回転リミット装置
【課題】 可動範囲をできるだけ広げつつ、小型軽量化も可能な回転リミット装置を提供する。
【解決手段】 回転リミット装置10は、ストッパ部材1を有する固定部2と、ストッパ部材1に接触可能な突起部材3を有し左右に任意に回転可能な自由回転部4と、突起部材3が係合される円弧状のスリット5が形成された回転部6とを備えている。回転部6のスリット5長で決まる回転角度よりも大きい角度まで回転できるように、回転部6と固定部2の間に配置される自由回転部4に突起部材3を設けるとともに、固定部2にストッパ部材1を設けるため、回転部6の外側に可動式のストッパを設けずに回転リミット装置10の可動範囲を広げることができる。
【解決手段】 回転リミット装置10は、ストッパ部材1を有する固定部2と、ストッパ部材1に接触可能な突起部材3を有し左右に任意に回転可能な自由回転部4と、突起部材3が係合される円弧状のスリット5が形成された回転部6とを備えている。回転部6のスリット5長で決まる回転角度よりも大きい角度まで回転できるように、回転部6と固定部2の間に配置される自由回転部4に突起部材3を設けるとともに、固定部2にストッパ部材1を設けるため、回転部6の外側に可動式のストッパを設けずに回転リミット装置10の可動範囲を広げることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定範囲だけ回転可能な回転リミット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットなど、回転関節をもつ装置では一般に、回転部側の回転動作を機械的に制限し、過回転を防止する機構を必要とする。通常、回転動作範囲を1回転以下に設定するのが一般であるが、1回転以上の動作範囲を可能とする機構も場合によっては必要となる。
【0003】
この種の機構の1つとして、可動式のストッパを設けて、回転部の回転範囲を広く設定できる回転リミット装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。同文献に開示されたリミット装置は、回転部の外側に可動式のストッパを設け、このストッパを相対回転可能な2つの部材のそれぞれと接触させることにより、回転関節の総回転量の限界を360°以上に設定している。
【特許文献1】特開平7-136972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、従来の回転リミット装置では、回転部の外側に可動式のストッパが配置された構成となっている。そのため、制限可能な総回転量は±(180度+約45度)の範囲であり、これ以上は可動範囲を広げられないという問題があった。
【0005】
また、回転部の外側に可動式のストッパを含む機構を配置するため、回転部に対して回転リミット装置全体が大きくなってしまう。このため、この種の回転リミット装置をロボット、特に小型化および軽量化の必要な移動ロボットなどに組込むには不向きである。
【0006】
さらに、通常、回転関節では、安全や機器の保全のため、機械的なストッパに接触する手前にセンサを配置し、回転位置を検出して、制御装置で、それ以上回転をしないようにする機能を必要とする。しかしながら、上記特許文献1を初めとする従来の回転リミット装置では、回転位置を検出する機能やストッパに接触する前に回転を停止させる機能は持っていない。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、可動範囲をできるだけ広げることができ、かつ小型軽量化が可能な回転リミット装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様によれば、ストッパ部材を有する固定部と、前記ストッパ部材に接触可能な突起部材を有し自由回転が可能な自由回転部と、前記自由回転部と中心軸が共通で、前記突起部材が係合されるスリットが形成された回転部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、可動範囲をできるだけ広げつつ、小型軽量化も可能な回転リミット装置を実現でき、ロボットの回転関節等に広く適用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る回転リミット装置の分解斜視図、図2は同回転リミット装置の組み付け斜視図である。
【0012】
これらの図に示すように、第1の実施形態に係る回転リミット装置10は、ストッパ部材1を有する固定部2と、ストッパ部材1に接触可能な突起部材3を有し左右に任意に回転可能な自由回転部4と、突起部材3が係合される円弧状のスリット5が形成された回転部6とを備えている。これら固定部2、自由回転部4および回転部6は、いずれも円板状で、中心付近に略同一径の孔7が形成されており、これら孔7を共通の回転軸として、自由回転部4と回転部6は左回りおよび右回りに回転可能とされている。固定部2と自由回転部4は、これら孔7に沿って形成される環状リブ8,9を有し、これら環状リブ8,9はその上方に配置される自由回転部4または回転部6の下面に回転自在に係合される。
【0013】
回転部6のスリット5は、回転部6の周縁部の形状に沿って円弧状に形成されている。このスリット5の両端部には、位置検出器11と押し戻しバネ12が設けられている。
【0014】
図3は位置検出器11周辺の構造を示す上面図であり、図3(a)は突起部材3が押し戻しバネ12に接触した状態(押し戻しバネ12を押し込んでいない状態)を示す図、図3(b)は突起部材3が押し戻しバネ12を押し込んでいる状態を示している。位置検出器11は図1および図2に示すように凹状であり、スリット5をまたがるように配置されている。スリット5の端部には押し戻しバネ12の一端が取り付けられている。位置検出器11は、突起部材3が押し戻しバネ12を押し込んで、図3(b)のように位置検出器11の真下に突起部材3が来るときに突起部材3を検出する。位置検出器11は、例えばフォトインタラプタ等で構成され、光学的に突起部材3を検出する。なお、位置検出器11の検出方法は特に限定されない。
【0015】
位置検出器11の検出結果は、制御装置13に伝送される。制御装置13は、位置検出器11が突起部材3を検出すると、それ以上の回転を続けることはできないと判断して、回転部6を逆方向に回転させるような制御を行うことができる。
【0016】
なお、図1〜図3では省略しているが、制御装置13からの制御信号により回転部6を左右に回転駆動するアクチュエータが設けられている。制御信号等の各種配線は、固定部2、自由回転部4および回転部6の中心にある孔7の内部に配設される。このため、回転リミット装置10を左右にどれだけ回転させても、配線が他部材に引っ掛かったり、巻き付いたりするおそれがなくなる。
【0017】
図4は第1の実施形態に係る回転リミット装置10の回転動作の一例を示す図である。以下、この図を用いて、本回転リミット装置10の動作を説明する。仮に突起部材3が図4(a)の位置にあったとし、この位置を原点として、回転部6が左向きに回転したとする。
【0018】
図4(a)の状態で、回転部6が左向きに回転すると、やがて、図4(b)のように、突起部材3は押し戻しバネ12に接触する。この状態で、さらに回転部6が左向きに回転すると、突起部材3は押し戻しバネ12を付勢することなく、突起部材3と押し戻しバネ12は互いに接触したまま共に左方向に回転していく。
【0019】
やがて、突起部材3はストッパ部材1に接触する。この状態で、さらに回転部6を左方向に回転させると、突起部材3がストッパ部材1に接触しているために自由回転部4は移動できないため、図4(c)に示すように突起部材3は押し戻しバネ12を押しつける。ある程度まで押し戻しバネ12が押しづけられると、図4(d)に示すように位置検出器11が突起部材3を検出する。図3に示した制御装置13は、位置検出器11での検出に応答して、回転部6の回転方向を変えるように制御する。これにより、一時的な回転リミットをかけることができる。
【0020】
制御装置13がこのような回転リミットをかけない場合、押し戻しバネ12は限界位置まで収縮し、機構的に完全にリミットがかかる。
【0021】
図5は本実施形態に係る回転リミット装置10の回転角度を説明する図である。図5では、回転部6のスリット5の両端部間の角度をα、スリット5の端部からストッパ部材1までの角度をβとしている。この場合、回転部6が単独で回転する角度はαで、回転部6と自由回転部4がともに回転する角度はβである。したがって、全体では、左方向に角度(α+β)分だけ回転可能である。また、右方向に対しても同様の可動範囲を有する。したがって、全体では、360度以上の可動範囲が得られる。
【0022】
回転部6のスリット5を周縁形状に沿って長くすればするほど、角度αが大きくなり、回転リミット装置10の回転角度も大きくなる。実際には、スリット5を長くすることにより、片方向で回転角度を±350度程度まで広げることができる。
【0023】
また、本実施形態によれば、回転リミット装置10の回転角度を広げた場合でも、ストッパ部材1による機構的なストッパをかける直前に、位置検出器11で突起部材3の位置を検出して回転リミットをかけることができ、機構的な無理な力が加わらなくなり、壊れにくくなる。したがって、回転リミット装置の信頼性が向上する。
【0024】
図6は第1の実施形態に係る回転リミット装置10の一変形例を示す上面図である。図6の回転リミット装置10は、押し戻しバネ12の代わりに、レバー14を設けている。これらレバー14は、一端を回転軸15として回転可能とされ、この回転軸15にはねじりバネ16が取り付けられている。回転部6が回転を続けると、やがて突起部材3がレバー14に接触する。さらに回転部6を回転させると、突起部材3とレバー14は接触した状態でともに回転し、やがて突起部材3はストッパ部材1に接触する。さらに回転部6を回転させると、突起部材3はレバー14を押し込む。この状態で、回転部6の回転を停止させると、レバー14の付勢力により、突起部材3は押し戻される。
【0025】
なお、押し戻しバネ12やレバー14は一例であり、種々の弾性部材が利用可能である。
【0026】
このように、第1の実施形態は、回転部6のスリット5長で決まる回転角度よりも大きい角度まで回転できるように、回転部6と固定部2の間に配置される自由回転部4に突起部材3を設けるとともに、固定部2にストッパ部材1を設けるため、回転部6の外側に可動式のストッパを設けずに回転リミット装置10の可動範囲を広げることができる。したがって、小型軽量化が容易で、ロボットの回転関節等に容易に適用可能な回転リミット装置10が得られる。
【0027】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、自由回転部4を複数個設けるものである。
【0028】
図7は本発明の第2の実施形態に係る回転リミット装置10の分解斜視図である。図7の回転リミット装置10は、図1と同様の構造の回転部6および固定部2の間に、複数の自由回転部4a,4b,4cを配置している。図7では、3つの自由回転部4a〜4cを備える例を示しているが、自由回転部の数には特に制限はない。
【0029】
以下では、一番上の自由回転部を第1の自由回転部4a、上から二番目の自由回転部を第2の自由回転部4b、一番下の自由回転部を第3の自由回転部4cと呼ぶ。
【0030】
第3の自由回転部4cは、図1の自由回転部4と同様の形状を持ち、ストッパ部材1に接触可能な突起部材3cを有する。第1および第2の自由回転部4a,4bは、円弧状のスリット5a,5bと、突起部材3a,3bとをそれぞれ有する。第2の自由回転部4bのスリット55bには、第3の自由回転部4cの突起部材3cが係合される。第2の自由回転部4bの突起部材3bは、第1の自由回転部4aのスリット5aと係合される。第1の自由回転部4aの突起部材3aは、回転部6のスリット5に係合される。
【0031】
例えば、回転部6を左方向に回転させると、やがて第1の自由回転部4aの突起部材3aが回転部6の押し戻しバネ12に接触し、この突起部材3aは押し戻しバネ12とともに左方向に回転する。すなわち、回転部6は、単独でスリット5の長さ分だけ回転可能である。
【0032】
回転部6の押し戻しバネ12と第1の自由回転部4aの突起部材3aとが互いに接触しながらともに回転するようになると、第1の自由回転部4aはそのスリット5aの長さ分だけ回転する。第2の自由回転部4bの突起部材3bが第1の自由回転部4aのスリット5aの端部に接触すると、今度は第2の自由回転部4bが回転を開始する。第2の自由回転部4bは、最大でそのスリット5bの長さ分だけ回転する。
【0033】
第3の自由回転部4cの突起部材3が第2の自由回転部4bのスリット5bの端部に接触すると、今度は第3の自由回転部4cが回転を開始する。第3の自由回転部4cは、最大でそのスリット5cの長さ分だけ回転する。
【0034】
第3の自由回転部4cは、その突起部材3cが固定部2のストッパ部材1に接触するまで回転を行う。第3の自由回転部4cの突起部材3が固定部2のストッパ部材1に接触してもなお回転部6を左方向に回転させると、回転部6の押し戻しバネ12が第1の自由回転部4aの突起部材3aにより押し込まれる。押し戻しバネ12が突起部材3aにより徐々に押し込まれていくと、やがてこの突起部材3aは位置検出器11により検出され、左方向への回転に対してリミットがかかる。
【0035】
結局、図7の回転リミット装置10の場合、左右方向に、(回転部6のスリット5長による回転角度)+(第1の自由回転部4aのスリット5a長による回転角度)+(第2の自由回転部4bのスリット5b長による回転角度)+(第3の自由回転部4cのスリット5c長による回転角度)+(第3の自由回転部4cの突起部材3cが固定部2のストッパ部材1に接触するまでの長さによる回転角度)だけ回転することになる。
【0036】
このように、第2の実施形態は、複数の自由回転部4a,4b,4cを設けることにより、第1の実施形態よりも回転角度を大きくでき、360度以上の可動範囲を確保できる。しかも、自由回転部4の数を増やすことにより、原理的には回転角度を無限に広げることができ、自由回転部4の数を調整することにより、所望の回転量を得ることができる。
【0037】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、自由回転部4の突起部材を原点位置に自動的に復帰させる機構を設けたものである。
【0038】
図8は本発明の第3の実施形態に係る回転リミット装置10の分解斜視図、図9はその上面図である。図8の回転リミット装置10は、第1および第2の実施形態と同様に、固定部2と、自由回転部4と、回転部6とを備えている。
【0039】
固定部2は、図1と同様のストッパ部材1を有する他に、自由回転部4の回転方向を検出するためのフォトインタラプタ21を有する。
【0040】
自由回転部4は、図1と同様の突起部材3を有する他に、周縁部の一部に切り欠き部22が形成されている。この切り欠き部22は、後述するように、フォトインタラプタ21により自由回転部4の回転方向を検出するために用いられる。自由回転部4の突起部材3は、切り欠き部22の端部の延長線上に配置される。
【0041】
固定部2のフォトインタラプタ21は、凹形状であり、フォトインタラプタ21の凹み部分に自由回転部4が配置される。自由回転部4は、遮光板で形成され、フォトインタラプタ21から発光された光を遮断する。ところが、自由回転部4の切り欠き部22がフォトインタラプタ21の真下を通過する場合には、フォトインタラプタ21から発光された光は遮断されずに受光される。したがって、フォトインタラプタ21の真下を切り欠き部22が通過したか否かで、自由回転部4の回転方向を検出することができる。
【0042】
回転部6は、円弧状のスリット5と、このスリット5内に設けられる原点復帰機構23とを有する。原点復帰機構23は、密着配置される2つのレバー24,25からなり、これらレバー24,25の接続箇所が原点である。各レバー24,25は、原点付近に配置される回転軸を中心として、ある角度範囲で回転可能であり、原点方向に向かって付勢力を与える。例えば、突起部材3がレバーに接する位置(原点)以外の場所に位置する場合、突起部材3は、2つのレバー24,25により、原点位置に向かって押し出される。これにより、突起部材3は、スリット5内のどこに位置していても、原点に復帰するような付勢力が与えられる。
【0043】
図10は第3の実施形態に係る回転リミット装置10の動作を説明する図である。初期状態では、図9に示すように、突起部材3は、回転部6の原点復帰機構23により、回転部6の原点位置に配置される。この状態から左方向に回転部6を回転させたとする。このとき、図10(a)に示すように、フォトインタラプタ21は、自由回転部4の切り欠き部22を通過するため、フォトインタラプタ21は何ら反応しない。自由回転部4の突起部材3は、回転部6の原点位置に保持されたまま、自由回転部4と回転部6がともに左方向に回転する。
【0044】
やがて、突起部材3が固定部2のストッパ部材1に接触すると、それ以上自由回転部4は回転できないが、回転部6は左方向への回転を継続する。回転部6の回転に伴って、突起部材3は、原点復帰機構23のレバー24を付勢し、相対的に、突起部材3は原点復帰機構23のレバー24の端部の方に移動する。
【0045】
そのまま、左方向の回転を継続させると、突起部材3は押し戻しバネ12に接触し、ある程度まで突起部材3が押し戻しバネ12を押し込むを、位置検出器11が突起部材3を検出する。ここで、制御装置13が回転部6の回転動作を停止すると、原点復帰機構23のレバーの付勢力により、突起部材3は、図9に示すように自由回転部4の原点に復帰する。
【0046】
第3の実施形態に係る回転リミット装置10の場合、回転部6は固定部2に対して180°以上回転するが、自由回転部4は固定部2に対して180°未満しか回転しない。このため、原点から左方向に回転部6が回転しているときは、フォトインタラプタ21の場所は自由回転部4の切り欠き部22しか通過せず、フォトインタラプタ21は自由回転部4の遮光板を検出しない。
【0047】
一方、図10(c)は図9の状態から回転部6を右方向に回転させた場合を示す上面図である。この場合、フォトインタラプタ21は常に自由回転部4の遮光板を検出し、フォトインタラプタ21からの信号を受け取る制御装置13は、回転リミット装置10が右方向に回転していることを認識する。
【0048】
例えば、原点を基準として、200°の回転角度と-160°の回転角度は、回転方向が違うだけで、回転後の位置は同一なため、従来は両者を区別することができなかった。これに対して、本実施形態によれば、どの方向に回転したかを正確に検出できる。
【0049】
このように、第3の実施形態では、自由回転部4に位置検出用の切り欠き部22を設け、この切り欠き部22の端部に突起部材3を配置し、回転部6に原点復帰機構23を設け、かつ固定部2に自由回転部4の遮光板を検出するフォトインタラプタ21を設けるため、可動範囲を広げられるだけでなく、回転方向を正確に検出することができる。
【0050】
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、第3の実施形態の変形例であり、回転部6と固定部2の間に、複数の自由回転部4を設けたものである。
【0051】
図11は本発明の第4の実施形態に係る回転リミット装置10の分解斜視図である。図11の回転リミット装置10は、回転部6と固定部2の間に3つの自由回転部4a,4b,4cを備えている。なお、自由回転部の数に特に制限はない。以下では、3つの自由回転部4を、回転部6に近い側から第1、第2および第3の自由回転部4a,4b,4cと呼ぶ。
【0052】
回転部6、固定部2および第3の自由回転部4cはそれぞれ、図8の回転部6、固定部2および自由回転部4と同様の形状を持つ。第1および第2の自由回転部4a,4bは、円弧状のスリット5a,5bと、スリット5a,5bの両端部に配置される押し戻しバネ12と、スリット5内に配置される原点復帰機構23a,23bとをそれぞれ有する。固定部2、第2および第3の自由回転部4b,4cは、フォトインタラプタ21,21a,21bをそれぞれ有する。第1〜第3の自由回転部4a〜4cは、周縁に沿って形成された切り欠き部22a〜22cをそれぞれ有する。
【0053】
第2の自由回転部4bのフォトインタラプタ21aは第1の自由回転部4aの回転方向を検出し、第3の自由回転部4cのフォトインタラプタ21bは第2の自由回転部4bの回転方向を検出し、固定部2のフォトインタラプタ21は第3の自由回転部4cの回転方向を検出する。
【0054】
図11の回転リミット装置10は、原点復帰機構23と回転方向検出機能を備えていることを除けば、図7と同様の原理で、図7と同様の回転量だけ回転可能である。
【0055】
このように、第4の実施形態では、複数の自由回転部4を設けることで、可動範囲を広げることができ、かつ第1〜第3の自由回転部4cの回転方向を正確に検出できる。
【0056】
上述した各実施形態で説明した回転リミット装置10は、例えば、ロボットの関節部分に用いることができる。本発明の回転リミット装置10は、小型および軽量化が可能なため、移動ロボット等の小型ロボットにも適用でき、本発明に係る回転リミット装置10をロボットに組み込むことにより、ロボットの性能向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る回転リミット装置の分解斜視図。
【図2】回転リミット装置の組み付け斜視図。
【図3】位置検出器11周辺の構造を示す上面図。
【図4】第1の実施形態に係る回転リミット装置10の回転動作の一例を示す図。
【図5】本実施形態に係る回転リミット装置10の回転角度を説明する図。
【図6】第1の実施形態に係る回転リミット装置10の一変形例を示す上面図。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る回転リミット装置10の分解斜視図。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る回転リミット装置10の分解斜視図。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る回転リミット装置10の上面図。
【図10】第3の実施形態に係る回転リミット装置10の動作を説明する図。
【図11】本発明の第4の実施形態に係る回転リミット装置10の分解斜視図。
【符号の説明】
【0058】
1 ストッパ部材
2 固定部
3 突起部材
4 自由回転部
5 スリット
6 回転部
11 位置検出器
12 押し戻しバネ
21 フォトインタラプタ
22 切り欠き部
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定範囲だけ回転可能な回転リミット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットなど、回転関節をもつ装置では一般に、回転部側の回転動作を機械的に制限し、過回転を防止する機構を必要とする。通常、回転動作範囲を1回転以下に設定するのが一般であるが、1回転以上の動作範囲を可能とする機構も場合によっては必要となる。
【0003】
この種の機構の1つとして、可動式のストッパを設けて、回転部の回転範囲を広く設定できる回転リミット装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。同文献に開示されたリミット装置は、回転部の外側に可動式のストッパを設け、このストッパを相対回転可能な2つの部材のそれぞれと接触させることにより、回転関節の総回転量の限界を360°以上に設定している。
【特許文献1】特開平7-136972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、従来の回転リミット装置では、回転部の外側に可動式のストッパが配置された構成となっている。そのため、制限可能な総回転量は±(180度+約45度)の範囲であり、これ以上は可動範囲を広げられないという問題があった。
【0005】
また、回転部の外側に可動式のストッパを含む機構を配置するため、回転部に対して回転リミット装置全体が大きくなってしまう。このため、この種の回転リミット装置をロボット、特に小型化および軽量化の必要な移動ロボットなどに組込むには不向きである。
【0006】
さらに、通常、回転関節では、安全や機器の保全のため、機械的なストッパに接触する手前にセンサを配置し、回転位置を検出して、制御装置で、それ以上回転をしないようにする機能を必要とする。しかしながら、上記特許文献1を初めとする従来の回転リミット装置では、回転位置を検出する機能やストッパに接触する前に回転を停止させる機能は持っていない。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、可動範囲をできるだけ広げることができ、かつ小型軽量化が可能な回転リミット装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様によれば、ストッパ部材を有する固定部と、前記ストッパ部材に接触可能な突起部材を有し自由回転が可能な自由回転部と、前記自由回転部と中心軸が共通で、前記突起部材が係合されるスリットが形成された回転部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、可動範囲をできるだけ広げつつ、小型軽量化も可能な回転リミット装置を実現でき、ロボットの回転関節等に広く適用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る回転リミット装置の分解斜視図、図2は同回転リミット装置の組み付け斜視図である。
【0012】
これらの図に示すように、第1の実施形態に係る回転リミット装置10は、ストッパ部材1を有する固定部2と、ストッパ部材1に接触可能な突起部材3を有し左右に任意に回転可能な自由回転部4と、突起部材3が係合される円弧状のスリット5が形成された回転部6とを備えている。これら固定部2、自由回転部4および回転部6は、いずれも円板状で、中心付近に略同一径の孔7が形成されており、これら孔7を共通の回転軸として、自由回転部4と回転部6は左回りおよび右回りに回転可能とされている。固定部2と自由回転部4は、これら孔7に沿って形成される環状リブ8,9を有し、これら環状リブ8,9はその上方に配置される自由回転部4または回転部6の下面に回転自在に係合される。
【0013】
回転部6のスリット5は、回転部6の周縁部の形状に沿って円弧状に形成されている。このスリット5の両端部には、位置検出器11と押し戻しバネ12が設けられている。
【0014】
図3は位置検出器11周辺の構造を示す上面図であり、図3(a)は突起部材3が押し戻しバネ12に接触した状態(押し戻しバネ12を押し込んでいない状態)を示す図、図3(b)は突起部材3が押し戻しバネ12を押し込んでいる状態を示している。位置検出器11は図1および図2に示すように凹状であり、スリット5をまたがるように配置されている。スリット5の端部には押し戻しバネ12の一端が取り付けられている。位置検出器11は、突起部材3が押し戻しバネ12を押し込んで、図3(b)のように位置検出器11の真下に突起部材3が来るときに突起部材3を検出する。位置検出器11は、例えばフォトインタラプタ等で構成され、光学的に突起部材3を検出する。なお、位置検出器11の検出方法は特に限定されない。
【0015】
位置検出器11の検出結果は、制御装置13に伝送される。制御装置13は、位置検出器11が突起部材3を検出すると、それ以上の回転を続けることはできないと判断して、回転部6を逆方向に回転させるような制御を行うことができる。
【0016】
なお、図1〜図3では省略しているが、制御装置13からの制御信号により回転部6を左右に回転駆動するアクチュエータが設けられている。制御信号等の各種配線は、固定部2、自由回転部4および回転部6の中心にある孔7の内部に配設される。このため、回転リミット装置10を左右にどれだけ回転させても、配線が他部材に引っ掛かったり、巻き付いたりするおそれがなくなる。
【0017】
図4は第1の実施形態に係る回転リミット装置10の回転動作の一例を示す図である。以下、この図を用いて、本回転リミット装置10の動作を説明する。仮に突起部材3が図4(a)の位置にあったとし、この位置を原点として、回転部6が左向きに回転したとする。
【0018】
図4(a)の状態で、回転部6が左向きに回転すると、やがて、図4(b)のように、突起部材3は押し戻しバネ12に接触する。この状態で、さらに回転部6が左向きに回転すると、突起部材3は押し戻しバネ12を付勢することなく、突起部材3と押し戻しバネ12は互いに接触したまま共に左方向に回転していく。
【0019】
やがて、突起部材3はストッパ部材1に接触する。この状態で、さらに回転部6を左方向に回転させると、突起部材3がストッパ部材1に接触しているために自由回転部4は移動できないため、図4(c)に示すように突起部材3は押し戻しバネ12を押しつける。ある程度まで押し戻しバネ12が押しづけられると、図4(d)に示すように位置検出器11が突起部材3を検出する。図3に示した制御装置13は、位置検出器11での検出に応答して、回転部6の回転方向を変えるように制御する。これにより、一時的な回転リミットをかけることができる。
【0020】
制御装置13がこのような回転リミットをかけない場合、押し戻しバネ12は限界位置まで収縮し、機構的に完全にリミットがかかる。
【0021】
図5は本実施形態に係る回転リミット装置10の回転角度を説明する図である。図5では、回転部6のスリット5の両端部間の角度をα、スリット5の端部からストッパ部材1までの角度をβとしている。この場合、回転部6が単独で回転する角度はαで、回転部6と自由回転部4がともに回転する角度はβである。したがって、全体では、左方向に角度(α+β)分だけ回転可能である。また、右方向に対しても同様の可動範囲を有する。したがって、全体では、360度以上の可動範囲が得られる。
【0022】
回転部6のスリット5を周縁形状に沿って長くすればするほど、角度αが大きくなり、回転リミット装置10の回転角度も大きくなる。実際には、スリット5を長くすることにより、片方向で回転角度を±350度程度まで広げることができる。
【0023】
また、本実施形態によれば、回転リミット装置10の回転角度を広げた場合でも、ストッパ部材1による機構的なストッパをかける直前に、位置検出器11で突起部材3の位置を検出して回転リミットをかけることができ、機構的な無理な力が加わらなくなり、壊れにくくなる。したがって、回転リミット装置の信頼性が向上する。
【0024】
図6は第1の実施形態に係る回転リミット装置10の一変形例を示す上面図である。図6の回転リミット装置10は、押し戻しバネ12の代わりに、レバー14を設けている。これらレバー14は、一端を回転軸15として回転可能とされ、この回転軸15にはねじりバネ16が取り付けられている。回転部6が回転を続けると、やがて突起部材3がレバー14に接触する。さらに回転部6を回転させると、突起部材3とレバー14は接触した状態でともに回転し、やがて突起部材3はストッパ部材1に接触する。さらに回転部6を回転させると、突起部材3はレバー14を押し込む。この状態で、回転部6の回転を停止させると、レバー14の付勢力により、突起部材3は押し戻される。
【0025】
なお、押し戻しバネ12やレバー14は一例であり、種々の弾性部材が利用可能である。
【0026】
このように、第1の実施形態は、回転部6のスリット5長で決まる回転角度よりも大きい角度まで回転できるように、回転部6と固定部2の間に配置される自由回転部4に突起部材3を設けるとともに、固定部2にストッパ部材1を設けるため、回転部6の外側に可動式のストッパを設けずに回転リミット装置10の可動範囲を広げることができる。したがって、小型軽量化が容易で、ロボットの回転関節等に容易に適用可能な回転リミット装置10が得られる。
【0027】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、自由回転部4を複数個設けるものである。
【0028】
図7は本発明の第2の実施形態に係る回転リミット装置10の分解斜視図である。図7の回転リミット装置10は、図1と同様の構造の回転部6および固定部2の間に、複数の自由回転部4a,4b,4cを配置している。図7では、3つの自由回転部4a〜4cを備える例を示しているが、自由回転部の数には特に制限はない。
【0029】
以下では、一番上の自由回転部を第1の自由回転部4a、上から二番目の自由回転部を第2の自由回転部4b、一番下の自由回転部を第3の自由回転部4cと呼ぶ。
【0030】
第3の自由回転部4cは、図1の自由回転部4と同様の形状を持ち、ストッパ部材1に接触可能な突起部材3cを有する。第1および第2の自由回転部4a,4bは、円弧状のスリット5a,5bと、突起部材3a,3bとをそれぞれ有する。第2の自由回転部4bのスリット55bには、第3の自由回転部4cの突起部材3cが係合される。第2の自由回転部4bの突起部材3bは、第1の自由回転部4aのスリット5aと係合される。第1の自由回転部4aの突起部材3aは、回転部6のスリット5に係合される。
【0031】
例えば、回転部6を左方向に回転させると、やがて第1の自由回転部4aの突起部材3aが回転部6の押し戻しバネ12に接触し、この突起部材3aは押し戻しバネ12とともに左方向に回転する。すなわち、回転部6は、単独でスリット5の長さ分だけ回転可能である。
【0032】
回転部6の押し戻しバネ12と第1の自由回転部4aの突起部材3aとが互いに接触しながらともに回転するようになると、第1の自由回転部4aはそのスリット5aの長さ分だけ回転する。第2の自由回転部4bの突起部材3bが第1の自由回転部4aのスリット5aの端部に接触すると、今度は第2の自由回転部4bが回転を開始する。第2の自由回転部4bは、最大でそのスリット5bの長さ分だけ回転する。
【0033】
第3の自由回転部4cの突起部材3が第2の自由回転部4bのスリット5bの端部に接触すると、今度は第3の自由回転部4cが回転を開始する。第3の自由回転部4cは、最大でそのスリット5cの長さ分だけ回転する。
【0034】
第3の自由回転部4cは、その突起部材3cが固定部2のストッパ部材1に接触するまで回転を行う。第3の自由回転部4cの突起部材3が固定部2のストッパ部材1に接触してもなお回転部6を左方向に回転させると、回転部6の押し戻しバネ12が第1の自由回転部4aの突起部材3aにより押し込まれる。押し戻しバネ12が突起部材3aにより徐々に押し込まれていくと、やがてこの突起部材3aは位置検出器11により検出され、左方向への回転に対してリミットがかかる。
【0035】
結局、図7の回転リミット装置10の場合、左右方向に、(回転部6のスリット5長による回転角度)+(第1の自由回転部4aのスリット5a長による回転角度)+(第2の自由回転部4bのスリット5b長による回転角度)+(第3の自由回転部4cのスリット5c長による回転角度)+(第3の自由回転部4cの突起部材3cが固定部2のストッパ部材1に接触するまでの長さによる回転角度)だけ回転することになる。
【0036】
このように、第2の実施形態は、複数の自由回転部4a,4b,4cを設けることにより、第1の実施形態よりも回転角度を大きくでき、360度以上の可動範囲を確保できる。しかも、自由回転部4の数を増やすことにより、原理的には回転角度を無限に広げることができ、自由回転部4の数を調整することにより、所望の回転量を得ることができる。
【0037】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、自由回転部4の突起部材を原点位置に自動的に復帰させる機構を設けたものである。
【0038】
図8は本発明の第3の実施形態に係る回転リミット装置10の分解斜視図、図9はその上面図である。図8の回転リミット装置10は、第1および第2の実施形態と同様に、固定部2と、自由回転部4と、回転部6とを備えている。
【0039】
固定部2は、図1と同様のストッパ部材1を有する他に、自由回転部4の回転方向を検出するためのフォトインタラプタ21を有する。
【0040】
自由回転部4は、図1と同様の突起部材3を有する他に、周縁部の一部に切り欠き部22が形成されている。この切り欠き部22は、後述するように、フォトインタラプタ21により自由回転部4の回転方向を検出するために用いられる。自由回転部4の突起部材3は、切り欠き部22の端部の延長線上に配置される。
【0041】
固定部2のフォトインタラプタ21は、凹形状であり、フォトインタラプタ21の凹み部分に自由回転部4が配置される。自由回転部4は、遮光板で形成され、フォトインタラプタ21から発光された光を遮断する。ところが、自由回転部4の切り欠き部22がフォトインタラプタ21の真下を通過する場合には、フォトインタラプタ21から発光された光は遮断されずに受光される。したがって、フォトインタラプタ21の真下を切り欠き部22が通過したか否かで、自由回転部4の回転方向を検出することができる。
【0042】
回転部6は、円弧状のスリット5と、このスリット5内に設けられる原点復帰機構23とを有する。原点復帰機構23は、密着配置される2つのレバー24,25からなり、これらレバー24,25の接続箇所が原点である。各レバー24,25は、原点付近に配置される回転軸を中心として、ある角度範囲で回転可能であり、原点方向に向かって付勢力を与える。例えば、突起部材3がレバーに接する位置(原点)以外の場所に位置する場合、突起部材3は、2つのレバー24,25により、原点位置に向かって押し出される。これにより、突起部材3は、スリット5内のどこに位置していても、原点に復帰するような付勢力が与えられる。
【0043】
図10は第3の実施形態に係る回転リミット装置10の動作を説明する図である。初期状態では、図9に示すように、突起部材3は、回転部6の原点復帰機構23により、回転部6の原点位置に配置される。この状態から左方向に回転部6を回転させたとする。このとき、図10(a)に示すように、フォトインタラプタ21は、自由回転部4の切り欠き部22を通過するため、フォトインタラプタ21は何ら反応しない。自由回転部4の突起部材3は、回転部6の原点位置に保持されたまま、自由回転部4と回転部6がともに左方向に回転する。
【0044】
やがて、突起部材3が固定部2のストッパ部材1に接触すると、それ以上自由回転部4は回転できないが、回転部6は左方向への回転を継続する。回転部6の回転に伴って、突起部材3は、原点復帰機構23のレバー24を付勢し、相対的に、突起部材3は原点復帰機構23のレバー24の端部の方に移動する。
【0045】
そのまま、左方向の回転を継続させると、突起部材3は押し戻しバネ12に接触し、ある程度まで突起部材3が押し戻しバネ12を押し込むを、位置検出器11が突起部材3を検出する。ここで、制御装置13が回転部6の回転動作を停止すると、原点復帰機構23のレバーの付勢力により、突起部材3は、図9に示すように自由回転部4の原点に復帰する。
【0046】
第3の実施形態に係る回転リミット装置10の場合、回転部6は固定部2に対して180°以上回転するが、自由回転部4は固定部2に対して180°未満しか回転しない。このため、原点から左方向に回転部6が回転しているときは、フォトインタラプタ21の場所は自由回転部4の切り欠き部22しか通過せず、フォトインタラプタ21は自由回転部4の遮光板を検出しない。
【0047】
一方、図10(c)は図9の状態から回転部6を右方向に回転させた場合を示す上面図である。この場合、フォトインタラプタ21は常に自由回転部4の遮光板を検出し、フォトインタラプタ21からの信号を受け取る制御装置13は、回転リミット装置10が右方向に回転していることを認識する。
【0048】
例えば、原点を基準として、200°の回転角度と-160°の回転角度は、回転方向が違うだけで、回転後の位置は同一なため、従来は両者を区別することができなかった。これに対して、本実施形態によれば、どの方向に回転したかを正確に検出できる。
【0049】
このように、第3の実施形態では、自由回転部4に位置検出用の切り欠き部22を設け、この切り欠き部22の端部に突起部材3を配置し、回転部6に原点復帰機構23を設け、かつ固定部2に自由回転部4の遮光板を検出するフォトインタラプタ21を設けるため、可動範囲を広げられるだけでなく、回転方向を正確に検出することができる。
【0050】
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、第3の実施形態の変形例であり、回転部6と固定部2の間に、複数の自由回転部4を設けたものである。
【0051】
図11は本発明の第4の実施形態に係る回転リミット装置10の分解斜視図である。図11の回転リミット装置10は、回転部6と固定部2の間に3つの自由回転部4a,4b,4cを備えている。なお、自由回転部の数に特に制限はない。以下では、3つの自由回転部4を、回転部6に近い側から第1、第2および第3の自由回転部4a,4b,4cと呼ぶ。
【0052】
回転部6、固定部2および第3の自由回転部4cはそれぞれ、図8の回転部6、固定部2および自由回転部4と同様の形状を持つ。第1および第2の自由回転部4a,4bは、円弧状のスリット5a,5bと、スリット5a,5bの両端部に配置される押し戻しバネ12と、スリット5内に配置される原点復帰機構23a,23bとをそれぞれ有する。固定部2、第2および第3の自由回転部4b,4cは、フォトインタラプタ21,21a,21bをそれぞれ有する。第1〜第3の自由回転部4a〜4cは、周縁に沿って形成された切り欠き部22a〜22cをそれぞれ有する。
【0053】
第2の自由回転部4bのフォトインタラプタ21aは第1の自由回転部4aの回転方向を検出し、第3の自由回転部4cのフォトインタラプタ21bは第2の自由回転部4bの回転方向を検出し、固定部2のフォトインタラプタ21は第3の自由回転部4cの回転方向を検出する。
【0054】
図11の回転リミット装置10は、原点復帰機構23と回転方向検出機能を備えていることを除けば、図7と同様の原理で、図7と同様の回転量だけ回転可能である。
【0055】
このように、第4の実施形態では、複数の自由回転部4を設けることで、可動範囲を広げることができ、かつ第1〜第3の自由回転部4cの回転方向を正確に検出できる。
【0056】
上述した各実施形態で説明した回転リミット装置10は、例えば、ロボットの関節部分に用いることができる。本発明の回転リミット装置10は、小型および軽量化が可能なため、移動ロボット等の小型ロボットにも適用でき、本発明に係る回転リミット装置10をロボットに組み込むことにより、ロボットの性能向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る回転リミット装置の分解斜視図。
【図2】回転リミット装置の組み付け斜視図。
【図3】位置検出器11周辺の構造を示す上面図。
【図4】第1の実施形態に係る回転リミット装置10の回転動作の一例を示す図。
【図5】本実施形態に係る回転リミット装置10の回転角度を説明する図。
【図6】第1の実施形態に係る回転リミット装置10の一変形例を示す上面図。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る回転リミット装置10の分解斜視図。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る回転リミット装置10の分解斜視図。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る回転リミット装置10の上面図。
【図10】第3の実施形態に係る回転リミット装置10の動作を説明する図。
【図11】本発明の第4の実施形態に係る回転リミット装置10の分解斜視図。
【符号の説明】
【0058】
1 ストッパ部材
2 固定部
3 突起部材
4 自由回転部
5 スリット
6 回転部
11 位置検出器
12 押し戻しバネ
21 フォトインタラプタ
22 切り欠き部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストッパ部材を有する固定部と、
前記ストッパ部材に接触可能な突起部材を有し自由回転が可能な自由回転部と、
前記自由回転部と中心軸が共通で、前記突起部材が係合されるスリットが形成された回転部と、を備えることを特徴とする回転リミット装置。
【請求項2】
前記回転部は、前記突起部材が前記スリットの端部に達するまで、前記自由回転部を回転させずに回転動作を行い、前記突起部材が前記スリットの端部に達すると、前記突起部材が前記ストッパ部材に接触されるまで前記自由回転部とともに回転することを特徴とする請求項1に記載の回転リミット装置。
【請求項3】
前記回転部は、
前記スリットの端部に配置され、前記突起部材により収縮可能とされ、かつ収縮方向とは逆方向に前記突起部材を付勢する弾性部材と、
前記スリットの端部に配置され、前記突起部が前記弾性部材を所定量以上収縮させたときに、前記前記突起部材が通過したか否かを検出する位置検出部と、を備えることを特徴とする請求項2に記載の回転リミット装置。
【請求項4】
前記位置検出部により前記突起部材の通過が検出されると、前記回転部の回転を停止させるか、あるいは回転方向を逆転させる制御部を備えることを特徴とする請求項3記載の回転リミット装置。
【請求項5】
前記固定部、前記自由回転部および前記回転部は、中心軸を共通として中心部分がそれぞれくり抜かれた円板で形成され、
前記スリットは、前記回転部の周縁形状に沿って円弧状に形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の回転リミット装置。
【請求項6】
前記固定部、前記自由回転部および前記回転部の少なくとも一つに接続される配線は、前記固定部、前記自由回転部および回転部の中心部分の孔の内部に配設されることを特徴とする請求項5に記載の回転リミット装置。
【請求項7】
前記自由回転部は、前記固定部と前記回転部との間に複数個設けられ、
前記複数の自由回転部のうち、一番下に配置される自由回転部を除く他の自由回転部は、その下側に隣接配置される他の自由回転部の前記突起部材が係合されるスリットを有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の回転リミット装置。
【請求項8】
前記回転部は、回転駆動力が加わらないときに前記突起部材を所定の原点位置に復帰させる復帰機構部を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の回転リミット装置。
【請求項9】
前記突起部材が前記原点位置から左右のいずれの方向に移動したかを検出する移動方向検出部を有することを特徴とする請求項8に記載の回転リミット装置。
【請求項10】
前記自由回転部は、外周縁に沿って外周縁の一部に形成された切り欠き部を有し、
前記移動方向検出部は、前記固定部に設けられ、前記自由回転部の回転時に前記切り欠き部を通過したか否かを光学的に検出することを特徴とする請求項9に記載の回転リミット装置。
【請求項11】
前記自由回転部は、前記固定部と前記回転部との間に複数個設けられ、
前記複数の自由回転部のうち、一番下に配置される自由回転部を除く他の自由回転部は、その下側に隣接配置される他の自由回転部の前記突起部材が係合されるスリットと、前記切り欠き部と、を有し、
前記複数の自由回転部のうち、一番上に配置される自由回転部を除く他の自由回転部は、その上側に隣接配置される自由回転部の前記切り欠き部を通過したか否かを光学的に検出する前記移動方向検出部を有することを特徴とする請求項10に記載の回転リミット装置。
【請求項1】
ストッパ部材を有する固定部と、
前記ストッパ部材に接触可能な突起部材を有し自由回転が可能な自由回転部と、
前記自由回転部と中心軸が共通で、前記突起部材が係合されるスリットが形成された回転部と、を備えることを特徴とする回転リミット装置。
【請求項2】
前記回転部は、前記突起部材が前記スリットの端部に達するまで、前記自由回転部を回転させずに回転動作を行い、前記突起部材が前記スリットの端部に達すると、前記突起部材が前記ストッパ部材に接触されるまで前記自由回転部とともに回転することを特徴とする請求項1に記載の回転リミット装置。
【請求項3】
前記回転部は、
前記スリットの端部に配置され、前記突起部材により収縮可能とされ、かつ収縮方向とは逆方向に前記突起部材を付勢する弾性部材と、
前記スリットの端部に配置され、前記突起部が前記弾性部材を所定量以上収縮させたときに、前記前記突起部材が通過したか否かを検出する位置検出部と、を備えることを特徴とする請求項2に記載の回転リミット装置。
【請求項4】
前記位置検出部により前記突起部材の通過が検出されると、前記回転部の回転を停止させるか、あるいは回転方向を逆転させる制御部を備えることを特徴とする請求項3記載の回転リミット装置。
【請求項5】
前記固定部、前記自由回転部および前記回転部は、中心軸を共通として中心部分がそれぞれくり抜かれた円板で形成され、
前記スリットは、前記回転部の周縁形状に沿って円弧状に形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の回転リミット装置。
【請求項6】
前記固定部、前記自由回転部および前記回転部の少なくとも一つに接続される配線は、前記固定部、前記自由回転部および回転部の中心部分の孔の内部に配設されることを特徴とする請求項5に記載の回転リミット装置。
【請求項7】
前記自由回転部は、前記固定部と前記回転部との間に複数個設けられ、
前記複数の自由回転部のうち、一番下に配置される自由回転部を除く他の自由回転部は、その下側に隣接配置される他の自由回転部の前記突起部材が係合されるスリットを有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の回転リミット装置。
【請求項8】
前記回転部は、回転駆動力が加わらないときに前記突起部材を所定の原点位置に復帰させる復帰機構部を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の回転リミット装置。
【請求項9】
前記突起部材が前記原点位置から左右のいずれの方向に移動したかを検出する移動方向検出部を有することを特徴とする請求項8に記載の回転リミット装置。
【請求項10】
前記自由回転部は、外周縁に沿って外周縁の一部に形成された切り欠き部を有し、
前記移動方向検出部は、前記固定部に設けられ、前記自由回転部の回転時に前記切り欠き部を通過したか否かを光学的に検出することを特徴とする請求項9に記載の回転リミット装置。
【請求項11】
前記自由回転部は、前記固定部と前記回転部との間に複数個設けられ、
前記複数の自由回転部のうち、一番下に配置される自由回転部を除く他の自由回転部は、その下側に隣接配置される他の自由回転部の前記突起部材が係合されるスリットと、前記切り欠き部と、を有し、
前記複数の自由回転部のうち、一番上に配置される自由回転部を除く他の自由回転部は、その上側に隣接配置される自由回転部の前記切り欠き部を通過したか否かを光学的に検出する前記移動方向検出部を有することを特徴とする請求項10に記載の回転リミット装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−181675(P2006−181675A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−377463(P2004−377463)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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