説明

回転テーブル

【課題】偏荷重によりテーブル本体が傾斜して静圧ポケットのランド部と接触するのを防止可能な回転テーブルを提供する。
【解決手段】回転テーブル1は、回転体11,回転軸12及び円筒部材13からなるテーブル本体10と、円筒部材13が挿入される支持穴22、支持穴22の内周面に開口した環状の第1凹部22a、及び回転体11側の端面たる一端面に開口した環状の第2凹部23aを有する円筒状の支持部材21と、各凹部22a,23a内に圧油を供給する圧油供給装置30と、回転軸12を軸中心に回転させる回転駆動機構35とを備える。支持部材21の一端面は、内周側の高さが高く、外周側の高さが低い段付き形状に形成されて、高さの高い内周側に第2凹部23aが形成され、高さの低い外周側には、環状の摺動板25が回転体11の裏面から間隔を隔てるように且つ回転軸12が傾斜したときに回転体11と当接可能に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テーブル本体を静圧によって回転自在に支持する回転テーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開平5−87143号公報に開示されているように、静圧によって回転部材を回転自在に支持することが従来から行われており、このような静圧を用いた回転テーブルとして、例えば、図6に示すようなものがある。
【0003】
この回転テーブル100は、同図6に示すように、テーブル本体101と、テーブル本体101を回転自在に支持する支持部材105と、支持部材105に形成された凹部109,110,111(静圧ポケット)内に圧油を供給する圧油供給源112と、テーブル本体101を軸中心に回転させる回転駆動機構(図示せず)とから構成される。
【0004】
前記テーブル本体101は、上面にワークが取り付けられる円盤状の回転体102と、回転体102の下面に一端が固設された回転軸103と、回転体102の下面から間隔を隔てた下方位置で回転軸103に固設された回転板104とを備えており、前記回転駆動機構(図示せず)によって回転軸103が軸中心に回転せしめられる。
【0005】
前記支持部材105は、上下に貫通し、回転軸103が挿入される支持穴106と、上面及び下面の、支持穴106の開口部の周囲にそれぞれ形成されて回転体102の下面及び回転板104の上面と対向する環状の凸部107,108と、支持穴106の内周面に開口して環状に形成された第1凹部109と、上側の凸部107上面に開口して環状に形成された第2凹部110と、下側の凸部108下面に開口して環状に形成された第3凹部111とを備える。
【0006】
また、前記回転軸103の外周面と支持穴106の内周面との間、前記回転体102の下面と凸部107の上面との間、及び前記回転板104の上面と凸部108の下面との間には、一定の静圧隙間がそれぞれ形成されている。
【0007】
そして、この回転テーブル100によれば、圧油供給源112から各凹部109,110,111内に供給された圧油や、各凹部109,110,111内から排出されて静圧隙間を流通する圧油を介して支持部材105によりテーブル本体101が回転自在に支持される。
【0008】
ところが、このような回転テーブル100では、偏荷重(回転体102の中心から半径方向にずれた位置にかかる荷重)が作用した場合、前記静圧隙間があるためにテーブル本体101が傾斜し易く、テーブル本体101が傾斜すると、テーブル本体101と支持部材105の上側の凸部107上面とが接触して、第2凹部110を形成するためのランド部が損傷し、例えば、静圧隙間が変化してテーブル本体101の支持力が変化するという問題や、供給された圧油が第2凹部110から漏れて第2凹部110内の圧力が低くなり、テーブル本体101の支持力が低下するという問題などがあった。
【0009】
また、テーブル本体101の傾斜によりテーブル本体101と支持部材105との金属同士が接触すると、テーブル本体101の回転が急停止して前記回転駆動機構が破損する恐れもあるし、接触時にテーブル本体101や支持部材105が変形する恐れもある。
【0010】
そこで、このような不都合を防止可能なものとして、例えば、図7に示すような回転テーブル120が提案されている。この回転テーブル120は、前記回転テーブル100と同様の構成を備えるが、支持穴106の内周面に開口した3つの凹部(第4凹部121,第5凹部122及び第6凹部123)が設けられている点で異なっている。これらの凹部121,122,123は、上下方向に間隔を隔てて配置されており、上下両側の第4凹部121及び第5凹部122は、円周方向に一定間隔で設けられた4つの凹部から構成され、真ん中の第6凹部123は、環状に形成されている。また、第4凹部121及び第5凹部122には圧油供給源112から圧油が供給され、第6凹部123は圧油排出用の凹部となっている。尚、この第6凹部123内の圧油は図示しない流路により圧油供給源112に還流される。
【0011】
そして、この回転テーブル120によれば、上下方向に間隔を隔てた第4凹部121内及び第5凹部122内に供給される圧油によって回転軸103が支持されるため、偏荷重が作用してもテーブル本体101(回転軸103)が傾斜し難くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平5−87143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記回転テーブル120のように、上下方向に間隔を隔てて第4凹部121,第5凹部122及び第6凹部123を設けたのでは、合計3つの凹部121,122,123を支持穴106の内周面に設けることとなって、回転軸103や支持部材105の軸線方向における長さが長くなり、装置構成が大きくなるという欠点があった。
【0014】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、装置構成を大きくすることなく、偏荷重によるテーブル本体の傾斜によりテーブル本体が静圧ポケットのランド部と接触するのを防止することができる回転テーブルの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するための本発明は、
回転テーブルであって、
表面側にワークが取り付けられる円盤状の回転体と、前記回転体の裏面側に一端が固設された回転軸とを有するテーブル本体と、
前記テーブル本体を前記回転軸中心に回転自在に支持する筒状の支持部材であって、前記回転軸が挿入される支持穴と、該支持穴の内周面に開口して環状に設けられた第1凹部と、前記回転体側の端面たる一端面に開口して環状に設けられた第2凹部とを有する支持部材を備えた支持手段と、
前記各凹部内に加圧流体を供給する流体供給手段と、
前記回転軸を軸中心に回転させる回転駆動手段とを備え、
前記流体供給手段から前記各凹部内に供給された加圧流体を介して前記支持部材により前記テーブル本体が回転自在に支持される回転テーブルにおいて、
前記支持部材の一端面及び回転体の裏面の少なくとも一方は、中心側が外周側よりも突出した段付き形状に形成されて、前記支持部材の一端面が段付き形状に形成されている場合には、前記支持部材の突出部に前記第2凹部が形成され、前記支持部材の一端面の前記突出部より外周側の部分又は前記回転体の裏面の前記突出部との対向部より外周側の部分に環状の摺動部材が設けられる一方、前記回転体の裏面が段付き形状に形成されている場合には、前記支持部材の一端面の前記回転体の突出部との対向部に前記第2凹部が形成され、前記支持部材の一端面の前記突出部との対向部より外周側の部分又は前記回転体の裏面の前記突出部より外周側の部分に環状の摺動部材が設けられるとともに、
前記摺動部材は、合成樹脂を主成分に構成され、前記回転体の裏面又は支持部材の一端面から間隔を隔てるように且つ前記回転軸が傾斜したときに前記回転体又は支持部材と当接可能に設けられていることを特徴とする回転テーブルに係る。
【0016】
この発明によれば、流体供給手段から各凹部内に供給された加圧流体を介して支持部材によりテーブル本体が回転自在に支持され、このように支持されたテーブル本体が回転駆動手段によって回転軸中心に回転せしめられる。
【0017】
そして、例えば、テーブル本体を回転させてこれに取り付けられたワークを加工する際や、テーブル本体にワークを取り付ける際などに、回転体の中心から半径方向にずれた位置に荷重(偏荷重)が作用すると、テーブル本体(回転体及び回転軸)が傾斜する場合があるが、傾斜したとしても、支持部材の一端面又は回転体の裏面に設けられた摺動部材と回転体又は支持部材とが当接して支持部材の第2凹部の形成部分と回転体との接触が防止される。
【0018】
このように、本発明に係る回転テーブルによれば、支持部材の一端面の第2凹部より外周側に摺動部材を設け、この摺動部材と傾斜したテーブル本体の回転体とを当接させたり、回転体の裏面の前記第2凹部との対向部より外周側に摺動部材を設け、傾斜したテーブル本体の回転体に設けられた摺動部材と支持部材とを当接させて、支持部材の第2凹部の形成部分と回転体とが接触するのを防止するようにしたので、第2凹部を形成するためのランド部が損傷して、例えば、静圧隙間が変化してテーブル本体の支持力が変化するという問題や、供給された加圧流体が第2凹部から漏れて第2凹部内の圧力が低くなり、テーブル本体の支持力が低下するという問題が生じるのを防止することができる。
【0019】
この他、摺動部材を設けることで、テーブル本体が傾斜したとしても、テーブル本体の回転が急停止して回転駆動手段が破損したり、接触時にテーブル本体や支持部材が変形するという問題が生じるのを防止することができる。また、摺動部材の主成分を合成樹脂とすることで、摺動部材がテーブル本体や支持部材と接触したときに当該摺動部材が弾性変形するため、接触時の衝撃を緩和することができ、このことによっても、接触によりテーブル本体や支持部材が変形するのを防止することができる。即ち、摺動部材が金属製であると、当該摺動部材とテーブル本体や支持部材との金属同士が接触したときに、これらが変形して常に接触した状態となる恐れがあり、このような場合には、本発明に係る回転テーブルを備えた機械を止めてメンテナンスする必要があるが、本発明では、摺動部材の主成分を合成樹脂としているので、摺動部材とテーブル本体や支持部材とが接触してもこれらが変形しないため、上記のような問題が生じるのを防止することができる。
【0020】
また、摺動部材を支持部材の一端面又は回転体の裏面に設けるだけであるので、構造が複雑になったり、大きくなることもない。更に、支持穴の内周面に形成する凹部は1つだけでも良く、構造のコンパクト化を図ることができる。
【0021】
尚、前記テーブル本体は、前記回転軸の外側で該回転軸と同軸となるように一端が前記回転体の裏面側に固設されるとともに、前記支持部材の支持穴内に他端側が突出するように挿入された円筒部材を備え、前記円筒部材は、前記支持部材の他端面と対向する鍔部を備え、前記支持部材は、その他端面に開口して環状に設けられる第3凹部を備え、前記流体供給手段は、前記第1凹部,第2凹部及び第3凹部内に加圧流体を供給するように構成されていても良い。
【0022】
この場合には、第2凹部内に供給された加圧流体だけでなく、第3凹部内に供給された加圧流体によっても、スラスト方向の荷重を受けることができるので、より傾斜し難く且つより安定してテーブル本体を支持することができる。
【0023】
また、前記第1凹部,第2凹部及び第3凹部の各凹部は、それぞれ環状に設けられているが、この環状に設けられるとは、1つの凹部が環状に形成されている場合、複数の凹部が円周方向に間隔を隔てて環状に配置されている場合の両方を含む意味である。特に、前記第2凹部及び/又は第3凹部については、円周方向に沿って一定間隔で設けられた複数の凹部から構成すれば、テーブル本体が傾斜したときに、テーブル本体傾斜側における凹部内の流体圧力をそれ以外の部分における凹部内の流体圧力よりも高めることが可能となるため、テーブル本体をより傾斜し難くすることができる。
【0024】
尚、摺動部材の主成分となる合成樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、フッ素樹脂(一例としては、ポリテトラフルオロエチレン)などが挙げられる。中でも、摩擦係数が0.1以下と低く、耐摩耗性に優れており、しかも、静摩擦係数と動摩擦係数がほぼ等しい「ターカイト(登録商標)(商品名)」を用いることが好ましい。また、このターカイトは、入手し易い、安価である、サイズが豊富であるといった利点も有している。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明に係る回転テーブルによれば、装置構成を大きくすることなく、偏荷重によるテーブル本体の傾斜によってテーブル本体が静圧ポケットのランド部と接触するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る回転テーブルの概略構成を示した断面図である。
【図2】本実施形態に係る支持部材などの概略構成を示した断面図である。
【図3】図2における矢示A方向の平面図である。
【図4】図2における矢示B方向の平面図である。
【図5】テーブル本体が傾斜していないときと傾斜したときの状態を示す断面図である。
【図6】従来例に係る回転テーブルの概略構成を示した断面図である。
【図7】従来例に係る回転テーブルの概略構成を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の具体的な実施形態について、添付図面に基づき説明する。
【0028】
図1乃至図4に示すように、本例の回転テーブル1は、例えば、工作機械に設けられるもので、テーブル本体10と、テーブル本体10を軸中心に回転自在に支持する支持機構20と、静圧ポケット内に圧油を供給する圧油供給装置30と、テーブル本体10を軸中心に回転させる回転駆動機構35とを備えて構成される。
【0029】
前記テーブル本体10は、上面にワークが取り付けられる円盤状の回転体11と、回転体11の下面に上端が固設される回転軸12と、回転体11の下面に上端が固設され、回転軸12の外側でこれと同軸に設けられる円筒部材13とから構成される。前記円筒部材13は、その下端部に、外側に張り出した鍔部13aを備える。
【0030】
前記支持機構20は、前記テーブル本体10を軸中心(前記回転軸12中心)に回転自在に支持する円筒状の支持部材21と、支持部材21を支持するベース24と、支持部材21の上端面に設けられた、合成樹脂を主成分とする環状の摺動板25とから構成される。
【0031】
前記支持部材21の、上下に貫通する中心穴22には、前記円筒部材13の下端がこの中心穴22から突出するように当該円筒部材13が嵌挿される。また、支持部材21の上端面は回転体11の下面と対向し、下端面は円筒部材13の鍔部13a上面と対向している。
【0032】
前記中心穴22の内周面には、複数(本例では12個)の第1凹部22aが円周方向等間隔で形成される。また、支持部材21は、その上端面内周側に環状の凸部23を備えており、この凸部23上面には、複数(本例では12個)の第2凹部23aが円周方向等間隔で形成されている。また、支持部材21の下端面には、凸部23上面と同様、複数(本例では12個)の第3凹部21aが円周方向等間隔で形成されている。
【0033】
尚、前記各凹部22a,23a,21aは、前記静圧ポケットとしての役割を果たすものである。また、前記中心穴22の内周面は円筒部材13の外周面から、前記凸部23の上面は回転体11の下面から、支持部材21の下端面は前記鍔部13aの上面から間隔を隔てており、これによって、中心穴22の内周面と円筒部材13の外周面との間、凸部23の上面と回転体11の下面との間、及び支持部材21の下端面と鍔部13aの上面との間には、一定の静圧隙間がそれぞれ形成される。中心穴22の内周面と円筒部材13の外周面との間の隙間、凸部23の上面と回転体11の下面との間の隙間、及び支持部材21の下端面と鍔部13aの上面との間の静圧隙間は、例えば、それぞれ15μm〜25μm、10μm〜20μm、10μm〜20μmの範囲に設定される。
【0034】
前記摺動板25は、支持部材21の上端面外周側(凸部23の外側)で高さが一段低くなった部分に、上面が前記回転体11の下面から間隔を隔てるように貼り付けられており、前記回転軸12(テーブル本体10)が傾斜したときに前記回転体11が当接可能となっている。尚、摺動板25の上面は、前記凸部23の上面と同一平面(同じ高さ)に設けられている。
【0035】
また、この摺動板25は、摩擦係数が低く、耐摩耗性に優れたフッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)を主成分に構成される。フッ素樹脂の中でも、特に、摩擦係数が0.1以下と低く、耐摩耗性に優れており、しかも、静摩擦係数と動摩擦係数がほぼ等しい「ターカイト(登録商標)(商品名)」を摺動板25に用いることが好ましい。尚、このターカイトは、更に、入手し易い、安価である、サイズが豊富であるといった利点も有している。
【0036】
前記ベース24は、支持部材21の下端部及び円筒部材13を下側から覆うように形成されて、支持部材21の軸線方向中間部外周側の下面を支持しており、上下に貫通する貫通穴24aに前記回転軸12が嵌挿されてその下端がこの貫通穴24aから突出している。また、このベース24には、圧油供給装置30から供給された圧油を外部に排出するための排出孔24bが設けられている。
【0037】
また、前記支持部材21及びベース24には、前記各第1凹部22aにそれぞれ対応した複数の圧油供給用の流路21b,24cが形成されるとともに、前記各第2凹部23a及び各第3凹部21aにそれぞれ対応した複数の圧油供給用の流路21c,24dが形成されている。
【0038】
前記圧油供給装置30は、圧油の供給源31と、一端が供給源31に接続し、他端が分岐して前記ベース24の各流路24c,24dにそれぞれ接続した供給管32とから構成され、供給管32を介して各流路24c,24d内に圧油を供給する。尚、供給された圧油は、前記排出孔24bの他、図示しない流路を介して供給源31に還流されるようになっている。
【0039】
前記回転駆動機構35は、例えば、駆動モータ36と、駆動モータ36の出力軸に固設された駆動ギア37と、前記回転軸12の下端に固設された従動ギア38とから構成されており、この駆動ギア37及び従動ギア38を介して回転軸12(テーブル本体10)を回転させる。
【0040】
以上のように構成された本例の回転テーブル1によれば、供給源31から各流路24c,24d内に供給された圧油が流路21b,21c内を流通して各静圧ポケット22a,23a,21a内に供給されると、各凹部22a,23a,21a内に存在する圧油や、各凹部22a,23a,21a内から排出され、中心穴22の内周面と円筒部材13の外周面との間、凸部23の上面と回転体11の下面との間、及び支持部材21の下端面と鍔部13aの上面との間に形成された静圧隙間内を流通する圧油を介して支持部材21によりテーブル本体10が軸中心に回転自在に支持され、このようにして支持されたテーブル本体10が、駆動ギア37及び従動ギア38を介して伝達される駆動モータ36の回転力によって回転せしめられる。
【0041】
そして、例えば、テーブル本体10を回転させてこれに取り付けられたワークを加工する際や、テーブル本体10にワークを取り付ける際に、回転体11の中心から半径方向にずれた位置に荷重(偏荷重)が作用すると、静圧隙間のために、テーブル本体10(回転体11及び回転軸12)が傾斜する場合があるが、傾斜したとしても、図5に示すように、支持部材21の上端面外周側に設けられた摺動板25と回転体11とが当接して、支持部材21の凸部23の上面と回転体11とが接触するのが防止される。尚、図5では、テーブル本体10が傾斜していない状態を実線で、傾斜した状態を二点鎖線で示している。また、実際の傾斜角度は僅かであるが、傾斜した状態を分かり易くするために傾斜角度を大きく図示している。
【0042】
斯くして、本例の回転テーブル1によれば、支持部材21の上端面外周側に摺動板25を設け、この摺動板25と傾斜したテーブル本体10の回転体11とを当接させて、支持部材21の凸部23の上面と回転体11との接触を防止するようにしたので、第2凹部23aを形成するためのランド部が損傷して、例えば、静圧隙間が変化してテーブル本体10の支持力が変化するという問題や、供給された圧油が第2凹部23aから漏れて第2凹部23a内の圧力が低くなり、テーブル本体10の支持力が低下するという問題が生じるのを防止することができる。
【0043】
この他、摺動板25を設けることで、テーブル本体10が傾斜したとしても、テーブル本体10の回転が急停止して回転駆動機構35の構成部品が破損したり、接触時にテーブル本体10や支持部材21が変形するという問題が生じるのを防止することができる。また、摺動板25の主成分を合成樹脂とすることで、摺動板25がテーブル本体10と接触したときに当該摺動板25が弾性変形するため、接触時の衝撃を緩和することができ、このことによっても、接触によりテーブル本体10や支持部材21が変形するのを防止することができる。即ち、摺動板25が金属製であると、当該摺動板25とテーブル本体10との金属同士が接触したときに、摺動板25やテーブル本体10、支持部材21が変形して常に接触した状態となる恐れがあり、このような場合には、前記工作機械を止めてメンテナンスする必要があるが、本例では、摺動板25の主成分を合成樹脂としているので、摺動板25とテーブル本体10とが接触しても摺動板25やテーブル本体10、支持部材21が変形しないため、上記のような問題が生じるのを防止することができる。
【0044】
また、摺動板25を支持部材21の上端面外周側に貼り付けるだけであるので、構造が複雑になったり、大きくなることもない。更に、中心穴22の内周面に形成する凹部は第1凹部22aの1組だけでも良く、構造のコンパクト化を図ることができる。
【0045】
また、第2凹部23a内に供給された圧油だけでなく、第3凹部21a内に供給された圧油によっても、スラスト方向の荷重を受けるようにしたので、より傾斜し難く且つより安定してテーブル本体10を支持することができる。
【0046】
また、複数の第2凹部23a及び第3凹部21aを円周方向等間隔で形成し、円周方向に分割された複数の凹部を形成することで、単に環状の凹部をそれぞれ1つだけ形成する場合に比べ、テーブル本体10が傾斜したときに、テーブル本体10の傾斜側における第2凹部23a内及び第3凹部21a内の圧力をそれ以外の部分における第2凹部23a内及び第3凹部21a内の圧力よりも高めることが可能となる。これにより、テーブル本体10をより傾斜し難くすることができる。
【0047】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の採り得る具体的な態様は、何らこれに限定されるものではない。
【0048】
上例では、回転テーブル1が工作機械に設けられているものとしたが、これに限られるものではなく、どのような構造体に設けられていても良い。また、圧油による静圧を用いたが、圧縮空気による静圧を用いるようにしても良い。
【0049】
また、上例では、摺動板25を支持部材21の上端面に貼り付けたが、回転体11の下面に貼り付けるようにしても良い。また、前記支持部材21の上端面は、内周側の高さが高く、外周側の高さが低い段付き形状に形成されていたが、前記回転体11の下面、又は支持部材21の上端面及び回転体11の下面の両方が、中心側の高さが高く、外周側の高さが低い段付き形状に形成されていても良い。
【符号の説明】
【0050】
1 回転テーブル
10 テーブル本体
11 回転体
12 回転軸
13 円筒部材
13a 鍔部
20 支持機構
21 支持部材
21a 第3凹部
22 中心穴
22a 第1凹部
23 凸部
23a 第2凹部
25 摺動板
30 圧油供給装置
31 供給源
32 供給管
35 回転駆動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転テーブルであって、
表面側にワークが取り付けられる円盤状の回転体と、前記回転体の裏面側に一端が固設された回転軸とを有するテーブル本体と、
前記テーブル本体を前記回転軸中心に回転自在に支持する筒状の支持部材であって、前記回転軸が挿入される支持穴と、該支持穴の内周面に開口して環状に設けられた第1凹部と、前記回転体側の端面たる一端面に開口して環状に設けられた第2凹部とを有する支持部材を備えた支持手段と、
前記各凹部内に加圧流体を供給する流体供給手段と、
前記回転軸を軸中心に回転させる回転駆動手段とを備え、
前記流体供給手段から前記各凹部内に供給された加圧流体を介して前記支持部材により前記テーブル本体が回転自在に支持される回転テーブルにおいて、
前記支持部材の一端面及び回転体の裏面の少なくとも一方は、中心側が外周側よりも突出した段付き形状に形成されて、前記支持部材の一端面が段付き形状に形成されている場合には、前記支持部材の突出部に前記第2凹部が形成され、前記支持部材の一端面の前記突出部より外周側の部分又は前記回転体の裏面の前記突出部との対向部より外周側の部分に環状の摺動部材が設けられる一方、前記回転体の裏面が段付き形状に形成されている場合には、前記支持部材の一端面の前記回転体の突出部との対向部に前記第2凹部が形成され、前記支持部材の一端面の前記突出部との対向部より外周側の部分又は前記回転体の裏面の前記突出部より外周側の部分に環状の摺動部材が設けられるとともに、
前記摺動部材は、合成樹脂を主成分に構成され、前記回転体の裏面又は支持部材の一端面から間隔を隔てるように且つ前記回転軸が傾斜したときに前記回転体又は支持部材と当接可能に設けられていることを特徴とする回転テーブル。
【請求項2】
前記第2凹部は、円周方向に沿って一定間隔で設けられた複数の凹部から構成されていることを特徴とする請求項1記載の回転テーブル。
【請求項3】
前記テーブル本体は、前記回転軸の外側で該回転軸と同軸となるように一端が前記回転体の裏面側に固設されるとともに、前記支持部材の支持穴内に他端側が突出するように挿入された円筒部材を備え、
前記円筒部材は、前記支持部材の他端面と対向する鍔部を備え、
前記支持部材は、その他端面に開口して環状に設けられる第3凹部を備え、
前記流体供給手段は、前記第1凹部,第2凹部及び第3凹部内に加圧流体を供給するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の回転テーブル。
【請求項4】
前記第3凹部は、円周方向に沿って一定間隔で設けられた複数の凹部から構成されていることを特徴とする請求項3記載の回転テーブル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−125865(P2012−125865A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278814(P2010−278814)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000167222)光洋機械工業株式会社 (85)
【Fターム(参考)】