説明

回転つまみ

【課題】ロータリーエンコーダなど回転型電気部品を実装する場合における回転軸に嵌合するつまみとパネル孔の偏芯、及び偏芯が原因による引掛り動作不良を防止することができる構造簡易な回転つまみを提供する。
【解決手段】音響機器のパネルに設けられた穴を通して所要長さ突出し、残部が奥方の電気部品の回転軸に嵌合されるつまみであって、前記つまみは、少なくとも前記パネルの穴近傍において、回転軸とつまみ外周部分が半径方向で可縮性のある複数のリブで連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は音響機器などにおける操作に用いられる回転つまみに関する。
【背景技術】
【0002】
車載用オーディオなどで代表される音響機器においては、ボリューム(音量)・を調整したり、周波数帯を調整したりするために回転操作つまみが用いられている。
図1はその例を示しており、基板上100に複数のロータリーエンコーダ400が実装されている場合、操作つまみ300はそれぞれのエンコーダ400の軸401に強嵌合で組込みされる。また、前記基板100はパネル(エスカッション)200にネジにて固定される。
【0003】
ここで、複数個のエンコーダ400が同一基板上に実装されている場合、エンコーダ400の実装位置ばらつきなどにより、ある1つのエンコーダを基準に組込みしたとしても、他方のエンコーダ位置とパネル穴の位置ずれ(偏芯)が引き起こされる。このようにエンコーダ400とパネル穴201の偏芯が発生すると、図2の右側部分のように、偏心eによりエンコーダ軸401に嵌合されている操作つまみ300の外周とパネル穴201の内周が干渉し、その結果、操作つまみ300の動作不良(引掛り、擦れ等)が発生する。
【0004】
上記不具合の対策方法として、パネル穴201と操作つまみ300のクリアランスを拡大する方法があるが、外観上の操作つまみ偏芯状態は改善されないので、商品価値の低下を招き、また、パネル穴201を大きくすることにより、埃などの外部から異物が侵入しやすくなる問題もあった。
【特許文献1】特開平7−229982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記のような問題点を解消するためになされたもので、その目的とするところは、ロータリーエンコーダなど回転型電気部品を実装する場合における回転軸に嵌合するつまみとパネル孔の偏芯、及び偏芯が原因による引掛り動作不良を防止することができる構造簡易な回転つまみを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明は、音響機器のパネルに設けられた穴を通して所要長さ突出し、残部が奥方の電気部品の回転軸に嵌合されるつまみであって、前記つまみは、少なくとも前記パネルの穴近傍において、回転軸とつまみ外周部分が半径方向で可縮性のある複数のリブで連結されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、回転軸とつまみ外周部分がつまみ半径方向に可縮性のあるリブで連結されているので、回転軸の軸線とパネル穴の軸線とが芯ずれを有していても、反偏心側にあるリブが縮んでパネル穴との接触面圧増大を吸収することができ、これにより、つまみ外周とパネル穴との偏芯及びこれが原因による引掛り動作不良を防止することが可能となり、操作性及び外観をよくすることができる。また構造も簡単で、安価に実施できるなどのすぐれた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
好適には、つまみが、回転軸を嵌合する内筒部と、パネル穴に対応する形状の外筒部とを有し、円周上で等間隔に配された弧状のリブの両端が前記外筒部の内径と前記内筒部の外径に連結されている。
【0009】
つまみが本体とキャップからなっている。
これによれば、キャップを本体から分離して実装することにより軸方向が可視されるため、回転軸への嵌合が容易となり、また、つまみ外周面とパネル穴との干渉具合の確認も容易となる。
【実施例1】
【0010】
以下添付図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図3ないし図6は本発明にかかる回転つまみの一実施例を示している。
図3は全体の構成を示しており、1は音響機器のプリント基板であり、前面側に複数の回転操作型電気部品ここではロータリーエンコーダ4が所要の間隔をおいて搭載されている。ロータリーエンコーダ4はそれぞれ回転軸40が突出している。
2は前記プリント基板1に対峙するパネルであり、組立時に前記プリント基板1とねじで一体化される。前記パネル2には前記ロータリーエンコーダに対応する位置につまみ挿入用の穴20が形成されている。
【0011】
3は本発明で特徴とする操作用のつまみであり、本体3aと本体3aの前端に固定されるキャップ3bからなり、曲げに対する耐久性が高く、弾力性のある材料たとえばABS等の樹脂で構成されている。
前記本体3aは、前記回転軸40に外嵌固着される内筒部30と、前記パネル2の穴20と同形状をなした外筒部31を有している。しかも、内筒部30と外筒部31間には、半径方向で可縮性を有する複数のリブ32が、円周上で等間隔に位置している位置していて、それらリブ32の両端が、前記内筒部外径と外筒部内径につながっている。
【0012】
ここで、リブ32はこの例では円弧状(略半周長)をなし、弧のすべてが同じ方向に向いている。リブ32は厚さが内筒部30や外筒部31よりも薄く、材質特性とあいまって弾性変形が自在となっている。リブ32は360度の全方位で可縮性が得られるよう、少なくとも120度間隔従って3個設けられることが好ましい。
リブ32は押し出し成形などの成形法の適用ともあいまって、本体3aの全長にわたって形成されることがベターであるが、場合によっては全長でなく、パネル穴20の厚さ分プラス前後所要範囲にだけ形成してもよい。
なお、前記キャップ3bの本体3aに対する組付けは、嵌合でもよいし、接着でもよい。
【0013】
実施例の作用について説明すると、実装にあたっては、プリント基板1に対してパネル2を前方に配し、パネルの各穴20にそれぞれのロータリーエンコーダ4の回転軸40をあわせ、その状態で穴20につまみ3を所要長さ挿入して前記回転軸40につまみ本体3aの内筒部30を嵌合する。
無負荷状態では各リブ32は伸びた状態にあり、したがって、図5のように、ロータリーエンコーダ4の回転軸40がパネル穴20と同心で偏心量がゼロある場合には、外筒部3に外力が作用しないので、各リブ32には変形が起こらず、内筒部2と外筒部3は同心状の関係におかれる。
【0014】
ところが、何らかの誤差の影響で回転軸40の軸線がパネル穴20に対し中心がずれて偏芯状態(e:偏心量)である場合には、外筒部3に偏心に呼応する外力が作用する。すなわち、外筒部30は組込状態でパネル穴20と干渉して外力を受ける。その結果、反偏心側のリブ32は圧縮を受けて弧が小さくなるように弾性変形し、偏心側のリブ32は伸びた状態を維持する。したがって、外筒部30は内筒部2に対して一定の範囲内で半径方向に変位可能となるので、外筒部30はパネルと同心円の位置に矯正される。
【0015】
従来ではつまみは樹脂材料で成形されているものの、つまみ外周部と軸嵌合部の間の弾性がほとんど無いため、つまみ外周面とパネル穴内面の接触面圧が増大し引掛り/動作不良を発生させていたが、本発明によれば、偏芯によるつまみ3とパネル穴20の接触面圧増大を円弧状のリブ32が自動的に無段階で吸収するので、つまみ外周面とパネル穴内面の摩擦抵抗が減少され、つまみの引掛り/動作不良を防止することが可能になる。したがってまた、パネル穴20のつまみに対するクリアランスをことさら大きくしなくてもよくなるので、異物の侵入も防止できる。
【0016】
なお、キャップ3bは予め本体3aに固定一体化しておいてもよいが、分離しておいて本体3aの実装後に本体3aに固定するようにした場合には、軸方向が視認できるため、内筒部3aの回転軸4aへの嵌合作業が容易となり、また、外筒部3bの外周面とパネル穴20との干渉具合の確認も容易となる。
なお、本発明はロータリーエンコーダ4が複数個並んでいる場合に好適であるが、パネル穴とエンコーダ軸とが芯ずれを起こしている場合に補正効果があるので、1個の場合にも適用される。
【0017】
本実施例においては、内筒部30と外筒部31およびリブ32が一体成形されている。これによれば、たとえば押し出し成形したものを切断してつまみを製作できるのでコストを安くすることができる。
しかし、本発明は必ずしもこの態様に限定されるものではなく、2部体以上を作り、それらを組付けて内筒部30と外筒部31およびリブ32を構成してもよい。たとえば、外筒部体と、リブを一体化した内筒部体をそれぞれ作り、リブの外径側に外筒部体を嵌合固着してもよい。これによれば、外筒部体を硬質な材料で構成することができるので、手触りや操作感をよくすることができ、また、リブの形状や大きさの自由度が増す利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来の操作つまみの実装前の状態を示す斜視図である。
【図2】実装状態の正面図である。
【図3】本発明による回転つまみの実装前の状態を示す斜視図である。
【図4】実装状態の縦断側面図である。
【図5】パネル穴と回転軸の軸心が一致している場合の回転つまみとパネル穴との関係を示す部分切欠正面図である。
【図6】パネル穴と回転軸の軸心が一致してない場合の回転つまみとパネル穴との関係を示す部分切欠正面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 プリント基板
2 パネル
3 つまみ
3a つまみ本体
3b キャップ
4 電気部品(ロータリーエンコーダ)
20 パネル穴
30 内筒部
31 外筒部
32 リブ
40 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響機器のパネルに設けられた穴を通して所要長さ突出し、残部が奥方の電気部品の回転軸に嵌合されるつまみであって、前記つまみは、少なくとも前記パネルの穴近傍において、回転軸とつまみ外周部分が半径方向で可縮性のある複数のリブで連結されていることを特徴とする回転つまみ。
【請求項2】
つまみが、回転軸を嵌合する内筒部と、パネル穴に対応する形状の外筒部とを有し、円周上で等間隔に配された弧状のリブの両端が前記外筒部の内径と前記内筒部の外径に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の回転つまみ。
【請求項3】
つまみが本体とキャップからなっていることを特徴とする請求項2に記載の回転つまみ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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