶されている情報に基づいて、前記回路が形成される空間内の任意の位置に前記要素を配置する回路要素配置ステップと、
前記回路要素配置ステップで配置された各要素について、当該要素の特性に応じて、当該要素の上方に仮想の点光源を配置する光源配置ステップと、
前記光源配置ステップで配置された点光源から照射された光による前記要素の陰影領域を演算し、前記放熱体が放熱する熱量及び/又は発熱体が発熱する熱量を、前記要素の陰影として形成する陰影形成ステップと、
前記形成された陰影を表示する表示制御ステップとを含むことを特徴とする回路情報管理方法。
【請求項10】
特性に応じて立体形状の底面積及び高さが仮想的に設定された回路の要素に関する情報を、熱を発する発熱体と熱を吸収する放熱体とに区分して記憶する回路情報記憶手段、
前記回路情報記憶手段に記憶されている情報に基づいて、前記回路が形成される空間内の任意の位置に前記要素を配置する回路要素配置手段、
前記回路要素配置ステップで配置された各要素について、当該要素の特性に応じて、当該要素の上方に仮想の点光源を配置する光源配置手段、
前記光源配置ステップで配置された点光源から照射された光による前記要素の陰影領域を演算し、前記放熱体が放熱する熱量及び/又は発熱体が発熱する熱量を、前記要素の陰影として形成する陰影形成手段、
前記形成された陰影を表示する表示制御手段としてコンピュータを機能させることを特徴とする回路情報管理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−190252(P2012−190252A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53115(P2011−53115)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(598015084)学校法人福岡大学 (114)
【出願人】(504369731)ケイレックス・テクノロジー株式会社 (14)
【出願人】(391043332)財団法人福岡県産業・科学技術振興財団 (53)
【Fターム(参考)】